以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における鉄道車両用制振装置1は、図1に示すように、アクチュエータ2と、アクチュエータ2を制御するアクチュエータ制御装置3とを備えている。アクチュエータ制御装置3は、本実施の形態では、アクチュエータ2の駆動源としてのモータ4を駆動するモータドライバ5と、モータドライバ5およびアクチュエータ2の各バルブを駆動制御してアクチュエータ2を制御するコントローラ40とを備えている。
アクチュエータ2は、たとえば、図2に示すように、二本が対を成して鉄道車両100の車体101と台車102との間に並列に介装されている。本実施の形態のアクチュエータ制御装置3におけるコントローラ40は、たとえば、モータ4の駆動できる状態では第1制御としてスカイフック制御則を用いたアクティブ制御を行ってアクチュエータ2を制御し、モータ4の駆動ができない状態では第2制御としてカルノップ理論に基づくスカイフック制御則を用いたセミアクティブ制御を行ってアクチュエータ2を制御する。
このようにアクチュエータ制御装置3がアクチュエータ2を制御してアクチュエータ2に車体101に推力を与えることで、鉄道車両用制振装置1は、車体101の進行方向に対して水平横方向の振動を抑制するようになっている。
以下、鉄道車両用制振装置1の各部について詳細に説明する。まず、アクチュエータ制御装置3の制御対象であるアクチュエータ2について説明する。アクチュエータ2は、図1に示すように、シリンダ6と、シリンダ6内に摺動自在に挿入されるピストン7と、シリンダ6内に挿入されてピストン7に連結されるロッド8と、シリンダ6内にピストン7で区画したロッド側室9とピストン側室10と、タンク11と、ロッド側室9とピストン側室10とを連通する第1通路12の途中に設けた第1開閉弁17と、ピストン側室10とタンク11とを連通する第2通路13の途中に設けた第2開閉弁18と、ロッド側室9へ液体を供給するポンプ14と、ポンプ14を駆動するモータ4と、ロッド側室9とタンク11とを連通する排出通路21と、排出通路21に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22と、ピストン側室10からロッド側室9へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路19と、タンク11からピストン側室10へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路20とを備えており、片ロッド型液圧式のアクチュエータとして構成されている。また、ロッド側室9とピストン側室10には作動油等の液体が充填されるとともに、タンク11には、液体の他に気体が充填されている。なお、タンク11内は、特に、気体を圧縮して充填することによって加圧状態とする必要は無い。
そして、このように構成されたアクチュエータ2は、第1開閉弁17で第1通路12を連通状態とするとともに第2開閉弁18を閉じた状態でポンプ14を駆動すると伸長駆動できる。また、アクチュエータ2は、第2開閉弁18で第2通路13を連通状態とするとともに第1開閉弁17を閉じた状態でポンプ14を駆動すると収縮駆動できる。
アクチュエータ2の各部について詳細に説明する。シリンダ6は筒状であって、その図1中右端は蓋15によって閉塞され、図1中左端には環状のロッドガイド16が取り付けられている。また、ロッドガイド16内には、シリンダ6内に移動自在に挿入されるロッド8が摺動自在に挿入されている。このロッド8は、一端をシリンダ6外へ突出させており、シリンダ6内の他端を同じくシリンダ6内に摺動自在に挿入されているピストン7に連結してある。
なお、ロッド8の外周とロッドガイド16の内周との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ6内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ6内にピストン7によって区画されるロッド側室9とピストン側室10には、前述のように液体として作動油が充填されている。
また、このアクチュエータ2の場合、ロッド8の断面積をピストン7の断面積の二分の一にして、ピストン7のロッド側室9側の受圧面積がピストン側室10側の受圧面積の二分の一となるようにしてある。よって、伸長駆動時と収縮駆動時とでロッド側室9の圧力を同じくすると、伸縮の双方で発生される推力が等しくなり、アクチュエータ2の変位量に対する流量も伸縮両側で同じとなる。
詳しくは、アクチュエータ2を伸長駆動させる場合、ロッド側室9とピストン側室10を連通させるため、ロッド側室9内とピストン側室10内の圧力が等しくなる。よって、アクチュエータ2は、伸長駆動される場合、ピストン7におけるロッド側室9側とピストン側室10側の受圧面積差に前記圧力を乗じた推力を発生する。
反対に、アクチュエータ2を収縮駆動させる場合、ロッド側室9とピストン側室10との連通が断たれてピストン側室10をタンク11に連通させる。そのため、アクチュエータ2は、ロッド側室9内の圧力とピストン7におけるロッド側室9側の受圧面積を乗じた推力を発生する。以上より、アクチュエータ2の発生推力は伸縮の双方でピストン7の断面積の二分の一にロッド側室9の圧力を乗じた値となるのである。したがって、このアクチュエータ2の推力を制御する場合、伸長駆動、収縮駆動共に、ロッド側室9の圧力を制御すればよい。また、ピストン7のロッド側室9側の受圧面積をピストン側室10側の受圧面積の二分の一に設定しているので、伸縮両側で同じ推力を発生する場合に伸長側と収縮側でロッド側室9の圧力が同じとなるので制御が簡素となる。さらに、ピストン7の変位量に対する流量も同じとなるのでアクチュエータ2の伸縮両側の応答性が同じとなる利点もある。なお、ピストン7のロッド側室9側の受圧面積をピストン側室10側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、ロッド側室9の圧力でアクチュエータ2の伸縮両側の推力の制御できる点は変わらない。
戻って、ロッド8の図1中左端とシリンダ6の右端を閉塞する蓋15には、図示しない取付部を備えており、このアクチュエータ2を鉄道車両100における車体101と台車102との間に介装できるようになっている。
そして、ロッド側室9とピストン側室10とは、第1通路12によって連通されており、この第1通路12の途中には、第1開閉弁17が設けられている。この第1通路12は、シリンダ6外でロッド側室9とピストン側室10とを連通しているが、ピストン7に設けられてもよい。
第1開閉弁17は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第1通路12を開放してロッド側室9とピストン側室10とを連通する連通ポジション17bと、ロッド側室9とピストン側室10との連通を遮断する遮断ポジション17cとを備えたバルブ17aと、遮断ポジション17cを採るようにバルブ17aを附勢するバネ17dと、通電時にバルブ17aをバネ17dに対抗して連通ポジション17bに切り換えるソレノイド17eとを備えて構成されている。
