JP2022067519A - 傾斜地における小段構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】傾斜地において小段の造成が困難な急勾配の法面や、既存の小段が破壊されてしまった法面に対し、耐久性を備えた小段を構築する工法を提供する。【解決手段】傾斜地に吹付枠工を用いて小段Sを構築する工法であって、法面Gに設けた掘削孔5cに補強材5bを挿入しその先端部をグラウト5dで固定する、グラウンドアンカー5の設置工程と、補強材5bの頭部5aが貫通し固定される横梁部2を有する吹付枠1をモルタル・コンクリート吹付けにより法面G上に設置する工程であって、モルタル・コンクリート吹付けにおいて横梁部2の法肩側に向いた横梁部頂面2aと法面Gとの間に三角形断面と水平な上面3aをもつ小段基部3も同時に形成する、吹付枠1の設置工程と、を有し、小段基部3の上面3aが小段Sを形成する。【選択図】図2

Description

本発明は、土木工事の土工段階において小段が造成されていない法面や、既存法面が崩壊又は部分崩壊してもともとあった小段が破壊されてしまった法面などの傾斜地に対して、保守点検や維持管理作業等で必要な小段を新たに構築する方法に関する。
小段とは、切土法面や盛土法面等の傾斜地において、主に法面排水、保守点検や維持管理に使用するために設けた所定の幅をもつ水平な部分を指し、犬走りとも称される。一般的に、切盛土高が高い場合に、法面の途中に小段が設けられる(特許文献1等)。切土法面では土質、岩質、法面規模に応じて高さ5~10m毎に幅1~2mの小段を、盛土法面では法肩から垂直距離5~7m毎に幅1~2mの小段を設けることが標準とされている。
特に、切土法面においては小段を造成することにより全体的な法面勾配を緩くして安定性を増加させているため、小段のない法面は概して急勾配となり、安定性は地質により異なるが一般的に低下する。
特開2002-275907号公報 特開2015-175118号公報
しかし、急勾配法面では小段が設置されていない場合が非常に多い。また、当然のことながら人工的な切盛土が行われていない斜面にはもともと小段は存在しない。さらに、既存法面が崩壊した場合、地形や用地などの制約から崩壊前の法面よりも急勾配に整形して復旧せざるを得ない場合が多く、土工的に小段を新たに設置することが困難な場合も多い。
さらに、既存法面の一部が崩壊した場合は、その復旧にあたり崩壊を免れた既設小段と新たに作る小段とを共存させなければならないが、上述したように崩壊部分は崩壊前の法面よりも急勾配に地山整形せざるを得ないため、土工的に新たに小段を設置することが困難な場合が多い。
このように、小段の存在しない法面では、斜面災害を未然に防ぐ目的で実施される保守点検や維持管理を実施する上で大きな支障を来している。これまで、こうした場合の対策方法として、単管パイプなどを用いて仮設の点検通路を設置していたが、小段の代用である点検通路には軽量の鋼製や樹脂製の部材を使用せざるを得ないことから耐久性が低く、強度的にも長期間の使用に耐え得るものとはいえなかった。
上記の諸問題を解決するために、本発明は、傾斜地において小段の造成が困難な急勾配の法面や、既存の小段が破壊されてしまった法面に対し、耐久性を備えた小段を構築する工法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。
・ 本発明の態様は、傾斜地に吹付枠工を用いて小段(S)を構築する工法であって、
法面(G)に設けた掘削孔(5c)に補強材(5b)を挿入しその先端部をグラウト(5d)で固定する、グラウンドアンカー(5)の設置工程と、
前記補強材(5b)の頭部(5a)が貫通し固定される横梁部(2)を有しかつ法面(G)の走行方向に連続的に延在する吹付枠(1)をモルタル・コンクリート吹付けにより法面(G)上に設置する工程であって、前記モルタル・コンクリート吹付けにおいて前記横梁部(2)の法肩側に向いた横梁部頂面(2a)と法面(G)との間に三角形断面と水平な上面(3a)とをもつ小段基部(3)を同時に形成する、前記吹付枠(1)の設置工程と、を有し、
