JP2022035487A - ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、及び梱包体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、バリア性に優れるポリプロピレンフィルムを提供することを目的とする。【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂を主成分とする2種類の層(A層、B層)を少なくとも有し、A層が条件1及び2を満たし、かつ少なくとも一方の最表面に位置し、主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり、少なくとも一方のA層表面において、St値が50nm以上700nm以下であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。条件1:層中に占めるプロピレン単位の分率が、97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きい。条件2:主配向軸と直交する方向における配向パラメータが1.90以上3.00以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、特に包装用途に適して用いられるポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、及び梱包体に関する。
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気絶縁用途等の様々な用途に用いられている。この中でも包装用途においては、ポリプロピレンフィルムの上にアルミニウム(以降、「Al」と称することがある。)の薄膜を蒸着した積層フィルムが広く用いられている。しかしながら、Al蒸着によって得られるフィルムは不透明なものとなるため、内容物の視認性が要求される用途には適さない。また、近年は包装用プラスチックをリサイクルする動きが活発化しているが、Al蒸着層を含むフィルムは、リサイクル性が十分ではないという問題がある。
前述のような事情から、従来のAlの蒸着層を、酸化アルミニウム(以降、AlOxと称することがある。)や酸化ケイ素等の透明蒸着層で置き換える動きがある。これらの透明蒸着層を用いた場合、包装材の透明性及びリサイクル性を向上させることができる。しかしながら、一般に透明蒸着層はAl蒸着層と比べて薄く脆いため、蒸着層の形成中、もしくは製袋加工等の後工程において蒸着層内にピンホールやクラックといった欠陥が発生し、水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれやすいという問題がある。
一方、包装用途に適したポリプロピレンフィルムとして、従来はポリプロピレンフィルムと蒸着層の密着性を担保するため、表層に低結晶性、低立体規則性のポリプロピレン系樹脂を配置したポリプロピレンフィルムが用いられてきた(例えば特許文献1、2)。特許文献1においては、高立体規則性ポリプロピレン系樹脂に、石油樹脂および/またはテルペン樹脂の1種以上が混合された基層の少なくとも片面に、低立体規則性ポリプロピレン系樹脂の表層を積層した構成のフィルムが記載されている。また、特許文献2においては、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基層の表裏両面に、ポリオレフィン系樹脂を主体とするシール層が積層された構成のフィルムが記載されている。
特開平11-192680号公報 特開2009-051134号公報
しかしながら、特許文献1に記載のポリプロピレンフィルムは表層に低結晶・低立体規則性のポリプロピレン系樹脂を用いているため、表層の熱安定性が不十分であった。そのため、包装用途として特に透明蒸着層を積層する場合、蒸着時にかかる熱によって表層が熱揺動を起こすことにより、蒸着層にピンホールやクラックといった欠陥が発生しやすく、水蒸気バリア性や酸素バリア性が低下するという課題があった。また、特許文献2に記載のポリプロピレンフィルムは、表層に低結晶性のエチレン-プロピレン共重合体(EPC)を用いている他、易滑性の付与を目的として表層に無機粒子を添加しており、また、蒸着層を積層する側の表層に粗大突起が存在している。そのため、特に膜厚が薄い透明蒸着層を積層する場合は蒸着層にピンホールやクラックといった欠陥が発生しやすく、水蒸気バリア性や酸素バリア性が低下するという課題があった。
そこで本発明は、包装用途として用いる際、蒸着時の熱に対して構造的に安定であり、特に透明蒸着層を積層した際に水蒸気バリア性、酸素バリア性に優れるポリプロピレンフィルムを提供することをその課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ね、以下の本発明に至った。
本発明のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする2種類の層(A層、B層)を少なくとも有し、前記A層が下記条件1及び2を満たし、かつ少なくとも一方の最表面に位置し、主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり、少なくとも一方の前記A層表面において、3次元非接触表面形状計測により測定したSt値が50nm以上700nm以下であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルムである。
条件1:層中に占めるプロピレン単位の分率が、97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きい。
条件2:偏光ラマン測定により得られる前記主配向軸と直交する方向における配向パラメータが1.90以上3.00以下である。
本発明により、蒸着時の熱に対して構造安定性に優れ、特に透明蒸着層を積層した際の水蒸気バリア性、酸素バリア性が良好なポリプロピレンフィルムを得ることができる。
以下、本発明のポリプロピレンフィルムについて詳細に説明する。本発明のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする2種類の層(A層、B層)を少なくとも有し、前記A層が下記条件1及び2を満たし、かつ少なくとも一方の最表面に位置し、主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり、少なくとも一方の前記A層表面において、3次元非接触表面形状計測により測定したSt値が50nm以上700nm以下であることを特徴とする。
条件1:層中に占めるプロピレン単位の分率が、97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きい。
条件2:偏光ラマン測定により得られる前記主配向軸と直交する方向における配向パラメータが1.90以上3.00以下である。
本発明において、ポリプロピレンフィルムとは、全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を80質量%以上100質量%以下含む、シート状の成形体をいう。ポリプロピレン系樹脂とは、樹脂を構成する全構成単位を100mol%としたときに、その90mol%以上100mol%以下がプロピレン単位である樹脂をいう。「ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層」とは、層の全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を50質量%より多く100質量%以下含む層をいう。なお、以下「主成分」については同様に解釈することができる。「ポリプロピレン系樹脂を主成分とする2種類の層(A層、B層)を少なくとも有する」とは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層を複数有しており、少なくともその一つの組成が他の層と異なる態様をいう。なお、このときポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を主成分とする層の有無は問わない。「A層が少なくとも一方の最表面に位置する」とは、A層が片側の最表層に位置する態様、及び層数が3層以上であり、かつA層が両側の最表層に位置する態様をいう。
本発明のポリプロピレンフィルムにおけるA層は、層中に占めるプロピレン単位の分率が、97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きいことが重要である。ここで「層中に占めるプロピレン単位の分率」とは、層を構成する全ての樹脂成分の構成単位を100mol%としたときに、当該層中に占めるプロピレン単位の分率(mol%)をいう。また、「ポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率」とは、ポリプロピレンフィルムを構成する全ての樹脂成分の構成単位を100mol%としたときに、ポリプロピレンフィルム中に占めるプロピレン単位の分率(mol%)をいう。なお、「層中に占めるプロピレン単位の分率」は、一つの層を対象として求めるものとする。すなわち、例えばポリプロピレンフィルムが3層構成であっても、両側の最外層を合算してプロピレン単位の分率を求めるのではなく、個々の最外層についてプロピレン単位の分率を求めるものとする。「層中に占めるプロピレン単位の分率」の測定は、層サンプルを公知の13C-NMR法により分析することで測定することができる。
A層に占めるプロピレン単位の分率を97.0mol%以上とすることで、その表面における分子鎖の動きや緩みが抑制され、蒸着時の熱に対して非常に安定な構造となる。そのため、蒸着層をはじめとする後述のD層(金属及び/又は無機化合物を合計で50質量%より多く100質量%以下含む層)を積層して積層体とした際に、その水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。上記観点からA層に占めるプロピレン単位の分率の下限は、好ましくは99.0mol%、より好ましくは99.5mol%、さらに好ましくは99.9mol%である。なお、A層に占めるプロピレン単位の分率が100mol%であることは、A層を構成するポリプロピレン系樹脂の分子鎖がプロピレン単位のみで構成されていることを意味する。
以下、A層に占めるプロピレン単位の分率が97.0mol%である例を挙げて、A層に占めるプロピレン単位の分率を調整する方法について説明する。分子鎖全体100mol%中プロピレン単位を97.0mol%含むポリプロピレン系樹脂のみでA層を形成することや、分子鎖全体100mol%中プロピレン単位を96.0mol%含むポリプロピレン系樹脂と、プロピレン単位を98.0mol%含むポリプロピレン系樹脂を等量混合してA層を形成することにより、A層に占めるプロピレン単位の分率を97.0mol%とすることができる。すなわち、分子鎖中に占めるプロピレン単位の分率を高くすることや、分子鎖中に占めるプロピレン単位の分率が高いポリプロピレン系樹脂の比率を高くすることで、A層に占めるプロピレン単位の分率を上げることができる。