つづいて、ピストン側室10とタンク11とは、第2通路13によって連通されており、この第2通路13の途中には、第2開閉弁18が設けられている。第2開閉弁18は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第2通路13を開放してピストン側室10とタンク11とを連通する連通ポジション18bと、ピストン側室10とタンク11との連通を遮断する遮断ポジション18cとを備えたバルブ18aと、遮断ポジション18cを採るようにバルブ18aを附勢するバネ18dと、通電時にバルブ18aをバネ18dに対抗して連通ポジション18bに切り換えるソレノイド18eとを備えて構成されている。
ポンプ14は、モータ4によって駆動されるようになっており、ポンプ14は、一方向のみに液体を吐出するポンプとされ、吐出口は供給通路23によってロッド側室9へ連通され、吸込口はタンク11に通じている。よって、ポンプ14は、モータ4によって駆動されると、タンク11から液体を吸込んでロッド側室9へ液体を供給する。モータ4は、モータドライバ5における駆動回路30から電流供給を受けて駆動される。
前述のようにポンプ14は、一方向のみに液体を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。さらに、ポンプ14の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ14を駆動する駆動源であるモータ4にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ4も安価なものを使用できる。なお、供給通路23の途中には、ロッド側室9からポンプ14への液体の逆流を阻止する逆止弁24を設けてある。
また、本例では、ロッド側室9とタンク11とが排出通路21を通じて接続されており、この排出通路21の途中に開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22が設けられている。可変リリーフ弁22は、排出通路21の途中に設けた弁体22aと、排出通路21を遮断するように弁体22aを附勢するバネ22bと、通電時にバネ22bに対抗する推力を発生する比例ソレノイド22cとを備えて構成されている。そして、可変リリーフ弁22は、比例ソレノイド22cに流れる電流量の調節により開弁圧の調節が可能となっている。
そして、弁体22aに作用する排出通路21の上流のロッド側室9の圧力がリリーフ圧(開弁圧)を超えると、この圧力と比例ソレノイド22cが弁体22aを押す力が、この力に対抗して弁体22aを附勢するバネ22bの力に打ち勝つようになる。すると、弁体22aが後退し、可変リリーフ弁22は、排出通路21を開放する。
また、可変リリーフ弁22にあっては、比例ソレノイド22cに供給する電流量を増大させると、比例ソレノイド22cが発生する推力を増大できる。よって、比例ソレノイド22cに供給する電流量を最大とすると可変リリーフ弁22の開弁圧が最小となり、反対に、比例ソレノイド22cに全く電流を供給しないと可変リリーフ弁22の開弁圧が最大となる。
そして、可変リリーフ弁22は、第1開閉弁17および第2開閉弁18の開閉状態に関わらず、アクチュエータ2に伸縮方向の過大な入力がありロッド側室9の圧力が開弁圧を超えると、排出通路21を開放してロッド側室9をタンク11へ連通する。このように、アクチュエータ2への過大入力に対し、可変リリーフ弁22は、ロッド側室9内の圧力をタンク11へ排出して、アクチュエータ2のシステム全体を保護する。
また、ピストン7には、ピストン側室10とロッド側室9とを連通する整流通路19が設けられており、整流通路19には逆止弁19aが設けられている。よって、整流通路19は、ピストン側室10からロッド側室9へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、蓋15には、タンク11とピストン側室10とを連通する吸込通路20が設けられており、この吸込通路20には逆止弁20aが設けられている。よって、吸込通路20は、タンク11からピストン側室10へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、整流通路19は、第1開閉弁17の遮断ポジション17cを逆止弁とすれば、第1通路12に集約され得る。吸込通路20についても、第2開閉弁18の遮断ポジション18cを逆止弁とすれば第2通路13に集約され得る。
このように構成されたアクチュエータ2に所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、第1開閉弁17を連通ポジション17bとし第2開閉弁18を遮断ポジション18cとしてモータ4を回転させつつポンプ14からシリンダ6内へ液体を供給する。このようにすると、ロッド側室9とピストン側室10とが連通状態におかれて両者にポンプ14から液体が供給され、ピストン7が図1中左方へ押されアクチュエータ2は伸長方向の推力を発揮する。ロッド側室9内およびピストン側室10内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧を上回ると、可変リリーフ弁22が開弁して液体が排出通路21を介してタンク11へ排出され、ロッド側室9内およびピストン側室10内の圧力は、可変リリーフ弁22の開弁圧に等しくなる。すなわち、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節で、ピストン7におけるピストン側室10側とロッド側室9側の受圧面積差に可変リリーフ弁22の開弁圧を乗じた伸長方向の推力をアクチュエータ2に発揮させ得る。なお、アクチュエータ2が外力によって強制的に収縮させられても、ロッド側室9内およびピストン側室10内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧となるように制御されるので、収縮を抑制する伸長方向の推力を発揮する。
これに対して、アクチュエータ2に所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、第1開閉弁17を遮断ポジション17cとし第2開閉弁18を連通ポジション18bとし、モータ4を回転させつつポンプ14からロッド側室9内へ液体を供給する。このようにすることで、ピストン側室10とタンク11が連通状態におかれるとともにロッド側室9にポンプ14から液体が供給され、ピストン7が図1中右方へ押されアクチュエータ2は収縮方向の推力を発揮する。前述したところと同様に、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節で、ピストン7におけるロッド側室9側の受圧面積と可変リリーフ弁22の開弁圧を乗じた収縮方向の推力をアクチュエータ2に発揮させ得る。なお、アクチュエータ2が外力によって強制的に伸長させられても、ロッド側室9内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧となるように制御されるので、伸長を抑制する収縮方向の推力を発揮する。
このように、アクチュエータ2は、第1開閉弁17と第2開閉弁18との開閉、および可変リリーフ弁22の開弁圧の調節で伸長方向および収縮方向の何れにも推力を発生できる。よって、アクチュエータ制御装置3は、モータ4を駆動させつつ第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22を制御することでアクチュエータ2をスカイフック制御則に則ったアクティブ制御でアクチュエータ2に伸縮双方で推力を発揮させて車体101の振動を抑制できる。
