JPWO2019216008A1 - 光学樹脂組成物及び光学レンズ - Google Patents

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Abstract

(A)下記式(a1)で表される少なくとも1種の化合物等からなる第1のラジカル重合性成分と、(B)前記第1のラジカル重合性成分とは異なる化合物からなる第2のラジカル重合性成分とを含有する光学樹脂組成物が開示される。第1及び第2のラジカル重合性成分がラジカル重合したときに、これらの重合体を含む樹脂材料が形成され、樹脂材料のアッベ数νd及び部分分散比θg,Fが、式:18≦νd≦25;及びθg,F≧0.700を満たす。【化1】[式(a1)中、X1、X4又はX5のうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基を有する基である。]

Description

本発明は、光学樹脂組成物及び該組成物から得られる光学レンズに関する。
カメラ等の撮像光学系を構成する光学材料が数多く知られている。なかでもプラスチックレンズをはじめとする有機系の光学材料は、無機材料に比べて軽量で割れにくく、様々な形状に加工できることに加え、所望の特性を有する材料設計に関する選択の自由度が高いことから、近年様々な用途において急速に普及しつつある。
一般にカメラ等の撮像光学系は、光学物性の異なる複数種の光学レンズを組み合わせて構成される。特に屈折率の波長分散特性が異なる光学レンズを組み合わせることで光学系の色収差を補正する手法が採用されている。従来、波長分散特性を示す指標として主にアッベ数νdが用いられ、高いアッベ数を示す材料と低いアッベ数を示す材料を組み合わせて色収差を補正することが試みられてきた。
更に、有機系の光学材料に関してより高い水準で色収差を補正する方法として、低いアッベ数を示すとともに、特定の部分分散比θg,Fを示す光学材料を用いることが提案されている(特許文献1)。
一方、特許文献2は、特定のベンゾトリアゾール骨格を有する熱可塑性樹脂に無機微粒子を分散させた有機無機複合材料が、高い屈折率かつ低いアッベ数を有することを記載している。また、特許文献3は、塗料等に用いられる材料に関して、ベンゾトリアゾール骨格を紫外線吸収基として有する高屈折率ポリマーが、耐光性に優れるとともにブリードアウトを発生させないことを記載している。
特開2010−097195号公報 特開2010−189562号公報 特開2014−201735号公報
一般に、アッベ数が低いと部分分散比が比較的高くなる傾向はあるものの、アッベ数の低い材料が、十分に高い部分分散比を示すとは限らない。更に、従来、低いアッベ数及び高い部分分散比を示す材料は、光透過率、耐熱性及び耐光性等の、光学レンズに求められる特性が不足することが多かった。例えば、特許文献1に開示されているジフェニルスルフィド骨格を有する化合物を含む光学材料は、耐光性及び耐熱性が低く、長期信頼性の面で改善の余地があった。
本発明の目的は、低いアッベ数及び高い部分分散比を示し、しかも優れた耐光性、高い光透過率及び高い耐熱性を有する光学部材用の樹脂材料を形成することのできる、光学樹脂組成物を提供することにある。
本発明の一側面は、(A)下記式(a1)、(a2)又は(a3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性化合物からなる第1のラジカル重合性成分と、(B)前記第1のラジカル重合性成分とは異なるラジカル重合性化合物からなる第2のラジカル重合性成分とを含有する光学樹脂組成物に関する。前記第1のラジカル重合性成分及び前記第2のラジカル重合性成分がラジカル重合したときに、これらの重合体を含む樹脂材料が形成される。前記樹脂材料のアッベ数νd及び部分分散比θg,Fが、以下の式:
18≦νd≦25;及び
θg,F≧0.700
を満たす。
Figure 2019216008
式(a1)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシカルボニルアルキル基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
、X又はXのうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基を有する基である。
Figure 2019216008
式(a2)中、
及びYは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
及びYは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
、Y、Y又はYのうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基を有する基である。
Figure 2019216008
式(a3)中、
は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシカルボニルアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシアルキル基を示し、
、Z、Z、Z、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基を示し、
は水素原子、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
は水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
又はZのうち少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する基である。
上記のように第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分を含有する光学樹脂組成物は、低いアッベ数及び高い部分分散比を示し、しかも優れた耐光性、高い光透過率及び高い耐熱性を有する光学部材用の樹脂材料を形成することができる。
本発明の別の一側面は、上記光学樹脂組成物中の第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分のラジカル重合により形成された重合体を含む樹脂材料からなる光学レンズに関する。この光学レンズは、低いアッベ数及び高い部分分散比を示し、しかも優れた耐光性、高い光透過率及び高い耐熱性を有することができる。
本発明に係る光学樹脂組成物は、低いアッベ数及び高い部分分散比を示し、しかも優れた耐光性、高い光透過率及び高い耐熱性を有する光学部材用の樹脂材料を形成することができる。この樹脂材料の成形体を光学レンズとして用いることにより、光学系の色収差を効率的に取り除くことができる。
光学レンズの一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリ」は、「アクリ」及び「メタアクリ」を意味する。
一実施形態に係る光学樹脂組成物は、式(a1)、(a2)又は(a3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性化合物からなる第1のラジカル重合性成分と、(B)第1のラジカル重合性成分とは異なるラジカル重合性化合物からなる第2のラジカル重合性成分とを含有する。第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分がラジカル重合したときに、これらラジカル重合性成分の重合体を含む固形の樹脂材料が形成される。例えば、第1のラジカル重合性成分、又は第2のラジカル重合性成分のうち少なくとも一方が、2以上のラジカル重合性基を有する多官能のラジカル重合性化合物を含んでいる場合、架橋重合体を含む樹脂材料(硬化物)が形成される。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成される樹脂材料のアッベ数νd及び部分分散比θg,Fは、以下の式を満たす。これら式が満たされることは、樹脂材料が、比較的低いアッベ数を示しながら、顕著に高い部分分散比を示すことを意味する。
18≦νd≦25
θg,F≧0.700
(A)第1のラジカル重合性成分は、式(a1)で表されるラジカル重合性化合物、式(a2)で表されるラジカル重合性化合物、式(a3)で表されるラジカル重合性化合物、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせからなる。第1のラジカル重合性成分を構成する式(a1)、(a2)又は(a3)で表されるラジカル重合性化合物は、それぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。式(a1)、(a2)又は(a3)で表されるラジカル重合性化合物は、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能のラジカル重合性化合物であってもよい。
式(a1)で表されるラジカル重合性化合物は、ベンゾトリアゾール骨格を有し、X、X又はXのうち少なくとも1つにおいて(メタ)アクリロイル基を有する。
