JP2022062997A - 蓄電デバイス用正極、蓄電デバイス用正極の製造方法および蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス用正極、蓄電デバイス用正極の製造方法および蓄電デバイス Download PDF

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Masahito Tabuchi
俊平 浜谷
Shumpei Hamaya
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Abstract

【課題】蓄電デバイス、特にリチウム二次電池では電解液の分解によるガス発生や抵抗上昇といった劣化現象が見受けられる。本発明では、ガス発生の低減化や抵抗上昇の低減化による充放電サイクル特性の向上を目的とする。【課題を解決するための手段】正極活物質層上に、特定のポリエーテル共重合体の溶液を塗布、ポリエーテル共重合体を電極内部に含浸させて担持させた正極が、蓄電デバイスの充放電時に発生するガス発生の低減、および抵抗上昇の低減の効果があることを見出して、本発明を完成するに至った。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄電デバイス用正極、蓄電デバイス用正極の製造方法および蓄電デバイスに係り、特にリチウムイオン二次電池用の正極、正極の製造方法およびリチウムイオン二次電池に関するものである。
最近のマイクロエレクトロニクス化は、各種電子機器のメモリーバックアップ用電源に代表されるように、顕著になっている。すなわち、電池の電子機器内への収納、エレクトロニクス素子との一体化等に伴って、電池の小型化、軽量化、更には高エネルギー密度を有する蓄電デバイスが要望されている。更に近年、カムコーダ、携帯用通信機器、ラップトップコンピューター等の各種小型電子機器の小型化、軽量化に伴い、それらの駆動用電源として高エネルギー密度の蓄電デバイスの要求が高まってきており、それらの研究開発が盛んに行われている。
リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどの高エネルギー密度な蓄電デバイスは、一対の電極とセパレータとを備え、電解質溶液が含浸された構成のものであり、産業用または民生用の種々の電気・電子機器に使用されている。
従来、電気化学反応を利用したリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスはより一層の高容量化、高安全化に加えて、高寿命化が不可欠であり、そのために、正極の改良が求められている。
近年では、結着剤の改良が試みられている。結着剤を改良することにより、活物質同士の結着性、活物質と導電助剤との結着性、及び活物質と集電体との結着性を向上させることで高寿命化させることが提案されている。(特許文献1参照)
ポリエーテル共重合体およびリチウムビスオキサレートボレートと他のリチウム塩化合物との組み合わせである電解質塩化合物を使用した高分子固体電解質用組成物で正極材料の表面を覆い、高分子固体電解質および正極材料の一方または両方が、オルト位の2つともがtert-ブチル基に置換されているフェノール構造を有する化合物を含有する正極を二次電池に採用することで、高容量サイクル充放電特性が優れた二次電池が開示されている。(特許文献2参照)
更に、小型化、高容量化するにおいて、電解液と活物質の接触によるガス発生によって電極が膨張することが問題となっており、特にNi系正極活物質を用いた場合はその問題が顕著である。そこで、ポリマーとしてカルボキシメチルセルロースを使用し、Ni系正極活物質を被覆する技術が開示されているが、カルボキシメチルセルロースは、イオン伝導性が低く、被覆厚を増加させると正極活物質界面でのリチウムイオンの移動を阻害してしまうため、電池性能を低下させる恐れがあった。また、被覆量を低減すると、ガス発生の抑制効果が小さくなる問題があった。(特許文献3参照)
国際公開第2013/180103号 特許第6246019号 特許第5079025号
蓄電デバイスにおいては、とりわけ、非水電解液を用いた蓄電デバイスではガス発生、抵抗上昇が寿命劣化に大きく影響するため、水分混入、電解液の耐電圧性、初期エージングを厳密に管理しないといけないことが課題となっている。本発明は、蓄電デバイスの電極に用いた際に、ガス発生の低減化や抵抗上昇の低減化による電池寿命の向上ができる正極を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、正極活物質層上に、特定のポリエーテル共重合体の溶液を塗布、ポリエーテル共重合体を電極内部に含浸させて担持させた正極が、蓄電デバイスの充放電時に発生するガス発生の低減、および抵抗上昇の低減の効果があることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関する。
項1
式(1):
Figure 2022062997000001
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、または-CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または-CHO(CHCHO)nRであり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1~12のアルキル基または、アリール基であり、nは0~12の整数である。]
で示される単量体から誘導される繰り返し単位0~95モル%、及び
