以下、図面を参照しながら、本発明に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ(以下、プリンタとする。)の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視において直交する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。また、符号X1は、副走査方向Xのうち上流側から下流側へ向かう方向(ここでは、後から前へ向かう方向)を示している。方向X1は、例えば、印刷時に記録媒体5が搬送される方向である。符号X2は、副走査方向Xのうち下流側から上流側へ向かう方向(ここでは、前から後へ向かう方向)を示している。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
図1に示すように、本発明に係るプリンタ10は、カッティングヘッド付きのインクジェット式のプリンタ(即ちカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ)である。プリンタ10は、記録媒体5に対して印刷および切断(カッティング)が可能なプリント&カット機である。
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板等が含まれる。本明細書において「切断」、「カッティング」とは、記録媒体5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、記録媒体5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とが含まれる。
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、脚11と、操作パネル12と、記録媒体5が載置されるプラテン16と、インクジェットヘッド20と、カッティングヘッド30と、ヘッド移動機構40と、媒体移動機構55と、制御装置80とを備えている。
プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有する。脚11は、プリンタ本体10aを支持するものであり、プリンタ本体10aの下面に設けられている。操作パネル12は、例えばプリンタ本体10aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、例えば、作業者が印刷処理や切断処理に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中や切断中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示部、および、印刷処理や切断処理に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。操作パネル12は、制御装置80によって制御される。
プラテン16は、記録媒体5への印刷および記録媒体5を切断する際、記録媒体5を支持するものである。プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷および記録媒体5の切断は、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yに延びている。プラテン16は、載置台の一例である。プラテン16の上方には、主走査方向Yに延びるガイドレール15が配置されている。
インクジェットヘッド20は、プラテン16に載置された記録媒体5に印刷を行う。インクジェットヘッド20は、主走査方向Yに移動可能に構成されている。図2Aおよび図2Bは、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30の正面図である。図2Aに示すように、インクジェットヘッド20は、キャリッジ21と、記録媒体5にインクを吐出する複数のノズル(図示せず)を有する複数のインクヘッド22と、を備えている。ここでは、5つのインクヘッド22がキャリッジ21に支持されている。5つのインクヘッド22は、それぞれ色調が異なるインクを吐出する。例えば、各インクヘッド22は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどのプロセスカラーインク、および、クリアインク、ホワイトインクなどの特色インクのうちの何れかのインクを吐出する。ただし、インクヘッド22の数は5つに限定されない。また、インクヘッド22が吐出するインクの色も何ら限定されない。キャリッジ21は、ガイドレール15に支持されている。キャリッジ21は、ガイドレール15に対し、主走査方向Yに移動自在に係合している。
図2Aに示すように、カッティングヘッド30は、プラテン16に載置された記録媒体5を切断する。カッティングヘッド30は、主走査方向Yに移動可能に構成されている。カッティングヘッド30は、キャリッジ31と、ソレノイド32と、カッター33とを備えている。キャリッジ31には、ソレノイド32を介してカッター33が取り付けられている。ソレノイド32は、制御装置80(図1参照)によって制御される。ソレノイド32がON/OFFされると、カッター33は上下方向に移動して記録媒体5に接触し、あるいは記録媒体5から離反する。キャリッジ31は、ガイドレール15に支持されている。キャリッジ31は、ガイドレール15に対し、主走査方向Yに移動自在に係合している。