また、本実施の形態のアクチュエータ2は、モータ4が駆動していない状態では、外力によって伸縮させられるのに対して、第1開閉弁17と第2開閉弁18との開閉、および可変リリーフ弁22の開弁圧の調節で伸縮を妨げる方向の推力を発生できる。モータ4が駆動していない状態で第1開閉弁17を連通ポジション17bとし第2開閉弁18を遮断ポジション18cとする場合、アクチュエータ2が外力によって伸長すると、ロッド側室9から第1開閉弁17を通って液体がピストン側室10へ移動するとともに吸込通路20を介してタンク11からピストン側室10へ液体が供給される。よって、アクチュエータ2は、この場合、ほとんど抵抗なく伸長して伸長を妨げる推力を発揮しない。他方、モータ4が駆動していない状態で第1開閉弁17を連通ポジション17bとし第2開閉弁18を遮断ポジション18cとする場合にアクチュエータ2が外力によって収縮すると、ピストン側室10から第1開閉弁17を通って液体がロッド側室9へ移動するものの、ロッド8がシリンダ6内に侵入する体積分の液体が可変リリーフ弁22を介してシリンダ6からタンク11へ排出される。よって、アクチュエータ2は、この場合、外力による収縮に対して収縮を妨げる推力を発生でき、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節によって当該推力を制御できる。
さらに、モータ4が駆動していない状態で第1開閉弁17を遮断ポジション17cとし第2開閉弁18を連通ポジション18bとする場合、アクチュエータ2が外力によって収縮すると、ピストン側室10から整流通路19を通って液体がロッド側室9へ移動するとともに第2開閉弁18を介してシリンダ6内から液体がタンク11へ排出される。よって、アクチュエータ2は、この場合、ほとんど抵抗なく収縮して収縮を妨げる推力を発揮しない。他方、モータ4が駆動していない状態で第1開閉弁17を遮断ポジション17cとし第2開閉弁18を連通ポジション18bとする場合にアクチュエータ2が外力によって伸長すると、ロッド側室9から可変リリーフ弁22を通って液体がタンク11へ排出される。ピストン側室10が拡大するが、第2開閉弁18を介してタンク11からピストン側室10へ液体が供給される。よって、アクチュエータ2は、この場合、外力による伸長に対して伸長を妨げる推力を発生でき、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節によって当該推力を制御できる。このように、モータ4が駆動できない状態でも、コントローラ40による制御で第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22を駆動可能な状態では、アクチュエータ制御装置3は、アクチュエータ2をセミアクティブ制御によってアクチュエータ2を伸長側或いは収縮側の一方から選択して所望する方向のみで推力を発生するセミアクティブダンパとして機能させ得る。
また、このアクチュエータ2にあっては、第1開閉弁17と第2開閉弁18がともに遮断ポジション17c,18cを採ると、整流通路19および吸込通路20と排出通路21で、ロッド側室9、ピストン側室10およびタンク11が数珠繋ぎに連通される。この状態では、ポンプ14の駆動の有無に関わらず、アクチュエータ2が外力により伸縮させられると、ロッド側室9内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧となるように制御されるため、アクチュエータ2は伸縮を抑制する推力を発揮するパッシブダンパとして機能する。そして、モータ4、第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22への電流供給が絶たれると、第1開閉弁17と第2開閉弁18は遮断ポジション17c,18cを採り、可変リリーフ弁22は開弁圧が最大に固定された圧力制御弁として機能する。よって、アクチュエータ2は、電力供給が絶たれる状態や失陥時には自動的に、パッシブダンパとして機能できる。
なお、アクチュエータ2は、モータ4によって伸縮可能な構成となっていればよいが、前述した構成のアクチュエータ2を用いれば、電力供給ができない状態となると自動的にパッシブダンパとして機能できる利点がある。また、アクチュエータ2は、この例では、液体を作動媒体として利用しているが、気体を作動媒体として利用するものであってもよいし、モータ4のトルクをそのまま推力として利用する電磁アクチュエータとされてもよい。
つづいて、アクチュエータ制御装置3について説明する。アクチュエータ制御装置3は、モータ4を駆動するモータドライバ5と、コントローラ40とを備えている。図3に示すように、モータドライバ5は、鉄道車両100から電力供給を受けてアクチュエータ2の駆動源としてのモータ4に電力供給する駆動回路30と、駆動回路30に入力される電圧を検知する電圧センサ31と、駆動回路30に入力される電圧を平滑化する平滑用コンデンサ32と、鉄道車両100から供給される交流電流を整流して駆動回路30へ入力するダイオードモジュール33と、平滑用コンデンサ32に突入電流が流れるのを抑制する保護回路34と、電圧センサ31で検知する電圧を監視しつつ駆動回路30および保護回路34を制御する制御部35とを備えている。
本実施の形態では、モータ4は、三相のブラシレスモータとされている。よって、駆動回路30は、三相のブラシレスモータであるモータ4の三相の巻線へ電流を供給してモータ4の駆動に適するように、詳しくは図示しないが、一対のスイッチング素子を備えた三つのアームを備えるインバータ回路とされている。なお、モータ4は、ブラシレスモータ以外のモータであってもよく、駆動回路30は、モータ4の駆動に適した回路を用いればよい。
また、駆動回路30は、図3に示すように、鉄道車両100内に設置された図外の複数の変圧器によってトロリ線の電圧を2度降圧して得た単相あるいは三相の交流電流を供給する3次電源36から電力供給を受けている。前述したように、モータドライバ5は、3次電源36から供給される交流電流を全波整流するダイオードモジュール33を備えている。ダイオードモジュール33は、4つのダイオードを備えたブリッジ回路でなる全波整流回路とされている。そして、モータドライバ5は、3次電源36から供給される交流電流からダイオードモジュール33を介して直流電流を得て、得られた直流電流を駆動回路30へ供給する。3次電源36は、鉄道車両100が後述するデッドセクションの通過時やパンタグラフがトロリ線から離線すると、トロリ線から電力供給を受けられなくなり復電するまで駆動回路30へ電力を供給できなくなる。
平滑用コンデンサ32は、ダイオードモジュール33と並列に接続されており、ダイオードモジュール33が出力する脈動する電圧を平滑化して変動の少ない電圧を駆動回路30へ供給する。
電圧センサ31は、本実施の形態では、駆動回路30に入力される電圧として平滑用コンデンサ32の極板間の電位差、つまり、電圧を検知して、検知した電圧に応じた信号を制御部35へ入力する。平滑用コンデンサ32の電圧は、本実施の形態では、駆動回路30に入力される電圧となるため、電圧センサ31で平滑用コンデンサ32の電圧を検知することで、現在、駆動回路30に入力される電圧を検知できる。制御部35は、コントローラ40からモータ4を駆動する駆動指令を受け取ると、駆動指令が指示する通りにモータ4を駆動するために、駆動指令からスイッチング素子を駆動するための信号を生成して、駆動回路30の図示しない各アームに設けられた6つのスイッチング素子を開閉制御する。
