JP2022066763A - 化合物、光応答性ニトロソニウムイオンドナー - Google Patents
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Abstract
【課題】光の照射に応答してNO+を特異的に放出する化合物;前記化合物を含む光応答性NO+ドナーを提供する。【解決手段】下式(1)~(3)で表される化合物;前記化合物を含む、光応答性NO+ドナー。[化1]TIFF2022066763000024.tif60170【選択図】なし
Description
本発明は、化合物、光応答性ニトロソニウムイオンドナー(光応答性NO+ドナー)に関する。
一酸化窒素(NO)は、血管拡張、神経伝達、免疫応答等の種々の生理学的応答に関与していることが知られている。しかし、NOは、反応性が高く、実験試薬としての貯蔵、取扱いが困難である。そこで、光照射に応答してNOを放出する合成化合物が提案されている(例えば、非特許文献1)。
非特許文献1には、N-ニトロソアミノフェノールに由来するNO放出部位と酸素含有型のローダミン色素部位とを有する化合物として、NO-Rosa5が開示されている。NO-Rosa5は、下式(100)で表される化合物である。
図7に示す合成化合物100は、酸素含有型のローダミン色素部位(アンテナ部位)101とNO放出部位102を有する。合成化合物100は、ローダミン色素部位101で照射光のエネルギーを吸収し、不安定なフェノキシラジカル103を生成した後、安定なキノン体104となる。キノン体104の生成に際して、NO放出部位102から一分子のNOが放出される(非特許文献1参照)。
加えて、非特許文献1では、NO-Rosa5のネガティブコントロールとしてNO-Rosa6が開示されている。NO-Rosa6は、酸素含有型のローダミン色素部位を有する。
加えて、非特許文献1では、NO-Rosa5のネガティブコントロールとしてNO-Rosa6が開示されている。NO-Rosa6は、酸素含有型のローダミン色素部位を有する。
Ieda,N. et al.,Sci.Rep.2019,9,1430.
しかし、従来、NOによる生理学的作用は、ニトロソニウムイオン(NO+)による生理学的作用と厳密に区別されていない。そのため、NO+の放出に特化した合成化合物の開発例はない。
そこで、本発明は、光の照射に応答してNO+を特異的に放出する化合物;前記化合物を含む光応答性NO+ドナーを提供する。
そこで、本発明は、光の照射に応答してNO+を特異的に放出する化合物;前記化合物を含む光応答性NO+ドナーを提供する。
本発明者は非特許文献1の発表後に実験を繰り返し、NO-Rosa6が一酸化窒素を放出しない代わりにNO+を放出していることを突き止めた。加えて本発明者は、NO+がNOよりもニトロシル化反応を起こしやすいことを見出し、光の照射に応答してNO+を放出する合成化合物が生体内でのニトロシル化を伴う生理学的反応等の分析試薬等の用途に有用であることに想到した。
本発明は下記の[1]~[4]の態様を有する。
[1] 下式(1)~(3)で表される化合物。
式(1)~(3)中、Xはケイ素含有型のローダミン色素基またはリン含有型のローダミン色素基であり、Rはメチル基またはエチル基である。
[2] 前記ケイ素含有型のローダミン色素基が、下式(g1)~下式(g4)のいずれかで表される基である、[1]の化合物。
[3] 前記リン含有型のローダミン色素基が、下式(h1)~下式(h4)のいずれかで表される基である、[1]または[2]の化合物。
式(h1)~式(h4)中、リン原子に結合する「Ph」はフェニル基である。
[4] [1]~[3]のいずれかの化合物を含む、光応答性NO+ドナー。
[1] 下式(1)~(3)で表される化合物。
[2] 前記ケイ素含有型のローダミン色素基が、下式(g1)~下式(g4)のいずれかで表される基である、[1]の化合物。
[4] [1]~[3]のいずれかの化合物を含む、光応答性NO+ドナー。
本発明によれば、光の照射に応答してNO+を特異的に放出する化合物;前記化合物を含む光応答性NO+ドナーが提供される。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書においては、式(g1)で表される基を基(g1)と記す。他の式で表される基も同様に記す。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本明細書においては、式(g1)で表される基を基(g1)と記す。他の式で表される基も同様に記す。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
式(1)~(3)中、Xはケイ素含有型のローダミン色素基またはリン含有型のローダミン色素基であり、Rはメチル基またはエチル基である。
ケイ素含有型のローダミン色素基は、ケイ素原子を含むローダミン色素骨格を有する。ケイ素含有型のローダミン色素基は、本発明の化合物の光吸収部位である。
ケイ素含有型のローダミン色素基としては、例えば、下記の基(g1)~基(g4)が挙げられる。ただし、ケイ素含有型のローダミン色素基は、発明の効果が得られる範囲内であれば特に限定されず、下記の例示に限定されない。
ケイ素含有型のローダミン色素基としては、例えば、下記の基(g1)~基(g4)が挙げられる。ただし、ケイ素含有型のローダミン色素基は、発明の効果が得られる範囲内であれば特に限定されず、下記の例示に限定されない。
これらの中でも基(g1)が好ましい。本発明の化合物が基(g1)を有すると、長波長の光に応答してNO+を放出できる。そのため、外部刺激として照射する光の生体透過性が高くなり、生体内に投与した際でも外部刺激の光に対する応答性がよくなる。
リン含有型のローダミン色素基は、リン原子を含むローダミン色素骨格を有する。リン含有型のローダミン色素基は、本発明の化合物の光吸収部位である。
