以下に添付図面を参照しながら、本開示の各実施形態について説明する。各実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本開示の第1の実施形態の過給機TCを示す概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。図1に示されるように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング5と、コンプレッサハウジング7とを備える。タービンハウジング5は、ベアリングハウジング3の左側に締結ボルト9によって連結される。コンプレッサハウジング7は、ベアリングハウジング3の右側に締結ボルト11によって連結される。過給機TCは、タービンT1および遠心圧縮機Cを備える。タービンT1は、ベアリングハウジング3およびタービンハウジング5を含む。タービンT1は、ダブルスクロール式のタービンである。遠心圧縮機Cは、ベアリングハウジング3およびコンプレッサハウジング7を含む。
ベアリングハウジング3には、軸受孔3aが形成される。軸受孔3aは、過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3aには、セミフローティング軸受13が配される。セミフローティング軸受13は、シャフト15を回転自在に軸支する。シャフト15の左端部には、タービン翼車17が設けられる。タービン翼車17は、タービンハウジング5に回転自在に収容されている。シャフト15の右端部には、コンプレッサインペラ19が設けられる。コンプレッサインペラ19は、コンプレッサハウジング7に回転自在に収容されている。シャフト15の軸方向が、過給機TCの軸方向(つまり、左右方向)である。以下、過給機TCの軸方向、径方向および周方向(つまり、タービン翼車17の軸方向、径方向および周方向)を、それぞれ単に軸方向、径方向および周方向と呼ぶ。
コンプレッサハウジング7には、吸気口21が形成される。吸気口21は、過給機TCの右側に開口する。吸気口21は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の対向面によって、ディフューザ流路23が形成される。ディフューザ流路23は、空気を昇圧する。ディフューザ流路23は、環状に形成される。ディフューザ流路23は、径方向内側において、コンプレッサインペラ19を介して吸気口21に連通している。
また、コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路25が形成される。コンプレッサスクロール流路25は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路25は、例えば、ディフューザ流路23よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路23とに連通している。コンプレッサインペラ19が回転すると、吸気口21からコンプレッサハウジング7内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ19の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路23およびコンプレッサスクロール流路25で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
タービンハウジング5には、排出流路27と、収容部29と、排気流路31とが形成される。排出流路27は、過給機TCの左側に開口する。排出流路27は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。排出流路27は、収容部29と連通する。排出流路27は、収容部29に対して、軸方向に連続する。収容部29は、タービン翼車17を収容する。収容部29の径方向外側には、排気流路31が形成される。排気流路31は、不図示のエンジンの排気マニホールドと連通する。不図示のエンジンの排気マニホールドから排出された排気ガスは、排気流路31および収容部29を介して排出流路27に導かれる。排出流路27に導かれる排気ガスは、流通過程においてタービン翼車17を回転させる。
タービン翼車17の回転力は、シャフト15を介してコンプレッサインペラ19に伝達される。コンプレッサインペラ19が回転すると、上記のとおりに空気が昇圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
図2は、図1のA-A断面図である。図2では、タービン翼車17について、外周のみを円で示す。図2に示すように、排気流路31は、排気導入口33と、排気導入路35と、タービンスクロール流路37と、スクロール出口39とを備える。
排気導入口33は、タービンハウジング5の外部に開口する。排気導入口33には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導入される。
排気導入路35は、排気導入口33とタービンスクロール流路37とを接続する。排気導入路35は、例えば、直線状に形成される。排気導入路35は、排気導入口33から導入された排気ガスをタービンスクロール流路37に導く。
