JP2022075582A - 閾値分析に基づく非破壊検査装置、及び非破壊検査方法 - Google Patents

閾値分析に基づく非破壊検査装置、及び非破壊検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】グラウト充填状態を効率よく、かつ精度よく非破壊検査できる非破壊検査装置、及び非破壊検査方法を提供することを目的とする。【解決手段】発信探触子及び受信探触子を備えた非破壊検査装置10であって、SP加算平均波から得た時刻掃引基準化スペクトル値と中心間距離選定表とを比較してグラウト充填状態を自動判定する第1判定手段と、時刻掃引基準化スペクトル値と単一点計測判定表と比較してグラウト充填状態を自動判定する第2判定手段と、オペレータによる目視判定可能に時刻掃引基準化スペクトル値を表示する第3判定手段とを備えたことを特徴とする。【選択図】図10

Description

この発明は、PC橋梁などのコンクリート構造物に埋設されるシース管内のグラウト充填状態を、広帯域超音波を用いる閾値分析に基づいて非破壊検査する非破壊検査装置、及び非破壊検査方法に関する。
道路や鉄道における橋梁などの主桁、側壁、あるいは床版などには、ポストテンション工法で製造されたプレストレストコンクリート構造物(図52を参照)が用いられている。
このプレストレストコンクリート構造物は、打設したコンクリートの硬化後、予めコンクリート内に配設されたシース管内のPC鋼材を緊張させて、コンクリートに定着させることで、コンクリート内に残留圧縮応力を発生させている。
これにより、プレストレストコンクリート構造物は、鉄筋コンクリート構造物に比べて、引張荷重に対する耐久性に優れ、かつ軽量となるため、長径間化された大規模建造物の構築を可能にしている。
ところで、このようなプレストレストコンクリート構造物では、緊張させたPC鋼材の防錆のために、セメントミルクなどのグラウト材をシース管内に充填している。このため、プレストレストコンクリート構造物では、グラウト充填状態を確認する必要があった。
特に、グラウト充填状態が未充填、または充填不足の場合、多年度経過すると、シース管内に侵入した雨水などによってPC鋼材が腐食、破断して、所望される耐久性を確保できなくなるおそれがあった。例えば、日本国内及び海外のPC橋梁で、落橋というあってはならない幾つかの重大事故が実際に生じている。
そこで、プレストレストコンクリート構造物に埋設されたシース管のグラウト充填状態を非破壊検査する非破壊検査装置、及び非破壊検査方法が提案、実用化されている(特許文献1、及び特許文献2参照)。
昨今では、PC橋梁が新設される場合、特許文献1に基づいて開発された非破壊検査装置を用いて、シース管内のグラウト充填状態をコンクリート面から非破壊検査している。
さらにまた、既設PC橋梁では、特許文献1、及び特許文献2に記載の方法を改良発展させたWUTソフトウェアを用いた非破壊検査装置でグラウト充填状態の非破壊検査が行われている。
ところで、このWUTソフトウェアを用いた非破壊検査では、発信探触子と受信探触子との中心間距離が110から200mmの場合を反射P波計測分析と呼び、発信探触子と受信探触子との中心間距離が375mm以上の場合を反射S波計測分析と呼んでいる。
しかしながら、WUTソフトウェアを用いた非破壊検査では、様々な問題点があることが確認されている。
例えば、反射P波計測分析の場合、次のような4つの問題点が確認されている。
一つ目の問題点として、シースかぶり厚、及びコンクリート縦波音速の計測精度によって、グラウト充填状態の分析精度が左右されるばかりでなく、「未充填」を「完全充填」、または「完全充填」を「未充填」と誤分析する事象が生ずることが稀ではない。
二つ目の問題点として、シースかぶり厚が浅い場合、シース反射P波の起生時刻前方に、大きな振幅のコンクリート表面S波、及び直接波が生じ、シース反射P波の起生時刻後方に、2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が生じることで、グラウト充填状態の分析精度が低下するばかりでなく、「完全充填」を「未充填」と誤分析する事象が稀ではない。
三つ目の問題点として、計測点が、偶然、グラウトの未充填部分とグラウト充填部分との境界直上に位置することで、グラウト充填状態の分析精度が低下するばかりでなく、「未充填」を「完全充填」と誤分析することが稀ではない。
四つ目の問題点として、シースかぶり厚が、シース管の長手方向で大きく変化する場合があり、これに起因して、グラウト充填状態が「未充填」であっても、「完全充填」と誤分析することが稀ではない。
また、反射S波計測分析の場合、次のような5つの問題点が確認されている。
一つ目の問題点として、シースかぶり厚、及びコンクリート縦波音速の計測精度によって、グラウト充填状態の分析精度が左右される。
二つ目の問題点として、シース反射S波の分析で用いる分析用切り出し波の起生時刻前方に表面S波が生じ、かつ分析用切り出し波の起生時刻後方に2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が生じることで、グラウト充填状態の分析精度が低下し「完全充填」を「未充填」と誤分析する事象が稀ではない。
三つ目の問題点として、計測点が、偶然、グラウトの未充填部分とグラウト充填部分との境界直上に位置することで、グラウト充填状態の分析精度が低下するばかりでなく、「未充填」を「完全充填」と誤分析することが稀ではない。
四つ目の問題点として、シースかぶり厚が、シース管の長手方向で大きく変化する場合があり、これに起因して、多点計測波の加算処理を用いる従来の分析ではグラウト充填状態が「未充填」であっても、「完全充填」と誤分析する。
五つ目の問題点として、コンクリートの場合、P波とS波との音速比が0.62程度になるため、シース反射S波の起生時刻帯域は、シース反射P波に比べて時刻後方へ移動する。このため、発信探触子と受信探触子との中心間距離によっては、2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波がシース反射S波の上に混入する。これにより、グラウト充填状態の分析精度が低下して、グラウト充填状態が「完全充填」であっても、「未充填」または「充填不足」と誤判定することが度々である。
上述した様々な問題点に対処するために、WUTソフトウェアを用いた非破壊検査では、計測日数の数倍の日数をかけた上述の問題点に対処する分析オペレータによる分析処理で、分析結果を取得しているが、分析オペレータのだれもがグラウト充填状態を確実に正解に導くことが出来ない事象が多々生じている。
このため、WUTソフトウェアを用いた非破壊検査では、グラウト充填状態の分析の迅速化、及び高精度化が求められている。
そこで出願人は、閾値処理と名付ける処理方法により、分析で用いるスペクトル及び時系列を作成し、これを用いて上記多数の問題点を解決するグラウト充填状態の非破壊検査装置、及び非破壊検査方法を創り上げている。
特許第4640771号公報 特許第5814582号公報
本発明は、上述の問題に鑑み、グラウト充填状態を効率よく、かつ精度よく非破壊検査できる非破壊検査装置、及び非破壊検査方法を提供することを目的とする。
この発明は、超音波を発信する発信探触子、及び超音波を受信する受信探触子からなる一対の探触子と、少なくとも各種情報を表示する表示部を有して計測対象シースのグラウト充填状態を分析判定する解析機器とを備えた非破壊検査装置、及びこれを用いた非破壊検査方法であって、測点i=1~nwとする計測を多点計測とし、測点i=1とする計測を単一点計測として、2段目シースのかぶり厚、版厚、あるいは版厚底部コーナーまでの距離である路程長と、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせに応じた発信探触子と受信探触子との中心間距離が複数登録された中心間距離選定表、及びグラウト充填の判定結果の組み合わせに対応する最適な中心間距離が登録された単一点計測判定表を記憶する記憶手段と、多点計測、単一点計測、または中心間距離を順次変更する単一点計測のいずれかを選択するオペレータの入力設定操作を受付ける設定手段と、計測対象シースの断面中心からコンクリート表面への垂線と前記コンクリート表面との交点をとおる前記計測対象シースの長手方向に沿った前記コンクリート表面の仮想線分上において、前記長手方向の任意の位置におけるレーダ計測で得たシースかぶり厚であるレーダ計測かぶり厚ds|RC、及び前記任意の位置における削孔で得たシースかぶり厚である削孔かぶり厚ds|が同一になるようにコンクリート誘電率βuを算出する誘電率算出手段と、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測で得た前記計測対象シースのレーダ計測かぶり厚ds|RCを再取得する再取得手段と、前記発信探触子及び前記受信探触子を所定の中心間距離で、前記計測対象シース直上の前記コンクリート表面に配置した状態において、前記発信探触子から前記計測対象シースに向かって、所定時刻間隔で超音波を連続発信するとともに、発信のたびに前記受信探触子で得た収録波を加算平均した受信波を取得し、該受信波をFFT変換して対応するスペクトルを取得するスペクトル取得手段と、振動数f=0.0から(f-Δf)の間が「0.0」、振動数f=(f-Δf)からfの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+Δf)の間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+Δf)以上で「0.0」となるF3(f)フィルタ関数を、前記スペクトルに乗じて得たスペクトルに対応する時系列から、シース反射P波起生時刻tを求める起生時刻取得手段と、前記シース反射P波起生時刻tを基準時刻とし、Δtを0.0~(t-50)の間でオペレータが指示する値として、時刻t=0.0からt-Δtの間が「0.0」となり、時刻t=t-Δtからtの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、時刻t=tからt+Δtの間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、時刻t=t+Δt以上の時刻が「0.0」となる時刻フィルタTGC4(t)を、前記F3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列に乗じるとともに、時刻フィルタTGC4(t)の基準時刻を前記F3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列の起生時刻に移動させるオペレータの操作を受け付けてシース反射P波起生時刻tを再度求める起生時刻再取得手段と、下式のdsを前記再取得手段で得た前記レーダ計測かぶり厚ds|RCに置き換え、下式のtに前記起生時刻再取得手段で得た前記シース反射P波起生時刻tを適用して展開し、コンクリート縦波音速Vを取得するコンクリート縦波音速取得手段と、
Figure 2022075582000002
多点計測の場合、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測によって得られた測点i=1でのレーダ計測かぶり厚ds|RC左、及び測点i=nwでのレーダ計測かぶり厚ds|RC右との平均値を分析用1次かぶり厚ds(1)として算出し、下式で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、さらに前記計測対象シースの外径φによって決まる係数をβとする増分量Δds=β×φを、前記分析用1次かぶり厚ds(1)に加算して分析用2次かぶり厚ds(2)を算出する第1収録手段と、
Figure 2022075582000003
単一点計測または中心間距離を順次変更する単一点計測の場合、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測によって得られたレーダ計測かぶり厚ds|RCを分析用1次かぶり厚ds(1)として取得し、上式で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、さらに前記分析用1次かぶり厚ds(1)に前記増分量Δdsを加算して分析用2次かぶり厚ds(2)を算出する第2収録手段と、オペレータの操作による前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの路程長の入力操作を受付ける第1の入力受付手段と、オペレータが決定した前記発信探触子と前記受信探触子との中心間距離の入力操作を受け付ける第2の入力受付手段と、前記受信探触子に対して前記オペレータが決定した中心間距離を隔てて配置された前記発信探触子から前記計測対象シースに向かって、所定時刻間隔で超音波を連続発信し、発信のたびに前記受信探触子で得た収録波を加算平均して受信波G(t)|i=1~nwを取得するとともに、該受信波G(t)|i=1~nwをFFT変換して対応するスペクトルF(f)|i=1~nwを取得したのち、上式の分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて、前記中心間距離での分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を算出する第3収録手段と、振動数fをオペレータの操作によって設定される50kHz-Δf<f<50kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、振動数fを((f-10)/2)kHzとし、振動数fを80kHzとして、振動数f=-10kHzからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fからfが「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=fからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+30kHz)が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+30kHz)以上で「0.0」となる関数をA(f)フィルタ関数として、多点計測(nw≧2)または単一点計測(nw=1)あるいは中心間距離を順次変更する単一点計測(nw=1)の前記受信波G(t)|i=1~nwと、これらの加算平均波G(t)|i=nw+1との並びである受信波群G(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、前記A(f)フィルタ関数を乗じ、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成するとともに、該分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1をFFT逆変換で取得する第1分析手段と、基準時刻tをt=ts(2)+Δth2とする時刻フィルタTGC1(t)を、時刻t=0が「0.0」となり、時刻tが「1.0」となるsin形状増加線分、時刻t=t以降が「1.0」となるTGCA(t)関数を用いて、(TGCA(t))neで算出される関数とし、基準時刻tをt=ts(2)とする時刻フィルタTGC2(t)を、時刻t=0.0から時刻t=tまでが「1.0」、時刻t=tで「1.0」となり時刻t=400μ秒で「0.0」となるsin形状減少線分、時刻t=400μ秒以降で「0.0」となるTGCB(t)関数を用いて、(TGCB(t))nfで算出される関数として、前記分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1に、前記時刻フィルタTGC1(t)、及び前記時刻フィルタTGC2(t)を乗じて、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1を取得するとともに、該分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1をFFT変換で取得する第2分析手段と、該第2分析手段で取得した前記スペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1ごとに、振動数fよりも低振動数側の最大スペクトル値を「1.0」とし、振動数fよりも高振動数側の最大スペクトル値を閾値ασとする相対値に形状変換する閾値処理を適用して、スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を取得するとともに、該スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1のFFT逆変換で分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得し、さらに該分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を、i=1~nw+1ごとに最大振幅を「1.0」とする相対値に形状変換する第3分析手段と、Δts1及びΔts2を自動的またはオペレータによって設定される値として、台形窓関数Aを時刻t=ts(2)-Δts1から時刻t=ts(2)+Δts2までΔt間隔で移動させるたびに、前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1に前記台形窓関数Aを乗じて切り出した時系列に対応するスペクトルにおいて、i=1~nw+1ごとに前記振動数f以下での最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換した際、前記振動数f以上での最大スペクトル値を時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1として作成するとともに、前記振動数f以上及び前記振動数f以下での最大スペクトル値を時刻ごとに比較して、大きい方の最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換して時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を作成する第4分析手段と、前記中心間距離での多点計測または単一点計測において、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記路程長が既知の場合、前記中心間距離選定表に基づいて第3収録手段による受信波の収録時の中心間距離が適切か否かを自動的に判定し、中心間距離が不適切であれば、前記中心間距離選定表に登録された適切な中心間距離での前記第3収録手段による収録によって受信波G(t)|i=1~nwを再度取得し、該再取得した受信波G(t)|i=1~nwに基づいた前記第1分析手段から前記第4分析手段による分析によって時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を再取得し、前記中心間距離が適切であれば、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を用いて計測対象シースのグラウト充填状態を判定する第1判定手段と、前記中心間距離での単一点計測において、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記路程長が未知の場合、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了したか否かを判定し、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了していなければ、前記第3収録手段による収録によって、未計測の中心間距離での受信波G(t)|i=1を取得したのち、該取得した受信波G(t)|i=1~nwに基づいた前記第1分析手段から前記第4分析手段による分析によって、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での受信波G(t)|i=1ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1を取得し、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了していれば、前記単一点計測判定表に基づいて選定した中心間距離での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を用いて前記計測対象シースのグラウト充填状態を判定する第2判定手段と、中心間距離を順次変更する単一点計測の場合、前記中心間距離選定表及び前記単一点計測判定表に登録された中心間距離、並びに当該中心間距離の間を段階的に補間する中心間距離での単一点計測で得たカウント値j=1~nvの受信波G(t)|j=1~nvごとに時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncj=1~nvを取得したのち、複数の前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを用いて、前記計測対象シースのグラウト充填状態を判定可能にする第3判定手段とを備え、前記第1判定手段は、i=1~nwの多点計測の場合、下式で求められるWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1をFFT変換して、スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1を取得し、
Figure 2022075582000004
さらに下式でスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1を作成し、スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1を作成し、
Figure 2022075582000005
前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を前記SP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた前記第4分析手段による分析によって、SP加算の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を作成し、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)をSPtとして求めたのち、前記SPtを下式で示すグラウト充填状態判定式に適用してグラウト充填状態の判定結果を取得し、i=1の単一点計測の場合、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPtとして求めて、前記SPtを下式で示すグラウト充填状態判定式に適用してグラウト充填状態の判定結果を取得し、
Figure 2022075582000006
i=1~nw+1の多点計測におけるSP加算での全てのSPti=1~nw+1、またはi=1の単一点計測におけるSPti=1が「未充填」または「充填不足」あるいは「完全充填」と判定された場合、前記判定結果を計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用して、該判定結果と前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示し、多点計測における測点i=n1~n2が「未充填または充填不足」、測点i=n1´~n2´が「完全充填」と判定された場合、測点i=n1~n2の加算平均波としてWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を、下式に基づいて作成して、
Figure 2022075582000007
さらに、前記WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)のFFT変換によってスペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成するとともに、下式を用いてスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、
Figure 2022075582000008
その後、前記スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、さらにまた、測点i=n1´~n2´の加算平均波としてWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を、下式に基づいて作成し、
Figure 2022075582000009
さらに、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)のFFT変換によってスペクトルFC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成するとともに、下式を用いてスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成し、
Figure 2022075582000010
その後、前記スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成して、前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する前記SP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた前記第4分析手段による分析によって、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を求め、測点i=n1~n2に対応する前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をSPtとして、前記グラウト充填状態判定式に適用して、i=n1~n2,nw+1ごとのグラウト充填状態を判定するとともに、測点i=n1´~n2´に対応する前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をSPtとして、前記グラウト充填状態判定式に適用して、i=n1´~n2´,nw+1ごとのグラウト充填状態を判定し、i=n1~n2,nw+1及びi=n1´~n2´,nw+1の判定結果と、該判定結果に対応するi=n1~n2,nw+1及びi=n1´~n2´,nw+1の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを表示部に表示する判定手段であり、前記第2判定手段は、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻において、単一点計測での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を前記単一点計測判定表の前記中心間距離ごとに算出し、該算出した時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPti=1として、下式で示すグラウト充填状態判定式に適用して、グラウト充填状態の判定結果を前記中心間距離ごとに取得し、
Figure 2022075582000011
前記中心間距離ごとの判定結果を前記単一点計測判定表に適用して、前記判定結果の組み合わせに対応する適切な中心間距離での前記判定結果を、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1とを前記表示部に表示する判定手段であり、前記第3判定手段は、前記中心間距離選定表及び前記単一点計測判定表に登録された中心間距離、並びに当該中心間距離の間を段階的に補間する中心間距離をそれぞれカウント値j=1~nvに関連付け、該カウント値j=1~nvに対応する前記中心間距離での単一点計測で得た複数の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを、オペレータによるグラウト充填状態の比較判定が可能なように前記解析機器の前記表示部に表示させ、さらに前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの前記路程長が未知の場合、前記カウント値j=1,nvに対応する前記中心間距離ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvに基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvをSPt*j=1,nvとして求め、該SPt*j=1,nvを下式に示すグラウト充填状態判定式に適用して、前記カウント値j=1,nvの前記中心間距離ごとの判定結果を取得し、該取得した判定結果を前記単一点計測判定表に適用して得た適切な中心間距離に対応するカウント値jの判定結果を、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示し、
Figure 2022075582000012
または、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの前記路程長が既知の場合、前記中心間距離選定表で適切な中心間距離を特定し、該適切な中心間距離に対応するカウント値j=1またはnvの前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|に基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|をSPt*として求め、該SPt*を上式のグラウト充填状態判定式に適用して、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示する判定手段であることを特徴とする。
この発明によれば、非破壊検査装置、及びこれを用いた非破壊検査方法は、グラウト充填状態を効率よく、かつ精度よく非破壊検査することができる。
この発明の態様として、多点計測の場合をnw≧2、単一点計測の場合をnw=1として、前記第1分析手段は、前記A(f)フィルタ関数に代えてA(f)nGフィルタ関数を、スペクトルF(f)|i=1~nw+1に乗じて分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成するとともに、該分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1をFFT逆変換で取得する手段であり、前記A(f)nGフィルタ関数は、振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、中心振動数fを20kHz、f を80kHz、振動数fを(f+f )/2の前後でオペレータが設定する値として、振動数f=0.0で「0.0」となり、振動数fで「1.0」となるsin形状増加関数、振動数fで「1.0」となり、振動数f×2で「0.0」となるsin形状減少関数、振動数f×2以上で「0.0」となる関数であり、前記指数nGは、前記分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1のいずれかで振動数f~f の間でのスペクトル値が最大となるときの値であり、前記第3分析手段は、前記閾値処理における振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値として、前記スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1、及び前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得する手段であり、前記第4分析手段は、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求めるとともに、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~nw+1として求める手段であり、前記第1判定手段、前記第2判定手段、及び前記第3判定手段は、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求め、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを前記時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncとして求めてグラウト充填状態を判定する手段であり、前記第1判定手段は、i=1の単一点計測の場合、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1として求めてグラウト充填状態を判定し、i=1~nwの多点計測の場合、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求めてグラウト充填状態を判定する手段であり、前記第2判定手段は、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1として求めてグラウト充填状態を判定する手段であり、前記第3判定手段は、適切な中心間距離に対応するカウント値j=1またはnvの前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求め、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを前記時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncとして求めるとともに、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求めてグラウト充填状態を判定する手段であってもよい。
この構成によれば、非破壊検査装置、及びこれを用いた非破壊検査方法は、グラウト充填状態を精度よく非破壊検査することができる。
本発明により、グラウト充填状態を効率よく、かつ精度よく非破壊検査できる非破壊検査装置、及び非破壊検査方法を提供することができる。
シース反射波計測の概略を説明する概略図。 シース反射波起生時刻帯域の振動数とスペクトル値との関係を説明する説明図。 残存波が混入したシース反射波の概略を説明する説明図。 空シースの振動挙動で生じる波の概略を説明する説明図。 振動挙動波の発生状況の概略を説明する説明図。 既設橋梁での測定位置の違いで生じる受信波の概略を説明する説明図。 閾値ασを用いたスペクトル波形変換処理の概略を説明する説明図。 非破壊検査装置の構成を示す構成図。 グラウト充填状態を説明する説明図。 非破壊検査装置の内部構成を示すブロック図。 コンクリートの内部を伝播する超音波の概略を示す概略図。 コンクリートの内部を伝播する超音波の概略を示す概略図。 多点計測の概略を示す概略図。 反射P波自動化分析処理の概略を説明する説明図。 反射S波計測探触子の配置を説明する説明図。 狭時間帯域時系列の分析用切り出し波の概略を説明する説明図。 分析用2次切り出し波の概略を説明する説明図。 計測対象シースの短手方向に沿った縦断面を示す断面図。 反射S波自動化分析処理の動作を示すフローチャート。 反射S波自動化分析処理の動作を示すフローチャート。 反射S波自動化分析処理の概略を説明する説明図。 反射S波自動化分析処理の概略を説明する説明図。 分析例1の概略を説明する説明図。 分析例1の概略を説明する説明図。 分析例1の概略を説明する説明図。 分析例1の概略を説明する説明図。 分析例1の概略を説明する説明図。 分析例1の概略を説明する説明図。 分析例2の概略を説明する説明図。 分析例2の概略を説明する説明図。 分析例2の概略を説明する説明図。 分析例3の概略を説明する説明図。 分析例3の概略を説明する説明図。 分析例3の概略を説明する説明図。 分析例3の概略を説明する説明図。 分析例3の概略を説明する説明図。 分析例4の概略を説明する説明図。 分析例5の概略を説明する説明図。 反射S波計測での適切な探触子間隔を説明する説明図。 反射S波計測での適切な探触子間隔を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 閾値反射S波分析法の正当性の検証を説明する説明図。 (f)フィルタ関数、及びA(f)nGフィルタ関数を説明する説明図。 (f)nGフィルタ関数を用いた分析を説明する説明図。 (f)nGフィルタ関数を用いた分析を説明する説明図。 箱桁PC橋梁のグラウト充填状態探査計測位置を説明する説明図。
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
<本発明で利用する物理現象>
まず、グラウト充填状態の非破壊検査における受信超音波のスペクトル特性について説明する。
超音波は、音響インピーダンスの異なる物質の界面で反射する特性がある。音響インピーダンスは、超音波が物質を伝播する際の抵抗値を表現しており、音響インピーダンスが高くなれば抵抗値が低くなり、逆に音響インピーダンスが低くなれば抵抗値が高くなる。
空気の音響インピーダンスは極めて低いため、超音波は、空洞があると、空洞でほぼ全反射し大きな振幅の反射波が発生する。一方、密実であると超音波の反射率が低いため、振幅の小さい反射波が発生する。