図1に示すように、ヘッド移動機構40は、プラテン16に載置された記録媒体5に対してインクジェットヘッド20のキャリッジ21およびカッティングヘッド30のキャリッジ31を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構40は、キャリッジ21(図2A参照)およびキャリッジ31(図2A参照)を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構40の構成は特に限定されない。ヘッド移動機構40は、左側プーリ41と、右側プーリ42と、無端状のベルト43と、キャリッジモータ44とを備えている。左側プーリ41は、ガイドレール15の左端側に設けられている。右側プーリ42は、ガイドレール15の右端側に設けられている。ベルト43は、左側プーリ41と右側プーリ42とに巻き掛けられている。ベルト43は、キャリッジ31(図2A参照)の背面上部に固定されている。右側プーリ42には、キャリッジモータ44が接続されている。ただし、キャリッジモータ44は、左側プーリ41に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ44が駆動して、右側プーリ42が回転することで、左側プーリ41と右側プーリ42との間においてベルト43が走行する。これにより、キャリッジ31は主走査方向Yに移動する。キャリッジモータ44は、制御装置80に制御される。
図2Aに示すように、キャリッジ21の左側部分には、磁石によって構成される連結部材24が設けられている。キャリッジ31の右側部分には、磁石によって構成される連結部材34が固定されている。連結部材24は、カッティングヘッド30の連結部材34に対し、着脱自在に連結する。本実施形態では、連結部材24および連結部材34は、磁力を利用するものである。ただし、連結部材24および連結部材34は磁力を利用するものに限られず、係合部材などの他の構成を備えたものであってもよい。キャリッジ21の右側には、L字状に形成された受け金具25が設けられている。
プラテン16の左方および右方には、それぞれ左サイドフレーム7Lおよび右サイドフレーム7Rが配置されている。ガイドレール15は、左サイドフレーム7Lおよび右サイドフレーム7Rに支持されている。右サイドフレーム7Rには、インクジェットヘッド20を待機位置にロックするためのロック装置35が設けられている。ロック装置35は、受け金具25に引っ掛けられる受け金具36と、受け金具36をロック位置(図2B参照)と非ロック位置(図2A参照)との間で移動させるロック用ソレノイド37(図3参照)とを備えている。ロック用ソレノイド37は、制御装置80によって制御される。
インクジェットヘッド20による印刷を行う際には、図2Aに示すように、受け金具36が非ロック位置に設定される。カッティングヘッド30のキャリッジ31が右方に移動し、連結部材34と連結部材24とが接触すると、キャリッジ31とキャリッジ21とが連結される。その結果、インクジェットヘッド20は、カッティングヘッド30と共に左右方向に移動可能となる。一方、カッティングヘッド30によるカッティングの際には、図2Bに示すように、インクジェットヘッド20が待機位置に位置付けられ、ロック装置35の受け金具36がロック位置に設定される。これによって、インクジェットヘッド20の移動が阻止される。キャリッジ31が左方へ移動すると、連結部材34と連結部材24とが離反し、キャリッジ31とキャリッジ21との連結が解除される。その結果、インクジェットヘッド20が待機位置に待機した状態で、カッティングヘッド30が左右方向に移動可能となる。
媒体移動機構55は、プラテン16に載置された記録媒体5をインクジェットヘッド20(言い換えると、インクヘッド22。)およびカッティングヘッド30に対して副走査方向Xに移動させるものである。媒体移動機構55は、プラテン16に載置された記録媒体5を副走査方向Xの上流側から下流側(即ち図5の方向X1)および副走査方向Xの下流側から上流側(即ち図5の方向X2)に向けて移動可能に構成されている。図1に示すように、媒体移動機構55は、グリットローラ57と、ピンチローラ56と、フィードモータ58(図3参照)とを備えている。グリットローラ57は、プラテン16に設けられている。グリットローラ57は、その上面部を露出させた状態でプラテン16に埋設されている。グリットローラ57は、インクヘッド22より後方(即ち副走査方向Xの上流側)に位置する。グリットローラ57は、フィードモータ58によって駆動される。グリットローラ57の上方には、ピンチローラ56が配置されている。ピンチローラ56は、プラテン16より上方に配置されている。ピンチローラ56は、グリットローラ57に対向している。ピンチローラ56は、記録媒体5の厚さに応じて上下方向の位置を設定可能に構成されている。ピンチローラ56は、記録媒体5を押さえる。ピンチローラ56とグリットローラ57との間に記録媒体5を挟み込む。グリットローラ57およびピンチローラ56は、記録媒体5を狭持しながら記録媒体5を副走査方向Xに移動可能(即ち方向X1および方向X2に移動可能)に構成されている。
