JP2022039437A - 粉末高速度鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】靱性が大幅に損なわれることなく耐摩耗性が高められた粉末高速度鋼の提供。【解決手段】粉末高速度鋼の材質は、C:1.2質量%以上2.4質量%以下Si:0.1質量%以上1.0質量%以下Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下V:2.5質量%以上7.0質量%以下W:5.0質量%以上16.0質量%以下Co:4.0質量%以上11.0質量%以下及び不可避的不純物を含有するFe基合金である。【選択図】図1
Description
本発明は、切削工具等に適した粉末高速度鋼に関する。
高速での切削に使用される工具の材質として、高速度鋼が知られている。高速度鋼は、「高速度工具鋼」とも称されている。高速度鋼は、C、Cr、W、Mo、V等を含んでいる。溶製及び熱処理を経て得られる高速度鋼は、一次金属炭化物及び二次金属炭化物を含んでいる。一次炭化物のサイズは、数μmから十数μm程度である。二次炭化物のサイズは、いわゆるナノメーターオーダーである。これらの炭化物を含む組織を有するので、高速度鋼は耐熱性及び耐摩耗性に優れている。
高速度鋼の製造方法として、粉末冶金法が知られている。粉末冶金法によって得られた高速度鋼は、「粉末高速度鋼」と称されている。粉末高速度鋼は、「粉末ハイス」及び「焼結高速度鋼」とも称されている。焼結を経て得られるので、粉末高速度鋼には、W、Mo、V等の元素の炭化物の偏析が少ない。従って粉末高速度鋼は、靱性に優れる。粉末高速度鋼の一例が、特開2015-160957公報に開示されている。粉末高速度鋼の他の例が、特開2019-116688公報に開示されている。
粉末高速度鋼の耐摩耗性は、未だ十分ではない。従って、高度の耐摩耗性が要求される用途では、溶製で得られた高速度鋼が主として用いられている。炭化物の粗大化によって、粉末高速度鋼の耐摩耗性は改善しうる。しかし、粗大な炭化物は、粉末高速度鋼の靱性を損なうおそれがある。
本発明の目的は、靱性が大幅に損なわれることなく耐摩耗性が高められた粉末高速度鋼の提供にある。
本発明に係る粉末高速度鋼の材質は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である。
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である。
好ましくは、粉末高速度鋼は、マトリックスとこのマトリックスに分散する一次金属炭化物及び二次金属炭化物とを含む金属組織を有している。これらの一次金属炭化物の数の密度Ndは、1000個/10000μm2以上である。これらの一次金属炭化物の最大長軸長さMaは、5μm以上である。これらの一次金属炭化物の面積率Apは、14.0%以上である。
好ましくは、この粉末高速度鋼のロックウェル硬さH1は、67以上である。
好ましくは、この粉末高速度鋼の、下記数式で算出される軟化抵抗因子Srは、0.10以上である。
Sr = 1 / (H1 - H2)
この数式において、H1は粉末高速度鋼のロックウェル硬さを表し、H2は粉末高速度鋼が600℃の温度下で100時間保持されて空冷されたときのロックウェル硬さを表す。
Sr = 1 / (H1 - H2)
この数式において、H1は粉末高速度鋼のロックウェル硬さを表し、H2は粉末高速度鋼が600℃の温度下で100時間保持されて空冷されたときのロックウェル硬さを表す。
本発明に係る粉末高速度鋼では、熱処理(焼入れ及び焼戻し)によって析出した二次金属炭化物の、熱による粗大化が抑制される。従って、この粉末高速度鋼の軟化抵抗は、大きい。この粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れる。この粉末高速度鋼は、靱性にも優れる。
本発明に係る粉末高速度鋼は、粉末の焼結によって得られる。換言すれば、この粉末高速度鋼は、焼結体である。この粉末高速度鋼は、熱処理に供されうる。典型的な熱処理は、焼入れ及び焼戻しである。粉末は、典型的にはアトマイズによって得られる。
焼入れ-焼戻し後の粉末高速度鋼の金属組織は、マトリックス(マルテンサイト相)、多数の一次金属炭化物及び多数の二次金属炭化物を含んでいる。これらの一次金属炭化物は、マトリックス中に分散している。これらの二次金属炭化物も、マトリックス中に分散している。それぞれの一次金属炭化物は、アトマイズ時又は焼結時に析出している。それぞれの二次金属炭化物は、焼戻しによって析出している。一次金属炭化物は概して大きく、二次金属炭化物は概して微細である。
[組成]
本発明に係る粉末高速度鋼の材質は、Fe基合金である。このFe基合金は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有する。好ましくは、このFe基合金における、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、W及びCoを除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。以下、この粉末高速度鋼における各元素の役割が、詳説される。
本発明に係る粉末高速度鋼の材質は、Fe基合金である。このFe基合金は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有する。好ましくは、このFe基合金における、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、W及びCoを除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。以下、この粉末高速度鋼における各元素の役割が、詳説される。
