JP2022055910A - 起泡性油脂組成物、油性菓子および複合食品 - Google Patents

起泡性油脂組成物、油性菓子および複合食品 Download PDF

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Abstract

【課題】含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても、含気油性菓子における脱泡を抑制できる起泡性油脂組成物、または、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても、含気油性菓子における消泡を抑制できる起泡性油脂組成物を提供する。さらに、上記起泡性油脂組成物を応用した含気油性菓子および複合食品を提供する。【解決手段】起泡性油脂組成物に、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルからなる群のうちいずれか1種以上を添加する。【選択図】なし

Description

本発明は、起泡性油脂組成物に関する。また、本発明は、この起泡性油脂組成物を含む油性菓子および複合食品に関する。
滑らかな食感や口溶けが好まれている油性菓子の嗜好性をさらに高める手法として、菓子を含気することにより比重を小さくする方法がある。油性菓子の中に気体(気泡)が含まれることにより、口当たりが軽く滑らかな食感が得られ、かつ油性菓子が口の中で速やかに溶け広がりやすくなる。この手法により得られる含気された油性菓子(以下、「含気油性菓子」という。)として、例えば含気チョコレートやシュガークリームが知られている。含気油性菓子は、単独で喫食することはもちろん、その他の菓子類の製造にも利用されている。
含気油性菓子は、従前より、クッキーやビスケット等の焼き菓子との組合せや、アイスクリーム等の冷菓との組合せが提案されている。しかしながら、含気油性菓子では他の食品を被覆しにくい、および、含気油性菓子は任意の形状に成形しにくいなど、含気油性菓子は一般に作業性が低いことも知られている。特に、含気チョコレートの場合には、この作業性の問題は顕著となる。含気油性菓子の作業性が低い理由の1つとして、気体の量が多くなるにつれて含気油性菓子が流動性を失ってしまうことが挙げられる。一方、作業性を優先して、加温あるいは調温しながら含気油性菓子の粘度を一定程度まで低くして流動性を付与した場合には、含気油性菓子からの脱泡が生じやすくなる。
含気油性菓子の作業性を高める方法や、含気油性菓子からの脱泡を防ぐ方法について、これまでもいくつか検討されている。例えば特許文献1~3には、含気油性菓子に使用する起泡性油脂組成物に特定の乳化剤を使用する方法が記載されている。また、例えば特許文献4および5には、含気油性菓子に使用する起泡性油脂組成物中の油脂の物性(例えばトリグリセリド組成や固体脂含量(SFC)など)を調整する方法が記載されている。
特開2003-325105号公報 特開2005-073611号公報 特開2007-236289号公報 特開昭63-141547号公報 特許第6450045号公報
しかしながら、特許文献1~5に記載の従来の起泡性油脂組成物では、含気油性菓子の流動性を維持しながら脱泡を抑制するには、充分な効果が得られていない。
一方、小片状の増補用具材(例えば、アーモンドやピーナッツ等の種実類およびドライフルーツなど)を含気油性菓子に含有させる場合に、含気油性菓子中で消泡しやすくなるという新たな問題が見出された。特許文献1~5に記載の従来の起泡性油脂組成物は、この新たな問題に対しても充分に対処できない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても、含気油性菓子における脱泡を抑制できる起泡性油脂組成物、または、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても、含気油性菓子における消泡を抑制できる起泡性油脂組成物の提供を目的とする。
また、本発明は、上記起泡性油脂組成物を含む油性菓子、およびその油性菓子を含む複合食品の提供を目的とする。
上記課題は、起泡性油脂組成物に、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルからなる群のうちいずれか1種以上を添加することにより、解決できた。具体的には、以下の手段により、上記課題は解決された。
<1>
ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルからなる群のうちいずれか1種以上を含有する起泡性油脂組成物。
<2>
ソルビタンモノ脂肪酸エステルまたはソルビタンジ脂肪酸エステルが、炭素数12以上の飽和脂肪酸残基を含む、<1>に記載の起泡性油脂組成物。
<3>
さらに、エステル化率が65%以上の高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルを含有する、<1>または<2>に記載の起泡性油脂組成物。
<4>
高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルが、炭素数12以上の飽和脂肪酸残基を含む、<3>に記載の起泡性油脂組成物。
<5>
高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの含量が、起泡性油脂組成物の質量に対して、0.1~2.0質量%である、<3>または<4>に記載の起泡性油脂組成物。
<6>
高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの含量が、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルの合計含量を1質量部としたときに、0.3~1.5質量部である、<3>~<5>のいずれか1つに記載の起泡性油脂組成物。
<7>
ノーテンパー型である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の起泡性油脂組成物。
<8>
油性菓子用である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の起泡性油脂組成物。
<9>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の起泡性油脂組成物を含む油性菓子。
<10>
<9>に記載の油性菓子を含む複合食品。
本発明の起泡性油脂組成物および油性菓子により、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても含気油性菓子における脱泡を抑制でき、または、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても含気油性菓子における消泡を抑制できる。また、本発明の複合食品により、より嗜好性の高い食感が得られる。
以下、本発明の代表的な実施形態について説明する。各構成要素は、便宜上、この代表的な実施形態に基づいて説明されるが、本発明は、そのような実施形態に限定されるものではない。
<起泡性油脂組成物>
本発明の起泡性油脂組成物は、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルからなる群のうちいずれか1種以上を含有する
本発明において、上記構成を有することにより、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても含気油性菓子における脱泡を抑制でき、または、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても含気油性菓子における消泡を抑制できる。その理由は定かではないが、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルが、油脂と相互作用しやすくかつ破壊されにくい膜を気泡の周りに形成するためと考えられる。すなわち、そのような膜が気泡の周りに存在することによって、気泡形状が安定する、気泡が含気油性菓子中を移動しにくくなる、気泡同士が結合しにくくなる、増補用具材からの刺激に対する気泡の耐久性が向上する、および、気泡が増補用具材に吸収されにくくなるなどの効果が得られ、その結果として、含気油性菓子が流動性を有する状態または含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても、脱泡または消泡が抑制できると考えられる。
<<ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステル>>
ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステル(以下、「特定ソルビタン脂肪酸エステル」ともいう。)はそれぞれ、ソルビタンと脂肪酸がエステル結合したソルビタン脂肪酸エステルの一種である。そのうち、ソルビタンモノ脂肪酸エステルは、ソルビタンが有する水酸基のうち1ヵ所で、脂肪酸とのエステル結合が形成されている化合物であり、ソルビタンジ脂肪酸エステルは、ソルビタンが有する水酸基のうち2ヵ所で、脂肪酸とのエステル結合が形成されている化合物である。
