JP2022032186A - 光硬化性組成物、硬化物、及びレンズ - Google Patents

光硬化性組成物、硬化物、及びレンズ Download PDF

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Abstract

【課題】低粘度、速硬化性、低嫌気性、低臭気であり、保存安定性に優れる光硬化性組成物であり、特に、得られる硬化物が無色透明性、低光学歪、低吸水、耐熱性、靭性、高硬度などのレンズに必要な諸特性に優れる光硬化性組成物を提供する。更に、該光硬化性組成物を用いて、低光学歪かつ高い信頼性を有するレンズを提供する。【解決手段】トリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレート(A)、3官能または4官能の2級チオール(B)、開裂型光重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含有する光硬化性組成物であって、上記光硬化性組成物が1級チオールを含有せず、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の含有量比(重量比)が、下記範囲であることを特徴とする光硬化性組成物。成分(A)/成分(B)=75/25~95/5成分(C):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し2~10重量部成分(D):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し0.1~1重量部【選択図】なし

Description

本発明は、速硬化性で嫌気性がなく、低粘度で、臭気が少なく、保存安定性に優れる光硬化性組成物であり、光硬化により得られる硬化物が、無色透明性、低光学歪、耐熱性、低吸水、靭性、高硬度などの諸特性に優れる光硬化性組成物、更には、該光硬化性組成物を光硬化してなる硬化物、及びレンズに関する。
近年、光硬化技術の進展は目覚ましく、光源として紫外線ランプに替わって紫外線LEDが採用されはじめ、また、2P成形法によりガラスと樹脂を積層したハイブリッドレンズや、光インプリント法により微細な表面凹凸形状を有するレンズやウェハレベルレンズなどが製造されはじめている。特に、365nmなどの単波長紫外線LEDを用いて光インプリントを行う手法は、精度良く、かつ生産性良くレンズを製造できるため注目されている。
なお、2P成形法も光インプリント法も、基材と成形型との間隙で液状の光硬化性組成物を光硬化し、成形型を剥離(脱型)することにより、基材/硬化物よりなる積層体を得る手法である。一般的に、基材としてはガラスや樹脂フィルムが使用され、成形型としてはニッケル製金型、SUS製金型、シリコーン製樹脂型、エポキシ製樹脂型、ガラス型などが使用される。
一般的に、微細な表面形状を有する成形型を繰り返し使用して、樹脂に該微細形状を転写する場合は光インプリント法と呼ばれ、低粘度な光硬化性組成物を用いることが多い。かかる光インプリント法により得られた積層体から基材を剥離して硬化物単体を得る場合もある。
一方、光硬化性組成物としては、(メタ)アクリレート系化合物よりなるラジカル重合型光硬化性組成物、エポキシ系化合物やオキタセン系化合物よりなるカチオン重合型光硬化性組成物、チオール・エン系付加重合型光硬化性組成物などが知られている。しかし一長一短が有り、ラジカル重合型光硬化性組成物は、速硬化ではあるものの、酸素による重合阻害(「嫌気性」と呼ばれる。)のために、空気と接する硬化物表面や硬化物端部がべとついたり、成形型に液状またはゲル状の未硬化物が残渣として存在するなどの問題がある。また、カチオン重合型光硬化性組成物は、光硬化速度が遅く、光照射後も重合反応が進んだり、硬化物を加熱すると黄変や変形などを生じやすい。また、チオール・エン付加重合型光硬化性組成物は、臭気などの問題がある。
これらの中でも、(メタ)アクリレート系化合物よりなるラジカル重合型光硬化性組成物は、粘度や速硬化性の観点から、更に、得られる硬化物の無色透明性、低光学歪、耐熱性、高硬度、低吸水、耐薬品・溶剤性などの特性からレンズ用樹脂として多用されている。特に、速硬化性は、紫外線LEDを光源として光硬化を行う場合に好適である。
更に、レンズにリフロー耐性が求められる場合は、多官能(メタ)アクリレート系化合物よりなるラジカル重合型光硬化性組成物が、高度な架橋構造を有する硬化物を形成し、高温のリフロー工程においても変形や色相劣化が少ないために好適である。更に、長期間にわたる加熱試験や高温高湿試験などのレンズに求められる耐久性試験においても、変形や色相劣化が少ないために好適である。
なお、リフロー工程とは、通常250℃以上の高温で行われるはんだ付け工程を意味し、電子部品やレンズなどが載ったプリント基板を炉に入れて加熱する工程である。
しかし、多官能(メタ)アクリレート系化合物よりなるラジカル重合型光硬化性組成物を用いてレンズを製造する場合、前述した嫌気性により、レンズ端部(外周のフリンジ部を含む)が未硬化でべとついたり(図1(A)、図2参照)、脱型後の成形型に液状やゲル状の未硬化物が型残渣として残存する(図1(B)参照)。レンズ端部が未硬化な場合は、脱型後のレンズのハンドリングが困難になるばかりか、かかる部位を切断する必要が生じる。また、成形型に少しでも未硬化物が残存した場合は、成形型を繰り返し使用することができないこととなる。また、基材/硬化物の積層体から基材を除去して硬化物単体を得る場合にも同様の問題が生じる。なお、未硬化になりやすい部分の長さは、硬化中の樹脂内部への酸素の拡散度合により異なるが、通常、空気と接するレンズ端面から1mm程度である。
該未硬化部は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で光硬化すれば無くなるが、設備負荷が増大するため一般的ではない。また、該未硬化部は、基材と成形型の間(液外周部)にスペーサを設置すると低減されるが、完全に酸素の侵入を遮断することは困難である。完全に酸素を遮断するようなシール材を用いることは、脱型が困難になるばかりか、光硬化の生産性を減じることとなる。
かかる未硬化現象は、レンズ(外周のフリンジ部を含む)が厚くなるほど生じやすく、硬化物が高耐熱性になるほど一般的に重合が完結しづらくなるため生じやすい。更に、レンズには一般的に耐光性が必要とされるため、紫外線吸収剤を配合すると、更に未硬化現象が生じやすくなる。また、光硬化性組成物と接触する成形型表面の接触角が小さいと、成形型に未硬化物が残存しやすい傾向にあるため、成形型表面は撥水撥油性が求められる。
かかる未硬化現象は、光源として、多波長光源である紫外線ランプよりも、単波長光源である紫外線LEDを用いる場合に顕著であり、生産性良くレンズを製造する際の障害となっていた。
このような状況下、(メタ)アクリレート系化合物よりなるラジカル重合型光硬化性組成物が多数提案されており、例えば、特定の化学構造を有する(メタ)アクリレートが提案されている(例えば、特許文献1。)。また、特定の化学構造を有する(メタ)アクリレートを含有する硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献2。)。また、ラジカル重合とカチオン重合の併用が提案されている(例えば、特許文献3。)。また、特定の化学構造を有するチオールが提案されている(例えば、特許文献4。)。また、特定の光硬化性組成物を、貯蔵安定性の向上を目的として、酸素などの気体によって処理することが提案されている(例えば、特許文献5。)。また、特定の化学構造を有するチオールを配合した光硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献6、7、8、9。)。また、速硬化性のウレタン(メタ)アクリレートを用いた光硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献10、11、12、13、14。)。また、嫌気性に関する記載は無いものの(メタ)アクリレート、多官能チオール、光重合開始剤、及び添加剤を用いた光硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献15、16。)。
特開平06-072954号公報 国際公開第2018/008580号 特開2017-101112号公報 特開2007-070417号公報 特開2011-052148号公報 特開2017-179246号広報 特開2004-149755号公報 特開2009-35555号公報 特開2011-32351号公報 特開2013-170215号公報 国際公開第2012/081708号 国際公開第2013/080737号 特開2014-074082号公報 特開2018-2765号公報 特開2013-184996号公報 国際公開第2018/155013号
しかしながら、上記特許文献に開示された技術では、嫌気性の改良が不充分であり、リフロー耐性を有するレンズを得ることも困難である。特に後者に関しては、接着剤、シール剤、インキ、フォトレジスト用の光硬化性組成物では、当然のことながら、対応が困難である。
例えば、特許文献1、2に開示されている(メタ)アクリレートでは、単官能であるため、嫌気性の改良が充分ではなく、高耐熱かつ高硬度な硬化物を得ることは困難であり、更に、アルデヒド基や水酸基などの親水基を含有するため、低吸水な硬化物を得ることは困難である。
また、特許文献3に開示されている硬化性組成物では、嫌気性は低減されるものの、硬化速度が低下し、光硬化の後に加熱硬化が必要となる。
また、特許文献4に開示されているチオールは、1級であるため臭気が強く、光硬化性組成物の保存安定性も低下する傾向にある。
同様に、特許文献5に開示されている光硬化性組成物でも、1級チオールを用いているため、臭気が強く、保存安定性も充分ではない。
