実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
制御部の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
制御部の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、第1変換器11と、第2変換器12と、直流コンデンサ13と、過電圧保護回路14と、電圧検出器15と、制御部16と、を備える。
第1変換器11は、交流の電力系統と接続され、電力系統から供給された第1交流電力を直流電力に変換する。第2変換器12は、第1変換器11の直流側に接続され、第1変換器11から供給された直流電力を第1交流電力と振幅や周波数などが異なる第2交流電力に変換する。第2変換器12は、第1変換器11の接続された電力系統とは別の電力系統や誘導電気などの交流負荷に接続され、第2交流電力を電力系統や交流負荷に供給する。
直流コンデンサ13は、第1変換器11の直流側及び第2変換器12の直流側に接続され、第1変換器11から供給される直流電力及び第2変換器12に供給される直流電力を平滑化する。
第1変換器11は、一対の直流端子11a、11bを有する。第2変換器12は、一対の直流端子12a、12bを有する。第2変換器12の直流端子12aは、第1変換器11の直流端子11aと接続される。第2変換器12の直流端子12bは、第1変換器11の直流端子11bと接続される。直流端子11a、12aは、例えば、高電位側の直流端子である。直流端子11b、12bは、例えば、低電位側の直流端子である。直流コンデンサ13は、より詳しくは、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間に設けられる。
電力変換装置10は、例えば、直流電力によって送電を行う直流送電(HVDC:High Voltage Direct Current)、周波数の変換を行う周波数変換器(FC:Frequency Converter)、あるいは周波数の変換を行うことなく2つの交流電力系統を連系させるBTB(Back-To-Back)などに用いられる。例えば、第1変換器11及び第2変換器12のそれぞれが電力系統に接続されている場合などには、第1変換器11側から第2変換器12側に電力を供給する状態と、第2変換器12側から第1変換器11側に電力を供給する状態と、を切り替えられるようにしてもよい。
但し、電力変換装置10は、必ずしも第1変換器11及び第2変換器12の2台の変換器を備えていなくてもよい。電力変換装置10は、例えば、電力系統の交流電力を直流電力に変換して直流コンデンサ13を充電するとともに、直流コンデンサ13の直流電力を基に無効電力を電力系統に供給することにより、電力系統の電圧変動を抑制する無効電力補償装置などでもよい。電力変換装置10は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う一台の変換器を少なくとも備えていればよい。
過電圧保護回路14は、第1変換器11及び第2変換器12の直流側に接続されている。過電圧保護回路14は、より詳しくは、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間に設けられる。換言すれば、過電圧保護回路14は、直流コンデンサ13と並列に設けられる。
過電圧保護回路14は、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の過電圧を抑制する。過電圧保護回路14は、換言すれば、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧が所定の閾値以上となることを抑制する。
電圧検出器15は、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧を検出する。より詳しくは、電圧検出器15は、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間の直流電圧を検出する。電圧検出器15は、制御部16と接続されている。電圧検出器15は、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の検出値を制御部16に入力する。
制御部16は、第1変換器11、第2変換器12、及び過電圧保護回路14と接続され、第1変換器11及び第2変換器12による電力の変換を制御するとともに、過電圧保護回路14による過電圧の抑制の動作を制御する。なお、第1変換器11、第2変換器12、及び過電圧保護回路14の動作は、それぞれ別の制御部で制御してもよい。制御部16は、過電圧保護回路14の動作のみを制御するものでもよい。制御部16は、電圧検出器15から入力された直流電圧の検出値を基に、過電圧保護回路14の動作を制御する。なお、直流電圧の検出値は、電圧検出器15からに限ることなく、例えば、制御部16の動作を制御する上位のコントローラなどの別の制御装置などから制御部16に入力してもよい。
過電圧保護回路14は、第1抵抗素子21と、第2抵抗素子22と、を有する。第1抵抗素子21は、一対の端子21a、21bを有する。第2抵抗素子22は、一対の端子22a、22bを有する。第1抵抗素子21は、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間に設けられる。第2抵抗素子22は、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間に設けられる。第2抵抗素子22は、第1抵抗素子21と並列に設けられる。
過電圧保護回路14は、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態と、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第2状態と、を有する。第2状態は、換言すれば、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に実質的に電流が流れないようにする状態である。第2状態は、例えば、第1変換器11及び第2変換器12の動作に影響が無い程度の微弱な電流が第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる状態でもよい。
