JP2022071650A - 積層フィルム及びロール体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロール体から巻き出された積層フィルムにおいて、浮き及びしわの発生を抑えることができ、保護フィルムの剥離時において、樹脂剥がれの発生を抑えることができる積層フィルムを提供する。【解決手段】本発明に係る積層フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの表面上に配置された絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の前記基材フィルム側とは反対の表面上に積層された保護フィルムとを備え、前記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられ、前記保護フィルムを剥離した後の、前記保護フィルムの剥離により露出した前記絶縁樹脂層の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法によって分析したときに、CN-ピークとSi-ピークとが存在し、かつOH-ピークが存在するか又は存在せず、比(CN-ピークのCN-イオンのカウント数/Si-ピークのSi-イオンのカウント数)が、50を超え6000未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、基材フィルムと絶縁樹脂層と保護フィルムとを備える積層フィルムに関する。また、本発明は、上記積層フィルムを用いたロール体に関する。
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層を形成するために、基材フィルムと絶縁樹脂層とを備える積層フィルムが用いられている。
下記の特許文献1には、第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シート(積層フィルム)が開示されている。この保護フィルム付き接着シートは、JIS B0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、JIS B0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上である。
特開2016-20480号公報
基材フィルムと絶縁樹脂層と保護フィルムとを備える積層フィルムをロール状に巻いてロール体の状態で積層フィルムを保管することがある。また、この積層フィルムは、使用時に保護フィルムを剥離し、露出した絶縁樹脂層を積層対象部材に積層することにより用いられる。
従来の積層フィルムでは、ロール体から巻き出された積層フィルムにおいて、絶縁樹脂層と保護フィルムとの界面において剥離が生じたり(所謂、浮き)、しわが生じたりすることがある。
また、従来の積層フィルムでは、保護フィルムの剥離時に絶縁樹脂層の一部が保護フィルムと共に剥離される現象(所謂、樹脂剥がれ)が生じることがある。特許文献1に記載の積層フィルムでは、保護フィルムの樹脂組成物層(絶縁樹脂層)側の表面の算術平均粗さが制御されているので、樹脂剥がれの発生をある程度抑えることができる。しかしながら、特許文献1に記載の積層フィルムであっても、樹脂剥がれを十分に抑えることは困難なことがある。樹脂剥がれが生じると、保護フィルムの剥離後に、絶縁樹脂層が部分的に欠損することがある。
特に、特許文献1に記載のような従来の積層フィルムでは、ロール体が長尺化(例えば20m以上)したり、ロール体の常温での保管期間が長くなったりした場合には、巻き締りによって、浮き、しわ、樹脂剥がれが発生しやすい。
本発明の目的は、ロール体から巻き出された積層フィルムにおいて、浮き及びしわの発生を抑えることができ、保護フィルムの剥離時において、樹脂剥がれの発生を抑えることができる積層フィルムを提供することである。また、本発明は、上記積層フィルムを用いたロール体を提供することも目的とする。
本発明の広い局面によれば、基材フィルムと、前記基材フィルムの表面上に配置された絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の前記基材フィルム側とは反対の表面上に積層された保護フィルムとを備え、前記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられ、前記保護フィルムを剥離した後の、前記保護フィルムの剥離により露出した前記絶縁樹脂層の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法によって分析したときに、CNピークとSiピークとが存在し、かつOHピークが存在するか又は存在せず、前記CNピークのCNイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、50を超え6000未満である、積層フィルムが提供される。
本発明に係る積層フィルムのある特定の局面では、前記CNピークのCNイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、5000未満である。
本発明に係る積層フィルムのある特定の局面では、前記CNピークのCNイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、4000未満である。
本発明に係る積層フィルムのある特定の局面では、前記OHピークが存在し、前記OHピークのOHイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、2000未満である。
本発明に係る積層フィルムのある特定の局面では、前記OHピークのOHイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、1000未満である。
本発明の広い局面によれば、巻き芯と、上述した積層フィルムとを備え、前記巻き芯の外周に、前記積層フィルムが巻かれている、ロール体が提供される。