本発明において、特定ソルビタン脂肪酸エステル中のソルビタン由来の部分構造は、特に限定されない。ソルビタンは、ソルビトールの脱水反応により得られる化合物であり、例えば1,4-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、および1,4,3,6-ジアンヒドロソルビトールなどを含む。本発明において、上記ソルビタン由来の部分構造は、いずれのソルビタンに由来する構造であってもよい。
本発明において、特定ソルビタン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸残基の種類は、特に制限されず、例えば、炭素数10~30の脂肪酸残基であってもよく、飽和脂肪酸残基でもよく、不飽和脂肪酸残基でもよい。流動性を有する状態や小片状の増補用具材を含有する状態でも含気状態を維持する観点から、特定ソルビタン脂肪酸エステルは、炭素数12以上の飽和脂肪酸残基を含むことが好ましく、炭素数12~22の飽和脂肪酸残基を含むことがより好ましく、炭素数12~18の飽和脂肪酸残基を含むことがさらに好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸残基を含むことが最も好ましい。
炭素数が12未満の飽和脂肪酸残基を含有する特定ソルビタン脂肪酸エステルを用いる場合や、不飽和脂肪酸残基を含有する特定ソルビタン脂肪酸エステルを用いる場合であっても、本発明の効果を得ることは可能である。しかしながら、上記した炭素数が12以上の飽和脂肪酸残基を有する特定ソルビタン脂肪酸エステルを使用した時ほどには効果を得ることが難しい。また、起泡させるために要する時間が長くなりやすく、生産効率が低下しやすくなる。
本発明の起泡性油脂組成物において、特定ソルビタン脂肪酸エステルの含量は、起泡性油脂組成物の質量に対して、0.5~2.2質量%であることが好ましく、0.8~1.8質量%であることがより好ましく、1.0~1.6質量%であることが最も好ましい。上記範囲内で含有させることで、油性菓子を、流動性を有する状態にした場合であっても脱泡しにくくなる。また、食感が良好なものになりやすい。さらに、種実類やドライフルーツ等の小片状の増補用具材を含有させた場合であっても、消泡を抑制し、含気状態を維持しやすくなる。
本発明の起泡性油脂組成物は、結合する脂肪酸残基が異なる2種以上の特定ソルビタン脂肪酸エステルを含有することができる。この場合、結合脂肪酸残基が異なる2種以上の特定ソルビタン脂肪酸エステルの含量の合計が上記の範囲にあることが好ましい。
含気油性菓子の流動性を高めた場合に脱泡しにくくする観点や、小片状の増補用具材を含有させた場合に含気状態を維持する観点から、本発明の起泡性油脂組成物は、結合脂肪酸残基が1種類の特定ソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。本明細書において、特定ソルビタン脂肪酸エステルについて「結合脂肪酸残基が1種類」であるとは、特定ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸残基組成において特定の脂肪酸残基が50質量%以上を占めることを意味する。ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸残基組成は「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」や「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」に準拠して、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
<<エステル化率が65%以上であるソルビタン脂肪酸エステル>>
本発明の起泡性油脂組成物は、その効果をさらに向上させる観点から、特定ソルビタン脂肪酸エステルに加えて、さらに、エステル化率が65%以上であるソルビタン脂肪酸エステル(以下、「高エステル化ソルビタン脂肪酸エステル」ともいう。)を含有することが好ましい。
特定ソルビタン脂肪酸エステルに加えて、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルを含有することで、流動性を高めてもいっそう脱泡しにくくなり、含気油性菓子を用いてなる複合食品の製造効率が向上する。その上、油性菓子に含気しやすくなるため、含気油性菓子自体の製造効率も向上しやすい。また、含気油性菓子の食感が良好なものになりやすい。さらに、小片状の増補用具材を含有させた場合であっても、含気状態をいっそう維持しやすくなる。
本発明におけるソルビタン脂肪酸エステルのエステル化率(%)とは、下記式により算出される値である。下記式中のエステル価および水酸基価は、例えば「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]および[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
エステル化率(%)={エステル価/(エステル価+水酸基価)}×100
エステル化率が65%以上であるソルビタン脂肪酸エステルであれば任意のソルビタン脂肪酸エステルを高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルとして使用することができる。高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルにおいて、エステル化率は70%以上であることが好ましく、73%以上であることがより好ましい。本発明では、工業的に生産されまたは商業的に販売されており市販品の入手が容易である観点から、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルにおいて、エステル化率は90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下でもよい。特に、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタントリ脂肪酸エステルであることが好ましい。ソルビタントリ脂肪酸エステルは、ソルビタンと脂肪酸のエステル化合物であって、ソルビタンが有する水酸基のうち3ヵ所で、脂肪酸とのエステル結合が形成されている化合物である。
本発明において、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸残基の種類は、特に制限されず、例えば、炭素数10~30の脂肪酸残基であってもよく、飽和脂肪酸残基でもよく、不飽和脂肪酸残基でもよい。流動性を有する状態や小片状の増補用具材を含有する状態でも含気状態を維持する観点から、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルは、炭素数12以上の飽和脂肪酸残基を含むことが好ましく、炭素数12~22の飽和脂肪酸残基を含むことがより好ましく、炭素数12~18の飽和脂肪酸残基を含むことがさらに好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸残基を含むことが最も好ましい。
含気油性菓子の流動性を高めた場合に脱泡しにくくする観点や、小片状の増補用具材を含有させた場合に含気状態を維持する観点から、本発明の起泡性油脂組成物は、結合脂肪酸残基が1種類の高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。本明細書において、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルについて「結合脂肪酸残基が1種類」であるとは、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸残基組成において特定の脂肪酸残基が70質量%以上を占めることを意味する。
さらに、本発明の効果を向上させる観点から、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルを構成する最大含量の脂肪酸残基は、特定ソルビタン脂肪酸エステルを構成する最大含量の脂肪酸残基と同一種であることが好ましい。
本発明において、高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの含量は、起泡性油脂組成物の質量に対して、0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.2~1.5質量%であることがより好ましく、0.3~1.2質量%であることがさらに好ましい。
また、起泡性油脂組成物中における高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの含量は、特定ソルビタン脂肪酸エステルの含量(つまり、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルの合計含量)を1質量部としたときに、0.3~1.5質量部であることが好ましく、0.4~1.2質量部であることがより好ましく、0.5~0.9質量部であることがさらに好ましい。
<<使用することができる油脂>>
本発明の起泡性油脂組成物は、主な成分として油脂を含有する。特に、起泡性油脂組成物を含む油性菓子を含気しやすくする観点から、油脂の含量は80~99.5質量%であることが好ましい。油脂の含量は、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。油脂の含量は、99質量%以下であってもよく、98質量%以下であってもよい。