過電圧保護回路14は、第1スイッチング素子31と、第2スイッチング素子32と、をさらに有する。第1スイッチング素子31は、一対の主端子31a、31bと、制御端子31cと、を有する。第2スイッチング素子32は、一対の主端子32a、32bと、制御端子32cと、を有する。
第1スイッチング素子31は、第1抵抗素子21と直列に接続される。第1スイッチング素子31は、一対の主端子31a、31b間に電流を流すオン状態と、一対の主端子31a、31b間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。第2スイッチング素子32は、第2抵抗素子22と直列に接続される。第2スイッチング素子32は、一対の主端子32a、32b間に電流を流すオン状態と、一対の主端子32a、32b間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。
第1抵抗素子21の一方の端子21aは、第1変換器11の一方の直流端子11a、及び第2変換器12の一方の直流端子12aと接続されている。第1抵抗素子21の他方の端子21bは、第1スイッチング素子31の一方の主端子31aと接続されている。第1スイッチング素子31の他方の主端子31bは、第1変換器11の他方の直流端子11b、及び第2変換器12の他方の直流端子12bと接続されている。
これにより、第1スイッチング素子31をオン状態とすることにより、第1抵抗素子21に電流が流れる。そして、第1スイッチング素子31をオフ状態とすることにより、第1抵抗素子21に流れる電流が遮断される。
同様に、第2抵抗素子22の一方の端子22aは、第1変換器11の一方の直流端子11a、及び第2変換器12の一方の直流端子12aと接続されている。第2抵抗素子22の他方の端子22bは、第2スイッチング素子32の一方の主端子32aと接続されている。第2スイッチング素子32の他方の主端子32bは、第1変換器11の他方の直流端子11b、及び第2変換器12の他方の直流端子12bと接続されている。
これにより、第2スイッチング素子32をオン状態とすることにより、第2抵抗素子22に電流が流れる。そして、第2スイッチング素子32をオフ状態とすることにより、第2抵抗素子22に流れる電流が遮断される。
すなわち、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオン状態とすることにより、過電圧保護回路14が、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態となり、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオフ状態とすることにより、過電圧保護回路14が、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第2状態となる。
また、この例において、過電圧保護回路14は、第1抵抗素子21のみに電流を流し、第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第3状態をさらに有する。この例では、第1スイッチング素子31をオン状態とし、第2スイッチング素子32をオフ状態とすることにより、過電圧保護回路14が、第3状態となる。このように、過電圧保護回路14は、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32の状態の切り替えにより、第1状態と第2状態とを切り替えるとともに、第3状態にさらに切り替え可能である。
過電圧保護回路14は、換言すれば、第1抵抗素子21と第1スイッチング素子31とからなる第1保護回路と、第2抵抗素子22と第2スイッチング素子32とからなる第2保護回路と、を有する。第1保護回路は、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間に設けられる。第2保護回路は、第1変換器11の一対の直流端子11a、11bの間、及び第2変換器12の一対の直流端子12a、12bの間において、第1保護回路と並列に設けられる。
第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32のそれぞれのオン状態及びオフ状態は、例えば、制御端子31c及び制御端子32cに印加する電圧によって切り替えられる。第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32には、例えば、GTO(Gate Turn Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子(自己消弧素子)が用いられる。制御端子31c、32cは、例えば、ゲート端子である。第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32は、例えば、電磁開閉器などでもよい。電流を遮断するとは、より詳しくは、半導体スイッチング素子をオフ状態とし、主端子間に実質的に電流が流れないようにすること、あるいは電磁開閉器などを開状態とし、主端子間の経路を開放することである。
第1スイッチング素子31の制御端子31c及び第2スイッチング素子32の制御端子32cは、制御部16と接続されている。制御部16は、制御端子31c、32cに印加する電圧を制御することにより、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32のそれぞれのオン状態及びオフ状態の切り替えを制御する。すなわち、制御部16は、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32のオン状態及びオフ状態の切り替えを制御することにより、過電圧保護回路14の第1状態、第2状態、及び第3状態の切り替えを制御する。
過電圧保護回路14は、温度センサ40をさらに有する。温度センサ40は、第1抵抗素子21の温度を測定する。温度センサ40は、制御部16と接続されている。温度センサ40は、第1抵抗素子21の温度の測定値を制御部16に入力する。
