JP2022049986A - ポリアリレート樹脂、及び電子写真感光体 - Google Patents

ポリアリレート樹脂、及び電子写真感光体 Download PDF

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Abstract

【課題】感光体の感光層に含有された場合に耐摩耗性及び感度特性を向上でき、感光体の感光層用塗布液に含有された場合に液ライフ特性を向上できるポリアリレート樹脂、及び電子写真感光体を提供する。【解決手段】ポリアリレート樹脂は、以下の(1)、(2)、(3)、及び(4)の成分に由来する繰り返し単位を有する。(1)ビスフェノール成分、(2)4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、(3)4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、(4)2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,5-ピロールジカルボン酸からなる群から選択される1つのジカルボン酸【選択図】図1

Description

本発明は、ポリアリレート樹脂、及び電子写真感光体に関する。
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
特許文献1には、感光層を有する電子写真感光体が記載されている。この感光層のバインダー樹脂は、下記式で表される構造を含むポリアリレート樹脂である。
Figure 2022049986000002
特開2003-322982号公報
しかし、本発明者らの検討により、特許文献1に記載の電子写真感光体は、耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性の点で不十分であることが判明した。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子写真感光体の感光層に含有された場合に耐摩耗性及び感度特性を向上でき、電子写真感光体の感光層用塗布液に含有された場合に液ライフ特性を向上できるポリアリレート樹脂を提供することである。また、本発明の別の目的は、耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性に優れる電子写真感光体を提供することである。
本発明のポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 2022049986000003
前記式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表す。前記式(4)中、Yは、硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子を表す。
Figure 2022049986000004
前記式(X1)中、tは、1又は2を表し、*は結合手を表す。前記式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は結合手を表す。
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。前記バインダー樹脂は、上記ポリアリレート樹脂を含む。
本発明のポリアリレート樹脂は、電子写真感光体の感光層に含有された場合に耐摩耗性及び感度特性を向上でき、電子写真感光体の感光層用塗布液に含有された場合に液ライフ特性を向上できる。本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性に優れる。
本発明の第2実施形態に係る電子写真感光体の一例である積層型電子写真感光体の部分断面図である。 本発明の第2実施形態に係る電子写真感光体の一例である積層型電子写真感光体の部分断面図である。 本発明の第2実施形態に係る電子写真感光体の一例である積層型電子写真感光体の部分断面図である。 本発明の第2実施形態に係る電子写真感光体の一例である単層型電子写真感光体の部分断面図である。 本発明の第2実施形態に係る電子写真感光体の一例である単層型電子写真感光体の部分断面図である。 本発明の第2実施形態に係る電子写真感光体の一例である単層型電子写真感光体の部分断面図である。 ポリアリレート樹脂(R-2)の1H-NMRスペクトル図である。 図7に示す1H-NMRスペクトルの1.4ppm以上2.5ppm以下の範囲付近の拡大図である。 図7に示す1H-NMRスペクトルの7.0ppm以上8.4ppm以下の範囲付近の拡大図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「一般式」及び「化学式」を包括的に、「式」と記載する場合がある。本明細書に記載の各成分は、特記なき限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘度平均分子量は、特記なき限り、JIS(日本産業規格)K7252-1:2016に従って測定した値である。
まず、本明細書で用いられる置換基について説明する。炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基及び3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、3-エチルブトキシ基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチルオキシ基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
<第1実施形態:ポリアリレート樹脂>
本発明の第1実施形態は、ポリアリレート樹脂に関する。第1実施形態のポリアリレート樹脂は、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する。以下、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有するポリアリレート樹脂を、ポリアリレート樹脂(PC)と記載することがある。また、式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)と記載することがある。
Figure 2022049986000005
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表す。式(4)中、Yは、硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子を表す。
Figure 2022049986000006
式(X1)中、tは、1又は2を表し、*は結合手を表す。式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は結合手を表す。