リン含有型のローダミン色素基としては、下記の基(h1)~基(h4)が挙げられる。ただし、リン含有型のローダミン色素基は、発明の効果が得られる範囲内であれば特に限定されず、下記の例示に限定されない。
リン含有型のローダミン色素基としては、下記の基(h1)~基(h4)が挙げられる。ただし、リン含有型のローダミン色素基は、発明の効果が得られる範囲内であれば特に限定されず、下記の例示に限定されない。
式(h1)~式(h4)中、リン原子に結合する「Ph」はフェニル基である。
本発明の化合物としては、光応答性の点から化合物(1)、化合物(2)が好ましく、化合物(1)がより好ましい。以下、化合物(1)の具体的態様を開示するが、本発明は、以下の例示に限定されない。
化合物(1)としては、例えば、下記の化合物(1-g1)、化合物(1-g2)、化合物(1-g3)、化合物(1-g4)、化合物(1-h1)、化合物(1-h2)、化合物(1-h3)、化合物(1-h4)が挙げられる。
化合物(1)としては、例えば、下記の化合物(1-g1)、化合物(1-g2)、化合物(1-g3)、化合物(1-g4)、化合物(1-h1)、化合物(1-h2)、化合物(1-h3)、化合物(1-h4)が挙げられる。
化合物1としては、外部刺激としての光の生体透過性の点から、化合物(1-g1)、化合物(1-g2)、化合物(1-g3)、化合物(1-g4)、(1-h1)、化合物(1-h2)、化合物(1-h3)および化合物(1-h4)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、化合物(1-h1)、化合物(1-h2)、化合物(1-h3)および化合物(1-h4)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上がより好ましい。
図1は、本発明の化合物の光応答の一態様を示す図である。
図1に示すように、化合物20は、ローダミン色素含有基(アンテナ部位)21とNO+放出部位22とを有する。化合物20に光が照射されるとローダミン色素含有基21がアンテナとして機能して照射光のエネルギーhνを吸収する。そして、ローダミン色素含有基21が照射光を吸収することで、化合物20内で電子移動が起き、不安定なラジカルカチオン中間体23を生成した後、電荷のない安定なアニリルラジカル24となる。電荷のない安定なアニリルラジカル24の生成に際して、NO+放出部位22からNO+が放出される。
図1に示すように、化合物20は、ローダミン色素含有基(アンテナ部位)21とNO+放出部位22とを有する。化合物20に光が照射されるとローダミン色素含有基21がアンテナとして機能して照射光のエネルギーhνを吸収する。そして、ローダミン色素含有基21が照射光を吸収することで、化合物20内で電子移動が起き、不安定なラジカルカチオン中間体23を生成した後、電荷のない安定なアニリルラジカル24となる。電荷のない安定なアニリルラジカル24の生成に際して、NO+放出部位22からNO+が放出される。
図1に示すように本発明の化合物においては、光の照射によって光誘起電荷分離が起き、NO+が放出される。光の照射によってNO+の生成時期を制御できるため、光を照射する場所、照射時間、照射時期をそれぞれ制御することで、NO+の生成およびNO+の活性の発現を時空間的に任意に制御できる。
以上説明したように、本発明の化合物はケイ素含有型のローダミン色素基またはリン含有型のローダミン色素基で光を吸収し、NO+を特異的に放出する。そのため、本発明の化合物は、S-ニトロシル化等のNO+が関与する生体シグナルの解明に有用である。
他にも、後述の実施例に示すように、NO+は血管弛緩作用を示すことから、本発明の化合物は循環器系疾患の治療剤として有用である可能性がある。
他にも、後述の実施例に示すように、NO+は血管弛緩作用を示すことから、本発明の化合物は循環器系疾患の治療剤として有用である可能性がある。
本発明の化合物は、例えば、後述の実施例で示す方法によって合成できる。ただし、本発明の化合物の合成方法は、式(1)~(3)に示す化学構造を実現できる方法であれば、特に限定されず、実施例の方法に限定されない。
(用途)
本発明の化合物は、光応答性NO+ドナーに適用できる。本発明の化合物を含む光応答性NO+ドナーにあっては、光の照射に応じてNO+の出現を制御できる。
そのため、光応答性NO+ドナーは、光の照射時間、照射時期を適宜選択することで、NO+の出現を時空間的に制御する用途に適用できる。
例えば、光応答性NO+ドナーをマウス等のモデル生物に投与し、光の照射時間、照射時期を適宜選択することで、NO+の放出時間、放出時期を時間的に制御できる。加えて、光を照射するモデル生物の臓器部位を選択することで、NO+がモデル生物の体内で放出される部位を選択的に、かつ、空間的に制御できる。
本発明の化合物は、光応答性NO+ドナーに適用できる。本発明の化合物を含む光応答性NO+ドナーにあっては、光の照射に応じてNO+の出現を制御できる。
そのため、光応答性NO+ドナーは、光の照射時間、照射時期を適宜選択することで、NO+の出現を時空間的に制御する用途に適用できる。
例えば、光応答性NO+ドナーをマウス等のモデル生物に投与し、光の照射時間、照射時期を適宜選択することで、NO+の放出時間、放出時期を時間的に制御できる。加えて、光を照射するモデル生物の臓器部位を選択することで、NO+がモデル生物の体内で放出される部位を選択的に、かつ、空間的に制御できる。
生体内でのNO+の時空間制御への適用を考慮する場合、外部刺激としての光は可視光が好ましい。この場合、可視光の波長は、500nm以上が好ましく、560nm以上がより好ましく、650nm以上がさらに好ましい。可視光域の光の波長が前記下限値以上であると、生体に対する負荷が少なく、また、生体透過性もよくなり、生体内部の組織、細胞に本発明の化合物が存在するときでも光応答性がよくなる。
可視光域の光の波長の上限値は特に限定されない。可視光域の光の波長の上限値は、例えば、800nm程度である。
