JPWO2003048758A1 - 超音波探知装置及びそれを使用した超音波探知方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、コンクリートに埋め込まれた鉄筋等の埋め込み物を検知するのに好適な超音波探知装置及びそれを使用した超音波探知方法に関し、特に、探知精度の向上を図った超音波探知装置及びそれを使用した超音波探知方法に関する。
背景技術
近時、コンクリート構造物の耐震補強方法の1つとして、橋梁の柱及びトンネルの内壁等を鉄皮又はコンクリート製のかた板等で巻き、これと既設コンクリートとの間にモルタル又はコンクリートを抽入する方法がある。この方法で重要なことは、モルタル等が完全に充填されることである。現状では、鉄皮等の表面をハンマー等で打撃し、その打撃音の変化を工事作業員が確認することで、完全に充填されているか否かの判断がされている。
しかしながら、このような方法では、工事作業員の判断における個人差があるため、正確な充填確認が行われるとはいえない。また、モルタル等の充填度、即ち充填の疎密の判断は打音検査ではほとんど不可能である。
そこで、帯域が広い超音波をモルタル等の被探知体に入力し、その近傍で超音波を得ることにより、充填度等を検知する方法が検討されている。この方法では、超音波を任意の周期で連続して発振し、発振波毎に得る受信波から加算平均波を求めている。この従来の超音波探知方法では、探触子の走査方法、被探知体の音速、使用探触子の直径、探触子が1個であるか2個であるか、及び探知距離の組み合わせに応じて、探知妨害波の強度が最も小さく、かつ探知目標物を経由した波が最も大きく励起する超音波の周波数がある。そして、このような周波数を最適周波数と名付け、これを理論的に特定可能な新たなる探知法が巨視的探知理論として認知され始めている。前記最適周波数を中心にして、前記加算平均波から探知目的に応じて、狭帯域又は広帯域成分波を抽出すれば、探知目標物からの反射波又は回折迂回波を特定できるわけである。
しかしながら、探知目標物によっては、上述のような従来の探知方法のみでは、探知することができないか、できたとしても極めて困難になる場合がある。例えば、極めて薄い鉄皮の厚さ並びにこの下に存在する空隙及びモルタルの厚さを同時に測定する際に、上述のような不具合が生じる。また、積層材境界の剥離の有無の探知の際にも、上述のような不具合が生じる。
図1に示すかぶり厚23cmで径19mmの鉄筋の探知において振動子径φ=40mm、共振振動数500kHzよりなる1対の発信及び受信探触子を用い、25cm長さのライン走査を行った結果を図2に示す。探触子間隔を60mmに保守しながら、鉄筋直上で探触子を鉄筋長手方向に移動させ、この移動の間連続して超音波をコンクリートに入力し、1000個の受信波を収録し、これら受信波の加算平均波G(t)より100kHzを中心周波数とする狭帯域成分波GA(t)を取り出しGA2(t)表示したものである。なお、発信探触子内の振動子に積荷する電圧はステップ関数型とし、広帯域超音波が出力できる探触子を用いた。
cが鉄筋、dが厚さに関する反射波である。aは発信と受信探触子との間でコンクリート表面を伝達するたて波及び、表面波と直接波の重畳波である。bはコンクリート内を深くもぐって伝達する直接波である。さて、一般に探知目標波の路程は未知量である。これより、a及びbが妨害波なのか、有意の反射波なのかの判断は不可能ではないが、専門的工学的思考を要する。この判断を容易に行い得る方法が、コンクリートの内部探知を正確に行う上で必要とされている。
本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、コンクリート等の内部探知を高精度に行うことができる超音波探知装置及びそれを使用した超音波探知方法を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明に係る第1の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定量ずつ変更しながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φの演算を行う周波数演算手段と、jをn
合に、任意の第1及び第2の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1は2又は4、n2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記f0となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
、GAj(t)とGAj+1(t)との位相差Δti及び外部から与えられた重み係
行う平均化手段と、前記平均化手段により得られた結果を自然数乗して表示する表示装置と、を有することを特徴とする。
本発明に係る第2の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定量ずつ変更しながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記加算平均手段により得られたnA個の加算平均の総加算平均をG0(t)として求める総加算平均手段と、jをnA以下
任意の第1及び第2の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・F0(f)(n1は2又は4、n2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が予め設定された値となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
前記フーリエ変換手段により得られた結果を自然数乗して表示する表示装置と、を有することを特徴とする。
本発明に係る第3の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定量ずつ変更しながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、被探知体における表面波とたて波との音速比をβL、前記発信探触子及び受信探触子の間隔の変更量をΔa、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式fR1=βL×V/(2×Δa)の演算を行う周波数演算手段と、jを1又は2とし、前記各加算平均を
ルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1は2又は4、n2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数がfR1となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1
行うフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段により得られた結果を自然数乗して表示する表示装置と、を有することを特徴とする。
本発明に係る第4の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φの演算を行う周波数演算手段と、jをnA以下
任意の第1及び第2の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1及びn2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記f0となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
、前記GAj(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じることにより、数式
タリング手段と、前記n5FAj(f)を前記n5毎に表示する表示装置と、を有し、前記時系列フィルタは、所定値tT及びΔtに対し、t=tTで最大値1.0、t=tT−Δt以前の時刻及びt=tT+Δt以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする。
本発明に係る第5の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φ及び数式fs=V/(π×φ)の演算を行う周波数演算手段と、数式n×fs<f0を満たす最大の自然数nを決定するn値決定手段と、jをnA以下の自然数とし、前記各加算平均を
ルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1及びn2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記f0又はfsとなるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1
行うフーリエ変換手段と、前記GAj(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じることにより、数式
タリング手段と、前記FiLTn5(t)・GAj(t)及びn5FAj(f)を前記n5毎に表示する表示装置と、を有し、前記時系列フィルタは、所定値tT及びΔtに対し、t=tTで最大値1.0、t=tT−Δt以前の時刻及びt=tT+Δt以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする。
本発明に係る第6の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、jをnA以下の自然数とし、前記各加算平均を
)に対して、n2を10以下の自然数として、数式
(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じる
行う時系列フィルタリング手段と、前記n5FAj(f)を前記n5毎に表示する表示装置と、を有し、前記時系列フィルタは、所定値tT及びΔtに対し、t=tTで最大値1.0、t=tT−Δt以前の時刻及びt=tT+Δt以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする。
本発明に係る第7の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、jをnA以下の自然数とし、前記各加算平均を
列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じることにより、数式
リング手段と、前記n5FAj(f)を前記n5毎に表示する表示装置と、を有し、前記時系列フィルタは、所定値tT及びΔtに対し、t=tTで最大値1.0、t=tT−Δt以前の時刻及びt=tT+Δt以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする。
本発明に係る第8の超音波探知装置は、発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、他の補正係数をα2、補正係数α2を求めたときの被探知体の音速(標準音速)をVST、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φ及び数式fD=α2×V/VSTの演算を行う周波数演算手段と、f0<fDの場合に(f<+fD)/2で与えられる値をfwとし、f0≧fDの場合にfDをfwとする中心周波数決定手段と、jをnA以
、任意の第1及び第2の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1及びn2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記fwとなるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
、少なくとも前記フーリエ変換手段により得られたGA1(t)及びGA2(t)を自然数np乗することにより、GA1 np(t)及びGA2 np(t)として表示する表示装置と、を有することを特徴とする。
本発明に係る第1の超音波探知方法は、上述の第4の超音波探知装置を使用した超音波探知方法において、コンクリートに互いに平行に埋め込まれた鉄筋のかぶり厚をdRとしたとき、前記発信探触子と前記受信探触子との間隔を3×dR以上とし、1回の加算平均を得るために前記発信探触子と前記受信探触子と結ぶ線分を前記鉄筋の長手方向と平行になるように位置させ、加算平均毎に前記線分を前記鉄筋の長手方向に対して垂直な方向に平行移動させて前記発信探触子及び受信探触子の位置を配置し直す工程と、を有することを特徴とする。
本発明に係る第2の超音波探知方法は、上述の第4の超音波探知装置を使用した超音波探知方法において、コンクリートに埋め込まれた鉄骨のかぶり厚をdSとしたとき、前記発信探触子と前記受信探触子との間隔を3×dS以上とし、1回の加算平均を得るために前記発信探触子と前記受信探触子と結ぶ線分を前記鉄骨上に位置させ、加算平均毎に前記線分上で前記発信探触子及び受信探触子の位置を変更することを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施例に係る超音波探知方法について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
先ず、各実施例で用いる3種の周波数フィルタを定義する。
第1の周波数フィルタA1(f)は、数式1で表される任意の関数P(t)に対して、数式2で表される関数PA(t)を作成するためのフィルタであり、図3に示すように、分析周波数の上限をfmaxとする正弦関数である。
ここで、n1は自然数である。
第2の周波数フィルタA2(f)は、数式1で表される任意の関数P(t)に対して、数式3で表される関数PA(t)を作成するためのフィルタであり、図3に示すように、分析周波数の上限をfmaxとする余弦関数である。
ここで、n2は自然数である。
第3の周波数フィルタA3(f)は、数式1で表される任意の関数P(t)に対して、数式4で表される関数PA(t)を作成するためのフィルタであり、図4に示すように、周波数fA、2fA、fA、…、nfAで最大値1.0となる正弦関数の絶対値で表される。
ここで、n3は自然数である。
なお、上述の関数PA(t)は、次のような演算処理により短時間で求めることができる。
第1の周波数フィルタA1(f)については、Δt=1/(2×fmax)として、数式5乃至数式7から関数Pn1(t)を求め、これを関数PA(t)とすることができる。
第2の周波数フィルタA2(f)については、Δt=1/(2×fmax)として、数式8乃至数式10から関数Pn2(t)を求め、これを関数PA(t)とすることができる。
第3の周波数フィルタA3(f)については、Δt=1/(2×fA)として、数式11乃至数式13から関数Pn3(t)を求め、これを関数PA(t)とすることができる。
次に、本発明の第1の実施例について説明する。図5は本発明の各実施例に使用する超音波探知装置を示すブロック図である。
この超音波探知装置には、ステップ型電圧を外部に印加するステップ型電圧発生器1、このステップ型電圧発生器1から印加されたステップ型電圧を受け被探知材に超音波を発信する発信探触子2a、被探知材内部からの反射波等を受信しこれを電気信号に変換する受信探触子2b、この受信探触子2bにより得られた電気信号を解析する解析装置4及びこの解析装置4による解析結果及びステップ型電圧発生器1により発生されたステップ型電圧の波形を表示する表示装置5が設けられている。
ステップ型電圧発生器1には、ステップ型電圧を発生するステップ電圧発生回路1a、制御された間隔でステップ電圧発生回路1aに電流を供給する電流供給回路1b及びステップ型電圧をステップ型電圧発生器1の外部に送り出すステップ電圧駆動回路1cが設けられている。なお、ステップ型電圧発生回器1からは、例えば500Vのステップ型電圧が発生される。
また、解析装置4には、受信された電気信号を増幅するアンプ回路4a、増幅された信号にフィルタをかけるフィルタ回路4b、フィルタをかけられた信号を変換するアナログ/デジタルコンバータ(ADC)4c、ゲートアレイ(加算平均器)4d及び中央処理装置(CPU)4eが設けられている。ゲートアレイ4dは受信波の加算平均を受信毎に行うものである。CPU4eは、後述の各実施例用のプログラムを実行する。
更に、電流供給回路1bの電流供給間隔、アンプ回路4aのアンプレンジ、フィルタ回路4bの動作、ADC4cの収録インターバル及び収録データ長並びにゲートアレイ4dの加算回数の各制御を行うコントロール回路4fが解析装置4に設けられている。なお、コントロール回路4fはCPU4e又は外付けのノート型パーソナルコンピュータにより制御される。
なお、図1に示す本実施例に係る超音波探知装置では2探触子法で表現しているが、1探触子法を採用してもよい。この場合には、1個の探触子が発信探触子及び受信探触子として機能する。
また、コンクリート材等の多孔質材の厚さ及び鉄筋等の検知においては、超音波がその内部で大きく減衰し、受信波に含まれる探知目標からの反射波が微弱となりやすい。このため、超音波探知装置は、電気的雑音、特に定常的な雑音が極力混入しない構成となっていることが好ましい。
次に、上述のように構成された超音波探知装置を使用した超音波探知方法について説明する。図6乃至図9は第1の実施例を使用した超音波探知方法を示すフローチャートである。第1の実施例による探知方法は、コンクリート内に埋め込まれた鉄筋の探知において、1対の発信探触子及び受信探触子を結ぶ線分を探知する鉄筋の長手方向とし、前記1対の探触子の距離を一定値Lに保持したまま、前記線分上で前記1対の探触子を移動させながら、加算平均波G(t)を得る計測である。この計測にあたっては、a1及び増分量Δaを設定し、a=ajの時のG(t)をG1(t)、a=a1+Δaの時のG(t)をG2(t)、・・・、a=a1+(nA−1)Δaの時のG(t)をGnA(t)とする多点計測波Gj(t)を比較表示することで、探知目標波と妨害波とを識別し、確実に鉄筋と前記線分との最短距離を測定する方法である。
先ず、加算平均波Gj(t)(jはnA以下の自然数)を取得する(ステップS1−1)。加算平均波Gj(t)は、下記数式14で表すことができる。
次いで、被探知材であるコンクリートの表面が粗いか否かを判断し(ステップS1−2)、粗い場合には、Fj(t)を1.0に設定する(ステップS1−3)。
次に、Gj(t)において妨害波としての表面波及び直接波等の勢力が最小となる周波数を下記数式15に基づいて求める(ステップS1−4)。
ここで、α(l)は多くの計測実験で得られた補正係数、lは探知路程、cVpはコンクリートのたて波音速値、φは振動子径である。
次に、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1及びn2を自然数として、下記数式16の演算を行う(ステップS1−5)。このとき、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)の平均的中心周波数がf0となるように、n1及びn2の値を自動的に制御する。
次に、表示装置に、自然数npについてGAj np(t)を比較表示する(ステップS1−6)。つまり、例えばj=4であれば、4つの波を表示する。
次に、直線的に起生時刻が変化する波が出現したかを確認する(ステップS1−7)。
そのような波が出現している場合、表示装置に、自然数nppについてnpp・GAj np(t)を比較表示する(ステップS1−8)。
次に、直線的に起生時刻が変化する波でGA1(t)波の起生時刻より遅い同一の時刻thにおいて、npp・GAj np(t)波の全てで波の起生があるかを確認する(ステップS1−9)。
次に、時刻thをtTに代入し、tTを極大値を与える時刻とする正弦波状のFiLT(t)を作成する(ステップS1−10)。
次に、下記数式17の演算を行う(ステップS1−11)。
但し、n5は自然数でオペレータにより制御される。
次に、GBj(t)の最大振幅の絶対値を|maxPj|とし、下記数式18で表される波を表示装置に比較表示する(ステップS1−12)。
また、ステップS1−7において、直線的に起生時刻が変化する波が出現していない場合には、表示装置に、自然数nppについてnpp・GAj(t)を比較表示する(ステップS1−13)。
次に、任意の時刻thにおいて、全てのnpp・GAj(t)波で波の起生があるかを確認する(ステップS1−14)。
波の起生が確認された場合、jの値が大きくなるにつれてnpp・GAj(t)波が2又は3の波に分離してくるかを確認する(ステップS1−15)。
そして、波が分離してくる場合には、時刻thを鉄筋と探触子とを結ぶ線分の最短伝達時刻と特定する。
なお、ステップS1−9又はS1−14で波の起生が確認できない場合、及びステップS1−15で波が分離しない場合には、その位置での探知は不能であるとして、1対の探触子を結ぶ線分を鉄筋の長手方向と平行にしたまま探触子の位置を変化させた後、ステップS1−1の操作を行う。
次に、第1の実施例に基づく具体的な探知例について説明する。この探知では、図1に示すかぶり厚が23mmの直径が19mmの丸鋼の探知を行う。
表1に、探触子間隔(aj)毎に図10中で示す走査方向におけるライン走査計測で得た1000回の加算平均波を整理して示す。
この探知では、No.1乃至No.4について、数式19の関係を維持した。
上記走査で得られるGj(t)において妨害波としての表面波及び直接波等の勢力が最小となる周波数は数式20で表される。
この数式20において、α(l)=1.0、cVp=4300(m/秒)、φ=40(mm)として、f0=107.5kHzを中心周波数とする狭帯域成分で取り出した成分波GAj(t)から得られた波GAj 3(t)を図11に示す。
なお、図2に示す成分波GAj(t)の取り出しにおいては、受信した波G(t)を数式1のように表し、そのF(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を700回乗じ、数式21の演算を行った。
一方、図11に示す成分波GAj(t)の取り出しにおいては、受信した波G(t)を数式1のように表し、そのF(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を1540回乗じ、数式22の演算を行った。なお、図11には、GAj(t)を3乗したものである。
図11において,左から並べたNo.1乃至No.4の成分波において、最初の波の起生時刻が直線301で示すように、直線的に変化している。一方、No.1乃至No.4の計測では、数式14のように、探触子間隔を直線的に変化させていた。従って、これらの最初に起生している波はコンクリート表面を伝達する妨害波と判断することができる。
なお、これらの波の起生時刻th,jは、数式23により求めることができる。
但し、Cj=aj−φ、cVp=4300(m/秒)である。
また、図11のNo.1乃至No.3の成分波においては、カーソル302で示す位置に起生波が確認できる。図12は図11における波の振幅を4倍程度に拡大したものである。カーソル位置での波の起生時刻がほとんど同一である。これが図1中のcの鉄筋からの反射波である。一方、No.5の波では、妨害波が除去されており、カーソル位置に鉄筋からの反射波を確認できる。図13はこのカーソル位置で最大値1.0となる時系列フィルタ501を波GAj(t)に乗じて得た波を示し、その振幅を各々最大表示している。全ての成分波で鉄筋からの反射波を明りょうに確認することができる。説明するまでもなく、No.1の波の起生時刻が最も高精度に鉄筋かぶり厚を与えることとなる。
なお、図12のNo.5の成分波によれば、妨害波が除去され、鉄筋及びコンクリート厚に関する反射波が特定されているため、No.1乃至No.4の成分波の比較検討が必要ないとも考えられる。しかしながら、コンクリートの材質は一定でなく、且つ、コンクリートには経年変化が生じる。このため、超音波の透過度が極端に劣悪なコンクリートの存在も稀ではない。このようなコンクリートの場合、妨害波401の残存が探知路程の長い目標波(この例では鉄筋かぶり厚に関する反射波)の振幅より相対的に大きくなる場合が多い。この結果、妨害波401を有意な反射波と誤認することとなる。
これに対し、No.1乃至No.4の成分波による比較検討を行えば、妨害波を有意の反射波と誤認することを回避することができ、コンクリート内部の探知が可能となる。なお、この比較検討の対象は4つに限定されるものではなく、より多数であってもよい。
上述の探知方法は、測定対象物の埋め込み位置が深く、かつ反射強度が小さい鉄筋等のかぶり厚の探知を行うものである。次に、鉄筋が浅く埋め込まれている場合の比較計測について説明する。
図1の計測において、コンクリート底部から、鉄筋直下位置より超音波を入力する計測(鉄筋かぶり厚:10mm)で、前述と同様の比較測定を行った結果を図14に示す。
図14には、最適周波数を前述のf0=107.5kHz付近として、これを中心周波数とする狭帯域成分波GAj(t)から得られた波GAj 3(t)を示す。具体的には、受信した波Gj(t)を数式1のように表し、そのFj(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を400回乗じ、数式24の演算を行った。
図14においては、No.1では、残存する妨害波の起生の後に大きく励起する波を確認できる。No.2では、妨害波及びこの大きな振幅の波が分離している。更に探触子間隔を広くしたNo.3及びNo.4の成分波では、妨害波が消滅し2つの波が起生している。このような2つの波が生ずるのは、図10において、探触子間隔ajが大きくなると、反射経路703のたて波の強度が小さくなるとともに、往路をたて波(よこ波)、復路をよこ波(たて波)とする伝達波704が相対的に大きく励起してくるためである。
図11に示すような成分波が得られる場合、即ち最初の起生波の起生時刻が計測時の探触子間隔距離に比例して変化する場合、この最初の起生波を妨害波と認識する。
一方、図14に示す如き成分波が得られる場合、即ち最初の振幅の大きい波の起生時刻が図11の場合に比してNo.1乃至No.4の間でほとんど変化せず、探触子間隔が広くなってくると、最初1つの波だったものが、2つの波の起生に変化してくる場合、これらの波は妨害波でなく、有意の反射波と断定する。鉄筋のかぶり厚が更に浅くなると、3つの波が起生する場合もある。この場合、3番目の波は、往路及び復路ともによこ波で伝達する波である。
以下に、第1の実施例の動作を示す。
先ず、探触子間隔毎に加算平均波Gj(t)を取得する。例えば、発信探触子から5m秒又は10m秒間隔で広帯域超音波を発信し、この間、連続して受信探触子で超音波を受信する。そして、これらの受信波の加算平均を求める。この加算平均を行っている間、受信探触子及び発信探触子の中心間距離をajに保持したまま、発信探触子及び受信探触子を、図10で示すように、探知対象物の上方でそれが延びる方向、例えば鉄筋の配筋方向に平行に走査する。このような加算平均波Gj(t)の取得を複数回(nA回)行い、表2に示すように、nA種の加算平均波Gj(t)を得る。
このとき、以降の分析を容易にするために、数式4で示すように、探触子間隔ajは線形的に変化させることが好ましい。
次に、鉄筋かぶり厚等の探知の場合、数式15で示す最適周波数を中心周波数とする狭帯域成分波GAj(t)を加算平均波Gj(t)毎に演算する。これらの成分波GAj(t)を探触子間距離の短い順に並べて比較すると図11又は図14に示すような関係が得られる。そして、図11に示すような波形が得られた場合には、直線301で示すように、直線的にその起生時刻が変化する波は妨害波であると判断し、図14に示すような波形が得られた場合には、カーソル601の位置に生ずる波を探知目標からの反射波と判断する。
次いで、図11に示すような波形が得られた場合、GA0(t)波をオペレータコントロールで増幅表示すると、図12に示す時系列波が得られる。斜カーソル301の後方に起生時刻tが同一の波がカーソル302に示すように生じてくる。このtをtTとして、t=0で0、t=tTで1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数状フィルタFiLT(t)を用い、GBj(t)=FiLT3(t)・GA(t)を計算し、GBj(t)の各々の振幅を表示画面に最大表示したものが図13である。
一方、図14に示すような波形が得られた場合には、No.1の成分波の起生時刻を用いて鉄筋かぶり厚を確定できる。
このような第1の実施例によれば、起生波が有意の反射波であるか妨害波であるかを認識することができる。また、探知対象が内部割れ、コンクリート厚その他の反射源の場合でも、この方法を同様に適用することができる。第1の実施例は、例えば、内部割れ、ジャンカ及び空胴等の探知にそのまま利用できる。但し、探知目的に対応して最適な探触子走査法を選定する必要がある。コンクリート内部の探知目標と走査法との関係を整理して表3に示す。
次に、第2の実施例について説明する。第1の実施例では、分析にあたって工学的判断が必要とされる。即ち、23cmのかぶり厚の探知の場合の図11乃至図13では、70kHzの狭帯域成分波を用いた。一方、10cmのかぶり厚の探知の場合の図14では、110kHzの狭帯域成分波を用いた。従って、どのような周波数で取り出せばよいかの判断が必要とされ、この判断をオペレータに依存したのでは、誤計測が生じかねない。第2の実施例は、このような判断を必要としない分析方法及び分析結果の高精度化のための処理を可能にするものである。
第2の実施例に係る超音波探知装置を使用した探知方法について説明する。第2の実施例は、第1の実施例における波GAj(t)又はGBj(t)を用い、所定の数式で算定される重み係数ρj及び波GAj(t)と波GAj+1(t)との時刻ずれΔtjを用いて、加算平均波GA0(t)又はGB0(t)を求め、高い精度で探知目標物を探知する方法である。図16乃至図18は第2の実施例に係る超音波探知方法を示すフローチャートである。
第2の実施例では、第1の実施例におけるステップS1−10の後、数式16の演算を行う(ステップS2−1)。
次に、GBj(t)の最大振幅の絶対値を|maxPj|とし、下記数式25で表される波を表示装置に比較表示する(ステップS2−2)。
次に、下記数式26で表される演算を行うことにより、重み付けを行い、その結果として(GB0(t))npを表示装置に表示する(ステップS2−3)。
また、第1の実施例におけるステップS1−7において、直線的に起生時刻が変化する波が出現していない場合には、表示装置に、自然数nppについてnpp・GAj(t)を比較表示する(ステップS2−4)。
次に、任意の時刻thにおいて、全てのnpp・GAj(t)波で波の起生があるかを確認する(ステップS2−5)。
波の起生が確認された場合、jの値が大きくなるにつれてnpp・GAj(t)波が2又は3の波に分離してくるかを確認する(ステップS2−6)。
次に、nnp・GA1(t)波に基づき、探知目標波の起生時刻t1を特定する。この特定はオペレータにより行われてもよく、自動処理により行われてもよい。
次に、探知対象である路程の概略を下記数式27に基づいて求める(ステップS2−8)。