また、A層に占めるプロピレン単位の分率が、ポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きいことは、A層以外の層(例えばB層)にプロピレン単位の分率がより小さい樹脂が含まれること、若しくはA層と同じポリプロピレン系樹脂を含むがその含有比率がA層よりも低いことを意味する。このような態様とすることにより、ポリプロピレンフィルムに対し、製膜時の易延伸性等を付与することが容易になる。
A層に占めるプロピレン単位の分率を97.0mol%以上100.0mol%以下又は上記の好ましい範囲とする方法については、特に限定されるものではないが、例えば、A層にプロピレン単位の分率が97.0mol%以上100.0mol%以下のポリプロピレン系樹脂を用いる方法が挙げられる。このとき、ポリプロピレン系樹脂のプロピレン単位の分率を高くすること、若しくはA層に占めるポリプロピレン系樹脂の比率を高めることにより、A層に占めるプロピレン単位の分率を大きくすることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムにおけるA層は、偏光ラマン測定により得られる主配向軸と直交する方向における配向パラメータが1.90以上3.00以下であることが重要である(以下、偏光ラマン測定により得られる配向パラメータを、単に配向パラメータということがある。)。ここで主配向軸とは、後述の実施例の項における「主配向軸を定める方法」に従い決定されるものである。ただし、サンプルが小さいなどの理由で後述の方法により主配向軸を定めることができない場合は、以下のように広角X線によるポリプロピレンフィルムのα晶(110)面の結晶配向を測定し、主配向軸を決定することができる。すなわち、フィルム表面に対して垂直方向にX線(CuKα線)を入射し、2θ=約14°(α晶(110)面)における結晶ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も高い方向を主配向軸とする。本発明のポリプロピレンフィルムを後述するような逐次二軸延伸法によって製造する場合、主配向軸と直交する方向は、通常、フィルムの長手方向に相当する。
主配向軸と直交する方向のA層の配向パラメータが1.90以上であることは、A層表面のポリプロピレン系樹脂の分子鎖が、主配向軸と直交する方向に強く配向していることを意味する。従って、A層のポリプロピレン系樹脂の分子鎖の動きや緩みが抑制され、蒸着時の熱に対して非常に安定な構造となる。そのため、例えば後述のD層を積層する際に、D層中にピンホールやクラックといった欠陥が発生することを抑制し、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。また、蒸着等の加工工程でフィルムを搬送する際、張力やたるみによってフィルムが破れるのを軽減することもできる。上記観点から、主配向軸と直交する方向のA層の配向パラメータは、好ましくは2.10以上、より好ましくは2.30以上である。一方、主配向軸と直交する方向のA層の配向パラメータを3.00以下とすることで、本発明のポリプロピレンフィルムのA層と、例えば後述のD層との密着性を良好なものとすることが容易になる。
主配向軸と直交する方向における、A層の配向パラメータを1.90以上3.00以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、原料として結晶化度が高いホモポリプロピレン樹脂を用いる方法(より具体的には、メソペンタッド分率が0.93以上、好ましくは0.96以上のホモポリプロピレン樹脂を用いる方法)、逐次二軸延伸法にて長手方向の延伸温度を120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは98℃以下にする方法等が挙げられる。より具体的には、A層におけるポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率を高くすること、逐次二軸延伸法での長手方向の延伸温度を下げることにより、A層の主配向軸と直交する方向の配向パラメータを高くすることができる。なお、これらの方法は単独で用いることも、組み合わせて用いることも可能である。ここで、「長手方向(MD)」とは、フィルム製造工程においてフィルムが走行する方向であり、「幅方向(TD)」とは、長手方向とフィルム面内で直交する方向である。ポリプロピレンフィルムサンプルがロール等の形状の場合は、その巻き取り方向が長手方向に相当する。前述の方法の中では、長手方向の延伸温度を120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは98℃以下にする方法が最も効果的である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であることが重要である。ここでF5値とは、引張り試験において、フィルム伸長率が5%時点でポリプロピレンフィルムにかかっていた荷重をいう。強度Xを400N/m以上とすることで、ポリプロピレンフィルムの機械的強度が十分高いものとなり、特に包装用途として用いる際に生じうる蒸着加工時や搬送時のたるみ、張力に対してポリプロピレンフィルムを破れにくくすることができる。また、強度Xを2000N/m以下とすることで、ポリプロピレンフィルムが極端に変形しにくくなることを防ぎ、例えば後述のD層を積層した構成において、搬送時や製袋加工時にD層にクラックが発生し水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれるのを軽減するができる。上記観点から強度Xの下限は、好ましくは500N/m、より好ましくは600N/mである。また、上記観点から強度Xの上限は、好ましくは1800N/m、より好ましくは1600N/mである。
強度Xを400N/m以上2000N/m以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの製膜時に逐次二軸延伸法にて長手方向の延伸倍率を4.5倍以上とする方法、長手方向の延伸温度を120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは98℃以下とする方法、ポリプロピレンフィルムの厚みを10μmより大きく60μm以下にする方法等が挙げられる。より具体的には、A層におけるポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率を高くすること、逐次二軸延伸法での長手方向の延伸倍率を上げること、長手方向の延伸温度を下げること、ポリプロピレンフィルムの厚みを大きくすることにより、強度Xを高くすることができる。なお、これらの方法は単独で用いることも、組み合わせて用いることも可能である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、少なくとも一方のA層表面において、3次元非接触表面形状計測により測定したSt値が50nm以上700nm以下であることが重要である(以下、3次元非接触表面形状計測により測定したSt値を単にSt値ということがある。)。少なくとも一方のA層表面のSt値を50nm以上とすることで、当該A層表面が適度な凹凸を有するものとなる結果、フィルムを巻き取る際の滑り性を良好なものとすることができる。また、少なくとも一方のA層表面のSt値を700nm以下とすることで、当該A層表面が粗大突起等のない十分平滑なものとなる結果、蒸着層をはじめとする後述のD層を積層する際、D層の厚みを均一にし、D層中のピンホールやクラックといった欠陥を抑制できる。そのため、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。上記観点からA層表面のSt値の下限は、好ましくは100nmであり、より好ましくは125nmである。また、上記観点からA層表面のSt値の上限は好ましくは400nmである。
なお、両側の最表層がA層である態様(層数が3層以上であり、両側の最表層が共に条件1と2を満たす態様)においては、少なくとも一方のA層表面のSt値が50nm以上700nm以下であれば、他方のA層表面のSt値については任意の値とすることができる。
少なくとも一方のA層表面のSt値を50nm以上700nm以下又は上記の好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、A層用の原料として直鎖状ポリプロピレン系樹脂以外に0質量%を超え5質量%以下の分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂もしくは結晶核剤を添加する方法、キャスティングドラムの温度を30℃以下とする方法、逐次2軸延伸法にて長手方向の延伸倍率を4.5倍以上とする方法等が挙げられる。より具体的には、A層における分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂もしくは結晶核剤の量を増やすこと、溶融シートの冷却固化の温度を下げること、逐次二軸延伸法での長手方向の延伸倍率を上げることにより、A層表面のSt値を50nm以上700nm以下又は上記の好ましい範囲に制御することができる。なお、これらの方法は単独で用いることも、組み合わせて用いることも可能である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、顕微ラマン測定により得られるA層の400cm-1付近のバンド半値幅が4.00cm-1以上8.00cm-1以下であることが好ましい。顕微ラマンの詳細な測定方法については後述する。顕微ラマン測定により得られる400cm-1付近のバンド半値幅は結晶化度と強い負の相関があるパラメータであり、具体的には、400cm-1付近のバンド半値幅が小さくなるほど結晶化度は大きくなる。
A層の400cm-1付近のバンド半値幅が8.00cm-1以下であることは、A層の結晶化度が十分大きいことを意味する。従って、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの変形が軽減されるため、蒸着により後述のD層を積層した際にD層中のピンホールやクラック等の欠陥が軽減され、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性が高くなる。上記観点からA層の400cm-1付近のバンド半値幅の上限は、より好ましくは7.40cm-1、さらに好ましくは6.90cm-1、特に好ましくは6.80cm-1である。また、A層の400cm-1付近のバンド半値幅が4.00cm-1以上であることは、A層中にある程度の非晶部分が存在すること意味するため、蒸着により後述のD層を積層した際に、A層とD層の密着性を良好なものとすることができる。
A層の400cm-1付近のバンド半値幅を4.00cm-1以上8.00cm-1以下又は上記の好ましい範囲とする方法については、特に限定されるものではないが、例えば、原料として結晶化度が高いポリプロピレン系樹脂を用いる方法(より具体的には、メソペンタッド分率が0.93以上のポリプロピレン系樹脂を用いる方法)、製膜時に溶融シートの冷却固化の温度を30℃以下とする方法、逐次二軸延伸法にて長手方向の延伸倍率を4.0倍以上、好ましくは4.5倍以上とする方法、長手方向の延伸温度を120℃以下、好ましくは110℃以下、さらに好ましくは98℃以下にする方法等が挙げられる。より具体的には、A層におけるポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率を高くすること、溶融シートの冷却固化の温度を下げること、逐次二軸延伸法での長手方向の延伸倍率を上げること、長手方向の延伸温度を下げることにより、A層の400cm-1付近のバンド半値幅を小さくすることができる。なお、これらの方法は単独で用いることも、組み合わせて用いることも可能である。