式(2):
Figure 2022062997000002
で示される単量体から誘導される繰り返し単位95~5モル%、及び
式(3)
Figure 2022062997000003
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
で示される単量体から誘導される繰り返し単位0~20モル%を有するポリエーテル共重合体、正極集電体、および少なくとも正極活物質を含む正極活物質層を少なくとも含む蓄電デバイス用正極であって、前記ポリエーテル共重合体を、正極活物質100質量部あたり0.01~5質量部を正極活物質層内部に担持させた蓄電デバイス用正極。
項2 前記正極活物質層に、導電助剤、結着剤を含んでなる項1に記載の蓄電デバイス用正極。
項3 前記ポリエーテル共重合体を溶媒に溶解した溶液状態で正極活物質層に塗布し、ポリエーテル共重合体を正極活物質層に含浸、担持させる工程を含む項1または2のいずれかに記載の蓄電デバイス用正極の製造方法。
項4 前記溶媒が、水、アルコール、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、トルエンおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群より少なくとも1種類を用いる項3に記載の蓄電デバイス用正極の製造方法。
項5 項1又は2のいずれかに記載の正極を備える蓄電デバイス。
本発明によれば、充放電サイクル時や満充電放置時に正極表面上に発生する電解液の分解ガスが低減されるとともに抵抗上昇も低減されて、充放電サイクル特性の向上を図ることができ、寿命特性に優れた正極を提供することができる。
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
本明細書において、蓄電デバイスとは、二次電池(リチウムイオン二次電池及びニッケル水素二次電池等)、電気化学キャパシタを包含するものである。
また、本発明に係る蓄電デバイスは、少なくとも正極に、下記のポリエーテル共重合体が担持され、対極となる負極とがセパレータを介して積層されることを特徴とするものである。
<ポリエーテル共重合体>
式(1)の化合物は市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。市販品から入手可能な化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ターシャリーブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシヘプタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシへキサン、グリシジルフェニルエーテル、1,2-エポキシペンタン、グリシジルイソプロピルエーテルなどが使用できる。これら市販品のなかでは、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテルが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが特に好ましい。合成によって得られる式(1)で表される単量体では、Rは-CHO(CR)が好ましく、R、R、Rの少なくとも一つが-CHO(CHCHO)nRであることが好ましい。Rは炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。nは0~6が好ましく、0~4がより好ましい。
式(2)の化合物はエチレンオキシドである。式(2)の化合物は基礎化学品であり、市販品を容易に入手可能である。
式(3)の化合物において、Rの例は、二重結合を有する炭化水素基であってよく、特に、二重結合を有する環状の炭化水素基、またはCH=CH-A-(Aは、直接結合、または炭素数1~30の炭化水素基、例えばアルキレン基)であってよい。
式(3)の化合物は市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。例えば、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5-シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキセノエートが挙げられ、これらの中では、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
本発明の正極に用いるポリエーテル共重合体は、
(A):式(1)の単量体から誘導された繰り返し単位
Figure 2022062997000004
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、または-CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または-CHO(CHCHO)nRであり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1~12のアルキル基、置換基を有してもよいアリール基であり、nは0~12の整数である。] 及び
(B):式(2)の単量体から誘導された繰り返し単位、及び
Figure 2022062997000005
及び(C):式(3)の単量体から誘導された繰り返し単位、
Figure 2022062997000006
[式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基を含む置換基である。]
から構成される。