以上より、可視光域の光の波長は、500~800nmが好ましく、560~800nmがより好ましく、650~800nmがさらに好ましい。ただし、本発明において外部刺激としての光は可視光に限定されない。
可視光域の光の波長の上限値は特に限定されない。可視光域の光の波長の上限値は、例えば、800nm程度である。
以上より、可視光域の光の波長は、500~800nmが好ましく、560~800nmがより好ましく、650~800nmがさらに好ましい。ただし、本発明において外部刺激としての光は可視光に限定されない。
(光応答性NO+ドナー)
光応答性NO+ドナーは、本発明の化合物を含む。光応答性NO+ドナーは、液状媒体をさらに含んでもよい。本発明の光応答性NO+ドナーは、本発明の効果が得られる範囲内であれば、本発明の化合物および液状媒体以外の任意成分として添加剤をさらに含んでもよい。
光応答性NO+ドナーは、本発明の化合物を含む。光応答性NO+ドナーは、液状媒体をさらに含んでもよい。本発明の光応答性NO+ドナーは、本発明の効果が得られる範囲内であれば、本発明の化合物および液状媒体以外の任意成分として添加剤をさらに含んでもよい。
液状媒体は、水性媒体でも有機媒体でもよい。
水性媒体としては、水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、リンゴ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、メタリン酸緩衝液、ソルビン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-HCl緩衝液(トリス塩酸緩衝液)、MES緩衝液(2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝液)、TES緩衝液(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸緩衝液)、MOPS緩衝液(3-モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液)、HEPES緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液)等の緩衝液;グリシン-塩酸緩衝液、グリシン-NaOH緩衝液、グリシルグリシン-NaOH緩衝液、グリシルグリシン-KOH緩衝液等のアミノ酸系緩衝液;トリス-ホウ酸緩衝液、ホウ酸-NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液等のホウ酸系緩衝液;イミダゾール緩衝液等が挙げられる。
有機媒体としては、エタノール、2-プロパノール等のアルコール;ジエチルエーテル等のエーテル;トリエチルアミン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の脂肪族溶媒;トルエン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒が挙げられる。
水性媒体としては、水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、リンゴ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、メタリン酸緩衝液、ソルビン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-HCl緩衝液(トリス塩酸緩衝液)、MES緩衝液(2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝液)、TES緩衝液(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸緩衝液)、MOPS緩衝液(3-モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液)、HEPES緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液)等の緩衝液;グリシン-塩酸緩衝液、グリシン-NaOH緩衝液、グリシルグリシン-NaOH緩衝液、グリシルグリシン-KOH緩衝液等のアミノ酸系緩衝液;トリス-ホウ酸緩衝液、ホウ酸-NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液等のホウ酸系緩衝液;イミダゾール緩衝液等が挙げられる。
有機媒体としては、エタノール、2-プロパノール等のアルコール;ジエチルエーテル等のエーテル;トリエチルアミン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の脂肪族溶媒;トルエン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒が挙げられる。
添加剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア塩等のpH調整剤;乳糖、デンプン、ソルビトール等の賦形剤;アラビアゴム等の乳化剤;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の懸濁剤;プロピレングリコール等の安定剤;ベンジルアルコール等の保存剤等が挙げられる。
光応答性NO+ドナーの組成は、特に限定されない。光応答性NO+ドナーの組成は、所望の用途、使用方法に応じて適宜変更できる。
例えば、本発明の化合物の含有量は、1~1000nMでもよく、1~1000μMでもよく、1~1000mMでもよい。
例えば、本発明の化合物の含有量は、1~1000nMでもよく、1~1000μMでもよく、1~1000mMでもよい。
光応答性NO+ドナーの剤型は特に限定されない。所望の用途、使用方法、使用量、用法、用量に応じて適時選択できる。剤型の具体例としては、液剤、乳剤、懸濁剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、座剤等が挙げられる。
