JP2022069282A - 粘着剤、光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法 - Google Patents

粘着剤、光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】地球環境にやさしい植物由来の原料を用いた粘着剤であっても、ヘイズに優れ、高温高湿下での耐久性および粘着性にも優れた粘着剤を提供する。【解決手段】多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位およびポリオール(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)およびカルボジイミド基含有化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]が架橋された粘着剤であって、上記ポリエステル系樹脂(A)が、ダイマー酸類およびダイマージオールの少なくとも一方由来の構造部位を含有するポリエステル系樹脂であり、上記粘着剤を用いて、厚み50μmの粘着剤層としたときの粘着剤層のヘイズが5%以下である粘着剤とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル系の粘着剤、とりわけ光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法に関し、さらに詳しくは、地球環境にやさしい植物由来の原料を用いた粘着剤であって、金属やガラス等の各種被着体への粘着力が良好で、高温高湿下での耐久性に優れており、さらに耐打痕性に優れ、加水分解抑制剤を入れた場合においても透明性を保持できる粘着剤、光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法に関するものである。
近年、製品の小型化や軽量化の観点から、部品の接合等には粘着剤が用いられるようになっており、かかる粘着剤として、ポリエステル系樹脂を用いた、粘着力に優れる粘着剤が検討されている。
ポリエステル系樹脂は、通常、加水分解されやすい性質を有するため、加水分解抑制剤を配合し、ポリエステル系樹脂の加水分解を抑制し耐久性を向上させることも検討されている。
また、ポリエステル系樹脂を用いた粘着剤の用途として、自動車、建築物等の窓ガラスに、太陽光中の紫外線カット、飛翔昆虫誘引阻止、プライバシーの保護、防犯、ガラスの飛散防止、装飾等を目的として貼付されるウィンドウフィルム貼り合わせ用の粘着剤も広く検討されている。
さらには、光学部材の貼り合わせ用の粘着剤においても、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの画像表示パネルとその全面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を粘着剤で充填することにより、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
これらの、ウィンドウフィルム貼り合せ用や光学部材貼り合わせ用の粘着剤は、衝撃吸収性の観点から、通常よりも厚い糊厚が求められることがある。
一方、昨今は、化石資源の枯渇や地球の温暖化対策等の一環として、再生可能な資源である植物由来の原料の使用が推奨されており、地球環境にやさしい植物由来の原料を用いたバイオプラスチック度の高い粘着剤が求められている。
このような状況の中、ポリエステル系樹脂を用いた粘着剤として、例えば、特許文献1では、ポリエステル、耐加水分解剤、粘着付与剤、および、架橋剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、特定の粘着付与剤を用いたポリエステル系粘着剤組成物が提案されている。
特開2015-134906号公報
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、ダイマー酸とダイマージオールを用いて得られるポリエステル樹脂とカルボジイミド基含有化合物の相溶性が悪く、大幅にヘイズが上がってしまい、さらに、粘着付与剤を配合しているために、粘着付与剤由来での着色も懸念されるものであった。さらに、特許文献1の開示技術から、粘着付与剤を除いたところで、非常にヘイズが高くなってしまうことから、光学部材やウィンドウフィルム等の透明性の高い部材を貼り合わせる粘着剤として使用する場合には、外観が劣ることになり、実質的に使用できないものであった。
また、特許文献1の開示技術では、樹脂が柔らかすぎるため、粘着シートとしたときの弾性率が低くなりすぎるので、打痕が発生しやすく、透明粘着シートとしたときに、その打痕由来での外観異常が発生しやすい傾向となり、光学部材やウィンドウフィルム等を貼り合わせるための粘着剤とするにはまだまだ満足のいくものではなく、更なる改良が求められるものである。
そこで、本発明ではこのような背景下において、地球環境にやさしい植物由来の原料を用いた粘着剤であっても、透明性に優れ、高温高湿下での耐久性および粘着力にも優れた粘着剤、とりわけ光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤、および粘着シートを提供することを目的とする。
しかるに、本発明者は、ポリエステル系樹脂を含有する粘着剤組成物が硬化された粘着剤において、ダイマー酸類やダイマージオールといった植物由来の原料を少なくとも一つ用いた、環境対応に適用したポリエステル系樹脂を用いる場合に、カルボジイミド基含有化合物を併用し、ヘイズを小さくすることにより、地球環境にやさしく、各種被着体に対する粘着力が良好で、高温高湿下での耐久性および透明性にも優れた粘着剤、とりわけ光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用に有効な粘着剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位およびポリオール(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)およびカルボジイミド基含有化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]が架橋された粘着剤であって、上記ポリエステル系樹脂(A)が、ダイマー酸類およびダイマージオールの少なくとも一方由来の構造部位を含有するポリエステル系樹脂であり、上記粘着剤を用いて、厚み50μmの粘着剤層としたときの粘着剤層のヘイズが5%以下である粘着剤を第1の要旨とする。
さらに、本発明においては、前記粘着剤からなる光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤を第2の要旨とし、さらに、第1の要旨の粘着剤または第2の要旨の粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着シートを第3の要旨とし、第3の要旨の粘着シートの製造方法を第4の要旨とする。
通常、植物由来の樹脂は、石油由来の樹脂に比べて、植物由来であるが故の、微量な不純物の混入等により外観が劣ることが多いものであり、植物由来の原料モノマーの使用割合(バイオプラスチック度)が高いということは、地球環境には優しいが外観には劣るという問題があった。
また、バイオプラスチック度を上げようとして、ダイマー酸類やダイマージオール由来の構造部位を含有するポリエステル系粘着剤を用いた場合、上記ポリエステル系樹脂は、長鎖のアルキル鎖を主鎖および側鎖に持っているために、極性の高いカルボジイミド基含有化合物を併用した時に、その性質の違いにより、きれいに相溶せず、外観不良を招くものである。さらに、衝撃吸収等を意識して、糊厚を上げてしまうとさらなるヘイズの上昇を招くことから、外観が重要となる粘着剤において、ダイマー酸類やダイマージオール由来の構造部位を含有するポリエスエル系粘着剤とカルボジイミド基含有化合物の併用は大いにためらわれた。
さらに、長鎖アルキル鎖が多いポリエステル系粘着剤は、柔軟になってしまうことから、耐打痕性にも劣り、外観不良に陥りやすい。このような事情から、通常、バイオプラスチック度を高くするために、ダイマー酸類やダイマージオールを用いたポリエステル系樹脂にカルボジイミド基含有化合物を配合して粘着剤を作製する場合には、高いバイオプラスチック度を有しつつ、耐湿熱性の向上、外観性能等を全て満たすことは非常に困難であった。そこで、本発明においては、環境対応に適したポリエステル系樹脂でありながらも、ポリエステル系樹脂(A)の構造部位の含有量を調整することや、カルボジイミド基含有化合物(B)の種類などを最適化することで、本発明の目的を達成することができることを見出したものである。
本発明の粘着剤は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位およびポリオール(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)およびカルボジイミド基含有化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]が架橋された粘着剤であって、上記ポリエステル系樹脂(A)が、ダイマー酸類およびダイマージオールの少なくとも一方由来の構造部位を含有するポリエステル系樹脂であり、上記粘着剤を用いて、厚み50μmの粘着剤層としたときの粘着剤層のヘイズが5%以下である。そのため、地球環境にやさしい粘着剤となるものでありながらも、各種被着体に対する粘着力が良好で、高温高湿下での耐久性および透明性にも優れた効果を有するものである。
従って、本発明の粘着剤は、光学部材の貼り合せに用いる片面または両面粘着シートや、携帯電子機器の部材固定用、電子部材固定用の片面または両面粘着シート等、また、ウィンドウフィルムの貼り合わせ用の粘着剤として、有効に用いられる。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、カルボン酸類等の「類」は、カルボン酸等の酸に加え、カルボン酸等の塩、カルボン酸等の無水物、カルボン酸等のハロゲン化物、カルボン酸等のエステル等のカルボン酸等の誘導体も含むものである。
本発明の粘着剤は、ポリエステル系樹脂(A)およびカルボジイミド基含有化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]が架橋されたものである。以下、本発明の粘着剤を構成する成分について、順次説明する。
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いるポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)由来の構造部位を有し、ダイマー酸類由来の構造部位およびダイマージオール由来の構造部位の少なくとも一方を含有するポリエステル系樹脂であり、好ましくは、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位としてダイマー酸類由来の構造部位を含有するものである。