本発明の起泡性油脂組成物に用いられる油脂としては、特に制限されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂およびカカオ脂等の植物性油脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油および鯨油等の動物性油脂、並びに、これらの油脂に水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。上記油脂の1種を単独で用いてもよく、2種以上の油脂を混合して用いることもできる。2種以上の油脂を混合して用いる場合には、それらの油脂の合計の含量が、上記数値範囲に含まれることが好ましい。
本発明の起泡性油脂組成物を使用して製造される含気油性菓子の使用態様によっても異なるが、起泡性油脂組成物は、以下の(1)および(2)のうち、いずれか1種以上の油脂を、原料油脂として含有することが好ましい。これにより、撹拌やエアレーションにより油性菓子が含気しやすくなる。
(1)ラウリン系油脂
(2)カカオ脂分別軟部油、シア脂分別軟部油、サル脂分別軟部油、およびハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油から選択される少なくとも1種の分別軟部油(以下、単に「カカオ脂等分別軟部油」と記載する場合がある。)
本明細書における上記(1)ラウリン系油脂は、ヤシ油、パーム核油またはこれらの混合油脂を原料の一つとして水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した加工油脂であって、脂肪酸組成中に占めるラウリン酸(炭素数12の飽和脂肪酸)が15~65質量%の割合で含有される加工油脂を指す。
本発明における上記(2)カカオ脂等分別軟部油は、上記のとおり、カカオ脂の分別軟部油、シア脂の分別軟部油、サル脂の分別軟部油、および、ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油から選択される少なくとも1種の油脂である。「分別軟部油」とは、分別により高融点油脂を分離除去して得られた低融点油脂を意味する。カカオ脂等分別軟部油は、カカオ脂の分別軟部油、シア脂の分別軟部油、サル脂の分別軟部油、およびハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油のうち、1種のみからなる油脂でもよく、2種以上の混合油脂でもよい。
カカオ脂等分別軟部油は、その一部または全部が液状油でない油脂でもよいが、油性菓子を含気しやすくする観点から、カカオ脂等分別軟部油の全部が、25℃におけるSFCが10%以下である液状油であることが好ましい。カカオ脂等分別軟部油のヨウ素価は、好ましくは40以上、より好ましくは50~75である。
カカオ脂、シア脂、サル脂から分別軟部油を得る際の分別方法は、特に限定されず、公知の方法が使用できる。そのような方法としては、例えば、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、および、晶析等の無溶剤分別などがある。分別は必要に応じて複数回行ってもよく、各回の分別条件を変えてもよい。また、溶剤分別と無溶剤分別を組み合わせてもよい。
ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油は、ハイオレイックヒマワリ油とステアリン酸エチルを、前者:後者で好ましくは1:2~2:1の質量比で混合した混合物に、1,3-位置特異性を有するリパーゼを加えて常法によりエステル交換し、上述したような公知の方法で分別することにより得られる。
起泡性を高めることに加えて、含気油性菓子に良好な口溶けを付与する観点から、本発明の起泡性油脂組成物中のラウリン系油脂の含量は、起泡性油脂組成物に含有される油分のうち、15~60質量%であることが好ましく、20~55質量%であることがより好ましい。
ラウリン系油脂は常温での口溶けを有意に高めることができるため、特に常温で喫食する油性菓子に用いることが好ましい。
同様に、起泡性を高めることに加えて、含気油性菓子に良好な口溶けを付与する観点から、本発明の起泡性油脂組成物中のカカオ脂等分別軟部油の含量は、起泡性油脂組成物に含有される油分のうち、40~65質量%であることが好ましく、45~60質量%であることがより好ましい。
カカオ脂等分別軟部油は、常温では液状であるが、冷蔵・冷凍下では適度な粘弾性を有し、喫食時の口溶けが良好であるため、特に冷凍下で喫食される油性菓子に用いることが好ましい。
本発明の起泡性油脂組成物は、テンパー型であってもノーテンパー型であってもよい。撹拌やエアレーションにより油性菓子を含気させる際に、通常、油性菓子を流動性が生じる程度まで加温するため、油性菓子中の油脂の結晶型を考慮することなく、求める物性を得ることができる観点からは、ノーテンパー型が好ましい。
ノーテンパー型の起泡性油脂組成物は、当該技術分野における常法によって得ることができる。例えば、油脂組成物中のS2U型のトリグリセリド(2つの飽和脂肪酸Sおよび1つの不飽和脂肪酸Uを含むトリグリセリド)において、SUS型(対称型)トリグリセリドの割合を減少させ、SSU型(非対称型)トリグリセリドの割合を増加させることにより、起泡性油脂組成物をノーテンパー型とすることができる。
本発明の起泡性油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、起泡性油脂組成物に含まれる全構成脂肪酸の質量に対して、トランス脂肪酸の含量が10質量%未満であることをいう。トランス脂肪酸のこの含量は、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
<<その他原料>>
本発明の起泡性油脂組成物には、特定ソルビタン脂肪酸エステルおよび油脂以外に、水および添加剤を含有することができる。添加剤としては、公知の材料を任意に単独でまたは組合わせて使用することができる。例えば、添加剤としては、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵および各種卵加工品、カカオマス・ココアパウダー等のカカオ原料、脱脂粉乳・全粉乳・クリーム・牛乳・乳清ミネラル等の乳や乳製品、着香料、香辛料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果汁、コーヒー原料などが挙げられる。
ただし、本発明の起泡性油脂組成物においては、水分含量が高いと油性菓子の固化性が著しく悪化するほか、増粘しやすくなるため、水分含量は少ないほど好ましい。本発明の起泡性油脂組成物中の水分含量は、好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下とする。なお、この水分含量は、直接配合する水に加えて、水分を含有する他の原料に含まれる水分をあわせて算出するものとする。本発明の起泡性油脂組成物が水分を含む場合には、起泡性油脂組成物は、水中油型乳化物や油中水型乳化物等の乳化物の形態をとってもよい。
上記乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル以外の乳化剤を任意に使用できる。例えば、上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびレシチンなどが挙げられる。上記乳化剤は、1種単独で使用することもでき、2種以上を混合して使用することもできる。本発明の効果を低減させない観点から、乳化剤としてレシチンを選択することが好ましい。
乳化剤の添加量は、起泡性油脂組成物の質量に対して、好ましくは0.1~1質量%、より好ましくは0.2~0.7質量%である。
本発明の起泡性油脂組成物は、気泡を含んでいてもよく、気泡を含んでいなくてもよい。
<起泡性油脂組成物の製造方法>
次に、本発明の起泡性油脂組成物の製造方法について述べる。本発明の起泡性油脂組成物は、特定ソルビタン脂肪酸エステルを油相に溶解した後、必要に応じ、水相を添加して乳化し、冷却し、結晶化させることにより製造される。
詳しくは、先ず、任意の油脂を1種又は2種以上選択して、油脂を加熱溶解し、混合および撹拌を行う。その後、所望量の特定ソルビタン脂肪酸エステルを油脂に追加し、混合しながら溶解し、油相を調製する。このとき、油溶性のその他の原料は、必要により油相に含有させることができる。また、必要に応じて、水溶性のその他の原料を水に添加した水相を調製し、水相を油相に添加し、乳化してもよい。なお、その他原料として乳化剤(特にレシチン)を使用する場合には、油相に含有させることが好ましい。
本発明において、上記で得た原料の混合物に殺菌処理を行うことが好ましい。殺菌方法は、公知の方法を任意に使用することができ、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、原料の混合物を冷却し、必要により可塑化する。本発明において、冷却条件は、好ましくは0.5℃/分以上、さらに好ましくは5℃/分以上である。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
本発明の起泡性油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、任意に、窒素、空気等を含気させることができる。気泡を含まない起泡性油脂組成物を製造する場合には、この段階では、このような含気処理は不要である。