前記小段基部(3)の上面(3a)が小段(S)を形成することを特徴とする
・ 本発明の別の態様は、傾斜地に吹付枠工を用いて小段(S)を構築する工法であって、
法面(G)に設けた掘削孔(5c)に補強材(5b)を挿入しその先端部をグラウト(5d)で固定する、グラウンドアンカー(5)の設置工程と、
前記補強材(5b)の頭部(5a)が貫通し固定される横梁部(2)を有する吹付枠(1)をモルタル・コンクリート吹付けにより法面(G)上に設置する工程であって、前記モルタル・コンクリート吹付けにおいて前記横梁部(2)の法肩側に向いた横梁部頂面(2a)と法面(G)との間に三角形断面と水平な上面(3a)とをもつ小段基部(3)を同時に形成する、前記吹付枠(1)の設置工程と、
前記小段基部(3)の上面(3a)全体を少なくとも覆う所定の小段幅を有する板状部材(7)を設置する工程と、を有し、
前記板状部材(7)の上面が小段(S)を形成することを特徴とする。
・ 本発明のさらに別の態様は、傾斜地に吹付枠工を用いて小段(S)を構築する工法であって、
法面(G)に設けた掘削孔(5c)に補強材(5b)を挿入しその先端部をグラウト(5d)で固定する、グラウンドアンカー(5)の設置工程と、
前記補強材(5b)の頭部(5a)が貫通し固定される矩形断面をもつ横梁部(2)を有する吹付枠(1)をモルタル・コンクリート吹付けにより法面(G)上に設置する工程と、
前記吹付枠(1)の前記横梁部(2)により支持されかつ前記横梁部(2)の法尻側に向いた横梁部下面(2c)から法尻へ向かって所定の長さで延在する支持部材(9)を設置する工程と、
所定の小段幅を有する板状部材(7)を水平となるように前記支持部材(9)に連結すると共に法面(G)に固定する工程と、を有し、
前記板状部材(7)の上面が小段(S)を形成することを特徴とする。
・ 上記いずれかの態様において、前記板状部材(7)における法面(G)とは反対側の縁部(7a)から起立する手摺り部材(8)を設置することが、好適である。
・ 上記いずれかの態様において、法面(G)において上下に位置する2つの前記吹付枠(1)の間、及び/又は、前記吹付枠(1)と法肩若しくは法尻との間に、中抜け崩壊防止工を施すことが、好適である。
本発明の効果は次のとおりである。
1) 土工指針や各種基準等に準拠していない小段の存在しない切土法面、盛土法面、自然斜面などの傾斜地に対して、容易に小段を構築することができる。
2) 新たに小段を構築することにより、老朽化した法面や崩壊の危険がある法面等の監視や調査・点検が可能となり、斜面災害発生の防止に寄与する。
3) 小段のない法面の点検作業は、これまでは法尻からの目視や、近年ではドローンを用いた点検も行われている。しかし、グラウンドアンカーの点検は、目視や映像のみから判断することは困難な場合が多く、アンカー荷重計や歪み計等の動態観測装置の設置や、アンカーの再緊張を伴うような診断を行う場合は大規模な足場の構築が必要になる。本発明は、今後ますます重要性が高まる傾斜地の維持管理の省力化に大きく寄与する。
4) 横梁部を有する吹付枠と、グラウンドアンカーとを組み合わせる方法であることから、抑止力があり、新たに設置する小段の高さ間隔を5m程度にした場合でも、小段の構築と抑止力の付与が同時に行えるため、法面防災機能の向上と保守点検及び維持管理作業の省力化を両立させることができる。
5) 斜面災害等で小段を有する既存法面が崩壊した場合、断面復旧を行うことなく、新たな小段を構築できるので、小段の再構築を含めた断面復旧を行って法枠工やグラウンドアンカー工による法面保護工を適用する方法と比較して、グラウンドアンカーの設置本数を減らすことができ、経済性を大幅に向上できる。
6) その結果、法面対策工全体の工期短縮が可能となり、特に、個々に受圧板を設置してグラウンドアンカーを配置する工法と比較して、大幅な工期短縮ができる。
図1は、説明の便宜上、1つの傾斜地の法面Gに、本発明の第1~第3の実施形態の各々を適用した例を模式的に示している。 図2は、図1のI-I断面の一例であり、本発明の第1の実施形態を模式的かつ概略的に示している。 図3は、図1のII-II断面の一例であり、本発明の第2の実施形態を模式的かつ概略的に示している。 図4は、図1のIII-III断面の一例であり、本発明の第3の実施形態を模式的かつ概略的に示している。 図5は、本発明の第4の実施形態を模式的かつ概略的に示している。