[炭素(C)]
Cは、一次金属炭化物を形成する。Cは、焼入れによってマトリックスに固溶し、組織を強化する。さらにCは、焼戻しのときに二次金属炭化物を析出させる。従ってCは、高速度鋼の耐摩耗性及び強度に寄与しうる。これらの観点から、Cの含有率は1.2質量%以上が好ましく、1.3質量%以上がより好ましく、1.6質量%以上が特に好ましい。過剰のCは過大な炭化物の析出を招来し、靱性を阻害する。過剰のCを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Cの含有率は2.4質量%以下が好ましく、2.2質量%以下がより好ましく、1.8質量%以下が特に好ましい。
Cは、一次金属炭化物を形成する。Cは、焼入れによってマトリックスに固溶し、組織を強化する。さらにCは、焼戻しのときに二次金属炭化物を析出させる。従ってCは、高速度鋼の耐摩耗性及び強度に寄与しうる。これらの観点から、Cの含有率は1.2質量%以上が好ましく、1.3質量%以上がより好ましく、1.6質量%以上が特に好ましい。過剰のCは過大な炭化物の析出を招来し、靱性を阻害する。過剰のCを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Cの含有率は2.4質量%以下が好ましく、2.2質量%以下がより好ましく、1.8質量%以下が特に好ましい。
[ケイ素(Si)]
Siは、製鋼工程での脱酸に寄与する。Siは、焼入れ性に寄与する。Siは焼入れ時にマトリックスに置換固溶し、固溶強化に寄与する。固溶したSiは、焼戻しのときの二次金属炭化物の析出を促進する。これらの観点から、Siの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましい。過剰のSiは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のSiを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Siの含有率は1.0質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が特に好ましい。
Siは、製鋼工程での脱酸に寄与する。Siは、焼入れ性に寄与する。Siは焼入れ時にマトリックスに置換固溶し、固溶強化に寄与する。固溶したSiは、焼戻しのときの二次金属炭化物の析出を促進する。これらの観点から、Siの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましい。過剰のSiは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のSiを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Siの含有率は1.0質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が特に好ましい。
[マンガン(Mn)]
Mnは、製鋼工程での脱酸に寄与する。Mnは、焼入れ性に寄与する。Mnは焼入れ時にマトリックスに置換固溶し、固溶強化に寄与する。固溶したMnは、焼戻しのときの二次金属炭化物の析出を促進する。Mnの一部は、一次金属炭化物に固溶する。これらの観点から、Mnの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましい。過剰のMnは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のMnを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Mnの含有率は1.0質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が特に好ましい。
Mnは、製鋼工程での脱酸に寄与する。Mnは、焼入れ性に寄与する。Mnは焼入れ時にマトリックスに置換固溶し、固溶強化に寄与する。固溶したMnは、焼戻しのときの二次金属炭化物の析出を促進する。Mnの一部は、一次金属炭化物に固溶する。これらの観点から、Mnの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましい。過剰のMnは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のMnを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Mnの含有率は1.0質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が特に好ましい。
[クロム(Cr)]
