以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施例に係るスライドファスナー付き製品の要部を模式的に示す平面図である。図2は、本実施例に係るチェーン部材を模式的に示す斜視図である。図3は、チェーン部材の平面図であり、図4及び図5は、チェーン部材が分離した状態を模式的に示す平面図及び底面図である。図6及び図7は、チェーン部材の蝶棒部、蝶棒側案内部、箱棒部、及び箱棒側案内部を拡大して示す平面図及び底面図である。図8及び図9は、チェーン部材の第1止め部、第2止め部、及びダミーエレメントを拡大して示す平面図及び底面図である。
なお、以下の説明において、前後方向とは、スライダーの摺動方向に平行なチェーン部材(又はエレメント部材)の長さ方向を言う。また、前後方向及び長さ方向は、固定部材に沿った方向と言い換えることもできる。この場合、スライダーが左右のエレメント列を噛合させるように摺動する方向を前方とし、左右のエレメント列を分離させるように摺動する方向を後方とする。また、前方及び後方は、開離嵌挿具から離れる方向及び開離嵌挿具に近付く方向と言い換えることもできる。
左右方向とは、チェーン部材の幅方向又はチェーン部材で一対のエレメント部材が並べられる方向を言う。また、左右方向及び幅方向は、スライダーの摺動方向に直交し、且つ、ファスナー被着部材である生地の表面及び裏面に平行な方向と言い換えることもできる。上下方向とは、前後方向と左右方向とに直行する方向を言い、例えばファスナー被着部材である生地の表面及び裏面に直交するチェーン部材(又はエレメント部材)の厚さ方向を言う。特にこの場合、衣服を製造したときに生地の外面側となる向きを上方とし、その反対側の向きを下方とする。また具体的に、本実施例の場合、前後方向は図3の紙面における上下の方向であり、左右方向は図3の紙面における左右の方向である。また、上下方向は図3の紙面における表裏方向を言い、上方は、図3の紙面の手前側の向きであり、下方は、図3の紙面の奥側の向きである。
図2~図5に示す本実施例のチェーン部材10は、例えば図1に要部を示すようなスライドファスナー2が一体的に設けられるスライドファスナー付き衣服(衣料品)1に用いられるものである。この場合、本実施例に係るスライドファスナー付き製品は、スライドファスナー付き衣服(衣料品)1であり、この衣服1において開閉部となる左右の前身頃(特に、前立て部)を形成する生地3に、チェーン部材10が取り付けられる。この場合、衣服の前身頃を構成する生地3(ガーメント生地とも言う)が、チェーン部材10が取着されるファスナー被着部材となる。また、左右の前身頃の生地3における互いに対向する対向縁部が、エレメント取付縁部となる。なお本発明において、衣服の生地は特に限定されるものではなく、選択可能である。
スライドファスナー付き衣服1における左右のエレメント取付縁部には、本実施例のチェーン部材10(図2~図5を参照)を形成する第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12がそれぞれ縫着されており、第1エレメント部材11における複数のファスナーエレメント14と第2エレメント部材12における複数のファスナーエレメント14により、左右のエレメント列13が形成されている。また、左右のエレメント取付縁部の後端部には、蝶棒部20、箱棒部50、及び箱体部5aを有する開離嵌挿具5が、左右のエレメント列13の後端部に隣接して設けられている。なお、図1では、開離嵌挿具5及びその周辺部分を主に図示しており、後述するエレメント列13等の図示は省略されている。
本実施例のチェーン部材10は、図1に示す開離嵌挿具5の一部を形成する蝶棒部20が設けられた左側の第1エレメント部材11と、開離嵌挿具5の一部を形成する箱棒部50が設けられた右側の第2エレメント部材12とを有する。このチェーン部材10では、左側の第1エレメント部材11と右側の第2エレメント部材12とが幅方向に互い略平行に並べられる。また、第1エレメント部材11に形成された左側のエレメント列13と第2エレメント部材12に形成された右側のエレメント列13とが相互に分離可能に噛み合わせられている。
左側の第1エレメント部材11は、1本の紐状の固定部材16と、固定部材16に固着された複数の独立したファスナーエレメント14、蝶棒部(第1構成パーツ部)20、蝶棒側案内部(第1案内部)30、及び第1止め部(蝶棒側止め部)40とを有する。
右側の第2エレメント部材12は、1本の紐状の固定部材16と、固定部材16に固着された複数の独立したファスナーエレメント14、箱棒部(第2構成パーツ部)50、箱棒側案内部(第2案内部)60、第2止め部(箱棒側止め部)70、及びダミーエレメント80とを有する。
本実施例の第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12に用いられる各固定部材16は、前後方向に長尺に形成されているとともに、可撓性を備えている。また、固定部材16は、長さ方向に直交する断面が略円形を呈する細長い部材により形成されている。固定部材16は、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12の長さ方向に関して、蝶棒側案内部30又は箱棒側案内部60よりも更に後方に延出しており、また、第1止め部40又は第2止め部70よりも更に前方に延出して配されている。
固定部材16としては、例えばモノフィラメント、撚糸(撚紐)、又は、引き揃えられた複数本のマルチフィラメントからなる芯糸を、複数の編糸で編成される袋織部で包み込むことにより形成される紐体(ニットコードとも言われる)などを用いることが可能である。第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12では、各固定部材16によって複数のファスナーエレメント14が等間隔に連結されている。
なお本発明において、固定部材16は、可撓性を備え、且つ、複数のファスナーエレメント14を取着可能であれば特に限定されるものではない。また、固定部材16は、断面形状を変えて形成されていてもよい。更に、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12は、複数のファスナーエレメント14を2本以上の固定部材16で連結して形成されていてもよい。
各ファスナーエレメント14は、例えば、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂を1本の固定部材16に射出成形することにより形成されており、また、長さ方向に隣接するファスナーエレメント14とは離間する独立した形態で形成されている。各ファスナーエレメント14は、固定部材16と一体的に、且つ、固定部材16の一部の外周面全体を覆って形成されている。すなわち、各ファスナーエレメント14は、固定部材16の一部を内側に包み込んで形成されている。また、第1エレメント部材11に設けられる蝶棒部20、蝶棒側案内部30、及び第1止め部40と、第2エレメント部材12に設けられる箱棒部50、箱棒側案内部60、第2止め部70、及びダミーエレメント80とは、それぞれ合成樹脂により形成されており、また、ファスナーエレメント14と同じ合成樹脂により形成されていることが好ましい。
なお本発明において、ファスナーエレメント14の材質は、上述した熱可塑性樹脂に限定されるものではない。蝶棒部20、蝶棒側案内部30、第1止め部40、箱棒部50、箱棒側案内部60、第2止め部70、及びダミーエレメント80の材質も特に限定されない。例えばファスナーエレメント14、及び上述したその他の部位は、熱可塑性樹脂以外の合成樹脂又は金属で形成されていてもよい。また、本発明の第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12は、ファスナーエレメント14が射出成形で形成されたものに限定されず、例えば、予め所定の形状に形成されたファスナーエレメント14を、固定部材16に溶着又は接着などによって固着されて形成されていてもよい。
