JP2022067965A - プラズマローゲン含有組成物、プラズマローゲン吸収促進用組成物、及びプラズマローゲン吸収促進方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマローゲンの生体への吸収効率を改善する技術を提供する。【解決手段】プラズマローゲンと増粘多糖類を含有することを特徴とするプラズマローゲン含有組成物である。また、増粘多糖類を有効成分として含有するプラズマローゲン吸収促進用組成物である。更に、プラズマローゲンと増粘多糖類をヒト又は動物に投与することを特徴とするプラズマローゲン吸収促進方法である。【選択図】なし
Description
新規性喪失の例外適用申請有り
本発明は、生体機能性素材として有用なプラズマローゲン及びその利用に関する。
プラズマローゲンは、生体膜の構成成分であるリン脂質の一種であり、その化学構造では、グリセロール骨格sn-1位に脂肪族アルコールとのビニルエーテル結合を有し、sn-2位に脂肪酸とのエステル結合を有している。
プラズマローゲンは、哺乳動物の生体組織に全般に分布しているが、特に心臓、脳、骨格筋、赤血球等の酸素消費量の高い組織に比較的多く分布している。また、リポソーム、低密度リポタンパク質、培養細胞等を用いた試験管内の研究により、プラズマローゲンには、脂質膜への酸化障害毒性に対する抗酸化作用があることが明らかにされている(非特許文献1、2、3参照)。よって、プラズマローゲンが酸素消費量の高い組織に偏在する理由の1つには、生体膜中での抗酸化性脂質としての役割が示唆されている。
近年には、脳のシグナル伝達への関与や脳内における抗酸化物質としての機能も示唆されている。例えば、非特許文献4に、アルツハイマー病疾患では脳のプラズマローゲン量が健常者に比べて30%近く減少しているとの報告がある。また、非特許文献5に、アルツハイマー病疾患では、血中プラズマローゲン濃度も健常者に比べて減少しており、血中の過酸化脂質増加に関わるとの報告がある。更に、特許文献1には、動物実験において、プラズマローゲンの摂取により海馬依存性の学習能力が強化されたことが報告されている。よって、サプリメントなどの食品へ応用することで、日常的な摂取による記憶力サポートも期待される。
一方、摂取したプラズマローゲンの生体への吸収性に関して、例えば、非特許文献6及び非特許文献7には、プラズマローゲンのうちコリン型プラズマローゲンに比べエタノールアミン型プラズマローゲンの吸収性は低いが、魚油との混合投与により吸収効率が改善することが報告されている。
Zommara et al.,"Inhibitory effect of ethanolamine plasmalogen on iron- and copper-dependent lipid peroxidation.", Free Radicals Biol.Med.,1995; 18: p.599-602.
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Zoeller et al.,"A possible role for plasmalogens in protecting animal cells against photosensitized killing.", J. Biol.Chem.,1988; 263: p.11590-11596.
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Yamashita S et al., "Alterations in the Levels of Amyloid-β, Phospholipid Hydroperoxide, and Plasmalogen in the Blood of Patients with Alzheimer's Disease: Possible Interactions between Amyloid-β and These Lipids." J. Alzheimers Dis., 2016; 50: p.527-37.
