JP2022071788A - ヘッドレスト - Google Patents

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慶倫 谷口
Yoshinori Taniguchi
徳三 小林
Tokuzo Kobayashi
健吾 田村
Kengo Tamura
紀明 佐竹
Noriaki Satake
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Bizen Hatsujoh Co Ltd
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Abstract

【課題】異常負荷時に部に加わる衝撃を頭受け部で吸収することができる前後調節式のヘッドレストを提供する。【解決手段】ヘッドレストを、ステー1に固定され、第一フェースギア11、前側ストッパー用受け部α1及び後側ストッパー用受け部α2を有するステー側部材10と、頭受け部2に固定され、第二フェースギア21、前側ストッパー用当接部β1及び後側ストッパー用当接部β2を有する頭受け側部材20と、ステー側部材10に対して頭受け側部材20を前後回動可能な状態で軸支する支軸30と、第二フェースギア21が第一フェースギア11に噛み合う向きに頭受け側部材20を付勢する噛み合い用付勢部材50とを備えたものとし、頭受け部2に対して後ろ向きの異常負荷が加わった際には、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21がスリップすることで、頭受け部2の衝撃を吸収できるようにする。【選択図】 図1

Description

本発明は、頭受け部の前後位置を調節可能な前後調節式のヘッドレストに関する。
自動車等のシートバック上部に備えられるヘッドレストとしては、使用者の頭部を支える頭受け部の前後位置を調節できるようにした前後調節式のもの(例えば、特許文献1を参照。)が知られている。前後調節式のヘッドレストでは、頭受け部を手で掴んだり押したりすることによって、その頭受け部を前方に移動させていき、任意の使用位置で手を離すことで、頭受け部を特定の使用位置で位置決めできるようになっていることが多い。
この種のヘッドレストにおいては、ヘッドレストステーに固定したラチェット歯に対して、頭受け部側に設けた爪が係合することによって、各使用位置における頭受け部の後方回動を規制するものが知られている。上記の特許文献1の図3や図6に示されたヘッドレストにおいても、第一部材10の係合歯11(ラチェット歯)に対して、ロックプレート60(爪)が係合することで、頭受け部の後方移動が規制されるようになっている。
特開2016-215669号公報
ところが、上記のように、頭受け部の前後位置の調節機構としてラチェット機構を採用したヘッドレストでは、追突されたときの衝撃で後方に移動しようとする頭部や、前方衝突したときの揺れ戻しにより後方に移動しようとする頭部を、頭受け部で後側からしっかりと支持できるものの、このような異常負荷時でも、頭受け部が後方に移動しない構造となっているため、その際の衝撃を吸収しにくいという課題があった。
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、通常時には、使用者の頭部を頭受け部で後側からしっかりと支持しながらも、追突されたときや前方衝突したときの異常負荷時には、使用者の頭部に加わる衝撃を頭受け部で吸収することができる前後調節式のヘッドレストを提供するものである。
上記課題は、
シートバックの上部に立設されるステーと、ステーの上部に取り付けられた頭受け部とを備えたヘッドレストであって、
ステーに固定され、第一フェースギア、前側ストッパー用受け部及び後側ストッパー用受け部を有するステー側部材と、
頭受け部に固定され、第二フェースギア、前側ストッパー用当接部及び後側ストッパー用当接部を有する頭受け側部材と、
ステー側部材に対して頭受け側部材を前後回動可能な状態で軸支する支軸と、
第二フェースギアが第一フェースギアに噛み合う向きに頭受け側部材を付勢する噛み合い用付勢部材と
を備え、
後側ストッパー用当接部が後側ストッパー用受け部に当接する後方限界位置から、前側ストッパー用当接部が前側ストッパー用受け部に当接する前方限界位置に至るまでの範囲で、頭受け部を前方回動させながらその前後位置を調節できるようにするとともに、
頭受け部が後方回動する際の各フェースギア間のスリップ抵抗(以下、「後方回動側スリップ抵抗」と呼ぶことがある。)を、頭受け部が前方回動する際の各フェースギア間のスリップ抵抗(以下、「前方回動側スリップ抵抗」と呼ぶことがある。)よりも大きく設定することによって、平常時には、頭受け部を後方から支持しながらも、後ろ向きの異常負荷が加わった際には、第一フェ-スギアに対して第二フェ-スギアがスリップすることで、頭受け部の衝撃を後方側回動側スリップ抵抗で吸収しながら頭受け部が設定した位置から後方限界位置まで後方回動するようにした
