以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~図4に示す本実施形態のトラクタ1は、動力源が発生する動力によって、自走しながら圃場等での作業を行う農用トラクタである。トラクタ1は、前輪2と、後輪3と、動力源としてのエンジン4と、変速装置(トランスミッション)5とを備えている。このうち、前輪2は、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪として設けられる。後輪3は、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪として設けられる。後輪3には、機体前部のボンネット6内に搭載されるエンジン4で発生した回転動力を、変速装置(トランスミッション)5で適宜減速して伝達可能になっており、後輪3は、この回転動力によって駆動力を発生する。また、この変速装置5は、エンジン4で発生した回転動力を、必要に応じて前輪2にも伝達可能になっており、この場合は、前輪2と後輪3との四輪が駆動輪となり駆動力を発生する。すなわち、変速装置5は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっており、エンジン4の回転動力を減速し、減速された回転動力を前輪2、後輪3に伝達可能である。また、トラクタ1は、機体後部に、ロータリ(図示省略)等の作業機を装着可能な(3点リンク連結装置ともいう)連結装置7が配設されている。連結装置7は、例えば、中央上部のトップリンクであるリンク7aや下部左右のロアリンク7b,7bからなる3点リンクとされ、トラクタ1の機体後部に作業機を連結する。トラクタ1は、後術のように左右のリフトアームを油圧で回動することで、リフトロッド、このリフトロッドと連結しているロアリンク7b等を介して作業機を昇降させることができる。
トラクタ1は、機体上の操縦席8の周りはキャビン9で覆われている。トラクタ1は、キャビン9の内部において、操縦席8前側のダッシュボード10からステアリングハンドル11が立設されると共に、操縦席8の周りにクラッチペダル、ブレーキペダル、アクセルペダル等の各種操作ペダルや前後進レバー、変速レバー等の各種操作レバーが配置されている。
図5は、変速装置5のミッションケース12内の伝動機構13を示す線図である。変速装置5は、ミッションケース12(図1参照)と、このミッションケース12内に配置されエンジン4から後輪3等へ回転動力を伝達する伝動機構13とを含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4からの回転動力を前輪2、後輪3、及び、機体に装着した作業機に伝達し、これらをエンジン4からの回転動力によって駆動するものである。
具体的には、伝動機構13は、入力軸14、前後進切替機構15、高低変速機構としてのHi-Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19、PTO駆動機構20等を含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi-Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18を順に介して後輪3に伝達することができる。また、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi-Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19を順に介して前輪2に伝達することができる。さらに、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、PTO駆動機構20を順に介して作業機に伝達することができる。
入力軸14は、エンジン4の出力軸に結合されており、エンジン4からの回転動力が入力される。
前後進切替機構15は、エンジン4から伝達された回転動力を、前進方向回転又は後進方向回転に切り替え可能なものである。前後進切替機構15は、前進側ギヤ段15a、後進側ギヤ段15b、(逆転ギヤともいう)逆転カウンタギヤ15c、油圧多板クラッチ形態の前進油圧多板クラッチC1、後進油圧多板クラッチC2を含んで構成される。前・後進油圧多板クラッチC1、C2は、係合/解放状態を切り替えることで前後進切替機構15における動力の伝達経路を切り替え可能である。前後進切替機構15は、前・後進油圧多板クラッチC1、C2の係合/解放状態に応じて入力軸14に伝達された回転動力を、伝達経路を変えてカウンタ軸21に伝達する。
前後進切替機構15は、前進油圧多板クラッチC1が係合状態、後進油圧多板クラッチC2が解放状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を、前進側ギヤ段15a、前進油圧多板クラッチC1を介して前進方向回転でカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、前進油圧多板クラッチC1が解放状態、後進油圧多板クラッチC2が係合状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、後進油圧多板クラッチC2を介して後進方向回転で、カウンタ軸21に伝達する。これにより、前後進切替機構15は、トラクタ1の前後進を切り替えることができる。
