JP2022071965A - 過共晶Al-Si合金鋳物及びその製造方法 - Google Patents

過共晶Al-Si合金鋳物及びその製造方法 Download PDF

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Kazuhiro Oda
鉄矢 望月
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【課題】過共晶Al-Si合金鋳物の初晶Siと共晶Siを共に微細化する簡便かつ効率的な方法、及び初晶Siと共晶Siが共に微細化された過共晶Al-Si合金鋳物を提供する。【解決手段】Si:12.0~18.0wt%、P:5~50ppmを含有し、初晶Siの平均粒径が30μm以下であり、共晶Siの平均相間隔が20μm以下であること、を特徴とする過共晶Al-Si合金鋳物。Pの含有量は20~40ppmであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、靭性に優れた過共晶Al-Si合金鋳物及びその製造方法に関する。
過共晶Al-Si合金は、鋳造の際に初晶Siが晶出する。当該初晶Siは硬度や耐摩耗性等の機械的性質の向上に寄与するが、粗大化すると応力印加時に破壊の起点となり引張強度や伸びの低下の原因となる。また、この傾向はAl合金におけるSi含有量の増加に伴い顕著となる。
これに対し、Pを積極的に活用して初晶Siを微細化する検討が進められてきた。Al-Si合金中にPが存在すると、初晶Siの形成核となるAl-P化合物が形成される。Pを添加することにより、当該形成核が多数形成され、微細な初晶Siが同時に多数形成される結果、初晶Siの粗大化が抑制される。
例えば、特許文献1(特開平8-170136号公報)では、初晶Siを任意の大きさに制御することを目的とし、重量%で、Si:12.0~25.0%、Cu:0.5~5.0%、Mg:0.1~2.0%、P:0.003~0.05%、Be:0.001~0.01%を含み、残部Alおよびその他の必要合金元素ならびに不純物からなることを特徴とする過共晶Al-Si合金、が提案されている。
上記特許文献1に記載の過共晶Al-Si合金においては、Pを0.003~0.05%、Beを0.001~0.01%含有しているために、これら両元素の添加量によって初晶Siが任意の大きさに制御されることとなり、過共晶Al-Si合金鋳物の耐摩耗性,機械的性質,機械加工性は要求特性に合わせてコントロールされることとなる、とされている。
特開平8-170136号公報
Pを添加すると初晶Siを微細化することができるが、共晶Siが粗大化するという問題がある。上記特許文献1に記載の過共晶Al-Si合金においても、共晶Siの形状及びサイズに関しては全く開示されていない。
ここで、過共晶Al-Si合金鋳物の機械的性質には共晶Siの状態も大きく影響し、共晶Siが粗大化すると、引張強度、伸び及び靭性が低下する原因となる。即ち、初晶Siだけでなく共晶Siを微細化する方法が切望されているが、過共晶Al-Si合金鋳物の初晶Siと共晶Siを共に微細化する適当な方法は存在しないのが実情である。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、過共晶Al-Si合金鋳物の初晶Siと共晶Siを共に微細化する簡便かつ効率的な方法、及び初晶Siと共晶Siが共に微細化された過共晶Al-Si合金鋳物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、過共晶Al-Si合金の組成及び溶湯処理方法等について鋭意研究を重ねた結果、過共晶Al-Si合金に適量のPを添加すると共に、過共晶Al-Si合金溶湯を一定温度以上に加熱すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
Si:12.0~18.0wt%、
P:5~50ppmを含有し、
初晶Siの平均粒径が30μm以下であり、
共晶Siの平均相間隔が20μm以下であること、
を特徴とする過共晶Al-Si合金鋳物、を提供する。
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、5ppm以上のPを含むことで、溶融凝固時に初晶Siの形成核となるAl-P化合物が多数形成され、微細な初晶Siが同時に多数形成されることで初晶Siの粗大化が抑制される。一方で、Pの含有量を50ppm以下とすることで、Al-P化合物の数が多くなり過ぎず、形成されたAl-P化合物は初晶Siに消費されるため、共晶凝固時には殆ど存在しないことになる。その結果、共晶凝固時に残液が過冷され、凝固時間が短くなることで共晶の粗大化が抑制される。これらの機構を用いて初晶Siと共晶Siを微細化するためには、Pの含有量を20~40ppmとすることが好ましい。
また、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、初晶Siの平均粒径が30μm以下と微細な状態となっており、応力印加時に初晶Siが破壊の起点となることに起因する引張強度や伸びの低下が抑制されている。加えて、共晶Siの平均相間隔も20μm以下と微細になっており、応力印加時に共晶Siが破壊の起点となることに起因する引張強度や伸びの低下が抑制されている。