図1に示すように、シース管の直上のコンクリート平面に発信探触子及び受信探触子を、375mm~500mmの間隔を隔てて配置するシース反射波計測において、発信探触子から超音波をコンクリート表面より入力した場合、超音波は大きく分けて3つの伝播経路をたどって受信探触子に到達する。
この受信探触子が受信する受信波は、図1(a)及び図1(b)、に示すように、コンクリート内部を迂回するように伝達する直接波(DI波)と、コンクリート表面に自然発生し伝達する表面波(縦波である表面P波、及び横波である表面S波)と、図1(c)に示すシース管で反射して戻ってくるシース反射S波がある。これらの波は、伝播経路が異なるためその性質もそれぞれ異なる。さらにまた、図1(d)に示す2段目シース、版厚、版厚コーナーからの反射P波、反射M波、及び反射M波がある。
シース反射波が大きく卓越する振動数が複数あり、そのスペクトルにおいては、グラウト充填状態が未充填の場合で高振動数側が大きくなり、グラウト充填状態が完全充填の場合で低振動数側が大きくなっている。この現象を利用する事が、本発明の根幹の1つである。
図2(a)は、受信探触子が受信した受信波のシース反射波起生時刻帯域(図1(C)中の破線で囲われた領域)における表面P波、表面S波、及び直接波(DI波)の後方残存波のスペクトル概念図であり、合成波残存スペクトルを示している。なお、中心振動数fは、20kHz~30kHz前後である。
また、図2(b)はシース反射波起生時刻帯域におけるシース反射波のスペクトル概念図であり、大口径のシース管における高振動数(f、f)帯域スペクトルを示している。
さらに、図2(b)中の実線は、グラウト充填状態が未充填の場合を示し、図2(b)中の破線はグラウト充填状態が充填状態の場合を示している。
なお、図2は、中心振動数fでの最大スペクトル値を基準値「1.0」として、振動数毎のスペクトル値を基準値「1.0」に対する相対値に置き換えて図示している。
一般的に、既設PC橋梁コンクリート(コンクリート縦波音速=4300m/秒前後)では、多くの計測例より振動数fが40~50kHz、振動数fが60~80kHzであることが確認されている。振動数f、及び振動数fは、コンクリート強度(コンクリート縦波音速)が大きくなると高振動数側へ、コンクリート強度が小さくなると低振動数側へ移動する。また、振動数f、及び振動数fは、シースかぶり厚が浅くなると高振動数側、シースかぶり厚が深くなると低振動数側へ移動する。
シース反射S波に図1中の表面P波、表面S波、及び直接波(DI波)の後方残存波が混入するため、シース反射波起生時刻帯域のスペクトルは、図3(a)に示すように、位相情報を無視すれば、図2(a)と図2(b)とを加算したスペクトル概念図となる。
図3(a)のスペクトル概念図において、表面P波、表面S波、及び表面波(DI波)の中心振動数fでのスペクトル値は、測点毎のコンクリートの性状が同一であれば、グラウト充填状態が未充填、完全充填にかかわらず略等しいと考えることができる。
図3(b)は、小口径のシース管の場合におけるシース反射S波の起生時刻帯域のスペクトル概念図を示している。
シース管の直径が小さくなると反射振幅が小さくなることにより、振動数f、及び振動数fのスペクトル値が小さくなる。このため、グラウト充填状態が未充填と完全充填とで、このスペクトル値の大小の差分も小さくなっていると予想される。
実際には、シース管以外の反射源で反射した反射波、例えば、鉄筋、微細割れ、隣接するシース管、及びコンクリート面端部からの表面反射波や、2段目シース、及びWEB厚からの反射波などによって生じる諸々の起生波が、シース反射S波に混入してくる。
このため、小口径のシース管の場合、図3(b)の振動数f及び振動数fのスペクトルの大小関係のみを利用して、グラウト充填状態が未充填か完全充填かを判断することは、極めて困難となる。
ところで、出願人は、グラウト充填状態が未充填の場合、シース管に入力される入力P波または入力S波によりシース管が自励振動挙動し、この波における振動数f、及び振動数fのスペクトルが、図4(a)のようになると考えている。
小口径のシース管であっても、シース反射波の起生時刻帯域におけるスペクトル形状は、図3(b)と図4(a)を重ね合わせたものとなり、図3(a)に酷似したスペクトル比較図となる。グラウト充填状態が未充填のシース管の場合、振動数f、及び振動数fでのスペクトル値が、グラウト充填状態が完全充填のシース管に比べて大きくなってくる。
図4に示したグラウト充填状態が未充填のシース管において、シース管の振動挙動で生じる波のスペクトルは、コンクリート打設後、日の浅い日時と経年後とで、その値の大小関係が大きく異なっている。コンクリート打設直後では、シース管廻りのコンクリートとシース管とが境界で密着しており、経年でその境界が剥離し、密着状態が密接状態に変化してくると考える。さらに、実橋では、車両の走行により、常に振動挙動を呈しているため、この変化の度合が大きくなる。
このため、グラウト充填状態が未充填のシース管での振動挙動波の振動は、図5に示すように、コンクリート打設時点では小さく、経年で大きくなっていくはずである。図4に示した未充填のシース管での振動挙動のスペクトル値が大きくなるという現象は、既設PC橋梁の場合、グラウト充填状態の確認にとって都合のよい現象である。
<本発明の分析の根幹>
図6は、既設PC橋梁でのシース管の受信波スペクトルの模式図を示している。図6(a)、図6(b)、図6(c)、及び図6(d)は、シース管の直上におけるコンクリート表面において、シース管の長手方向に離間した測定点あるいは他のシース管での受信波のスペクトル模式図をそれぞれ示している。
図6では、振動数fよりも低振動数側の最大スペクトル値を基準値「1.0」として、振動数毎のスペクトル値を基準値「1.0」に対する相対値に置き換えて図示している。
受信波スペクトルは、振動数fよりも高振動数側のスペクトル値が極めて大きい場合もあれば、小さい場合もある。本来、受信波スペクトルのスペクトル形状は、計測点毎に略同一となるはずだが、そのようになっていない。
既設PC橋梁は、築後40年から60年経過している場合も多数あり、桁、箱桁のコンクリート表面が凸凹した場合もあれば、コンクリート表面、及びコンクリート内部が極度に劣化している場合もある。
さらには、既設PC橋梁は、コンクリート表層に埋設される鉄筋の配置が不均一で、鉄筋の配置間隔が狭い場合もあれば、広い場合もある。
加えて、既設PC橋梁は、コンクリート表層に超音波の進行を遮断するひび割れ、または目視し難い亀の子状の微細なひび割れが多数存在する場合もある。
さらにまた、コンクリート表層が劣化している場合、発信探触子、及び受信探触子をコンクリート表面に配置する際、多量の超音波伝達媒質をコンクリート表面に塗布するが、短時間のうちにコンクリート内部に浸透することで、受信超音波の特性が時間の推移で大きく変化する。
このように、諸々の理由が合わさることで、図6のような現象が生じている。この問題への対処が本発明にける分析の根幹の1つである。
そこで、スペクトル値の閾値ασを設定し、振動数fよりも高振動数側で最大スペクトル値εが閾値ασより小さい場合は、図7(a)に示すように、最大スペクトル値εを閾値ασまで増幅して得たスペクトルを、グラウト充填状態の分析に用いている。
また、最大スペクトル値εが閾値ασよりも大きい場合は、図7(b)に示すように、最大スペクトル値εを閾値ασまで減幅して得るスペクトルを、グラウト充填状態の分析に用いている。
<本実施形態の反射S波閾値分析に基づく非破壊検査装置、及び非破壊検査方法>
次に、本実施形態におけるシース反射S波超音波を用いた非破壊検査装置、及びこの装置を用いた非破壊検査方法について説明する。
本実施形態の非破壊検査装置10は、ポストテンション工法で製造された図52に示すような橋梁の主桁、横桁、箱桁、及び底版などのコンクリート構造物において、コンクリート構造物の内部に埋設されたシース管2のグラウト充填状態を非破壊検査するものである。このような非破壊検査装置10について、図8から図13を用いて説明する。
なお、図8は非破壊検査装置10の構成図を示し、図9はグラウト充填状態の説明図を示し、図10は非破壊検査装置10のブロック図を示し、図11及び図12はコンクリート4の内部を伝播する超音波の概略図を示し、図13は多点計測の概略図を示している。
さらに、図9(a)はグラウト充填状態が完全充填の状態におけるシース管2の断面図を示し、図9(b)はグラウト充填状態が充填不足の状態におけるシース管2の断面図を示し、図9(c)はグラウト充填状態が未充填の状態におけるシース管2の断面図を示している。
まず、検査対象物であるプレストレストコンクリート構造物1について説明する。
プレストレストコンクリート構造物1は、図8及び図9(a)に示すように、略円筒状のシース管2と、シース管2の内部に配置したPC鋼材3と、シース管2の外周面側に打設したコンクリート4とで構成している。
なお、PC鋼材3は、図9(a)に示すように、複数の鋼線3aを練り合せて形成されている。
このプレストレストコンクリート構造物1は、型枠内の所定位置にシース管2を配置したのち、型枠内にコンクリート4を打設する前、あるいは型枠内にコンクリート4を打設した後、シース管2内にPC鋼材3を挿入している。
そして、コンクリートの養生期間が経過したのち、PC鋼材3を所定張力で緊張させたシース管2をコンクリート4に定着させて形成している。これにより、プレストレストコンクリート構造物1は、コンクリート4の内部に、シース管2の長手方向に沿った圧縮応力を発生させている。
さらに、シース管2の内部には、図9(a)に示すように、PC鋼材3の防錆のために、セメントミルクなどのグラウト5を充填している。このグラウト5が、図9(a)に示すように、シース管2の内部に隙間なく充填されたグラウト充填状態を完全充填とする。なお、グラウト充填状態が完全充填のシース管2を、充填シースとする。
また、グラウト充填状態の他の態様として、グラウト5が、図9(b)に示すように、シース管2の内部に十分充填されておらず、シース管2の内部に空隙部分を有するグラウト充填状態を充填不足とする。
また、グラウト5が、図9(c)に示すように、シース管2の内部に充填されていないグラウト充填状態を未充填とする。なお、グラウト充填状態が未充填のシース管2を、空シースとする。
そして、本実施形態における非破壊検査装置10は、計測対象のシース管2のグラウト充填状態を、反射S波超音波を用いて非破壊検査する装置である。
この非破壊検査装置10は、図8及び図10に示すように、プレストレストコンクリート構造物1のコンクリート表面4aに配設される面発信ユニット11、及び面受信ユニット12と、面発信ユニット11、及び面受信ユニット12が電気的に接続される解析機器13とで構成している。
面発信ユニット11は、図8及び図11から図13に示すように、シース管2の直上に位置するコンクリート表面4aに配置されている。この面発信ユニット11は、図8及び図11から図13に示すように、コンクリート表面4aに接する底面が、超音波を発信する発信探触子11aとして構成されている。
そして、面発信ユニット11は、解析機器13からの超音波発信信号を受付ける機能と、超音波発信信号に基づいて発信探触子11aがコンクリート表面4aからプレストレストコンクリート構造物1の内部に超音波E(図13参照)を入力する機能とを有している。
面受信ユニット12は、図8及び図11から図13に示すように、面発信ユニット11に対して計測対象のシース管2の長手方向に離間するとともに、シース管2の直上に位置するコンクリート表面4aに配置されている。この面受信ユニット12は、図8及び図11から図13に示すように、コンクリート表面4aに接する底面が、超音波を受信する受信探触子12aとして構成されている。
そして、面受信ユニット12は、プレストレストコンクリート構造物1の内部を伝播した超音波Eを入射波R(図13参照)として受信探触子12aで受信する機能と、受信した入射波Rを示す受信信号を解析機器13に送信する機能とを有している。
解析機器13は、図10に示すように、面発信ユニット11が接続される発信ユニット接続部131と、面受信ユニット12が接続される受信ユニット接続部132と、各種情報を記憶する記憶部133と、作業者の操作を受付ける操作部134と、各種情報を表示する表示部135と、これらを制御する制御部136とで構成している。
なお、解析機器13は、後述する準備工程、第1の収録工程、第2の収録工程、第1の入力受付工程、第2の入力受付工程、第3の収録工程、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、第4の分析工程、第1の状態判定工程、第2の状態判定工程、及び第3の状態判定工程(図19のステップS101~図20のステップS118)に関する各種処理を実現する手段として構成されている。
発信ユニット接続部131は、制御部136からの指示によって、面発信ユニット11に対して超音波発信信号を出力する機能を有している。
受信ユニット接続部132は、面受信ユニット12からの受信信号を受付ける機能と、受信信号を制御部136に送信する機能とを有している。
記憶部133は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成し、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この記憶部133は、後述する中心間距離選定表(表1参照)、単一点計測判定表(表2参照)、グラウト充填状態を解析する解析プログラム、及び計測分析オペレータ(以下、オペレータと呼ぶ)が入力した各種パラメーターなどを記憶している。
操作部134は、キーボードなどで構成し、オペレータによる入力操作を受け付ける機能を有している。
表示部135は、液晶ディスプレイなどで構成し、各種パラメーターの入力を促す入力画面や、解析結果を示す解析結果画面などの各種情報を表示する機能を有している。
制御部136は、CPU及びメモリなどで構成し、面発信ユニット11への超音波発信信号の出力に係る各種処理機能と、面受信ユニット12からの受信信号に基づいたグラウト充填状態の解析に係る各種処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
具体的には、制御部136は、3~5mm秒毎に500~700回の超音波Eを連続発信するように、面発信ユニット11の動作を制御する処理機能と、面受信ユニット12を介して連続受信した入射波Rに基づいて受信波及び加算平均波を作成する処理機能とを有している。
さらに、制御部136は、この受信波及び加算平均波を表示部135に表示可能にする処理機能と、受信波及び加算平均波を記憶部133に記憶する処理機能と、グラウト充填状態を判定する処理機能などを有している。なお、これら処理機能は、解析プログラムを実行することで実現している。
このような非破壊検査装置10は、シース反射P波計測の場合、図11に示すように、計測対象であるシース管2(以降、計測対象シースと呼ぶ)の長手方向に沿った発信探触子11aと受信探触子12aとの中心間距離aが110mmから200mmの間となるように配置する。
あるいは、非破壊検査装置10は、シース反射S波計測の場合、図12(a)に示すように、発信探触子11aと受信探触子12aとの中心間距離aが375mmまたは500mmとなるように配置する。あるいは、発信探触子11aと受信探触子12aとの中心間距離aを、375mmから500mmの間で段階的に変化させた距離となるように配置する。
図11のシース反射P波計測によれば、シースかぶり厚dsが浅い場合、シース反射P波の上に表面P波、表面S波、及び直接波(DI波)が混入する。
さらに、コンクリート表面4aの位置によっては、表層に配置される鉄筋の間隔が密となる場合があり、鉄筋経路波、及び鉄筋反射波がシース反射P波の上に直接に混入し、充填シースを空シースとする誤分析が多発する。この問題への対処のために、図12及び図13(b)のシース反射S波計測を準備している。
中心間距離aを大きくすることで、面受信ユニット12で受信する表面P波、表面S波の振幅が減少する現象を利用し、かつ計測対象シースのグラウト充填状態を示す情報を持つ図12(a)のシース反射S波、図12(b)の直接波(DI波)、図12(c)のシース自励振動波の混合波を用いる分析を準備している。
なお、計測分析オペレータの判断で、反射P波計測とするか、反射S波計測とするか決めている。この判断は、RCレーダ計測で得る、または他の手段で得るシースかぶり厚dsを用いて、シースかぶり厚dsが150mm以上の場合、中心間距離aを110mm~200mmとする反射P波計測とし、シースかぶり厚dsが150mmより浅い場合、中心間距離を375mmまたは500mm、あるいは375mmから500mmの間の距離とする反射S波計測としている。
また、計測分析は、図11及び図12に示す個々の受信波を用いる単一点計測と、図13に示す多点計測(測点i=1~nw)のいずれかとしている。図13の計測は、測点i=1~nw個々の受信波に生ずる予期し得ない探査妨害波が除去される測点i=1~nwの受信波の加算平均波(i=nw+1)も分析で用いる対処である。
<閾値を用いた反射S波自動化分析>
閾値を用いた反射S波自動化分析は、図12に示すように、発信探触子と受信探触子との中心間距離aを500mmまたは375mmとする多点計測、または単一点計測、あるいは中心間距離aを500mmから375mmの間で順次変更する単一点計測で得る受信波を閾値処理で変換し、シースかぶり厚dsが150mm未満における計測対象シースのグラウト充填状態を探索する方法である。
受信波より抽出する分析用時系列は、シース反射S波、及び直接波(DI波)と呼ばれるコンクリート表面4aを浅く潜って伝播する波、並びに発信探触子が発するP波、及び直接波(DI波)により励起されるシース自動励起S波等の混合波(以降、反射S波と呼ぶ)である。
この反射S波には、分析を阻害する5つの問題点が存在する。まず、この5つの問題点と、その対処法について説明する。
まず、1つ目の問題点(以下、問題点(1)とする)として、レーダ計測による計測対象シースのかぶり厚であるレーダ計測かぶり厚ds|RC、及びコンクリート縦波音速Vの誤った設定値により、グラウト充填状態を誤判定することである。例えば、レーダ計測かぶり厚ds|RCは、コンクリート誘電率βuの誤設定値によって、実値と異なる値となることが多い。
さらに、コンクリート縦波音速Vは、計測対象シースの直上で受信波を得る場所と異なる場所(箱桁であれば、近くの隔壁等)で計測せざるを得ない。この2つの場所は、コンクリート打設日時が異なることにより、水セメント比等の打設条件の違いを否定できず、このコンクリート縦波音速Vが計測対象位置のそれと相違することがある。
このため、上記のレーダ計測かぶり厚ds|RC、及び上記のコンクリート縦波音速Vを用いてグラウト充填状態を分析判定した場合、誤判定の発生率が大きくなる。
この問題点(1)への対応として、反射S波閾値分析の適用範囲は、計測対象シースのシースかぶり厚dsを150mm未満としている。同一橋梁で、シースかぶり厚dsが、測点i=1~nw(本実施例では、nw=4)で大きく変化する計測対象シースも多数ある。さらに、シースかぶり厚dsが浅いため、削孔が容易となる。
そこで、任意の計測対象シースにおいて、削孔で確認したかぶり厚である削孔かぶり厚ds|と、削孔位置と略同じ位置で計測したレーダ計測かぶり厚ds|RCとを対比することで、オペレータによりコンクリート誘電率βuを特定できる。
そして、このコンクリート誘電率βuをRCレーダ計測による計測対象シースかぶり厚の計測に用いることによって、より正確なレーダ計測かぶり厚ds|RCを求めることができる。
これより、超音波計測分析に先立って予め設定されているコンクリート縦波音速Vを用いて、次の式1でレーダ計測でのシース反射P波起生時刻t=tRCを求める。
Figure 2022075582000013
さらに、計測対象シース直上のコンクリート表面4aにおけるRCレーダ計測位置での中心間距離aを110mm前後とする反射P波計測の受信波(図14(a)参照)のスペクトルに中心振動数f=80kHzとするF3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列(図14(b)参照)で、シース反射P波起生時刻tを求める。
その後、シース反射P波起生時刻tを基準時刻とする時刻フィルタTGC4(t)を、上述のF3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列に乗じて、オペレータの操作によってシース反射P波起生時刻tを微小量変動させる過程の中で、シース反射P波起生時刻tを正確に取得している。
なお、F3(f)フィルタ関数、及び時刻フィルタTGC4(t)の詳細は後述する。
そして、式1でシースかぶり厚dsを上述のレーダ計測かぶり厚ds|RCとし、上述のシース反射P波起生時刻tを適用して式1を展開することで、正確なコンクリート縦波音速Vを取得する。
これにより、中心間距離aを500mmまたは375mmとする、あるいは中心間距離aを375mmから500mmの間で段階的に変化させた距離とする超音波受信波を用いる反射S波閾値分析では、計測対象シースごとに適切なコンクリート誘電率βuを用いて求めたレーダ計測かぶり厚ds|RCを分析用1次かぶり厚ds(1)として、これに対応する分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を、次の式2で求めている。
なお、分析用1次かぶり厚ds(1)及び分析用1次反射S波起生時刻ts(1)の下付き文字(1)は、括弧内の数字を○で囲った囲み文字を表し、後述する図中及び数式中において囲み文字で図示している。以下、同様の記載は同じとしている。
Figure 2022075582000014
さらに、シース反射S波には、図12(b)に示す直接波(DI波)が混入することより、次の式3で分析用2次かぶり厚ds(2)を定義して、分析判定に用いている。
Figure 2022075582000015
なお、増分量Δdsは、計測対象シースの外径φによって決まる係数をβとして、Δds=β×φで求めている。本実施例では、計測対象シースの外径φ=38mm~80mmの場合、係数β=0.6としている。
分析用2次かぶり厚ds(2)に対応する分析用2次反射S波起生時刻ts(2)は、式2の分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて算定している。
さらに、レーダ計測かぶり厚ds|RCは、図15の上段に示すように、例えば、nw=4とする多点計測の場合、中心間距離aを500mmと想定し、測点i=1(図中のNo.1)における中間位置で計測したレーダ計測かぶり厚をds|RC左とし、測点i=nw=4(図中のNo.4)における中間位置で計測したレーダ計測かぶり厚をds|RC右として、次の式4で求めている。
Figure 2022075582000016
一方、単一点計測の場合、図15の下段に示すように、発信探触子と受信探触子との中間位置で計測したレーダ計測かぶり厚をds|RCとしている(以下、レーダ計測かぶり厚ds|RCとする)。
また、2つ目の問題点(以下、問題点(2)とする)として、反射S波分析で用いる分析用切り出し波を、図16(a)のシース反射S波起生時刻tとする狭時間帯域時系列とすると、図12(a)に示す表面P波、表面S波が分析用切り出し波の起生時刻前方に生じ、かつ分析用切り出し波の起生時刻後方に、振幅の大きい2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波(以降、探査妨害波と呼ぶ)が生じることで、計測対象シースのグラウト充填状態を誤判定するおそれがある。
このような問題に対応するため、分析用切り出し波を、図16(b)のシース反射S波起生時刻tとする極狭帯域時系列としている。これにより、探査妨害波が、分析用切り出し波のなかに生じる状態を縮小し、分析判定結果への悪影響を抑えている。
また、3つ目の問題点(以下、問題点(3)とする)として、グラウト充填状態が、計測対象シースの長手方向で変化する場合がある。これにより、桁(梁)端部に埋設された計測対象シースにおいて、多点計測における測点i=1~nwのいずれかが偶然、空隙と充填部分との境界位置となることがある。このため、測点iごとにグラウト充填状態を分析判定可能にする必要がある。
また、4つ目の問題点(以下、問題点(4)とする)として、シースかぶり厚が、計測対象シースの長手方向で大きく変化する事例が多数ある。桁(梁)端部、及び箱桁端部では、このようなシースかぶり厚の変化が顕著である。このため、シースかぶり厚の変化を確認し、さらにシースかぶり厚の変化を考慮した分析判定で、グラウト充填状態の誤判定を回避する必要がある。
また、5つ目の問題点(以下、問題点(5)とする)として、コンクリート縦波音速Vとコンクリート横波音速Vとの比(V/V)が0.62程度となるため、シース反射S波の起生時刻帯域が、シース反射Pの場合に比べて時刻後方へ移動する。
このため、2段目シース、版厚、版厚底部コーナーからの反射波が、シース反射S波に直接的に混入する状態が生じることで、計測対象シースのグラウト充填状態が「完全充填」であっても、「未充填」または「充填不足」と誤判定する。このような現象を回避する必要がある。
図17は、このような状況を示す一例である。中心間距離a=500mmの計測で得た計測対象シース(計測対象シースの外径φ=38mm、レーダ計測かぶり厚ds|RC=86mm、2段目シースのかぶり厚d2s=387mm、版厚dw=555mm、コンクリート縦波音速V=4550m/秒)の図16(b)に示すような分析用極狭帯域時系列である。
図17は、レーダ計測かぶり厚ds|RCを分析用1次かぶり厚ds(1)として、式3に基づいて分析用2次かぶり厚ds(2)を求め、式2の分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に、分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に置き換えて、分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を求め、これを起生時刻t(=ts(2))として示している。
分析用2次反射S波起生時刻ts(2)から生じるシース反射S波に、2段目シースからの反射P波(起生時刻td2s)が探査妨害波として混入している。このため、本計測対象シースは、グラウト充填状態が「完全充填」であっても、「未充填」または「充填不足」と誤判定される。
探査妨害波として、2段目シースからの反射波を取り上げたが、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が妨害波となる計測事例もある。これは、本計測事例の2段目シースのかぶり厚d2s=385mmと略同じ値となる版厚dw、及びコンクリート表面4aと版厚底部コーナーとの間隔である路程長dwc(図18参照)が、橋梁によっては多数存在するためである。
これより、多点計測のみならず、単一点計測、または中心間距離aを順次変更する単一点計測ごとに、誤分析を回避する適切な発信探触子と受信探触子との中心間距離aを選定する方法を準備している。
1つ目の中心間距離aの選定方法は、後述する図20の第1の状態判定工程のために用いられる方法であり、多点計測または単一点計測での受信波収録の際、2段目シースのかぶり厚d2s、または版厚dw、あるいは版厚底部コーナーの路程長dwcと、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせに対応する中心間距離aを設定するが、この中心間距離aが適正か否かを、後述する「反射S波計測での適切な探触子間隔」で作成される表1の中心間距離選定表を用いて自動的に判定する。
そして、不適切であれば中心間距離aを500mmから375mmへ、または375mmから500mmへ変更を促す案内メッセージを分析画面に表示して、オペレータの操作によって、変更した中心間距離aでの受信波を再収録することで、グラウト充填状態を分析判定する方法である。
また、2つ目の中心間距離aの選定方法は、後述する図20の第2の状態判定工程のために用いられる方法であり、建設後40年から50年経過したような橋梁では、建設時の構造図面がなく、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcの値が不明(未知)となることがある。
この問題への対応のため、図15の下段に示した中心間距離a=500mmでの単一点計測によって取得した受信波、及び中心間距離375mmでの単一点計測によって取得した受信波に基づいて、それぞれグラウト充填状態を分析する。そして、中心間距離a=500mm、及び375mmの双方の分析結果を、後述する表2の単一点計測判定表に照らし合わせることで適切な中心間距離aを特定し、正確なグラウト充填状態を判定する方法である。
また、3つ目の中心間距離aの選定方法は、後述する図20の第3の状態判定工程のために用いられる方法であり、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの値が既知または未知にかかわらず、中心間距離a=500mmまたは375mmを初期値として、単一点計測による受信波G(t)|i=1を収録したあと、例えば、中心間距離aを順次変更する単一点計測での中心間距離aを500mm(j=1)から460mm(j=2)、420mm(j=3)、375mm(j=4)と段階的に小さくするごとに、あるいは中心間距離aを375mm(j=1)から420mm(j=2)、460mm(j=3)、500mm(j=4)と段階的に大きくするごとに、単一点計測による受信波の収録を繰り返し、それぞれの中心間距離aで単一点計測による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを求めた後、次の3つの分析法(1),(2),(3)のいずれかで、適切な中心間距離aを特定し、正確なグラウト充填状態を判定する方法である。
1つ目の分析法(1)は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの値が既知または未知にかかわらず、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvの形状のj=1~nv毎の変化の推移を、オペレータが比較検討し、適切な中心間距離aを特定し正確なグラウト充填状態を判定する。
2つ目の分析法(2)は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの値が未知の場合、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvのj=1、j=nvでの2つのグラウト充填状態を、後述する表2の単一点計測判定表に適用し、適切な中心間距離aを特定して、対応するグラウト充填状態を正解と判定する。
3つ目の分析法(3)は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの値が既知の場合、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvのj=1、j=nvでの2つのグラウト充填状態を求めた後、計測対象シースの分析用2次かぶり厚ds(2)と、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcとを、後述する表1の中心間距離選定表に適用し、適切な中心間距離a(j=1に対応する中心間距離aまたはj=nvに対応する中心間距離a)を特定して、対応するグラウト充填状態を正解と判定する。
次に、発信探触子と受信探触子との中心間距離a=500mmまたは375mmの適切な選定が如何に重要であるかを説明する。
PC橋梁によっては、計測対象シースのかぶり厚と、2段目シースのかぶり厚、及び版厚などとの組み合わせが、略同一となる場合がある。この場合、中心間距離a=500mmまたは375mmのいずれかの計測分析で、シース反射S波の上に2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が混入するとき「完全充填」である計測対象シースの殆どが、「未充填」または「充填不足」となる極端な誤判定を起こすことが度々ある。
この対処をオペレータの技術的判断のみに頼ると、多くの検討時間を要するばかりでなく、誤判定を回避できないことがある。さらに、計測対象橋梁のコンクリート断面形状によっては、予期しない探査妨害波を生じさせる要因からの反射P波、反射M波、あるいは反射M波のいずれかが、計測対象シースのシース反射S波に混入することで、最悪の場合、同一橋梁における計測対象シースで誤判定率が100%近くになる。
さらに、詳述すると、図18は、計測時における計測対象シースの長手直交方向に沿った断面図を示し、計測対象シースの直上の長手方向コンクリート表面に、一対の発信探触子、及び受信探触子が中心間距離a=500mmまたは375mmで配置されている。
図18(a)は、計測対象シースの直下に2段目シースがある状態を示している。
図18(b)は、2段目シースが、図18(a)の2段目シースに比べて略水平方向に位置ズレしている状態を示している。
図18(c)は、2段目シースが、図18(b)の2段目シースに比べて略水平方向に大きく位置ズレした状態を示している。さらに、図18(c)は、路程長dwcとなる版厚底部コーナーが、2段目シースよりも下方、かつ水平方向に位置ズレした位置に存在している状態を示している。
なお、図18(a),(b),(c)中において、計測対象シースからコンクリート表面へ向かう矢印が計測対象シースからの反射波を示し、2段目シースからコンクリート表面へ向かう矢印が2段目シースからの反射波を示し、版厚底部からコンクリート表面へ向かう矢印が版厚からの反射波を示し、版厚底部コーナーからコンクリート表面へ向かう矢印が版厚底部コーナーからの反射波を示している。
図18(a)の計測の場合、2段目シース、及び版厚からの反射波が計測対象シースによって遮断され、「完全充填」または「充填不足」あるいは「未充填」の計測対象シースのグラウト充填状態を、正しく判定する確率が高くなる。さらに、計測対象シースの外径φが大きくなるほど、計測対象シースにより2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が遮断され易くなるため、計測対象シース(完全充填)のグラウト充填状態が、正しく判定されやすくなる。
一方、図18(b)、及び図18(c)の計測の場合、中心間距離a=500mmまたは375mmのいずれかの計測で、計測対象シースのシース反射S波に探査妨害波となる2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射P波、または反射M波、あるいは反射M波などが混入することで、「完全充填」の計測対象シースのグラウト充填状態を、「未充填」または「充填不足」と誤判定する。
このように、同一PC橋梁における計測対象シースのグラウト充填状態の探査では、計測対象シースのかぶり厚と、2段目シースのかぶり厚または版厚との関係がそれぞれ略同一となることより、中心間距離aの選定が不適切な場合、完全充填の計測対象シースを「未充填」または「充填不足」と誤判定する確率が極めて高くなる。
次に、多点計測、及び単一点計測において、上述の問題点(1)から問題点(5)に対処する分析の流れを、図19及び図20を用いて説明する。
なお、オペレータ及び計測作業者は、複数の計測対象シースのうち、長手方向の任意の位置で削孔し易い計測対象シースを選定し、概略値のコンクリート誘電率βuを設定したRCレーダ計測器を用いて、計測対象シースのシースかぶり厚を、予め計測しているものとする。
さらに、オペレータ及び計測作業者は、RCレーダ計測の測点と略同位置において、計測対象シースのシースかぶり厚を削孔によって確認しているものとする。
詳述すると、まず、オペレータの操作によって、解析機器13の制御部136は、解析プログラムを実行して、図19のステップS101に移行する。
図19の準備工程(ステップS101)は、上述の問題点(1)~(5)に対処するために、正確なコンクリート縦波音速Vを求める工程である。
図19の準備工程(ステップS101)において、解析機器13の制御部136は、多点計測、単一点計測、または中心間距離aを順次変更する単一点計測のいずれかを選択させる画面を表示部135に表示させて、オペレータによる計測方法の選択入力を受け付ける。この際、オペレータは、表示部135に表示された画面に従って、多点計測、単一点計測、または中心間距離aを順次変更する単一点計測のいずれかを選択する。
さらに、解析機器13の制御部136は、概略値のコンクリート誘電率βuで予めRCレーダ計測したシースかぶり厚、及びRCレーダ計測の位置での削孔によって計測したシースかぶり厚の入力を受け付ける画面を表示部135に表示させる。
概略値のコンクリート誘電率βuで予めRCレーダ計測したシースかぶり厚がオペレータによって入力されると、制御部136は、概略値のコンクリート誘電率βuで予め計測したシースかぶり厚を、レーダ計測かぶり厚ds|RCとして記憶部133に記憶する。
なお、概略値のコンクリート誘電率βuで計測したシースかぶり厚を、解析機器13に電気的に接続されたRCレーダ計測器から直接取得してもよい。
さらに、RCレーダ計測の位置での削孔によって計測したシースかぶり厚がオペレータによって入力されると、制御部136は、削孔によって計測したシースかぶり厚を、削孔かぶり厚ds|として記憶部133に記憶する。