<ポリプロピレン系樹脂>
本発明のポリプロピレンフィルムのA層に主成分として用いられるポリプロピレン系樹脂は、そのメソペンタッド分率が0.93以上であることが好ましい。メソペンタッド分率は0.95以上がより好ましく、0.96以上がさらに好ましく、0.97以上が特に好ましい。メソペンタッド分率は、ポリプロピレン系樹脂の結晶相の立体規則性を示す指標であり、核磁気共鳴法(NMR法)で測定される。本発明のポリプロピレンフィルムでは、メソペンタッド分率が0.93以上のポリプロピレン系樹脂をA層の主成分とすることで、A層の結晶化度が高くなり、ポリプロピレンフィルム(特にA層)の配向性を高める効果がある。これにより、ポリプロピレンフィルムを包装用途に用いる際、蒸着時の熱による変形を抑制し、蒸着膜をはじめとする後述のD層を均一に積層することを容易にするとともに、D層中のピンホールやクラック等の欠陥も抑制できる。そのため、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を向上させる効果が得られる。
A層の主成分であるポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率の上限については、特に規定するものではない。本発明のポリプロピレンフィルムでは、メソペンタッド分率が0.93以上のポリプロピレン系樹脂は、特に、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒を用いた重合により作製されたものが好ましく、該触媒において電子供与成分の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。このようなポリプロピレン系樹脂は分子量分布(Mw/Mn)を3.0以上、<2,1>エリトロ部位欠損を0.1mol%以下とすることができる。よって、ポリプロピレンフィルムのA層の400cm-1付近のバンド半値幅を4.00cm-1以上8.00cm-1以下に制御しやすくする観点から、A層の主成分としてこのようなポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムのA層に用いられるポリプロピレン系樹脂は、1種であってもよいし、2種以上が混合されていてもよい。但し、ポリプロピレンフィルムとしたときに蒸着時の熱による変形を軽減する観点から、主成分であるポリプロピレン系樹脂の融点は162℃以上が好ましく、より好ましくは164℃以上、さらに好ましくは166℃以上、特に好ましくは167℃以上である。A層の主成分であるポリプロピレン系樹脂の融点が162℃以上であることにより、A層の結晶性が高く保たれるため、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの変形が軽減される。すなわち、蒸着により後述のD層を積層した際にD層中のピンホールやクラック等の欠陥が軽減され、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性が高くなる。
本発明ポリプロピレンフィルムのB層は、ポリプロピレンフィルムの強度Xを容易に400N/m以上2000N/m以下とする観点から、ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、B層の融点が135℃以上175℃以下であることが好ましい。上記観点から、B層の融点はより好ましくは145℃以上172℃以下、さらに好ましくは155℃以上169℃以下である。B層の融点をかかる範囲とすることで、ポリプロピレンフィルムの強度Xを400N/m以上2000N/m以下に制御することが容易になる。なお、B層の融点は、ポリプロピレンフィルムのB層を示差走査熱量分析(DSC)で分析した際の融解による吸熱ピークのうち、最もピーク面積が大きいもののピーク温度として読み取ることができる。
また、本発明のポリプロピレンフィルムのB層は、主成分であるポリプロピレン系樹脂の他に、結晶性や融点の低いポリオレフィン系樹脂や、非晶性のポリオレフィン系樹脂等を含むことができる。このような樹脂として具体的には、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体等が挙げられる。また、本発明のポリプロピレンフィルムのB層は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂、石油樹脂、結晶核剤等を含むこともでき、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤、すべり剤、帯電防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤を含むこともできる。主成分であるポリプロピレン系樹脂以外の成分は、ポリプロピレンフィルムの強度Xを400N/m以上2000N/m以下とする観点から、B層の全構成成分を100質量%としたとき、20質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムにおけるB層は、上記成分の中でも特に石油樹脂を含むことが好ましい。B層が石油樹脂を含むことで、製膜時の均一延伸性が高まり、長手方向の延伸温度を120℃以下とすることが可能になる。そのため、A層の配向パラメータを好ましい範囲内に制御し、ポリプロピレンフィルムの耐熱性を高めることが容易になる。また、ポリプロピレンの非晶部分の空隙体積を少なくして水蒸気バリア性を向上させることもできる。上記観点から、B層における石油樹脂の添加量は、B層の全構成成分を100質量%としたときに、5%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上18%以下である。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレン原料は、A層、B層、C層(後述)いずれのものも、製膜性の点から、好ましくはメルトフローレート(MFR)が1~10g/10分(230℃、21.18N荷重)、より好ましくは2~5g/10分(230℃、21.18N荷重)である。メルトフローレート(MFR)を上記の値とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法等が採用される。
本発明のポリプロピレンフィルムは、包装用途に好適なものとする観点から、厚みが10μmより大きく60μm以下であることが好ましい。厚みを10μmより大きくすることで、蒸着加工時や搬送時のたるみ、張力に対してフィルムを破れにくくすることができる。上記観点から厚みの下限は、12μmがより好ましく、14μmがさらに好ましい。一方、厚みを60μm以下とすることで、ハンドリング性を良好にできる他、製造コストを抑えることもできる。上記観点から厚みの上限値は、50μmがより好ましく、40μmがさらに好ましく、19μmが特に好ましい。
ポリプロピレンフィルムの厚みを10μmより大きく60μm以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、特に制限されず、例えばポリプロピレン系樹脂組成物の溶融押出の際に吐出量を調整する方法や、溶融シートの冷却固化の際にキャストドラムの回転速度を調整する方法、溶融シートを吐出する口金のリップ間隙を調整する方法、長手方向の延伸倍率を調整する方法、幅方向の延伸倍率を調整する方法等を用いることができる。より具体的には、吐出量を下げること、キャストドラムの回転速度を上げること、口金のリップ間隙を小さくすること、長手方向や幅方向の延伸倍率を上げることで、厚みを小さくすることができる。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、A層の厚みが0.3μm以上10μm以下であることが好ましい。A層の厚みをかかる範囲とすることで、ポリプロピレンフィルムが蒸着時の熱に対して非常に安定な構造となるため、蒸着層をはじめとする後述のD層(金属及び/又は無機化合物を合計で50質量%より多く100質量%以下含む層)を積層して積層体とした際に、その水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。上記観点から、A層の厚みは、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.8μm以上3μm以下である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、水蒸気バリア性や酸素バリア性を向上する観点から、TMA(熱機械分析)により測定される主配向軸と直交する方向の1%熱収縮開始温度が100℃以上165℃以下であることが好ましい(以下、TMAにより測定される1%熱収縮開始温度を、単に熱収縮開始温度ということがある。)。上記観点から、主配向軸と直交する方向の熱収縮開始温度は、より好ましくは120℃以上160℃以下である。主配向軸と直交する方向の熱収縮開始温度をかかる範囲とすることで、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの収縮を抑制することができる。そのため、ポリプロピレンフィルムのA層に後述のD層を積層する際、D層中にピンホールやクラック等の欠陥が発生するのを軽減することができる。これにより、D層を積層した積層体の酸素バリア性、水蒸気バリア性を向上する効果が得られる。
主配向軸と直交する方向の熱収縮開始温度を100℃以上165℃以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば、ポリプロピレンフィルムの長手方向、幅方向の延伸倍率を調整する方法が挙げられる。より具体的には、製膜時に長手方向の延伸倍率を2倍以上15倍以下、好ましくは4倍以上10倍以下、より好ましくは4.5倍以上8倍以下、さらに好ましくは4.5倍以上6倍以下とすること、幅方向の延伸倍率を8倍以上20倍以下、より好ましくは8.5倍以上16倍以下、さらに好ましくは9倍以上12倍以下とすることが挙げられる。また、主配向軸と直交する方向の熱収縮開始温度を100℃以上165℃以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、テンター装置での熱処理条件を調整する方法も挙げられる。より具体的には、テンターの熱処理温度を155℃以上175℃以下、より好ましくは160℃以上170℃以下とすること、弛緩処理において弛緩率を2%以上20%以下、より好ましくは5%以上18%以下、さらに好ましくは12%以上17%以下とすること等が挙げられる。なお、これらの方法は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜組み合わせて用いることも可能である。
<層構成>
本発明のポリプロピレンフィルムの層構成は、A層とB層とを有し、かつA層が少なくとも一方の最表面に位置する限り特に制限されない。但し、一つの好ましい態様として、両側の最表面にA層が位置する構成が挙げられる。かかる構成とすることで、B層中に含まれる石油樹脂等の成分が蒸着層を積層する側のA層表面にブリードアウトするのを抑制し、蒸着層を均一に積層することが可能になる。このような態様の最も単純な例としては、A層/B層/A層の3層構成が挙げられるが、A層とB層の間に他の層が存在していてもよい。また、一方の最表面にA層が位置し、他方の最表面にヒートシール層(C層)が位置する構成も好ましい態様として挙げられるが、この構成については後述する。