山下舞亜ら「演題番号:2D-20p、題目:コリン型プラズマローゲンがエタノールアミン型に比べ,吸収効率が良い理由」第64回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集、第88頁(2010年5月)
西向めぐみら「演題番号:2D-19p、題目:魚油によって吸収促進されたプラズマローゲンの分子種解析」第64回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集、第88頁(2010年5月)
しかしながら、魚油は特有の臭みがあることから風味に劣り、酸化劣化も早く、幅広い加工食品への適用は難しいと考えられた。
上記従来技術にかんがみ、本発明の目的は、プラズマローゲンの生体への吸収効率を改善する技術を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明者らは、種々研究した結果、増粘多糖類には、プラズマローゲンの生体への吸収効率を改善する作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第1に、プラズマローゲンと増粘多糖類を含有することを特徴とするプラズマローゲン含有組成物を提供するものである。
上記プラズマローゲン含有組成物においては、前記増粘多糖類が、キサンタンガム及び/又はアラビアガムであることが好ましい。
上記プラズマローゲン含有組成物においては、該組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、及び液状から選ばれた1種の形態であることが好ましい。
本発明は、第2に、増粘多糖類を有効成分として含有するプラズマローゲン吸収促進用組成物を提供するものである。
上記プラズマローゲン吸収促進用組成物においては、前記増粘多糖類が、キサンタンガム及び/又はアラビアガムであることが好ましい。
上記プラズマローゲン吸収促進用組成物においては、該組成物は、プラズマローゲンを含有することが好ましい。
上記プラズマローゲン吸収促進用組成物においては、該組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、及び液状から選ばれた1種の形態であることが好ましい。
本発明は、第3に、プラズマローゲンと増粘多糖類をヒト又は動物に投与することを特徴とするプラズマローゲン吸収促進方法(医療行為を除く)を提供するものである。
上記方法においては、前記増粘多糖類が、キサンタンガム及び/又はアラビアガムであることが好ましい。
上記方法においては、プラズマローゲンと増粘多糖類を含有するプラズマローゲン含有組成物の形態で投与することが好ましい。
上記方法において、プラズマローゲンと増粘多糖類を含有するプラズマローゲン含有組成物の形態で投与する場合、該組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、及び液状から選ばれた1種の形態であることが好ましい。
本発明により提供されるプラズマローゲン含有組成物によれば、プラズマローゲンと増粘多糖類を含有するので、これをヒト又は動物等に投与することにより、その生体にプラズマローゲンを効率的に吸収させることができる。
本発明により提供されるプラズマローゲン吸収促進用組成物によれば、増粘多糖類を有効成分として含有するので、これをプラズマローゲンとともにヒト又は動物等に投与することにより、その生体にプラズマローゲンを効率的に吸収させることができる。
本発明により提供されるプラズマローゲン吸収促進方法によれば、プラズマローゲンと増粘多糖類をヒト又は動物に投与するので、その投与したヒト又は動物の生体にプラズマローゲンを効率的に吸収させることができる。
本明細書において「プラズマローゲン」とは、通常当業者に理解される意義と同義であり、具体的には、下記式(1)で表される物質を含む意味である。
式(1)中、R1は炭素数1~20のアルキル基であり、具体的には炭素数10~20のアルキル基であり、更により具体的にはドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコサニル基等である。また、R2は脂肪酸残基であり、具体的には高度不飽和脂肪酸残基であり、更により具体的にはオクタデカジエノイル基、オクタデカトリエノイル基、イコサテトラエノイル基、イコサペンタエノイル基、ドコサテトラエノイル基、ドコサペンタエノイル基、ドコサヘキサエノイル基等である。また、Xはエタノールアミン、コリン、セリン、イノシトール、グリセロールから選ばれる基である。
一般に、プラズマローゲンは、牛肉、豚肉、鶏肉等の食肉、魚介類等に含まれており、これらの天然物から総脂質を抽出し、この総脂質画分からプラズマローゲンを含むリン脂質画分を分離して、必要に応じてさらに精製することにより得ることができる。プラズマローゲン含量の高い天然物としては、例えば、ウシ、ブタ等の哺乳類の心臓や脳の部位、ニワトリ等の鳥類のムネ肉の部位、頭足類、貝類、甲殻類等の水産無脊椎動物などが挙げられる。
