以下、添付図面に従って本発明の形状測定方法の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係る形状測定方法に用いられる形状測定装置の例を示す全体構成図である。
同図における表面形状測定装置1は、マイケルソン型の干渉計を用いて測定対象物の表面形状等を非接触により3次元測定する所謂、マイケルソン型の走査型白色干渉計(顕微鏡)であり、測定対象物Pの干渉画像を取得する光学部2と、測定対象物Pが載置されるステージ10と、光学部2の各制御や光学部2により取得された干渉画像に基づいて各種演算処理を行うパーソナルコンピュータ等の演算処理装置からなる処理部18などを備える。
なお、本実施の形態では、マイケルソン型の走査型白色干渉計の例で説明するが、周知のミロー型の走査型白色干渉計であってもよい。また、測定対象物Pが配置される測定空間において、互いに直交する水平方向の2つの座標軸をx軸(紙面に直交する軸)とy軸(紙面に平行する軸)とし、x軸およびy軸に直交する鉛直方向の座標軸をz軸(測定光軸方向)とする。z軸は、後述する測定光軸Z-0に平行である。
ステージ10は、x軸およびy軸に略平行する平坦な上面であって測定対象物Pを支持する支持部であって、測定対象物Pを載置するステージ面10Sを有する。また、ステージ10は、ステージ面10Sの水平面に対する傾斜角度(z軸に対する傾斜角度)を変更する傾斜角度変更手段を有しており、ステージ面10S(ステージ10)は、傾斜角度変更手段により、x軸に平行なx回転軸30の周りとy軸に平行なy回転軸32の周りに回転可能に設けられる。そして、ステージ面10Sは、xアクチュエータ34の駆動によりx回転軸30周りに回転し、yアクチュエータ36の駆動によりy回転軸32周りに回転する。
なお、xアクチュエータ34およびyアクチュエータ36のように本明細書においてアクチュエータという場合には、ピエゾアクチュエータやモータなどの任意の駆動装置を示す。
ステージ面10Sに対向する位置、即ち、ステージ10の上側には、不図示の筐体により一体的に収容保持された光学部2が配置される。
光学部2は、x軸に平行な光軸Z-1を有する光源部12と、z軸に平行な光軸Z-0(以下、「測定光軸Z-0」と言う)を有する干渉部14および撮影部16とを有する。光源部12の光軸Z-1は、干渉部14および撮影部16の光軸Z-0に対して直交し、干渉部14と撮影部16との間において光軸Z-0と交差する。なお、光軸Z-1は、必ずしもx軸と平行でなくてもよい。
光源部12は、測定対象物Pを照明する照明光として波長幅が広い白色光(可干渉性の少ない低コヒーレンス光)を出射する光源40と、光源40から拡散して出射された照明光を略平行な光束に変換するコレクタレンズ42とを有する。光源40およびコレクタレンズ42の各々の中心とする軸は光源部12の光軸Z-1として同軸上に配置される。
また、光源40としては、発光ダイオード、半導体レーザ、ハロゲンランプ、高輝度放電ランプなど、任意の種類の発光体を用いることができる。
この光源部12から出射された照明光は、干渉部14と撮影部16との間に配置され、光軸Z-1と測定光軸Z-0とが交差する位置に配置されたハーフミラー等のビームスプリッタ44に入射する。そして、ビームスプリッタ44(ビームスプリッタ44の平坦な光分割面(反射面))で反射した照明光が測定光軸Z-0に沿って進行して干渉部14に入射する。
干渉部14は、マイケルソン型干渉計により構成され、光源部12から入射した照明光を測定光と参照光とに分割する。そして、測定光を測定対象物Pに照射すると共に、参照光を参照ミラー52に照射し、測定対象物Pから戻る測定光と参照ミラー52から戻る参照光とを干渉させた干渉光を生成する。
干渉部14は、集光作用を有する対物レンズ50と、光を反射する参照面であって平坦な反射面を有する参照ミラー52と、光を分割する平坦なビームスプリッタ54と、を有する。対物レンズ50、参照ミラー52、およびビームスプリッタ54の各々の中心とする軸は干渉部14の光軸Z-0として同軸上に配置される。参照ミラー52の反射面は、ビームスプリッタ54の側方位置に、測定光軸Z-0と平行に配置される。