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明は、モルタル・コンクリートを法面(斜面を含む)に吹き付ける吹付枠工を応用して、傾斜地に小段を構築する工法である。本発明では、施工対象となる傾斜地の法面に横梁状の吹付枠を設置すると共に、当該吹付枠を反力構造物として利用するグラウンドアンカーも設置する。そして、設置された吹付枠を単独で用いて、又は、設置された吹付枠と組み合わせた板状部材を用いて、所定の幅で延在する水平面である小段を得ることができる。本発明の小段構築方法によって、上述した問題が解決される。
本発明の小段構築方法によれば、傾斜地に新たに構築する小段自体に抑制工又は抑止工としての機能を持たせることができるので、法面防災機能と保守点検や維持管理作業の省力化を図ることが可能となる。
ここで、抑制工とは、法面の侵食や小規模崩壊の原因となる風化、凍結、応力開放などの外的影響を軽減するとともに、降水や流下水による表流水の地山表層部への直接浸透を防止して、法面の侵食や崩壊の発生を抑制するための対策工であり、本明細書における吹付枠工がこれに当たる。吹付枠工は、法枠工の一種であり、法枠をモルタル・コンクリート吹付により造成する施工方法である。本明細書では、吹付枠工により設置される構造物を「吹付枠」と称している。一般的な吹付枠は、縦梁と横梁からなる格子状であるが、本発明では、縦梁がなく横梁のみからなる吹付枠を設置する。
また、抑止工とは、地山の崩壊若しくは変形又はすべり力に抵抗する構造物によって法面の安定化を図る対策工であり、本明細書におけるグラウンドアンカーがこれに当たる。さらに、グラウンドアンカーに加え、鉄筋挿入工、ロックボルト工とも称される地山補強土工もこれに当たる。
以下、本発明の各実施形態を説明する。図1では、説明の便宜上、傾斜地の法面Gに本発明の第1~第3の実施形態の小段構築方法をそれぞれ適用した例を模式的に示している。なお、図1では、各実施形態の概要のみを説明する。
上段に示す第1の実施形態では、法面G上に設置された横梁状の吹付枠1と、吹付枠1の長手方向に所定の間隔で設置されたグラウンドアンカー5の頭部が示されている。吹付枠1は、矩形断面部分と三角形断面部分を合わせた台形断面を有し、その水平な上面が、小段Sを形成している。
中断に示す第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の吹付枠1の水平な上面に板状部材7を設置している。板状部材7の上面が小段Sを形成している。板状部材7の縁部には手摺り部材8が設けられている。
下段に示す第3の実施形態では、法面G上に設置された吹付枠1が矩形断面部分のみを有し、吹付枠1から法尻に向かって支持部材9が延在している。この支持部材9に、水平に配置された板状部材7が連結され法面Gに固定されている。板状部材7の上面が小段Sを形成している。板状部材7の縁部には手摺り部材8が設けられ、手摺り部材8の下端は、支持部材9と連結され法面Gに固定されている。
(1)第1の実施形態
図2は、図1のI-I断面の一例であり、本発明の第1の実施形態を模式的かつ概略的に示している。
第1の実施形態による小段構築工法は以下の通りである。
先ず、グラウンドアンカー5を法面Gの地山に設置する。法面Gの地山に設けた掘削孔5cに補強材5bを挿入する。補強材5bの先端部は、掘削孔5cの底部に充填されたグラウト5dが硬化することによって固定される。この段階では、補強材5bの頭部5aは、法面Gから所定の長さで突出している。
次に、吹付枠1を設置する吹付枠工を行う。吹付枠1は、法面Gの走行方向(水平方向)に沿って設置され、基本的に法面Gの走行方向に連続的に延在し、走行方向と交差する方向には延在しない(以下の他の実施形態についても同じ)。第1の実施形態では、吹付枠1が、矩形断面をもつ横梁部2と、三角形断面をもつ小段基部3の2つの部分を有する。横梁部2は、通常の格子状の吹付枠における横梁に相当する形状を有する。横梁部2は、法肩側に向いた横梁部頂面2aと、法面Gと平行な横梁部前面2bと、法尻側に向いた横梁部下面2cとを有する。小段基部3は、横梁部頂面2aと法面Gとの間に設置され、水平な上面3aを有する。