また、前後進切替機構15は、メインクラッチとしても機能し、前・後進油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態とすることで、ニュートラル状態となり、前輪2、後輪3側への動力伝達を遮断することができる。前後進切替機構15は、例えば、作業員によって図外前後進切替レバーが操作されることで油圧制御によって前進、後進、ニュートラルを切り替えることができる。また、クラッチペダルを踏み込み操作することで前・後進油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態にできる。
Hi-Lo変速機構16は、エンジン4から伝達された回転動力を、高速段又は低速段で変速可能なものである。Hi-Lo変速機構16は、Hi(高速)側ギヤ段16a、Lo(低速)側ギヤ段16b、油圧多板クラッチ(Hi(高速)側クラッチ)C3、油圧多板クラッチ(Lo(低速)側クラッチ)C4を含んで構成される。油圧多板クラッチC3、C4は、係合/解放状態を切り替えることでHi-Lo変速機構16における動力の伝達経路を切り替え可能である。Hi-Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3、C4の係合/解放状態に応じて、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、伝達経路を変えて変速軸22に伝達する。Hi-Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が係合状態、油圧多板クラッチC4が解放状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC3、Hi側ギヤ段16aを介して変速して変速軸22に伝達する。
Hi-Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が解放状態、油圧多板クラッチC4が係合状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC
4、Lo側ギヤ段16bを介して変速して変速軸22に伝達する。これにより、Hi-Lo変速機構16は、エンジン4からの回転動力をHi側ギヤ段16aの変速比、あるいは、Lo(低速)側ギヤ段16bの変速比で変速して後段に伝達することができる。Hi-Lo変速機構16は、例えば、作業員によって図外Hi-Lo切替スイッチ(高低変速操作スイッチ)がオン/オフされることで油圧制御によってHi(高速)側、Lo(低速)側を切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。また、Hi-Lo変速機構16は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
主変速機構17は、エンジン4から伝達された回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速可能である。主変速機構17は、シンクロメッシュ式の変速機構であり、ここでは、エンジン4から前後進切替機構15、及び、Hi-Lo変速機構16を介して伝達される回転動力を変速可能である。主変速機構17は、複数の変速段として第1速ギヤ段17a、第2速ギヤ段17b、第3速ギヤ段17c、第4速ギヤ段17d、第5速ギヤ段17e、第6速ギヤ段17fを含んで構成される。主変速機構17は、第1速ギヤ段17a~第6速ギヤ段17fの変速軸22との結合状態に応じて、変速軸22に伝達された回転動力を、第1速ギヤ段17a~第6速ギヤ段17fのいずれかを介して変速して変速軸23に伝達する。これにより、主変速機構17は、エンジン4からの回転動力を第1速ギヤ段17a~第6速ギヤ段17fのいずれかの変速比で変速して後段に伝達することができる。主変速機構17は、例えば、作業員によって主変速操作レバーが操作されることで複数の変速段のうちの1つを選択し切り替えることができ、第1速ギヤ段17a~第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速することができる。また、主変速機構17は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
副変速機構18は、エンジン4から前後進切替機構15、Hi-Lo変速機構16、及び、主変速機構17を順に介して伝達される回転動力を変速可能である。副変速機構18は、第1副変速機24、第2副変速機25等を含んで構成され、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24、第2副変速機25等を介して変速して変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を高速段又は低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。第2副変速機25は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を第1副変速機24よりもさらに低速の超低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。なお、第2副変速機25は仕様の簡素化等が求められる場合には省略するものである。