<油性菓子>
本発明の油性菓子について述べる。上記のようにして得られた起泡性油脂組成物は、特に油性菓子に好ましく用いられる。本発明の油性菓子は、上記の起泡性油脂組成物を含むことを特徴とする。本発明の油性菓子は、上記起泡性油脂組成物を含有することにより、油性菓子が含気された場合に、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても、含気油性菓子における脱泡を抑制でき、または、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても、含気油性菓子における消泡を抑制できるという特徴を有する。したがって、油性菓子の態様は、含気した状態であることが好ましく、この場合に、本発明の起泡性油脂組成物は特に有用である。
本発明の油性菓子に含気処理を行うタイミングは、特に制限されず、起泡性油脂組成物が油性菓子原料に添加された後、油性菓子が食される前のいずれの段階でもよい。例えば、起泡性油脂組成物を油性菓子原料に添加した後、油性菓子の一連の製造工程の中で、油性菓子への含気処理が行われてもよい。また、例えば、油性菓子の製造工程の中では含気処理が行われないまま、含気用の油性菓子として市場に流通した後、菓子工場、菓子工房または菓子店など、油性菓子の製造場所とは別の場所で、油性菓子への含気処理が行われてもよい。
含気させる方法としては、特に限定されず、例えば、油性菓子を適度な温度にまで冷却して結晶量を調節しながらホイッパー等で撹拌する方法、連続ミキサーを用いて強制的に油性菓子に気泡を含ませる方法、減圧させて強制的に油性菓子から発泡させる方法、および、空気や不活性ガスを油性菓子に吹き込むエアレーション等が例示できる。なお、製造する含気油性菓子がテンパー型である場合には、含気処理を行う前に油性菓子にテンパリングすることが好ましい。
含気の程度、すなわち、含気油性菓子の比重は、0.5~1.0であることが好ましく、0.6~0.9であることがより好ましい。比重が0.5未満であると、気泡が粗くなるため極めて脆い物性となり、また、口の中で油性菓子が溶けにくくなり、口溶けがもたついた食感となりやすく、良好な口溶けが得られにくい。一方、比重が1.0を超えると含気チョコレート独特の軽い後口でかつ滑らかな食感が得られにくい。
本発明の油性菓子の種類としては、特に限定されないが、チョコレート類またはクリーム類を挙げることができる。
<<チョコレート類>>
まず、本発明の油性菓子の一態様であるチョコレート類について述べる。本発明の油性菓子であるチョコレート類は、本発明の起泡性油脂組成物を、チョコレート類を構成する油脂として含有する。
本明細書において「チョコレート類」とは、全国チョコレート業公正取引協議会で規定された「チョコレート」、「準チョコレート」だけでなく、カカオマス、ココアバター、ココア等を利用した生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品も含む意味である。例えば、このようなチョコレート類は、カカオマスやココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、油脂類、糖類、乳化剤、香料および色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、常法により、ロール掛けおよびコンチング処理等の処理を実施して得ることができる。
本発明の油性菓子であるチョコレート類における、起泡性油脂組成物の含量は、チョコレート類に含有させるカカオバターの量によっても異なるが、チョコレート類に含まれる油脂の質量に対して、60~100質量%であることが好ましく、65~95質量%であることがより好ましく、75~90質量%であることが特に好ましい。
良好な風味と食感を有するチョコレート類を得るために、本発明の起泡性油脂組成物を含有するチョコレート類の油脂分の質量に対して、カカオバターの含量は、5~35質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。特に、本発明の起泡性油脂組成物がノーテンパー型である場合には、ブルーム等の発生によるチョコレート類の品質低下を抑制するために、チョコレート類の油脂分の質量に対して、カカオバターの含量は、5~25質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
また、本発明のチョコレート類が乳製品由来の乳脂を含有する場合には、乳脂の含量は、油相中20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。これにより、後述するように油性菓子を含気させる場合に、流動性を有する状態や小片状の増補用具材を含有する状態にしたときでも、含気状態を維持しやすくなる。
本発明の油性菓子であるチョコレート類は、本発明の起泡性油脂組成物を含有することにより、チョコレート類が含気された場合に、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても、含気油性菓子における脱泡を抑制でき、または、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても、含気油性菓子における消泡を抑制できるという特徴を有する。したがって、チョコレート類が、含気させたチョコレート類である場合に、本発明の起泡性油脂組成物は特に有用である。
本発明の油性菓子の一態様である含気させたチョコレート(以下、単に「含気チョコレート」と記載する場合がある。)の好ましい製造方法について述べる。
本発明の含気チョコレートを製造するには、まず、本発明の起泡性油脂組成物を含有するチョコレート生地を製造する。そのような方法としては、例えば、溶融状態のチョコレート生地に、本発明の起泡性油脂組成物を添加し、十分に混合する方法、あるいは、チョコレート生地を製造する際に、本発明の起泡性油脂組成物を添加して、定法により、充分に混合する方法などがある。次に、上記チョコレート生地を含気させ、冷却する。
含気の程度、すなわち、含気チョコレートの比重は、0.5~1.0であることが好ましく、0.6~0.9であることがより好ましい。比重が0.5未満であると、気泡が粗くなるため極めて脆い物性となり、また、口の中で油性菓子が溶けにくくなり、口溶けがもたついた食感となりやすく、良好な口溶けが得られにくい。一方、比重が1.0を超えると含気チョコレート独特の軽い後口でかつ滑らかな食感が得られにくい。
含気チョコレート生地を成形する場合の成型方法としては、例えば含気処理後、各種の型に流し込んだり、口金を通して平板に絞り出したり、シェルチョコのセンターとして流し込んだりする方法が挙げられる。そして、その後、定法に従い、冷却し、必要に応じ離型、成型する。
<<クリーム類>>
本発明の油性菓子の一態様であるクリーム類について述べる。クリーム類は、例えばクリーム、バタークリームおよびシュガークリームなど、油相を連続相とする食品素材である。本発明の油性菓子であるクリーム類は、その油相の一部又は全部として、本発明の起泡性油脂組成物を含む。
本発明のクリーム類における起泡性油脂組成物の含量は、クリーム類に含まれる油脂の質量に対して、20~100質量%であることが好ましく、30~100質量%であることがより好ましい。
本発明のクリーム類がカカオバターを含有する場合には、良好な風味と食感を得るために、カカオバターの含量は、クリーム類の油脂分の質量に対して、5~35質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。特に、本発明の起泡性油脂組成物がノーテンパー型である場合には、ブルーム等の発生によるクリーム類の品質低下を抑制するために、クリーム類の油脂分の質量に対して、カカオバターの含量は、5~25質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
本発明のクリーム類は、原料として本発明の起泡性油脂組成物を使用する以外は、クリーム類の種類等に応じた通常の製法によって製造することができる。とりわけ、脱泡しにくいという本発明の起泡性油脂組成物の特徴を活かし、撹拌・エアレーション等により含気させることが好ましい。
<複合食品>
本発明の複合食品について述べる。本発明の複合食品は、本発明の油性菓子を用いて製造された食品であり、つまり、本発明の油性菓子を含む。本発明の複合食品は、例えば、上記の油性菓子を、ベーカリー食品、冷凍食品類、および小片状の増補用具材と組み合わせて製造することができる。本発明の油性菓子は、新規な食感が得られる点で、含気されたものであることがより好ましい。
本発明の複合食品の製造に用いられる上記のベーカリー食品としては、パン類や焼き菓子類を挙げることができる。
本発明の複合食品の製造に用いられる上記パン類としては、例えば、食パンや菓子パン、バターロール、バラエティブレッド、フランスパン、デニッシュ、ペストリー等を挙げることができる。
これらのパン類の生地は、製パン方法として知られた、公知の製パン方法によって製造することができる。そのような製パン方法としては、例えば、速成法、ストレート法、中種法、液種法、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法、冷凍生地法等の方法を適宜選択可能である。通常のパン類の生地を調製する際と同様に、フロアータイム、分割、ベンチタイム、成形、ホイロをとることができる。