また、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の組成は、Si及びPの含有量以外は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の過共晶Al-Si合金に用いられている種々の元素を添加することができるが、P以外の組織改良元素を添加しないことが好ましい。
また、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、
Cu:0.1~6.0wt%、
Mg:0.3~1.0wt%、
Fe:0.3~1.5wt%、
のうちのいずれか一種以上を含むこと、が好ましい。
0.1~6.0wt%のCuを含むことで、固溶体強化及び時効硬化によって過共晶Al-Si合金鋳物を高強度化することができる。また、MgはSiと共存することで時効硬化に寄与し、0.3~1.0wt%のMgを含むことで過共晶Al-Si合金鋳物を高強度化することができる。Feは脆い化合物を形成し、基本的にアルミニウム合金の靭性を低下させるが、0.3~1.5wt%のFeであれば、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法を用いることで、Al-Si系合金鋳物の機械的性質に及ぼすFeの悪影響を確実に無害化することができる。その結果、Feを不純物として含むAl-Si系合金再生地金を原料として活用することができる。
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物は初晶Si及び共晶Siが共に微細化されているため、優れた機械的性質を有している。引張強度は200MPa以上であることが好ましく、205MPa以上であることがより好ましい。また、破断伸びは2.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましい。
更に、本発明は、Si:12.0~18.0wt%、P:5~50ppmを含有する過共晶Al-Si合金の溶湯を、前記過共晶Al-Si合金の組成におけるAl-P化合物の晶出温度以上となる処理温度に加熱(溶湯過熱処理)した後、鋳造すること、を特徴とする過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法、も提供する。処理温度は1000℃以上とすることが好ましい。
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法で用いる過共晶Al-Si合金には5~50ppmのPが含まれており、当該PはAl-P化合物として存在しているが、過共晶Al-Si合金の溶湯をAl-P化合物の晶出温度以上に加熱(溶湯過熱処理)することで、Al-P化合物が溶解する。その後、Al-P化合物が再凝固する際には溶解前と比較して小さくなり、微細なAl-P化合物が大量に分散することになる。
ここで、微細なAl-P化合物は初晶Siの形成核となり、微細な初晶Siが同時に多数形成されることで初晶Siの粗大化が抑制される。一方で、Pの含有量は50ppm以下となっており、Al-P化合物の数が多くなり過ぎず、形成されたAl-P化合物は初晶Siに消費されるため、共晶凝固時には殆ど存在しない。その結果、共晶凝固時に残液が過冷され、凝固時間が短くなることで共晶Siの粗大化が抑制される。即ち、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法においては、過共晶Al-Si合金に5~50ppmのPが含まれていることと、過共晶Al-Si合金の溶湯をAl-P化合物の晶出温度以上に加熱することが極めて重要である。また、Pの含有量は20~40ppmとすることが好ましい。
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法においては、過共晶Al-Si合金の溶湯を溶湯過熱処理温度に保持する時間を30分以下とすること、が好ましい。当該保持時間が30分以下であれば、Al-P化合物の微細化効果が失われることがないことに加え、エネルギー消費量の増加や溶解炉等の設備の劣化を抑制することができる。
更に、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法においては、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法で得られた過共晶Al-Si合金鋳物を溶解した後、鋳造すること、が好ましい。本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法によって初晶Siと共晶Siが一度微細化された過共晶Al-Si合金鋳物であれば、一般的な条件で加熱保持や鋳造を行っても初晶Siと共晶Siが微細な状態を維持することができる。
本発明によれば、過共晶Al-Si合金鋳物の初晶Siと共晶Siを共に微細化する簡便かつ効率的な方法、及び初晶Siと共晶Siが共に微細化された過共晶Al-Si合金鋳物を提供することができる。