次に、npp・GAj+1(t)及びnpp・GAj(t)から探知目標波の起生時刻の差Δtj(=tj+1−tj)を算定する(ステップS2−9)。tj+1及びtjは数式28及び29で与えられる。
次に、GAj(t)波の加算において、加算するjの最大値(nB)を決定する(ステップS2−10)。この決定は、オペレータによる値の入力でもよく、自動計算によるものでもよい。
次に、GA1(t)波のt1乃至t1+(2×106/f)の時刻内での波の振幅の最大値の絶対値を|maxP1|とし、GA1(t)波の数式30で表す時刻内での波の振幅の最大値の絶対値を|maxPj|として、数式31で表される重みを演算する。
次に、重みを用いて数式32の演算を行う(ステップS2−12)。
次に、自然数npについて、GA0 np(t)を表示装置に最大表示する。
なお、ステップS1−9又はS2−5で波の起生が確認できない場合、及びステップS2−6で波が分離しない場合には、その位置での探知は不能であるとして、第1の実施例と同様に、1対の探触子を結ぶ線分を鉄筋の長手方向と平行にしたまま探触子の位置を変化させた後、ステップS1−1の操作を行う。
次に、第2の実施例に基づく具体的な探知例について説明する。先ず、第1の実施例と同様に、探触子間距離毎に加算平均波Gj(t)を算出する。
次いで、数式20に基づいて最適周波数f0を算出し、この最適周波数を中心周波数とする狭帯域成分波GAj(t)を加算平均波Gj(t)毎に取り出す。
図19は表2においてkを8とし、数式18においてajを60mm、Δaを10mmとしたときの図11(鉄筋かぶり厚:23cm)に対応する加算平均波Gj(t)を示し、図20は同様な計測における図14(鉄筋かぶり厚:10cm)に対応する加算平均波Gj(t)を示す。
図19では、図11の場合で説明したように、数式18のΔaに応じてその起生時刻が変動する波の起生が直線2101で示すように確認できる。この波は探触子間でコンクリート表面を伝達する表面波等である。この波の後方のカーソル位置に探知目標波の起生が確認できる。一方、図20では、図14の場合で説明したように、カーソルで示した位置に大きな振幅の探知目標波の起生が確認できる。
このように、数式20による最適周波数を用いて取り出した成分波GAj(t)の変わりに、加算平均波Gj(t)をそのまま用いても、最初に生ずる振幅の大きい波が妨害波なのか、探知目標波なのかの判断を容易に行うことができる。但し、補正係数α(l)は探知路程によって図21のように変化する。この補正係数α(l)の値は、数多くの一般的コンクリートを用いた計測により確定したものであり、探知路程lの関数である。図19のカーソル2102、図20のカーソル1202の位置近傍に探知目標があることより、最適周波数f0の値は次のようにして求めることができる。
図19に示すものでは、探知路程が23乃至24cmと読みとれるので、図21より補正係数は0.9となる。従って、数式33により最適周波数は100kHzとなる。
一方、図20に示すものでは、探知路程が10cm前後と読みとれるので、図21より補正係数は1.10となる。従って、数式34により最適周波数は124kHzとなる。
図22は図19に示す加算平均波Gj(t)から求めた成分波GAj(t)を示す。具体的には、受信した波Gj(t)を数式1のように表し、そのFj(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を740回乗じ、数式35の演算を行った。このとき、A1 4(f)・A2 740(f)・Fj(f)の中心周波数の平均値がf0=100kHzとなるようにした。
図23は図20に示す加算平均波Gj(t)から求めた成分波GAj(t)を示す。具体的には、受信した波Gj(t)を数式1のように表し、そのFj(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を480回乗じ、数式36の演算を行った。このとき、A1 4(f)・A2 430(f)・Fj(f)の中心周波数の平均値がf0=124kHzとなるようにした。
図10に示すような鉄筋探知の場合の走査法では、探知路程が短いと、換言すれば鉄筋かぶり厚が浅いと、超音波指向角θが大きくなり、この指向方向の超音波強度が小さくなる。加えて、探触子間距離ajが大きくなればなるほど、図23に示すように、鉄筋からの反射強度が小さくなってくる。
図24及び図25は、夫々図22、図23の各成分波GAj(t)の最大振幅を最大表示したものである。但し、図24ではtT=104μ秒付近で図示する時系列フィルタT.G.Cを各成分波GAj(t)に乗じて得たGBj(t)=T.G.C.×GAj(t)をGBj 2(t)を表示している。また、図25でも、各成分波に対して波GAj 3(t)を表示している。T.G.C.の具体的形状は、t=0で0、t=tT=104μ秒で1.0とする直線的増加関数、tT=400μ秒以降の時刻で0、t=104乃至400μ秒の間を余弦関数状のフィルタとする。
図24では、カーソルで示す位置に23cmの深さの鉄筋からの反射波が成分波GAj 2(t)の全てで一様に生じている。一方、鉄筋かぶり厚が10cmと浅い図25では、図14を用いて説明したように、測定位置No.4乃至No.8において、鉄筋からの反射波として、たて波とモード変換波とが重畳して生じていることを確認できる。図25に表示している3本のカーソルのうち最上段のカーソルが、往路復路をたて波で伝達する反射波の起生時刻を示し、その次のカーソルが往路をたて波(よこ波)、復路をよこ波(たて波)とする反射波の起生時刻を示し、その次の3本目のカーソルが往路及び復路ともによこ波とする理論的反射波の起生時刻を示す。なお、図25では、よこ波とたて波の音速比を0.59として、3本のカーソルを記載している。
更に、図25では、ajの値の変化に伴って、各波に若干の位相差が生じていることが確認できる。ここで、互いに隣り合う成分波GAj(t)の位相差について検討する。No.1の波形でその起生時刻をt1とすれば、成分波GAj(t)と成分波GAj+1(t)との間の位相差Δtjは、図26に示す幾何学的関係より数式37乃至数式40により求めることができる。
つまり、鉄筋のおおよそのかぶり厚daは、数式37で表される。
また、成分波GAj(t)における起生時刻tjは数式38で表され、成分波GAj+1(t)における起生時刻tj+1は数式39で表される。
従って、起生時刻の差Δtjは数式40で表される。
従って、第2の実施例では、超音波探知装置に重み付け手段を設け、この重み付け手段により、次のような重み付けを加味して加算平均波GA0(t)を得る。
nA番目の測定により得られた加算平均波を数式41で表す。
次いで、数式42で表される加算平均波GA0(t)を算出する。
ここで、ρj+1は(k+1)番目の測定により得られた加算平均波に対する波の重みであり、次のようにして求めることができる。
図25等に示す成分波GAj(t)は最適周波数値を中心周波数とする狭帯域成分として、受信した波Gj(t)から取り出したものである。この成分波GAj(t)の1周期は概略106/f0μ秒となる。また、成分波GAj(t)と成分波GAj+1(t)の成分波の時刻t1で示すカーソル位置にある探知目標波の起生時刻差Δtjは数式38乃至数式40から求めることができるので、これらの目標とする波の初めの第1波及び第2波の起生時刻は数式43で示す時間帯内にある。
従って、この時間帯での波GAj(t+ΣΔtj)の最大振幅を|maxPj|とすれば、重みρjは、数式44で求められる。
つまり、重みρjは波GAj(t)の探知の目標とする波の振幅を波GA1(t)のそれと同一とするものである。このようにして得られる加算平均波GA0(t)では、探知目標とする波の増幅の度合が極端に大きくなり、かつ妨害波が位相差の存在のために更に小さなものとなる。
これらの処理を行っても、かぶり厚の深い鉄筋の探知等の場合、最初に生じている表面波等のコンクリート表面を探触子間で伝達する妨害波等が残存する場合がある。従って、このような場合には、図24に示すように、探知目標波の概略起生時刻で、最大値1.0となる時系列フィルタFiLT(t)を用いて、数式45で示す演算を行う。
このような時系列フィルタFiLT(t)を用いた演算を行うことにより、残存する表面波等の妨害波を見かけ上除去することができる。
また、数式42に示す加算平均波の演算においては、nAの値が探知精度に大きな影響を与える。図24のように深いかぶり厚の鉄筋探知の場合には、nAの値を大きくすることが好ましく、図25のように浅いかぶり厚の鉄筋探知の場合には、nAの値を小さくすることが好ましい。例えば、図25のような波形が得られた場合には、オペレータの判断で、nAの値を3又は4とすれば、波GA0(t)又はGB0(t)より、モード変換波が除去される。この結果、たて波反射波が大きく励起した波GA0(t)又はGB0(t)を得ることができる。
このような処理では、nAの値の設定をオペレータに依存するが、超音波探知装置にnA値設定手段を設け、このnA値設定手段により、この処理を自動的に行ってもよい。
なお、オペレータがnAの値を設定する場合には、先ず、表3で設定したnAの値を用いて、数式42に基づいて、加算平均を行い、波GA0(t)又はGB0(t)の起生状況を確認する。
そして、探知目標とする波(たて波)の後方にモード変換波が生じている場合には、nAの値を1つずつ減じながら波GA0(t)又はGB0(t)を再演算で求め、視認していく。この経緯の中で、モード変換波が生じなくなった時の波GA0(t)又はGB0(t)を探知波形とする。
なお、モード変換波の起生の認識は、よこ波とたて波の音速比をε2=0.59として、図25に示すように、3本のカーソルを表4に示す時刻に表示し、第1カーソルを最初の波の起生時刻に合致させたときに第2及び第3カーソルの位置に大きな振幅の波が生じればこれをモード変換波と断定することができる。
このような自動処理によれば、図24及び図25に示すような波GAj(t)及びGBj(t)の波形を求める必要がない。
ところで、図11乃至図14、図19及び図20並びに図22乃至図25は加算平均波Gj(t)を用いて所定の中心周波数f0で狭帯域成分波GAj(t)又は所定の時系列フィルタFiLT(t)を用いてFiLT(t)・GAj(t)を示すものである。これに対し、加算平均波Gj(t)を数式1のように表現し、そのときのFj(t)に対して、数式46及び数式47の演算を行い、その結果得られた波HAj(t)と波GAj(t)とを置換しても、図11乃至図14、図19及び図20並びに図22乃至図25と同様の結果が得られる。
図27に図25に対応する波HAj(t)を示す。具体的には、数式47で分析の上限振動数fmaxを2500kHz、n1を4、n2を700として、126kHzを中心周波数とする波HAj(t)を求め、これに対して波HA3 j(t)の各々でその最大振幅を最大表示している。
次に、第3の実施例について説明する。
第1及び第2の実施例は、1対の発信探触子及び受信探触子を図6に示すように、探触子間隔ajを一定に保ちながら、矢印で示すように、鉄筋配筋方向に平行に走査するものである。しかしながら、一般的コンクリートにおいて、その走査面は粗状態であり、かつ凸凹などが生じている場合が稀ではない。
このようなコンクリートでは、前記走査の間、超音波発信毎に得る受信波はその強度が大きく変動する。これより、有意の受信波を取得できない場合も生じうる。第3の実施例は、このような場合に対処する測定を可能にするものである。
第3の実施例は、表面波等の妨害波を除去し、探知目標物を明敏に取り出す探知法として、1対の発信探触子及び受信探触子の中心間距離をaとした加算平均波G1(t)及び増分量Δaを定義し、前記aをa+Δaとしたときの加算平均波G2(t)から数式48で表される振動数又はその近傍の振動数を中心周波数とする狭帯域成分波を夫々GA1(t)及びGA2(t)とし、前記GAj(t)と重み付け加算してGA0(t)波を求める方法である。なお、r(f)は、例えば図28に示すグラフから求めることができる。r(f)は多くの計測実験で得た音速補正係数である。
図29及び図30は第3の実施例に係る超音波探知方法を示すフローチャートである。第3の実施例では、第1の実施例と同様に、先ず、加算平均波Gj(t)(jはnA以下の自然数)を取得する(ステップS3−1)。
次いで、被探知材であるコンクリートの表面が粗いか否かを判断し(ステップS3−2)、粗い場合には、Fj(t)を1.0に設定する(ステップS3−3)。
次に、数式48の演算を行う(ステップS3−4)。
次いで、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1及びn2を自然数として、数式16の演算を行う(ステップS3−5)。このとき、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)の平均的中心周波数がfRとなるように、n1及びn2の値を自動的に制御する。
次に、表示装置に、自然数npについてGAj np(t)を比較表示する(ステップS3−6)。
次に、妨害波の位相がGA1(t)とGA2(t)とで180度ずれているか判断する(ステップS3−7)。
位相が180度ずれていない場合には、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、オペレータがn2の値を増減させながら、妨害波の位相が180度ずれるn2の値を特定し、そのときのA1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)の平均的中心周波数をfRと特定する(ステップS3−8)。
ステップS3−7において位相が180度ずれている場合、及びステップS3−8で中心周波数fRを変更した後、GA1(t)の最大振幅の絶対値|maxP1|とGA2(t)の最大振幅の絶対値|maxP2|のうち大きい方を|maxP|として、数式49の演算を行う。
そして、表示装置に、自然数npについてnp・GA0 np(t)を表示する(ステップS3−10)。
次に、第3の実施例に基づく具体的な探知例について説明する。図31は図26に示す鉄筋の測定において、径が19mmの丸鋼がかぶり厚を100mmとして埋め込まれている場合の測定結果を示す。細線で示す波は図26の探触子間距離a1を80mmとし、1対の探触子を鉄筋直上に固定配置した計測で、前記広帯域超音波を連続してコンクリート表面より直下に入力して得た300個の広帯域受信波を加算平均した波G1(t)より110kHzの狭帯域成分波GA1(t)を抽出して示したものである。一方、太線で示す波は前記探触子間距離をa2=a1+15mm=95mmとして得た加算平均波G2(t)より、細線で示す波と同様の処理で得た110kHz狭帯域成分波GA2(t)である。これらの2つの成分波を比較すると、早い時刻で生ずる図10に示す701、702経路の妨害波は半波(180度)だけその位相がずれている。また、カーソル位置より、その振幅が大きく励起する波は、殆どその位相が変化していない。これらの2つの波を加算したものを図32において太線で表示している。図32中の細線で示す波は図31の細線で示す波をそのまま表示したものである。なお、図31及び図32中の細線、太線で示す成分波はいずれも、その最大振幅を最大表示したものである。図32中のカーソル2001の位置が鉄筋からの反射波の概略起生時刻である。図31に示す成分波では、成分波の抽出周波数をfR=110kHzとしている。これは波の取り出し周波数を50乃至150kHzの間で徐々に変動させたときに、波の早い時刻に生ずる701、702の妨害波の重畳波に半波の位相ずれが生じ、かつその後方に生ずる波の中でその位相が殆ど変化せず、かつその振幅が相対的に最も大きくなったと表示装置の波形表示画面で視認した時の周波数が110kHzだったからである。
ところで、このfRの値はコンクリート音速Vp、探触子距離変化量Δa及び音速補正係数γを用いて数式50のように表される。
なお、γは周波数により変化する。多くの測定実験によれば、図28に示すように、100kHz前後の成分波ではγ=0.74、175kHz前後の成分波ではγ=0.63、250kHz前後の成分波ではγ=0.53となる。このように、γの値が周波数に応じて変動するのは、以下の物理的現象による。
図26の直接波とよばれる702経路の妨害波はたて波、よこ波の混存したものになる。また、701経路の妨害波の支配的成分は表面波である。これらの直接波及び表面波の相対強度は周波数で大きく変化する。多くの測定例によれば、低周波になればなるほど探触子間距離が短いことも原因して、前記相対強度は直接波の方が大きくなり、高周波になると、逆に表面波の方が大きくなる。
従って、表面波及びその表層を浅く又は深く潜って伝達する直接波による合成波がコンクリート表面を伝達するとみなすと、γ×Vpの値はこの場合の等価音速と考えることができる。
低周波成分波の場合、直接波に含まれる音速の早いたて波成分が増大し、結果として、γの値が大きくなる。一方、高周波になると、直接波成分が相対的に小さくなり、表面波とたて波の音速比をε1=0.53として、γ×Vpが表面波の音速(ε1×Vp)に漸近する。従って、本実施例では、数式50にΔa=15mm、Vp=4500m/秒及びγの仮定値(例えば0.6)を代入すると、数式51によりfRは90kHzとなる。
図28からγの値を読み取ると、γの値は0.74程度である。これよりfRの値を再計算すると、数式52のようになる。
このfRを中心周波数としてG1(t)、G2(t)波より夫々狭帯域成分波GA1(t)、GA2(t)を取り出せば、図31に示すように、妨害波の位相が半波ずれ、かつ探知目標波(鉄筋からの反射波)においては位相の変動が殆どない相対的に大きく励起した比較波形を得ることができる。具体的には、受信した波Gj(t)(jは1又は2)を数式1のように表し、そのFj(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を520回乗じ、数式53の演算を行った。
GA1(t)及びGA2(t)の加算平均波GA0(t)であれば、妨害波がその半波の位相ずれのために除去され、探知目標波のみが大きく励起した波となる。図32の太線で示す波がこの場合のGA0(t)波に相当する。
次に、第4の実施例について説明する。第4の実施例は、コンクリート内に埋め込まれた鉄筋の径の探知において、1対の発信探触子及び受信探触子を鉄筋の長手方向に平行に、且つ鉄筋の直上のコンクリート表面に配した計測で探触子の中心間距離をΔaずつ変更して得られる加算平均波G1(t)、G2(t)、G3(t)、・・・、GnA−1(t)に対し、更にこれらの加算平均を数式54のようにして求め、このG0(t)波について波形分析することにより、鉄筋の径を求める方法である。
図33及び図34は第4の実施例に係る超音波探知方法を示すフローチャートである。第4の実施例では、第1の実施例等と同様に、先ず、加算平均波Gj(t)(jはnA以下の自然数)を取得する(ステップS4−1)。
次に、加算平均波Gj(t)に対して、数式54の加算平均の演算を行う(ステップS4−2)。
次いで、被探知材であるコンクリートの表面が粗いか否かを判断し(ステップS4−3)、粗い場合には、F0(t)を1.0に設定する(ステップS4−4)。
次に、数式55の演算を行う(ステップS4−5)。
次いで、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1及びn2を自然数として、数式56の演算を行う(ステップS4−6)。このとき、A1 n1(f)・A2 n2(f)・F0(f)の平均的中心周波数がfRとなるように、n1及びn2の値を自動的に制御する。
次に、表示装置に、自然数npについてGA0 np(t)を表示し、オペレータが鉄筋上端からの反射波の特定及びその起生時刻th1の特定を行う(ステップS4−7)。
次に、GA0(t)波に対するA1 n1(f)・A2 n2(f)・F0(f)のスペクトルの中心周波数を400乃至800kHzの間で、例えば50kHzずつ変化させ、その都度GA0(t)を表示装置に表示させる(ステップS4−8)。この結果、図36乃至図41に示すように、振幅が大きい3つの波が表示される。
そして、数式57又は58で示す演算を行うことにより、鉄筋の径φを算定する(ステップS4−9)。
次に、第4の実施例に基づく具体的な探知例について説明する。第3の実施例は数式50で示す探触子間隔の変化量Δaを15mmとしたものであった。Δaのが大きいため、図32中のカーソル位置の時刻とコンクリート音速Vpで算定される鉄筋かぶり厚は、その精度が低くなる。第4の実施例では、このかぶり厚及び鉄筋径をより高い精度で測定することができる。
図36はa1=80mm、Δa=5mmとして、aj=a1+(j−1)×Δaとし、jの値を1乃至4として、各々で1対の発信探触子及び受信探触子を図10に示すように、鉄筋直上に配し、両探触子を走査せず、その位置を固定したまま300個の受信波を収録し、これの加算平均波より238kHzを中心周波数とする狭帯域成分波を抽出することで作成した波である。具体的には、受信した波Gj(t)(jは1乃至4)を数式1のように表し、そのFj(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)を4回、第2の周波数フィルタA2(f)を122回乗じ、数式59の演算を行った。
図36中、細線で示す波はa1=80mmの場合の成分波GA1(t)であり、太線で示す波はa1乃至a4の場合の成分波GAj(t)を更に加算平均し、数式60で表される波をGA0 2(t)表示したものである。
GA0 2(t)波では、探知妨害波が見かけ上、完璧に除去され、超音波発信後、鉄筋上端からの反射波起生時刻がカーソル位置(44.56μ秒)に示すように特定される。
このコンクリートモデルの音速V=4500m/秒を適用すると、図10の703の伝達距離daが数式61より、20.05cmと求められる。
また、かぶり厚dは、a1=80mm及び探触子径=40mmを考慮すると、下記数式62のように求めることができる。実値は9.9cmである。
なお、238kHzの周波数は、数式63に示すように、数式50から求めた値である。
図28においては、238kHzの振動数fでγの値が0.53になっている。
また、図36に示す波では、カーソルでその起生位置を示した鉄筋上端からの反射波より後方に、鉄筋の存在に関連して生ずる複数の波が混在している。これらの波には、例えば鉄筋下端からの反射波、鉄筋円周上で鉄筋内を迂回する回折波(たて波、よこ波)、鉄筋円周上でコンクリート内を迂回する回折波(たて波、よこ波)及び鉄筋上端からのモード変換波等が含まれている。
これらの各波の形状は周波数の変化に伴ってその強度が大きく変動する。図37乃至図41は、この変動状況を示したものである。夫々G(t)波より370、440、560、770、810kHzの中心周波数をもつ中帯域成分波GA0(t)を抽出しGA0 3(t)表示したものである。
具体的には、加算平均波G0(t)を数式64のように表し、そのF0(f)に対して、分析の上限振動数をfmax=2500kHzとし、第1の周波数フィルタA1(f)をn1回、第2の周波数フィルタA2(f)をn2回乗じ、数式56の演算を行った。
n1及びn2の値は、図37に示す370kHz中心周波数の場合n1=4、n2=16とし、図38に示す440kHz中心周波数の場合n1=10、n2=60とし、図39に示す560kHz中心周波数の場合n1=16、n2=60とし、図40に示す770kHz中心周波数の場合n1=18、n2=60とし、図41に示す810kHz中心周波数の場合n1=20、n2=60とした。また、成分波のスペクトルのすそは中心周波数±300kHzであった。
夫々図37、図38に示す370kHz、440kHzの成分波では、鉄筋円周上でコンクリート内を迂回するたて波回折波3302が大きく卓越している。波3301は鉄筋上端からの反射波であり、波3303は波3302と同一の伝達経路の波であるが、コンクリート表面から鉄筋上端までの往路をたて波、同復路をよこ波、鉄筋廻りコンクリート内をよこ波で伝達する波である。
更に高周波方向へ波の取り出しを移行していくと、徐々に鉄筋上端からの反射波が卓越してくる。この状況を示したものが図39及び図40の560kHz及び770kHzの成分波である。
一方、更に成分波の取り出しを高周波へ移行していくと、図41に示すように、鉄筋廻りを回折する他のいくつかの波が生じてくる。鉄筋径の測定において、図39又は図40の起生波を用いれば、測定処理が繁雑とはならない。
鉄筋径φの算出は図40に示す波3301のカーソル位置であるt1、波3302のカーソル位置であるt2、波3303のカーソル位置であるt3、及びコンクリート音速Vp、よこ波とたて波との音速比ε2=0.59を数式65又は数式66に適用すればよいことが、多くの測定実験で確かめられている。
波3301及び3302の各起生時刻から鉄筋径を計算すると、実値が19mmであるのに対し、数式67に示すように、18.6mmとなる。
また、波3301及び3303の各起生時刻から鉄筋径を計算すると、数式68に示すように、18.9mmとなる。
数式64又は65を用いて鉄筋径を算定する場合、数多くの同種の測定結果によれば、n1を2又は4とした場合で、GA0(t)波の中心周波数を400乃至800kHzとすればよいと判明している。
次に、第5の実施例について説明する。第5の実施例は、1対の発信探触子及び受信探触子の中心間距離をaとし、両探触子の中心を結ぶ線分を鉄筋の長手方向直上のコンクリート表面に配した計測で、前記探触子を前記線分上で移動させながら得た受信波を移動の都度加算平均して数式69の波を得る。そして、数式69中のF(f)を1.0又は1/F(f)に置換した数式70又は71に示す波を用いて鉄筋径を測定する方法である。
先ず、第5の実施例に基づく具体的な探知例について説明する。この探知例では、浅く埋め込まれた鉄筋の径の探知で、共振現象を低減又は除去するものであり、図1の下側コンクリート面からの探知で、10cmの深さに埋め込まれた径が19mmの鉄筋径の探知を行う。
鉄筋直下のコンクリート面で2000kHzの共振振動数を持つ振動子径40mmの1対の発信探触子及び受信探触子を、その中心位置を結ぶ線分が配筋方向に平行になるように配した。そして、探触子間隔を60mmに固定し鉄筋配筋にそって10cmの移動走査を行いながら1000回分の加算平均波G(t)を求め、数式20を用いて鉄筋かぶり厚等の探知の場合の最適周波数f0を求める。補正係数α(1)=1.1、コンクリートの音速4500m/秒、及び探触子径40mmを適用すると、最適周波数f0は124kHzとなる。この124kHzを中心周波数とする狭帯域成分波を取り出すと、図42に示すような成分波が得られる。具体的には、fmaxを2500kHzとし、A1(f)を4回、A2(f)を480回乗じて作成したものである。カーソル2301で示す時刻(45.21μ秒)を用いると、探知目的とする鉄筋のかぶり厚は、数式72に示すように、実値が100mmであるのに対し、101.2mmと算定される。
径の測定で分析精度を向上のためには、高周波領域の成分波を用いる必要がある。
図43乃至図45に1400kHzを中心周波数とする広帯域成分波を示す。加算平均波を数式69のように表現したとき、このG(t)を用いて成分波GA(t)を取り出したものが図43である。また、数式73を用いて成分波HA(t)を取り出したものが図44であり、数式74を用いて成分波RA(t)を取り出したものが図45である。
具体的には、fmaxを2500kHzとして、成分波GA(t)については、F(f)にA1(f)を10回、A2(f)を6回乗じ、成分波HA(t)については、F/F(f)にA1(f)を8回、A2(f)を6回乗じ、成分波RA(t)については、1/F(f)にA1(f)を24回、A2(f)を14回乗じることにより、得たものである。
なお、1400kHzの選定は、成分波の取り出しの中心周波数をA1 n1(f)・A2 n2(f)・F(f)の計算の経緯の中で、図45又は後述の図46の波の起生状況の変化を分析画面で視認し、最も明敏に起生波が得られたと判断することで行った。かぶり厚に関する反射波の起生時刻の概略は図42の124kHz成分波でカーソル2301として特定されている。図43及び図44に示すa〜fのカーソルは、理論的に算定される同一鉄筋からの他の反射波又は迂回波の起生時刻を示すものである。aは鉄筋上端からの反射波を示し、bは鉄筋下端からの反射波を示し、cは鉄筋円周上で鉄筋内を伝達する迂回波(たて波)を示し、dは鉄筋円周上でコンクリート内を伝達する迂回波(たて波)を示し、eは鉄筋円周上で鉄筋内を伝達する迂回波(よこ波)を示し、fは鉄筋円周上でコンクリート内を伝達する迂回波(よこ波)を示す。
上記の波において、図43乃至図45の3種の手法で共通に出現している波として、fの波が確認できる。しかしながら、G(t)を用いて取り出した成分波GA(t)では、鉄筋の存在に関する他の波の起生が確認できない。また、H(t)を用いて取り出した成分波HA(t)では不正確であり、若干他の経路波とそれぞれのカーソルが一致しているように見えるが、これらの経路波をカーソルが全て特定しているとはいえない。一方、図45のR(t)波より抽出した成分波RA(t)はbのカーソルを除き他の全てのカーソルが各起生波の起生時刻に合致している。図43は加算平均波G(t)をそのまま用い成分波GA(t)を取り出したものであった。コンクリート内で大きく起生する散乱波においても、共振現象が存在する。このため中心周波数1400kHzという高周波成分波GA(t)波では探知目標波と上記共振散乱波とが混在し、探知目標波を認識し難くなる。また、図44は、位相解析のため、共振波と非共振波とが混在したものとなる。このため、散乱波の共振が低減され、ある程度探知目標波の起生が確認できたわけである。
一方、図45は非共振波を用いた解析結果である。この成分波RA(t)からは散乱現象による共振波が完全に除去されたものとなる。従って、高い精度で鉄筋の存在に起因する波の起生位置と対応するカーソルとが合致している。図45のR(t)波を用いた場合、更に上記の波の起生を特定しやすくなる理由がある。図43乃至図45は1400kHzを中心周波数とする超広帯域成分波である。このような高周波の場合、コンクリート内を伝達する超音波は大きく減衰することより、微細な電気的雑音も探知結果に多大なる悪影響を与える。図45の非共振波では、スペクトルの逆スペクトルを用いていることより、この電気的雑音に起因するスペクトルも除去されるという物理現象の存在である。
図46では、最も左に位置するカーソルから第4番目のカーソル位置t=tTで1.0、t=0で0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)と図45のRA(t)波よりFiLT4(t)・RA(t)として作成している。tTの具体的な決定法は、図42の鉄筋上端からの反射波の起生時刻th=45.2μ秒を用い、tT=thとし、Δt=2μ秒とし、jの値を1乃至JAとして、tT=th+(j−1)Δt毎に(FiLT4(t)・RA(t))2波を演算して表示装置で視認し、JAが6となった時のものである。bの鉄筋下端からの反射波を除いて、他の起生波が全てカーソル位置と明敏に合致している。なお、各カーソル位置は鉄筋径φを19mmとして、次のようにして求めた。aのカーソルは、図42に示す狭帯域成分波で確定した鉄筋上端からの反射波起生時刻th=44.3μ秒付近で大きく起生する波の起生時刻thaに合致させたものである。また、b乃至fのカーソルは、夫々数式75〜79により求めた。