本発明の複合食品の製造に用いられる上記焼き菓子類としては、例えば、パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等のバターケーキ類、アイスボックスクッキー、ワイヤーカットクッキー、サブレ、ラングドシャクッキー等のクッキー類、その他パイやシュー、ドーナツ、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等が挙げられる。これらの焼き菓子類の生地は、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法等、公知の方法によって製造することができ、常法に従って焼き菓子類を得ることができる。
本発明の複合食品の製造に用いられる上記冷凍食品類としては、アイスクリーム、アイスキャンディー、セミフレッドケーキ、冷凍ケーキ、冷凍パン、冷凍クッキー、アイスもなか、アイスコーン等の冷菓をはじめ、冷凍パイ、冷凍パン生地等の冷凍ベーカリー生地を挙げることができる。
本発明の複合食品の製造に用いられる小片状の増補用具材としては、特に限定されないが、例えば種実類、ドライフルーツ、焼き菓子粉砕物、マシュマロを挙げることができる。
上記種実類としては、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ピーカンナッツ、オーナッツ、マカデミアナッツ、ブラジルナッツ、ココナッツ、松、けし、ひまわり等の種実や堅果、それらのホール品・割物品・スライス品、それらを用いたペースト・ピューレ等の加工品等を挙げることができる。
上記ドライフルーツとしては、ぶどう(マスカット等含む)、ベリー(いちご、クランベリー、ブルーベリー等含む)、柑橘類(みかん、オレンジ、ゆず等を含む)、もも、プルーン、バナナ、パパイヤ、パイナップル、りんご、梅、トマトなどを、水分活性が0.5~0.7程度まで低下させたものが挙げられる。
なお、本明細書において、「ドライフルーツ」は、一般的には野菜や穀物(大豆、小豆、ひよこ豆等の豆類含む)に該当する食品であっても、カボチャ、サツマイモ等、Brix値が5%以上の食品を乾燥させ、水分活性を0.5~0.7程度まで低下させた食材も含む意味である。
上記焼き菓子粉砕物としては、先に示した焼き菓子類を破砕、粉砕、切断して得られるものである。
本発明の複合食品の製造に用いられる小片状の増補用具材は、適宜その大きさに応じて、破砕、粉砕、又は切断して用いてもよい。なお、本発明の複合食品中に含まれる大きさは、各辺1~8mm程度とすることが望ましい。
複合させる手法は特に問わず、フィリングやトッピング、コーティング、エンローバー等により各種食品と組み合わせることができる。特に、本発明の起泡性油脂組成物を用いて製造された油性菓子は、流動性を有する状態でも含気状態を維持するという特徴を有することから、含気させた本発明の油性菓子をコーティングおよびエンローバーにより上記の各種食品と組み合わせる場合に有用である。これにより、従前見られなかった新規な食感の食品を得ることができる。
含気油性菓子を、ベーカリー食品や冷凍食品類へコーティングおよびエンローバーにより組み合わせる方法としては、滴下、塗布、スプレー、浸漬、および、どぶ漬け(例えば、食品の大部分を比較的短時間だけ浸す)等の方法を挙げることができる。
また、本発明の起泡性油脂組成物を用いて製造された油性菓子は、小片状の増補用具材を含有する状態でも含気状態を維持するという特徴を有することから、含気させた本発明の油性菓子中に、小片状の増補用具材を分散させて含有させる場合に有用である。これにより、従前見られなかった新規な食感の食品を得ることができる。
含気油性菓子中に、小片状の増補用具材を分散させて含有させる方法としては、例えば、含気油性菓子を、流動性を有する状態になるまで加温した後、小片状の増補用具材を含有させてさらに混合して分散させる方法や、油性菓子を含気させる際に小片状の増補用具材を加える方法がある。
なお、本発明の複合食品を製造する際の、本発明の油性菓子の使用量は、複合する食品の種類に応じて任意であり、特に制限されるものではない。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。本発明の範囲は、以下に示す具体例に限定されるものではない。
「原料油脂の準備」
下記の手順によって、起泡性油脂組成物の製造に用いるための油脂組成物A、BおよびCをそれぞれ準備した。
<油脂組成物A>
カカオ脂等分別軟部油であるシア分別軟部油(ヨウ素価65)、およびラウリン系油脂であるパーム核分別軟部油をそれぞれ加熱し、融解した状態でこれらを混合および撹拌し、下記配合の油脂組成物Aを得た。
・油脂組成物Aの配合
・・シア分別軟部油 50質量部
・・パーム核分別軟部油 50質量部
<油脂組成物B>
油脂b1、b2、b3およびb4を以下に示す手順で調製した。次に、油脂b1、油脂b2、ラウリン系油脂である油脂b3、油脂b4、およびパーム極度硬化油(ヨウ素価1以下)をそれぞれ加熱し、融解した状態でこれらを混合および撹拌し、下記配合の油脂組成物Bを得た。
・油脂組成物Bの配合
・・油脂b1 39質量部
・・油脂b2 19質量部
・・油脂b3 20質量部
・・油脂b4 19質量部
・・パーム極度硬化油 3質量部
<<油脂b1の調製の方法>>
先ず、ヨウ素価が1以下となるまでパーム油に水素添加を行ったパーム極度硬化油42質量部、パーム油27.5質量部、およびパーム分別軟部油(ヨウ素価56)30.5質量部をそれぞれ融解した状態で撹拌および混合し、油脂配合物を得た。この油脂配合物を四口フラスコに入れ、液温を90℃に調整し、油脂配合物100質量部に対し0.2質量部の割合でナトリウムメトキシドを加え、さらに、真空下で1時間、加熱しながら撹拌および混合した。その後、油脂配合物にクエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和し、常法により油脂配合物に精製し、ランダムエステル交換油を得た。
上記ランダムエステル交換油を、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入し、50rpmで撹拌しながら、60℃に加温され、完全に溶解された状態から、油脂温度が46℃となるまで7.0℃/hで急冷した。油脂温度が46℃に達温してから、5時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が35.0℃となるまで2.2℃/hで徐冷した。油脂温度が35℃に達温してから11時間の熟成工程を経て、結晶化スラリーを得た。この結晶化スラリーを濾過分別および圧搾に供し、得られた分別軟部油を常法により精製することにより、油脂b1を得た。
<<油脂b2の調製の方法>>
先ず、ヨウ素価が1以下となるまでパーム油に水素添加を行ったパーム極度硬化油35質量部、およびパーム油65質量部をそれぞれ融解した状態で撹拌および混合し、油脂配合物を得た。この油脂配合物を四口フラスコに入れ、液温を90℃に調整し、油脂配合物100質量部に対し0.2質量部の割合でナトリウムメトキシドを加え、さらに、真空下で1時間、加熱しながら撹拌および混合した。その後、油脂配合物にクエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和し、常法により精製することにより、油脂b2を得た。
<<油脂b3の調製の方法>>
パーム核油(構成脂肪酸残基中のラウリン酸残基含量50.1%)50質量部と、ヨウ素価が1以下となるまでパーム油に水素添加を行ったパーム極度硬化油50質量部をそれぞれ融解した状態で撹拌および混合し、油脂配合物を得た。この油脂配合物を使用し、油脂b1と同様にして、ナトリウムメトキシドを触媒とするランダムエステル交換反応および精製処理を行って、ランダムエステル交換油である油脂b3を得た。
<<油脂b4の調製の方法>>
ヨウ素価が1以下となるまでパーム油に水素添加を行ったパーム極度硬化油45質量部、およびパーム油55質量部をそれぞれ融解した状態で撹拌および混合し、油脂配合物を得た。この油脂配合物を四口フラスコに入れ、液温を90℃に調整し、油脂配合物100質量部に対し0.2質量部の割合でナトリウムメトキシドを加え、さらに、真空下で1時間、加熱しながら撹拌および混合した。その後、油脂配合物にクエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和し、常法により精製し、ランダムエステル交換油を得た。
上記ランダムエステル交換油を、ジャケット付ガラス製晶析槽に投入し、50rpmで撹拌しながら、60℃に加温され、完全に溶解された状態から、油脂温度が45℃となるまで8.3℃/hで急冷した。油脂温度が45℃に達温してから、3時間の熟成工程を経て、更に油脂温度が39.5℃となるまで1℃/hで徐冷して、結晶化スラリーを得た。この結晶化スラリーを濾過分別および圧搾に供し、得られた分別軟部油を常法により精製することにより、油脂b4を得た。
<油脂組成物C>
上記油脂b4、パーム分別軟部油(ヨウ素価65)、およびパーム中融点画分をそれぞれ加熱し、融解した状態でこれらを混合および撹拌し、下記配合の油脂組成物Cを得た。
・油脂組成物Cの配合
・・油脂b4 54質量部
・・パーム分別軟部油 29質量部
・・パーム中融点画分 17質量部
「検討1.冷菓被覆用油性菓子」
