JP2022059822A - 切削インサートおよびこれを備えた切削工具 - Google Patents
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Abstract
Description
第1端面たる上面と、
上面と反対側の面であって切削工具のボデーへの取付面を有する第2端面たる下面と、
上面から下面まで貫通する軸線を有するねじ穴と、
上面と下面とを連ねるように形成された周側面と、
上面と周側面との交差領域、および下面と周側面との交差領域にそれぞれ形成される主切れ刃および内切れ刃と、
少なくともその一部がボデーと当接するように周側面に形成された拘束面と、
を備え、
上面から視た上面視における主切れ刃の角度と拘束面の角度とが異なっており、
主切れ刃の角度が拘束面の角度よりも小さいことを特徴とするものである。
図1等に示す切削インサート10は、表裏を反転させてエンドミル100のボデー150(図5~図7等参照)に取り付けることにより両面使用することができるインサートとして構成されている。本実施形態の切削インサート10は、図2における紙面上方を向いた第1端面たる上面17と、反対の紙面下方を向いた第2端面たる下面19と、上面17と下面19を接続する第1周側面部11、第2周側面部12、第3周側面部13、第4周側面部14からなる周側面15を備える。上面視において(図3参照)、上面17の形状は一組の略平行な辺稜部がもう一組の略平行な辺稜部よりも長いおおよそ平行四辺形のような形状になっている。切削インサート10の中央部には、上面17および下面19を貫通する貫通穴Hが形成されている(図2、図3等参照)。
切れ刃部20aには、切削加工時の切れ刃20となる主切れ刃21と内切れ刃22、およびこれら主切れ刃21と内切れ刃22の間に湾曲するように設けられるR部(以下、底R部という)23が形成されている(図8等参照)。内切れ刃22は、主切れ刃21よりも第4周側面部14寄りに位置している。
本実施形態の切削インサート10では、上面視において、主切れ刃21は、第2周側面部12に近づくにつれ、軸線Bとの距離が短くなるように傾斜する面で形成されている。上面視における、軸線Bに対する主切れ刃21の傾斜角度(別言すれば、軸線Cに垂直な仮想面S1に対する主切れ刃21の角度)を記号αで表す(図3参照)。一例として、本実施形態では、主切れ刃21の傾斜角度αを8°としている。
底R部23は、切削インサート10がエンドミル100に取り付けられたときエンドミル100の先端側を向くよう、第1方向D1に突出する凸形状に形成されている(図3等参照)。また、底R部23は、第1周側面部11に対向する方向から見た側面図(図4、図8参照)にて、主切れ刃21と内切れ刃22の間であって、当該切削インサート10の中心線(すなわちこの場合は中心軸AX1)よりも内切れ刃22寄りの位置(別言すれば、中心軸AX1よりも第4周側面部14に近い位置)に形成されている。このような切削インサート10によれば、切削抵抗がより内側から働くようになる、すなわち、切削時に切削インサート10に作用する切削抵抗のうち、とくにこの底R部23を介して作用する抵抗がより内側(すなわち、エンドミル100の回転軸に近い側)となることから(図7等参照)、切削インサート10を中心軸AX1まわりに回転させる力(モーメント)が低減する。このことは、切削インサート10やその切れ刃20が受ける切削抵抗が分散することにつながり、その結果、切削インサート10のクランプ性能を向上させ、切削時における当該切削インサート10の欠損やボデー150の変形が抑制されることにつながる。なお、図示している切削インサート10は底R部23が上記のごとく形成されたものの一例をわかりやすく示したものにすぎず、底R部23の具体的な位置や形状などは当該切削インサート10の仕様などに応じて適宜設計・変更されうる。
