JP2023118131A - ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、梱包体、およびその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、梱包体、およびその製造方法 Download PDF

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正寿 大倉
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【課題】 蒸着フィルムを再利用していながら、優れた熱寸法安定性、および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有するポリプロピレンフィルムを提供する。【解決手段】 粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、X1Tsが100℃以上160℃以下であり、粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方である、ポリプロピレンフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、特に包装用途に適して用いられるポリプロピレンフィルム、積層体、包装材、梱包体、及びその製造方法に関する。
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気絶縁用途等の様々な用途に用いられている。この中でも包装用途においては、ポリプロピレンフィルムの上にアルミニウム(以降、「Al」または「アルミ」と称することがある。)等の金属、酸化アルミニウム(以降、「AlOx」または「アルミナ」と称することがある。)や酸化珪素等の無機化合物の薄膜を蒸着した積層体が広く用いられている。
包装用途の積層体には、高い水蒸気バリア性や酸素バリア性が要求される上、無機化合物の薄膜を積層する場合は、内容物の視認性を得る観点から透明性も要求される。さらに蒸着の基材となるポリプロピレンフィルムには、蒸着加工時や製袋加工時の適度な搬送性が求められるため、その表層にブロッキング防止剤や粒子を添加するなどして、表面に凹凸を形成して易滑性を付与することがある。
具体的には、例えば特許文献1には、平均粒子径が0.01~10μmであるアルミナを少量含有させて造核剤として活用することにより、球晶の形成を制御することでヘイズの上昇を抑制し、加工性と透明性を両立したポリプロピレンフィルムの提案がなされている。同様に特許文献2には、珪酸塩、好ましくは、ナノヒドロタルサイト又はフィロシリケートから選択されるナノサイズの無機充填剤を添加することで、バリア特性、収縮性、引裂強さ、及び透明性を高めたポリプロピレンフィルムの提案がなされている。さらに特許文献3には、積層構成のポリプロピレンフィルムの表層にのみシリカ粒子を含有させることにより、フィルム両面の平滑性、剥離性、及び透明性を高めたポリプロピレンフィルムの提案がなされている。
また、包装用プラスチックをリサイクルして安価に包装材を製造することも、環境への配慮の観点から重要である。例えば、特許文献4には、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムとアルミニウム蒸着層を有さないプラスチックフィルムを溶融混練し、リサイクルペレット化する方法が提案されている。本方法では、混練物中にアルミニウム蒸着層由来のナノメートルレベルのアルミニウム粒子が存在することによりサージング現象が抑えられ、リサイクルペレットを安定的に生産できる。
特開平09-111054号公報 特表2008-542511号公報 特開2015-178594号公報 特開2013-35272号公報
しかしながら、特許文献1、2および3のポリプロピレンフィルムは、製膜時の延伸および熱処理条件が熱寸法安定性を得るには不十分である。そのため、高温環境下における耐熱性が不足しており、蒸着時の熱でポリプロピレンフィルムが変形しやすく、蒸着膜に欠陥やクラックが生じて酸素バリアおよび水蒸気バリア性が損なわれやすいという問題がある。また、特許文献4の方法は、アルミニウム蒸着フィルムのリサイクルペレット化を安定的に実施できる方法ではあるが、本方法は成形材料用として活用することを目的とするものであり、バリア性を求める包装材用フィルムの製造に活用するには不十分という問題がある。すなわち、特許文献1~4のポリプロピレンフィルムやリサイクル技術には、高温環境下での加工や使用が必要でありながら、高いバリア性が要求される用途へ適用が困難であるという課題があった。
そこで本発明は、蒸着フィルムを再利用していながら、優れた熱寸法安定性、および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有するポリプロピレンフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ね、以下の本発明の第1のポリプロピレンフィルム、本発明の第2のポリプロピレンフィルムを発明するに至った。すなわち本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルムである。
本発明の第2のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルムである。
本発明により、蒸着フィルムを再利用していながら、優れた熱寸法安定性、および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有するポリプロピレンフィルムを提供することができる。
以下、本発明の第1、第2のポリプロピレンフィルムについて詳細に説明する。以下好ましい範囲について上限と下限が別々に記載されている場合、その組み合わせは任意とすることができる。また、本発明の第1、第2のポリプロピレンフィルムを総称して、本発明、あるいは本発明のポリプロピレンフィルムということがある。また、本明細書において、以下、ポリプロピレンフィルムを単にフィルムと称する場合があり、水蒸気バリア性と酸素バリア性を包括して「バリア性」ということがある。
本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする。
本発明の第2のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする。
本発明において、ポリプロピレンフィルムとは、全構成成分を100質量%としたときに、ポリプロピレン系樹脂を60質量%以上100質量%以下含む、シート状の成形体をいう。ポリプロピレン系樹脂とは、樹脂を構成する全構成単位を100mol%としたときに、その90mol%以上100mol%以下がプロピレン単位である樹脂をいう。
本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であることが重要である。ポリプロピレンフィルムのX1Tsが100℃以上であることは、ポリプロピレンフィルムが高温での熱寸法安定性に優れることを意味する。そのため、ポリプロピレンフィルムのX1Tsが100℃以上であることにより、例えば後述のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(以下、D層)を蒸着によって積層する際に、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの収縮に起因してD層に発生するピンホールやクラック等の欠陥を抑制し、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。また、製袋加工後に行う加熱殺菌処理などの高温処理によるポリプロピレンフィルムの収縮も抑えられるため、このような処理に伴う水蒸気バリア性や酸素バリア性の低下も軽減できる。他方、ポリプロピレンフィルムのX1Tsが160℃を超えるようにするには、結晶性が高い原料を使用することや、製膜時に高面積倍率での二軸延伸を施すことが必要であり、製膜時に破膜するなど生産性が劣る観点から、X1Tsの上限は160℃とする。
上記観点から、本発明の第1のポリプロピレンフィルムのX1Tsの下限は、好ましくは105℃、より好ましくは111℃、さらに好ましくは115℃、特に好ましくは121℃以上である。他方、X1Tsの上限は、好ましくは159℃以下、より好ましくは158℃以下である。