本発明に係る積層フィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの表面上に配置された絶縁樹脂層と、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に積層された保護フィルムとを備える。本発明に係る積層フィルムでは、上記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる。本発明に係る積層フィルムでは、上記保護フィルムを剥離した後の、上記保護フィルムの剥離により露出した上記絶縁樹脂層の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法によって分析したときに、CNピークとSiピークとが存在し、かつOHピークが存在するか又は存在しない。本発明に係る積層フィルムでは、上記CNピークのCNイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、50を超え6000未満である。本発明に係る積層フィルムでは、上記の構成が備えられているので、ロール体から巻き出された積層フィルムにおいて、浮き及びしわの発生を抑えることができ、保護フィルムの剥離時において、樹脂剥がれの発生を抑えることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。 図2は、図1に示す積層フィルムが巻かれたロール体を模式的に示す斜視図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。 図4は、実施例で用いられた積層フィルムの製造装置を模式的に示す概略構成図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る積層フィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの表面上に配置された絶縁樹脂層と、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に積層された保護フィルムとを備える。上記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる。
本発明に係る積層フィルムでは、絶縁樹脂層を用いる際に、保護フィルムは剥離される。本発明に係る積層フィルムでは、上記保護フィルムを剥離した後の、上記保護フィルムの剥離により露出した上記絶縁樹脂層の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法によって分析したときに、CNピークとSiピークとが存在し、かつOHピークが存在するか又は存在しない。
本発明に係る積層フィルムでは、上記CNピークのCNイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)が、50を超え6000未満である。
本発明に係る積層フィルムでは、上記の構成が備えられているので、ロール体から巻き出された積層フィルムにおいて、浮き及びしわの発生を抑えることができ、保護フィルムの剥離時において、樹脂剥がれの発生を抑えることができる。本発明では、保護フィルムと接する絶縁樹脂層の表面における化学密着官能基が十分制御されているため、ロール体から巻き出された積層フィルムにおいて、浮き及びしわの発生を抑えることができ、かつ保護フィルムの剥離時において、樹脂剥がれの発生を抑えることができる。
本発明に係る積層フィルムでは、ロール体が長尺化(例えば20m以上)したり、ロール体の保管期間が長くなったりした場合であっても、本発明の上記の効果を発揮することができる。
本発明に係る積層フィルムでは、保護フィルムを剥離した後の該保護フィルムの剥離により露出した絶縁樹脂層の表面における上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)が上述した範囲を満足する。
保護フィルムの剥離により露出した絶縁樹脂層の表面における上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)と、保護フィルムの剥離前(保護フィルムの積層前)の絶縁樹脂層の表面における該比とは、一致しない。保護フィルムの剥離前の絶縁樹脂層の表面における上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)が上述した範囲を満足したとしても、保護フィルムの剥離により露出した絶縁樹脂層の表面における該比は、上述した範囲を満足しない。
本発明では、保護フィルムの剥離により露出した絶縁樹脂層の表面における上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)に着目し、かつ該比を上述した範囲としたことに大きな意味がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
積層フィルム1は、基材フィルム3と、絶縁樹脂層2と、保護フィルム4とを備える。絶縁樹脂層2は、基材フィルム3の表面上に積層されている。絶縁樹脂層2の第1の表面
2a上に、基材フィルム3が積層されている。絶縁樹脂層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b上に、保護フィルム4が積層されている。積層フィルム1の使用時には、保護フィルム4を剥離して、絶縁樹脂層2の第2の表面2b側から、積層対象部材に積層される。
図2は、図1に示す積層フィルムが巻かれたロール体を模式的に示す斜視図である。
図2に示すロール体51では、積層フィルム1がロール状に巻かれている。ロール体51は、巻き芯61と、積層フィルム1とを備える。巻き芯61の外周に、積層フィルム1が巻かれている。
本発明に係る積層フィルムでは、上記保護フィルムを剥離した後の、上記保護フィルムの剥離により露出した上記絶縁樹脂層の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって分析したときに、CNピークとSiピークとが存在し、かつOHピークが存在するか又は存在しない。
上記CNピークは、例えば、絶縁樹脂層にアミノ結合を有する化合物又はアミン結合を有する化合物を含ませることで存在させることができる。上記Siピークは、例えば、絶縁樹脂層に無機充填材としてシリカを含ませることで存在させることができる。上記OHピークは、例えば、絶縁樹脂層にフェノール化合物を含ませることで存在させることができる。
本発明の効果を発揮させる観点から、本発明に係る積層フィルムでは、上記CNピークのCNイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)が、50を超え6000未満である。
上記CNピークのCNイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。上記CNピークのCNイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)は、好ましくは5000未満、より好ましくは4000以下、更に好ましくは4000未満、特に好ましくは3500以下である。上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)が上記下限及び上記上限を満足すると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点、特に、浮き及びしわの発生をより一層効果的に抑える観点からは、上記OHピークが存在することが好ましい。なお、本発明では、上記OHピークが存在しない場合でも、本発明の効果を発揮させることができる。