<ヒートシール層>
本発明のポリプロピレンフィルムは、包装用途に適したヒートシール性を得る観点から、一方の最表面にA層が位置し、他方の最表面にヒートシール層(C層)が位置する構成が好ましく採択される。ヒートシールとは、内容物を充填・包装して袋状の形態を取るにあたり、加熱処理を通じてフィルム同士を溶融、圧着する工程のことであり、ヒートシール性とは、加熱により溶融・圧着するフィルム側の性質のことである。
本発明のポリプロピレンフィルムに用いるヒートシール層(C層)としては、低温・高速シール性を付与する観点から、低結晶性の融点の低いポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、具体的にはエチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体等を好ましく用いることができる。なお、本発明においてヒートシール層とは、層全体100質量%中に、融点が150℃未満のポリオレフィン系樹脂を50質量%より多く100質量%以下含む層をいう。ヒートシール層における上記ポリオレフィン系樹脂の量は、より好ましくは層全体100質量%中に70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは100質量%である。
ヒートシール層(C層)に主成分として含まれるポリオレフィン系樹脂の融点は、140℃以下が好ましく、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。なお、該樹脂の融点は、DSC曲線の融解による吸熱ピークのうち、最も面積が大きいものの温度として読み取ることができる。
ヒートシール層(C層)を積層する方法は特に限定されないが、製膜時の溶融共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式の他、押出ラミネートやドライラミネート等が挙げられる。生産効率及びコストの観点からは、溶融共押出による積層方法が好ましい。ポリプロピレンフィルムのヒートシール層の厚みは特に制限されるものではないが、ポリプロピレンフィルムの全体厚み100%に対して、ヒートシール層(C層)の厚みの下限は0.5%が好ましく、より好ましくは1%である。他方、ポリプロピレンフィルム全体厚み100%に対して、ヒートシール層(C層)の厚みの上限は80%が好ましく、より好ましくは60%、さらに好ましくは40%、特に好ましくは10%である。
なお、本発明のポリプロピレンフィルムがA層とC層を有する場合、ポリプロピレンフィルムがA層とB層を有し、一方の最表面にA層が位置し、他方の最表面にC層が位置していれば、その他の層の有無は特に制限されない。但し、製造コストやリサイクル性の観点からは、好ましくは、A層、B層、C層以外の層を有さない態様、すなわち、A層/B層/C層の3層構成又はA層/B層/A層/C層の4層構成が好ましく、A層/B層/C層の3層構成がより好ましい。また、両側の最表面にA層が位置する構成のポリプロピレンフィルムにC層を形成する場合、別途ヒートシール層を有するフィルムを接着剤層等で貼り合わせることもできる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面において、X線電子吸光法において検出される窒素元素組成量が0.3atomic%以上10atomic%以下であることが好ましい(以下、X線電子吸光法において検出される窒素元素組成量を、単に窒素元素組成量ということがある。)。本発明のポリプロピレンフィルムは、A層の400cm-1付近のバンド半値幅が4.00cm-1以上8.00cm-1以下とするためにA層に高結晶ポリプロピレンを用いるため、通常、後述のD層を積層する際にA層とD層の密着性を高くすることは容易ではない。本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、少なくとも片面の窒素元素組成量を0.3atomic%以上とすることで、A層と後述のD層との間に効率的に水素結合を形成することができ、両者の密着性を良好なものとすることができる。上記観点から、窒素元素組成量の下限値は、より好ましくは0.5atomic%、さらに好ましくは1.0atomic%である。
少なくとも片面の窒素元素組成量を0.3atomic%以上10atomic%以下又は上記の好ましい範囲とする方法については特に限定されないが、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方の表面、好ましくはA層の表面に、窒素、あるいは窒素を含む混合ガス中で、コロナ処理やプラズマ処理、グロー処理、火炎処理といった表面処理を行う方法が挙げられる。かかる雰囲気下で処理を行うことで、窒素元素に由来するアミド基やイミド基といった官能基をポリプロピレンフィルム表面に均一に付与することができ、窒素元素含有量を0.3atomic%以上10atomic%以下としやすくなる。なお、このとき各方法における処理雰囲気の窒素ガス濃度を高くするほど、処理面の窒素元素含有量を高くすることができる。
上記の中でも、窒素、あるいは窒素を含む混合ガス中でコロナ処理を行う場合は、処理強度を好ましくは10W・分/m以上、より好ましくは20W・分/m以上とすることで、窒素元素含有量を0.3atomic%以上10atomic%以下とすることが容易になる。コロナ処理の強度の上限は特に限定されるものではないが、100W・分/mが実用的である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、蒸着時の熱に対して構造安定性に優れ、特に透明蒸着層を積層した際に水蒸気バリア性、酸素バリア性が良好であることから、包装用途に好適に用いることができる。本発明のポリプロピレンフィルムの包装対象物は特に制限されないが、水蒸気や酸素により変質しやすいもの、例えば食品や医薬品、生花等が挙げられる。
<積層体>
続いて、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、本発明のポリプロピレンフィルムと、金属及び/又は無機化合物を合計で50質量%より多く100質量%以下含む層(D層)とを有する。このような態様とすることにより、高い水蒸気バリア性や酸素バリア性を実現することができる。ここで、「金属及び/又は無機化合物を50質量%より多く含む層」とは、層を構成する全成分を100質量%としたときに、金属のみを50質量%より多く含む層、無機化合物のみを50質量%より多く含む層、金属と無機化合物をいずれも含み、それらの合計が50質量%を超える層を指す。D層の金属及び/又は無機化合物としては、ポリプロピレンフィルムとの密着性向上、ポリプロピレンフィルムに積層した際のガスバリア性向上、及び環境負荷低減の観点から、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはこれらの混合物のいずれかが好適に用いられる。
本発明のポリプロピレンフィルムにD層を形成して積層体とする方法としては、コーティング、蒸着、ラミネート等が挙げられるが、湿度依存がなく、薄膜で優れたガスバリア性を発現できることから、蒸着が特に好ましい。蒸着方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着法、プラズマCVD等の各種化学蒸着法を用いることができるが、生産性の観点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。
本発明の積層体において、D層はいずれの表面に形成させてもよいが、蒸着時の熱に対して非常に安定な構造であることから、A層上に形成することが好ましい。D層をA層に積層した場合の両者の密着力は、2N/15mm以上であることが好ましい。より好ましくは4N/15mm以上、さらに好ましくは6N/15mm以上である。かかる範囲とすることで、製袋加工時や輸送時にA層とD層が自然剥離し、水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれるのを軽減することができる。なお、A層とD層の密着力を2N/15mm以上又は上記の好ましい範囲とする方法は特に制限されず、例えば、D層を形成する前にA層表面の窒素元素組成量を高くすることにより、両者の密着力を高める方法を用いることができる。
本発明の積層体の水蒸気透過率は、包装材として用いたときの内容物の保存性の観点から、2.0g/m/day以下であることが好ましい。より好ましくは1.0g/m/day以下、さらに好ましくは0.5g/m/day以下である。かかる範囲とすることで、特に食品包装用途として用いる際、内容物の吸湿あるいは放湿による劣化を軽減することができる。
また、本発明の積層体の酸素透過率は、包装材として用いたときの内容物の保存性の観点から、20cc/m/day以下であることが好ましい。より好ましくは2cc/m/day以下、さらに好ましくは1cc/m/day以下、最も好ましくは0.5cc/m/day以下である。かかる範囲とすることで、特に食品包装用途として用いる際、内容物の酸化による劣化を軽減することができる。
さらに、本発明の積層体の全光線透過率は、包装材として用いたときの内容物の視認性の観点から、80%以上95%以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで、包装用途として用いる際、内容物の視認性を良好なものとすることができる。全光線透過率を80%以上95%以下とする方法については、特に限定されるものではないが、例えば、D層用の材料として透明性の高いもの(酸化アルミニウム、酸化ケイ素等)を用いる方法が挙げられる。
<包装材、梱包体>
以下、本発明の包装材、梱包体について説明する。本発明の包装材は、本発明のポリプロピレンフィルム、及び本発明の積層体の少なくとも一方を有することを特徴とする。本発明の包装材は、蒸着時の熱に対して構造安定性に優れ、特に透明蒸着層を積層した際に水蒸気バリア性、酸素バリア性が良好であることから、水蒸気や酸素により劣化しやすいものの包装に好適に用いることができる。
本発明の梱包体は、本発明の包装材により内容物が梱包されていることを特徴とする。内容物は特に制限されないが、本発明の包装材が透明性、水蒸気バリア性、酸素バリア性に優れることから、外部からの視認性が求められ、水蒸気や酸素により劣化しやすいものであることが好ましい。なお、本発明の梱包体は本発明の包装材で内容物を覆うことで得られ、その態様は特に制限されない。例えば、ヒートシールにより本発明の包装材を袋状に加工し、その中に内容物を入れることで得られる梱包体が挙げられる。このような梱包体の具体例としては、レトルトパウチ食品等が挙げられる。
<製造方法>