適量のCrの含有は、本発明に係る粉末高速度鋼において極めて重要である。Crは、焼入れ性に寄与する。Crは、一次金属炭化物を形成する必須の元素である。Crは、焼戻しのときの二次金属炭化物の析出に、必須の元素である。Crは、工具の硬度に寄与する。これらの観点から、Crの含有率は0.7質量%以上が好ましい。Crは、二次金属炭化物(MC及びM2C)に固溶しうる。従って、金属元素が拡散可能な温度(500℃以上)において、マトリックスから二次金属炭化物にCrが供給され、この二次金属炭化物が粗大化する。さらに、一部のCrは、新たに二次金属炭化物として析出する。W及びMoと比較してCrは、マトリックス中での拡散速度が速く、かつマトリックスへの固溶限が大きい。従ってCrは、炭化物を粗大化させる駆動力が大きい。よって、過剰のCrは、熱の影響を受けたときに二次金属炭化物を粗大化させ、粉末高速度鋼の軟化抵抗を悪化させる。軟化抵抗の観点から、Crの含有率は3.0質量%以下が好ましく、2.7質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が特に好ましい。
適量のCrの含有は、本発明に係る粉末高速度鋼において極めて重要である。Crは、焼入れ性に寄与する。Crは、一次金属炭化物を形成する必須の元素である。Crは、焼戻しのときの二次金属炭化物の析出に、必須の元素である。Crは、工具の硬度に寄与する。これらの観点から、Crの含有率は0.7質量%以上が好ましい。Crは、二次金属炭化物(MC及びM2C)に固溶しうる。従って、金属元素が拡散可能な温度(500℃以上)において、マトリックスから二次金属炭化物にCrが供給され、この二次金属炭化物が粗大化する。さらに、一部のCrは、新たに二次金属炭化物として析出する。W及びMoと比較してCrは、マトリックス中での拡散速度が速く、かつマトリックスへの固溶限が大きい。従ってCrは、炭化物を粗大化させる駆動力が大きい。よって、過剰のCrは、熱の影響を受けたときに二次金属炭化物を粗大化させ、粉末高速度鋼の軟化抵抗を悪化させる。軟化抵抗の観点から、Crの含有率は3.0質量%以下が好ましく、2.7質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が特に好ましい。
[モリブデン(Mo)]
Moは、焼入れ性に寄与する。Moは、一次金属炭化物(MC及びM6C)を形成する。さらにMoは、焼戻しのときに二次金属炭化物(MC及びM2C)を形成する。従ってMnは、高速度鋼の硬度、耐摩耗性及び強度に寄与しうる。これらの観点から、Moの含有率は1.5質量%以上が好ましい。過剰のMoは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のMoを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Moの含有率は8.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が特に好ましい。
Moは、焼入れ性に寄与する。Moは、一次金属炭化物(MC及びM6C)を形成する。さらにMoは、焼戻しのときに二次金属炭化物(MC及びM2C)を形成する。従ってMnは、高速度鋼の硬度、耐摩耗性及び強度に寄与しうる。これらの観点から、Moの含有率は1.5質量%以上が好ましい。過剰のMoは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のMoを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Moの含有率は8.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が特に好ましい。
[バナジウム(V)]
Vは、焼入れ性に寄与する。Vは、一次金属炭化物(MC及びM6C)を形成する。さらにVは、焼戻しのときに二次金属炭化物(MC及びM2C)を形成する。従ってVは、高速度鋼の硬度及び耐摩耗性に寄与しうる。これらの観点から、Vの含有率は2.5質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上が特に好ましい。過剰のVは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のVを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Vの含有率は7.0質量%以下が好ましく、6.5質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下が特に好ましい。
Vは、焼入れ性に寄与する。Vは、一次金属炭化物(MC及びM6C)を形成する。さらにVは、焼戻しのときに二次金属炭化物(MC及びM2C)を形成する。従ってVは、高速度鋼の硬度及び耐摩耗性に寄与しうる。これらの観点から、Vの含有率は2.5質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上が特に好ましい。過剰のVは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のVを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Vの含有率は7.0質量%以下が好ましく、6.5質量%以下がより好ましく、6.0質量%以下が特に好ましい。
[タングステン(W)]
Wは、焼入れ性に寄与する。Wは、一次金属炭化物(MC及びM6C)を形成する。さらにWは、焼戻しのときに二次金属炭化物(MC及びM2C)を形成する。従ってWは、高速度鋼の硬度及び耐摩耗性に寄与しうる。これらの観点から、Wの含有率は5.0質量%以上が好ましく、9.0質量%以上がより好ましく、13.0質量%以上が特に好ましい。過剰のWは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のWを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Wの含有率は16.0質量%以下が好ましく、15.5質量%以下がより好ましく、15.0質量%以下が特に好ましい。