その後、制御部136は、レーダ計測かぶり厚ds|RCと削孔かぶり厚ds|とが等しくなるように、オペレータの操作によってコンクリート誘電率βuを修正して、これを以降の計測に用いる修正したコンクリート誘電率βuとして記憶するとともに、修正したコンクリート誘電率βuでRCレーダ計測したシースかぶり厚の入力を受け付ける画面を表示部135に表示させる。
ここで、オペレータは、上述したRCレーダ計測の測点とは異なる計測対象シースの測点において、修正したコンクリート誘電率βuが設定されたRCレーダ計測器を用いて、正確な計測対象シースのシースかぶり厚を計測する。
そして、修正したコンクリート誘電率βuでRCレーダ計測したシースかぶり厚がオペレータによって入力されると、制御部136は、修正したコンクリート誘電率βuで計測した計測対象シースのシースかぶり厚を、以降の処理で用いるレーダ計測かぶり厚ds|RCとして記憶部133に記憶する。
なお、修正したコンクリート誘電率βuで計測した計測対象シースのシースかぶり厚を、解析機器13に電気的に接続されたRCレーダ計測器から直接取得してもよい。
その後、オペレータの指示で計測作業者は、上述の計測対象シースの直上のコンクリート表面に、発信探触子及び受信探触子を中心間距離が110mmから120mmの間となるように配置する。
そして、超音波P波計測を開始するオペレータの操作を受付けると、制御部136は、発信探触子からコンクリート内部へ向けて超音波を発信させるとともに、発信探触子が超音波を発信するたびに、コンクリート内部を伝わった超音波を、受信探触子を介して収録し、これら時系列の加算平均波を受信波として取得する。
さらに、制御部136は、上述の受信波をFFT変換して得たスペクトルに、図14(a)に示す中心振動数をfとするF3(f)フィルタ関数を乗じて得るスペクトルに対応する時系列(図14(b)の右図の細実線)を求める。その後、制御部136は、シース反射P波起生の始点時刻を基準時刻とする時刻フィルタTGC4(t)を、F3(f)フィルタ関数を乗じて得た上述の時系列に乗じて、シース反射P波起生時刻tを求めている。
この際、制御部136は、オペレータの操作を受付けて、時刻フィルタTGC4(t)の基準時刻を上述のシース反射P波起生時刻tに移動することで、シース反射P波起生時刻tをより正確に求めている。
なお、F3(f)フィルタ関数は、図14(a)に示すように、振動数f=0.0から(f-Δf)の間が「0.0」、振動数f=(f-Δf)からfの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+Δf)の間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+Δf)以上で「0.0」となる関数である。
また、図14(a)中において、中心振動数f=80kHz、その幅を、中心振動数fを中心として2×Δfとしている。さらに、Δfは、40kHzとしている。
また、時刻フィルタTGC4(t)は、シース反射P波起生時刻tを基準時刻とした時、Δtを0.0~(t-50μ秒)の間でオペレータが決定する値とし、時刻t=0.0からt-Δtの間が「0.0」となり、時刻t=t-Δtからtの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、時刻t=tからt+Δtの間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、時刻t=t+Δt以上の時刻が「0.0」となる関数である。
正確なシース反射P波起生時刻tを取得すると、制御部136は、式1のシースかぶり厚dsを、修正したコンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測かぶり厚ds|RCに置き換えて、さらに上述の正確なシース反射P波起生時刻tを式1に適用して展開し、PC橋梁の計測対象位置付近での正確なコンクリート縦波音速Vを取得する。
なお、正確なコンクリート縦波音速Vを求めるための測点は、配筋の密なる位置、コンクリート表面の凸凹、及びコンクリート表面の微細なひび割れのある位置を避けて行い、かつシースかぶり厚が浅い位置とする。この対処は、コンクリート縦波音速Vの特定に必要なシース反射P波起生時刻t、及びRCレーダ計測によるレーダ計測かぶり厚ds|RCの特定を容易にするためである。
次に、図19のステップ102に移行して、図15の上段に示すような多点計測の場合(ステップS102:Yes)、多点計測における分析用1次かぶり厚ds(1)、及び分析用2次かぶり厚ds(2)を取得する第1の収録工程(ステップS103)へ移行する。
詳述すると、第1の収録工程(ステップS103)において、制御部136は、RCレーダ計測結果の入力操作を受け付けて、図15の超音波計測での中心間距離をa=500mmと想定して測点i=1におけるレーダ計測かぶり厚ds|RC左と、測点=nwにおけるレーダ計測かぶり厚ds|RC右を取得する。
その後、制御部136は、式4を用いて算出したレーダ計測かぶり厚ds|RCを、分析用1次かぶり厚ds(1)として取得する。
さらに、制御部136は、分析用1次かぶり厚ds(1)を式2に適用して、分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求めるとともに、分析用1次かぶり厚ds(1)を式3に適用して、分析用2次かぶり厚ds(2)を算出し、第1の入力受付工程(ステップS105)へ移行する。
なお、シース反射S波は、図12に示すように、直接波(DI波)と呼ばれるコンクリート内を円弧状に伝わる波、及びシース自励振動波が、シース反射S波に混入した混合波となる。この混合波を超音波計測におけるシース反射S波と定義している。これより、計測対象シースの仮想かぶり厚を分析用2次かぶり厚ds(2)として式3で求め、第1の入力受付工程(ステップS105)へ移行する。
図19のステップ102において、図15の下段に示すような単一点計測(中心間距離aを順次変更する単一点計測を含む)の場合(ステップS102:No)、単一点計測における分析用1次かぶり厚ds(1)、及び分析用2次かぶり厚ds(2)を取得する第2の収録工程(ステップS104)へ移行する。
詳述すると、第2の収録工程(ステップS104)において、制御部136は、RCレーダ計測結果の入力操作を受け付けて、図15の下段に示すNo.1の測点、またはNo.1´の測点でのi=1におけるレーダ計測かぶり厚ds|RCを分析用1次かぶり厚ds(1)として取得する。
さらに、制御部136は、分析用1次かぶり厚ds(1)を式2に適用して、分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求めるとともに、分析用1次かぶり厚ds(1)を式3に適用して、分析用2次かぶり厚ds(2)を算出し、第1の入力受付工程(ステップS105)へ移行する。
なお、第1の入力受付工程は、以降の分析の高度化に資するために行われる。
第1の入力受付工程(ステップS105)を開始すると、制御部136は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの入力操作を受け付け可能にする。オペレータの入力操作によって、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが入力されると、制御部136は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcを記憶部133に記憶して、第2の入力受付工程(ステップS106)へ移行する。
ただし、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知のため、オペレータがこれらの値の入力をスキップし、かつ準備工程(ステップS101)で多点計測が設定されている場合、制御部136は、多点計測を許可せず、単一点計測への変更を促す案内画面を自動的に表示部135に表示したのち、第2の収録工程(ステップS104)へ処理を戻し、分析用1次反射S波起生時刻ts(1)、分析用1次かぶり厚ds(1)、及び分析用2次かぶり厚ds(2)を求め直したあと、第1の入力受付工程(ステップS105)を経て、第2の入力受付工程(ステップS106)へ移行する。
次に、第2の入力受付工程(ステップS106)において、制御部136は、オペレータによる中心間距離aの入力操作を受け付け可能にする。
具体的には、準備工程(ステップS101)で多点計測または単一点計測が選択され、かつ第1の入力受付工程で2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが設定されている場合、制御部136は、後述する表1の中心間距離選定表またはオペレータの技術的経験的判断に基づく中心間距離aの初期値をオペレータに入力させる。
この際、オペレータは、表1の中心間距離選定表に、計測対象シースの分析用2次かぶり厚ds(2)と、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcとを適用して得る適切な中心間距離a(500mmまたは375mmのいずれか一方)、あるいは技術的経験的判断に基づいて決定した中心間距離aを初期値として入力する。
あるいは、準備工程(ステップS101)で単一点計測が選択され、かつ第1の入力受付工程で2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未設定の場合、制御部136は、後述する表2の単一点計測判定表に登録された中心間距離a(500mmまたは375mmのいずれか一方)を、中心間距離aの初期値としてオペレータに選択入力させる。
この際、オペレータは、技術的経験的判断に基づいて決定した中心間距離aを初期値として入力する。
もしくは、準備工程(ステップS101)で中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されている場合、制御部136は、500mmまたは375mmのいずれか一方を、中心間距離aの初期値としてオペレータに選択入力させる。
この際、オペレータは、500mmまたは375mmのいずれか一方を、技術的経験的判断に基づいて決定する。
そして、制御部136は、オペレータの入力操作によって中心間距離aが入力されると、入力された中心間距離aを初期値として記憶するとともに表示部135に表示して、第3の収録工程(ステップS107)へ移行する。
なお、計測作業者は、発信探触子と受信探触子とを、オペレータから指示された中心間距離aを隔てて計測対象シース直上のコンクリート表面4aに配置する。
Figure 2022075582000017
第3の収録工程(ステップS107)に移行してオペレータの操作を受け付けると、制御部136は、第2の入力受付工程で設定された中心間距離aで配置された発信探触子からコンクリート内部へ向けて超音波を発信させる。この際、制御部136は、5mm秒ごとに500回から700回連続発信させ、超音波の発信のたびに、コンクリート内部を伝わった超音波を、受信探触子を介して取得する。
そして、制御部136は、受信探触子で取得した収録波を加算平均して各測点iごとに受信波G(t)|i=1~nwを求めるとともに、受信波G(t)|i=1~nwをFFT変換して、対応するスペクトルF(f)|i=1~nwを求める。
さらに、制御部136は、式2の分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を上述の第1の収録工程または第2の収録工程で求めた分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて、中心間距離aでの分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を算出し、第1の分析工程(ステップS108)へ移行する。
なお、計測に用いる中心間距離aが変化すると、第1の収録工程または第2の収録工程で特定した分析用2次かぶり厚ds(2)に対応する分析用2次反射S波起生時刻ts(2)も変化する。このため、第3の収録工程(ステップS107)では、中心間距離aの変更を伴う計測を行うたびに、以降の工程で用いる分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を算出し直している。
第1の分析工程(ステップS108)において、制御部136は、nw≧2とする多点計測、またはnw=1とする単一点計測あるいは中心間距離を順次変更する単一点計測の受信波G(t)|i=1~nwと、これらの加算平均波G(t)|i=nw+1との並びである受信波群G(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、A(f)フィルタ関数を乗じて、図21に示す分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成する。
さらに、制御部136は、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1をFFT逆変換して、分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1を作成し、第2の分析工程(ステップS109)へ移行する。
ここで、A(f)フィルタ関数は、振動数f=-10kHzからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fからfが「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=fからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+30kHz)が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+30kHz)以上で「0.0」となる関数である。
なお、振動数fをオペレータの操作によって設定される50kHz-Δf<f<50kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、振動数fを(f-10)/2kHzとし、振動数fを80kHzとして、本実施例では、振動数fを50kHz、振動数fを20kHzとしている。
第2の分析工程(ステップS109)に移行すると、制御部136は、分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1に、基準時刻t(図16参照)とする時刻フィルタTGC1(t)、及びTGC2(t)を乗じて、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1を作成する。
なお、図16では基準時刻tをtと図示しているが、上述の問題点(2)に対処するために、多数の分析事例より、時刻フィルタTGC1(t)の基準時刻tをt=ts(2)+Δth2(ただし、Δth2=16μ秒)とし、時刻フィルタTGC2(t)の基準時刻tをt=ts(2)としている。
また、時刻フィルタTGC1(t)は、時刻t=0が「0.0」となり、時刻tが「1.0」となるsin形状増加線分、時刻t=t以降が「1.0」となるTGCA(t)関数を用いて、(TGCA(t))neで算出される(ただし、ne=30)。
また、時刻フィルタTGC2(t)は、時刻t=0.0から時刻t=tまでが「1.0」、時刻t=tで「1.0」となり時刻t=400μ秒で「0.0」となるsin形状減少線分、時刻t=400μ秒以降で「0.0」となるTGCB(t)関数を用いて、(TGCB(t))nfで算出される(ただし、nf=100)。
なお、Δth2、ne、nf値は、今後の多数の計測分析で、後述する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1のスペクトル形状がグラウト充填状態の未充填または完全充填を明確に示す最適値が得られれば変更される。
さらに、第2の分析工程(ステップS109)において、制御部136は、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1をFFT変換して、対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1を図22(a)のように作成し、第3の分析工程(ステップS109)へ移行する。
第3の分析工程(ステップS109)に移行すると、制御部136は、上述した分析用切り出し波のスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1ごとに振動数fよりも低振動数側の最大スペクトル値を「1.0」とし、振動数fよりも高振動数側の最大スペクトル値が閾値ασ(=0.5)となるように形状変換して、図22(b)に示すようなスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を作成する。なお、このようなスペクトル形状の変換処理を、以降、閾値処理と呼ぶ。
その後、制御部136は、閾値処理で得たスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1をFFT逆変換して分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得し、さらに、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を、i=1~nw+1ごとに、最大振幅を「1.0」とする相対値に形状変換して、第4の分析工程へ移行する。
なお、閾値ασの値は、今後の多数のシース管の分析検討で、0.5~0.75の中より、後述する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncのスペクトル形状がグラウト充填状態をより適切に明示する値を特定した時は、閾値ασをこの値に変更する。
第4の分析工程(ステップS109)に移行すると、Δts1及びΔts2を自動的またはオペレータによって設定される値として、制御部136は、第3の分析工程で得た分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1に、台形窓関数A(図17参照)を、時刻t(=ts(2)-Δts1)から時刻t(=ts(2)+Δts2)まで、Δt間隔で移動させるたびに乗じて切り出した(以降、時刻掃引処理と呼ぶ)時系列に対応するスペクトルにおいて、i=1~nw+1ごとに、振動数f以下に生じる最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換した際、時刻ごとに振動数f以上に生じる最大スペクトル値を時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)とし、SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を作成し、記憶部133に記憶する。
なお、上述した台形窓関数Aは、上記の時刻tの位置で示せば、図17に示すように、時刻t=0.0からt-5の間を「0.0」とし、時刻t=t-5で「0.0」となり、時刻tで「1.0」となるsin形状増加関数、時刻t=tからt+tが「1.0」、時刻t=t+tで「1.0」となり、時刻t=t+t+5で「0.0」となるsin形状減少関数、時刻t=t+t+5以降で「0.0」となる関数である。
ただし、多くの分析事例より、Δts1=20μ秒、Δts2=57μ秒、時刻t=16μ秒、Δt=2μ秒としている。さらに、Δts1、及びΔts2は、後述する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncの時刻に伴う変化の様相を確認し易いように、オペレータによる変更を可能にしている。
例えば、後述する分析例1では、時刻t=ts(2)-Δts1=181.4μ秒とし、Δts1=ts(2)-t=200.9-181.4=19.5μ秒であり、時刻t=ts(2)+Δts2=258.2μ秒として、Δts(2)=t-ts(2)=258.2-200.9=57.3μ秒としている。
さらに、第4の分析工程(ステップS109)において、制御部136は、掃引処理の時刻ごとに振動数f以下、及び振動数f以上に生じる最大スペクトル値を比較し、大きい方の最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換して得たスペクトルをnc乗して時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を作成して記憶部133に記憶したのち、ステップS110へ移行する。
なお、指数であるncは、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncの形状が、グラウト充填状態の「未充填」、「充填不足」、及び「完全充填」を明確に示すようにする係数であり、nc=2としている。
また、上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を表示部135に表示する時、グラウト充填状態の特定状況を明確にするために、制御部136は、分析用2次反射S波起生時刻ts(2)、及びこれに対応する分析用2次かぶり厚ds(2)を示すカーソルを、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1とともに表示可能にしている。
さらに、制御部136は、2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波(探査妨害波)の起生時刻を示すカーソルと、時刻t=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒とする)を示す空充判定カーソルと、閾値ασを用いて設定された空充判定線分α σ(=ασ+0.06)とを、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1とともに表示している。ただし、空充判定線分α σは、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1では非表示となる。
さらに、2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波(探査妨害波)の起生時刻を示すカーソルは、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の場合、非表示となる。この2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波(探査妨害波)の起生時刻を示すカーソルは、それぞれ反射P波、反射M波、及び反射M波(図1(d)参照)となるが、その表示は、掃引時刻長さ(t~t)内に生じる反射波のみとなる。
加えて、関連する時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1(ただし、nc=2)をオペレータの操作で表示可能としている。
なお、α~は数式及び図中においてαの上に“~”を付された符号を表し、以下、同様の記載は同じとする。
また、第4の分析工程以降において、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(f,t)のFFTスペクトルは、MEM(最大エントロピー法)スペクトルに置き換えて表示している(以降MEMスペクトル表示と呼ぶ)。このMEMスペクトルは、数学分野では認知されているが、工学及び力学分野で一般的方法として用いられていない。しかしながら、台形窓関数Aで切り出される極端に短い時系列に対応するスペクトルなどではFFTスペクトルに比して極めて高精度となる。
図1(d)及び図18に示す2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射P波の起生時刻は、次の式5で求めている。
Figure 2022075582000018
2段目シース反射P波起生時刻td2sは、式5のtを2段目シース反射P波起生時刻td2sに、dsを2段目シースのかぶり厚d2sに置き換えて求めている。
以下、同様に、版厚反射P波起生時刻tdwは、式5のtを版厚反射P波起生時刻tdwに、dsを版厚dwに置き換えて求めている。
また、版厚底部コーナー反射P波起生時刻tdwcは、式5のtを版厚底部コーナー反射P波起生時刻tdwcに、dsを路程長dwcに置き換えて求めている。
また、2段目シース反射M波起生時刻tM1d2s、及び2段目シース反射M波起生時刻tM2d2sは、次の式6、及び式7のtを2段目シース反射P波起生時刻td2sに、tM1を2段目シース反射M波起生時刻tM1d2sに、tM2を2段目シース反射M波起生時刻tM2d2sに置き換えて求めている。
ここで、シース反射M波起生時刻tM1は、往路をたて波、復路をよこ波、または往路をよこ波、復路をたて波とするシース反射M波の起生時刻である。
さらに、シース反射M波起生時刻tM2は、往路、及び復路ともによこ波とするシース反射M波の起生時刻である。
Figure 2022075582000019
Figure 2022075582000020
以下同様に、版厚反射M波起生時刻tM1dw、及び版厚反射M波起生時刻tM2dwは、式6、及び式7のtを版厚反射P波起生時刻tdwに、tM1を版厚反射M波起生時刻tM1dwに、tM2を版厚反射M波起生時刻tM2dwに置き換えて求めている。
さらにまた、コーナー反射M波起生時刻tM1dwc、及びコーナー反射M波起生時刻tM2dwcは、式6、及び式7のtを版厚底部コーナー反射P波起生時刻tdwcに、tM1をコーナー反射M波起生時刻tM1dwcに、tM2をコーナー反射M波起生時刻tM2dwcに置き換えて求めている。
その後、制御部136は、第4の分析工程を終えて、図20のステップS110に移行する。
図20のステップS110において、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されているか否かを判定し、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されていない場合(ステップS110:No)、制御部136は、ステップS111へ移行して、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知の単一点計測か否かを判定する。
そして、制御部136は、ステップS111において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測でない場合(ステップS111:No)、後述するステップS112の処理を経て、第1の状態判定工程(ステップS113)へ移行し、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが既知の単一点計測または多点計測でのグラウト充填状態を判定する。
一方、ステップS111において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測の場合(ステップS111:Yes)、制御部136は、後述するステップS114の処理を経て、第2の状態判定工程(ステップS115)へ移行し、グラウト充填状態を判定する。
また、上述のステップS110において、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されている場合(ステップS110:Yes)、制御部136は、後述するステップS116及びステップS117の処理で時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncj=1~nvを作成した後、第3の状態判定工程(ステップS118)へ移行し、グラウト充填状態を判定する。
引き続き、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されていない場合(ステップS110:No)におけるステップS111以降の処理動作のうち、第1の状態判定工程に至る処理動作について詳述する。
まず、ステップS111において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測でない場合の制御部136の動作について詳述する。
2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測でない場合(ステップS111:No)、制御部136は、表1の中心間距離選定表に基づいて、中心間距離aが適切か否かを判定する(ステップS112)。
この際、制御部136は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcと、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせに対応する中心間距離aを表1の中心間距離選定表から抽出し、抽出した中心間距離aと、第2の入力受付工程で入力された中心間距離aとを比較する。
そして、制御部136は、抽出した中心間距離aと、第2の入力工程で入力された中心間距離aとが一致する場合、第2の入力受付工程で入力された中心間距離aを適切と判定し、不一致の場合、第2の入力受付工程で入力された中心間距離aを不適切と判定する。
ステップS112において、何らかの理由で第2の入力受付工程で入力された中心間距離aが不適切な場合(ステップS112:No)、制御部136は、表1の中心間距離選定表から抽出した中心間距離aでの再計測を促す案内メッセージ、及び第3の収録工程に処理を戻すボタンを、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1とともに表示部135に表示する。
その後、第3の収録工程に処理を戻すオペレータの操作を受けると、制御部136は、第3の収録工程(ステップS107)に処理を戻して、中心間距離aの初期値を、案内メッセージに表示した中心間距離a(表1の中心間距離選定表から抽出した中心間距離a)に設定変更する。
オペレータの操作によって設定変更した中心間距離aでの超音波計測が再度行われると、制御部136は、ステップS107からステップS109を経て、2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が、シース反射S波に混入しない受信波での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を求め直す。
その後、制御部136は、ステップS110:No、及びステップS111:Noを経て、ステップS112において、中心間距離aを適切と判定して(ステップS112:Yes)、第1の状態判定工程へ移行する。
なお、上述したステップS110~ステップS113に至る過程は、上述した1つ目の中心間距離aの選定方法に対応する流れである。
第1の状態判定工程(ステップS113)に移行すると、制御部136は、多点計測における測点i=1~nwごとの、または単一点計測における測点i=1での計測対象シースのグラウト充填状態を分析判定する。さらに、多点計測の場合、i=nw+1の加算平均波を用いたグラウト充填状態の分析判定も行う。
ここで、多点計測の場合、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1(WAVE加算)、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1(WAVE加算)は、上述の第4の分析工程において、次の式8で求められるWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1を用いて作成されている。
Figure 2022075582000021
しかしながら、上述の問題点(4)のシース長手方向でかぶり厚が変化し、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=1~nwの中に含まれるシース反射S波がi=1~nwの各々で位相ズレが生じることにより、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=1~nwに含まれるシース反射S波の振幅が縮小し、グラウト充填状態の誤分析が多出する。
そこでこの問題に対処するために、制御部136は、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1をFFT変換して、スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1を求め、次の式9でスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1を作成し、スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1の位相情報をスペクトルFC(2)(f)|i=nw+1の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1を作成する。
Figure 2022075582000022
その後、制御部136は、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を上述のSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた第4の分析工程(ステップS109)の処理を行い、SP加算の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を作成する。
さらに、制御部136は、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を上述のWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた第4の分析工程(ステップS109)の処理を行い、WAVE加算の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を作成する。
そして、制御部136は、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及び時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1(SP加算)を、SPtとして、次の式10のグラウト充填状態判定式に適用して、グラウト充填状態の判定結果を取得する。
なお、単一点計測の場合、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を、SPti=1として式10のグラウト充填状態判定式に適用して、グラウト充填状態の判定結果を取得する。
Figure 2022075582000023
多点計測の場合において、式10のグラウト充填状態判定式によって、i=1~nw+1の全てのSPtが、「未充填」、「充填不足」、あるいは「完全充填」と判定されるとき、この判定結果と上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1とを一緒に表示部135に自動表示する(例えば、後述の「閾値反射S波自動化分析例」の表3の分析例1を示す図26(b)参照)。
さらにこの際、制御部136は、SP加算及びWAVE加算の分析結果の違いをオペレータに確認させるために、SP加算及びWAVE加算双方の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1の比較表示(図26(a)、(b)参照)と、SP加算及びWAVE加算双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1のMEMスペクトル表示での比較表示(図27(b)及び図28参照)と、SP加算及びWAVE加算双方の空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~nw+1(図27参照)の比較表示とを、オペレータの操作を受け付けて表示部135に表示可能としている。
なお、WAVE加算平均波及びSP加算平均波の双方での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を比較可能なように表示部135に表示することは、オペレータが問題点(4)の有無を確認できるようにするためである。
また、単一点計測の場合において、式10のグラウト充填状態判定式によって、i=1のSPtが、「未充填」、「充填不足」、あるいは「完全充填」と判定されるとき、この判定結果と時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1とを一緒に表示部135に自動表示する。
さらにこの際、制御部136は、MEMスペクトル表示での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1と、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1とを、オペレータの操作を受け付けて表示部135に表示可能としている。
一方、多点計測の場合において、式10のグラウト充填状態判定式によって、問題点(3)の存在により測点i=n1~n2が「未充填または充填不足」、測点i=n1´~n2´が「完全充填」と判定された場合、制御部136は、i=nw+1の加算平均波の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1の作成をWAVE加算、及びSP加算ごとに以下のように変更し、第1の状態判定工程を進める。