副変速機構18の第1副変速機24は、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを含んで構成される。第1ギヤ24aは、変速軸23と一体回転可能に結合され変速軸23からの回転動力が伝達(入力)される。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛み合っている。第3ギヤ24cは、第2ギヤ24bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ24dは、第3ギヤ24cと噛み合っている。シフタ24eは、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。すなわち、変速軸26と一体に設けるクラッチ爪26aと、第1ギヤ24aに一体のクラッチ爪24acと、第4ギヤ24dに一体のクラッチ爪24dcとが同径同歯数に形成されて隣接状態に配置されており、シフタ24eがクラッチ爪26aとクラッチ爪24acが同時係合すると第1ギヤ2aから変速軸26に動力が伝わり、クラッチ爪26aとクラッチ爪24dcが同時係合すると第4ギヤ24dから変速軸26に動力が伝わる構成である。なおシフタ24eがクラッチ爪24ac及びクラッチ爪24dcのいずれにも係合しない位置にシフト可能に各クラッチ爪を配置構成している。
シフタ24eは、第1ギヤ24aと変速軸26とを一体回転可能に結合するHi(高速)側位置、第4ギヤ24dと変速軸26とを一体回転可能に結合するLo(低速)側位置、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26と結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第1副変速機24は、シフタ24eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。
副変速機構18の第2副変速機25は、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを含んで構成される。第1ギヤ25aは、第1副変速機24の第4ギヤ24dと一体回転可能に結合されている。第2ギヤ25bは、第1ギヤ25aと噛み合っている。第3ギヤ25cは、第2ギヤ25bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ25dは、第3ギヤ25cと噛み合っている。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。すなわち、変速軸26と一体に設けるクラッチ爪26bと、第4ギヤ25dに一体のクラッチ爪25dcとが同径同歯数に形成されて隣接状態に配置されており、シフタ25eがクラッチ爪26bとクラッチ爪25dcが同時係合すると第4ギヤ25dから変速軸26に動力が伝わる構成である。
シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26とを一体回転可能に結合する超Lo(超低速)側位置、第4ギヤ25dと変速軸26とが結合されず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。この場合は、変速軸26の回転は、第1副変速機24のシフタ24e位置に支配される。第2副変速機25は、シフタ25eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第2副変速機25は、第1副変速機24がニュートラルの状態で、シフタ25eが超Lo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24の第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第2副変速機25の第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第2副変速機25は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25dを介した超Lo(超低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第2副変速機25は、シフタ25eが中立位置にある場合、第4ギヤ25dが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。
したがって、副変速機構18は、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24と第2副変速機25とを組み合わせることで、高速と低速と超低速の3段のうちのいずれかで変速して変速軸26に伝達することができる。