ことを特徴とするヘッドレスト
を提供することによって解決される。
本発明のヘッドレストでは、前方回動側スリップ抵抗は、頭受け部を手等で掴んで前方回動できる程度(例えば操作力5~10kgf程度)に設定される。一方、後方回動側スリップ抵抗は、平常時においては手が触れる程度では頭受け部が後方移動せず、異常負荷(追突されたときの衝撃や前方衝突したときの衝撃)で後方移動するように(50kgfを超える力で初めて後方移動する程度)に設定される。これにより、前後調節式のヘッドレストにおいて、通常時には、使用者の頭部を設定した位置にある頭受け部でしっかりと支持しながらも、異常負荷時には、使用者の頭部に加わる衝撃を頭受け部で吸収することが可能になる。
すなわち、追突されたときには、慣性力によって使用者の頭部がその後側の設定位置にある頭受け部に押し付けられるところ、このときに頭部から頭受け部に加えられる後ろ向きの負荷によって、第一フェースギアに対して第二フェースギアが後方回動側にスリップし、そのスリップ抵抗(後方回動側スリップ抵抗)で衝撃を吸収しながら、頭受け部が後方限界位置に達するようにすることができる。後方限界位置は、最後方使用位置(使用範囲における最後方位置)よりもさらに30mm程度後方に設けてスリップ代とし、その規制強度(後側ストッパー用当接部と後側ストッパー用受け部との当接強度)は、通常、100kgfを超える値に設定される。
一方、前方衝突したときには、慣性力によって使用者の頭部が前方に移動してから後方に移動する(揺れ戻る)ようになるところ、頭部が前方に移動する際には、第一フェースギアに対して第二フェースギアが前方回動側にスリップし、頭受け部が設定位置から前方限界位置に達する(前方限界位置における前方移動規制強度は、通常、後方移動規制強度と同じ100kgfを超える値に設定される。)ようになる。続いて、後方に揺れ戻る頭部が前方限界位置にある頭受け部に接触し、その後は、追突のときと同様、頭部から頭受け部に加えられる後ろ向きの負荷によって、第一フェースギアに対して第二フェースギアが後方回動側にスリップし、そのスリップ抵抗(後方回動側スリップ抵抗)で衝撃を吸収しながら、頭受け部が後方限界位置に達するようになる。
以上の機構を採用することで、ヘッドレストを衝撃吸収性に優れ、安全性の高いものとすることができる。
本発明のヘッドレストにおいては、各フェースギア間のスリップ抵抗を選択するためのスリップ抵抗切り替え手段を設けることが好ましい。これにより、頭受け部の前後位置を調節する際には、各フェースギア間のスリップ抵抗を小さくして、頭受け部を前方移動しやすくしながらも、頭受け部の前後位置を調節し終えた後(ヘッドレストを使用する際)には、選択した最適なスリップ抵抗となり、頭受け部の後方移動を制御できる。すなわち、ヘッドレストを、操作性と安全性とにより優れたものとすることができる。スリップ抵抗切り替え手段の具体的な機構は、後述するが、噛み合い用付勢部材を複数本のバネ(弾性部材)で構成し、各フェースギアに作用するバネ(弾性部材)の本数が切り替わるようにする機構等が例示される。
本発明のヘッドレストにおいては、
支軸を頭受け側部材に固定し、第二フェースギアを支軸に対し軸方向(左右方向)に摺動可能な状態でキー結合するとともに、
噛み合い用付勢部材の付勢力に抗って第二フェースギアを第一フェースギアから離反する向きに強制的に移動させることにより、第一フェースギアと第二フェースギアとの噛み合いを解除する噛み合い解除用操作手段(押しボタンやレバー等)を設ける
ことも好ましい。
これにより、押しボタンやレバー等を操作することで、各フェースギアの噛み合いを外し、頭受け部を前方及び後方の双方にフリーに移動(回動)させることができるようになる。したがって、頭受け部の前後位置をさらに調節しやすくなる。加えて、ステーに対して頭受け部全体を左右移動させる機構を採用する必要がなくなり、ヘッドレストの挙動を安定させやすくなる。すなわち、ステー側部材に対して第一フェースギアを一体的に固定し、頭受け側部材に対して第二フェースギアを一体的に固定すると、ステー側部材(ステー)に対して頭受け側部材(頭受け部)を、各フェースギアの噛み合いが外れる範囲(通常、3~5mm程度の幅)で左右方向に移動可能とする機構を採用する必要がある。上記のように、第二フェースギアを頭受け側部材における他の部分に対して左右方向にスライドする機構を採用することで、頭受け側部材の全体を左右方向に移動させる必要がなくなる。
以上で述べた本発明のヘッドレストに係る構成は、頭受け部が1支点2本リンクによって前後方向に上振り又は下振りする構造のヘッドレストや、頭受け部が4支点4本リンクによって前後方向に平行移動する構造のヘッドレスト等、各種のヘッドレストで採用することができる。