制御部136は、測点i=n1~n2の加算平均波として、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を、次の式11で作成する。
Figure 2022075582000024
さらに、制御部136は、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)をFFT変換して、スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を求める。そして、制御部136は、次の式12でスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報をスペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を作成する。
Figure 2022075582000025
次に、制御部136は、測点i=n1´~n2´の加算平均波として、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を、次の式13で作成する。
Figure 2022075582000026
さらに、制御部136は、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)をFFT変換して、スペクトルFC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を求める。そして、制御部136は、次の式14でスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成し、スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報をスペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成する。
Figure 2022075582000027
その後、制御部136は、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する上述のSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた第4の分析工程(ステップS109)の処理を行い、SP加算での測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を求める。
さらに、制御部136は、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する上述のWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた第4の分析工程(ステップS109)の処理を行い、WAVE加算での測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を求める。
そして、制御部136は、測点i=n1~n2に対応する上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をそれぞれSPtとして、式10のグラウト充填状態判定式に適用し、i=n1~n2,nw+1ごとのグラウト充填状態を示す判定結果を得る。
さらに、n1=1、n2<nw(ただし、nw=4)となる時、またはn1>1、n2=nw(ただし、nw=4)となる時、制御部136は、測点i=n1´~n2´に対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をそれぞれSPtとして、式10のグラウト充填状態判定式に適用し、i=n1´~n2´,nw+1ごとのグラウト充填状態を示す判定結果を得る。
なお、制御部136は、i=n1~n2,nw+1の判定結果と、これに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを一緒に、そしてi=n1´~n2´,nw+1の判定結果と、これに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを一緒に表示部135に自動表示する。
さらに、WAVE加算とSP加算とによる分析結果の違いを確認させるために、制御部136は、WAVE加算及びSP加算双方の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1と、WAVE加算及びSP加算双方のMEMスペクトル表示での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1と、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻でのWAVE加算及びSP加算双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~nw+1とをオペレータの操作によって表示部135に表示可能とする。
なお、幾つかの分析閣下表示例を以降に示す。
ただし、問題点(4)の存在でWAVE加算による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1が誤りの形状となることが多出する。これより、i=n1~n2,nw+1におけるSP加算での判定結果と、i=n1~n2,nw+1での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを一緒に表示部135に自動表示している(例えば、後述の「閾値反射S波自動化分析例」の表3の分析例1を示す図26(b)参照)。
この際、制御部136は、i=n1~n2,nw+1におけるSP加算及びWAVE加算の双方の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1の比較表示(図26(a)、(b)参照)と、SP加算及びWAVE加算の双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1の比較表示(「誤」と付記された図27(b)、「正解」と付記された図28参照)とを、オペレータの操作を受け付けて表示部135に表示している。
そして、問題点(3)の存在をオペレータが明確に確認できるように、制御部136は、i=n1´~n2´,nw+1におけるSP加算での判定結果と、i=n1´~n2´,nw+1での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを一緒に表示部135に自動表示している(例えば、後述の「閾値反射S波自動化分析例」の表3の分析例3を示す図35(a)参照)。
この際、制御部136は、i=n1´~n2´,nw+1におけるSP加算及びWAVE加算の双方の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1の比較表示(図35(a)参照。ただし、WAVE加算の図示は省略)と、SP加算及びWAVE加算の双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1の比較表示(図36(b)参照。ただし、WAVE加算の図示は省略)と、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻でのi=n1~n2、nw+1におけるSP加算及びWAVE加算の双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~nw+1(図35(b)参照。ただし、WAVE加算の図示は省略)の比較表示とを、オペレータの操作を受け付けて表示部135に表示可能としている。
上記比較表示でオペレータが問題点(3)及び問題点(4)の有無を確認できるようにしている。
その後、制御部136は、第1の状態判定工程(ステップS113)を終えて全ての工程を終了する。
次に、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されていない場合(ステップS110:No)におけるステップS111以降の処理動作のうち、第2の状態判定工程に至る処理動作について詳述する。
図20のステップS111において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測の場合(ステップS111:Yes)、制御部136は、第2の入力受付工程で設定された中心間距離aが500mmの場合、他方の中心間距離aである375mmでの計測が完了しているか、あるいは第2の入力受付工程で設定された中心間距離aが375mmの場合、他方の中心間距離aである500mmでの計測が完了しているか否かを判定する(ステップS114)。
他方の中心間距離aでの計測が未実施の場合(ステップS114:No)、制御部136は、他方の中心間距離aでの追加の計測を促す案内メッセージ、及び第3の収録工程に処理を戻すボタンを、上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw(ただし、nw=1)とともに表示部135に表示する。
その後、第3の収録工程に処理を戻すオペレータの操作を受けると、制御部136は、第3の収録工程(ステップS107)に処理を戻して、中心間距離aの初期値を、案内メッセージに表示した中心間距離a(他方の中心間距離a)に設定変更する。
オペレータの操作によって、他方の中心間距離aでの超音波計測が行われると、制御部136は、ステップS107からステップS109を経て、他方の中心間距離aでの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1を追加取得する。
さらに、制御部136は、ステップS110:No、及びステップS111:Yesを経て、ステップS114において、他方の中心間距離aでの計測が完了したと判定して(ステップS114:Yes)、第2の状態判定工程へ移行する。
なお、上述したステップS110~ステップS115に至る過程は、上述した2つ目の中心間距離aの選定方法に対応する流れである。
第2の状態判定工程(ステップS115)に移行すると、制御部136は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測の場合における計測対象シースのグラウト充填状態を分析判定する。
詳述すると、制御部136は、まず中心間距離a=500mmでの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1に基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を求める。
さらに、制御部136は、中心間距離a=375mmでの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1に基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を求める。
その後、制御部136は、中心間距離a=500mm及び375mm双方の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPtとして、式10のグラウト充填状態判定式に適用して、中心間距離a=500mm、及び中心間距離a=375mmでのグラウト充填状態をそれぞれ判定する。
次に、制御部136は、表2の単一点計測判定表を参照して、中心間距離a=500mmでの判定結果と、中心間距離a=375mmでの判定結果との組み合わせに対応する適切な中心間距離aを表2の単一点計測判定表から選定する。
そして、制御部136は、表2の単一点計測判定表に基づいて選定した適切な中心間距離aでの判定結果を、計測対象シースにおけるグラウト充填状態の判定結果として採用するとともに、判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1とを一緒にして表示部135に自動表示する。
この際、制御部136は、オペレータの操作を受け付けて、中心間距離a=500mm,375mm双方の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、MEMスペクトル表示での双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1、及び空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での双方の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1を、比較可能とするために表示部135に表示可能としている。
その後、制御部136は、第2の状態判定工程(ステップS115)を終えて全ての工程を終了する。
Figure 2022075582000028
なお、中心間距離a=500mm及び375mmでのグラウト充填状態分析結果を、表2の単一点計測判定表に適用してグラウト充填状態を特定することは、多点計測でも可能だが、単一点計測での受信波を用いる分析に限定している理由について説明する。第2の状態判定工程は、オペレータの技術的判断に要する思考時間を大きく軽減できるが、多点計測の場合、計測対象シースごとに、中心間距離a=500mm及び375mmでの受信波G(t)|i=1~nwを収録する必要がある。
このため、多点計測の場合、単一点計測に比べて、検討対象測点数が極めて多くなることで、計測作業及び分析処理の効率化に問題を残す。このため、上述した比較分析は、単一点計測の場合に限定し、計測分析作業の効率化を図っている。
次に、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されている場合(ステップS110:Yes)におけるステップS116以降の処理動作、つまり第3の状態判定工程に至る処理動作について詳述する。
図20のステップS110において、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されている場合(ステップS110:Yes)、制御部136は、ステップS116において、表1の中心間距離選定表及び表2の単一点計測判定表に登録された中心間距離a500mm及び375mmと、中心間距離a=500mmと375mmとの間を段階的に補間する中心間距離aとを、カウント値j=1~nvに関連付けする。
一例として、中心間距離a=500mmと375mmとの間を段階的に補間する中心間距離を460mm及び420mmとした場合、制御部136は、カウント値j=1であればa=500mmに、カウント値j=2であればa=460mmに、カウント値j=3であればa=420mmに、カウント値j=4であればa=375mmになるように、カウント値j=1~nvと単一点計測における中心間距離aとを関連付けて設定する。
あるいは別の一例として、制御部136は、例えば、カウント値j=1であればa=375mmに、カウント値j=2であればa=420mmに、カウント値j=3であればa=460mmに、カウント値j=4であればa=500mmになるように、カウント値j=1~nvと単一点計測における中心間距離aとを関連付けて設定する。
その後、制御部136は、ステップS117へ移行して、カウント値j=1~nvに対応する中心間距離a(例えば中心間距離a=500mm、460mm、420mm、及び375mm)のうち、未計測の中心間距離aがないか否かを判定する。
未計測の中心間距離aがある場合(ステップS117:No)、制御部136は、未計測のカウント値jに対応する中心間距離aでの再計測を促す案内メッセージ、及び第3の収録工程に処理を戻すボタンを、表示部135に表示する。
その後、第3の収録工程に処理を戻すオペレータの操作を受けると、制御部136は、第3の収録工程(ステップS107)に処理を戻して、中心間距離aの初期値を、案内メッセージに表示した中心間距離a(未計測のカウント値jに対応する中心間距離a)に設定変更する。
この際、オペレータの指示で計測作業者が、発信探触子と受信探触子とを、表示部135に表示された中心間距離aを隔てて、計測対象シース直上のコンクリート表面4aに配置する。
オペレータの操作によって、カウント値jに対応する中心間距離aでの超音波計測が第3の収録工程(ステップS107)でなされるたびに、制御部136は、受信波G(t)|i=1を収録し、対応する分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を求め、ステップS108、ステップS109、ステップS110、ステップS116、及びステップS117を経て、カウント値jに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを求める。
そして、制御部136は、カウント値j=1~nvに対応する中心間距離a(例えば中心間距離a=500mm、460mm、420mm、及び375mm)での計測が完了するまで、この処理を繰り返し、カウント値j=1~nvに対応する中心間距離aでの計測が全て完了し、対応する単一点計測の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncj=1~nvが作成された場合(ステップS117:Yes)、第3の状態判定工程へ移行する。
なお、上述したステップS110~ステップS118に至る過程は、上述した3つ目の中心間距離aの選定方法に対応する流れである。
第3の状態判定工程では、上述した分析法(1)に対応する処理動作、分析法(2)に対応する処理動作、及び分析法(3)に対応する処理動作を用意している。このうち、分析法(1)に対応する処理動作について説明する。
第3の状態判定工程に移行すると(ステップS118)、制御部136は、カウント値j=1~nvに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvのカウント値jの変化に伴う形状変化を、オペレータが目視可能なように表示部135に表示する。
時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvが表示部135に表示されると、オペレータは、カウント値j=1~nvに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvの形状変化を視認して、グラウト充填状態を判定する。
この際、オペレータは、表示部135に表示された時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv毎の時刻tの変化に伴う形状変化を視認することで、上述の問題点(5)による2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcに関するいずれかの反射波がシース反射S波へ混入していれば、中心間距離aの変化により、上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が、カウント値jの変化の都度、低減し空充判定線分α σ=0.56を下回っていく様を確認できる。
あるいは、オペレータは、上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が、カウント値jの変化の都度、増加し空充判定線分α σ=0.56を上回っていく様を確認できる。もしくは、オペレータは、上述の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が、カウント値jの変化の都度、空充判定線分α σ=0.56を下回ったまま、または上回ったままとなる様を確認できる。
これにより、オペレータは、この状況の視認でグラウト充填状態を想定できる。
ここで、後述の「閾値反射S波自動化分析事例」の表3における分析例5を用いて説明する。図38(a)の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1によれば、中心間距離a=500mmでの全てのiで、シース反射S波起生帯域に妨害波が混入せずグラウト充填状態が「完全充填」(正答)の形状を示し、図38(b)の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1によれば、中心間距離a=375mmでの全てのiで、2段目シース反射P波がシース反射S波の上に混入することで「未充填または充填不足」(誤答)の形状を示している。
これにより、中心間距離aが変化する過程で、カウント値j=1~nvに対応する中心間距離aにおいて、2段目シースのかぶり厚d2s、または版厚dw、あるいは路程長dwcによる探査妨害波がシース反射S波の上に混入してくる、あるいは混入しなくなってくる現象の存在によって、上述の判定方法を提示できる。
次に、第3の状態判定工程の分析法(2)に対応する処理動作について説明する。
図20のステップS118において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の場合、制御部136は、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)とし、中心間距離a=500mm及び375mm双方での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvをSPt*j=1,nvとして、次の式15に示すグラウト充填状態判定式に適用して、中心間距離a=500mm及び375mmごとのグラウト充填状態の分析結果を取得する。
Figure 2022075582000029
その後、制御部136は、中心間距離a=500mmでの分析結果と、中心間距離a=375mmでの分析結果とを、表2の単一点計測判定表に適用して、分析結果の正答性を保障する適切な中心間距離a(500mmまたは375mm)を選定する。そして、制御部136は、表2の単一点計測判定表に基づいて選定した適切な中心間距離a(500mmまたは375mm)での分析結果を、計測対象シースのグラウト充填状態の判定結果として採用し、この判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを一緒にして表示部135に自動表示する。
この際、制御部136は、オペレータの操作を受け付けて、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1,nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1,nvを、それぞれj=1の中心間距離aとj=nvの中心間距離aとの比較を可能にして表示部135に表示可能としている。
さらに、制御部136は、オペレータの操作を受け付けて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1,nvを、j=1の中心間距離aとj=nvの中心間距離aとの比較を可能にして表示部135に表示可能としている。
ここで、第3の状態判定工程における分析法(1)と分析法(2)とを併用すると、オペレータにとってより明解な判定法となる。
次に、第3の状態判定工程の分析法(3)に対応する処理動作について説明する。
図20のステップS118において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが既知の場合、制御部136は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcと、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせに対応する適切なカウント値jの中心間距離aが500mmまたは375mmかを、表1の中心間距離選定表で特定する。
その後、制御部136は、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)とし、適切な中心間距離a(カウント値j=1またはj=nv)に対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|をSPt*として、式15のグラウト充填状態判定式に適用して判定結果を得るとともに、判定結果と時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを一緒にして表示部135に自動表示する。
この際、制御部136は、オペレータの操作を受け付けて、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1,nv、及びMEMスペクトル表示での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1,nvにおいて、それぞれj=1の中心間距離aとj=nvの中心間距離aとの比較を可能とするために表示部135に表示可能としている。
さらに、制御部136は、オペレータの操作を受け付けて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1,nvにおいて、j=1の中心間距離aとj=nvの中心間距離aとの比較を可能とするためにオペレータによる操作で表示部135に表示可能としている。
ここで、第3の状態判定工程における分析法(1)と分析法(3)とを併用すると、オペレータにとってより明解な判定法となる。
以上のようにグラウト充填状態を判定して、制御部136は、全ての工程を終了する。
<閾値反射S波自動化分析事例>
図19及び図20の分析の流れに沿った閾値を用いた反射S波自動化分析について、多数の既設PC橋梁での計測で取得した受信波のうち、任意に選定した受信波を用いて具体的に説明する。
表3に示す5つの分析例は、上述の問題点(1)から問題点(5)のいずれか、またはこれらの組合せに対処した事例である。
Figure 2022075582000030
表3は、コンクリート縦波音速欄が、準備工程(ステップS101)で求めたコンクリート縦波音速Vを示し、シース径欄が計測対象シースの外径を示し、版厚欄、2段目シースかぶり厚欄、及びレーダ計測かぶり厚欄が、それぞれ分析を妨害する版厚dw、2段目シースのかぶり厚d2s、及び準備工程で求めたコンクリート誘電率βuを用いて取得した計測対象シースのレーダ計測かぶり厚ds|RCを示している。
さらに、表3は、削孔欄が削孔で確認した削孔かぶり厚ds|、及び削孔によって確認したグラウト充填状態を示し、分析用かぶり厚欄が第1の収録工程で得た計測対象シースの分析用1次かぶり厚ds(1)、及び分析用2次かぶり厚ds(2)を示している。
加えて、表3は、中心間距離欄が発信探触子と受信探触子との中心間距離aを示し、空充判定欄が式10のグラウト充填状態判定式に基づいた測点ごとの判定結果を示し、中心間距離の適否欄が、計測で用いた中心間距離a=500mmまたは375mmが表1に基づいて適切(正答)か否か(誤答)を判定した結果を示している。
なお、削孔欄、及び空充判定欄におけるグラウト充填状態の判定結果は、白丸印が「未充填(空)」を示し、黒丸印が「完全充填」を示している。
<分析例1>
削孔によって「未充填」と確認された表3の分析例1によれば、表1の中心間距離選定表に分析用2次かぶり厚ds(2)=113mm、2段目シースのかぶり厚d2s=325mmを適用すると、適切な中心間距離aが500mmとなり、さらに分析用2次かぶり厚ds(2)=113mm、版厚dw=450mmを適用すると、中心間距離a=375mm及び500mmのいずれでもよいとなることより、図24の中心間距離a=500mmの多点計測での分析用切り出し波は、計測対象シースの反射S波の上に直接に探査妨害波(2段目シース、版厚、版厚底部コーナーからの反射波)が混入しない時系列となっている。なお、この分析例1は、上述の問題点(1)、(2)、(3)、(4)、(5)に対処している。
まず、分析例1は、準備工程において、問題点(1)に対処するために、計測対象シースの計測位置付近におけるコンクリート誘電率βu、及び正確なコンクリート縦波音速Vを取得して、第1の収録工程へ移行している。
次に、分析例1は、多点計測のため、第1の収録工程において、準備工程で得たコンクリート誘電率βuを用いた計測対象シースのRCレーダ計測によるレーダ計測かぶり厚ds|RCを取得し、分析用1次かぶり厚ds(1)を求めている。さらに、分析例1は、準備工程で求めたコンクリート縦波音速Vを用いて、式2で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、式3で分析用2次かぶり厚ds(2)を算出している。
その後、第1の入力受付工程において、オペレータの入力操作によって入力された2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcを記憶して、第2の入力受付工程へ移行する。
分析例1は、第2の入力受付工程において、表1の中心間距離選定表に基づいてオペレータが決定し、オペレータの入力操作によって入力された中心間距離aを初期値500mmとして記憶し、第3の収録工程へ移行する。
そして、分析例1は、第3の収録工程において、中心間距離a=500mmで配置された発信探触子から計測対象シースに対して超音波を発信し、受信探触子を介して受信波を取得し、i=nw+1をWAVE加算平均波として、図23のスペクトルF(f)|i=1~nw+1、及び受信波G(t)|i=1~nw+1を作成する。
さらに、分析用2次かぶり厚ds(2)、及びコンクリート横波音速V=0.62×Vを用いて、式2の分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて、中心間距離aに対応する分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を算出し、第1の分析工程へ移行する。
次に、分析例1は、第1の分析工程において、図23の受信波と加算平均波のスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、図21に示すA(f)フィルタ関数を乗じてf,fスペクトルを抽出し、図24(a)に示す分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1、及び分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1を作成して、第2の分析工程へ移行する。
その後、分析例1は、第2の分析工程において、上述の問題点(2)の2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーなどからの反射P波、反射M波、及び反射M波による分析結果への悪影響を除去あるいは低減するために、図16(b)の処理を発展させて分析で用いる時系列として、図24(a)の分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1に、基準時刻tをt=ts(2)+Δth2(ただし、Δth2=16μ秒)とする時刻フィルタTGC1(t)、及び基準時刻tをt=ts(2)とする時刻フィルタTGC2(t)を乗じて、図24(b)に示す狭い時間帯域の分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1と、これに対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1(図示省略)を作成し、第3の分析工程へ移行する。
なお、Δth2を設定する理由は、表面P波、及び表面S波の時刻後方残存波が、シース反射S波に混入することによるグラウト充填状態の分析への悪影響を低減するためである。
次に、分析例1は、第3の分析工程において、分析用切り出し波のスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1ごとに、振動数f以下の最大スペクトル値を基準値「1.0」とし、振動数f以上の最大スペクトル値を「0.5」とする相対値に形状変換する閾値処理を適用して、図25に示すスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を作成している。
さらに、分析例1は、図25の右側に示すように、スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1に対応する時系列である極狭時間帯域の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を作成して、第4の分析工程へ移行する。
その後、分析例1は、第4の分析工程において、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1に台形窓関数Aによる時刻掃引処理(図17参照)を適用し、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を作成して表示部135に自動表示する。この際、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~nw+1を作成し、オペレータの操作によって表示部135に表示してもよい。その後、図20のステップS110へ移行する。
分析例1は、多点計測のため、ステップS110:No、及びステップS111:Noを経て、ステップS112へ移行し、ステップS112において、表1の中心間距離選定表に基づいて、オペレータが設定した中心間距離a=500mmが適切と自動判定している。つまり、分析例1は、中心間距離a=500の場合、2段目シース、版厚、版厚底部コーナーによる探査妨害波が、シース反射S波の上に混入してこない。
そして、分析例1は、ステップS112:Yesより第1の状態判定工程(ステップS113)に移行し、各測点波、及びSP加算平均波での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1をSPtとして、式10のグラウト充填状態判定式に適用し、計測対象シースのグラウト充填状態を判定する。
なお、ステップS112において、中心間距離aが不適切な場合(ステップS112:No)、2段目シース、または版厚、あるいは版厚底部コーナーからの探査妨害波が計測対象シースの反射S波の上に混入することより、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1とともに、適切な中心間距離aを表示部135に表示して、再計測分析をオペレータに促す。
この際、オペレータの指示のもと、発信探触子と受信探触子との中心間距離を、表示部135に自動表示された適切な中心間距離aに変更したのち、第3の収録工程を再度実施して、受信波G(t)|i=1~nw、及びスペクトルF(f)|i=1~nwを再計測し、対応する分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を求める。
その後、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、及び第4の分析工程を経て、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を取得し直す。
引き続き、分析例1を用いて、第1の状態判定工程によるグラウト充填状態の判定について説明する。
分析例1は、第1の状態判定工程において、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)として、各測点波、及びSP加算平均波での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1をSPtとして、式10のグラウト充填状態判定式に適用し、各測点波、及びSP加算平均波ともに、「未充填」の計測対象シースを「未充填」と正しく判定している。
ここで、WAVE加算での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1と、SP加算での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1とで、グラウト充填状態の判定結果がどのように異なるかを、図26を用いて比較説明する。なお、図中において、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|をSPf2と図示している。
i=nw+1をWAVE加算とする図26(a)によれば、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)において、測点i=1~4の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が、空充判定線分α σ=0.56を大きく上回って「1.0」前後となり、全ての測点iで「未充填」と判定されている。
ただし、WAVE加算平均波i=5(No.1+No.2+No.3+No.4)の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5は、空充判定線分α σを大きく下回っている。これは、上述の問題点(4)により、計測対象シースのシースかぶり厚が、計測対象シースの長手方向で大きく変化することで生じる現象である。
これに対して、WAVE加算ではなくSP加算で作成した加算平均波による図26(b)によれば、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5が大きく空充判定線分α σを上回っていることがわかる。