また、特許文献6に開示されている光硬化性組成物では、チオール分子内のアミンにより硬化物が黄変しやすく、また1官能もしくは2官能チオールであるため高耐熱かつ高硬度な硬化物を得ることは困難である。
また、特許文献7、8に開示されている光硬化性組成物は、チオール基に対してα位及び/またはβ位の炭素原子に置換基を有するチオールを用いているためレジストとしての嫌気性を有効に低減できるが、高耐熱かつ高硬度なレンズを製造することは困難である。
また、特許文献9に開示されている光硬化性組成物は、芳香族エーテル系3官能2級チオールを用いているため嫌気性を有効に低減できるが、芳香環が存在するため硬化物の耐光性が低下する傾向にある。
また、特許文献10、11、12に開示されている光硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートの配合により、可とう性を有する硬化物を得るものであり、高耐熱かつ高硬度な硬化物を得ることは困難である。また、ウレタン(メタ)アクリレートを比較的多量に用いるため、硬化物の吸水率が増大し、保存安定性が低下する傾向にある。
また、特許文献13に開示されている光硬化性組成物は、2官能以上のチオールを用いることにより半田付け工程における耐熱性を高めたものであるが、あくまでも接着剤としてであり、耐熱透明性は維持できても耐熱変形性までは考慮されておらず、かかる組成では高耐熱かつ高硬度なレンズを製造することは困難である。
また、特許文献14に開示されている光硬化性組成物は、4官能2級チオールを用いることにより、成形型との接触面でのべとつき感は解消されるものの、硬化物端部のべとつきや成形型残渣の解消には至っていない(図1、2参照)。また、ウレタン(メタ)アクリレートを比較的多量に用いるため、硬化物の吸水率が増大し、保存安定性が低下する傾向にある。
また、特許文献15に開示されている光硬化性組成物は、リフロー工程における黄変防止を目的として、(メタ)アクリレートに、バインダー樹脂、酸化防止剤、3官能以上のチオールを配合したものであるが、使用されている(メタ)アクリレートの硬化物、及びバインダー樹脂の耐熱性が不足しており、また両者の吸水率が大きいため、リフロー工程における変形を回避することが困難である。
同様に、特許文献16に開示されている光硬化性組成物は、主成分であるジ(メタ)アクリレートの硬化物の耐熱性が100℃以下と低いため、高耐熱かつ高硬度なレンズを製造することは困難である。なお、該特許文献の比較例3に本発明と類似の組成が記載されているが、光重合開始剤が少なく、かつ単官能チオールが配合されているために硬化が完結しておらず、硬化物が本来の光線透過率や耐熱性を発揮していないと推測される。前述した通り、本特許文献には、嫌気性に関する記載は無い。
上記特許文献に記載された提案技術を総括すると、(i)(メタ)アクリレート、(ii)連鎖移動剤、(iii)光重合開始剤、(iv)添加剤に関する改良技術に大別されるが、嫌気性が(メタ)アクリレートの本質的な課題であるだけに、それぞれの技術だけでは未硬化部の解消には至らず、特に、高耐熱かつ高硬度なレンズを生産性良く製造するには、(i)~(iv)全ての技術を組み合わせなければならないと予想された。
本発明ではこのような背景下において、速硬化性で嫌気性が無く、低粘度で、臭気が少なく、保存安定性に優れる光硬化性組成物であり、特に、得られる硬化物が無色透明性、低光学歪、耐熱性、低吸水、靭性、高硬度などのレンズに必要な諸特性に優れる光硬化性組成物を提供することを目的とする。更に、該光硬化性組成物を用いて、低光学歪かつ高い信頼性を有するレンズを提供することを目的とするものである。
本発明者等が鋭意検討した結果、トリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレート(A)、3官能または4官能の2級チオール(B)、開裂型光重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含有する光硬化性組成物であって、上記光硬化性組成物が1級チオールを含有せず、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の含有量比(重量比)が、下記範囲である光硬化性組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
成分(A)/成分(B)=75/25~95/5
成分(C):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し2~10重量部
成分(D):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し0.1~1重量部
本発明の光硬化性組成物は、低粘度、速硬化性、低嫌気性、低臭気であり、保存安定性に優れ、得られる硬化物は、無色透明性、低光学歪、耐熱性、低吸水、靭性、高硬度などのレンズとしての特性に優れる。
ラジカル重合型光硬化性組成物の嫌気性により生じる未硬化部分を示す模式図であり、(A)はレンズ端部の未硬化部分を示し、(B)は脱型後の成形型に残存する未硬化部分を示す。 ラジカル重合型光硬化性組成物の嫌気性により生じる未硬化部分を示す模式図であり、図1(A)と異なるレンズ形状であるが、同様に、レンズ端部に未硬化部分が生じることを示す。
以下に、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、本発明において、1官能とは、対象となる官能基を1分子中に1個有することを意味し、2官能とは、対象となる官能基を1分子中に2個有することを意味し、3官能とは、対象となる官能基を1分子中に3個有することを意味し、4官能とは、対象となる官能基を1分子中に4個有することを意味する。1官能を単官能と称することもあり、2官能以上を総称して多官能と称することもある。
また、本発明において、1級チオールとは、チオール基に対してα位の炭素が2つの水素と結合している第1級炭素であり、2級チオールとは、チオール基に対してα位の炭素が1つの水素と結合している第2級炭素であり、3級チオールとは、チオール基に対してα位の炭素が水素と結合していない第3級炭素である。すなわち、2級チオールと3級チオールは、チオール基に対してα位の炭素が置換基を有し、かかるα位の炭素で分岐した構造を有する。
また、本発明において、屈折率とは、波長589nmのナトリウムD線(以下、「NaD線」と略す)における25℃での屈折率nDを意味するものである。
本発明の光硬化性組成物は、トリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレート(A)、3官能または4官能の2級チオール(B)、開裂型光重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含有するとともに、1級チオールを含有せず、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の含有量比(重量比)が、下記範囲である。
成分(A)/成分(B)=75/25~95/5
成分(C):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し2~10重量部
成分(D):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し0.1~1重量部
かかる光硬化性組成物を構成する各成分について、以下、順次説明する。
<成分(A)>
本発明において、成分(A)として使用されるトリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレートとは、トリシクロデカン骨格を有するジ(メタ)アクリレートをいい、低粘度で速硬化性を有し、かつ単独硬化物(ホモポリマー)が高耐熱、低吸水、高硬度であるため、リフロー耐性を有するレンズを製造するのに好適である。
かかるトリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシプロピル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、速硬化性の点から、アクリレートが好ましく、より好ましくは、ホモポリマーのガラス転移温度が200℃以上ある点で、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレートとビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレートが好ましく、特に好ましくは、硬化物の曲げ弾性率の点で、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレートである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
そして、かかるトリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレートの25℃における粘度は、50~500mPa・sが好ましく、より好ましくは、100~300mPa・sである。かかる25℃における粘度が、下限値未満では、光硬化性組成物の嫌気性が増大する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、光硬化性組成物の低粘度化が困難になる傾向にある。
更に、かかるトリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレートの屈折率nDは、1.49~1.52であることが好ましく、より好ましくは、1.50~1.51である。かかる25℃における屈折率nDが、下限値未満では、硬化物の屈折率が低下する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、硬化物のアッベ数が低下する傾向にある。