ポリプロピレンフィルムのX1Tsを100℃以上160℃以下にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの製膜時に幅方向の予熱温度と延伸温度、熱処理工程での弛緩処理率を調整する方法が挙げられる。より具体的には、幅方向の延伸前予熱温度を幅方向延伸温度の+1℃以上、より好ましくは+2℃以上、さらに好ましくは+3℃以上、最も好ましくは+4℃以上とすることや、熱処理工程の弛緩処理率を5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは11%以上とすることが挙げられる。
X1Tsは公知の熱機械分析装置(例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)等)を用いて測定することができ、当該装置を用いた場合の詳細な手順及び温度条件、荷重条件、試長等の各条件は実施例にて後述する。なお、後述するX2Tsの測定も同様である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、粒子を含むことが重要である。ここで粒子とは金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方である。粒子がポリプロピレンフィルム中に分散することにより、高いバリア性やフィルム表面の易滑性を実現できる。
上記観点から、本発明のポリプロピレンフィルムにおける粒子としては、例えば、アルミニウム(アルミと称す場合がある。)、無機酸化物(例えば、酸化アルミニウム(アルミナと称す場合がある。)、シリカ等の酸化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム等)、ダイアモンド状炭素膜、あるいはこれらの混合物のいずれかが好適に用いられ、より好ましくは上記の無機酸化物であり、特に好ましくはアルミナ、シリカ、アルミニウムと珪素の酸化物のうち少なくとも一つを含むものである。なお、アルミナ、シリカ、アルミと珪素の酸化物については完全酸化物以外に部分酸化されている状態のものも含む。
粒子の種類は、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDS)、および必要に応じてGATAN GIF“Tridiem”を用いた電子エネルギー損失分光(EELS)分析を行うことで特定することができる。EELS分析では、得られたEELSスペクトルと市販の金属化合物のEELSスペクトルもしくは一般に公開されているEELSスペクトルデータと照合を行うことで、粒子の成分を同定することができる。測定装置としては、EDSにはJED-2300F(日本電子(株)製、半導体検出器、ドライSDエクストラ)等を、EELS分析には電界放出型透過電子顕微鏡JEM-2100F(日本電子(株)製、加速電圧200kV)等を用いることができる。
本発明の第2のポリプロピレンフィルムは、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であることが重要である。以下、「Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、粒子のアスペクト比」を単に「Y1断面のアスペクト比」ということがある。ここでいうY1断面のアスペクト比が2以上である粒子は通常、高扁平な粒子であり、ポリプロピレンフィルムのバリア性は、高扁平な粒子を層状に分散させることで高めることができる。また、バリア性は、粒子の長軸方向をフィルム面と平行に近づけることで、より高めることができる。ここで長軸とは、粒子を面積が最小となる長方形で囲んだときの長辺の方向をいう。
粒子が高扁平かつ層状分散になるほど高いバリア性を発現できるため、より好ましいY1断面のアスペクト比は5以上、さらに好ましくは10以上、よりさらに好ましくは30以上、特に好ましくは50以上である。アスペクト比の上限は特に限定しないが500とするものである。ポリプロピレンフィルム中の粒子のY1断面のアスペクト比を2以上にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、後述するポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融させて再ペレット化した原料を用いてポリプロピレンフィルムを製膜する方法が挙げられ、このとき積層体はD層の薄いものであることが好ましい。また、粒子を層状に分散させ、長軸方向をフィルム面と平行に近づけるには、延伸が効果的である。
なお、第1のポリプロピレンフィルムも、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向(X1方向)にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、粒子のアスペクト比(Y1断面のアスペクト比)が2以上である態様することもでき、そのための手段も同様のものを用いることができる。すなわち、第1のポリプロピレンフィルムに第2のポリプロピレンフィルムの態様を含んでもよい。
また、本発明の第1のポリプロピレンフィルムは、高いバリア性を発現できる観点から、X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、粒子のアスペクト比が2以上であることが好ましい。以下、「X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、粒子のアスペクト比」を単に「X1断面のアスペクト比」ということがある。粒子が高扁平かつ層状分散になるほど高いバリア性を発現できるため、より好ましいX1断面のアスペクト比は5以上、さらに好ましくは10以上、よりさらに好ましくは30以上、特に好ましくは50以上である。X1断面のアスペクト比の上限は特に限定しないが500とするものである。
ポリプロピレンフィルム中の粒子のX1断面のアスペクト比を2以上にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アスペクト比が2以上の粒子を予めポリプロピレン樹脂中に分散させておき製膜時に添加する方法や、後述するポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融させて再ペレット化した原料を用いてポリプロピレンフィルムを製膜する方法が挙げられ、このとき積層体はD層の薄いものであることが好ましい。また、粒子を層状に分散させ、長軸方向をフィルム面と平行に近づけるには、延伸が効果的である。なお、粒子のX1断面のアスペクト比、Y1断面のアスペクト比、及び粒子の短辺の長さ(後述)は、SEM(走査型電子顕微鏡)での観察で取得した断面画像を用いて測定、算出することができ、その詳細は後述する。
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム中に高扁平な粒子を層状かつ長軸方向をフィルム面と平行に近づけて分散させることで高いバリア性を発現できる観点から、X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子の短辺の長さが100nm未満であることが好ましい。上記観点から当該粒子の短辺の長さは、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下である。ポリプロピレンフィルム中の前記粒子の短辺の長さを100nm未満にする方法としては、ポリプロピレンフィルム中の粒子のX1断面のアスペクト比を2以上にする方法と同様の方法を用いることができる。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面においても、同様の観点から、同様に粒子の短辺の長さが100nm未満又は上記好ましい範囲であることが好ましい。当該要件を満たす方法としては、例えばポリプロピレンフィルム中の粒子のY1断面のアスペクト比を2以上にする方法と同様の方法を用いることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、包装材としたときに内容物の視認性を確保する観点から、全光線透過率が70%を超えて100%未満であることが好ましい。ここで、全光線透過率とは、フィルム表面に対し垂直に光を入射させたときの全光線透過率、言い換えればフィルム厚み方向の全光線透過率である。上記観点から全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、全光線透過率を100%未満とするのは、実現可能性を考慮したためである。なお、全光線透過率は公知のヘイズメーター、例えばスガ試験機(株)製ヘイズメーター(HGM-2DP)等で測定することができる。