光源部12から干渉部14に入射した照明光は、対物レンズ50により集光作用を受けた後、ビームスプリッタ54に入射する。
ビームスプリッタ54は、例えばハーフミラーであり、ビームスプリッタ54に入射した照明光は、ビームスプリッタ54を透過する測定光と、ビームスプリッタ54の光分割面で反射する参照光とに分割される。
ビームスプリッタ54を透過した測定光は、測定対象物Pの被測定面Sに照射された後、被測定面Sから干渉部14へと戻り、再度、ビームスプリッタ54に入射する。そして、ビームスプリッタ54を透過した測定光が対物レンズ50に入射する。
一方、ビームスプリッタ54で反射した参照光は、参照ミラー52の光反射面で反射した後、再度、ビームスプリッタ54に入射する。そして、ビームスプリッタ54で反射した参照光が対物レンズ50に入射する。
これによって、干渉部14から測定対象物Pの被測定面Sに照射されて干渉部14に戻る測定光と、参照ミラー52で反射した参照光とが重ね合わされた干渉光が生成され、その干渉光が対物レンズ50により集光作用を受けた後、干渉部14から撮影部16に向けて出射される。
また、照明光が測定光と参照光とに分割された後、測定光と参照光とが重ね合わされるまでの測定光と参照光の各々が通過した光路の光学的距離を、測定光の光路長および参照光の光路長といい、それらの差を測定光と参照光の光路長差というものとする。
また、干渉部14は、光学部2においてz軸方向に直線移動可能に設けられる。そして、干渉部アクチュエータ56の駆動により対物レンズ50、およびビームスプリッタ54がz軸方向に移動する。これにより、対物レンズ50の焦点面の位置(高さ)がz軸方向に移動すると共に、被測定面Sとビームスプリッタ54との距離が変化することで測定光の光路長が変化し、測定光と参照光との光路長差が変化する。
撮影部16は、被測定面Sの各点に照射された測定光と参照光との干渉光の輝度情報から測定対象物Pの表面形状データを取得する表面形状取得部であり、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラに相当し、CCD型の撮像素子60と、結像レンズ62とを有する。撮像素子60と結像レンズ62の各々の中心とする軸は撮影部16の光軸Z-0として同軸上に配置される。なお、撮像素子60は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子等、任意の撮像手段を用いることができる。
干渉部14から出射された干渉光は、上述のビームスプリッタ44に入射し、ビームスプリッタ44を透過した干渉光が撮影部16に入射する。
撮影部16に入射した干渉光は、結像レンズ62により撮像素子60の撮像面60Sに干渉像を結像する。ここで、結像レンズ62は、測定対象物Pの被測定面Sの光軸Z-0周辺の領域に対する干渉像を高倍率に拡大して撮像素子60の撮像面60Sに結像する。
また、結像レンズ62は、干渉部14の対物レンズ50の焦点面上における点を、撮像素子60の撮像面上の像点として結像する。即ち、撮影部16は、対物レンズ50の焦点面の位置にピントが合うように(合焦するように)設計されている。
なお、以下において、測定対象物Pの焦点面のz軸方向の位置を単に「ピント位置」、または、「撮影部16のピント位置」というものとする。
撮像素子60の撮像面60Sに結像された干渉像は、撮像素子60により電気信号に変換されて干渉画像として取得される。そして、その干渉画像は、処理部18に与えられる。
以上のように光源部12、干渉部14、および撮影部16等により構成される光学部2は、全体が一体的としてz軸方向に直進移動可能に設けられる。例えば、光学部2は、z軸方向に沿って立設された不図示のz軸ガイド部に直進移動可能に支持される。そして、zアクチュエータ70の駆動により光学部2全体がz軸方向に直進移動する。これにより、干渉部14をz軸方向に移動させる場合よりも、撮影部16のピント位置をz軸方向に大きく移動させることができ、例えば、測定対象物Pの厚さ等に応じて撮影部16のピント位置を適切な位置に調整することができる。