更に、かかるトリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレートの単独硬化物(ホモポリマー)の25℃における吸水率は、0.1~1重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.2~0.7重量%、特に好ましくは、0.3~0.5重量%である。かかる硬化物の25℃における吸水率が、下限値未満では、硬化物と成形型との密着性が低下する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、レンズのリフロー工程や耐久性試験における変形が増大する傾向にある。
本発明における成分(A)の配合割合は、光硬化性組成物100重量%中、75~95重量%であり、好ましくは80~94重量%、より好ましくは85~93重量%、更に好ましくは87~91重量%である。成分(A)の配合割合が、下限値未満では、硬化物の耐熱性や硬度が低下する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、嫌気性が増大する傾向にある。
<成分(B)>
本発明において、成分(B)として使用される3官能または4官能の2級チオールは、連鎖移動剤であると共に、(メタ)アクリレートと共重合する主成分の1つである。一般的に、チオールは、光重合時に活性なチイルラジカルを生成し、(メタ)アクリレートの酸素による重合阻害を低減することができる。本発明で用いるチオールは、特に2級であるため、かかる重合阻害を大きく低減する。これに対し、1級チオールは臭気があり光硬化性組成物の保存安定性を悪化させるため、含有しないことが必要である。また、3級チオールは、立体障害により、連鎖移動効果が低下すると共に、(メタ)アクリレートとの共重合も困難となる傾向があるため、チオールとしては、3級チオールを含有しないことが好ましく、さらに2級チオールのみからなることが好ましい。
更に、3官能または4官能であるため、高度な架橋構造の形成に寄与し、硬化物の耐熱性を向上させる。2官能では、2つのチオール基がそれぞれ(メタ)アクリレート基に付加重合するだけなので実質的に架橋点の形成に寄与できず、硬化物の耐熱性は低下する傾向にある。なお、5官能以上のチオールでは、無駄にチオール基が多くなるだけで、硬化物中に未反応なチオール基が残存し、かえって耐熱性を低下させる傾向がある。
かかる3官能または4官能の2級チオールとしては、例えば、グリセロールトリス(3-メルカプトブチレート)、エチレンオキサイド変性グリセロールトリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトバレレート)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトバレレート)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、エチレンオキサイド変性1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、1,3,5-トリス(2-メルカプトプロポキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)ベンゼン等の3官能2級チオール、ジグリセロールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、エチレンオキサイド変性ジグリセロールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-メルカプトブチレート)、エチレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトバレレート)、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトバレレート)、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、テトラキス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、2,2,5,5-テトラキス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)ヘキサン等の4官能2級チオールなどが挙げられる。これらの中では、硬化物の耐熱性や硬度の点で、4官能2級チオールが好ましく、より好ましくは、硬化物の曲げ弾性率の点で、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)とペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
かかる3官能または4官能の2級チオールは、市販品として入手することもできる。例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製「カレンズMT TPMB」)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工社製「カレンズMT NR1」)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製「カレンズMT PE1」)などが挙げられる。
本発明における成分(B)の配合割合は、光硬化性組成物100重量%中、5~25重量%、好ましくは6~20重量%であり、より好ましくは、7~17重量%、更に好ましくは、8~15重量%である。成分(B)の配合割合が、下限値未満では、嫌気性が増大する傾向にあり、逆に、上限値を超えると、硬化物の耐熱性や硬度が低下する傾向にある。
成分(B)に対する成分(A)の重量比(A/B)は、75/25~95/5であり、本発明の効果を効果的に奏する点から、好ましくは80/20~94/6、より好ましくは83/17~93/7、更に好ましくは85/15~92/8である。
<成分(C)>
本発明において、成分(C)として使用される開裂型光重合開始剤は、成分(A)及び(B)よりなる組成物の速硬化性や嫌気性の低減を有効に引き出すものであり、水素引き抜き型(自己修復型)光重合開始剤とは異なるものである。かかる開裂型光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピレンフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、メチルフェニルグリオキシレート、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。これらの中では、光硬化性組成物の速硬化性の点で、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、2~10重量部である。好ましくは3~9重量部、より好ましくは4~8重量部、特に好ましくは5~7重量部である。かかる含有量が少なすぎると光硬化性組成物の速硬化性が低下する傾向があり、多すぎるとリフロー工程後の硬化物の色相が悪化する傾向がある。
<成分(D)>
本発明において、成分(D)として使用されるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、リフロー工程における硬化物の色相劣化を抑制するのに有効である。かかるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパノイックアシッド 3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9ブランチド アルキルエステル、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、ジエチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスフォネート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール, 2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等のヒンダードフェノール基を1個有する化合物;チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド]、エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2’,3-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジン、6,6’-ジ-t-ブチル-4,4'-ブチリデンジ-m-クレゾール、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド等のヒンダードフェノール基を2個有する化合物;3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4”-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、1,3,5-トリス[(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のヒンダードフェノール基を3個有する化合物;ペンタエリスリトールテトラキス3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール基を4個有する化合物が挙げられる。