上記の油脂組成物Aを用いて、以下に示すとおり、起泡性油脂組成物を調製した。なお、以下では実施例1~11の各起泡性油脂組成物をそれぞれEx-1からEx-11、比較例1および2の各起泡性油脂組成物をそれぞれCEx-1およびCEx-2と表す場合がある。使用した材料は下記のとおりである。
<材料の仕様>
・ソルビタンモノステアレート:化合物中に脂肪酸残基を1つ有しかつその脂肪酸残基がステアリン酸残基であるソルビタン脂肪酸エステル。ダニスコジャパン社製「GRINSTED SMS MB」。
・ソルビタンモノラウレート:化合物中に脂肪酸残基を1つ有しかつその脂肪酸残基がラウリン酸残基であるソルビタン脂肪酸エステル。理研ビタミン社製「L-300」。
・ソルビタンモノオレート:化合物中に脂肪酸残基を1つ有しかつその脂肪酸残基がオレイン酸残基であるソルビタン脂肪酸エステル。理研ビタミン社製「ポエムO-80V」。
・ソルビタンジステアレート:化合物中に脂肪酸残基を2つ有しかつそれらの脂肪酸残基がステアリン酸残基であるソルビタン脂肪酸エステル。理研ビタミン社製「ポエムS-320YN」。
・ソルビタントリステアレート:化合物中に脂肪酸残基を3つ有しかつそれらの脂肪酸残基がステアリン酸残基であるソルビタン脂肪酸エステル。ダニスコジャパン社製「GRINSTED STS Q」。
<実施例1>
油脂組成物A、ソルビタンモノステアレートおよびトコフェロールを下記の配合で加えて、この混合物を70℃まで加温し、完全に溶解させ、よく混合した。その後、30℃/分の冷却速度で急冷可塑化することで、起泡性油脂組成物(Ex-1)を得た。
・起泡性油脂組成物(Ex-1)の配合
・・油脂組成物A 99.68質量部
・・ソルビタンモノステアレート 0.30質量部
・・トコフェロール 0.02質量部
<実施例2>
油脂組成物Aの量を99.08質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を0.9質量部とした他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-2)を得た。
<実施例3>
油脂組成物Aの量を98.78質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を1.2質量部とした他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-3)を得た。
<実施例4>
油脂組成物Aの量を98.48質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を1.5質量部とした他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-4)を得た。
<実施例5>
油脂組成物Aの量を97.98質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を2.0質量部とした他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-5)を得た。
<実施例6>
油脂組成物Aの量を97.58質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を2.4質量部とした他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-6)を得た。
<実施例7>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンジステアレートを用いた他は、実施例5と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-7)を得た。
<実施例8>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンモノラウレートを用いた他は、実施例5と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-8)を得た。
<実施例9>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンモノオレートを用いた他は、実施例5と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-9)を得た。
<実施例10>
油脂組成物Aに、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレートおよびトコフェロールを下記の配合で加えて、この混合物を70℃まで加温し、完全に溶解させ、よく混合した。その後、30℃/分の冷却速度で急冷可塑化することで、起泡性油脂組成物(Ex-10)を得た。
・起泡性油脂組成物(Ex-10)の配合
・・油脂組成物A 98.78質量部
・・ソルビタンモノステアレート 0.60質量部
・・ソルビタントリステアレート 0.60質量部
・・トコフェロール 0.02質量部
<実施例11>
油脂組成物Aの量を97.78質量部、ソルビタンモノステアレートの量を1.2質量部、およびソルビタントリステアレートの量を1.0質量部とした他は、実施例10と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-11)を得た。
<比較例1>
ソルビタンモノステアレートを加えず、油脂組成物Aの量を99.98質量部とした他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(CEx-1)を得た。
<比較例2>
油脂組成物Aの量を99.38質量部とし、かつ、ソルビタンモノステアレートに替えて0.6質量部のソルビタントリステアレートを添加した他は、実施例1と同様に製造し、起泡性油脂組成物(CEx-2)を得た。
<含気油性菓子および複合食品の製造>
起泡性油脂組成物Ex-1からEx-11ならびにCEx-1およびCEx-2をそれぞれ用いて、以下のとおり冷菓被覆用の含気油性菓子およびこれを用いた冷菓を製造した。
下記配合で、ノーテンパー型の含気油性菓子(含気チョコレート)を得た。具体的には、砂糖、カカオマス(油分55質量%)、ココアパウダー、液状油(大豆油)、香料、レシチンをボールにとり、練り合わせてペースト状にし、ロール掛けした。ロール掛けした後、各起泡性油脂組成物を加えてさらにコンチングし、ノーテンパー型の油性菓子生地を得た。この油性菓子生地を、卓上ミキサーを用いて、比重が0.83となるまで高速で撹拌して、含気油性菓子を得た。なお、撹拌開始時点での油性菓子生地の温度は40℃であった。また、撹拌終了時点での油性菓子生地の温度は25.5℃であり、流動性を有するペースト状であった。
・油性菓子の配合
・・砂糖 32.26質量部
・・カカオマス 8.24質量部
・・ココアパウダー 15.47質量部
・・液状油 20.55質量部
・・香料 0.03質量部
・・起泡性油脂組成物 23.00質量部
・・レシチン 0.45質量部
含気油性菓子の一部をカップにとり、後述の「比重評価」に供した。次いで、含気油性菓子を25℃に調温したものに、棒付きバニラアイスクリーム(ロッテ社製「北海道バニラバー」45ml×10本)を浸漬して、厚さ約3mmの含気油性菓子で被覆された冷菓を得た。この冷菓を製造する際の被覆工程において、後述の「目視観察評価」を行った、そして、上記冷菓を-20℃で充分に冷凍保存した後、後述の「官能評価」を行った。
<評価>
<<比重評価>>
各起泡性油脂組成物を使用して得られた含気油性菓子を25℃に設定された恒温相で3時間保管した。その保管前後の比重を下記評価基準に従って5段階で評価した。比重は、水を1としたときの比重を下記式により計算して求めた。
含気油性菓子の比重=A/B
Aは一定容積の含気油性菓子の重量を表す。
Bは一定容積の水の重量を表す。
・評価基準
比重の変動=|保管後の含気油性菓子の比重-保管前の含気油性菓子の比重|
++:比重の変動が0.02以下であった。
+:比重の変動が0.02超かつ0.04以下であった。
±:比重の変動が0.04超かつ0.06以下であった。
-:比重の変動が0.06超かつ0.08以下であった。
--:比重の変動が0.08超であった。
<<目視観察評価>>
各起泡性油脂組成物を使用して得られた含気油性菓子を目視で表面観察し、下記評価基準に従って5段階で評価した。
・評価基準
++:被覆を行う際に必要な流動性が十分にあり、かつ、気泡は非常に細かく、チョコレート生地表面は滑らかな状態である。
+:被覆を行う際に必要な流動性が十分にあり、かつ、気泡は細かく、チョコレート生地表面は滑らかな状態である。
±:被覆を行う際に必要な流動性が十分にあり、かつ、気泡はやや細かく、チョコレート生地表面はやや滑らかな状態である。
-:被覆を行う際に必要な流動性が十分にあるが、気泡はやや粗く、チョコレート生地表面はやや粗い状態である。
--:被覆を行う際に必要な流動性が十分にあるが、気泡は粗く、チョコレート生地表面は粗い状態である。
<<官能評価>>
実施例および比較例で製造した冷菓について、10人の専門パネラーにより下記評価基準に従って、含気油性菓子の官能評価を実施した。10人の専門パネラーの合計点を求め、合計点が46~50点の場合に+++、39~45点の場合に++、32~38点の場合に+、27~31点の場合に±、14~26点の場合に-、0~13点の場合に--と評価した。なお、評価に先立ち、パネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