ポリアリレート樹脂(PC)は、電子写真感光体(以下、感光体と記載する)の感光層に含有された場合に耐摩耗性及び感度特性を向上でき、感光体の感光層用塗布液に含有された場合に液ライフ特性を向上できる。その理由は、以下のように推測される。第1に、ポリアリレート樹脂(PC)は、繰り返し単位(1)~(4)を有している。第2に、繰り返し単位(4)が、Yで表される硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子を有している。第3に、繰り返し単位(4)が五員環を含むため、繰り返し単位(1)~(3)が有する六員環に対して、繰り返し単位(4)が有する五員環がねじれて配置される。第1~第3の理由によりポリカーボネート樹脂(PC)に適度な極性が付与されることから、感光層形成用溶剤に対するポリアリレート樹脂(PC)の溶解性、及び感光層に含有される材料(より具体的には、電荷発生剤、正孔輸送剤等)に対するポリアリレート樹脂(PC)の相溶性が向上する。上記溶解性及び相溶性が向上することで、ポリアリレート樹脂(PC)を感光層に含有させた場合に、均一で密な感光層が形成され、感光体の耐摩耗性及び感度特性が向上する。また、上記溶解性及び相溶性が向上することで、感光層を形成するための塗布液におけるポリアリレート樹脂(PC)の分散性が高まり、塗布液のゲル化が抑制される。その結果、感光体の液ライフ特性が向上する。なお、液ライフ特性は、感光層を形成するための塗布液を製造直後に使用することなく暫く保管した場合であっても、塗布液に含有される成分の分散性が維持でき、塗布液のゲル化が引き起こされ難い特性である。
式(X1)中、tは、2を表すことが好ましい。
式(X2)中、R3が水素原子を表し且つR4がメチル基、エチル基、又は炭素原子数3のアルキル基を表すこと、R3がメチル基を表し且つR4がエチル基又は炭素原子数3のアルキル基を表すこと、又はR3がエチル基を表し且つR4が炭素原子数3のアルキル基を表すことが好ましい。R3が水素原子を表し且つR4がメチル基を表すこと、又はR3がメチル基を表し且つR4がエチル基を表すことがより好ましい。
式(X1)及び(X2)中の*が表す結合手は、式(1)中のXが結合している炭素原子に結合している。
繰り返し単位(1)としては、例えば、式(1-1)、(1-2)、及び(1-3)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、及び(1-3)と記載することがある)が挙げられる。
Figure 2022049986000007
繰り返し単位(4)としては、例えば、式(4-1)、(4-2)、及び(4-3)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを、繰り返し単位(4-1)、(4-2)、及び(4-3)と記載することがある)が挙げられる。
Figure 2022049986000008
式(1)中、R1、及びR2は、メチル基を表し、Xは、式(X1)で表される二価の基を表すことが好ましい。
式(1)中のR1及びR2がメチル基を表す場合の好適な態様において、式(1)が式(1-1)であり、且つ式(4)が式(4-1)であるか;式(1)が式(1-1)であり、且つ式(4)が式(4-2)であるか;或いは、式(1)が式(1-1)であり、且つ式(4)が式(4-3)であることが好ましい。
式(1)中、R1、及びR2は、水素原子を表し、Xは、式(X2)で表される二価の基を表すことも好ましい。
式(1)中のR1及びR2が水素原子を表す場合の好適な態様において、式(1)が式(1-2)であり、且つ式(4)が式(4-1)であるか;或いは、式(1)が式(1-3)であり、且つ式(4)が式(4-1)であることが好ましい。
以下、ポリアリレート樹脂(PC)において、繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)の総数に対する、繰り返し単位(1)の数の百分率(単位:%)を、m1と記載する。繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)の総数に対する、繰り返し単位(2)の数の百分率(単位:%)を、m2と記載する。繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)の総数に対する、繰り返し単位(3)の数の百分率(単位:%)を、m3と記載する。繰り返し単位(1)、(2)、(3)、及び(4)の総数に対する、繰り返し単位(4)の数の百分率(単位:%)を、m4と記載する。m1、m2、m3、及びm4の和は、100%である。
ポリアリレート樹脂(PA)において、ビスフェノール由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(1)又は(2))と、ジカルボン酸由来の繰り返し単位(より具体的には、繰り返し単位(3)又は(4))とは、隣接して互いに結合している。即ち、繰り返し単位(1)は、繰り返し単位(3)と結合してもよく、繰り返し単位(4)と結合してもよい。また、繰り返し単位(2)は、繰り返し単位(3)と結合してもよく、繰り返し単位(4)と結合してもよい。ビスフェノール由来の繰り返し単位はジカルボン酸由来の繰り返し単位と同数であることから、計算式「m1+m2=m3+m4」が満たされる。
1は、0%より大きく50%未満であることが好ましく、25%以上49%以下であることがより好ましく、35%以上45%以下であることが更に好ましい。
2は、0%より大きく50%未満であることが好ましく、1%以上25%以下であることがより好ましく、5%以上15%以下であることが更に好ましい。
3は、0%より大きく50%未満であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましく、20%以上30%以下であることが更に好ましい。
4は、0%より大きく50%未満であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましく、20%以上30%以下であることが更に好ましい。
1、m2、m3、及びm4は、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(PC)の1H-NMRスペクトルを測定し、得られた1H-NMRスペクトルにおける各繰り返し単位に特徴的なピークの比率から算出できる。
ポリアリレート樹脂(PC)の好適な例としては、表1に示すポリアリレート樹脂(PC-1)~(PC-5)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PC-1)~(PC-5)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)として表1に示す繰り返し単位を有する。表1及び後述する表2において、単位(1)~(4)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)を示す。
Figure 2022049986000009
ポリアリレート樹脂(PC)の更に好適な例としては、表2に示すポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)は、各々、繰り返し単位(1)~(4)として表2に示す繰り返し単位を有し、m1~m4が表2に示す値であるポリアリレート樹脂である。表2において、「m1/m2/m3/m4」は、ポリアリレート樹脂のm1、m2、m3、m4の値を示す。例えば「40/10/25/25」は、m1が40であり、m2が10であり、m3が25であり、m4が25であることを示す。
Figure 2022049986000010
耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性を向上させるために、ポリアリレート樹脂(PC)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)~(4)のみを有することが好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体であってもよい。
