JP2022021669A - ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 - Google Patents

ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】誘電特性のばらつきと強度低下が共に抑制された低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することを目的とする。【解決手段】 複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合と、前記ガラスフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数が、0.45超過0.90以下であり、前記ガラスクロスのFe含量が、Fe2O3換算で、0.001質量%以上0.05質量%以下である、ガラスクロス。重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)【選択図】なし

Description

本発明は、ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板に関する。
近年の情報通信社会の発達とともに、データ通信及び/又は信号処理が大容量で高速に行われるようになり、電子機器に用いられるプリント配線板の低誘電率化が著しく進行している。そのため、プリント配線板を構成するガラスクロスにおいても、低誘電ガラスクロスが多く提案されている。
例えば、特許文献1に開示されている低誘電ガラスクロスは、従来から一般に使用されているEガラスクロスに対して、ガラス組成中にB23を多く配合し、同時にSiO2等の他の成分の配合量を調整することで、低誘電率を実現している。
特開平11-292567号公報
しかしながら、ガラスクロスを低誘電率化するためにガラス糸中のB23含有割合を増加すると、ガラス糸の弾性係数が低下し、かつ、熱処理後のガラスクロスの強度低下が著しい。そのため、ガラスクロスが破断しやすくなるという問題がある。このようなガラスクロスを用いてプリプレグを製造した場合には、樹脂付着量をコントロールする操作など、ガラスクロスに外的負荷がかかるような場面において、ガラスクロスが破断し、生産上の問題を生じさせる。
この点について、特許文献1には、ガラス糸の紡糸時において、B23の含量を20質量%未満とし、かつ、CaOの含量を所定の範囲とすることにより、B23の揮発を抑制する方法が開示されている。しかしながら、B23の含量を20質量%未満としたのでは、低誘電率化の要求に十分にこたえることはできず、結局のところ、低誘電でありかつ強度低下が抑制されたガラスクロスは実現されていない。さらに、熱処理時の重量減少が特定の範囲であると、強度低下がより深刻化することがわかってきた。
さらに、特許文献1に記載の方法のように、他の成分の添加により揮発を抑制しようとした場合には、ガラスクロスの面方向あるいはロット間差において誘電特性のばらつきが生じる可能性があることがわかってきた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、誘電特性のばらつきと強度低下が共に抑制された低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の重量減少傾向を有するガラス糸において、Fe含量を調整することにより、当該ガラス糸を用い得られるガラスクロスが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、
下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合と、前記ガラスフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数が、0.45超過0.90以下であり、
重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)
前記ガラスクロスのFe含量が、Fe23換算で、0.001質量%以上0.05質量%以下である、
ガラスクロス。
〔2〕
前記ガラスクロスの、
F含量が、0.001~0.1質量%である、
〔1〕に記載のガラスクロス。
〔3〕
前記ガラスクロスの、
Si含量が、SiO2換算で、40~60質量%であり、
B含量が、B23換算で、15~30質量%である、
〔1〕又は〔2〕に記載のガラスクロス。
〔4〕
前記ガラスクロスの弾性係数が、50~70GPaである、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のガラスクロス。
〔5〕
前記ガラスクロスの弾性係数が、50~63GPaである、
〔4〕に記載のガラスクロス。
〔6〕
前記経糸及び前記緯糸を構成する前記ガラスフィラメントの平均直径が、各々独立して、3.5~5.4μmである、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のガラスクロス。