なお、SP加算による位相情報は、WAVE加算の位相情報を採用している。
図27(a)は、図26(b)の空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~5を示している。
時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1(ただし、nc=2)を、図27(b)(No.5がWAVE加算)、及び図28(No.5がSP加算)に示している。
図27(b)によれば、WAVE加算の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1(ただし、nc=2)の形状が「未充填」の計測対象シースを「完全充填」と誤表示している。
また、図28によれば、SP加算の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1(ただし、nc=2)の形状が「未充填」の計測対象シースを「未充填」と正しく表示していることがわかる。
このように、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1のWAVE加算平均とSP加算平均との比較によれば、分析例1における上述の問題点(4)の存在を明確に確認できる。
なお、図27(b)及び図28の時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1は、FFTスペクトルをMEM(最大エントロピー法)スペクトルに置き換えて表示している。
<分析例2>
次に、削孔によって「完全充填」と確認された表3の分析例2について説明する。分析例2は、分析用2次かぶり厚ds(2)=138mm、2段目シースかぶり厚=320mm、及び版厚dw=500mmであるため、表1の中心間距離選定表によれば、中心間距離a=500mmでの多点計測において、探査妨害波(2段目シース、版厚、版厚底部コーナーからの反射波)がシース反射S波の上に混入しない受信波の分析事例である。
図29(a)に示す多点計測受信波によれば、受信波の振幅が、測点i=1,2と、測点i=3,4とで、3倍から5倍程度異なっている。これは、コンクリート表面への超音波伝達媒質の不均一な塗布、コンクリート表面の凸凹、コンクリート表面の劣化状態の相違、コンクリート表面直下の表面配筋状態の不整形、及び過密度などが原因となって生じている。
本閾値分析法は、このような受信波の並びでも、計測対象シースのグラウト充填状態を各測点で正しく分析判定する。
分析例2は、分析例1と同様に、準備工程、第1の収録工程、第1の入力受付工程、第2の入力受付工程、第3の収録工程、第1の分析工程、第2の分析工程を経て、第3の分析工程に移行している。
図25に示す分析例1のスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を作成したときと同様に、分析例2は、第3の分析工程において、図29(b)に示すように、閾値処理によってスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1(ただし、nw=4)、及び分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を作成して、第4の分析工程へ移行する。
次に、分析例2は、第4の分析工程において、上記図29(b)の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1に、上述の台形窓関数Aによる時刻掃引処理を適用し、図30(a)に示す時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(図中においてSPf2と図示)を作成し、図20のステップS110へ移行する。
その後、分析例2が多点計測のため、ステップS110:No、及びステップS111:Noを経て、ステップS112へ移行する。
さらに、ステップS112において、表1に基づいた適切な中心間距離aが500mmであり、かつ第3の収録工程が中心間距離a=500mmで行われていると判定して、第1の状態判定工程へ移行する。
引き続き、分析例2における第1の状態判定工程によるグラウト充填状態の判定について説明する。
第1の状態判定工程において、i=1~nwの各測点波、及びi=nw+1のSP加算平均波での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1をSPtとして、式10のグラウト充填状態判定式に適用し、各測点波、及びSP加算平均波ともに、「完全充填」の計測対象シースを「完全充填」と正しく判定する。
さらに詳述すると、図30(a)によれば、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻において、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|(=SPt*)が、i=1~4の分析用切り出し波(図中の細線)、及びi=5のSP加算平均波(図中の太線)ともに、空充判定線分α σ=0.56を下回ることがわかる。
さらに、空充判定カーソルt前後の時刻に、2段目シース、版厚、及び版厚底部コーナーからの反射波が混入していないことも確認できる。
また、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~5を図30(b)に示している。さらに、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=5(ただし、SP加算、nc=2)のFFTスペクトルを、MEM(最大エントロピー法)スペクトルに置き換えて図31に示している。
図31によれば、SP加算平均波i=5(=No.1+No.2+No.3+No.4)での分析判定結果が、「完全充填(正解)」となっている。
<分析例3>
次に、削孔によって「完全充填」と確認された表3の分析例3について説明する。
上述した問題点(3)の存在により、桁または側壁端部では、図32に示すように、計測対象シースの長手方向に沿って、シース埋設位置の高低が急激に変化し、計測対象シースのグラウト充填状態が変化することが度々である。
分析例3は、多点計測において、上述した問題点(3)、(4)に対処する事例である。
詳述すると、分析例3は、分析例1と同様に、準備工程、第1の収録工程、及び第1の入力受付工程を経て、第2の入力受付工程へ移行する。
この際、分析例3が分析用2次かぶり厚ds(2)=135mm、2段目シースかぶり厚d2s=320mm、及び版厚dw=600mmであるため、表1の中心間距離選定表によれば、適切な中心間距離aが500mmとなり、オペレータは、第2の入力受付工程で中心間距離aを500mmに決定して解析機器13に入力している。
これより、第3の収録工程において、中心間距離a=500mmにおける多点計測によって、受信波G(t)|i=1~nw、及びスペクトルF(f)|i=1~nwを取得する。
その後、分析例3は、分析例1と同様に、第1の分析工程から第3の分析工程によって、閾値ασ=0.5とする分析用切り出し波のスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1、及び対応する分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を図33(a)のように求めたのち、第4の分析工程へ移行する。
次に、第4の分析工程において、図33(b)に示すように、台形窓関数Aを用いて求めた時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(図中においてSPf2と図示)を作成表示し、図20のステップS110へ移行する。
分析例3は、多点計測のため、ステップS110:No、及びステップS111:Noを経て、ステップS112へ移行する。
そして、ステップS112において、表1に基づいた適切な中心間距離aが500mmであり、かつ第3の収録工程が適切な中心間距離a=500mmで行われていると判定して、第1の状態判定工程へ移行する。
引き続き、分析例3において、第1の状態判定工程によるグラウト充填状態の判定について説明する。
図33(b)によれば、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻において、測点i=1,2での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が、空充判定線分α σ=0.56を上回っていることがわかる。
空充判定カーソルtの時刻に最も近接している2段目シース反射M波の起生時刻は時刻後方となり、探査妨害波となっていない。このため、測点i=1におけるグラウト充填状態が「未充填」、測点i=2におけるグラウト充填状態が「充填不足」、測点i=3,4におけるグラウト充填状態が「完全充填」と判定できる。
さらに、詳述すると、図33(b)は、加算平均波i=5の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5を、オペレータの操作によってi=1~4のWAVE加算(図中の太線)で示している。
これより、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5(図中の太線)が、空充判定線分α σ=0.56を下回っており、不正解となっている。
また、図34(a)では、オペレータの操作によって測点i=1と測点=2とのWAVE加算をNo.5として求めた時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5(図中の太実線)を示している。
空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻において、測定i=1と測点i=2とのWAVE加算による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5は、空充判定線分α σ=0.56を下回っており、又、又、不正解となっている。
これは、問題点(4)の存在で測点i=1のシースかぶり厚と、測点i=2のシースかぶり厚とが異なっており、閾値処理された分析用切り出し波の中のシース反射S波に位相ズレがあることにより生じた誤計測である。
そこで、測点i=1と測点i=2との分析用切り出し波のWAVE加算を、SP加算に変更すると、図34(a)が図34(b)のように変化する。
図34(b)によれば、測点i=1と測点i=2とのSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5(図中の太実線)が空充判定カーソルtの時刻で、空充判定線分α σを上回り、正解に変化してくる。
さらに、測点i=3と測点i=4とのWAVE加算(図示省略)、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5(図中の太実線)は、図35(a)に示す如く空充判定カーソルtの時刻で、空充判定線分α σを下回ったままとなっている。
これにより、分析例3は、測点i=1,2においてグラウト充填状態を「未充填」、測点i=3,4においてグラウト充填状態を「完全充填」と判定している。
なお、図34(b)(No5が測点i=1,2のSP加算)において、空充判定カーソルtの時刻での時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|i=1~nwを図35(b)に示している。
図34(b)、及び図35(a)を、横軸を振動数、斜軸を時間とする掃引分析結果である時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=5(ただし、nc=2)のFFTスペクトルをMEM(最大エントロピー法)スペクトルで表示すると、それぞれSP加算による図36(a)、及び図36(b)となる。
図36(a)によれば、測点i=1,2の分析波のSP加算結果が「未充填」を示すスペクトル形状となっており正解である。図36(b)によれば、測点=3,4の分析波におけるSP加算結果が「完全充填」を示すスペクトル形状となっており正解である。
これは、分析例3の計測対象シースが、測点i=2と測点i=3との間に、空隙と充填部分との境界(問題点(3))を有していることを示している。
なお、詳細な図示を省略するが、測点=3,4の分析波のWAVE加算、及びSP加算による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=5の双方とも「完全充填」を示すスペクトル形状となり正解となる。
<分析例4>
次に、表3の分析例4は、上述の問題点(5)に対処する多点計測の事例である。
反射S波分析で用いる分析用切り出し波のシース反射S波の中に、2段目シース、版厚、コンクリート表層端面、または版厚底部コーナーからの反射波が探査妨害波として混入すると、「完全充填」の計測対象シースを「未充填」と誤判定する。
分析例4は、表3によれば、計測対象シースのコンクリート内への埋設に関する情報が、コンクリート縦波音速V=4550m/秒、計測対象シースの外径φ=38mm、レーダ計測かぶり厚ds|RC=86mm、分析用1次かぶり厚ds(1)=86mm、分析用2次かぶり厚ds(2)=109mm、2段目シースのかぶり厚d2s=387mm、版厚dw=550mm、削孔による確認無しである。
表1によれば、中心間距離a=375mmによる計測で正しいグラウト充填状態が得られる事例であるが、オペレータの操作によって中心間距離a=500mm、及び375mmの双方で多点計測を行い、判定結果がどのように異なってくるかを説明する。
なお、準備工程、第1の収録工程、第1の入力受付工程、第2の入力受付工程、第3の収録工程、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、第4の分析工程、ステップS110:No、ステップS111:No、及びステップS112は、分析例1と同様のため、分析の流れの詳細な説明を省略する。
図37(a)は、中心間距離a=500mmの多点計測において、第4の分析工程で得た時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|(図中のSPf2)を示している。
また、図37(b)は、中心間距離a=375mmの多点計測において、第4の分析工程で得た時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|(図中のSPf2)を示している。
次に、第1の状態判定工程によれば、中心間距離a=500mmでの計測を示す図37(a)では、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻より、測点i=1~4の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が、空充判定線分α σ=0.56を大きく上回っていることがわかる。このため、中心間距離a=500mmの多点計測では、計測対象シースのグラウト充填状態が、測点i=1~4で「未充填」と判定される。
しかしながら、この「未充填」は、誤判定である。図37(a)によれば、白丸印で示した縦カーソルの位置が、かぶり厚d2s=387mmの2段目シースからの反射P波起生時刻である。この起生時刻から2段目シース反射P波スペクトルが大きく生じてくるため、この誤判定が生じている。
一方、中心間距離a=375mmでの計測を示す図37(b)によれば、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻で、測点i=1~4の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4が、空充判定線分α σ=0.56を下回っていることがわかる。
さらに、図37(b)によれば、白丸印で示した縦カーソルの位置(2段目シース反射P波の起生時刻)が、中心間距離a=500mmの場合に比べて大きく後方へ移動している。このため、中心間距離a=375mmでの多点計測では、2段目シース反射P波が探査妨害波となっていない。
これにより、中心間距離a=375mmの多点計測では、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4に基づいて、計測対象シースのグラウト充填状態が全測点で「完全充填」(正解)と判定される。
なお、表1の中心間距離選定表によれば、分析用2次かぶり厚ds(2)=109mmと2段目シースのかぶり厚d2s=387mmとの組合せに対応する適切な中心間距離aが375mmとなっており、分析用2次かぶり厚ds(2)=109mmと版厚dw=550mmとの組み合わせによれば、適切な中心間距離aが375mmまたは500mmのいずれでもよいとなっていることを確認願いたい。
<分析例5>
次に、表3の分析例5について説明する。分析例5は、中心間距離=375mmでの計測でグラウト充填状態が正しく判定される分析例4に対して、中心間距離=500mmでの計測でグラウト充填状態が正しく判定される事例である。
分析例5は、表3によれば、計測対象シースのコンクリート内への埋設に関する情報が、コンクリート縦波音速V=4350m/秒、計測対象シースの外径φ=38mm、レーダ計測かぶり厚ds|RC=100mm、分析用1次かぶり厚ds(1)=100mm、分析用2次かぶり厚ds(2)=123mm、2段目シースのかぶり厚d2s=315mm、版厚dw=500mm、削孔による確認無しである。
なお、準備工程、第1の収録工程、第1の入力受付工程、第2の入力受付工程、第3の収録工程、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、第4の分析工程、ステップS110:No、ステップS111:No、及びステップS112は、分析例1と同様のため、その詳細な説明を省略する。
詳述すると、まず、図38(a)は、中心間距離a=500mmの多点計測において、第4の分析工程で得た時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5をSPf2として示している。なお、i=5(図中の太実線)は、i=1~4のSP加算である。
また、図38(b)は、中心間距離a=375mmの多点計測において、第4の分析工程で得た時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5をSPf2として示している。なお、i=5(図中の太実線)は、i=1~4のSP加算である。
中心間距離a=500mmでの計測を示す図38(a)によれば、第1の状態判定工程において、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の前後の時刻で、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5の全てが、空充判定線分α σ=0.56を下回り、2段目シース反射P波、及び2段目シース反射M波が、シース反射S波の上に混入していない。
分析用2次かぶり厚ds(2)に比べて、版厚dwが格段に大きいため、版厚反射P波もシース反射S波の起生時刻帯よりも遠い時刻後方での起生となっている。このため、分析例5における中心間距離a=500mmの多点計測では、i=1~4、及びi=5の全てで計測対象シースのグラウト充填状態が「完全充填」(正解)と判定される。
一方、中心間距離a=375mmでの計測を示す図38(b)によれば、2段目シース反射P波が、時刻ts(2)と空充判定カーソルtとの間で立ち上がることで、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5が、時刻t=tの前方から空充判定線分α σ=0.56を大きく上回ってくることがわかる。
この現象を考慮しなければ、計測対象シースのグラウト充填状態を「未充填」と誤判定せざるを得ない。
しかしながら、表1の中心間距離選定表では、分析用2次かぶり厚ds(2)=123mmと2段目シースのかぶり厚d2s=315mmとの組合せに対応する適切な中心間距離aが500mmとなっている。
このため、中心間距離a=375mmの多点計測では、図38(b)に示すように、「@500で再計測、分析して下さい」という再計測、及び再分析を促す案内メッセージを、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5とともに表示している。
<反射S波計測での適切な探触子間隔>
まず、多点計測において、発信探触子、及び受信探触子からなる一対の探触子の配置状態を、図15(図中の上段)を用いて説明する。一対の探触子は、発信探触子を桁(側壁)中央側に配置し、受信探触子を桁(側壁)端部側に配置するようにしている。
図15の上段中の最も左側に配置された一対の探触子(図中のNo.1の中央点)の位置を測点i=1とし、最も右側に配置された一対の探触子(図中のNo.4の中央点)の位置を測点i=nw(図中ではnw=4)として、測点i=1から測点i=nwの間に、同一の中心間距離aで配置された一対の探触子の位置(図中のNo.2、No.3)を、図15の上段中の左側から右側へ順に、測点i=2、3とする。
次に、多点計測において、発信探触子と受信探触子との適切な中心間距離選定表を示す表1を、どのように作成したかを説明する。
図39は、表3の分析例4における台形窓関数Aの推移状況であり、図39(a)が中心間距離a=500mmでの多点計測を示し、図39(b)が中心間距離a=375mmでの多点計測を示している。
なお、図39は、コンクリート縦波音速V=4550m/秒、分析用2次かぶり厚ds(2)=109mm、2段目シースのかぶり厚d2s=387mm、時刻*=16μ秒、時刻t=16μ秒で作成されている。
図39によれば、中心間距離a=500mm、及び375mmの双方において、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻における台形窓関数A(図中で「A」と表記)で囲まれた時刻帯に、計測対象シースの反射S波がより多く存在している。
また、中心間距離a=500mmでの計測を示す図39(a)によれば、白三角印を付した縦カーソルの時刻より生ずる2段目シース反射P波(かぶり厚d2s、起生時刻td2s)が、空充判定カーソルtの時刻における台形窓関数Aの時刻帯に混入している。
一方、中心間距離a=375mmでの計測を示す図39(b)によれば、白三角印を付した縦カーソルの時刻より生ずる2段目シース反射P波が、空充判定カーソルtの時刻における台形窓関数Aの時刻帯に混入せず、かつ相対的に時刻後方へ移動している。
このような問題点(5)の存在により、発信探触子と受信探触子との中心間距離aを375mmとすればよいとしている。分析用2次かぶり厚ds(2)が109mm、2段目シースのかぶり厚d2sが387mmの場合、表1の中心間距離選定表において、分析例4の適切な中心間距離aが375mmとなる所以である。
ところで、分析例4で2段目シースがない場合、探査妨害波の可能性としては版厚反射波のみとなる。図39では、版厚(dw=550mm)の版厚反射P波の起生時刻を、白四角印を付した縦カーソルで示している。
図39によれば、白四角印を付した縦カーソルで示した板厚反射P波の起生時刻は、中心間距離a=500mm及び375mmとも、空充判定カーソルtの時刻における台形窓関数Aの時刻帯域よりも時刻後方となっている。このため、板厚反射P波は、グラウト充填状態の誤判定要因とはならない。
このため、表1の中心間距離選定表では、分析用2次かぶり厚ds(2)=109mmと版厚dw=550mとの組合せに対応する中心間距離aを500mm、または375mmのいずれでもよいとしている。
また、図40は、分析例5における台形窓関数Aの推移状況であり、図40(a)が中心間距離a=500mmでの多点計測を示し、図40(b)が中心間距離a=375mmでの多点計測を示している。
なお、図40は、コンクリート縦波音速V=4350m/秒、分析用2次かぶり厚ds(2)=123mm、2段目シースのかぶり厚d2s=315mm、版厚dw=500mm、時刻*=16μ秒、時刻t=16μ秒で作成されている。
図40によれば、中心間距離a=500mm、及び375mmの双方において、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻における台形窓関数A(図中で「A」と表記)で囲まれた時刻帯に、計測対象シースの反射S波がより多く存在している。
さらに、図40によれば、中心間距離a=500mm、及び375mmの双方で、図中で「A」と表記した台形窓関数Aの時刻帯に版厚による反射波の混入はない。
しかしながら、中心間距離a=375mmでの計測を示す図40(b)によれば、白三角印を付した縦カーソルで示す2段目シースの反射P波が、図中で「A」と表記した台形窓関数Aの時刻帯に混入してくる。
一方、中心間距離a=500mmでの計測を示す図40(a)によれば、白三角印を付した縦カーソルで示す2段目シースの反射P波が、図中で「A」と表記した台形窓関数Aの時刻帯に混入していない。
このような問題点(5)の存在により、中心間距離a=375mmでの多点計測において、「完全充填」の計測対象シースを「充填不足」または「未充填」と誤判定し、中心間距離a=500mmでの多点計測において、「完全充填」の計測対象シースを「完全充填」と正しく判定する。
このため、表1の中心間距離選定表では、分析用2次かぶり厚ds(2)=123mmと2段目シースのかぶり厚d2s=315mmとの組み合わせに対応する適切な中心間距離aが500mmとなっている。
また、図40によれば、白四角印を付した縦カーソルで示す版厚反射P波の起生時刻は、中心間距離a=500mm、及び375mmのいずれでも、空充判定カーソルtの時刻における台形窓関数Aの時刻帯域に対して十分に時刻後方となっている。
このため、表1の中心間距離選定表では、分析用2次かぶり厚ds(2)=123mmと版厚dw=500mmとの組合せに対応する最適な中心間距離aを500mm、または375mmのいずれでもよいとしている。
表1に示す中心間距離選定表は、縦欄を分析用2次かぶり厚ds(2)とし、横欄を2段目シースのかぶり厚d2s、または版厚dw、あるいは版厚底部コーナーの路程長dwcとして、縦欄と横欄との組み合わせごとに、図39及び図40と同様の検討を行って作成されている。
なお、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの反射P波、反射M波、及び反射M波の起生時刻は、それぞれ式5、式6、及び式7を用いて算出している。
<閾値反射S波分析法の正当性の検証>
グラウト充填状態の一部が判明している表3に示す幾つかの計測対象シースを用いて、閾値反射S波分析法を詳述した。
多数の既設PC橋梁で収録している極めて多数の計測対象シースから選定したシース反射S波計測の受信波G(t)|i=1~4を用いて、問題点(1)~(5)に対処した「閾値を用いた反射S波自動化分析」の正当性を、表4及び表5に示す「完全充填」と判明している計46本の計測対象シースと、表6に示す「未充填(空)」と判明している計7本の計測対象シースとを用いて検証する。
なお、分析で用いるシース受信波は、平成17年11月から平成22年12月までの既設PC橋梁のグラウト充填探査の方法論確立研究の中で、出願人の研究業務として取得した総計853本のシース管の反射P波及び反射S波計測受信波より任意に選定している。
表4及び表5に示す計測対象シースのグラウト充填状態は、黒丸印が「完全充填」であり、桁梁想定シース埋設コンクリートモデルで設定されたグラウト充填状態、または実橋から切り取った桁梁の切断等による目視、さらにはシース直上位置からの削孔等のいずれかで確認している。
表6に示す計測対象シースのグラウト充填状態は、白丸印が「未充填(空)」であり、桁梁想定シース埋設コンクリートモデルで設定されたグラウト充填状態、または実橋から切り取った桁梁の切断等による目視、さらにはシース直上位置からの削孔等のいずれかで確認している。
さらに、表7及び表8で、問題点(5)への対処を説明するためのシース群を、それぞれ17本、12本示している。
Figure 2022075582000031
Figure 2022075582000032
表4及び表5のコンクリート縦波音速欄の値、シース径欄の値、版厚欄の値、2段目シース欄の値、RCレーダかぶり厚欄の値、分析用かぶり厚欄の値は、それぞれコンクリート縦波音速V、計測対象シースの外径φ、版厚dw、2段目シースのかぶり厚d2s、レーダ計測かぶり厚ds|RC、分析用1次かぶり厚ds(1)、及び分析用2次かぶり厚ds(2)を示している。
さらに、表4及び表5の充填状態欄が、桁梁想定シース埋設コンクリートモデル、実橋から切り取った桁梁の切断等による目視、シース直上位置からの削孔のいずれかで確認したグラウト充填状態を示している。なお、充填状態欄の黒丸印は、「完全充填」を示している。
さらにまた、表4及び表5の中心間距離欄が、計測の際にオペレータが決定して採用した中心間距離aと、表1の中心間距離選定表による当該中心間距離aの適否(OK,NG)を示している。
また、表4及び表5の混入妨害波欄が、中心間距離aの適否が「NG」の場合の混入妨害波の種類を示している。なお、混入妨害波欄のP|d2sが2段目シースからの反射P波の混入を示し、Md2sが2段目シースからの反射M波の混入を示し、Md2sが2段目シースからの反射M波の混入を示し、P|dwが版厚からの反射P波の混入を示し、Mdwが版厚からの反射M波の混入を示している。
また、表4及び表5の閾値分析欄が、閾値分析による分析結果を「未充填」、「充填不足」、「完全充填」のいずれかで示している。なお、閾値分析欄の白丸印が「未充填」を示し、白三角印が「充填不足」を示し、黒丸印が「完全充填」を示している。
さらに、中心間距離aが適切(中心間距離欄の適否が「OK」)であれば、計測対象シースのシース反射S波の上に探査妨害波が混入しない。このため、閾値分析欄の「未充填」、「充填不足」、及び「完全充填」が全て正解となることから、閾値分析欄の白丸印、白三角印、及び黒丸印に「(正)」を付記している。
一方、中心間距離aが不適切(中心間距離欄の適否が「NG」)であれば、上述のいずれかの探査妨害波がシース反射S波の上に混入する。このため、閾値分析欄の「未充填」及び「充填不足」の多くが不正解となることから、閾値分析欄の白丸印及び白三角印に「(?)」を付記している。
なお、中心間距離aが不適切(中心間距離欄の適否が「NG」)な閾値分析で探査妨害波が混入していると判断されても「完全充填」(黒丸印)となる幾つかの計測対象シースがある。この現象は、計測状況が図18(a)、(b)、(c)のうち、図18(a)の如くなっていると、2段目シース、版厚等からの反射波が計測対象シースにより遮断されることで生じている。このため、「(正)」を付記している。
いずれにしても、中心間距離aが不適切(中心間距離欄の適否が「NG」)な場合、適切な中心間距離aに変更して再計測分析を行えば、不適切な中心間距離aによる閾値分析での「未充填(?)」及び「充填不足(?)」の代わりに、正確な充填状態を「未充填(正)」、「充填不足(正)」、「完全充填(正)」として求めることができる。
図41に上述の表4及び表5に示す計測対象シースの第1の状態判定工程で得た時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4の空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中のSPt)を縦軸とし、分析用1次かぶり厚ds(1)を横軸として図示している。
なお、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4は、中心間距離aを500mmまたは375mmとする第3の収録工程によって取得した受信波G(t)|i=1~4に基づき、第1の分析工程から第4の分析工程を経て移行した第1の状態判定工程において得られたものとしている。
また、図41に、空充判定線分α σ=0.56を下回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を黒丸印で示し、空充判定線分α σ=0.56を上回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を白四角印及び二重丸印で示している。
図41の白四角印で示した分析結果は、採用した中心間距離aが不適切(中心間距離欄の適否が「NG」)で、いずれかの探査妨害波が計測対象シースの反射S波に混入していることにより生じる誤分析である。
なお、中心間距離aが不適切(中心間距離欄の適否が「NG」)であっても、「完全充填」と正しく判定されている幾つかの計測対象シース(図41中のバツ印参照)がある。
これは、再述するが図18(a)に示すように、計測対象シースの直上に一対の受信探触子、及び発信探触子が適切に配置され、2段目シースまたは版厚からの反射波が、計測対象シースにより遮断されることにより生じている現象である。
オペレータは、反射S波計測に先立ち、上述の問題点(5)に対処して、計測対象シースの分析用1次かぶり厚ds(1)を式3に適用して得た分析用2次かぶり厚ds(2)と、探査妨害波を生成する2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、または版厚底部コーナーの路程長dwcとの組み合わせで決まる適切な中心間距離aを、表1の中心間距離選定表に基づいて設定しているが、これを誤ると、計測対象シースが「完全充填(黒丸印)」であっても図41中の白四角印で示すように、多数の計測対象シースにおいて、グラウト充填状態の誤判定を行うことになる。
このため、中心間距離aの設定が誤っている場合、図20のステップS112において、現場計測時に得る時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とともに、中心間距離a=500mmまたは375mmでの再計測、再分析を促す案内メッセージを表1の中心間距離選定表に基づいて表示部135に自動表示して、オペレータにその操作を実行させている。
例えば、図41中で「*印」を付記した丸数字の「83」で示す中心間距離a=500mmで計測した計測対象シースの場合、分析用2次反射S波起生時刻ts(2)の若干後方時刻より、2段目シースからの反射M波が混入してくることより、図42に示すように、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(=SPf2)の表示画面に「@375mmで再計測、再分析して下さい」という案内メッセージが自動表示される。白四角印で表示された中心間距離aが誤設定されている他の計測対象シースでも、図示を省略するが、対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1の表示画面において、同様の案内メッセージが自動表示されている。
なお、図41に示した計測対象シースのうち、白三角印、及び黒四角印で示した計測対象シースにおいて、2段目シースd2sまたは版厚dwと、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせを表1の中心間距離選定表に適用すると、適切な中心間距離aが500mmとなる。
このため、図41の中心間距離aを中心間距離欄の適否が「OK」な500mmとする白三角印で示す計測対象シースの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|(図中のSPt)は、測点i=1~4ともに、全て黒丸印の「完全充填」と判定され、正解となっている。
黒四角印で示した丸数字の「8」の計測対象シースは、測点i=1,2が「未充填」、測点i=3,4が「完全充填」となり、黒四角印で示した丸数字の「63」の計測対象シースは、測点i=1が「未充填」、測点i=2,3,4が「完全充填」となる。丸数字「8」及び「63」の計測対象シースのグラウト充填状態は、中心間距離aが表4及び表5に示す如く500mmで2段目シースかぶり厚d2s、または版厚dw、あるいは版厚底部コーナーの路程長dwcの反射波が計測対象シースの反射S波の上に混入しないことが表1の中心間距離選定表で特定されることより正解である。これにより、偶然、空隙と充填部分との境界を有する計測対象シースであると判断できる。このため、白四角印(誤判定)ではなく、二重丸印(正解)で表示している。
また、図43は、表6の箱桁等の極々端部での計測対象シースごとに、横欄の閾値分析用係数を用いて、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4を作成し、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中のSPt)を取得して示す比較図である。
Figure 2022075582000033
なお、表6のコンクリート縦波音速欄、シース径欄、版厚欄、2段目シース欄、RCレーダかぶり厚欄、充填状態欄、分析用かぶり厚欄、中心間距離欄、混入妨害波欄、及び閾値分析欄は、上述した表4及び表5と同じため、その詳細な説明を省略する。
図43の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中のSPt)は、全て中心間距離a=500mmで計測されている受信波G(t)|i=1~4の分析結果である。表1の中心間距離選定表によれば、丸数字の「20」以外の計測対象シースは、適切な中心間距離aが500mmである。