以下、本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法について説明する。本発明のポリプロピレンフィルムの製造においては、先ず、溶融したポリプロピレン系樹脂若しくはポリプロピレン系樹脂組成物を支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとする。次いで、この未延伸ポリプロピレンフィルムを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸して、逐次二軸延伸せしめる。その後、熱処理及び弛緩処理を施して二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造する。以下、より具体的に説明するが、本発明のポリプロピレンフィルム及びその製造方法は、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
まず、A層及びB層の原料となるポリプロピレン系樹脂若しくはポリプロピレン系樹脂組成物を、押出温度220℃~280℃、好ましくは230℃~270℃に設定した別々の単軸押出機から溶融押出し、濾過フィルタを通過させて異物等を取り除く。続いてこれらの溶融樹脂を、所望の層構成(未延伸段階のA層をa層、未延伸段階のB層をb層とすると、例えば、a層/b層、a層/b層/a層 等)となるように、フィードブロックなどで合流させる。その後、200℃~260℃、より好ましくは210℃~240℃の温度でスリット状口金から押し出す。ここで溶融押出時は樹脂を十分に溶融させ、スクリュー回転によるせん断起因で分子鎖が切断されるのを防ぐことで、高温でもフィルム構造が緩和せず安定化できる観点から、濾過フィルタ前は高温、フィルタ通過後は濾過フィルタ前よりも低温とし、吐出直前の口金温度はさらに低温化した多段式低温化が達成できるような温度設定とすることが好ましい。
次に、スリット状口金から押し出された溶融樹脂シートを、表面温度が10℃~40℃に制御されたキャスティングドラム(冷却ドラム)上で冷却固化させ、未延伸ポリプロピレンフィルムを得る。この際、口金から押し出された溶融シートが最初に接するドラム面側がA層となるように共押出積層することが、A層の結晶化度及び配向パラメータを所望の範囲内に制御しやすいため好ましい。溶融シートのキャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法等のうちいずれの手法を用いてもよく、また複数の方法を組み合わせてもよいが、フィルムの平面性を良好にでき、かつ表面粗さを制御することが可能なエアーナイフ法が好ましい。また、エアーナイフ法を用いる場合、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
キャスティングドラムの表面温度は、得られるポリプロピレンフィルムの表面を平滑にし、蒸着膜等により形成するD層の厚み均一性及び密着性向上をはかる観点から、好ましくは10℃~35℃、より好ましくは10℃~30℃、最も好ましくは10℃~25℃であり、かつ、延伸後にA層とする樹脂をドラム面(キャスティングドラムと接する面)側とすることが好ましい。かかる温度範囲及び構成とすることで、未延伸ポリプロピレンフィルムの特にドラム面側(延伸後に、St値が50nm以上700nm以下であるA層となる面側)の表層部分のメゾ相分率を高め、該未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を有するようにすることができる。
メゾ相とは、結晶と非晶の中間相であり、溶融状態から非常に速い冷却速度で固化させた際に特異的に生成する。一般的にポリプロピレンを冷却固化させると、結晶化して球晶が成長することが知られているが、このように球晶が生じた未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸すると、球晶内部や球晶間の結晶と非晶の間などで延伸応力に差が生じ、局所的な延伸斑が発生し厚み斑や構造斑に繋がると考えられる。一方、メゾ相は球晶形態をとらないため、延伸斑が生じず延伸均一性が高くなるため、フィルムとしたときの厚み均一性が高く、表面粗さも小さく均一になりやすい。また、未延伸フィルムが球晶構造を有さない場合、長手方向への延伸(縦延伸)温度を、球晶を有する未延伸プロピレンフィルムよりも低い温度とすることができる。
特に高立体規則性のポリプロピレン樹脂を含むA層と、ポリプロピレン樹脂及び石油樹脂を含むB層を有する積層ポリプロピレンフィルムにおいては、A層をメゾ相とすることで、低温延伸の難しい高立体規則性ポリプロピレンの延伸性を高めることができる。そのため、長手方向の延伸温度を120℃以下の低温とした場合でも製膜性を向上させ、A層の配向性を高めるとともに、最終的に得られるポリプロピレンフィルムのA層の表面を平滑にすることが可能になる。未延伸フィルムの延伸後にA層となる表層部分のメゾ相分率としては20%以上が好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。上限は特に限定されるものではないが、99%とすることが実用的である。
次に、未延伸ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。まず、未延伸ポリプロピレンフィルムを下限が好ましくは70℃、より好ましくは80℃、上限が好ましくは120℃、より好ましくは110℃、さらに好ましくは98℃に保たれたロール間に通して予熱する。引き続き該未延伸ポリプロピレンフィルムを、下限が好ましくは70℃、より好ましくは80℃、上限が好ましくは120℃、より好ましくは110℃、さらに好ましくは98℃の温度範囲に保ち長手方向に2倍以上15倍以下、好ましくは4倍以上10倍以下、より好ましくは4.5倍以上8倍以下、さらに好ましくは4.5倍以上6倍以下の延伸倍率で縦延伸した後、室温まで冷却して一軸配向フィルムを得る。
次いで一軸配向フィルムの端部をクリップで把持したまま、テンターに導き、フィルムの端部をクリップで把持したまま幅方向へ延伸(横延伸)する。その際の温度(幅方向の延伸温度)は150~170℃、好ましくは155~165℃である。また、幅方向の延伸倍率は8倍以上20倍以下とするのが好ましく、より好ましくは8.5倍以上16倍以下、さらに好ましくは9倍以上12倍以下である。幅方向の延伸倍率を8倍以上とすることで、長手方向の高い配向状態を保ったまま幅方向にも高い配向を付与し、面内の分子鎖緊張を高めることができる。そのため、特に包装用途として用いる際、蒸着時の熱に対するフィルムの構造安定性を高め、均一な蒸着膜を形成することにより水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。また、幅方向の延伸倍率を20倍以下とすることで、製膜時のフィルム破れを防ぎ、生産性を良好なものとすることができる。
また、本発明のプロピレンフィルムの製造においては、面積延伸倍率を40倍以上100倍以下とすることが好ましい。面積延伸倍率は、長手方向の延伸倍率と幅方向の延伸倍率を乗じることにより得ることができる。面積延伸倍率の下限はより好ましくは45倍、さらに好ましくは50倍である。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造においては、横延伸後に熱処理及び弛緩処理を施すことが好ましい。熱処理及び弛緩処理は、テンターのクリップで幅方向両端部を緊張把持したまま幅方向に2%以上20%以下の弛緩を与えつつ、好ましくは140℃以上170℃以下、より好ましくは152℃以上168℃以下、さらに好ましくは154℃以上165℃以下の温度で行う。かかる熱処理及び弛緩処理を行うことで、フィルムの熱に対する構造安定性を向上させ、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、D層にピンホール、クラックといった欠陥が生じる熱負け現象を抑制することができる。その結果、ポリプロピレンフィルムから得られる積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。
弛緩処理においては、フィルムの熱に対する構造安定性を高める観点から、弛緩率は2%以上20%以下が好ましく、10%以上18%以下がより好ましく、12%以上17%以下がさらに好ましい。弛緩率が2%より小さい場合はフィルムの120℃における熱収縮率を十分小さくすることが困難になる場合があるため、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、フィルムが変形してD層にピンホールやクラックといった欠陥が発生する結果、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれる場合がある。一方、弛緩率が20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎる結果、製膜後のフィルムにシワが入り、機械特性の低下や蒸着時のムラに繋がる場合がある。
上記の熱処理を経た後は、フィルムをテンターの外側へ導き、室温雰囲気にてフィルム幅方向両端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットする。その後、使用時に蒸着処理を施す面(通常はA層の表面)に対し、蒸着層の密着性を良好なものとすることを目的として、大気中、もしくは酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、シランガスあるいはこれらの混合物の雰囲気ガス中でコロナ放電処理もしくはプラズマ処理を行うことが好ましい。これらの中では、特に窒素、あるいは窒素を含む混合ガス中で行うことが好ましい。こうして得られた本発明のポリプロピレンフィルムをロール状に巻き取って、最終製品ロールを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下に示す態様に限定されない。なお、各項目の評価は以下の方法により行った。
<特性値の測定方法、効果の評価方法>
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)A層の配向パラメータ
<主配向軸を定める方法>
まず、ポリプロピレンフィルムの主配向軸を定める方法を示す。ポリプロピレンフィルムを準備し、任意の方向を上に向けて、長さ50mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプル<1>とした。この際、矩形のサンプル<1>の長辺が向く方向を0°と定義した。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取した。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取した。次に、各矩形のサンプルを引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)に、長辺方向が引っ張り方向となるように初期チャック間距離20mmでセットし、23℃雰囲気下で引張速度を300mm/分として引張試験を行った。このときサンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅)で除した値を最大点強度の応力として算出した。各サンプルについて同様の測定を5回ずつ行って最大点強度の応力の平均値を求め、当該平均値が最大であったサンプルの長辺方向をポリプロピレンフィルムの主配向軸とし、これに直交する方向をポリプロピレンフィルムの主配向軸と直交する方向とした。
<A層の配向パラメータを定量する方法>