ポリプロピレンフィルムの全光線透過率を、70%を超えて100%未満にする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、後述するフィルム中に含む金属粒子もしくは無機化合物粒子の種類や、Y1断面のアスペクト比やY1断面のアスペクト比で調整する方法が挙げられる。より具体的には、前述した種類の粒子(特にAlOxのような透明性の高い粒子)であって、各アスペクト比の大きいものを用いることでポリプロピレンフィルムの全光線透過率を高めることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、三次元非接触表面形状計測により測定した少なくとも一方の表面の平均粗さ(Sa)が30nm以下であり、かつ二乗平均平方根高さ(Sq)が50nm以下であることが好ましい。ここで「少なくとも一方の表面の平均粗さ(Sa)が30nm以下であり、かつ二乗平均平方根高さ(Sq)が50nm以下である」とは、同一の面において平均粗さ(Sa)と二乗平均平方根高さ(Sq)が上記範囲にあることをいう。表面の平均粗さ(Sa)とは、三次元非接触表面形状計測により測定したSa値をいい、以下、表面の平均粗さ(Sa)をSaまたはSa値ということがある。ここで平均粗さ(Sa)と二乗平均平方根高さ(Sq)ともにISO25178(2012)に定義される算術平均粗さとして導いたパラメータである。
少なくとも一方の表面のSa値を30nm以下とすることで、当該ポリプロピレンフィルム表面が十分平滑なものとなる結果、蒸着層をはじめとする後述のD層を積層する際、D層の厚みを均一にし、D層中のピンホールやクラックといった欠陥を抑制できる。そのため、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。上記観点から少なくとも一方の表面のSa値の上限はより好ましくは24nmである。また、Sa値の下限は特に制限されないが、ポリプロピレンフィルムに適度な滑り性を付与し、搬送性を良好にする観点から10nmとなる。
二乗平均平方根高さ(Sq)とは、基準長さにおける二乗平均平方根を表したものであり表面粗さの標準偏差を意味する。以下、三次元非接触表面形状計測により測定した表面の二乗平均平方根高さ(Sq)をSqまたはSq値ということがある。すなわちSq値はフィルム表面における凹凸の高い山が存在する場合により強調される数値となる。フィルムの少なくとも一方の表面のSq値を50nm以下とすることで、当該フィルム表面が局所的な粗大突起等のない平滑な表面となる結果、蒸着層をはじめとする後述のD層を積層する際、D層の厚みを均一にし、D層中のピンホールやクラックといった欠陥を抑制できる。そのため、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。上記観点から少なくとも一方の表面のSq値の上限はより好ましくは48nmであり、さらに好ましくは46nmであり、特に好ましくは44nm、最も好ましくは30nmである。また、Sq値の下限は特に制限されないが、ポリプロピレンフィルムに適度な滑り性を付与し、搬送性を良好にする観点から10nmとなる。
ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面のSa値を30nm以下又は上記の好ましい範囲とし、Sq値を50nm以下又は上記の好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、D層を積層する側の表面の層の原料として直鎖状ポリプロピレン系樹脂以外に0質量%を超え5質量%以下の分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂、結晶核剤、ポリプロピレンとは非相溶のオレフィン系樹脂を添加する方法、キャスティングドラムの温度を30℃以下とする方法、ポリプロピレンフィルムの製膜時に長手方向の延伸前の予熱温度や幅方向の延伸前の予熱温度の高温化と延伸温度の低温化で調整する方法が挙げられる。なお、これらの方法は適宜組み合わせて用いることができる。
Sa及びSqは、公知の三次元非接触表面形状の測定器(例えば、(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡)及び、その付属の解析システムにより測定することができ、詳細な測定条件や解析条件は実施例に示す。
本発明のポリプロピレンフィルムはフィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)が160℃以上であることが好ましい。Tmを160℃以上、より好ましくは163℃以上、さらに好ましくは166℃以上、さらに好ましくは169℃以上、特に好ましくは172℃以上とすることで、結晶性が高く保たれるため、蒸着時の熱によるポリプロピレンフィルムの変形が軽減される。すなわち、蒸着により後述のD層を積層した際にD層中のピンホールやクラック等の欠陥が軽減され、D層を積層した積層体のバリア性が高くなる。上記のような範囲のTmに制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述するように、融点の高いポリプロピレン系樹脂を含み、ポリプロピレンフィルムの製膜時に長手方向、幅方向の延伸倍率を調整する方法が挙げられる。より具体的には、ポリプロピレン系樹脂の融点が150℃以上、製膜時に長手方向の延伸倍率を2.0倍以上15倍以下、好ましくは4.0倍以上10倍以下、より好ましくは4.3倍以上8.0倍以下、さらに好ましくは4.6倍以上6.0倍以下とすること、幅方向の延伸倍率を7.0倍以上20倍以下、より好ましくは8.0倍以上16倍以下、さらに好ましくは8.5倍以上12倍以下とすることにより達成可能である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、包装材としたときに内容物の視認性を確保する観点から、分光色差計で測定したb値*が-2.00以上2.00以下であることが好ましい、ここでb値*は青から黄にかけての色味の強さを表し、-(マイナス)の値は青味を、+(プラス)は黄味の強さを表す。いずれの絶対値も大きくなるほど色味が強くなることを意味する。前記の観点からb値*の下限はより好ましくは-1.50、さらに好ましくは-1.00、さらに好ましくは-0.50であり、他方、上限はより好ましくは1.50、さらに好ましくは1.00、さらに好ましくは0.50である。
上記のような範囲のb値*に制御する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、後述するポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融する溶融工程において、窒素ガスを注入して本工程内の酸素濃度を低減しポリプロピレン系樹脂の酸化劣化を抑制することによって、樹脂自体が茶褐色になる変化を防ぐことにより達成可能である。なお、b値*は公知の分光測色計で測定することができ、測定装置としては、例えばコニカミノルタセンシング株式会社製の分光測色計CM-3600d等を用いることができる。同装置を用いたときの測定方法は後述する。
<積層体>
続いて、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する。ここで、「金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層」とは、層を構成する全成分を100質量%としたときに、金属のみを50質量%より多く含む層、無機化合物のみを50質量%より多く含む層、金属と無機化合物をいずれも含み、それらの合計が50質量%を超える層を指す。D層の金属及び/又は無機化合物としては、ポリプロピレンフィルムとの密着性向上、ポリプロピレンフィルムに積層した際のガスバリア性向上、及び環境負荷低減の観点から、例えば、アルミニウム、無機酸化物(酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム等)、ダイアモンド状炭素膜、あるいはこれらの混合物のいずれかが好適に用いられる。中でも、より好ましくは上記の無機酸化物であり、特に好ましくはアルミナ、シリカ、アルミニウムと珪素の酸化物のうち少なくとも一つを含むものである。
ここで、ポリプロピレンフィルムが積層構成である場合、D層は前述のポリプロピレンフィルムの表面を三次元非接触表面形状計測により測定した表面の平均粗さ(Sa)および二乗平均平方根高さ(Sq)が小さい値となる表面(a面)を形成する層(以下、A層と称する。)の表面に形成されることが好ましい。このような態様とすることにより、高い水蒸気バリア性や酸素バリア性を実現することができる。また、D層とA層の間には、コーティング等により厚み1μm以下の樹脂層を設けてもかまわない。かかる樹脂層を設けることで、D層とA層の密着性を向上させるなどの効果を得られる場合がある。但し、製造コストやリサイクル性の観点からは、該樹脂層を有さない態様(すなわち、D層が、A層によって形成されるa面上に直接積層される態様)が好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムにD層を形成して積層体とする方法としては、コーティング、蒸着、ラミネート等が挙げられるが、湿度依存がなく、薄膜で優れたガスバリア性を発現できることから、蒸着が特に好ましい。蒸着方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着法、プラズマCVD等の各種化学蒸着法を用いることができるが、生産性の観点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。