図2は、制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
制御部16は、電圧検出器15から入力された第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の検出値を基に、直流電圧の検出値が第1閾値以上か否かを判定する(図2のステップS101)。
制御部16は、直流電圧の検出値が第1閾値未満であると判定した場合には、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオフ状態とすることにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第2状態に過電圧保護回路14を設定する(図2のステップS102)。過電圧保護回路14を第2状態に設定した場合には、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる電流が遮断され、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22での電力の消費が抑制される。
一方、制御部16は、直流電圧の検出値が第1閾値以上であると判定した場合には、第1スイッチング素子31をオフ状態からオン状態に切り替え、第2スイッチング素子32をオン状態とすることにより、第1抵抗素子21のみに電流を流し、第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第3状態に過電圧保護回路14を切り替える(図2のステップS103)。
過電圧保護回路14を第3状態に設定した場合には、第1抵抗素子21に電流が流れる。換言すれば、第1変換器11から第2変換器12に供給する直流電流の一部が、第1抵抗素子21に流れる。これにより、第1変換器11から第2変換器12に供給する直流電力の一部が、第1抵抗素子21で消費され、過電圧保護回路14によって第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制することができる。
制御部16は、過電圧保護回路14を第3状態に設定した後、温度センサ40から入力された第1抵抗素子21の温度の測定値を基に、第1抵抗素子21の温度の測定値が所定温度以上か否かを判定する(図2のステップS104)。
制御部16は、第1抵抗素子21の温度の測定値が所定温度以上であると判定した場合には、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオン状態とすることにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態に過電圧保護回路14を切り替える(図2のステップS105)。
制御部16は、換言すれば、第1抵抗素子21の温度の測定値が所定温度以上である場合に、第1抵抗素子21の電力の消費特性が所定以上変化したと判定し、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替える。このように、制御部16は、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧が第1閾値未満である場合に、過電圧保護回路14を第2状態に設定し、直流電圧が第1閾値以上である場合に、過電圧保護回路14を第3状態に設定するとともに、過電圧保護回路14を第3状態に切り替え、第1抵抗素子21への通電を開始した後、第1抵抗素子21の電力の消費特性が所定以上変化した場合に、過電圧保護回路14を第1状態に設定する。
過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替えると、第1抵抗素子21に電流が流れるとともに、第2抵抗素子22にも電流が流れる。第1変換器11から第2変換器12に供給する直流電力の一部が、第1抵抗素子21で消費されるとともに、第2抵抗素子22でも消費される。これにより、第1抵抗素子21の温度の上昇にともなう電力の消費特性の変化を抑制することができる。
制御部16は、過電圧保護回路14を第1状態に設定した後、又は、第1抵抗素子21の温度の測定値が所定温度未満であると判定した後、電圧検出器15から入力された第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の検出値を基に、直流電圧の検出値が第2閾値以下か否かを判定する(図2のステップS106)。第2閾値は、第1閾値よりも低く設定される。これにより、直流電圧の検出値が第2閾値以下と判定された後、すぐに直流電圧の検出値が第1閾値以上と判定され、過電圧保護回路14の動作が不安定になってしまうことを抑制することができる。
制御部16は、直流電圧の検出値が第2閾値よりも高いと判定した場合には、ステップS104の処理に戻り、過電圧保護回路14の第1状態又は第3状態の設定を継続する。
一方、制御部16は、直流電圧の検出値が第2閾値以下であると判定した場合には、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオフ状態とすることにより、過電圧保護回路14を第1状態又は第3状態から第2状態に切り替える(図2のステップS107)。
制御部16は、過電圧保護回路14を第2状態に切り替えた後、ステップS101の処理に戻り、以下、上記ステップS101~ステップS107の処理を繰り返す。
このように、本実施形態に係る電力変換装置10では、直流電圧の検出値が第1閾値以上である場合に、過電圧保護回路14を第3状態に設定することにより、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制することができる。そして、第1抵抗素子21の温度の測定値が所定温度以上である場合に、過電圧保護回路14を第1状態に設定することにより、第1抵抗素子21の温度の上昇にともなう電力の消費特性の変化を抑制することができる。