なお、sVpは鉄筋たて波音速であり、cVpはコンクリートたて波音速である。
以上、数式75乃至79を用いて鉄筋径を算定する場合、数多くの同種の測定結果によれば、n1を2又は4とした場合で、GA(t)、HA(t)又はRA(t)波の中心周波数が1200乃至1400kHzとすればよいと判明している。
次に、図47乃至図49に示すフローチャートに基づいて第5の実施例について説明する。
先ず、1対の発信探触子及び受信探触子の中心間距離をaとし、両探触子の中心を結ぶ線分を鉄筋の長手方向直上のコンクリート表面に配した計測で、前記探触子を前記線分上で移動させながら、数式69で示す加算平均波G(t)を取得する(ステップS5−1)。
次に、第3の実施例等に基づいて鉄筋かぶり厚dを測定する(ステップS5−2)。
次いで、分析法を選択し(ステップS5−3)、G(t)波を選択した場合にはF(f)をそのままF(f)とし(ステップS5−4)、H(t)波を選択した場合にはF(f)を1.0とし(ステップS5−5)、R(t)波を選択した場合にはF(f)を1/F(f)とする(ステップS5−6)。
次に、最適周波数f0を1200kHzとする(ステップS5−7)。
次に、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1及びn2を自然数として、数式80の演算を行う(ステップS5−8)。このとき、A1 n1(f)・A2 n2(f)・F(f)の中心周波数がf0となるように、n1及びn2の値を自動的に制御する。
次に、tT=2・d/cVp及びj=1と設定する(ステップS5−9)。
次に、数式81で表される波GB(t)に対してGBnp(t)を表示装置に表示させる(ステップS5−10)。
次に、tTよりも後方に大きな振幅の波が生じているか判断し(ステップS5−11)、生じていない場合には、jが6以上であるか判断する(ステップS5−12)。そして、jが6以上の場合、f0が1400kHz以上か判断し(ステップS5−13)、f0が1400kHz以上ではない場合、tTをtT+2(μ秒)、jをj+1として、ステップS5−10に戻る。
ステップS5−13でf0が1400kHz以上となっている場合、探知は不可能である。また、ステップS5−12でjが6未満の場合には、中心周波数f0を、オペレータによるか、又は自動制御により、f0+Δf0に変更した上で、ステップS5−8に戻る。また、ステップS5−11で振幅が大きな波が生じている場合には、j1を1とし、更に数式82及び83の演算を行う(ステップS5−15)。
次に、鉄筋径が設定されたテーブルBT(j)を用い、オペレータ処理で任意のjに対応する鉄筋径BT(j)を読み出し、φ−BT(j)としaのカーソルの位置を前記thaとし、数式75乃至79の演算を行うことにより、b乃至fのカーソルの位置を特定する(ステップS5−16)。表5にテーブルの内容の例を示す。
次に、GBnp(t)を表示した画面に上述のカーソルを表示させる(ステップS5−17)。
次に、第6番目のカーソルfが大きな波の起生と合致しているかをオペレータが判断し(ステップS5−18)、合致している場合には、第2乃至第5番目のカーソルb〜eが他の起生波と概略合致しているかをオペレータが判断する(ステップS5−19)。そして、合致していると判断した場合には、そのときのBT(j)の値が鉄筋径であると特定する(ステップS5−20)。
一方、ステップS5−18で合致していないと判断した場合には、テーブルBT(j)のカウントを上げ、他のテーブルを採用した上でステップS5−16に戻る。また、ステップS5−19で合致していないと判断した場合には、R(t)波を選択しているか判断し(ステップS5−21)、R(t)波を選択している場合には、測定位置を変更して再度計測を行う(ステップS5−22)。また、R(t)波を選択していない場合には、R(t)波の分析に変更し、f0の値を1200kHzに設定した上でステップS5−8に戻る。
次に、第6の実施例について説明する。例えば表面から20cm以上の深さに深く埋め込まれた鉄筋の径の探知では、鉄筋の存在に関連して生ずる波はその強度が微弱なものとなり、探知妨害波の中に埋もれてしまう。第6の実施例は、妨害波も共振現象を表すため、この共振現象を低減させ、前記鉄筋の存在に関連する反射波及び回折波を抽出することにより、鉄筋径を測定するものである。
先ず、第6の実施例に基づく具体的な探知例について説明する。この探知例では、深く埋め込まれた鉄筋径の探知において、共振現象を低減させる。
図2は図1の23cmの深さに埋め込まれた径が19mmの鉄筋のかぶり厚を探知した結果である。1対の探触子に内蔵された振動子の共振振動数は500kHzz、径は40mmである。探触子走査法は第5の実施例の10cmのかぶり厚さの鉄筋径探知の場合と同一である。
1000回の加算平均波G(t)より、数式20にcVp=4500m/秒、φ=40mm、α=0.9を適用して得た最適周波数f0=100kHzを中心周波数とする狭帯域成分波GA(t)をGA2(t)表示したものである。具体的には、fMAX=2500kHzとして、F(f)にA1(f)を4回、A2(f)を700回乗じて作成したものである。
第1の実施例に関して説明したように、図2中のa、bは探知妨害波であり、cが鉄筋、dがコンクリート厚に関する反射波である。図2の100kHz狭帯域成分波GA(t)を得た加算平均波G(t)より数式73を用いて得るH(t)波より、中心周波数1049kHzの広帯域成分波HA(t)を取り出した後、HA(t)に図示するT.G.C処理で後述のHB(t)を作成し、HB3(t)表示したものが図50である。具体的には、H(t)にfMAX=2500kHzとしたA1 4(f)及びA2 6(f)を乗じ、数式84の演算を行い、更に後述の時系列フィルタ処理を行った。
理論的には解明できていないが、コンクリートのような多孔質材の音速は、低周波より高周波の場合が若干遅くなり、また、探知路程が長くなればなるほど、上記変動が大きくなる。多くの一般的コンクリートを用いた計測検討によれば、探知路程が20cm程度で、100乃至200kHz前後の音速(V100〜200)と1000kHz前後の音速(V1000)との間には、数式85のような関係がある。
図2の100kHz成分波により鉄筋からの反射波の起生時刻が102.5μ秒と判断できる。これより、1000kHzを中心周波数とする超広帯域成分波の場合の起生時刻は、102.5/0.93=110μ秒付近になるはずである。また、鉄筋径を220mm程度と仮定すると、コンクリート内を鉄筋円周上で迂回するたて波の起生が110+20π/(0.94×4.5)=125(μ秒)となるはずである。従って、ΔtT=100(μ秒)、tT=125(μ秒)としt=tT−ΔtT以前の時刻で0、t=tTで1.0、t=tT+ΔtT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を用いて、n5=10としてHB(t)=FiLTn5(t)・HA(t)を計算した。
図50で径が19mmの丸鋼の場合を想定した複数のカーソルを発生させている。左からの第1カーソルが鉄筋上端、第2カーソルが下端、第3及び第4カーソルが鉄筋円周上を迂回する波で、前者が鉄筋内を後者がコンクリート内を伝達するたて波である。第5カーソルが鉄筋円周上で鉄筋内を迂回するよこ波、第6カーソルが鉄筋円周上でコンクリート内を迂回するよこ波である。多くの測定実験によれば、本実施例のように深い位置に埋め込まれた鉄筋の探知の場合、1000kHz前後の広帯域成分波でその振幅が大きく卓越する鉄筋経路波は第1、第4及び第5カーソルに対応する波である。カーソルの発生では、第1カーソルを最初の波の起生時刻に合わせた後、9mm、13mm、16mm、・・・のように、各々の径の場合で、相当する複数のカーソルを数式75乃至79を用いて発生させ、これらのカーソルのうち、第1、第4及び第5カーソルが前述の卓越する起生波の起生時刻と一致する径をさがすという処理を用いた。径が19mmのときの第1、第4及び第5カーソルが前記起生波の起生時刻と合致していることから、この鉄筋径が19mmと断定できる。なお、中心周波数1049kHzは、n1及びn2の値をコントロールすることで行った。前記中心周波数を低周波から高周波方向へ変化させ、図50に示すように、第1、第4及び第5カーソル位置に明敏な波が生ずるのを分析画面で視認することでn1=4及びn2=6が特定された。
次に、図51及び図52に示すフローチャートに基づいて第6の実施例について説明する。
先ず、1対の発信探触子及び受信探触子の中心間距離をaとし、両探触子の中心を結ぶ線分を鉄筋の長手方向直上のコンクリート表面に配した計測で、前記探触子を前記線分上で移動させながら、数式69で示す加算平均波G(t)を取得する(ステップS6−1)。
次に、第1の実施例等に基づいて深い位置に埋め込まれた鉄筋かぶり厚dを測定する(ステップS6−2)。
次に、F(f)を1.0に変更する(ステップS6−3)。
次に、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1を2、3又は4、n2を自然数として、数式80で表されるGA(t)波の中心周波数が1000kHz前後になるように、n2の値を自動的に制御する(ステップS6−4)。
次に、鉄筋径予測値をφBとして、数式86で求められるtTに対するFiLT(t)を求め、数式81の演算を行い、GB(t)波を計算する(ステップS6−5)。
次に、数式81で表される波GB(t)に対してGBnp(t)を表示装置に表示させる(ステップS6−6)。
次に、aカーソルの位置thaを計算する(ステップS6−7)。
次に、鉄筋径テーブルBT(j)のjを1とする(ステップS6−8)。
次に、b乃至fのカーソル位置を数式75乃至数式79を用いて算定する(ステップS6−9)。
次に、GBnp(t)波の上に前記a乃至fのカーソルを重ね描きする(ステップS6−10)。
次に、第1、第4及び第5番目のカーソルb、d及びeが大きな振幅の波と合致しているかをオペレータが判断し(ステップS6−11)、合致している場合には、そのときの鉄筋径がそのテーブルのものに一致すると特定する(ステップS6−12)。
一方、ステップS6−11で合致していないと判断した場合には、テーブルのカウントを上げ他のテーブルを採用した上でステップS6−9に戻る。
次に、第7の実施例について説明する。第7の実施例は、極端に埋め込み深さの浅い鉄筋の径の探知において、共振波を用いるか、又は共振現象を低減若しくは除去する方法である。
図53は共振振動数2000kHz、径が40mmの振動子を内蔵した探触子を用い、径が19mmの丸鋼がかぶり厚15.5mmに埋め込まれた場合で、探触子中心間距離を60mmに固定し鉄筋直上に沿って10cm移動させながら、収録した前述探触子走査法による1000回の加算平均波を示す。かぶり厚が浅いために、コンクリートの表面と鉄筋との間で重複反射が生じ、共振現象を起こしている。
図53中のカーソル位置が鉄筋からの反射波の起生時刻を示すが、これを鉄筋からの反射波と断定するのは困難である。このような場合でも、鉄筋のかぶり厚及びその径を容易に探知し得る方法について説明する。図54は図53の時系列波に対応するスペクトルである。表示するカーソルは最左のカーソル位置をf1とし、順に2f1、3f1、・・・のようになっている。
そして、最も左側に位置するカーソルから第1、第2及び第3番目のカーソルが大きなスペクトルピークと合致している。これはコンクリートの表面と鉄筋上端との間で重複反射している波の共振スペクトルである。重要なこととして、この波はよこ波である。発信探触子よりコンクリートの表面の直下に入力されたたて波により、よこ波が自然発生する。かぶり厚の浅い鉄筋の探知の場合、発信探触子、鉄筋及び受信探触子の順の伝達経路で前記よこ波の強度が非常に大きくなる。但し、この現象はかぶり厚に比し、径の大きい探触子を用いた2探触子計測の場合に発生する現象である。測定例として示さないが、小径の探触子を用い同様の計測を行えば、相対的にたて波スペクトルが卓越した結果が得られる。また、1探触子計測であれば、たて波スペクトルの方が大きく卓越してくる。いずれの方法によっても、共振振動数を容易に特定できる。
振動子径40mmの発信探触子及び同径の受信探触子を用いた本実施例(図54)によれば、コンクリートの表面と鉄筋上端との間の反射波の1次共振振動数がf1=73.3kHzと測定されている。これより、鉄筋かぶり厚dは、数式87で求められる。
ε2はコンクリートのよこ波とたて波の音速比である。このコンクリートモデルの音速cVpは3800m/秒であり、ε2は0.59である。従って、数式88より鉄筋かぶり厚dは15.3mmとなる。実値は15.5mmであるため、高い精度で探知が行われているといえる。
次に、この場合の鉄筋径を測定する方法について説明する。
図55はG(t)波を用いた1278kHzを中心周波数とする広帯域成分波GA(t)に、図示する最左から第2番目のカーソル位置tTで1.0、t=0で0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を用いてGB(t)=FiLT(t)×GA(t)を計算して得たものである。第1カーソルの位置をtha=2×d/cVpとし、第2及び第3のカーソルを、夫々数式75及び76を用い、鉄筋径φが19mmとして算定して表示すると、第1カーソルの鉄筋上端からの反射波、第3カーソルの鉄筋内をその円周上で迂回するたて波のみが大きく励起している。鉄筋下端からの反射波は、第2カーソル位置にその痕跡を確認できるのみである。一方、数式73によるH(t)波及び数式74によるR(t)波を用いて鉄筋経路波を抽出した結果を、夫々図56、図57に示す。図53に示す時系列波に、夫々T.G.CフィルタFiLT(t)3701及び3801を乗じ、1100kHz及び1000kHzを中心周波数とする広帯域成分波を取り出したものである。19mmの径に対応して、数式75乃至79を用いて算定される6本のカーソルにおいて、最左から3本(a、b、c)が夫々大きく起生する波と合致している。これより径が19mmの鉄筋と特定することができる。なお、探触子間距離aが鉄筋かぶり厚dと比して著しく大きい場合、解析例としては示さないが、thaの計算式を変更する必要がある。この場合、探触子中心間距離をa、探触子内振動子径をφとして、tha=2×(d2+((a−φ)/2)2)1/2/cVpとすればよい。ところで、図55、図56、図57の波形は各々の成分波をGA(t)、HA(t)、RA(t)として、夫々にFiLT(t)を乗じ、GB(t)、HB(t)、RB(t)を計算し、GB3(t)、HB3(t)、RB3(t)を表示している。
GA(t)、GB(t)、HA(t)、HB(t)、RA(t)、RB(t)波は、夫々1280kHz、1100kHz、1000kHzをfAとしたA3 n3(f)を夫々F(f)、F/F(f)、1/F(f)に乗じて数式89乃至94式を用いて得たものである。
GA(t)の作成ではn3=16、HA(t)の作成ではn3=10、RA(t)の作成ではn3=8とした。また、n5=1とし、図55、図56、図57で、夫々tTを15.9、12.2、12.2μ秒とした。また、1280、1100、1000kHzの周波数はfAを700kHzから20kz間隔で増大させ、その都度得られるGB3(t)、HB3(t)、RB3(t)を視認し、最も明敏に、図55、又は図56、又は図57の起生波が得られたと判断した時の周波数である。
次に、第8の実施例について説明する。第8の実施例は、数式73及び74で示す波を用い、材質が異なる積層材の構造物を用いた場合の実施例である。
図58は、既存のコンクリートの表面に厚さが24mmの鉄皮を置き、この鉄皮とコンクリートとの間に100mm厚のモルタルを抽入し硬化させたものである。測点1、2,・・・5の計測で図15(b1=20(mm))における矩形の走査領域を設定し、共振振動数500kHzz、径が40mmの振動子よりなる1対の発信探触子及び受信探触子を、その間隔を60mmに固定し、図示するように、前記走査領域内を自在に移動させながら、各測点で1000回分の加算平均波Gj(t)(j=1乃至5)を得た。
第8の実施例は、数式73に示すH(t)波を用い、図58に示す充填モルタル厚を測定する方法である。図59は図58の測点3の加算平均波G(t)を数式73に適用し、860kHzを中心周波数とする広帯域スペクトルを取り出したものである。具体的には、fMAX=2500kHzとしたA1(f)及びA2(f)を用いて、図59に示すスペクトルA1 n1(f)・A2 n2(f)・F/F(f)を、n1=4、n2=12として作成したものである。中心周波数は860kHzであった。対応する成分波HA(t)をHA3(t)表示して図60に太線で示す。図60中の細線は図58の測点3の加算平均波G3(t)である。図60では、波5401及び5402が大きく励起している。波5401は図61中の経路4202の表面波であり、波5402は経路4204のモルタル底部からの反射波である。経路4201の鉄皮上下面で重複反射する波の起生が、図60のHA3(t)表示では確認できないが、これは、次の理由による。
第1に、数式73のF/F(f)で表されるペクトルは全周波数にわたって共振及び非共振スペクトルを1.0となるスペクトル値としていることにほかならない。このような共振成分波のスペクトル値を相対的に大きく低減させた波では、図61に示す鉄皮上下面間の重複反射波(4201)の強度が、その反射回数が増すに従い縮小していく。即ち伝達経路4201の波は指向角θが小さく多数回の重複反射を繰り返し、受信探触子に達する波の強度が大きく縮小していく。また、指向角θは、中心周波数が高周波になればなるほど小さくなるため、HA(t)波の取り出しを高周波方向へ移行していくと、重複反射波4201は消滅していく。
第2に、図61の重複反射のない経路4204の波は、モルタル内での超音波の散乱減衰があるものの、鉄皮内を多数回重複反射する波と比して相対的に大きく励起する。
第3に、数多くの計測実験によれば、HA(t)波を用いた成分波では、探触子間で被探知体表面を伝達する波(図61中の4202及び4203)の強度が相対的に大きく卓越してくる。
これらの物理的現象により、図60に示す太線の成分波が得られたわけである。従って、広帯域成分波(太線)の波5401は探触子間で鉄皮表面を伝達する表面波であり、波5402は図61の経路4204のモルタル底部からの1回目の反射波である。図60で、例えば時刻tT=66.0μ秒で1.0、t=0で0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数状フィルタFiLT(t)をHA(t)に乗じ、HB(t)=FiLT4(t)・HA(t)を作成し、HB3(t)表示したものが図62である。
実際に用いた演算処理は、モルタル厚の概略厚さを100mm前後とし、モルタル音速を4300m/秒とし、モルタル底部からの反射波起生時刻tMをtM=2×100/4.3=46μ秒付近と予測し、ΔtT=2μ秒、tT=tMとしてtT=tT+(k−1)×ΔtTでkの増分の都度得られるtTでFiLT(t)・HA(t)を演算したものである。図62はk=10の時の結果である。
前記モルタル底部からの1回目の反射波の後方に鉄皮内重複反射に起因する鉄皮下面からモルタル層へ連続して入力する超音波パルスのモルタル底部からの反射波の起生が確認できる。当然、これ等の波の起生時刻間隔は鉄皮厚24mm、鉄の音速5900m/秒として算定されるモルタルへの超音波入力間隔(2×24(mm)/5.9(mm)/μ秒≒8.14μ秒)と等しくなる。なお、860kHzという振動数は、n1及びn2の値をコントロールし、HA(t)波の中心周波数を700乃至1400kHzの範囲で変化させ、図60中の太線で示す波のように、明敏な起生波が分析画面で得られたとオペレータが判断した時の特定値である。
次に、第9の実施例について説明する。第9の実施例は、図58に示す鉄皮下空隙の有無の探知に関し、第8の実施例をさらに発展させたものである。第9の実施例の分析で用いる演算式を数式95乃至100として示す。
図63は、図58の厚さ24mmの鉄皮の下に100mm厚のモルタル層があり、その下側にコンクリートが存在する構造物の測点1乃至5で測定した1000回分の加算平均波Gj(t)のスペクトルを重ね描きして示したものである。但し、測点2及び測点4に空隙が存在している。このGj(t)波は第8の実施例と同様の測定条件で収録されたものである。
図63に示すカーソル8301はGj(t)波の1次の共振振動数f1=119.8kHzである。2次乃至5次のカーソルも表記しているこのスペクトル比較図からは空隙の有無は解らない。
加算平均波Gj(t)を数式95のように表現したとき、数式96を用いてHj(t)を演算し、数式97において分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとする第1の周波数フィルタA1(f)、2の周波数フィルタA2(f)及び第3の周波数フィルタA3(f)を用いて、A1 n1(f)・A2 n2(f)・A3 n3(f)・Fj/Fj(f)を求めHAj(t)を演算し、鉄皮厚ds=24mmと鉄の音速sV=5900m/秒を数式98式に適用し、数式101の演算を行った。
そして、ΔtT=100μ秒としてtT−ΔtT=−91.86μ秒以前の時刻で0、tT=8.14で最大値1.0、tT+ΔtT=108.14μ秒以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を数式99に適用し、n5=1として、数式102で表される波を作成し、そのFAj(f)を比較して表示したスペクトルが図64である。
但し、n1の値を0、n2の値を6、n3の値を0として演算した結果である。また、jaを自然数、Δta=2μ秒としてtTを時刻歴後方へtT=tT+ja×Δtaのように、徐々に移動させていく経緯の中で演算されたFAj(f)の比較図を示したものが夫々図65及び図66である。なお、tTの値は、図65では52.14μ秒とし、図66では78.14μ秒とした。
図65及び図66においては、カーソル位置8501及び8502でスペクトルの形に大きな変化が生じているのが確認でき、tTが時刻歴後方の図66で、この変化がより明敏になっている。
カーソル位置8501及び8502に生じているスペクトルは、それぞれ鉄皮の表と裏で重複反射するたて波の1次及び2次共振スペクトルである。この共振スペクトルの1次振動数f1は数式98を用いると、数式103のように表現される。
従って、f1=103/8.14=122.8kHzとなり、カーソル位置の振動数と概略一致している。数式100を用い、n11=0、n21=0として、図66のFAj(f)に2f1付近のカーソル位置8502での振動数をfAとする第3の周波数フィルタA3(f)をn31=400回乗じ、A3 400(f)・FAj(f)を比較表示したスペクトルが図67である。図67では、周波数軸(横軸)を図64乃至図66と比して、1/4に縮小表示している。
図67ではカーソル位置8502以外の位置にもスペクトルが生じている。位置8502のスペクトルのみを取り出すために、数式100を再度用い分析周波数の上限fMAX=2500kHzとする第2の周波数フィルタA2(f)をn21=100回、図67のA3 400(f)・FAj(f)に乗じたA2 100(f)・A3 400(f)・FAj(f)スペクトルを比較して示したものが図68である。
図67のスペクトルに対応する数式100で示すHHj(t)波をHHj 2(t)で比較表示したものが図69である。
図68のスペクトルに対応する数式100で示すHHj(t)波をHHj 2(t)で比較表示したものが図70である。
図70のHHj 2(t)波の比較表示によれば、測点直下に空隙のある測点2及び4で鉄皮の表面と裏面で重複反射する波の起生が明敏に確認できる。
図66のスペクトル比較図でカーソル位置8501の振動数f1で測点2のスペクトルが大きく生じ、カーソル位置8502の振動数2f1で、測点2及び4のスペクトルが大きく生じている。このようにカーソル位置8501で測点4のスペクトルが大きく生じないのは、測点2での空隙の平面的広がりが20cm×20cmと広く、測点4での空隙の平面的広がりが10cm×10cmと狭いことより生じた現象である。
図58の鉄皮の表面と裏面での重複反射を図70に示すように取り出した分析法を、鉄皮下側のモルタルとコンクリートとの境界からの反射波を取り出すことに適用すると、次のようになる。モルタルとコンクリートとの境界からの反射波は測点1、3及び5で生じ、測点2及び4では鉄皮下側に空隙が存在するため、ほとんど生じないはずである。境界からの反射波の最初の起生時刻thは鉄皮厚dS、モルタル厚dmとし、それぞれの音速をSV、mVとしたとき、dS=24mm、dm=100mm、SV=5900m/秒、mV=4000m/秒を数式104に代入し、th=8.14+50≒58.0μ秒となる。
一方、鉄皮下面からモルタルへの入力超音波は図47の鉄皮厚に依存する共振振動数位置を示すカーソル位置8501及び8502の付近で、その勢力が大きくなっているはずである。そこで、カーソル位置8502の付近で、モルタルとコンクリートとの境界からの反射波を抽出することを考える。
図65及び66を求めた数式97の演算では、n1=0、n2=6及びn3=0としたが、カーソル位置8502の振動数2f1付近でのスペクトルの変化を見やすくするために、n1=0、n2=6及びn3=2として、数式97を用いた再演算でHAj(t)を作成し、このHAj(t)波に数式99式の処理を増分量Δta、jaを自然数、th=58.0をtTの初期値とし、tT=tT+ja×Δtaのように徐々に変化させながら、t=tT−100(μ秒)以前の時刻で0,t=tTで1.0、t=tT+100(μ秒)以降の時刻で0となる正弦関数状フィルタを作成してHBj(t)を求める演算を繰り返し行い、この繰り返し処理の中で得られたFAj(f)のスペクトルを比較表示したものが図71である。
図71を得た他の処理条件として、数式98の鉄皮厚に関連する時刻tT=8.14μ秒の変わりに、数式104の鉄皮とモルタル厚で算定されるtT=58.0μ秒を用いた。また、n5=2とし、Δta=2μ秒としてtTをΔtaずつ時間軸後方へ移動させる毎に数式99式の処理の再計算を繰り返し、FAj(f)を求めた。この繰り返し演算で求めた図71以外のFAj(f)を図72及び図73に示す。なお、tTの値は、図71では78μ秒、図72では106μ秒、図73では168μ秒である。
図71乃至図73のスペクトル比較図の変化の様相を分析すると、tTが時間軸後方へ移動するに従い位置8502にある鉄皮厚に関する共振スペクトルが消滅していき、位置8502の振動数近傍のカーソル9301の振動数fm=198kHzに大きなスペクトルが生成してくる。これが、鉄皮の表面及び裏面で重複反射する毎にモルタルに入力する超音波により励起されたモルタル厚に関する共振スペクトルの1つである。
図74は数式99で求めた図73のスペクトルFAj(f)に対応する時系列波の比較図である。この時系列波は数式105で表される。
測点1、3及び5の波が測点2及び4の波より若干その振幅が大きいように判断できる。
図75は、図69を求めた分析法にならい、数式100を用いて、n2=0とし、fm=198kHzをfAとする第3の周波数フィルタA3(f)をn31=200回だけFAj(f)に乗じ、数式106の演算の結果を表示したものである。
数式106中のA3 200(f)・FAj(f)のスペクトルには、図67中のカーソル8503、8504で示すような余計なスペクトルも混存している。このような余計なスペクトルを除去するために、分析周波数の上限をfMAX=2500kHzとする第2の周波数フィルタA2(f)をn21=100として、A3(f)・FAj(f)に乗じ、数式100のHHj(t)を再演算し、HHj 2(t)表示した比較波形が図76である。測点1、3及び5にモルタルとコンクリートとの境界からの分析処理で改変された反射波が明敏に確認できる。なお、図76の波形振幅はHHj(t)において、最も大きい振幅値の絶対値を|maxP|とし、HHj(t)の各々の波の最大振幅値の絶対値を|maxPj|としたとき、|maxPj|≧|maxP|/βを満足するHHj(t)波を表示画面に最大表示している。本実施例の場合、β=1.5であった。
次に、第9の実施例について、図77乃至図80に示すフローチャートに基づいて説明する。
先ず、鉄皮厚に関する共振波を取り出すことで鉄皮の下の空隙の有無を確認する方法(図77及び図78)について説明する。
先ず、数式14で示す加算平均波を取得する(ステップS9−1)。
次に、鉄皮表面が粗いか否かを判断し(ステップS9−2)、粗い場合にはFj(f)を1.0とする(ステップS9−3)。
次に、数式107の演算を行う(ステップS9−4)。
次に、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1を0、n2を2乃至10の自然数として、数式108の演算を行う(ステップS9−5)。
次に、tT=2・ds/sV、f1=sV/(2・ds)と設定し(ステップS9−6)、FiLT(t)を自動的に作成する(ステップS9−7)。
次に、n5を自然数として、数式109の演算を行う(ステップS9−8)。
次に、表示装置に、自然数j(j=1〜nA)についてFAj(t)を比較表示する(ステップS9−9)。
次に、nf1の振動数で大きなスペクトル値をもつスペクトルが生じたか否かをオペレータが確認する(ステップS9−10)。
そして、そのようなスペクトルが生じている場合、fA=nf1と設定して(ステップS9−11)、数式110の演算を行う(ステップS9−12)。
次に、表示装置に、自然数npについてHHj np(t)を比較表示する(ステップS9−13)。
一方、ステップS9−10において、スペクトルが確認できない場合には、tTをtT+Δtaに変更し(ステップS9−14)、tTがtMAX以上であるか判断し(ステップS9−15)、tMAX以上の場合には、鉄皮の下に空隙がないと判断する(ステップS9−16)。また、tMAX未満の場合には、ステップS9−7に戻る。
次に、モルタル底部からの反射波を確認することで鉄皮の下の空隙の有無を確認する方法について説明する(図79及び図80)。
先ず、数式14で示す加算平均波を取得する(ステップS9−21)。
次に、コンクリートの表面が粗いか否かを判断し(ステップS9−22)、粗い場合にはFj(f)を1.0とする(ステップS9−23)。
次に、数式107の演算を行う(ステップS9−24)。
次に、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)、A2(f)及びA3(f)を用い、n1及びn3を0、n2を2乃至10の自然数として、数式108の演算を行う(ステップS9−25)。
次に、tT=2・ds/sV+2・dm/mV、f1=sV/(2・ds)と設定し(ステップS9−26)、FiLT(t)を自動的に作成する(ステップS9−27)。
次に、数式109の演算を行う(ステップS9−28)。
次に、表示装置に、自然数j(j=1〜nA)についてFAj(t)を比較表示する(ステップS9−29)。
次に、nf1の前後の振動数fwで大きなスペクトル値をもつスペクトルが生じたか否かをオペレータが確認する(ステップS9−30)。
そして、そのようなスペクトルが生じている場合、数式110の演算を行う(ステップS9−31)。