処理部18は、測定対象物Pの被測定面Sの表面形状を測定する際に、干渉部アクチュエータ56を制御して光学部2の干渉部14をz軸方向に移動させながら撮影部16の撮像素子60から干渉画像を順次取得する。そして、取得した干渉画像に基づいて被測定面Sの3次元形状データを被測定面Sの表面形状を示すデータとして取得する。
ここで、処理部18が干渉縞に基づいて被測定面Sの3次元形状データを取得する処理について説明する。
撮影部16の撮像素子60は、x軸およびy軸からなるxy平面(水平面)に沿って2次元的に配列された多数の受光素子(画素)からなり、各画素において受光される干渉像の輝度値、即ち、撮像素子60により取得される干渉画像の各画素の輝度値は、各画素に対応する被測定面Sの各点で反射した測定光と参照光との光路長差に応じた干渉光の強度(輝度情報)を示す。
ここで、図2に示すように、干渉画像(撮像素子60の撮像面)のm列目、n列目の画素を(m、n)と表すものとする。そして、画素(m、n)のx軸方向に関する位置(以下、x軸方向に関する位置を「x位置」という)を示すx座標値をx(m、n)と表し、y軸方向に関する位置(以下、y軸方向に関する位置を「y位置」という)を示すy座標値をy(m、n)と表すものとする。
また、画素(m、n)に対応する測定対象物Pの被測定面S上の点のx位置を示すx座標値をX(m,n)と表し、y位置を示すy座標値をY(m,n)と表すものとし、また、その点をxy座標値により(X(m,n),Y(m,n))と表すものとする。なお、画素(m,n)に対応する被測定面S上の点とは、ピントが合っている状態において画素(m,n)の位置に像点が結像される被測定面S上の点を意味する。
このとき、撮像素子60により取得される干渉画像の画素(m,n)の輝度値は、画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))に照射された測定光と参照光との光路長差に応じた大きさを示す。
即ち、図1の干渉部アクチュエータ56により干渉部14をz軸方向に移動させて光学部2(撮影部16)に対する干渉部14の相対的なz軸方向の位置(以下、「z位置」という)を変位させると、撮影部16のピント位置(対物レンズ50の焦点面)もz軸方向に移動し、ピント位置も干渉部14と同じ変位量で変位する。また、ピント位置が変位すると、被測定面Sの各点に照射される測定光の光路長も変化する。
そして、干渉部14をz軸方向に移動させてピント位置を変位させながら、即ち、測定光の光路長を変化させながら、撮像素子60から干渉画像を順次取得して干渉画像の任意の画素(m,n)の輝度値を検出する。
ここで、処理部18は、干渉部14の所定の基準位置からの変位量(干渉部14のz位置)を、ポテンショメータやエンコーダなどの不図示の位置検出手段からの検出信号により検出することができる。または、位置検出手段を使用することなく干渉部14のz位置を制御する場合、例えば、干渉部アクチュエータ56に与える駆動信号により一定変位量ずつ干渉部14を移動させる場合には、その総変位量により検出することができる。
そして、干渉部14が基準位置のときのピント位置のz位置を測定空間におけるz座標の基準位置(原点位置)として、かつ、干渉部14の基準位置からの変位量をピント位置のz座標値として取得することができる。なお、z座標値は、原点位置よりも高い位置(撮影部16に近づく位置)を正側、低い位置(ステージ面10Sに近づく位置)を負側とする。また、干渉部14の基準位置、即ち、z座標の原点位置は任意のz位置に設定、変更することができる。
図3の(A)~(C)は、干渉部14の測定対象物Pの被測定面Sに近接した位置からz軸方向に上昇させながら撮影部16の撮像素子60から画像を取得したときの干渉部14のz位置と輝度値との関係を示した図である。
図3の(A)のように、測定光の光路長L1が参照光の光路長L2より小さいと干渉は小さく、輝度値は略一定となる。そして、図3の(B)のように、測定光の光路長L1と参照光の光路長L2とが同じ、即ち光路長差が0となる場合に干渉が大きくなり、最も大きな輝度値を示す。さらに、図3(C)のように、測定光の光路長L1が参照光の光路長L2よりも大きいと再び干渉は小さくなり、輝度値は略一定となる。これにより、図3の(D)に示す干渉縞曲線Qに沿った輝度値が得られる。