保護回路34は、詳しくは図示しないが、充電抵抗が設けられる充電ラインと、充電ラインに並列に接続されて3次電源36を充電抵抗を介さずに直接駆動回路30へ電力供給するための電力供給ラインと、電力供給ライン中に設けられて制御部35によって制御されるスイッチング素子とを備えている。そして、制御部35は、平滑用コンデンサ32が十分に充電されていない場合、スイッチング素子をOFFして、3次電源36を充電抵抗を介して平滑用コンデンサ32に接続して平滑用コンデンサ32に突入電流が流れないようにし、平滑用コンデンサ32が十分に充電されるとスイッチング素子をONして、電力供給ラインを通じて充電抵抗を介さずに3次電源36を平滑用コンデンサ32および駆動回路30へ接続する。
また、制御部35は、電圧センサ31が検知する電圧が予め設定される第1閾値以上である場合には、コントローラ40に対して0Vのロー信号でなる運転準備ON信号を出力する。反対に、制御部35は、電圧センサ31が検知する電圧が予め設定される第1閾値未満である場合には、コントローラ40に対して所定の電圧のハイ信号でなる運転準備OFF信号を出力する。つまり、3次電源36がトロリ線から電力供給を受け得る状態では、駆動回路30に継続的に第1閾値以上の電圧で電力供給がなされるので、制御部35は、運転準備ON信号を出力し続ける。これに対して、鉄道車両100がデッドセクションを通過したりパンタグラフがトロリ線から離線した場合、駆動回路30は、3次電源36から電力供給を受けられなくなり、その状態で平滑用コンデンサ32の電荷を消費してモータ4へ電力供給を続けると、電圧センサ31の検知電圧が低下して第1閾値未満となり、制御部35が運転準備OFF信号を出力するようになる。なお、制御部35は、駆動回路30に電力を供給する3次電源36以外の図示しない別系統の停電の無い電源から電力供給を受けている。
また、制御部35は、運転準備OFF信号を出力している場合、電圧センサ31が検知する電圧が予め設定される復帰電圧以上となり、また、電圧センサ31が検知する電圧の変化が十分に小さくなると、再び3次電源36から電力供給を受けていると判断して信号を運転準備ON信号に切り換える。つまり、電圧センサ31が検知する電圧が予め設定される第1閾値未満となると、制御部35は、当該電圧が復帰電圧以上で且つ電圧変化が十分に小さくなることをトリガとして信号を運転準備OFF信号から運転準備ON信号へ切り換える。なお、復帰電圧は、第1閾値以上であって、トロリ線から電力供給を受け得る状態の3次電源36の電圧よりも低い値に設定される。そのため、制御部35は、3次電源36から電力供給を受けているとの判断の確実性を担保するため、前記電圧が復帰電圧以上であることのみにならず、電圧変化が十分に小さくなることをも条件として、3次電源36から電力供給を得ているか否かを判断している。第1閾値は、モータ4の駆動が不能となる電圧よりも少し高い電圧に設定されており、本実施の形態では、たとえば、3次電源36の平均電圧の40%程度の電圧値に設定される。また、本実施の形態では、復帰電圧は、たとえば、3次電源36の平均電圧の70%程度の電圧値に設定される。また、運転準備ON信号をハイ信号とし、運転準備OFF信号をロー信号としてもよい。
なお、制御部35は、スイッチング素子の制御と電圧センサ31が検知する電圧と第1閾値とを比較して運転準備ON信号と運転準備OFF信号の出力が可能であればよい。そのため、制御部35は、たとえば、駆動指令からスイッチング素子を制御するための信号を生成するパルス生成回路と、運転準備ON信号と運転準備OFF信号の切り換えを行うためのコンパレータとを含んで構成されてもよいし、これらの回路の機能を演算処理によって実現する演算処理装置を含んで構成されてもよい。
つづいて、コントローラ40は、アクチュエータ2の推力を制御するため、図1に示すように、車体101の水平横方向の加速度を検知する加速度センサ41と、アクチュエータ2の変位を検知するストロークセンサ42と、これらから得られる情報に基づいてアクチュエータ2の第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22における各ソレノイド17e,18e,22cへ電流供給するソレノイドドライバ43と、ソレノイドドライバ43およびモータドライバ5へ与える駆動指令を生成する制御部44とを備えている。また、コントローラ40は、モータドライバ5から運転準備ON信号、運転準備OFF信号の他に電圧センサ31が検知した電圧情報の入力を受ける。また、コントローラ40は、3次電源36以外の別系統の図示しない停電の無い電源から電力供給を受けている。
本実施の形態では、ソレノイドドライバ43は、各ソレノイド17e,18e,22cへの電流の供給と停止を行えるように、各ソレノイド17e,18e,22cに対応して三つのスイッチング素子を備えている。なお、ソレノイドドライバ43は、各ソレノイド17e,18e,22cの駆動に適したものを使用すればよい。
制御部44は、モータドライバ5から入力される電圧センサ31で検知した電圧が第1閾値よりも高い値に設定される第2閾値以上である場合、モータドライバ5が3次電源36から電力供給を受けていると判断する。このような状況では、モータ4の駆動を伴う第1制御を実行しても電圧センサ31が検知する電圧が降下せずモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力しないと判断できるため、制御部44は、アクチュエータ2をモータ4の駆動を伴うアクティブ制御する第1制御を実行する。制御部44は、第1制御を実行する場合、モータ4を一定の速度で回転駆動するようにモータドライバ5へ駆動指令を与える。また、制御部44は、加速度センサ41から車体101の横方向の速度を求め、スカイフック制御則に則りアクチュエータ2が発生すべき推力の大きさ、方向を求める。具体的には、制御部44は、第1制御で採用するスカイフック制御では、車体101の横方向速度にスカイフックゲインを乗じてアクチュエータ2が車体101の振動を抑制するために発するべき推力の大きさと方向を求める。このように、制御部44は、アクチュエータ2が発生すべき推力の大きさと方向とから第1開閉弁17と第2開閉弁18の開閉および可変リリーフ弁22の開弁圧を決定し、アクチュエータ2が前記推力を発生できるようにソレノイドドライバ43へ駆動指令を与えて各ソレノイド17e,18e,22cを駆動する。このようにして、第1制御を実行する場合、コントローラ40は、モータ4を一定速度で回転駆動するようにし、第1開閉弁17と第2開閉弁18の開閉および可変リリーフ弁22の開弁圧を制御し、アクチュエータ2をアクティブ制御する。