A層の配向パラメータは、偏光ラマン測定により定量した。まず、ポリプロピレンフィルムから、前述のように定めたフィルムの主配向軸と直交する方向と、フィルムの厚み方向を含む断面を作製した。断面は、ビスフェノールエポキシ樹脂(リファインテック(株)製、エポマウント主剤27-771、エポマウント硬化剤27-772)にて包埋し、24時間硬化させた後、ミクロトームを切り出すことで作製した。次に、該断面のA層のみを含む部分に直線偏光を入射し、得られた散乱光のうち入射光と平行な成分のみを検出することで偏光ラマンスペクトルを取得した。ただし、分光器の異方性を解消するため、検光子後・グレーティング前にλ/4を設置し、散乱光の偏光状態を解消した状態でグレーティングに導入した。得られた偏光ラマンスペクトルについて、以下の数式に示す各成分を求め、主配向軸と直交する方向の分子配向パラメータを定量した。
分子配向パラメータ=(I810平行/I840平行)/(I810垂直/I840垂直
810平行:主配向軸と直交する方向のフィルム断面において、主配向軸と直交する方向に平行な偏光を入射した際に得られる810cm-1付近のラマンバンド強度
840平行:主配向軸と直交する方向のフィルム断面において、主配向軸と直交する方向に平行な偏光を入射した際に得られる840cm-1付近のラマンバンド強度
810垂直:主配向軸と直交する方向のフィルム断面において、厚み方向に平行な偏光を入射した際に得られる810cm-1付近のラマンバンド強度
840垂直:主配向軸と直交する方向のフィルム断面において、厚み方向に平行な偏光を入射した際に得られる840cm-1付近のラマンバンド強度
測定条件の詳細については、以下に示す。
(測定条件の詳細)
・測定装置: in Via(RENISHAW)
・光源: 532nm(YAG 2nd)
・レーザーパワー: 10mW at sample
・ビーム径: 1μm
・対物レンズ: 100倍(N.A.=0.85)
・回折格子: 3000gr(1次回折)
・スリット: 65μm
・検出器: CCD/RENISHAW 1024×256
・測定N数: N=3
・フィッティング条件: 3成分810cm-1/835cm-1/840cm-1
・使用関数: ローレンツ関数
・処理方法: 835cm-1バンドのみ半値幅を10cm-1に固定
・ベースライン: 770cm-1-880cm-1
(2)A層の400cm-1付近のバンド半値幅
A層の400cm-1付近のバンド半値幅は、顕微ラマン測定により定量した。(1)と同じ測定装置及びサンプル断面を用いて、円偏光条件下(異方性解消条件)でCH変角振動について縦軸を強度(単位:a.u.)、横軸をラマンシフト(単位:cm-1)としたラマンスペクトルを取得し、該スペクトルの400cm-1付近のバンド半値幅(単位:cm-1)を定量した。なお、ベースラインは370cm-1-430cm-1、測定N数はN=3とした。
(3)ポリプロピレンフィルムの厚み
ポリプロピレンフィルムの任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K-312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの算術平均値をポリプロピレンフィルムの厚み(単位:μm)とした。
(4)主配向軸と直交する方向のF5値
フィルム試長方向((1)で求めた主配向軸と直交する方向)を長辺方向として切り出した長方形のポリプロピレンフィルムまたは積層体(幅(短辺)10mm×長さ(長辺)150mm)を測定試料とした。次にサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、室温の環境下で引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。この際、試料の中心がチャック間の中央近傍に来るように試料の長辺方向の位置を調整した。またサンプル伸び5%時にフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を、伸度5%時の応力(F5値、単位:MPa)として算出した。測定は5回行い、その算術平均値として、主配向軸と直交する方向におけるF5値を求めた。
(5)フィルムの強度X
(3)で測定したフィルムの厚み(単位:μm)に、(4)で測定したフィルムの主配向軸と直交する方向のF5値(単位:MPa)を掛けることにより、フィルムの強度X(単位:N/m)を算出した。
(6)表面粗さSt
表面粗さStの測定は、三次元非接触表面形状の測定器である、(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行った。また、解析においては付属の解析ソフトにより、撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルタにて処理後、補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。測定条件は下記の通り。
製造元:株式会社日立ハイテクサイエンス
装置名:走査型白色干渉顕微鏡VS1540
・測定条件:対物レンズ 10×
鏡筒 1×
ズームレンズ 1×
波長フィルタ 530nm white
・測定モード:Wave
・測定ソフトウェア:VS-Measure Version10.0.4.0
・解析ソフトフェア:VS-Viewer Version10.0.3.0
・測定面積:0.561×0.561mm
(7)主配向軸と直交する方向の1%熱収縮開始温度
ポリプロピレンフィルムを、(4)で測定し定めたフィルムの主配向軸と直交する方向を長辺として幅4mm、長さ50mmの長方形の試料に切り出し、試長20mmとなるよう金属製チャックに挟み込んだ。その後に下記の熱機械分析装置にセットし、下記温度条件、荷重条件にて試長を一定保持したフィルムにおける長手方向の応力曲線を求めた。得られた応力曲線から、フィルムの収縮率が1%以上となる最低温度を読み取った。測定試験数はn=3で行い、その算術平均値を熱収縮開始温度とした。
(装置)
・装置 :TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
(温度条件)
・初期温度 :25℃、最大温度:180℃、レート:10℃/分
・保持 :10分
・サンプリング時間:10S/回
・窒素冷却 :なし
(荷重条件)
・制御モード :F・L
・待機中上限荷重 :19.6mN
・スタート荷重 :19.6mN
・荷重レート :0.1mN/分
・保持 :600分。
(8)フィルム表面の窒素元素組成量
フィルム表面の窒素元素組成量は、X線光電子分光(XPS)のWide Scan分析により算出した。XPSの測定条件、データ処理方法は以下の通り。
(測定条件)
・装置:K-Alpha+(Thermo Scientific社製)
・励起X線:Monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
・X線径:400μm
・光電子脱出角度:90°(試料表面に対する検出器の傾き)
(データ処理方法)
・スムージング:Savitzky and Golay Smoothing
・横軸補正:C1sメインピークを284.6eVに補正
(9)蒸着層の密着性
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセットして、1.00×10-2Paの高減圧状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムを介して走行させ、アルミニウム金属を加熱蒸発させてA層の上に蒸着薄膜層を形成した。その際、蒸着膜が約100nmになるよう制御した。 蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返し、40℃の温度で2日間エージングして、フィルムにAl(アルミニウム)の蒸着層が積層された積層体を得た。次に、得られた積層体の蒸着層の表面側に、ニチバン製の“セロテープ”(登録商標)をゴムローラーにより荷重2kgで貼り付け、剥離試験機を用いて剥離角度180°、剥離速度3000m/minで剥離した。“セロテープ”(登録商標)剥離後の積層体の表面を目視確認し、下記の基準にて、蒸着層の密着性を判定した。○以上を密着性良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。
(判定基準)
◎:蒸着層が一切剥離していない。
○:蒸着層の大半は剥離していないが、ごく一部が剥離している。
△:蒸着層のごく一部は剥離していないが、大半が剥離している。
×:蒸着層の全面が剥離している。
(10)Al蒸着後、またはAlOx蒸着後の水蒸気透過率(水蒸気バリア性)
Alを蒸着した積層体は、(9)に記載の方法により得た。AlOxを蒸着した積層体については、フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセットして、1.00×10-2Paの高減圧状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムを介して走行させ、酸素ガスを導入しながらAlOxを反応蒸発させてA層の上に蒸着層を形成した。その際、蒸着層が約20nmになるよう制御した。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返し、40℃の温度で2日間エージングして、ポリプロピレンフィルムにAlOxの蒸着層が積層された積層体を得た。
Al蒸着あるいはAlOx蒸着を施した積層体について、MOCON/Modern Controls社製の水蒸気透過率測定装置“PERMATRAN-W”(登録商標)3/30を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。測定はサンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、該フィルムの水蒸気透過率とした(単位:g/m/day)。得られた水蒸気透過率より、積層体の水蒸気バリア性を下記基準に従い判定した。○以上を水蒸気バリア性良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。
◎:0.5g/m/day以下。
○:0.5g/m/dayより大きく1.0g/m/day以下。
△:1.0g/m/dayより大きく2.0g/m/day以下。
×:2.0g/m/dayより大きい。
(11)Al蒸着後、またはAlOx蒸着後の酸素透過率(酸素バリア性)
(9)及び(10)に記載の方法により、Al蒸着層若しくはAlOx蒸着層が積層された積層体を得た。各積層体について、MOCON/Modern Controls社製の酸素透過率測定装置“OX-TRAN”(登録商標)2/20を用いて、温度23℃、湿度0%RHの条件で酸素透過率を測定した。測定はサンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、これを該フィルムの酸素透過率とした(単位:cc/m/day)。得られた酸素透過率より、積層体の酸素バリア性を下記基準に従い判定した。○以上を酸素バリア性良好とし、△は実用上問題ないレベルとした。
◎:0.5cc/m/day以下。
○:0.5cc/m/dayより大きく1.0cc/m/day以下。
△:1.0cc/m/dayより大きく2.0cc/m/day以下。
×:2.0cc/m/day以下。
(12)積層体の全光線透過率