本発明の積層体の水蒸気透過率は、包装材として用いたときの内容物の保存性の観点から、2.0g/m/day以下であることが好ましい。より好ましくは1.0g/m/day以下、さらに好ましくは0.5g/m/day以下である。かかる範囲とすることで、特に食品包装用途として用いる際、内容物の吸湿あるいは放湿による劣化を軽減することができる。
本発明の積層体の水蒸気透過率を2.0g/m/day以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば積層体に用いるポリプロピレンフィルムのX1Tsを100℃以上160℃以下とする方法や、Y1断面のアスペクト比を2以上とする方法、すなわち積層体に本発明のポリプロピレンフィルムを用いる方法等を好適に用いることができる。
また、本発明の積層体の酸素透過率は、包装材として用いたときの内容物の保存性の観点から、200cc/m/day以下であることが好ましい。上記観点から本発明の積層体の酸素透過率は、より好ましくは100cc/m/day以下、より好ましくは10cc/m/day以下、さらに好ましくは2.0cc/m/day以下、特に好ましくは1.0cc/m/day以下、最も好ましくは0.5cc/m/day以下である。かかる範囲とすることで、特に食品包装用途として用いる際、内容物の酸化による劣化を軽減することができる。
積層体の酸素透過率を200cc/m/day以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、積層体に本発明のポリプロピレンフィルムを用いる方法が挙げられる。また、有機無機混合物を含むトップコート層をD層の表面に積層する方法を用いることも、積層体の酸素透過率を抑えるのに効果的である。トップコート層の好ましい一例として、例えば金属又は珪素原子を含むアルコキシドおよび/またはその重縮合物と、水溶性高分子の混合物が挙げられる。なお、これらの方法は適宜併用することもできる。
本発明の積層体の全光線透過率は、包装材として用いたときの内容物の視認性を得る観点から、70%を超え100%未満であること好ましい。より好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは86%以上、特に好ましくは89%以上、最も好ましくは92%以上である。また、全光線透過率を100%未満とするのは、実現可能性を考慮したためである。積層体の全光線透過率を、70%を超えて100%未満にする方法としては特に限定されるものではないが、例えば、D層に無機化合物として、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはこれらの混合物のいずれかを用いることで達成可能である。
本発明の積層体におけるD層の厚みは、積層体を樹脂あるいはフィルムとして再利用するリサイクル性、割れにくくしてバリア性を高め、包装材としたときの内容物の視認性を得る観点から200nm以下が好ましい。より好ましくは110nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。下限は特に限定されないが、バリア性発現の観点から1nmとする。
本発明の積層体は熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX2方向、前記X2方向に0.1%収縮する際の温度をX2Tsとしたときに、X2Tsが100℃以上160℃以下であることが好ましい。このような態様とすることで製袋加工後に加熱殺菌処理などの高温の処理を施す際も、ポリプロピレンフィルムが収縮するのを抑制し、水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれるのを防ぐことができる。上記観点から、ポリプロピレンフィルムのX2Tsの下限は100℃、好ましくは105℃、より好ましくは111℃、さらに好ましくは115℃、最も好ましくは121℃である。他方、X2Tsの上限は160℃であり、好ましくは159℃、より好ましくは158℃である。なお、X2Tsを100℃以上160℃以下とする方法としては、例えば、X1Tsを100℃以上160℃以下とする方法と同じ方法を用いることができる。より具体的には、X1Tsを100℃以上160℃以下とする方法で得られたポリプロピレンフィルムにD層を形成することである。
<包装材、梱包体>
以下、本発明の包装材、梱包体について説明する。本発明の包装材は、本発明のポリプロピレンフィルム、及び本発明の積層体の少なくとも一方を有することを特徴とする。本発明の包装材は、蒸着時の熱に対して構造安定性に優れ、特に透明蒸着層を積層した際に水蒸気バリア性、酸素バリア性が良好であることから、水蒸気や酸素により劣化しやすいものの包装に好適に用いることができる。
本発明の梱包体は、本発明の包装材により内容物が梱包されていることを特徴とする。内容物は特に制限されないが、本発明の包装材が透明性、水蒸気バリア性、酸素バリア性に優れることから、外部からの視認性が求められ、水蒸気や酸素により劣化しやすいものであることが好ましい。なお、本発明の梱包体は本発明の包装材で内容物を覆うことで得られ、その態様は特に制限されない。例えば、ヒートシールにより本発明の包装材を袋状に加工し、その中に内容物を入れることで得られる梱包体が挙げられる。このような梱包体の具体例としては、レトルトパウチ食品等が挙げられる。
<製造方法>
以下、本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法について説明する。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法は、ポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融する溶融工程、溶融工程で得られた溶融物を1質量%以上99質量%以下含む混合樹脂を溶融して口金からシート状に吐出し、支持体上で冷却固化してポリプロピレンシートを得るキャスト工程、ポリプロピレンシートを直交する二方向に延伸する延伸工程、及び、延伸工程で得られたフィルムに熱処理および弛緩処理を施す熱処理工程をこの順に有することを特徴とする。本発明のポリプロピレンフィルムは、層構成については特に限定されず、例えばA層/B層の2種2層構成、A層/B層/A層の2種3層構成、A層/B層/C層(ここでC層はA層、B層とは異なる層を意味する。)の3種3層構成等を採用することができる。以下、A層、B層、C層からなる3種3層構成のポリプロピレンフィルムを例に挙げて、その製造方法についてより具体的に説明するが、本発明のポリプロピレンフィルム及びその製造方法は必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
まず、ポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層を有する積層体を溶融させ混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化してポリプロピレン系樹脂原料を得る。次いで得られたポリプロピレン系樹脂原料を1質量%以上99質量%以下含むように、ポリプロピレン系樹脂と混ぜ合わせた混合樹脂をB層用の単軸押出機で溶融させ、A層の原料となるポリプロピレン系樹脂若しくはポリプロピレン系樹脂組成物をA層用の単軸押出機で溶融させ、B層よりも融点が低いC層の原料となるポリプロピレン系樹脂もしくはポリプロピレン系樹脂組成物をC層用の単軸押出機で溶融させる。押出温度220℃~280℃、好ましくは230℃~270℃に設定した別々の単軸押出機から溶融押出し、濾過フィルタを通過させて異物等を取り除く。なお、少なくとも一方の表層には、粒径の小さな粒子を添加する、より好ましくはポリプロピレンとは非相溶のオレフィン系樹脂を添加することが好ましい。このような態様とすることにより、得られるポリプロピレンフィルムの表面を十分に平滑なものとし、蒸着層をはじめとする後述のD層を積層する際にD層の厚みを均一にし、さらにD層中のピンホールやクラックといった欠陥を抑制することで積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を高めることができる。続いてこれらの溶融樹脂を、所望の層構成(溶融段階のA、B、C層用原料をそれぞれ順にa、b、cとすると、例えば、a/b/c 等)となるように、フィードブロックなどで合流させる。その後、200℃~260℃の温度でスリット状口金から押し出す。