内切れ刃22は、底R部23に連なるように、エンドミル100の内周側に向けられた内周刃として機能するように形成されている。本実施形態の切削インサート10では、上面視において、下面19の内切れ刃(図9、図10中において便宜的に符号22’で示す)が、上面17の主切れ刃21よりも、第1方向D1側に位置する(別言すれば、上面17の主切れ刃21よりも、下面19側(反対側)の内切れ刃22’のほうが、軸線Bからの距離が大きい)。このような切削インサート10においては、反対面(下面19)の内切れ刃22’をより第1方向D1の側に位置させることで、当該反対面(下面19)のボス面(取付面)17Aを、より第1方向D1の側に位置させ、表面(上面17)の主切れ刃21に近づけることが可能となる(図9(B)中、とくに○印で囲む部分参照)。このようにしてボス面17Aを表面(上面17)の主切れ刃21に近づけると、当該切削インサート10のボデー150への着座面が広がり、当該上面17の主切れ刃21の真裏側(つまり下面19側)の着座面が広がることにもなる。このような切削インサート10によれば、主切れ刃21などに作用する切削抵抗をより広い着座面で受け、分散させることができるため、当該切削インサート10の強度が相対的に向上し、切削時における主切れ刃21等の欠損が抑制される。これについてさらに説明を加えるとすれば、てこの原理(力点から支点が遠いと小さな力でも動きやすいが、支点を近づければ動きにくくなる)を挙げることができる。切削インサート10が動いたり振動したりすると異常損傷や欠損の発生につながることがあるが、このような異常損傷や欠損を抑制するにあたっては、着座面の面積を単に広ければそれでよいということではなく、いかにして切れ刃20の直下の近くを当接させるか、が重要である。
軸線Bに垂直なある仮想断面(別言すれば、上面17のボス面17Aに垂直であり、かつ軸線Cの方向に延びるある仮想断面)に現れる、主切れ刃21、拘束面40、内切れ刃22’の形状、構造について説明する(図10等参照)。中心軸AX1に平行であって、上面17の主切れ刃21とその反対面(下面19)の内切れ刃22’を通るある仮想線(A-A線)を想定した場合の(図10(B)参照)、該A-A線を通り軸線Bに垂直な仮想断面による本実施形態の切削インサート10の断面を示す(図10(A)参照)。当該断面においては、上面17の主切れ刃21から下面19の内切れ刃22’に向かうにつれ、(i)上面17の主切れ刃21の逃げ面21fよりも拘束面40のほうが第1方向D1に沿って差分jの大きさぶん当該切削インサート10の外側に位置し、(ii)拘束面40よりも下面19の内切れ刃22’のほうが第1方向D1に沿って差分kの大きさぶん当該切削インサート10の外側に位置している(図10(B)参照)。このように、上面17の主切れ刃21から下面19の内切れ刃22’に向かうにつれ第1方向D1への突出量が増大する断面形状の切削インサート10は、従前の切削インサートよりも断面積を増大させることができ、そのぶん、強度を増大させ、それに伴い、切削時の欠損を抑制することができる。なお、差分jの大きさはたとえば0.1[mm]、差分kの大きさはたとえば0.28[mm] とすることができるがこれらはあくまで一具体例を示す大きさにすぎず、仕様などに応じて適宜設定され得る。
切削インサート10では、上面視における主切れ刃21の角度と内切れ刃22の角度とが異なっており、かつ、主切れ刃21の角度が内切れ刃22の角度よりも小さくなるように構成されていてもよい。本実施形態では、上面視における、軸線Bに対する内切れ刃22の傾斜角度(別言すれば、軸線Cに垂直な仮想面S1に対する内切れ刃22の角度)をγとした場合に(図11参照)、この傾斜角度γを、軸線Bに対する主切れ刃21の傾斜角度(別言すれば、軸線Cに垂直な仮想面S1に対する主切れ刃21の角度)αよりも大きくしている。このように内切れ刃22の傾斜角度γを比較的に大きくすると、これに伴い、ランピング加工等の切削時に内切れ刃22から出される切りくずが、より外側(エンドミル100の径方向外側)に向けて排出されるようになる(図11参照)。なお、傾斜角度αの大きさはたとえば8°、傾斜角度γの大きさはたとえば15°とすることができる(ただし、仮想面S1あるいは軸線Bに対するこれら主切れ刃21と内切れ刃22の傾斜の向きは互いに異なる)が、これらはあくまで一具体例を示す大きさにすぎず、仕様などに応じて適宜設定され得る。