上記OHピークが存在する場合に、上記OHピークのOHイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。上記OHピークが存在する場合に、上記OHピークのOHイオンのカウント数の、上記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)は、好ましくは2000未満、より好ましくは1000未満である。上記比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)が上記下限及び上記上限を満足すると、本発明の効果を更により一層効果的に発揮させることができ、特に、浮き及びしわの発生を更により一層効果的に抑えることができる。
上記飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)による分析は具体的には以下のようにして行われる。
積層フィルムにおける上記保護フィルムを剥離する。上記保護フィルムの剥離により露出した上記絶縁樹脂層の表面を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(例えば、ION-TOF社製「TOF-SIMS5」)を用いて、後述する実施例の欄に記載の測定条件で測定する。
上記CNピークのCNイオンのカウント数、上記SiピークのSiイオンのカウント数、及び上記OHピークのOHイオンのカウント数はそれぞれ、互いに500μm以上離れた任意の3箇所のイオンのカウント数の平均値であることが好ましい。また、上記CNピークのCNイオンのカウント数、上記SiピークのSiイオンのカウント数、及び上記OHピークのOHイオンのカウント数はそれぞれ、積層フィルムの端面から1mm以上内側の位置で測定されることが好ましい。
上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)、及び上記比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)を、上記の好ましい範囲に制御する方法としては、以下の方法が挙げられる。(1)絶縁樹脂層を形成する際に用いられる溶剤の乾燥温度及び乾燥スピードを調整する方法。(2)無機充填材の粒子径及び表面処理方法を調整する方法。(3)アルキル構造と窒素原子含有基又はOH基とを有する樹脂の含有量を調整する方法。(4)トリアジン骨格、イミド骨格、カルボジイミド骨格又はマレイミド骨格を有する化合物の含有量を調整する方法。これらの方法を適宜組み合わせることで、上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)、及び上記比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)を上記の好ましい範囲に制御することができる。
以下、本発明に係る積層フィルムを構成する各層の詳細を説明する。
(基材フィルム)
上記基材フィルムとしては、金属箔、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミドフィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。上記基材フィルムは、金属箔であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記基材フィルムは、樹脂フィルムであることが好ましい。上記基材フィルムとして、金属箔を用いる場合、上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
積層フィルムの操作性を良好にし、また、絶縁樹脂層のラミネート性を良好にする観点からは、上記基材フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
(絶縁樹脂層)
上記絶縁樹脂層は、基材フィルムの表面上に積層される。上記絶縁樹脂層は、後述するエポキシ化合物と、後述する無機充填材と、後述する硬化剤とを含むことが好ましい。エポキシ化合物と硬化剤とを含む絶縁樹脂層を硬化させることにより、多層プリント配線板において、硬化物である絶縁層を形成することができる。
[エポキシ化合物]
上記絶縁樹脂層は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有することが好ましく、ビフェニル骨格を有することが好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物であることが好ましい。
硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記絶縁樹脂層100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、特に好ましくは55重量%以下である。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、絶縁樹脂層を基材フィルム上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
エポキシ化合物の分子量、及び後述する硬化剤の分子量は、エポキシ化合物又は硬化剤が重合体ではない場合、及びエポキシ化合物又は硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、エポキシ化合物又は硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
[無機充填材]
上記絶縁樹脂層は、無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化が小さくなる。さらに、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が高くなる。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記絶縁樹脂層100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。上記絶縁樹脂層100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは83重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、保護フィルムの剥離時の樹脂剥がれをより一層効果的に抑えることができる。