次に、表示装置に、自然数npについてHHj np(t)を比較表示する(ステップS9−32)。
一方、ステップS9−30において、スペクトルが確認できない場合には、tTをtT+Δtaに変更し(ステップS9−33)、tTがtMAX以上であるか判断し(ステップS9−34)、tMAX以上の場合には、鉄皮の下が全て空隙であると判断する(ステップS9−35)。また、tMAX未満の場合には、ステップS9−27に戻る。
次に、第10の実施例について説明する。第10の実施例10は、プレストレスコンクリート(PC)梁又は床版内のシース管内セメントミルクの充填度の探知である。
PC橋梁の梁及び床版においては、コンクリート内部に鉄製又はポリエチレン製シース管を配し、その管内にあるPC鋼棒を緊張し、長径間構造物を構成している。既設又は新設の橋梁において、前記PC鋼棒の緊張後、シース管内にセメントミルクが充填されている。その充填の程度を簡便な測定で把握する方法の確立は、当該建設物の保守保全の観点より最も重要なテーマの1つとなっている。
このような探知テーマに対しても、所定の探触子移動領域で発受信供用の探触子又は1対の発信探触子及び受信探触子を、固定配置、連続移動走査、又は離散化移動走査する間、超音波を探触子より連続的に発信して受信した加算平均波G(t)又は数式73で定義されるH(t)波に、前記第1、第2及び第3の周波数フィルタ並びに所定のT.G.Cフィルタ(FiLT(t))を組み合わせ適用することで、前記充填度の探知が可能となる。
図81は配筋されたPC床版の断面を示すものである。3本のポリエチレン製シース管(細径外径:80mm、肉厚:3mm)がコンクリート面より270mm(シース管中心)位置に埋め込まれている。すべてのシース管内にPC鋼棒が存在するが、セメントミルクが最右のシース管内に100%、真中のシース管には50%充填されている。最左のシース管内にはセメントミルクは充填されていない。
第5の実施例に基づいて、500kHzの共振振動数を持つ振動子径75mmの1対の発信探触子及び受信探触子をその中心位置を結ぶ線分が図81のシース管5502の直上になるようにし、且つその間隔を95mmに固定し、前記線分上にそって200mmの移動走査を行い、1500回分の加算平均波を求めG(t)とする。コンクリート音速cVp=4356m/秒として、数式20の最適周波数を用いて数式111で求められた周波数を中心周波数とする狭帯域成分波GA(t)をG(t)から取り出し、GA2(t)を示したものが図82である。
波5601は51mmのかぶり厚で埋め込まれた径が13mmの異形鉄筋からの反射波であり、波5602はシース管表面からのたて波反射波である。波5603はシース管表面からの反射波である往路又は復路をたて波、復路又は往路をよこ波とする波と、シース管回りを回折する波が偶然重畳して生じたものである。また、波5604はシース管表面からの反射波である往路、復路共よこ波とする波とPC梁等の厚さに関する反射波とが偶然に重畳して現れたものである。従って、本実施例で用いるコンクリートモデルはその内部探知が比較的困難なものである。一方、図83は図81の3本のシース管直上で、図82の場合と同様に計測した多点計測結果GAj(t)である。但し、探触子中心間距離を95〜135mmの間で変動させた計測である点で、図82の場合異なっている。
測定位置No.1の波がシース管5501直上、測定位置No.2の波がシース管5502直上、測定位置No.3の波がシース管5503直上での結果である。具体的には、fMAX=2500kHzとして、第1の周波数フィルタF1(t)を4回、第2の周波数フィルタF2(t)を1200回、Gj(t)に乗じ、80kHzを中心周波数とする狭帯域成分波GAj(t)を取り出しGAj 2(t)表示したものである。
各計測波で、波形振幅が大きく変動している。これは探触子走査面におけるコンクリート表面が凸凹していることから生じたものである。一般に、コンクリート表面の粗さ加減が各測点で異なる。この場合、G(t)波の変わりに数式73に示すH(t)波を用いると、この問題が解決される。数式97を用いn3=0として、H(t)波に、fMAX=2500kHzとして、第1の周波数フィルタF1(t)を4回、第2の周波数フィルタF2(t)を1400回乗じ、80kHzを中心周波数とする狭帯域成分波HAj(t)を取り出し、HAj 2(t)表示したものを図84に示す。
図84によれば、探触子直下にシース管と平行に径が13mmの鉄筋のないHA1(t)、HA3(t)と、鉄筋のあるHA2(t)波を比較すると、カーソル位置5801で起生するシース管上端からの反射波の強度が異なっている。
即ち、HA1(t)、HA3(t)の前記シース管からの反射波の強度は同一であり、HA2(t)の反射波のみがシース管直上にある13mmの異形鉄筋で超音波が一部遮断されることより、その強度が小さくなっている。以後の分析は図84のHAj(t)波を用いて行う。もちろん、コンクリート表面が平滑で、図83に示すGAj(t)波が、図84に示すようになる場合、HAj(t)波でなくGAj(t)波を以後の分析で用いても一向に構わない。
実際のPC梁及び床版の測定では、その厚さは既知である。もし、不明であるとしても、シース管等がその直下にない位置で計測する加算平均波G(t)より、図82を得たと同様の処理により、GA(t)波を取り出せば、この厚さを測定できる。図84のカーソル位置5802は、数式112により以下のように算定したものである。
この数式112に、梁背d=37cm、CVP=4359m/秒、f0=80kHz、β2=1.0を適用すると、tT=169.76+12.5≒182.3μ秒となる。
数式97で求められたHAj(t)波(図85)に、tT=182.3μ秒で最大値1.0、t1=0で0、t2=2×182.3=346.6μ秒以降で0となる正弦関数FiLT(t)をn5=4として、数式99を用いて演算したHBj(t)波を図86に示す。
図87の各スペクトルに図81の計測図の測定番号に対応した番号を付している。スペクトル6601が測点1波のHB1(t)=FiLT4(t)・HA1(t)のスペクトルであり、スペクトル6602が測点2波のHB2(t)=FiLT4(t)・HA2(t)のスペクトルであり、スペクトル6603が測点3波のHB3(t)=FiLT4(t)・HA3(t)のスペクトルである。
図81に示すモデルにおいては、測点1直下のシース管5501ではその内部にセメントミルクが充填されていない。測点2直下のシース管5502ではその内部にセメントミルクが50%の比率で、図81に示すように、管内下部にのみ充填されている。測点3直下のシース管5503ではその内部にセメントミルクが100%充填されている。
探触子をシース管直上に配置した計測であるため、すべての測点でのHBj(t)波では版厚反射経路の波の伝達が、このシース管の存在により遮断される。しかしながら、シース管内セメントミルクの充填度により、この遮断の程度は変化する。測点1及び2直下のシース管内には空気層があることより、シース管内を透過して、床版底部に達る超音波強度は極めて微弱となる。一方、測点3直下のシース管内にはセメントミルクが100%充填されているため、シース管の超音波透過量は測点1及び2の場合に比して著しく大きくなる。
図86のHBj(t)波に対応する図87のスペクトルFAj(f)の比較で、測点3のスペクトル値6103が測点1のスペクトル値6101、及び測点2のスペクトル値6102より著しく大きくなる振動数fEは、カーソルで示すように、fE=70kHz付近と特定できる。
このfEをfAとして、数式100を適用し、図87のスペクトルに第3の周波数フィルタA3 n3(f)を乗じて得たスペクトルが図88である。ここでn2=0、n3=200としている。
図88に示すスペクトルは、上述のフィルタリング処理で、図87のスペクトルより切り出されたものと解することができる。図88のスペクトルに対応する時系列波HHj(t)を図89に示す。
図86に示すHBj(t)=FiLT4(t)・HAj(t)波には、シース管を透過して得られる床版底部からの反射波に他の何らかの原因で生ずる波(妨害波)が重畳している。本実施例では、図86の波形でも、測点3直下のシース管内にセメントミルクが100%充填されているため、床版底部からの反射波が大きく起生している状態を確認できる。しかしながら、現場計測においては、前記妨害波の強度が大きく起生する場合もある。この場合、測点3の起生波の振幅が測点1及び2における振幅より小さくなることもある。このような場合でも、図87を用いて説明した同図のカーソル位置(振動数fE)の特定と、この振動数fEでスペクトルを取り出す数式100を用いた第3のフィルタによる処理によれば、前記妨害波を完璧に除去して、シース管を透過する床版反射波HHj(t)のみを取り出すことが可能となる。図89に示す波がこの結果である。
図89によれば、測点3直下のシース管にセメントミルクが完全に充填されており、測点1及び2のシース管内はその充填が不完全であると容易に判断できる。ところで、このようなfEの値のテーブルを作成しておけば、現場での探知計測でコンクリート音速cVp、シース管径φs、梁背又は床版厚を既知として、対応するfEの値をそのテーブルにより特定し、fE×cVp/VSTを新たなfEとすれば、fEを自動的に特定することができる。このfEの値の付近(fE1)で前記FAj(f)のいずれかのスペクトルにおいて大きなスペクトルピークが生じたとき、対応するシース管にセメントミルクが100%充填されていると判断し、このfE1をfAとして前記HHj(t)を取り出せばよい。しかしながら、測点1及び2のシース管内のセメントミルク充填度は解らない。この充填度の分析法について説明する。
図89は加算平均波Gj(t)をGj 2(t)表示したものである。カーソル位置を図82で確定したシース管表面からのたて波反射起生時刻に設定している。図83の場合のGAj(t)波と同様、測点1の加算平均波G1(t)は測点2及び3の加算平均波に比し、各測点での超音波の透過度の違いによりその強度が小さくなっている。
図91は図90の各測点でのGj(t)波を各々その表示画面で最大振幅表示したものである。カーソル位置を、前記管表面からの反射波の下側に生ずる波の起生位置tT付近に設定している。本測定モデルの場合、この付近の波は、上述のように、シース管表面からの反射波の内、往路(復路)をたて波、復路(往路)をよこ波とするモード変換波とシース管外周廻りのコンクリート内を伝達する回折波が偶然に重畳したものとなっている。
前記モード変換波と回折波の卓越度は周波数に依存して変動する。図92は図91のGj(t)波より数式96を用いてHj(t)波を作成し、次に数式97を適用して、Fj/Fj(f)に、fMAX=2500kHzとした第1の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)を乗じて求めたHAj(t)に対し、HAj 2(t)表示したものである。具体的にはn1=4、n2=2200、n3=0とすることで、成分波の中心周波数が70kHzとしている。図92によれば、測点1及び2のHAj(t)において前記カーソル位置(tT=144.83μ秒)に波の起生が確認できる。
このカーソル位置の波がシース管回りを回折する波である。この回折波にはシース管円周上を回折する波、シース管外側コンクリートを回折する波、シース管内側コンクリートをシース管円周にそって回折する波の3種の波がある。これらの波の相対強度は成分波の振動数で大きく変動する。多くの同種の測定例によれば、50〜70kHzの中心周波数を持つ狭帯域成分波では前記3種の回折波のうち、シース管外側コンクリートをシース管円周にそって伝達する回折波が支配的となる。また、前記シース管外周コンクリート内を伝達する回折波強度はシース管内セメントミルク充填度によっても大きく変化する。シース管内が未充填の場合、その強度が最も大きく、充填が成されるに従い、その強度が徐々に小さくなってくる。更に、シース管内が未充填及び小量充填の場合、シース管円周長を用いて、数式113に基づいて算定される振動数n×fs成分が共振現象により相対的に大きく励起してくる。
但し、φはシース管直径、nは1以上の整数(自然数)である。
数式99を用いて前記tT位置で最大値1.0、t=0で0、t=2×tT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を図92のHAj(t)波に100回乗じ、HBj(t)=FiLT100(t)×HAj(t)を作成する。図93がHBj(t)波である。対応するスペクトルを図94に示す。図93のスペクトルと図94の切り出し波との間では、スペクトル6801は測点1の切り出し波HB1(t)に対応し、スペクトル6802は測点2の切り出し波HB2(t)に対応し、スペクトル6803は測点3の切り出し波HB3(t)に対応している。
上述の実験則及び物理現象によれば、数式113で算定されるn・fsでのスペクトル値の大きさがスペクトル6801で最も大きく、次にスペクトル6802が大きく、スペクトル6803が最も小さくなるはずである。図94にカーソル6804をn×fsの位置に示している。但し、fsは数式114のようにし、n=3、n×fs=53kHzとした。
しかしながら、n×fsにおけるスペクトル値は、スペクトル6802、スペクトル6801、スペクトル6803の順に小さくなっており、前記上述のような、スペクトル6801、スペクトル6802、スペクトル6803の順に大きくなるという関係にはなっていない。
これは、tT付近の時刻の波には、上述のようなシース管表面で反射する往路(復路)をよこ波、復路(往路)をたて波とする伝達波及び他の何らかの原因で生じた妨害波が、シース管外周コンクリートを回折する波に重畳しているためである。
前記妨害波とシース管外周コンクリートを回折する伝達波の強度比は、数式99による図93を求めた処理(FiLT100(t)・HAj(t))において、カーソル位置tTを時間軸後方に移動していくことで徐々に変化していく。
図95乃至図97は、図92の時刻tTを144.83μ秒として、夫々tT=144.8+10=154.8μ秒、144.8+20=164.8μ秒、144.8+30=174.8μ秒としたときのFiLT100(t)・HAj(t)波のスペクトルを比較表示したものである。
n×fs=53kHz付近で、スペクトル6801、スペクトル6802、スペクトル6803の各スペクトル値が順に大きくなっている。また、そのスペクトルの形状も似たものとなる時刻tTは、図96のtT=164.8μ秒の場合である。即ち、tT=164.8μ秒付近の波では、シース管外周コンクリート回りを回折する波に比し、前記妨害波の強度が相対的に小さくなっている。
これより、図96のカーソル位置で示す振動数n×fs=3×17.35=52kHzをfAとする第3の周波数フィルタA3(f)を用い、数式100を適用しn11=0、n21=0として、A3 31・FAj(f)なる演算を行い表示したのが図98のスペクトルである。ここで、n31=200とした。対応する波形(数式115)をHHj 2(t)示したものが図99である。
探知妨害波(シース管表面からのモード変換波及び他の何らかの原因で発生する波)が除去され、上述の実験則及び物理現象を明解に示す結果となっている。即ち、改変されたシース管外周コンクリートを回折する伝達波がシース管内セメントミルク未充填の測点1の分析波の場合で最も大きく、シース管内セメントミルクが50%充填の測点2の分析波の場合でその次に大きく、シース管内セメントミルクが100%充填の測点3の分析波の場合で最も小さくなった。従って、図99に示す波の比較で、シース管内セメントミルクの充填度が確認できる。
なお、図98及び図99のシース管外周コンクリートを回折する波の取り出しでは、若干の技術的判断が必要とされる。つまり、図95、図96、図97のいずれのスペクトルより図94のスペクトルを第3の周波数フィルタ処理で取り出すべきかの判断が必要とされる。次に、このような判断を要しない分析について説明する。
コンクリート内に埋め込まれたシース管において、管内部にセメントミルクが充填されていない場合、シース管自体がシース管に入力する超音波によって共振現象を起す。セメントミルクの充填度によって、この共振現象は大きく変化する。即ち、充填度が高くなるに従い共振は小さなものとなっていく。
図92の時刻tTを徐々に大きくし、カーソル位置を時刻軸後方へ移動させながら図94乃至図97を取り出す方法を、さらに継続していくと、誤ることなくシース管内セメントミルク充填度を探知できる。
図100は、数式99を用いて図92のHAj(t)波に、tT=252μ秒で1.0、t=tT−100=152μ秒以前の時刻で0、t=tT+100=352μ秒以降の時刻で0とする正弦関数を20回乗じたスペクトルの比較図である。波7401が直下のシース管の充填度が0%の場合の結果を示し、波7402が充填度50%の場合の結果を示し、波7403が充填度100%の場合の結果を示し、夫々測点1、測点2、測点3における測定結果に対応する。波7401及び波7402のスペクトルがほとんど一致している。更に、時刻tTの値を1.0μ秒ずつ増加させ、図100を得るときと同様の処理を繰り返すと、スペクトルの比較図が少しずつ変動していく。
図101乃至図103は、この変動の比較図(数式99の右辺FAj(f))であり、tTは、図101では281μ秒、図102では299μ秒、図103では308μ秒である。
図100乃至図103の比較図について検討すると、波7401のスペクトルの形状はtTが増加してもほとんど変化していない。波7402のスペクトル形状は、最初波7401のスペクトル形状とほとんど同一であるが、tTの増加に伴って変化し、且つそのスペクトル値が漸減していく。そして、図103では、この波7402のスペクトルは、波7403のスペクトルとその形状及びスペクトル強度が似たものとなっている。
また、波7401のスペクトルの最大値位置を示す振動数は、前記tTの増分の間、ほとんど変化せず一定値となっている。
前記スペクトル比較図の変化の特徴は、シース管に入力する超音波によって生ずるシース管の振動挙動としての共振現象を端的に示すものである。波7401のスペクトルの前記変化の特徴については、測点1のシース管内セメントミルクが0%充填であるため、前記共振波が長時間継続することを示している。波7402のスペクトルの変化の特徴については、測点2のシース管内セメントミルクが50%充填であるため、前記共振波が測点1の場合に比しより早く減衰消滅している。波7403のスペクトルの変化の特徴については、測点3のシース管内セメントミルクが100%充填であるため、波7401及び7402の場合に比し、前記共振現象が存在しない。上述のような共振現象を端的に示すこと以外に、波7402のスペクトルが最初波7401のスペクトルとほとんど同一であり、時刻tTの値が増加していくと、徐々に波7403のスペクトルに漸減していく。
図103のスペクトルに対応する数式99のHBj(t)波のtT=308μ秒における切り出し波を図104に示す。
図104に示す波では、前記共振波が測点1で大きく生じ、測点2及び3では同程度の波の強度を示すように見える。しかしながら、コンクリートの内部探知では、一般的に、予期し得ぬ探知妨害波が度々生ずる。例えば測点2の切り出し波で、前記探知妨害波が前記がシース管の存在で生ずる共振波と重畳していることも稀ではない。
図104の切り出し波は前記時系列フィルタFiLT(t)を20回にわたりHAj(t)に乗じ、FiLT20(t)・HAj(t)を示すものである。このFiLT20(t)・HAj(t)の代わりに数式99による再計算で、n5=1としたHBj(t)=FiLTn5(t)・HAj(t)の切り出し波を図105に示す。図105のFiLTn5(t)・HAj(t)波に対応するスペクトルFAj(f)を図106に示す。FiLTn5(t)・HAj(t)においてn5=20、n5=1の場合で測点1(j=1)のシース管内セメントミルク充填度が0%の場合のスペクトルの最大値位置をそれぞれ図103のカーソル7704、図106のカーソル8004で示している。
カーソル7704及び8004が示す振動数はそれぞれ46.6kHz、46.4kHzとまったく変動していない。図100乃至図103のtTの増分毎のFiLT20(t)・HAj(t)波のスペクトルのうち、測点1のシース管が空の場合のFA1(f)スペクトルもこのカーソル位置の振動数はほとんど変化していない。
これは、これらのカーソル7704、8004の振動数(46.4kHz)が、前記内部にセメントミルクがないコンクリート内に埋め込まれたシース管の共振振動数であることが原因して生じた現象である。FiLTn5(t)・HAj(t)波(n5=1)に対応するスペクトルを示す図106によれば、カーソル位置に大きな振幅のスペクトルが立ち上がっている。これが前記シース管の共振に伴うスペクトルである。カーソル位置より左側(低周波方向)及び右側(高周波方向)に幾つかのスペクトルの起生が確認できる。これらは何らかの原因で生じた妨害波のスペクトル群である。
図105の数式116で表される波に数式100を適用し、図106のカーソル8004の共振振動数46.4kHZをfAとする第3の周波数フィルタA3 n31(f)を用い、n21=0として、数式115を演算し、その右辺に示す(A3 n31(f)・FAj(f))を示したものが図107のスペクトルである。ここで、n31=400である。
測点1での成分波8101、測点2での成分波のスペクトル8102及び測点3での成分波8103のスペクトルがそのスペクトル値の大小関係を鮮明にして求められている。
図107のスペクトルに対応する時系列波HHj(t)を示したものが図108である。前記A3 n31(f)を用いたフィルタリングで改変されたシース管に生ずる共振波が抽出されている。0%充填の測点1で最も大きい共振波が得られ、50%充填の測点2でその次に大きい共振波が得られている。100%充填の測点3では測点1及び2の場合に比し、ほとんど前記共振波の起生を確認することができない。
図83のGj(t)波においても、図84のように、Hj(t)波の比較図となる場合には、前記分析で用いたHj(t)をGj(t)に置き換えても、同様の分析結果を得ることができる。
図109及び図110は第10の実施例としてシース管の埋め込まれたコンクリート床版においてシース管の真上のコンクリート表面で得た加算平均波を用いて、床版の反射波に注目してシース管内部のセメントミルクの充填度を探知する方法を示すフローチャートである。なお、ステップS10−6における中心周波数は図111のように求めることができる。また、中心周波数f0の値は、1対の発信探触子及び受信探触子の振動子径をφ、コンクリートの音速をcVp、探触子の中心間距離の変動量をΔ1としたとき、数式117で求められる。
また、図112乃至図114は第10の実施例としてシース管に埋め込まれたコンクリート床版においてシース管の直上のコンクリート表面で得た加算平均波を用いて、シース管を回るコンクリート内回折波に注目すると共に、シース管の共振特性に注目してシース管内部のセメントミルクの充填度を探知する方法を示すフローチャートである。なお、ステップS10−25における中心周波数は図111のように求めることができる。また、中心周波数f0の値は50乃至70kHzとする。更に、ステップS10−28におけるn5の値は、自然数とする。更にまた、ステップS29におけるfEの値は、自動処理で特定してもよい。なお、fEの値は、PC床版の建設の前に、図81のような校正供試体を作成し、この供試体を用いて得たG(t)波にこの探知方法を適用することで予め求めておいてもよい。また、実際の現場計測においては、シース管内部がからのときのG(t)波をGj(t)の中に校正用の波としてGj=jB(t)の中に混在させておくことが好ましい。また、G(t)波の取得は、測定現場でシース管内へのセメントミルクの注入前に計測しておくか、図81のような校正用の供試体を作成し、この供試体を用いて計測することにより、行うことができる。
なお、実施例としては示さないが、第9及び第10の実施例の探知法はジャンカ、内部空洞、剥離等の探知及び材質の異なる多層樹脂材等の剥離探知にも、そのまま適用可能である。
次に、第11の実施例について説明する。コンクリートは打設後の養成等によっては、その表面に亀の子状のフェアークラックが多量に生ずる場合がある。超音波を用いてこのようなコンクリートに埋め込まれた鉄筋の探知を行っても、その平面的位置の確認も不可能となる場合がある。第11の実施例は、受信及び発信共用の探触子を用いて、このような場合の計測を行う方法である。
図115は、フェアークラックが多量にある場合の鉄筋の探知結果を示す。測点3、測点8及び測点13の位置にかぶり厚50mmの深さに径が19mmの丸鋼が埋め込まれている。これらの鉄筋の配筋ピッチは150mmである。互いに隣り合う測点の間隔は30mmとしている。径が40mm、共振振動数が500kHzの振動子を内蔵した発信及び受信共用の探触子を用い、探知対象鉄筋の配筋方向に200mm移動させながら各々の測点で2000回の受信波を収録し、前記受信波の加算平均波をjを測点番号としてGj(t)を作成し、数式96を用いて、Hj(t)波を演算し本コンクリートモデルの音速CV=3900m/秒、α(f)=1.0として、数式20に基づいてf0=97.5kHzを求め、このf0値を中心周波数とする狭帯域成分波HAj(t)をHA2 j(t)表示したものである。具体的には、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとするA1(f)フィルタ及びA2(f)フィルタを用い、数式97でn1=4、n2=800、n3=0としてHAj(t)を計算した。図115のHAj(t)波の比較図によれば、鉄筋が直下にある測点3、8及び13を探知できていない。これは、上述のような多数の亀の子状のフェアークラックの存在によるものである。
鉄筋のかぶり厚d=50mm、コンクリート音速CVP=3900m/秒、β1=1/2及びf0=97.5kHzを数式112に適用すると、数式118のようになる。
そして、数式98の代わりに、tT=t=30μ秒として、t=tT−100以前の時刻で0、t=tTで1.0、t=tT+100以降の時刻で0となる正弦n関数FiLT(t)をn5=10として、HAj(t)波に乗じ、数式99の演算を行い、HBj(t)の比較波形をHBj 2(t)表示したものが図116である。対応するFAj(f)スペクトルの比較図を示したものが図117である。
図117のスペクトルに対し、数式100を用い、n3=0として、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとする第2の周波数フィルタA2(f)をFAj(f)に多数回(n21)乗じていく経緯の中で、A2 n21(f)・FAj(f)のスペクトルの中で、Sinnn(f)状のスペクトルが浮び上ってくる。nnは自然数である。更に、Sinnn(f)状のスペクトルの最大値位置が同一となってくるn21の値がある。図118がこの状況を示したものであり、n21=1000として、(A2 n21(f)・FAj(f))のスペクトル値を3乗して表示したものである。図118中、スペクトル1003が測点3のA2 n21(f)・FA3(f)であり、スペクトル1008が測点8のA2 n21(f)・FA8(f)であり、スペクトル1013が測点13のA2 n21(f)・FA13(f)スペクトルである。スペクトル値に大小の差はあるが、鉄筋が測点直下にあるj=3、8、13のスペクトルのみ、Sinnn(f)状にかつその最大値を示す振動数(f=75.7kHz)が一致している。前記f=75.7kHzを特定する自動化処理は容易である。前記A2 n21(f)・FA(f)スペクトルにおいて、n21の値を徐々に大きくしていくとき、A2 n21(f)・FA(f)スペクトルの中でsinnn(f)状のスペクトル群の出現を自動認識すると共に、前記sinnn(f)状スペクトル群の中心周波数が概略同一となったとき、A2 n21(f)・FA(f)の更なる演算を停止すればよい。更に、数式100を用いて、f=75.7kHzをfAとする第3の周波数フィルタA3(f)をA2 n21(f)・FAj(f)に200回乗じて、75.7kHzを中心周波数とする超狭帯域成分波を演算し(数式119)、n21=1000、n31=200として示したものが図119である。
対応するHHj(t)波の中で最も大きい振幅の絶対値を|Pmax|とし、測点毎のHHj(t)波の最大値の絶対値を|jPmax|としたとき、|jPmax|≧|Pmax|/βaとなるHHj(t)を(|Pmax|/|jPmax|)×HHj(t)と置き換え、HHj(t)をHHj 4(t)表示したものが図120である。βa=1.2とした。図115及び図116では鉄筋の存在位置を読み取ることはできないが、図120のHHj 4(t)表示した波では、直下に鉄筋が存在する測点3、8及び13のみで数式95乃至数式100の演算で改変された鉄筋からの反射波を明敏に確認できる。
また、図121乃至図122は第11の実施例としてコンクリート表面に微細なフェアークラックが多数存在する場合の鉄筋の探知方法を示すフローチャートである。なお、ステップS11−8におけるn5及びステップS11−9におけるnpは自然数であり、ステップS11−10におけるnsは1、2又は3である。
次に、第12の実施例について説明する。第1乃至第11の実施例では、数式20に示す最適周波数f0又は数式50に示す周波数fRを中心周波数とする成分波GAj(t)又はHAj(t)を加算平均波Gj(t)を用いて作成するものである。これらの周波数f0及びfRは探知妨害波の強度が最小になり、相対的に探知目標波が大きくなる周波数を示すものである。つまり、周波数f0及びfRは探知目標波強度を最大とするものではない。探知目標の強度が最も卓越する周波数(fD)は、標準音速(VST)、被探知体音速(V)、探知路程(l)の関数α2(l)を用いて、数式120のように定義できる。
α2(l)はVST探知対象毎に決まる探知路程の関数である。また、α2(l)は、被探知体の音速をVSTとしてまとめられる実験計測で得る係数である。第12の実施例では、f0及びfDの値を用いる。
図124は、50mmのかぶり厚に埋め込まれた径が20mmの異形鉄筋の探知結果である。図114は、次のようにして得たものである。先ず、音速が4400m/秒のコンクリートの表面に共振振動数500kHz、径が40mmの振動子を内蔵した1対の発信探触子及び受信探触子を、その中心を結ぶ線分が探知対象鉄筋の長手方向と平行になるように配置し、探触子の中心間距離を70mmに保持したまま、前記線分上を200mmの間移動させながら1000回の受信波を収録し、これらの受信波の加算平均波Gj(t)を取得した。数式112にβ2=1.5、鉄筋かぶり厚d=50mm、コンクリート音速CVP=4400m/秒及び数式20で算定される最適周波数を、α(f)=1.24として、数式121から136kHzとし、tTを数式122から33.8μ秒と算定した。
更に、数式123を用い、n1=n2=n3=0として、GAj(t)を演算し、t=tT−100μ秒以前の時刻で0、t=tTで1.0、t=tT+100μ秒以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を数式124の演算を行った。そして、n5=57としたGBj(t)波をGBj 2(t)表示した。