次に、スリット状口金から押し出された溶融樹脂シートを、表面温度が10℃~40℃に制御されたキャスティングドラム(冷却ドラム)上で冷却固化させ、未延伸ポリプロピレンフィルムを得る。この際、口金から押し出された溶融シートが最初に接するドラム面側がA層となるように共押出積層することが、A層の表面粗さパラメータを所望の範囲内に制御しやすいため好ましい。溶融シートのキャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法等のうちいずれの手法を用いてもよく、また複数の方法を組み合わせてもよいが、フィルムの平面性を良好にでき、かつ表面粗さを制御することが可能なエアーナイフ法が好ましい。また、エアーナイフ法を用いる場合、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
キャスティングドラムの表面温度は、得られるポリプロピレンフィルムの表面を平滑にし、蒸着膜等により形成するD層の厚み均一性及び密着性向上をはかる観点から、好ましくは10℃~35℃、より好ましくは10℃~30℃、最も好ましくは10℃~25℃であり、かつ、延伸後にA層とする樹脂をドラム面(キャスティングドラムと接する面)側とすることが好ましい。かかる温度範囲及び構成とすることで、未延伸ポリプロピレンフィルムの特にドラム面側(延伸後にA層となる面側)の表層部分のメゾ相分率を高め、該未延伸ポリプロピレンフィルムがメゾ相構造を有するようにすることができる。
メゾ相とは、結晶と非晶の中間相であり、溶融状態から非常に速い冷却速度で固化させた際に特異的に生成する。一般的にポリプロピレンを冷却固化させると、結晶化して球晶が成長することが知られているが、このように球晶が生じた未延伸ポリプロピレンフィルムを延伸すると、球晶内部や球晶間の結晶と非晶の間などで延伸応力に差が生じ、局所的な延伸斑が発生し厚み斑や構造斑に繋がると考えられる。一方、メゾ相は球晶形態をとらないため、延伸斑が生じず延伸均一性が高くなるため、フィルムとしたときの厚み均一性が高く、表面粗さも小さく均一になりやすい。
次に、未延伸ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。まず、未延伸ポリプロピレンフィルムを下限が好ましくは70℃、より好ましくは80℃、上限が好ましくは150℃、より好ましくは140℃に保たれたロール間に通して予熱する。このとき、予熱温度を120℃以上、かつ長手方向の延伸温度+2℃以上、より好ましくは+3℃以上、さらに好ましくは+6℃以上、特に好ましくは+9℃以上とし、長手方向の延伸温度を長手方向の予熱温度より低温かつ110℃以上にすることで、延伸後にドラム面(キャスティングドラムと接する面)側とドラム反対面(キャスティングドラムと接しない面)のフィルム表裏の球晶変体を制御でき、ドラム面側は平滑表面、ドラム反対面を粗い表面とすることができる。次いで上記した延伸温度範囲に保ったまま長手方向に2.0倍以上15倍以下、好ましくは4.0倍以上10倍以下、より好ましくは4.3倍以上8.0倍以下、さらに好ましくは4.6倍以上6.0倍以下の延伸倍率で縦延伸した後、室温まで冷却して一軸配向フィルムを得る。
次いで一軸配向フィルムの端部をクリップで把持したまま、テンターに導き、フィルムの端部をクリップで把持したまま幅方向へ延伸(横延伸)する。その際の延伸前予熱温度を幅方向延伸温度+1℃以上、より好ましくは+2℃以上、さらに好ましくは+3℃以上、特に好ましくは+4℃以上とする。延伸前予熱温度を幅方向延伸温度より高くすることで、幅方向への延伸初期の応力を低減させることができ、延伸斑が生じず延伸均一性が高くなるため、ポリプロピレンフィルムとしたときの表面粗さも小さく均一になりやすい。幅方向の延伸温度は150~170℃、好ましくは155~165℃である。
また、幅方向の延伸倍率は7.0倍以上20倍以下とするのが好ましく、より好ましくは8.0倍以上16倍以下、さらに好ましくは8.5倍以上12倍以下である。幅方向の延伸倍率を7.0倍以上とすることで、長手方向の高い配向状態を保ったまま幅方向にも高い配向を付与し、面内の分子鎖緊張を高めることができる。そのため、特に包装用途として用いる際、蒸着時の熱に対するフィルムの構造安定性を高め、均一な蒸着膜を形成することにより水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。また、幅方向の延伸倍率を20倍以下とすることで、製膜時のフィルム破れを防ぎ、生産性を良好なものとすることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造においては、横延伸後に熱処理及び弛緩処理を施すことが好ましい。熱処理及び弛緩処理は、テンターのクリップで幅方向両端部を緊張把持したまま幅方向に2%以上20%以下の弛緩を与えつつ、好ましくは140℃以上170℃以下の温度で行う。熱処理温度の下限は好ましくは152℃、より好ましくは154℃であり、他方、上限は好ましくは168℃、より好ましくは165℃である。かかる熱処理を行うことで、フィルムの熱に対する構造安定性を向上させ、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、D層にピンホール、クラックといった欠陥が生じる熱負け現象を抑制することができる。その結果、ポリプロピレンフィルムから得られる積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性を良好なものとすることができる。弛緩処理においては、フィルムの熱に対する構造安定性を高める観点から、弛緩率の下限は好ましくは5%、より好ましくは8%、さらに好ましくは11%であり、他方、上限は好ましくは18%、より好ましくは17%である。弛緩率が2%より小さい場合は、得られるポリプロピレンフィルムが加熱時の寸法安定性に劣るものとなる場合がある。そのため、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、フィルムが変形してD層にピンホールやクラックといった欠陥が発生する結果、D層を積層した積層体の水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれる場合がある。一方、弛緩率が20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎる結果、製膜後のフィルムにシワが入り、機械特性の低下や蒸着時のムラに繋がる場合がある。
上記の熱処理を経た後は、50℃以上熱処理温度未満の温度でフィルムを冷却してテンターの外側へ導き、室温雰囲気にてフィルム幅方向両端部のクリップを解放し、ワインダー工程にてフィルム幅方向両側のエッジ部をスリットする。その後、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を積層する面(通常はキャストドラムと接していた側の表面)に対し、D層の剥離力を高くすることを目的として、インラインでの表面改質処理を施すことが好ましい。インラインでの表面改質処理としては、例えば、大気中、もしくは酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、シランガスあるいはこれらの混合物の雰囲気ガス中でのコロナ放電処理、もしくはプラズマ処理、イオンビーム処理等が挙げられる。特に、コロナ放電処理に関しては、酸素濃度が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下の雰囲気ガス中で行うことが効果的であり、酸素濃度が1%以下である雰囲気ガスの具体的な態様としては、窒素ガス、炭酸ガスあるいはこれらの混合物を採択することが好ましく、特に窒素ガス、炭酸ガスの混合物を採択することが効果的である。また、前述した雰囲気ガス中でのコロナ放電処理と、プラズマ処理、イオンビーム処理を組み合わせる方法も効果的である。かかる雰囲気中で処理を行うことで、フィルム表面においてポリプロピレンの分子鎖切断に伴う低分子量物の生成を抑制しつつ、効率的に親水性の官能基を導入することができるため、D層の剥離力を高くすることが容易になる。こうして得られたフィルムをロール状に巻き取って、本発明の積層体を構成するポリプロピレンフィルムを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下に示す態様に限定されない。なお、各項目の評価は以下の方法により行った。
[特性値の測定方法、効果の評価方法]