光応答性NO+ドナーは、剤型に応じて経口投与、非経口投与のいずれにも適用できる。非経口投与としては、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮投与、経鼻投与、経粘膜投与等が挙げられる。
光応答性NO+ドナーは、剤型に応じて経口投与、非経口投与のいずれにも適用できる。非経口投与としては、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮投与、経鼻投与、経粘膜投与等が挙げられる。
光応答性NO+ドナーは、血管弛緩作用を示すことから血管弛緩剤としても有用である。血管拡張に際しては、例えばsGC(soluble Guanylate Cyclase)のような酵素が関与する。光応答性NO+ドナーは、光照射によりNO+を放出することで、sGCを活性化すると考えられる。sGCの活性化の結果、血管拡張が起き、血管弛緩が観測される。
血管拡張、血管弛緩の程度の制御を目的として、ODQ((1H[1,2,3]oxadiazolo[4,3-alpha]quinoxalin))等のsGCの阻害剤を併用してもよい。ODQはsGCの酵素活性を阻害して、血管収縮を起こすように作用する。そのため、ODQ等の阻害剤の併用により、血管拡張、血管弛緩の程度を負に制御することも可能である。
光応答性NO+ドナーは、例えば、NO+の生理活性、生理学的作用の分析のための研究試薬;NO+が生理学的応答に関与する疾患の治療薬として使用できると期待できる。
次に実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されない。
<合成例>
以下に示す反応経路により、NORD-2を合成した。以下、化合物2、化合物3、化合物5、NORD-2の順に合成反応を詳細に説明する。
以下に示す反応経路により、NORD-2を合成した。以下、化合物2、化合物3、化合物5、NORD-2の順に合成反応を詳細に説明する。
(化合物2の合成)
3-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン(2.36mL,1.61mmol)を酢酸(50mL)に溶かし、攪拌しながら37%ホルムアルデヒド水溶液(32.0mmol,2.0当量)を加えた。70℃で50分間攪拌した後、さらに37%ホルムアルデヒド水溶液(2.0mL,1.7当量)を加え、30分間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液(100mL)を加えた後、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製(n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1)し、化合物2を2.93g(35%)、白色固体として得た。
化合物2の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)6.93(2H,d,J=2.6Hz),6.84(2H,d,J=8.6Hz),6.50(2H,dd,J=2.7Hz,8.6Hz),2.91(12H,s).
3-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン(2.36mL,1.61mmol)を酢酸(50mL)に溶かし、攪拌しながら37%ホルムアルデヒド水溶液(32.0mmol,2.0当量)を加えた。70℃で50分間攪拌した後、さらに37%ホルムアルデヒド水溶液(2.0mL,1.7当量)を加え、30分間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液(100mL)を加えた後、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製(n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1)し、化合物2を2.93g(35%)、白色固体として得た。
化合物2の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)6.93(2H,d,J=2.6Hz),6.84(2H,d,J=8.6Hz),6.50(2H,dd,J=2.7Hz,8.6Hz),2.91(12H,s).
(化合物3の合成)
化合物2(5.19g,12.6mmol)の無水THF(200mL)の溶液に、-78℃,アルゴン雰囲気下で1.05Mのsec-butyllithiumのn-ヘキサン溶液(3.27mL,37.4mmol,3.0equiv.)を10分以上かけて滴下した。1時間攪拌した後、ジクロロジメチルシラン(2.77mL,23.0mmol,1.8equiv.)を加え、室温にして2時間攪拌した。反応を2規定塩酸でクエンチし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後に、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥した後に、濾過し、ろ液の溶媒を留去した。残渣をアセトン(60.0mL)に溶解し、-15℃で攪拌しながら過マンガン酸カリウム(4.55g)を5分ごと6回に分けて溶液に添加した。-15℃で30分間撹拌した後、反応混合物をジクロロメタンで洗浄しながらセライトで濾過して、ろ液を濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=1/4)で精製し、淡黄色固体として化合物3(1.80g,5.55mmol,44%)を得た。
化合物3の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)8.39(2H,d,J=9.0Hz),6.84(2H,dd,J=2.8Hz,9.0Hz),6.79(2H,d,J=2.7Hz),3.10(12H,s),0.466(6H,s).