そして、変速装置5の伝動機構13は、変速軸26に伝達された回転動力を、後輪デフ27、後車軸28、減速用の遊星歯車減速機構29等を介して後輪3に伝達する。この結果、トラクタ1は、後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動する。
2WD/4WD切替機構19が油圧多板クラッチC6、C7を含んで構成されると共に、前輪増速機構としても機能する。2WD/4WD切替機構19は、伝達軸19a、Hi(高速)側ギヤ段19b、Lo(低速)側ギヤ段19c、油圧多板クラッチ(Lo(低速)側クラッチ)C6、油圧多板クラッチ(Hi(高速)側クラッチ)C7、伝達軸19dを含んで構成される。油圧多板クラッチC6、C7は、係合/解放状態を切り替えることで2WD/4WD切替機構19における動力の伝達経路を切り替え可能である。2WD/4WD切替機構19は、油圧多板クラッチC6、C7の係合/解放状態に応じて、伝達軸19aに伝達された回転動力を、伝達経路を変えて伝達軸19dに伝達する。2WD/4WD切替機構19は、油圧多板クラッチC6が係合状態、油圧多板クラッチC7が解放状態である場合に、伝達軸19aに伝達された回転動力を、Lo側ギヤ段19c、油圧多板クラッチC6を介して変速して伝達軸19dに伝達する。
2WD/4WD切替機構19は、変速軸26に伝達された回転動力を、前輪2側に伝達するか否かを切り替えるものである。2WD/4WD切替機構19は、伝達軸19a、Hi側ギヤ段19b、Lo側ギヤ段19c、伝達軸19d、シフタ19e含んで構成される。伝達軸19aは、変速軸26からの回転動力が、ギヤ30、ギヤ31、伝達軸32、カップリング33等を介して伝達(入力)される。第1ギヤとしてのHi側ギヤ段19bは、伝達軸19aが挿入され、当該伝達軸19aに対して相対回転可能に組み付けられる。
変速装置5の伝動機構13は、伝達軸19dに伝達された回転動力を、前輪デフ34、前車軸35、縦軸36、遊星歯車減速機構37等を介して前輪2に伝達する。この結果、トラクタ1は、前輪2及び後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動し、四輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、油圧多板クラッチC6、C7が共に解放状態となることで、伝達軸19aに伝達された回転動力の伝達軸19d側への動力伝達が遮断される。この結果、トラクタ1は、二輪駆動で走行することができる。
PTO駆動機構20は、エンジン4から伝達される回転動力を変速して機体後部のPTO軸40(図2,図3参照)から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動するものである。PTO駆動機構20は、PTOクラッチ機構38、PTO変速機構39、PTO軸40等を含んで構成される。
PTOクラッチ機構38は、PTO軸40側への動力の伝達と遮断とを切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、ギヤ38a、油圧多板クラッチC5、伝達軸38bを含んで構成される。ギヤ38aは、入力軸14と一体回転可能に結合されたギヤ41と噛み合っている。油圧多板クラッチC5は、係合/解放状態が切り替わることで、ギヤ38aと伝達軸38bとの間の動力の伝達状態を切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が係合状態となることでPTO軸40側へ動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ41を介してギヤ38aに伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC5を介して伝達軸38bに伝達する。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が解放状態となることでPTO軸40側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ38aに伝達された回転動力の伝達軸38b側への伝達が遮断される。
なお、このトラクタ1は、ギヤ38aと噛み合うギヤ70a、当該ギヤ70aと噛み合うギヤ70b等を介して(油圧ポンプ、またはギヤポンプともいう)ポンプ70が設けられている。ギヤポンプ70は、伝動機構13等の油圧系統に油圧を付与するものである。
PTO変速機構39は、PTO軸40側に動力を伝達する際に変速を行うものである。PTO変速機構39は、Hi(高速)側ギヤ段39a、Lo(低速)側ギヤ段39b、伝達軸39c、シフタ39dを含んで構成される。PTO変速機構39は、シフタ39dの位置に応じて、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39a、あるいは、Lo側ギヤ段39bを介して変速して、伝達軸39cに伝達する。
PTO軸40は、自在継ぎ手軸(図示せず)を介して作業機側入力軸(図示せず)に結合され、エンジン4からの回転動力を作業機に伝達するものである。PTO軸40は、伝達軸39cが機体中心から偏った位置にあるため、第1ギヤ44、第2ギヤ45等を介して伝動可能に機体左右中心に配置される。