これらの中では、リフロー工程におけるブリードアウト回避の点で、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量531)、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(分子量589)、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量643)、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド](分子量637)、エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)(分子量587)、ヘキサメチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量639)、2’,3-ビス[3-[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジン(分子量553)、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(分子量741)、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール(分子量775)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(分子量784)、4,4’,4”-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)(分子量545)、1,3,5-トリス[(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン](分子量700)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(分子量1178)等の分子量500以上のものが好ましく、より好ましくは、硬化物の色相向上の点で、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4”-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、1,3,5-トリス[(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン]、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等のヒンダードフェノール基を3個以上有するものが好ましく、特に好ましくは、蒸気圧が低く、リフロー工程における成形型の汚れを回避する点で、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール(20℃での蒸気圧2.0×10-11Pa)とペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(20℃での蒸気圧1.3×10-11Pa)である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
成分(D)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して0.1~1重量部である。好ましくは0.2~0.8重量部、より好ましくは0.3~0.7重量部、特に好ましくは0.4~0.6重量部である。かかる含有量が少なすぎると、硬化物の色相が悪化する傾向があり、多すぎると成形型の汚れが増大する傾向がある。
本発明においては、更に、フッ素含有(メタ)アクリレート(E)を、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し1~10重量部含有することが好ましい。かかる成分(E)として使用されるフッ素含有(メタ)アクリレートは、光硬化性組成物と成形型との接触角を高め、硬化後の成形型への残渣を低減する効果がある。かかるフッ素含有(メタ)アクリレート(E)としては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H-パーフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート、1H,1H-パーフルオロ-n-デシル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H,6H-パーフルオロ-1.6-ヘキサンジオール=(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中では、硬化物の耐熱性の点で、1H,1H,6H,6H-パーフルオロ-1.6-ヘキサンジオール=ジ(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは、速硬化性の点で、1H,1H,6H,6H-パーフルオロ-1.6-ヘキサンジオール=ジアクリレートである。
本発明において、フッ素含有(メタ)アクリレート(E)の配合量は、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、1~30重量部であることが好ましく、より好ましくは2~20重量部、更に好ましくは3~15重量部、特に好ましくは4~10重量部である。かかる含有量が少なすぎると、硬化後の成形型への残渣が増加する傾向があり、多すぎると硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
本発明においては、更に、紫外線吸収剤(F)を、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、0.01~1重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.05~0.5重量部、更に好ましくは0.1~0.3重量部である。かかる紫外線吸収剤が少なすぎると硬化物の耐光性が低下する傾向があり、多すぎると光硬化性組成物の速硬化性が低下する傾向がある。
かかる紫外線吸収剤は、硬化物の耐光性を高めると同時に、意外にも光硬化性組成物の嫌気性を低減する効果がある。後者に関して、紫外線吸収剤は一般的に光硬化性を抑制するものであるが、本発明の光硬化性組成物においては、適切な量を配合すると、光硬化時に光を吸収して熱に変換することにより硬化を促進し、結果的に嫌気性を低減するものと推測される。すなわち、耐熱性を有する硬化物を形成する光硬化性組成物であるからこその効果と考えられる。
かかる紫外線吸収剤(F)としては、特に制限はなく、公知の化合物を使用することでき、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、トリアゾール系、ヒドロキシベンゾエート系、シアノアクリレート系等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併用して使用することができる。これらの中でも、光硬化性組成物との相溶性の点で、ベンゾフェノン系またはトリアゾール系、具体的には、(2-ヒドロキシ-4-オクチロキシ-フェニル)-フェニル-メタノン、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4-t-オクチル-フェノール、2-[2-ヒドロキシ-4-[3-(2-エチルへキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等の紫外線吸収剤が好ましい。
本発明の光硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、少量の補助成分を配合してもよい。かかる補助成分としては、成分(A)及び成分(B)の少なくとも一方と共重合する共重合成分や、少量の各種添加剤が挙げられる。
上記共重合成分としては、ホモポリマーが低吸水率な点で、脂環骨格を含有する単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の公知の化合物を使用することでき、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環骨格含有単官能(メタ)アクリレート;ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(β-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,3-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)シクロヘキサン、トリス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=トリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=トリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=トリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=トリ(メタ)アクリレート、1,3,5-トリス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)シクロヘキサン等の脂環骨格含有多官能(メタ)アクリレート;脂環骨格含有ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
共重合成分を配合する場合、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、50重量部未満であることが好ましく、より好ましくは30重量部未満、更に好ましくは、20重量部未満である。
上記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、重合禁止剤、フィラー、染料、顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、難燃剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤などが挙げられる。かかる添加剤を配合する場合、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、10重量部未満であることが好ましく、より好ましくは5重量部未満、更に好ましくは、3重量部未満である。