タービンスクロール流路37は、スクロール出口39を介して収容部29と連通する。タービンスクロール流路37は、排気導入路35から導入された排気ガスを、スクロール出口39を介して収容部29に導く。
タービンハウジング5には、仕切板41が形成される。仕切板41は、排気流路31内(具体的には、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37内)に配される。仕切板41は、排気流路31をタービン翼車17の周方向に仕切る。仕切板41は、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37の内面に対して、軸方向に接続される。仕切板41は、排気流路31に沿って延在する。つまり、仕切板41は、排気ガスの流れ方向に沿って延在する。以下、排気ガスの流れ方向の上流側を単に上流側と呼び、排気ガスの流れ方向の下流側を単に下流側と呼ぶ。
排気導入口33は、仕切板41により第1排気導入口33aと第2排気導入口33bとに分割される。本実施形態では、第1排気導入口33aは、第2排気導入口33bよりも径方向内側に位置する。
排気導入路35は、仕切板41により第1排気導入路35aと、第2排気導入路35bとに分割される。本実施形態では、第1排気導入路35aは、第2排気導入路35bよりも径方向内側に位置する。第1排気導入路35aは、第1排気導入口33aと連通する。第2排気導入路35bは、第2排気導入口33bと連通する。
タービンスクロール流路37は、仕切板41により第1タービンスクロール流路37aと、第2タービンスクロール流路37bとに分割される。本実施形態では、第1タービンスクロール流路37aは、第2タービンスクロール流路37bよりも径方向内側に位置する。第1タービンスクロール流路37aは、第1排気導入路35aと連通する。第2タービンスクロール流路37bは、第2排気導入路35bと連通する。第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17に対して径方向外側に巻き回される。第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17の回転方向RDに進むにつれてタービン翼車17に近づくように、巻き回される。各タービンスクロール流路37の径方向の幅は、上流側から下流側に向かうにつれて小さくなる。
第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17の周方向の互いに異なる位置で収容部29とそれぞれ連通する。第1タービンスクロール流路37aは、第1スクロール出口39aを介して収容部29と連通する。第2タービンスクロール流路37bは、第2スクロール出口39bを介して収容部29と連通する。
第1スクロール出口39aおよび第2スクロール出口39bは、周方向に沿って形成される。具体的には、第1スクロール出口39aは、収容部29の一側の半周(具体的には、図2中の左側の半周)に亘って収容部29と連通される。第2スクロール出口39bは、収容部29の他側の半周(具体的には、図2中の右側の半周)に亘って収容部29と連通される。第1スクロール出口39aおよび第2スクロール出口39bは、タービン翼車17を挟んで径方向に対向している。
タービンハウジング5には、第1舌部43aと、第2舌部43bとが形成される。なお、以下では、第1舌部43aおよび第2舌部43bを特に区別しない場合、単に舌部43とも呼ぶ。各舌部43は、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとを区画する。また、各舌部43は、第1スクロール出口39aと第2スクロール出口39bとを区画する。
第1舌部43aは、第1タービンスクロール流路37aの下流端に面する位置に設けられる。第1舌部43aは、仕切板41の下流側の端部に形成される。第1舌部43aは、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとを区画する。また、第1舌部43aは、第1スクロール出口39aの下流端と第2スクロール出口39bの上流端とを区画する。
第2舌部43bは、第2タービンスクロール流路37bの下流端に面する位置に設けられる。第2舌部43bは、第2タービンスクロール流路37bと第1タービンスクロール流路37aとを区画する。また、第2舌部43bは、第2スクロール出口39bの下流端と第1スクロール出口39aの上流端とを区画する。
第1舌部43aと第2舌部43bとは、タービン翼車17の周方向に等間隔に配置されている。つまり、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°ずれている。
不図示のエンジンの排気マニホールドは、2以上の複数の分割路を備える。複数の分割路のうちの一部の分割路は、第1排気導入口33aに接続される。複数の分割路のうちの他の分割路は、第2排気導入口33bに接続される。不図示のエンジンから排出される排気ガスは、分割路を流通し、第1排気導入口33aまたは第2排気導入口33bに導入される。一方の排気導入口33に排気ガスが導入されるタイミングでは、基本的に、他方の排気導入口33には排気ガスが導入されない。第1排気導入口33aへの排気ガスの導入と、第2排気導入口33bへの排気ガスの導入とが、交互に繰り返される。