鉄筋直下50mmの位置に存在する測点2及び6で大きな振幅の波の起生が確認できる。図124のGBj(t)波の比較図に対応するFAj(f)スペクトルをFAj 2(f)で比較表示したものが図125である。図125中のスペクトル1152が測点2のGB2(t)波のスペクトルであり、スペクトル1156が測点6のGB6(t)波のスペクトルである。
図125のスペクトル1152及び1156の最大値を示す位置がカーソル1151で示すように一致している。このカーソル1151が示す振動数95kHzが、数式120で求められるfDの値である。本実施例の場合、標準音速VSTを4400m/秒としてα2(l)の値を求めれば、数式120よりα2(l)=95となる。なお、探知路程が深くなれば、α2(l)の値も変化する。音速が4400m/秒のコンクリートの場合で、厚さ500mmの版厚探知の場合、fDの値は解析例として示さないが、63kHz前後となる。これより、この場合のα2(l)はα2(l)=63となる。例えば音速が4000m/秒のコンクリートの場合、厚さ500mmの版厚探知のfDの値は63×4000/4400より57.3kHzとなる。
更に、標準音速が4400m/秒のコンクリートの場合で、厚さ300mmの版厚探知の場合、fDの値は93kHz前後となる。
図126はGj(t)波に数式123で、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとして、n1=4、n2=420、n3=0を適用したときのGAj(t)を用い、数式122で得られるtTを鉄筋かぶり厚d=50mmとして得たtT=33.8μ秒、t=tT−100以前の時刻で0、t=tTの時刻で1.0、t=tT+100以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を用い、数式124の演算を行い、GBj(t)=FiLT100(t)・GAj(t)を求め、対応するスペクトルFAj(f)をFAj 2(f)表示したものである。図126中の全てのスペクトルの平均的振動数f0をカーソル1161で示している。カーソル1161の位置は数式20に、α1(1)=1.24、V=4400m/秒、φ=40mmを適用して、f0=136kHzを求め、n1及びn2の値をコントロールして得たものである。カーソル1161の位置がf0=136kHzになるようにしている。
図126のカーソル1162及び1166が夫々直下に鉄筋が埋め込まれた測点2及び6のGBj(t)波のスペクトルFA2(f)、FA6(f)である。他のスペクトルは、鉄筋が存在しない他の測点での探知妨害波スペクトルの残存である。図126に対応するGBj(t)の波を示したものが図127である。数式20を用いて得た図126のカーソル1161の位置で示す最適周波数f0=136kHzから数式120で算定されるfD=95kHzへ取り出しスペクトルの中心周波数を変更したものが図128である。具体的には、n21=160、n3=0として、数式125に対して数式125−1の演算を行い、A2 160(f)・FAj(f)を(A2 160(f)・FAj(f))2表示したものである。
測点2のスペクトル1182及び測点6のスペクトル1186について、それらのスペクトル強度は異なるが、その最大値を示す振動数が95kHz(fD)で完全に一致している。
図128のA2 160(f)・FAj(f)スペクトルの比較図で鉄筋からの反射波のfDの値が95kHzと決定した。fA=fDとするA3(f)を用い、数式125においてn1=0、n2=160、n3=200としたGCj(t)の演算を行い、各GCj(t)波の中で最も大きい振幅値の絶対値を|jPmax|とし、|jPmax|のj=1乃至nAの中で最も大きい振幅値の絶対値を|Pmax|としたとき、|jPmax|≧|Pmax|/βaとなるGCj(t)を|Pmax|/|jPmax|×GCj(t)と置き換えて比較表示したものを図129に示す。なお、図129はβa=1.1、np=3として、GCj np(t)表示したものである。
数式96に示すHj(t)波を用いた同様の分析でも、分析例として示さないが、第10の実施例で示したように、同一の効果を得ることができる。
次に、fD値の共振振動数をもつ振動子を内蔵した発信及び受信共用の探触子を備え、振動子にパルス型電圧を載荷する超音波装置を用いて得る加算平均波Gj(t)に、同様の処理を行った場合の作用について説明する。
このような超音波装置を用い、図124を得た測定を行う。共振振動数を100kHz、径40mmの振動子を内蔵した発信及び受信共用の探触子を探知対象鉄筋長手方向に平行に200mmの間移動走査させながら1000回分の受信波を収録し、これらの受信波の加算平均波をG1(t)とし、探触子位置を37.5mmずつ前記鉄筋長手方向と直角方向に探触子位置を変更し、前記移動走査を行い、G2(t)、G3(t)…G7(t)を得た。j=1乃至7としてのGj(t)において、図124を得たときとと全く同一の処理を行い、数式124の演算を行い、FAj(f)スペクトルを表示したものが図130である。測点2及び6直下にかぶり厚50mmで径19mmの異形鉄筋が存在している。中心周波数88kHzのスペクトル1202及び1206のが対応する測点2及び測点6のGBj(t)波のスペクトルである。一方、低周波方向にスペクトルの起生がある。探触子が発信及び受信共用であるために、生じた妨害波のスペクトルである。
図124及び図125は数式123を用いるGAj(t)の算定をn1=n2=n3=0として行ったものである。図130ではn1=n2=n3=0とし、GAj(t)を算定することで、上述の妨害波のスペクトル1203が生じているが、n1、n2、n3の値をコントロールすれば、妨害波のスペクトル1203を除去できる。
n1=4、n2=46、n3=0として求めたGAj(t)波に、tT=33.8μ秒とするフィルタFiLT(t)を用い、n5=57として数式99の演算で求めた同式右辺のFAj(f)をFAj 2(f)で表示した図131が、妨害波のスペクトル1203を除去したものである。なお、図示しないが、図130に示すGBj(t)の右辺スペクトルFAj(f)を数式125に適用し、n21=0、n31を1以上の整数、fA=88kHzとして数式125の右辺中のA2 n21(f)・A3 n31(f)・FAj(f)スペクトルを求めても、図131のスペクトル図と概略同一となる。また、探知対象であるコンクリートの表面が粗である場合には、前述までの実施例と同様に、Fj(f)=1.0とした位相解析に前記処理を置き換えても同様の結果を得ることができる。
また、上述のような超音波探知装置の探触子は、fDの共振振動数を備えた振動子を内蔵した1対の発信探触子及び受信探触子を備えたものであっても、特に測定例として示さないが、図125又は図128に示すスペクトル比較図を得ることができ、結果として、図124又は図129に示すような探知結果を得ることができる。
このように、受信探触子と発信探触子とが共用となっていない超音波装置を用いても、同様の鉄筋の探知が可能である。探知対象が定まっている供試体内部の健全性チェックの探知のように、fDの値が確定している場合、このfD値を共振振動数とする振動子を内蔵する探触子を用いた健全性探知専用装置として、超音波探知装置を利用することができる。
なお、上述の超音波探知装置は発信探触子内の振動子にパルス電圧を印加するものであるが、説明するまでもなく、他の実施例のように、ステップ関数型電圧を印加する場合であっても、前記n1、n2及びn3の値をコントロールすることで、図131とほぼ同一のスペクトル比較図を得ることができる。
鋼材の溶接部のキズの探知では、探触子を鋼材表面でその位置を徐々に変化させ、その変化の都度得られる受信波をリアルタイム表示することで、溶接部のキズの有無及びその位置を容易に確認できる。第12の実施例で説明した探知目標波が最も大きく励起する振動数fDを中心周波数とする狭帯域成分波を用いれば、前記溶接部のキズの探知と同様の探触子移動走査によるリアルタイム波形の視認で、コンクリート内部の探知が可能となる。
図132乃至図134は第12の実施例として探知目標波が最も大きく生ずるfDの値を利用した探知方法を示すフローチャートである。また、図135乃至図137は第12の実施例として探知対象毎に専用化された超音波探知装置においてその探知対象に固有のfDの値を共振振動数とする振動子を内蔵した発信及び受信共用の探触子又は1対の発信探触子及び受信探触子をもつ超音波探知装置を用いた探知方法を示すフローチャートである。なお、ステップS12−35におけるfDは探知対象のコンクリート標準音速VSTでのfDの値を示し、ステップS12−36におけるfSは振動子の共振振動数を示し、ステップS12−38におけるdaは探知目標までの概略路程を示す。
次に、第13の実施例について説明する。第12の実施例で示した鉄筋の探知を探触子移動走査リアルタイム計測で行う。音速が4400m/秒のコンクリートの表面に共振振動数500kHz、径が40mmの振動子を内蔵する1対の発信探触子及び受信探触子をその中心を結ぶ線分が探知対象鉄筋の長手方向と平行になるように配し、且つ探触子の中心間距離を70mmとしたとき、探触子位置を同一とする100回分の受信波を収録し、その受信波の加算平均波をG(t)とする。
図138は、1対の発信探触子及び受信探触子が鉄筋直上にある場合の数式123に示すGA(t)波である。第12の実施例で得た50mmの深さに埋め込まれた鉄筋からの反射波が最も大きく励起する周波数fD=95kHzを中心周波数とする狭帯域成分波で示している。具体的には、数式123において分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとするA1(f)フィルタ及びA2(f)フィルタを用い、n1=4、n2=880、n3=0としてA1(f)・A2(f)・F(f)を求めている。リアルタイムでの波形表示であるため、数式123の演算は高速処理が要求される。このため、数式112の右辺A1 n1(f)・A2 n2(f)・F(f)の演算の代わりに、これと等価な時系列G(t)の演算を数式5乃至10に基づいて行った。
図139及び図140中の太線で示す波は、夫々両探触子を結ぶ線分を探知対象鉄筋の長手方向と平行にしたまま、鉄筋と探触子とを結ぶ線分の平面的距離を37.5mm及び75.0mm(隣り合う探知対象鉄筋の中間位置)としたときに、全く同一の処理で得たGA(t)波をGA2(t)表示したものである。なお、図139及び図140中の細線で示す波は鉄筋直上計測で得たGA2(t)波である。
図138乃至図140のGA2(t)波の比較によれば、図138を得た測点位置の直下に鉄筋が存在することを容易に判断できる。実際の計測では、探触子の中心を結ぶ線分を探触対象である鉄筋の長手方向と平行にしたまま、探触子を前記線分と直角方向へ徐々に移動させながら、図138乃至図140に示すように、npを1以上の整数としてGAnp(t)波の強度変化の推移を視認すればよい。即ち、図138のようなGAnp(t)波を得たとき、その測定直下に鉄筋があると判断すればよい。
図139及び図140では、細線で示す波が鉄筋直上の計測でのGA2 2(t)波であり、太線で示す波が直下に鉄筋のない計測でのGA1 2(t)波であるが、鉄筋がある計測点位置の特定を容易にするために、実際の測定では、GA1 np(t)波の最大振幅の絶対値を|maxP1|及びGA2 np(t)波の最大振幅の絶対値を|maxP2|としたとき、次のような表示を行うことが好ましい。|maxP1|≧|maxP2|の場合、1/|maxP1|・GA1 np(t)及び1/|maxP1|・GA2 np(t)を、最大振幅値を1.0とする波形表示画面に波形表示する。一方、|maxP1|<|maxP2|の場合、1/|maxP2|・GA1 np(t)及び1/|maxP2|・GA2 np(t)を、最大振幅値を1.0とする波形表示画面に波形表示する。
探知目標波が最も大きく励起する振動数fD以外の振動数で図140を得たときと同一の処理を行ったリアルタイム表示の波GA2(t)の一例を図141に示す。
45kHzを中心周波数とする波である。細線で示す波が鉄筋直上位置、太線で示す波が隣り合う探知対象である鉄筋の中間位置でのGA2(t)波である。図139及び図140のように、鉄筋の存在位置を確認することはできない。測定例として示さないが、fD=95kHzより高周波、例えば135kHzで同一の処理を行っても、図141と同様、鉄筋の存在位置を確認することはできない。
リアルタイム処理で鉄筋存在位置を確認できる他の条件として使用する探触子の径の大きさが重要である。例えば径20mmの探触子を用いた場合、1対の発信探触子及び受信探触子間でコンクリート表面を伝達する表面波等の妨害波の強度が最小となる振動数は、α(1)=1.24のとき、数式20よりf0=270kHzとなる。この場合、fDの値が95kHzであるため、fD<<f0となり、fD振動数帯では妨害波の強度が大きくなり、例えfDを中心周波数とするGA(t)波を抽出しても、勢力の大きい妨害波と鉄筋からの反射波が重畳し、図138乃至図141に示すように、鉄筋の存在位置を確認し得なくなる。
従って、リアルタイム計測による鉄筋探知を可能ならしめる条件として、f0とfDの値にあまり差のない探触子径φ又は超音波発信及び受信面の被探知体に接する部位の径φ、又は発信面と受信面の中心を結ぶ線分上の発信及び受信面の幅φを選定すべきである。fD=95kHzの場合、数式20より、α(l)=1.0として、φを求めると、φ=4400/95=46mmとなる。このため、φ=46mm以上の径又は幅を採用すれば、fDの値を中心周波数とする狭帯域成分波の抽出で誤ることなく、鉄筋の存在位置を確認できる。多くの計測実験によっても数式φ≧cVp/fDが満足できる数式として確認されている。
もし、使用する探触子発信又は受信面の径φ等が数式125を満足しない場合は、1対の探触子の距離をa1乃至a2間で変動させる探触子走査計測を行い、数式20の代わりに数式126を採用し、且つα(l)=1.0として数式127となるように、a1及びa2の値を設定すれば、リアルタイム計測が可能である。
図142乃至図145は第13の実施例として広帯域の加算平均受信波G(t)より、中心周波数feの狭帯域成分波を抽出し、リアルタイムに被探知体内部の状態を探知する方法を示すフローチャートである。なお、ステップS13−2におけるlは概略探知路程であり、α2(l)は標準音速VSTに対するfDの値であり、ステップS13−3におけるα(l)は補正係数である。また、ステップS13−4におけるGj(t)は100回程度の加算平均波である。また、ステップS13−12において時系列フィルタを使用するとした場合、ステップS13−20における判断が容易となる。
次に、第14の実施例について説明する。第14の実施例では、第13の実施例を拡張して、コンクリートスラブ内に埋め込まれた配管のリアルタイム測定を行う。コンクリートスラブ厚200mm、スラブ上下面よりかぶり厚30mmで径10mmの異形鉄筋が井桁状に配筋されている。上段及び下段の井桁に配筋された鉄筋の平面的位置は同一である。また、配管は外径25mmの塩化ビニル管がかぶり厚100mmで埋め込まれている。コンクリート音速CVPは4317m/秒である。第13の実施例と同一の発信探触子及び受信探触子を用いた。
図146は探触子直下に鉄筋も配管もない位置で、1対の探触子位置を固定配置し、その間隔を60mmとしたときの1000回の加算平均波G(t)を示したものである。カーソル1261をコンクリートスラブ厚20cmに相当する時刻より若干後方tT=111μ秒に示している。t=tT−100=11μ秒以前の時刻で0、t=tT=111.0μ秒で1.0、t=tT+100=211μ秒以降の時刻で0となる正弦関数状のフィルタFiLT(t)と、数式123でn1=n2=n3=0として得たGAj=1(t)を用い、n5=24として取り出した数式124の右辺のFAj=1(f)を示したものが図147のスペクトルである。カーソル1271で示す振動数84kHzが数式120に示すfDの値である。即ち、探触目標をスラブ厚とした時のfDの値である。
この測定例の場合、探知妨害波の強度が最も小さくなる下限の周波数は、数式20より、α(l)=1.0としてf0=107.5kHzとなる。fD=84kHzとf0値は若干ずれている。図示しないが、配管からの反射波のfDの値は、その路程が版厚の1/2であるため、fD=84kHzより大きくなる。このため、本実施例では、fDの値を数式128に基づいて95kHzに置き換え、版厚及び配管反射波の双方が比較的大きく励起する周波数を選定して行う。95kHzはf0=107.5kHzともあまり差がないため、妨害波の混入も小さなものとなる。
図146のG(t)波より、fD=95kHzを中心周波数とする狭帯域成分波GAj(t)を数式123を用いて後述するように抽出したものが図148である。一方、図149中の太線で示す波は、図150(a)に示すように、発信探触子の超音波発信面が直下の配管の平面投影面に、探触子径の1/4が重なり、受信探触子の中心と配管中心線の距離を64mmとしたときに同一の処理で抽出したGAj(t)波である。版厚反射波1271以外に、配管からの反射波1272が大きく生じている。
一方、図150(b)に示すように、1対の探触子の双方共を配管の直上に配置したときに前記と同一の処理で抽出したfD=95KHzを中心周波数とする狭帯域成分波は次のようになる。
図151が数式123の演算により得られたGB(t)波である。超音波が配管で遮断され、版厚反射波が消滅し、配管からの反射波が大きく生じている。
このように、図148、図149及び図151に示す成分波は、探触子位置を任意に移動させる毎に探触子位置を固定する計測で得られる加算平均波G(t)を得る毎に、第13の実施例で示したように、超高速にGA(t)又はGB(t)波を抽出及び表示するというリアルタイム処理で取得することができる。従って、探触子位置直下に配管が有るか無いかを容易に確認可能することができる。
なお、GA(t)波の抽出は数式123を用いて行われているが、具体的には、n1=4、n2=1300、n3=0として夫々95kHzの狭帯域成分波を求めることで行われたものである。また、抽出したリアルタイム表示波形を見やすくするために、時刻の早い時点で生ずる妨害波等を時系列フィルタFiLT(t)を用いて縮小してもよい。つまり、図149及び図151に示す波は数式123を用いて版厚反射波の起生する付近の時刻tTを前記111μ秒とし、t=0μ秒で0、t=tT=111μ秒で1.0、t=2×tT以上の時刻で0となる正弦関数状のフィルタFiLT(t)をn5=1としてGA(t)に乗じ、GB2(t)=(FiLT(t)・GA(t))2を示したものである。細線で示す波が直下に配管のない場合のGB1(t)であり、太線で示す波が直下に配管のある場合のGB2(t)である。なお、図148に示す波はn5=0としてGB2(t)(=GA2(t))表示したものである。
実施例としては示さないが、GA(t)又はGB(t)波を用いる代わりに、数式97によるHA(t)波又は数式99式によるHB(t)波を用いれば、第10の実施例のように、被探知体であるコンクリートの表面が粗く、コンクリートの表面と発信及び受信探触子面とが具合よく密着しない場合でも、図148、図149及び図151に示すようなリアルタイム探知が可能となる。
なお、実際の計測現場では各測定位置で超音波の透過度が大きく異なる場合がある。このような問題に対処するためにGB1 nP(t)及びGB2 nP(t)、又はGA1 nP(t)及びGA2 nP(t)、又はHA1 nP(t)及びHA2 nP(t)、又はHB1 nP(t)及びHB2 nP(t)のそれぞれの波をP1 nP(t)及びP2 nP(t)と表現し、P1 nP(t)及びP2 nP(t)のそれぞれの最大振幅を表示画面に最大表示している。図149及び図151の比較計測ではnp=2、n5=1としてGB1 2(t)(細線)、GB2 2(t)(太線)を夫々の最大振幅で表示画面に最大表示したものである。
図152乃至図155は第14の実施例として広帯域の加算平均受信波G(t)より、中心周波数feの狭帯域成分波を抽出し、リアルタイムに被探知体内部の状況を探知する方法を示すフローチャートである。
次に、第15の実施例について説明する。第15の実施例は、コンクリート表面に多量のクラックがある場合の内部に埋め込まれた鉄筋の探知を行う。つまり、コンクリート打設後、その養生によってはその表面に亀の子状の微細な割れが多量に生ずる場合があり、このようなコンクリートに埋め込まれた鉄筋の探知を第1、第2又は第12の実施例で示した方法で行っても、鉄筋の存在を確認できない場合がある。このような場合の探知法として、第15の実施例では、図156に示すように、鉄筋上を臨界屈折波としてb、c、aの順に経路の波を取り出す。
図157はコンクリート表面より5cmの深さに15cmピッチで径19mmの丸鋼が配筋された測定波の例である。発信探触子及び受信探触子の中心間隔を260mmに固定し両探触子の中心を結ぶ線分が、丸鋼の配筋方向と平行となるようにした13ヶ所の測定点での測定波を並べて示したものである。隣接する測定の間隔は30mmとしている。測定波のうち、No.2、No.7、No.12の波が探触子の中心を結ぶ線分が配筋された丸鋼の直上位置で得たものである。径を40mm、共振振動数500kHzとする振動子を内蔵する発信探触子及び受信探触子を用い、発信探触子内の振動子に500Vのステップ関数型電圧を1000回連続して載荷し、この載荷の都度得る受信波を加算平均し、加算平均波Gj(t)を求め、本コンクリートモデルの音速CVP=4000m/秒と、前記振動子径φ=40mm及び補正値α=1.0を数式20に適用し、f0=100kHzを算定し、このf0を中心周波数とする成分波GAj(t)を前記Gj(t)より抽出したものが図157のj=1乃至13の波の比較図である。対応するスペクトルとしてj=2の場合のものを図158に示す。
なお、図157及び図158の抽出の具体的方法は、前記加算平均波を数式14のように表現し、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとする第1の周波数フィルタA1(f)及び第2の周波数フィルタA2(f)を用い、数式16の演算に基づいて行った。n1及びn2の値は、夫々4、300とした。また、GAj(t)(j=1乃至13)の波の中での最大振幅を表示画面に最大表示する比較表示とした後、各GAj(t)波を7倍の振幅で表示している。
j=2、7、12の直下に丸鋼が埋め込まれた測点で、カーソル901の位置より比較的振幅の大きい波の起生が確認できる。なお、測定にあたって発信探触子及び受信探触子の中心間距離lBの値が短い場合、図156のb、c、aの順に伝達する経路の波より、コンクリート表面を伝達する波1261の方が早く受信される場合がある。このような場合、lBの値を大きくした上でGj(t)波を再計測して再分析すればよい。
図159はカーソル901の時刻(tT=59.1μ秒)で最大値1.0、t1=0で0、t2=2×tT以上の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を前記GAj(t)に乗じFiLTn5・GAj(t)を表示したものである。n5は27である。tTより若干後方に波の起生を確認できる。この場合のスペクトルの比較図を示したものが図160である。j=2、7、12に対応するスペクトルのスペクトル値が大きくなっている。
図161は、FiLT(t)におけるtTを若干後方(カーソル1301)へ移動し、前記FiLT27・GAj(t)を作成し直したものである。対応するスペクトルの比較図を図162に示す。
GBj(t)を数式129のように表現し、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとする第2の周波数フィルタA2(f)を用いて数式130の演算を行い、そのスペクトルの比較図を示したものが図162及び図163である。n21の値が大きくなるとスペクトルが低周波方向へ移動している。
n21の値は、図162では200、図163では1600とした。図163によれば、j=2、7及び12の測点でのスペクトルが大きく生じている。図163に対応する成分波の比較図を図164に示す。図164によれば、j=2、7及び12の成分波以外に隣接するj=3、j=6及びj=11でも比較的大きい振幅の波が生じている。j=2、7及び12の測点直下に鉄筋が埋め込まれた成分波のみ明敏に取り出せれば、誤ることなく鉄筋の存在位置を確認できる。従って、更に分析処理を行う。
図163のスペクトル及び図164の成分波を示す数式130(n21=1600)において、図163のカーソル1601で示す振動数fD1をfAとする第3の周波数フィルタA3(f)を用いて数式131の演算をn31=30として演算したスペクトルの比較を示したものが図165だったわけである。
測点2、7及び12の直下に鉄筋がある位置でのスペクトル位置が大きく生じ、隣接する測点3、6及び11でのスペクトル値が測点2、7及び12のスペクトル値の約半分になっている。上述のGaCj(t)をGaCj 3(t)で表示したものが図166である。鉄筋が直下にある測点j=2、7及び12の成分波のみが大きく励起している。
また、上述の解析でn1、n2、n21を0としても、図166に示す波とほとんど同一の分析結果を得ることができる。この場合のGCj(t)波のスペクトルFAj(f)を図167に示す。
なお、分析例として示さないが、数式14で示す加算平均波を数式96に置き換えても、前記と同一の波形分析で、鉄筋の明敏な探知が図166の場合と同様に可能である。
図168乃至図170は第15の実施例としてコンクリート表面に亀の子状のフェアークラックが多量に生じている場合においてその内部にある鉄筋の平面的位置の探知を鉄筋上を伝達する臨界屈折波に注目して行う方法を示すフローチャートである。
次に、第16の実施例について説明する。第16の実施例では、コンクリートに埋め込まれた鉄骨の破断の有無の探知を行う。図171に示すように、1対の発信探触子及び受信探触子をその間隔をLとして固定配置し、発信探触子よりコンクリート面直下に超音波を入力すると、自然発生する斜方向超音波が鉄骨に達り鉄骨表面上を臨界屈折波として伝達する波が発生する。この臨界屈折波221とコンクリート表面を伝達する波222の重畳波を受信探触子で受信することとなる。波221にはたて波及び表面波があり、波222にもたて波及びよこ波がある。コンクリートのたて波音速(cVp)を3620m/秒、鉄のたて波音速(sVp)を5900m/秒としたとき、Lの値の変化で、波221及び222の最も速く伝達するたて波の伝達時刻を数式132乃至数式134等を用いて算定すると、表6のようになる。
図172は、Lが400mmの場合の測定で、3000回の加算平均波Gj(t)を得て、Gj(t)より120kHz付近の狭帯域成分波GAj(t)を抽出し、振幅を10倍に拡大して示したものである。具体的には、n1=4、n2=320、n3=0として、数式123を用いて求めている。図173は図172のGAj(t)波、及びt=0で0、t=tTで1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を数式124に適用し、n5=2として得たGBj(t)波をGBj 2(t)表示したものである。
図174に示す波はL=500mmのときの上述の処理によりえら得たGBj 2(t)波である。この波に対応するスペクトルを図175に示す。測点1及び測点2の鉄筋が破断していない位置でのスペクトルが大きくなっている。カーソル1431の位置がこの場合のfD1値(78kHz)を示す。fD1をfAとする第3の周波数フィルタA3(f)を用い、n21=0、n31=100としたときのGCj(t)をGCj 2(t)表示して図176に示す。測点1、2に、上述の解析で改変された鉄骨表面を臨界屈折波として伝達する波の起生を確認できるが、鉄骨が破断している測点3及び4では波の起生を確認できない。
測点j=1及び2において鉄骨が健全な場合、測点3及び4に鉄骨が破断している場合のものを並べて示している。図示しないが、L=300mm又は500mmの場合も全く同一の分析処理で同様の比較波形GCj 2(t)を得た。カーソル位置と表6のL=400mmの波221のたて波の起生時刻が合致している。
一方、図173、174及び177は、表6の波222のたて波の起生時刻をtTとして得たGBj 2(t)波である。鉄骨が破断していない測点1及び2で波222の臨界屈折波が大きく励起している。Lの値が500mmと最も大きい図172のGBj 2(t)波で、速度の遅いよこ波での臨界屈折波の起生が確認できる。同一の測定法で鉄筋の破断測定も可能である。
なお、図173、174及び177では、測点1及び2で健全部、測点3及び4で鉄骨破断部のGBj(t)を示しているが、実際の測定では測点j=1で健全部、j=2で健全/破断検討部としてもよい。また、探触子の中心間距離を、初期値LBに設定し、GBj np(t)の波が図174のj=1又は2のように明敏になるまでLBの値を大きくしLAに変更してもよい。
図178乃至図181は第15の実施例としてコンクリートに埋め込まれた鉄筋又は鉄骨の破断の探知を鉄筋又は鉄骨上を臨界屈折波として伝達する波に注目して行う方法を示すフローチャートである。なお、j=1は鉄骨/鉄筋健全部の測定を示し、j=2は破断/健全を評価する位置の測定を示す。
次に、第17の実施例について説明する。第17の実施例では、被探知体の内部の劣化程度を定性的に探知する。図182は厚さ30cm×幅25cm×長さ100cmのコンクリート供試体を用い、発信と受信探触子の間隔aを60cmとして配し、発信探触子1441から直下にたて波超音波1443を発信したときに受信探触子1442で受信する波の伝達経路を図示したものである。波1444は、コンクリート表面に発生する微弱な強度のたて波である。波1445は、コンクリート表面に発生する強度の大きい表面波である。波1446は、往路及び復路をたて波とする供試体底部からの反射波である。波1447は、往路をたて波、復路をよこ波、又は往路をよこ波、復路をたて波とする供試体底部からの反射波である。波1448は、往路及び復路をよこ波とする供試体底部からの反射波である。波1449は、直接波である。以下、発信探触子1441から超音波発信後、受信探触子1442で受信する時刻を、波1444の場合L1、波1445の場合L2、波1446の場合M0、波1447の場合M1、波1448の場合M2、波1449の場合Sと定義する。
探触子の発信及び受信子の径を40mmとして、図182の測定で得る受信時刻予測値は、供試体たて波音速4100m/秒、及びよこ波とたて波の音速比0.59及び表面波とたて波の音速比0.53を用いると、上述の各時刻は数式135乃至139のようになる。
共振振動数500kHz、径40mmの振動子を内蔵した探触子を用い、振動子に150Vのステップ関数型電圧を載荷したときの測定波GAj(t)の1例を図183に示す。Gj(t)(j=1乃至4)に数式123を適用し、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとして、n1=4、n2=5600、n3=0を適用してf0=43kHzとして求めたものである。j=1乃至4の測定波Gj(t)は図182の供試体の裏側の劣化度を変化させて測定している。前記劣化度の1つにコンクリート表面からは目視し得ない裏側のひび割れがある。図182の供試体には、図184に示すように、幅2mmの割れが形成されている。また、割れの深さdは、j=1では0mm、j=2では50mm、j=3では150mm、j=4では250mmとしている。