[硬化剤]
上記絶縁樹脂層は、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、シアネート化合物(シアネート硬化剤)、活性エステル化合物、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、酸無水物、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、ホスフィン化合物、及びジシアンジアミド等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
上記OHピークを良好に存在させる観点及び上記比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)を上記の好ましい範囲に制御する観点からは、上記硬化剤は、フェノール化合物を含むことが好ましく、アルキルフェノール化合物を含むことがより好ましい。
上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)を上記の好ましい範囲に制御する観点からは、上記硬化剤は、シアネート化合物、カルボジイミド化合物、又はマレイミド化合物を含むことが好ましい。
誘電正接をより一層低くする観点から、上記硬化剤は、シアネート化合物、マレイミド化合物、又は活性エステル化合物を含むことが好ましい。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が挙げられる。上記アルキルフェノール化合物の市販品としては、4-ターシャリー・ブチルフェノール(DIC社製「DIC-PTBT」)及び、4-オクチルフェノール(DIC社製「DIC-POP」)等が挙げられる。
上記シアネート化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、並びにビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230」)等が挙げられる。
活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022071650000002
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」、「EXB8100-65T」、及び「EXB-8000L-65MT」等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P-d型ベンゾオキサジン、及びF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P-d型」等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する化合物である。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
Figure 2022071650000003
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA-100」等が挙げられる。
上記硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、絶縁樹脂層を基材フィルム上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、溶融粘度を調整することができるために無機充填材の分散性が良好になる。さらに、硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が濡れ拡がることを防止できる。さらに、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上であると、溶融粘度が低くなりすぎず、硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が過度に濡れ拡がりにくくなる傾向がある。また、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限以下であると、回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが容易になり、さらに無機充填材が不均一に存在しにくくなる傾向がある。
上記絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記硬化剤の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、誘電正接が効果的に低くなる。
[硬化促進剤]
上記絶縁樹脂層は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。絶縁樹脂層を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁樹脂層が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、絶縁樹脂層の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[熱可塑性樹脂]
上記絶縁樹脂層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、絶縁樹脂層の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が濡れ拡がり難くなる。上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
保存安定性により一層優れた絶縁樹脂層を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(上記熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である場合にはフェノキシ樹脂の含有量)は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁樹脂層の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、絶縁樹脂層の形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[溶剤]