第1抵抗素子21の温度の上昇にともなって第1抵抗素子21の抵抗値が上昇すると、第1抵抗素子21に流れる電流が減少し、過電圧保護回路14での電力の消費も減少してしまう。換言すれば、第1変換器11及び第2変換器12の保護動作が変化してしまう。過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替えると、第1抵抗素子21と第2抵抗素子22とで並列回路が形成される。このため、第1状態における過電圧保護回路14の抵抗値(第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との合成抵抗値)は、第3状態における過電圧保護回路14の抵抗値(第1抵抗素子21の抵抗値)よりも減少する。従って、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替えることにより、過電圧保護回路14での電力の消費を増加させることができる。
例えば、第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との合成抵抗値が、通電開始時の第1抵抗素子21の抵抗値(温度が上昇する前の常温時の第1抵抗素子21の抵抗値)と同程度になるように、第2抵抗素子22の抵抗値を設定する。これにより、第1抵抗素子21の温度の上昇にともなう電力の消費特性の変化を適切に抑制することができる。換言すれば、第1抵抗素子21の温度の上昇にともなう電力の消費特性の変化を第2抵抗素子22によって補償することができる。
過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替えた際の第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との合成抵抗値は、例えば、第1抵抗素子21の常温時の抵抗値の90%以上110%以下である。これにより、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替えた際の第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との合成抵抗値を、通電開始時の第1抵抗素子21の抵抗値と同程度とすることができる。なお、常温とは、例えば、25℃である。
例えば、直流電圧の検出値が第1閾値以上となり、第1抵抗素子21に電流を流し始めたタイミングから所定時間T経過した場合に、第1抵抗素子21の温度の上昇にともなって、第1抵抗素子21の抵抗値が20%上昇するように、第1抵抗素子21の抵抗温度係数が設定されているものとする。また、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替えたタイミングからT/2経過した際に、第2抵抗素子22の抵抗値が20%上昇するように、第2抵抗素子22の抵抗温度係数が設定されているものとする。この場合に、直流電圧の検出値が第1閾値以上となり、第1抵抗素子21に電流を流し始めたタイミングから所定時間T経過した際の過電圧保護回路14の抵抗値の変化(電力の消費特性の変化)を10%に抑えることを考える。
上記のように、第1抵抗素子21の抵抗温度係数が設定されている場合、第1抵抗素子21に電流を流し始めたタイミングからT/2経過した際に、第1抵抗素子21の抵抗値が10%上昇する。従って、このタイミングで第2スイッチング素子32をオフ状態からオン状態に切り替え、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替える。
第1抵抗素子21の初期(常温時)の抵抗値をR1とし、第2抵抗素子22の初期(常温時)の抵抗値をR2とする時、T/2から所定時間Tまで経過した際の第1抵抗素子21の抵抗値、及び第2抵抗素子22の抵抗値は、それぞれ1.2・R1、1.2・R2で表すことができる。従って、所定時間T経過した際の過電圧保護回路14の抵抗値の変化を10%に抑えるためには、並列回路の式から、第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との合成抵抗値は、以下の(1)式を満たせばよい。
(1.2・R1×1.2・R2)/(1.2・R1+1.2・R2)
=1.1・R1 … (1)
上記の(1)式をR2について解くと、以下の(2)式となる。
R2=11・R1 … (2)
このように、上記の条件においては、第2抵抗素子22の抵抗値は、第1抵抗素子21の抵抗値の11倍の抵抗値を選定すればよい。第2抵抗素子22の抵抗値は、第1抵抗素子21の抵抗値よりも大きい値に設定される。例えば、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧が一定だと仮定すると、第2抵抗素子22で消費される電力は、1/11(抵抗値の比)×1/2(時間)≒0.045となるため、第2抵抗素子22の電流容量(定格電力)は、第1抵抗素子21の電流容量(定格電力)よりも小さくてよい。
また、抵抗値が大きいことから、第2スイッチング素子32の電流容量も、第1スイッチング素子31の電流容量よりも小さくてよい。上記の例では、第2スイッチング素子32の電流容量は、第1スイッチング素子31の電流容量の1/11倍とすることができる。
さらに、上記の条件で示したように、第2抵抗素子22の抵抗温度係数は、第1抵抗素子21の抵抗温度係数よりも大きくすることができる。例えば、上記の条件のように、第2抵抗素子22の抵抗温度係数は、第1抵抗素子21の抵抗温度係数の2倍に設定することができる。従って、第2抵抗素子22には、第1抵抗素子21よりも抵抗温度係数の大きい比較的安価な材質の抵抗素子を用いることができる。
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、直流電圧の検出値が第1閾値以上である場合に、過電圧保護回路14を第3状態に設定するとともに、第1抵抗素子21の温度の測定値が所定温度以上である場合に、過電圧保護回路14を第1状態に設定する。