割れの深さdが大きくなるに従い、波1446、1447及び1448等における超音波の遮断量が大きくなっていく。
図183では、GAj(t)波の比較図で4本のカーソルを示している。上段から時刻L1、M0、M1、M2を示している。数式112に準じて、L1、M0、M1、M2の時刻をthと表示して、fDの値を50kHz程度と仮定して、f0にこの50kHzを適用し、数式140の演算を行い、更にL1、M0、M1、M2毎に、数式124の演算を行って得られるGBj(t)波又はFAj(f)スペクトルについて明する。
但し、数式123のGAj(t)の算定においては、特に示す場合を除き、n1=n2=n3=0としている。また、数式124のGBj(t)の演算においては、FiLT(t)をt=tT−100以前の時刻で0、t=tTで1.0、t=tT+100以降の時刻で0となる正弦関数とした。
図183の数式123でn1=4、n2=5600、n3=0として求めた平均的中心周波数が43kHzのスペクトルをもつGAj(t)波では第1カーソルのL1=137μ秒に波の起生を確認できない。これは、路程1444のたて波はその強度が微細なためである。振幅を10倍に増幅表示した図146では、L1=137μ秒で路程1444の波の起生を確認できる。
このL1=137μ秒を数式140に適用し、tT=172μ秒と計算し、n5=5として求めた数式124のGBj(t)波を図186に示す。対応するスペクトルFAj(f)を示したものが図187である。カーソル1481及び1482の位置にスペクトルの極大値が生じている。ひび割れのないd=0の場合のスペクトルがj=1で、d=50mmのスペクトルがj=2で、d=150mmのスペクトルがj=3で、d=250mmのスペクトルがj=4の場合である。
j=1及びj=2のスペクトルはd=0及びd=50mmとひび割れ深さが浅いために生ずる路程1449の直接波であり、35kHzの振動数の波として求められている。一方、j=3及びj=4のスペクトルはd=150mm及び250mmとひび割れ深さが深いため、前記直接波が遮断され、表面を伝達するたて波成分波がfDの値を59kHzとしたスペクトルとして求められたと解することができる。
数式140に示すtTをM0、M1、M2について計算すれば、M0の場合、tT=200+20=220μ秒、M1の場合、tT=270+20=290μ秒、M2の場合、tT=339+20=359μ秒となる。GAj(t)をn1=n2=n3=0として求め、tTを用い、t=tT−100μ秒以前の時刻で0、t=tTμ秒で1.0、t=tT+100μ秒以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を作成し、n5=7として、数式124の演算を行い、FAj(f)をFAj 2(f)表示したものが図188乃至図190である。
図188がM0の場合の底部たて波反射波である波1446のスペクトルである。d=0のj=1及びd=50mmのj=2の場合のスペクトルのみ大きく生じている。d=150mm及び250mmと大きいひび割れのj=3及びj=4のスペクトルのスペクトル値は小さなものになっている。これは、深いひび割れの存在で、波1446の伝達波が遮断されたためである。fDの値は、j=1の場合で42kHz、j=2の場合で37kHz、j=3の場合で33kHzとなっている。劣化度が増すと、つまりdの値が大きくなると、低周波に移動している。
図189がM1の場合の波1447のスペクトルである。33kHzと48kHzにfDの値が生じている。33kHzスペクトルのスペクトル値はd値の大きさに約反比例しており、48kHzスペクトルのスペクトル値はd=0で最大値を持ちd=50mmで約1/2の値である。
図190がM2の場合の波1448のスペクトルである。fDの値は33kHzと読み取れる。d=0でスペクトル値が最大となり、d=50mmで3/4の値である。d=150mm、250mmでは、スペクトル値が微小である。
このように、第17の実施例によれば、被探知体内部の劣化度を定性的及び定量的に探知可能である。即ち、劣化度に伴いfDの値が変化し、fDの値でのスペクトル値が大きく変動するという現象を利用することにより、劣化度を探知することができる。
なお、本実施例ではL2の場合については、時刻L2と時刻M1がおおよそ合致したため、測定例として示していないが、探触子間距離a=600mmを、例えば1000mmというように変更すれば、L2の場合でも、図188乃至図190のように、スペクトルの比較図を得ることができる。
なお、図189及び図190はFAj(t)をFAj 2(t)表示したものであるが、図187及び図188では、以下の比較表示を行っている。各FAj(t)で最も大きいスペクトル値の絶対値を|jSmax|とし、|jSmax|のj=1乃至nAの中で最も大きい振幅値を|Smax|としたとき、|jSmax|≧|Smax|/βaとなるFAj(t)を|Smax|/|jSmax|×FAj(t)と置き換えた重み付け比較で示している。このような重み付け比較で、コンクリート内の劣化度に伴うfDの値の変化を容易に確認できる。また、図187ではβaを1.1としたFAj(t)を前記の重み付けで表示し、図188ではβaを1.2としたFAj 2(t)を前記の重み付けで表示している。
図191乃至図193は第17の実施例として被探知体の内部の劣化度を表面波又は版厚反射波等の振動数の変化及びスペクトル値の増減等により探知する方法を示すフローチャートである。なお、j=1はコンクリート内部が健全の場合を示し、j=2乃至nAはコンクリート内部の劣化度を評価する位置の測定を示す。また、ステップS17−25では、FAj(f)のFAl(f)とのスペクトル比較でFAj(f)のfDの値の変化及びfDの値に関するスペクトル値の大小を指標にコンクリート内部の劣化度を予測する。
次に、第18の実施例について説明する。第18の実施例は第12の実施例を拡張した方法である。図124乃至図131は鉄筋からのたて波反射波を抽出するものであった。つまり、fDの値はたて波反射波に対応するものである。具体的には、このfDの値にはよこ波反射波に対応するものもある。
図194は図124乃至図131と同様の計測で、測定間隔を広くし、測点数を少なくしたGj(t)波である。計測条件として異なる点は、1対の発信探触子及び受信探触子の間隔をa=120mmとしたことである。測点2及び4にかぶり厚d=50mmで径が20mmの異形鉄筋が埋め込まれている。a>2×d以上になると、鉄筋から受信する反射波は、コンクリート内で自然発生するよこ波成分が卓越してくる。
図194に示すカーソル11101の位置をGj(t)波の起生の最初の時刻tT(27.6μ秒)としてt=0で0、t=tTで1.0、t=2×tT以降の時刻で0となる正弦関数状フィルタFiLT(t)を最初のフィルタとして、数式123のn1、n2、n3を夫々0として、数式124でn5=2として演算したGBj(t)の1部を示したのが図195である。Δta=0.2μ秒として、tTの値をΔtaずつ増分した場合にtT=49.2μ秒となったときのGBj(t)波である。対応するスペクトルを図196に示す。
スペクトル11301及び11304は測点直下に鉄筋がある場合のものであり、スペクトル11302及び11303は直下に鉄筋のない場合のものである。その極大値を示す振動数が概略全てのスペクトルで一致するカーソル11306のスペクトルが探知妨害波スペクトルであり、また、カーソル11305でスペクトル11301及び11304が極大値となっている。従って、カーソル11305の振動数が、この測定におけるよこ波反射波のfDの値と判断でき、fD=70kHzと特定できる。
一方、この計測の場合、1対の探触子の間隔が広いため、コンクリート表面を探触子間で伝達する妨害波は表面波が支配的となる。このため、数式20のcVpを表面波音速0.53cVpに変更した数式20−1を用いて、f0の値を計算すると、α(l)=1.0として、数式141のように53kHzとなる。
f0<fDとなるため、数式124及び125を用いてfD=70kHzを中心周波数とする狭帯域成分波GCj(t)をGj(t)波より抽出する。n11=4、n21=1600、n31=0として演算した70kHzを中心周波数とする狭帯域成分波のスペクトルA1 n11(f)・A2 n21(f)・A3 n31(f)・FAj(f)をスペクトル値の2乗表示で図197に示す。
カーソル11401(70kHz)に大きなスペクトル値を持つ測点1及び2のスペクトルを見ることができる。対応する成分波GCj(t)において、全成分波の最大振幅の絶対値を|maxP|とし、各成分波GCj(t)毎の最大振幅の絶対値を|maxPj|としたとき、|maxP|/βa≦|maxPj|を満足するGCj(t)波をGCj 2(t)表示で表示図面に最大表示したものが図198である。βa=1.5として表示している。測点1及び4にのみ大きな振幅の鉄筋からの反射波をカーソル11501の位置に確認できる。カーソル11501の位置のtTを用い、t=0で0、t=tTで1.0、t=2×tT以降の時刻で0とする正弦関数状フィルタFiLT(t)を用い、n5=0として求めた数式125のGCj(t)波をGCj 2(t)で表示したのが図199である。図198の表示と同様、βa=1.5として示している。
図200乃至図202は第18の実施例として被探知体にたて波超音波を入力したときに被探知体内で自然発生するよこ波に注目した探知の方法を示すフローチャートである。
次に、第19の実施例について説明する。第19の実施例では、被探知体の音速を高精度に測定する。
超音波によるコンクリート等の内部探知に必要な基本的データの1つに、そのコンクリートの音速がある。構造物によっては透過法による音速測定が不可能なものもある。例えば、トンネル巻厚の測定等では、その表面に1対の発信探触子及び受信探触子の中心間隔を1として配した図203に示す測定で、発信探触子よりその表面直角方向にたて波超音波を発信し、自然発生する微弱なたて波101を受信探触子で受信し(以下、表面配置計測とよぶ)、この受信時刻thと振動子径φ、補正係数βを用いて、数式142のように、たて波音速CVPを求めている。
しかし、この方法には2つの問題点がある。第1に、上述のたて波はその強度が微弱であるため、電気的及び機械的な雑音の中に埋もれやすい。第2に、数式142で用いる補正係数βを従来確定する方法が未解明である。従来、βS=0又はβS=1.0として、たて波音速を評価している。
このような状況の下、従来の表面配置計測では、コンクリート表面を伝達するたて波音速を正確に測定することができず、また、コンクリートの表面を伝達する表面波の音速等の測定はほとんど不可能である。
第19の実施例では、表面配置法計測でたて波及び表面波音速を高精度に測定すると共に、数式142のβSの値を確定する。また、第19の実施例を図204に示す斜め透過法計測で得られる受信波に適用することにより、コンクリート内を伝達するよこ波の速度を測定することもできる。
図205は厚さ50cmのコンクリート平板を用い、図203に示す表面配置計測で得た受信波の1例である。図206は図205に対応するスペクトルである。径が40mmで共振振動数が500kHzの振動子が内蔵された外径60mmの1対の発信探触子及び受信探触子をl=140mmで配し、発信探触子内振動子1584にステップ関数型の500Vの電圧を載荷し、受信探触子1585で得られる受信波を、電圧の載荷の都度、計100回受信し、加算平均した波G(t)に数式123に示す演算を行った波GA(t)である。具体的には、加算平均波G(t)を数式123に適用し、n1=2、n2=20、n3=0として、fMAX=2500kHzとする第1の周波数フィルタA1(f)及び第2の周波数フィルタA2(f)を用いて、数式143の演算を行ったものである。
図206は0乃至500kHzの広帯域スペクトルとなっている。対応する波GA(t)を振幅を4倍に増幅して図205に表示している。たて波1581が超音波発信後に起生するであろう理論的時刻付近にカーソル1601を示している。
しかし、カーソル1601の前後に電気的及び機械的な雑音が重畳し、たて波1581の起生位置を確認することができない。一方、図207は加算回数を徐々に増加させていくことで得た前記GA(t)波である。加算回数が増していくに従い、カーソル1601付近の電気的及び機械的な雑音が消滅している。図207の波GA(t)は3000回の加算平均波より、数式123に示す演算でn1=2、n2=20、n3=0として求めたものである。なお、加算回数の最適値は一義的に決め得るものではない。計測現所の電源及び交通事情からの外乱の受信波への混入程度で、この加算回数の最適値は大きく変動する。このため、図205、図207、図208に至るGA(t)波の変化を加算回数が増すに従い視認でき、かつオペレータの判断で加算回数の増加を装置に指示できる機能を具備させることが好ましい。
また、GA(t)波の振幅の増幅表示機能は重要である。図208に示すGA(t)波は図207のGA(t)波の振幅を20倍に増幅して表示したものである。カーソル1631が経路1581のたて波の起生時刻を明敏に特定している。図207のGA(t)波は振幅増幅せず、そのまま表示したものである。図207では、カーソル1621の時刻をたて波1581の伝達時間thと誤認する虞がある。
従って、先ず、広帯域超音波装置を用い、図203の表面配置計測で指定された回数nkの受信波を取得し、これらの加算平均波G(t)を得る機能を設ける必要がある。また、数式123を用いてG(t)波より図206に示すような0乃至500kHz程度の帯域のGA(t)波を演算する機能を設ける必要がある。また、GA(t)波を増幅表示して、例えば図205に示すように、視認させる機能を設ける必要がある。また、オペレータの判断で、加算回数nkを増加させ得るコントロール処理機能を設ける必要がある。更に、これらの処理を繰り返し行い得る機能を設ける必要がある。なお、前記オペレータの判断には、必ず、例えば図208の位置1631の波の最初の振幅をPA、その前方にある雑音の振幅をPBとしたとき、しきい値RPを用いて、PB≦PA/RPとなったとき、加算平均を終了すればよい。これらの機能を超音波探知装置設けることにより、数式142のたて波速度算定式における超音波伝達時間tkを高精度に特定できる。
但し、これらの方法では、数式142のβの値を特定することはできない。次に、このβ値の特定を必要としない音速の測定方法について説明する。
図209は、図203の表面配置計測において、探触子中心間距離1を1ずつ変化させて測定した図207に対応するGAj(t)波をそれぞれ後述する演算処理を行い、並べて示したものである。各波に付したNo.は以下のようである。但しΔlは20mmとした。No.1では、l=200mm、No.2では、l=200−Δl(mm)、No.3では、l=200−2×Δl(mm)、・・・、No.6では、l=200−5×Δl(mm)。
演算処理は、図209の波形の表示最大スケールを1.0とし、各波GAj(t)の最大振幅の絶対値|MAXPj|を用いて、GAj(t)/|MAXPj|表示した後、図205及び図207の波の表示と同様に、オペレータの指示により波形振幅を徐々に増幅表示した。
図209ではΔlが一定値であるため、斜めのカーソル1641が各GAj(t)/|MAXPj|波の起生時刻で合致している。このような斜めカーソルの発生はオペレータの指示で行われる。最初、図209に対応する分析画面に水平カーソルが自動発生され、本装置をオペレーションすることで、カーソルの回転及び上下方向移動を容易に行えるようにしてある。カーソルは、図209のよこ軸をX、たて軸をYと表現すれば、Y=b1X−b2となる。
上述の計測において、径が40mmの振動子を内蔵した場合と、径が20mmの振動子を内蔵した場合とでは、b1及びb2の値は次のようになった。径が40mmの振動子では、b1が0.228、b2が8.042、径が20mmの振動子では、b1が0.229、b2が4.120であった。
b1の値の逆数は、たて波1581の音速と一致する。従って、径が40mmの振動子を用いた場合には、数式144より、音速は4386(m/秒)となる。
従って、βS値を用いないでも、たて波の音速の測定が可能となる。
なお、上述のcVp=4386(m/秒)を用いてたて波音速算定式のβsを容易に求めることができる。数式142にcVp及び使用した探触子の振動子径φ=40mm及びl0=200mm(G1(t)波)の場合の起生時刻th=37.46μ秒を適用すれば、4.386=(200−βs×40)/37.64となる。従って、βsは0.87となる。この計算はG1(t)波を用いた場合のものであるが、他の波Gj(t)を用いても同様にして、βsを求めることができる。また、測定例としては示さないが、振動子径が20mmの場合、βsは若干異なり、0.89程度となる。
前述のように、探触子の中心間距離の同一の変化量Δl毎に測定したGAj(t)波を用いて音速評価を行う方法は、従来、その測定が不可能であった図203の表面波1582の音速も、図204の斜透過法計測の場合で自然発生するよこ波の音速も極めて高い精度で測定することが可能である。
図210は図203の測定でl=300mmとし、Δl=20mmとし、l=200mmまで変化させたときの表面波102の音速を求めた結果である。図209ではGAj(t)波を縦方向に並べていたが、図210ではよこ方向に並べている。
図209のたて波音速を求めた処理とは以下の点で異なる。表面波1582の振幅はたて波1581の振幅に比して極めて大きい。また、この性質は低周波の成分波になればなるほど顕著となる。この性質を利用すると、容易に表面波の音速を測定できる。すなわち、数式123においてn3=0とし、n1、n2の値をコントロールし、GAj(t)波を取得し、GAj(t)/|MAXPj|の代わりに、npを1以上の整数としてこれをnp乗したもの((GAj(t)/|MAXPj|)np)をj=1至6まで並べて表示し、その振幅を徐々に増幅していくことで得たものである。図210の比較図ではnp=3としている。なお、この場合でもfD値が存在する。即ち、表面波の強度が最も大きく卓越する振動数を、図199を求めた方法に従って求めると、図示しないが、60kHz前後である。従って、n1=4、n2=24として、中心周波数が60kHzとなる狭帯域成分波GAj(t)を求め、図209の場合と同様に、自動発生したカーソルをオペレータ指示で回転及び左右方向へ移動させ、カーソルがすべての(GAj(t)/|MAXPj|)np波の起生位置と合致するようにしたものである。
No.1の波のカーソル位置th,1は81.9μ秒、No.1の波のカーソル位置th,6は123.9μ秒である。従って、表面音速CVLは数式145より2381(m/秒)となる。
表面波とたて波との音速比はε1=cVL/cVpとなる。図165のカーソルの傾きb1の逆数1/b1が表面波の音速であることは以下の処理で証明される。図203に示したたて波1581と表面波1582の強度は後者の方が極めて大きい。このため、(GAj(t)/|MAXPj|)np波ではたて波1581は消滅する。また、図203に示した直接波1583が表面波1582より早く受信される可能性は否定できない。しかしながら、もし直接波1583が早く受信されたとすれば、直接波の伝達機構上、その伝達距離の変分が直線的とはならないため、カーソルY=b1X−b2上にすべての(GAj(t)/|MAXPj|)np波の起生時刻が合致しなくなる。
図211は図210の中心周波数を60kHzとするGA(t)波に数式123を再度適用し、n2の値を24からさらに増大したときのGAj(t)/|MAXPj|波を表示したものである。n2の値を徐々に大きくしていくと、図210に示す斜カーソル1651の若干後方位置に、各GAj(t)/|MAXPj|波の時間軸と交差し傾きがカーソル1651の傾きと一致してくる中心周波数の狭帯域成分波がある。本実施例の場合、この中心周波数は43kHzであった。
図211の斜カーソル1661は時間軸の後方位置に図210のカーソル1651を平行移動したものである。カーソル1661と43kHzの狭帯域成分波の傾きとがほぼ一致している。これは、このような低周波においては、図203158に示す伝達波1581、1582及び1583のうち、表面波1582の強度が他の波の強度と比して、極めて大きくなるという物理現象より生じたものである。
図204の斜透過法計測においても、同様な現象がある。即ち、低周波成分波になると、図204の測定の場合、受信波に含まれるよこ波成分がたて波成分に比し卓越してくる。この現象を利用して、図204の斜透過法計測で、コンクリートのよこ波音速を測定する事例について説明する。
図212は図204の斜透過法で得た3000回の受信波を加算平均した波Gj(t)より238kHzの狭帯域成分波として数式16の演算を行い、GAj(t)の各々で最大振幅の絶対値を|MAXPj|とし、GAj(t)/|MAXPj|の振幅値を17倍に拡大表示したものである。使用した探触子は径が40mm、共振振動数が500kHzの振動子を内蔵し外径が60mmのものである。jは1〜6までとし、図204の探触子の受発信面の中心を結ぶ線分長を1j=150+(j−1)×20(mm)とした。なお、GAj(t)の作成にあたっては、分析の上限振動数をfMAX=2500kHz、n1=4、n2=8、n3=0として演算した。
図212において、表示する斜カーソル1671が全てのGAj(t)波の起生位置と合致している。このカーソルの傾きを計算すると、100mm×103/(50−26.86)μ秒=4321(m/秒)となる。図204の発信探触子及び受信探触子間を最も早く伝達する波はたて波であるため、たて波音速がCVP=4321(m/秒)と判断できる。
また、よこ波音速についても、図211の表面配置計測で示した表面波音速を測定する方法を用いて特定することが可能である。
図212を得たGAj(t)波を用い数式123で表される狭帯域成分波GAj(t)をfMAX=2500kHz、n1=4、n2=1600、n3=0として、中心周波数30kHzとする狭帯域成分波を抽出したものが図213である。
図213は図212と比してよこ軸(時間軸)を1/2に縮小表示している。低周波成分波になると、斜透過法においては、よこ波成分がたて波成分より著しく強度が大きくなるため、図212のたて波1671の起生位置より後方に、振幅が大きく、且つ波形の時間軸と交差する位置がj=1〜6の順で直線的に変化する。
カーソル1681で、時間軸と交差する位置を特定している。このカーソル1681の傾きは100mm×103/(105−65.5)μ秒=2532(m/秒)である。従って、よこ波音速CVSはCVS=2532(m/秒)となる。このコンクリートモデルのよこ波とたて波の音速比ε2は2532/4321=0.586と特定される。
以上より、表面を伝達する微細なたて波音速cVp等が何らかの原因で精度よく求められない場合であっても、勢力の大きい表面波音速cVL及びよこ波音速CVSを求め、たて波音速cVpをcVp=cVL/又ε1はcVp=cVS/又ε2として求めることもできる。
図214乃至図222は第19の実施例として透過法による音速測定が不可能な構造物に対し、1対の発信探触子及び受信探触子を被探知体の表面に両探触子の中心間距離10で配する表面配置法又は斜透過法計測において超音波の音速を測定する方法を示すフローチャートである。特に、図214は使用する振動子の径をφ、超音波の発信後に受信する波の起生時刻をthとして、たて波超音波の音速を数式142として測定する方法であって、振動子の径φ毎に決まるβsの値を用いて、たて波音速を求める方法を示す。図215乃至図217は探触子の中心間距離をnA回変化させた計測で得るGj(t)の波形を分析して得られる成分波の超音波発信後の起生時刻thjが直線的に変化する物理現象を利用して、直線的変化の傾きが被探知体のたて波音速cVp又は前記たて波音速cVpの逆数となることを利用した計測、並びに任意のGj=k(t)波とその起生時刻th,kとして図214に示す方法で用いるβsの値を求める方法を示す。また、図218及び図219はGj(t)波を波形分析して、表面波の音速cVLを求め、たて波音速を算定する方法を示す。そして、図220乃至図222は斜透過法として探触子の中心間距離をnA回変化させた計測で得るGj(t)の波形を分析して得られるよこ波の音速cVsを求め、たて波音速を算定する方法を示す。
次に、第20の実施例について説明する。第20の実施例では、探知された対象物が鉄筋又は埋設管の判断、埋設管の場合には、鉄管又は塩化ビニル管の判断を行う。
図223は10cmのかぶり厚で埋め込まれた径が25mmの鉄筋の探知結果である。径が40mm、共振振動数が500kHzの1対の発信探触子及び受信探触子を、その中心間距離を70mmとして鉄筋直上に配した計測で1000回の加算平均波G(t)を作成し、数式123で分析の上限をfMAX=2500kHzとし、n1=5、n2=800、n3=0として数式16の演算を行い、GA2(t)表示したものである。数式112のtTを図223のカーソルが示す97.17μ秒とし、t=0で0、t=tT=67.17で1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を定義し、数式124の演算を行うことにより、FA(f)スペクトルを示したものが図224である。2つのスペクトルの起生を確認できる。これらのスペクトルの振動数は70kHz、112kHzである。
図225のスペクトル比較図では、j=1が鉄筋、j=2が径25mmかぶり厚100mmの鉄筋、j=3が径25mmかぶり厚100mmの塩化ビニル管の場合でのスペクトルを示す。即ち、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとし、n1=4、n2=1800、n3=0として数式99の演算を行い、数式98のtTを若干時刻前方へ移動させ、tT=54.2μ秒とし、FiLT(t)をt=tT−100以前で0、t=tTで1.0、t=tT+100以降の時刻で0とした。更に、n5=11として数式99の演算を行い、j=1の鉄筋からの反射波スペクトルFA1(f)、j=2の鉄筋からの反射波スペクトルFA2(f)、j=3の塩化ビニル管からの反射波スペクトルFA3(f)を比較表示したものが図225である。各スペクトルの起生状況は互いに相違している。
図224における鉄筋反射波のfDの値の1つである70kHzで、鉄筋、鉄管及び塩化ビニル管からの反射波のスペクトルを比較表示し、図225に示したことになる。なお、鉄管及び塩化ビニル管では、その内部は空洞となっている。
第10の実施例で説明したように、中空の配管においては、配管の構造に関する共振スペクトルが反射波スペクトルに重畳する。本実施例における鉄筋と埋設管とのFAj(t)スペクトルの比較では、埋設管の場合の方が、鉄筋の場合と比較すると、スペクトルの幅が大きくなり、スペクトルのピークを示す振動数について、鉄筋の場合にはfDの値が1つであるが、埋設管の場合には複数になり、特に、鉄管の場合には、塩化ビニル管と比較するとスペクトル強度が大きくなっている。
図225は数式99のHBj(t)を用いて得たものであるが、数式124のGBj(t)を用いた同様の分析によっても、分析結果を特には示さないが、同様のスペクトル比較図を得ることができる。
このように、HBj(t)又はGBj(t)のスペクトルを比較することにより、即ち上述のスペクトルの変化の特徴を検討することにより、被探知体が鉄筋、鉄管又は塩化ビニル管のいずれであるかを判断できる。
但し、このようなスペクトルの比較では、工学的判断が必要とされる場合がある。この判断を自動的に行うには、判断条件が少ないほど好ましい。
図224は図223に示すカーソル(tT=67.17μ秒)に基づいてtT=67.17とするFiLTn5(t)を用いて径25mmの異形鉄筋からの反射波のスペクトルをn5=18として取り出したものである。このtTを数式112を準用して、d=10cm、コンクリートの音速をcVp=4317m/秒のときの径25mm、かぶり厚10cmの鉄筋のfD(109kHz)を用いて、数式146のように、54.2μ秒と特定した。
そして、数式124の演算を行ってもFA(f)スペクトルは図224のスペクトルとほぼ同一なものとなる。なお、70kHzを中心周波数とするスペクトルは異形鉄筋のリブの存在により、鉄筋に入力するたて波がモード変換を生じ、よこ波に変換されて生じたものである。
次に、上述の現象を利用した探知方法について説明する。たて波反射波のfDとよこ波反射波のfDSとの間に数式147の関係が成り立つものとする。
そして、fP=fD・(1+ε2)/2を中心周波数とする狭帯域成分波の取り出しについて検討する。
図225に示すスペクトル比較図を得たHAj(t)及びHBj(t)において、n2の値を1800から順次低くし、n5=27の数式124のFAj(f)スペクトルの中心周波数がfPと等しくなるようにしたスペクトル比較図が図226である。j=1の鉄筋からの反射波スペクトルにたて波及びよこ波の2つの成分が含まれているため、2つのピークが生じている。埋設管の反射波スペクトルにはたて波成分の1つのピークのみが含まれている。j=2及び3の鉄管及び塩化ビニル管のスペクトルの比較では、鉄管の場合の方が広帯域となっている。
図226はHBj(t)を用いて示したものであるが、GBj(t)を用いた分析でも、図示しないが、全く同様の比較図を得ることができる。但し、鉄筋及び塩化ビニル管の場合での帯域幅の相違は図226ほどは顕著にならない。
上記の判別法によれば、加算平均波Gj(t)及びHj(t)を波形分析することで、探知物が鉄筋か埋設管であるかを容易にできる。また、埋設管と判断した場合には、それが鉄管なのか塩化ビニル管なのかを同様の波形分析によって判断することが可能である。埋設管はその内部が中空であるため、超音波が入力されると、管のもつ共振特性に基づいて共振現象が生じ、この共振波が反射波に重畳して受信される。このような共振は、鉄管の方が高周波で生じる。
先ず、塩化ビニル管の探知について説明する。図225のスペクトル比較図を得たHAj(t)及びHBj(t)において、Fj/Fj(f)をFj(f)に置き換え、n2の値を徐々に大きくし、n5=27の数式124におけるFAj(t)スペクトルの中心周波数が50kHz付近になるようにしたときの比較図が図227である。j=3の塩化ビニル管の場合のFA3(t)スペクトルが広い帯域のスペクトルとして生じている。j=1及び2の鉄筋又は鉄管の場合とスペクトルの形状が著しく相違している。j=3のような正弦関数状の比較的帯域幅が広いスペクトルが得られたときに探知物を塩化ビニル管と断定すればよい。
但し、注意が必要がこともある。図227はFj(f)を使用したときの解析結果であり、Fj/Fj(f)を使用したときの位相情報のみを用いた同様の分析法によれば、コンクリート表面を探触子間で伝達する表面波が大きな勢力の妨害波として低周波帯域に生じてくる。例えば、50kHzから40kHzまでFAj(f)スペクトルの中心周波数を移動させると、j=1乃至3の場合のスペクトルが概略同一形状の妨害波スペクトルとして現れるようになる。Fj(f)又はFj/Fj(f)のいずれを採用しても図227のような比較図を得るために、50kHzが特定されている。
次に、鉄管の探知について説明する。図225のスペクトル比較図を得たHAj(t)及びHBj(t)において、Fj/Fj(f)をFj(f)に置き換え、n2の値を徐々に小さくし、n5=27の数式124におけるFAj(f)スペクトルの中心周波数がfD付近になるようにしたときの比較図が図228である。j=2の鉄管の場合のF2(f)スペクトルが他のスペクトルと比して、広い帯域を示している。j=1及び3の鉄筋、塩化ビニル管では、多少帯域幅に相違が見られる程度である。