Wは、焼入れ性に寄与する。Wは、一次金属炭化物(MC及びM6C)を形成する。さらにWは、焼戻しのときに二次金属炭化物(MC及びM2C)を形成する。従ってWは、高速度鋼の硬度及び耐摩耗性に寄与しうる。これらの観点から、Wの含有率は5.0質量%以上が好ましく、9.0質量%以上がより好ましく、13.0質量%以上が特に好ましい。過剰のWは、高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のWを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Wの含有率は16.0質量%以下が好ましく、15.5質量%以下がより好ましく、15.0質量%以下が特に好ましい。
[コバルト(Co)]
適量のCoの含有は、本発明に係る粉末高速度鋼において極めて重要である。Coは焼入れ時にマトリックスに置換固溶する。固溶したCoは、焼戻しのとき、二次金属炭化物(MC及びM2C)の析出を促進し、この二次金属炭化物の微細化に寄与する。Coは、粉末高速度鋼の軟化抵抗を高める。従ってCoは、粉末高速度鋼の硬度と耐摩耗性とに寄与する。前述の通り、本発明に係る粉末高速度鋼では、Crの含有率は3.0質量%以下である。Crの含有率がこの範囲内である粉末高速度鋼が、さらに所定量のCoを含有することにより、マトリックスにおけるCrの拡散が顕著に抑制され、かつCoによる高い軟化抵抗が達成される。この粉末高速度鋼では、耐摩耗性と靱性とが両立されうる。これらの観点から、Coの含有率は4.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、6.0質量%以上が特に好ましい。過剰のCoを含む粉末高速度鋼では、Coの一部がFeとの規則相を形成する。この規則相は、粉末高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のCoを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Coの含有率は11.0質量%以下が好ましく、9.5質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下が特に好ましい。
適量のCoの含有は、本発明に係る粉末高速度鋼において極めて重要である。Coは焼入れ時にマトリックスに置換固溶する。固溶したCoは、焼戻しのとき、二次金属炭化物(MC及びM2C)の析出を促進し、この二次金属炭化物の微細化に寄与する。Coは、粉末高速度鋼の軟化抵抗を高める。従ってCoは、粉末高速度鋼の硬度と耐摩耗性とに寄与する。前述の通り、本発明に係る粉末高速度鋼では、Crの含有率は3.0質量%以下である。Crの含有率がこの範囲内である粉末高速度鋼が、さらに所定量のCoを含有することにより、マトリックスにおけるCrの拡散が顕著に抑制され、かつCoによる高い軟化抵抗が達成される。この粉末高速度鋼では、耐摩耗性と靱性とが両立されうる。これらの観点から、Coの含有率は4.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、6.0質量%以上が特に好ましい。過剰のCoを含む粉末高速度鋼では、Coの一部がFeとの規則相を形成する。この規則相は、粉末高速度鋼の靱性を阻害する。過剰のCoを含有する工具では、チッピングが生じやすい。靱性の観点から、Coの含有率は11.0質量%以下が好ましく、9.5質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下が特に好ましい。
[鉄(Fe)]
前述の通り、粉末高速度鋼の材質はFe基合金である。この粉末高速度鋼は、靱性に優れる。靱性の観点から、Feの含有率は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
前述の通り、粉末高速度鋼の材質はFe基合金である。この粉末高速度鋼は、靱性に優れる。靱性の観点から、Feの含有率は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
[不純物]
粉末高速度鋼は、不可避的不純物を含む。代表的な不純物として、Nが挙げられる。Nは、炭化物の粗大化を招く。粗大な炭化物は、粉末高速度鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Nの含有量(質量基準)は300ppm以下が好ましく、200ppm以下が特に好ましい。
粉末高速度鋼は、不可避的不純物を含む。代表的な不純物として、Nが挙げられる。Nは、炭化物の粗大化を招く。粗大な炭化物は、粉末高速度鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Nの含有量(質量基準)は300ppm以下が好ましく、200ppm以下が特に好ましい。
他の代表的な不純物として、Oが挙げられる。Oは、介在物(酸化物)の生成の原因となる。介在物は、破壊の基点となり得る。破壊の抑制の観点から、Oの含有量(質量基準)は300ppm以下が好ましく、200ppm以下が特に好ましい。
Fe基合金が、金属の不純物を含んでもよい。
[金属組織]
前述の通り、焼入れ-焼戻し後の粉末高速度鋼の金属組織は、マトリックスと、このマトリックスに分散する多数の一次金属炭化物及び多数の二次金属炭化物とを含んでいる。マトリックスのベースは、Feである。このマトリックスでは、Feに他の元素が固溶している。一次金属炭化物は、Cと他の元素との化合物である。二次金属炭化物は、Cと他の元素との化合物である。合金の組成に適した焼入れ温度及び焼戻し温度が、選定されうる。