式(a1)中のXで示されるハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。Xが塩素原子であってもよい。
式(a1)が置換基を有する炭素数1〜18の炭化水素基であるとき、置換基は、例えばハロゲノ基、アルコキシ基又はヒドロキシ基であってもよい。以下、説明されるその他の化合物における置換基の具体例も同様である。式(a1)中のXで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、2−メトキシエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、3−クロロ−n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、6−フェニル−n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、及び1−メチル−1−フェネチル基等が挙げられる。Xは炭素数1〜8の炭化水素基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、又はn−オクチル基であってもよい。
式(a1)中のXで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシカルボニルアルキル基の例としては、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、n−オクトキシカルボニルエチル基、イソオクチルオキシカルボニルエチル基、n−ドデシルオキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基、エトキシカルボニルプロピル基、n−オクトキシカルボニルプロピル基、イソオクチルオキシカルボニルプロピル基、及びn−ドデシルオキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。Xがメトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、n−オクトキシカルボニルエチル基、又はイソオクチルオキシカルボニルエチル基であってもよい。アルコキシカルボニルアルキル基の炭素数は、アルコキシカルボニルアルキル基に含まれるアルコキシ部分、カルボニル部分、及びアルキル部分に含まれる炭素原子の総数を意味する。
式(a1)中のXで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシエチル基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシエチル基等が挙げられる。Xがアクリロイルオキシエチル基、又はメタクリロイルオキシエチル基であってもよい。
式(a1)中のX又はXで示される、ハロゲン原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基は、Xで示される、ハロゲン原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基と同義である。
式(a1)中のXで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基は、Xで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基と同義である。
式(a1)中のXで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基、メタクリロイル基、及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基等が挙げられる。
式(a1)中のXで示される、ハロゲン原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基は、Xで示される、ハロゲン原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基と同義である。
式(a1)中のXで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシエトキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシエチル基、及びメタクリロイルオキシエトキシ基等が挙げられる。Xがアクリロイルオキシエトキシ基、又はメタクリロイルオキシエトキシ基であってもよい。
式(a1)で表されるラジカル重合性化合物の具体例としては、2−[2−ヒドロキシ−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(例えば、商品名「RUVA−93」(大塚化学(株)製)、又は東京化成(株)製)、2−[2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ)−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−[2−メタクリロイルオキシ−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
式(a2)で表されるラジカル重合性化合物は、ベンゾフェノン骨格を有し、Y、Y、Y又はYのうち少なくとも1つにおいて(メタ)アクリロイル基を有する。
式(a2)中のY又はYで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、4−ヒドロキシ−n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、及び1,1,3,3−テトラメチルブトキシ基等が挙げられる。Y及びYは、それぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、又はn−オクチルオキシ基であってもよい。
式(a2)中のY又はYで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシエトキシ基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシエトキシ基、及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。Y及びYが、それぞれ独立して、アクリロイルオキシ基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基であってもよい。
式(a2)中のY又はYで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、2−メトキシエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、3−クロロ−n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、6−フェニル−n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、及び1−メチル−1−フェネチル基等が挙げられる。Y及びYは、それぞれ独立して炭素数1〜8の炭化水素基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、又はn−オクチル基であってもよい。
式(a2)中のY又はYで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基、メタクリロイル基、及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基等が挙げられる。
式(a2)で表されるラジカル重合性化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン(例えば、FINIPHARMA LIMITED社製)、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン(例えば、Alfa Aesar社製)、2,2’,4,4’−テトラメタクリイルオキシベンゾフェノン、及び2,2’,4,4’−テトラ[2−(メタクリイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]ベンゾフェノン等が挙げられる。
式(a3)で表されるラジカル重合性化合物は、トリアジン骨格を有し、Z又はZのうち少なくとも1つにおいて(メタ)アクリロイル基を有する。
式(a3)中のZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、2−メトキシエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、3−クロロ−n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、6−フェニル−n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、及び1−メチル−1−フェネチル基等が挙げられる。Zは、炭素数1〜8の炭化水素基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、又はフェニル基であってもよい。