これらの3種の判別法を組み合わせることにより、鉄筋、鉄管及び塩化ビニル管の判断を高度な工学的判断を必要とせずに自動的に行うことが可能となる。
なお、上述の判断では、スペクトル形状及びその帯域の2つのパラメータを基礎としている。スペクトルの強度もパラメータの1つとして考えられるが、コンクリートの表面の粗さ加減等で計測の再現性への影響が極めて大きいため、本実施例ではパラメータに含まれていない。従って、図225乃至228では、FAj(f)スペクトルのj毎の最大スペクトル値を1.0に標準化している。
図229乃至図233は第20の実施例としてコンクリートに埋め込まれた鉄筋、鉄管、塩化ビニル管の種別を特定の振動数を中心周波数とするスペクトルの形状及び帯域幅の変化で判断する方法を示すフローチャートである。なお、ステップS20−8においては、n5の値は、FA(f)スペクトルの変化を視認、しながら、オペレータによる制御で変動させる。また、ステップS20−9においては、1)のようなスペクトルが得られたときに探知物体を鉄筋と判断し、2)のようなスペクトルが得られたときに探知物体を埋設管と判断し、例えばA1 n11(f)・A2 n21(f)・FAj(f)スペクトルは、j毎に最大スペクトル値を1.0に標準化して表示することができる。また、ステップS20−11においても、例えばA1 n11(f)・A2 n21(f)・FAj(f)スペクトルは、j毎に最大スペクトル値を1.0に標準化して表示することができ、塩化ビニル管の場合、50kHz付近で広帯域スペクトルが出現し、鉄筋の場合、比較的狭帯域のスペクトルが出現する。更に、ステップS20−13においても、例えばA1 n11(f)・A2 n21(f)・FAj(f)スペクトルは、j毎に最大スペクトル値を1.0に標準化して表示することができ、鉄管の場合、jfDを中心とするスペクトルが塩化ビニル管及び鉄筋の場合のスペクトルと比して広帯域となる。
なお、鉄筋が異形鉄筋ではなく丸鋼の場合、振動数ε1・jfDでスペクトルは生じない。このため、上述の方法で鉄筋であるか埋設管であるかを判断することは困難である。しかし、鉄筋、塩化ビニル管及び鉄管の場合には、スペクトルの比較表示に基づいて塩化ビニル管又は鉄管であるかを認識することができれば、その他のものを丸鋼鉄筋と判断することができる。
次に、第21の実施例について説明する。第12、第13、第14及び第18の実施例は、探知目標波が大きく励起する振動数fDを用いた分析法である。これに対し、第21の実施例は、このfD値を用いた分析法を高度化させたものである。図234に示すコンクリートモデルを用いて説明する。このコンクリートモデルは30cm×30cm×30cmの立法体でありコンクリート上面及び下面から5cmのかぶり厚で径が19mmの異形鉄筋をその間隔を150mmとして配筋している。また、D13鉄筋をピッチ200mmで井桁状に配筋している。発信探触子よりコンクリートにたて波超音波を入力し、版厚反射波を受信探触子で得る計測である。コンクリートモデルの音速は別途4400m/秒と計測されている。径40mm、共振振動数500kHzの1対の発信探触子及び受信探触子をその中心間距離を120mmとしてコンクリート面に配置した測定である。1000回分の加算平均波G(t)を作成した。本測定におけるfDの値は多くの計測実験の結果として約90kHzである。この90kHzを中心周波数とする狭帯域成分波を抽出するために、数式123で分析の上限振動数をfMAX=2500kHz、n1=4、n2=800、n3=0として数式16の演算を行った後、数式112のdをコンクリート厚300mmとしてβ2=0として求めたtT=2×300/4.4=136μ秒を用いて位置t=0で0、tT=で1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数FiLT(t)を定義し、n5=2とした数式124の演算結果を図236に示す。図236の右下に対応するFA(f)スペクトルの形状を示す。中心周波数が90kHzである。カーソル1771が版厚反射の理論的起生位置であるが、その前方に大きな振幅の波が生じている。この波は下側鉄筋からのいくつかの反射波が重畳した波である。図236の計測においては、1対の発信探触子及び受信探触子をコンクリート上面側に配筋された鉄筋位置とずらして配置した計測で得た加算平均波G(t)を用いたものである。一般に、コンクリートにはその粒形が1又は2cmから大きいものでは3cmの砕石が多数含まれている。探触子直下にあるこの砕石の状況によっては、図235に示すように、この砕石で指向方向が変じた超音波がコンクリート下面側に配筋された井桁状鉄筋に到達し、これらの鉄筋からの多数の反射経路波1761が受信子に到達した結果得られた分析波が図236に含まれている。探知対象をコンクリート厚とする場合、この鉄筋からの反射波1761は妨害波である。この妨害波は探触子の配置位置が微小に変化しても、その強度は極端に大きく変化する。図237は探触子の中心間距離を120mmに固定したまま、その配置位置を若干(2〜3cm)変化させた加算平均波G(t)より前記と全く同一の分析処理で得た分析波GB2(t)である。経路1761の妨害波が全く消滅し、コンクリート厚に関する反射波1762のみが大きく起生している。対応するスペクトルFA(f)をFA2(f)表示したものを図238に示す。カーソル位置の振動数は84kHzである。本モデルにおける正確な版厚反射波のfD値を84kHzと特定したことになる。被探知体がコンクリートの場合、材質が部位によって異なるためfDの値は測定位置の変化で若干異なってくる。図238のスペクトルでこの84kHzを中心周波数とする更なる狭帯域成分波を数式125を用いてn11、n21を0としてfA=fD=84kHzとするA3(f)を用い、n31=10として取り出したA3 10(f)・FA(f)を2乗表示したものが図239である。対応するGC(t)を2乗表示した波形が図240である。図237の反射波に比し、波数が波の前後に増えた波となっている。図241はA3 10(f)・FA(f)スペクトルを3乗表示したものである。見かけ上、84kHzのスペクトル値のみが大きくなっている。図242は対応するGC(t)を3乗表示したものである。図241と図242との関係を数式で表現すれば、数式148のようになる。
このようにして、超狭帯域スペクトルからなる概略時系列波を求めることができる。図238で得られたfD(84kHz)の値は唯一のものではない。fDの値は複数ある。更に高周波方向のfDの値を特定するために数式125を用い、分析の上限振動数をfMAX=2500kHzとするA1(f)フィルタ、A2(f)フィルタを用い、n21=2、n22=120、n31=0とする演算を行い、A1 n11(f)・A2 n21(f)スペクトルを2乗表示で示したものが図243である。カーソル1841の位置に大きなスペクトルが生じている。振動数133kHzと読み取れる。この133kHzがもう1つの高周波位置におけるfDの値である。対応するGC(t)を2乗表示したのが図244である。fD=84kHzの場合の図237では、カーソル1781で示す版厚反射の起性時刻を正確に特定できなかったが、fD=133kHzの成分波を示す図244では、波形前方に妨害波が生じているが、カーソル1851に示すように、高精度にその版厚反射の起性時刻を特定できる。
なお、fDの値は前述のように2つとは限らない。更に高周波方向に多数のfDの値が存在する。高振動数のfDの値を用いた分析事例について説明する。
図245は版厚30cmのコンクリートにかぶり厚23cmで径19mmの異形鉄筋をピッチ150mmで配筋した場合の測定図である。測点1の位置に1対の発信探触子及び受信探触子をその中心間距離を80mmに固定して配筋長手方向に平行に配置した場合の加算平均波をG1(t)とし、測点2の位置に探触子を測点1の計測の場合と同様に配置した場合の加算平均波をG2(t)とし、Gj(t)波よりGBj(t)を求め、比較表示した結果を図246に示す。GBj(t)の具体的作成法は、20cmかぶり厚の鉄筋の標準音速時(VST=4400m/秒)でのfDの値が多くの実験計測で、78kHz前後と測定されているため、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)スペクトルの平均的中心周波数が78kHz前後となるように、分析の上限周波数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用い、n1=4、n2=1400、n3=0としてGAj(t)を求め、鉄筋かぶり厚d=23cmよりtT=2×230/4.4=104.5μ秒とし、t=0で0、t=tTで1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数状のフィルタFiLT(t)を用いて、数式124(n5=2)の演算を行った。
更に、図246のGBj(t)波の表示法について説明すると、j=1及び2のGBj(t)の各々で最大振幅を最大表示するとともにGB2 j(t)表示している。カーソル1871の位置から生じる大きな振幅の波は鉄筋からの反射波である。実線で示す波が図245の経路1861及び1862の反射波の重畳波である。破線で示す波が鉄筋直上に探触子を配置した測点2のときの経路1863の反射波である。図246のGBj(t)の比較波を見る限り、鉄筋かぶり厚の概略値はカーソル1871が示す時刻で特定可能であるが、鉄筋の平面的位置の特定はできない。
一方、図247はGBj(t)の作成においてn5=9として、GBj(t)=FiLTn5(t)・GAj(t)で演算した波を並列にそのまま何らの重みづけもせず比較表示したものである。このとき、対応するFAj(t)スペクトルの比較図を図248に測点1の場合を実線、測点2の場合を破線で示している。カーソル位置1891の振動数は89kHzとなっている。この探知モデルの正確なfDの値は89kHzと特定できる。
このように、図246及び図247では鉄筋の平面的位置の特定は不能となり、fDは複数あることを前述した。高振動数のfDの値を利用した分析を行うと、鉄筋の平面的位置が容易に特定可能となる。この方法について説明する。
図245において斜め方向の経路波1861及び1862はコンクリートの表面の直下に入力する超音波が高周波になればなるほど、超音波入力方向との相対強度が小さくなる。これは、超音波の直進性及び指向性が高くなる現象から生じる物理現象である。この物理現象を利用するためにGBj(t)の波を高周波方向へ徐々に移動していくと、例えば図249に示すようなスペクトル比較図を得ることができる。図249の比較図の取得を具体的に説明すると、分析の上限振動数をfMAXとするA1(f)及びA2(f)を用いて、n11=2、n21=6、n31=0として数式125の演算を行った。破線のスペクトルが測点2の探触子が鉄筋直上のある場合のスペクトルであり、実線のスペクトルが探触子が鉄筋と鉄筋の中間にある測点1の場合のスペクトルである。カーソル1901の振動数は134kHzである。89kHzをfD1とすれば、この134kHzが第2のfDであり、fD2と特定されたことになる。図249のスペクトルに対応する成分波の比較図をなんらの重みづけもせず、GC3 j(t)表示したものが図250である。
このように、fDは複数存在する。第20の実施例までで用いたfDはfD1であったわけである。本実施例では、超音波の直進性及び指向性が超音波の振動数に関連して変化する現象を利用する探知法としてfD2又はfD3等を上述の方法で特定し、探知の分析精度を向上させることができる。更に本実施例では、版厚探知のみならず鉄筋の探知、内部割れ、ジャンカ、その他の探知を行うこともできる。解析例として示さないが、探触子を設置するコンクリート表面が粗い場合、数式16の加算平均波G(t)の右辺のF(f)を1.0としても、他の実施例と同様に、本実施例が適用可能である。
また、低周波における数式120は多くの計測実験より標準音速値VST=4400m/秒として、図251のように、横軸を探知路程として整理される。数式120中の係数α2(l)は、鉄筋リアルタイム計測、版厚リアルタイム計測の各場合について示している。また、リアルタイム計測における探知路程毎に振動子径40mmの1対の発信探触子及び受信探触子の中心間距離の推奨値は探知概略路程毎に表7のようになる。
コンクリートの版厚測定等で内部の微細な割れ及び密に配された鉄筋等からの反射波が探知妨害波として生じ、探知が不可能、又は探知の再現性が低くなる場合がある。図252乃至図258は第21の実施例として、このような場合でも、探知対象からの反射波が大きく起生する複数のfDを利用して探知を行う方法を示すフローチャートである。特に、図252乃至図255は鉄筋コンクリートの版厚探知の方法を示し、図256乃至図258はかぶり厚の深い鉄筋の探知の方法を示す。なお、ステップS21−6及びS21−27においては、GA(t)及びGB(t)の算定を数式149及び150のようにしてもよい。
図259乃至図261は前述の第7の実施例として埋め込み深さが極めて浅い鉄筋のかぶり厚及び径の探知において共振波を用いるか、又は共振現象を低減若しくは除去した方法を示すフローチャートである。
また、既存のコンクリート構造物の補強方法の1つにそのコンクリートに鉄皮を巻き付け、この鉄皮とコンクリートとの間にモルタル等を挿入する方法がある。図262乃至図264は前述の第8の実施例として鉄皮の表面に探触子を配した計測で、鉄皮の厚さ及びモルタルの厚さを測定する方法を示すフローチャートである。
次に、前述の第13の実施例について、更に説明する。図265は鉄筋のリアルタイム測定の比較波形である。図138の波形を得たときと同様の計測条件で、鉄筋直上のコンクリート表面に探触子を配置して得た2つの成分波を示している。加算平均波をG(t)とし、図251より、標準音速VST=4400(m/秒)のときのfDの値を鉄筋かぶり厚50mmと仮定し、100kHzと読み取り、このfD=100kHzを中心周波数とする成分波を取り出したものである。一般に、鉄筋は異形であり、図266に示すように、その表面にリブが形成されている。このような鉄筋が任意の角度θでコンクリート内に埋設されている。
図265は図266の角度θが異なる鉄筋の直上のコンクリート表面で得た100kHz成分波による鉄筋からの反射波の比較図である。波の強度が大きく相違している。角度θの変化により、このような強度変化が生じている。図265に示す比較図の具体的な抽出方法について説明する。鉄筋かぶり厚の予測値をd=50mmとし、数式112でd=50mm、β2=1.0、f0=fD=100kHz、cVp=4400m/秒として、tT=32.7μ秒を算出した。次いで、t=0で0、t=tT=32.7μ秒で1.0、t=2tT=65.7μ秒以降の時刻で0となる正弦関数状フィルタFiLT(t)を用い、n5=2として数式149の演算を行い、更にn1及びn2を1以上の自然数として、数式150の演算を行った。このとき、A1 n1(f)・A2 n2(f)・FA(f)スペクトルの中心周波数がfD=100kHzになるようにn1及びn2の値を自動制御して得たものが図265である。この自動制御は、n1を4とし、n2の値を大きくしていくことにより行った。図265を得たときのn2の値は1400である。
図267に図265の成分波に対応するA1 n1(f)・A2 n2(f)・FAj(f)スペクトルを示す。説明を容易にするために、図265の鉄筋上の成分波1951及び1952のスペクトルを同一符号で示している。また、スペクトル1953は鉄筋が直下にない位置での上述と同一の処理で得た成分波のスペクトルである。角度θの相違により、鉄筋からの反射波1951及び1952のスペクトル値も大きく変動している。また、波1951及び1952のfDの値は同一とはなっていない。図267のスペクトル比較図に対応する成分波GBj(t)を図268に示す。図265、図267及び図268の比較で対応をとるために、全ての図中に、符号1951乃至1953を付している。図268によれば、成分波1951及び1952が鉄筋直上の計測で得たものと判断することができる。
しかし、測定例として示さないが、例えば成分波1952において、この位置でのコンクリートに何らかの欠陥があると、例えば微細なフェアークラックがあったり、コンクリートの表面が粗であったりすると、図268における成分波1952は波1953の直下に鉄筋がない場合の成分波と比較してもその相違を見出せない場合がある。
次に、このような場合でも成分波1952が鉄筋直上での測定波であると断定できる分析法について説明する。多くの同種の測定例によれば、角度θの相違があるか、又はコンクリート何らかの欠陥がある場合でも、鉄筋直上計測でのA1 n1(f)・A2 n2(f)・FA(f)スペクトルの中心周波数をfDから徐々に低周波側へ移行すると、角度θの相違及びコンクリートの欠陥による成分波強度への影響が緩和されてくる。このような現象を利用すると、容易且つ正確に鉄筋の存在を確認することができる。
図267に示すn1=4、n2=1400のA1 n1(f)・A2 n2(f)・FA(f)スペクトルにおいて、n2の値を大きくしたときのスペクトル比較図を図269及び図270に示す。n2の値は、図269では1600、図270では1800である。図269によれば、鉄筋が直下にあるスペクトル1951及び1952がほとんど一致している。これらに対応するGB(t)を図271に示す。鉄筋が直下にある成分波1951及び1952について、同一の強度となり、直下に鉄筋がない成分波1953の強度は微弱になっている。
前記n2の値は容易に自動コントロールできる。即ち、スペクトル形状が略同一となり、且つスペクトル値も略同一になったとき、A1 n1(f)・A2 n2(f)・FA(f)の演算を停止すればよい。
このような方法を超音波探知装置に実行させるためには、次のようなソフトウェアが必要である。
第1に、1対の探触子を鉄筋の長手方向に配した計測で得る加算平均波G(t)からfDを中心周波数とするGBnp(t)をオペレータに視認させ、表示画面に映し出す。
第2に、探触子を鉄筋の長手方向に対して垂直な方向に移動配置する探触子走査の都度、この場合のGBnp(t)と上述のGB(t)とを比較表示する。このような測定の繰り返しで、GBnp(t)の振幅の変化を視認する。GBnp(t)の振幅が最も大きくなったと視認したとき、この時点での探触子配置位置の直下に鉄筋が存在すると判断する。
第3に、上述の探触子走査で鉄筋の存在する平面的位置が確認された場合、この時点でのGBnp(t)波を表示画面上のGBnp(t)と置き換える。
第4に、第2の走査を行い、この移動の度に新たなGBnp(t)を作成し、上述の最新のGBnp(t)と比較表示する。
第5に、オペレータの判断により鉄筋の位置を判断する。具体的には、比較表示では、探触子の移動に伴ってGBnp(t)波の振幅が最新のGBnp(t)波と比較したとき一旦小さくなるが、更に探触子移動を継続していくと再度GBnp(t)波が増幅する。そして、次の2つの判断をオペレータに行わせる。先ず、GBnp(t)波の振幅が最も大きくなると判断できる探触子位置をその位置を僅かに移動させることで確認する。次に、最新のGBnp(t)波と映し出されているGBnp(t)波とで振幅が異なっていても、その形状が相似であること及び位相が同一であることを確認する。
第6に、上述のようにして特定された探触子の直下に鉄筋があることを確認するために、オペレータの処理又は自動処理により、最新のGBnp(t)波及び現在のGBnp(t)波の中心周波数をfDから徐々に低周波側へ変化させる。もし、この探触子の位置に鉄筋が存在する場合には、両GBnp(t)波の振幅の相違が緩和される。このような波形の変化を視認することで鉄筋の有無に関する探知での誤計測を回避することができる。
図272乃至図276は第13の実施例として鉄筋のリブ及び鉄筋埋め込み位置コンクリートの劣化が探知結果に及ぼす悪影響を除去したコンクリート内鉄筋の平面的位置をリアルタイム計測で測定する方法を示すフローチャートである。
なお、これらの実施例においては、tTを探知対象路程の概略予想値d等を用いて、例えば数式112等の算定式を用いて行っているが、この予測値が大きく異なっている場合でも、分析の波の視認の下で、オペレータによる予測値の変更操作を行えばよい。例えば、第21の実施例の版厚探知を例としてこの処理方法について説明する。
図277は図237を得たときと同様のリアルタイム探知で予測値を450mmとしたときのGB2(t)波である。カーソル1931の位置に最初の波の起生が確認できる。オペレータの指示によりtTの位置をカーソル1931に変更したときのGB2(t)波を図278に示す。図278は図237と全く同一になっている。このように、予測値が実値と異なっていても、オペレータの判断により高い精度の探知が可能である。
産業上の利用可能性
以上詳述したように、本発明によれば、従来困難とされているコンクリート構造物及びその中に埋め込まれた鉄筋等の検知を容易且つ正確に行うことが可能である。従って、トンネル等の劣化の程度の検知等において本発明を利用することにより、高い効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
図1は探知対象物の例を示す模式図である。
図2はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(従来例)。
図3はフィルタA1(f)及びA2(f)を示すグラフ図である。
図4はフィルタA3(f)を示すグラフ図である。
図5は本発明の実施例で使用する超音波探知装置を示すブロック図である。
図6乃至図9は第1の実施例を示すフローチャートである。
図10は第1の実施例における探知対象を示す模式図である。
図11は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第1の実施例)。
図12は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第1の実施例)。
図13は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第1の実施例)。
図14は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第1の実施例)。
図15は発信探触子及び受信探触子の移動状況を示す模式図である。
図16乃至図18は第2の実施例を示すフローチャートである。
図19は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図20は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図21は探知路程と補正係数αとの関係を示すグラフ図である。
図22は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図23は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図24は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図25は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図26は第2の実施例における被探知体に関する幾何学的関係を示す模式図である。
図27は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第2の実施例)。
図28は振動数とγ(f)との関係を示すグラフ図である。
図29及び図30は第3の実施例を示すフローチャートである。
図31は時系列波を示すグラフ図である(第3の実施例)。
図32は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第3の実施例)。
図33及び図34は第4の実施例を示すフローチャートである。
図35はth1、th2及びth3を示す図である。
図36は時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図37は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図38は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図39は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図40は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図41は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図42は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図43は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図44は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図45は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図46は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第4の実施例)。
図47乃至図49は第5の実施例を示すフローチャートである。
図50は時系列波を示すグラフ図である(第5の実施例)。
図51及び図52は第6の実施例を示すフローチャートである。
図53は時系列波を示すグラフ図である(第7の実施例)。
図54はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第7の実施例)。
図55は時系列波を示すグラフ図である(第7の実施例)。
図56は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第7の実施例)。
図57は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第7の実施例)。
図58は充填されたモルタルの厚さを示す模式図である。
図59はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第8の実施例)。
図60は時系列波を示すグラフ図である(第8の実施例)。
図61は被探知体を示す模式図である。
図62は時系列波を示すグラフ図である(第8の実施例)。
図63はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図64は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図65は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図66は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図67は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図68は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図69は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第9の実施例)。
図70は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第9の実施例)。
図71はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図72は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図73は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第9の実施例)。
図74は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第9の実施例)。
図75は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第9の実施例)。
図76は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第9の実施例)。
図77乃至図80は第9の実施例を示すフローチャートである。
図81はセメントミルクの充填度を測定する対象物を示す模式図である。
図82は時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図83は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図84は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図85は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図86は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図87はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図88は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図89は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図90は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図91は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図92は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図93は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図94はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図95は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図96は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図97は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図98は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図99は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図100はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図101は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図102は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図103は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図104は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図105は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図106はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図107は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第10の実施例)。