本実施例の各ファスナーエレメント14は、固定部材16に固定されるエレメント胴部15aと、エレメント胴部15aから幅方向に延出するとともに括れた形状を有するエレメント首部15bと、エレメント首部15bから更に幅方向に延出するとともに平面視にて略長円形を呈する噛合頭部15cと、エレメント首部15bから前方及び後方に突出する前後一対の肩部15dとを有する。
エレメント胴部15aは、略直方体状の形態を有するとともに、固定部材16がエレメント胴部15aを前後方向に貫通するように固定部材16を内側に包み込んで形成されている。この場合、固定部材16は、エレメント胴部15aにおける上下方向(エレメント厚さ方向)の中央部に保持されている。噛合頭部15cの頂端部(先端部)には、左右のエレメント列13を噛合させるときに噛合相手側のファスナーエレメント14の肩部15dを嵌入させる図示しない凹溝部が長さ方向に沿って形成されている。なお本発明において、ファスナーエレメント14の形状は特に限定されず、その他の形状を採用することが可能である。
長さ方向に隣接するファスナーエレメント14のエレメント胴部15a間には間隙が形成されており、当該間隙では固定部材16が露出している。エレメント胴部15a間に形成される各間隙では、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12が、縫製糸の第1縫製部6又は第2縫製部7(図1を参照)によってファスナー被着部材(生地)3に縫着されたときに、露出した固定部材16が縫製糸の第1縫製部6又は第2縫製部7によって保持されることによってファスナー被着部材3に固定される。
長さ方向に隣接するファスナーエレメント14の噛合頭部15c間には、後述するように第1エレメント部材11又は第2エレメント部材12をファスナー被着部材(生地)3に縫い付ける縫製加工を行うときに、千鳥縫いミシンに設置された第1搬送ギア92の歯と第2搬送ギア93の歯とを挿入可能なギア挿入間隙17が形成されている(図11~図14を参照)。
蝶棒部(第1構成パーツ部)20は、第1エレメント部材11のエレメント列13の後端部に隣接して配されている。この蝶棒部20とエレメント列13の最も後方側に配されるファスナーエレメント14との間には、所定の間隙が設けられている。
具体的には、蝶棒部20の後述する蝶棒本体部21とファスナーエレメント14のエレメント胴部15aとの間には、隣接するファスナーエレメント14間に形成される間隙と同様の固定部材16が露出する間隙が形成されている。また、後述する蝶棒側係合部23とファスナーエレメント14の噛合頭部15cとの間には、隣接するファスナーエレメント14の噛合頭部15c間に形成されたギア挿入間隙17と同様のギア挿入間隙17が形成されている。
蝶棒部20は、固定部材16に固着される蝶棒本体部(第1パーツ本体部)21と、蝶棒本体部21からチェーン部材10における幅方向の外側に向けて延出する第1ヒレ部(蝶棒側ヒレ部)22とを有する。図6に示すように、蝶棒本体部21は、蝶棒本体部21の前端部に設けられるとともに幅方向の内側に向けて(箱棒部50に向けて)突出する蝶棒側係合部23と、蝶棒本体部21の下半部に設けられるとともに箱棒部50に向けて突出する第1突片部24とを有する。
なお本発明において、チェーン部材10における幅方向の内側及び外側とは、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12の幅方向に関して、それぞれ、相手側のエレメント部材に近付く方向の向き、及び相手側のエレメント部材から離れる方向の向きを言う。また、蝶棒本体部21等の部位における上半部及び下半部とは、それぞれ、その部位における上下方向の中央部よりも上側に配される部分及び下側に配される部分を言う。
本実施例の蝶棒部20における主な形態は、第1ヒレ部22を除いて、前述の特許文献1に記載されている蝶棒部108(図18を参照)と略同様に形成されている。このため、本実施例における蝶棒部20の蝶棒本体部21、蝶棒側係合部23、及び第1突片部24については簡単に説明する。
蝶棒本体部21は、固定部材16を内側に包み込んで形成される略直方体状の部分を有する。蝶棒本体部21における上面と下面との間の厚さ寸法(上下方向の寸法)は、ファスナーエレメント14のエレメント胴部15aにおける厚さ寸法と同じ大きさである。また、蝶棒本体部21の略直方体状の部分における幅寸法(左右方向の寸法)の最大値は、ファスナーエレメント14における幅寸法の最大値と同じ大きさである。このように蝶棒本体部21が形成されていることにより、ミシンを用いて第1エレメント部材11を生地3に縫着する際に、第1エレメント部材11の蝶棒部20を、ファスナーエレメント14と同様に円滑に送りながら生地3に縫い付けることができる。
蝶棒側係合部23は、蝶棒本体部21の上半部に設けられるとともに、チェーン部材10における幅方向の内側に向けて突出している。蝶棒側係合部23は、第2エレメント部材12のエレメント列13の最も後方側に配されるファスナーエレメント14と、箱棒部50の後述する第2突片部53とに対して係合可能な形状を有する。
第1突片部24には、蝶棒側係合部23に隣接するようにギア挿入凹部18が設けられている。ギア挿入凹部18は、第1突片部24の箱棒対向側縁から蝶棒本体部21に向けて凹設されている。このギア挿入凹部18に対し、ミシンに設置される第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93の歯を挿入可能である。
蝶棒部20の第1ヒレ部22は、蝶棒本体部21の上下方向における中央部に連結している。第1ヒレ部22は、蝶棒本体部21から延出する平板状のヒレ本体部22aと、ヒレ本体部22aの前端部に設けられるノッチ部22bと、ヒレ本体部22aから前斜め方向及び後斜め方向に突出する2つの糸掛け部(耳部)22cと、ヒレ本体部22aを表裏方向に貫通する3つの開口部22dとを有する。
ヒレ本体部22aは、蝶棒本体部21の箱棒部50に対向する内側面部とは反対側の外側面部から、チェーン部材10における幅方向の外側に向けて一定の厚さ寸法をもって延出している。ヒレ本体部22aの厚さ寸法は、蝶棒本体部21の厚さ寸法よりも小さい。ヒレ本体部22aは、例えばヒレ本体部22aを上方から見たヒレ本体部22aの平面視において、略矩形状(矩形に近い形状)を有する。例えば本実施例の場合、ヒレ本体部22aの前端縁及び後端縁は、それぞれ幅方向に沿って配される直線部分を有する。また、ヒレ本体部22aの蝶棒本体部21から離れた位置に配される外側縁は、長さ方向又は略長さ方向に沿って延びる直線部分を有する。
ヒレ本体部22aの上面(第1面)及び下面(第2面)には、表面粗さが互いに異なる粗面領域25と平滑面領域26とが形成されている。粗面領域25と平滑面領域26との間には境界部27が設けられている。粗面領域25は、微細な凹凸を備える梨地状の面に形成されており、蝶棒本体部21に隣接して配されている。平滑面領域26は、粗面領域25よりも表面粗さが小さい平坦な面に形成されており、蝶棒本体部21から離間して配されている。本実施例の場合、平滑面領域26は、滑らかに形成されているとともに、光沢を備えている。
ヒレ本体部22aの境界部27は、長さ方向に対して所定の角度で傾斜する方向に沿って直線状に設けられている。この境界部27は、第1エレメント部材11を生地3に縫い付ける縫製加工において、生地3の端縁部の位置を合わせるときの目印として用いられる。それにより、縫製加工において、生地3と蝶棒部20との位置合わせを的確に且つ円滑に行うことができ、縫製加工の作業性及び効率を向上できる。また、製品(スライドファスナー付き衣服)1の品質にばらつきが生じることを抑制し、品質の安定化を図ることができる。