前述の通り、焼入れ-焼戻し後の粉末高速度鋼の金属組織は、マトリックスと、このマトリックスに分散する多数の一次金属炭化物及び多数の二次金属炭化物とを含んでいる。マトリックスのベースは、Feである。このマトリックスでは、Feに他の元素が固溶している。一次金属炭化物は、Cと他の元素との化合物である。二次金属炭化物は、Cと他の元素との化合物である。合金の組成に適した焼入れ温度及び焼戻し温度が、選定されうる。
[密度Nd]
焼入れ-焼戻し後の金属組織において、一次金属炭化物の数の密度Ndは、1000個/10000μm2以上が好ましい。一次金属炭化物は、マトリックスに比べて、耐凝着摩耗性に優れている。一次金属炭化物の密度Ndが大きい粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れている。本発明に係る粉末高速度鋼は、この密度Ndが大きく、かつ粗大な二次金属炭化物の析出が抑制されているので、耐摩耗性と靱性との両方に優れる。この観点から、この密度Ndは1050個/10000μm2以上がより好ましく、1100個/10000μm2以上が特に好ましい。この密度Ndは、2000個/10000μm2以下が好ましい。
焼入れ-焼戻し後の金属組織において、一次金属炭化物の数の密度Ndは、1000個/10000μm2以上が好ましい。一次金属炭化物は、マトリックスに比べて、耐凝着摩耗性に優れている。一次金属炭化物の密度Ndが大きい粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れている。本発明に係る粉末高速度鋼は、この密度Ndが大きく、かつ粗大な二次金属炭化物の析出が抑制されているので、耐摩耗性と靱性との両方に優れる。この観点から、この密度Ndは1050個/10000μm2以上がより好ましく、1100個/10000μm2以上が特に好ましい。この密度Ndは、2000個/10000μm2以下が好ましい。
密度Ndの測定では、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、粉末高速度鋼の研磨面の反射電子像が撮影される。画像解析ソフト「Image-J」によって、この反射電子像の一次金属炭化物(MC及びM6C)に2値化処理が施される。倍率が2000倍である画面において、一次金属炭化物の数がカウントされる。この測定に、分水嶺変換は使用されない。複数の一次金属炭化物が接触している場合、これらがまとまって1つの一次金属炭化物であると見なされる。
[最大長軸長さMa]
焼入れ-焼戻し後の金属組織において、一次金属炭化物の最大長軸長さMaは、5μm以上が好ましい。前述の通り、一次金属炭化物は、マトリックスに比べて、耐凝着摩耗性に優れている。一次金属炭化物の最大長軸長さMaが大きい粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れている。本発明に係る粉末高速度鋼は、この最大長軸長さMaが大きく、かつ粗大な二次金属炭化物の析出が抑制されているので、耐摩耗性と靱性との両方に優れる。この観点から、この最大長軸長さMaは5.2μm以上がより好ましく、5.5μm以上が特に好ましい。この最大長軸長さMaは、20μm以下が好ましい。
焼入れ-焼戻し後の金属組織において、一次金属炭化物の最大長軸長さMaは、5μm以上が好ましい。前述の通り、一次金属炭化物は、マトリックスに比べて、耐凝着摩耗性に優れている。一次金属炭化物の最大長軸長さMaが大きい粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れている。本発明に係る粉末高速度鋼は、この最大長軸長さMaが大きく、かつ粗大な二次金属炭化物の析出が抑制されているので、耐摩耗性と靱性との両方に優れる。この観点から、この最大長軸長さMaは5.2μm以上がより好ましく、5.5μm以上が特に好ましい。この最大長軸長さMaは、20μm以下が好ましい。
最大長軸長さMaの測定では、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、粉末高速度鋼の研磨面の反射電子像が撮影される。画像解析ソフト「Image-J」によって、この反射電子像の一次金属炭化物(MC及びM6C)に2値化処理が施される。倍率が2000倍である画面において、それぞれの一次金属炭化物に関し、この一次金属炭化物を内包する最小楕円が想定される。一次金属炭化物の数に相当する数の楕円が、想定される。これらの楕円の中で長軸が最も大きい楕円の長軸長さが、最大長軸長さMaである。この測定に、分水嶺変換は使用されない。
[面積率Ap]
焼入れ-焼戻し後の金属組織において、一次金属炭化物の面積率Apは、14.0%以上が好ましい。前述の通り、一次金属炭化物は、マトリックスに比べて、耐凝着摩耗性に優れている。一次金属炭化物の面積率Apが大きい粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れている。本発明に係る粉末高速度鋼は、この面積率Apが大きく、かつ粗大な二次金属炭化物の析出が抑制されているので、耐摩耗性と靱性との両方に優れる。この観点から、この面積率Apは14.2%以上がより好ましく、14.5%以上が特に好ましい。この面積率Apは、25%以下が好ましい。