このようなポリエステル系樹脂(A)は、通常、多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)とを含む共重合成分を共重合することにより得られるものであり、本発明においては、上記共重合成分について、多価カルボン酸類(a1)としてダイマー酸類を用いること、および/またはポリオール(a2)としてダイマージオールを用いることによりポリエステル系樹脂(A)を製造することができる。
多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位は、ポリエステル系樹脂(A)全体の20~97重量%、好ましくは30~96重量%、特に好ましくは40~95重量%である。
ポリオール(a2)由来の構造部位は、ポリエステル系樹脂(A)全体の3~70重量%、好ましくは5~60重量%、特に好ましくは8~50重量%である。
また、ポリエステル系樹脂(A)におけるダイマー酸類およびダイマージオールの少なくとも一方由来の構造部位の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)に対して50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは55~95重量%、さらに好ましくは60~90重量%、殊に好ましくは70~85重量%である。かかる含有量が少なすぎると硬くなりすぎて粘着強度が低下する傾向がある。なお、かかる含有量が多すぎると柔らかくなりすぎて、やや粘着特性が低下する傾向がある。
〔多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位〕
上記多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位としては、ダイマー酸類由来の構造部位を含有することが好ましい。
多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位における、上記ダイマー酸類由来の構造部位の含有量は、50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは55~95重量%、さらに好ましくは60~90重量%、殊に好ましくは70~85重量%である。かかる含有量が少なすぎると硬くなりすぎて粘着強度が低下する傾向がある。なお、かかる含有量が多すぎると柔らかくなりすぎて、やや粘着特性が低下する傾向がある。
上記ダイマー酸類とは平均炭素数10~26の不飽和脂肪酸類二量体を主成分とするものであり、好ましくは平均炭素数12~24の不飽和脂肪酸類二量体、さらに好ましくは平均炭素数14~22の不飽和脂肪酸類二量体である。具体的には、例えば、オレイン酸類、リノール酸類、リノレン酸類、エルカ酸類等の不飽和脂肪酸から誘導されるジカルボン酸である。
なお、ここで主成分とは、含有量90重量%以上、好ましくは95重%以上、さらに好ましくは98重量%のことである。
本発明で用いるダイマー酸類としては、例えば、上記不飽和脂肪酸類から誘導されるダイマー酸類(炭素数36、44がメイン)や、上記ダイマー酸類の水素添加物が挙げられる。なかでも、結晶性を防ぎやすい点でダイマー酸類の水素添加物が好ましい。
すなわち、本発明のダイマー酸類由来の構造部位とは、上記ダイマー酸類を重縮合して得られたポリエステル系樹脂(A)中の構造部位のことである。
本発明の多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位としては、上記ダイマー酸類由来の構造部位以外に、炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位を含有することが好ましい。かかる炭素数は、好ましくは6~12である。
かかる炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位としては、ジメチルマロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、トリメチルアジピン酸類、ピメリン酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、アゼライン酸類、セバシン酸類、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、チオジプロピオン酸類、ジグリコール酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類等の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位等が挙げられる。
かかる炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位の含有量は、後述するカルボジイミド基含有化合物(B)との相溶性の点から、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において、10~80重量%であることが好ましく、より好ましくは12~50重量%であり、特に好ましくは15~35重量%である。
また、炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位としては、バイオプラスチック度を上げる観点で、セバシン酸類由来の構造部位、コハク酸類由来の構造部位が好ましい。
セバシン酸類および/またはコハク酸類由来の構造部位の含有量は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において、10~80重量%であることが好ましく、より好ましくは12~50重量%であり、特に好ましくは15~35重量%である。
かかる含有量が多いと結晶性が上がってしまい粘着特性に劣る傾向があり、少ないとカルボジイミド基含有化合物(B)との相溶性に劣りヘイズが上がりやすくなる傾向がある。
上記以外の多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位としては、例えば、二価のジカルボン酸類由来の構造部位、三価以上の多価カルボン酸類由来の構造部位を含んでいてもよい。これらの構造部位は単独でもしくは2種以上を併せて含まれていてもよい。
かかる上記二価のジカルボン酸類由来の構造部位、三価以上の多価カルボン酸類由来の構造部位は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。かかる含有量が多すぎると本発明の効果が得られなくなる傾向がある。
上記二価のジカルボン酸類由来の構造部位としては、例えば、
マロン酸類等の炭素数3以下の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位;
フタル酸類、テレフタル酸類、イソフタル酸類、ベンジルマロン酸類、ジフェン酸類、4,4'-オキシジ安息香酸類、さらに1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等のナフタレンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸類由来の構造部位;
等が挙げられる。
上記三価以上の多価カルボン酸類由来の構造部位としては、例えば、トリメリット酸類、ピロメリット酸類、アダマンタントリカルボン酸類、トリメシン酸類等由来の構造部位が挙げられる。
〔ポリオール(a2)由来の構造部位〕
上記ポリオール(a2)由来の構造部位としては、ダイマージオール由来の構造部位を含有することが好ましい。
ポリオール(a2)由来の構造部位における、上記ダイマージオール由来の構造部位の含有量は、1~90重量%であることが好ましく、特に好ましくは20~85重量%、さらに好ましくは40~80重量%、殊に好ましくは60~70重量%である。かかる含有量が少なすぎると硬くなりすぎて粘着強度が低下する傾向がある。なお、かかる含有量が多すぎると柔らかくなりすぎて、やや粘着特性が低下する傾向がある。
本発明のポリオール(a2)由来の構造部位としては、炭素数4以下のポリオール由来の構造部位を含有することが好ましい。
かかる含有量は、ポリオール(a2)由来の構造部位において、5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。かかる含有量が少なすぎると、安定した樹脂形成が得られ難くなる傾向がある。なお、炭素数4以下のポリオール由来の構造部位の含有量の上限は好ましくは100重量%である。
炭素数4以下のポリオール由来の構造部位としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、等の炭素数4以下の脂肪族グリコール由来の構造部位が挙げられる。
上記炭素数4以下のポリオール由来の構造部位として好ましくは、エチレングリコール由来の構造部位、または1,3-プロパンジオール由来の構造部位であり、より好ましくはエチレングリコール由来の構造部位である。さらには、植物由来のバイオエチレングリコール由来の構造部位であることも好ましい。
また炭素数は、好ましくは1~4、更に好ましくは2~3である。
ポリオール(a2)由来の構造部位として、炭素数4以下の短いポリオール由来の構造部位を用いることにより、ダイマー酸類および/またはダイマージオール由来の構造単位を含有するポリエステル系樹脂(A)の極性を比較的高くすることができる。そのため、ポリエステル系樹脂(A)と、極性の高いカルボジイミド基含有化合物(B)とを相溶性を高くすることができ、ヘイズの上昇を抑制できる傾向がある。また、炭素数が4以下の短いポリオールを用いた場合、ポリエステル系樹脂(A)としてバイオプラスチック度が高いカルボン酸類の重量比が増えることとなり、バイオプラスチック度を上げることができる傾向がある。
また上記以外のポリオール(a2)由来の構造部位としては、例えば、二価のジオール(ダイマージオールおよび炭素数4以下のポリオールを除く。)、三価以上のポリオール等由来の構造部位が挙げられる。上記以外のポリオール(a2)由来の構造部位は、単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
かかる上記二価のジオール由来の構造部位、三価以上のポリオール由来の構造部位は、ポリオール(a2)由来の構造部位において、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。かかる含有量が多すぎると本発明の効果が得られなくなる傾向がある。
二価のジオール(ダイマージオールおよび炭素数4以下のポリオールを除く。)由来の構造部位としては、例えば、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール由来の構造部位;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、イソソルバイド、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール由来の構造部位;