ノッチ部22bは、ヒレ本体部22aの上面(第1面)側に、ヒレ本体部22aの上面に対して凹んだ凹部の形状で設けられている。また、ノッチ部22bは、ヒレ本体部22aの前端部における蝶棒本体部21に近い部分に設けられている。このノッチ部22bの形成位置は、スライドファスナー2を形成したときのスライドファスナー2の平面視(例えば図15~図17を参照)において、スライダー4を摺動させるときに当該スライダー4の上フランジ部4e及び下フランジ部4fがノッチ部22bの領域の少なくとも一部を通過するように(又は、上フランジ部4e及び下フランジ部4fがノッチ部22bの領域の少なくとも一部に重なるように)設定されている。
ノッチ部22bの形態についてより具体的に説明すると、ノッチ部22bは、蝶棒部20の平面視(図6)において、ヒレ本体部22aの前端縁(ヒレ本体部22aにおける長さ方向のエレメント列13に近い側の端縁)から、斜め後方に向けて先細状に延びる略三角形状に凹んで設けられている。また、ノッチ部22bは、平面視において、ノッチ部22bの全体がヒレ本体部22aに囲まれておらず、前方に(具体的には、左斜め前方に)開口した形状を有する。
本実施例のノッチ部22bは、ヒレ本体部22aの上面に平行な底面22b1と、底面22b1からヒレ本体部22aの上面に向けて湾曲面状に形成される周壁部22b2とを有する。このようにノッチ部22bが底面22b1を有することにより、第1ヒレ部22にノッチ部22bを設けても、第1ヒレ部22が適切な強度を有することができる。なお、ノッチ部22bの底面22b1は、ヒレ本体部22aの上面に平行な平面ではなく、例えばヒレ本体部22aの上面に対してヒレ本体部22aの前端縁から先細状の頂点部に向けて上り傾斜するような平坦な傾斜面又は湾曲した曲面に形成されていてもよい。
上述のようなノッチ部22bが第1ヒレ部22に設けられていることにより、ヒレ本体部22aよりも厚さが薄い薄肉部分を、第1ヒレ部22の所定の位置に部分的に設置できる。なお本実施例において、第1ヒレ部22に設けるノッチ部22bの形状及び大きさは特に限定されず、ノッチ部22bは、本実施例の略三角形状以外の形状に形成されていてもよい。また、ノッチ部22bの底面22b1からヒレ本体部22aの上面までの厚さ寸法(すなわち、ノッチ部22bの深さ)も任意に変更できる。
本実施例のノッチ部22bは、上述したように底面22b1を備えた凹部の形態に形成されている。しかし本発明において、ノッチ部は、ヒレ本体部の上面に対して凹んだ形状で設けられていればよい。例えば、ノッチ部は、底面を設けずにヒレ本体部に対して切り欠いたような切れ込み状の形態に形成されていてもよい。すなわち、本発明のノッチ部において、「凹んだ形状」には、厚さがヒレ本体部よりも薄い形状だけではなく、切れ込み状の形状(切り欠かれた形状)も含まれる。また、ノッチ部は、ヒレ本体部の上面(第1面)側ではなく、ヒレ本体部の下面(第2面)側に設けられていてもよく、又は、ヒレ本体部の上面側と下面側の両方に設けられていてもよい。
第1ヒレ部22における上下一対の糸掛け部22cは、ヒレ本体部22aの蝶棒本体部21から離れた上側角部(第1角部)と下側角部(第2角部)とから、それぞれ斜め上方及び斜め下方に突出している。特に本実施例の場合、上下の糸掛け部22cは、ヒレ本体部22aの前端縁又は後端縁における幅方向に沿った直線部分と外側縁の直線部分との間に挟まれて設けられている。上下の糸掛け部22cは、平面視において外周縁が円弧状を呈する丸みを帯びた形状を有する。このような糸掛け部22cがヒレ本体部22aから突出して設けられていることにより、縫製加工を行って蝶棒部20を生地3に縫い付けたときに、蝶棒部20を生地3にしっかりと固定できる。また、生地3に固定された蝶棒部20の位置をずれ難くすることができる。
第1ヒレ部22の3つの開口部22dは、平面視において、それぞれ略楕円形状に設けられており、また、縫製加工に用いるミシンのミシン針が挿通可能な大きさを有する。本実施例の場合、3つの開口部22dは、ヒレ本体部22aに、幅方向における位置を互いに異ならせて設けられている。これにより、ヒレ本体部22aに複数の開口部22dを設けても、ヒレ本体部22aが適切な強度を安定して有することができる。なお本発明において、ヒレ本体部に設ける開口部の個数、位置、大きさ、及び形状等は特に限定されない。
第1エレメント部材11の蝶棒側案内部30は、蝶棒部20の後端部に隣接する位置に固定部材16に取着されて設けられている。蝶棒側案内部30は、互いに離間して形成される複数の蝶棒側案内エレメント31(以下、簡単に案内エレメント31と略記する)により形成されている。本実施例の蝶棒側案内部30は、5つの案内エレメント31を有する。この場合、5つの案内エレメント31を、蝶棒部20に近い方から順番に、第1案内エレメント32~第5案内エレメント36(第1蝶棒側案内エレメント32~第5蝶棒側案内エレメント36)と規定する。
第1案内エレメント32~第5案内エレメント36は、それぞれ、ファスナーエレメント14と異なる形状を有する。また、第1案内エレメント32~第5案内エレメント36は、それぞれ、上下方向に非対称的な形状を有する(上半部と下半部とが異なる形状に形成されている)。
第1案内エレメント32~第5案内エレメント36は、長さ方向において、エレメント列13を形成する複数のファスナーエレメント14の形成ピッチ(形成間隔)と同じ形成ピッチ(形成間隔)で固定部材16に取着されている。このため、5つの案内エレメント31のそれぞれの間には、縫製加工を行う際に千鳥縫いミシンの第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93の歯を挿入可能なギア挿入間隙17が形成されている。
第1案内エレメント32~第5案内エレメント36には、それぞれ、箱棒側案内部60の後述する第1案内エレメント62~第4案内エレメント65の少なくとも1つに係合させることが可能な凹凸形状が形成されている。
具体的に説明すると、第1案内エレメント32は、図6及び図7に示すように、固定部材16を内側に包み込んで形成される略直方体状の案内エレメント本体部32aと、案内エレメント本体部32aからチェーン部材10における幅方向の内側に突出する案内エレメント係合部32bとを有する。また、案内エレメント係合部32bの後端部には、前方に凹状に凹む係合凹部32cと、案内エレメント係合部32bの下半部が上半部に対して下方に突出することによって係合凹部32cの下方に配さる下側重なり部32dとが設けられている。第1案内エレメント32がこのような形状を有することにより、箱棒側案内部60の後述する第1案内エレメント62の一部に円滑に係合させることができる。
第2案内エレメント33は、固定部材16を内側に包み込んで形成される略直方体状の案内エレメント本体部33aと、案内エレメント本体部33aからチェーン部材10における幅方向の内側に突出する案内エレメント係合部33bとを有する。案内エレメント係合部33bの上半部は、ファスナーエレメント14のエレメント首部15b及び噛合頭部15cの部分に対応する形状に形成されている。また、案内エレメント係合部33bは、下半部が上半部に対して前後方向に突出する2つの下側重なり部33cと、上半部が下半部に対して箱棒部50側に突出する上側重なり部33d(図7を参照)とを有する。第2案内エレメント33がこのような形状を有することにより、箱棒側案内部60の第1案内エレメント62の一部と第2案内エレメント63の一部とに円滑に係合させることができる。
第3案内エレメント34及び第4案内エレメント35は、第2案内エレメント33と同じ形状を有する。
第5案内エレメント36は、固定部材16を内側に包み込んで形成される略直方体状の案内エレメント本体部36aと、案内エレメント本体部36aからチェーン部材10における幅方向の内側に突出する案内エレメント係合部36bと、案内エレメント本体部36aからチェーン部材10における幅方向の外側に突出する突片部36cと有する。案内エレメント係合部36bは、上半部が下半部に対して箱棒部50側に突出する上側重なり部36d(図7を参照)を有する。第5案内エレメント36がこのような形状を有することにより、箱棒側案内部60の第4案内エレメント65の一部に円滑に係合させることができる。