ここで繰り返し単位(A)及び(C)は、それぞれ2種以上のモノマーから誘導されるものであってもよい。
本発明のポリエーテル共重合体の合成は次のようにして行える。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにK+を含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10~120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
本発明のポリエーテル共重合体においては、繰り返し単位(1)、(2)、および(3)のモル比が、(1)5~95モル%、(2)95~5モル%、および(3)0~20モル%が適当であり、好ましくは(1)7~90モル%、(2)92~10モル%、および(3)0~17モル%、更に好ましくは(1)10~80モル%、(2)90~20モル%、および(3)0~15モル%である。繰り返し単位(2)が95モル%を越えるとガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、結果的に固体電解質のイオン伝導性を著しく悪化させることとなる。一般にポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによりイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のポリエーテル共重合体はこの点において格段に優れている。
本発明のポリエーテル共重合体の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量で10万~250万とするのが好ましい。重量平均分子量をこの範囲内とすることでポリエーテル共重合体を溶解させた高分子溶液の粘度が適切となり、蓄電デバイスとしてより良好な充放電特性が得られる。
本発明のポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体いずれの共重合タイプでも良い。ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。
本発明の正極においては、担持するポリエーテル共重合体としては、前記のポリエーテル共重合体の架橋物であってもよい。
ポリエーテル共重合体の架橋物は、熱を加えるもしくは紫外線などの活性エネルギー線を照射することによって架橋した架橋体である。
本発明においては、ポリエーテル共重合体、および必要あれば光反応開始剤、熱重合開始剤を溶解して得られる溶液を用いることにより、正極活物質層に塗布後、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより、又は熱を加えることにより、前記のポリエーテル共重合体の架橋物を正極活物質層に担持させることができる。ポリエーテル共重合体を溶解して得られる溶液には、必要に応じて架橋助剤を添加することもできる。
本発明に用いることができる光反応開始剤として、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などが挙げられる。好ましくは、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系の光反応開始剤が用いられる。光反応開始剤として前述の化合物を2種類以上併用することも可能である。
本発明に用いることができる熱重合開始剤として、有機過酸化物系、アゾ化合物系等から選ばれるラジカル開始剤が挙げられる。好ましくは、有機過酸化物系としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等、アゾ化合物系としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等の熱重合開始剤が用いられる。更に好ましくは有機過酸化物系の開始剤が用いられ、これらの化合物を2種類以上併用することも可能である。
本発明に用いられる光反応開始剤、又は熱重合開始剤の量は、上記のポリエーテル共重合体100質量部に対して0.1~10質量部の範囲内が好ましく、0.1~4.0質量部であることがより好ましい。
本発明においては、架橋助剤を光反応開始剤と併用してもよい。架橋助剤は、通常、多官能性化合物(例えば、CH=CH-、CH=CH-CH-、CF=CF-を少なくとも2個含む化合物)である。
本発明に用いられる架橋助剤の量は、上記のポリエーテル共重合体100質量部に対して0.1~30質量部の範囲内が好ましく、0.5~20質量部であることがより好ましい。
本発明で用いられるポリエーテル共重合体を架橋させるために用いる活性エネルギー線は、紫外線、可視光、電子線等を用いることができる。この中でも特に装置の価格、制御のしやすさから紫外線が好ましい。
<正極>
本発明に用いる正極は、正極集電体、少なくとも正極活物質を含む正極活物質層およびポリエーテル共重合体から形成される。
本発明の蓄電デバイス用電極に用いる集電体の材料は、例えば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましく、正極に用いる集電体としては、例えばアルミニウム箔等の金属箔が好適に用いられる。
正極活物質としては、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物、又は特定の高分子を使用することができる。
例えば、リチウムの溶解・析出を利用したリチウム電池とする場合、TiS、MoS 、NbS、V等のリチウムを含まない金属硫化物あるいは酸化物、さらにはポリアセチレン、ポリピロール等の高分子を使用することもできる。