吹付枠1を構成する横梁部2と小段基部3は、吹付枠工により同時にかつ一体的に形成される。吹付枠工では、例えば金網製の型枠(図示せず)とその内部の鉄筋6を配置し、そこに吹付機でモルタル・コンクリートを吹き付けて吹付枠1を造成する。小段基部3は、例えば、吹付枠工で一般に施工される排水を目的とする水切コンクリートの要領で、横梁部2を吹付ける際に小段基部3の水平な上面を形成するように均しモルタルを同時に吹付けすることにより構築する。横梁部2を形成する際、グラウンドアンカー5の補強材5bの頭部5aが貫通するアンカー孔2dが形成されるようにする。このために、例えば、鉄筋6を配置する際にアンカー孔2dの位置に管部材などを配置する。
吹付枠1が固化した後、横梁部前面2bから突出しているグラウンドアンカー5の補強材5bを緊張させてから適宜の固定具を用いて補強材5bの頭部5aを横梁部2に固定することで、グラウンドアンカー5が抑止力として機能する。横梁部2は、グラウンドアンカー5の受圧板として機能する。グラウンドアンカー5は、横梁部2の長さ方向(図2の奥行き方向)に沿って所定の間隔で設置される。
第1の実施形態では、吹付枠1における小段基部3の水平な上面3aが、小段Sを形成する。吹付枠1とグラウンドアンカー5により、傾斜地と新たに構築した小段Sの安定性が確保される。また、法面Gの表層が中抜け崩壊面G2に沿って滑動した場合には、グラウンドアンカー5に対してアンカー軸方向とは異なる荷重(剪断力や曲げモーメント)が作用することから、補強材5bは剛性の高いものが好ましい。
法面の力学的安定性が確保されるのであれば、グラウンドアンカー5に替えて地山補強土工(鉄筋挿入工、ロックボルト工)で代用することも可能である。しかしながら、新たに造成した横梁状の吹付枠1により構築された小段Sを利用して保守点検や維持管理作業を行うため、抑制工の地山補強土工よりも、抑止工のグラウンドアンカー5を併用した方が、傾斜地の変位や変形に対する強度を高められることから望ましい。
一般的に、小段Sの幅は1m以上が必要となる。したがって、例えば高さ80~100cm、幅80~100cmの大断面の横梁部3と小段基部3を同時吹付施工することにより、所定の幅を有する小段Sを造成することが、好適である。
図2では、実施例として、小段基部3の内部にも鉄筋6を設置して施工することによって所定の幅を有する小段Sの強度を高める方法を示している。また、小段基部3の鉄筋6を、横梁部2の鉄筋6と連続させて配筋することにより、横梁部2と小段基部3をより一体化させることができる。鉄筋6は、基本的には横梁部2のサイズに応じて適宜設定すればよく、横梁部2が例えば400×400mm断面であればD16の、500×500m断面であればD25の異形鉄筋が好適であるが、これに限定されるものではない。
(2)第2の実施形態
図3は、図1のII-II断面の一例であり、本発明の第2の実施形態を模式的かつ概略的に示している。第1の実施形態と同じ工程については説明を簡略化する。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の工程によって、吹付枠1とグラウンドアンカー5が設置される。吹付枠1は、第1の実施形態と同様に、一体化された横梁部2と小段基部3とを有する。
第2の実施形態では、さらに、吹付枠1における小段基部3の上面3aの上に板状部材7を設置する工程を有する。板状部材7は、所定の小段幅を有しており、小段基部3の上面3aの全体を少なくとも覆うように載置される。板状部材7の上面が小段Sを形成する。
第2の実施形態の方法によれば、例えば小段基部3の上面3aだけでは所定の小段幅を確保できない場合においても、所定の幅を有する板状部材7を設置することによって所定の幅を有する小段Sを構築できる。