上述のように、蝶棒側案内部30が、分割された複数の案内エレメント31によって形成されていることにより、例えば図18に示した前記特許文献1の第1案内部109に比べて、ミシンに設置される第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93の歯を蝶棒側案内部30の幅方向に深く挿入して、引っ掛かり易くすることができる。更に、本実施例の蝶棒側案内部30では、各案内エレメント31の上半部と下半部の両方に、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93を噛み合わせることができる。これにより、ミシンによる縫製加工において、第1エレメント部材11を第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で安定して搬送することができる。
なお本発明において、蝶棒側案内部を形成する蝶棒側案内エレメントの個数、及び各蝶棒側案内エレメントのそれぞれの形状は特に限定されるものではない。例えば、本実施例における第2蝶棒側案内エレメント33~第4蝶棒側案内エレメント35を、ファスナーエレメント14と同じ形状に形成することも可能である。
第1エレメント部材11の第1止め部40は、図8及び図9に示すように、エレメント列13の前端部に隣接して設けられている。この第1止め部40とエレメント列13の前端部との間には、長さ方向に隣接するファスナーエレメント14間に形成されたギア挿入間隙17と同様のギア挿入間隙が形成されている。また、第1止め部40における幅寸法の最大値は、ファスナーエレメント14における幅寸法の最大値と同じである。
第1止め部40は、固定部材16を内側に包み込んで形成される第1止め本体部41と、第1止め本体部41からチェーン部材10における幅方向の内側に突出する第1止め係合部42とを有する。第1止め係合部42は、第1止め部40の平面視(図8)において、凹状に湾曲するとともに第2エレメント部材12のダミーエレメント80に係合するダミーエレメント側係合部43と、第2止め部70の一部と上下方向に重なり合う下側重なり部44とを有する。第1止め部40の下側重なり部44は、第1止め部40の下半部が上半部よりも突出することにより形成されている。
また、第1止め係合部42には、上述したように、第1止め部40の平面視において凹状に凹んだダミーエレメント側係合部43が設けられている。例えば第1エレメント部材11を生地3に縫い付ける本実施例の縫製加工では、第1止め部40の近傍に縫製を行う際に、ミシン針が、例えば図8に仮想線の円で示すように、第1止め部40とファスナーエレメント14との間の固定部材16に隣接する針落ち位置48内において上下方向に昇降し、それによって、ステッチ(第1縫製部6のステッチ)が形成される。この場合、第1止め係合部42は、第1エレメント部材11の最も前端側で固定部材16に取着されているため、縫製加工中に第1止め係合部42の姿勢(特に上下方向に対する第1止め係合部42の姿勢)が前後に傾く可能性がある。これに対し、本実施例の第1止め部40には凹状のダミーエレメント側係合部43が設けられていることにより、例えば縫製加工中に第1止め係合部42の姿勢が前後に傾いたとしても、上下方向に昇降するミシン針を第1止め部40に接触させ難くすることができる。これにより、縫製加工を円滑に行って、第1エレメント部材11を生地3に安定して縫着することができる。
第2エレメント部材12における開離嵌挿具5の一部を形成する箱棒部(第2構成パーツ部)50は、図6及び図7に示すように、第2エレメント部材12のエレメント列13の後端部に隣接して配されている。この箱棒部50とエレメント列13のファスナーエレメント14との間には、千鳥縫いミシンの第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93に対するギア挿入間隙17が形成されている。
箱棒部50は、固定部材16に固着される箱棒本体部(第2パーツ本体部)51と、箱棒本体部51からチェーン部材10における幅方向の外側に向けて延出する第2ヒレ部(箱棒側ヒレ部)52とを有する。図6及び図7に示すように、箱棒本体部51は、箱棒本体部51の上半部に設けられるとともに蝶棒部20に向けて突出する第2突片部53と、箱棒本体部51の下半部に設けられるとともに蝶棒部20に向けて突出し、且つ第2突片部53に一体的に形成される前側凸部54a及び後側凸部54bとを有する。この場合、本実施例の箱棒部50における主な形態は、第2ヒレ部52を除いて、前述の特許文献1に記載されている箱棒部113(図18を参照)と略同様に形成されている。このため、本実施例における箱棒部50の箱棒本体部51、第2突片部53、前側凸部54a、及び後側凸部54bについては簡単に説明する。
箱棒本体部51は、固定部材16を内側に包み込んで形成される略直方体状の部分を有する。箱棒本体部51における上面と下面との間の厚さ寸法(上下方向の寸法)は、ファスナーエレメント14のエレメント胴部15aにおける厚さ寸法と同じ大きさである。また、箱棒本体部51の略直方体状の部分における幅寸法の最大値は、ファスナーエレメント14における幅寸法の最大値と同じ大きさである。
箱棒本体部51は、蝶棒本体部21よりも長さ寸法(前後方向の寸法)を短くして形成されている。更に、箱棒本体部51は、開離嵌挿具5を形成する箱体部5aを装着可能に形成されている(図1を参照)。このため、箱棒本体部51の下面には、箱体部5aの図示しない弾性爪部を挿入して係合させる係合凹部51aが設けられている(図7を参照)。
箱棒部50の第2突片部53は、蝶棒部20の第1突片部24に対し、第1突片部24の上側に重なり合うことが可能に形成されている。第2突片部53の前端部には、蝶棒部20の蝶棒側係合部23に係合可能な箱棒側係合部53aが設けられている。第2突片部53の蝶棒部20に対向する対向側縁部には、ギア挿入凹部18が設けられている。箱棒部50の前側凸部54aと後側凸部54bとは、前側凸部54aと後側凸部54bとの間に蝶棒部20の第1突片部24の一部を挿入して収容可能に設けられている。
箱棒部50の第2ヒレ部52は、箱棒本体部51の上下方向における中央部に連結している。この第2ヒレ部52は、蝶棒部20の第1ヒレ部22と左右対称的な形状で形成されている。すなわち、第2ヒレ部52は、第1ヒレ部22と同様に、箱棒本体部51から延出する平板状のヒレ本体部52aと、ヒレ本体部52aの前端部に設けられるノッチ部52bと、ヒレ本体部52aから前斜め方向及び後斜め方向に突出する2つの糸掛け部(耳部)52cと、ヒレ本体部52aを表裏方向に貫通する3つの開口部52dとを有する。
ヒレ本体部52aの上面には、表面粗さが互いに異なる粗面領域55と平滑面領域56とが形成されている。粗面領域55と平滑面領域56との間には、境界部57が長さ方向に対して所定の角度で傾斜する方向に沿って設けられている。
なお、第2ヒレ部52における上述した各部位は、第1ヒレ部22の対応する部位と左右対称的に形成されていることを除いて、実質的に同様に形成されている。このため、冗長を避けるため、第2ヒレ部52の各部位に関する詳しい説明を省略する。
本実施例のチェーン部材10において、第1ヒレ部22に設けたノッチ部22bの前端縁(前方に開口した端縁)から、第2ヒレ部52に設けたノッチ部52bの前端縁(前方に開口した端縁)までの幅寸法の最大値Wmは(図3を参照)、スライダー4の後口側端部における幅寸法よりも大きく形成されている。これにより、スライダー4を摺動させるときに、スライドファスナー付き衣服1の平面視において(例えば図16及び図17を参照)、スライダー4の上フランジ部4e及び下フランジ部4fが、第1ヒレ部22及び第2ヒレ部52に設けたノッチ部22b,52bの形成領域上を安定して通過できる。