実施アルミニウム合金鋳物1~3及び比較アルミニウム合金鋳物1~3のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物3~5及び比較アルミニウム合金鋳物3~7のミクロ組織写真である。 溶湯過熱処理前後のアルミニウム合金に含まれるP量を示すグラフである。 実施アルミニウム合金鋳物3~5及び比較アルミニウム合金鋳物3~7のP量と初晶Siの平均粒径の関係を示すグラフである。 実施アルミニウム合金鋳物3~5及び比較アルミニウム合金鋳物3~7のP量と共晶Siの平均相間隔の関係を示すグラフである。 実施アルミニウム合金鋳物5及び比較アルミニウム合金鋳物5のSi及びPのマッピング結果である。
以下、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1.過共晶Al-Si合金鋳物
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物に用いる過共晶Al-Si合金は、適量のPを含有していることを特徴としている。以下、各成分について詳細に説明する。
(1)添加元素
(1-1)必須の添加元素
Si:12.0~18.0wt%
Siが12.0wt%以上の過共晶Al-Si組成とすることで、耐摩耗性等の向上に寄与する初晶Siを晶出させることができる。一方で、Siの含有量を18.0wt%以下とすることで、過剰のSiによる溶解性、鋳造性及び機械加工性等の悪化を抑制することができる。
P:5~50ppm
5ppm以上のPを含むことで、溶融凝固時に初晶Siの形成核となるAl-P化合物が多数形成され、微細な初晶Siが同時に多数形成されることで初晶Siの粗大化が抑制される。一方で、Pの含有量を50ppm以下とすることで、Al-P化合物の数が多くなり過ぎず、形成されたAl-P化合物は初晶Siに消費されるため、共晶凝固時には殆ど存在しないことになる。その結果、共晶凝固時に残液が過冷され、凝固時間が短くなることで共晶の粗大化が抑制される。これらの機構を用いて初晶Siと共晶Siを微細化するためには、Pの含有量を20~40ppmとすることが好ましい。
(1-2)任意の添加元素
Cu:0.1~6.0wt%
Cuを添加することで、固溶体強化及び時効硬化により過共晶Al-Si合金鋳物の強度を向上させることができる。Cuの添加量を0.1wt%以上とすることで、これらの効果を明瞭に発現させることができる。また、Cuの添加量を6.0wt%以下とすることで、靭性の低下及び引け巣の発生を抑制することができる。
Mg:0.3~1.0wt%
Mgを必須の添加元素であるSiと共存させることで、時効硬化により過共晶Al-Si合金鋳物の強度を向上させることができる。Mgの添加量を0.3wt%以上とすることで、当該効果を十分に発現させることができ、1.0wt%以下とすることで、靭性の低下を抑制することができる。
Fe:0.3~1.5wt%
Feは脆い化合物を形成し、基本的にアルミニウム合金の靭性を低下させるため、積極的に添加する元素ではないが、0.3~1.5wt%のFeを許容することで、Feを不純物として含むAl-Si系合金再生地金を活用することができる。一方で、Feの含有量を1.5wt%以下とすることで、過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法によって、Al-Si系合金鋳物の機械的性質に及ぼすFeの悪影響を確実に無害化することができる。
なお、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物に添加することができる元素はこれらに限定されず、アルミニウム合金への添加元素として従来公知の元素を添加することができる。例えば、JIS-ADC14への添加が許容されているZn、Mn、Ni、Sn、Pb及びTiを添加することができる。
(1-3)不可避不純物
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、不可避的不純物として、V,Co,Zr,Bを含んでいてもよい。不可避的不純物の含有量は、0.05wt%以下にすることが好ましい。
(2)微細組織
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物は、初晶Siの平均粒径が30μm以下であり、共晶Siの平均相間隔が20μm以下となっている。以下、金属組織について詳細に説明する。
(2-1)初晶Si
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、5ppm以上のPを含むことで、溶融凝固時に初晶Siの形成核となるAl-P化合物が多数形成され、微細な初晶Siが同時に多数形成されることで初晶Siの粗大化が抑制される。その結果、初晶Siの平均粒径は30μm以下となっている。より好ましい初晶Siの平均粒径は25μm以下である。
ここで、初晶Siの平均粒径は円相当径として求めればよい。円相当径とは、金属組織を顕微鏡観察した際に求まる初晶Siの占める面積を円相当の面積に換算したときの直径である。具体的には、顕微鏡写真を画像処理等して容易に求めることができる。初晶Siの領域とその他の領域とは顕微鏡写真上で明瞭にコントラストが異なるため、二値化処理したのち、各種画像計測処理を行う。また、平均粒径としては、例えば、一定視野内(測定面積:1.3mm2、測定視野数:3)の円相当径の平均値を用いることができる。