図108は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第10の実施例)。
図109及び図110は第10の実施例の一例を示すフローチャートである。
図111は中心周波数f0を特定する方法を示すグラフ図である。
図112乃至図114は第10の実施例の他の一例を示すフローチャートである。
図115は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第11の実施例)。
図116は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第11の実施例)。
図117はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第11の実施例)。
図118は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第11の実施例)。
図119は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第11の実施例)。
図120は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第11の実施例)。
図121乃至図123は第11の実施例を示すフローチャートである。
図124は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第12の実施例)。
図125はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第12の実施例)。
図126は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第12の実施例)。
図127は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第12の実施例)。
図128はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第12の実施例)。
図129は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第12の実施例)。
図130はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第12の実施例)。
図131は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第12の実施例)。
図132乃至図137は第12の実施例を示すフローチャートである。
図138はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図139は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図140は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図141は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図142乃至図145は第13の実施例の一例を示すフローチャートである。
図146は時系列波を示すグラフ図である(第14の実施例)。
図147はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第14の実施例)。
図148は時系列波を示すグラフ図である(第14の実施例)。
図149は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第14の実施例)。
図150は探触子と塩化ビニル管との位置関係を示す模式図である。
図151は時系列波を示すグラフ図である(第14の実施例)。
図152乃至図155は第14の実施例を示すフローチャートである。
図156は臨界屈折波を利用した探知方法を示す模式図である。
図157は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第15の実施例)。
図158はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第15の実施例)。
図159は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第15の実施例)。
図160はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第15の実施例)。
図161は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第15の実施例)。
図162はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第15の実施例)。
図163は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第15の実施例)。
図164は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第15の実施例)。
図165はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第15の実施例)。
図166は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第15の実施例)。
図167はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第15の実施例)。
図168乃至図170は第15の実施例を示すフローチャートである。
図171は斜方向超音波を示す模式図である。
図172は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第16の実施例)。
図173は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第16の実施例)。
図174は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第16の実施例)。
図175はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第16の実施例)。
図176は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第16の実施例)。
図177は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第16の実施例)。
図178乃至図181は第16の実施例を示すフローチャートである。
図182はコンクリート体内を伝達する複数の波を示す模式図である。
図183は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第17の実施例)。
図184はひび割れの深さdを示す模式図である。
図185は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第17の実施例)。
図186は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第17の実施例)。
図187はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第17の実施例)。
図188は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第17の実施例)。
図189は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第17の実施例)。
図190は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第17の実施例)。
図191乃至図193は第17の実施例を示すフローチャートである。
図194は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第18の実施例)。
図195は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第18の実施例)。
図196はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第18の実施例)。
図197は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第18の実施例)。
図198は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第18の実施例)。
図199は、同じく測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第18の実施例)。
図200乃至図202は第18の実施例を示すフローチャートである。
図203は表面波を示す模式図である。
図204は斜透過法計測を示す模式図である。
図205は時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図206はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第19の実施例)。
図207は時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図208は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図209は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図210は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図211は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図212は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図213は、同じく時系列波を示すグラフ図である(第19の実施例)。
図214乃至図222は第19の実施例を示すフローチャートである。
図223は時系列波を示すグラフ図である(第20の実施例)。
図224はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第20の実施例)。
図225は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第20の実施例)。
図226は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第20の実施例)。
図227は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第20の実施例)。
図228は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第20の実施例)。
図229乃至図233は第20の実施例を示すフローチャートである。
図234は異形鉄筋が井桁状に設けられたモデルを示す模式図である。
図235は砕石による反射波を示す模式図である。
図236は時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図237は時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図238は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第21の実施例)。
図239は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第21の実施例)。
図240は時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図241はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第21の実施例)。
図242は時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図243はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第21の実施例)。
図244は時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図245は異形鉄筋からの反射波を示す模式図である。
図246は時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図247は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図248はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第21の実施例)。
図249は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第21の実施例)。
図250は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第21の実施例)。
図251はひび割れの深さdと補正係数αとの関係を示すグラフ図である。
図252乃至図258は第21の実施例を示すフローチャートである。
図259乃至図261は第7の実施例を示すフローチャートである。
図262乃至図264は第8の実施例を示すフローチャートである。
図265は時系列波を示すグラフ図である(第13の実施例)
図266は異形鉄筋の形状を示す模式図である。
図267はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図268は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第13の実施例)。
図269はフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図270は、同じくフーリエスペクトルを示すグラフ図である(第13の実施例)。
図271は測点毎の時系列波を示すグラフ図である(第13の実施例)。
図272乃至図276は第13の実施例の他の一例を示すフローチャートである。
図277は時系列波を示すグラフ図である。
図278は、同じく時系列波を示すグラフ図である。
Claims (33)
- 発信探触子と受信探触子との間隔を一定量ずつ変更しながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φの演算を行う周波数演算手段と、jをnA以下の自然数とし、前記各加算平均
ィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1は2又は4、n2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記f0となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定された
算を行うフーリエ変換手段と、GAj(t)とGAj+1(t)との位相差Δti及び外部から与えられた重み係数ρi+1に基づいて数式
平均化手段により得られた結果を自然数乗して表示する表示装置と、を有することを特徴とする超音波探知装置。 - 発信探触子と受信探触子との間隔を一定量ずつ変更しながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記加算平均手段により得られたnA個の加算平均の総加算平均をG0(t)として求める総加算平均手段と、jをnA以下の自然数とし、前記総加算平均を
ルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・F0(f)(n1は2又は4、n2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が予め設定された値となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
前記フーリエ変換手段により得られた結果を自然数乗して表示する表示装置と、を有することを特徴とする超音波探知装置。 - 前記予め設定された値は、周波数の関数である音速補正係数をγ、前記発信探触子及び受信探触子の間隔の変更量をΔa、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式γ×V/(2×Δa)で与えられることを特徴とする請求項2に記載の超音波探知装置。
- 前記表示装置は、nAの値が1だけ異なる2種のGA0(t)を同時に表示することができることを特徴とする請求項1に記載の超音波探知装置。
- 前記GA0(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じる時系列フィルタリング手段と、前記GA0(t)をFiLTn5(t)・GA0(t)に置換する置換手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探知装置。
- 前記GAj(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じる時系列フィルタリング手段と、前記GAj(t)をFiLTn5(t)・GAj(t)に置換する置換手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波探知装置。
- 前記時系列フィルタは、tTを探知目標とする波の起生時刻としたとき、t=0で0、t=tTで1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする請求項5又は6に記載の超音波探知装置。
- 前記時系列フィルタは、tTを探知目標とする波の起生時刻としたとき、t=0で0、t=tTで1.0となり、0≦t≦tTにおいて単調に増加し、t>tTで単調に減少する関数であることを特徴とする請求項5又は6に記載の超音波探知装置。
- 発信探触子と受信探触子との間隔を一定量ずつ変更しながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、被探知体における表面波とたて波との音速比をβL、前記発信探触子及び受信探触子の間隔の変更量をΔa、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式fR1=βL×V/(2×Δa)の演算を行う周波数演算手段と、jを1又は2
1及び第2の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1は2又は4、n2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数がfR1となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
、前記フーリエ変換手段により得られた結果を自然数乗して表示する表示装置と、を有することを特徴とする超音波探知装置。 - 発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φの演算を行う周波数演算手段と、jをnA以下の自然数とし、前記各加算平均を
ルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1及びn2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記f0となるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn
ーリエ変換手段と、前記GAj(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じることにより、数式
タリング手段と、前記n5FAj(f)を前記n5毎に表示する表示装置と、を有し、前記時系列フィルタは、所定値tT及びΔtに対し、t=tTで最大値1.0、t=tT−Δt以前の時刻及びt=tT+Δt以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする超音波探知装置。 - 発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φ及び数式fs=V/(π×φ)の演算を行う周波数演算手段と、数式n×fs<f0を満たす最大の自然数nを決定するn値決定手段と、jをnA以下の自然数とし
び第2の周波数フィルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1及びn2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記f0又はfsとなるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn2に基づいて数式
、前記GAj(t)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じることにより、数式
タリング手段と、前記FiLTn5(t)・GAj(t)及びn5FAj(f)を前記n5毎に表示する表示装置と、を有し、前記時系列フィルタは、所定値tT及びΔtに対し、t=tTで最大値1.0、t=tT−Δt以前の時刻及びt=tT+Δt以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする超音波探知装置。 - 前記表示装置は、前記GBj(t)を自然数乗したものを表示することができることを特徴とする請求項10、11又は13に記載の超音波探知装置。
- 前記表示装置は、前記HBj(t)を自然数乗したものを表示することができることを特徴とする請求項12に記載の超音波探知装置。
- 前記Gj(t)、GAj(t)及びGBj(t)からなる群から選択された1の関数をPj(t)と表現し、JAをnA以下の自然数とし、Pj(t)(1≦j≦JA)の中で最も大きい振幅の絶対値を|maxP|とし、各Pj(t)の最大の振幅の絶対値を|maxPj|としたときに、予め定められたβに対して、|maxP|≦β・|maxPj|を満足するPj(t)を|maxP|/|maxPj|×Pj(t)に置換する置換手段を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の超音波探知装置。
- 前記Gj(t)及びGBj(t)からなる群から選択された1の関数をPj(t)と表現し、JAをnA以下の自然数とし、Pj(t)(1≦j≦JA)の中で最も大きい振幅の絶対値を|maxP|とし、各Pj(t)の最大の振幅の絶対値を|maxPj|としたときに、予め定められたβに対して、|maxP|≦β・|maxPj|を満足するPj(t)を|maxP|/|maxPj|×Pj(t)に置換する置換手段を有することを特徴とする請求項13に記載の超音波探知装置。
- 前記Gj(t)、Hj(t)、HAj(t)及びHBj(t)からなる群から選択された1の関数をPj(t)と表現し、JAをnA以下の自然数とし、Pj(t)(1≦j≦JA)の中で最も大きい振幅の絶対値を|maxP|とし、各Pj(t)の最大の振幅の絶対値を|maxPj|としたときに、予め定められたβに対して、|maxP|≦β・|maxPj|を満足するPj(t)を|maxP|/|maxPj|×Pj(t)に置換する置換手段を有することを特徴とする請求項12に記載の超音波探知装置。
- 前記Fj(f)、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)及びn5FAj(f)からなる群から選択された1の関数をPFj(f)と表現し、JAをnA以下の自然数とし、PFj(f)(1≦j≦JA)の中で最も大きいスペクトル値の絶対値をmaxSとし、各PFj(f)の最大のスペクトル値の絶対値をmaxSjとしたときに、予め定められたβに対して、maxS≦β・maxSjを満足するPFj(f)をmaxS/maxSj×PFj(f)に置換する置換手段を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の超音波探知装置。
- 前記Fj(f)及びn5FAj(f)からなる群から選択された1の関数をPFj(f)と表現し、JAをnA以下の自然数とし、PFj(f)(1≦j≦JA)の中で最も大きいスペクトル値の絶対値をmaxSとし、各PFj(f)の最大のスペクトル値の絶対値をmaxSjとしたときに、予め定められたβに対して、maxS≦β・maxSjを満足するPFj(f)をmaxS/maxSj×PFj(f)に置換する置換手段を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の超音波探知装置。
- 発信探触子と受信探触子との間隔を一定に保ちながら超音波を受信する毎にそれまでに受信した超音波との加算平均をnA回求める加算平均手段と、前記発信探触子と前記受信探触子との中心を結ぶ線分上における前記発信探触子及び受信探触子の被探知体に接する部位の幅をφ、探触子間距離に依存する補正係数をα、他の補正係数をα2、補正係数α2を求めたときの被探知体の音速をVST、被探知体におけるたて波の音速をVとしたときに、数式f0=α×V/φ及び数式fD=α2×V/VSTの演算を行う周波数演算手段と、f0<fDの場合に(f0+fD)/2で与えられる値をfwとし、f0≧fDの場合にfDをfwとする中心周波数決定手段と、jをnA以下の自然数とし、前記各加算平均を
ルタA1 n1(f)及びA2 n2(f)に対して、A1 n1(f)・A2 n2(f)・Fj(f)(n1及びn2は0以上の整数)のスペクトルの中心周波数が前記fwとなるように前記n1及びn2の値を決定する乗数決定手段と、決定されたn1及びn
ーリエ変換手段と、少なくとも前記フーリエ変換手段により得られたGA1(t)及びGA2(t)を自然数np乗することにより、GA1 np(t)及びGA2 np(t)として表示する表示装置と、を有することを特徴とする超音波探知装置。 - 前記GAj(t)(jは1又は2)に対し所定の時系列フィルタFiLTn5(t)(n5は自然数)を乗じる時系列フィルタリング手段と、前記GAj(t)をFiLTn5(t)・GAj(t)に置換する置換手段と、を有し、前記時系列フィルタは、被探知体の厚さ又は探知目標物までの距離をdとしたとき、2×d/Vで与えられるtTに関し、t=0で0、t=tTで1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数であることを特徴とする請求項21に記載の超音波探知装置。
- 前記表示装置は、前記GA1 np(t)の最大の振幅の絶対値を|maxP1|とし、前記GA2 np(t)の最大の振幅の絶対値を|maxP2|としたとき、|maxP1|≧|maxP2|であれば、GA1 np(t)/|maxP1|及びGA2 np(t)/|maxP1|を最大振幅値を1.0に標準化して表示し、|maxP1|<|maxP2|であれば、GA1 np(t)/|maxP2|及びGA2 np(t)/|maxP2|を最大振幅値を1.0に標準化して表示することを特徴とする請求項21に記載の超音波探知装置。
- 前記表示装置は、GA1 np(t)を画面から消去することを特徴とする請求項23に記載の超音波探知装置。
- 前記tTの値は、被探知体の厚さ又は探知目標物までの距離をdとしたとき、2×d/V又は(2×d/V+β2/f0)(0≦β2≦2)で与えられることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の超音波探知装置。
- 前記tTの値は、前記発信探触子から探知目標までの路程をたて波で伝達し前記標知目標から前記受信探触子までの路程をよこ波で伝達する波の受信予測時刻、前記発信探触子から前記探知目標までの路程をよこ波で伝達し前記標知目標から前記受信探触子までの路程をたて波で伝達する波の受信予測時刻、及び前記発信探触子から前記探知目標を経由して前記受信探触子までの路程をよこ波で伝達する波の受信予測時刻からなる群から選択された1の受信予想時刻であることを特徴とする請求項10又は13に記載の超音波探知装置。
- 前記tTの値は、前記発信探触子と前記受信探触子との間隔をa、たて波の音速をVp、表面を伝達する波の音速をVLとしたとき、a/Vp又は/VLで与えられることを特徴とする請求項10又は13に記載の超音波探知装置。
- 前記FiLT(t)をt=0で0、t=tTで1.0、t=2tT以降の時刻で0となる正弦関数に置換するフィルタ置換手段を有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の超音波探知装置。
- 前記FiLT(t)をt=0で0、t=tTで1.0、0≦t≦tTの範囲で単調に増加し、t>tTの範囲で単調に減少する関数に置換するフィルタ置換手段を有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の超音波探知装置。
- 請求項10に記載の超音波探知装置を使用した超音波探知方法において、コンクリートに互いに平行に埋め込まれた鉄筋のかぶり厚をdRとしたとき、前記発信探触子と前記受信探触子との間隔を3×dR以上とし、1回の加算平均を得るために前記発信探触子と前記受信探触子と結ぶ線分を前記鉄筋の長手方向と平行になるように位置させ、加算平均毎に前記線分を前記鉄筋の長手方向に対して垂直な方向に平行移動させて前記発信探触子及び受信探触子の位置を配置し直す工程と、を有することを特徴とする超音波探知方法。
- 請求項10に記載の超音波探知装置を使用した超音波探知方法において、コンクリートに埋め込まれた鉄骨のかぶり厚をdSとしたとき、前記発信探触子と前記受信探触子との間隔を3×dS以上とし、1回の加算平均を得るために前記発信探触子と前記受信探触子と結ぶ線分を前記鉄骨上に位置させ、加算平均毎に前記線分上で前記発信探触子及び受信探触子の位置を変更することを特徴とする超音波探知方法。
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