即ち、任意の画素(m,n)における干渉縞曲線Qは、その画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))に照射された測定光と参照光との光路長差が所定値より大きい場合には略一定の輝度値を示し、光路長差がその所定値より小さいときには、光路長差が減少するにつれて輝度値が振動すると共にその振幅が大きくなる。
したがって、図3の(D)に示すように、干渉縞曲線Qは、測定光と参照光との光路長が一致したときに(光路長差が0のときに)、最大値を示すと共に、その干渉縞曲線Qの包絡線における最大値を示す。
また、被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))に照射された測定光と参照光との光路長は、撮影部16のピント位置が被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz位置に一致したときに一致する。
したがって、干渉縞曲線Qが最大値を示すとき(または干渉縞曲線Qの包絡線が最大値を示すとき)のピント位置は、被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz位置に一致しており、そのときのピント位置のz座標値は、被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値を示す。
以上のことから、処理部18は、干渉部アクチュエータ56により干渉部14をz軸方向に移動させてピント位置をz軸方向に移動させながら(測定光の光路長を変化させながら)、撮像素子60から干渉画像を順次取得し、各画素(m,n)の輝度値をピント位置のz座標値に対応付けて取得する。即ち、ピント位置をz軸方向に走査しながら干渉画像の各画素(m,n)の輝度値を取得する。そして、各画素(m,n)について、図3(D)のような干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を、各画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値Z(m,n)として検出する。
なお、Z(m,n)は、画素(m,n)に対応する被測定面S上の点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値を示す。
また、干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出する方法は周知であり、どのような方法を採用してもよい。例えば、ピント位置の微小間隔ごとのz座標値において干渉画像を取得することで、各画素(m,n)について、図3(D)のような干渉縞曲線Qを実際に描画することができる程度に輝度値を取得することができ、取得した輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することで、干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することができる。
または、ピント位置の各z座標値において取得した輝度値に基づいて最小二乗法等により干渉縞曲線Qを推測し、または、干渉縞曲線Qの包絡線を推測し、その推測した干渉縞曲線Qまたは包絡線に基づいて輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することで、干渉縞曲線Qの輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することができる。
以上のようにして、処理部18は、干渉画像(撮像素子60の撮像面60S)の各画素(m,n)に対応する被測定面S上の各点(X(m,n),Y(m,n))のz座標値Z(m,n)を検出することで、被測定面S上の各点(X(m,n),Y(m,n))の相対的な高さを検出することができる。