(2-2)共晶Si
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、Pの含有量を50ppm以下とすることで、Al-P化合物の数が多くなり過ぎず、形成されたAl-P化合物は初晶Siに消費されるため、共晶凝固時には殆ど存在しないことになる。その結果、共晶凝固時に残液が過冷され、凝固時間が短くなることで共晶の粗大化が抑制され、共晶Siの平均相間隔が20μm以下となっている。より好ましい共晶Siの平均相間隔は18μm以下である。
共晶Siの層間隔の測定方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法によって測定することができるが、例えば、「軽金属学会鋳造・凝固部会:軽金属,38(1988)54-60」に記載されているデンドライトアームスペーシング測定手順の交点法を用いて測定することができる。
また、共晶Siの観察方法も、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、光学顕微鏡観察やSEM観察を用いればよい。共晶Siの領域とその他の領域とは顕微鏡写真やSEM観察像で明瞭にコントラストが異なるため、明瞭に識別することができる。
(3)機械的性質
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物においては、初晶Siの平均粒径が30μm以下と微細な状態となっており、応力印加時に初晶Siが破壊の起点となることに起因する引張強度や伸びの低下が抑制されている。加えて、共晶Siの平均相間隔も20μm以下と微細になっており、応力印加時に共晶Siが破壊の起点となることに起因する引張強度や伸びの低下が抑制されている。
より具体的には、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の引張強度は200MPa以上であることが好ましく、205MPa以上であることがより好ましい。また、破断伸びは2.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましい。
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の形状及び大きさは本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、アルミニウム合金鋳物として従来公知の種々の形状及び大きさとすることができる。
2.過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法は、過共晶Al-Si合金の溶湯をAl-P化合物の晶出温度以上に加熱(溶湯過熱処理)した後、鋳造すること、を特徴としている。
原料となる本発明の過共晶Al-Si合金鋳物はPを含有するため、Al-P化合物が形成されるが、Al-P化合物の晶出温度以上に加熱した後の再凝固過程において溶解したAl-P化合物を溶解前と比較して小さくすることができる。溶湯過熱処理温度は1000℃以上とすることが好ましい。
ここで、微細なAl-P化合物は初晶Siの形成核となり、微細な初晶Siが同時に多数形成されることで初晶Siの粗大化が抑制される。一方で、Pの含有量は50ppm以下となっており、Al-P化合物の数が多くなり過ぎず、形成されたAl-P化合物は初晶Siに消費されるため、共晶凝固時には殆ど存在しない。その結果、共晶凝固時に残液が過冷され、凝固時間が短くなることで共晶Siの粗大化が抑制される。即ち、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法においては、過共晶Al-Si合金に5~50ppmのPが含まれていることと、過共晶Al-Si合金の溶湯をAl-P化合物の晶出温度以上に加熱することが極めて重要である。
本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法においては、過共晶Al-Si合金の溶湯をAl-P化合物の晶出温度以上に保持する時間を30分以下とすること、が好ましい。当該保持時間が30分以下であれば、Al-P化合物の微細化効果が失われることがないことに加え、エネルギー消費量の増加や溶解炉等の設備の劣化を抑制することができる。
更に、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法においては、本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法で得られた過共晶Al-Si合金鋳物を溶解した後、鋳造すること、が好ましい。本発明の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法によって初晶Siと共晶Siが一度微細化された過共晶Al-Si合金鋳物であれば、一般的な条件で加熱保持や鋳造を行っても初晶Siと共晶Siが微細な状態を維持することができる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
