JPH06240679A - 法面保護用植生棚 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 法面に自然的潤いのある環境造りをするとと
もに、設計・計算及び施工が容易な法面保護用植生棚と
する。 【構成】 法面の地山に左右に適宜間隔づつ離して、複
数本のアンカー１を打設する。左右のアンカー１・１間
に中間部を円弧状に屈曲したフープテンション材２を配
して起立させ、隣合うフープテンション材２・２の端部
同士を重ねる。この重ね合せた端部１０をアンカー１・
１によって押える。フープテンション材２はエキスパン
ドメタルなどの金属性網状材によって形成する。フープ
テンション材２に向き合わせて型枠材３を起立し、その
間にモルタル５などの硬化材を打設する。 【作用】 法面が滑動しようとする力は引張力となっ
て、両端を固定した袋状構造材となったフープテンショ
ン材２に作用する。したがってその構成はＲＣ構造に比
較して著しく簡易であり、設計・施工が容易になる。ア
ンカーを定着する部分の耐力が大きく、大きなプレスト
レスも与えられる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は法面に形成して景観を
良好にするための植生棚に関するものであって、特に法
面の保護を図ることも可能な簡易な構造物である法面保
護用植生棚に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】法面を保護するために、法面の地山にモ
ルタルを吹付けたり、コンクリートブロックを積み上げ
て保護する方法が採用されている。このような方法であ
ると、モルタルやコンクリートが法面にそのまま露出す
るため、周囲の景観との間に違和感を生じさせていた。
このような環境上の課題を解決するために、モルタル吹
付けやブロック積とともに、法面上に植生棚を形成する
ことが採用されている。この植生棚は法面上に型枠を設
置してモルタルなどを打設して形成するもので、傾斜し
た法面に点在するようにできた複数個のポケット状の棚
に植生土を埋めて植生するものである。

【０００３】

【この発明が解決しようとする課題】このような植生棚
であると、植生の為だけに使用するものであって、これ
を積極的に法面の保護には使用してはいない。これでは
折角形成した植生棚が構造物としては有効に利用されて
いないことになる。

【０００４】このために図６に示すように、法面の地山
にアンカーを打設して、このアンカーに植生棚を固定し
てアンカーに与えたプレストレス力によって地山を押え
る構造物として使用することが考えられる。しかしなが
ら、図のように連続する棚をアンカーａに連結する部分
には地山方向へのプレストレス力が作用し、隣合うアン
カーａの中間部分ｂには、地山が滑動しようとする力が
作用して反対方向の力が作用する。これを図６の下部に
示す応力分布図に示す。つまり植生棚には相反する反対
方向の力が作用することになり、この力に耐え得るよう
にするためには、図に示すように鉄筋ｃを平行に二本以
上配して、いわゆるＲＣ構造として設計しなくてはなら
ない。このようなＲＣ構造の植生棚であると、その設計
及び施工が著しく複雑で難しく、また構造材としての鉄
筋も多くかかり、施工が手間どるとともに施工費も高く
なってしまう。

【０００５】また上記したような構造であると、アンカ
ーにプレストレス力を与えることが難しい。すなわちア
ンカーを定着した部分には大きな曲げやせん断力が発生
するため、この力に耐えうるような構造でなくてはなら
ない。しかし図６に示すような構造であるとプレストレ
ス力を受ける部分の断面が薄く、その耐力は小さく、大
きなプレストレス力を与えることができない。またアン
カーを定着をしようとしても、断面の小さな部分に定着
部を設けることもできない。

