JP2022065791A - 非水電解質二次電池用正極活物質およびその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者が鋭意検討した結果によれば、特許文献1に記載される所定の粒子径かつ中空構造を有するスピネル型結晶構造のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物からなる正極活物質は、非水電解質二次電池の初期抵抗を低くすることはできているが、長期使用後における電池の内部抵抗の増加は、なお改善の余地があることを見出した。
かかる構成の正極活物質は、作動電位の高いスピネル型結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を含み、かつ、所定の空隙を有することで電解液との反応面積を大きくしているため、初期抵抗を小さくすることができる。また、所定の空隙を有する二次粒子の平均粒子径を比較的大きくし、さらに該表面を前記コート層で被覆することにより、二次粒子の機械的強度を向上させている。これにより、二次粒子の割れの抑制と破砕面からのマンガン溶出を防止することで、電池の内部抵抗の増加を抑制している。したがって、かかる構成によれば、非水電解質二次電池の初期抵抗が低く、充放電を繰り返した際の内部抵抗の増加が抑制可能となる正極活物質を実現することができる。
かかる構成によれば、非水電解質二次電池の抵抗特性および内部抵抗の増加抑制効果が特に優れる。
かかる構成によれば、初期抵抗が低く、充放電を繰り返した際の内部抵抗の増加が抑制可能となる非水電解質二次電池を実現することができる。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
典型的なスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物としては、一般式:
Li1+ZMn2-X-ZMeXO4
(式中、Meは存在しないかもしくは少なくとも一種の金属元素を表し、X,Zはそれぞれ、0≦X≦0.25、0<Z≦0.15を具備する)で表される化合物が挙げられる。ここで、Meは、例えば、Ni、Co、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr,Si,Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等であり得る。例えば、スピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物の好適例として、LiMn2O4で表されるリチウムマンガン複合酸化物(即ち上記Meが存在しない)が挙げられる。
なお該二次粒子の平均粒子径は、以下のように測定することができる。該二次粒子の平均粒子径の基準とするために、まず、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、D50(メジアン径)を測定する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、複数の二次粒子のSEM像を複数取得する。該複数のSEM像において、上記D50に相当する大きさの二次粒子を無作為に30個以上(例えば50個以上)選択する。そして各二次粒子の最大径を決定し、これを長径と規定する。次に、この長径に直交する径の中で最長となるものを決定し、これを短径と規定する。かかる長径と短径とからなる楕円を仮定して、楕円の面積から円相当径に換算して、各二次粒子の径(粒子径)とする。このように無作為に取得した複数のSEM像において30個以上(さらには50個以上)の二次粒子を選択し、それらの粒子径を上記のように測定し、その平均値をここでの平均粒子径とする。
なお二次粒子の平均空隙率は、以下のように算出することができる。上記走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、断面SEM像を複数取得する。該複数の断面SEM像から、上記D50に相当する大きさの二次粒子を無作為に30個以上(例えば50個以上)選択する。各二次粒子断面において、オープンソースであり、パブリックドメインの画像処理ソフトウェアとして著名な画像解析ソフト「ImageJ」を用いて、一次粒子が存在する部分を白色、一次粒子が存在しない空隙部分を黒色とする二値化処理を行う。これにより、二次粒子の断面における一次粒子が存在する部分(白色部分)の面積をNW、一次粒子が存在しない空隙部分(黒色部分)の面積をNBとして、「NB/(NW+NB)×100」を算出することができる。これを各二次粒子の空隙率とし、当該30個以上(さらには50個以上)の二次粒子の空隙率の平均値をここでの平均空隙率とする。なお、空隙が開口部を有する場合は、空隙の輪郭が閉じていない。この場合には、開口部の両端を直線で結び、二次粒子の外側部分および二次粒子内に存在する空隙で外側とつながる部分を白色および黒色以外の色で塗りつぶして、二次粒子の輪郭を定めることができる。
Li1+zNiyMn2-x―y-zMexO4
(式中、Meは存在しないかもしくは少なくとも一種の金属元素を表し、x、y、zはそれぞれ、0≦x≦0.25、0<y≦0.15、0<z≦0.2を具備する)で表されるスピネル系複合酸化物であり得る。当該スピネル系複合酸化物において、NiおよびMnの一部が、Mg、Zn、Co、Fe、Cr、Al、Ti、Zr、Nb、Ta、Ru、およびWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素で置換されていてもよい。スピネル系複合酸化物としての好適例として、Li1.05Ni0.10Mn1.85O4で表されるスピネル系複合酸化物が挙げられる。