図3に示した実施例では、横梁部2と小段基部3の双方の内部に連続する鉄筋6を背筋してモルタル・コンクリートの吹付けを行って一体化された吹付枠1を形成した後、小段基部3と板状部材7を、ボルトやナットなどの連結固定具7bを用いて固定する方法を示している。
鉄筋6は、第1の実施形態と同様に、基本的には横梁部2のサイズに応じて適宜設定すればよく、例えば400×400mm断面であればD16を、500×500m断面であればD25の異形鉄筋が好適であるが、これに限定されるものではない。また、板状部材7の固定方法もこれに限定されるものではなく、任意の方法を採用することができる。また、必要に応じて板状部材7における法面Gとは反対側の縁部7aから起立するように手摺り部材8を設置することもできる。
小段Sを形成する板状部材7の材質は、鋼製、コンクリート製、ガラス繊維樹脂製など、特に素材は問わないが、小段基部3の上面3aを超えて板状部材7が突出する場合は片持梁構造となるため、曲げ耐力にすぐれた高強度のものが好適である。また、板状部材7の幅は1.0~1.5m程度、長さは法面の走行変化に対応する目的と重量軽減の目的から1.0~2.0m程度のものが好適で、これを順次敷き並べて小段Sを形成させる。なお、板状部材7の厚みは、材料の特性に応じた強度計算を行って決定する。
(3)第3の実施形態
図4は、図1のIII-III断面の一例であり、本発明の第3の実施形態を模式的かつ概略的に示している。
第3の実施形態による小段構築工法は以下の通りである。
図4に示す断面では、グラウンドアンカーの頭部5aのみが示されているが、第1及び第2の実施形態と同様に先ずグラウンドアンカーを法面Gの地山に設置する。
次に、吹付枠1を設置する吹付枠工を行う。吹付枠1は、法面Gの走行方向(水平方向)に沿って設置される。第3の実施形態では、吹付枠1が、第1及び第2の実施形態における矩形断面をもつ横梁部2のみで構成されている。横梁部2は、法肩側に向いた横梁部頂面2aと、法尻側に向いた横梁部下面2cとを有する。
吹付枠工では、例えば金網製の型枠(図示せず)とその内部の鉄筋6を配置し、そこに吹付機でモルタル・コンクリートを吹き付けて吹付枠1を造成する。横梁部2においては、型枠及び鉄筋6を設置する際、第1及び第2の実施形態と同様に、グラウンドアンカーの補強材の頭部5aが貫通するアンカー孔(図示せず)が形成されるようにする。さらに、第3の実施形態では、横梁部頂面2aと横梁部下面2cとの間を貫通する支持部材孔2eが形成されるようにする。横梁部2におけるこれらの孔は、例えばこれらの箇所に管部材などを配置することにより形成できる。
吹付枠1が固化した後、横梁部前面2bから突出している補強材を緊張させてから適宜の固定具を用いて補強材の頭部5aを横梁部2に固定することで、グラウンドアンカーが抑止力として機能する。横梁部2はグラウンドアンカーの受圧板として機能する。グラウンドアンカーは、横梁部2の長さ方向(図4の奥行き方向)に沿って所定の間隔で設置される。
次に、吹付枠1の横梁部2の支持部材孔2eを貫通する棒状の支持部材9が設置される。支持部材9の上端には、例えばボルト螺子が形成され、横梁部2の法肩側に向いた横梁部頂面2aにナットなどで固定される。支持部材9は、横梁部2の法尻側に向いた横梁部下面2cから法尻に向かって突出して所定の長さで法面Gに沿って延在している。支持部材9は、横梁部2の長さ方向に沿って所定の間隔で設置される。
吹付枠1から所定の距離だけ離れた位置において、支持部材9に所定の小段幅を有する板状部材7が水平となるように取り付けられる。板状部材7は、適宜の連結固定具9aにより支持部材9と連結されると共に法面Gに固定される。板状部材7の上面が小段Sを形成する。これにより傾斜地と、新たに構築した小段Sの安定性が確保される。
また、必要に応じて板状部材7における法面Gとは反対側の縁部7aに手摺り部材8を設置することもできる。好ましくは、手摺り部材8が板状部材7よりも下方に法面Gまで延在し、そこで手摺り部材8の下端が適宜の連結固定具9aにより支持部材9及び法面Gと固定される。これにより小段Sの安定性がさらに確保される。