前記ミッションケース12の後上面にシリンダケース71を装着し、主シリンダ機構77を構成する。すなわち、このシリンダケース71には左右横軸芯のリフトアーム軸72を回動自在に支持し、シリンダケース71内部にはピストンを備え、このピストンに連結するロッド部73と上記リフトアーム軸72中央のロッド受け部72aを連携してピストン機構の伸張によってリフトアーム軸72を図4(B)中矢印方向に回動作動させる構成である。リフトアーム軸72の左右にはリフトアーム72L,72Rが装着されており、これらリフトアーム軸72,ピストン,ロッド部73,リフトアーム72L,72Rをもって主シリンダ機構77を構成し、後述のように作業機を昇降連動できる構成である。
主シリンダ機構77には、シリンダケース71部への圧油の供給又は排出によってピストンを往復摺動させるため、この圧油の供給又は排出を司る(油圧制御バルブ、または作業機昇降制御バルブともいう)昇降制御バルブ74を設けるが、この昇降制御バルブ74は、作業機上昇側74U及び作業機下降側74Dのいずれも所謂比例制御弁形態として並列状態にバルブ本体内に配置させ、シリンダケース71の上面に装着される。
前記主シリンダ機構77のリフトアーム軸72の一側(図例では左側)に、リフトアームセンサ78を装着している。このリフトアームセンサ78は、リフトアーム72L,72Rの昇降角度を検知することにより、作業機のポジションコントロール(位置制御)を行い、あるいは作業機の作業状態・非作業状態を判定するものである。すなわち、センサブラケット79をシリンダケース71に吊下げ状にボルト締結によって支持し、該センサブラケット79にポテンショメータ形態のリフトアームセンサ78を着脱自在に固定する構成である。
図6に示すように、ミッションケース12の後部に、トレーラ等作業機のヒッチ機構80を構成している。このヒッチ機構80は、(作業機連結ピンともいう)連結ピン81を上下方向に挿入できる上下一対のヒッチ板82a,82aと左右の側板82b,82bとからなるヒッチ枠82、及びミッションケース12の後部にボルト等により強固に装着するベース部材83を備える。
上記ベース部材83は、左右に対向する縦プレート83a,83a、これらを連結する連結プレート83bを門型にして溶接などの手段により一体構成するものであり、ミッションケース12の後面に連結プレート83bを接合するとともに複数(4本)のボルト84a,84a…で締結する。加えて実施例では、該連結プレート83bの下端側前方に向け固定用ブラケット83cを溶接による手段によって設け、該固定用ブラケット83cはミッションケース12の下面にボルト84b,84bによって締結される構成である。なお、縦プレート83a,83aは上下に長く形成され、連結プレート83bは縦プレート83a,83aの中間部から下方に形成されるものである。
ミッションケース12の後部に装着された上記ベース部材83に対して、ヒッチ枠82を2本の長尺ピン85,85で着脱自在に連結する構成である。また、ヒッチ枠82の上下一対のヒッチ板82a,82aには上下対応する個所にピン孔82c,82cを形成し、上下方向に前記作業機連結ピン81を挿通離脱可能に装着する。これによってトレーラや各種作業機を連結して牽引することができる。
ミッションケース12の後部において、前記3点リンク連結装置7を設けている。図13において、3点リンク連結装置7は、上部中央のトップリンクであるリンク7aと下部左右のロアリンク7b,7bからなり、このうち、トップリンクであるリンク7aは、ミッションケース12の後部にボルト締結によって着脱自在に連結するトップリンクブラケット90にその一端側基端部に装着するリンクボール部に連結ピンを介して上下回動自在に連結しており、他端側には作業機の連結用ピンの挿通孔を備える。ロアリンク7b,7bは、ミッションケース12の左右後下部、又は該ミッションケース12の左右側面に連結するリヤアクスルケース91,91にロアリンクブラケット(図示せず)を一体的に成形し、ロアリンクであるリンク7aの先端側リンクボール部に連結ピンを介して連結する。ロアリンク7b,7bの後端側にはリンクボールを装着して作業機を連結ピン92,92で連結できる構成としている。ロアリンク7b,7bの途中部には夫々リフトロッド93,93を連結し、該リフトロッド93,93はミッションケース12後上部の主シリンダ機構77を構成する左右のリフトアーム72L,72Rに連結されており、前記主シリンダ機構77によって昇降連動できる構成である。
図7に示すように、主シリンダ機構77には補助シリンダ機構95を付加している。補助シリンダ機構95のシリンダ部95aの下端側を前記ヒッチ機構80のベース部材83を利用して支持するとともに(図7(C))、摺動軸95bの上端を前記左・右リフトアームの一方(図例では左側のリフトアーム72L)に連結している。該補助シリンダ機構95は所謂複動シリンダ型に構成され、主シリンダ機構77への圧油の供給一部を受けて伸張しリフトアーム72L,72Rによる作業機上昇をアシストし、又は後述の補助シリンダ制御ユニットからの圧油供給によって短縮作動し作業機を強制下降する。