第1排気導入口33aへ導入された排気ガスは、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aを通って、第1スクロール出口39aから収容部29に流れる。第2排気導入口33bへ導入された排気ガスは、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bを通って、第2スクロール出口39bから収容部29に流れる。一方のタービンスクロール流路37に排気ガスが流れるタイミングでは、基本的に、他方のタービンスクロール流路37には排気ガスが流れない。
上述したように、収容部29に送られた排気ガスは、流通過程においてタービン翼車17を回転させる。タービンT1では、タービン翼車17に働く励振力によって生じる翼振動を低減することが重要である。本実施形態のタービンT1では、各舌部43とタービン翼車17との距離を工夫することによって、タービン翼車17の翼振動が低減される。
図3は、図2のB-B断面図(具体的には、第1舌部43aを通りタービン翼車17の回転軸を含む断面における断面図)である。なお、第2舌部43bの形状については、第1舌部43aの形状と同様であるので、図示を省略する。
タービン翼車17は、ハブ17aと、複数の翼体17bとを有する。ハブ17aは、シャフト15の左端部と接続されている。ハブ17aの外径は、過給機TCの左側に向かうほど小さくなる。ハブ17aの外周面に複数の翼体17bが設けられる。複数の翼体17bは、周方向に間隔を空けて設けられる。各翼体17bは、ハブ17aの外周面から径方向外側に延びて形成される。翼体17bの外周縁は、リーディングエッジE1、トレーリングエッジE2および中間縁部E3を含む。
リーディングエッジE1は、翼体17bにおける排気ガスの流れ方向の上流側の縁部である。リーディングエッジE1は、翼体17bにおける排気流路31側の縁部である。リーディングエッジE1には、排気流路31からの排気ガスが流入する。リーディングエッジE1は、翼体17bの右端側に形成される。リーディングエッジE1は、タービン翼車17の回転軸と平行に延びている。
トレーリングエッジE2は、翼体17bにおける排気ガスの流れ方向の下流側の縁部である。トレーリングエッジE2は、翼体17bにおける排出流路27側の縁部である。トレーリングエッジE2から排出流路27に向けて排気ガスが流出する。トレーリングエッジE2は、翼体17bの左端側に形成される。トレーリングエッジE2は、周方向にねじれながら径方向に延びている。
中間縁部E3は、リーディングエッジE1とトレーリングエッジE2の間に亘って形成される。中間縁部E3は、タービンハウジング5のうち収容部29を画成するシュラウド部29aに沿って延びている。
舌部43は、タービン翼車17の翼体17bのリーディングエッジE1の径方向外側に配置されている。舌部43のタービン翼車17に面する部分(具体的には、リーディングエッジE1に面する部分)は、タービン翼車17の回転軸と平行に延びている。つまり、舌部43のタービン翼車17に面する部分は、リーディングエッジE1と平行に延びている。舌部43とタービン翼車17との距離は、タービン翼車17の中心軸から舌部43までの距離と、タービン翼車17の最大半径との差である。つまり、舌部43とタービン翼車17との距離は、翼体17bが舌部43に最も接近したときの舌部43とリーディングエッジE1との距離である。図3では、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1が示されている。
上記の例では、舌部43とリーディングエッジE1とが平行であり、舌部43とリーディングエッジE1との隙間(具体的には、翼体17bが舌部43に最も接近したときの隙間)が軸方向位置によらずに一定である。ただし、舌部43とリーディングエッジE1とが平行でなく、舌部43とリーディングエッジE1との隙間が軸方向位置によって異なっていてもよい。その場合、舌部43とタービン翼車17との距離は、舌部43とリーディングエッジE1との隙間の平均値であってもよく、舌部43とリーディングエッジE1との隙間の最小値であってもよい。
図4は、本開示の第1の実施形態のタービンT1におけるタービン翼車17と各舌部43との位置関係を示す図である。図4に示すように、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1と、第2舌部43bとタービン翼車17との距離D2とは、互いに異なる。図4の例では、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1は、第2舌部43bとタービン翼車17との距離D2よりも小さい。
ここで、第1舌部43aおよび第2舌部43bが、同形状で、タービン翼車17の周方向に等間隔に設けられる場合、タービン翼車17の各翼体17bは、第1舌部43aおよび第2舌部43bと一定周期で対向する。このとき、各翼体17bには、第1タービンスクロール流路37aまたは第2タービンスクロール流路37bを通過した排気ガスが衝突する。つまり、各翼体17bには、一定周期で排気ガスが衝突する。各翼体17bに一定周期で排気ガスが衝突すると、タービン翼車17の回転数の2倍の周波数を有する励振力がタービン翼車17に働き、翼振動が増大する場合がある。