式(a3)中のZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシアルキル基の例としては、メチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、及び(2−エチルヘキシル)カルボニルオキシエチル基等が挙げられる。Zが(2−エチルヘキシル)カルボニルオキシエチル基であってもよい。アルキルカルボニルオキシアルキル基の炭素数は、アルキルカルボニルオキシアルキル基に含まれる2つのアルキル部分、及びカルボニル部分に含まれる炭素原子の総数を意味する。
式(a3)中のZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシカルボニルアルキル基の例としては、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、n−オクトキシカルボニルエチル基、イソオクチルオキシカルボニルエチル基、n−ドデシルオキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基、エトキシカルボニルプロピル基、n−オクトキシカルボニルプロピル基、イソオクチルオキシカルボニルプロピル基、及びn−ドデシルオキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。Zが、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、n−オクトキシカルボニルエチル基、又はイソオクチルオキシカルボニルエチル基であってもよい。アルコキシカルボニルアルキル基の炭素数は、アルコキシカルボニルアルキル基に含まれるアルコキシ部分、カルボニル部分及びアルキル部分に含まれる炭素原子の総数を意味する。
式(a3)中のZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、3−エトキシプロピル基、3−(n−ヘキシルオキシ)プロピル基、(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル基、及び(ドデシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。Zが(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル基であってもよい。アルコキシアルキル基の炭素数は、アルコキシアルキル基に含まれるアルコキシ部分及びアルキル部分に含まれる炭素原子の総数を意味する。
式(a3)中のZ、Z、Z、Z、Z又はZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基は、Zで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基と同義である。
式(a3)中のZ、Z、Z、Z、Z又はZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、4−ヒドロキシ−n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、及び1,1,3,3−テトラメチルブトキシ基等が挙げられる。Z、Z、Z、Z、Z及びZが、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、又はn−オクチルオキシ基であってもよい。
式(a3)中のZで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基、メタクリロイル基、及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基等が挙げられる。
式(a3)中のZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基は、Zで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基と同義である。式(a3)中のZで示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基は、Z等で示される、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基と同義である。
式(a3)中のZで示される、(メタ)アクリロイル基を有する基の例としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシエトキシ基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシエトキシ基、及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。Zがアクリロイルオキシ基、2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ基であってもよい。
式(a3)で表されるラジカル重合性化合物の具体例としては、式(a3)においてZがイソオクチルオキシカルボニルエチル基で、Z、Z、Z、Z及びZが水素原子で、Zが2−(アクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基で、Z及びZがフェニル基である化合物、式(a3)においてZがn−オクチル基で、Z、Z及びZが水素原子で、Z、Z、Z及びZがメチル基で、Zが2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイル基である化合物、及び、式(a3)においてZがn−ブチル基で、Z、Z及びZが水素原子で、Z、Z及びZがn−ブトキシ基で、Zがメタクリロイル基で、Zがメタクリロイルオキシ基である化合物等が挙げられる。
式(a1)、(a2)又は(a3)で表されるラジカル重合性化合物は、例えば、市販のベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物(以下「原料化合物」という。)に(メタ)アクリロイル基を導入することにより、合成することができる。原料化合物に(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、特に限定されず、通常の方法を採用できる。例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素基を有する原料化合物に、塩基存在下で(メタ)アクリロイルクロリドを反応させる方法、前記原料化合物に塩基存在下でメタクリル酸2−ブロモエチルを反応させる方法(特開2012−072333)、前記原料化合物にスズ系触媒及び/又はアミン系触媒存在下で(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を反応させる方法(Voprosy Khimii i Khimicheskoi Tekhnologii,1983,70,16−22)により、式(a1)、(a2)又は(a3)で表されるラジカル重合性化合物を合成することができる。なお、式(a1)、(a2)又は(a3)で表されるラジカル重合性化合物は市販されている化合物を用いることもできる。
本実施形態に係る光学樹脂組成物は、(B)第2のラジカル重合性成分を更に含有する。第2のラジカル重合性成分は、式(a1)、(a2)、又は(a2)で表されるラジカル重合性化合物以外の化合物から選択される1種又は2種以上のラジカル重合性化合物(以下「第2のラジカル重合性化合物」ということがある。)からなる。
第2のラジカル重合性化合物は、1個以上のラジカル重合性基を有する。第2のラジカル重合性成分は、多官能ラジカル重合性化合物を1種以上含んでいてもよい。第2のラジカル重合性成分が多官能ラジカル重合性化合物を含むことで架橋重合体が形成され、より高い耐熱性を有する樹脂材料が形成される。架橋重合体を含む樹脂材料は、光学樹脂組成物の硬化物ということもできる。ここで、「多官能ラジカル重合性化合物」は、分子内に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物を意味する。「単官能ラジカル重合性化合物」は、分子内に1個のラジカル重合性基を有する化合物を意味する。
第2のラジカル重合性化合物のラジカル重合性基は、(メタ)アクリル基、ビニル基((メタ)アクリル基に含まれるビニル基は除く。)、又はこれらの組み合わせであることができる。第2のラジカル重合性化合物の例としては、ラジカル重合性基及びジフェニルスルフィド骨格を有するスルフィド化合物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びその他のビニル系化合物等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、2−エトキシブチルアクリレート、3−エトキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシO−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリル酸エステル;並びに、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