これにより、本実施形態に係る電力変換装置10では、1つの抵抗素子で第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制する場合と比べて、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22の抵抗温度係数を大きくすることができるとともに、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22の電流容量を小さくすることができる。従って、1つの抵抗素子で第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制する場合と比べて、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に安価な抵抗素子を用いることができる。抵抗素子の数が増えたとしても、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に安価な抵抗素子を用いることにより、1つの高価な抵抗素子を用いる場合よりも全体のコストを抑えることができる。従って、製造コストの増加を抑制しつつ、電力の消費特性の変化を抑制可能な過電圧保護回路14を備えた電力変換装置10を提供することができる。
また、電力変換装置10では、第2抵抗素子22の抵抗温度係数が、第1抵抗素子21の抵抗温度係数よりも大きい。これにより、第2抵抗素子22に第1抵抗素子21よりもさらに安価な抵抗素子を用いることができ、電力変換装置10の製造コストの増加をより抑制することができる。
さらに、電力変換装置10では、第2抵抗素子22の抵抗値が、第1抵抗素子21の抵抗値よりも大きく、第2スイッチング素子32の電流容量が、第1スイッチング素子31の電流容量よりも小さい。これにより、第2スイッチング素子32に第1スイッチング素子31よりもさらに安価なスイッチング素子を用いることができ、電力変換装置10の製造コストの増加をさらに抑制することができる。
図3は、実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、電力変換装置10aでは、過電圧保護回路14において、温度センサ40が省略されている。この例において、過電圧保護回路14は、温度センサ40の代わりに電流検出器42を有する。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明を省略する。
電流検出器42は、第1抵抗素子21に流れる電流を検出する。電流検出器42は、制御部16と接続されている。電流検出器42は、第1抵抗素子21に流れる電流の検出値を制御部16に入力する。
図4は、制御部の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図4は、電力変換装置10aの構成における制御部16の動作の一例を模式的に表す。図4のステップS201~ステップS203の処理は、図2に関して説明したステップS101~ステップS103の処理と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
制御部16は、過電圧保護回路14を第3状態に設定した後、電流検出器42から入力された第1抵抗素子21に流れる電流の検出値を基に、第1抵抗素子21に流れる電流の検出値が所定電流以下か否かを判定する(図4のステップS204)。
制御部16は、第1抵抗素子21に流れる電流の検出値が所定電流以下であると判定した場合には、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオン状態とすることにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態に過電圧保護回路14を切り替える(図4のステップS205)。
図4のステップS206、ステップS207の処理は、図2に関して説明したステップS106、ステップS107の処理と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
前述のように、第1抵抗素子21に電流を流し、第1抵抗素子21の温度が上昇すると、第1抵抗素子21の抵抗値が上昇し、第1抵抗素子21に流れる電流が減少する。従って、この例では、制御部16は、電流検出器42から入力された第1抵抗素子21に流れる電流の検出値を基に、第1抵抗素子21に流れる電流の検出値が所定電流以下である場合に、第1抵抗素子21の電力の消費特性が所定以上変化したと判定し、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替える。この場合にも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
図5は、制御部の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図5に表したように、この例において、制御部16は、過電圧保護回路14を第3状態に設定した後、過電圧保護回路14を第2状態から第3状態に切り替えたタイミングから所定時間が経過したか否かを判定する(図5のステップS304)。換言すれば、制御部16は、第1抵抗素子21への通電時間が所定時間に達したか否かを判定する。なお、図5のステップS301~ステップS303の処理は、図2に関して説明したステップS101~ステップS103の処理と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
制御部16は、過電圧保護回路14を第2状態から第3状態に切り替えたタイミングから所定時間が経過したと判定した場合には、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32をオン状態とすることにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態に過電圧保護回路14を切り替える(図5のステップS305)。
図5のステップS306、ステップS307の処理は、図2に関して説明したステップS106、ステップS107の処理と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
第1抵抗素子21の温度の上昇にともなう第1抵抗素子21の抵抗値の上昇は、第1抵抗素子21への通電時間で予測することができる。従って、この例では、制御部16は、過電圧保護回路14を第2状態から第3状態に切り替えたタイミングから所定時間が経過した場合に、第1抵抗素子21の電力の消費特性が所定以上変化したと判定し、過電圧保護回路14を第3状態から第1状態に切り替える。この場合にも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