また、制御部44は、モータドライバ5から入力される電圧センサ31で検知した電圧が第2閾値未満である場合、モータドライバ5へ3次電源36から電力供給を受けられず、モータ4を駆動すると平滑用コンデンサ32の電荷が消費されて電圧降下をもたらし、電圧が第1閾値未満となってモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力する可能性がある。よって、制御部44は、モータドライバ5が運転準備OFF信号を出力するのを阻止するため、アクチュエータ2の制御をアクティブ制御からモータ4の駆動を伴わないセミアクティブ制御である第2制御へ切り換える。制御部44は、第2制御を実行する場合、モータ4を駆動して平滑用コンデンサ32が放電しないようにモータドライバ5へ駆動指令を与えない。モータドライバ5は、駆動指令が与えられないと、駆動回路30における各アームのスイッチング素子の全部をオフとして平滑用コンデンサ32からモータ4に電流が流れないようにし、平滑用コンデンサ32の放電を阻止する。本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、アクチュエータ2は、モータ4が駆動できない状態でもセミアクティブダンパとして機能できる。よって、制御部44は、第2制御を実行する場合、モータ4には駆動指令を与えないものの、アクチュエータ2をセミアクティブダンパとして機能させて、車体101の振動を抑制する方向へ推力を発揮できる場合にのみアクチュエータ2に推力を発揮させるセミアクティブ制御を行う。具体的には、セミアクティブ制御では、制御部44は、加速度センサ41とストロークセンサ42とから車体101の横方向の速度と、車体101と台車102の横方向の相対速度を求め、カルノップ理論に基づくスカイフック制御則に則りアクチュエータ2が発生すべき推力の大きさ、方向を求める。具体的には、制御部44は、第2制御で採用するカルノップ理論に基づくスカイフック制御では、車体101の横方向速度にスカイフックゲインを乗じてアクチュエータ2が車体101の振動を抑制するために発するべき推力と方向を求め、車体101と台車102との相対速度からアクチュエータ2が伸長状態であるか収縮状態であるかを判断して、求めた推力を発揮可能な方向に推力を発揮するが反対方向には推力を発揮しないように、第1開閉弁17と第2開閉弁18を切り換え制御する。このように、制御部44は、アクチュエータ2が発生すべき推力の大きさと方向とから第1開閉弁17と第2開閉弁18の開閉および可変リリーフ弁22の開弁圧を決定し、車体101の振動を抑制する方向へ推力を発揮できる場合にのみアクチュエータ2に推力を発生させるようにソレノイドドライバ43へ駆動指令を与えて各ソレノイド17e,18e,22cを駆動する。このようにして、第2制御を実行する場合、コントローラ40は、モータ4を駆動させずに、第1開閉弁17と第2開閉弁18の開閉、および可変リリーフ弁22の開弁圧を制御し、アクチュエータ2をセミアクティブ制御する。
前述したように、コントローラ40は、電圧センサ31が検知した電圧が第1閾値よりも大きな値に設定される第2閾値以上であるとモータ4の駆動を伴う第1制御を実行し、前記電圧が第2閾値未満となるとモータ4の駆動を伴わない第2制御を実行して、モータドライバ5における平滑用コンデンサ32の放電を阻止する。第2制御では、アクチュエータ2が推力を発揮できる方向が一方向のみとなって車体101と台車102の振動状況によって車体101の振動を抑制できない場合が出てくる。これに対して、アクチュエータ2をアクティブ制御する第1制御では、アクチュエータ2が伸縮の両方で推力を発揮できるので、車体101と台車102の振動状況によらず車体101の振動を抑制できる。よって、モータ4の駆動を伴う第1制御の実行時の方がモータ4の駆動を伴わない第2制御の実行時よりも車体101の制振効果は高くなる。
さらに、制御部44は、モータドライバ5から入力される電圧センサ31で検知した電圧が第2閾値未満となって制御を第1制御から第2制御へ切り換えた後に、第2閾値よりも高い値に設定される第3閾値以上になると、第2制御からモータ4の駆動を伴う第1制御へ切り換える。よって、制御部44は、電圧センサ31が検知した電圧が上昇してモータドライバ5がトロリ線から電力供給を受けられるようになると、モータ4の駆動を伴わない第2制御からモータ4の駆動を伴う第1制御へ復帰する。第2制御から第1制御への復帰する際に基準となる第3閾値は、第2閾値と同じ値であってもよいが、第2閾値よりも高い値に設定されると、モータドライバ5に入力される電圧の脈動によって制御部44が第1制御と第2制御とを頻繁に切り換えるハンチングが生じるのを防止できる。
なお、トロリ線の電圧は脈動して変動するため、鉄道車両100がトロリ線から電力供給を受けている状態でも3次電源36の電圧も変動する。そのため、第2閾値は、第1閾値よりも高い値であって、鉄道車両100がトロリ線から電力供給を受けている状態(正常時)において3次電源36の取り得る最低電圧よりも低い値に設定される。このように第2閾値を設定すれば、トロリ線から電力供給を受けており、モータ4を正常に駆動できる状態であるのにもかかわらず、コントローラ40における制御が第1制御から制振効果が低下する第2制御へ切り換わってしまうという事態の発生を防止できる。第2閾値は、たとえば、第1閾値と正常時における3次電源36の最低電圧との中央値よりも高い値に設定されるとよい。また、コントローラ40がアクチュエータ2の制御を第2制御から第1制御へ復帰させる基準となる第3閾値は、たとえば、モータドライバ5が運転準備OFF信号から運転準備ON信号へ切り換える1つの基準である復帰電圧に設定されてもよいし、鉄道車両100がトロリ線から電力供給を受けている状態において3次電源36の取り得る最低電圧に設定されてもよいし、トロリ線から電力供給を受けている状態において3次電源36の平均電圧とされてもよい。第3閾値が前記復帰電圧或いは最低電圧に設定される場合には、停電後に復電すると制振効果の高い第1制御へ一早い復帰が可能であり、前記平均電圧に設定されると復電が確実となった後で第1制御へ復帰するのでモータドライバ5の平滑用コンデンサ32の放電を確実に防止できる。
前述したように、モータドライバ5がコントローラ40に出力する信号が運転準備ON信号から運転準備OFF信号に切り換わるのは、電圧センサ31が検知した電圧が第2閾値よりも低い値の第1閾値未満となった場合である。よって、鉄道車両100がデッドセクションを通過する際に停電しても、コントローラ40が前述の通りに動作すると、平滑用コンデンサ32の電圧が第1閾値未満となる前に平滑用コンデンサ32の放電が食い止められるため、モータドライバ5がコントローラ40に出力する信号が運転準備ON信号から運転準備OFF信号に切り換わらずに済む。なお、何らかの理由によって、モータドライバ5から運転準備OFF信号がコントローラ40に入力されると、コントローラ40は、自身の電圧と第2閾値との比較の結果によって第1制御を選択して実行していても、制御をモータ4の駆動を伴わない第2制御に切り換える。また、電圧センサ31の電圧が第2閾値以上であるとコントローラ40によって判断されていて、コントローラ40に運転準備OFF信号が入力される場合、モータドライバ5或いはコントローラ40或いは電圧センサ31に何らかの異常があると認められるので、制御部44は、モータドライバ5のみならずソレノイドドライバ43にも駆動指令を与えず、アクチュエータ2をパッシブダンパとして機能させるようにしてもよい。
なお、アクチュエータ制御装置3は、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、加速度センサ41およびストロークセンサ42が出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、ソレノイドドライバ43およびモータドライバ5と制御部44との通信を可能とするインターフェース回路と、アクチュエータ2の第1制御と第2制御およびこれら制御の切り換えに必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、CPUが前記プログラムを実行することでアクチュエータ制御装置3の制御動作が実現される。