以上のように、本発明によって、通常時には、使用者の頭部を頭受け部で後側からしっかりと支持しながらも、追突されたときや前方衝突したときの異常負荷時には、使用者の頭部に加わる衝撃を頭受け部で吸収することができる前後調節式のヘッドレストを提供することが可能になる。
第一実施形態のヘッドレストを示した断面図である。 第一実施形態のヘッドレストを構成する主要部品を分解した状態を示した斜視図である。 第一フェースギアに対する第二フェースギアのスリップ動作を説明する図である。 第一実施形態のヘッドレストにおけるスリップ抵抗切り替え手段を説明する図である。 第二実施形態のヘッドレストを示した断面図である。 第三実施形態のヘッドレストを構成する主要部品を分解した状態と組み合わせた状態とを示した斜視図である。 第三実施形態のヘッドレストにおける噛み合い解除用操作手段の動作を説明する図である。 第四実施形態のヘッドレストを示した断面図である。
本発明のヘッドレストの好適な実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。以下においては、第一実施形態から第四実施形態までの4つの実施形態を例に挙げて、本発明のヘッドレストを説明する。しかし、本発明のヘッドレストの技術的範囲は、これら4つの実施形態に限定されない。本発明のヘッドレストは、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
1.第一実施形態のヘッドレスト
まず、第一実施形態のヘッドレストについて説明する。図1は、第一実施形態のヘッドレストを示した断面図である。図1(a)は、ヘッドレストを前後方向に垂直な平面で切断した状態を、図1(b)は、ヘッドレストを左右方向に垂直な平面で切断した情痴を示している。図2は、第一実施形態のヘッドレストを構成する主要部品を分解した状態を示した斜視図である。
第一実施形態のヘッドレストは、図1に示すように、ステー1と、ステー1の上部に取り付けられた頭受け部2とを備えている。ステー1は、左右一対の縦支柱部と、縦支柱部の上端同士を連結する横支柱部とを有する逆U字状の形態を為している。ステー1の縦支柱部の下端側は、図示省略のシートバック(座席の背もたれ部分)の上部に埋め込まれたステーホルダに挿入される。ステー1の縦支柱部は、通常、上下位置を調節可能な状態でステーホルダに保持される。これにより、頭受け部2の高さを調節することができる。
ステー1の上部には、ステー側部材10が固定されている。ステー側部材10は、ステー1に対して相対的に動かない状態とされる。このステー側部材10は、図2に示すように、略水平な底板部と、底板部の後端縁から上向きに起立する後板部と、左右一対の側板部とを有している。ステー側部材10の底板部における上面αは、前側ストッパー用受け部として機能し、ステー側部材10の後板部における上端面αは、後側ストッパー用受け部として機能するようになっている。前側ストッパー用受け部α及び後側ストッパー用受け部αについては、後で説明する。
ステー側部材10における左右一対の側板部のうち、一方の側板部には、第一フェースギア11が固定されている。第一フェースギア11は、円盤状又は円盤状の一部を為し、その片面の周縁部に沿って歯列が円弧状に形成されたものとなっている。ステー側部材10における左右一対の側面部及び第一フェースギア11の中心には、貫通孔が形成されている。この貫通孔には、支軸30が挿通される。
一方、頭受け部2は、頭受け側部材20に対して固定されている。頭受け側部材20は、支軸30によって、ステー側部材10に対して前後回動可能な状態で軸支される。このため、頭受け部2は、頭受け側部材20と一体となって前後回動するようになっている。この頭受け側部材20は、図2に示すように、略水平な天板部と、天板部の上端縁から下向きに起立する前板部と、左右一対の側面部とを有している。頭受け側部材20の天板部における下面βは、後側ストッパー用当接部として機能し、頭受け側部材20の前板部における下端面βは、前側ストッパー用当接部として機能するようになっている。後側ストッパー用当接部β及び前側ストッパー用当接部βについては、後で説明する。
頭受け側部材20における天板部には、逆U字状のフレーム22が固定されている。頭受け側部材20における左右一対の側板部のうち、一方の側板部には、第二フェースギア21が固定される。第二フェースギア21は、第一フェースギア11と同様の形態を有している。第二フェースギア21は、第一フェースギア11に対向配置され、それぞれの歯列が互いに噛み合うように同軸(支軸30)上に配置される。頭受け側部材20における左右一対の側面部及び第二フェースギア21の中心にも、支軸30を挿通するための貫通孔が形成されている。頭受け側部材20におけるフレーム22を除く部分の外面は、前側カバー41及び後側カバー42で構成されたケース40によって覆われた状態となっている。