これより、図43は、中心間距離a=500mmで計測された計測対象シースにおいて、空充判定線分α σ=0.56を下回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4を黒丸印(正解)で、空充判定線分α σ=0.56を上回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)を二重丸印(正解)で示している。
ただし、丸数字の「20」の計測対象シースは、表1の中心間距離選定表との対比で中心間距離a=500mmが不適切なため、測点i=1~4のいずれかが「完全充填」、または全てが「完全充填」かもしれないため、空充判定線分α σ=0.56を上回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)を白丸印で示している。
図43によれば、計測対象シースの各測点i=1~4ごとにグラウト充填状態が、全て「未充填」、または空隙部分と充填部分とを有する計測対象シースとして、i=1~4の一部の測点が「未充填」、残る測点が「完全充填」と分析されており、丸数字の「20」で示した計測対象シースを除けば、中心間距離a=500mmが適正故、正解率100%の判定結果と判断できる。
図43の右側に、分析で得るグラウト充填状態の変化の様相を丸数字で示す計測対象シースごとに図示している。
中心間距離a=500mmで分析判定した丸数字の「20」で示した計測対象シースの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4をSPf2として、図44に示している。
表6のNo.20の計測対象シースによれば、2段目シース(かぶり厚d2s=260mm)の反射M波(Md2s)が、分析用2次かぶり厚ds(2)=153mmのシース反射S波に混入しており、「未充填(?)」と判定されている。このため、図44のNo.20の計測対象シースの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5には、表1の中心間距離選定表との対比で自動的に中心間距離a=375mmでの再計測、再分析を促す案内メッセージが表示されている。
ところで、適切な中心間距離aで再計測分析処理が自動指示されたこの表6のNo.20の計測対象シース、表4及び表5の計測対象シースで中心間距離aの適否が「NG」と表示された計測対象シース群の図41の分析結果で白四角印を付した計測対象シース、及びバツ印を付した計測対象シースに対して、適切な中心間距離aによる再計測、再分析がなされていない。そこで、この処理を促す案内メッセージに対処した事例について、他の計測事例群を用いて説明を続ける。
表7は、各々表示する計測対象シース群において、中心間距離a=500mmで計測した際の閾値分析用係数を示している。
また、表8は、各々表示する計測対象シース群において、中心間距離a=375mmで計測した際の閾値分析用係数を示している。
Figure 2022075582000034
Figure 2022075582000035
より詳しくは、表7、及び表8の横欄であるコンクリート縦波音速欄の値、シース径欄の値、版厚欄の値、2段目シース欄の値、RCレーダかぶり厚欄の値、分析用かぶり厚欄の値は、閾値分析用係数として、それぞれコンクリート縦波音速V、計測対象シースの外径φ、版厚dw、2段目シースのかぶり厚d2s、レーダ計測かぶり厚ds|RC(ds|RC左、ds|RC右)、分析用1次かぶり厚ds(1)、及び分析用2次かぶり厚ds(2)を示している。
さらに、表7、及び表8の中心間距離欄が、計測に採用した中心間距離aと、表1の中心間距離選定表に基づいた当該中心間距離aの適否(OK,NG)とを示し、混入妨害波欄が、シース反射S波に混入する探査妨害波の種類を示している。
加えて、表7、及び表8の再計測メッセージ欄が、表1の中心間距離選定表に基づいた案内メッセージとして表示される適切な中心間距離aを示している。
なお、表7、及び表8の混入妨害波欄は、P|d2sが2段目シースからの反射P波を示し、Md2sが2段目シースからの反射M波を示し、P|dwが版厚からの反射P波を示し、Mdwが版厚からの反射M波を示している。
図45は、表7の閾値分析用係数を用いた計測対象シースの分析において、計測対象シースの測点ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4を、中心間距離a=500mmと中心間距離a=375mmとの双方で求め、空充判定カーソルt=ts(2)+*として、縦軸を時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中においてSPtと図示)とし、横軸を分析用1次かぶり厚ds(1)として比較表示している。
図45の左図は、計測対象シースを中心間距離a=500mmで計測分析して得られた時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4のうち、空充判定線分α σ=0.56を下回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4を黒丸印で示し、空充判定線分α σ=0.56を上回る測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4を白四角印で示している。
全ての計測対象シースにおいて、空充判定線分α σ=0.56を上回る時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中の白四角印)が1つ以上生じている。このため、測点i=1~4の全てが「未充填」または、測点i=1~4のうち一部が「未充填」あるいは「充填不足」との判定結果となっている。
表7の中心間距離a=500mmでの計測では、全ての計測対象シースにおいて、シース反射S波の上に2段目シースの反射P波(P|d2s)、または反射M波(Md2s)、あるいは版厚M波(Mdw)のいずれかが混入し、図46(a)の丸数字「1」で示す計測対象シースの場合、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5の画面で、計測対象シースの分析用2次かぶり厚ds(2)=97mmと2段目シースのかぶり厚d2s=380mmとを表1の中心間距離選定表に適用し、中心間距離a=375mmによる再計測分析の自動表示がなされ、再計測分析が実行され、図46(b)を求めている。図示を省略するが、他の全ての計測対象シースでも、中心間距離a=375mmでの再計測分析が自動指示されている。
表7に示す計測対象シースの閾値分析(中心間距離a=500mm)では、全ての計測対象シースでグラウト充填状態を誤判定することになる。
一方、図45の右図(中心間距離=375mmでの計測分析)によれば、表7に示した全ての計測対象シースにおいて、シース反射S波の起生時刻帯域に探査妨害波(P|d2s、Md2s、Mdw等)が混入しなくなる。
このため、図45の右図(中心間距離=375mmでの計測分析結果)には、左図の中心間距離a=500mmでの分析判定で生じていた空充判定線分α σ=0.56を上回る時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw(図中の白四角印)が消滅し、丸数字の「3」以外の計測対象シースにおける全ての測点iでの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nwが空充判定線分α σ=0.56を下回ることで黒丸印となり、グラウト充填状態が「完全充填」と分析判定される。
これにより、図45の左図に示す中心間距離a=500mmでの計測対象シースの分析判定では、丸数字「3」以外の計測対象シースの「未充填」という判定結果が誤判定であり、驚くべきことに正答率0%となっている。
なお、図45の右図に示す中心間距離a=375mmでのグラウト充填状態の判定結果は、2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcに関する探査妨害波が、計測対象シースの反射S波の上に混入しなくなることにより、全ての計測対象シースが正解となる。丸数字の「3」で示した計測対象シースは、偶然、桁端部側(測点i=4)が「未充填」、中央側(測点i=1,2,3)が「完全充填」となる空隙と充填部分との境界位置での計測と断定できる。
このように図45の多数の計測対象シースの分析結果によれば、中心間距離aが不適切な500mmの場合、グラウト充填状態の判定結果が正答率0%となり、適切な中心間距離a=375mmの場合、グラウト充填状態の判定結果が正答率100%となっている。
次に、表8に示す閾値分析用係数を持つ計測対象シースの分析において、測点ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4を取得し、縦軸を時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中においてSPtと図示)とし、横軸を分析用1次かぶり厚ds(1)として、図47に示している。
図47の右図(中心間距離a=375mmでの計測分析)によれば、白三角印を付した丸数字の「7」、及び「31」を除く計測対象シースにおいて、空充判定線分α σ=0.56を上回る時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中の白四角印)が多数生じている。
表1の中心間距離選定表によれば、丸数字「7」以外の計測対象シースの適切な中心間距離aは、500mmとなっている。
さらに、中心間距離a=375mmでの計測対象シースの分析判定では、丸数字の「7」、及び「31」を除く計測対象シースの判定結果が「未充填」であるが、中心間距離a=375mmが不適切ということより誤判定と判断できる。
一方で、丸数字の「7」で示した計測対象シースは、2段目シースが存在せず、分析用2次かぶり厚ds(2)=104mm、版厚dw=500mmということより、表1の中心間距離選定表によれば、版厚反射P波P|dwが中心間距離a=500mm及び375mmのいずれの場合でも、シース反射S波の上に探査妨害波として混入せず、測点i=1~4で時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|が空充判定線分α σ=0.56を下回ることより、「完全充填」と判定できる。
また、丸数字の「31」で示した計測対象シースは、2段目シースが存在せず、分析用2次かぶり厚ds(2)=116mm、版厚dw=306mmであるため、表1によれば中心間距離a=375mmでの計測で、探査妨害波として版厚反射P波P|dwが混入する。しかしながら、測点i=1~4の全ての時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4が空充判定線分α σ=0.56を超えてくるはずだが下回っている。これは、本計測対象シースが、偶然、図18(a)に示すような状況下にあり、計測対象シースによって版厚反射P波が遮断されていると判断する。
これにより、白三角印を付した丸数字「31」の計測対象シースは、適切な中心間距離a=500mm(図47の左図参照)、及び不適切な中心間距離a=375mm(図47の右図参照)の双方の計測分析で「完全充填」(正解)となっている。
さらに、図47の左図(中心間距離a=500mmでの計測分析)によれば、全ての計測対象シースにおいて、シース反射S波に探査妨害波が混入しておらず、図47の右図(中心間距離a=375mmでの計測分析)で生じていた空充判定線分α σを上回る時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4(図中の白四角印)が全て消滅している。
加えて、中心間距離a=500mmの計測分析では、探査妨害波の混入がないため、グラウト充填状態の分析判定が高精度化され、丸数字「33」、及び「34」の計測対象シースが、偶然、空隙と充填部分との境界と判定できる。これより、図47の左図(中心間距離a=500mmでの計測分析)では、丸数字「33」及び「34」の計測対象シースの空充判定線分α σを上回る測点iを、二重丸印(正解)で示している。
また、丸数字「36」で示した計測対象シースの中心間距離a=500mmでの計測分析結果として、i=1~4及びi=5(SP加算)での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|の時間的推移を、図48(a)に示している。
さらに、丸数字「36」で示した計測対象シースの中心間距離a=375mmでの計測分析結果として、i=1~4及びi=5(SP加算)での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|の時間的推移を、図48(b)に示している。
図48(b)に示す中心間距離a=375mmでの分析結果は、版厚反射M波(Mdw)の混入による誤判定である。このため、表1との対比で「@500で再計測、分析して下さい」というオペレータに再計測、再分析を促す案内メッセージが、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~5(SP加算)とともに自動表示されている。
このような案内メッセージに基づいて、中心間距離a=500mmで再計測、再分析することで、全ての測点i=1~4、及びSP加算平均波i=5でのグラウト充填状態を正しく判定することができる。
さらに、図47の分析結果によれば、中心間距離aが不適切な375mmの場合、グラウト充填状態の正答率が16%となり、中心間距離aが適切な500mmの場合、グラウト充填状態の正答率が100%となっている。
<閾値分析における反射S波自動化分析の省力化>
本省力化分析法は、図19及び図20に示した分析の流れで、nw=1とする単一点計測で得た受信波を用いる方法である。図45及び図47に示したように、問題点(1)から問題点(4)に対処する閾値多点計測分析において、問題点(5)にも対処して、適切な中心間距離aで計測分析すると、各測点各々でのグラウト充填状態が100%の正答率で判定されることを示している。
これより、図15の下段のNo.1またはNo.1´の単一点計測としたとき、分析用2次かぶり厚ds(2)と、第1の入力受付工程で設定された探査妨害波を起生させる2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcの値とを、表1の中心間距離選定表に適用して得る適切な中心間距離a(500mmまたは375mm)で、計測対象シースの受信波を収録していれば、第1の分析工程から第4の分析工程を経て、上述の問題点(1)~(5)に対処した時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を求め、第1の状態判定工程において、該測点の単一点計測での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1(=SPti=1)を式10に適用し、正確なグラウト充填状態を判定できる。
多点計測では、計測対象シースの埋設状態、及び表層鉄筋の配置状態などにより、超音波計測の位置設定、及び計測作業に多大な時間と労力とを要するが、単一点計測では、これを大きく短縮できる。空隙と充填部分との境界の有無を確認したい場合、No.1とNo.1´の2つ測点での単一点計測分析を行えばよい。
上述の「閾値反射S波自動化分析事例」及び「閾値反射S波分析法の正当性の検証」で閾値分析法による分析例を、多点計測i=1~nw+1(ただし、nw=4)として具体的に説明している。ただし、この分析例は、単一点計測としての分析例として位置付けることもできる。
準備工程(ステップS101)、ステップS102、第1の収録工程(ステップS103)、第1の入力受付工程(ステップS105)、第2の入力受付工程(ステップS106)、第3の収録工程(ステップS107)、第1の分析工程(ステップS108)、第2の分析工程から第4の分析工程(ステップS109)、そして、ステップS110、ステップS111、ステップS112を経て、第1の状態判定工程(ステップS113)を行う流れの中で、第1の収録工程を第2の収録工程(ステップS104)に取り換えて、分析用1次かぶり厚ds(1)=(ds|RC左+ds|RC右)/2を上述のNo.1またはNo.1´でのレーダ計測かぶり厚ds(1)=ds|RCに変更し、分析用2次かぶり厚ds(2)=ds(1)+Δdsとし、上述の各工程の中でnw=1とすれば、上述の分析例は、単一点計測の分析例となる。
測点i=1~4の分析の並びより、いずれか1つの測点の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)を、表1の分析用2次かぶり厚ds(2)と、2段目シースかぶり厚d2sまたは版厚dwあるいは路程長dwcとの組み合わせで得る適切な中心間距離a=500mmまたは375mmで求め、この測点のグラウト充填状態を特定すればよい。
さらに、単一点計測時の分析用1次かぶり厚ds(1)=レーダかぶり厚ds|RCの方が、多点計測時の分析用1次かぶり厚ds(1)=(ds|RC左+ds|RC右)/2に比べてより正確となるため、より高精度な分析例として評価できる。
さらにまた、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知の場合、例えば、受信波を中心間距離a=500mmを初期値として、中心間距離a=500mmで計測し、第1の分析工程から第4の分析工程を経て、中心間距離a=500mmでの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1(ただし、MEMスペクトル表示、nc=2)を作成し表示する。
次に、2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の単一点計測の場合(ステップS111:Yes)、ステップS114で追加計測が指示され、第3の収録工程で中心間距離a=375mmでの計測を追加計測し、第1の分析工程から第4の分析工程を経て、中心間距離a=375mmで2つ目の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1(ただし、MEMスペクトル表示、nc=2)を作成し表示する。
その後、第2の状態判定工程(ステップS115)へ移行して、中心間距離a=500mm及び375mmでの計測分析におけるグラウト充填状態の判定結果を取得する。この2つの判定結果を表2の単一点計測判定表に適用して適切な中心間距離aを選定し、該中心間距離aを用いたグラウト充填状態を正しい判定結果として特定し表示する。
上述の表3の分析例4における時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|の図37、分析例5の図38における時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を用いて詳述する。
分析例4及び分析例5で、2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcを未知と仮定すると、表1を用いた適切な中心間距離aを特定できない。
しかしながら、分析例4の図37によれば、中心間距離a=500mmの計測、及び中心間距離a=375mmの計測で、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4をそれぞれ取得している。
加えて、空充判定カーソルt=ts(2)+*とする時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4もそれぞれ求めている。
図37(a)の中心間距離a=500mmの場合、各測点iの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4は、空充判定線分α σ=0.56を上回り、「充填不足」あるいは「未充填」のいずれかとなっている。
一方、図37(b)の中心間距離a=375mmの場合、全ての測点での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4は、空充判定線分α σ=0.56を下回り、「完全充填」となっている。
2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知であっても、各測点で中心間距離aを500mm及び375mmとするグラウト充填状態の分析結果をそれぞれ求め、表2の単一点計測判定表に適用すれば、適切な中心間距離aが、i=1~4のいずれの計測でも中心間距離a=375mmとなることを確認できる。これにより、各測点の計測を単一点計測とみなしたとき、いずれの測点でも「完全充填」と判断可能となる。
さらに、分析例5の図38でも、中心間距離a=500mmの計測、及び中心間距離a=375mmの計測での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4をそれぞれ取得し、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~4をそれぞれ求めている。図38(a)の中心間距離a=500mmの場合、全ての測点i=1~4毎に「完全充填」のスペクトル形状となっている。
一方、図38(b)の中心間距離a=375mmの場合、「完全充填」または「充填不足」あるいは「未充填」のいずれかのスペクトル形状となっている。2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知であっても、各測点の単一点計測ごとに、これら図38(a)及び図38(b)の結果を表2に適用すれば、適切な中心間距離aがいずれの測点でも中心間距離a=500mmとなり、いずれの測点でも「完全充填」となる。
このような現象下、第2の状態判定工程(ステップS115)の単一点計測分析では、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の場合、表1の中心間距離選定表での対処が不可能となることにより、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1を、中心間距離a=500mm及び375mmの双方で作成したあと、空充判定カーソルt=ts(2)+*(*=16μ秒)として作成する2つの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を式10に適用して得る中心間距離a=500mm及び375mm双方でのグラウト充填状態を表2に適用し、適切な中心間距離aを特定して、この中心間距離aでの単一点計測(No.1またはNo.1´)のグラウト充填状態を正解と判定し、第2の状態判定工程を終了する。
図20のステップS110において、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されている場合(ステップS110:Yes)、ステップS116へ移行し、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが既知か未知かに関わらず、図15の下段に示す単一点計測で、中心間距離aを例えば500mm(j=1)、460mm(j=2)、420mm(j=3)、375mm(j=4)のごとく、または375mm(j=1)、420mm(j=2)、460mm(j=3)、500mm(j=4)のごとく順次変更するごとに、第3の収録工程で受信波G(t)|i=1の収録、第1の分析工程から第4の分析工程を繰り返し、それぞれの受信波G(t)|j=1~nvの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncj=1~nvを求め、第3の状態判定工程へ移行する。そして、第3の状態判定工程は、グラウト充填状態の分析方法として、3つ方法をオペレータに提供している。
第3の状態判定工程で提供される分析法(1)は、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~4の形状変化の様相を、オペレータが順次視認していくことで、単一点計測分析でのグラウト充填状態が中心間距離aの変化に伴い、誤判定から正しい判定結果へ、または正しい判定結果から誤判定へ変化する様子、または中心間距離aの変化による判定結果が同一となる様子を確認でき、単一点計測の正確なグラウト充填状態をオペレータの技術的判断で特定することができる。
また、第3の状態判定工程で提供される分析法(2)は、2段目シースかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcが未知の場合、No.1の測点、またはNo.1´の測点におけるグラウト充填状態を、例えば中心間距離a=500の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1をSPtj=1とし、中心間距離a=375mmの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=4をSPtj=4として、式15のグラウト充填状態判定式に適用し、双方のグラウト充填状態の判定結果を求め、表2の単一点計測判定表での比較検討で適切な中心間距離aを特定し、当該中心間距離aによる分析結果を正しいグラウト充填状態と判定する。
なお、分析法(1)と分析法(2)とを併用することで、オペレータは、より明解にグラウト充填状態を確認できる。
また、第3の状態判定工程で提供される分析法(3)は、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが既知の場合、表1の中心間距離選定表で適切な中心間距離aが、カウント値j=1及びカウント値j=4のいずれであるかを特定し、対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|(=SPt)を用いて、グラウト充填状態を判定する。
なお、分析法(1)と分析法(3)とを併用することで、オペレータは、より明解にグラウト充填状態を確認できる。
上述した第3の状態判定工程で提供される3つの分析法は、グラウト充填状態の判定方法として、計測分析の省力化に絶大な効果を発揮する。さらに、この中心間距離aを順次変化させて計測する方法は、オペレータにとって、分析理論の確認、及び分析技術の向上の手段として位置付けることもできる。
<A(f)nGフィルタ関数を用いた閾値反射S波自動化分析>
上述の「閾値を用いた反射S波自動化分析」、及び「閾値反射S波自動化分析事例」では、シースかぶり厚dsが150mm以下の計測対象シースでの多点計測(nw≧2)及び単一点計測(nw=1)において、受信波(i=1~nw)、及び加算平均波(i=nw+1)で作成されたスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、図49(a)の左図に示すA(f)フィルタ関数を乗じて得たFA(f)|i=1~nw+1を分析用スペクトルとしている。
本閾値反射S波自動化分析は、図49(a)の左図に示すA(f)フィルタ関数にかえて、図49の右図に示すA(f)nGフィルタ関数をスペクトルF(f)|i=1~nw+1に乗じて得る図49(b)に示す分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を用いて、グラウト充填状態を分析判定している。
(f)nGフィルタ関数は、振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、中心振動数fを20kHzとし、振動数f を80kHzとして、中心振動数fのスペクトルと、振動数f~振動数f の帯域のスペクトルとを抽出するフィルタ関数である(f は図中においてfの上に“~”を付された符号を表す)。このA(f)nGフィルタ関数によって抽出されたスペクトルFA(f)|i=1~nw+1を分析用スペクトルとしている。
このA(f)nGフィルタ関数は、図49(a)の右図に示す振動数fを(f+f )/2の前後でオペレータが設定する値とし、振動数f=0.0で「0.0」となり、中心振動数fで「1.0」となるsin形状増加関数、中心振動数fで「1.0」となり、中心振動数f×2で「0.0」となるsin形状減少関数、中心振動数f×2以上で「0.0」となる関数である。
また、指数nGは、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1において、振動数fから振動数f の間でi=1~nw+1のスペクトル値のいずれかが最大となるときの値である。
以下、図19及び図20のA(f)フィルタ関数を用いた閾値反射S波自動化分析の流れに沿って、A(f)nGフィルタ関数を用いたグラウト充填状態の分析判定について説明する。
まず、準備工程において、シース反射S波計測が多点計測、単一点計測、あるいは中心間距離aを順次変更する単一点計測のいずれであるかを設定し、その後、上述したA(f)フィルタ関数を用いた閾値反射S波自動化分析と同じ流れで、計測対象シースが埋設されたコンクリートのコンクリート縦波音速Vを求める。
次に、多点計測の場合、第1の収録工程において、上述したA(f)フィルタ関数を用いた閾値反射S波自動化分析における多点計測と同じ流れで、レーダ計測かぶり厚ds|RC左、及びds|RC右を取得する。そして、分析用1次かぶり厚ds(1)をds(1)=(ds|RC左+ds|RC右)/2によって取得し、かつ分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を所得する。さらに計測対象シースの外径をφとし、Δds=0.6×φとして、分析用2次かぶり厚ds(2)をds(2)=ds(1)+Δdsによって取得する。
また、単一点計測の場合、第1の収録工程の代わりに第2の収録工程において、上述したA(f)フィルタ関数を用いた閾値反射S波自動化分析における単一点計測と同じ流れで、レーダ計測かぶり厚ds|RCを取得する。そして、分析用1次かぶり厚ds(1)をds(1)=ds|RCによって取得し、かつ分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を所得する。さらに計測対象シースの外径をφとし、Δds=0.6×φとして、分析用2次かぶり厚ds(2)をds(2)=ds(1)+Δdsによって取得する。
その後、第1の入力受付工程において、オペレータの入力操作による2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの入力を受け付けて、これらを記憶したのち、第2の入力受付工程へ移行する。なお、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知の場合、オペレータの操作によって2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcの入力をスキップする。
この場合、準備工程で多点計測が設定されていると、多点計測を許可せず、単一点計測への変更を促す案内画面を自動的に表示部135に表示したのち、第2の収録工程へ移行し、分析用1次反射S波起生時刻ts(1)、分析用1次かぶり厚ds(1)、分析用2次かぶり厚ds(2)を求め直し、第1の入力受付工程を経て、第2の入力受付工程へ移行する。
次に、第2の入力受付工程において、A(f)フィルタ関数を用いた場合と同様の流れで、オペレータが経験則で決定した中心間距離a、または表1の中心間距離選定表に基づいて、オペレータが決定した中心間距離aの入力を受け付けて、これを記憶したのち、第3の収録工程へ移行する。
その後、第3の収録工程において、A(f)フィルタ関数を用いた場合と同様の流れで、i=1~nwとする多点計測、またはi=1とする単一点計測における受信波G(t)|、スペクトルF(f)|、及び分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を取得する。
なお、以降の工程のなかで、中心間距離aの変更による再計測が指示された場合、その都度、オペレータの操作を受付けて、第3の収録工程を行い、受信波G(t)|及びスペクトルF(f)|を収録し直し、シース反射S波起生時刻ts(2)を取得し直す。
第1の分析工程において、受信波G(t)|i=1~nwと、WAVE加算平均波G(t)|i=nw+1との並びである受信波群G(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、A(f)nGフィルタ関数を乗じて、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を図49(b)に示すごとく作成する。さらに、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1を、FFT逆変換で取得して第2の分析工程へ移行する。
第2の分析工程において、A(f)フィルタ関数を用いた場合と同様の流れで、分析用時系列GA(t)|に、基準時刻tをt=ts(2)+Δth2(ただし、Δth2=16μ秒)とする時刻フィルタTGC1(t)、及び起生時刻tをt=ts(2)とする時刻フィルタTGC2(t)を乗じ、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1、対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1を作成して、第3の分析工程へ移行する。
なお、時刻フィルタTGC1(t)、及び時刻フィルタTGC2(t)の形状は、A(f)フィルタ関数を用いる場合と同一である。
次に、第3の分析工程は、A(f)フィルタ関数を用いる場合、閾値処理で用いる係数である振動数fをオペレータの操作によって設定される50kHz-Δf<f<50kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値としているが、A(f)nGフィルタ関数を用いる場合、振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値に変更し、スペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1ごとに、振動数f以下での最大スペクトル値を基準値「1.0」とし、振動数f以上での最大スペクトル値を「0.5」とする相対値に形状変換したスペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を取得するとともに、これに対応する分析用切り出し波GC(2)(t)|i=1~nw+1を作成し、第4の分析工程へ移行する。
第4の分析工程において、分析用切り出し波GC(2)(t)|i=1~nw+1に台形窓関数Aによる時刻掃引処理を適用し、時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1をSPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求め、これを時刻掃引基準化f~fスペクトル値と名付けている。
さらに、時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1をSPf1,2(2)(f,t)nci=1~nw+1(ただし、nc=2)として求め、これを時刻掃引f,f~fスペクトルと名付けている。その後、図20のステップS110へ移行する。
その後、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが既知の多点計測または単一点計測では、上述のA(f)フィルタ関数を用いた場合と同様の流れで、ステップS110及びステップ111を経て、ステップS112に移行する。そして、収録済みの受信波の中心間距離aが表1の中心間距離選定表に基づいて指定される適切な中心間距離aと異なる場合(ステップS112:No)、時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1とともに、適切な中心間距離aを表示部135に表示して、再計測分析をオペレータに促し、適切な中心間距離aでの第3の収録工程を再度行う。
その後、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、及び第4の分析工程を経て、時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~nw+1を取得し直し、第1の状態判定工程へ移行して、計測対象シースのグラウト充填状態を判定する。
なお、第1の状態判定工程は、A(f)フィルタ関数を用いた場合と同様にしてグラウト充填状態を判定しているため、その詳細な説明を省略する。
ただし、A(f)nGフィルタ関数を用いる第1の状態判定工程は、i=1~nw+1として、A(f)フィルタ関数を用いる第1の状態判定工程の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|、及び時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を、それぞれ時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|、及び時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|に置き換えて、さらに時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nc、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|を、それぞれ時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nc、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)|に置き換えて、グラウト充填状態を判定している。