補助シリンダ機構95の下端はベース部材83の一側の縦プレート83a(図例では左側)から突設した支持ピン96を介して連結している。詳細には、縦プレート83aの下部側に貫通孔を設け、支持ピン96の径大部96a側を挿入して溶接にて固定する。標準径部96bに補助シリンダ機構95のシリンダ部95aの下端側に形成した連結孔を貫通して連結している。回動を固定の支持ピン96に対してシリンダ部95a側を回動可能に連結して補助シリンダ機構95の伸縮動を可能に構成している。
ここで、図5に基づいて本実施例のトラクタの油圧回路の概要を説明する。前記油圧ポンプ70による圧油は、一旦後述の(補助シリンダ制御ユニット、または補助シリンダバルブユニットともいう)補助シリンダ制御バルブユニット100を経由して外部油圧制御バルブ101(図例では2連バルブ101a,101b)に入り、この外部油圧制御バルブ101にアンロード状態に迂回する(連通油路ともいう)油路102を形成し、この油路102を介して前記作業機昇降制御バルブ74に圧油が供給される構成としている。なお、補助シリンダ制御ユニット100及び外部油圧制御バルブ101は、シリンダケース71の後部上面に取り付けられている。そして、前記油圧ポンプ70による高圧油は、リリーフバルブ103に接続され、ポンプ70と補助シリンダ制御ユニット100のポンプポート(Pポート)に渡って高圧ホース104を介して接続されている。また、前記補助シリンダ制御ユニット100の分流バルブ105で分流された圧油の一方は補助シリンダ制御ユニット100の圧油制御ユニット100a側へ、他方は外部油圧制御バルブ101への(連通油路ともいう)油路106に供給され、さらに、外部油圧制御バルブ101のNポートから作業機昇降制御バルブ74への前記油路102が、シリンダケース71に穿設される構成であり、作業機昇降制御バルブ74、補助シリンダ制御ユニット100及び外部油圧制御バルブ101はシリンダケース71面に対して密封状態で装着されている。
前記補助シリンダ制御ユニット100について、前記外部油圧制御バルブ101にアンロード状態で接続する油路102のほか、前記補助シリンダ機構95への油路107に対応するポートを備える。そして、前記分流バルブ105、この分流バルブ105からの圧油を常時は外部油圧制御バルブ101側への連通油路102に連通しソレノイド励磁によって切り換える第1制御バルブ108、第1制御バルブ108からの圧油を受けてソレノイド励磁によって補助シリンダ機構95側に連通する第2制御バルブ109等を備える。なお、第2制御バルブ109について常時は油路107からの戻り油をタンクに還元するタンクポート(Tポート)に通じる構成である。
前記分流バルブ105、第1制御バルブ108及び連通油路106から第2制御バルブ109への補助油の供給を許容するチェックバルブ110をもって圧油制御ユニット100aが構成され、この圧油制御ユニット100aのうち特に第1制御バルブ108の切換えによって補助シリンダ機構95による作業機の強制下降の要否を選択できる構成としている。
したがって、前記補助シリンダ機構95への圧油の供給・排出制御は、以下のように行われる。作業機を上昇連動する場合は、主シリンダ機構77への圧油の供給・排出制御を司る前記作業機昇降用の油圧制御バルブ74と同一の制御形態となるよう主シリンダ機構77のシリンダ部への圧油供給で伸長作動を行うと同時に、これと並列に設けられる補助シリンダ機構95へ圧油一部が供給されこれを伸長作動する。油圧制御バルブ74から主シリンダ機構77のシリンダ部及び補助シリンダ機構95のシリンダ部95aへの油圧供給については、作業機昇降制御バルブ74の作業機上昇側74Uの励磁によって、リフトアーム軸72上昇回動側に制御された制御圧力油が、当該バルブ本体及びシリンダケース71に形成された(バルブ本体油路ともいう)油路74a(図5)を経て主シリンダ機構としての主シリンダ機構77に供給される。そして、このバルブ本体油路74aを分岐して分岐油路74b(同図)がバルブ本体又はシリンダケース71に形成される。この分岐油路74bの出口に、補助シリンダ用の配管95cが接続される構成であり、この配管95cを通じて供給される圧油によって補助シリンダ機構95を伸長する構成としている。
また、リフトアーム軸72下降回動側の制御については、作業機昇降制御バルブ74の作業機下降側74Dの励磁によってバルブ本体油路74aを還元通路に切り換えて主シリンダ機構77の作動圧油及び補助シリンダ機構95の伸長用作動圧油をタンクへ排出し、作業機の下降を許容する。そして、補助シリンダ制御ユニット100の第1制御バルブ108を励磁し、第2制御バルブ109を励磁すると圧油が油路107から補助シリンダ機構95短縮側に供給され、作業機は強制下降制御されるものである。この場合において、第2制御バルブ109は、主シリンダ機構としての主シリンダ機構77に下げ位置を指示するコントロールレバー位置センサ(図示せず)と、実際の作業機位置を検知するリフトアームセンサ78のフィードバックにより切り替え作動するよう構成することにより精度良く作業機の強制下降を行うことができる。
なお、前記チェックバルブ110は、前記連通油路106から補助シリンダ機構95の油路107への圧油供給を許容するもので、作業機下降作動時において、連通油路106の潤沢な流量から油路107すなわち補助シリンダ機構95の短縮側油路に作動油を充填させるとともに、強制下降作動時において両油路を確実に遮断させることができる。