〔7〕
1GHzの周波数において5.0以下の誘電率を有する、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のガラスクロス。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のガラスクロスと、
該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂と、を有する、
プリプレグ。
〔9〕
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のガラスクロスを備える、
プリント配線板。
本発明によれば、誘電特性のばらつきと強度低下が共に抑制された低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔ガラスクロス〕
本実施形態のガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合とガラスフィラメントの半径の積として求められる重量減少係数が、0.45超過0.90以下であり、ガラスクロスのFe含量が、Fe23換算で、0.001質量%以上0.05質量%以下である。
重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)
低誘電率を有するガラスクロスは、その製造過程における熱処理あるいはその後工程における熱処理において、ガラスクロスの強度低下が進行する。この強度低下と、低誘電ガラスクロスを構成するガラス糸の弾性係数が低いことにより、Eガラスなどの他のガラス糸を用いたものと比較して、低誘電ガラスクロスは破断が生じやすいものとなっている。これに対して、本実施形態では、所定の重量減少傾向を有するガラスロスにおいて、ガラス中のFe(鉄)の含有量、さらに好ましくはF(フッ素)の含有量を調整することにより、熱処理による強度低下を抑制する。
このFe含量の調整により強度低下を抑制できる理由としては、限定されるものではないが、以下のように考えられる。紡糸時には、ガラス糸に疎な部分が生じてもその部分を埋めるように溶融状態のガラスが流動可能であり、重量減少によってガラス糸が疎になりもろくなる部分はこの流動により解消することができる。他方、ガラスクロスを構成するガラス糸は疎な部分が生じたとしてもその部分を埋めるようにガラスが流動することができない。この状況下において、本実施形態のガラスクロスでは、重量減少によってガラス糸が疎になりもろくなった部分を、ガラス構造に組み込まれたFeが繋ぎ止める作用を発揮している可能性が考えられる。
また、Fe含量の調整により誘電特性のばらつきを抑制できる理由としては、限定されるものではないが、以下のように考えられる。ガラス糸は基本的に非晶質な部分から構成されるが、Feが存在する部分は比較的結晶性が高い部分と考えることができる。このように、非晶質の中に局所的に結晶性が高い部分が存在するガラス糸から、その非晶質な部分を構成する組成の一部が揮発すると、結晶性の高い部分の存在の仕方によって誘電特性のばらつきを生じさせることが考えられる。特に、Fe含量が過多である場合、このようにして生じる誘電特性のばらつきがより顕在化するものと考えらえるが、本実施形態においては、Fe含量を調整することにより、誘電特性のばらつきを抑制することができる。特に、誘電率及び誘電正接が低いほど、Fe含量の調整による誘電特性のばらつき抑制効果が大きい傾向にある。
また、F含量の調整により強度低下がより抑制される理由としては、限定されるものではないが、以下のように考えられる。Fはガラス製造過程の溶融ガラスの粘性を小さくする。そのため、F含量が所定の範囲であることにより、Fe等の金属成分がガラス構造に取り込まれる際に、局在化することなく均一に分散し、均一なガラスを形成することができる。Feが均一に分散していることにより、上記のガラス成分の揮発によってガラス糸が疎になる部分をFeが繋ぎ止める作用が、より効果的に発現される可能性が考えられる。また、Fe等が局在化することにより、ガラス中に硬い部分が偏在すると、その部分を起点にして破断が生じやすくなるものと考えられるが、F含量を調整することでこのような局在化を緩和し、より強度低下を抑制することができるものと考えられる。
さらに、F含量の調整により誘電特性のばらつきがより抑制される理由としては、限定されるものではないが、以下のように考えられる。Fは上記の通りガラス製造過程の溶融ガラスの粘性を小さくするため、Fe含量の調整に加えてF含量が所定の範囲であることにより、Feが存在す比較的結晶性が高い部分の局所的な発生の抑止作用が大きく、より均一なガラスを形成しるため、誘電特性のばらつきを抑制することができる。
上記構成を有することにより、本実施形態においては、低誘電ガラスクロスが有していた破断の問題を解決し、高い破断耐性と低くばらつきの少ない誘電特性を有するガラスクロスを提供することができる。以下、本実施形態の構成についてより詳細に説明する。