焼入れ-焼戻し後の金属組織において、一次金属炭化物の面積率Apは、14.0%以上が好ましい。前述の通り、一次金属炭化物は、マトリックスに比べて、耐凝着摩耗性に優れている。一次金属炭化物の面積率Apが大きい粉末高速度鋼は、耐摩耗性に優れている。本発明に係る粉末高速度鋼は、この面積率Apが大きく、かつ粗大な二次金属炭化物の析出が抑制されているので、耐摩耗性と靱性との両方に優れる。この観点から、この面積率Apは14.2%以上がより好ましく、14.5%以上が特に好ましい。この面積率Apは、25%以下が好ましい。
面積率Apの測定では、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、粉末高速度鋼の研磨面の反射電子像が撮影される。画像解析ソフト「Image-J」によって、この反射電子像の一次金属炭化物(MC及びM6C)に2値化処理が施される。倍率が2000倍である画面において、一次金属炭化物の合計面積が測定され、面積率Apが算出される。この測定に、分水嶺変換は使用されない。
[軟化抵抗因子Sr]
図1は、軟化抵抗因子Srと比摩耗量との関係を示すグラフである。このグラフに示される通り、焼入れ-焼戻し後の粉末高速度鋼において、比摩耗量は軟化抵抗因子Srと相関する。軟化抵抗因子Srは0.10以上が好ましい。軟化抵抗因子Srが0.10以上である粉末高速度鋼からなる工具は、長期間の使用によっても摩耗しにくい。この観点から、軟化抵抗因子Srは0.11以上がより好ましく、0.12以上が特に好ましい。軟化抵抗因子Srは、0.20以下が好ましい。
図1は、軟化抵抗因子Srと比摩耗量との関係を示すグラフである。このグラフに示される通り、焼入れ-焼戻し後の粉末高速度鋼において、比摩耗量は軟化抵抗因子Srと相関する。軟化抵抗因子Srは0.10以上が好ましい。軟化抵抗因子Srが0.10以上である粉末高速度鋼からなる工具は、長期間の使用によっても摩耗しにくい。この観点から、軟化抵抗因子Srは0.11以上がより好ましく、0.12以上が特に好ましい。軟化抵抗因子Srは、0.20以下が好ましい。
軟化抵抗因子Srは、下記の数式によって算出される。
Sr = 1 / (H1 - H2)
この数式において、H1は粉末高速度鋼のロックウェル硬さを表し、H2は粉末高速度鋼が600℃の温度下で100時間保持されて空冷されたときのロックウェル硬さを表す。
Sr = 1 / (H1 - H2)
この数式において、H1は粉末高速度鋼のロックウェル硬さを表し、H2は粉末高速度鋼が600℃の温度下で100時間保持されて空冷されたときのロックウェル硬さを表す。
所定条件での焼入れ及び焼戻しがなされた後の粉末高速度鋼のロックウェル硬さH1は、67以上が好ましく、68以上が特に好ましい。硬さH1は、75以下が好ましい。
[粉末冶金法]
本発明に係る高速度鋼は、粉末冶金法によって得られうる。粉末冶金法ではまず、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法、粉砕法等により、金属粉末が製作される。この粉末は、多数の粒子からなる。この粒子の材質は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である。好ましくは、このFe基合金における、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、W及びCoを除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。
本発明に係る高速度鋼は、粉末冶金法によって得られうる。粉末冶金法ではまず、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法、粉砕法等により、金属粉末が製作される。この粉末は、多数の粒子からなる。この粒子の材質は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である。好ましくは、このFe基合金における、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、W及びCoを除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。
この金属粉末が高温雰囲気で加圧されて固化し、成形体が得られる。好ましい加圧方法として、熱間等方圧加圧法が挙げられる。熱間等方圧加圧法では、摂氏数百度から2000度の高温下で、数十MPaから数百MPaの等方的な圧力で粉末が加圧される。好ましくは、加圧媒体として、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが用いられる。不活性ガスの使用により、金属粉末の酸化が抑制される。
この成形体に、熱間加工が施される。この成形体に、熱処理(焼鈍)が施される。さらにこの成形体に、所定条件の焼入れ及び焼戻しが施される。焼入れ及び焼戻しにより、好ましい金属組織が形成される。換言すれば、この成形体は、焼入れ及び焼戻しで得られた金属組織を有している。
[用途]
本発明は、工具にも向けられる。本発明に係る工具の材質は、粉末高速度鋼である。この粉末高速度鋼は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である。好ましくは、このFe基合金における、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、W及びCoを除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。この粉末高速度鋼は、焼入れ及び焼戻しで得られた金属組織を有している。この金属組織は、マトリックスとこのマトリックスに分散する一次金属炭化物とを含んでいる。一次金属炭化物の数の密度Ndは、1000個/10000μm2以上である。一次金属炭化物の最大長軸長さMaは、5μm以上である。一次金属炭化物の面積率Apは、14.0%以上である。