本発明の光硬化性組成物は、25℃における粘度が、100~1000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは200~700mPa・s、更に好ましくは300~500mPa・sである。かかる粘度が低すぎると、速硬化性が低下する傾向にあり、逆に高すぎると、微細形状の転写性が低下する傾向にある。
かくして本発明の光硬化性組成物が得られる。
ここで、該光硬化性組成物の光硬化方法について、光インプリント法を例にとって説明する。
本発明の光硬化は、例えば、ガラス板を基材とし、表面に微細な凹凸形状が形成されたシリコーン製の成形型を用いた場合、下記工程(1)~(4)、そして必要に応じて更に工程(5)を加えた工程によりなされる。
工程(1)光硬化性組成物を、表面に微細な凹凸形状が形成されたシリコーン製の成形型に塗布する工程。
工程(2)上記光硬化性組成物を、ガラス板で覆う工程。
工程(3)光照射により、光硬化性組成物を光硬化してガラス板/硬化物よりなる積層体を得る工程。
工程(4)ガラス板/硬化物よりなる積層体を、成形型から剥離する工程。
工程(5)積層体からガラス板を剥離して、硬化物単体を得る工程。
工程(1)において、塗布法は特に限定されず、ダイコーター、ロールコーター、スクリーン印刷、ディスペンス等公知の手法を用いることができる。塗布後、レベリングや脱泡を行ってもよい。塗布厚は、一般的に、0.01~2mmである。なお、本発明の光硬化性組成物には、本来、溶剤の添加は不要であるが、塗布時に、レベリング性の向上を目的に、少量の溶剤を添加することも可能である。かかる場合、塗布後すみやかに溶剤は乾燥される。
工程(2)において、最終目的物がガラス/硬化物よりなる積層体の場合は、ガラス/硬化物の密着性向上のために、ガラス表面をアクリロイル基含有シランカップリング剤で表面処理することが好ましく、最終目的物が硬化物単体の場合は、ガラス/硬化物の剥離性向上のために、ガラス表面をフッ素化アルキル基含有シランカップリング剤で表面処理することが好ましい。また、気泡の巻き込み回避のために、ガラス側の一部もしくは全面に光硬化性組成物を塗布しておいてもよい。
工程(3)において、光としては、紫外線、可視光線、赤外線などが挙げられる。これらの中では、エネルギー効率の点から紫外線が好ましい。光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、無電極水銀ランプ、LEDランプ等が挙げられる。
光照射は、波長200~400nmの紫外線を用いて、照度10~10000mW/cm2、光量0.5~10J/cm2で行うことが好ましい。照度のより好ましい範囲は20~1000mW/cm2、更に好ましくは30~100mW/cm2である。また、光量のより好ましい範囲は1~8J/cm2、更に好ましくは2~7J/cm2である。照度が低すぎると、厚膜硬化が困難となる傾向にあり、逆に、高すぎると設備負荷が増大する傾向にある。光量が少なすぎると硬化不足になる傾向にあり、逆に、多すぎると生産性が低下する傾向にある。かかる光照射は、複数回に分割して行ってもよい。
なお、光照射は、本来、硬化物内部の重合度の均一化の観点から、光硬化性組成物全体に均一になされることが好ましく、特に、板状の成形体を得るためには、硬化物の反り回避の点で、両面から光照射が行われることが好ましい。しかし、不透明な成形型を用いる場合は、片面からの光照射にならざるをえないため、裏面からの反射光の利用も考慮して光照射を行う。かかる場合においても、硬化物は、リフロー工程において反りなどの変形が生じないような耐熱性が必要である。
なお、工程(1)~(3)において、液状の光硬化性組成物には、可能な限り振動を与えないことが好ましい。振動により液端部/外気の界面が乱れると、成形型に未硬化物が残存しやすい傾向にある。
工程(4)において、成形型からの剥離時に、成形型や積層体を加熱/冷却してもよい。かかる手法により、スムーズな脱型が可能となる。
工程(5)のガラス板の剥離工程は、硬化物単体を製造する場合になされる工程である。
なお、重合の完結、硬化物の応力歪開放、硬化物の色相安定化等を目的として、積層体や硬化物単体を熱処理してもよい。かかる熱処理を行う場合は、通常、50~250℃で1分~1時間行われる。また、熱処理を、赤外線照射により行ってもよい。
かくして本発明の硬化物が得られる。
次に、該光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物について説明する。
本発明の硬化物のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましい。より好ましくは130℃以上、更に好ましくは150℃以上である。かかるガラス転移温度を下限値以上とすることにより、リフロー工程における硬化物の変形を回避することができる。なお、ガラス転移温度の上限値は、通常、300℃である。
なお、リフロー工程は、通常、260℃付近で行われるが、比較的短時間であるため、また、本発明の硬化物は高度に架橋された高分子であるため、必ずしも硬化物のガラス転移温度が260℃以上である必要はない。
本発明の硬化物の吸水率は、1重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.7重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。かかる吸水率を上限値未満とすることにより、高温及び/または高湿環境での硬化物の変形を回避することができる。なお、吸水率の下限値は、通常、0.01重量%である。
本発明の硬化物の曲げ弾性率は、2~4GPaであることが好ましい。より好ましくは、2.5~3.5GPa、更に好ましくは2.7~3.3GPaである。かかる曲げ弾性率を下限値以上とすることにより、応力下でのレンズの変形を回避することが可能であり、逆に、上限値未満とすることにより、リフロー工程における回路基板の変形に追従させることが可能である。
本発明の硬化物の鉛筆硬度(表面硬度)は、H以上であることが好ましい。より好ましくは2H以上、更に好ましくは3H以上である。かかる鉛筆硬度を下限値以上とすることにより、レンズの傷つきを回避することができる。なお、鉛筆硬度の上限値は、通常、9Hである。
本発明の硬化物の屈折率nDは、1.53~1.55であることが好ましい。より好ましくは、1.535~1.545である。かかる屈折率nDを下限値以上とすることにより、レンズの屈折力を向上することができ、逆に、上限値以下とすることにより、レンズの表面反射を低減し、アッベ数を向上することができる。なお、アッベ数は40以上であることが好ましい。
本発明の硬化物は、無色透明であることが好ましい。より好ましくは、1mm厚の平板状硬化物のb*値が1以下、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.5以下である。なお、b*値の下限値は、通常、0.1である。
また、より好ましくは、1mm厚の平板状硬化物の全光線透過率(%)が90%以上、更に好ましくは91%以上である。なお、全光線透過率(%)の上限値は、通常、99%である。
また、より好ましくは、1mm厚の平板状硬化物のヘイズ値が1以下、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.5以下である。なお、ヘイズ値の下限値は、通常、0.1である。
かくして本発明の硬化物が得られる。
次に、本発明のガラス/硬化物よりなるハイブリッドレンズ、及び硬化物単体よりなるレンズに関して説明する。
本発明のレンズにおける硬化物層の厚みは、0.01~1mmが好ましい。より好ましくは0.1~0.7mm、更に好ましくは0.2~0.5mmである。かかる厚みが薄すぎると、剛性が不足する傾向にあり、逆に厚すぎると、軽量薄型化が困難となる傾向にある。なお、ハイブリッドレンズにおけるガラス層の厚みは、通常、0.1~1mmである。
本発明のレンズの表面形状は、特に制限されず、例えば、一定の曲率を有する曲面形状、非球面形状、マイクロレンズ形状、マイクロレンズアレイ形状、フレネルレンズ形状、レンチキュラー形状、回折格子形状、テクスチャー形状、モスアイ形状などが挙げられる。なお、ハイブリッドレンズにおけるガラスの形状は、平板状でも、曲率を有するものでもよい。
本発明のハイブリッドレンズ、及び硬化物単体よりなるレンズは、光線透過率向上のために、片面または両面に、反射防止膜を設けることもできる。
以上、本発明のレンズが得られる。
本発明のレンズは、未硬化物が少ないため生産性に優れ、かつリフロー耐性を有するため、電子部品用の光学素子として好適である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例において調製した光硬化性組成物、作製した硬化物、及び樹脂レンズの各特性については、下記に示す測定条件にしたがって評価した。
(1)粘度(mPa・s)
光硬化性組成物の粘度を、東京計器社製E型粘度計を用いて、25℃、回転数5rpm(EMD3°コーン)で測定した。
(2)臭気
光硬化性組成物の臭気を、10cm離れた位置で嗅いで、相対的に評価した。
○・・・メルカプタン臭無し
△・・・メルカプタン臭が少し感じられる
×・・・メルカプタン臭有り
(3)保存安定性
光硬化性組成物50gを100ccのガラス瓶に入れ、密閉後、50℃の恒温槽内で保存して、ゲル化するまでの日数を測定した。
○・・・30日以上
△・・・7日以上、30日未満
×・・・7日未満
(4)嫌気性(端部未硬化物)
硬化物、ハイブリッドレンズの硬化物部分、及び樹脂レンズに関して、端部(外周部)のべとつき具合を指触により確認した。