図3に示すように、プリンタ10は、記録媒体5の副走査方向Xの上流側の端部を検出する検出装置75を備えている。検出装置75は、ロール状に巻かれた記録媒体5のエンドを検出する装置である。本実施形態のプリンタ10では、検出装置75によって記録媒体5の副走査方向Xの上流側の端部が検出されると印刷処理が途中で中止するように構成されている。検出装置75は、例えば、光電センサである。検出装置75は、例えば、グリットローラ57より副走査方向Xの上流側に配置されている。
次に、制御装置80について説明する。図3は、プリンタ10のブロック図である。制御装置80は、記録媒体5への印刷および記録媒体5の切断に関する制御をする装置である。制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、I/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。図1に示すように、制御装置80は、プリンタ本体10aの内部に設けられている。ただし、制御装置80はプリンタ本体10aの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置80は、プリンタ本体10aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置80は、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されている。
図3に示すように、制御装置80は、操作パネル12と、ヘッド移動機構40のキャリッジモータ44と、媒体移動機構55のフィードモータ58と、インクヘッド22と、カッティングヘッド30のソレノイド32と通信可能に接続されている。制御装置80は、キャリッジモータ44の駆動を制御することで、右側プーリ42の回転、および、ベルト43(図1参照)の走行を制御する。これにより、制御装置80は、インクジェットヘッド20およびカッティングヘッド30の主走査方向Yへの移動を制御する。制御装置80は、フィードモータ58の駆動を制御してグリットローラ57の回転を制御する。これにより、プラテン16に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの移動を制御する。制御装置80は、インクヘッド22がインクを吐出するタイミングやインクの吐出量などを制御する。制御装置80は、ソレノイド32を制御することで、カッター33の上下方向の移動やカッター33の圧力を制御する。
図3に示すように、制御装置80は、記憶部81と、第1コマンド実行部82と、第2コマンド実行部83と、印刷制御部84と、第3コマンド実行部85と、カッティング制御部86と、特定部87とを備えている。制御装置80の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置80の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
記憶部81は、ジョブデータを記憶する。ジョブデータは、例えば、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータによって作成される。作成されたジョブデータは、プリンタ10に送信される。図4は、ジョブデータJDの一例を示す図である。図4のジョブデータJDは、後述する印刷切断ジョブに関するデータである。本実施形態に係るプリンタ10は、複数のコマンドを実行することで、各種設定、記録媒体5に対する印刷、記録媒体5に対する切断が行われる。ここでは、コマンドは、図4に示すように、ジョブコマンドCM1と、制御コマンドCM2と、実行コマンドCM3とを含む。
本実施形態では、印刷、切断などの記録媒体5に対するプリンタ10の動作のことを「処理」という。1つの処理が単一で行われたときの処理、または、複数の処理が連続して行われたときの一連の処理のことを「ジョブ」という。1つのジョブとは、後述する実行コマンドCM3によって定義される、単一または一連の処理の実行開始から終了までのプリンタ10の制御のことである。ジョブの種類のことを「ジョブタイプ」という。
ジョブコマンドCM1とは、基本設定情報などを設定するためのコマンドである。ジョブコマンドCM1とは、いわゆるPJL(Printer Job Language)コマンドである。基本設定情報とは、プリンタ10に設定される情報であり、印刷および切断に関する基本的な情報のことである。基本設定情報には、例えば、記録媒体5の種類、解像度、インクヘッド22の移動速度、記録媒体5の移動速度(搬送速度)などが含まれる。基本設定情報は、ジョブタイプを含む。そして、図4に示すように、ジョブコマンドCM1として、ジョブタイプを設定するジョブタイプコマンドCM11が存在する。このジョブタイプコマンドCM11を実行することで、1つのジョブ開始時に、どのジョブタイプが開始されるかをプリンタ10が認識することが可能である。本実施形態では、ジョブタイプコマンドCM11を実行することで、後述する印刷ジョブ、切断ジョブおよび印刷切断ジョブのうちのどのジョブタイプがこれから行われるかを、プリンタ10が認識することができる。