また、ステップS111において、2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び版厚底部コーナーの路程長dwcが未知の単一点計測の場合(ステップS111:Yes)、上述のA(f)フィルタ関数を用いた場合と同様の流れで、ステップS114に移行し、第2の入力受付工程で設定した初期値の中心間距離aとは異なる表2の単一点計測判定表に登録された中心間距離aで、第3の収録工程を再度行う。
そして、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、及び第4の分析工程を経て、時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~nw+1を追加取得し、第2の状態判定工程へ移行して、計測対象シースのグラウト充填状態を判定する。
なお、第2の状態判定工程は、A(f)フィルタ関数を用いた場合と同様にしてグラウト充填状態を判定しているため、その詳細な説明を省略する。
ただし、A(f)nGフィルタ関数を用いる第2の状態判定工程は、i=1として、A(f)フィルタ関数を用いる第2の状態判定工程の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|、及び時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を、それぞれ時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|、及び時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|に置き換えて、さらに時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nc、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|を、それぞれ時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nc、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)|に置き換えて、グラウト充填状態を判定している。
また、ステップS110において、中心間距離aを順次変更する単一点計測が選択されている場合(ステップS110:Yes)、ステップS116に移行し、nv=4としてカウント値j=1~nvとする中心間距離aを500mm(j=1)、460mm(j=2)、420mm(j=3)、及び375mm(j=4)、または375mm(j=1)、420mm(j=2)、460mm(j=3)、及び500mm(j=4)とする時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|j=1~4、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncj=1~4を取得するまで、ステップS117においてnw=1として第3の収録工程、第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、及び第4の分析工程を繰り返す。
その後、第3の状態判定工程へ移行して、中心間距離aの変化に伴う時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|j=1~nvを用いて、計測対象シースのグラウト充填状態を判定する。
なお、第3の状態判定工程は、3つの分析法(分析法(1)、分析法(2)、及び分析法(3))が提供されているが、A(f)フィルタ関数を用いた場合と同様にしてグラウト充填状態を判定しているため、その詳細な説明を省略する。
ただし、A(f)nGフィルタ関数を用いる第3の状態判定工程は、適切な中心間距離aに対応するカウント値jを1またはnvとして、A(f)フィルタ関数を用いる第3の状態判定工程の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|、及び時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を、それぞれ時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|、及び時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|に置き換えて、さらに時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nc、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)|を、それぞれ時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nc、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)|に置き換えて、グラウト充填状態を判定している。
次に、分析事例として、計測対象シースのかぶり厚が、その長手方向で同一であり、nw=4とする多点計測での受信波を用い、コンクリート打設直後の計測対象シース(削孔で「完全充填」と確認)を、中心間距離a=375mmとした場合の処理の流れで求めた分析用切り出し波GC(2)(t)|i=5を細実線で示す図50(a)、そして分析用切り出し波GC(2)(t)|i=5での台形窓関数Aの時刻tから時刻tへの掃引状況を示す図50(b)、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=5(SP加算)を示す図51を用いて説明する。
図50及び図51に示す分析結果は、版厚dw=400mmであり、さらに、計測対象シースのシースかぶり厚ds(=分析用1次かぶり厚ds(1))が83mm、及び分析用2次かぶり厚ds(2)が106mmであり、2段目シースが存在していない。これにより、図50中の丸数字の「4」を付した縦カーソル付近の時刻から生じた板厚反射P波がシース反射S波に混入しない状態での多点計測による分析とするために、表1の中心間距離選定表に基づき、中心間距離a=375mmとする受信波G(t)|i=1~4の加算平均波G(t)|i=5(SP加算)を用いて作成している。
分析用切り出し波GC(2)(t)|i=5を示す図50(a)は、次のような流れで作成している。
まず、準備工程において、コンクリート誘電率βu、及びコンクリート縦波音速Vを取得し、コンクリート横波音速VをV=0.62×Vによって算出する。
次に、第1の収録工程において、RCレーダ計測によるレーダ計測かぶり厚ds|RC左、及びds|RC右に基づいて、分析用1次かぶり厚ds(1)をds(1)=(ds|RC左+ds|RC右)/2によって算出するとともに、Δds=β×φ(ただし、φ=計測対象シースの外径、β=0.6)として、分析用2次かぶり厚ds(2)をds(2)=ds(1)+Δdsによって算出する。さらに、式2に分析用1次かぶり厚ds(1)を適用し、分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求めている。
その後、第1の入力受付工程において、オペレータによる入力操作を受け付けて、既知の情報としての2段目シースのかぶり厚d2s、版厚dw、及び路程長dwcを記憶している。
さらに、第2の入力受付工程において、オペレータによる入力操作を受け付けて、オペレータが決定した中心間距離a(ここでは、375mmとする)を記憶している。
この際、オペレータは、表1の中心間距離選定表を参照して、分析用2次かぶり厚ds(2)=106mm、及び版厚dw=400mmに対応する適切な中心間距離a=375mmを決定している。
次に、第3の収録工程において、上述の中心間距離a=375mmでの多点計測における受信波G(t)|i=1~4、及びスペクトルF(t)|i=1~4を取得し、式2で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて、分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を取得している。
次に、第1の分析工程において、スペクトルF(f)|i=1~4の加算平均スペクトルをi=5として得るスペクトルF(f)|i=1~5に、A(f)nGフィルタ関数(ただし、本例ではf=(f+f )/2、nG=4)を乗じ、分析用スペクトルFA(f)|i=1~5を作成し、これをFFT変換して得る分析用時系列GA(t)|i=5を図50(a)の中の細実線で表示している。
その後、第2の分析工程において、起生時刻tをt=ts(2)とする時刻フィルタTGC4(t)を、分析用時系列GA(t)|i=1~5に乗じ、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~5(図示省略)を取得している。
本来、起生時刻t=ts(2)+Δth2(ただし、Δth2=16μ秒)とする上述の時刻フィルタTGC1(t)、及び起生時刻t=ts(2)とする上述の時刻フィルタTGC2(t)を、分析用時系列GA(t)|i=1~5に乗じて、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~5を求める手順であるが、本モデルが、コンクリート打設直後であり、シース反射S波の振幅が極めて大きく生じるため、図示する時刻フィルタTGC4(t)の使用でもよしとし説明を続ける。
なお、図50(a)中において、丸数字の「4」を付した縦カーソル付近の時刻から板厚反射P波が生じているが、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~4のシース反射S波起生時刻帯域には混入しておらず、かつ2段目シースの無い計測例のため、表1の中心間距離選定表で求めた中心間距離a=375mmでの多点計測受信波を用いた分析では、上述の問題点(5)による誤分析が生じない。
第3の分析工程において、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~5に対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~5に対して閾値処理を適用して、スペクトルFC(2)(f)|i=1~5を取得するとともに、これに対応する分析用切り出し波GC(2)(t)|i=1~5を作成している。図50(a)中において、分析用切り出し波GC(2)(t)|i=5を太実線で示している。
なお、A(f)nGフィルタ関数を用いた閾値処理は、A(f)フィルタ関数を用いた閾値処理と同様に、振動数f以下での最大スペクトル値を基準値「1.0」とし、振動数f以上での最大スペクトル値を本例では「0.5」とする相対値に形状変換する処理としている。
ただし、振動数fの値は、A(f)フィルタ関数を用いる場合、50kHz-Δf<f<50kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値だが、A(f)nGフィルタ関数を用いる場合、40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値としている。
また、分析用切り出し波GC(2)(t)|i=5と、台形窓関数Aの時刻tから時刻tへの掃引状況とを示す図50(b)は、次のような流れで作成している。
第4の分析工程において、分析用切り出し波GC(2)(t)|i=1~5に台形窓関数Aの掃引処理を適用して、時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~5、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~5(ただし、nc=2)を取得する。
また、時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=5(SP加算)を示す図51は、次のような流れで作成されている。
ステップS112において、表1の中心間距離選定表に基づいて中心間距離a=375mmが適正と判断され、第1の状態判定工程に移行している。
第1の分析工程、第2の分析工程、第3の分析工程、及び第4の分析工程を経て、図示しないが本計測対象シースのグラウト充填状態が測点i=1~4の間で同一と判断されていることより、第1の状態判定工程で時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~5、及び時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~5を用いて、グラウト充填状態を求めている。なお、i=5は測点i=1~4のSP加算としている。
この際、分析結果の1つであるnc=2とする時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=5(SP加算)を、時刻毎に振動数f以下の最大スペクトル値と、振動数f以上の最大スペクトル値とを比較し、大きい方のスペクトル値を「1.0」に基準化して表示すべきだが、全表示時刻での最大スペクトル値を「1.0」に基準化して、図51に示す如くMEM(最大エントロピー法)スペクトル表示で表示部135に表示している。
図51によれば、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)以降の時刻で、振動数f~f でのスペクトルがほとんど生じない分析結果となっており、計測対象シースのグラウト充填状態が「完全充填」であることがわかる。
なお、詳細な図示を省略するが、各測点iの時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~4でも、測点i=1~4の間で分析用2次かぶり厚ds(2)が同一値となっていることより、図51の加算平均波による時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=5(SP加算、nc=2)と略同一の分析結果となり、全ての測点でグラウト充填状態が「完全充填」となる。このため、計測対象シースは、測点i=1~4の範囲で、空隙と充填部分との境界が存在しないと断定できる。
また、説明を簡潔にするために、時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~5の図示を省略しているが、空充判定カーソルt=ts(2)+*(ただし、*=16μ秒)の時刻における時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~5でも、式10への適用でグラウト充填状態が「完全充填」となる。
(f)nGフィルタ関数を用いた本分析事例では、多数の計測対象シースを用いた分析結果の提示を割愛し、図51に示す1つの計測対象シースの分析結果を、時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=5(SP加算)で示している。
各測点での時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~5は、分析に供した計測対象シースの長手方向かぶり厚が同一ということより、測点i=1~4でほとんど同一となり、かつ図51の時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=5とも同一となる。このため、時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~4の図示を割愛している。さらに、時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~4,i=5の図示も煩雑ゆえ、行っていない。
以上のような動作を実現する反射S波閾値分析法に基づいた非破壊検査装置10、及びこれを用いた非破壊検査方法は、グラウト充填状態を効率よく、かつ精度よく非破壊検査することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の計測対象シースは、実施形態の計測対象のシース管2に対応し、
以下同様に、
記憶手段は、記憶部133に対応し、
誘電率算出手段、再取得手段、スペクトル取得手段、起生時刻取得手段、起生時刻再取得手段、コンクリート縦波音速取得手段、第1収録手段、第2収録手段、第3収録手段、第1分析手段、第2分析手段、第3分析手段、第4分析手段、第1判定手段、第2判定手段、及び第3判定手段は、解析機器13の制御部136に対応し、
所定の中心間距離は、中心間距離=110mmに対応し、
設定手段、第1の入力受付手段、及び第2の入力受付手段は、操作部134に対応し、
設定工程、誘電率算出工程、再取得工程、スペクトル取得工程、起生時刻取得工程、起生時刻再取得工程、及びコンクリート縦波音速取得工程は、ステップS101に対応し、
第1収録手段工程は、ステップS102:Yes、及びステップS103に対応し、
第2収録工程は、ステップS102:No、及びステップS104に対応し、
第1の入力受付工程は、ステップS105に対応し、
第2の入力受付工程は、ステップS106対応し、
第3収録工程は、ステップS107に対応し、
第1分析工程は、ステップS108に対応し、
第2分析工程、第3分析工程、及び第4分析工程は、ステップS109に対応し、
第1判定工程は、ステップS110:No、ステップS111:No、ステップS112、及びステップS113に対応し、
第2判定工程は、ステップS110:No、ステップS111:Yes、ステップS114、及びステップS115に対応し、
第3判定工程は、ステップS110:Yes、ステップS116、ステップS117、及びステップS118に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の実施形態において、非破壊検査装置10とは別体のRCレーダ計測器としたが、これに限定せず、解析機器13にRCレーダ計測器が電気的に接続された非破壊検査装置としてもよい。この場合、解析機器13の制御部136は、RCレーダ計測器が取得した各種情報を直接的に取得する。
2…シース管
10…非破壊検査装置
11a…発信探触子
12a…受信探触子
13…解析機器
133…記憶部
134…操作部
135…表示部
136…制御部

Claims (4)

  1. 超音波を発信する発信探触子、及び超音波を受信する受信探触子からなる一対の探触子と、
    少なくとも各種情報を表示する表示部を有して計測対象シースのグラウト充填状態を分析判定する解析機器とを備えた非破壊検査装置であって、
    測点i=1~nwとする計測を多点計測とし、測点i=1とする計測を単一点計測として、
    2段目シースのかぶり厚、版厚、あるいは版厚底部コーナーまでの距離である路程長と、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせに応じた発信探触子と受信探触子との中心間距離が複数登録された中心間距離選定表、及びグラウト充填の判定結果の組み合わせに対応する最適な中心間距離が登録された単一点計測判定表を記憶する記憶手段と、
    多点計測、単一点計測、または中心間距離を順次変更する単一点計測のいずれかを選択するオペレータの入力設定操作を受付ける設定手段と、
    計測対象シースの断面中心からコンクリート表面への垂線と前記コンクリート表面との交点をとおる前記計測対象シースの長手方向に沿った前記コンクリート表面の仮想線分上において、前記長手方向の任意の位置におけるレーダ計測で得たシースかぶり厚であるレーダ計測かぶり厚ds|RC、及び前記任意の位置における削孔で得たシースかぶり厚である削孔かぶり厚ds|が同一になるようにコンクリート誘電率βuを算出する誘電率算出手段と、
    前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測で得た前記計測対象シースのレーダ計測かぶり厚ds|RCを再取得する再取得手段と、
    前記発信探触子及び前記受信探触子を所定の中心間距離で、前記計測対象シース直上の前記コンクリート表面に配置した状態において、前記発信探触子から前記計測対象シースに向かって、所定時刻間隔で超音波を連続発信するとともに、発信のたびに前記受信探触子で得た収録波を加算平均した受信波を取得し、該受信波をFFT変換して対応するスペクトルを取得するスペクトル取得手段と、
    振動数f=0.0から(f-Δf)の間が「0.0」、振動数f=(f-Δf)からfの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+Δf)の間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+Δf)以上で「0.0」となるF3(f)フィルタ関数を、前記スペクトルに乗じて得たスペクトルに対応する時系列から、シース反射P波起生時刻tを求める起生時刻取得手段と、
    前記シース反射P波起生時刻tを基準時刻とし、Δtを0.0~(t-50)の間でオペレータが指示する値として、時刻t=0.0からt-Δtの間が「0.0」となり、時刻t=t-Δtからtの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、時刻t=tからt+Δtの間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、時刻t=t+Δt以上の時刻が「0.0」となる時刻フィルタTGC4(t)を、前記F3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列に乗じるとともに、時刻フィルタTGC4(t)の基準時刻を前記F3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列の起生時刻に移動させるオペレータの操作を受け付けてシース反射P波起生時刻tを再度求める起生時刻再取得手段と、
    下式のdsを前記再取得手段で得た前記レーダ計測かぶり厚ds|RCに置き換え、下式のtに前記起生時刻再取得手段で得た前記シース反射P波起生時刻tを適用して展開し、コンクリート縦波音速Vを取得するコンクリート縦波音速取得手段と、
    Figure 2022075582000036
    多点計測の場合、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測によって得られた測点i=1でのレーダ計測かぶり厚ds|RC左、及び測点i=nwでのレーダ計測かぶり厚ds|RC右との平均値を分析用1次かぶり厚ds(1)として算出し、下式で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、さらに前記計測対象シースの外径φによって決まる係数をβとする増分量Δds=β×φを、前記分析用1次かぶり厚ds(1)に加算して分析用2次かぶり厚ds(2)を算出する第1収録手段と、
    Figure 2022075582000037
    単一点計測または中心間距離を順次変更する単一点計測の場合、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測によって得られたレーダ計測かぶり厚ds|RCを分析用1次かぶり厚ds(1)として取得し、上式で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、さらに前記分析用1次かぶり厚ds(1)に前記増分量Δdsを加算して分析用2次かぶり厚ds(2)を算出する第2収録手段と、
    オペレータの操作による前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの路程長の入力操作を受付ける第1の入力受付手段と、
    オペレータが決定した前記発信探触子と前記受信探触子との中心間距離の入力操作を受け付ける第2の入力受付手段と、
    前記受信探触子に対して前記オペレータが決定した中心間距離を隔てて配置された前記発信探触子から前記計測対象シースに向かって、所定時刻間隔で超音波を連続発信し、発信のたびに前記受信探触子で得た収録波を加算平均して受信波G(t)|i=1~nwを取得するとともに、該受信波G(t)|i=1~nwをFFT変換して対応するスペクトルF(f)|i=1~nwを取得したのち、上式の分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて、前記中心間距離での分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を算出する第3収録手段と、
    振動数fをオペレータの操作によって設定される50kHz-Δf<f<50kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、振動数fを((f-10)/2)kHzとし、振動数fを80kHzとして、振動数f=-10kHzからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fからfが「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=fからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+30kHz)が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+30kHz)以上で「0.0」となる関数をA(f)フィルタ関数として、多点計測(nw≧2)または単一点計測(nw=1)あるいは中心間距離を順次変更する単一点計測(nw=1)の前記受信波G(t)|i=1~nwと、これらの加算平均波G(t)|i=nw+1との並びである受信波群G(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、前記A(f)フィルタ関数を乗じ、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成するとともに、該分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1をFFT逆変換で取得する第1分析手段と、
    基準時刻tをt=ts(2)+Δth2とする時刻フィルタTGC1(t)を、時刻t=0が「0.0」となり、時刻tが「1.0」となるsin形状増加線分、時刻t=t以降が「1.0」となるTGCA(t)関数を用いて、(TGCA(t))neで算出される関数とし、基準時刻tをt=ts(2)とする時刻フィルタTGC2(t)を、時刻t=0.0から時刻t=tまでが「1.0」、時刻t=tで「1.0」となり時刻t=400μ秒で「0.0」となるsin形状減少線分、時刻t=400μ秒以降で「0.0」となるTGCB(t)関数を用いて、(TGCB(t))nfで算出される関数として、前記分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1に、前記時刻フィルタTGC1(t)、及び前記時刻フィルタTGC2(t)を乗じて、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1を取得するとともに、該分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1をFFT変換で取得する第2分析手段と、
    該第2分析手段で取得した前記スペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1ごとに、振動数fよりも低振動数側の最大スペクトル値を「1.0」とし、振動数fよりも高振動数側の最大スペクトル値を閾値ασとする相対値に形状変換する閾値処理を適用して、スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を取得するとともに、該スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1のFFT逆変換で分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得し、さらに該分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を、i=1~nw+1ごとに最大振幅を「1.0」とする相対値に形状変換する第3分析手段と、
    Δts1及びΔts2を自動的またはオペレータによって設定される値として、台形窓関数Aを時刻t=ts(2)-Δts1から時刻t=ts(2)+Δts2までΔt間隔で移動させるたびに、前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1に前記台形窓関数Aを乗じて切り出した時系列に対応するスペクトルにおいて、i=1~nw+1ごとに前記振動数f以下での最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換した際、前記振動数f以上での最大スペクトル値を時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1として作成するとともに、前記振動数f以上及び前記振動数f以下での最大スペクトル値を時刻ごとに比較して、大きい方の最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換して時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を作成する第4分析手段と、
    前記中心間距離での多点計測または単一点計測において、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記路程長が既知の場合、前記中心間距離選定表に基づいて第3収録手段による受信波の収録時の中心間距離が適切か否かを自動的に判定し、中心間距離が不適切であれば、前記中心間距離選定表に登録された適切な中心間距離での前記第3収録手段による収録によって受信波G(t)|i=1~nwを再度取得し、該再取得した受信波G(t)|i=1~nwに基づいた前記第1分析手段から前記第4分析手段による分析によって時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を再取得し、前記中心間距離が適切であれば、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を用いて計測対象シースのグラウト充填状態を判定する第1判定手段と、
    前記中心間距離での単一点計測において、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記路程長が未知の場合、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了したか否かを判定し、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了していなければ、前記第3収録手段による収録によって、未計測の中心間距離での受信波G(t)|i=1を取得したのち、該取得した受信波G(t)|i=1~nwに基づいた前記第1分析手段から前記第4分析手段による分析によって、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での受信波G(t)|i=1ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1を取得し、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了していれば、前記単一点計測判定表に基づいて選定した中心間距離での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を用いて前記計測対象シースのグラウト充填状態を判定する第2判定手段と、
    中心間距離を順次変更する単一点計測の場合、前記中心間距離選定表及び前記単一点計測判定表に登録された中心間距離、並びに当該中心間距離の間を段階的に補間する中心間距離での単一点計測で得たカウント値j=1~nvの受信波G(t)|j=1~nvごとに時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncj=1~nvを取得したのち、複数の前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを用いて、前記計測対象シースのグラウト充填状態を判定可能にする第3判定手段とを備え、
    前記第1判定手段は、
    i=1~nwの多点計測の場合、下式で求められるWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1をFFT変換して、スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1を取得し、
    Figure 2022075582000038
    さらに下式でスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1を作成し、スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1を作成し、
    Figure 2022075582000039
    前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を前記SP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた前記第4分析手段による分析によって、SP加算の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を作成し、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)をSPtとして求めたのち、前記SPtを下式で示すグラウト充填状態判定式に適用してグラウト充填状態の判定結果を取得し、i=1の単一点計測の場合、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPtとして求めて、前記SPtを下式で示すグラウト充填状態判定式に適用してグラウト充填状態の判定結果を取得し、
    Figure 2022075582000040
    i=1~nw+1の多点計測におけるSP加算での全てのSPti=1~nw+1、またはi=1の単一点計測におけるSPti=1が「未充填」または「充填不足」あるいは「完全充填」と判定された場合、前記判定結果を計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用して、該判定結果と前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示し、多点計測における測点i=n1~n2が「未充填または充填不足」、測点i=n1´~n2´が「完全充填」と判定された場合、測点i=n1~n2の加算平均波としてWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を、下式に基づいて作成して、
    Figure 2022075582000041
    さらに、前記WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)のFFT変換によってスペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成するとともに、下式を用いてスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、
    Figure 2022075582000042
    その後、前記スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、さらにまた、測点i=n1´~n2´の加算平均波としてWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を、下式に基づいて作成し、
    Figure 2022075582000043
    さらに、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)のFFT変換によってスペクトルFC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成するとともに、下式を用いてスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成し、
    Figure 2022075582000044