なおコート層の平均厚みは、以下のように測定することができる。上述した方法により、断面SEM像を複数取得し、それら画像から上記D50に相当する大きさの二次粒子を無作為に30個以上(例えば50個以上)選択する。各二次粒子において、コート層の正極活物質側とコート層の表面側の距離とが最短となる2点間の距離を測定し、各二次粒子について3か所の平均値を算出し、各二次粒子におけるコート層の厚みの平均を求める。そして、かかる無作為に選択した30個以上(例えば50個以上)の粒子についてのこの値の平均値を、ここではリチウムニッケルマンガン酸化物のコート層の平均厚みとする。
なお上記モル比(Ni/Mn)は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分析(EDX)装置を用いた分析により求めることができる。
具体的には、上記コート層の平均厚みを求めた箇所において、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いた線分析を行う。かかる線分析の結果から、ニッケルが最大濃度である点を決定し、その点において、上記モル比(Ni/Mn)を算出する。次いで、各二次粒子について3か所の平均値を算出し、モル比(Ni/Mn)の平均を求めることができる。そして、上記無作為に選択した30個以上(例えば50個以上)の粒子についてのこの値の平均値を、ここではリチウムニッケルマンガン酸化物コート層のモル比(Ni/Mn)と規定する。
また多孔質粒子10は、外表面と多孔質粒子10の内部に存在する空隙14に面する一次粒子12の表面上に、リチウムニッケルマンガン酸化物を含有するコート層16を有している。
あらかじめ不活性ガスを通気させて溶存酸素を取り除いたイオン交換水に硫酸マンガンを溶解させ、所定の濃度の混合水溶液を調製した。30~60℃に調整された反応容器内に、同様にして溶存酸素を取り除いたイオン交換水を用意し、攪拌下、水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを調整した。混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とをpHを制御しながら一定量ずつ所定の速度で添加し、共沈生成物(水酸化物)を得た。このとき、共沈生成物(水酸化物)の生成とともにpHを変化させることで、共沈生成物(水酸化物)の空隙率を調整した。具体的には、pHを11~13から10~12の範囲に変更させていくことで生成物の空隙率を上昇させることができ、そのときのpHの保持時間、pH変化の幅、変化速度、を調整することで空隙率を調整した。得られた共沈生成物(水酸化物)を水洗後、ろ過し、120℃のオーブン内で乾燥させて多孔質の水酸化物粉末である、前駆体粉末を得た。
酢酸マンガン、酢酸ニッケル、および酢酸リチウムを、ニッケルのモル数(Ni)およびマンガンモル数(Mn)の合計モル数(Ni+Mn)に対する、リチウムのモル数(Li)のモル比(Li/Ni+Mn)が、0.54となるように水に溶解させ、50℃で混合した。攪拌下、キレート剤としてエチレングリコールを滴下し、140℃で約5時間混合し、ゲルを調製した。このゲルに上記得られた空隙率の異なる正極活物質を加えて、さらに混合した。混合物を遠心分離させたのちにろ過し、真空乾燥させた。その後、800~950℃にて6時間焼成後、700℃で12時間アニール処理を行い、リチウムニッケルマンガン酸化物がコートされた正極活物質(例2~8)を得た。
上記作製した正極活物質(例1~8)と、導電材としてのカーボンブラック(CB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、正極活物質:CB:PVDF=90:8:2の質量比でN-メチル-2-ピロリドン中で混合し、正極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストをアルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥した後プレスすることにより、正極シートを作製した。
本実施例では、各サンプルで同様の負極を使用した。負極活物質として、天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比でイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを銅箔集電体に塗布し、乾燥した後プレスすることにより、負極シートを作製した。
また、セパレータとしてPP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを用意した。
作製した正極シートと負極シートとをセパレータを介して対向させて、積層型電極体を作製した。作成した電極体に集電体を取り付け、非水電解液と共にアルミラミネートケースに収容し、封止することによって評価用リチウムイオン二次電池を得た。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
上記作製した例1~8の正極活物質のSEM像をそれぞれ複数取得した。得られた例1~8の正極活物質の複数のSEM像の中から、D50に相当する大きさの二次粒子径となる二次粒子を任意(無作為)に30個ずつ選択した。例1~8の正極活物質において、それぞれ30個の二次粒子の各粒子径を測定した。30個の二次粒子の各粒子径の平均値を平均粒子径とした。結果を表1に示す。
また、上記作製した例1~8の正極活物質の断面SEM像をそれぞれ複数取得した。得られた例1~8の正極活物質の複数の断面SEM像の中から、D50に相当する大きさの二次粒子径となる二次粒子を任意(無作為)に30個ずつ選択した。
例1~8の正極活物質において、それぞれ30個の二次粒子の空隙率を算出した。30個の二次粒子の空隙率の平均値を平均空隙率とした。結果を表1に示す。