天然物から総脂質を抽出する方法としては、例えば、Folch法(Folch etal.:J.Biol.Chem.,226,497-505,1957)、Bligh & Dyer法(Bligh et al.:Can. J. Biochem. Physiol., 37, 911-917, 1959)等が挙げられる。
また、総脂質画分からプラズマローゲンを含むリン脂質画分を分離する方法としては、例えば、アセトン沈殿法(山川民夫監修:生化学実験講座3,脂質の化学(日本生化学会編),p.19-20,1963,東京化学同人)、セプパックカラム法(James et al.:Lipds, 23, 1146-1149, 1988)等が挙げられる。
更に、プラズマローゲンを含むリン脂質画分からプラズマローゲンを精製する方法としては、例えば、リン脂質画分を弱アルカリ処理してジアシル型リン脂質を分解する方法、Crotalus atrox由来のホスホリパーゼAを用いて精製する方法(Gottfried et al.:J. Biol. Chem., 237, 329, 1962)等が挙げられる。弱アルカリ処理としては、例えば、メタノール性0.1N KOH中、10℃で処理する方法が挙げられる。
また、プラズマローゲンは化学的に合成する方法によっても得ることができる。例えば、グリセリンをアルケニルグリセリルエーテルに変換し(Piantadosi et al.:J.Pharm.Sci.,50,978,1961)、次いでエステル化やリン酸化を行なう方法などが挙げられる。しかし、この方法は煩雑であること、及び使用する有機溶剤や触媒が人体に有害であることから、工業的な生産にはあまり適した方法とは言えず、安全性、生産性等の点からも、本発明に用いるプラズマローゲンとしては、天然物から抽出・分離する方法で得られたものであることが好ましい。
一方、特開2019-162042号公報には、魚介類や水産動物を基原とした、プラズマローゲン高含有抽出物の調製方法か開示されているので、本発明に用いるプラズマローゲンとしては、そのように魚介類や水産動物を基原として得られたものを用いてもよい。
具体的には、上記公報にかかる調製方法の原料となる魚介類又は水産動物としては、プラズマローゲンを含む原料であれば特に制限はない。例えば、ホヤ(例えば、マボヤ(学名:Halocynthia roretzi))等の原索動物門の魚介類、ホタテ、レイシガイ、ムラサキイガイ、ミドリイガイ、マガキ、ヒザラガイ、チヂミボラ、クボガイ、アワビ、ムラサキインコガイ等の軟体動物門の魚介類、ナマコ、ヒトデ、ウニ等の棘皮動物門の魚介類、イソギンチャク等の腔腸動物門の魚介類、サケ、サンマ、カツオ、マグロ、クジラ等の脊椎動物門の水産動物が挙げられる。これらのうち、ホヤ、ホタテ、レイシガイ、ムラサキイガイ、ミドリイガイ、マガキ、ナマコ、ヒトデ、ウニ、イソギンチャク、クジラ等がより好ましい。
上記公報にかかる調製方法によれば、得られる抽出物にはプラズマローゲンが高純度に含まれており、通常、固形分あたりのプラズマローゲンの含量が0.5~55質量%の範囲を満たす組成物である。加えて、原料に由来するヒ素の混入や濃縮も最小限に抑えられ、質量比でプラズマローゲンを1としたときヒ素の含量が60ppm以下の範囲を満たす組成物である。プラズマローゲンの含量の下限は0.5質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、プラズマローゲンの含量の上限は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。更に、ヒ素の含量は、質量比でプラズマローゲンを1としたとき55ppm以下であることが好ましく、40ppm以下であることがより好ましい。また、そのプラズマローゲンは、側鎖にドコサヘキサエン酸(DHA:Docosahexaenoic acid)を有するものであることが好ましい。具体的には、リン脂質を構成する分子種のうち、0.1質量%以上をDHA結合プラズマローゲンが占めることが好ましく、2質量%以上をDHA結合プラズマローゲンが占めることがより好ましい。
一般に、プラズマローゲンはグリセロール骨格のsn-2位に有する脂肪酸によりその機能性に差異があることが報告されており、特にドコサヘキサエン酸(DHA:Docosahexaenoic acid)を構造に有するPE型プラズマローゲン(リン脂質の親水部の構造としてエタノールアミンがリン酸エステル結合したエタノールアミン型のプラズマローゲン)には、アルツハイマーの原因と考えられているアミロイドβ(Aβ)の凝集抑制・分解促進(上記非特許文献5:Yamashita S et al., “Alterations in the Levels of Amyloid-β, Phospholipid Hydroperoxide, and Plasmalogen in the Blood of Patients with Alzheimer's Disease: Possible Interactions between Amyloid-β and These Lipids.” J. Alzheimers Dis., 2016; 50: p.527-37)や、神経芽細胞のアポトーシスを抑制する効果が確認されている(Yamashita S et al., “Extrinsic plasmalogens suppress neuronal apoptosis in mouse neuroblastoma Neuro-2A cells: importance of plasmalogen molecular species” RSC Adv., 2015; 5; p.61012-20)。