前記ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、4−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン、及びシクロヘキセン等の単官能ビニル系化合物、並びに、ジビニルベンゼン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、ジフェン酸ジアリル、及びトリアリルトリアジン等の多官能ビニル化合物等が挙げられる。
前記ラジカル重合性基及びジフェニルスルフィド骨格を有するスルフィド化合物としては、下記式(b1)又は(b2)で表される少なくとも1種のスルフィド化合物が挙げられる。これらスルフィド化合物を含む光学樹脂組成物から形成された樹脂材料は、低いアッベ数、且つより一層高い部分分散比を示すことができる。また、樹脂材料の屈折率が高くなる傾向もある。
Figure 2019216008
式(b1)及び(b2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。式(b2)中の2つのRは、同一であっても異なっていてもよく、同一であってよい。式(b1)中のnが0であってもよい。
式(b1)又は(b2)中のR、R、R又はRで示されるハロゲン原子は、例えば、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってもよい。式(b1)又は(b2)中のR、R、R又はRで示される、炭素数1〜6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基等が挙げられる。式(b1)又は(b2)中のR、R、R及びRが、いずれも水素原子であってもよい。
式(b1)で表されるスルフィド化合物の例としては、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(2,3,5,6−テトラメチル−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3−ヘキシル−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジヘキシル−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3−クロロ−4−ビニルチオフェニル)スルフィドビス(3,5−ジクロロ−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(2,3,5,6−テトラクロロ−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3−ブロモ−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジブロモ−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、及びビス(2,3,5,6−テトラブロモ−4−ビニルチオフェニル)スルフィド等が挙げられる。式(b1)で表されるスルフィド化合物が、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ビニルチオフェニル)スルフィド、又はビス(3,5−ジメチル−4−ビニルチオフェニル)スルフィドであってもよく、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィドであってもよい。
式(b2)で表されるスルフィド化合物の例としては、S,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(2−クロロベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3−クロロベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(2,6−ジクロロベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3,5−ジクロロベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(2−ブロモベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3−ブロモベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(2,6−ジブロモベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3,5−ジブロモベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(2−メチルベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3−メチルベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(2,6−ジメチルベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3,5−ジメチルベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)、及びS,S’−[4,4’−チオビス(2−tert−ブチルベンゼン)]ビス(チオ(メタ)アクリレート)等が挙げられる。式(b2)で表されるスルフィド化合物が、S,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオメタクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3,5−ジブロモベンゼン)]ビス(チオメタクリレート)、S,S’−[4,4’−チオビス(3,5−ジメチルベンゼン)]ビス(チオメタクリレート)、又はS,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオアクリレート)であってもよく、S,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオメタクリレート)であってもよい。
式(b1)で表されるスルフィド化合物は、例えば、式(b1)においてR〜Rがすべて水素原子で、nが0であるビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィドの場合、4,4’−チオジベンゼンチオールにジハロエタンを反応させた後、生成物をジメチルスルホキシド等の極性溶媒中で脱ハロゲン化水素させる方法(ЖypнaлOpгaничecкoй Xимии,т.28,вып.9 1905,1992)により得ることができる。この方法において、ジハロエタンの使用量及び仕込方法等の反応条件を変えることにより、式(b1)におけるnの数値が異なったビニルスルフィド化合物を得ることができる。あるいは、メルカプタン化合物とハロゲン化ビニルとを塩基の存在下で反応させる方法(特開平3−287572号公報)、特開2004−51488号公報に開示されているようにメルカプタン化合物と2−ハロゲノエタノールとを、アルカリ金属化合物の存在下で反応させた後、生成物をハロゲン化剤と反応させてジハロゲン化物を生成させることと、得られたジハロゲン化物を、特開2003−183246号公報に開示されているように、脂肪族炭化水素溶媒中において相間移動触媒の存在下でアルカリ金属化合物水溶液と不均一系で反応させることとを含む方法によって、式(b1)で表されるスルフィド化合物を得ることもできる。
式(b2)で表されるスルフィド化合物は、例えば、式(b2)において、R〜Rがすべて水素原子で、Rがメチル基であるS,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオメタクリレート)の場合、4,4’−チオジベンゼンチオールとアルカリ金属化合物とを反応させて得られる4,4’−チオジベンゼンチオールのアルカリ金属塩とメタクリロイルクロリドとを、非極性有機溶媒中で反応させる方法により、得ることができる。
第2のラジカル重合性成分は、式(b1)又は(b2)で表されるスルフィド化合物と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びその他のビニル系化合物から選ばれるその他のラジカル重合性化合物とを含んでいてもよい。第2のラジカル重合性成分として式(b1)又は(b2)で表されるスルフィド化合物と併用される(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びその他のビニル系化合物の例は、上述のものと同様である。