≪実施例1≫
表1の実施例1として示す組成となるように配合した原料を黒鉛坩堝に挿入し、750℃で大気溶解した後、750℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した。次に、大気中で残湯を997℃まで昇温して10分間保持(溶湯過熱処理)した後に、重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造した。なお、鋳型温度は150℃とした。表1の組成はwt%で示しており、Al-P化合物の晶出温度も併記している。
Figure 2022071965000001
次に、得られた金型鋳物を再溶解し、750℃の溶湯を150℃の舟型に鋳込み、得られたアルミニウム合金鋳物に対してT5熱処理を施して、実施アルミニウム合金鋳物1を得た。
≪実施例2≫
表1の実施例2として示す組成となるように配合した原料を用い、溶湯過熱処理温度を1050℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物2を得た。
≪実施例3≫
表1の実施例3として示す組成となるように配合した原料を用い、溶湯過熱処理温度を1050℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物3を得た。
≪実施例4≫
表1の実施例4として示す組成となるように配合した原料を用い、溶湯過熱処理温度を1200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物4を得た。
≪実施例5≫
表1の実施例5として示す組成となるように配合した原料を用い、溶湯過熱処理温度を1200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物5を得た。
≪比較例1≫
溶湯過熱処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物1を得た。
≪比較例2≫
溶湯過熱処理を施さなかったこと以外は実施例2と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物2を得た。
≪比較例3≫
溶湯過熱処理を施さなかったこと以外は実施例3と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物3を得た。
≪比較例4≫
溶湯過熱処理を施さなかったこと以外は実施例4と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物4を得た。
≪比較例5≫
溶湯過熱処理を施さなかったこと以外は実施例5と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物5を得た。
≪比較例6≫
表1の比較例6として示す組成となるように配合した原料を用い、溶湯過熱処理温度を1200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物6を得た。
≪比較例7≫
溶湯過熱処理を施さなかったこと以外は比較例6と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物7を得た。
[評価試験]
(1)微細組織
得られた実施アルミニウム合金鋳物及び比較アルミニウム合金鋳物の底面から13mmの位置を中心として、1cm角の立方体を切り出し、断面にバフ研磨を施して組織観察用試料とした。実施アルミニウム合金鋳物1~3及び比較アルミニウム合金鋳物1~3に関して、光学顕微鏡で観察されたミクロ組織を図1に示す。また、これらの観察結果から測定された初晶Siの平均粒径及び共晶Siの平均相間隔を表1に示す。
溶湯過熱処理を施さない場合(比較アルミニウム合金鋳物1~3)と比較して、溶湯過熱処理を施すことによって共晶Siの平均相間隔が明瞭に小さくなっていることが分かる(実施アルミニウム合金鋳物1~3)。一方で、溶湯過熱処理を施した場合であっても、Si含有量の増加に伴って初晶Siが大きくなる傾向が認められる。
実施アルミニウム合金鋳物3~5及び比較アルミニウム合金鋳物3~7に関して、光学顕微鏡で観察されたミクロ組織を図2に示す。また、これらの観察結果から測定された初晶Siの平均粒径及び共晶Siの平均相間隔を表1に示す。
実施アルミニウム合金鋳物3~5のミクロ組織から、Si含有量が多い場合であっても、Pの添加量を増加させて溶湯過熱処理を施すことで、初晶Siの粗大化を抑制できることが分かる。一方で、Pの添加量が多くなり過ぎると、共晶Siが粗大化している(比較アルミニウム合金鋳物6)。また、溶湯過熱処理を施さない場合は、何れの場合も共晶Siが粗大化している(比較アルミニウム合金鋳物3~5,7)。
溶湯過熱処理によるP含有量の変化を検討するために、吸光光度法によって、溶湯過熱処理前後のアルミニウム合金に含まれるP量を測定した。得られた結果を図3に示す。溶湯過熱処理によってAl-P化合物が溶解し、AlとPが分離した後にPが気体として溶湯から除去されるため、溶湯過熱処理前のP量が多い場合は溶湯過熱処理によるP量の減少量が大きくなっている。