また、DHAを構造に有するPE型プラズマローゲンは、天然には魚介類又は水産動物に特に多く含まれていることが報告されている(Yamashita S et al., “Analysis of Plasmalogen Species in Foodstuffs.” Lipids, 2016; 51; p199-210)。
なお、プラズマローゲンの含量は、例えば、高速液体クロマトグラフ/質量分析法、高速液体クロマトグラフ/蒸発光散乱検出法等の測定方法により測定することができる。また、プラズマローゲンを構成するグリセロール骨格のsn-2位に有する脂肪酸の種類や構成の同定は、例えば、高速液体クロマトグラフ/質量分析法、ガスクロマトグラフ/質量分析法等の測定方法により測定することができる。
本明細書において「増粘多糖類」とは、通常当業者に理解される意義と同義であり、特に制限はない。ただし、経口摂取可能である必要がある。よって、食品素材として用いられる増粘多糖類であることが好ましい。具体的には、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン、フコイダン、アルギン酸Na、結晶セルロース、ペクチン、グァーガム、マンナン、カラギーナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子ガム、寒天、コンニャクイモ抽出物、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、でんぷん、食物繊維などが挙げられる。更には、これら素材の化学的修飾体、低分子化体等の修飾体として調製されるものを用いることもできる。増粘多糖類としては、1種類を単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用して用いてもよい。本発明においては、特に、キサンタンガム及びアラビアガムからなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることがより好ましい。
本発明によれば、ある観点では、プラズマローゲンと増粘多糖類を含有することを特徴とするプラズマローゲン含有組成物が提供される。この場合、当該プラズマローゲン含有組成物中に含まれるプラズマローゲンの含有量としては、特に制限はないが、例えば、その上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更により好ましい。また、その下限は0.05質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることが更により好ましい。当該プラズマローゲン含有組成物中に含まれる増粘多糖類の含有量としては、特に制限はないが、例えば、その上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更により好ましい。また、その下限は0.02質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更により好ましい。また、その場合のプラズマローゲンと増粘多糖類の含有量の質量比としては、実際に投与する際の投与量比に揃えることが好ましく、プラズマローゲンを1として、例えば、1:1~1:30の範囲内であってよく、1:5~1:20の範囲内であってよく、1:10~1:15の範囲内であってよい。
本発明により提供されるプラズマローゲン含有組成物には、上記基本的成分の他に、賦形剤、糖類、香料、色素、乳化剤、保存料等を適宜含むことができる。
本発明により提供されるプラズマローゲン含有組成物においては、その効率的な摂取のためには、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液状等の形態であってよい。典型的な例を挙げれば、プラズマローゲン及び増粘多糖類並びに任意にその他の素材を適当な賦形剤等とともに均一に混合して、加圧式打錠機により打錠することにより錠剤とすることができる、また、造粒してそのまま粉末状、顆粒状にして利用することもできる。また、サフラワー油などの油脂に均一に分散後、ミツロウなどを加え、スラリーの粘度を適度に調節し、ソフトカプセル充填機によりゼラチンとグリセリンを被包材の主成分とするようなソフトカプセル中に充填してもよい。