(重量減少係数)
ガラスクロスを、380℃、2時間の加熱処理をした場合におけるガラス成分由来の重量減少割合とガラスフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数(以下、単に「重量減少係数」ともいう。)は、0.45超過0.90以下であり、好ましくは0.47以上0.85以下であり、より好ましくは0.48以上0.80以下である。
「ガラス成分由来の重量減少割合」とは、380℃、2時間の加熱処理をした場合における重量減少割合が、加熱処理中にガラス成分の揮発等により消失することに起因するものであることを意味する。後述するように本実施形態の重量減少割合は、ガラスクロスにシランカップリング剤などの表面処理剤が付着している場合や有機系不純物が多く付着している場合には、予めアルコール類やアセトン等の良溶媒で物理吸着しているシランカップリング剤などの表面処理剤や有機系不純物付着成分を除去してから算出する。したがって、そのような380℃で加熱分解する付着成分を除去した後のガラスクロスの加熱処理後の重量減少割合はガラス成分由来の減少割合となる。
また、この重量減少割合は、ガラス糸のフィラメント径に依存することが確認された。ガラスフィラメント径によって、重量減少割合は異なり、フィラメント径が小さいほど重量減少量が大きくなる。一方で、重量減少割合とフィラメント半径の積は、フィラメント径によらずほぼ一定値になる。そのため、本実施形態では重量減少係数としてフィラメント径で規格化している。
重量減少係数が0.45超過であることにより、そのままでは強度低下を引き起こしやすい。しかしながら、後述するFe含量を調整することにより、本実施形態にあっては、強度低下を抑制することができ、また、ガラスクロスを構成する組成の関係からより低い誘電率を有するガラスクロスを得ることもできる。また、重量減少係数が0.90以下であることにより、Feによる強度低下抑制効果が有効に作用し、著しい強度低下を抑制することができる。
重量減少割合の測定方法は、以下の手順で行うことができる。まず、ガラスクロスを105℃±5℃の乾燥機の中に入れて60分間乾燥し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷する。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量る(ガラスクロス重量a)。ついで、ガラスクロスを380℃で2時間加熱し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷する。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量る(加熱処理後のガラスクロス重量b)。そして、加熱処理により減少した重量を求め、下記式(2)より、重量減少割合(%)を算出する。
重量減少割合(%)= (a-b)/a×100 ・・・(2)
上記のようにして得られる重量減少割合は、好ましくは0.05~0.7%であり、より好ましくは0.1~0.5%であり、さらに好ましくは0.12~0.4%である。重量減少割合が0.05%以上であることにより、そのままでは強度低下を引き起こしやすい。しかしながら、後述するFe含量を調整し、さらに好ましい様態としてはF含量も調整することにより、本実施形態にあっては、強度低下を抑制することができ、また、ガラスクロスを構成する組成の関係からより低い誘電率を有するガラスクロスを得ることもできる。また、重量減少割合が0.7%以下であることにより、Feによる強度低下抑制効果が有効に作用し、著しい強度低下を抑制することができる。
次いで、JIS R3420に準拠してガラスクロスを構成するガラス糸のガラスフィラメントの平均直径を測定し、該フィラメント径の半分量として平均フィラメント径を求める。本実施形態において、単にガラスフィラメントというときは、ガラスモノフィラメントを意味する。また、重量減少係数の算出に用いるガラスフィラメントの平均半径は、加熱処理前の平均半径である。このようにして求められるガラスフィラメントの平均半径は、好ましくは1.25~4.5μmであり、より好ましくは1.5~3.75μmであり、さらに好ましくは1.75~2.7μmである。
なお、上述した重量減少割合の測定方法に用いるガラスクロスには、適宜前処理をすることができる。例えば、脱糊処理(ヒートクリーニング)後の中間ロールから引き出したガラスクロスには、付着物がガラスフィラメントに付着していないため、そのまま上述した重量減少割合の測定方法に用いることができる。
一方で、ガラスクロスにシランカップリング剤等の表面処理剤が塗布してあるガラスクロスを対象として重量減少割合を求める際は、予めアルコール類、アセトン等の良溶剤で、物理吸着しているシランカップリング剤等の表面処理剤を洗浄除去したのちに、上記方法で重量減少係数を求めることができる。