そして、被測定面S上の各点のx座標値X(m,n)、y座標値Y(m,n)、およびz座標値Z(m,n)を被測定面Sの3次元形状データ(表面形状を示すデータ)として取得することができる。
例えば、図4に示すようにx軸方向に並ぶ3つの画素に対応する被測定面S上の3点におけるz座標値Z1、Z2、Z3が相違する場合に、ピント位置をz軸方向に走査しながら干渉画像のそれらの画素の輝度値を取得すると、それらの画素の各々に関してピント位置がz座標値Z1、Z2、Z3のときに輝度値が最大値を示す干渉縞曲線Q1、Q2、Q3が取得される。したがって、それらの干渉縞曲線Q1、Q2、Q3の輝度値が最大値を示すときのピント位置のz座標値を検出することで、それらの画素に対応する被測定面S上の3点におけるz座標値Z1、Z2、Z3を検出することができる。このようにして、被測定面Sの3次元形状データを取得することにより、測定対象物Pの表面形状測定を行う。
上述のように測定対象物Pの表面形状測定を行う際に、測定前の準備作業として、表面形状測定におけるz軸方向の走査範囲を決定する予備走査を行う。表面形状測定のz軸方向の走査範囲を適切に決定することで、干渉縞の発生しない範囲で表面形状測定を行うことを省略できるので、測定時間を短縮することができる。
この予備走査は、できるだけ短時間で行うことが表面形状の測定効率を向上させるうえで好ましい。
しかし、表面形状の測定効率を向上させるために測定準備を短時間で行うには、光学部2での画像取得間隔(画像サンプリング間隔)を広くする必要があるが、画像取得間隔を広くすると、干渉縞の探索が難しくなる。図5は、サンプリング間隔を波長より長くした場合の画像取得位置と干渉縞曲線との関係を例示した図である。z軸方向(垂直走査軸方向)に上昇させながら、短いサンプリング間隔で画像を取得すると、図5に示す干渉縞曲線Qが得られるとする。しかしながら、図5に示すサンプリング間隔で画像を取得すると、輝度値の変化が少ない位置でのみ画像の取得が行われ、輝度値が大きくなる位置では、サンプリングが行われず、干渉縞の生成が確認できない場合がある。
本実施形態においては、画像取得間隔を測定波長よりも長くすると共に、予備走査を行う際の、基準画素と、その周辺画素の情報を利用し、統計処理を行うことで、表面形状測定におけるz軸方向の走査範囲を適切に決定する。図6は、基準画素と周辺画素の画像取得位置と干渉縞曲線の関係を例示した図である。図6の基準画素において、図5に示す場合と同様に、輝度値の変化が見られない場合においても、周辺画素の輝度値の情報を利用することで、周辺画素においては、高い輝度値が得られているので、この範囲を含むように、走査範囲を決定することができる。
本発明の実施の形態の表面形状測定装置1の処理部18には、予備走査の測定準備動作プログラムを制御する測定準備制御部18Aが内蔵される構成とする。
図7は、表面形状測定方法の一例を示すフローチャート図であり、図8は、予備走査の一例を示すフローチャート図である。
表面形状測定方法は、図7に示すように、先ず、測定対象物をステージ10上に載置する(ステップS10)。
次に、処理部18は、干渉縞(撮像素子60の撮像面)の全ての画素について取得される干渉縞曲線の輝度値が適切な大きさとなるように測定光量などの調整を行う(ステップS12)。即ち、光源部12の光源40の強さ、撮像素子60における電子シャッタの速度(電荷蓄積時間の長さ)、撮像素子60により得られる画像信号に対するゲインなどを調整する。
次に、表面形状の測定(ステップS16)の測定走査範囲(干渉部14をz軸方向に移動させる範囲)が短くなるように、予備走査を行う(ステップS14)。このステップは、予め測定対象物の表面形状の概要を把握することで、測定走査範囲を必要最小限に短くするものである。予備走査については、図8を用いて説明する。
予備走査は、図9に示すように、まず、基準画素を選択する(ステップS30)。測定準備制御部18Aは、図9に示すように、撮像素子60の撮像面60Sのxy座標上の干渉縞の生成および消失の基準とする基準画素100を予め設定する。基準画素は、本実施形態の場合には、予備走査の前に予め決められた画素とした。しかし、測定準備制御部18Aが図1の表示部20に表示する図9のような干渉縞(撮像素子60の撮像面60S)における画素配列の画素を参照しながら操作者が入力部22により指定するようにしてもよい。