本発明は、工具にも向けられる。本発明に係る工具の材質は、粉末高速度鋼である。この粉末高速度鋼は、
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である。好ましくは、このFe基合金における、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、W及びCoを除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。この粉末高速度鋼は、焼入れ及び焼戻しで得られた金属組織を有している。この金属組織は、マトリックスとこのマトリックスに分散する一次金属炭化物とを含んでいる。一次金属炭化物の数の密度Ndは、1000個/10000μm2以上である。一次金属炭化物の最大長軸長さMaは、5μm以上である。一次金属炭化物の面積率Apは、14.0%以上である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
溶湯にガスアトマイズを施して、粉末を得た。この粉末を目開きが500μmである篩で分級し、粗大な粒子を除去した。この粉末を、直径235mmであり長さが100mmである円筒状のスチール缶に充填した。このスチール缶に真空脱気を施し、さらにこのスチール缶を密閉した。アルゴンガス雰囲気にて、圧力が147MPaであり温度が1220℃である条件で、熱間等方圧加圧を行って、成形体を得た。この成形体に、1100℃の温度下で鍛造を施した。この鍛造の鍛錬比は、4であった。この成形体に、870℃の温度化で3時間の焼鈍を施した。この成形体の組成が、下記の表1に示されている。この成形体は、表1に示された元素以外に、不可避的不純物を含んでいる。
溶湯にガスアトマイズを施して、粉末を得た。この粉末を目開きが500μmである篩で分級し、粗大な粒子を除去した。この粉末を、直径235mmであり長さが100mmである円筒状のスチール缶に充填した。このスチール缶に真空脱気を施し、さらにこのスチール缶を密閉した。アルゴンガス雰囲気にて、圧力が147MPaであり温度が1220℃である条件で、熱間等方圧加圧を行って、成形体を得た。この成形体に、1100℃の温度下で鍛造を施した。この鍛造の鍛錬比は、4であった。この成形体に、870℃の温度化で3時間の焼鈍を施した。この成形体の組成が、下記の表1に示されている。この成形体は、表1に示された元素以外に、不可避的不純物を含んでいる。
[実施例2-15及び比較例16-31]
下記の表1及び2に示される通りの組成とした他は実施例1と同様にして、実施例2-15及び比較例16-31の粉末高速度鋼を得た。
下記の表1及び2に示される通りの組成とした他は実施例1と同様にして、実施例2-15及び比較例16-31の粉末高速度鋼を得た。
[金属組織の観察]
成形体に1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件で焼戻しを施した。この成形体を用いて、前述の方法にて、一次金属炭化物の面積率Ap、最大長軸長さMa及び密度Ndを測定した。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
成形体に1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件で焼戻しを施した。この成形体を用いて、前述の方法にて、一次金属炭化物の面積率Ap、最大長軸長さMa及び密度Ndを測定した。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
[軟化抵抗因子Sr]
成形体から、15mm×15mm×15mmのブロック状試験片を得た。この試験片に1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件での焼戻しを施した。この試験片の軟化抵抗因子Srを、前述の方法にて測定した。5回の測定の平均値が、下記の表1及び2に示されている。
成形体から、15mm×15mm×15mmのブロック状試験片を得た。この試験片に1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件での焼戻しを施した。この試験片の軟化抵抗因子Srを、前述の方法にて測定した。5回の測定の平均値が、下記の表1及び2に示されている。
[比摩耗量]
成形体から、7mm×25mm×50mmの板状試験片を得た。この試験片に、1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件で焼戻しを施した。この試験片を大越式摩耗試験機にセットし、比摩耗量を測定した。測定条件は、以下の通りである。
相手材:SCM420
摩耗速度:3.62m/sec
摩耗距離:200m
最終荷重:6.3kg
潤滑:なし
温度:室温
試験で得られた摩耗痕幅を測定し、摩耗体積を計算した。この摩耗体積を摩耗距離と最終荷重の積で除すことで、比摩耗量を算出した。3回の測定結果の平均値が、下記の表1及び2に示されている。