また、本発明によれば、別の観点では、増粘多糖類を有効成分として含有するプラズマローゲン吸収促進用組成物が提供される。この場合、当該プラズマローゲン吸収促進用組成物中に含まれる増粘多糖類の含有量としては、特に制限はないが、例えば、その上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更により好ましい。また、その下限は0.02質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更により好ましい。このプラズマローゲン吸収促進用組成物中にはプラズマローゲンが含有されていてもよい、その場合は、上述したプラズマローゲン含有組成物の場合と同様に、プラズマローゲンの含有量としては、特に制限はないが、例えば、その上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更により好ましい。また、その下限は0.05質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることが更により好ましい。プラズマローゲンを含有するプラズマローゲン吸収促進用組成物中に含まれる増粘多糖類の含有量としては、特に制限はないが、例えば、その上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更により好ましい。また、その下限は0.02質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更により好ましい。また、その場合のプラズマローゲンと増粘多糖類の含有量の質量比としては、実際に投与する際の投与量比に揃えることが好ましく、プラズマローゲンを1として、例えば、1:1~1:30の範囲内であってよく、1:5~1:20の範囲内であってよく、1:10~1:15の範囲内であってよい。
本発明により提供されるプラズマローゲン吸収促進用組成物には、上述したプラズマローゲン含有組成物の場合と同様に、上記基本的成分の他に、賦形剤、糖類、香料、色素、乳化剤、保存料等を適宜含むことができる。
本発明により提供されるプラズマローゲン吸収促進用組成物においては、上述したプラズマローゲン含有組成物の場合と同様に、その効率的な摂取のためには、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液状等の形態であってよい。典型的な例を挙げれば、上記増粘多糖類あるいは任意にプラズマローゲン並びにその他の素材を適当な賦形剤等とともに均一に混合して、加圧式打錠機により打錠することにより錠剤とすることができる、また、造粒してそのまま粉末状、顆粒状にして利用することもできる。また、サフラワー油などの油脂に均一に分散後、ミツロウなどを加え、スラリーの粘度を適度に調節し、ソフトカプセル充填機によりゼラチンとグリセリンを被包材の主成分とするようなソフトカプセル中に充填してもよい。
本発明により提供されるプラズマローゲン含有組成物又はプラズマローゲン吸収促進用組成物の使用態様としては、プラズマローゲンをヒト又は動物に投与する際に、増粘多糖類を併用して、そのヒト又は動物に投与するようにすればよい。これにより、プラズマローゲンの生体への吸収効率を、増粘多糖類を併用しない場合より改善することができる。その場合、プラズマローゲンと増粘多糖類とを1つの組成物の形態にしてヒト又は動物に投与するようにしてもよく、あるいは、別の組成物の形態にして、別々に、ただし、時間をおかずに投与するようにしてもよい。なお、プラズマローゲンを豊富に含む食品を摂取する際に、該食品とは別に、あるいは該食品に添加して、プラズマローゲン吸収促進用組成物を摂取することもできる。
本発明により提供されるプラズマローゲン含有組成物又はプラズマローゲン吸収促進用組成物が利用可能な製品形態としては、特に制限はなく、例えば、飲食品、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品、サプリメント、医薬品、動物用医薬品等である。また、ペット動物や家畜動物のための動物用飼料に含有せしめて利用してもよい。
本発明により提供されるプラズマローゲン含有組成物又はプラズマローゲン吸収促進用組成物の好ましい投与量としては、被投与者又は被投与動物の年齢や健康状態、投与継続期間、投与頻度などによって、適宜決定することができる。一般的な投与量を例示すれば、例えば、プラズマローゲンにして0.1~4.0mg/1日の量、より好ましくは0.2~2.0mg/1日の量、更に好ましくは0.5~1.0mg/1日の量で投与することができる。また、増粘多糖類にして1.3~52mg/1日の量、より好ましくは2.6~26mg/1日の量、更に好ましくは6.5~13mg/1日の量で投与することができる。その際、プラズマローゲンと増粘多糖類との投与量比としては、プラズマローゲンを1としたときの質量比にして例えば、1:1~1:30の範囲内であってよく、1:5~1:20の範囲内であってよく、1:10~1:15の範囲内であってよい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。また、本発明は、プラズマローゲンの生体への吸収効率を改善することができる組成物を提供するものであるが、別の観点からは、プラズマローゲンと増粘多糖類をヒト又は動物に投与することを特徴とするプラズマローゲン吸収促進方法を提供するものであるということもできる。