Al蒸着もしくはAlOx蒸着を施した積層体について、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS K 7136「透明材料のヘイズの求め方」(2000年版)に準ずる方式で全光線透過率を測定した。サンプルは一辺50mmの正方形のものを5サンプル準備し、それぞれ1回ずつ、合計5回測定した平均値をサンプルの全光線透過率(%)とした。
<各実施例、各比較例のポリプロピレンフィルムの製造に用いた成分>
各実施例、各比較例のポリプロピレンフィルムの製造には、以下の成分を使用した。
(A層用ポリプロピレン系樹脂)
A1:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.97 融点:167℃ MFR:3.0g/10min)
A2:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.93 融点:162℃ MFR:2.5g/10min)
A3:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点156℃ MFR:3.0g/10min、メタロセン系、プロピレン含有量99.0%)
A4:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点:125℃ MFR:7.0g/10min、メタロセン系、プロピレン含有量95.0%)
A5:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.74 融点:154℃ MFR:2.2g/10min)
A6:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点146℃ MFR:3.0g/10min、プロピレン含有量97.0%)
A7:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.97 融点:167℃ MFR:2.6g/10min)
A8:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.90 融点:161℃ MFR:3.0g/10min)
A9:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.97 MFR:2.5g/10min)
A10:ホモポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.92 融点:162℃ MFR:3.0g/10min)
A11:長鎖分岐を有するポリプロピレン樹脂(メソペンタッド分率:0.97 MFR:3.0g/10min)
(B層用ポリプロピレン系樹脂)
B1:ポリプロピレン樹脂(融点:165℃ MFR:3.0g/10min)
B2:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点:135℃ MFR:7.0g/10min、プロピレン含有量96.0%)
B3:ポリプロピレン樹脂(融点:164℃ MFR:3.0g/10min)
B4:エチレン-プロピレンランダム共重合体(MFR:4.8g/10min、プロピレン含有量99.5%)
B5:ポリプロピレン樹脂(MFR:2.2g/10min)
B6:ポリプロピレン樹脂(融点:167℃ MFR:2.6g/10min)
B7:ポリプロピレン樹脂(融点:165℃ MFR:2.0g/10min)。
(C層用ポリプロピレン系樹脂)
C1:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点:130℃)。
C2:エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体(エチレン含有量:3.5%、ブテン含有量:4.8%)。
(マスターバッチ、及びポリプロピレン系樹脂以外の樹脂)
石油樹脂1:T-REZ HA125(JXTGエネルギー社製)
石油樹脂2:水添率99%のポリジシクロペンタジエン(Tg80℃、臭素価3cg/g 極性基を実質的に含まない石油樹脂である。)。
石油樹脂3:アルコンP125(荒川化学工業(株)製)
M1:B1(70質量部)、石油樹脂1(30質量部)、酸化防止剤(0.1質量部)を240℃に設定した押出機で混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化することにより作製したマスターバッチ。
M2:B6と石油樹脂3を1:1の質量比で溶融混練して得た石油樹脂マスターバッチ。
(添加剤、粒子等)
酸化防止剤:“Irganox”(登録商標)1010(BASFジャパン(株)製)
帯電防止剤:ステアリル-ジ-β-ヒドロキシエチルベタイン、アミノステアリン酸ナトリウム塩、及びヒドロキシルアミンの混合物
有機滑剤:ステアリン酸アミド
P1:平均粒径2μmのポリメタクリル酸系重合体の架橋粒子
P2:シリカ粒子(SFP-20MHE(シランカップリング表面処理) 電気化学工業社製)(平均粒子径:0.3μm)
R1:ノニトール系溶融型核剤(α晶核剤 NX8000(Milliken社製))。
(実施例1)
A層用の原料として、A1と酸化防止剤を質量比が100:0.1となるように混合したものを用いた。また、B層用の原料として、B1、M1、及び酸化防止剤を質量比が75:25:0.1となるように混合したものを用いた。これらの原料を別々の単軸押出機にそれぞれ供給して240℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去後、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層比が1/13/1となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーをTダイより吐出させた。その後、吐出させた溶融シートを21℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。
次に、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に92℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.2倍に延伸して一軸配向フィルムとした。さらに、得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、フィルム幅方向両端部をクリップで把持したまま165℃で幅方向に10倍延伸した後、幅方向に10%の弛緩を与えながら155℃で熱処理を行った。その後、フィルムをテンターの外側へ導いてフィルム幅方向両端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で、炭酸ガス濃度比15体積%となるよう調整した炭酸ガスと窒素ガスの混合気体雰囲気下でコロナ放電処理を行った。最後に、こうして得られた厚み15μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムをロールとして巻き取った。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1に示す。なお、本実施例は両側の最表層がA層である態様(両側の最表層が、共にその層を構成する樹脂成分のプロピレン単位の分率が97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつ、ポリプロピレンフィルム全体を構成する樹脂成分のプロピレン単位の分率より大きく、その主配向軸と直交する方向の配向パラメータが1.90以上3.00以下である層である態様)であるが、表面のSt値がより小さい方のA層(本実施例においては、製膜時にキャスティングドラムと接していた側のA層)について、そのSt値を表1に記載した。かつ、St値がより小さい方のA層の上に蒸着層を設けた。以降の実施例、比較例においても同様である。
(実施例2~4、6、比較例1~4、6、10)
製膜条件、各層用の原料を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造した。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表1~2に示す。
(実施例5)
A層及びB層用の原料として、実施例1と同じものを用いた。さらに、C層(ヒートシール層)用の原料として、C1を用いた。これらを別々の単軸押出機にそれぞれ供給し、240℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去した後、フィードブロックを用いてA/B/Cの3層積層で積層厚み比1/13/1となるよう押出量を調節し、得られた溶融シートをTダイより吐出させた。以降は製膜条件を表1の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表2に示す。
(比較例5)
A層用の原料として、A5とP1を99.88:0.12(質量比)で混合したものを用いた。また、B層用の原料として、B5と石油樹脂2を90:10(質量比)で混合した組成物に帯電防止剤を0.5質量部、有機滑剤を0.1質量部添加して、二軸押出機に供給して240℃でガット状に押出した後、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後100℃で2時間乾燥したチップを用いた。これらをそれぞれ別々の単軸押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去後、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比1/9/1となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーをTダイより吐出させ、エアーナイフにより、該溶融シートを50℃に保持されたキャスティングドラム上に密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。次いで、その未延伸シートを125℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続きシートを130℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に4.8倍に延伸して直ちに室温に冷却した。得られた一軸配向フィルムをテンターに導いて、165℃の温度で予熱し、155℃で幅方向に10倍に延伸し、次いで幅方向に10%の弛緩を与えつつ、160℃の温度で熱固定をした後、40℃以上に保たれたロールに通し、大気中で25W・分/mでB層表面にコロナ放電処理を施して濡れ張力を36mN/mにした。その後、こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムをロール状に巻き取った。なお、この時のA層/B層/A層の厚み構成比は1/9/1、トータル厚みは22μmであった。得られたポリプロピレンフィルムの特性を表2に示す。
(比較例7)