光学樹脂組成物中の各ラジカル重合性化合物の含有量は、それらの重合体を含む樹脂材料のアッベ数νd及び部分分散比θg,Fが上述の式を満たすように調整される。例えば、第1のラジカル重合性成分の比率が大きいと、アッベ数νdが低下し、部分分散比θg,Fが上昇する傾向がある。また、第2のラジカル重合性成分の比率が大きいと、部分分散比θg,Fが低下する傾向がある。より具体的には、例えば以下に例示する数値範囲を参照して各ラジカル重合性化合物の含有量を調整することにより、上述の式を満たすアッベ数νd及び部分分散比θg,Fを示す樹脂材料を与える光学樹脂組成物の配合比率を見出すことができる。
(A)第1のラジカル重合性成分の合計の含有量は、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、3〜80質量部、5〜70質量部、又は5〜60質量部であってもよい。
式(a1)で表されるラジカル重合性化合物の含有量は、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、光透過率を高く維持する観点から、60質量部以下、50質量部以下又は30質量部以下であってもよく、部分分散比θg,Fを高める観点から3質量部以上、又は5質量部以上であってもよい。式(a2)で表されるラジカル重合性化合物の含有量は、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、光透過率を高く維持する観点から、80質量部以下であってもよく、部分分散比θg,Fを高める観点から30質量部以上であってもよい。式(a3)で表されるラジカル重合性化合物の含有量は、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、光透過率を高く維持する観点から、70質量部以下であってもよく、部分分散比θg,Fを高める観点から20質量部以上であってもよい。
(B)第2のラジカル重合性成分の合計の含有量は、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、部分分散比θg,Fを高める観点から、97質量部以下、95質量部以下又は90質量部以下であってもよく、光透過率を高く維持する観点から、5質量部以上、10質量部以上、又は20質量部以上であってもよい。
式(b1)又は(b2)で表されるスルフィド化合物の合計の含有量は、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、樹脂材料の耐光性向上の観点から、95質量部以下、又は90質量部以下であってもよく、高い屈折率(例えば1.630以上、又は1.650以上)を有する樹脂材料を得る上では、5質量部以上、又は15質量部以上であってもよい。また、(B)第2のラジカル重合性化合物における式(b1)又は(b2)で表されるスルフィド化合物の比率は、(B)第2のラジカル重合性成分の合計の質量を基準として、15〜100質量%、20〜100質量%、又は25〜100質量%であってもよい。式(b1)又は(b2)で表されるスルフィド化合物の比率がこれら範囲内にあると、低いアッベ数νd及び高い光透過率とともに、高い屈折率を有する樹脂材料が得られ易い。
本実施形態に係る光学樹脂組成物は、第1及び第2のラジカル重合性成分のラジカル重合を進行させるためのラジカル重合開始剤を更に含有してもよい。ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤又はこれらの組み合わせであることができる。
光ラジカル重合開始剤の例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルベンゾフェノン、及び4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は1種類のみで使用することもできるし、2種類以上を併用することもできる。
光ラジカル重合開始剤の含有量は、光照射量、及び付加的な加熱温度等に応じて、適宜選択することができる。形成される重合体の目標とする平均分子量に応じて、光ラジカル重合開始剤の含有量を調整することもできる。光ラジカル重合開始剤の含有量は、光学樹脂組成物中の第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、0.2〜8質量部、又は0.3〜7質量部であってもよい。光ラジカル重合開始剤の含有量が0.1質量部よりも少ないと、重合反応が十分に進行しにくい可能性がある。光ラジカル重合開始剤の含有量が10質量部を超えると、形成される樹脂材料が着色し、光透過率が低下する可能性がある。
熱ラジカル重合開始剤の例としては、アゾビソイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、及び1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。熱ラジカル重合開始剤は1種類のみで使用することもできるし、2種類以上を併用することもできる。
熱ラジカル重合開始剤の含有量は、加熱温度、ラジカル重合の間の酸素存在量等に応じて、適宜選択することができる。形成される重合体の目標とする重合度に応じて、熱ラジカル重合開始剤の含有量を調整することもできる。熱ラジカル重合開始剤の含有量は、光学樹脂組成物中の第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、0.05〜10質量部、0.1〜8質量部、又は0.2〜6質量部であってもよい。熱ラジカル重合開始剤の含有量が0.05質量部よりも少ないと、重合反応が十分に進行しにくい可能性がある。熱ラジカル重合開始剤の含有量が10質量部を超えると、形成される樹脂材料が着色し、光透過率が低下する可能性がある。
ラジカル重合開始剤以外の重合開始剤として、例えば光カチオン重合開始剤、又は熱カチオン重合開始剤を利用することもできる。
本実施形態に係る光学樹脂組成物は、必要とされる光学特性が維持される範囲で、第1及び第2のラジカル重合性成分を含む均一相中に分散する無機微粒子等の微粒子を含有してもよい。ただし、樹脂材料の高い光透過率の維持等の観点から、微粒子の含有量は、0〜15質量%、0〜10質量%、0〜5質量%、又は0〜2質量%であってもよい。
本実施形態に係る光学樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を更に含有してもよい。その例としては、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、増感剤、金属不活性剤、連鎖移動剤、アンチブロッキング剤及び離型剤等の添加剤が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、光学樹脂組成物中の第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分の合計量100質量部に対して、0〜50質量部、0〜30質量部、又は0〜20質量部であってもよい。
本実施形態における光学樹脂組成物から形成される樹脂材料のアッベ数νdは、18≦νd≦25であり、18≦νd≦24、又は18≦νd≦23であってもよい。前記樹脂材料の部分分散比θg,Fは、0.700以上であり、0.710以上、又は0.720以上であってもよい。アッベ数νd及び部分分散比θg,Fがこれら範囲にあることで、より容易に、十分な色収差補正能を樹脂材料に付与することができる。部分分散比θg,Fの上限は、特に限定されないが、通常、0.900程度である。
本明細書において、アッベ数νd及び部分分散比θg,Fは、以下の式で算出される値を意味する。
アッベ数νd=(nd−1)/(nF−nC)
部分分散比θg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
式中、ngはg線である波長435.8nmにおける屈折率、nFはF線である波長486.1nmにおける屈折率、ndはd線である波長587.6nmにおける屈折率、nCはC線である波長656.3nmにおける屈折率を示す。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成される樹脂材料が耐光性試験に供されたときに、樹脂材料の波長400nmにおける光透過率の耐光性試験前後での変化の差ΔTが、5%以下であってもよい。ΔTが5%を上回ると、該樹脂材料を用いて構成される光学系の信頼性低下を招く可能性がある。ΔTの下限は、特に限定されないが、理想的には0%である。
ここでの耐光性試験は、キセノンウェザーメーター(例えば、スガ試験機株式会社製、型番:X25)を用いて、波長300〜400nmの範囲の積算照度が60W/m、ブラックパネル温度が63℃の条件で100時間光照射する試験である。該耐光性試験に供する樹脂材料のシート状の試験片(成形体)の厚みは190〜210μmである。耐光性試験後の試験片の波長400nmにおける光透過率がT2で、耐光性試験前の試験片の波長400nmにおける光透過率がT1であるとき、T1とT2の差がΔTである。T1及びT2として、200μm厚に換算した値が用いられる。