成形体から、7mm×25mm×50mmの板状試験片を得た。この試験片に、1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件で焼戻しを施した。この試験片を大越式摩耗試験機にセットし、比摩耗量を測定した。測定条件は、以下の通りである。
相手材:SCM420
摩耗速度:3.62m/sec
摩耗距離:200m
最終荷重:6.3kg
潤滑:なし
温度:室温
試験で得られた摩耗痕幅を測定し、摩耗体積を計算した。この摩耗体積を摩耗距離と最終荷重の積で除すことで、比摩耗量を算出した。3回の測定結果の平均値が、下記の表1及び2に示されている。
[硬さH1]
成形体に1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件での焼戻しを施した。この成形体を用いて、ロックウェル硬さH1を測定した。5回の測定の平均値が、下記の表1及び2に示されている。
成形体に1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件での焼戻しを施した。この成形体を用いて、ロックウェル硬さH1を測定した。5回の測定の平均値が、下記の表1及び2に示されている。
[抗折強度]
成形体から、4mm×8mm×40mmの棒状試験片を得た。この試験片に、1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件で焼戻しを施した。この試験片に、下記の条件にて抗折試験を施した。
クロスヘッドスピード:2mm/min
スパン:20mm
温度:室温
2回の測定の平均値を算出した。この平均値が2000MPa以上である粉末高速度鋼を、「G」と格付けした。この平均値が2000MPa未満である粉末高速度鋼を、「N」と格付けした。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
成形体から、4mm×8mm×40mmの棒状試験片を得た。この試験片に、1240℃の温度条件で焼入れを施し、さらに560℃の温度条件で焼戻しを施した。この試験片に、下記の条件にて抗折試験を施した。
クロスヘッドスピード:2mm/min
スパン:20mm
温度:室温
2回の測定の平均値を算出した。この平均値が2000MPa以上である粉末高速度鋼を、「G」と格付けした。この平均値が2000MPa未満である粉末高速度鋼を、「N」と格付けした。この結果が、下記の表1及び2に示されている。
表1及び2に示されるように、各実施例の粉末高速度鋼は、全ての評価項目において優れている。以上の評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係る粉末高速度鋼は、機械工具、手工具、金型、射出成形機、口金、パンチ、刃物等の、種々の用途に用いられうる。
Claims (4)
- その材質が
C:1.2質量%以上2.4質量%以下
Si:0.1質量%以上1.0質量%以下
Mn:0.1質量%以上1.0質量%以下
Cr:0.7質量%以上3.0質量%以下
Mo:1.5質量%以上8.0質量%以下
V:2.5質量%以上7.0質量%以下
W:5.0質量%以上16.0質量%以下
Co:4.0質量%以上11.0質量%以下
及び
不可避的不純物
を含有するFe基合金である、粉末高速度鋼。 - マトリックスとこのマトリックスに分散する一次金属炭化物及び二次金属炭化物とを含む金属組織を有しており、
上記一次金属炭化物の数の密度Ndが1000個/10000μm2以上であり、
上記一次金属炭化物の最大長軸長さMaが5μm以上であり、
上記一次金属炭化物の面積率Apが14.0%以上である請求項1に記載の粉末高速度鋼。 - ロックウェル硬さH1が67以上である請求項2に記載の粉末高速度鋼。
- 下記数式で算出される軟化抵抗因子Srが0.10以上である請求項2又は3に記載の粉末高速度鋼。
Sr = 1 / (H1 - H2)
(この数式において、H1は上記粉末高速度鋼のロックウェル硬さを表し、H2は上記粉末高速度鋼が600℃の温度下で100時間保持されて空冷されたときのロックウェル硬さを表す。)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020144455A JP2022039437A (ja) | 2020-08-28 | 2020-08-28 | 粉末高速度鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020144455A JP2022039437A (ja) | 2020-08-28 | 2020-08-28 | 粉末高速度鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022039437A true JP2022039437A (ja) | 2022-03-10 |
Family
ID=80498619
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020144455A Pending JP2022039437A (ja) | 2020-08-28 | 2020-08-28 | 粉末高速度鋼 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022039437A (ja) |
-
2020
- 2020-08-28 JP JP2020144455A patent/JP2022039437A/ja active Pending
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