本実施形態のプリンタ10は、上述のようにカッティングヘッド付きプリンタであり、記録媒体5に対して印刷および切断が可能である。ここでは、ジョブタイプとして、例えば、印刷ジョブ、切断ジョブ、印刷切断ジョブの3つが挙げられる。印刷ジョブとは、記録媒体5に対して、印刷が行われ、かつ、切断が行われないジョブのことである。切断ジョブとは、記録媒体5に対して、印刷が行われず、かつ、切断が行われるジョブのことである。印刷切断ジョブとは、記録媒体5に対して印刷が行われ、印刷された記録媒体5に対して切断が行われるジョブのことである。ただし、ジョブタイプとして、上記3つ以外のジョブタイプが存在していてもよい。
制御コマンドCM2とは、印刷時の印刷データPD1、および、切断時のカットデータCD1を指定するコマンドである。ここで、印刷データPD1とは、印刷時に指定されるものであり、印刷対象となる画像の画像データおよび座標などの値で指定されたパスのことである。図4に示す例では、印刷データPD1は、印刷データA~印刷データZを含む。ここでは、印刷データPD1に対する制御コマンドCM2のことを印刷制御コマンドという。カットデータCD1とは、記録媒体5の切断時に指定されるものであり、画像ごとに設定されたカット線に沿って記録媒体5を切断する際のパスであって、座標などの値で指定されたパスのことである。図4に示す例では、カットデータCD1は、カットデータA~カットデータZを含む。カットデータA~カットデータZは、それぞれ印刷データA~印刷データZに関連付けられている。例えば、カットデータAは、印刷データAに関連付けられている。ここでは、カットデータCD1に対する制御コマンドCM2のことを切断制御コマンドという。カットデータCD1プリンタ10は、制御コマンドCM2を順に実行することで、記録媒体5に対して印刷および切断を行うことができる。
実行コマンドCM3とは、処理の開始およびジョブの終了を指定するコマンドである。本実施形態では、実行コマンドCM3とは、印刷および切断の開始および終了を指定するコマンドである。プリンタ10は、実行コマンドCM3を実行することで、処理の開始およびジョブの終了、ここでは印刷および切断の開始および終了を認識することができる。なお、実行コマンドCM3の種類は特に限定されない。本実施形態では、実行コマンドCM3として、印刷の開始に関する印刷開始コマンドCM31、切断の開始に関する切断開始コマンドCM32、および、ジョブ終了コマンドCM33が存在する。ジョブ終了コマンドCM33とは、一連の印刷または切断の処理であるジョブが終了したことを知らせるコマンドである。ここでは、印刷開始コマンドCM31は、印刷データPD1を含む制御コマンドCM2(ここでは、印刷制御コマンド)の前に指定されるコマンドである。切断開始コマンドCM32は、カットデータCD1を含む制御コマンドCM2(ここでは、切断制御コマンド)の前に指定されるコマンドである。ジョブ終了コマンドCM33とは、1つのジョブの終了時に指定されるコマンドである。言い換えると、ジョブ終了コマンドCM33は、ジョブデータJDの最後に指定されるコマンドである。
図4に示すように、本実施形態では、ジョブコマンドCM1、制御コマンドCM2および実行コマンドCM3が処理の順に適宜指定された一連のコマンド群のことをジョブデータJDと称する。ジョブデータJDでは、最初に複数のジョブコマンドCM1が設定され、その後、制御コマンドCM2および実行コマンドCM3が適宜設定される。図4に示す例では、ジョブコマンドCM1、実行コマンドCM3の印刷開始コマンドCM31、印刷データPD1に関する制御コマンドCM2、実行コマンドCM3の切断開始コマンドCM32、カットデータCD1に関する制御コマンドCM2、実行コマンドCM3のジョブ終了コマンドCM33が順に並べられている。ジョブデータJDは、ジョブ実行ファイルFLに保存される。
第1コマンド実行部82は、ジョブデータJD内のジョブコマンドCM1(図4参照)を実行する。ジョブコマンドCM1が実行されることによって、ジョブタイプ、記録媒体5の種類、解像度、インクヘッド22の移動速度、記録媒体5の移動速度などの基本設定情報がプリンタ10に設定される。第1コマンド実行部82は、ジョブタイプコマンドCM11を実行することで、ジョブタイプをプリンタ10に設定する。例えば、第1コマンド実行部82は、ジョブタイプが印刷切断ジョブに設定されたジョブタイプコマンドCM11を実行することで、印刷切断ジョブをプリンタ10に設定する。ここで、基本設定情報を設定するとは、例えばジョブコマンドCM1によって実行された基本設定情報を記憶部81に記憶させることである。
第2コマンド実行部83は、実行コマンドCM3の印刷開始コマンドCM31(図4参照)を実行する。