4,4'-チオジフェノール、4,4'-メチレンジフェノール、ビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール由来の構造部位;
およびこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体由来の構造部位が挙げられる。
さらに、グリセロールモノステアレート等由来の構造部位が挙げられる。
上記三価以上のポリオール由来の構造部位としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等由来の構造部位が挙げられる。
さらには、ポリエステル系樹脂(A)中に後述の架橋剤(C)との反応点を形成し、凝集力を高める点から、三価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造部位が含まれることも好ましく、なかでも、比較的ゲルが発生しにくい点でトリメチロールプロパン由来の構造部位が含まれることが特に好ましい。
かかる三価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造部位の含有量としては、ポリオール由来の構造部位において、5重量%以下であることが好ましく、さらには1重量%以下であることが好ましく、特には0.5重量%以下であることが好ましい。かかる三価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造部位の含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
〔その他の構造部位〕
さらには、ポリエステル系樹脂(A)は、その他の構造部位として、分子内にカルボン酸と水酸基を併せ持つ化合物(例えば、乳酸等)由来の構造部位が、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。しかし、乳酸由来の構造部位は加水分解が起こりやすいので、含まないことがより好ましい。
<ポリエステル系樹脂(A)の製造>
本発明において、ポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)とを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造することができ、重縮合反応に際しては、まずエステル化反応、またはエステル交換反応が行われた後、重縮合反応が行われる。なお、高分子量にする必要がない場合には、エステル化反応、またはエステル交換反応のみで製造することもある。
上記多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(a1)1当量あたり、ポリオール(a2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール(a2)の配合割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
〔多価カルボン酸類(a1)〕
多価カルボン酸類(a1)としては、ダイマー酸類を用いることが好ましく、上記ダイマー酸類の原料としては、通常、植物や牛脂等が用いられ、本発明においては、いずれの原料由来のダイマー酸類も使用可能であるが、地球環境にやさしい植物由来の原料を用いることが好ましい。植物由来の原料を用いることにより、ポリエステル系樹脂(A)のバイオプラスチック度を上げることができる。
ダイマー酸類の配合量は、多価カルボン酸類(a1)全体の配合量の50重量%以上、好ましくは55~95重量%である。
また、多価カルボン酸類(a1)として、炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類を用いることも好ましく、かかる炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類の配合量は、多価カルボン酸類(a1)全体の配合量に対して、10~80重量%であることが好ましく、より好ましくは12~50重量%である。
上記炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類としては、例えば、ジメチルマロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、トリメチルアジピン酸類、ピメリン酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、アゼライン酸類、セバシン酸類、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、チオジプロピオン酸類、ジグリコール酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、コハク酸類、セバシン酸類が好ましい。
また、上記以外の多価カルボン酸類(a1)としては、例えば、二価のジカルボン酸類、三価以上の多価カルボン酸類を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
かかる上記二価のジカルボン酸類、三価以上の多価カルボン酸類は、多価カルボン酸類(a1)全体の配合量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
上記二価のジカルボン酸類としては、例えば、
マロン酸類等の炭素数3以下の脂肪族ジカルボン酸類;
フタル酸類、テレフタル酸類、イソフタル酸類、ベンジルマロン酸類、ジフェン酸類、4,4'-オキシジ安息香酸類、さらに1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等のナフタレンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸類;
等が挙げられる。
上記三価以上の多価カルボン酸類としては、例えば、トリメリット酸類、ピロメリット酸類、アダマンタントリカルボン酸類、トリメシン酸類等が挙げられる。
〔ポリオール(a2)〕
ポリオール(a2)としては、ダイマージオールを用いることが好ましく、上記ダイマージオールの原料としては、上記のダイマー酸類を還元して得ることができる。
ダイマージオールの配合量は、ポリオール(a2)全体の配合量の1~90重量%である。
本発明のポリオール(a2)としては、上記ダイマージオール以外に、炭素数4以下のポリオールを含有することが好ましい。
かかる含有量は、ポリオール(a2)全体の配合量に対して、5~100重量%である。
上記炭素数4以下のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数4以下の脂肪族グリコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
炭素数4以下のポリオールとして好ましくは、エチレングリコール、または1,3-プロパンジオールであり、より好ましくはエチレングリコールである。さらには、植物由来のバイオエチレングリコールであることも好ましい。
また炭素数は、好ましくは1~4、更に好ましくは2~3である。
また上記以外のポリオール(a2)としては、例えば、二価のジオール(ダイマージオールおよび炭素数4以下のポリオールを除く。)、三価以上のポリオール等が挙げられる。ポリオール(a2)は、単独でもしくは2種以上であってもよい。
二価のジオール(ダイマージオールおよび炭素数4以下のポリオールを除く。)としては、例えば、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、イソソルバイド、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;
4,4'-チオジフェノール、4,4'-メチレンジフェノール、ビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール;
およびこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
さらに、グリセロールモノステアレート等が挙げられる。
上記三価以上のポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等が挙げられる。
かかる三価以上のポリオールの配合量としては、ポリオール(a2)に対して、5重量%以下であることが好ましく、さらには1重量%以下であることが好ましく、特には0.5重量%以下であることが好ましい。かかる三価以上のポリオールの配合量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
〔その他の共重合成分〕
さらには、ポリエステル系樹脂(A)のその他の共重合成分として、分子内にカルボン酸と水酸基を併せ持つ化合物(例えば、乳酸等)の使用も、本発明の効果を損なわない範囲で可能であるが、乳酸は加水分解が起こりやすいので、使わないことがより好ましい。
本発明においては、上記多価カルボン酸類(a1)やポリオール(a2)以外に、ポリエステル系樹脂(A)の共重合成分として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることも好ましい。いわゆる再生PETを用いることが好ましい。
上記ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸類とエチレングリコールとが重合したポリエステル樹脂である。さらに上記ポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて、イソフタル酸類、無水フタル酸類、アジピン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸類、セバシン酸類、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールのような物質で変性されたものであってもよい。上記ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、ポリエステル系樹脂(A)は、ポリエチレンテレフタレート由来の構造部位(例えば、テレフタル酸類およびエチレングリコール由来の構造部位)を含有することとなる。上記ポリエチレンテレフタレートは、バージン材であっても再生品であってもよいが、再生品を用いることが地球環境の点から好ましい。
〔エステル化反応、またはエステル交換反応〕
多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)とのエステル化反応、またはエステル交換反応においては、通常、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと得られる反応物の色相とのバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