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
[調製例1]<ホヤ由来プラズマローゲン含有抽出物の調製>
ホヤ可食部のフリーズドライ粉末を50.8g秤量し、ヘキサン66mL、エタノール121mL、及び水11mLを仕込み、混合し、撹拌しながら常温で30分間抽出した後、定性濾紙(型式:No.2)にて濾過し、抽出液と残渣を分離し、残渣には、再度、ヘキサン66mL、エタノール121mL、及び水11mLを仕込み、混合し、撹拌しながら常温で30分間抽出した後、定性濾紙(型式:No.2)にて濾過し、抽出液と残渣を分離した。抽出液2回分を併せて真空乾燥による溶媒除去を行い、ホヤ抽出物を得た。その収量は7.9gであった。
ホヤ可食部のフリーズドライ粉末を50.8g秤量し、ヘキサン66mL、エタノール121mL、及び水11mLを仕込み、混合し、撹拌しながら常温で30分間抽出した後、定性濾紙(型式:No.2)にて濾過し、抽出液と残渣を分離し、残渣には、再度、ヘキサン66mL、エタノール121mL、及び水11mLを仕込み、混合し、撹拌しながら常温で30分間抽出した後、定性濾紙(型式:No.2)にて濾過し、抽出液と残渣を分離した。抽出液2回分を併せて真空乾燥による溶媒除去を行い、ホヤ抽出物を得た。その収量は7.9gであった。
得られたホヤ抽出物を1.97g秤量し、0.1Mクエン酸-HClバッファー(pH4.5)5mL、ホスホリパーゼA1(PLA1製剤、三菱ケミカルフーズ製)を240mg添加し、50℃にて4時間撹拌し酵素反応させた。酵素処理液にアセトン16.7mLとヘキサン16.7mLを添加し、よく撹拌した後、遠心分離(2500rpm、4℃、20min)し、ヘキサン層(上層)と水層(下層)に分離させた。上層を回収し、ロータリーエバポレーターで乾固し、アセトンを30mL添加した。遠心分離し、アセトンを除去し、沈殿物を回収した。再度、アセトンを30mL添加し、遠心分離し、アセトンを除去し、沈殿物を回収した。沈殿物を真空乾燥し、酵素処理物を得た。その収量は345.9mgであった。
得られた酵素処理物100.0mgを秤量し、ヘキサン10mL、アセトン10mL、及び水3mLを加え、よく撹拌した後、遠心分離(2500rpm、4℃、20min)し、液/液分配させた。下層を除去し、更に、アセトン5mLと水3mLを添加して、よく撹拌した後、遠心分離(2500rpm、4℃、20min)し、液/液分配させた。その上層を回収し、ロータリーエバポレーターで溶媒除去させたうえ、真空乾燥して、ホヤ由来プラズマローゲン含有抽出物を得た。その収量は68.1mgであった。
<プラズマローゲンを含む胆汁酸混合ミセル含有培地の調製>
プラズマローゲンの生体への吸収性を試験するため、一般に脂質分子の腸管内での存在状態と考えられる胆汁酸混合ミセルを調製した。具体的には、以下のようにしてプラズマローゲンを含む胆汁酸混合ミセル含有培地を調製した。
プラズマローゲンの生体への吸収性を試験するため、一般に脂質分子の腸管内での存在状態と考えられる胆汁酸混合ミセルを調製した。具体的には、以下のようにしてプラズマローゲンを含む胆汁酸混合ミセル含有培地を調製した。
丸底試験管にクロロホルム/メタノール(2:1,v/v)を少量加え、ホヤ由来プラズマローゲン含有抽出物7.5mg/mL(クロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶液)1mL、タウロコール酸ナトリウム200mM(メタノール溶液)1mL、モノオレイン10mM(クロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶液)1mL、オレイン酸3.33mM(クロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶液)1mL、リゾホスファチジルコリン10mM(クロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶液)1mLを加え、よくピペッティングした。ボルテックスミキサーを用いて十分に混合した後、窒素乾固した。残渣に無血清培地(1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%NEAA(非必須アミノ酸)を含むDMEM)100mLを加え、ボルテックスミキサーで混合した後、超音波処理をしてプラズマローゲンを含む胆汁酸混合ミセル含有培地を調製した。
上記に調製したプラズマローゲンを含む胆汁酸混合ミセル含有培地は終濃度として75μg/mLホヤ由来プラズマローゲン含有抽出物、2mMタウロコール酸ナトリウム、100μMモノオレイン、33.3μMオレイン酸、100μMリゾホスファチジルコリンが含まれる。
<Caco-2細胞を用いた吸収モデル試験>
プラズマローゲンの生体への吸収性を試験するため、Caco-2細胞を用いた吸収モデル試験を行った。具体的には、以下のようにして試験を行った。