ポリアリレート樹脂(PC)の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、40,000以上であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PC)の粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。一方、ポリアリレート樹脂(PC)の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。ポリアリレート樹脂(PC)の粘度平均分子量が80,000以下であると、ポリアリレート樹脂(PC)が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなる。
以下、ポリアリレート樹脂(PC)の製造方法について、説明する。ポリアリレート樹脂(PC)の製造方法として、例えば、ビスフェノール由来の繰り返し単位を構成するためのビスフェノールと、ジカルボン酸由来の繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させるためには、公知の合成方法(例えば、溶液重合、溶融重合、又は界面重合)を採用することができる。
ポリアリレート樹脂(PC)のビスフェノール由来の繰り返し単位を構成するためのビスフェノールとしては、例えば、式(BP-1)及び(BP-2)で表される化合物が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PC)のジカルボン酸由来の繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸としては、例えば、式(DC-3)及び(DC-4)で表される化合物が挙げられる。式(BP-1)中のR1、R2、及びXは、式(1)中のR1、R2、及びXと同義である。式(BP-4)中のYは、式(4)中のYと同義である。
Figure 2022049986000011
ビスフェノールは、芳香族ジアセテートに誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸は、誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸の誘導体の例としては、ジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸ジメチルエステル、ジカルボン酸ジエチルエステル、及びジカルボン酸無水物が挙げられる。ジカルボン酸ジクロライドは、ジカルボン酸が有する2個の「-C(=O)-OH」基が各々「-C(=O)-Cl」基で置換された化合物である。
ビスフェノールとジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方が添加されてもよい。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、及びトリメチルアミンが挙げられる。
<第2実施形態:感光体>
本発明の第2実施形態は、感光体に関する。第2実施形態の感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光体は、例えば、単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)、又は積層型電子写真感光体(以下、積層型感光体と記載することがある)である。
(積層型感光体)
以下、図1~図3を参照して、感光体の一例である積層型感光体1について説明する。図1~図3は、各々、積層型感光体1の部分断面図を示す。
図1に示すように、積層型感光体1は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと、電荷輸送層3bとを含む。つまり、積層型感光体1は、感光層3として、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを備えている。電荷発生層3aは、例えば、一層である。電荷輸送層3bは、例えば、一層である。
図1に示すように、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられてもよい。或いは、図2に示すように、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
図3に示すように、積層型感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、中間層4(下引き層)を更に備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1及び図2に示すように、積層型感光体1において、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図3に示すように、積層型感光体1において、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。積層型感光体1が中間層4を備える場合、図3に示すように、導電性基体2上に中間層4が設けられ、中間層4上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられてもよい。或いは、導電性基体2上に中間層4が設けられ、中間層4上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
積層型感光体1は、導電性基体2及び感光層3に加えて、保護層5(図6参照)を更に備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。図1~図3に示すように、感光層3(例えば、電荷輸送層3b又は電荷発生層3a)が、積層型感光体1の最表面層として備えられてもよい。或いは、保護層5が、積層型感光体1の最表面層として備えられてもよい。
図1に示すように、感光層3(好ましくは、電荷輸送層3b)が、積層型感光体1の最表面層として備えられることが好ましい。電荷輸送層3bが、一層であり、且つ積層型感光体1の最表面層として備えられることがより好ましい。ポリアリレート樹脂(PC)を含有する電荷輸送層3bが最表面層として備えられることで、積層型感光体1の耐摩耗性を更に向上できる。
電荷発生層3aは、電荷発生剤を含有する。電荷発生層3aは、必要に応じて、ベース樹脂を含有してもよい。電荷発生層3aは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。電荷発生層3aの厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送層3bは、正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含有する。電荷輸送層3bは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。電荷輸送層3bの厚さは、特に限定されないが、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1~図3を参照して、積層型感光体1について説明した。
(単層型感光体)
次に、図4~図6を参照して、感光体の一例である単層型感光体10について説明する。図4~図6は、各々、単層型感光体10の部分断面図を示す。
図4に示すように、単層型感光体10は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。単層型感光体10に備えられる感光層3は、単層である。以下、「単層の感光層3」を、「単層型感光層3c」と記載することがある。