なお、「物理吸着しているシランカップリング剤」とは、ガラスフィラメントに付着しているシランカップリング剤であって、化学結合によりガラスフィラメントに結合しているシランカップリング剤ではないものをいう。これに対して、化学結合によりガラスフィラメントに結合しているシランカップリング剤は、「化学吸着しているシランカップリング剤」という。
また、ガラスクロスに、有機系不純物(ガラス糸製造過程で塗布する澱粉系サイジング剤、前期サイジング剤のヒートクリーニング工程における燃焼残さ等)が含まれる場合も、同様に、予めアルコール類、アセトン等の洗浄除去操作により、ガラスクロスに付着している有機系不純物を除去したのち、上記方法で重量減少係数を求めることができる。
上記洗浄は、物理吸着しているシランカップリング剤や有機系不純物を除去するものであり、化学吸着しているシランカップリング剤を除去するものではない。しかしながら、380℃で2時間加熱したとしても、化学吸着しているシランカップリング剤は分解しないか、仮に一部が分解したとしても誤差範囲を超えるものではないため、本実施形態の重量減少割合の測定においては、化学吸着しているシランカップリング剤を前処理で除去する必要はない。
なお、前処理をするかどうかの判断を単純化する観点から、一律に、予めアルコール類、アセトン等の良溶剤によって洗浄したガラスクロスを重量減少割合の測定に用いるようにしてもよい。これにより、脱糊処理(ヒートクリーニング)後の中間ロールから引き出したガラスクロスであっても、物理吸着しているシランカップリング剤や有機系不純物が付着しているガラスクロスであっても、同じ状態で重量減少割合の測定を行うことができる。
また、別の方法として、上記の重量減係数を求める際に、加熱前後の表面処理剤量や有機系不純物を定量し、表面処理剤起因の重量減少分を得られた重量減少から差し引くことで、ガラス成分由来の重量減少係数を求めることもできる。表面処理剤起因の重量減少分を求める方法としては、特許6472082号公報などに記載のシランカップリング剤の定量方法など、公知の方法を用いてもよい。
重量減少係数は、ガラスクロスの組成のうち、例えば、比較的に揮発しやすい成分、例えばB含量などの増減により調整することができ、同様の観点からその他の成分の増減によっても調整することができる。
また、重量減少係数は、ガラスクロスにおけるガラスの空間充填率の調整(織密度や厚さ)、開繊加工等によるガラス糸束を構成するモノフィラメントの解し具合の調整、用いるガラス糸のモノフィラメント径の調整、等により、ガラス表面が高温雰囲気に晒される機会の増減によっても調整することができる。
即ち、重量減少係数は、ガラスクロスの組成のみによって決定されるものではない。
(組成)
以下、本実施形態のガラスクロスの組成について説明する。なお、ガラスクロスの組成とは、ガラスクロスを構成するガラス糸の組成と同義である。本実施形態のガラスクロスの組成において、Fe含量は、Fe23換算で、0.001質量%以上0.05質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上0.04質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上0.03質量%以下である。Fe含量が0.001質量%以上であることにより、ガラスクロスの熱処理による強度低下を抑制することができる。また、Fe含量が0.05質量%以下であることにより、重量減少係数0.45超過と強度低下を引き起こしやすいガラスクロスにおいても、必要な強度が保たれる。また、Fe含量が0.05質量%以下であることにより、誘電率の面内ばらつき及びロット間ばらつきを抑制することができる。Fe含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのSi含量は、SiO2換算で、好ましくは40~60質量%であり、より好ましくは45~55質量%であり、さらに好ましくは47~53質量%であり、48~52質量%である。Siはガラス糸の骨格構造を形成する成分であり、Si含量が40質量%以上であることにより、熱処理による強度低下の抑制のほか、熱処理前のガラス糸そのものの強度がより向上し、ガラスクロスの製造工程及びガラスクロスを用いたプリプレグの製造などの後工程において、ガラスクロスの破断がより抑制される傾向にある。また、Si含量が40質量%以上であることにより、ガラスクロスの誘電率がより低下する傾向にある。一方で、Si含量が60質量%以下であることにより、ガラスフィラメントの製造過程において、溶融時の粘度がより低下し、より均質なガラス組成のガラス繊維が得られる傾向にある。このため、得られるガラスフィラメントに部分的に浸透しやすい部位や、部分的に気泡が抜けにくい部位が発生し難くなることから、ガラスフィラメントに局所的に強度の弱い部位が生じにくくなり、結果としてこれを用いて得られるガラス糸から構成されるガラスクロスは破断しにくいものとなる。Si含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのB含量は、B23換算で、好ましくは15~30質量%であり、より好ましくは17~28質量%であり、さらに好ましくは20~27質量%であり、よりさらに好ましくは21~25質量%であり、さらにより好ましくは21~24質量%である。B含量が15質量%以上であることにより、誘電率がより低下する傾向にある。また、B含量が30質量%以下であることにより、強度低下を抑制できる上、耐吸湿性が向上し、絶縁信頼性がより向上する傾向にある。B含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。なお、ガラスフィラメント作製中に変動しうる場合には、それを予め見越して、仕込量を調整することができる。