【０００６】この発明は以上のような課題を解決するた
めになされたもので、法面の保護のために有効な構造物
としても機能し、かつ設計・施工が容易であるとともに
施工も安価に行なうことができる法面保護用植生棚を提
供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明にかかる法面保
護用植生棚は、アンカーとアンカーの間の荷重を受ける
部分をフープテンション構造とするものである。フープ
テンション構造とは、環状の構造材、言い換えれば端を
固定した袋状の構造として、これによって荷重を受ける
ものである。まず左右に適宜間隔づつ離して地山に複数
本のアンカーを打設する。アンカーとしてはロックボル
トのようなものでもよいし、複数本の引張材をシースの
中に通して、地山に掘削した削孔内にて硬化材によって
定着するグラウンドアンカーなど様々な構成のものが採
用できる。中間部を円弧状に屈曲したフープテンション
材を隣合わせて地山に並べる。この隣合った左右のフー
プテンション材の端同士を重ね合わせ、左右に位置する
アンカーによって押えるようにする。フープテンション
材は金属製網状材によって形成するもので、その金属製
網状材としては金属板にスリットを形成して引き伸ばす
エキスパンドメタルや波状に屈曲形成した線材を編んだ
クリンプ金網、或いはメタルラスなどが使用できる。押
えるとは、アンカーによって直接押えずとも、後に打設
するモルタルなどの硬化材によって押えて、硬化材を介
してアンカーによりフープテンション材の端を押えるよ
うにしてもよい。

【０００８】フープテンション材と向き合わせて型枠板
を法面上に起立する。フープテンション材もそうである
が、型枠板も左右のアンカーの間を１スパンとして、１
スパンごとに各々別個のものを、端を重ねて使用しても
よいが、全長の長い一枚を数スパンに亘って連続して使
用してもよい。型枠板としてはエキスパンドメタル，ク
リンプ金網やその他公知の型枠用材料が使用できる。こ
のフープテンション材と型枠板の間にコンクリート，モ
ルタル，樹脂モルタルなどの硬化材を打設して棚を形成
する。棚と地山の間に植生土を埋めて、植生する。構造
上必要であるならば、フープテンション材に沿って円弧
状に屈曲した鉄筋を配筋することも採用できる。

【０００９】

【作用】アンカーに連結した棚に地山が滑って崩れよう
とする荷重が作用した場合、棚を押し出そうとする力と
なって作用する。この力を構造材としてのフープテンシ
ョン材によって受ける。フープテンション材は円弧状に
屈曲しており、フープテンション材は左右をアンカーに
よって固定された袋状の構造材となっており、前記した
荷重がフープテンション材に引張力となって作用する。
つまり荷重を全てフープテンション材によって受けよう
とするものであって、フープテンション材を採用した設
計・計算は著しく容易である。

【００１０】またフープテンション材は円弧状に屈曲し
ているため、フープテンション材とフープテンション材
との間の断面は大きくなるため、この部分にアンカーの
定着部を設けることもできるし、曲げやせん断にも耐え
得る大きな耐力を持つことになる。

【００１１】

【実施例】以下、図に示す一実施例に基づきこの発明を
詳細に説明する。まず法面の地山にアンカー１を打設す
る。実施例では複数本の鋼より線を束ねてシースの中に
通したグラウンドアンカーを使用し、これを地山に掘削
した削孔内にて硬化材によって定着する。アンカー１は
左右に適宜間隔づつ離して、複数本を地山に打設する。

【００１２】このアンカー１にフープテンション材２を
連結する。実施例では図２に示すようにフープテンショ
ン材２と型枠板３との間隔をを連結材４によって連結し
てユニット化したものを使用する。フープテンション材
２は中間部が円弧状に屈曲しており、左右に端部１０・
１０が張り出している。下辺は左右端に行くにつれて上
昇するよう斜面に沿わせることが可能なようテーパー状
にしてある。実施例ではフープテンション材２と型枠板
３としてエキスパンドメタルを使用した。このユニット
化したフープテンション材２と型枠板３を左右のアンカ
ー１・１の間に設置して、隣合うフープテンション材２
・２の端部１０・１０同士，型枠板３・３の端部同士を
重ね合う。各アンカー１は、隣合うフープテンション材
２・２の重なり合った部分を貫通させる。