図5に示すように、単層型感光体10は、導電性基体2及び単層型感光層3cに加えて、中間層4(下引き層)を更に備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と単層型感光層3cとの間に設けられる。図4に示すように、単層型感光層3cは導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図5に示すように、単層型感光層3cは導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
図6に示すように、単層型感光体10は、導電性基体2及び単層型感光層3cに加えて、保護層5を更に備えてもよい。保護層5は、単層型感光層3c上に設けられる。図4及び図5に示すように、単層型感光層3cが、単層型感光体10の最表面層として備えられてもよい。或いは、図6に示すように、保護層5が、単層型感光体10の最表面層として備えられてもよい。
図4及び図5に示すように、感光層3(より具体的には、単層型感光層3c)が、単層型感光体10の最表面層として備えられることが好ましい。ポリアリレート樹脂(PC)を含有する単層型感光層3cが最表面層として備えられることで、単層型感光体10の耐摩耗性を更に向上させることができる。
単層型感光層3cは、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含有する。単層型感光層3cは、必要に応じて、電子輸送剤を更に含有してもよい。単層型感光層3cは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
単層型感光層3cの厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図4~図6を参照して、単層型感光体10について説明した。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、第1実施形態で述べたポリアリレート樹脂(PC)を含む。感光層がバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(PC)を含有することで、感光体の耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性が向上する。
感光層は、バインダー樹脂として、1種のポリアリレート樹脂(PC)のみを含有してもよく、2種以上のポリアリレート樹脂(PC)を含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PC)のみを含有してもよく、ポリアリレート樹脂(PC)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂(PC)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。感光層は、1種の正孔輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の正孔輸送剤を含有してもよい。
正孔輸送剤の好適な例としては、式(20)、(21)、及び(22)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送剤(20)、(21)、及び(22)と記載することがある)が挙げられる。感光層が、ポリアリレート樹脂(PC)とともに、正孔輸送剤(20)、(21)、又は(22)を含有することで、感光体の帯電特性を損なうことなく、感光体の耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性を更に向上できる。
Figure 2022049986000012
式(20)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R23、R24、R25、R26、R27、R28、及びR29は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。a1及びa2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
式(20)中、a1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR21は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。a2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR22は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
式(20)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。R23及びR24は、各々独立に、フェニル基、又は水素原子を表すことが好ましい。R25、R26、R27、R28、及びR29は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。R25、R26、R27、R28、及びR29が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn-ブチル基がより好ましい。R25、R26、R27、R28、及びR29が表わす炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。a1及びa2は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
式(21)中、R31、R32、R33、R34、R35、及びR36は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R37及びR38は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b5及びb6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。d及びeは、各々独立に、0又は1を表す。
式(21)中、b1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR31は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR32は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR33は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR34は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b5が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR35は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR36は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
式(21)中、R31~R36は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが更に好ましい。R37及びR38は、水素原子を表すことが好ましい。b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。b5及びb6は、0を表すことが好ましい。
式(22)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。f1、f2、f4、及びf5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。f3及びf6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