リチウムイオンのドープ・脱ドープを利用したリチウムイオン電池とする場合には、LixMO(式中Mは一種以上の遷移金属を表し、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上、1.10以下である。)で示されるリチウム複合酸化物、またはLixMPO(式中Mは一種以上の遷移金属を表し、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上、1.10以下である。)で示されるリチウム複合リン酸化物等を使用することができる。このリチウム複合酸化物またはリチウムリン酸化物を構成する遷移金属Mとしては、Co、Ni、Mn、Al、Fe等が好ましい。このようなリチウム複合酸化物の具体例としてはLiCoO 、LiNiO、LiNiCoMn1-y-z (式中、0<y,z<1である)、LiNiCoAl1-y-z (式中、0<y,z<1である)、LiMn、LiFePO等を挙げることができる。
リチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度的に優れた正極活物質となる。正極活物質には、これらの正極活物質の複数種を併せて使用してもよい。また、以上のような正極活物質を使用して正極活物質を形成するときには、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、公知の結着剤等を添加することができる。
正極活物質層に用いることができる結着剤としては、例えばフッ素系結着剤やアクリルゴム、変性アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル系重合体、ビニル系重合体から選ばれる1種以上の化合物を用いることができる。また、耐酸化性、少量で充分な密着性、極板に柔軟性が得られるためアクリル系重合体を用いることが好ましい。特に有機系活物質を溶解しないことから水に溶解するような水系の結着剤が好ましい。これら結着剤は正極活物質に対して、好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.5~5質量%添加する。
正極活物質層には、上記の他に、導電助剤や溶媒、増粘剤を含んでもよい。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、グラファイト等の導電性カーボンなどの炭素化合物や、導電性ポリマー、金属粉末等が挙げられるが、導電性カーボンが特に好ましい。溶媒としては、正極活物質や結着剤を溶解出来るものであればどのような溶媒でも用いることができ、好ましくは水、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等もしくはこれらのアルカリ金属塩、ポリエチレンオキサイド等である。また、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等もしくはこれらのアルカリ金属塩、ポリエチレンオキサイド等が用いられる。
本発明の正極において、集電体上に正極活物質層を形成させる方法としては、特に限定されないが、シート状に成形した正極活物質層を集電体上に積層する方法(混練シート成形法);ドクターブレード法やシルクスクリーン法などによりペースト状の正極活物質粉末等を集電体上に塗布し、乾燥する方法(湿式成形法);正極活物質粉末等を調製し、集電体上にシート成形、ロールプレスし得る方法(乾式成形法)などが挙げられる。中でも、湿式成形法、乾式成形法が好ましく、湿式成形法がより好ましい。
<正極活物質層へのポリエーテル共重合体の担持方法>
本発明の正極において、正極活物質層へのポリエーテル共重合体の担持方法としては、特に限定されないが、ポリエーテル共重合体を水または有機溶剤に溶解して得られる溶液を、正極活物質層上に塗布後、乾燥させる方法、ポリエーテル共重合体を水または有機溶剤に溶解して得られる溶液を正極活物質層上に噴霧後、乾燥させる方法等を例示することができる。正極はポリエーテル共重合体を担持する前後にプレス成形を行う。
本発明で用いられるポリエーテル共重合体を正極活物質層に塗布する方法としては、特に限定されないが、ポリエーテル共重合体を溶媒に溶解して得られる溶液を、溶液粘度、目的の塗工膜厚みに応じてマイクログラビア、スロットダイ、シルクスクリーン、ナイフコーティング等から適した方式で多孔質膜上に塗布することができ、噴霧器を使ったスプレーコートによって塗布することもできる。乾燥方法としては、ヒーター式、熱風乾燥式、赤外線照射式、真空式等の乾燥設備を用いることができる。余分な溶剤を除去には、例えば50~150℃で(特に80℃で)常圧もしくは真空状態で乾燥する。
本発明でポリエーテル共重合体を正極活物質層に塗布する際に用いられる溶媒は、ポリエーテル共重合体を溶解することのできるものであり、水、アルコール、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、トルエンおよびN-メチル-2-ピロリドンから選ぶことができる。これらの溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
溶液におけるポリエーテル共重合体の濃度としては、特に限定されないが、0.05~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましい。