上記絶縁樹脂層は、溶剤を含まないか又は含む。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記絶縁樹脂層を成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記絶縁樹脂層における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記絶縁樹脂層の層形状を維持できる程度に、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
上記絶縁樹脂層がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記絶縁樹脂層には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
上記絶縁樹脂層を得る方法としては、以下の方法等が挙げられる。押出機を用いて、絶縁樹脂層を形成するための材料を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む絶縁樹脂層を形成するための材料をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。また、基材フィルム上に絶縁樹脂層を形成するための材料を積層し、加熱乾燥させ、絶縁樹脂層を得ることもできる。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
絶縁樹脂層を形成するための材料をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである絶縁樹脂層を得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の絶縁樹脂層をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記絶縁樹脂層は、Bステージフィルムであることが好ましい。
絶縁樹脂層(絶縁樹脂層がBステージフィルムである場合は、Bステージフィルム)のラミネート性をより一層良好にし、絶縁樹脂層の硬化むらをより一層抑える観点からは、上記絶縁樹脂層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
(保護フィルム)
上記積層フィルムは、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に保護フィルムが積層されていることが好ましい。
上記保護フィルムの材料としては、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン、並びにポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
上記保護フィルムの材料は、ポリオレフィンであることが好ましく、ポリプロピレンであることがより好ましい。この場合には、上記比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)、及び上記比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)を上記の好ましい範囲に容易に制御することができる。
絶縁樹脂層の保護性をより一層良好にする観点及び樹脂剥がれをより一層抑える観点からは、上記保護フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下である。
(積層フィルムの他の詳細)
本発明に係る積層フィルムの長さは、好ましくは20m以上、より好ましくは25m以上、更に好ましくは30m以上、特に好ましく50m以上、好ましくは400m以下、より好ましくは300m以下である。従来の積層フィルムでは、例えば長さが20m以上である場合に、本発明の効果を全て発揮することは困難であり、長さが25m以上である場合に、本発明の効果を全て発揮することは特に困難である。本発明に係る積層フィルムでは、長さが25m以上の場合でも本発明の効果を全て発揮させることができる。
本発明に係る積層フィルムは、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる。上記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる。本発明に係る積層フィルムの絶縁樹脂層によって、絶縁層を形成することができる。
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記絶縁樹脂層の硬化物である。
図3は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを用いた多層基板を模式的に示す断面図である。具体的には、図3は、図1に示す積層フィルム1における絶縁樹脂層2を用いた多層基板を模式的に示す断面図である。
図3に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、絶縁樹脂層2(図1参照)の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔(ビアホール)が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記絶縁樹脂層は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記絶縁樹脂層を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃~85℃で1分間~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
(デスミア処理)
上記絶縁樹脂層を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60μm~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記絶縁樹脂層の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(基材フィルム)
基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製「XG284」)、厚み25μm)
(絶縁樹脂層を形成するための材料)
絶縁樹脂層を形成するための材料として、以下を用意した。
<エポキシ化合物>
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC3000L」)
グリシジルアミン型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製「630」)
フルオレン型エポキシ化合物(大阪ガスケミカル社製「PG-100」)
p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX-146」)