このように、第1抵抗素子21の電力の消費特性の変化は、第1抵抗素子21の温度の測定値を基に判定してもよいし、第1抵抗素子21に流れる電流の検出値を基に判定してもよいし、第1抵抗素子21への通電時間などから演算によって判定してもよい。第1抵抗素子21の電力の消費特性の変化を通電時間などの演算で判定する場合には、過電圧保護回路14に温度センサ40や電流検出器42を設ける必要がなく、過電圧保護回路14の構成を簡単にすることができる。過電圧保護回路14の構成を簡単にし、電力変換装置10の製造コストの増加をさらに抑制することができる。
なお、演算による第1抵抗素子21の電力の消費特性の変化の判定方法は、第1抵抗素子21への通電時間に限ることなく、第1抵抗素子21の電力の消費特性の変化を演算によって適切に判定することができる任意の方法でよい。
図6は、実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、電力変換装置10bでは、過電圧保護回路14において、第2スイッチング素子32が省略され、第2抵抗素子22の他方の端子22bが、第1スイッチング素子31の一方の主端子31aと接続されている。換言すれば、電力変換装置10bでは、第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との並列接続体が、第1スイッチング素子31と直列に接続されている。
電力変換装置10bでは、第1スイッチング素子31をオン状態とすることにより、過電圧保護回路14が、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態となり、第1スイッチング素子31をオフ状態とすることにより、過電圧保護回路14が、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第2状態となる。
制御部16は、直流電圧の検出値が第1閾値未満である場合に、第1スイッチング素子31をオフ状態とすることにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に流れる電流を遮断する第2状態に過電圧保護回路14を設定する。そして、制御部16は、直流電圧の検出値が第1閾値以上である場合に、第1スイッチング素子31をオン状態とすることにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態に過電圧保護回路14を設定する。
このように、過電圧保護回路14は、必ずしも第1抵抗素子21のみに電流を流す第3状態を有しなくてもよい。過電圧保護回路14の構成は、少なくとも第1状態と第2状態とを切り替え可能な任意の構成でよい。直流電圧の検出値が第1閾値以上である場合には、第3状態にすることなく、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流す第1状態に過電圧保護回路14を設定することにより、第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制してもよい。
この場合にも、例えば、上記の(1)式及び(2)式で説明したように第1抵抗素子21の抵抗値及び第2抵抗素子22の抵抗値を設定することにより、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に電流を流し始めたタイミングから所定時間T経過した際の過電圧保護回路14の抵抗値の変化を10%に抑えることができる。
そして、この場合にも、上記実施形態と同様に、1つの抵抗素子で第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制する場合と比べて、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22の抵抗温度係数を大きくすることができるとともに、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22の電流容量を小さくすることができる。1つの抵抗素子で第1変換器11及び第2変換器12の直流電圧の上昇を抑制する場合と比べて、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に安価な抵抗素子を用いることができる。抵抗素子の数が増えたとしても、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22に安価な抵抗素子を用いることにより、1つの高価な抵抗素子を用いる場合よりも全体のコストを抑えることができる。従って、製造コストの増加を抑制しつつ、電力の消費特性の変化を抑制可能な過電圧保護回路14を備えた電力変換装置10bを提供することができる。
但し、上記実施形態のように、第3状態に切り替えられるように過電圧保護回路14を構成することにより、電力の消費特性の変化をより適切に抑制することができる。第2状態から第3状態に切り替えた後に、第3状態から第1状態にさらに切り替える場合には、例えば、通電開始時からT/2までの間の電力の消費特性を、T/2から所定時間Tまでの間の電力の消費特性と実質的に同じとすることができる。通電開始時から所定時間Tまでの間の電力の消費特性の変化をより小さくすることができる。
なお、上記実施形態では、過電圧保護回路14が第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22の2つの抵抗素子を有している。過電圧保護回路14に設けられる抵抗素子の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。過電圧保護回路14は、並列に接続された3つ以上の抵抗素子を有してもよい。
過電圧保護回路14は、3つ以上の抵抗素子のそれぞれに対応する3つ以上のスイッチング素子を有し、並列に接続する抵抗素子の数を3段階以上に変化させられるようにしてもよい。但し、過電圧保護回路14の部品点数が増加すると、安価な素子を用いたとしても、製造コストの抑制効果が弱くなってしまう。従って、過電圧保護回路14に設けられる抵抗素子の数は、2つあるいは3つ程度とすることが好適である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。