後述するスリップ抵抗の大きさは、上記の第一フェースギア11や第二フェースギア21の枚数(歯数)や、歯型(歯の角度や高さ)や、歯のある位置の直径(ピッチ円の直径)や、後述する噛み合い用付勢部材50(図2におけるコイルバネ51,52)の付勢力等によって決まる。
既に述べたように、頭受け側部材20は、ステー側部材10に対して前後回動可能となっているところ、ステー側部材10の第一フェースギア11と頭受け側部材20の第二フェースギア21とが噛み合った状態のままでは、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21が回動することができず、頭受け側部材20は、ステー側部材10に対して前後回動することができない。ステー側部材10に対して頭受け側部材20が前後回動するためには、図3に示すように、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21がスリップ(軸方向(左右方向)に移動し回転方向に回転)する必要がある。図3は、第一フェースギア11に対する第二フェースギア21のスリップ動作(軸方向(左右方向)に移動し回転方向に回転する動作)を説明する図である。
図3(a)に示すように、第一フェースギア11及び第二フェースギア21の歯列を構成するそれぞれ歯は、前後一対の歯面のうち、前方回動側の歯面(ステー側部材10に対して頭受け側部材20が前方回動しようとしたときに互いに押し当たる側の歯面)の傾斜角度θを緩やかに設定している。第一実施形態のヘッドレストにおいては、前方回動側の歯面の傾斜角度θを30°に設定している。このため、5~10kgf程度の力が頭受け部2に前向きに加わると、図3(b),(c)に示すように、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21がスリップ(軸方向(左右方向)に移動し回転方向に回転)することで、頭受け側部材20の前方回動が許容されるようになっている。
したがって、頭受け部2は、手の力で前方回動(前方移動)させることができるようになっており、頭受け部2を手で掴んで前方回動(前方移動)させながら、頭受け部2の前後位置を調節することが可能となっている。頭受け部2は、図1(b)に示す前側ストッパー用当接部βが前側ストッパー用受け部αに当接する前方限界位置に至るまでの範囲で前方回動(前方移動)させることができる。前方限界位置における前方移動規制強度(前側ストッパー用当接部βと前側ストッパー用受け部αとの当接強度)は、通常、100kgfを超える値に設定される。
これに対し、第一フェースギア11及び第二フェースギア21の歯列を構成するそれぞれ歯における前後一対の歯面のうち、後方回動側の歯面(ステー側部材10に対して頭受け側部材20が後方回動しようとしたときに互いに押し当たる側の歯面)の傾斜角度θは、上記の傾斜角度θよりも大きく設定している。第一実施形態のヘッドレストにおいては、後方回動側の歯面の傾斜角度θを60°に設定している。このため、5~10kgfの力が頭受け部2に後ろ向きに加わった程度では、第一フェースギア11と第二フェースギア21の噛み合いが外れず、頭受け側部材20が後方回動しないようになっている。後方回動側では、頭受け部2に50kgfを超える力が加わって初めて、図3(d),(e)に示すように、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21がスリップして軸方向に移動を繰り返すことで、頭受け側部材20の後方回動が許容されるようになっている。
したがって、頭受け部2は、手の力では後方回動(後方移動)させることができず、50kgfを超えるような異常負荷(追突されたときの衝撃や前方衝突したときの衝撃)が加わって初めて、後方回動(後方移動)するようになっている。ただし、異常負荷が加わった場合でも、頭受け部2は、図1(b)に示す後側ストッパー用当接部βが後側ストッパー用受け部αに当接する後方限界位置に至るまでの範囲で後方回動(後方移動)する。後方限界位置における後方移動規制強度(後側ストッパー用当接部βと後側ストッパー用受け部αとの当接強度)は、通常、100kgfを超える値に設定される。
このように、頭受け部2が後方回動(前方移動)する際の各フェースギア11,21間のスリップ抵抗(後方回動側スリップ抵抗)を、頭受け部2が前方回動(前方移動)する際の各フェースギア11,21間のスリップ抵抗(前方回動側スリップ抵抗)よりも大きく設定することによって、平常時には、頭受け部2を後方から支持しながらも、後ろ向きの異常負荷が加わった際には、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21がスリップすることで、頭受け部2の衝撃を後方側回動側スリップ抵抗で吸収しながら、頭受け部2を後方限界位置まで後方回動(後方移動)させることができるようになっている。したがって、ヘッドレストを衝撃吸収性に優れ、安全性の高いものとすることが可能となっている。