鉄道車両用制振装置1は、前述のように構成され、以下に作動を説明する。まず、き電切換セクション60について説明する。図4に示すように、鉄道車両100の進行方向手前側にある電源63に接続されるトロリ線61と、鉄道車両100の進行方向先側にある電源64に接続されるトロリ線62との間に各トロリ線61,62にスイッチ65,66を介して接続される中間トロリ線67が設けてある。そして、中間トロリ線67は、基本的には、前記スイッチ65にて進行方向手前側にある電源63に接続されていて、鉄道車両100が中間トロリ線67の区間に入ると、一端、双方の電源63,64と中間トロリ線67との接続を断った後、中間トロリ線67に鉄道車両100の進行方向先側にある電源64を接続して、き電を切り換えるようにしている。すなわち、鉄道車両100がこのき電切換セクション60を通過する際には、中間トロリ線67は双方の電源63,64との接続が断たれるので、一瞬停電となって電力供給を受けることができない時間が生じる。前述したように、モータドライバ5の駆動回路30へ供給される電力は、トロリ線61,62から降圧して得らえる電力であるため、デッドセクションに当たる中間トロリ線67を走行時に停電すると駆動回路30へ電力供給ができなくなる。このように、モータ4への電流供給は、鉄道車両100が図4に示したき電切換セクション60における中間トロリ線67の区間を走行中に、前述したようにき電切換動作によって瞬間的に断たれる。
鉄道車両100がき電切換セクション60以外の区間を走行しており、トロリ線から電力供給を受け得る場合について説明する。なお、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、コントローラ40がアクチュエータ2の制御を第2制御から第1制御へ復帰させる基準となる第3閾値をモータドライバ5が停電後に出力する信号を運転準備OFF信号から運転準備ON信号へ切り換える際の基準となる復帰電圧と同じ値に設定している。この場合、電圧センサ31が検知する電圧は、第1閾値以上となっているため、モータドライバ5は、運転準備ON信号をコントローラ40へ出力している。また、トロリ線から電力供給を受け得る場合、電圧センサ31が検知する電圧が第2閾値以上となっているので、コントローラ40は、第1制御を実行する。よって、前述したように、アクチュエータ制御装置3は、コントローラ40によって車体101の振動抑制に必要な推力を求め、アクチュエータ2に求めた推力を発揮させるべく、モータドライバ5およびコントローラ40におけるソレノイドドライバ43を通じて、モータ4、第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22へ通電してアクチュエータ2をアクティブ制御する。
コントローラ40は、第1制御を行ってアクチュエータ2に伸長方向の推力を発揮させる場合、第1開閉弁17を連通ポジション17bとし第2開閉弁18を遮断ポジション18cとしてモータ4を回転させつつポンプ14からシリンダ6内へ液体を供給する。反対に、コントローラ40は、第1制御を行ってアクチュエータ2に収縮方向の推力を発揮させる場合には、第1開閉弁17を遮断ポジション17cとし第2開閉弁18を連通ポジション18bとし、モータ4を回転させつつポンプ14からロッド側室9内へ液体を供給する。
このように、アクチュエータ制御装置3は、トロリ線から電力供給を受け得る場合には、アクチュエータ2をアクティブ制御する第1制御を行って、スカイフック制御則に基づいてアクチュエータ2が発生すべき推力を求め、モータ4を回転駆動しつつアクチュエータ2にこの推力を発揮させる制御を継続して行う。これにより、アクチュエータ制御装置3によってアクチュエータ2の推力がアクティブ制御され、車体101の振動が効果的に抑制される。
他方、鉄道車両100がき電切換セクション60中のデッドセクションを通過する際には、以下のように、モータ4の停止判断がなされ、モータ4への電流供給を停止する。
鉄道車両100がき電切換セクション60内におけるデッドセクションである中間トロリ線67を通過し停電した場合、或いは、何らかの理由で走行中に鉄道車両100のパンタグラフがトロリ線から離間した場合、アクチュエータ制御装置3におけるコントローラ40がモータ4への通電を伴う第1制御を実行し続けてアクチュエータ2を制御しつづけると、モータドライバ5における平滑用コンデンサ32の放電によって、電圧センサ31が検知する電圧が低下する。
この電圧低下によって、電圧センサ31が検知する電圧が第2閾値未満となると、コントローラ40がモータドライバ5からのモータ4への電力供給を伴わない第2制御を実行する。コントローラ40は、第2制御を実行する場合、モータ4を駆動して平滑用コンデンサ32が放電しないようにモータドライバ5へ駆動指令を与えない。モータドライバ5は、駆動指令が与えられないと、駆動回路30における各アームのスイッチング素子の全部をオフとして平滑用コンデンサ32からモータ4に電流が流れないようにし、平滑用コンデンサ32の放電を阻止する。すると、平滑用コンデンサ32からの放電も停止され、平滑用コンデンサ32の電圧が第2閾値以下ではあるが第2閾値に近い電圧となって、それ以上に降圧されない。よって、モータドライバ5が運転準備OFF信号をコントローラ40へ出力するのを防止できる。また、この状況で、鉄道車両100が電源64に接続されたトロリ線62に接続されて電力供給が再開されても、平滑用コンデンサ32の電圧と3次電源36の電圧との電位差が小さいので、突入電流が流れるのを防止できる。
また、停電が解消され復電すると、3次電源36からモータドライバ5へ電力供給され、電圧センサ31が検知する電圧も速やかに上昇してトロリ線から電力供給を受けていた元の電圧に戻る。よって、電圧センサ31が検知する電圧が第3閾値以上となるので、コントローラ40は、アクチュエータ2をセミアクティブ制御する第2制御からアクティブ制御する第1制御へ制御を切り換える。
このように、コントローラ40が第1制御から第2制御へ切り換わってから、再び第1制御へ復帰するまでに要する時間は、図5に示すように、第2閾値以下となるものの第1閾値よりも高い電圧となった平滑用コンデンサ32の電圧が第3閾値以上となるまでに要した時間T1となる。これに対して、アクチュエータ制御装置3がモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力するまで第1制御から第2制御へ制御を切り換えない場合を考える。このような制御を実行するアクチュエータ制御装置3において、再び第1制御へ復帰するまでに要する時間T2は、モータドライバ5が運転準備OFF信号を出力している時間に略等しくなる。
図5中実線で示すように、本実施の形態のアクチュエータ制御装置3では、コントローラ40が第1制御から第2制御へ切り換えるタイミングは、電圧センサ31の検知電圧が第2閾値未満となった時点となる。他方、図5中破線で示すように、アクチュエータ制御装置3がモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力するまで第1制御から第2制御へ制御を切り換えない場合、アクチュエータ制御装置3が第1制御から第2制御へ切り換えるタイミングは、検知電圧が第1閾値未満となった時点となる。
つづいて、本実施の形態のアクチュエータ制御装置3では、図5中実線で示すように、コントローラ40が第2制御から第1制御へ復帰するタイミングは、検知電圧が第3閾値以上となった時点となる。他方、アクチュエータ制御装置3がモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力するまで第1制御から第2制御へ制御を切り換えなかった場合、図5中破線で示すように、アクチュエータ制御装置3が第2制御から第1制御へ切り換えるタイミングは、検知電圧が復帰電圧となり、且つ、電圧変化が小さくなった時点となる。