式(22)中、f1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR41は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR42は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR44は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR45は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f3が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR43は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR46は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
式(22)中、R41~R46は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。f1、f2、f4、及びf5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。f3及びf6は、0を表すことが好ましい。R44、R45、及びR46を有するジフェニルアミノフェニルエテニル基は、R41、R42、及びR43を有するジフェニルアミノフェニルエテニル基に対して、フェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
正孔輸送剤のより好適な例としては、式(HTM-1)~(HTM-8)で表される化合物(以下、それぞれを正孔輸送剤(HTM-1)~(HTM-8)と記載することがある)が挙げられる。なお、正孔輸送剤(HTM-1)~(HTM-6)は、各々、正孔輸送剤(20)の好適な例である。正孔輸送剤(HTM-7)は、正孔輸送剤(21)の好適な例である。正孔輸送剤(HTM-8)は、正孔輸送剤(22)の好適な例である。
Figure 2022049986000013
Figure 2022049986000014
Figure 2022049986000015
正孔輸送剤は、R23及びR24がフェニル基を表す正孔輸送剤(20)であり得る。また、正孔輸送剤は、正孔輸送剤(HTM-6)であり得る。このような正孔輸送剤は、感光層を形成するための塗布液に含有された場合に塗布液のゲル化を引き起し易い。また、このような正孔輸送剤を含有する感光層を備える感光体は、感度特性が低下する傾向がある。しかし、塗布液がポリアリレート樹脂(PC)を含有することで、このような正孔輸送剤が含有された場合であっても、塗布液のゲル化の抑制、及び感光体の感度特性の向上が可能となる。
感光体が積層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上60質量部以下であることが更に好ましい。感光体が単層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下であることが好ましく、50質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、1種の電荷発生剤のみを含有してもよく、2種以上の電荷発生剤を含有してもよい。
フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン構造を有する顔料である。フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、式(CGM-1)で表される。チタニルフタロシアニンは、式(CGM-2)で表される。
Figure 2022049986000016
Figure 2022049986000017
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。感光体が単層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
(ベース樹脂)
電荷発生層が含有するベース樹脂の例は、電荷輸送層が含有するその他のバインダー樹脂の例と同じである。
(添加剤)
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール酸化防止剤が挙げられる。
(材料の組み合わせ)
感光体の耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性を向上させるためには、正孔輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせが、表3及び表4に示す組み合わせNo.1~80の各々であることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせが、表3及び表4に示す組み合わせNo.1~80の各々であり、電荷発生剤が、Y型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせが、表3及び表4に示す組み合わせNo.1~80の各々であり、電荷輸送層に含有される添加剤が、ヒンダードフェノール酸化防止剤であることがより好ましい。表3及び表4中、「No.」は「組み合わせNo.」を示し、「HTM」は「正孔輸送剤」を示し、「樹脂」はバインダー樹脂である「ポリアリレート樹脂」を示す。
Figure 2022049986000018
Figure 2022049986000019
(導電性基体)
導電性基体は、特に限定されず、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
(中間層)
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。
中間層用樹脂の例は、既に述べたその他のバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
(感光体の製造方法)
感光体の製造方法として、積層型感光体の製造方法の一例、及び単層型感光体の製造方法の一例を説明する。
積層型感光体の製造方法は、例えば、電荷発生層形成工程と電荷輸送層形成工程とを含む。電荷発生層形成工程では、まず、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して電荷発生層を形成する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含有する。このような電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及びベース樹脂を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層用塗布液は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
電荷輸送層形成工程では、まず、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層を形成する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製できる。電荷輸送層用塗布液は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