第2エレメント部材12の箱棒側案内部60は、箱棒部50の後端部に隣接する位置に固定部材16に取着されて設けられている。箱棒側案内部60は、互いに離間して形成される複数の箱棒側案内エレメント61(以下、簡単に案内エレメント61と略記する)により形成されている。本実施例の箱棒側案内部60は、4つの案内エレメント61を有する。この場合、4つの案内エレメント61を、箱棒部50に近い方から順番に、第1案内エレメント62~第4案内エレメント65(第1箱棒側案内エレメント62~第4箱棒側案内エレメント65)と規定する。
第1案内エレメント62~第4案内エレメント65は、それぞれ、ファスナーエレメント14と異なる形状を有しており、また、上下方向に非対称的な形状を有する。第1案内エレメント62~第4案内エレメント65のそれぞれの間には、縫製加工を行う際に千鳥縫いミシンの第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93の歯を挿入可能なギア挿入間隙17が形成されている。箱棒側案内部60のギア挿入間隙17は、長さ方向において、エレメント列13を形成する複数のファスナーエレメント間に形成されるギア挿入間隙17と実質的に同様の大きさで形成されている。
箱棒側案内部60の第1案内エレメント62~第4案内エレメント65には、それぞれ、蝶棒側案内部30の第1案内エレメント32~第5案内エレメント36のうちの2つに係合させることが可能な凹凸形状が形成されている。
具体的に説明すると、箱棒側案内部60の第1案内エレメント62は、固定部材16を内側に包み込んで形成される略直方体状の案内エレメント本体部62aと、案内エレメント本体部62aの後端部から蝶棒部20に向けて延出する案内エレメント係合部62bと、案内エレメント本体部62aの前端部から蝶棒部20に向けて延出するギア用挿入部62cとを有する。案内エレメント係合部62bの上半部は、ファスナーエレメント14のエレメント首部15b及び噛合頭部15cの部分に対応する形状を有する。また、案内エレメント係合部62bは、下半部が上半部に対して後方に突出する下側重なり部62dと、上半部が下半部に対して蝶棒部20側に突出する上側重なり部62e(図7を参照)とを有する。箱棒側案内部60の第1案内エレメント62がこのような形状を有することにより、第1案内エレメント62を蝶棒側案内部30の第1案内エレメント32の一部と第2案内エレメント33の一部とに円滑に係合させることができる。
箱棒側案内部60の第2案内エレメント63及び第3案内エレメント64は、蝶棒側案内部30の第2案内エレメント33に対して左右対称的な形状を有する。
箱棒側案内部60の第4案内エレメント65は、図6及び図7に示すように、固定部材16を内側に包み込んで形成される案内エレメント本体部65aと、案内エレメント本体部65aからチェーン部材10における幅方向の内側に突出する案内エレメント係合部65bとを有する。また、第4案内エレメント65の上面には、三角形状に凹む目印65cが設けられている。
この第4案内エレメント65の案内エレメント係合部65bは、凹状に湾曲するとともに蝶棒側案内部30の第4案内エレメント35に係合する凹状係合部65fと、第4案内エレメント65の下半部が上半部よりも突出することにより形成される下側重なり部65dと、第4案内エレメント65の上半部が下半部よりも突出することにより形成される上側重なり部65e(図7を参照)とを有する。これにより、箱棒側案内部60の第4案内エレメント65を蝶棒側案内部30の第4案内エレメント35の一部と第5案内エレメント36の一部とに円滑に係合させることができる。
上述のように箱棒側案内部60を、分割された複数の案内エレメント61によって形成することにより、蝶棒側案内部30の場合と同様に、ミシンに設置される第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93の歯を箱棒側案内部60に深く挿入して、引っ掛かり易くすることができる。更に、本実施例の箱棒側案内部60では、各案内エレメント61の上半部と下半部の両方に、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93を噛み合わせることができる。これにより、ミシンによる縫製加工において、第2エレメント部材12を第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で安定して搬送することができる。
また、蝶棒側案内部30及び箱棒側案内部60が、それぞれ、分割された複数の案内エレメント31,61によって形成されることにより、第1エレメント部材11の蝶棒側案内部30が設けられている部分の柔軟性と、第2エレメント部材12の箱棒側案内部60が設けられている部分の柔軟性とを容易に高めることができる。
例えば図18に示した前記特許文献1のチェーン部材100を製造する場合、第1エレメント部材101と第2エレメント部材102とをそれぞれ別々に作製し、その後、得られた第1エレメント部材101及び第2エレメント部材102を、所定の形状を有する「噛み合わせ部材」に同時に挿入して噛み合わせている。しかしこの場合、特許文献1の第1案内部109及び第2案内部114は、固定部材105に沿った細長い形態をそれぞれ有する。このため、第1エレメント部材101及び第2エレメント部材102を上述した「噛み合わせ部材」に通したときに、細長い第1案内部109及び第2案内部114が「噛み合わせ部材」内で引っ掛かることがあった。その結果、チェーン部材100の生産性、及び製造効率の低下を招くことが考えられた。
これに対し、本実施例のチェーン部材10では、蝶棒側案内部30の部分と箱棒側案内部60の部分における柔軟性が高められているため、所定の形状を有する「噛み合わせ部材」に、第1エレメント部材11と第2エレメント部材12とを同時に挿入して噛み合わせるときに、その「噛み合わせ部材」内で蝶棒側案内部30及び箱棒側案内部60を、例えば図18に示した前記特許文献1の第1案内部109及び第2案内部114に比べて引っ掛かり難くすることができる。それにより、チェーン部材10の生産性、及び製造効率の向上を図ることができる。更に、蝶棒側案内部30及び箱棒側案内部60が、それぞれ、分割された複数の案内エレメント31,61によって形成されることにより、蝶棒側案内部30及び箱棒側案内部60の設計自由度が拡大されるという利点も得られる。
なお本発明において、箱棒側案内部を形成する箱棒側案内エレメントの個数、及び各箱棒側案内エレメントのそれぞれ形状は特に限定されるものではない。例えば、本実施例における第2箱棒側案内エレメント63及び第3箱棒側案内エレメント64を、ファスナーエレメント14と同じ形状に形成することも可能である。
第2エレメント部材12には、エレメント列13の前端部に隣接するダミーエレメント80と第2止め部70とが、エレメント列13を形成する複数のファスナーエレメント14の形成ピッチ(形成間隔)と同じ形成ピッチで固定部材16に取着されている。本実施例のチェーン部材10において、第2止め部70は、第1止め部40よりもエレメント列13から離れた前方側の位置に配されている(図3を参照)。
この場合、第2止め部70とダミーエレメント80の間と、ダミーエレメント80とエレメント列13の最も前端部に配されるファスナーエレメント14の間とには、長さ方向に隣接するファスナーエレメント14の噛合頭部15c間に形成されたギア挿入間隙17と同様のギア挿入間隙17が形成されている。また、第2止め部70及びダミーエレメント80におけるそれぞれの幅寸法の最大値は、ファスナーエレメント14における幅寸法の最大値と同じである。