すると、本実施の形態のアクチュエータ制御装置3では、停電しても電圧センサ31の検知電圧は前述の制御の切り換えによって第2閾値以下ではあるものの第2閾値近傍の値に留まるために、復電して3次電源36から電力供給が再開されると速やかに検知電圧が第3閾値まで上昇する。他方、アクチュエータ制御装置3がモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力するまで第1制御から第2制御へ制御を切り換えなかった場合、図5に示すように、平滑用コンデンサ32の電圧が第1閾値以下まで低下する。そのため、アクチュエータ制御装置3がモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力するまで第1制御から第2制御へ制御を切り換えなかった場合、復電して3次電源36から電力供給が再開されても保護回路34によって電圧の上昇に時間がかかってしまい、モータドライバ5は、検知電圧が第3閾値と同じ値に設定されている復帰電圧に到達してから、さらに、電圧電動が充分に小さくなるまで運転準備OFF信号を運転準備ON信号へ切り換えない。よって、モータドライバ5が信号を運転準備OFF信号に切り換えた後に運転準備ON信号へ切り換えるまでには時間T1よりも長い時間T2を要する。このように、本実施の形態のアクチュエータ制御装置3は、停電時にモータドライバ5が運転準備OFF信号を出力しないようにモータ4の駆動を伴わない第2制御を実施するため、第2制御から制振効果に優れる第1制御へ短時間で復帰できる。
具体的には、図6に示すように、アクチュエータ制御装置3は、以下の手順の処理を行って制御を切り換える。まず、コントローラ40は、モータドライバ5から受け取った信号が運転準備ON信号であるか否かを判断する(ステップS1)。コントローラ40は、ステップS1の判断で前記信号が運転準備ON信号である場合、電圧センサ31の検知電圧が第2閾値以上であるか否かを判断する(ステップS2)。
ステップS2の判断で、電圧センサ31の検知電圧が第2閾値以上である場合、コントローラ40は、モータ4の駆動を伴う第1制御を実行してアクチュエータ2を制御する(ステップS3)。他方、ステップS2の判断で、電圧センサ31の検知電圧が第2閾値以上である場合、コントローラ40は、現在選択中の制御を認識するための制御フラグが0であるか判断する(ステップS3)。制御フラグが0である場合、前回制御時に第1制御が選択されていることを示し、制御フラグが1である場合、前回制御時に第2制御が選択されていることを示している。
つづいて、ステップS3の判断で制御フラグが0である場合、前回制御時に第1制御が選択されており、第1制御を実行してもよい状況であるため、コントローラ40は、第1制御を実行してアクチュエータ2を制御する(ステップS4)。他方、ステップS3の判断で制御フラグが1である場合、前回制御時に第2制御が選択されており、制御を第1制御へ切り換えてもよいか判断する必要がある。よって、コントローラ40は、ステップS5へ移行して、電圧センサ31の検知電圧が第3閾値以上であるか否かを判断する。
電圧センサ31の検知電圧が第3閾値以上である場合、コントローラ40は、制御を第2制御から第1制御へ切り換えてもよい状況となっているため、第1制御を実行してアクチュエータ2を制御し(ステップS6)、制御フラグをリセットして0とする(ステップS7)。
電圧センサ31の検知電圧が第3閾値未満である場合、コントローラ40は、前回第2制御を実行しており、第1制御へ切り換える条件が成就していないため、第2制御を実行してアクチュエータ2を制御する(ステップS8)。
戻って、ステップS2の判断で、電圧センサ31の検知電圧が第2閾値未満である場合、コントローラ40は、モータ4の駆動を伴わない第2制御を実行してアクチュエータ2を制御し(ステップS9)、制御フラグを1にセットする(ステップS10)。また、コントローラ40は、ステップS1の判断で前記信号が運転準備OFF信号である場合、モータ4を駆動を伴わない第2制御を実行してアクチュエータ2を制御し(ステップS11)、制御フラグを1にセットする(ステップS12)。
コントローラ40は、以上の手順を繰り返し実行してアクチュエータ2を制御し、モータドライバ5が出力する信号と電圧センサ31が検知する電圧を監視し、アクチュエータ2をアクティブ制御する第1制御を行えるか否かを判断し、状況に応じてモータ4の駆動を伴う第1制御とモータ4の駆動を伴わない第2制御とを適宜切り換える。
以上のように、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、鉄道車両100の車体101と台車102との間に介装されるとともに駆動源としてモータ4を有するアクチュエータ2と、アクチュエータ2を制御するアクチュエータ制御装置3とを備え、アクチュエータ制御装置3は、鉄道車両100から電力供給を受けてモータ4に電力供給する駆動回路30と、駆動回路30に入力される電圧を検知する電圧センサ31とを含み、電圧センサ31で検知した電圧が第1閾値以上であると運転準備ON信号を出力し、電圧が第1閾値未満になると運転準備OFF信号を出力するモータドライバ5と、モータドライバ5から運転準備ON信号を受け取ると駆動回路30からモータ4への電力供給を伴う第1制御を実行し、モータドライバ5から運転準備OFF信号を受け取ると駆動回路30からモータ4へ電力供給を伴わない第2制御を実行するコントローラ40とを備え、コントローラ40は、運転準備ON信号を受け取っても電圧が第1閾値よりも高い値の第2閾値以下となると駆動回路30からのモータ4への電力供給を停止させる。
このように構成された本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、鉄道車両100がデッドセクションを通過するか、或いは、パンタグラフがトロリ線61,62,67から離線して停電状態となると、モータ4の駆動を停止するので、モータドライバ5が出力する信号が運転準備OFF信号とならずに済み、モータドライバ5における平滑用コンデンサ32の放電が抑制され、復電時に速やかにモータ4の駆動を伴う第1制御へ復帰できる。以上より、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1によれば、停電状態となってもモータ通電不能時間を短縮して速やかにモータ4の駆動を伴う制御に復帰が可能となる。また、モータドライバ5に設けられた平滑用コンデンサ32の充放電を抑制できるので、発熱量を低減でき平滑用コンデンサ32の寿命を延ばすことができる。第2閾値は、第1閾値より高い値であって正常時における3次電源36の最低電圧よりも低い値に設定されるが、第1閾値と前記最低電圧との中央値以上の値に設定されると、平滑用コンデンサ32の放電を効果的に抑制でき第1制御への復帰時間も効果的に短縮できる。
また、鉄道車両用制振装置1は、鉄道車両100の走行位置がデッドセクション内であるか否かを把握する必要がないので、離線による停電にも対処が可能となるだけでなく、正確な走行位置情報の入手や走行位置情報そのものの入手ができない鉄道車両へも適用できる。加えて、鉄道車両100の走行位置がデッドセクション内であるか否かを把握する必要がないので、コントローラ40の演算処理負荷が少なくなり、演算処理能力の低いプロセッサの利用が可能となってコストを削減できる。