例えば、上述の式(b1)又は(b2)で表されるスルフィド化合物を用いて、その含有量を上述の範囲内とすることが、ΔTを5%以下とすることに寄与し得る。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成される樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上、又は110℃以上であってもよい。Tgは耐熱性を示す指標の1つである。Tgが100℃を下回ると、特に高温域において樹脂材料の成形体が変形し易く、該樹脂材料を用いて構成される光学系の高熱環境下における信頼性低下を招く可能性がある。Tgの上限は、特に限定されないが、通常、300℃程度である。ただし、樹脂材料がガラス転移温度を示さないこともある。
本明細書において、Tgは、樹脂材料の動的粘弾性を、動的粘弾性測定装置(例えばティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、型番:RSA−G2)を用いて、引張モードで昇温速度10℃/分、周波数1Hzの条件で測定したときに、tanδのピークトップの温度を意味する。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成される樹脂材料を煮沸試験に供したときに、d線(波長587.6nm)における屈折率ndの煮沸試験前後での差Δndが、0.0007以下、又は0.0005以下であってもよい。Δndが0.0007を上回ると、該樹脂材料を用いて構成される光学系の高温高湿環境下における信頼性、すなわち耐湿熱性の低下を招く可能性がある。Δndの下限は、特に限定されないが、理想的には0である。
ここでの煮沸試験は、樹脂材料の厚み1.9〜2.0mmのシート状の試験片(成形体)を、100℃に保持した湯浴中に24時間浸漬する試験である。煮沸試験前後におけるそれぞれの試験片の屈折率ndを測定し、それらの差をΔndとする。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成される樹脂材料の屈折率ndは、1.550以上、1.600以上、1.630以上、又は1.650以上であってもよい。このように樹脂材料が高い屈折率を有すると、レンズ等の光学系材料に適用する際の光学設計上の自由度が向上する。屈折率ndの上限は、特に限定されないが、通常、1.800程度である。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成される樹脂材料の内部透過率Tは、50%以上、60%以上、又は75%以上であってもよい。Tが50%を下回ると、樹脂材料をレンズ等の撮像光学系に適用した場合の色再現性が損なわれ、光学設計上の自由度が低下する可能性がある。内部透過率Tの上限は特に制限されず、理想的には100%である。
ここでの内部透過率Tiは、波長400nmにおける内部透過率の厚み200μmに換算された値である。厚み90〜110μmの試験片(成形体)、及び厚み190〜200のμmの試験片の波長400nmにおける外部透過率を測定し、下記式から内部透過率Tiが算出される。
log(T/100)=−[{log(T)−log(T)}/(d−d)]×200
ここで、dは厚み90〜110μmの試験片の実測厚み、dは厚み190〜210μmの試験片の実測厚み、Tは厚み90〜110μmの試験片の波長400nmにおける外部透過率、Tは厚み190〜210μmの試験片の波長400nmにおける外部透過率である。外部透過率は表面反射損失を含む光透過率である。
本実施形態に係るにおける光学樹脂組成物は、例えば、第1及び第2の重合性成分、及び必要に応じてその他の成分(重合開始剤、添加剤等)を混合し、混合物を攪拌する方法により得ることができる。各成分は、同時に混合してもよく、逐次混合してもよい。攪拌の間の温度は、特に限定されないが、通常0〜120℃であり、10〜100℃であってもよい。攪拌時間は、0.1〜24時間、又は0.1〜6時間であってもよい。重合開始剤の種類によって、攪拌の間の温度および攪拌時間は適宜調整される。
本実施形態に係る光学樹脂組成物を用いて、任意の形状を有する樹脂材料の成形体を製造することができる。樹脂材料の成形体は、例えば、型内に充填された光学樹脂組成物中で第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分をラジカル重合させて、これらの重合体を含む樹脂材料を形成することと、形成された樹脂材料の成形体を型から取り出すこととを含む方法により、製造することができる。
光学樹脂組成物を型内に充填する前に、操作性向上等の目的で光学樹脂組成物の粘度を向上させたい場合、所望の粘度になるまで、予備重合として、第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分のラジカル重合をある程度進行させてもよい。
型内に充填される前の光学樹脂組成物を、脱気及び脱泡してもよい。これにより、光学樹脂組成物が空気(酸素)に触れない状態を維持したまま、ラジカル重合を効率的に進行させることができる。光学樹脂組成物を脱気、脱泡する方法は、特に限定されず、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガスによるバブリング、真空減圧脱気、超音波脱気、中空糸膜脱気、又はこれらの組み合わせを採用することができる。
第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分のラジカル重合は、熱重合、光重合、又はこれらの組み合わせによって、進行させることができる。
熱重合のための重合温度及び重合時間は、ラジカル重合性成分の種類及び配合比率、熱ラジカル重合開始剤の種類及び使用量等により異なる。通常、重合温度は、0〜180℃、又は20〜150℃であってもよく、重合時間は、0.1〜30時間、又は0.1〜12時間であってもよい。
光重合の場合、型内に充填された光学樹脂組成物に紫外線等の光が照射される。光重合に用いる光源の例としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、重水素ランプ、アルゴンランプ、キセノンランプ、LED、ハロゲンランプ、エキシマレーザー、及びヘリウム−カドミウムレーザー等が挙げられる。照射する光の積算光量は、ラジカル重合性成分の種類及び比率、光ラジカル重合開始剤の種類及び使用量、並びに、成形体の形状及び等により異なる。通常、積算光量は、0.01〜100J/cm、又は0.1〜50J/cmであってもよい。
本実施形態に係る光学樹脂組成物から得られる樹脂材料の成形体は、低いアッベ数及び高い部分分散比を示すことから、これを光学レンズ等の撮像光学系を構成する光学部材として適用することにより、光学系の色収差を高度に補正することが可能である。光学レンズ本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成された光学レンズは、例えば、光学機器用カメラレンズ、車載用カメラレンズ、スマートフォン用カメラレンズ、デジタルカメラ用レンズ等の撮像光学系に用いることができる。光学レンズの厚みは、所望に応じて適宜設定でき、特に制限されることはないが、通常1μm〜10mmであり、1μm〜5mmであってもよい。図1は、光学レンズの一実施形態を示す断面図である。図1に示される光学レンズ1は、本実施形態に係る光学樹脂組成物から形成された樹脂材料の成形体からなる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.原料の準備
(A)第1のラジカル重合性成分
・化合物A−1:2−[2−ヒドロキシ−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(下記式(a1−1)で表される化合物、東京化成製)
Figure 2019216008
・化合物A−2:2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン(下記式(a2−1)で表される化合物、Alfa Aesar社製)
Figure 2019216008
・化合物A−3:以下の製造例1で合成した下記式(a3−1)で表される化合物
Figure 2019216008
[製造例1]
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた容積500mLの4つ口フラスコに、TINUVIN479(BASF社製、化合物名:2−[4−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシ−フェノキシ]−プロピオン酸 6−メチル−ヘプチル エステル)70g(0.10モル)、DMF(脱水グレード)70g、2−エチルヘキサン酸スズ(II)0.42g(0.001モル)、及びtert−ブチルキシレノール0.01g(0.0001モル)を仕込み、これらを60℃で30分間攪拌した。次いで、ここにカレンズAOI(昭和電工製、化合物名:2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート)15.2g(0.11モル)を10分かけて滴下した。フラスコ内の反応液にジアザビシクロウンデセン(DBU)0.16g(0.001モル)を更に加え、反応液を110℃に昇温し、110℃で6時間かけて反応を進行させた。次に、トルエン120g及び水70gを添加し、フラスコ内の混合液を85℃で2時間攪拌した。混合液から分液により取り出した有機層を、水100gで2回洗浄した。洗浄後の有機層を濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物A−3を25.5g取得した。得られた化合物A−3のHPLC純度は97%であった。また、TINUVIN479に対する収率は30%であった。