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)ポリプロピレンフィルムの厚み
ポリプロピレンフィルムの任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K-312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの算術平均値をポリプロピレンフィルムの厚み(単位:μm)とした。
(2)X1方向の定め方、X1方向に1%収縮する際の温度X1Ts
<熱機械分析(TMA)による熱収縮率の測定>
ポリプロピレンフィルムを準備し、任意の方向を上に向けて、長辺として幅4mm、長さ50mmの矩形に切り出しサンプル<1>とした。この際、矩形のサンプル<1>の長辺方向を0°と定義した。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取した。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取した。次に、各矩形のサンプルを試長20mmとなるよう金属製チャックに挟み込んだ。その後に下記の熱機械分析装置にセットし、下記温度条件、荷重条件にて試長を一定保持したフィルムにおける熱収縮曲線を求めた。各サンプルについて同様の測定を1回ずつ行って140℃における収縮率が最大であったサンプルの長辺方向をポリプロピレンフィルムのX1方向とした。またX1方向におけるTMAの熱収縮曲線から1%収縮した際の温度を読み取り、前記X1方向に1%収縮する際の温度X1Tsを求めた。なお、X2方向の定め方、X2方向に1%収縮する際の温度X2Tsについても、測定対象を積層体とする以外は同様とした。
(装置)
・装置 :TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
(温度条件)
・初期温度 :25℃、最大温度:180℃、レート:10℃/分
・保持 :10分
・サンプリング時間:10S/回
・窒素冷却 :なし
(荷重条件)
・制御モード :F
・待機中上限荷重 :19.6mN
・スタート荷重 :19.6mN
・荷重レート :0.1mN/分
・保持 :600分。
(3)全光線透過率
スガ試験機(株)製ヘイズメーター(HGM-2DP)を用いた。ポリプロピレンフィルムを6.0cm×3.0cmで切り出し、ポリプロピレンフィルム表面に対し垂直に光を入射させ測定した際の測定値からフィルム厚み方向(フィルム面に垂直な方向)の全光線透過率の値を得た。なお測定は5回行い、その平均値を全光線透過率とした。なお、積層体の全光線透過率についても同様に測定した。
(4)粒子のアスペクト比および粒子の短辺の長さ
ポリプロピレンフィルムのY1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面、およびX1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面に対してミクロトームを用いてフィルムの断面を切り出した。切り出した断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて1万倍の倍率で観察し、視野中に観測される粒子を無作為に10個選択し、各粒子について、粒子全体を含み面積が最小となるように長方形を描き、長辺と短辺の長さそれぞれの平均値を算出した。その後、長辺の長さの平均値を短辺の長さ平均値で除して粒子のアスペクト比とした。なお、1視野中に粒子が10個に満たない場合は、同ポリプロピレンフィルムの切断断面の観察位置を変更して観察を行い、観察数が10個になるまで観察を行った。
(5)フィルムの融解ピーク温度(Tm)
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのフィルムサンプルを30℃から260℃まで20℃/分の条件で昇温した。この昇温時に得られる吸熱カーブのピーク温度をポリプロピレンフィルムの融解ピーク温度(Tm)とした。なお複数のピーク温度が観測できる場合には最も高温のピークの温度をポリプロピレンフィルムの融解ピーク温度(Tm)とした。
(6)ポリプロピレン系樹脂の融点
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレン系樹脂サンプルを30℃から260℃まで20℃/分の条件で昇温した。次いで、260℃で5分間保持した後、20℃/分の条件で30℃まで降温した。さらに、30℃で5分間保持した後、30℃から260℃まで20℃/分の条件で昇温した。この昇温時に得られる吸熱カーブのピーク温度をポリプロピレン系樹脂の融点とした。なお複数のピーク温度が観測できる場合には最も高温のピークの温度をポリプロピレン系樹脂の融点とした。
(7)表面の平均粗さ(Sa)および 二乗平均平方根高さ(Sq)
Sa値及びSq値の測定は、三次元非接触表面形状の測定器である、(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行った。また、解析においては付属の解析ソフトにより、撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルタにて処理後、補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。測定条件は下記の通りとし、測定はフィルム両面で行った。
製造元:株式会社日立ハイテクサイエンス
装置名:走査型白色干渉顕微鏡VS1540
・測定条件:対物レンズ 10×
鏡筒 1×
ズームレンズ 1×
波長フィルタ 530nm white
・測定モード:Wave
・測定ソフトウェア:VS-Measure Version10.0.4.0
・解析ソフトフェア:VS-Viewer Version10.0.3.0
・測定面積:0.561×0.561mm
(8)ポリプロピレンフィルムのb値*
コニカミノルタセンシング株式会社製、分光測色計CM-3600dを用いた。測定径φ25.4mmのターゲットマスク条件下で、SCI方式で透過方法でのb*値を測定し、n数5の平均値を求めた。なお、白色校正板、およびゼロ校正ボックスは下記のものを用いて校正を行った。なお、測色値の計算に用いる光源はD65を選択した。
白色校正板 :CM-A103
ゼロ校正ボックス:CM-A104。
(9)Al蒸着後、またはAlOx蒸着後の水蒸気バリア性
<Al蒸着の方法>
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセットして、1.00×10-2Paの高減圧状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムの上で、アルミニウム金属を加熱蒸発させながらポリプロピレンフィルムを走行させてA層の上に蒸着薄膜層を形成した。その際、蒸着膜が約100nmになるよう制御した。 蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返し、40℃の温度で2日間エージングして、フィルムにAl(アルミニウム)の蒸着層が積層された積層体を得た。
<AlOx蒸着の方法>
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムロールをセットして、1.00×10-2Paの高減圧状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムの上で、酸素ガスを導入しながらAlOxを反応蒸発させながらポリプロピレンフィルムを走行させてA層の上に蒸着層を形成した。その際、蒸着層が約20nmになるよう制御した。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返し、40℃の温度で2日間エージングして、ポリプロピレンフィルムにAlOx(酸化アルミニウム)の蒸着層が積層された積層体を得た。
<水蒸気バリア性の評価方法>
Al蒸着あるいはAlOx蒸着を施した積層体について、MOCON/Modern Controls社製の水蒸気透過率測定装置“PERMATRAN-W”(登録商標)3/30を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。測定はサンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、該フィルムの水蒸気透過率とした(単位:g/m/day)。得られた水蒸気透過率より、積層体の水蒸気バリア性を下記基準に従い判定した。A以上を水蒸気バリア性良好とし、Bは実用上問題ないレベルとした。
S:0.5g/m/day以下。
A:0.5g/m/dayより大きく1.0g/m/day以下。
B:1.0g/m/dayより大きく2.0g/m/day以下。