化合物2(5.19g,12.6mmol)の無水THF(200mL)の溶液に、-78℃,アルゴン雰囲気下で1.05Mのsec-butyllithiumのn-ヘキサン溶液(3.27mL,37.4mmol,3.0equiv.)を10分以上かけて滴下した。1時間攪拌した後、ジクロロジメチルシラン(2.77mL,23.0mmol,1.8equiv.)を加え、室温にして2時間攪拌した。反応を2規定塩酸でクエンチし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後に、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥した後に、濾過し、ろ液の溶媒を留去した。残渣をアセトン(60.0mL)に溶解し、-15℃で攪拌しながら過マンガン酸カリウム(4.55g)を5分ごと6回に分けて溶液に添加した。-15℃で30分間撹拌した後、反応混合物をジクロロメタンで洗浄しながらセライトで濾過して、ろ液を濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=1/4)で精製し、淡黄色固体として化合物3(1.80g,5.55mmol,44%)を得た。
化合物3の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)8.39(2H,d,J=9.0Hz),6.84(2H,dd,J=2.8Hz,9.0Hz),6.79(2H,d,J=2.7Hz),3.10(12H,s),0.466(6H,s).
(化合物5の合成)
化合物4(2.67mL,17.8mmol,3.3equiv.)の無水THF(30mL)の溶液に、-78℃,アルゴン雰囲気下で1.05Mのsec-butyllithiumのn-ヘキサン溶液(16.0mL,18.3mmol,3.0equiv.)を10分以上かけて滴下した。1時間攪拌した後、化合物3(1.75g,5.40mmol)の無水THF溶液(60mL)を滴下添加し、室温に出してさらに15分間攪拌した。2規定塩酸を加えて反応液をクエンチし、15分間撹拌した。水を加え、混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後に、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15/1→10/1)で精製した。アルデヒドとヘミアセタールの混合物として回収した精製物をアセトニトリル(40mL)に溶解し、2規定塩酸(40mL)を加えて室温で5分間撹拌した。ヘミアセタールの加水分解をESI-MSで確認し、反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。これをろ過し、ろ液を濃縮して濃青色の固体として化合物5(1.55g,3.74mmol,70%)を得た。
化合物5の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)9.82(1H,s),8.12(1H,d,J=7.6Hz),7.81(1H,dd,J=7.2Hz,7.2Hz),7.75(1H,dd,J=7.5Hz,7.5Hz)7.33(1H,d,J=7.2Hz),7.25(2H,s),6.92(2H,d,J=9.3Hz),6.64(2H,d,J=9.2Hz),3.42(12H,s),0.69(3H,s),0.65(3H,s).
化合物4(2.67mL,17.8mmol,3.3equiv.)の無水THF(30mL)の溶液に、-78℃,アルゴン雰囲気下で1.05Mのsec-butyllithiumのn-ヘキサン溶液(16.0mL,18.3mmol,3.0equiv.)を10分以上かけて滴下した。1時間攪拌した後、化合物3(1.75g,5.40mmol)の無水THF溶液(60mL)を滴下添加し、室温に出してさらに15分間攪拌した。2規定塩酸を加えて反応液をクエンチし、15分間撹拌した。水を加え、混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後に、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15/1→10/1)で精製した。アルデヒドとヘミアセタールの混合物として回収した精製物をアセトニトリル(40mL)に溶解し、2規定塩酸(40mL)を加えて室温で5分間撹拌した。ヘミアセタールの加水分解をESI-MSで確認し、反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。これをろ過し、ろ液を濃縮して濃青色の固体として化合物5(1.55g,3.74mmol,70%)を得た。
化合物5の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)9.82(1H,s),8.12(1H,d,J=7.6Hz),7.81(1H,dd,J=7.2Hz,7.2Hz),7.75(1H,dd,J=7.5Hz,7.5Hz)7.33(1H,d,J=7.2Hz),7.25(2H,s),6.92(2H,d,J=9.3Hz),6.64(2H,d,J=9.2Hz),3.42(12H,s),0.69(3H,s),0.65(3H,s).