単層型感光体の製造方法は、例えば、単層型感光層形成工程を含む。単層型感光層形成工程では、単層型感光層を形成するための塗布液(以下、単層型感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した単層型感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して単層型感光層を形成する。単層型感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含有する。単層型感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。単層型感光層用塗布液は、必要に応じて、電子輸送剤及び添加剤の一方又は両方を更に含有してもよい。
単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液、及び電荷輸送層用塗布液(以下、これらを包括的に塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布する場合に、電荷発生層が電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
塗布液を塗布する方法は、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上120分以下である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)の合成>
ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)の各々を、次に示す方法で合成した。以下の説明で述べる化合物(BP-1-1)、(BP-1-2)、(BP-1-3)、(BP-2)、(DC-3)、(DC-4-1)、(DC-4-2)、及び(DC-4-3)は、各々、下記式(BP-1-1)、(BP-1-2)、(BP-1-3)、(BP-2)、(DC-3)、(DC-4-1)、(DC-4-2)、及び(DC-4-3)で表される。
Figure 2022049986000020
(ポリアリレート樹脂(R-1)の合成)
反応容器として、温度計、三方コック、及び滴下ロートを備えた三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP-1-1)(32.8ミリモル)と、化合物(BP-2)(8.2ミリモル)と、p-tert-ブチルフェノール(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水(300mL)を加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。反応容器の内容物を10℃まで冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
次に、化合物(DC-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)及び化合物(DC-4-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)を、クロロホルム(150mL)に溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Bを得た。
アルカリ性水溶液Aに対して、滴下ロートを用いて、110分間かけてゆっくりとクロロホルム溶液Bを滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。デカントを用いて反応容器の内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、三角フラスコに、イオン交換水(400mL)を加えた。三角フラスコ内に、得られた有機層を更に加えた。三角フラスコ内に、クロロホルム(400mL)及び酢酸(2mL)を更に加えた。三角フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。デカントを用いて三角フラスコ内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、イオン交換水(1L)で、得られた有機層を洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。メタノール(1L)に得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂(R-1)が得られた。
(ポリアリレート樹脂(R-2)の合成)
化合物(DC-4-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)を化合物(DC-4-1)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-2)を得た。
(ポリアリレート樹脂(R-3)の合成)
化合物(DC-4-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)を化合物(DC-4-2)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-3)を得た。
(ポリアリレート樹脂(R-4)の合成)
化合物(BP-1-1)(32.8ミリモル)を化合物(BP-1-2)(32.8ミリモル)に変更したこと、及び化合物(DC-4-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)を化合物(DC-4-1)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)に変更したこと以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-4)を得た。
(ポリアリレート樹脂(R-5)の合成)
化合物(BP-1-1)(32.8ミリモル)を化合物(BP-1-3)(32.8ミリモル)に変更したこと、及び化合物(DC-4-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)を化合物(DC-4-1)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)に変更したこと以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-5)を得た。
得られたポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)の粘度平均分子量は、何れも、50500であった。
プロトン核磁気共鳴分光計(日本電子株式会社製、600MHz)を用いて、得られたポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)の1H-NMRスペクトルを測定した。溶媒として重水素化クロロホルムを用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)のうちの代表例として、ポリアリレート樹脂(R-2)の1H-NMRスペクトルを、図7に示す。図7に示す1H-NMRスペクトルの1.4ppm以上2.5ppm以下の範囲付近の拡大図を、図8に示す。図7に示す1H-NMRスペクトルの7.0ppm以上8.4ppm以下の範囲付近の拡大図を、図9に示す。1H-NMRスペクトルから読み取られる化学シフトから、ポリアリレート樹脂(R-2)が得られていることを確認した。ポリアリレート樹脂(R-1)及び(R-3)~(R-5)についても同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-1)及び(R-3)~(R-5)が得られていることを確認した。