なお、アクチュエータ制御装置3におけるコントローラ40は、停電時にモータ4の駆動を停止すればよく、第2制御を実行するのではなく、モータ4の駆動を再開できるようになるまでアクチュエータ2をパッシブダンパとして機能させるよう制御してもよい。ただし、本実施の形態のように、停電時にモータ4の駆動を伴わないがアクチュエータ2をモータ4の駆動を伴わないセミアクティブ制御を実行するようにすれば、停電時の車体101の制振効果の低下を最小限に留めて、停電時においても鉄道車両100における乗心地の悪化を抑制できる。
なお、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、第1制御をアクティブ制御とし、第2制御をセミアクティブ制御としているが、アクチュエータ2の仕様でセミアクティブ制御が不能である場合には第2制御においてアクチュエータ2をパッシブダンパとする制御を行ってもよい。
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、コントローラ40が駆動回路30からのモータ4への電力供給を停止させる第二制御を行った後、電圧センサ31が検知する電圧が第2閾値よりも高い値の第3閾値以上となると第1制御を行うようになっている。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、モータドライバ5に入力される電圧の脈動によってコントローラ40がモータ4の駆動を伴う第1制御とモータ4の駆動の停止とを頻繁に切り換えるハンチングが生じるのを防止できるので、鉄道車両100における乗心地を向上できる。
さらに、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、第1閾値がモータ4を駆動できなくなる電圧の値より高い値に設定され、第2閾値が鉄道車両から供給される電圧の最定電圧よりも低い値に設定される。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、第1閾値がモータ4を駆動できなくなる電圧よりも高い値に設定されるので、運転準備OFF信号に切り換わった後に再度運転準備ON信号に切り換わるまでに経過する時間T2を短くできるとともに、第2閾値が鉄道車両から鉄道車両から供給される電圧の最定電圧よりも低い値に設定されるため、トロリ線から電力供給を受けており、モータ4を正常に駆動できる状態であるのにもかかわらずコントローラ40における制御が第1制御から制振効果が低下する第2制御へ切り換わってしまうという事態の発生を防止できる。
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、コントローラ40は、電圧が第2閾値以上であっても、モータドライバ5から運転準備OFF信号が入力されるとモータ4を停止させる第二制御を実行する。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、モータドライバ5或いはコントローラ40或いは電圧センサ31に何らかの異常があると認められる場合にモータ4の駆動を停止するので、車体101を加振させてしまう制御モードが生じずフェールセーフを実現できる。なお、コントローラ40は、このような異常時に、モータドライバ5のみならずソレノイドドライバ43にも駆動指令を与えず、アクチュエータ2をパッシブダンパとして機能させると、フェール時にあっても車体101の振動を確実に抑制できる。
さらに、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、モータドライバ5が駆動回路30に入力される電圧を平滑化する平滑用コンデンサ32を有し、電圧センサ31が平滑用コンデンサ32の電圧を検知している。
このように構成された鉄道車両用制振装置1では、電圧センサ31が平滑用コンデンサ32の電圧を検知するようになっているので、脈動の少ない安定した電圧と第2閾値との比較でモータ4への電流供給を停止させる判断を正確且つタイムリーに行える。ただし、モータ4への電流供給の停止の判断は、トロリ線からの電力供給が無くなったことを検知できればよいので、電圧センサ31をダイオードモジュール33よりも3次電源36側に設け、電圧センサ31で検知した交流電圧の最大波高値と第2閾値とを比較するような方法でも停電を検知できる。しかし、このようにすると、モータ停止までの判断に時間がかかるほか、信号処理のための装置が必要となるので、電圧センサ31で平滑用コンデンサ32の電圧を検知する方が有利である。また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、モータドライバ5において電力供給の有無を判断するためにモータドライバ5が備えている電圧センサ31を利用しているが、これとは別の電圧センサで鉄道車両100がトロリ線から電力供給を受けているか否かを判断可能な箇所の電圧を検知するようにしてもよい。
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、シリンダ6と、シリンダ6内に摺動自在に挿入されるピストン7と、シリンダ6内に挿入されてピストン7に連結されるロッド8と、シリンダ6内にピストン7で区画したロッド側室9とピストン側室10と、タンク11と、ロッド側室9とピストン側室10とを連通する第1通路12の途中に設けた第1開閉弁17と、ピストン側室10とタンク11とを連通する第2通路13の途中に設けた第2開閉弁18と、ロッド側室9へ液体を供給するポンプ14と、ポンプ14を駆動するモータ4と、ロッド側室9とタンク11とを連通する排出通路21と、排出通路21に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22と、ピストン側室10からロッド側室9へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路19と、タンク11からピストン側室10へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路20とを備えたアクチュエータ2と、アクチュエータ制御装置3とを備え、コントローラ40は、第1制御では第1開閉弁17、第2開閉弁18、可変リリーフ弁22およびモータ4を駆動制御してアクチュエータ2をアクティブ制御し、第2制御では第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22を駆動制御してアクチュエータ2をセミアクティブ制御するとともに、電圧センサ31が検知する電圧が第2閾値以下となると第2制御を行う。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、停電時にアクチュエータ2をセミアクティブ制御するので、停電時の車体101の制振効果の低下を最小限に留めて、停電時においても鉄道車両100における乗心地の悪化を抑制できる。また、アクチュエータ2が前述のように構成されるので、モータ4の駆動をオンオフするだけで、第1開閉弁17、第2開閉弁18および可変リリーフ弁22の制御を継続すれば、自動的にアクティブ制御とセミアクティブ制御とを切り換えでき、切れ目の無い車体101の振動抑制が可能となる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。