(NORD-2の合成)
化合物5(90mg,0.200mmol)およびp-アニシジン(26mg,0.211mmol,1.1equiv.)の溶液に、酢酸(0.2mL)を加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(126mg,0.595mmol,3.0euiqv.)を加えた。さらに10分間撹拌した後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、2規定水酸化ナトリウム水溶液(10mL×3回)で洗浄した。水層をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。これをろ過し、ろ液を濃縮し、残渣を酢酸(2mL)に溶かし、亜硝酸ナトリウム(15mg,0.217mmol,1.1equiv.)の水(2mL)の溶液を氷浴上で加えた。氷浴上で20分間撹拌した後、反応混合物に飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)と2規定塩酸(1mL)を加え、これをジクロロメタンで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に、ろ液を溶媒留去氏、MPLC(ジクロロメタン/メタノール=94/6~90/10~70/30)による精製を行い、NORD-2を濃青色固体として80mg(68%)得た。
NORD-2の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)7.43(2H,dd,J=3.6Hz,3.6Hz),7.26(2H,d,J=2.8Hz),7.22(2H,d,J=9.0Hz),7.15-7.09(2H,m),7.04(2H,d,J=9.6Hz),6.89(2H,d,J=9.0Hz),6.68(2H,dd,J=2.5Hz,9.6Hz),4.85(2H,s),3.83(3H,s),3.44(12H,brs),0.66(3H,s),0.64(3H,s);
NORD-2の13C NMR(CDCl3,125MHz,δ;ppm)166.60,159.15,154.19,148.38,141.17,137.42,134.53,132.30,129.63,129.39,127.56,127.37,127.03,121.35,121.26,114.72,114.25,55.72,45.97,41.26,-0.67,-0.69;MS(ESI)m/z:519([M-NO]+);Anal. Calcd. for C33H37ClN4O2Si・7/2H2O:C,61.14;H,6.84;N,8.64.Found:C,61.31;H,6.82;N,8.63.
化合物5(90mg,0.200mmol)およびp-アニシジン(26mg,0.211mmol,1.1equiv.)の溶液に、酢酸(0.2mL)を加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(126mg,0.595mmol,3.0euiqv.)を加えた。さらに10分間撹拌した後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、2規定水酸化ナトリウム水溶液(10mL×3回)で洗浄した。水層をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。これをろ過し、ろ液を濃縮し、残渣を酢酸(2mL)に溶かし、亜硝酸ナトリウム(15mg,0.217mmol,1.1equiv.)の水(2mL)の溶液を氷浴上で加えた。氷浴上で20分間撹拌した後、反応混合物に飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)と2規定塩酸(1mL)を加え、これをジクロロメタンで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に、ろ液を溶媒留去氏、MPLC(ジクロロメタン/メタノール=94/6~90/10~70/30)による精製を行い、NORD-2を濃青色固体として80mg(68%)得た。
NORD-2の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)7.43(2H,dd,J=3.6Hz,3.6Hz),7.26(2H,d,J=2.8Hz),7.22(2H,d,J=9.0Hz),7.15-7.09(2H,m),7.04(2H,d,J=9.6Hz),6.89(2H,d,J=9.0Hz),6.68(2H,dd,J=2.5Hz,9.6Hz),4.85(2H,s),3.83(3H,s),3.44(12H,brs),0.66(3H,s),0.64(3H,s);
NORD-2の13C NMR(CDCl3,125MHz,δ;ppm)166.60,159.15,154.19,148.38,141.17,137.42,134.53,132.30,129.63,129.39,127.56,127.37,127.03,121.35,121.26,114.72,114.25,55.72,45.97,41.26,-0.67,-0.69;MS(ESI)m/z:519([M-NO]+);Anal. Calcd. for C33H37ClN4O2Si・7/2H2O:C,61.14;H,6.84;N,8.64.Found:C,61.31;H,6.82;N,8.63.
<NORD-1の合成>
上述と同様の操作により、化合物5を合成した。次いで、以下に示す反応経路により、NORD-1を合成した。
まず、化合物5(500mg,1.21mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶かし、攪拌しながら酢酸(2.5mL)と化合物6(297mg,1.33mmol,1.1equiv.)を加えた。これを室温で1時間撹拌した後、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(769mg,3.63mmol,3.0equiv.)を加え、さらに5分間撹拌を続けた。反応混合物を0.1NのHCl(50mL)でクエンチし、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、溶媒を留去させた。残渣を酢酸(14mL)に溶解し、氷水浴上で撹拌した。反応混合物に、亜硝酸ナトリウム(100mg,1.45mmol,1.2equiv.)の水溶液(14mL)を加えた。撹拌をさらに5分間続けた後、0.1NのHCl(50mL)を加えてクエンチした。これをジクロロメタンで3回抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過、濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15/1→10/1)で精製し、化合物7(611mg,0.941mmol,78%)を濃青色固体として得た。
化合物7の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)7.43(1H,d,J=5.0Hz),7.42(1H,d,J=4.0Hz),7.26(2H,d,J=2.9Hz),7.18(2H,d,J=8.7Hz),7.14(1H,dd,J=4.5Hz,4.5Hz),7.09(1H,dd,J=4.5Hz,4.5Hz),7.05(2H,d,J=9.7Hz),6.80(2H,d,J=8.7Hz),6.67(2H,dd,J=2.9Hz,9.7Hz),4.84(2H,s),3.44(12H,s),0.98(9H,s),0.65(3H,s),0.65(3H,s),0.20(6H,s).