・評価基準
5点:あっさりとして極めて軽い後口であり極めて良好である。
3点:あっさりとした軽い後口で良好である。
1点:粗く砕けるような食感であり、あるいは口残りする食感であり、やや不良である。
0点:極端に硬すぎてまたは極端に軟らかすぎて不良である。
<<評価結果>>
検討1.における各評価結果を表1に示す。比重評価の結果から、本発明の構成を有することにより、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても含気油性菓子における脱泡を抑制できることが分かった。特に、実施例3~7の結果から、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルの添加量を所定の範囲にすることにより、さらに気泡の維持性能に優れ、その上、細かい気泡を維持でき、きめの細かい油性菓子が得られることが分かった。また、実施例10および11の結果から、エステル化率が65%以上であるソルビタン脂肪酸エステルを併用した場合にも、含気状態をいっそう維持しやすくなり、良好な食感が得られることが分かった。
Figure 2022055910000001
「検討2.サンド用油性菓子」
上記の油脂組成物Bを用いて、以下に示すとおり、起泡性油脂組成物を調製した。なお、以下では実施例12~21の各起泡性油脂組成物をそれぞれEx-12からEx-21、比較例3および4の各起泡性油脂組成物をそれぞれCEx-3およびCEx-4と表す場合がある。使用した材料は、検討1と同じ品種である。
<実施例12>
油脂組成物B、ソルビタンモノステアレートおよびトコフェロールを下記の配合で加えて、この混合物を70℃まで加温し、完全に溶解させ、よく混合した。その後、30℃/分の冷却速度で急冷可塑化することで、起泡性油脂組成物(Ex-12)を得た。
・起泡性油脂組成物(Ex-12)の配合
・・油脂組成物B 99.08質量部
・・ソルビタンモノステアレート 0.90質量部
・・トコフェロール 0.02質量部
<実施例13>
油脂組成物Bの量を98.78質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を1.2質量部とした他は、実施例12と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-13)を得た。
<実施例14>
油脂組成物Bの量を98.48質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を1.5質量部とした他は、実施例12と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-14)を得た。
<実施例15>
油脂組成物Aの量を97.98質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を2.0質量部とした他は、実施例12と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-15)を得た。
<実施例16>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンジステアレートを用いた他は、実施例15と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-16)を得た。
<実施例17>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンモノラウレートを用いた他は、実施例15と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-17)を得た。
<実施例18>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンモノオレートを用いた他は、実施例15と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-18)を得た。
<実施例19>
油脂組成物Bに、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレートおよびトコフェロールを下記の配合で加えて、この混合物を70℃まで加温し、完全に溶解させ、よく混合した。その後、30℃/分の冷却速度で急冷可塑化することで、起泡性油脂組成物(Ex-19)を得た。
・起泡性油脂組成物(Ex-19)の配合
・・油脂組成物B 98.78質量部
・・ソルビタンモノステアレート 0.60質量部
・・ソルビタントリステアレート 0.60質量部
・・トコフェロール 0.02質量部
<実施例20>
油脂組成物Bの量を97.78質量部、ソルビタンモノステアレートの量を1.2質量部、およびソルビタントリステアレートの量を1.0質量部とした他は、実施例19と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-20)を得た。
<実施例21>
油脂組成物Bの量を97.88質量部、ソルビタンモノステアレートの量を1.5質量部、およびソルビタントリステアレートの量を0.6質量部とした他は、実施例19と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-21)を得た。
<比較例3>
ソルビタンモノステアレートを加えず、油脂組成物Bの量を99.98質量部とした他は、実施例12と同様に製造し、起泡性油脂組成物(CEx-3)を得た。
<比較例4>
油脂組成物Bの量を99.38質量部とし、かつ、ソルビタンモノステアレートに替えて0.6質量部のソルビタントリステアレートを添加した他は、実施例12と同様に製造し、起泡性油脂組成物(CEx-4)を得た。
<含気油性菓子および複合食品の製造>
起泡性油脂組成物Ex-12からEx-21ならびにCEx-3およびCEx-4をそれぞれ用いて、以下のとおりサンド用の含気油性菓子およびこれを用いたサンド菓子を製造した。
下記配合で、ノーテンパー型の含気油性菓子(含気チョコレート)を得た。具体的には、カカオマスを約55℃に加温して溶解し、ココアパウダー、脱脂粉乳、砂糖を加えて混練した後、ロールリファイナーにかかる硬さが得られる範囲で、起泡性油脂組成物の一部を溶解して加え、さらに混錬し、これをロール掛けした。その後、レシチンおよび残りの起泡性油脂組成物を加えて、コンチングして、油性菓子生地を得た。この油性菓子生地を調温しながら、卓上ミキサーを用いて、比重が0.83となるまで高速で撹拌して、ノーテンパー型の含気油性菓子を得た。なお、撹拌開始時点での油性菓子生地の温度は50℃であった。また、撹拌終了時点での油性菓子生地の温度は33℃であり、流動性を有するペースト状であった。
・油性菓子の配合
・・砂糖 31.0質量部
・・カカオマス 8.0質量部
・・ココアパウダー 11.2質量部
・・脱脂粉乳 6.4質量部
・・起泡性油脂組成物 43.0質量部
・・レシチン 0.4質量部
含気油性菓子の一部をカップにとり、後述の「比重評価」に供した。この含気油性菓子を30℃に調温し流動性を有する状態としたものを、10mmの口金をつけた三角袋に詰め、焼菓子(森永製菓社製「マリー」)上に15g絞り、その上にさらに同じ焼菓子を置いてサンドした。その後、これを5℃で30時間冷却して、含気油性菓子を焼菓子と複合させたサンド菓子を得た。上記で得られた各サンド菓子について、後述の「内相評価」および「官能評価」を実施した。
<評価>
<<比重評価>>
各起泡性油脂組成物を使用して得られた含気油性菓子を25℃に設定された恒温相で48時間保管した。その保管前後の比重を下記評価基準に従って5段階で評価した。
・評価基準
比重の変動=|保管後の含気油性菓子の比重-保管前の含気油性菓子の比重|
++:比重の変動が0.02以下であった。
+:比重の変動が0.02超かつ0.04以下であった。
±:比重の変動が0.04超かつ0.06以下であった。
-:比重の変動が0.06超かつ0.08以下であった。
--:比重の変動が0.08超であった。
<<内相評価>>
サンド菓子を割断し、焼菓子でサンドされた含気油性菓子の内相について、下記評価基準に従って5段階で評価した。
・評価基準
++:微細な気泡が均一に存在し、粗い気泡は殆ど見られない。
+:微細な気泡が均一に存在しているが、少数の粗い気泡が見られる。
±:微細な気泡とやや粗い気泡が同等程度に見られる。
-:全体的にやや粗い気泡が見られる。
--:全体的にやや粗い気泡が見られ、一部に粗い気泡も見られる。
<<官能評価>>
実施例および比較例で製造したサンド菓子について、10人の専門パネラーにより下記評価基準に従って、含気油性菓子の官能評価を実施した。10人の専門パネラーの合計点を求め、合計点が46~50点の場合に+++、39~45点の場合に++、32~38点の場合に+、27~31点の場合に±、14~26点の場合に-、0~13点の場合に--と評価した。なお、評価に先立ち、パネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
・評価基準
5点:あっさりとして極めて軽い後口であり極めて良好である。
3点:あっさりとした軽い後口で良好である。
1点:粗く砕けるような食感であり、あるいは粘りを感じるような食感であり、やや不良である。
0点:極端に硬すぎてまたは極端に軟らかすぎて不良である。
<<評価結果>>