次に、干渉部14をz軸方向に規定範囲で走査駆動を行い、干渉縞取得工程を行う(ステップS32)。この工程においては、干渉縞をサンプリングする間隔(画像取得間隔)を、測定する白色光の中心波長より長い間隔で行う。また、この画像取得間隔は、後述する表面形状測定工程における画像取得間隔より長い間隔である。この画像取得間隔を長くすることで、予備走査の時間を短縮することができる。一方で、画像取得間隔が長くなると、上述したように、干渉縞が生成されている範囲であるにも関わらず、輝度値が大きくなる位置では、画像の取得が行われず、干渉縞の生成が確認できない場合がある。そこで、本発明においては、周辺画素の輝度値の変化も用いることで、干渉縞の生成、消失を高い確率で推定することができ、走査範囲を決定することができる。画像取得間隔の上限は、周辺画素の輝度値を用いることで、表面形状の概要を把握することができれば、特に限定されないが、波長の2.5倍以下とすることが好ましい。また、波長の整数倍とすると、干渉縞曲線における輝度値の変化が同じになるため、整数倍を避けることが好ましい。なお、ここで、規定範囲とは、光学部2に対する干渉部14のz軸方向の移動によるピント位置のz軸方向の最大走査範囲をいう。
測定準備制御部18Aは、干渉部アクチュエータ56により干渉部14をz軸方向に移動させてピント位置をz軸方向に走査しながら(即ち、測定光の光路長を変化させながら)撮像素子60から干渉縞を順次取得し、各画素の輝度値をピント位置のz座標値に対応付けて取得する。
各画素の輝度値を取得したら、基準画素およびその種変画素の輝度値から本測定の垂直走査方向の測定走査範囲を決定する走査範囲決定工程を行う(ステップS34)。
本実施形態によれば、基準画素のみでなく、その周辺画素の輝度値も用いて測定走査範囲を決定することで、サンプリング間隔を長くすることにより、基準画素で干渉縞の生成、消失が十分に確認できなくても、その周辺画素から推定することができる。
図10~12は、基準画素100と、基準画素100の周辺画素102の選択方法を示す図である。図10は、基準画素100に隣接する画素のみを周辺画素102として用いる例である。また、図11は、基準画素100から等間隔で周辺画素102を選択する例である。図12は、周辺画素102を基準画素100からの距離がランダムになるように選択する例である。
基準画素の周辺画素を選択する方法は特に限定されない。例えば、図10~12に示す選択方法で選択することができる。ただし、予備走査は、サンプリング間隔を広くしているので、図10または図11に示すように、周辺画素102を、基準画素100から一定距離にある画素とした場合、例えば、基準画素から選択した周辺画素に対応する測定対象物の表面形状が段差部を有するなど、z軸方向の変位が大きい場合、予備走査において、干渉縞の生成が確認できない場合がる。図12に示すように、基準画素100からランダムに周辺画素102を選択し、複数の周辺画素102の情報を利用し統計的に処理することで、安定して表面形状の概要の推定が可能となる。なお、周辺画素とは、図10に示すように、基準画素に隣接する隣接画素、および、図11、12に示すように基準画素から数画素離れた位置にある近傍画素をいう。
また、本実施形態においては、周辺画素を選択し、これらに統計処理を施すことで、測定走査範囲を決定している。一般的に予備走査を実施する際には、カメラのフレームレートを最大限高速になるように設定する。そのため、撮像面内の全画素に対して統計処理を実施しようとすると、処理がフレームの時間間隔内に収まらない問題が発生する。そのため、基準画素の選択、基準画素の周辺画素を選択し、これらに統計処理を施すことで、予備走査の時間を短縮している。
基準画素および周辺画素の輝度値から測定走査範囲を決定する統計処理について説明する。統計処理の一例として、例えば、次のように単純和を取ることで、決定することができる。