<硬化剤>
活性エステル化合物1含有液(DIC社製「HPC-8900-70BK」、固形分70重量%)
活性エステル化合物2含有液(DIC社製「HPC-8000L-65MT」、固形分65重量%)
アルキルフェノール化合物(DIC社製「DIC-POP」)
カルボジイミド化合物含有液(日清紡ケミカル社製「V-03」、固形分50重量%)
フェノール化合物(明和化成社製「H-4」)
<硬化促進剤>
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
<無機充填材>
球状シリカ1:球状シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)100重量部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM573」、分子量255.4)を0.6重量部で表面処理した球状シリカ。
球状シリカ2:球状シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)100重量部に対して、N-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)を0.76重量部で表面処理した球状シリカ。
<熱可塑性樹脂>
フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」、固形分30重量%)
ポリイミド樹脂含有液:テトラカルボン酸及びダイマージアミンの反応物であるポリイミド樹脂含有液(不揮発分26.8重量%)(以下の合成例1にて合成)
合成例1:
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン合同会社製「BisDA-1000」)300.0gと、シクロヘキサノン665.5gとを入れ、容器中の溶液を60℃まで加熱した。ついで、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」)89.0gと、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製)54.7gとを滴下した。その後、メチルシクロヘキサン121.0gと、エチレングリコールジメチルエーテル423.5gとを入れ、140℃で10時間かけてイミド化反応を行い、ポリイミド樹脂含有液(不揮発分26.8重量%)を得た。得られたポリイミド樹脂の分子量(重量平均分子量)は20000であった。なお、酸成分/アミン成分のモル比は1.04であった。なお、ポリイミド樹脂の分子量は以下のようにして測定した。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製の高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD-10A」を用い、カラムはShodex社製「KF-804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー社製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500のものを使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
(保護フィルム)
保護フィルムA(王子エフテックス社製「MA-411」)、厚み15μm)
保護フィルムB(王子エフテックス社製「FG-201」)、厚み30μm)
(実施例1~8及び比較例1~2)
(1)絶縁樹脂層の材料の調製
下記の表2,3に示す絶縁樹脂層の材料の成分を下記の表2,3に示す配合量(固形分重量)で配合し、撹拌機を用いて1200rpmで4時間撹拌し、絶縁樹脂層の材料(ワニス)を得た。
(2)積層フィルム及びロール体の作製
図4は、実施例で用いられた積層フィルムの製造装置を模式的に示す概略構成図である。積層フィルムの製造装置20は、送り出しローラ21と、塗工ロール22と、第1の加熱乾燥部23と、第2の加熱乾燥部24と、ロール25と、巻き取りロール26とを備える。送り出しローラ21から基材フィルム31(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を搬送した。塗工ロール22上において、絶縁樹脂層の材料(ワニス)を、基材フィルム31の表面にダイコート方式にて塗工した。絶縁樹脂層の材料(ワニス)が塗工された基材フィルム31を、絶縁樹脂層の材料中の溶剤の含有量が4重量%(160℃及び30分間で熱処理した後の重量減少量が4重量%)となる搬送スピードで搬送し、表1及び以下に示す乾燥条件A,B又はC(第1の乾燥工程、第2の乾燥工程、第3の乾燥工程)で乾燥操作を行った。
<第1の乾燥工程>
基材フィルム31の表面に絶縁樹脂層の材料(ワニス)を塗工した後に、絶縁樹脂層の材料(ワニス)が塗工された基材フィルム31を搬送しながら、風を吹き付けずに、常温(25℃)で乾燥操作を行った。
<第2の乾燥工程>
第1の乾燥工程後に、搬送を行いながら、第1の加熱乾燥部23にて、表1に示す乾燥条件で、開口面積が大きい吹き付け口(1つの開口面積72000mm)から風速1m/sで風を吹き付けて、加熱乾燥を行った。なお、第2の乾燥工程では、第2の乾燥工程における乾燥時間を3分割したときに、表1に示すように、加熱温度を設定した。例えば、乾燥条件Aでは、80℃で加熱した後、100℃で加熱し、その後、120℃で加熱した。
<第3の乾燥工程>
第2の乾燥工程後に、搬送を行いながら、第2の加熱乾燥部24にて、表1に示す乾燥条件で、開口面積が小さい吹き付け口(1つの開口面積3600mm)から風速1m/sで風を吹き付けて、加熱乾燥を行った。
Figure 2022071650000004
このようにして、基材フィルム上に厚さが40μmである絶縁樹脂層が配置されたフィルムを得た。次いで、絶縁樹脂層の基材フィルム側とは反対の表面上に、ロール25から繰り出された保護フィルム32を、50℃で熱ラミネートして、基材フィルムと絶縁樹脂層と保護フィルムとを備える積層フィルム33を得た。なお、得られた絶縁樹脂層はBステージフィルムである。
次いで、得られた積層フィルム33を、巻き芯(昭和丸筒社製「プラスチックコア」、材質ABS、内径3インチ)の外周に、巻き取り張力50Nの条件で巻き取りロール26により巻き取ることにより、ロール体を得た。なお、ロール体として、積層フィルムを100m巻きとったロール体(100m)、積層フィルムを200m巻きとったロール体(200m)、積層フィルムを300m巻きとったロール体(300m)の3種類を作製した。
(評価)
(1)飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)による分析