上記触媒の配合量は、全共重合成分(重量基準)に対して1~10000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5000ppm、さらに好ましくは20~3000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
エステル化反応、またはエステル交換反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、特に好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~260℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧である。
上記エステル化反応、またはエステル交換反応が行われた後に行われる重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応、またはエステル交換反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量を配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
かくしてポリエステル系樹脂(A)が得られる。
[ポリエステル系樹脂(A)の物性]
次に上記で得られるポリエステル系樹脂(A)の物性について説明する。
〔エステル基濃度〕
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度は、2ミリモル/g以上であることが好ましく、より好ましくは3~10ミリモル/g、さらに好ましくは3.1~7ミリモル/g、特に好ましくは3.2~5ミリモル/gである。かかるエステル基濃度が小さすぎるとポリエステル系樹脂(A)が柔らかくなり、耐打痕性や加工性に劣ることとなる。
上記エステル基濃度(ミリモル/g)とは、ポリエステル系樹脂1g中のエステル結合のモル数のことであり、例えば、仕込み量からの計算値で求められる。かかる計算方法は、多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)の仕込みモル数の少ない方のモル数を出来上がりの全体重量で割った値であり、計算式の例を以下に示す。
なお、多価カルボン酸類(a1)とポリオール(a2)の各仕込み量が同モル量の場合には、下記のどちらの計算式を用いてもよい。
また、モノマーとして、カルボン酸と水酸基を両方持ったものを使ったり、カプロラクトン等からポリエステルを作製する場合等は、適宜計算方法を変えることとなる。
<多価カルボン酸類(a1)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(A1/a1×m1+A2/a2×m2+A3/a3×m3・・・)/Z〕×1000
A:多価カルボン酸類(a1)の仕込み量(g)
a:多価カルボン酸類(a1)の分子量
m:多価カルボン酸類(a1)の1分子あたりのカルボキシ基の数
Z:出来上がり重量(g)
<ポリオール(a2)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(B1/b1×n1+B2/b2×n2+B3/b3×n3・・・)/Z〕×1000
B:ポリオール(a2)の仕込み量(g)
b:ポリオール(a2)の分子量
n:ポリオール(a2)の1分子あたりの水酸基の数
Z:出来上がり重量(g)
また、上記エステル基濃度や構造部位の特定には、NMR等を用いて公知の方法で測定することもできる。
例えば、ポリエステル樹脂(A)のエステル基濃度や組成及び組成比の決定は共鳴周波数400MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)、13C-NMR測定(カーボン型核磁気共鳴分光測定)にて行うことが出来る。
上記エステル基濃度を所定範囲に調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)として炭素数4以下のポリオールを選択する方法や、多価カルボン酸類(a1)として直鎖カルボン酸類の含有量を増やす方法、その両方を組み合わせる方法等が挙げられる。
〔バイオプラスチック度〕
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)のバイオプラスチック度は、60%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。かかるバイオプラスチック度が低いと環境負荷の低減が不充分となる傾向がある。なお、上記バイオプラスチック度の上限は、100%である。
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)のバイオプラスチック度とは、ポリエステル系樹脂(A)の総重量に対し、上記ポリエステル系樹脂(A)を製造する際に使用する植物由来の原料が樹脂に組み込まれた部分の重量割合のことであり、その計算方法は以下の通りである。
なお、多価カルボン酸類(a1)、ポリオール(a2)およびその他成分(例えば、カルボキシ基と水酸基を分子内に持った化合物等)のバイオプラスチック度については、それぞれのバイオプラスチック度の加重平均から求めるものとする。
また、バイオプラスチック度は、下記に示す算出方法のうち、いずれかの方法により得られる値が上記範囲内であればよい。
(計算方法)
<重縮合反応を伴う場合>
バイオプラスチック度(%)=〔(ポリエステル系樹脂(A)中の多価カルボン酸類(a1)およびポリオール(a2)のモル比から算出した植物由来モノマーの炭素のモル数)/(ポリエステル系樹脂(A)中の全構成モノマーの炭素のモル数)〕×100
<重縮合反応を伴わない場合>
バイオプラスチック度(%)=〔(ポリエステル系樹脂(A)中の植物由来モノマーの炭素のモル数)/(ポリエステル系樹脂(A)中の全構成モノマーの炭素のモル数)〕×100
また、上記バイオプラスチック度は、NMRで組成比を解析し、その植物由来モノマーの炭素数/全体の炭素数を計算することによっても求めることができる。
更に、上記バイオプラスチック度は、東京都立産業技術研究センター研究報告,第4号,2009年の「天然放射性炭素C-14を用いたバイオ燃料の由来判別技術」に記載の方法で測定することもできる。
上記バイオプラスチック度を所定範囲に調整する方法としては、植物由来の多価カルボン酸類(a1)や植物由来のポリオール(a2)を主体として用いることが挙げられるが、効率的にバイオプラスチック度を上げることができる点で、特には多価カルボン酸類(a1)を植物由来とすることが好ましい。
〔結晶融解熱〕
上記ポリエステル系樹脂(A)の示差走査熱量計(DSC)で測定される結晶融解熱は、好ましくは10J/g以下であり、より好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは2J/g以下、特に好ましくは結晶融解熱が出ないことである。かかる結晶融解熱が大きすぎると結晶性が出てしまい、樹脂溶液の保存安定性が劣ったり、粘着シートにした際の低温での安定性、粘着特性が劣ることとなる傾向にある。
上記結晶融解熱を所定範囲に調整する方法としては、例えば、側鎖にアルキル基を持つ多価カルボン酸類(a1)や側鎖にアルキル基を持つポリオール(a2)を適宜使用する方法や、共重合モノマー成分を3成分以上、好ましくは4成分以上使用する方法等が挙げられる。
上記結晶融解熱とは、結晶化した物質を加熱融解する際の消費エネルギーのことであり、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
〔重量平均分子量〕
上記ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは2000~500000、さらに好ましくは10000~300000、特に好ましくは50000~150000である。重量平均分子量が大きすぎると、ハンドリング性が低下するので、溶剤が大量に必要となり、環境負荷が大きくなる傾向があり、重量平均分子量が小さすぎると、粘着物性が低下する傾向がある。
上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel Super Multipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)を2本直列にして用いることにより測定されるものである。
〔酸価〕
上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、10mgKOH/g以下であることが加水分解を防ぎ、耐久性を上げる点で好ましく、さらに好ましくは5mgKOH/g以下、特に好ましくは2mgKOH/g以下、殊に好ましくは1mgKOH/g以下である。かかる酸価が大きすぎると耐久性が低下する傾向がある。
上記酸価を調整するには、例えば、エステル化反応、またはエステル交換反応時にポリオール(a2)の比率を増やしたり、反応条件を調節したりすることが挙げられる。なお、酸価の下限値は通常0mgKOH/gである。
上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、JIS K0070に基づき中和滴定により求められるものである。
なお、本発明における酸価とは、ポリエステル系樹脂(A)におけるカルボキシ基の含有量を意味する。上記カルボキシ基には、カルボキシ基が塩基性化合物により中和された、カルボキシラートイオン状態のものも含まれる。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-90~20℃であり、特に好ましくは-80~0℃であり、さらに好ましくは-70~-20℃、殊に好ましくは-60~-30℃である。ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、得られる粘着剤組成物の密着性が低下する傾向があり、低すぎると、耐熱性が低下したり、凝集力が低下したりする傾向がある。
上記ガラス転移温度を調整するには、例えば、芳香族骨格を導入したり、多価カルボン酸類(a1)やポリオール(a2)のアルキル鎖長を変えたりすることが挙げられる。
上記ガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定されるものである。なお、測定温度範囲は-90~100℃であり、温度上昇速度は10℃/分である。
本発明で用いる粘着剤組成物[I]は、上記ポリエステル系樹脂(A)とカルボジイミド基含有化合物(B)とを含有するものである。以下、カルボジイミド基含有化合物(B)について説明する。
<カルボジイミド基含有化合物(B)>