図12に示す実施形態の切削インサート10では、拘束面40が形成されている第1周側面部11に対向して視る側面図(図4等参照)において、(i)上面17の主切れ刃21は、上面17のボス面17Aに対して傾斜して形成されていて、かつ、当該ボス面17Aと交差する(別言すれば、側面視において、主切れ刃21はその途中でボス面17Aの高を横切る)ように形成されていて、かつ、(ii)上面17の内切れ刃22はボス面17Aよりも低い位置(別言すれば、ボス面17Aと下面19との間となる位置)に形成されている(図12参照)。主切れ刃21から排出される切りくずのうち、内側に巻こうとする切りくずに対して、底面付近の切りくずはボス面17Aへと立ち上がる壁面(または当該壁面とボス面17Aとの交差稜線)に当たることで、エンドミル100の回転軸AX3(図5参照)の径方向外側に排出されるようになる。また、内切れ刃22から排出される切りくずのうち、とくに、ヘリカル加工のときに繋がって排出されるような切りくずがボス面17Aへと立ち上がる壁面(または当該壁面とボス面17Aとの交差稜線)に当たるようになり、ボス面17Aへと立ち上がる壁面等に当たることで、こちらもエンドミル100の径方向外側に排出されるようになる。上記についてより詳細に説明すれば以下のとおりである。すなわち、仮に切削速度が主切れ刃の各部で同一(一定)であれば、基本的に切りくずは主切れ刃から直角方向に流出することになるが、本実施形態のごとくエンドミル10に適用されカッタとして機能する主切れ刃21では、外周側の方が切削速度が速くなることから、基本的には、主切れ刃21の外周側の方が中心側よりも速く流出するようになり、内側に向かうカールが生じる。この点、主切れ刃21からボス面17Aまでの距離(より正確には、ボス面17Aへ立ち上がる壁面までの距離)を中心側ほど狭くすることで、切りくずのカール以上に先に切りくずの内側が壁面に当たるようになり、内側だけが拘束される(持ち上げられる)ので、切りくずは外側に向かうように変形させられるようになる。このような事象などを考慮し、主切れ刃21、ボス面17A、内切れ刃22の相対高さ(中心軸AX1の軸方向における位置関係)を上記のようにした切削インサート10によれば、切削加工時とくにヘリカル加工時の切りくずの排出性が向上する。
図13に示す実施形態に係る切削インサート10における、軸線Bに垂直なある仮想断面(別言すれば、上面17のボス面17Aに垂直であり、かつ軸線Cの方向に延びるある仮想断面)に現れる、主切れ刃21および内切れ刃22の形状、構造について説明する(図13参照)。中心軸AX1に平行であって、上面17の主切れ刃21を通るある仮想線(B-B線)を想定した場合の(図13(A)参照)、該B-B線を通り軸線Bに垂直な仮想面S2による主切れ刃21の断面を示す(図13(B)参照)。また、中心軸AX1に平行であって、上面17の内切れ刃22を通るある仮想線(C-C線)を想定した場合の(図13(A)参照)、該C-C線を通り軸線Bに垂直な仮想面S3による内切れ刃22の断面を示す(図13(C)参照)。仮想面S2による断面が示すように、主切れ刃21の逃げ面21fは逃げ角θ21がたとえば0°であるニュートラルな面(「ネガ面」と呼ばれることがある)または負の値となっている面(「逆ポジ面」などと呼ばれることがある)であり(図13(B)参照)、切削時の欠損が抑制される主切れ刃21となっている。また、仮想面S3による断面が示すように、内切れ刃22の逃げ面22fは、逃げ角θ22がたとえば3°であるポジ面であり(図13(C)参照)、切削時、より細かな切りくずが排出される内切れ刃22となっている。
ここまで説明した切削インサート10は、エンドミル100のチップ座154に取り付けられ、切削加工に用いられる(図5等参照)。エンドミル100のボデー150は、円柱状のシャンク152を備え、その回転軸AX3の先端には、切削インサート10を保持するための同一構造からなる3つのチップ座154が回転軸AX3を中心に120度間隔で形成されている(図5参照)。チップ座154は、平面部を備え、この平面部に開口するように雌ねじが形成されている。切削インサート10の貫通穴Hを貫通する雄ねじ160をこの雌ねじに螺合して雄ねじ160の頭部で上面17のボス面部17Aを押圧し、下面19に形成されるボス面部19Aをチップ座154の平面部に当接させることにより、切削インサート10は、ボデー150に固定される。
11…第1周側面部
12…第2周側面部
13…第3周側面部
14…第4周側面部
15…周側面
17…上面
17A…ボス面(取付面)
17A1…ボス面の縁部
17P…第1周側面部との接続領域
17S…第3周側面部との接続領域
19…下面
19A…ボス面部