得られた積層フィルムの保護フィルムを剥離して、絶縁樹脂層の表面を露出させた。飛行時間型二次イオン質量分析装置(ION-TOF社製「TOF-SIMS5」)を用いて、以下の測定条件で、露出した絶縁樹脂層の表面を分析した。なお、各ピークのイオンのカウント数は、互いに500μm以上離れた任意の3箇所のイオンのカウント数の平均値を採用した。また、各ピークのイオンのカウント数は、積層フィルムの端面から1mm以上内側の位置で測定した。
<TOF-SIMSによる測定条件>
露出した絶縁樹脂層の表面に対して、Bi3--イオンガンを一次イオン源とし、以下の条件で、CNピークのCNイオンのカウント数、SiピークのSiイオンのカウント数及びOHピークのOHイオンのカウント数を測定した。なお、分析面積は500μm×500μmとした。
一次イオン:25kV、Bi3--、0.1pA~0.3pA(パルス電流値)
ランダムスキャンモード
一次イオンスキャン範囲(測定領域):500μm×500μm
二次イオン検出モード:negative(帯電補正としてフラットガンを使用)
得られた各ピークの各イオンのカウント数から、以下の比を算出した。
1)比(CNピークのCNイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)
2)比(OHピークのOHイオンのカウント数/SiピークのSiイオンのカウント数)
(2)樹脂剥がれ(絶縁樹脂層の一部が保護フィルムとともに剥離される現象)
(2-1)保管後のロール体の樹脂剥がれ
得られたロール体(100m)を25℃で2日間保管した。保管後のロール体を、新栄機工社製のオートカッターにセットして、巻き出しながら保護フィルムの剥離をした。保護フィルムの剥離時に、絶縁樹脂層の一部が保護フィルムとともに剥離され、絶縁樹脂層が保護フィルムに付着するか否かを観察した。
[保管後のロール体の樹脂剥がれの評価基準]
○:樹脂剥がれが生じる
×:樹脂剥がれが生じない
(2-2)長尺ロール体の樹脂剥がれ
得られたロール体(100m)、ロール体(200m)、ロール体(300m)について、保護フィルムを剥離した。保護フィルムの剥離時に、絶縁樹脂層の一部が保護フィルムとともに剥離され、絶縁樹脂層が保護フィルムに付着するか否かを観察した。
[各ロール体の樹脂剥がれの評価基準]
A:樹脂剥がれが生じる
B:樹脂剥がれが生じない
[長尺ロール体の樹脂剥がれの総合評価基準]
○○:ロール体(100m)、ロール体(200m)、ロール体(300m)での評価が全てA
○:ロール体(100m)、ロール体(200m)での評価がAであり、かつロール体(300m)での評価がB
△:ロール体(100m)での評価がAであり、かつロール体(200m)、ロール体(300m)での評価がB
×:ロール体(100m)、ロール体(200m)、ロール体(300m)での評価が全てB
(3)浮き及びしわ
得られたロール体(200m)を、萩原工業社製のスリッターに取り付け、巻出張力40N、巻取張力50N、20m/分の速度で、スリットせずに積層フィルムの巻き出しを行った。巻き出される積層フィルムを観察し、浮き(絶縁樹脂層と保護フィルムとの界面における剥離)、並びにしわが生じているかを観察した。
[浮きの評価基準]
○:200m巻き出した際に、生じている浮きの数が0個
△:200m巻き出した際に、生じている浮きの数が1個以上3個未満
×:200m巻き出した際に、生じている浮きの数が3個以上
[しわの評価基準]
○○:200m巻き出した際に、生じているしわの数が0個
○:200m巻き出した際に、生じているしわの数が1個以上3個未満
△:200m巻き出した際に、生じているしわの数が3個以上5個未満
×:200m巻き出した際に、生じているしわの数が5個以上
積層フィルムの構成、及び結果を下記の表2,3に示す。
Figure 2022071650000005
Figure 2022071650000006
1…積層フィルム
2…絶縁樹脂層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…基材フィルム
4…保護フィルム
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層
20…積層フィルムの製造装置
21…送り出しローラ
22…塗工ロール
23…第1の加熱乾燥部
24…第2の加熱乾燥部
25…ロール
26…巻き取りロール
31…基材フィルム
32…保護フィルム
33…積層フィルム
51…ロール体
61…巻き芯

Claims (6)

  1. 基材フィルムと、
    前記基材フィルムの表面上に配置された絶縁樹脂層と、
    前記絶縁樹脂層の前記基材フィルム側とは反対の表面上に積層された保護フィルムとを備え、
    前記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられ、
    前記保護フィルムを剥離した後の、前記保護フィルムの剥離により露出した前記絶縁樹脂層の表面を飛行時間型二次イオン質量分析法によって分析したときに、CNピークとSiピークとが存在し、かつOHピークが存在するか又は存在せず、前記CNピークのCNイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、50を超え6000未満である、積層フィルム。
  2. 前記CNピークのCNイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、5000未満である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記CNピークのCNイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、4000未満である、請求項1に記載の積層フィルム。
  4. 前記OHピークが存在し、
    前記OHピークのOHイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、2000未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  5. 前記OHピークのOHイオンのカウント数の、前記SiピークのSiイオンのカウント数に対する比が、1000未満である、請求項4に記載の積層フィルム。
  6. 巻き芯と、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルムとを備え、
    前記巻き芯の外周に、前記積層フィルムが巻かれている、ロール体。
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