○・・・べとつき無し
△・・・少しべとつき有り
×・・・べとつき有り(液がはっきり指に付着する)
(5)嫌気性(型残渣)
硬化物の作製に使用したガラス型(両面)、ハイブリッドレンズの作製に使用したシリコーン製樹脂型、及び樹脂レンズの作製に使用したガラス型(両面)に関して、型表面の残渣を目視と指触により確認した。
○・・・残渣無し
△・・・少し残渣有り
×・・・残渣有り(液がはっきり指に付着する)
(6)全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの硬化物の試験片を3枚用意し、日本電色工業社ヘイズメーター「NDH-2000」で全光線透過率(%)とヘイズ値(%)を測定し、3枚の平均値を算出した。
(7)色相b*
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの硬化物の試験片を3枚用意し、日本電色工業社色差計「Spectrophotometer SE-6000」でb*値を測定し、3枚の平均値を算出した。
(8)ガラス転移温度(℃)
長さ30mm×幅5mm×厚み1mmの硬化物の試験片を用いて、レオロジ社製、動的粘弾性装置「DVE-V4型 FTレオスペクトラー」の引っ張りモードを用いて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分、歪0.025%で測定を行った。得られた複素弾性率実数部(貯蔵弾性率)に対する虚数部(損失弾性率)の比(tanδ)を求め、このtanδの最大ピーク温度をガラス転移温度(℃)とした。
(9)吸水率(%)
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの硬化物の試験片を用意し、23℃の水に1週間浸漬した後の重量増加から吸水率(%)を算出した。
(10)曲げ弾性率(GPa)
長さ26mm×幅5mm×厚み1mmの硬化物の試験片を用いて、島津製作所社製、「オートグラフAG-5kNE」(支点間距離20mm、0.5mm/分)にて25℃で測定した。
(11)鉛筆硬度
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの硬化物の試験片を用いて、JIS K 5600-5-4に準じて測定した。
(12)屈折率nD、及びアッベ数νD
長さ40mm×幅8mm×厚み1mmの硬化物の試験片を用意し、アタゴ社製の「多波長アッベ屈折計DR-M4」を用いて、25℃で、波長589nmのNaD線における屈折率nDを測定し、更に、波長486nmのNaF線における屈折率nFと、波長656nmのNaC線における屈折率nCを測定し、下記式にしたがってアッベ数νDを算出した。
アッベ数νD=(nD-1)/(nF-nC)
(13)耐溶剤性
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの硬化物の試験片を用いて、イソプロピルアルコールに23℃で10分間浸漬した後、表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○・・・変化なし
×・・・白濁や荒れ等の異常が見られる
(14)リフロー耐性
長さ50mm×幅50mm×厚み1mmの硬化物の試験片を、縦置きホルダーにフリー状態となるように挿入し、オーブン中で、室温(23℃)から260℃まで10分間で昇温後、室温まで2分間で降温した。かかる加熱試験後、試験片を25℃50%RHの恒温室に1日静置し、全光線透過率(%)、ヘイズ値(%)、色相b*値を測定した。更に、長さ方向と幅方向の反り量を測定して平均値を変形量(mm)とし、下記の基準で評価した。
○・・・変形量が0.5mm未満
△・・・変形量が0.5mm以上、1mm未満
×・・・変形量が1mm以上
(15)光学歪
ハイブリッドレンズ、及び樹脂レンズを、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟み、透過モードで光学歪を目視観察し、以下の基準で評価した。
○・・・光学歪が見られない
×・・・光学ひずみが見られる
(16)密着性
JIS K 5400(1990年版)に準じて、ハイブリッドレンズにおけるガラス/硬化物の密着性をクロスハッチ法により評価した。
○・・・硬化物の剥がれ無し
△・・・硬化物の剥がれかけ、浮き有り
×・・・硬化物の剥がれ有り
(17)ハイブリッドレンズの信頼性試験(密着性)
ハイブリッドレンズを、85℃85%RHの高温高湿槽内に500時間静置した後、ガラス/硬化物の密着性を目視により評価した。
○・・・硬化物の剥がれ無し
×・・・硬化物の剥がれ有り
(18)樹脂レンズの信頼性試験(外観)
樹脂レンズを、85℃85%RHの高温高湿槽内に500時間静置した後、表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○・・・変化なし
×・・・白濁や荒れ等の異常が見られる
<実施例1>
〔光硬化性組成物[I]の調製〕
成分(A)として、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート(25℃における粘度120mPa・s、屈折率nD1.504、ホモポリマーの吸水率0.3%、ホモポリマーのガラス転移温度200℃以上、ホモポリマーの鉛筆硬度3H)(新中村化学工業社製「A-DCP」)90部、成分(B)として、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工社製「カレンズMT PE1」)10部、成分(C)として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.社製「Omnirad184」)5部、成分(D)として、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量1178、20℃での蒸気圧1.3×10-10Pa)(BASF社製「Irganox1010」)0.5部を、50℃で1時間撹拌混合し、光硬化性組成物[I]を得た。かかる光硬化性組成物[I]の特性は表1に示される通り、低粘度であり、臭気は無く、保存安定性は良好であった。
〔硬化物[I]の作製〕
150mm×150mm×1mmのガラス型を2枚用意し、光硬化性組成物と接する面を、フッ素化アルキル基含有シランカップリング剤(ダイキン社製「オプツールDSX」を3M社製ハイドロフルオロエーテル系溶剤「ノベック7200」で濃度0.02%に希釈した溶液)で処理した。
次いで、上記で得られた光硬化性組成物[I]10gを、厚み1mmのスペーサが周辺部に設置された1枚のガラス型上に塗布し、上部よりもう1枚のガラス型をかぶせて、光硬化性組成物が厚み1mmの円形状になるよう広げた。
最後に、365nmのLEDランプを用いて、上部から照度30mW/cm2、光量3J/cm2の紫外線を照射して光硬化を行い、両面のガラス型を剥離して硬化物[I]を得た。得られた硬化物[I]の端部に未硬化部分は無く、剥離した両面のガラス型にも残渣は残っていなかった。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
得られた硬化物[I]の諸特性は、表2に示す通りであり、光線透過率、ヘイズ、色相、ガラス転移温度、吸水率、曲げ弾性率、鉛筆硬度、屈折率、アッベ数、耐溶剤性などのレンズ用樹脂としての特性に優れ、リフロー耐性にも優れていた。なお、各種評価に用いた試験片は、レーザーカットにより硬化物[I]から切り出したものである。
〔ハイブリッドレンズ[I]の作製〕
150mm×150mm×1mmのガラスと150mm×150mm×1mmのシリコーン製樹脂型を用意し、ガラスの光硬化性組成物と接する面をアクリル基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBM-5103」をイソプロピルアルコールで濃度1%に希釈した溶液)で処理した。なお、シリコーン製樹脂型の中央部30mm×30mmには、高さ50μm、幅50μmの回折格子が100μmピッチで形成されている。
次いで、上記で得られた光硬化性組成物[I]10gを、厚み1mmのスペーサが周辺部に設置されたシリコーン製樹脂型上の中央部に塗布し、上部よりガラスをかぶせて、光硬化性組成物[I]が厚み1mmの円形状になるよう広げた。
最後に、365nmのLEDランプを用いて、上部から照度30mW/cm2、光量3J/cm2の紫外線を照射して光硬化を行い、シリコーン製樹脂型を剥離してガラス/硬化物よりなるハイブリッドレンズ[I]を得た。硬化物の端部に未硬化部分は無く、剥離したシリコーン製樹脂型にも残渣は残っていなかった。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
得られたハイブリッドレンズ[I]の諸特性は、表3に示す通りであり、光学歪、密着性、信頼性に優れていた。
〔樹脂レンズ[I]の作製〕
150mm×150mm×1mmのガラスと150mm×150mm×1mmのシリコーン製樹脂型を用意し、ガラスの光硬化性組成物と接する面をフッ素化アルキル基含有シランカップリング剤(ダイキン社製「オプツールDSX」を3M社製ハイドロフルオロエーテル系溶剤「ノベック7200」で濃度0.02%に希釈した溶液)で処理した。なお、シリコーン製樹脂型の中央部30mm×30mmには、高さ50μm、幅50μmの回折格子が100μmピッチで形成されている。
次いで、上記で得られた光硬化性組成物[I]10gを、厚み1mmのスペーサが周辺部に設置されたシリコーン製樹脂型上の中央部に塗布し、上部よりガラスをかぶせて、光硬化性組成物[I]が厚み1mmの円形状になるよう広げた。
最後に、365nmのLEDランプを用いて、上部から照度30mW/cm2、光量3J/cm2の紫外線を照射して光硬化を行い、シリコーン製樹脂型とガラスを剥離して、硬化物のみからなる樹脂レンズ[I]を得た。得られた樹脂レンズ[I]の端部に未硬化部分は無く、剥離したシリコーン製樹脂型にもガラスにも残渣は残っていなかった。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