(B)第2のラジカル重合性成分
・化合物B−1:以下の製造例2で合成したビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド(式(b1)で表されるラジカル重合性化合物)
・化合物B−2:以下の製造例3で合成したS,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオメタクリレート)(式(b2)で表されるラジカル重合性化合物)
・化合物B−3:メチルメタクリレート(東京化成製)
・化合物B−4:スチレン(東京化成製)
・化合物B−5:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業製、商品名:ABE−300)
・化合物B−6:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製、商品名:A−TMPT)
・化合物B−7:トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレート3EG−A)
[製造例2]
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた容積2Lの4つ口フラスコに、4,4’−チオジベンゼンチオール250.4g(1.0モル)及び17質量%水酸化ナトリウム水溶液480.0g(2.0モル)を仕込み、これらを60℃で1時間攪拌した。次いで、2−クロロエタノール169.1g(2.1モル)を60℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で1.5時間かけて反応を進行させた。反応終了後、20℃に反応液を冷却して、析出した結晶をろ過により取り出した。この結晶を水400gで2回洗浄して、ビス[4−(2−ヒドロキシエチルチオ)フェニル]スルフィドを含む湿ケーキ492.5gを得た。
得られた湿ケーキ492.5g及びトルエン1500gを、攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた容積3Lの4つ口フラスコに仕込み、これを110℃で加熱して、水を共沸により留去した。留去中、水との共沸により留去されたトルエンは、水と分離してフラスコ内に戻した。残った溶液を70℃に冷却し、そこに塩化チオニル249.9g(2.1モル)を70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で2時間の加熱により反応を進行させた。反応終了後、反応液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液600g(1.5モル)を添加し、形成された混合液を70℃で分液した。分液により得られた有機層を10℃に冷却し、結晶を析出させた。結晶をろ過により取り出し、n−ヘプタン600gで洗浄した。洗浄後の結晶を減圧下で50℃に加熱することにより乾燥して、ビス[4−(2−クロロエチルチオ)フェニル]スルフィド348.0g(0.93モル)を得た。
次いで、ビス[4−(2−クロロエチルチオ)フェニル]スルフィド348.0g(0.93モル)、n−ヘプタン780g、テトラブチルアンモニウムブロマイド14.9g(0.046モル)及び48質量%水酸化ナトリウム水溶液232.5g(2.8モル)を、攪拌機及び温度計を備えた容積3Lの4つ口フラスコに仕込み、これらを75〜85℃で5.5時間加熱して、反応を進行させた。反応終了後、フラスコ内の反応液に水428gを加え、形成された混合液を60℃で分液した。分液により得られた有機層を水372gで2回洗浄して、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィドのn−ヘプタン溶液1050gを得た。
得られたn−ヘプタン溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.4gを添加し、0.6kPa、40℃の条件でn−ヘプタンを留去して、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド(化合物B−1)275.3g(0.91モル)を得た。得られた化合物B−1のHPLC純度は99%であった。4,4’−チオジベンゼンチオールに対する収率は91%であった。
[製造例3]
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた容積2Lの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、4,4’−チオジベンゼンチオール250.4g(1モル)及びモノクロロベンゼン800gを仕込んだ。そこに、フラスコ内を60〜65℃に加熱しながら、98質量%水酸化ナトリウム114.3g(2.8モル)及び水素化ホウ素ナトリウム1.9g(0.05モル)が水546.8gに溶解した水溶液663.0gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間の加熱により反応を進行させた。反応終了後、反応溶液を分液し、4,4’−チオジベンゼンチオールのナトリウム塩を含む水溶液910.6g(水層)を得た。
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた容積3Lの四つ口フラスコに、メタクリロイルクロリド230.0g(2.2モル)、n−ヘプタン450g、シクロヘキサン900g及びp−メトキシフェノール2.0gを仕込み、これらを5℃に冷却した。そこに、5℃に冷却した上記4,4’−チオジベンゼンチオールのナトリウム塩を含む水溶液910.6gを5分間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を55〜60℃で1時間加熱することにより反応を進行させた。反応終了後、反応液を分液し、有機層を得た。得られた有機層を水140gで2回洗浄した。洗浄後の有機層にp−メトキシフェノール2.0g、及び活性炭1.5gを添加し、有機層を55〜60℃で30分間攪拌した。その後、熱時濾過により不溶物を取り除いた。残った有機層を0℃に冷却する晶析により、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別した。得られた結晶を、n−ヘプタン170g、シクロヘキサン340g、及びp−メトキシフェノール0.13gからなる混合液で洗浄し、減圧乾燥して、白色のS,S’−(チオジ−p−フェニレン)ビス(チオメタクリレート)(化合物B−2)325.5g(0.84モル)を得た。得られた化合物B−1のHPLC純度は99%であった。また、4,4’−チオジベンゼンチオールに対する収率は84%であった。
2.光学樹脂組成物及び樹脂材料の成形体
(実施例1)
化合物A−1及び化合物B−4を表1に記載の質量比率で混合し、混合物を60℃で30分間攪拌した。25℃まで冷却後、混合物100質量部に対して3質量部のIRGACURE1173(BASF製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)を光ラジカル重合開始剤として混合物に溶解させ、得られた混合液(光学樹脂組成物)を、充分に脱気した。次いで、光学樹脂組成物を、76×52mmの2枚のガラス板が間隙200μmで配置されたガラスモールド、及び76×52mmの2枚のガラス板が間隙100μmで配置されたガラスモールドのそれぞれの間隙に充填した。ガラスモールドに充填された光学樹脂組成物に対して、高圧水銀ランプにより、5000mJ/cm(365nmセンサーでの積算照度)の光を照射して、化合物A−1及び化合物B−4のラジカル重合により形成された重合体を含む樹脂材料の成形体を形成した。形成された成形体をガラスモールドから取り出した。これにより、約200μm厚及び約100μm厚のシート状の評価用成形体を得た。
光ラジカル重合開始剤に代えて、化合物A−1及び化合物B−4の混合物100質量部に対して0.5質量部のパーオクタO(日本油脂製、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)を熱ラジカル重合開始剤として添加して、光学樹脂組成物を調製し、十分に脱気した。次いで。光学樹脂組成物を、直径73mmで円形の2枚のガラスモールドが間隙2mmで配置されたガラスモールドの間隙に充填した。光学樹脂組成物が充填されたガラスモールドを、55℃で2時間加熱した後、55℃から95℃まで12時間かけて昇温し、そのまま95℃で2時間加熱することにより、化合物A−1及び化合物B−4から形成された重合体を含む樹脂材料の成形体を形成させた。形成された成形体をガラスモールドから取り出した。これにより、約2mm厚の円板状の評価用成形体を得た。