ところで、第一実施形態のヘッドレストでは、図2に示すように、頭受け側部材20を構成する左右一対の側板部のうち、一方の側板部の外方には、噛み合い用付勢部材50と、スリップ抵抗切り替え手段60とを設けている。噛み合い用付勢部材50は、第二フェースギア21が第一フェースギア11に噛み合う向きに、頭受け側部材20を付勢するためのものである。第一実施形態のヘッドレストにおいては、噛み合い用付勢部材50を、2本のコイルバネ51,52によって構成している。コイルバネ51は、コイルバネ52の外径よりも大きな内径を有しており、コイルバネ51の内側にコイルバネ52を挿入している。コイルバネ51の全長は、コイルバネ52の全長よりも長く設定している。コイルバネ51,52は、頭受け側部材20とスリップ抵抗切り替え手段60との間に配している。このうち、コイルバネ51は、スリップ抵抗切り替え手段60に対して左右方向にスライド可能な状態で係合されるフランジ付きのバネホルダ61に外嵌している。
一方、スリップ抵抗切り替え手段60は、各フェースギア11,21間のスリップ抵抗を選択する(切り替える)ためのものである。スリップ抵抗切り替え手段60は、その構造を特に限定されない。第一実施形態のヘッドレストにおいては、スリップ抵抗切り替え手段60を、図2の形態を有するダイヤルレバーによって構成している。このスリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)は、その外側の面を手等で掴んで回転操作することができるものとなっている。スリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)の外周部には、螺旋溝(ネジ溝)が切られており、この螺旋溝(ネジ溝)が、ケース40の開口部に設けられた螺旋条(ネジ山)に螺合するようになっている。
図4は、第一実施形態のヘッドレストにおけるスリップ抵抗切り替え手段60を説明する図である。図4(a),(b)は、後方回動側スリップ抵抗を大きめ(50kgfを超える力を加えなければ後方回動しない程度)に設定した状態を示しており、このうち、図4(b)は、図4(a)のスリップ抵抗切り替え手段60を外方(図4(a)の紙面に向かって右側)から見た状態を示している。また、図4(c),(d)は、後方回動側スリップ抵抗を小さめ(20kgfの力で後方回動できる程度)に設定した状態を示しており、このうち、図4(d)は、図4(c)のスリップ抵抗切り替え手段60を外方(図4(c)の紙面に向かって右側)から見た状態を示している。
図4(b)に示すように、スリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)の外周部に設けられた押し込み側当接部γが、ケース40の開口部の内周部に設けられた押し込み側被当接部δに当たる位置まで回転操作したときには、図4(a)に示すように、スリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)が内側位置まで押し込まれるようになっている。このときには、上記のコイルバネ51,52の双方の付勢力が頭受け側部材20に作用することで、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21が強く押し付けられるようになっている。このため、後方回動側スリップ抵抗が大きくなっている。
これに対し、図4(d)に示すように、スリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)の外周部に設けられた引き戻し側当接部γが、ケース40の開口部の内周部に設けられた引き戻し側被当接部δに当たる位置まで回転操作したときには、図4(c)に示すように、スリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)が外側位置まで引き戻されるようになっている。このときには、上記のコイルバネ51,52のうち、コイルバネ51の付勢力は、頭受け側部材20に作用するものの、コイルバネ52の付勢力は、頭受け側部材20に作用しないようになっている。このため、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21が押し付けられる力は、図4(a)に示す状態よりも弱くなる。したがって、後方回動側スリップ抵抗は、図4(a)に示す状態よりも小さくなっている。