本実施形態では、上述したように、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1と、第2舌部43bとタービン翼車17との距離D2とは、互いに異なる。舌部43とタービン翼車17との距離が大きいほど、当該舌部43と対向する翼体17bに排気ガスが衝突する際の衝撃が小さくなる。ゆえに、各翼体17bが第1舌部43aと対向する際に排気ガスから受ける衝撃の大きさと、各翼体17bが第2舌部43bと対向する際に排気ガスから受ける衝撃の大きさとが、互いに異なる。これにより、各翼体17bが舌部43と対向する周期と、各翼体17bが同一の大きさの衝撃を受ける周期とを異ならせることができる。その結果、タービン翼車17の回転数の2倍の周波数を有する励振力が抑制され、翼振動が低減される。
上述したように、一方のタービンスクロール流路37に排気ガスが流れるタイミングでは、基本的に、他方のタービンスクロール流路37には排気ガスが流れない。ゆえに、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとの間で圧力差が生じ、2つのタービンスクロール流路37間での排気ガスの漏れ流れが生じる。上記の漏れ流れでは、排気ガスが、一方のタービンスクロール流路37から他方のタービンスクロール流路37へ、舌部43の近傍を通って漏れ流れる。排気ガスの漏れ流れは、タービンT1の性能および過給機TCと接続されるエンジンの性能を低下させる要因となる。
ここで、舌部43とタービン翼車17との距離が大きいほど、排気ガスの漏れ流れが生じやすくなる。図4の例では、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1は、第2舌部43bとタービン翼車17との距離D2よりも小さい。ゆえに、第1タービンスクロール流路37aに排気ガスが流れる際に、第1タービンスクロール流路37aから第2タービンスクロール流路37bへ第1舌部43aの近傍を通って排気ガスが漏れ流れることが抑制される。
なお、図4の例と異なり、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1が、第2舌部43bとタービン翼車17との距離D2よりも大きくてもよい。その場合、第2タービンスクロール流路37bに排気ガスが流れる際に、第2タービンスクロール流路37bから第1タービンスクロール流路37aへ第2舌部43bの近傍を通って排気ガスが漏れ流れることが抑制される。
ただし、タービンT1では、上述したように、第1タービンスクロール流路37aは、第2タービンスクロール流路37bよりも径方向内側に位置する。ゆえに、第1排気導入路35aが第2排気導入路35bよりも短いため、第1排気導入路35aでの圧力損失が小さくなり、第1タービンスクロール流路37aにおける圧力が高くなるので、第1タービンスクロール流路37aから第2タービンスクロール流路37bへ第1舌部43aの近傍を通って排気ガスが漏れ流れやすい。また、第1タービンスクロール流路37aにおける圧力が高いので、翼体17bが第2舌部43bと対向する際に排気ガスから受ける衝撃が大きくなりやすい。よって、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とを両立する観点では、第1舌部43aとタービン翼車17との距離D1は、第2舌部43bとタービン翼車17との距離D2よりも小さいことが好ましい。
上記では、タービン翼車17がラジアル式(つまり、リーディングエッジE1がタービン翼車17の回転軸と平行に延びているタイプ)である例を説明したが、リーディングエッジE1の形状は上記の例に限定されない。例えば、タービン翼車17は斜流式(つまり、リーディングエッジE1が排出流路27側に向かうにつれて径方向外側に傾斜するタイプ)であってもよい。また、タービン翼車17が斜流式である場合、舌部43のタービン翼車17に面する部分は、リーディングエッジE1に沿って延びていてもよい。つまり、舌部43のタービン翼車17に面する部分は、排出流路27側に向かうにつれて径方向外側に傾斜してもよい。
図5は、本開示の第2の実施形態のタービンT2における図2の断面図と対応する断面図である。第2の実施形態のタービンT2では、第1の実施形態のタービンT1と比較して、第1舌部43aと第2舌部43bとがタービン翼車17の周方向に不等間隔に配置される点が異なる。つまり、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°と異なる角度でずれている。
図5の例では、第1舌部43aは、図2の例と比較して、タービン翼車17の回転方向RDに所定角度進んだ位置に設けられている。ゆえに、第1スクロール出口39aの周方向の長さが、第2スクロール出口39bの周方向の長さよりも長くなっている。なお、図5の例と異なり、第1スクロール出口39aの周方向の長さが、第2スクロール出口39bの周方向の長さよりも短くなっていてもよい。
本実施形態では、上述したように、第1舌部43aと第2舌部43bとが、タービン翼車17の周方向に不等間隔に配置される。これにより、タービン翼車17の各翼体17bが各舌部43と対向するタイミングの周期性を崩すことができる。ゆえに、各翼体17bに排気ガスが衝突するタイミングの周期性を崩すことができる。その結果、タービン翼車17の回転数の2倍の周波数を有する励振力がより抑制され、翼振動がより低減される。