(実施例2〜16、比較例1〜3)
表1に示した比率で各原料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学樹脂組成物を調製し、これを用いて3種の評価用成形体を作製した。
3.評価
<屈折率nd、アッベ数νd、部分分散比θg,F>
約2mm厚の円板状の評価用の試験片(成形体)のg線(波長435.8nm)、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)、及びC線(波長656.3nm)におけるそれぞれの屈折率ng、nd、nF及びnCを、カール ツアイス イエナ社製屈折計PR−2(Vブロック方式)を用いて25℃で測定した。得られた屈折率から、アッベ数とθg,Fを以下の式により算出した。
アッベ数νd=(nd−1)/(nF−nC)
部分分散比θg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
<耐熱性>
約200μm厚の評価用の試験片(成形体)の動的粘弾性の温度変化を、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、型番:RSA−G2)を用いて、引張モード、昇温速度10℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。tanδのピークトップの温度を、成形体のガラス転移温度Tgとして記録した。Tgの値により、以下の基準で成形体の耐熱性を判定した。
AA:Tg≧110℃
A:100≦Tg<110℃
C:Tg<100℃
<耐湿熱性>
約2mm厚の評価用の試験片(成形体)を、100℃に保持した湯浴中に24時間浸漬する煮沸試験に供した。煮沸試験前後の試験片の屈折率ndを測定し、それらの差Δndを求めた。Δndの値により、以下の基準で成形体の耐湿熱性を判定した。
AA:Δnd≦0.0005
A:0.0005<Δnd≦0.0007
C:Δnd>0.0007
<内部透過率>
約200μm厚の評価用の試験片(成形体)、及び約100μm厚の評価用の試験片(成形体)の波長400nmにおける透過率を、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:UH−4150)を用いて測定した。ここで得られる測定値は、表面反射損失を含む外部透過率である。得られた測定値と、各試験片の実測した厚みを用いて、以下の式から厚み200μmに換算された波長400nmにおける内部透過率Tを算出した。
log(T/100)=−[{log(T)−log(T)}/(d−d)]×200
:約100μm厚の成形体の実測厚み
:約200μm厚の成形体の実測厚み
:約100μm厚の成形体の波長400nmにおける外部透過率
:約200μm厚の成形体の波長400nmにおける外部透過率
内部透過率Tiの値により、以下の基準で成形体の内部透過率を判定した。
AA:T≧75%
A:60%≦T<75%
B:50%≦T<60%
C:T<50%
<耐光性>
約200μm厚の評価用の試験片(成形体)を、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型番:X25)を用いて、放射強度60W/m(波長300〜400nm域における積算)、ブラックパネル温度63℃の条件で100時間光を照射する耐光性試験に供した。耐光性試験前後の各成形体の波長400nmにおける透過率を分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:UH−4150)を用いて測定した。それらの値と成形体の実測した成形体の厚みを用いて、ランベルト・ベール式から200μm厚に換算された透過率を算出した。波長400nmにおける透過率の耐光性試験前後での差ΔTを求め、その値により以下の基準で耐光性を判定した。
A:ΔT=0〜5%
C:ΔT>5%
Figure 2019216008
1…光学レンズ。

Claims (7)

  1. (A)下記式(a1)、(a2)又は(a3)で表される少なくとも1種のラジカル重合性化合物からなる第1のラジカル重合性成分と、
    (B)前記第1のラジカル重合性成分とは異なる少なくとも1種のラジカル重合性化合物からなる第2のラジカル重合性成分と、
    を含有する光学樹脂組成物であって、
    前記第1のラジカル重合性成分及び前記第2のラジカル重合性成分がラジカル重合したときに、これらの重合体を含む樹脂材料が形成され、
    前記樹脂材料のアッベ数νd及び部分分散比θg,Fが、以下の式:
    18≦νd≦25;及び
    θg,F≧0.700
    を満たす、光学樹脂組成物。
    Figure 2019216008
    [式(a1)中、
    は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシカルボニルアルキル基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示し、
    は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    、X又はXのうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基を有する基である。]
    Figure 2019216008
    [式(a2)中、
    及びYは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    及びYは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    、Y、Y又はYのうち少なくとも1つが、(メタ)アクリロイル基を有する基である。]
    Figure 2019216008
    [式(a3)中、
    は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキルカルボニルオキシアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシカルボニルアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルコキシアルキル基を示し、
    、Z、Z、Z、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基を示し、
    は水素原子、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    は水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基、又は、(メタ)アクリロイル基を有する基を示し、
    又はZのうち少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する基である。]
  2. 前記樹脂材料の厚み190〜210μmのシート状の成形体が、波長300〜400nmの範囲の積算照度が60W/m、ブラックパネル温度が63℃の条件で100時間光を照射する耐光性試験に供されたときに、前記成形体の波長400nmにおける透過率の前記耐光性試験前後での差ΔTが、5%以下である、請求項1に記載の光学樹脂組成物。
  3. 前記樹脂材料のガラス転移温度が100℃以上である、請求項1又は2に記載の光学樹脂組成物。
  4. 前記樹脂材料の厚み1.9〜2.0mmのシート状の成形体を、100℃に保持した湯浴中に24時間浸漬する煮沸試験に供したときに、前記成形体のd線(波長587.6nm)における屈折率ndの前記煮沸試験前後での差Δndが、0.0007以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学樹脂組成物。
  5. (B)第2のラジカル重合性成分が、下記式(b1)又は(b2)で表される少なくとも1種のスルフィド化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学樹脂組成物。
    Figure 2019216008
    [式(b1)及び(b2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜10の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、式(b2)中の2つのRは同一でも異なってもよい。]
  6. 当該光学樹脂組成物が微粒子を含有していてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学樹脂組成物中の第1のラジカル重合性成分及び第2のラジカル重合性成分のラジカル重合により形成された重合体を含む樹脂材料からなる、光学レンズ。
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