化合物7の1H NMR(CDCl3,500MHz,δ;ppm)7.43(1H,d,J=5.0Hz),7.42(1H,d,J=4.0Hz),7.26(2H,d,J=2.9Hz),7.18(2H,d,J=8.7Hz),7.14(1H,dd,J=4.5Hz,4.5Hz),7.09(1H,dd,J=4.5Hz,4.5Hz),7.05(2H,d,J=9.7Hz),6.80(2H,d,J=8.7Hz),6.67(2H,dd,J=2.9Hz,9.7Hz),4.84(2H,s),3.44(12H,s),0.98(9H,s),0.65(3H,s),0.65(3H,s),0.20(6H,s).
化合物7(611mg,0.941mmol)をアセトニトリル(14mL)に溶かし、攪拌しながら0.1MのNaF/HF緩衝液(14mL)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した後、水と飽和食塩水を加え、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液の溶媒を留去させた。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1)および中圧分取液体クロマトグラフ(ジクロロメタン/メタノール=94/6→90/10→70/30)で精製し、NORD-1(312mg,0.510mmol,54%)を濃青色の固体として得た。
NORD-1の13C NMR(CDCl3,125MHz,δ;ppm)166.31,158.54,154.00,147.58,140.93,137.81,133.60,131.61,129.55,129.47,129.40,127.60,127.51,122.73,120.91,116.46,114.14,44.87,41.25,-0.55,-0.80;
NORD-1のAnal.Calcd.for C32H35ClN4O2Si・2H2O:C,63.30;H,6.47;N,9.23.Found:C,62.99;H,6.28;N,9.16;
HRMS(ESI+)calcd:535.25293;found:535.25249(M+,-0.81ppm).
NORD-1の13C NMR(CDCl3,125MHz,δ;ppm)166.31,158.54,154.00,147.58,140.93,137.81,133.60,131.61,129.55,129.47,129.40,127.60,127.51,122.73,120.91,116.46,114.14,44.87,41.25,-0.55,-0.80;
NORD-1のAnal.Calcd.for C32H35ClN4O2Si・2H2O:C,63.30;H,6.47;N,9.23.Found:C,62.99;H,6.28;N,9.16;
HRMS(ESI+)calcd:535.25293;found:535.25249(M+,-0.81ppm).
<NO+放出の確認>
合成したNORD-2、NORD-1のNO+放出能を評価した。NO+放出能の評価には、DAN(2,3-ジアミノナフタレン)を用いた。下式に示すように、DANはNO+の存在下でNAT(ナフタレン)を生成する。NATの極大蛍光発光波長は、460nmである。そのため、460nm付近の傾向を観測することで、NO+によるNATの生成を確認できる。
合成したNORD-2、NORD-1のNO+放出能を評価した。NO+放出能の評価には、DAN(2,3-ジアミノナフタレン)を用いた。下式に示すように、DANはNO+の存在下でNAT(ナフタレン)を生成する。NATの極大蛍光発光波長は、460nmである。そのため、460nm付近の傾向を観測することで、NO+によるNATの生成を確認できる。
NORD-2、NORD-1(各10μM)およびDAN(10μM)を含むHEPES緩衝液(100mM,pH7.3,総体積10mL)を調製し、630~690nmバンドパスフィルターを装備したMAX-303(朝日分光)を用いて37℃で光を照射した(80mW/cm2)。照射時間が0分、1分、2分、3分、4分、5分の時点でサンプルを20μLずつ採取した。
各溶液20μLをInertsil ODSカラム(5μm;150×4.6mm)を取り付けた株式会社島津製作所製のHPLCシステムでモニターした(励起波長360nm,検出波長460nm)。
移動相として、0.1%ギ酸含有MilliQ(A)、0.1%ギ酸含有アセトニトリル(B)を使用した。使用条件は下記の通りである。
0分,B5%→2分,B5%→3分,B20%→15分,B80%→17分,B80%→18分,B100%→23分,100%→24分,B5%→30分,B5%.
各溶液20μLをInertsil ODSカラム(5μm;150×4.6mm)を取り付けた株式会社島津製作所製のHPLCシステムでモニターした(励起波長360nm,検出波長460nm)。
移動相として、0.1%ギ酸含有MilliQ(A)、0.1%ギ酸含有アセトニトリル(B)を使用した。使用条件は下記の通りである。
0分,B5%→2分,B5%→3分,B20%→15分,B80%→17分,B80%→18分,B100%→23分,100%→24分,B5%→30分,B5%.