実施アルミニウム合金鋳物3~5及び比較アルミニウム合金鋳物3~7に関して、P量と初晶Siの平均粒径の関係を図4に示す。なお、P量は実施アルミニウム合金鋳物及び比較アルミニウム合金鋳物に実際に含まれている値である。溶湯過熱処理の有無に依らず、初晶SiのサイズはP量の増加に伴って低下している。また、適当な量のPを含む過共晶アルミニウム合金に対して溶湯過熱処理を施すことで、溶湯過熱処理を伴わない場合よりも微細な初晶Siが得られている。
実施アルミニウム合金鋳物3~5及び比較アルミニウム合金鋳物3~7に関して、P量と共晶Siの平均相間隔の関係を図5に示す。なお、P量は実施アルミニウム合金鋳物及び比較アルミニウム合金鋳物に実際に含まれている値である。適当な量のPを含む過共晶アルミニウム合金に対して溶湯過熱処理を施すことで、溶湯過熱処理を伴わない場合よりも大幅に微細化された共晶Siが得られている。ここで、共晶Siの微細化に効果的なPの量には明確な数値範囲が認められ、Pの含有量が多過ぎる場合は、共晶Siのサイズが溶湯過熱処理を施さない場合と同程度となっている。
(2)EPMA分析
実施アルミニウム合金鋳物5及び比較アルミニウム合金鋳物5に関して、EPMA(株式会社島津製作所EPMA-1610,加速電圧15kV,照射電流100mA,ビーム径φ1μm)を用いた元素マッピングによって介在物を分析した。なお、各アルミニウム合金鋳物から断面試料を切り出し、鏡面研磨を施して分析用試料とした。
得られたSi及びPのマッピングを図6に示す。Pの分布に着目すると、溶湯過熱処理を施していない比較アルミニウム合金鋳物5においては集中して存在する領域が認められ、比較的粗大なAl-P化合物が形成されている。これに対し、溶湯過熱処理を施した実施アルミニウム合金鋳物5においてはPが集積している領域は認められず、EPMAの分解能で検出できるサイズ(約2μm)よりも大きなAl-P化合物は形成していないことが分かる。当該結果は、溶湯過熱処理を施した実施アルミニウム合金鋳物5では、直径が2μm未満の微細なAl-P化合物が均一かつ大量に分散していることを示唆している。
(3)引張試験
各アルミニウム合金鋳物について、引張特性を評価した。JIS Z 2241の14B引張試験片を切り出し、引張速度5mm/minの条件で引張試験を行った。得られた結果を表2に示す。
Figure 2022071965000002
実施例として得られたアルミニウム合金鋳物は、何れの場合も200MPa以上の引張強度と2.0%以上の破断伸びを有している。特に、実施アルミニウム合金鋳物1及び実施アルミニウム合金鋳物2については、205MPa以上の引張強度と3.0%以上の破断伸びが得られている。これらに対し、200MPa以上の引張強度と2.0%以上の破断伸びを共に有する比較アルミニウム合金鋳物は存在しない。

Claims (8)

  1. Si:12.0~18.0wt%、
    P:5~50ppmを含有し、
    初晶Siの平均粒径が30μm以下であり、
    共晶Siの平均相間隔が20μm以下であること、
    を特徴とする過共晶Al-Si合金鋳物。
  2. 前記Pの含有量が20~40ppmであること、
    を特徴とする請求項1に記載の過共晶Al-Si合金鋳物。
  3. Cu:0.1~6.0wt%、
    Mg:0.3~1.0wt%、
    Fe:0.3~1.5wt%、
    のうちのいずれか一種以上を含むこと、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の過共晶Al-Si合金鋳物。
  4. Si:12.0~18.0wt%、P:5~50ppmを含有する過共晶Al-Si合金の溶湯を、前記過共晶Al-Si合金の組成におけるAl-P化合物の晶出温度以上となる処理温度に加熱した後、鋳造すること、
    を特徴とする過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法。
  5. 前記Pの含有量が20~40ppmであること、
    を特徴とする請求項4に記載の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法。
  6. 前記処理温度を1000℃以上とすること、
    を特徴とする請求項4又は5に記載の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法。
  7. 前記処理温度における保持時間を30分以下とすること、
    を特徴とする請求項4~6のうちのいずれかに記載の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法。
  8. 請求項4~7のうちのいずれかに記載の過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法によって得られた過共晶Al-Si合金鋳物を溶解した後、鋳造すること、
    を特徴とする過共晶Al-Si合金鋳物の製造方法。
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