得られた樹脂レンズ[I]の諸特性は、表3に示す通りであり、光学歪や信頼性に優れていた。
<実施例2>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート90部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート95部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)5部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[II]、硬化物[II]、ハイブリッドレンズ[II]、樹脂レンズ[II]を得た。得られた光硬化性組成物[II]、硬化物[II]、ハイブリッドレンズ[II]、樹脂レンズ[II]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<実施例3>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート90部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート85部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)15部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[III]、硬化物[III]、ハイブリッドレンズ[III]、樹脂レンズ[III]を得た。得られた光硬化性組成物[III]、硬化物[III]、ハイブリッドレンズ[III]、樹脂レンズ[III]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<実施例4>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート90部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート80部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)20部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[IV]、硬化物[IV]、ハイブリッドレンズ[IV]、樹脂レンズ[IV]を得た。得られた光硬化性組成物[IV]、硬化物[IV]、ハイブリッドレンズ[IV]、樹脂レンズ[IV]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<実施例5>
実施例1において、更に、1H,1H,6H,6H-パーフルオロ-1.6-ヘキサンジオール=ジアクリレート(油脂製品社製「C6DIACRY」)5部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[V]、硬化物[V]、ハイブリッドレンズ[V]、樹脂レンズ[V]を得た。得られた光硬化性組成物[V]、硬化物[V]、ハイブリッドレンズ[V]、樹脂レンズ[V]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<実施例6>
実施例1において、更に、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「Tinuvin405」)0.3部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[VI]、硬化物[VI]、ハイブリッドレンズ[VI]、樹脂レンズ[VI]を得た。得られた光硬化性組成物[VI]、硬化物[VI]、ハイブリッドレンズ[VI]、樹脂レンズ[VI]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<実施例7>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、3官能2級チオールである1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工社製「カレンズMT NR1」)10部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[VII]、硬化物[VII]、ハイブリッドレンズ[VII]、樹脂レンズ[VII]を得た。得られた光硬化性組成物[VII]、硬化物[VII]、ハイブリッドレンズ[VII]、樹脂レンズ[VII]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<比較例1>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を用いない以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[VIII]、硬化物[VIII]、ハイブリッドレンズ[VIII]、樹脂レンズ[VIII]を得た。得られた光硬化性組成物[VIII]、硬化物[VIII]、ハイブリッドレンズ[VIII]、樹脂レンズ[VIII]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<比較例2>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、4官能1級チオールであるペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学社製「PETP」)10部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[IX]、硬化物[IX]、ハイブリッドレンズ[IX]、樹脂レンズ[IX]を得た。得られた光硬化性組成物[IX]、硬化物[IX]、ハイブリッドレンズ[IX]、樹脂レンズ[IX]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行うと、多少嫌気性は改良されるものの、評価結果は同様であった。
<比較例3>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート90部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート70部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)10部に代えて、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)30部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[X]、硬化物[X]、ハイブリッドレンズ[X]、樹脂レンズ[X]を得た。得られた光硬化性組成物[X]、硬化物[X]、ハイブリッドレンズ[X]、樹脂レンズ[X]の諸特性を表1~3に示す。
<比較例4>
実施例1において、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5部に代えて、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[XI]、硬化物[XI]、ハイブリッドレンズ[XI]、樹脂レンズ[XI]を得た。得られた光硬化性組成物[XI]、硬化物[XI]、ハイブリッドレンズ[XI]、樹脂レンズ[XI]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行うと、多少嫌気性は改良されるものの、評価結果は同様であった。
<比較例5>
実施例1において、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5,-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を用いない以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[XII]、硬化物[XII]、ハイブリッドレンズ[XII]、樹脂レンズ[XII]を得た。得られた光硬化性組成物[XII]、硬化物[XII]、ハイブリッドレンズ[XII]、樹脂レンズ[XII]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であった。
<比較例6>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート90部に代えて、EO変性水添ビスフェノールA=ジアクリレート(25℃における粘度550mPa・s、屈折率nD1.489、ホモポリマーの吸水率1.6%、ホモポリマーのガラス転移温度93℃、ホモポリマーの鉛筆硬度HB、ホモポリマーの曲げ弾性率1.1GPa)(第一工業製薬社製「ニューフロンティアHBPE-4」)90部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[XIII]、硬化物[XIII]、ハイブリッドレンズ[XIII]、樹脂レンズ[XIII]を得た。得られた光硬化性組成物[XIII]、硬化物[XIII]、ハイブリッドレンズ[XIII]、樹脂レンズ[XIII]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行っても結果は同様であり、ハイブリッドレンズ[XIII]の作製におけるシリコーン製樹脂型の残渣も同様であった。
なお、本比較例は特許文献16に記載された光硬化性組成物である。
<比較例7>