図6は、本開示の第3の実施形態のタービンT3における図3の断面図と対応する断面図である。第3の実施形態のタービンT3では、第1舌部43aの形状が、第1の実施形態のタービンT1における第1舌部43aの形状とは異なる。ただし、第3の実施形態のタービンT3では、第2舌部43bの形状は、第1の実施形態のタービンT1における第2舌部43bの形状と同様である。つまり、第3の実施形態のタービンT3では、第1舌部43aの形状と第2舌部43bの形状とが互いに異なる。
図6では、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分(具体的には、リーディングエッジE1に面する部分)のうち、タービン翼車17の回転軸方向の中央部P1と、当該回転軸方向の両端部P2、P3との形状が示されている。なお、以下では、タービン翼車17の回転軸方向を単に回転軸方向とも呼ぶ。
端部P2は、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分のうち排出流路27側の端部(つまり、左端部)である。端部P2の軸方向位置は、リーディングエッジE1の左端部の軸方向位置と一致する。端部P3は、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分のうち排出流路27側と逆側の端部(つまり、右端部)である。端部P3の軸方向位置は、リーディングエッジE1の右端部の軸方向位置と一致する。中央部P1は、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分のうち端部P2と端部P3との間の部分である。中央部P1の軸方向位置は、リーディングエッジE1の中央部の軸方向位置と一致する。
第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分において、回転軸方向の両端部P2、P3は、回転軸方向の中央部P1に対してタービン翼車17の径方向外側に窪んでいる。中央部P1は、タービン翼車17の回転軸と平行に延びている。翼体17bが第1舌部43aに最も接近したときに、両端部P2、P3とリーディングエッジE1との距離(隙間)は、中央部P1とリーディングエッジE1との距離(隙間)よりも大きくなっている。つまり、第1舌部43aは、中央部P1において、タービン翼車17と最も接近する。なお、図6の例では、各端部P2、P3と中央部P1との接続部分が湾曲している。ただし、各端部P2、P3と中央部P1との接続部分は屈曲していてもよい。
ここで、タービンスクロール流路37内の排気ガスの流れでは、壁面近傍で境界層が生じ流速が小さくなる。タービンスクロール流路37のうち収容部29と接続される部分の内周側には、スクロール出口39が形成されるので壁面が存在しない。ゆえに、タービンスクロール流路37のうち収容部29と接続される部分では、排気ガスの流速の周方向の成分が、回転軸方向の端側と比べて回転軸方向の中央側で大きくなる。よって、第1舌部43aとタービン翼車17との距離が仮に回転軸方向の位置によらず一定である場合には、第1舌部43aの中央部P1の近傍で排気ガスの漏れ流れが生じやすくなる。
上記のように、第1舌部43aの両端部P2、P3は、第1舌部43aの中央部P1に対してタービン翼車17の径方向外側に窪んでいる。これにより、第1舌部43aの中央部P1が、他の部分よりもタービン翼車17に接近する。ゆえに、タービンスクロール流路37内で排気ガスの流速の周方向の成分が大きくなる回転軸方向の中央側において、第1舌部43aをタービン翼車17に極力接近させ、一方で、タービンスクロール流路37内で排気ガスの流速の周方向の成分が小さくなる回転軸方向の端側において、第1舌部43aをタービン翼車17から離隔させることができる。よって、例えば、第1舌部43a全体を回転軸方向の位置によらずに一律にタービン翼車17に接近させた場合と比べて、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とが両立される。
ここで、第1舌部43aの中央部P1の回転軸方向の長さL1が長いほど、排気ガスの漏れ流れを抑制する効果が高まる。一方、第1舌部43aの端部P2の回転軸方向の長さL2、および、第1舌部43aの端部P3の回転軸方向の長さL3の合計が長いほど、タービン翼車17の翼振動を低減する効果が高まる。ゆえに、長さL2および長さL3の合計よりも長さL1が長い場合、排気ガスの漏れ流れが効果的に抑制される。一方、長さL1よりも長さL2および長さL3の合計が長い場合、タービン翼車17の翼振動が効果的に抑制される。ただし、長さL1と、長さL2および長さL3の合計とは、略一致していてもよい。
図6の例では、端部P2の回転軸方向の長さL2と、端部P3の回転軸方向の長さL3とが略一致しているが、長さL2と長さL3との大小関係は、この例に限定されない。
例えば、長さL2は長さL3よりも長くてもよい。この場合、リーディングエッジE1のシュラウド側(シュラウド部29a側)において、リーディングエッジE1と第1舌部43aとの距離が大きい領域が広くなるので、リーディングエッジE1のうちシュラウド側の部分に働く励振力が小さくなる。そのため、この部分で振動変位が大きくなる振動モードに対して、振動応答を抑制できる。