C:2.0g/m/dayより大きい。
(10)Al蒸着後、またはAlOx蒸着後の酸素バリア性
(9)に記載の方法により、Al蒸着層若しくはAlOx蒸着層が積層された積層体を得た。各積層体について、MOCON/Modern Controls社製の酸素透過率測定装置“OX-TRAN”(登録商標)2/20を用いて、温度23℃、湿度0%RHの条件で酸素透過率を測定した。測定はサンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、これを該フィルムの酸素透過率とした(単位:cc/m/day)。得られた酸素透過率より、積層体の酸素バリア性を下記基準に従い判定した。A以上を酸素バリア性良好とし、Bは実用上問題ないレベルとした。
S:2.0cc/m/day以下。
A:2.0cc/m/dayより大きく10cc/m/day以下。
B:10cc/m/dayより大きく100cc/m/day以下。
C:100cc/m/dayより大きい。
(11)積層体の厚み
(9)に記載の方法により、Al蒸着層若しくはAlOx蒸着層が積層された積層体を得た。任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で、接触式のアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K-312A型)を用いて測定した。その10箇所の厚みの算術平均値を積層体の厚み(単位:μm)とした。なお、本測定法により得られる厚みの精度(単位:μm)は小数第1位までであり、D層の厚みは別途、(12)の方法により測定した。
(12)D層の厚み
本発明の積層体を構成するD層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)により断面観察を行うことで測定した。断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB-2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118~119に記載の方法に基づいて)作製した。続いて、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H-9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、任意の10箇所についてD層の厚みを確認した。それらの算術平均値をD層の厚み(単位:nm)とした。
[各実施例、各比較例のポリプロピレンフィルムの製造に用いた成分]
各実施例、各比較例の積層体を構成するポリプロピレン系樹脂フィルムの製造には、以下の成分を使用した。
(A層用ポリプロピレン系樹脂)
A1:ホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)社製“F113G”(メソペンタッド分率:0.94、融点:162℃、MFR:2.9g/10min)
(A層用マスターバッチ)
AM1:A1(90質量部)、ポリメチルペンテン系樹脂1(10質量部)、酸化防止剤(0.1質量部)を260℃に設定した押出機で混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化することにより作製したマスターバッチ。
(B層用ポリプロピレン系樹脂)
B1:ホモポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー(株)社製“F133A”融点:167℃、MFR=3.0g/10min)
(B層用マスターバッチ)
BM1:B1(70質量部)、石油樹脂1(30質量部)、酸化防止剤(0.1質量部)を240℃に設定した押出機で混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化することにより作製したマスターバッチ。
(C層用ポリプロピレン系樹脂)
C1:エチレン-プロピレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製“WFW4M”融点:135℃、MFR=7.0g/min)
(C層用マスターバッチ)
CM1:C1(90質量部)、ポリメチルペンテン系樹脂1(10質量部)、酸化防止剤(0.1質量部)を260℃に設定した押出機で混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化することにより作製したマスターバッチ。
(ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂)
ポリメチルペンテン系樹脂1:三井化学(株)製“TPX”(登録商標)(RT31、融点:232℃、MFR:9g/10min@260℃)
石油樹脂1:T-REZ HA125(JXTGエネルギー社製、軟化点125℃)
(粒子、添加剤等)
P1:平均粒径2μmのポリメタクリル酸系重合体の架橋粒子(PMMA粒子)。
P2:平均粒径300nmのシリカ粒子。
酸化防止剤:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製“IRGANOX”(登録商標)1010。
(実施例1)
(積層体の作製)
A層用のポリプロピレン系樹脂原料として、A1、AM1を質量比が60:40となるように混合したものを用いた。また、B層用の原料として、B1、BM1を質量比が75:25となるように混合したものを用いた。さらに、C層用の原料として、C1、CM1を質量比が60:40となるように混合したものを用いた。各層の原料を別々の単軸押出機である押出機(A)、押出機(B)、押出機(C)にそれぞれ供給して260℃で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルタで異物を除去した後、260℃に設定した配管を通過させた。その後、フィードブロックを用いてa/b/cの3層積層(溶融状態のA~C層用の組成物を、順にa~cとする。)で積層比が1/10/1となるように押出量を調節し、その溶融積層体を260℃に設定したT型スリットダイよりシート状に吐出させた。その後、吐出させた溶融シートを25℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させて冷却固化し、未延伸シートを得た。このときaがキャスティングドラムに接するようにした。
次に、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に133℃まで予熱し、そのまま周速差を設けた123℃に加熱したロール間に通し、長手方向に5.0倍に延伸した。続いて、延伸後のフィルムを70℃に保たれたロール間に通して冷却した後、室温まで冷却して一軸配向フィルムを得た。
さらに、得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、フィルム幅方向両端部をクリップで把持したまま166℃に予熱し、幅方向に161℃で9.8倍延伸した後、幅方向に12%の弛緩を与えながら158℃で熱処理を行った。その後、クリップで幅方向両端部を引き続き緊張把持したまま、140℃の冷却工程を経てフィルムをテンターの外側へ導き、フィルム幅方向両端部のクリップを解放した。次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面になるA層側)に25W・分/mの処理強度で、炭酸ガスと窒素ガスを15:85の体積比で混合した混合気体雰囲気下(酸素濃度:0.8体積%)でコロナ放電処理を行った上で、得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムをロールとして巻き取った。
続いて、上記の二軸配向ポリプロピレンフィルムをロールより巻き出し、そのコロナ放電処理を施した面にAlOxを蒸着し、AlOx蒸着層(D層)を有する積層体を得た。
(再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製)
次いで前記積層体をクラッシャーで粉砕し圧縮し、ホッパー内酸素濃度0.05%に制御し温度240℃に設定した押出機に投入して混練押出した後、ストランドを水冷後チップ化し、再生ペレット(BR1)を得た。A層用のポリプロピレン系樹脂原料として、A1、AM1を質量比が60:40となるように混合したものを用いた。また、B層用の原料として、B1、BM1、BR1を質量比が55:25:20となるように混合したものを用いた。さらに、C層用の原料として、C1、CM1を質量比が60:40となるように混合したものを用いた。各層の原料を前述した「積層体の作製」と同様の方法および条件にて溶融押出、二軸延伸、熱処理、弛緩処理、次いでフィルムに表面処理およびD層を蒸着した積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。