本発明で用いる上記カルボジイミド基含有化合物(B)としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のカルボジイミドを用いることができるが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物、すなわち多価カルボジイミド系化合物であることが好ましく、特にはカルボジイミド基を分子内に3個以上、さらには5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。
なお、分子内に有するカルボジイミド基の数は通常50個以下であり、カルボジイミド基が多すぎると分子構造が大きくなりすぎるため相溶性が低下する傾向がある。
本発明で用いるカルボジイミド基含有化合物(B)としては、耐加水分解性の観点から重量平均分子量が高いものを用いる方が好ましい。カルボジイミド基含有化合物(B)の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量の上限は通常50000である。
また、カルボジイミド基含有化合物(B)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いる方が好ましく、通常、300~10000、好ましくは1000~5000である。
カルボジイミド基含有化合物(B)の分子量が小さすぎると、耐加水分解性が低下する傾向がある。なお、分子量が大きすぎると、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
上記カルボジイミド基含有化合物(B)の、カルボジイミド当量は、好ましくは、50~10000、特には100~1000、さらには150~500であることが好ましい。なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
上記カルボジイミド基含有化合物(B)の含有量は、上記ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.2~3重量部である。かかる含有量が、多すぎるとポリエステル系樹脂(A)との相溶性不良により濁りが発生する傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
また、上記カルボジイミド基含有化合物(B)の含有量は、上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価に応じて、含有量を最適化させることが好ましく、粘着剤組成物[I]中のポリエステル系樹脂(A)の酸性官能基のモル数合計(x)に対する、粘着剤組成物[I]中のカルボジイミド基含有化合物(B)の官能基のモル数合計(y)のモル比〔(y)/(x)〕が、0.5≦(y)/(x)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(y)/(x)≦1000、さらに好ましくは1.5≦(y)/(x)≦100である。(x)に対する(y)のモル比が低すぎると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。なお、(x)に対する(y)のモル比が高すぎると、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向がある。
カルボジイミド基含有化合物(B)としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成するポリカルボジイミド系化合物(B1)を用いることも好ましい。
〔ポリカルボジイミド系化合物(B1)〕
ポリカルボジイミド系化合物(B1)は、有機ジイソシアネート化合物を縮合反応させることにより得ることができる。
上記有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート等の非環式脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,5(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の環式脂肪族ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
なかでも、耐湿熱性に優れる感圧接着剤組成物とすることができる点で、芳香族ジイソシアネート化合物が好ましく、テトラメチルキシレンジイソシアネートがより好ましい。
上記有機ジイソシアネート化合物を公知のカルボジイミド化触媒を用い、常法にて脱炭酸縮合反応させることにより、ポリカルボジイミド系化合物(B1)を得ることができる。
上記ポリカルボジイミド系化合物(B1)は、高温高湿度条件下でもヘイズ変化が小さく、耐湿熱性に優れる粘着剤とすることができる点から芳香族ポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
さらに本発明で用いるポリカルボジイミド系化合物(B1)は、ポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物(α)由来の置換基で置換されたもの(B1-1)が好ましい。
〔ポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物(α)由来の置換基で置換されたもの(B1-1)〕
次にポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物(α)由来の置換基で置換されたもの(B1-1)について説明する。
まずは、親水性有機化合物(α)について説明する。
[親水性有機化合物(α)]
上記親水性有機化合物(α)とは、上記ポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端のイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基を有し、上記置換基の他にさらに分子中にヘテロ原子を1個以上有する化合物である。
上記イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基としては、例えば、水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、カルボキシ基等が挙げられる。なかでも水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、イミノ基が好ましい。これらの置換基は、親水性有機化合物(α)中に単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
上記イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基の数は、親水性有機化合物(α)中に通常2個以下であり、好ましくは1個である。また、上記置換基は、親水性有機化合物(α)の末端に有ることが好ましい。
上記イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基を有し、上記置換基の他にさらに分子中にヘテロ原子を1個以上有する化合物としては、例えば、オキシアルキレン構造含有化合物、ヒドロキシポリエステル構造含有化合物、ヒドロキシアルキルスルホン酸構造含有化合物、ジアルキルアミノアルコール構造含有化合物、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル構造含有化合物、ジアルキルアミノアルキルアミン構造含有化合物等が挙げられる。なかでも、オキシアルキレン構造含有化合物が好ましい。
また、親水性有機化合物(α)の末端は、アルコキシ基またはフェノキシ基で封鎖されていることが好ましい。
これらのなかでも、親水性有機化合物(α)としては、アルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたオキシアルキレン構造含有化合物であることが、高温高湿度条件下でもヘイズ変化が小さい点で好ましい。
上記アルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたオキシアルキレン構造含有化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
1-O-(CH2-CHR2-O)m-H ・・・(1)
上記式(1)中、R1は炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基を示し、R2は水素原子またはメチル基を示し、mは4~100の整数である。
上記炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
また、親水性有機化合物(α)の重量平均分子量は、200以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。また、重量平均分子量の上限は、通常5000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリエステル樹脂との相溶性が低下し、さらに高温高湿度条件下のヘイズ変化が大きくなる傾向がある。なお、重量平均分子量が大きすぎると粘着力が低下する傾向がある。
前記ポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物(α)由来の置換基で置換されたもの(B1-1)は、上記ポリカルボジイミド系化合物(B1)と、上記親水性有機化合物(α)とを反応させることにより得ることができる。
上記ポリカルボジイミド系化合物(B1)と、親水性有機化合物(α)との反応はポリカルボジイミド系化合物(B1)を通常50~200℃、好ましくは100~180℃に加熱した後、上記親水性有機化合物(α)を添加し、さらに80~200℃で0.5~5時間反応を行う。
このようにして、ポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物(α)由来の置換基で置換されたもの(B1-1)を得ることができる。
ポリカルボジイミド系化合物(B1)の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-09GB、V-02B、V-04K、V-04PF、BASF社製のElastostabH01等が挙げられ、なかでもカルボジライトV-04PFが好ましい。
また、本発明で用いる粘着剤組成物[I]には、さらに、架橋剤(C)、ウレタン化触媒(D)、酸化防止剤(E)を含有させることが好ましい。
〔架橋剤(C)〕
上記粘着剤組成物[I]に、架橋剤(C)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(A)が架橋剤(C)で架橋され凝集力に優れたものとなり、粘着剤としての性能を向上させることができる。