このように、スリップ抵抗切り替え手段60を設けることによって、頭受け部2の前後位置を調節する際には、各フェースギア11,21間のスリップ抵抗を小さくして、頭受け部を前方移動しやすくしながらも、頭受け部2の前後位置を調節し終えた後(ヘッドレストを使用する際)には、選択した最適なスリップ抵抗で頭受け部2の後方移動を制御できる。すなわち、ヘッドレストを、操作性と安全性とにより優れたものとすることができる。
2.第二実施形態のヘッドレスト
続いて、第二実施形態のヘッドレストについて説明する。第二実施形態のヘッドレストについては、主に、上述した第一実施形態のヘッドレストと異なる構成に絞って説明する。第二実施形態のヘッドレストで特に言及しない構成については、第一実施形態のヘッドレストにおけるものと同様の構成を採用することができる。図5は、第二実施形態のヘッドレストを前後方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
既に述べた第一実施形態のヘッドレスト(図1)では、噛み合い用付勢部材50を2本のコイルバネ51,52はいずれも、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21を同じ側から押し付ける押し付けバネとなっていた。これに対し、第二実施形態のヘッドレストでは、図5に示すように、噛み合い用付勢部材50を2本のコイルバネ51,52で構成している点では、第一実施形態のヘッドレストと同様であるものの、コイルバネ51は、押し付けバネではなく、引っ張りバネとなっている。この引っ張りバネ(コイルバネ51)が、第二フェースギア21を第一フェースギア11に噛み合う向きに略一定の付勢力で引っ張っているのに対し、押し付けバネ(コイルバネ52)は、スリップ抵抗切り替え手段60(ダイヤルレバー)を回転操作して内外方向に移動させることで、その付勢力が切り替わるようになっている。このように、引っ張りバネを用いる構造でも、各フェースギア11,21間のスリップ抵抗を選択する(切り替える)ことが可能である。
3.第三実施形態のヘッドレスト
続いて、第三実施形態のヘッドレストについて説明する。第三実施形態のヘッドレストについては、主に、上述した第一実施形態や第二実施形態のヘッドレストと異なる構成に絞って説明する。第三実施形態のヘッドレストで特に言及しない構成については、第一実施形態や第二実施形態のヘッドレストにおけるものと同様の構成を採用することができる。
図6は、第三実施形態のヘッドレストを構成する主要部品を分解した状態と組み合わせた状態とを示した斜視図である。図7は、第三実施形態のヘッドレストにおける噛み合い解除用操作手段70の動作を説明する図である。図7は、支軸30の中心線を含む平面で切断した断面図として描いており、図7(a)は、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21が噛み合っている状態を、図7(b)は、第一フェースギア11に対する第二フェースギア21の噛み合いが解除された状態を示している。
既に述べた第一実施形態のヘッドレスト(図1)や第二実施形態のヘッドレスト(図5)では、ステー側部材10に対して第一フェースギア11が一体的に固定され、頭受け側部材20に対して第二フェースギア21が一体的に固定されていた。このため、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21をスリップさせるためには、ステー側部材10に対して頭受け側部材20の全体を、各フェースギア11,21の噛み合いが外れる範囲(通常、2~3mm程度の幅)で左右方向(支軸30の方向)に移動可能とする機構を採用する必要があった。したがって、ヘッドレストの挙動が安定しにくいという課題があった。
これに対し、第三実施形態のヘッドレストでは、図6及び図7に示すように、第一フェースギア11は、ステー側部材10に対して一体的に固定されるものの、第二フェースギア21は、頭受け側部材20に対して一体的に固定せず、頭受け側部材20に対して左右方向(支軸30の方向)に移動できる構造を採用している。
具体的には、支軸30の外周部に左右方向に形成した凹溝30aに対して、第二フェースギア21に内挿して一体化させたパイプ部材21aの内周部に左右方向に形成した凸条21bを嵌合することで、第二フェースギア21を支軸30に対して摺動可能でありながらも回動不可能な状態でキー結合している。支軸30は、頭受け側部材20に一体的に固定している。支軸30及びパイプ部材21aは、筒状に形成されたステー側部材10に対して回転可能な状態で挿入される。ただし、ステー1の横支柱部に設けたフランジ部分の両側から支軸30の外周部に対してEリングを嵌合しており、ステー側部材10に対して支軸30が左右方向に移動しないようにしている。この構造を採用することによって、頭受け側部材20における第二フェースギア21を除く部分を、左右方向(支軸30の方向)に移動させなくても済むようになる。したがって、ヘッドレストの挙動を安定させることができる。