印刷制御部84は、印刷開始コマンドCM31以降の制御コマンドCM2の印刷データPD1に基づいて、印刷処理の制御を行う。印刷制御部84は、第2コマンド実行部83によって印刷開始コマンドCM31が実行されたときに、印刷データPD1に基づいて印刷処理の制御を行う。印刷制御部84は、制御コマンドCM2の印刷データPD1に基づいて、キャリッジモータ44(図3参照)を駆動することによってインクヘッド22を主走査方向Yに移動させつつ、インクヘッド22からインクを吐出させる。これにより、一走査ラインの印刷が行われる。インクヘッド22の主走査方向Yの移動が済むと、フィードモータ58(図3参照)を駆動することにより、次の走査ラインの位置まで記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。記録媒体5の副走査方向Xの搬送が済むと、再びキャリッジモータ44を駆動すると共にインクヘッド22を駆動し、次の走査ラインの印刷を行う。以下、印刷の終了まで同様の動作を繰り返す。印刷制御部84は、印刷データA~印刷データZの順にそれぞれの画像を記録媒体5に印刷するようにインクヘッド22等を制御する。
第3コマンド実行部85は、実行コマンドCM3の切断開始コマンドCM32(図4参照)を実行する。
カッティング制御部86は、切断開始コマンドCM32以降の制御コマンドCM2のカットデータCD1に基づいて、カッティングヘッド30を制御する。カッティング制御部86は、第3コマンド実行部85によって切断開始コマンドCM32が実行されたときに、カットデータCD1に基づいて切断処理の制御を行う。カッティング制御部86は、制御コマンドCM2のカットデータCD1に基づいて、キャリッジモータ44(図3参照)を駆動すると共にフィードモータ58(図3参照)を駆動することにより、記録媒体5に対しカッティングヘッド30を2次元的に相対移動させる。ソレノイド32をONすると、カッター33(図2A参照)が下がり、カッター33を記録媒体5に押し当てることができる。カッター33を記録媒体5に押し当てたままカッティングヘッド30を記録媒体5に対し相対移動させることにより、記録媒体5を切断することができる。カッティング制御部86は、媒体移動機構55によって記録媒体5を副走査方向Xの下流側から上流側(即ち図5の方向X2)に引き戻した後に切断処理の制御を行う。この場合、カッティング制御部86は、カットデータA~カットデータZの順にそれぞれの画像に設定されたカット線に沿って記録媒体5を切断するようにカッティングヘッド30等を制御する。なお、カッティング制御部86は、媒体移動機構55によって記録媒体5を副走査方向Xの下流側から上流側に引き戻しながら切断処理の制御を行ってもよい。この場合、カッティング制御部86は、カットデータZ~カットデータAの順にそれぞれの画像に設定されたカット線に沿って記録媒体5を切断するようにカッティングヘッド30等を制御する。
ところで、プリンタ10においてジョブデータJDに基づいて印刷処理および切断処理を行うとき、印刷処理が途中で中止されること(即ち印刷処理が中断されること)があり得る。例えば、ユーザが意図的に印刷処理を途中で中止したり、プリンタ10にエラーが発生して強制的に印刷処理が途中で中止したり、印刷処理の途中で記録媒体5が無くなる(記録媒体5を使い切る)ことによって印刷処理が途中で中止したりすることがある。従来のプリンタでは、制御コマンドCM2の印刷データPD1に基づいて印刷処理が行われている途中で印刷処理が中止されると、それ以降のコマンドはキャンセルされていた。そこで、本実施形態のプリンタ10では、制御コマンドCM2の印刷データPD1に基づいて印刷処理が行われている途中で中止されても、印刷された画像に関しては制御コマンドCM2のカットデータCD1に基づいて切断処理が行われるようにした。
特定部87は、印刷処理が途中で中止されたときに、中止されたときの印刷データである未完了印刷データと、未完了印刷データより先に処理された印刷データである完了印刷データと、を特定する。例えば、印刷データCに基づいて印刷処理が行われている途中で印刷処理が中止されると、特定部87は、印刷データCを未完了印刷データであると特定し、かつ、印刷データAおよび印刷データBを完了印刷データであると特定する。
カッティング制御部86は、印刷処理が途中で中止されたときには、特定部87によって特定された完了印刷データに関連付けられたカットデータに基づいて切断処理の制御を行う。例えば、特定部87によって印刷データAおよび印刷データBが完了印刷データであると特定された場合には、カッティング制御部86は、印刷データAに関連付けられたカットデータAおよび印刷データBに関連付けられたカットデータBに基づいて切断処理の制御を行う。図5に示すように、印刷データAに基づいて印刷された画像を第1画像70とし、印刷データBに基づいて印刷された画像を第2画像71とし、印刷データCに基づいて印刷される画像を第3画像72としたとき、記録媒体5は、カットデータAに基づいて第1画像70に設定された第1カット線70CおよびカットデータBに基づいて第2画像71に設定された第2カット線71Cに沿って切断される。図5に示す例では、第3画像72は途中まで印刷されている。なお、カッティング制御部86は、印刷処理が途中で中止されたときには、完了印刷データに関連付けられたカットデータに加えて、未完了印刷データに関連付けられたカットデータに基づいて切断処理の制御を行ってもよい。例えば、特定部87によって印刷データCが未完了印刷データであると特定された場合には、カッティング制御部86は、印刷データAに関連付けられたカットデータAおよび印刷データBに関連付けられたカットデータBおよび印刷データCに関連付けられたカットデータCに基づいて切断処理の制御を行ってもよい。図5に示す例では、記録媒体5は、カットデータCに基づいて第3画像72に設定された第3カット線72Cに沿って切断されてもよい。