プラズマローゲンの生体への吸収性を試験するため、Caco-2細胞を用いた吸収モデル試験を行った。具体的には、以下のようにして試験を行った。
ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞(資源番号:RBRC-RCB0988)は独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターより購入したものを用いた。10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%NEAA(非必須アミノ酸)を含むDMEMを用いて37℃、5%CO2で培養した。80%コンフルエントになるまで培養した後、トリプシン/EDTA溶液を用いて細胞をディッシュから回収し、1.0×105cells/mLの密度で10cmディッシュに播種して継代を行った。2.0×105cells/mLの細胞懸濁液1mLずつを12-wellプレートに播種し、37℃、5%CO2で3週間培養することで、小腸上皮様に分化させた。この間、2~3日ごとに培地交換を行った。分化誘導したCaco-2細胞を無血清培地で2回洗浄した後、プラズマローゲン含有培地中で3時間培養した。培養終了後、10mMタウロコール酸ナトリウムを含んだPBS1mLで1回、PBS1mLで2回洗浄し、セルスクレイパーを用いて超純水1mLに細胞を回収した。細胞を氷冷しながら超音波破砕し、細胞破砕液800μLからBligh-Dyer法に従って脂質を抽出した。脂質抽出液を窒素乾固した後、メタノール1mLに溶解し、-80℃で保存した。また、タンパク質濃度測定キット「DC Protein Assayキット」(Bio-Rad製)を用いて細胞破砕液のタンパク質濃度を測定し、補正に用いた。
<脂質の定性・定量解析>
Caco-2細胞から抽出した脂質の定性・定量解析は、LC-MS/MS QTRAPシステムを使用した多重反応モニタリング(MRM:Multiple Reaction Monitoring)分析により行った。
(分析条件)
・LINEAR ION TRAP QUADRUPOLE LC/MS/MS MASS SPECTROMETER(AB SCIEX INSTRUMENTS)
・ポンプ:LC-20AD(Shimadzu)
・Positive Ion Mode
・Curtain Gas 20.0
・Collision Gas 10
・IonSpray Voltage 5500.0
・Temparature 350.0
・Ion Source Gas 1 50.0
・Ion Source Gas 2 50.0
・Declustering Potential 85.0
・Entrance Potential 10.0
・Collision Energy 40.0
・Collision Cell Potential 12.0
・Inject量:1μL
・カラム:Ascentics Express HILIC, 2.7μm, 2.1×150mm (SIGMA-ALDRICH)
・流速:0.2mL/min
・移動相
(A)44mMギ酸アンモニウム含有超純水(ギ酸でpH3に調製)
(B)アセトニトリル(Aと同量のギ酸を添加)
・分析時間:40分
・グラジエント条件:下記表1のとおり
・プラズマローゲンの分子種の同定結果:下記表2のとおり
Caco-2細胞から抽出した脂質の定性・定量解析は、LC-MS/MS QTRAPシステムを使用した多重反応モニタリング(MRM:Multiple Reaction Monitoring)分析により行った。
(分析条件)
・LINEAR ION TRAP QUADRUPOLE LC/MS/MS MASS SPECTROMETER(AB SCIEX INSTRUMENTS)
・ポンプ:LC-20AD(Shimadzu)
・Positive Ion Mode
・Curtain Gas 20.0
・Collision Gas 10
・IonSpray Voltage 5500.0
・Temparature 350.0
・Ion Source Gas 1 50.0
・Ion Source Gas 2 50.0
・Declustering Potential 85.0
・Entrance Potential 10.0
・Collision Energy 40.0
・Collision Cell Potential 12.0
・Inject量:1μL
・カラム:Ascentics Express HILIC, 2.7μm, 2.1×150mm (SIGMA-ALDRICH)
・流速:0.2mL/min
・移動相
(A)44mMギ酸アンモニウム含有超純水(ギ酸でpH3に調製)
(B)アセトニトリル(Aと同量のギ酸を添加)
・分析時間:40分
・グラジエント条件:下記表1のとおり
・プラズマローゲンの分子種の同定結果:下記表2のとおり
[試験例1]
Caco-2細胞を用いた吸収モデル試験において、増粘多糖類がプラズマローゲンの吸収性にどのように影響を与えるかについて調べた。具体的には、増粘多糖類としてキサンタンガム又はアラビアガムを1mg/mLの濃度で無血清培地に添加したときと、添加しないときとで、Caco-2細胞への取り込み量に差があるかどうかを調べた。試験はn=4で行い、統計的な有意差検定をTurky-Krammer法により行った。