第2止め部70は、図8~図10に示すように、固定部材16を内側に包み込んで形成される第2止め本体部71と、第2止め本体部71の上面から上方に突出する上側突起部72とを有する。第2止め本体部71は、固定部材16が前後方向に貫通する第2止め固定部73と、第2止め固定部73からチェーン部材10における幅方向の内側に突出する第2止め係合部74とを有する。なお本発明の第2止め部70には、上側突起部72の代わりに、第2止め本体部71の下面から下方に突出する下側突起部が設けられていてもよく、又は、上側突起部72と下側突起部の両方が1つの第2止め部70に設けられていてもよい。
上側突起部72は、スライドファスナー2が形成されたときに、スライダー4の上翼板4bを第2止め部70の上側突起部72に当接させることによって、スライダー4の摺動を停止させることが可能である。また、上側突起部72は、図10に示したように、第2止め係合部74の第1エレメント部材11に対向する先端面(対向面)の位置に対して、チェーン部材10における幅方向の外側(右側)にずれた位置に配されている。このため、第2止め係合部74の上記先端面の位置と上側突起部72との間には、小さな空間部(逃がし部)75が設けられている。
例えば、固定部材16に合成樹脂の射出成形を行って第2止め部70を形成する場合、第2止め部70が冷却して硬化した後、図10に仮想線(二点鎖線)で示すように、第2止め部70とゲート78の間をカッター部材79で切断して第2止め部70をゲート78から切り離す作業が行われる。このとき、第2止め部70に上述した空間部(逃がし部)75が設けられていることにより、カッター部材79で上述した切断加工を行うときに、カッター部材79が上側突起部72に接触することを抑制し、カッター部材79で第2止め部70とゲート78とを所定の位置で切り離し易くすることができる。その結果、射出成形後の第2止め部70にゲート残り等の不具合が発生することを防止又は抑制できる。
第2止め部70の第2止め係合部74は、第2止め部70の上半部が下半部よりも突出することにより形成される上側重なり部74a(図9を参照)を有する。この第2止め係合部74の上側重なり部74aは、第1エレメント部材11と第2エレメント部材12を組み合わせてチェーン部材10を形成したときに、第1止め部40の下側重なり部44と上下方向に重なり合う。
第2エレメント部材12のダミーエレメント80は、第2止め部70とエレメント列13の間で固定部材16に取着されている。ダミーエレメント80は、固定部材16を内側に包み込んで形成されるダミー本体部81と、ダミー本体部81からチェーン部材10における幅方向の内側に突出するダミー係合部82とを有する。ダミー係合部82は、ダミーエレメント80の後半部に設けられるとともに第1エレメント部材11のファスナーエレメント14に係合するエレメント側係合部83と、ダミーエレメント80の前半部に設けられるとともに第1止め部40に係合する止め側係合部84とを有する。
ダミー係合部82のエレメント側係合部83は、ダミーエレメント80の平面視において、ファスナーエレメント14のエレメント首部15b、噛合頭部15c、及び肩部15dを備えた形状に近い形状を有する。また、エレメント側係合部83における噛合頭部15cの下半部には、図9に示すように、切り欠かれたように凹んだ凹部83aが設けられている。このような凹部83aがダミーエレメント80に設けられていることにより、第2エレメント部材12を生地3に縫い付ける縫製加工時に、上下方向に昇降するミシン針をダミーエレメント80に接触させ難くすることができる。ダミー係合部82の止め側係合部84は、ダミーエレメント80の平面視において、ファスナーエレメント14のエレメント首部15b及び噛合頭部15cを備えた形状に近い形状を有する。
図2及び図3に示した本実施例のチェーン部材10は、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12の左右のエレメント列13が互いに噛み合わされて形成されている。また、第1エレメント部材11の蝶棒部20、蝶棒側案内部30、及び第1止め部40と、第2エレメント部材12の箱棒部50、箱棒側案内部60、及び第2止め部70とがそれぞれ互いに係合して組み合わされている。これにより、チェーン部材10の搬送、保管、及び管理等を容易に且つ安定して行うことができる。
この場合、互いに組み合わせられた蝶棒部20(第1ヒレ部22を除く)と箱棒部50(第2ヒレ部52を除く)におけるチェーン幅方向の寸法、互いに組み合わせられた蝶棒側案内部30と箱棒側案内部60におけるチェーン幅方向の寸法、及び、互いに組み合わせられた第1止め部40と第2止め部70及びダミーエレメント80とにおけるチェーン幅方向の寸法は、互いに噛み合わせられた左右のエレメント列13におけるチェーン幅方向の寸法とそれぞれ同じ大きさである。ここで、チェーン幅方向の寸法とは、互いに組み合わせられる部分又は噛み合わせられる部分の一方の外側面(例えば左側面)から他方の外側面(例えば右側面)までの幅方向の寸法を言い、例えば蝶棒部20と箱棒部50におけるチェーン幅方向の寸法とは、蝶棒部20の蝶棒本体部21の外側面(左側面)から箱棒部50の箱棒本体部51の外側面(右側面)までの幅方向の寸法を言う。
すなわち、本実施例のチェーン部材10では、チェーン部材10の長さ方向の全体に亘ってチェーン幅方向の寸法が同じ大きさとなる。これにより、本実施例のチェーン部材10を、例えば所定の幅で形成される搬送路や搬送凹溝上でフィードローラを用いて搬送する際に、チェーン部材10が搬送路や搬送凹溝に引っ掛かることや、搬送路や搬送凹溝内で左右に揺れることを防いで、チェーン部材10の搬送を円滑に行うことができる。
なお、上述したようにチェーン幅方向の寸法が同じ大きさであるとは、各部分におけるチェーン幅方向の寸法の最大値が同じであることを意味する。例えばチェーン幅方向の寸法が局部的に小さくなる場合であっても、各部分のチェーン幅方向の寸法の最大値が同じであれば、本発明の場合、チェーン幅方向の寸法は同じ大きさである。更に本発明において、寸法が同じであることには、±20%の誤差が含まれる。
以上のような本実施例のチェーン部材10は、例えば衣服において開閉部となる前身頃(特に、前立て部)を形成する生地3に取り付けられる。更にその後、スライダー4をエレメント列13に取り付けるとともに、箱棒部50に箱体部5aを取り付けることによって、開離嵌挿具5を有するスライドファスナー付き衣服1が製造される。
本実施例のスライドファスナー付き衣服1を製造する場合、チェーン部材10を左側の第1エレメント部材11と右側の第2エレメント部材12に一度分離し、先ず、第1エレメント部材11と第2エレメント部材12とを、例えば所定の形状に裁断された左右の生地3(生地パーツ)にそれぞれ縫着する縫製加工を行う。
この縫製加工は、千鳥縫いミシンを用いて行われる。千鳥縫いミシンでは、上糸(針糸)及び下糸(ボビン糸)からなる縫製糸で、生地3の表面及び裏面に縫製部(第1縫製部6又は第2縫製部7)を形成しながら、その縫製部で第1エレメント部材11又は第2エレメント部材12を生地3に固定できる。本実施例で用いる千鳥縫いミシンは、前述の特許文献1で用いられる千鳥縫いミシンと実質的に同様に形成されている。
例えば図11~図14等に示すように、本実施例で用いる千鳥縫いミシンの針板90には、第1エレメント部材11のファスナーエレメント14、蝶棒部20、蝶棒側案内部30、及び第1止め部40を挿通可能で、また、第2エレメント部材12のファスナーエレメント14、箱棒部50、箱棒側案内部60、第2止め部70、及びダミーエレメント80を挿通可能な挿通溝部91が設けられている。この挿通溝部91の溝幅寸法を、ファスナーエレメント14における幅寸法の最大値に対応させることによって、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12を、挿通溝部91に引っ掛からせることなく、挿通溝部91に沿って円滑に送ることができる。
本実施例の千鳥縫いミシンには、図11~図14に示したように、ミシンの送り動作に同期して回転する上流側の第1搬送ギア92及び下流側の第2搬送ギア93の2つの搬送ギアが所定の位置に設置されている。なお、図11~図14では、本発明の特徴を判り易く示すため、第1エレメント部材11又は第2エレメント部材12が縫い付けられる生地3の図示が省略されている。