また、既に述べた第一実施形態のヘッドレスト(図1)や第二実施形態のヘッドレスト(図5)では、第一フェースギア11に対して第二フェースギア21がスリップする場合でも、第一フェースギア11と第二フェースギア21は、噛み合い用付勢部材50の付勢力によって、常に接触した状態で維持されるようになっていた。このため、ダイヤルレバー式のスリップ抵抗切り替え手段60によって、各フェースギア11,21間のスリップ抵抗を小さくした場合であっても、ある程度力を加えないと、頭受け部2を前後方向に移動させることができなかった。
これに対し、第三実施形態のヘッドレストでは、スリップ抵抗切り替え手段60として、噛み合い用付勢部材50の付勢力に抗って第二フェースギア21を第一フェースギア11から離反する向きに強制的に移動させることにより、第一フェースギア11と第二フェースギア21との噛み合いを解除できるもの(噛み合い解除用操作手段70)を採用している。この噛み合い解除用操作手段70は、ダイヤルレバーではなく、押しボタンとしている。第二フェースギア21は、この噛み合い解除用操作手段70(押しボタン)に対して一体的に連結されている。加えて、第一実施形態のヘッドレストとは、第一フェースギア11と第二フェースギア21との左右方向の配置が逆転している。これにより、噛み合い解除用操作手段70(押しボタン)を押し込むことで、各フェースギア11,21の噛み合いを外し、頭受け部2を前方及び後方の双方にフリーに移動(回動)させることができるようになる。したがって、頭受け部2の前後位置をさらに調節しやすくなる。
4.第四実施形態のヘッドレスト
続いて、第四実施形態のヘッドレストについて説明する。第四実施形態のヘッドレストで特に言及しない構成については、第一実施形態から第三実施形態のヘッドレストにおけるものと同様の構成を採用することができる。図8は、第四実施形態のヘッドレストを前後方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。図8においては、頭受け部2の上部の図示を省略している。図8(a1)は、噛み合い解除用操作手段70(押しボタン)を押し込む前であって第一フェースギア11と第二フェースギア12とが噛み合った状態を、図8(a2)は、噛み合い解除用操作手段70(押しボタン)を押し込む前であって第一フェースギア11と第二フェースギア12とが乗り越した状態を、図8(b1)は、噛み合い解除用操作手段70(押しボタン)を押し込んだ後であって第一フェースギア11と第二フェースギア12とが噛み合った状態を、図8(b2)は、噛み合い解除用操作手段70(押しボタン)を押し込んだ後であって第一フェースギア11と第二フェースギア12とが乗り越した状態をそれぞれ示している。
第四実施形態のヘッドレストでは、図8に示すように、スリップ抵抗切り替え手段60を押しボタンとしており、このスリップ抵抗切り替え手段60(押しボタン)が、シャフトガイド80に作用するようにしている。シャフトガイド80は、頭受け側部材20に設けられた支軸23を中心として回動可能な状態で軸支されている。このシャフトガイド80には、シャフトガイド付勢手段90(コイルバネ)が連結されている。このシャフトガイド付勢手段90は、引っ張りバネとなっている。このため、シャフトガイド80は、図8の紙面に向かって時計回り方向に付勢された状態となっている。
また、支軸30は、ステー側部材10及び頭受け側部材20の双方に対して左右方向にスライド可能な状態となっている。この支軸30の外周部には、フランジ部30cが一体的に設けられている。第一フェースギア11は、ステー側部材10に対して一体的に固定されており、第二フェースギア21は、頭受け側部材20に対して一体的に固定されている。頭受け側部材20は、コイルバネ51(引っ張りバネ)によって、図8の紙面右側に付勢されている。加えて、スリップ抵抗切り替え手段60(押しボタン)を押し込む前の図8(a1),(a2)に示す状態にあっては、頭受け側部材20は、コイルバネ52(押し付けバネ)によっても右側に付勢された状態となっている。すなわち、コイルバネ52による押し付け力がフランジ部30cに作用することによって、支軸30が右側に押され、支軸30の作用端部30bが、シャフトガイド80を右側に押し、それにより、頭受け側部材20が右側に付勢されるようにしている。このため、図8(a1),(a2)に示す状態にあっては、コイルバネ51,52の双方が、第二フェースギア21を第一フェースギア11に押し付けるように作用しており、各フェースギア11,21間のスリップ抵抗が大きい状態(50kgf程度)となっている。