Caco-2細胞を用いた吸収モデル試験において、増粘多糖類がプラズマローゲンの吸収性にどのように影響を与えるかについて調べた。具体的には、増粘多糖類としてキサンタンガム又はアラビアガムを1mg/mLの濃度で無血清培地に添加したときと、添加しないときとで、Caco-2細胞への取り込み量に差があるかどうかを調べた。試験はn=4で行い、統計的な有意差検定をTurky-Krammer法により行った。
図1には、プラズマローゲンのCaco-2細胞への取り込み量を、プラズマローゲン含有培地を添加する前を1.0としたときの変化量で示した。
図1に示されるように、18:0p/20:5の分子種(EPA結合プラズマローゲン型リン脂質)や18:0p/22:6の分子種(DHA結合プラズマローゲン型リン脂質)については、p<0.05の有意差(図1中「**」で示す)をもって、増粘多糖類としてキサンタンガム又はアラビアガムを無血清培地に添加したほうが、添加しない場合に比べて、Caco-2細胞への取り込み量が増加した。よって、増粘多糖類により、プラズマローゲンの生体への吸収効率を改善できることが明らかとなった。
(処方1)
表3には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、錠剤(打錠品)の処方を示す。
表3には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、錠剤(打錠品)の処方を示す。
(処方2)
表4には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、ソフトカプセル剤の処方を示す。
表4には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、ソフトカプセル剤の処方を示す。
(処方3)
表5には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、グミの処方を示す。
表5には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、グミの処方を示す。
(処方4)
表6には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、ゼリーの処方を示す。
表6には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、ゼリーの処方を示す。
(処方5)
表7には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、清涼飲料水の処方を示す。
表7には、調製例1で得られたプラズマローゲン含有抽出物を配合した、清涼飲料水の処方を示す。
Claims (11)
- プラズマローゲンと増粘多糖類を含有することを特徴とするプラズマローゲン含有組成物。
- 前記増粘多糖類が、キサンタンガム及び/又はアラビアガムである、請求項1記載のプラズマローゲン含有組成物。
- 錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、及び液状から選ばれた1種の形態である、請求項1又は2記載のプラズマローゲン含有組成物。
- 増粘多糖類を有効成分として含有するプラズマローゲン吸収促進用組成物。
- 前記増粘多糖類が、キサンタンガム及び/又はアラビアガムである、請求項4記載のプラズマローゲン吸収促進用組成物。
- プラズマローゲンを含有する、請求項4又は5記載のプラズマローゲン吸収促進用組成物。
- 錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、及び液状から選ばれた1種の形態である、請求項4~6のいずれか1項に記載のプラズマローゲン吸収促進用組成物。
- プラズマローゲンと増粘多糖類をヒト又は動物に投与することを特徴とするプラズマローゲン吸収促進方法(医療行為を除く)。
- 前記増粘多糖類が、キサンタンガム及び/又はアラビアガムである、請求項8記載の方法。
- プラズマローゲンと増粘多糖類を含有するプラズマローゲン含有組成物の形態で投与する、請求項8又は9記載の方法。
- 前記プラズマローゲン含有組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、及び液状から選ばれた1種の形態である、請求項10記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020176853A JP2022067965A (ja) | 2020-10-21 | 2020-10-21 | プラズマローゲン含有組成物、プラズマローゲン吸収促進用組成物、及びプラズマローゲン吸収促進方法 |
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