実施例1において、更に、n-ドデシルメルカプタン(花王社製「チオカルコール20」 )0.5部を加え、かつ1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1部に減量する以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[XIV]、硬化物[XIV]、ハイブリッドレンズ[XIV]、樹脂レンズ[XIV]を得た。得られた光硬化性組成物[XIV]、硬化物[XIV]、ハイブリッドレンズ[XIV]、樹脂レンズ[XIV]の諸特性を表1~3に示す。なお、光照射条件を、照度100mW/cm2、光量6J/cm2で行うと、多少嫌気性は改良されるものの、評価結果は同様であった。
なお、本比較例は、特許文献16の比較例3に記載された組成を追試したものである。
<比較例8>
実施例1において、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート90部に代えて、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート40部、ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製「UA-1100H」)50部を用いる以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物[XV]、硬化物[XV]、ハイブリッドレンズ[XV]、樹脂レンズ[XV]を得た。得られた光硬化性組成物[XV]、硬化物[XV]、ハイブリッドレンズ[XV]、樹脂レンズ[XV]の諸特性を表1~3に示す。
なお、本比較例は、ウレタンアクリレートを比較的多量に用いた特許文献10~14記載の組成を追試したものである。
Figure 2022032186000001
Figure 2022032186000002
Figure 2022032186000003
実施例1~7の光硬化性組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(D)を、適切な量で用いているため、比較例1~8の光硬化性組成物に比べて、原料としての性能、嫌気性の改良、レンズとしての諸特性、リフロー耐性に優れ、得られたレンズも光学歪や信頼性に優れていることがわかる。
例えば、実施例1と比較例1を比較すると、実施例1が、硬化物[I]、ハイブリッドレンズ[I]、樹脂レンズ[I]のいずれの作製においても端部の未硬化部が無く、型残渣もないのに比べて、成分(B)が配合されていない比較例1では、いずれの作製においても端部に未硬化部が有り、型に残渣が残ることがわかる。更に、かかる未硬化部のためにレンズに光学歪が発生し、密着性の低下や信頼性の低下をまねいている。
また、実施例1と比較例2を比較すると、4官能1級チオールを用いた比較例2では、臭気、保存安定性、嫌気性が大きく悪化するばかりか、ガラス転移温度、鉛筆硬度などのレンズに必要な特性が大きく低下し、リフロー耐性などの諸特性が低下している。
また、実施例1と比較例3を比較すると、成分(B)を本発明の範囲を超えて多量に用いた比較例3では、臭気、保存安定性が悪化するばかりか、ガラス転移温度、曲げ弾性率、鉛筆硬度、耐溶剤性などのレンズに必要な特性が大きく低下し、リフロー耐性もないことがわかる。
また、実施例1と比較例4を比較すると、成分(C)を本発明の範囲未満の少量しか用いていない比較例4では、嫌気性が悪化するばかりか、硬化物の屈折率の低下から硬化不足であることが確認され、該硬化不足によりリフロー耐性などの諸特性が低下している。
また、実施例1と比較例5を比較すると、成分(D)を用いない比較例5では、酸化劣化によりリフロー耐性における光学特性が大幅に低下することがわかる。
また、実施例1と比較例6を比較すると、成分(A)の代わりに、ホモポリマーのガラス転移温度が低く、ホモポリマーの吸水率が大きく、ホモポリマーの曲げ弾性率が低いモノマーを用いた比較例6では、ガラス転移温度の低下、吸水率の増大、及び曲げ弾性率の低下に伴って、リフロー耐性が大幅に悪化することがわかる。なお、本比較例は特許文献16に記載された光硬化性組成物である。
また、実施例1と比較例7を比較すると、特許文献16の比較例3に記載された光硬化性組成物を用いた比較例7では、成分(C)を本発明の範囲未満の少量しか用いていないため、嫌気性が悪化するばかりか、硬化物の屈折率の低下から硬化不足であることが確認され、該硬化不足によりリフロー耐性などの諸特性が低下している。また、単官能1級チオールを配合しているため、臭気、保存安定性が悪化していることがわかる。
また、実施例1と比較例8を比較すると、ウレタンアクリレートを比較的多量に配合した比較例8では、嫌気性は改良されるものの保存安定性が大きく悪化し、硬化物の吸水率が増大することによりリフロー耐性における変形量が増大している、また、硬化収縮率の増大に起因すると推測される光学歪が確認される。
なお、本比較例は、ウレタンアクリレートを比較的多量に用いた特許文献10~14記載の組成を追試したものである。
本発明の光硬化性組成物は、速硬化性で嫌気性が無く、低粘度であり、臭気が少なく、かつ保存安定性に優れ、ハイブリッドレンズや樹脂レンズを生産性良く製造できる。更に、該光硬化性組成物を光硬化により得られる硬化物は、無色透明性、耐熱性、低吸水、高鉛筆硬度、耐溶剤性、リフロー耐性などのレンズとしての諸特性に優れる。更に、該硬化物よりなるハイブリッドレンズや樹脂レンズは、低光学歪であり高い信頼性を有する。
本発明の光硬化性組成物は、レンズ形成材料、光インプリント材料、コーティング剤、接着剤、封止剤、粘着剤、塗料、インク、コーティングバインダー等、各種の被膜形成材料として有用である。特に、基材上に、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、ウェハレベルレンズ、マイクロレンズアレイ等の微小レンズを形成するレンズ形成剤としても好適に使用される。また、該光硬化性組成物を用いて製造されるシートや基材/硬化物の積層体は、光学シート/フィルム、ディスプレイ用、イメージングセンサー用、光通信用、太陽電池用、照明用、メモリー用等の光学部品として有用である。

Claims (13)

  1. トリシクロデカン骨格ジ(メタ)アクリレート(A)、3官能または4官能の2級チオール(B)、開裂型光重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含有する光硬化性組成物であって、上記光硬化性組成物が1級チオールを含有せず、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の含有量比(重量比)が、下記範囲であることを特徴とする光硬化性組成物。
    成分(A)/成分(B)=75/25~95/5
    成分(C):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し2~10重量部
    成分(D):成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し0.1~1重量部
  2. 3官能または4官能の2級チオール(B)が、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の光硬化性組成物。
  3. 更に、フッ素含有(メタ)アクリレート(E)を、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し1~10重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
  4. 更に、紫外線吸収剤(F)を、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し0.01~1重量部含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  5. 25℃における粘度が、100~1000mPa・sであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  6. 上記光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物のガラス転移温度が、100℃以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  7. 上記光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物の吸水率が、1重量%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  8. 上記光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物の曲げ弾性率が、2~4GPaであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  9. 上記光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物の鉛筆硬度が、H以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  10. 上記光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物の屈折率nDが、1.53~1.55であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を光硬化してなることを特徴とする硬化物。
  12. 請求項11記載の硬化物からなる厚み0.1~1mmであることを特徴とするレンズ。
  13. リフロー耐性を有することを特徴とする請求項12記載のレンズ。
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