例2~8の正極活物質において、それぞれ30個の二次粒子のコート層の厚みを測定した。各二次粒子について3か所の平均値を算出し、各二次粒子におけるコート層の平均厚みを求めた。30個の二次粒子のこの値の平均値をリチウムニッケルマンガン酸化物コート層の平均厚みとした。結果を表1に示す。
例2~8の正極活物質において、それぞれ30個の二次粒子のマンガンのモル数(Mn)に対する、ニッケルのモル数(Ni)のモル比(Ni/Mn)を測定した。各二次粒子について3か所の平均値を算出し、各二次粒子におけるコート層の平均モル比(Ni/Mn)を求めた。30個の二次粒子のこの値の平均値をリチウムニッケルマンガン酸化物コート層のモル比(Ni/Mn)とした。結果を表1に示す。
上記作製した各評価非水電解質二次電池を、25℃の環境下に置いた。活性化(初期充電)は、定電流-定電圧方式とし、各評価用非水電解質二次電池を0.1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、定電圧充電時の電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用非水電解質二次電池を0.1Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。
各評価用非水電解質二次電池を、電池容量の50%(SOC=50%)の状態に調整した。次に、-10℃の環境下で種々の電流値で電流を流し、電池電圧を測定した。流した電流と電圧を直線補間し、傾きから電池抵抗を算出し、これを初期抵抗とした。例1の初期抵抗を1とした場合の、例2~8の初期抵抗の比を求めた。結果を表1に示す。
初期抵抗を測定した各評価用非水電解質二次電池を、60℃の環境下に置き、1Cで4.2Vまで定電流充電および1Cで3.0Vまで定電流放電を1サイクルとする充放電を50サイクル繰り返した。50サイクル目の電池抵抗を、上記と同じ方法で測定した。抵抗増加の指標として、式:(充放電50サイクル目の電池抵抗/初期抵抗×100)より、抵抗増加率を求めた。例1の抵抗増加率を1とした場合の、例2~8の初期抵抗の比を求めた。結果を表1に示す。
したがって、ここに開示される正極活物質によれば、初期抵抗が低く、かつ充放電を繰り返した際の電池抵抗の増加が抑制された、非水電解質二次電池を提供できることがわかる。
12 一次粒子
14 空隙
16 コート層
20 電極体
30 電池ケース
32 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
54 正極活物質層
56 正極集電体露出部
60 負極
62 負極集電体
64 負極活物質層
66 負極集電体露出部
70 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池
Claims (3)
- 非水電解質二次電池に用いられる正極活物質であって、
スピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物で構成されており、
前記リチウムマンガン複合酸化物は、多孔質粒子であり、
前記多孔質粒子は、一次粒子が複数集合した二次粒子を含み、
前記二次粒子のSEM像に基づく平均粒子径が8μm以上15μm以下であり、
前記二次粒子の断面SEM像において、前記活物質を構成する二次粒子が占有する面積に対する空隙の面積の割合の平均値が20%以上であり、
ここで、前記多孔質粒子の少なくとも一部の表面には、リチウムニッケルマンガン酸化物からなるコート層が形成されており、
前記リチウムニッケルマンガン酸化物のコート層の平均厚みが、前記多孔質粒子の表面から0.4μm以上1.0μm以下であり、
前記リチウムマンガン複合酸化物のコート層に含まれるマンガン原子に対するニッケル原子のモル比が、0.16以上0.33以下である、
正極活物質。 - 前記二次粒子の断面SEM像において、前記活物質を構成する二次粒子が占有する面積に対する空隙の面積の割合の平均値が20%以上55%以下である、請求項1に記載の正極活物質。
- 正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池であって、
前記正極は、正極活物質層を備え、
前記正極活物質層は、請求項1または2に記載の正極活物質を備える、
非水電解質二次電池。
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JP2000340226A (ja) * | 1999-05-26 | 2000-12-08 | Kawasaki Steel Corp | リチウムマンガン複合酸化物粒子およびその製造方法 |
JP2019021610A (ja) * | 2017-07-12 | 2019-02-07 | 住友金属鉱山株式会社 | 非水系電解質二次電池用正極活物質前駆体、非水系電解質二次電池用正極活物質、非水系電解質二次電池用正極活物質前駆体の製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法 |
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JP2019021610A (ja) * | 2017-07-12 | 2019-02-07 | 住友金属鉱山株式会社 | 非水系電解質二次電池用正極活物質前駆体、非水系電解質二次電池用正極活物質、非水系電解質二次電池用正極活物質前駆体の製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法 |
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