例えば、長さL3は長さL2よりも長くてもよい。ここで、リーディングエッジE1のハブ側(つまり、シュラウド側と逆側)の部分の付近で剥離渦が生じることがあるが、この剥離渦はリーディングエッジE1のシュラウド側の部分の付近での流れ場を変動させ、この部分で振動変位が大きくなる振動モードに対して励振源となることがある。長さL3が長さL2よりも長い場合、リーディングエッジE1のハブ側において、リーディングエッジE1と第1舌部43aとの距離が大きい領域が広くなるので、リーディングエッジE1のハブ側の部分での流れ場の変動が小さくなり、剥離渦の変動も小さくなる。そのため、リーディングエッジE1のシュラウド側の部分で振動変位が大きくなる振動モードに対して振動応答を抑制できる場合がある。
本実施形態では、上述したように、第1舌部43aの形状と第2舌部43bの形状とが互いに異なる。これにより、各翼体17bが第1舌部43aと対向する際に排気ガスから受ける衝撃の大きさと、各翼体17bが第2舌部43bと対向する際に排気ガスから受ける衝撃の大きさとの差が、より大きくなる。これにより、各翼体17bが舌部43と対向する周期と、各翼体17bが同一の大きさの衝撃を受ける周期とをより異ならせやすくすることができる。その結果、タービン翼車17の回転数の2倍の周波数を有する励振力がより抑制され、翼振動がより低減される。特に、第1舌部43aの両端部P2、P3が、第1舌部43aの中央部P1に対してタービン翼車17の径方向外側に窪んでいるので、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とを両立する効果も奏される。
上記では、第1舌部43aにおいて、両端部P2、P3が中央部P1に対して径方向外側に窪んでいる例を説明したが、端部P2、P3の一方のみが中央部P1に対して径方向外側に窪んでいてもよい。例えば、端部P2、P3のうち左側の端部P2のみが中央部P1に対して径方向外側に窪んでいてもよい。例えば、端部P2、P3のうち右側の端部P3のみが中央部P1に対して径方向外側に窪んでいてもよい。これらの場合にも、上記と同様の効果が奏される。ただし、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とを効果的に両立する観点では、両端部P2、P3が中央部P1に対して径方向外側に窪んでいることが好ましい。
上記では、中央部P1のいずれの部分も両端部P2、P3に対して径方向内側に位置している。ただし、中央部P1の一部が端部P2または端部P3に対して径方向外側に位置していてもよい。
上記では、タービン翼車17の回転軸を含む断面において、第1舌部43aの形状と第2舌部43bの形状とが互いに異なっている。ただし、タービン翼車17の回転軸に交差する断面において、第1舌部43aの形状と第2舌部43bの形状とが互いに異なっていてもよい。
上記では、タービン翼車17がラジアル式である例を説明した。ただし、リーディングエッジE1の形状は、上述したように、斜流式であってもよい。その場合、第1舌部43aの中央部P1は、リーディングエッジE1に沿って延びていてもよい。つまり、中央部P1は、排出流路27側に向かうにつれて径方向外側に傾斜してもよい。
上記では、第1舌部43aおよび第2舌部43bのうち、第1舌部43aの形状のみが、第1の実施形態のタービンT1における第1舌部43aの形状と異なる。ただし、第1舌部43aおよび第2舌部43bのうち、第2舌部43bの形状のみが、第1の実施形態のタービンT1における第2舌部43bの形状と異なっていてもよい。その場合、例えば、第2舌部43bのタービン翼車17に面する部分において、回転軸方向の少なくとも一方の端部が、回転軸方向の中央部に対して径方向外側に窪んでいてもよい。なお、第1舌部43aの形状、および、第2舌部43bの形状の双方が、第1の実施形態のタービンT1における形状と異なっていてもよい。例えば、第1舌部43aおよび第2舌部43bの双方のタービン翼車17に面する部分において、回転軸方向の少なくとも一方の端部が、回転軸方向の中央部に対して径方向外側に窪んでいてもよい。
上記では、第1の実施形態のタービンT1に対して、第1舌部43aの形状と第2舌部43bの形状とを互いに異ならせた第3の実施形態のタービンT3を説明した。ただし、第2の実施形態のタービンT2に対して、第1舌部43aの形状と第2舌部43bの形状とを互いに異ならせてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上記では、タービンT1、T2、T3が過給機TCに搭載される例を説明したが、タービンT1、T2、T3は、過給機TC以外の装置(例えば、発電機等)に搭載されてもよい。
上記では、第1排気導入口33a、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aと、第2排気導入口33b、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bとが径方向に並んで形成される例を説明したが、排気流路31における各構成要素間の位置関係は、この例に限定されない。例えば、第1排気導入口33a、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aと、第2排気導入口33b、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bとが、部分的に軸方向に並んで形成されていてもよい。