第3の実施形態における各構成要素の組立方法及び連結固定方法は、これらに限定されるものではなく、任意の方法を採用することができる。第3の実施形態では、所定の幅を有する小段Sがグラウンドアンカーを併用している吹付枠1よりも下方に構築されることから、小段Sから吹付枠1及びグラウンドアンカーの保守点検や維持管理を行う場合に好適である。
(4)第4の実施形態
図5は、本発明の第4の実施形態を示している。図5では、一例として、上述した第2の実施形態の小段構築方法を適用して2つの小段Sを構築した傾斜地の側断面を模式的かつ概略的に示している。第2の実施形態に替えて、第1又は第3の実施形態の小段構築方法を適用することもできる。
図5の法面Gは、地山内に想定すべり面G1を有する。この法面Gは、勾配が急であるという用地的制約があるため、土工的に小段を造成しようとするとさらに切土勾配を急にしなければならない。したがって、土工的に小段を造成する場合は、吹付枠とグラウンドアンカーを設置した箇所以外にも、受圧板を設けてグランドアンカーを施工して安定性を確保する必要性が生じる。
これに対して本発明を適用した場合は、土工的に小段をつくる必要がないことから計画勾配を緩くできるので、切土作業に要する手間と経費が削減できる。さらに、グラウンドアンカーの打設本数を減じることができるので、法面保護に要する手間と経費も削減することができる。そして、新たな小段Sの構築により、将来的な保守点検や維持管理作業を軽減することが可能になる。
図5に示した実施例では、法面Gにおいて、上下に設置された2つの吹付枠1の横梁部2にそれぞれ施工されたグラウンドアンカー5に加え、中間部分において吹付枠工11と、鉄筋や鋼管を挿入した地山補強土工12が施されている。中間部分とは、法面Gの上部から、法肩と上側の吹付枠1の間の部分、上側の吹付枠1と下側の吹付枠1の間の部分、下側の吹付枠1と法尻の間の部分であり、本発明による吹付枠1が無い部分である。これらの中間部分では、中抜け崩壊面G2での中抜け崩壊のおそれがあるが、吹付枠工11及び地山補強土工12によって防止することができる。法面Gの補強用の吹付枠工11と地山補強土工12は、必要に応じて一部の中間部分にのみ施してもよく、また、吹付枠工11と地山補強土工12のいずれか一方のみを施してもよい。吹付枠工11は、格子状でも、他の形状でもよい。地山補強土工12は、格子状の吹付枠工の交点に施してもよい。
法面Gの中間部分に施すこれらの工法を「中抜け崩壊防止工」と称することとする。その他の中抜け崩壊防止工として、法面G上に設置された受圧板と地山に挿入された補強鉄筋とを有する地山補強土工も含まれる。また、受圧板の役割を果たす放射状に拡がった頭部を具備する補強鉄筋を地山に挿入する工法も含まれる(特許文献2参照)。
また、従前の方法により直高7~10m毎に土工的に小段が設置された法面を想定すると、傾斜地の安定化を図るためには一般的な格子状の吹付枠とグラウンドアンカーによる法面保護工が必要である。その場合、グラウンドアンカーは縦横2~3m間隔で打設する必要があるが、グラウンドアンカーの打設位置は、格子状の吹付枠の縦梁と横梁の交点に限定されてしまうことから、所定の抑止力を持たせるためにはグラウンドアンカーの打設本数を増加せざるを得ない場合が多い。
これに対して、傾斜地に横梁状の吹付枠1のみを設置する本発明を適用した場合、縦梁がないことから、グラウンドアンカーの上下方向の打設間隔が所定の抑止力を確保し得る最低限の間隔となるように、上下方向に吹付枠1を設置すればよい。そして、吹付枠1の設置場所を小段Sの構築箇所と一致させることによって、法面Gの安定化と同時に新たな小段Sを設置でき、保守点検や維持管理が可能になるという付加価値が得られる。
また、上下に位置する2つの吹付枠1の間の中抜け崩壊対策が必要な場合は、例えば老朽化モルタル吹付法面の補修対策で用いられているような、鉄筋や鋼管を法面に打設する地山補強土工12を併用することにより、従前の方法と比較してグラウンドアンカー打設本数を減らすことができる。
以上に述べたように、本発明は、土工的な小段造成を伴ったり格子状の吹付枠工をベースとしたりする従前の一般的な法面保護工と比較して、グラウンドアンカーの打設本数を減らすことができるので、コスト削減にも有効な経済性の高い対策工を実現できる。