検討2.における各評価結果を表2に示す。比重評価の結果から、本発明の構成を有することにより、含気油性菓子が流動性を有する状態にあっても含気油性菓子における脱泡を抑制できることが分かった。特に、実施例13~16の結果から、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルの添加量を所定の範囲にすることにより、さらに含気状態の維持性能に優れ、その上、細かい気泡を維持でき、きめの細かい油性菓子が得られることが分かった。また、実施例20および21の結果から、エステル化率が65%以上であるソルビタン脂肪酸エステルを併用した場合にも、含気状態をいっそう維持しやすくなり、良好な食感が得られることが分かった。
Figure 2022055910000002
「検討3.増補用具材を含有する油性菓子」
上記の油脂組成物Cを用いて、以下に示すとおり、起泡性油脂組成物を調製した。なお、以下では実施例22~29の各起泡性油脂組成物をそれぞれEx-22からEx-29、比較例5および6の各起泡性油脂組成物をそれぞれCEx-5およびCEx-6と表す場合がある。使用した材料は、検討1と同じ品種である。
<実施例22>
油脂組成物C、ソルビタンモノステアレートおよびトコフェロールを下記の配合で加えて、この混合物を70℃まで加温し、完全に溶解させ、よく混合した。その後、30℃/分の冷却速度で急冷可塑化することで、起泡性油脂組成物(Ex-22)を得た。
・起泡性油脂組成物(Ex-22)の配合
・・油脂組成物C 99.08質量部
・・ソルビタンモノステアレート 0.90質量部
・・トコフェロール 0.02質量部
<実施例23>
油脂組成物Cの量を98.78質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を1.2質量部とした他は、実施例22と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-23)を得た。
<実施例24>
油脂組成物Cの量を98.48質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を1.5質量部とした他は、実施例22と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-24)を得た。
<実施例25>
油脂組成物Cの量を97.98質量部、およびソルビタンモノステアレートの量を2.0質量部とした他は、実施例22と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-25)を得た。
<実施例26>
ソルビタンモノステアレートに替えて、同じ量のソルビタンジステアレートを用いた他は、実施例25と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-26)を得た。
<実施例27>
油脂組成物Cに、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレートおよびトコフェロールを下記の配合で加えて、この混合物を70℃まで加温し、完全に溶解させ、よく混合した。その後、30℃/分の冷却速度で急冷可塑化することで、起泡性油脂組成物(Ex-27)を得た。
・起泡性油脂組成物(Ex-27)の配合
・・油脂組成物C 98.78質量部
・・ソルビタンモノステアレート 0.60質量部
・・ソルビタントリステアレート 0.60質量部
・・トコフェロール 0.02質量部
<実施例28>
油脂組成物Cの量を97.78質量部、ソルビタンモノステアレートの量を1.2質量部、およびソルビタントリステアレートの量を1.0質量部とした他は、実施例27と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-28)を得た。
<実施例29>
油脂組成物Cの量を97.88質量部、ソルビタンモノステアレートの量を1.5質量部、およびソルビタントリステアレートの量を0.6質量部とした他は、実施例27と同様に製造し、起泡性油脂組成物(Ex-29)を得た。
<比較例5>
ソルビタンモノステアレートを加えず、油脂組成物Cの量を99.98質量部とした他は、実施例22と同様に製造し、起泡性油脂組成物(CEx-5)を得た。
<比較例6>
油脂組成物Cの量を99.38質量部とし、かつ、ソルビタンモノステアレートに替えて0.6質量部のソルビタントリステアレートを添加した他は、実施例22と同様に製造し、起泡性油脂組成物(CEx-6)を得た。
<含気油性菓子および複合食品の製造>
起泡性油脂組成物Ex-22からEx-29ならびにCEx-5およびCEx-6をそれぞれ用いて、以下のとおり含気油性菓子に増補用具材を含有させて複合菓子を製造した。
下記配合で、テンパー型の含気チョコレート(含気油性菓子)を得た。具体的には、砂糖、カカオマス、起泡性油脂組成物、ココアバターおよびレシチンを常法に従い、ミキシング、微細化、コンチングを行って、テンパー型のチョコレート生地を得た。この生地をシードテンパリング処理した後、25℃まで冷却し、さらにホイッパーを使用して比重が0.72となるまで高速で撹拌して、テンパー型の含気チョコレートを得た。
・油性菓子の配合
・・砂糖 38.3質量部
・・カカオマス 45.1質量部
・・ココアパウダー 7.3質量部
・・起泡性油脂組成物 9.0質量部
・・レシチン 0.3質量部
次に、この含気チョコレート100質量部に対して10質量部のドライフルーツ(レーズン)を添加し、さらにビーターを使用して低速で30秒間撹拌し、含気チョコレート中にドライフルーツを均一に分散させて、複合菓子を得た。この時点で得られた複合菓子をカップに充填し、後述の白色度測定を行い、この測定値をコントロールとした。一方、さらにビーターを使用して上記複合菓子を低速で5分間撹拌し、この時点で得られた複合菓子をカップに充填し、後述の白色度測定を行い、測定された白色度のコントロール値に対する割合(以下、「相対白色度」という。)に基づいて後述の「白色度評価」を実施した。
<<白色度評価>>
相対白色度を以下の基準で評価した。相対白色度は、その値が大きいほど、含気チョコレートからの脱泡および消泡が抑制されていることを意味する。
・評価基準
++:相対白色度が0.85以上であった。
+:相対白色度が0.75以上かつ0.85未満であった。
-:相対白色度が0.65以上かつ0.75未満であった。
--:相対白色度が0.65未満であった。
・白色度の測定
分光測色計(CM-700d、コニカミノルタ社製)を用いて色調の測定を行った。具体的には、分光測色計によって含気チョコレートを5点測定し、分光測色計により算出されたハンター白色度の平均値を含気チョコレートの白色度とした。
<<評価結果>>
検討3.における評価結果を表3に示す。白色度評価の結果から、本発明の構成を有することにより、含気油性菓子が小片状の増補用具材を含有する状態にあっても、含気油性菓子における消泡を抑制できることが分かった。特に、実施例23~26の結果から、ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルの添加量を所定の範囲にすることにより、さらに含気状態の維持性能に優れることが分かった。また、実施例28および29の結果から、エステル化率が65%以上であるソルビタン脂肪酸エステルを併用した場合にも、含気状態をいっそう維持しやすくなることが分かった。
Figure 2022055910000003

Claims (10)

  1. ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよびソルビタンジ脂肪酸エステルからなる群のうちいずれか1種以上を含有する起泡性油脂組成物。
  2. 前記ソルビタンモノ脂肪酸エステルまたは前記ソルビタンジ脂肪酸エステルが、炭素数12以上の飽和脂肪酸残基を含む、請求項1に記載の起泡性油脂組成物。
  3. さらに、エステル化率が65%以上の高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルを含有する、請求項1または2に記載の起泡性油脂組成物。
  4. 前記高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルが、炭素数12以上の飽和脂肪酸残基を含む、請求項3に記載の起泡性油脂組成物。
  5. 前記高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの含量が、前記起泡性油脂組成物の質量に対して、0.1~2.0質量%である、請求項3または4に記載の起泡性油脂組成物。
  6. 前記高エステル化ソルビタン脂肪酸エステルの含量が、前記ソルビタンモノ脂肪酸エステルおよび前記ソルビタンジ脂肪酸エステルの合計含量を1質量部としたときに、0.3~1.5質量部である、請求項3~5のいずれか1項に記載の起泡性油脂組成物。
  7. ノーテンパー型である、請求項1~6のいずれか1項に記載の起泡性油脂組成物。
  8. 油性菓子用である、請求項1~7のいずれか1項に記載の起泡性油脂組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の起泡性油脂組成物を含む油性菓子。
  10. 請求項9に記載の油性菓子を含む複合食品。
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