本発明でポリエーテル共重合体を正極活物質層に塗布する量は、正極活物質100質量部あたり0.01~5質量部であることが好ましく、0.01~4質量部であることがより好ましく、0.01~3質量部であることがさらに好ましい。この範囲よりも少ないとガス発生の低減、抵抗上昇の低減の効果が得られず、この範囲よりも多いと充放電容量の低下や充放電サイクル特性の低下を招く。
必要あれば実施するポリエーテル共重合体の架橋反応は、熱による場合は、室温から200℃ぐらいの温度設定で10分から24時間程度加熱することによって行なうことができる。紫外線による場合では、キセノンランプ、水銀ランプ、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを用いることができ、例えば、電解質を波長365nm、光量1~50mW/cm2で0.1~30分間照射することによって行うことができる。
必要あれば実施するポリエーテル共重合体の架橋反応は、光反応開始剤、熱重合開始剤を含有させたポリエーテル共重合体を溶解して得られる溶液を用いて、正極活物質層に塗布後、正極活物質層を乾燥前・乾燥時・乾燥後に行ってもよい。
<負極>
本発明で用いる負極は、負極集電体および負極活物質と結着剤とを含む負極活物質層から形成される。
本発明の負極に用いる集電体の材料は、例えば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅箔等の金属箔の金属箔が好適に用いられる。
負極活物質としては、例えば、リチウムの溶解・析出を利用したリチウム電池とする場合、金属リチウムや、リチウムを吸蔵・放出することが可能なリチウム合金等を用いることができる。
リチウムイオンのドープ・脱ドープを利用したリチウムイオン電池とする場合には、難黒鉛化炭素系や黒鉛系の炭素材料を使用することができる。より具体的には、黒鉛類、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズカーボンファイバー等の炭素繊維、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、及び活性炭などの炭素材料を使用することができる。このような材料から負極を形成するときには、公知の結着剤などを添加することができる。
負極活物質層に用いられる結着剤としては、例えばフッ素系結着剤やアクリルゴム、変性アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル系重合体、ビニル系重合体から選ばれる1種以上の化合物を用いることができる。また、耐酸化性、少量で充分な密着性、極板に柔軟性が得られるためアクリル系重合体を用いることが好ましい。特に有機系活物質を溶解しないことから水に溶解するような水系の結着剤が好ましい。これら結着剤は負極活物質に対して、好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.5~5質量%添加する。
負極活物質層には、上記の他に、導電助剤や溶媒、増粘剤等を含んでもよい。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、グラファイト等の導電性カーボンなどの炭素化合物や、導電性ポリマー、金属粉末等が挙げられるが、導電性カーボンが特に好ましい。溶媒としては、負極活物質や結着剤を溶解出来るものであればどのような溶媒でも用いることができ、好適には水、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。また、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等もしくはこれらのアルカリ金属塩等が用いられる。
本発明の負極は、負極活物質層を集電体上に形成させることにより得られる。具体的には、シート状に成形した負極活物質層を、集電体上に積層する方法(混練シート成形法);ドクターブレード法やシルクスクリーン法などによりペースト状の負極活物質粉末等を集電体上に塗布し、乾燥する方法(湿式成形法);負極活物質粉末等を調製し、集電体上にシート成形、ロールプレスし得る方法(乾式成形法)などが挙げられる。中でも、湿式成形法、乾式成形法が好ましく、湿式成形法がより好ましい。
<電解質>
電解質溶液は、非プロトン性有機溶媒に電解質塩を溶解させたものであり、常温溶融塩(イオン液体)を用いることもできる。
本発明において用いることができる電解質溶液に用いられる電解質塩化合物は、ポリエーテル共重合体の架橋体、および非プロトン性有機溶媒からなる混合物に相溶することが好ましい。ここで相溶とは電解質塩が結晶化などして析出してこない状態を意味する。
本発明においては、以下に挙げる電解質塩化合物が好ましく用いられる。即ち、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF 、PF 、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、XSO 、[(XSO)(XSO)N]、[(XSO)(XSO)(XSO)C]、及び[(XSO)(XSO)YC]から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X、X、X、およびYは電子吸引基である。好ましくはX、X、及びXは各々独立して炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基又は炭素数が6~18のパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X、X及びXは各々同一であっても、異なっていてもよい。