これに対し、図8(b1),(b2)に示すように、スリップ抵抗切り替え手段60(押しボタン)を押し込むと、スリップ抵抗切り替え手段60(押しボタン)が、シャフトガイド付勢手段90の付勢力に抗って、シャフトガイド80を反時計回りに回転するように押し込まれる。このとき、支軸30の作用端部30bは、シャフトガイド80に設けられた逃し穴81内に入り込み、コイルバネ52により支軸30に加えられる右向きの付勢力が、シャフトガイド80に作用しない状態となる。このため、スリップ抵抗切り替え手段60(押しボタン)を押し込んだ図8(b1),(b2)の状態にあっては、コイルバネ51,52のうち、コイルバネ51のみが、第二フェースギア21を第一フェースギア11に押し付けるように作用している。したがって、各フェースギア11,21間のスリップ抵抗は、スリップ抵抗切り替え手段60(押しボタン)を押し込む前の図8(a)の状態よりも小さく(20kgf程度と)なっている。
5.その他
以上で述べた第一実施形態から第四実施形態までのヘッドレストは、いずれも、頭受け部2が1支点2本リンクによって前後方向に上振りする構造となっていた。しかし、本発明のヘッドレストに係る構成は、頭受け部2が1支点2本リンクによって前後方向に下振りする構造においても採用することができる。また、これら以外にも、例えば、頭受け部2が4支点4本リンクによって前後方向に平行移動する構造のヘッドレスト(例えば、特願2018-005234号の図1のヘッドレストを参照。)においても、本発明のヘッドレストに係る構成を採用することができる。
1 ステー
2 頭受け部
10 ステー側部材
11 第一フェースギア
20 頭受け側部材
21 第二フェースギア
21a パイプ部材
21b 凸条
22 フレーム
23 支軸
30 支軸
30a 凹溝
30b 作用端部
30c フランジ部
31 Eリング
40 ケース
41 前側カバー
42 後側カバー
50 噛み合い用付勢部材
51 コイルバネ
52 コイルバネ
60 スリップ抵抗切り替え手段
61 バネホルダ
70 噛み合い解除用操作手段
80 シャフトガイド
81 逃し穴
90 シャフトガイド付勢手段
支軸の端部と、シャフトガイドにおけるスリップ抵抗切り替え手段(押しボタン)が当接する部分との左右方向の隙間寸法
フェースギアの乗り越し寸法
α 前側ストッパー用受け部(ステー側部材の底板部における上面)
α 後側ストッパー用受け部(ステー側部材の後板部における上端面)
β 前側ストッパー用当接部(頭受け側部材の前板部における下端面)
β 後側ストッパー用当接部(頭受け側部材の天板部における下面)
γ 押し込み側当接部
γ 引き戻し側当接部
δ 押し込み側被当接部
δ 引き戻し側被当接部

Claims (5)

  1. シートバックの上部に立設されるステーと、ステーの上部に取り付けられた頭受け部とを備えたヘッドレストであって、
    ステーに固定され、第一フェースギア、前側ストッパー用受け部及び後側ストッパー用受け部を有するステー側部材と、
    頭受け部に固定され、第二フェースギア、前側ストッパー用当接部及び後側ストッパー用当接部を有する頭受け側部材と、
    ステー側部材に対して頭受け側部材を前後回動可能な状態で軸支する支軸と、
    第二フェースギアが第一フェースギアに噛み合う向きに頭受け側部材を付勢する噛み合い用付勢部材と
    を備え、
    後側ストッパー用当接部が後側ストッパー用受け部に当接する後方限界位置から、前側ストッパー用当接部が前側ストッパー用受け部に当接する前方限界位置に至るまでの範囲で、頭受け部を前方回動させながらその前後位置を調節できるようにするとともに、
    頭受け部が後方回動する際の各フェースギア間のスリップ抵抗を、頭受け部が前方回動する際の各フェースギア間のスリップ抵抗よりも大きく設定することによって、平常時には、頭受け部を後方から支持しながらも、後ろ向きの異常負荷が加わった際には、第一フェ-スギアに対して第二フェ-スギアがスリップすることで、頭受け部の衝撃を後方側回動側スリップ抵抗で吸収しながら頭受け部が設定した位置から後方限界位置まで後方回動するようにした
    ことを特徴とするヘッドレスト。
  2. 各フェースギア間のスリップ抵抗を選択するためのスリップ抵抗切り替え手段を備えた請求項1記載のヘッドレスト。
  3. 支軸を頭受け側部材に固定し、第二フェースギアを支軸に対し軸方向に摺動可能な状態でキー結合するとともに、
    噛み合い用付勢部材の付勢力に抗って第二フェースギアを第一フェースギアから離反する向きに強制的に移動させることにより、第一フェースギアと第二フェースギアとの噛み合いを解除する噛み合い解除用操作手段を設けた
    請求項1又は2記載のヘッドレスト。
  4. 頭受け部が、1支点2本リンクによって前後方向に上振り又は下振りする構造とされた請求項1~3いずれか記載のヘッドレスト。
  5. 頭受け部が、4支点4本リンクによって前後方向に平行移動する構造とされた請求項1~3いずれか記載のヘッドレスト。
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