したがって、補助シリンダ機構95を制御する補助シリンダ制御ユニット100を設けて、補助シリンダ機構95への油路107を第2制御バルブ109の開閉作動によって、作業機上昇時は補助シリンダ機構95からの戻り油を油路107を経てタンクポートに還元し、かつ作業機下降時は補助シリンダ機構95へ圧油を供給すべく補助シリンダ機構95と補助シリンダバルブユニット100を連通させるよう切り換える構成とするものである。従来補助シリンダ機構95からの戻り油を還元する油路を常時タンクポートに連通状態とした場合、作業機下降作動時に補助シリンダ機構95の上記油路に空気を吸い込んでしまい、強制下降操作時において安定した制御ができなくなる課題がある。ところが、上記の構成とすると、作業機昇降指令と連動して補助シリンダ機構95への油路107を切り替え操作することにより該油路107への空気混入を防止し、補助シリンダ機構95の伸縮制御を安定させることができる。
そして、第1制御バルブ108が非励磁の通常状態の場合には強制下降制御は選択されず作業機の自重で下降する。
図8は補助シリンダ制御ユニットの変形例を示し、補助シリンダ制御ユニット100Aは、高圧ホース104の圧油から減圧してアシストシリンダ回路の油路107の圧力を制御する減圧バルブ111と、連通油路106を開閉作動する方向制御バルブ112と当該方向制御バルブ112と並列にチェックバルブ113を備え、前記の第2制御バルブ109に相当する制御バルブ114によって、作業機強制下降操作の際は、補助シリンダ機構75短縮側の推力を前記減圧バルブ111の設定圧力にて一定に制御する構成としている。
また、方向制御バルブ112と並列に配したチェックバルブ113は、方向制御バルブ112を作動させ油路106への流れを遮断させる際、減圧バルブ111の上流回路の圧力が、減圧バルブ111の設定圧力以上であって、リリーフバルブ103の設定圧力以下となるように設定している。チェックバルブ機能を具備しない場合には作動の都度油路圧力がメインのリリーフバルブ103の設定圧力迄上昇し油温上昇馬力損失に繋がるが、チェックバルブ113によって油路圧力を必要最小限に抑制でき、これら欠点を解消できる。
図6,図7の例のように単一の補助シリンダ機構95を設ける仕様と、図9~図11のように、左右両方に補助シリンダ機構95L,95Rを設ける仕様がある。
この左右両側の補助シリンダ機構95L、95Rの形態では、単一の補助シリンダ機構の形態や、補助シリンダ機構を備えない仕様に対して、リフトアーム72L,72Rによる揚力を増大化させることができる。
なお、左右両側の補助シリンダ機構95L,95Rによる仕様の補助シリンダ用配管は前記単一の補助シリンダ用の配管95cにもう一本の補助シリンダ用の配管95dを加えて構成される。左補助シリンダ用の配管95c及び右補助シリンダ用の配管95dの接続構成について説明する。前記作業機昇降制御バルブ74に連通しシリンダケース71の前部に開口する前記油供給ポート74cに、第1の接続用アダプタ97aを密閉状態に螺合し、該第1の接続用アダプタ97aには右補助シリンダ用の配管95cを作動油流通可能に接続している。この第1の接続用アダプタ97aには第2の接続用アダプタ97bを連結して設けている。この第2の接続用アダプタ97bには前記左補助シリンダ用の配管95dを連結している(図9,図10)。そして、前記補助シリンダ制御ユニット100,100Aに接続される油路107を分岐107a,107bして、左右の補助シリンダ機構95L,95Rに圧油を分配できる構成としている(図9)。したがって、前記作業機昇降制御バルブ74の油供給ポート74cに第1の接続用アダプタ97aを接続し、さらにこの第1の接続用アダプタ97aに第2の接続用アダプタ97bを接続することによって、左及び右の補助シリンダ用の配管95c,95dを経由して作動油を左右の補助シリンダ機構95L,95Rに供給できる。また、左の補助シリンダ機構95L単一の仕様でも、左右両方の補助シリンダ機構95L,95Rの仕様においても、主シリンダ機構77のシリンダ部と並列状態に設けられているので、シリンダの作動タイミングを揃えることができ精度良く作業機の昇降動作を行える。
さらに、補助シリンダ機構95L,95Rについて単一仕様あるいは左右両方仕様とするか、あるいは主シリンダ機構77のシリンダ部のみの仕様を選択できるが、これら仕様が略同様の作業機昇降動作を行うよう、補助シリンダ機構95L,95Rの有無を手動入力し、又はこの有無を自動検知することによって、補助シリンダ機構95L.95R付き仕様の方が補助シリンダ機構95L単一仕様あるいは無し仕様の場合に比較して圧油供給割合を高く設定し、3つの仕様でほぼ同様の作業機昇降動作となるよう構成している。ここで、補助シリンダ機構95L又は95Rの有無の検知は、回路内圧力上昇率やリリーフ圧の管理、あるいはシリンダやピストンロッドの連結状態を検出するセンサを設けるなど種々であるが、圧油の供給量の制御は、前記作業機上昇側74Uへの制御バルブ通電量の制御によって行う。補助シリンダ機構95を装着した場合の昇降作動の遅れをなくし、所望位置への円滑な移動を行える。