金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いる事ができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。電解質塩化合物として前述の化合物を2種類以上併用することが可能である。
特に、リチウムイオン二次電池において電解質塩化合物としては、Li塩化合物が好適に用いられる。
Li塩化合物としては、リチウムイオン二次電池に一般的に利用されているような、広い電位窓を有するLi塩化合物が用いられる。たとえば、LiBF、LiPF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN[CFSC(CSO]などを挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
また、電解質塩や電解質用の溶液として、常温溶融塩を用いることができる。
常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は-40℃程度、場合によっては-20℃程度である。
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
イミダゾリウムカチオンとしては、1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
本発明において、電解質塩の含有量は、0.1~3.0mol/Lであること、特に、1.0~2.0mol/Lであることが好ましい。電解質塩の含有量が0.1mol/L未満であると、電解質溶液の抵抗が大きく、大電流・低温放電特性が低下し、3.0mol/Lを超えると溶解性が悪く、結晶が析出したりする。
本発明の蓄電デバイスに使用される電解質溶液についても特に限定されない。一般的には非プロトン性の有機溶媒に電解質塩を溶解させたものが用いられる。具体的に、そのような非プロトン性有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、ジプロピルカーボネート、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、アニソール、酢酸エステル、プロピオン酸エステル等を使用することができ、単独でも使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
<蓄電デバイスの製造方法>
本発明の蓄電デバイスは、上記のセパレータを介して、電極用組成物を集電体上に形成してなる電極である正極と負極とを積層し、電解質溶液を注入して作製することができる。
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例(ポリエーテル共重合用触媒の製造)]
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以下の重合例で重合触媒として用いた。
ポリエーテル共重合体のモノマー換算組成はH NMRスペクトルにより求めた。
ポリエーテル共重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。GPC測定は(株)島津製作所製RID-6A、昭和電工(株)製ショウデックスKD-807、KD-806、KD-806MおよびKD-803カラム、および溶媒にDMFを用いて60℃で行った。
[重合例1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a):
Figure 2022062997000007
160g、アリルグリシジルエーテル15g、及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド125gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー280gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
[重合例2]
重合例1の仕込みにおいて、グリシジルエーテル化合物(a)、アリルグリシジルエーテルは加えず、プロピレンオキシド130g、n-ブタノール0.1gを仕込んでエチレンオキシド170gを逐次添加して重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー285gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
[重合例3]
重合例1の仕込みにおいて、グリシジルエーテル化合物(a)、アリルグリシジルエーテルは加えず、エチレンオキシド300g、及びn-ブタノール0.5gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー280gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
Figure 2022062997000008
[実施例1] リチウムイオン二次電池1の作製
<正極1>
正極活物質には、平均粒子径10μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3を用いた。この正極活物質90質量部に対して、導電助剤としてアセチレンの熱分解によって製造された球状炭素微粒子を3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを7質量部、N-メチル-2-ピロリドン50質量部を溶媒としてステンレスボールミルを用いて1時間攪拌したのち、アルミニウム集電体上に100μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして正極シートとした。