また、グラウンドアンカーの打設本数を減らすことにより、施工後の保守点検や維持管理に要するライフサイクルコストの低減にもつながるので、傾斜地に土工的な手段を用いずに新たな小段を構築する方法は、今後ますます社会的要求が高まる技術といえる。
1 吹付枠
2 横梁部
2a 横梁部頂面
2b 横梁部前面
2c 横梁部下面
2d アンカー孔
2e 支持部材孔
3 小段基部
3a 上面
5 グラウンドアンカー
5a アンカー頭部
5b 補強材
5c 掘削孔
5d グラウト
6 鉄筋
7 板状部材
7a 縁部
7b 連結固定具
8 手摺り部材
9 支持部材
9a 連結固定具
11 吹付枠工
12 地山補強土工
S 小段
G 法面
G1 想定すべり面
G2 中抜け崩壊面

Claims (5)

  1. 傾斜地に吹付枠工を用いて小段(S)を構築する工法であって、
    法面(G)に設けた掘削孔(5c)に補強材(5b)を挿入しその先端部をグラウト(5d)で固定する、グラウンドアンカー(5)の設置工程と、
    前記補強材(5b)の頭部(5a)が貫通し固定される横梁部(2)を有しかつ法面(G)の走行方向に連続的に延在する吹付枠(1)をモルタル・コンクリート吹付けにより法面(G)上に設置する工程であって、前記モルタル・コンクリート吹付けにおいて前記横梁部(2)の法肩側に向いた横梁部頂面(2a)と法面(G)との間に三角形断面と水平な上面(3a)とをもつ小段基部(3)を同時に形成する、前記吹付枠(1)の設置工程と、を有し、
    前記小段基部(3)の上面(3a)が小段(S)を形成することを特徴とする、傾斜地における小段構築工法。
  2. 傾斜地に吹付枠工を用いて小段(S)を構築する工法であって、
    法面(G)に設けた掘削孔(5c)に補強材(5b)を挿入しその先端部をグラウト(5d)で固定する、グラウンドアンカー(5)の設置工程と、
    前記補強材(5b)の頭部(5a)が貫通し固定される横梁部(2)を有する吹付枠(1)をモルタル・コンクリート吹付けにより法面(G)上に設置する工程であって、前記モルタル・コンクリート吹付けにおいて前記横梁部(2)の法肩側に向いた横梁部頂面(2a)と法面(G)との間に三角形断面と水平な上面(3a)とをもつ小段基部(3)を同時に形成する、前記吹付枠(1)の設置工程と、
    前記小段基部(3)の上面(3a)全体を少なくとも覆う所定の小段幅を有する板状部材(7)を設置する工程と、を有し、
    前記板状部材(7)の上面が小段(S)を形成することを特徴とする、傾斜地における小段構築方法。
  3. 傾斜地に吹付枠工を用いて小段(S)を構築する工法であって、
    法面(G)に設けた掘削孔(5c)に補強材(5b)を挿入しその先端部をグラウト(5d)で固定する、グラウンドアンカー(5)の設置工程と、
    前記補強材(5b)の頭部(5a)が貫通し固定される矩形断面をもつ横梁部(2)を有する吹付枠(1)をモルタル・コンクリート吹付けにより法面(G)上に設置する工程と、
    前記吹付枠(1)の前記横梁部(2)により支持されかつ前記横梁部(2)の法尻側に向いた横梁部下面(2c)から法尻へ向かって所定の長さで延在する支持部材(9)を設置する工程と、
    所定の小段幅を有する板状部材(7)を水平となるように前記支持部材(9)に連結すると共に法面(G)に固定する工程と、を有し、
    前記板状部材(7)の上面が小段(S)を形成することを特徴とする、傾斜地における小段構築方法。
  4. 前記板状部材(7)における法面(G)とは反対側の縁部(7a)から起立する手摺り部材(8)を設置することを特徴とする請求項2又は3に記載の、傾斜地における小段構築方法。
  5. 法面(G)において上下に位置する2つの前記吹付枠(1)の間、及び/又は、前記吹付枠(1)と法肩若しくは法尻との間に、中抜け崩壊防止工を施すことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の、傾斜地における小段構築方法。
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