A層用の原料として、A7とP2を100:0.1(質量比)で混合して240℃に設定した押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化したものを用いた。また、B層用の原料として、B6とR1を100:0.3(質量比)となるように240℃に設定した押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化したものを用いた。A層用、B層用の原料をそれぞれ別々の単軸押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去後、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比が1/8/1となるように押出量を調節し、その溶融積層ポリマーをTダイより吐出させ、静電印加により、該溶融シートを30℃に保持されたキャスティングドラム上に密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。次いで、該未延伸シートを複数のロール群にて徐々に143℃まで予熱し、引き続き143℃の温度に保ちながら周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.0倍に延伸した。引き続き得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、163℃で幅方向に10倍延伸し、次いで1段目の熱処理及び弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら130℃で熱処理を行い、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向の位置を保持したまま140℃の熱処理を行った。その後100℃で冷却工程を経て熱処理したフィルムをテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。その後、得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムをフィルムロールとして巻き取った。得られたポリプロピレンフィルムの特性を表2に示す。
(比較例8)
A層用の原料として、A8を用いた。また、B層用の原料として、B7とM2を80:20(質量比)でドライブレンドした混合物を用いた。これらをそれぞれ別々の単軸押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去後、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比1/8/1となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーをTダイより吐出させ、エアーナイフにより、該溶融シートを20℃に保持されたキャスティングドラムに密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。次に、該未延伸シートを複数のロール群にて段階的に145℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通して長手方向に5.0倍に延伸した。引き続き得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、幅方向両端部をクリップで把持したまま150℃で幅方向に10倍延伸した。さらに弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら155℃で熱処理を行った。その後、フィルムをテンターの外側へ導き、幅方向端部のクリップを解放した後、フィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で、炭酸ガス濃度比15体積%となるよう調整した炭酸ガスと窒素ガスの混合気体雰囲気下でコロナ放電処理を施した。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムをフィルムロールとして巻き取った。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表2に示す。
(比較例9)
A9を温度260℃の押出機に供給し、樹脂温度260℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出した。その後、エアーナイフにより、該溶融シートを90℃に保持されたキャスティングドラム上に密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。次いで、該未延伸シートを145℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5.8倍に延伸した。引き続き得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、165℃の温度で幅方向に10倍延伸し、次いで熱処理および弛緩処理として幅方向に弛緩率10%を与えながら130℃で熱処理を行った。その後テンターの外側へ導いてフィルム端部のクリップ解放し、フィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムをフィルムロールとして巻き取った。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表2に示す。
(比較例10)
A層用の原料として、A10、A11、石油樹脂2、及びP1を85:5:10:0.15(質量比)で混合し、二軸押出機に供給して270℃でガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。これを単軸押出機に供給し、280℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去後、Tダイより吐出させ、エアーナイフにより該溶融シートを25℃に保持されたキャスティングドラムに密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。次に、該未延伸シートを複数のロール群にて段階的に140℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通して長手方向に9.0倍に延伸した。引き続き得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、幅方向両端部をクリップで把持したまま160℃で幅方向に7倍延伸した。さらに弛緩処理として幅方向に8%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行った。その後、フィルムをテンターの外側へ導き、幅方向端部のクリップを解放した後、フィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/mの処理強度で、炭酸ガス濃度比15体積%となるよう調整した炭酸ガスと窒素ガスの混合気体雰囲気下でコロナ放電処理を施した。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムをフィルムロールとして巻き取った。得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性を表2に示す。
Figure 2022035487000001
Figure 2022035487000002
蒸着については、実施例1~3及び比較例1~6はAl蒸着、実施例4~6及び比較例7~10はAlOx蒸着を行った。比較例1、3、5、6、8は主配向軸と直交する方向におけるA層の配向パラメータの要件を満たさず、比較例9、10は単層である。そのため、これらの比較例においては厳密にはA層が存在しないが、比較例1、3、5、6、8については表中では最外層を「A層」として、比較例9、10についてはフィルム自体を「A層」として原料を記載した。
本発明により、蒸着時の熱に対して構造安定性に優れ、特に透明蒸着層を積層した際に水蒸気バリア性、酸素バリア性が良好なポリプロピレンフィルムを得ることができる。上記特性に優れるため、本発明のポリプロピレンフィルムは包装用途に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. ポリプロピレン系樹脂を主成分とする2種類の層(A層、B層)を少なくとも有し、
    前記A層が下記条件1及び2を満たし、かつ少なくとも一方の最表面に位置し、
    主配向軸と直交する方向のF5値にフィルムの厚みを掛けた値(強度X)が400N/m以上2000N/m以下であり、
    少なくとも一方の前記A層表面において、3次元非接触表面形状計測により測定したSt値が50nm以上700nm以下であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。
    条件1:層中に占めるプロピレン単位の分率が、97.0mol%以上100.0mol%以下であり、かつポリプロピレンフィルム全体に占めるプロピレン単位の分率より大きい。
    条件2:偏光ラマン測定により得られる前記主配向軸と直交する方向における配向パラメータが1.90以上3.00以下である。
  2. 顕微ラマン測定により得られる前記A層の400cm-1付近のバンド半値幅が4.00cm-1以上8.00cm-1以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
  3. 厚みが10μmより大きく60μm以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
  4. TMAにより測定される主配向軸と直交する方向の1%熱収縮開始温度が100℃以上165℃以下である、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  5. 一方の最表面に前記A層が位置し、他方の最表面にヒートシール層(C層)が位置する、請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  6. 少なくとも片面において、X線電子吸光法において検出される窒素元素組成量が0.3atomic%以上10atomic%以下である、請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  7. 包装用途に用いられる、請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムと、金属及び/又は無機化合物を合計で50質量%より多く100質量%以下含む層(D層)とを有すること特徴とする、積層体。
  9. 全光線透過率が80%以上95%以下である、請求項8に記載の積層体。
  10. 請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム、及び請求項8または9に記載の積層体の少なくとも一方を有することを特徴とする、包装材。
  11. 請求項10に記載の包装材により内容物が梱包されていることを特徴とする、梱包体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023008400A1 (ja) * 2021-07-28 2023-02-02 東レ株式会社 積層体、包装材、及び梱包体
WO2023188598A1 (ja) * 2022-03-30 2023-10-05 東レ株式会社 ポリプロピレンフィルム、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ

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