更にこのシート上に、重合例1で得られたポリエーテル共重合体を1質量部と光反応開始剤ベンゾフェノン0.02質量部、架橋助剤N,N’-m-フェニレンビスマレイミド0.1質量部をアセトニトリル99質量部に溶解させた溶液を正極活物質層の上にスプレーコートによって塗布し、25℃で5時間静置乾燥したのち、60℃で10時間、常圧乾燥機にて乾燥させた。つぎに表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することにより架橋し、正極活物質100質量部あたり0.01質量部のポリエーテル共重合体の架橋物が担持された正極1を作製した。
<負極>
グラファイト粉末(多孔質構造材料)90質量部およびポリフッ化ビニリデンを10質量部、N-メチル-2-ピロリドン100質量部を溶媒としてステンレスボールミルを用いて、1時間攪拌したのち、銅集電体上に50μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして負極とした。
<セパレータ>
膜厚が15μmのポリエチレン多孔質膜を用いた。
<電解質溶液>
エチレンカーボネート(EC)を15質量部と、プロピレンカーボネート(PC)を15質量部と、ジエチルカーボネートを50質量部と、電解質塩であるLiBFを20質量部とを混合して、非水電解質溶液を作製した。
最後に、正極1と負極とをセパレータを介して圧着し、積層体を形成した。そして、積層体をアルミラミネートへ収容し、非水電解質溶液を注入してリチウムイオン二次電池1を作製した。
[実施例2] リチウムイオン二次電池2の作製
<正極2>
正極活物質には、平均粒子径10μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3を用いた。この正極活物質90質量部に対して、導電助剤としてアセチレンの熱分解によって製造された球状炭素微粒子を3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを7質量部、N-メチル-2-ピロリドン50質量部を溶媒としてステンレスボールミルを用いて1時間攪拌したのち、アルミニウム集電体上に100μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして正極シートとした。
更にこのシート上に、重合例2で得られたポリエーテル共重合体の3質量部をアセトニトリル97質量部に溶解させた溶液を正極活物質層の上にナイフコーティングによって塗布し、25℃で5時間静置乾燥したのち、60℃で10時間、常圧乾燥機にて乾燥させ、正極活物質100質量部あたり3.0質量部のポリエーテル共重合体が担持された正極2を作製した。
実施例1に記載の負極、セパレータ、及び非水電解質溶液を用いて、正極2と負極とをセパレータを介して圧着し、積層体を形成し、更に積層体をアルミラミネートへ収容し、非水電解質溶液を注入してリチウムイオン二次電池2を作製した。
[比較例1] リチウムイオン二次電池3の作製
<正極3>
正極活物質には、平均粒子径10μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3を用いた。この正極活物質90質量部に対して、導電助剤としてアセチレンの熱分解によって製造された球状炭素微粒子を3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを7質量部、N-メチル-2-ピロリドン50質量部を溶媒としてステンレスボールミルを用いて1時間攪拌したのち、アルミニウム集電体上に100μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして正極3を作製した。
実施例1に記載の負極、セパレータ、及び非水電解質溶液を用いて、正極3と負極とをセパレータを介して圧着し、積層体を形成し、更に積層体をアルミラミネートへ収容し、非水電解質溶液を注入してリチウムイオン二次電池3を作製した。
[比較例2] リチウムイオン二次電池4の作製
<正極4>
正極活物質には、平均粒子径10μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3を用いた。この正極活物質90質量部に対して、導電助剤としてアセチレンの熱分解によって製造された球状炭素微粒子を3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを7質量部、N-メチル-2-ピロリドン50質量部を溶媒としてステンレスボールミルを用いて1時間攪拌したのち、アルミニウム集電体上に100μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして正極シートとした。
更にこのシート上に、重合例3で得られたポリエーテル共重合体の5質量部をアセトニトリル95質量部に溶解させた溶液を正極活物質層の上にナイフコーティングによって塗布し、25℃で5時間静置乾燥したのち、60℃で10時間、常圧乾燥機にて乾燥させ、正極活物質100質量部あたり2.5質量部のポリエーテル共重合体が担持された正極4を作製した。
実施例1に記載の負極、セパレータ、及び非水電解質溶液を用いて、正極4と負極とをセパレータを介して圧着し、積層体を形成し、更に積層体をアルミラミネートへ収容し、非水電解質溶液を注入してリチウムイオン二次電池4を作製した。
[比較例3] リチウムイオン二次電池5の作製
<正極5>