かかる架橋剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物等、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂(A)と反応しなくても、凝集力が上がるような、多官能アクリル系モノマーやウレタンアクリレート系オリゴマーを使用することもできる。これらのなかでも粘着力と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特にポリイソシアネート系化合物を用いることが好ましい。
かかるポリイソシアネート系化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、等のポリイソシアネートが挙げられ、また、上記ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体や、これらポリイソシアネート系化合物のビュレット体、イソシアヌレート体、等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
かかるポリイソシアネート系化合物において、脂肪族ポリイソシアネート系化合物が好ましく、さらには、2官能の脂肪族イソシアネート系化合物を用いることが、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性を良好にし、ヘイズを下げる点で好ましい。
かかる架橋剤(C)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方の1当量に対して、架橋剤(C)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(C)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、さらに好ましくは0.5~3当量である。かかる架橋剤(C)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下する傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下する傾向がある。
また、かかる架橋剤(C)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、特に好ましくは、0.1~8重量部、さらには、0.5~6重量部、殊には、1~4重量部であることが好ましい。かかる架橋剤の含有量が少ないと、凝集力が低下する傾向があり、含有量が多すぎると柔軟性が低下し、必要な粘着力が得られなくなる傾向がある。
また、ポリエステル系樹脂(A)と架橋剤(C)との反応においては、これらの成分と反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
〔ウレタン化触媒(D)〕
本発明で用いる粘着剤組成物[I]には、反応速度の点からウレタン化触媒(D)を含有することがより好ましい。
ウレタン化触媒(D)としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記有機金属系化合物としては、例えば、ジルコニウム系化合物、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物等を挙げることができる。
上記ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
上記鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄等が挙げられる。
上記錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
上記チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等が挙げられる。
上記鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
上記コバルト系化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルト等が挙げられる。
上記亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
また、前記3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7等が挙げられる。
これらウレタン化触媒(D)のなかでも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、有機金属系化合物が好ましく、特にジルコニウム系化合物が好ましい。さらにウレタン化触媒(D)は触媒作用抑制剤としてアセチルアセトンを併用することが好ましい。アセチルアセトンを含むことで、低温における触媒作用を抑制し、ポットライフを長くする点で好ましい。
上記ウレタン化触媒(D)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して0.0001~1重量部であることが好ましく、特には0.001~0.1重量部、さらには0.01~0.05重量部であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると架橋反応終了までのエージング時間が長くなる傾向があり、多すぎると粘着物性が低下する傾向がある。
〔酸化防止剤(E)〕
本発明で用いる粘着剤組成物[I]には、樹脂の安定性を上げる点から酸化防止剤(E)を含有することがより好ましい。
上記酸化防止剤(E)としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤等が挙げられる。なかでもヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびリン酸系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、とりわけヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、フェノールの水酸基が結合した芳香族環上の炭素原子の隣接炭素原子の少なくとも一方に、ターシャリーブチル基等の立体障害の大きな基が結合したヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤(E)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部であり、より好ましくは0.03~8重量部であり、さらに好ましくは0.05~5重量部である。かかる含有量が少なすぎると被着体への糊残りが発生しやすくなる傾向があり、多すぎると粘着物性が低下する傾向がある。
本発明で用いる粘着剤組成物[I]においては、上記の、ポリエステル系樹脂(A)、カルボジイミド基含有化合物(B)、架橋剤(C)、ウレタン化触媒(D)、酸化防止剤(E)の他にも、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、粘着剤組成物[I]の10重量%以下)において、カルボジイミド基含有化合物(B)以外の加水分解抑制剤、粘着付与樹脂、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、等の添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等の粉体、粒子状等の添加剤を配合することができる。また、粘着剤組成物[I]の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記粘着剤組成物[I]は、例えば、上記ポリエステル系樹脂(A)、カルボジイミド基含有化合物(B)および必要な任意成分等を準備し、ポリエステル系樹脂(A)の製造時に配合し分散させることにより、もしくはポリエステル系樹脂(A)に配合しミキシングローラー等を用いて分散させることにより、得ることができる。この時、溶媒を用いて溶液として分散させてもよいし、無溶剤で分散させてもよい。
<粘着剤組成物[I]>
上記粘着剤組成物[I]は、バイオプラスチック度が60%以上であることが環境負荷低減の点で好ましく、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、殊に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。上記粘着剤組成物[I]のバイオプラスチック度は、ポリエステル系樹脂(A)やその他配合成分の種類、配合量によって調整することができる。
上記粘着剤組成物[I]のバイオプラスチック度とは、粘着剤組成物[I]の総重量に対する粘着剤組成物[I]を製造する際に使用する植物由来の原料の重量の割合であり、例えば、下記の式により求めることができる。
バイオプラスチック度(%)=〔(粘着剤組成物[I]を製造する際に使用する植物由来の各原料のバイオプラスチック度)×(粘着剤組成物[I]を製造する際に使用する植物由来の各原料の重量)の総和〕/(粘着剤組成物[I]の総重量)×100
また、上記粘着剤組成物[I]のバイオプラスチック度は、前述のNMRを用いた方法や、天然放射性炭素C-14を用いた方法によっても測定することができる。なお、バイオプラスチック度は、上記の算出方法のうち、いずれかの方法により得られる値が上記範囲内であればよい。
<粘着剤>
本発明の粘着剤は、上記粘着剤組成物[I]が架橋されてなるものである。
上記粘着剤は、後述する粘着シートの製造方法に準じ、厚み50μmの粘着剤層とした際のヘイズが5%以下である。好ましくはヘイズが4%以下であり、特に好ましくは2%以下である。すなわち、本発明の粘着剤は、厚みがある粘着剤層とした際にも優れた透明性を有するものである。
上記ヘイズは、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いてヘイズを測定した値である。なお、上記ヘイズメーターはJIS K7361-1に準拠している。
上記粘着剤を用いた粘着剤層のヘイズを5%以下とするには、例えば、ダイマー酸類、脂肪族ジカルボン酸類の導入量の調整、ポリオール(a2)の種類、エステル結合濃度の調整、カルボジイミド基含有化合物(B)の種類等、総合的にバランスをとることにより達成することができる。
なかでも、ポリオール(a2)として炭素数4以下のポリオールを用いる方法、ポリエステル系樹脂のエステル基濃度を出来るだけ高く(特には2ミリモル/g以上)する方法が有効である。
他にも、カルボジイミド基含有化合物(B)として、ポリカルボジイミド系化合物(B1)の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物(α)由来の置換基で置換されたもの(B1-1)を用いる方法や、架橋剤(C)として脂肪族イソシアネート(特には2官能の脂肪族イソシアネート)を使う方法等も効果的である。