予備走査を行う際の基準画素、および、選択した周辺画素の輝度値をxi(i:ピクセル番号)、干渉縞が生成していない領域での平均的な輝度値を<x>とすると、i番目の画素に対する干渉縞による輝度値の変化は、Δx=|xi-<x>|で表される。
そして、統計処理として、これらの値の単純和Σ(Δxi)=Σi|xi-<x>|を求める。この単純和を、光学部の垂直位置を走査しながら(z方向に移動させながら)計算を行い、単純和が所定の値以上の領域を含む範囲を、表面形状を測定する走査範囲として決定することができる。単純和を計算する際は、閾値を設けて、この閾値以下の輝度値の変化を示すものは単純和の計算に使用しないようにすることもできる。
図13は、基準画素および周辺画素の輝度値を用いて測定範囲を決定する例を示す図である。基準画素の輝度値の変化を、光学部2を垂直方向に走査しながら測定すると、例えば、図13の基準画素に示すような、輝度値の変化を示す。予備走査においては、サンプリング間隔が波長よりも広いため、干渉縞による明暗が生成している領域内においても、輝度値の変化Δxiが小さい値を示す場合がある。
周辺画素1~3は、基準画素からの距離がランダムになるように選択した周辺画素の輝度値の変化(Δx)を示す。図13においては省略しているが、さらに、複数の周辺画素の輝度値の変化の単純和を示す。単純和を求め、グラフ化することで、基準画素およびその周辺画素での垂直方向(z軸方向)における輝度値の変化量を求めることができ、この範囲を含むように、表面測定の垂直方向の走査範囲を決定することができる。このように、基準画素で十分な輝度値の変化が確認できなくても、周辺画素の輝度値の変化を用いることで、表面形状の垂直方向の位置を推定することができ、走査範囲を決定することができる。
統計処理として、単純和を用いる方法以外に、輝度値変化の出現頻度分布を作成し、出現頻度が特定の範囲に含まれる範囲を本測定の範囲として決定することができる、また、統計処理の方法としては、1種類に限定されず、複数種類を組み合わせて用いることもできる。
ここで、本発明とオートフォーカスとの違いについて説明する。一般的なオートフォーカスでは、測定対象物が焦点位置に近い場合に、測定対象物表面の模様によるコントラストが上昇することを用いて隣接ピクセル間の輝度値の差異を利用する。しかしながら、この手法は、サンプリング間隔を広げることは可能であるが、例えばオプティカルフラットのような平滑面に対しては、効果が無く、さらに、干渉縞の生成、消失の幅を検知することができないので、予備走査としては機能しない。確実に測定対象物の表面形状を取得するためには、干渉縞の生成、消失が生じる範囲において、表面形状を測定することが必要である。
図7に戻り、予備走査(ステップS14)により、測定走査範囲を決定した後、処理部18は、測定対象物Pの表面形状の測定を行う表面形状測定工程を行う(ステップS16)。表面形状の測定方法としては、測定対象物Pの被測定面Sの各点に照射される測定光の光路長を変化させながら撮影部16により取得される干渉縞に基づいて被測定面Sの各点のz軸方向の干渉縞位置を検出することで測定対象物Pの表面形状を測定する方法であれば、どのような方法でもよい。
本実施形態によれば、サンプリング間隔を狭くすることで時間のかかる表面形状測定において、予備走査により走査範囲を決定しているので、測定時間を短縮することができる。
次に、ステップS18で、測定対象物全領域の表面形状データを取得していない場合はステップS14に戻り、ステージ10を移動させ(移動工程)、予備走査(ステップS14)および、表面形状の測定(ステップS16)を行い、測定対象物全領域の表面形状データを取得する(繰り返し工程)。
測定対象物全領域の表面形状データを取得した後、ステップS20の工程として、表面形状データを接続することで、広範囲表面形状データを作成し(接続工程)、最後に、処理部18は、表面形状の測定結果を表示部20などに出力する。または、1つの撮像面で測定対象物の表面形状を測定できる場合は、接続工程を行うことなく、表面形状の測定結果を表示部20などに出力する。