    その後、前記スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成して、前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する前記SP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた前記第4分析手段による分析によって、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を求め、測点i=n1~n2に対応する前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をSPtとして、前記グラウト充填状態判定式に適用して、i=n1~n2,nw+1ごとのグラウト充填状態を判定するとともに、測点i=n1´~n2´に対応する前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をSPtとして、前記グラウト充填状態判定式に適用して、i=n1´~n2´,nw+1ごとのグラウト充填状態を判定し、i=n1~n2,nw+1及びi=n1´~n2´,nw+1の判定結果と、該判定結果に対応するi=n1~n2,nw+1及びi=n1´~n2´,nw+1の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを表示部に表示する判定手段であり、
    前記第2判定手段は、
    空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻において、単一点計測での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を前記単一点計測判定表の前記中心間距離ごとに算出し、該算出した時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPti=1として、下式で示すグラウト充填状態判定式に適用して、グラウト充填状態の判定結果を前記中心間距離ごとに取得し、
    Figure 2022075582000045
    前記中心間距離ごとの判定結果を前記単一点計測判定表に適用して、前記判定結果の組み合わせに対応する適切な中心間距離での前記判定結果を、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1とを前記表示部に表示する判定手段であり、
    前記第3判定手段は、
    前記中心間距離選定表及び前記単一点計測判定表に登録された中心間距離、並びに当該中心間距離の間を段階的に補間する中心間距離をそれぞれカウント値j=1~nvに関連付け、該カウント値j=1~nvに対応する前記中心間距離での単一点計測で得た複数の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを、オペレータによるグラウト充填状態の比較判定が可能なように前記解析機器の前記表示部に表示させ、さらに前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの前記路程長が未知の場合、前記カウント値j=1,nvに対応する前記中心間距離ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvに基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvをSPt*j=1,nvとして求め、該SPt*j=1,nvを下式に示すグラウト充填状態判定式に適用して、前記カウント値j=1,nvの前記中心間距離ごとの判定結果を取得し、該取得した判定結果を前記単一点計測判定表に適用して得た適切な中心間距離に対応するカウント値jの判定結果を、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示し、
    Figure 2022075582000046
    または、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの前記路程長が既知の場合、前記中心間距離選定表で適切な中心間距離を特定し、該適切な中心間距離に対応するカウント値j=1またはnvの前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|に基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|をSPt*として求め、該SPt*を上式のグラウト充填状態判定式に適用して、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示する判定手段である
    非破壊検査装置。
  2. 多点計測の場合をnw≧2、単一点計測の場合をnw=1として、
    前記第1分析手段は、
    前記A(f)フィルタ関数に代えてA(f)nGフィルタ関数を、スペクトルF(f)|i=1~nw+1に乗じて分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成するとともに、該分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1をFFT逆変換で取得する手段であり、
    前記A(f)nGフィルタ関数は、
    振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、中心振動数fを20kHz、f を80kHz、振動数fを(f+f )/2の前後でオペレータが設定する値として、振動数f=0.0で「0.0」となり、振動数fで「1.0」となるsin形状増加関数、振動数fで「1.0」となり、振動数f×2で「0.0」となるsin形状減少関数、振動数f×2以上で「0.0」となる関数であり、
    前記指数nGは、
    前記分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1のいずれかで振動数f~f の間でのスペクトル値が最大となるときの値であり、
    前記第3分析手段は、
    前記閾値処理における振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値として、前記スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1、及び前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得する手段であり、
    前記第4分析手段は、
    前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求めるとともに、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~nw+1として求める手段であり、
    前記第1判定手段、前記第2判定手段、及び前記第3判定手段は、
    前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求め、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを前記時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncとして求めてグラウト充填状態を判定する手段であり、
    前記第1判定手段は、
    i=1の単一点計測の場合、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1として求めてグラウト充填状態を判定し、i=1~nwの多点計測の場合、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求めてグラウト充填状態を判定する手段であり、
    前記第2判定手段は、
    前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1として求めてグラウト充填状態を判定する手段であり、
    前記第3判定手段は、
    適切な中心間距離に対応するカウント値j=1またはnvの前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求め、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを前記時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncとして求めるとともに、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求めてグラウト充填状態を判定する手段である
    請求項1に記載の非破壊検査装置。
  3. 超音波を発信する発信探触子、及び超音波を受信する受信探触子からなる一対の探触子と、少なくとも各種情報を表示する表示部を有して計測対象シースのグラウト充填状態を分析判定する解析機器とを備えた装置を用いた非破壊検査方法であって、
    測点i=1~nwとする計測を多点計測とし、測点i=1とする計測を単一点計測として、
    2段目シースのかぶり厚、版厚、あるいは版厚底部コーナーまでの距離である路程長と、分析用2次かぶり厚ds(2)との組み合わせに応じた発信探触子と受信探触子との中心間距離が複数登録された中心間距離選定表、及びグラウト充填の判定結果の組み合わせに対応する最適な中心間距離が登録された単一点計測判定表を記憶する記憶工程と、
    多点計測、単一点計測、または中心間距離を順次変更する単一点計測のいずれかを選択するオペレータの入力設定操作を受付ける設定工程と、
    計測対象シースの断面中心からコンクリート表面への垂線と前記コンクリート表面との交点をとおる前記計測対象シースの長手方向に沿った前記コンクリート表面の仮想線分上において、前記長手方向の任意の位置におけるレーダ計測で得たシースかぶり厚であるレーダ計測かぶり厚ds|RC、及び前記任意の位置における削孔で得たシースかぶり厚である削孔かぶり厚ds|が同一になるようにコンクリート誘電率βuを算出する誘電率算出工程と、
    前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測で得た前記計測対象シースのレーダ計測かぶり厚ds|RCを再取得する再取得工程と、
    前記発信探触子及び前記受信探触子を所定の中心間距離で、前記計測対象シース直上の前記コンクリート表面に配置した状態において、前記発信探触子から前記計測対象シースに向かって、所定時刻間隔で超音波を連続発信するとともに、発信のたびに前記受信探触子で得た収録波を加算平均した受信波を取得し、該受信波をFFT変換して対応するスペクトルを取得するスペクトル取得工程と、
    振動数f=0.0から(f-Δf)の間が「0.0」、振動数f=(f-Δf)からfの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+Δf)の間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+Δf)以上で「0.0」となるF3(f)フィルタ関数を、前記スペクトルに乗じて得たスペクトルに対応する時系列から、シース反射P波起生時刻tを求める起生時刻取得工程と、
    前記シース反射P波起生時刻tを基準時刻とし、Δtを0.0~(t-50)の間でオペレータが指示する値として、時刻t=0.0からt-Δtの間が「0.0」となり、時刻t=t-Δtからtの間が「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、時刻t=tからt+Δtの間が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、時刻t=t+Δt以上の時刻が「0.0」となる時刻フィルタTGC4(t)を、前記F3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列に乗じるとともに、時刻フィルタTGC4(t)の基準時刻を前記F3(f)フィルタ関数を乗じて得た時系列の起生時刻に移動させるオペレータの操作を受け付けてシース反射P波起生時刻tを再度求める起生時刻再取得工程と、
    下式のdsを前記再取得工程で得た前記レーダ計測かぶり厚ds|RCに置き換え、下式のtに前記起生時刻再取得工程で得た前記シース反射P波起生時刻tを適用して展開し、コンクリート縦波音速Vを取得するコンクリート縦波音速取得工程と、
    Figure 2022075582000047
    多点計測の場合、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測によって得られた測点i=1でのレーダ計測かぶり厚ds|RC左、及び測点i=nwでのレーダ計測かぶり厚ds|RC右との平均値を分析用1次かぶり厚ds(1)として算出し、下式で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、さらに前記計測対象シースの外径φによって決まる係数をβとする増分量Δds=β×φを、前記分析用1次かぶり厚ds(1)に加算して分析用2次かぶり厚ds(2)を算出する第1収録工程と、
    Figure 2022075582000048
    単一点計測または中心間距離を順次変更する単一点計測の場合、前記コンクリート誘電率βuを用いたレーダ計測によって得られたレーダ計測かぶり厚ds|RCを分析用1次かぶり厚ds(1)として取得し、上式で分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を求め、さらに前記分析用1次かぶり厚ds(1)に前記増分量Δdsを加算して分析用2次かぶり厚ds(2)を算出する第2収録工程と、
    オペレータの操作による前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの路程長の入力操作を受付ける第1の入力受付工程と、
    オペレータが決定した前記発信探触子と前記受信探触子との中心間距離の入力操作を受け付ける第2の入力受付工程と、
    前記受信探触子に対して前記オペレータが決定した中心間距離を隔てて配置された前記発信探触子から前記計測対象シースに向かって、所定時刻間隔で超音波を連続発信し、発信のたびに前記受信探触子で得た収録波を加算平均して受信波G(t)|i=1~nwを取得するとともに、該受信波G(t)|i=1~nwをFFT変換して対応するスペクトルF(f)|i=1~nwを取得したのち、上式の分析用1次反射S波起生時刻ts(1)を分析用2次反射S波起生時刻ts(2)に、分析用1次かぶり厚ds(1)を分析用2次かぶり厚ds(2)に置き換えて、前記中心間距離での分析用2次反射S波起生時刻ts(2)を算出する第3収録工程と、
    振動数fをオペレータの操作によって設定される50kHz-Δf<f<50kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、振動数fを((f-10)/2)kHzとし、振動数fを80kHzとして、振動数f=-10kHzからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fからfが「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=fからfが「0.0から1.0」となるsin形状増加関数、振動数f=fから(f+30kHz)が「1.0から0.0」となるsin形状減少関数、振動数f=(f+30kHz)以上で「0.0」となる関数をA(f)フィルタ関数として、多点計測(nw≧2)または単一点計測(nw=1)あるいは中心間距離を順次変更する単一点計測(nw=1)の前記受信波G(t)|i=1~nwと、これらの加算平均波G(t)|i=nw+1との並びである受信波群G(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルF(f)|i=1~nw+1に、前記A(f)フィルタ関数を乗じ、分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成するとともに、該分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1をFFT逆変換で取得する第1分析工程と、
    基準時刻tをt=ts(2)+Δth2とする時刻フィルタTGC1(t)を、時刻t=0が「0.0」となり、時刻tが「1.0」となるsin形状増加線分、時刻t=t以降が「1.0」となるTGCA(t)関数を用いて、(TGCA(t))neで算出される関数とし、基準時刻tをt=ts(2)とする時刻フィルタTGC2(t)を、時刻t=0.0から時刻t=tまでが「1.0」、時刻t=tで「1.0」となり時刻t=400μ秒で「0.0」となるsin形状減少線分、時刻t=400μ秒以降で「0.0」となるTGCB(t)関数を用いて、(TGCB(t))nfで算出される関数として、前記分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1に、前記時刻フィルタTGC1(t)、及び前記時刻フィルタTGC2(t)を乗じて、分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1を取得するとともに、該分析用切り出し波GB(2)(t)|i=1~nw+1に対応するスペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1をFFT変換で取得する第2分析工程と、
    該第2分析工程で取得した前記スペクトルFB(2)(f)|i=1~nw+1ごとに、振動数fよりも低振動数側の最大スペクトル値を「1.0」とし、振動数fよりも高振動数側の最大スペクトル値を閾値ασとする相対値に形状変換する閾値処理を適用して、スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1を取得するとともに、該スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1のFFT逆変換で分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得し、さらに該分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を、i=1~nw+1ごとに最大振幅を「1.0」とする相対値に形状変換する第3分析工程と、
    Δts1及びΔts2を自動的またはオペレータによって設定される値として、台形窓関数Aを時刻t=ts(2)-Δts1から時刻t=ts(2)+Δts2までΔt間隔で移動させるたびに、前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1に前記台形窓関数Aを乗じて切り出した時系列に対応するスペクトルにおいて、i=1~nw+1ごとに前記振動数f以下での最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換した際、前記振動数f以上での最大スペクトル値を時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1として作成するとともに、前記振動数f以上及び前記振動数f以下での最大スペクトル値を時刻ごとに比較して、大きい方の最大スペクトル値を「1.0」とする相対値に形状変換して時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を作成する第4分析工程と、
    前記中心間距離での多点計測または単一点計測において、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記路程長が既知の場合、前記中心間距離選定表に基づいて第3収録工程による受信波の収録時の中心間距離が適切か否かを自動的に判定し、中心間距離が不適切であれば、前記中心間距離選定表に登録された適切な中心間距離での前記第3収録工程による収録によって受信波G(t)|i=1~nwを再度取得し、該再取得した受信波G(t)|i=1~nwに基づいた前記第1分析工程から前記第4分析工程による分析によって時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を再取得し、前記中心間距離が適切であれば、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を用いて計測対象シースのグラウト充填状態を判定する第1判定工程と、
    前記中心間距離での単一点計測において、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記路程長が未知の場合、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了したか否かを判定し、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での計測が完了していなければ、前記第3収録工程による収録によって、未計測の中心間距離での受信波G(t)|i=1を取得したのち、該取得した受信波G(t)|i=1~nwに基づいた前記第1分析工程から前記第4分析工程による分析によって、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での受信波G(t)|i=1ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1を取得し、前記単一点計測判定表に基づいて選定した中心間距離での計測が完了していれば、前記単一点計測判定表に登録された全ての中心間距離での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を用いて前記計測対象シースのグラウト充填状態を判定する第2判定工程と、
    中心間距離を順次変更する単一点計測の場合、前記中心間距離選定表及び前記単一点計測判定表に登録された中心間距離、並びに当該中心間距離の間を段階的に補間する中心間距離での単一点計測で得たカウント値j=1~nvの受信波G(t)|j=1~nvごとに時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nv、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncj=1~nvを取得したのち、複数の前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを用いて、前記計測対象シースのグラウト充填状態を判定可能にする第3判定工程とを備え、
    前記第1判定工程は、
    i=1~nwの多点計測の場合、下式で求められるWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1をFFT変換して、スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1を取得し、
    Figure 2022075582000049
    さらに下式でスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1を作成し、スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1を作成し、
    Figure 2022075582000050
    前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を前記SP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた前記第4分析工程による分析によって、SP加算の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を作成し、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)をSPtとして求めたのち、前記SPtを下式で示すグラウト充填状態判定式に適用してグラウト充填状態の判定結果を取得し、i=1の単一点計測の場合、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPtとして求めて、前記SPtを下式で示すグラウト充填状態判定式に適用してグラウト充填状態の判定結果を取得し、
    Figure 2022075582000051
    i=1~nw+1の多点計測におけるSP加算での全てのSPti=1~nw+1、またはi=1の単一点計測におけるSPti=1が「未充填」または「充填不足」あるいは「完全充填」と判定された場合、前記判定結果を計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用して、該判定結果と前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示し、多点計測における測点i=n1~n2が「未充填または充填不足」、測点i=n1´~n2´が「完全充填」と判定された場合、測点i=n1~n2の加算平均波としてWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を、下式に基づいて作成して、
    Figure 2022075582000052
    さらに、前記WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1,n2)のFFT変換によってスペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成するとともに、下式を用いてスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、
    Figure 2022075582000053
    その後、前記スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1,n2)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1,n2)を作成し、さらにまた、測点i=n1´~n2´の加算平均波としてWAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を、下式に基づいて作成し、
    Figure 2022075582000054
    さらに、WAVE加算平均波GC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)のFFT変換によってスペクトルFC(2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成するとともに、下式を用いてスペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成し、
    Figure 2022075582000055
    その後、前記スペクトルFC (2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報を前記スペクトルFC(2)(f)|i=nw+1(n1´,n2´)の位相情報に変更したのち、FFT逆変換でSP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1(n1´,n2´)を作成して、前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1の分析用2次時系列GC(2)(t)|i=nw+1を、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する前記SP加算平均波GC (2)(t)|i=nw+1として、分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を用いた前記第4分析工程による分析によって、測点i=n1~n2、及び測点i=n1´~n2´のそれぞれに対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1、及び時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=nw+1を求め、測点i=n1~n2に対応する前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をSPtとして、前記グラウト充填状態判定式に適用して、i=n1~n2,nw+1ごとのグラウト充填状態を判定するとともに、測点i=n1´~n2´に対応する前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw、及びSP加算平均波による時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=nw+1をSPtとして、前記グラウト充填状態判定式に適用して、i=n1´~n2´,nw+1ごとのグラウト充填状態を判定し、i=n1~n2,nw+1及びi=n1´~n2´,nw+1の判定結果と、該判定結果に対応するi=n1~n2,nw+1及びi=n1´~n2´,nw+1の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1(SP加算)とを表示部に表示する判定工程であり、
    前記第2判定工程は、
    空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻において、単一点計測での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を前記単一点計測判定表の前記中心間距離ごとに算出し、該算出した時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1をSPti=1として、下式で示すグラウト充填状態判定式に適用して、グラウト充填状態の判定結果を前記中心間距離ごとに取得し、
    Figure 2022075582000056
    前記中心間距離ごとの判定結果を前記単一点計測判定表に適用して、前記判定結果の組み合わせに対応する適切な中心間距離での前記判定結果を、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1とを前記表示部に表示する判定工程であり、
    前記第3判定工程は、
    前記中心間距離選定表及び前記単一点計測判定表に登録された中心間距離、並びに当該中心間距離の間を段階的に補間する中心間距離をそれぞれカウント値j=1~nvに関連付け、該カウント値j=1~nvに対応する前記中心間距離での単一点計測で得た複数の時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1~nvを、オペレータによるグラウト充填状態の比較判定が可能なように前記解析機器の前記表示部に表示させ、さらに前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの前記路程長が未知の場合、前記カウント値j=1,nvに対応する前記中心間距離ごとの時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvに基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|j=1,nvをSPt*j=1,nvとして求め、該SPt*j=1,nvを下式に示すグラウト充填状態判定式に適用して、前記カウント値j=1,nvの前記中心間距離ごとの判定結果を取得し、該取得した判定結果を前記単一点計測判定表に適用して得た適切な中心間距離に対応するカウント値jの判定結果を、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示し、
    Figure 2022075582000057
    または、前記2段目シースのかぶり厚、前記版厚、及び前記版厚底部コーナーの前記路程長が既知の場合、前記中心間距離選定表で適切な中心間距離を特定し、該適切な中心間距離に対応するカウント値j=1またはnvの前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|に基づいて、空充判定カーソルt=ts(2)+*の時刻での時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|をSPt*として求め、該SPt*を上式のグラウト充填状態判定式に適用して、計測対象シースのグラウト充填状態を示す判定結果として採用するとともに、該判定結果と対応する時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|とを前記表示部に表示する判定工程である
    非破壊検査方法。
  4. 多点計測の場合をnw≧2、単一点計測の場合をnw=1として、
    前記第1分析工程は、
    前記A(f)フィルタ関数に代えてA(f)nGフィルタ関数を、スペクトルF(f)|i=1~nw+1に乗じて分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1を作成するとともに、該分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1に対応する分析用時系列GA(t)|i=1~nw+1をFFT逆変換で取得する工程であり、
    前記A(f)nGフィルタ関数は、
    振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値とし、中心振動数fを20kHz、f を80kHz、振動数fを(f+f )/2の前後でオペレータが設定する値として、振動数f=0.0で「0.0」となり、振動数fで「1.0」となるsin形状増加関数、振動数fで「1.0」となり、振動数f×2で「0.0」となるsin形状減少関数、振動数f×2以上で「0.0」となる関数であり、
    前記指数nGは、
    前記分析用スペクトルFA(f)|i=1~nw+1のいずれかで振動数f~f の間でのスペクトル値が最大となるときの値であり、
    前記第3分析工程は、
    前記閾値処理における振動数fをオペレータの操作によって設定される40kHz-Δf<f<40kHz+Δf(ただし、Δf=5kHz)の範囲のいずれかの値として、前記スペクトルFC(2)(f)|i=1~nw+1、及び前記分析用2次時系列GC(2)(t)|i=1~nw+1を取得する工程であり、
    前記第4分析工程は、
    前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求めるとともに、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)nci=1~nw+1を時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)nci=1~nw+1として求める工程であり、
    前記第1判定工程、前記第2判定工程、及び前記第3判定工程は、
    前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求め、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを前記時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncとして求めてグラウト充填状態を判定する工程であり、
    前記第1判定工程は、
    i=1の単一点計測の場合、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1として求めてグラウト充填状態を判定し、i=1~nwの多点計測の場合、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1~nw+1を時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1~nw+1として求めてグラウト充填状態を判定する工程であり、
    前記第2判定工程は、
    前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|i=1を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|i=1として求めてグラウト充填状態を判定する工程であり、
    前記第3判定工程は、
    適切な中心間距離に対応するカウント値j=1またはnvの前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求め、前記時刻掃引f,fスペクトルSPf2(2)(f,t)ncを前記時刻掃引f,f~fスペクトルSPf1,2(2)(f,t)ncとして求めるとともに、前記時刻掃引基準化スペクトル値SPf2(2)(t)|を前記時刻掃引基準化f~fスペクトル値SPf1,2(2)(t)|として求めてグラウト充填状態を判定する工程である
    請求項3に記載の非破壊検査方法。
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