本実施例では、図11~図14に示した第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93がそれぞれ時計回り方向に回転しながら、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93に配された各歯を、第1エレメント部材11又は第2エレメント部材12に設けられたギア挿入間隙17及びギア挿入凹部18に順番に挿入することによって、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12を、ミシン針の昇降動作に合わせて安定して下流側(図11~図14における紙面の上方)に搬送できる。
本実施例の縫製加工において、例えば第1エレメント部材11又は第2エレメント部材12を生地3に縫着する場合、千鳥縫いミシンに、図1に仮想線の円で示したような針落ち位置94(前述した図8の針落ち位置48を含む)の座標データを予め設定する。なお、第1エレメント部材11又は第2エレメント部材12と生地3とに対して設定する針落ち位置94は、図1に示した位置に限定されず、任意に変更可能である。
先ず、第1エレメント部材11を生地3に縫着するために、千鳥縫いミシンの針板90の上に、第1エレメント部材11と生地3とを、第1エレメント部材11の第1止め部40側から縫製が開始するように所定の位置にセットして縫製加工を行う。このとき、第1ヒレ部22の上に生地3が載置される。なお本発明で縫製加工を行う場合、生地3の上に第1ヒレ部22が載置されてもよい。また、第1エレメント部材11の縫製加工を開始するときと終了するときには、縫製糸の解れを生じ難くするために、図示しない縫製端部を形成する返し縫いが行われる。
加工開始時の返し縫いを行った後、図11に示すように、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で第1エレメント部材11を搬送しながらミシン針を昇降させることにより、千鳥縫いミシンの送り方向に対してジグザグ状に折れ曲がる千鳥縫いが本縫いにより行われる。これにより、生地3のエレメント取付縁部と第1エレメント部材11とに対して、第1縫製部6の一部として、図示しないジグザグ状のエレメント縫製部を形成しながら、そのエレメント縫製部で第1エレメント部材11の第1止め部40及び複数のファスナーエレメント14(エレメント列13)を、生地3のエレメント取付縁部に固定する。
更に本実施例の第1エレメント部材11の場合、エレメント列13をジグザグ状のエレメント縫製部で固定した後、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で第1エレメント部材11を搬送しながら、第1縫製部6の一部として、図1に示すような、蝶棒部20の第1ヒレ部22を生地3に固定する第1縫製部6の蝶棒縫製部を形成する。この蝶棒縫製部によって第1エレメント部材11の蝶棒部20を、生地3のエレメント取付縁部に固定する。
このとき、蝶棒部20の上流側に蝶棒側案内部30が設けられているため、蝶棒部20の縫製を行う際に、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で第1エレメント部材11を安定して搬送でき、それによって、蝶棒部20の周囲に第1縫製部6を形成して蝶棒部20を生地3に固定できる。更に、第1縫製部6を、当該第1縫製部6が蝶棒部20の第1ヒレ部22に設けた2つの糸掛け部22cを横断するように形成することにより、第1縫製部6によって蝶棒部20をしっかりと安定して固定できる。
また本実施例では、蝶棒部20が縫い付けられる生地3の後端部における内側側縁部が、長さ方向に対して斜めに形成されている。このため、本実施例では、生地3の斜めに形成された内側側縁部の位置と蝶棒部20の位置とを、蝶棒部20の第1ヒレ部22に設けた境界部27を目印にして所定の位置関係となるように合わせることができる。それにより、蝶棒部20を生地3の所定位置に容易に且つ安定して重ね合わせて、取り付けることが可能となる。その結果、縫製加工の作業性及び効率を向上させることができる。また、スライドファスナー付き衣服1の品質にばらつきが生じることを抑制できる。
第1縫製部6を形成した後、縫製糸の解れを生じ難くするため、第1縫製部6に交差するように図示しない返し縫いが連続して行われる。なお本実施例において、縫製加工の開始時と終了時に形成する縫製端部は、返し縫いではなく、閂止め縫いで形成されていても良い。
上述のような縫製加工を行うことにより、第1縫製部6を形成するとともに、その第1縫製部6で、第1エレメント部材11を生地3のエレメント取付縁部にしっかりと安定して縫着できる。
一方、第2エレメント部材12を生地3に縫着する場合、図13に示すように、千鳥縫いミシンの針板90の上に、第2エレメント部材12と生地3とを、第2エレメント部材12の箱棒部50側から縫製が開始するように所定の位置にセットして縫製加工を行う。このとき、第2ヒレ部52の上に生地3が載置される。この第2エレメント部材12の縫製加工を行う場合、第1エレメント部材11の縫製加工の場合とは反対に、第2縫製部7を形成しながら、先ず第2エレメント部材12の箱棒部50を生地3に固定する(図13を参照)。このとき、箱棒部50の下流側に箱棒側案内部60が設けられているため、第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で第2エレメント部材12を安定して搬送しながら、箱棒部50を生地3に固定できる。その後、第2エレメント部材12を、図14に示すように第1搬送ギア92及び第2搬送ギア93で更に送りながら、第2エレメント部材12の複数のファスナーエレメント14、ダミーエレメント80、及び第2止め部70を順番に生地3に固定する。
箱棒部50を生地3に縫い付ける際には、蝶棒部20の場合と同様に、第2縫製部7を、当該第2縫製部7が箱棒部50の第2ヒレ部52に設けた2つの糸掛け部52cを横断するように形成する。また、生地3の斜めに形成された側縁部の位置と箱棒部50の位置とを、箱棒部50の第2ヒレ部52に設けた境界部57を目印にして所定の位置関係となるように合わせる。これにより、箱棒部50の縫製加工においても、蝶棒部20の縫製加工と同様の効果が得られる。
また、この第2エレメント部材12の縫製加工においても、縫製加工の開始時と終了時には、図示しない直線状の返し縫い又は閂止め縫いが行われて縫製端部が形成される。これにより、第2エレメント部材12を第2縫製部7で生地3のエレメント取付縁部にしっかりと安定して縫着できる。
更に本実施例の場合、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12を千鳥縫いミシンで生地3にそれぞれ縫着する際に、上述したように、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12に蝶棒側案内部30及び箱棒側案内部60が設けられた状態のまま、縫製加工が行われる。これにより、縫製加工中に、第1エレメント部材11の蝶棒部20及び第2エレメント部材12の箱棒部50が左右方向に揺動するといった不具合やエレメント列13に対して捩じるといった不具合を生じさせることなく、蝶棒部20及び箱棒部50を生地3の所定位置に安定して固定できる。
そして、以上のような縫製加工を行って、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12を、衣服の前身頃を構成する左右の生地3にそれぞれ縫い付けた後、第1エレメント部材11における蝶棒部20と蝶棒側案内部30との間に露出する固定部材16を切断加工して、蝶棒側案内部30を第1エレメント部材11から除去する。このとき、固定部材16の切断加工によって、固定部材16には、蝶棒部20の後方に(又は、蝶棒部20の後端と同じ長さ位置に)、切断痕又は切断面等のような切断部が形成される。また、第2エレメント部材12も同様に、箱棒側案内部60が切断加工で除去されるとともに、第2エレメント部材12の固定部材16に、切断痕又は切断面等のような切断部が形成される。