図2は、NORD-1、NORD-2のNO+放出能をHPLCで分析した結果を示す。図2の右側に示すようにNORD-2では、NATに由来するピークが測定開始から13.5分程経過した後に観察された。これに対し図2の左側に示すようにNORD-1では、DANに由来するピークのみが観察され、NATに由来するピークが観察されない。
以上のことから、NORD-2が光の照射に応答してNO+を放出していることを確認した。加えて、NORD-2のHPLCの分析結果におけるNATのピークの高さから生成量を算出し、1.3μMのNATが生成したことを確認した。したがって、少なくとも1.3μMのNO+がNORD-2から生成したと考えられる。
以上のことから、NORD-2が光の照射に応答してNO+を放出していることを確認した。加えて、NORD-2のHPLCの分析結果におけるNATのピークの高さから生成量を算出し、1.3μMのNATが生成したことを確認した。したがって、少なくとも1.3μMのNO+がNORD-2から生成したと考えられる。
<血管弛緩応答の確認>
図3に示すように、ラットの大動脈切片30をマグヌス管31に設置し、光照射に対する血管弛緩応答を確認した。
図3に示すように、ラットの大動脈切片30をマグヌス管31に設置し、光照射に対する血管弛緩応答を確認した。
NO+は、NOと同様にsGCのリガンド分子として機能すると考えられる。sGCは、本来、NOの存在下でGTPをcGMPに変換する酵素であるが、NO+の存在下でも同様に、GTPをcGMPに変換すると予想される(図4)。その結果、血管拡張が起きると考えられる。
図5は、NORD-2について血管弛緩応答を確認した結果を示すグラフである。まず、実験開始から5分程経過したときに、内皮細胞外のNOの産生を抑制するためにL-NAME(株式会社同仁化学研究所製)をラットの大動脈切片を設置したガラス管内の緩衝液に投与した。次に、実験開始から7分程経過したときに、NA(ノルアドレナリン)を投与したところ、血管収縮が起き、大動脈切片の張力が増加した。
さらに、実験開始から36分程経過したときに、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力はほとんど変化しなかった。
続いて、NORD-2を投与し、再度、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力は急激に低下し、血管弛緩が起きたことを確認した。
さらに、実験開始から36分程経過したときに、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力はほとんど変化しなかった。
続いて、NORD-2を投与し、再度、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力は急激に低下し、血管弛緩が起きたことを確認した。
図6は、ODQの存在下でNORD-2について血管弛緩応答を確認した結果を示すグラフである。図6に示す実験においては、sGCの阻害剤であるODQを使用した。具体的にはまず、実験開始から5分程経過したときに、L-NAME、ODQ、NAを順次投与し、大動脈切片の張力の上昇、血管収縮を確認した。
次いで、実験開始から29分程経過したときに、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力はほとんど変化しなかった。
続いて、NORD-2を投与し、実験開始から39分程経過したときに再度、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力は低下し、血管弛緩が起きたことを確認した。
次いで、実験開始から29分程経過したときに、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力はほとんど変化しなかった。
続いて、NORD-2を投与し、実験開始から39分程経過したときに再度、MAX-303(朝日分光)を用いて37℃で3分間、光を照射した(80mW/cm2)。このとき、大動脈切片の張力は低下し、血管弛緩が起きたことを確認した。
図5、図6の結果を比較すると、ODQの存在の有無で大動脈切片の張力の低下量が変化することがわかる。これは、NORD-2から放出されたNO+によって活性化したsGCの活性がODQによって阻害されたためであると考えられる。このように、NORD-2による血管拡張、血管弛緩の作用は、ODQとの併用によって負に制御できることを確認した。
本来、sGCはNOによって活性化することから、図5、6に示す結果によれば、NO+はNOと同様の生理活性を血管弛緩において示すことがわかる。このことから、NO+は、血管弛緩以外にも生体内でNOと同様の生理学的応答に関与し得ると考えられる。
本来、sGCはNOによって活性化することから、図5、6に示す結果によれば、NO+はNOと同様の生理活性を血管弛緩において示すことがわかる。このことから、NO+は、血管弛緩以外にも生体内でNOと同様の生理学的応答に関与し得ると考えられる。
本発明によれば、光の照射に応答してNO+を放出する化合物;前記化合物を含む光応答性NO+ドナーを提供できる。
20…化合物、21…ローダミン色素含有基、22…NO+放出部位、23…ラジカルカチオン中間体、24…アニリルラジカル、30…ラットの大動脈切片、31…マグヌス管、100…合成化合物、101…酸素含有型のローダミン色素部位、102…NO放出部位、103…フェノキシラジカル、104…キノン体
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