19P…第1周側面部との接続領域
19S…第3周側面部との接続領域
20…切れ刃
20a,20b,20c,20d…切れ刃部
21…主切れ刃
21f…主切れ刃の逃げ面
22…内切れ刃
22f…内切れ刃の逃げ面
23…底R部(R部)
40…拘束面
100…エンドミル(切削工具)
150…ボデー
152…シャンク
154…チップ座
156…側壁
160…雄ねじ
AX1…中心軸
AX3…エンドミルの回転軸
B…軸線
C…軸線(主切れ刃および内切れ刃が形成される辺の中心を通る軸線)
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
D4…第4方向、
H…貫通穴(ねじ穴)
S1…軸線Bに垂直な仮想面
S2…軸線Bに垂直な仮想面
S3…軸線Bに垂直な仮想面
α…上面視における主切れ刃21の(軸線Bに対する)傾斜角度
β…上面視における拘束面40の(軸線Bに対する)傾斜角度
γ…上面視における内切れ刃22の(軸線Bに対する)傾斜角度
θ1…切込み角
θ2…従前の切削インサートによる切込み角
θ21…主切れ刃の逃げ角
θ22…内切れ刃の逃げ角
Claims (9)
- 第1端面たる上面と、
前記上面と反対側の面であって切削工具のボデーへの取付面を有する第2端面たる下面と、
前記上面から前記下面まで貫通する軸線を有するねじ穴と、
前記上面と前記下面とを連ねるように形成された周側面と、
前記上面と前記周側面との交差領域、および前記下面と前記周側面との交差領域にそれぞれ形成される主切れ刃および内切れ刃と、
少なくともその一部が前記ボデーと当接するように前記周側面に形成された拘束面と、
を備え、
前記上面から視た上面視における前記主切れ刃の角度と前記拘束面の角度とが異なっており、
前記主切れ刃の角度が前記拘束面の角度よりも小さいことを特徴とする切削インサート。 - 前記主切れ刃と前記内切れ刃の間に、凸形状であって、これら主切れ刃および内切れ刃が形成される辺の中心を通る軸線よりも前記内切れ刃寄りの位置に形成されたR部を備える、請求項1に記載の切削インサート。
- 上面視において、前記下面の内切れ刃が前記上面の主切れ刃よりも当該切削インサートの中心から外側に位置する、請求項1に記載の切削インサート。
- 前記下面前記取付面に垂直であって前記上面の主切れ刃を通る仮想面で切断した第1の仮想断面に現れる形状が、前記上面の主切れ刃から前記下面の内切れ刃に向かうにつれ、前記上面の主切れ刃の逃げ面よりも前記拘束面のほうが当該切削インサートの中心から外側に位置し、前記拘束面よりも前記下面の内切れ刃のほうが当該切削インサートの中心から外側に位置している形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート。
- 前記上面視における前記主切れ刃の角度と前記内切れ刃の角度とが異なっており、前記主切れ刃の角度が前記内切れ刃の角度よりも小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート。
- 前記上面視における前記内切れ刃の角度の大きさと前記拘束面の角度の大きさが等しい、請求項5に記載の切削インサート。
- 前記拘束面が形成された側面に向かって視る側面視にて、前記上面の主切れ刃は、前記上面の前記取付面と交差する高さに該取付面に対して傾斜して形成されており、前記上面の内切れ刃は前記取付面よりも低い位置に形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削インサート。
- 前記下面の前記取付面に垂直であって前記上面の主切れ刃を通る仮想面で切断した第1の仮想断面にて、当該主切れ刃の逃げ面は逃げ角が0°または負の値である面であり、
前記下面の前記取付面に垂直であって前記上面の内切れ刃を通る仮想面で切断した第2の仮想断面にて、当該内切れ刃の逃げ面は逃げ角が正の値であるポジ面である、請求項1から7のいずれか一項に記載の切削インサート。 - 回転軸を中心に回転し、切削インサートを保持するためのチップ座を有するボデーと、
前記チップ座に前記取付け面が当接するように前記ボデーに取り付けられる請求項1から8のいずれか一項に記載の切削インサートと、
を備える切削工具。
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