その後、第2エレメント部材12のエレメント列13に、スライダー4を取り付ける。また、第2エレメント部材12の箱棒部50に、箱棒部50とは別途に成形された箱体部5aを後方側から近づけて、箱体部5aの図示しない箱棒挿入孔部に箱棒部50を挿入する。これにより、箱棒部50に箱体部5aが固定されて、図1に示した蝶棒部20、箱棒部50、及び箱体部5aを備える本実施例の開離嵌挿具5が形成される。
なお、上述したスライダー4には、従来の合成樹脂製のファスナーエレメントを備えたスライドファスナーに対して一般的に用いられるスライダーと実質的に同様のスライダーが用いられる。例えば本実施例のスライダー4は、スライダー胴体4aと、スライダー胴体4aに保持される図示しない引手とを備える。また、スライダー胴体4aは、全体の構造の図示を省略するが、上翼板4b及び下翼板4cと、上翼板4bの前端部及び下翼板4cの前端部間を連結する連結柱4dと、上翼板4bの左右側縁部から下方に延出する左右の上フランジ部4eと、下翼板4cの左右側縁部から上方に延出する左右の下フランジ部4fと、上翼板4bの上面に立設される引手取付部と有する(なお、図15~図17では、引手取付部の図示が省略されている)。スライダー胴体4aにおける左右の上フランジ部4eと左右の下フランジ部4fとの間には、生地3を挿通させるための挿通間隙が形成されている。
以上の工程を行うことにより、第1エレメント部材11と第2エレメント部材12とがそれぞれ取着された左右一対の前身頃を構成する衣服構成パーツが作製される。その後、作製した各部位の衣服構成パーツを互いに縫製等により結合させて、衣服を組み立てる。これによって、開離嵌挿具5を備えるスライドファスナー2が形成されたスライドファスナー付き衣服1が製造される。
このようにして製造された本実施例のスライドファスナー付き衣服1では、ファスナーテープの存在を省略した形態で、スライドファスナー2の機能を有することができる。これにより、スライドファスナー付き衣服1について、製造コストの削減、衣服の軽量化、衣服の柔軟性の向上を実現できる。
また、スライドファスナー2の後端部に開離嵌挿具5が設けられるため、スライドファスナー2の分離及び連結を容易に行うことができる。例えば左右の第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12が分離している状態からスライドファスナー2を閉じる場合には、先ず生地3に取り付けた蝶棒部20を、図15に示した矢印8aのようにスライダー4の内部に挿入し、更に図16に示したように蝶棒部20をスライダー4と箱体部5aとに収容する。その後、図17に示した矢印9のようにスライダー4を前方(エレメント列13の噛合方向)に摺動させることにより、スライドファスナー2を容易に閉じることができる。
また、閉じているスライドファスナー2を開く場合には、スライダー4を後方(エレメント列13の分離方向)に向けて摺動させて、図16に示したようにスライダー4を箱体に接触させる。その後、スライダー4及び箱体部5aに収容されている蝶棒部20を、図15に示した矢印8bのように前方に向けて引っ張ることによって、蝶棒部20をスライダー4及び箱体部5aから抜出させる。これにより、スライドファスナー2を開いて、左右の第1エレメント部材11と第2エレメント部材12を完全に分離させることができる。
また、本実施例で製造されたスライドファスナー付き衣服1では、第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12が取着される生地3が厚い場合がある。例えば図18に示した前記特許文献1のチェーン部材100の場合、厚い生地に第1エレメント部材101及び第2エレメント部材102が取着されると、前述したように、スライダーの左右側縁部に設けられた挿通間隙に、蝶棒側ヒレ部108b(又は箱棒側ヒレ部113b)と生地とが挟まることや引っ掛かることがあった。
これに対して、本実施例で製造されたスライドファスナー付き衣服1では、蝶棒部20の第1ヒレ部22及び箱棒部50の第2ヒレ部52にそれぞれノッチ部22b,52bが設けられている。これにより、生地3の厚さをノッチ部22b,52bで吸収できる。従って、例えば図15に示したように蝶棒部20をスライダー4及び箱体部5aに挿入するとき又は箱体部5aから抜出させるときや、図17に示したようにスライダー4を箱体部5aから前方に摺動させるとき又はスライダー4を摺動させて開離嵌挿具5に当接させるときに、スライダー4の左右の挿通間隙に、第1ヒレ部22(又は第2ヒレ部52)と生地3とが挟まることや引っ掛かることを抑制できる。その結果、スライダー4を摺動させるときの抵抗を小さく抑えて、スライドファスナー2の操作性及び使い勝手を向上できる。
更に、本実施例のスライドファスナー付き衣服1では、上述したように、蝶棒部20及び箱棒部50が縫い付けられる左右の生地3の内側側縁部が、長さ方向に対して斜めに形成されている(図1を参照)。それとともに、蝶棒部20及び箱棒部50に設けた境界部27,57を目印にして縫製加工を行うことにより、蝶棒部20及び箱棒部50が生地3に対して所定の位置に安定して取り付けられている。
これにより、蝶棒部20をスライダー4及び箱体部5aに挿し込むときに(図15)、及びスライダー4を箱体部5aの近傍で摺動させるときに(図17)、スライダー4の上フランジ部4e及び下フランジ部4fと、生地3の側縁部とをより重なり難くすることができる。このため、厚い生地3に第1エレメント部材11及び第2エレメント部材12が取着されても、スライダー4の左右の挿通間隙に、第1ヒレ部22又は第2ヒレ部52と生地3とが挟まることや引っ掛かることをより効果的に抑制できる。
また、本実施例のスライドファスナー付き衣服1では、第1止め部40が、長さ方向に関して、上側突起部72を備えた第2止め部70よりもエレメント列13に近い側(後方側)に配されている。このため、図示を省略するが、スライダー4をスライドファスナー2の閉鎖方向に摺動させて第2止め部70の上側突起部72に当接させたときに、第1止め部40がスライダー4内に収容されて外部から見え難くなる、又は外部から見えなくなる。
例えば図18に示した前記特許文献1のチェーン部材100を用いて製造されたスライドファスナー付き製品の場合、第1止め部107が、突起部を備えた第2止め部112よりもエレメント列から離れて配されている。このため、スライダーをスライドファスナーの閉鎖方向に摺動させて第2止め部112に当接させたときに、第1止め部107の少なくとも一部がスライダーの外側に配されて露呈する。その結果、スライドファスナー付き製品におけるスライドファスナーを閉鎖したときの外観品質を低下させることが考えられる。
これに対し、本実施例のスライドファスナー付き衣服1では、第2止め部70に当接させたスライダー4内に、第1止め部40が収容されて外部から見え難くなる、又は外部から見えなくなる。このため、例えば図18に示した前記特許文献1のチェーン部材100が用いられる場合に比べて、スライドファスナー付き衣服1におけるスライドファスナー2を閉鎖したときの外観品質を高めることができる。
以上、本発明の好適な実施形態ついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏することが可能であれば、多様な変更が可能である。
例えば、上述した実施例では、スライドファスナー付き製品がスライドファスナー付き衣服1である場合について説明したが、本発明に係るスライドファスナー付き製品には、衣服(衣料品)だけでなく、靴類や鞄類などの日用雑貨品、産業用資材などの製品、自動車、列車、航空機等の各種シート類などの様々な製品が含まれる。