上記粘着剤のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から10重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは20~80重量%、さらに好ましくは30~60重量%で、殊に好ましくは40~50重量%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより保持力が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する傾向がある。
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、本発明の粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
また、本発明の粘着剤の初期ゲル分率(G1)に対する、粘着剤を85℃、85%RHで、500時間静置した後のゲル分率(G2)の維持率(G2/G1)が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
本発明の粘着剤は、優れた粘着力、高温高湿下での耐久性および透明性に優れるため、光学部材やウィンドウフィルム貼り合わせ用の粘着剤として好適に用いることができる。
また、本発明の粘着剤シートは、上記粘着剤を含有する粘着剤層を有するものであり、かかる粘着剤層は支持基材の片面または両面に形成されることが好ましい。
なお、本発明において「シート」とは、「フィルム」や「テープ」をも含めた意味として記載するものである。
<粘着シート>
上記粘着シートは、公知一般の粘着シートの製造方法、例えば、基材上に、上記粘着剤組成物[I]を塗工する工程、上記塗工した粘着剤組成物[I]を乾燥させ粘着剤層を形成する工程、基材と反対側の粘着剤層面に離型シートを貼合する工程等を経ることにより得ることができる。また、必要に応じて粘着シートを養生させてもよい。
また、上記の方法以外にも、離型シート上に、上記粘着剤組成物[I]を塗工する工程、上記塗工した粘着剤組成物[I]乾燥させ粘着剤層を形成する工程、離型シートと反対側の粘着剤層面に基材を貼合する工程を経ることにより、粘着シートを得ることができる。また、必要により粘着シートを養生させてもよい。
さらには、上記方法において、離型シート上に粘着剤層を形成し、離型シートと反対側の粘着剤層面に基材に替わり離型シートを貼り合わせることにより、基材レス両面粘着シートを製造することができる。
上記基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド;シクロオレフィンポリマー等からなる群から選ばれた少なくとも1種の合成樹脂からなるシート;アルミニウム、銅、鉄の金属箔;上質紙、グラシン紙等の紙;ガラス繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材は、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。
これらのなかでも特にポリエチレンテレフタレート、ポリイミドからなる基材が好ましく、特には粘着剤との接着性に優れる点でポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記離型シートとしては、例えば、上記基材で例示した各種合成樹脂からなるシート、紙、布、不織布等に離型処理したものを使用することができる。離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
上記基材、離型シートの厚みとしては、例えば、1~1000μmであることが好ましく、特に好ましくは2~500μm、さらに好ましくは3~300μmである。
上記粘着剤組成物[I]を基材または離型シート上に塗工するにあたっては、溶剤を用いて粘着剤組成物[I]の粘度を調整することが好ましい。
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。なかでも酢酸エチルが好ましい。
また、粘着剤組成物[I]における溶剤の含有量は、環境負荷の低減の点から10重量%以下であることも好ましい。
上記粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター等を用いればよい。
上記塗工した粘着剤組成物[I]を乾燥させる乾燥条件として、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃であり、乾燥時間は0.5~30分間が好ましく、特に好ましくは1~5分間である。
また、粘着シートを養生させる場合の条件としては、温度は通常室温(23℃)~70℃、時間は通常1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、好ましくは23℃で3~14日間、40℃で1~10日間等の条件で行なえばよい。
このようにして得られる本発明の粘着シート、基材レス両面粘着シートの粘着剤層の厚みは、2~500μmであることが好ましく、特に好ましくは5~200μm、さらに好ましくは10~100μmである。かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が低下する傾向があり、厚すぎると均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。なお、衝撃吸収性を考慮する際には、50μm以上とすることが好ましい。
なお、上記粘着剤層の厚みは、ミツトヨ社製「ID-C112B」を用いて、粘着シート全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる。
さらに、かかる粘着シートは、必要に応じて、粘着剤層の外側に離型シートを設け保護されていてもよい。また、粘着剤層が基材の片面に形成されている粘着シートでは、基材の粘着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、該剥離処理面を利用して粘着剤層を保護することも可能である。
得られた粘着シートや基材レス両面粘着シートは、使用時には、上記離型シートを粘着剤層から剥離して粘着剤層と被着体を貼合する。
本発明の粘着剤は、種々の部材の貼り合わせに用いることができ、とりわけ、光学部材用の貼り合わせに用いる片面または両面粘着シートや、ウィンドウフィルム貼り合わせに用いる両面粘着シート等に好適に用いられる。
上記光学部材としては、ITO電極膜やポリチオフェン等の無機系や有機系導電膜等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるポリエステル系樹脂のバイオプラスチック度、エステル基濃度、結晶融解熱、重量平均分子量、ガラス転移温度、酸価、粘着剤組成物のバイオプラスチック度、粘着剤のゲル分率の測定に関しては、前述の方法に従って測定した。
以下の方法により、ポリエステル系樹脂(A-1)~(A-3)を製造した。
〔製造例1:ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)として、セバシン酸17.0部(0.45モル)、水添蒸留ダイマー酸(クローダ社製、「プリポール1009」)58.5部(0.55モル)、ポリオール(a2)として、エチレングリコール15.6部(1.7モル)およびトリメチロールプロパン0.2部(0.0065モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-1)の組成および物性を下記の表1に示す。
〔製造例2:ポリエステル系樹脂(A-2)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)として、水添蒸留ダイマー酸(クローダ社製、「プリポール1009」)84.3部(1.00モル)、ポリオール(a2)として、エチレングリコール15.6部(1.7モル)およびトリメチロールプロパン0.1部(0.0065モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-2)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-2)の組成および物性を下記の表1に示す。
〔製造例3:ポリエステル系樹脂(A-3)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)として、水添蒸留ダイマー酸(クローダ社製、「プリポール1009」)49.2部(1.00モル)、ポリオール(a2)として、ダイマージオール(クローダ社製、「プリポール2033」)50.8部(1.09モル)、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温200℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温240℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-3)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-3)の組成および物性を下記の表1に示す。
Figure 2022069282000001
つぎに、粘着剤組成物を調製するに先立って、下記の通り各成分を用意した。
〔カルボジイミド基含有化合物(B)〕
・カルボジイミド系化合物(B-1):末端が芳香族系モノイソシアネート由来の置換基で置換された芳香族ポリカルボジイミド系化合物「カルボジライトV-09GB」(日清紡ケミカル社製)、重量平均分子量:6000
・カルボジイミド系化合物(B-2):イソシアネート末端が分子量500のポリエチレングリコールモノメチルエーテル由来の置換基で置換された芳香族ポリカルボジイミド系化合物「カルボジライトV-04PF」(日清紡ケミカル社製)、重量平均分子量:5300
〔架橋剤(C)〕
・脂肪族系イソシアネート系架橋剤(C-1):「コロネートHX」(東ソー社製)
・芳香族系イソシアネート系架橋剤(C-2):「コロネートL55E」(東ソー社製)
・脂肪族系2官能イソシアネート系架橋剤(C-3):「デュラネートD101」(旭化成社製)
〔ウレタン化触媒(D)〕
・ジルコニウム系化合物(D-1):「オルガチックスZC-150」(マツモトファインケミカル社製)(アセチルアセトンで固形分濃度1%に希釈したもの)
〔酸化防止剤(E)〕
・ヒンダートフェノール系酸化防止剤(E-1):「IRGANOX1010」(BASF社製)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)~(A-3)と上記各成分を用いて、下記のとおり粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作製した。
[実施例1]
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、その固形分100部に対して、カルボジイミド系化合物(B-1)1部(固形分)、脂肪族系イソシアネート系架橋剤(C-1)1部、ジルコニウム系化合物(D-1)0.05部(固形分)、ヒンダートフェノール系酸化防止剤(E-1)0.1部を配合し、撹拌、混合して粘着剤組成物を得た。