<比較例で使用するポリアリレート樹脂の準備>
比較例で使用するポリアリレート樹脂として、下記式(R-6C)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(R-6C)と記載することがある)を準備した。なお、繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂に含まれる繰り返し単位の総数に対する、該当する繰り返し単位の数の百分率(単位:%)を示す。ポリアリレート樹脂(R-6C)の粘度平均分子量は、50500であった。
Figure 2022049986000021
<積層型感光体の製造>
(積層型感光体(A-1)の製造)
まず、中間層を形成した。表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT-A」、数平均一次粒径10nm)を準備した。SMT-Aは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて更に表面処理したものであった。次いで、SMT-Aの2質量部と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)1質量部と、メタノール10質量部と、ブタノール1質量部と、トルエン1質量部とを、ビーズミルを用いて5時間混合して、中間層用塗布液を得た。中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法により、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚:2μm)を形成した。
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン1.5質量部と、ベース樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX-5」)1.0質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル40.0質量部と、テトラヒドロフラン40.0質量部とを、ビーズミルを用いて2時間混合して、電荷発生層用塗布液を得た。電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。ディップコート法により、得られたろ液を中間層上に塗布し、50℃で5分間乾燥させた。このようにして、中間層上に電荷発生層(膜厚:0.3μm)を形成した。
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤(HTM-1)50質量部と、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂(R-1)100質量部と、ヒンダードフェノール酸化防止剤(BASF株式会社製「イルガノックス(登録商標)1010」)2質量部と、テトラヒドロフラン350質量部と、トルエン350質量部とを混合して、電荷輸送層用塗布液を得た。ディップコート法により、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、120℃で40分間乾燥させた。このようにして、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚:20μm)を形成し、積層型感光体(A-1)を得た。積層型感光体(A-1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
(積層型感光体(A-2)~(A-12)及び(B-1)~(B-2)の製造)
表5に示す正孔輸送剤及びポリアリレート樹脂を使用したこと以外は、積層型感光体(A-1)の製造と同じ方法で、積層型感光体(A-2)~(A-12)及び(B-1)~(B-2)の各々を製造した。
<評価>
感光体(より具体的には、積層型感光体(A-1)~(A-12)及び(B-1)~(B-2)の各々)に対して、以下に示す評価を行った。
(帯電特性の評価)
感光体の帯電特性の評価環境は、温度25℃及び相対湿度50%RHの環境であった。ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、帯電器に流れる帯電電流が-10μAであり、且つ感光体の回転速度が31rpmである条件で、感光体の表面を帯電させた。帯電後の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の帯電電位(V0、単位:-V)とした。各感光体の帯電電位を、表5に示す。帯電電位が-700V以上-650V以下であれば、感光体の帯電特性が維持されていると判断される。
(感度特性の評価)
感光体の感度特性の評価環境は、温度25℃及び相対湿度50%RHの環境であった。ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を-600Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの光から単色光(波長:780nm、露光量:0.8μJ/cm2)を取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射から80ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の露光後電位(VL、単位:-V)とした。各感光体の露光後電位を、表5に示す。露光後電位の絶対値が小さい程、感光体の感度特性が優れていることを示す。
(耐摩耗性の評価)
上記<積層型感光体の製造>で調製した電荷輸送層用塗布液を、アルミパイプ(直径:78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ:0.3mm)に塗布した。塗布した電荷輸送層用塗布液を120℃で40分間乾燥させて、電荷輸送層(膜厚30μm)が形成されたポリプロピレンシートを作製した。続けて、ポリプロピレンシートから、電荷輸送層を剥離した。剥離した電荷輸送層をカード状部材(テーバー社製「S-36」)に貼り付けた。電荷輸送層を貼り付けたカード状部材の質量MAを測定した。次いで、ロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所)の回転台に、カード状部材を取り付けた。そして、カード状部材上の感光層に荷重500gfの摩耗輪(テーバー社製「CS-10」)を乗せた状態で、回転速度60rpmで1000回、回転台を回転させた。このようにして、回転台上の電荷輸送層を摩耗させた。摩耗後、電荷輸送層を貼り付けたカード状部材の質量MBを再び測定した。そして、摩耗前後の電荷輸送層の質量変化である摩耗減量(=MA-MB、単位:mg)を求めた。測定された摩耗減量を、表5に示す。摩耗減量が少ない程、感光体の耐摩耗性が優れていることを示す。
(液ライフ特性の評価)
温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で、上記<積層型感光体の製造>で調製した電荷輸送層用塗布液を、24時間静置し、電荷輸送層用塗布液のゲル化の有無を肉眼で確認した。確認結果から下記基準に基づいて、液ライフ特性を評価した。評価結果を表5に示す。
評価A:電荷輸送層用塗布液がゲル化しなかった。
評価B:電荷輸送層用塗布液がゲル化した。
表5中において、「HTM」は、正孔輸送剤を示し、「樹脂」は、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂を示す。
Figure 2022049986000022