正極活物質には、平均粒子径10μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3を用いた。この正極活物質90質量部に対して、導電助剤としてアセチレンの熱分解によって製造された球状炭素微粒子を3質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを7質量部、N-メチル-2-ピロリドン50質量部を溶媒としてステンレスボールミルを用いて1時間攪拌したのち、アルミニウム集電体上に100μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして正極シートとした。
更にこのシート上に、重合例2で得られたポリエーテル共重合体の5質量部をアセトニトリル95質量部に溶解させた溶液を正極活物質層の上にナイフコーティングによって塗布し、25℃で5時間静置乾燥したのち、60℃で10時間、常圧乾燥機にて乾燥させ、正極活物質100質量部あたり6.2質量部のポリエーテル共重合体が担持された正極5を作製した。
実施例1に記載の負極、セパレータ、及び非水電解質溶液を用いて、正極5と負極とをセパレータを介して圧着し、積層体を形成し、更に積層体をアルミラミネートへ収容し、非水電解質溶液を注入してリチウムイオン二次電池5を作製した。
[リチウムイオン二次電池の評価]
実施例及び比較例で作製されたリチウムイオン二次電池について、以下に示す方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
<充放電サイクル試験>
理論容量の2時間率放電(C/2)において2.5~4.3Vの充放電サイクル試験を充放電評価装置TOSCAT-3100(東洋システム株式会社)を用いて充放電サイクルを100回実施し、放電容量を求めた。放電容量が大きいほど充放電サイクル特性が良好であるといえる。
<セル体積の変化率>
アルキメデス法にて、充放電試験前のラミネートセルのセル体積に対する試験後のセル体積の変化率を求めた。セル体積の変化率が小さいほど、ガス発生が抑制されており、優れているといえる。
<直流抵抗の変化率>
初期抵抗は、充放電3サイクル目の充電4.3Vに到達した時から1/2時間率放電(2C)で放電を行い、放電開始直後の10秒間の電圧変化量を縦軸、そのときの放電電流値を横軸としてプロットし、原点を通る直線の傾きを初期抵抗とした。そして、直流抵抗の変化率を、初期抵抗に対する100サイクル試験後の抵抗の比率として求めた。直流抵抗の変化率が小さいほど、抵抗値上昇が抑制されているといえる。
Figure 2022062997000009
表2より、比較例1~3と比較して、本発明で規定する正極は、充放電100サイクル後のセル体積と直流抵抗の変化率ともに低いことから、ガス発生および抵抗値上昇が抑制されている点で優れている。更に放電容量が高いことからも、充放電サイクル特性が良好であることが分かる。また、比較例3が示すように、ガス発生が抑制されてはいるが、初期抵抗値が高く、放電容量の低下を招いていることから、ポリエーテル共重合体の担持量が多すぎると性能低下の要因となることも分かった。
本発明の正極は良好な充放電サイクル特性を有するため、安定性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。

Claims (5)

  1. 式(1):
    Figure 2022062997000010
    [式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、または-CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または-CHO(CHCHO)nRであり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていてもよい。Rは炭素数1~12のアルキル基または、アリール基であり、nは0~12の整数である。]
    で示される単量体から誘導される繰り返し単位0~95モル%、及び
    式(2):
    Figure 2022062997000011
    で示される単量体から誘導される繰り返し単位95~5モル%、及び
    式(3)
    Figure 2022062997000012
    [式中、Rはエチレン性不飽和基を有する基である。]
    で示される単量体から誘導される繰り返し単位0~20モル%を有するポリエーテル共重合体、正極集電体、および少なくとも正極活物質を含む正極活物質層を少なくとも含む蓄電デバイス用正極であって、前記ポリエーテル共重合体を、正極活物質100質量部あたり0.01~5質量部を正極活物質層内部に担持させた蓄電デバイス用正極。
  2. 前記正極活物質層に、導電助剤、結着剤を含んでなる請求項1に記載の蓄電デバイス用正極。
  3. 前記ポリエーテル重合体を溶媒に溶解したポリエーテル共重合体溶液を正極活物質層に塗布し、ポリエーテル共重合体を正極活物質層に含浸、担持させる工程を含む請求項1または2に記載の蓄電デバイス用正極の製造方法。
  4. 前記溶媒が、水、アルコール、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、トルエンおよびN-メチル-2-ピロリドンからなる群より少なくとも1種類を用いる請求項3に記載の蓄電デバイス用正極の製造方法。
  5. 請求項1又は2のいずれかに記載の正極を備える蓄電デバイス。
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