(実施例2)
AlOxに代えてAlの蒸着を行い、Al層(D層)を有する積層体とした以外は実施例1と同様にして積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(実施例3)
B層の樹脂としてBM1を用いず、各層の組成及び製膜条件を表1のとおりとした以外は実施例1と同様にして積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(実施例4)
AlOxに代えてAlの蒸着を行い、Al層(D層)を有する積層体とした以外は実施例3と同様にして積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(実施例5)
表1に示した製膜条件に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(実施例6)
表1に示した製膜条件に変更し、幅方向の弛緩率8%に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(実施例7)
表1に示した製膜条件に変更し、A層用のポリプロピレン系樹脂原料として、A1、P2を質量比が99:1となるように混合したものを用い、C層用の原料として、C1、P2を質量比が99:1となるように混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして、積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(実施例8)
表1に示した製膜条件に変更し、A層用のポリプロピレン系樹脂原料としてA1のみを用いた以外は実施例1と同様にして、積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(比較例1)
A層用のポリプロピレン系樹脂原料として、A1、P1を質量比が99:1となるように混合したものを用いた。また、B層用の原料として、B1、BM1を質量比が75:25となるように混合したものを用いた。さらに、C層用の原料として、C1、P1を質量比が99:1となるように混合したものを用い、製膜条件を表1に示した条件に変更した以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリプロピレンフィルムを作製し、D層を蒸着した積層体を得た。再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製は実施していない。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
(比較例2)
積層体1を構成するAlの蒸着厚みを400nmとし、表1に示した製膜条件に変更した以外は実施例4と同様にして、積層体の作製、再生ペレットの作製、および再生ペレットを用いた積層体の作製を行った。得られたポリプロピレンフィルムと積層体の特性を表1に示す。
Figure 2023118131000001
表中、最初に製造した積層体を積層体1、再生ペレットを用いた積層体を積層体2とする。比較例1の積層体は粒子として粒径の大きなP1を含むため、これを再生ペレット化したものをB層に用いて積層体を作製しても、粗大突起が形成されてバリア性が劣るのが明らかである。よって、比較例1では再生ペレットを用いた積層体は作製せず、最初に製造した積層体で評価を行った。また、実施例1~7及び比較例2において、積層体2の製造には当該実施例及び比較例で作製した積層体1の再生ペレットを使用した(すなわち、再生ペレットは表中全てBR1と表記しているが、その原料となる積層体1が実施例や比較例毎に異なるため、表記が同じであっても同一のものではない。)。
本発明は、蒸着フィルムを再利用したポリプロピレンフィルムでありながら優れた熱寸法安定性および高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を有したポリプロピレンフィルムを提供でき、例えば包装材料用に好適に用いることができる。

Claims (17)

  1. 粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX1方向、前記X1方向に1%収縮する際の温度をX1Tsとしたときに、前記X1Tsが100℃以上160℃以下であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。
  2. 粒子を含むポリプロピレンフィルムであって、熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向にフィルム面内で直交する方向をY1方向としたときに、前記Y1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上であり、前記粒子が、金属粒子と無機化合物粒子の少なくとも一方であることを特徴とする、ポリプロピレンフィルム。
  3. 前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子のアスペクト比が2以上である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
  4. 前記X1方向に平行かつ厚み方向と垂直な面で切断したときの断面で観察される、前記粒子の短辺の長さが100nm未満nm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  5. 前記無機化合物粒子が無機酸化物粒子であり、アルミナ、シリカ、アルミニウムとケイ素の酸化物のうち少なくとも一つを含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  6. 三次元非接触表面形状計測により測定した少なくとも一方の表面の平均粗さ(Sa)が30nm以下、かつ二乗平均平方根高さ(Sq)が50nm以下である、請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  7. 全光線透過率が70%を超えて100%未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  8. フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)が160℃以上である、請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  9. 分光色差計で測定したb値*が-2.00以上2.00以下である、請求項1~8のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有することを特徴とする、積層体。
  11. 全光線透過率が70%を超え100%未満である、請求項10に記載の積層体。
  12. 熱機械分析(TMA)の昇温過程において140℃で最も収縮率の大きい方向をX2方向、前記X2方向に0.1%収縮する際の温度をX2Tsとしたときに、前記X2Tsが100℃以上160℃以下である、請求項10または11に記載の積層体。
  13. 包装材に用いられる、請求項10~12のいずれかに記載の積層体。
  14. 請求項10~13のいずれかに記載の積層体を有する、包装材。
  15. 請求項14に記載の包装材により内容物が梱包されている、梱包体。
  16. 請求項1~9のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムの製造方法であって、
    ポリプロピレン層と、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を有する積層体を溶融する溶融工程、
    前記溶融工程で得られた溶融物を1質量%以上99質量%以下含む混合樹脂を溶融して口金からシート状に吐出し、支持体上で冷却固化してポリプロピレンシートを得るキャスト工程、
    前記ポリプロピレンシートを直交する二方向に延伸する延伸工程、
    及び、前記延伸工程で得られたフィルムに熱処理および弛緩処理を施す熱処理工程をこの順に有することを特徴とする、ポリプロピレンフィルムの製造方法。
  17. ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方の表面に窒素と炭酸ガスの混合物雰囲気ガス中で表面処理を行う、請求項16に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法。
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