なお、耐摩耗性の評価は調製直後の電荷輸送層用塗布液を用いて行い、液ライフ特性の評価は調製から24時間経過後の電荷輸送層用塗布液を用いて行った。積層型感光体(B-2)について、液ライフ特性の評価がB、即ち調製から24時間経過後の電荷輸送層用塗布液がゲル化されていたが、調製直後の電荷輸送層用塗布液はゲル化されておらず、電荷輸送層を形成して耐摩耗性の評価をすることができた。
表5に示すように、積層型感光体(A-1)~(A-12)の感光層は、ポリアリレート樹脂(PC)(より具体的には、ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)のうちの1種)を含有していた。一方、積層型感光体(B-1)~(B-2)の感光層は、ポリアリレート樹脂(R-6C)を含有していたが、ポリアリレート樹脂(R-6C)は、繰り返し単位(4)を有していなかった。このため、積層型感光体(A-1)~(A-12)の耐摩耗性は、積層型感光体(B-1)と比較して、優れていた。また、積層型感光体(A-1)~(A-12)の耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性は、積層型感光体(B-2)と比較して、優れていた。また、積層型感光体(A-1)~(A-12)は、帯電特性を損なうことなく、耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性を向上できていた。
正孔輸送剤(HTM-6)を含有する電荷輸送層用塗布液はゲル化し易い。また、正孔輸送剤(HTM-6)を含有する感光層を備える感光体は、感度特性が低下する傾向がある。しかし、このような正孔輸送剤(HTM-6)が含有される場合であっても、ポリアリレート樹脂(PC)を使用することで、電荷輸送層用塗布液のゲル化の抑制、及び感光体の感度特性の向上が可能となることが示された。
以上のことから、ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-5)を包含する本発明のポリアリレート樹脂は、感光体の感光層に含有された場合に耐摩耗性及び感度特性を向上でき、感光体の感光層用塗布液に含有された場合に液ライフ特性を向上できることが示された。また、積層型感光体(A-1)~(A-12)を包含する本発明の感光体は、耐摩耗性、感度特性、及び液ライフ特性に優れることが示された。
本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用できる。
1 :積層型感光体(積層型電子写真感光体)
2 :導電性基体
3 :感光層
3a :電荷発生層
3b :電荷輸送層
3c :単層型感光層
10 :単層型感光体(単層型電子写真感光体)

Claims (10)

  1. 式(1)、(2)、(3)、及び(4)で表される繰り返し単位を有する、ポリアリレート樹脂。
    Figure 2022049986000023
    (前記式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xは、式(X1)又は(X2)で表される二価の基を表し、
    前記式(4)中、Yは、硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子を表す。)
    Figure 2022049986000024
    (前記式(X1)中、tは、1又は2を表し、*は結合手を表し、
    前記式(X2)中、R3及びR4は、水素原子、又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、R3及びR4は、互いに異なる基を表し、*は結合手を表す。)
  2. 前記式(1)中、R1及びR2は、メチル基を表し、Xは、前記式(X1)で表される二価の基を表す、請求項1に記載のポリアリレート樹脂。
  3. 前記式(1)が式(1-1)であり、且つ前記式(4)が式(4-1)であるか、
    前記式(1)が前記式(1-1)であり、且つ前記式(4)が式(4-2)であるか、或いは、
    前記式(1)が前記式(1-1)であり、且つ前記式(4)が式(4-3)である、請求項1又は2に記載のポリアリレート樹脂。
    Figure 2022049986000025
  4. 前記式(1)中、R1及びR2は、水素原子を表し、Xは、前記式(X2)で表される二価の基を表す、請求項1に記載のポリアリレート樹脂。
  5. 前記式(1)が式(1-2)であり、且つ前記式(4)が式(4-1)であるか、或いは、
    前記式(1)が式(1-3)であり、且つ前記式(4)が前記式(4-1)である、請求項1又は4に記載のポリアリレート樹脂。
    Figure 2022049986000026
  6. 導電性基体と、感光層とを備え、
    前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有し、
    前記バインダー樹脂は、請求項1~5の何れか一項に記載のポリアリレート樹脂を含む、電子写真感光体。
  7. 前記正孔輸送剤は、式(20)、(21)、又は(22)で表される化合物を含む、請求項6に記載の電子写真感光体。
    Figure 2022049986000027
    (前記式(20)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、R23~R29は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、a1及びa2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
    前記式(21)中、R31~R36は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R37及びR38は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、b1、b2、b3、及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、b5及びb6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、d及びeは、各々独立に、0又は1を表し、
    前記式(22)中、R41~R46は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、f1、f2、f4、及びf5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、f3及びf6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。)
  8. 前記正孔輸送剤は、式(HTM-1)、(HTM-2)、(HTM-3)、(HTM-4)、(HTM-5)、(HTM-6)、(HTM-7)、又は(HTM-8)で表される化合物を含む、請求項6又は7に記載の電子写真感光体。
    Figure 2022049986000028
    Figure 2022049986000029
    Figure 2022049986000030
  9. 前記感光層は、最表面層として備えられる、請求項6~8の何れか一項に記載の電子写真感光体。
  10. 前記感光層は、前記電荷発生剤を含有する電荷発生層と、前記正孔輸送剤及び前記バインダー樹脂を含有する電荷輸送層とを含み、
    前記電荷輸送層が一層であり且つ最表面層として備えられる、請求項6~9の何れか一項に記載の電子写真感光体。
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