【００１３】以上のようなフープテンション材２と型枠
板３との間に、硬化材であるモルタル５を打設する。フ
ープテンション材２は構造材として使用するため、かぶ
り厚さは或る程度厚くしておく。アンカー１の先端は、
型枠板３側に凹設した穴６内に位置させておく。アンカ
ー１の引張材をアンカーヘッド７の孔に通した状態でプ
レストレス力を与え、くさびによって定着する。穴６に
モルタルを詰めて仕上げる。アンカー１は直接にはモル
タル５に定着するのであるが、モルタル５はフープテン
ション材２にも付着しており、モルタル５を介してプレ
ストレス力はフープテンション材２の端部を押えること
になる。以上のようにして棚８を形成して、棚８と地山
間に植生土９を詰めて植生する。植生棚の周辺はモルタ
ル吹付けなどによって保護を施す。

【００１４】図５に示すように、植生棚を地山に数段に
構築して、地山を保護する。地山が滑って崩れようとす
る力は、棚８に作用する。フープテンション材２の左右
端はモルタル５を介してアンカー１によって固定されて
いるため、フープテンション材２には荷重が引張力とな
って作用する。フープテンション材２は金属製材料によ
って形成されているため、この引張力に充分耐え得る構
造となっている。またフープテンション材２は円弧状に
形成されているため、フープテンション材２とフープテ
ンション材２との間の断面が大きくなり、この部分の耐
力が大きくなり、曲げやせん断にも耐え得る構造とな
る。

【００１５】

【発明の効果】この発明は以上のような課題を解決する
ためになされたもので、以下のような効果を得ることが
できる。 棚に植生して、法面に潤いのある自然的環境を造るこ
とができる。 棚は地山に打設したアンカーによって固定してあるた
め、法面の浮き上がろうとする力を押える法面保護の構
造物として有効な構造物となる。 法面が滑動しようとする力を、ほぼフープテンション
材のみによって受けるため、極めて簡易な構造となる。
そのため構造の設計・計算が極めて容易で、施工の手間
も著しく省力化することができる。 フープテンション材は円弧状に形成してあるため、隣
合うフープテンション材間の断面が大きくなり、アンカ
ーを定着する定着部を設けることが可能となる。 フープテンション材とフープテンション材との間の断
面が大きくなり、アンカーにプレストレス力を与えて
も、曲げやせん断力に耐え得るような構造となる。従っ
てグラウンドアンカーを採用して、大きなプレストレス
力を与えることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】法面保護用植生棚の一実施例の斜視図である。

【図２】ユニット化したフープテンション材と型枠板の
斜視図である。

【図３】法面保護用植生棚の断面図である。

【図４】法面保護用植生棚の施工状態の平面図である。

【図５】法面保護用植生棚を施工した法面の断面図であ
る。

【図６】ＲＣ構造を使用した植生棚の平面図である。 １ アンカー ２ フープテンション材 ３ 型枠板 ４ 連結材 ５ モルタル ６ 穴 ７ アンカーヘッド ８ 棚 １０ 端部

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 左右に適宜間隔づつ離して地山に複数本
   のアンカーを打設し、中間部を円弧状に屈曲した金属製
   網状材からなるフープテンション材を左右に隣合わせて
   並べ、隣合うフープテンション材の端同士を互いに重
   ね、この重ね合わせた部分をアンカーによって押えるよ
   うにして複数個を隣合わせて法面上に起立し、このフー
   プテンション材と向き合わせて型枠板を法面上に起立
   し、フープテンション材と型枠板の間に硬化材を打設し
   て棚を形成し、棚と地山の間に植生土を埋めて植生した
   ことを特徴とする法面保護用植生棚。
2. 【請求項２】 フープテンション材と型枠板間には、円
   弧状に屈曲した鉄筋を配筋したことを特徴とする請求項
   １記載の法面保護用植生棚。
3. 【請求項３】 フープテンション材はエキスパンドメタ
   ルによって形成してあることを特徴とする請求項１又は
   ２記載の法面保護用植生棚。
4. 【請求項４】 フープテンション材はクリンプ金網によ
   って形成してあることを特徴とする請求項１又は２記載
   の法面保護用植生棚。