上記で得られた粘着剤組成物を厚み38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製の離型フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で5分間乾燥し、粘着剤層の厚みが50μmの粘着シートを得た。
次いで、得られた粘着剤層表面を前記離型フィルムとは剥離力の異なる厚み38μmのPET製の離型フィルムで覆い、40℃で10日間エージング処理を行い、基材レス両面粘着シートを得た。
[実施例2~7、比較例1~5]
実施例1において、下記表2の通り配合した以外は同様に行い、粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
Figure 2022069282000002
得られた実施例1~7および比較例1~5の粘着シートについて、下記の評価を行った。評価結果を後記表3に示す。
<粘着剤のヘイズ>
上記で得られた基材レス両面粘着シートから一方の面の離型フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に貼合した後、反対側の離型フィルムも剥がし、粘着剤層/無アルカリガラス板の構成を有する試験片を作製した。
この試験片について、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いてヘイズを測定し、無アルカリガラス板のヘイズ値の値を差し引いて、粘着剤層のヘイズ値とし、以下の基準で評価した。なお、ヘイズメーターはJIS K7361-1に準拠している。
<耐打痕性>
上記の基材レス両面粘着シートの作製の際に、100℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、上記粘着剤層に、離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)を貼着し、離型フィルムの上から、直径7.5cm×幅5cmの2kgローラーを載せ、10秒間停止した後にローラーを外し、目視にてその粘着剤層を観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・変化なし。
×・・・ローラーを載せた跡が残る打痕あり。
<粘着剤のゲル分率>
〔初期(G1)〕
上記で得られた基材レス両面粘着シートから一方の面の離型フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とした。ただし、離型フィルムの重量は差し引いた。
〔85℃×85%RH×500時間後(G2)〕
上記で得られた基材レス両面粘着シートを、温度85℃、湿度85%RHの、高温恒湿器内に500時間静置した。この基材レス両面粘着シートから一方の面の離型フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とした。ただし、離型フィルムの重量は差し引いた。
〔維持率〕
85℃×85%RH×500時間後のゲル分率(G2)を、初期のゲル分率(G1)で割った値を維持率とし、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
〇:維持率70%以上
×:維持率70%未満
[基材付き粘着シートの作製]
上記で得られたそれぞれの基材レス両面粘着シートから一方の面の離型フィルムを剥離し、粘着剤層をPETフィルム(38μm)に転写して粘着力評価用の基材付き粘着シートを作製した。
<粘着力(剥離強度)(対SUS304-BA板)>
被着体としてSUS304-BA板を準備した。上記で得られた基材付き粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS304-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
なお、SUS304-BA板とは、SUS304を冷間圧延後、光輝焼鈍(無酸化焼鈍)を行ったもの、あるいは光沢を高めるためスキンパス圧延をしたものをいう。
(評価基準)
○・・・5N/25mm以上
×・・・5N/25mm未満
<粘着力(剥離強度)(対ガラス)>
被着体として無アルカリガラス板(コーニングXG)を準備した。上記で得られた基材付き粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側を無アルカリガラス板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・5N/25mm以上
△・・・1N/25mm以上、5N/25mm未満
×・・・1N/25mm未満
Figure 2022069282000003
表3の結果より、実施例1~7の粘着剤は、粘着層を厚くしても、そのヘイズが充分に低く透明性に優れるものであった。また、上記粘着剤層は、高い復元力を有することから、粘着剤層が変形したとしても跡が残らず耐打痕性に優れ、さらに耐久性、粘着力にも優れるものであった。そのため、粘着層が見えるような、光学部材用やウィンドウフィルム用に好適で、なおかつ、地球環境に優しい粘着剤となっている。
一方、カルボジイミド基含有化合物を含有しない比較例1~3の粘着剤は、維持率(耐久性)に劣るものであった。また、比較例3~5は耐打痕性に劣るものであった。さらに、比較例4、5の粘着剤は、ヘイズが高く実用に耐えないものであった。
本発明の粘着剤は、地球環境にやさしい植物由来の原料を用い、バイオプラスチック度の高いポリエステル系樹脂および粘着剤組成物を用いる場合であっても、高温高湿下での耐久性および透明性にも優れ、金属やプラスチック等の各種被着体への粘着物性に優れた効果を有するものであり、光学部材またはウィンドウフィルムの貼り合わせに用いる片面または両面粘着シートに好適に用いられる。

Claims (16)

  1. 多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位およびポリオール(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)およびカルボジイミド基含有化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]が架橋された粘着剤であって、
    上記ポリエステル系樹脂(A)が、ダイマー酸類およびダイマージオールの少なくとも一方由来の構造部位を含有するポリエステル系樹脂であり、
    上記粘着剤を用いて、厚み50μmの粘着剤層としたときの粘着剤層のヘイズが5%以下であることを特徴とする粘着剤。
  2. 上記ポリエステル系樹脂(A)におけるダイマー酸類およびダイマージオールの少なくとも一方由来の構造部位の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)に対して50重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
  3. 上記ダイマー酸類由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において、50重量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤。
  4. 上記多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位が、炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤。
  5. 上記炭素数4~16の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位の含有量が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において10~80重量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着剤。
  6. 上記ダイマージオール由来の構造部位の含有量が、ポリオール(a2)由来の構造部位において、1~90重量%であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤。
  7. 上記ポリオール(a2)由来の構造部位が、炭素数4以下のポリオール由来の構造部位を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤。
  8. 炭素数4以下のポリオール由来の構造部位の含有量が、ポリオール(a2)由来の構造部位において、5~100重量%であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤。
  9. 上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度が2ミリモル/g以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着剤。
  10. 上記カルボジイミド基含有化合物(B)の重量平均分子量が1000以上であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着剤。
  11. 粘着剤の初期ゲル分率(G1)に対する85℃、85%RHで、500時間静置した後のゲル分率(G2)の維持率(G2/G1)が70%以上であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着剤。
  12. 上記粘着剤組成物[I]が、さらに架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の粘着剤。
  13. 上記粘着剤組成物[I]のバイオプラスチック度が60%以上であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の粘着剤。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の粘着剤からなることを特徴とする光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤。
  15. 請求項1~13のいずれか一項に記載の粘着剤、または請求項14記載の光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤を含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
  16. 請求項15記載の粘着シートの製造方法であって、溶剤の含有量が10重量%以下の上記粘着剤組成物[I]を用いて塗工する工程を含むことを特徴とする粘着シートの製造方法。
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