次に、プリンタ10を用いて記録媒体5に複数の画像を印刷した後に記録媒体5を画像ごとにカット線に沿って切断する手順について説明する。図6は、印刷処理および切断処理の手順を示したフローチャートである。ここでは、図4に示すジョブデータに基づいて印刷処理および切断処理を行う場合を一例として説明する。
まず、ステップS10において、印刷制御部84は、印刷データPD1に基づいて印刷処理の制御を行う。即ち、印刷制御部84は、印刷データAから印刷データZの順にそれぞれの画像を記録媒体5に印刷するようにインクヘッド22等の制御を開始する。
次に、ステップS20において、制御装置80は印刷処理が途中で中止されたか否かを判定する。印刷処理が途中で中止されたと判定された場合には、ステップS30に進む。一方、印刷処理が途中で中止されていないと判定された場合には、ステップS50に進む。
ステップS30において、特定部87は、印刷処理が途中で中止されたときに、中止されたときの印刷データである未完了印刷データと、未完了印刷データより先に処理された印刷データである完了印刷データと、を特定する。
ステップS40において、カッティング制御部86は、印刷処理が途中で中止されたときには、特定部87によって特定された完了印刷データに関連付けられたカットデータに基づいて切断処理の制御を行う。これにより、既に印刷が完了した画像に関しては該画像に設定されたカット線に沿って記録媒体が切断される。なお、ステップS40では、特定部87によって特定された未完了印刷データに関連付けられたカットデータに基づいて追加的な切断処理の制御を行ってもよい。
ステップS50において、制御装置80は印刷データPD1に対応する全ての画像の印刷が完了したか否かを判定する。全ての画像の印刷が完了したと判定された場合には、ステップS60に進む。一方、全ての画像の印刷が完了していないと判定された場合には、ステップS20に戻る。
ステップS60において、カッティング制御部86は、カットデータCD1に基づいて切断処理の制御を行う。これにより、全ての画像に関して該画像に設定されたカット線に沿って記録媒体が切断される。
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、制御装置80の特定部87は、印刷処理が途中で中止されたときに、未完了印刷データと完了印刷データとを特定する。このように、印刷処理が途中で中止されたときには、どの画像まで印刷が完了したかを特定部87によって特定することができる。そして、制御装置80のカッティング制御部86は、印刷処理が途中で中止されたときには、完了印刷データに関連付けられたカットデータに基づいて切断処理の制御を行う。これにより、印刷される予定だった画像のうち、既に印刷が完了した画像に関しては該画像に設定されたカット線に沿って記録媒体5が切断される。このように、1つの記録媒体5に複数の画像が印刷される場合であって、印刷処理の途中で中止されるような場合であっても、印刷処理の中止前に印刷が完了した画像については該画像に設定されたカット線に沿って記録媒体5が切断され、その成果物を得ることができる。
本実施形態のプリンタ10では、カッティング制御部86は、印刷処理が途中で中止されたときには、完了印刷データに関連付けられたカットデータに加えて、未完了印刷データに関連付けられたカットデータに基づいて切断処理の制御を行ってもよい。これにより、印刷途中の画像についても該画像に設定されたカット線に沿って記録媒体5を切断することができる。例えば、1つの画像が複数の独立したオブジェクトの集合体のときに、部分的には成果物を得ることができる。
本実施形態のプリンタ10では、カッティング制御部86は、媒体移動機構55によって記録媒体5を副走査方向Xの下流側から上流側に引き戻した後に切断処理の制御を行ってもよい。これにより、ジョブデータに含まれるカットデータ順に記録媒体5を切断することができる。
本実施形態のプリンタ10では、カッティング制御部86は、媒体移動機構55によって記録媒体5を副走査方向Xの下流側から上流側に引き戻しながら切断処理の制御を行ってもよい。これにより、より短時間で切断処理を行うことができる。
本実施形態のプリンタ10では、印刷処理の途中において検出装置75によって記録媒体5の副走査方向Xの上流側の端部が検出されたとき、印刷処理が中止されてもよい。このように、印刷処理の途中に記録媒体5が無くなる(記録媒体を使い切る)事態になっても、それまでに印刷が完了している画像に関してはその成果物を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
ここで開示される技術は様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したロール状の記録媒体5を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えばフラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。