ガラスクロスのF含量は、好ましくは0.001~0.1質量%であり、より好ましくは0.001~0.05質量%であり、さらに好ましくは0.001~0.01質量%である。ここで、F含量は、F2換算で得られる値である。F含量が0.001質量%以上であることにより、ガラスクロスの熱処理による強度低下がより抑制されるほか、誘電率がより低下する傾向にある。また、Fはガラス製造過程の溶融ガラスの粘性を小さくする。そのため、F含量が所定の範囲であることにより、Fe等の金属成分がガラス構造に取り込まれる際に、局在化することなく均一に分散し、均一なガラスを形成することができる。Feの効果が十分に発揮される傾向にある。F含量が0.1質量%以下であることにより、F含量が多すぎることによりかえって熱処理前のガラス糸そのものの強度が低下することを抑制することができる。また、Fe含量とF含量をともに上記所定の範囲とすることにより、熱処理による強度低下の抑制効果がより向上する傾向にある。F含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
なお、F含量過多により強度低下は、特に制限されないが、以下のように考えられる。F含量が多くなるほど、ガラス組成の分相性が強くなり、かえってガラス成分を均一にし難くなるものと考えられる。
また、ガラスクロスは、上記他、その他の組成を有していてもよい。その他の組成としては、特に限定されないが、例えば、Al、Ca、Mg、P、Na、K、Ti、Znなどが挙げられる。
ガラスクロスのAl含量は、Al23換算で、好ましくは10~20質量%であり、より好ましくは12~18質量%であり、さらに好ましくは14~17質量%である。Al含量が上記範囲内であることにより、電気特性、強度がより向上する傾向にある。Al含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのCa含量は、好ましくは1.0~6.0質量%であり、好ましくは2.0~5.0質量%であり、より好ましくは2.5~4.0質量%である。Ca含量が1.0質量%以上であることにより、ガラスフィラメントの製造過程において、溶融時の粘度がより低下し、より均質なガラス組成のガラス繊維が得られる傾向にある。また、Ca含量が6.0質量%以下であることにより、誘電率がより向上する傾向にある。Ca含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのMg含量は、MgO換算で、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.001~1.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.005~0.5質量%以下であり、さらにより好ましくは0.005~0.3質量%以下である。Mg含量が5.0質量%以下であることにより、ガラスフィラメント製造時の相分離が抑制され、ガラス組成が均一になり、誘電特性のばらつきが低減される傾向にあるため好ましい。
また、ガラスフィラメント製造時の相分離が抑制されることにより、得られるガラスフィラメントの耐吸湿性がより向上する。これにより、得られるプリント配線板は、高湿度環境の使用環境の影響を受けにくく、誘電率の環境依存性を低減することができる。Mg含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
ガラスクロスのP含量は、P25換算で、好ましくは1.0~7.0質量%であり、より好ましくは2.0~6.5質量%であり、さらに好ましくは3.0~6.0質量%であり、よりさらに好ましくは3.0~5.5質量%である。P含量が1.0質量%以上であることにより、誘電率がより低下する傾向にある。また、P含量が7.0質量%以下であることにより、ガラスクロス製造時の開繊工程や表面処理工程等において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、ガラスフィラメント製造時の相分離が抑制され、得られるガラスフィラメントの耐吸湿性がより向上する。これにより、得られるプリント配線板は、高湿度環境の使用環境の影響を受けにくく、誘電率の環境依存性を低減することができる。P含量は、ガラスフィラメント作製に用いる原料使用量に応じて調整することができる。
なお、上記各含量は、ICP発光分光分析法により測定することができる。具体的には、Si含量及びB含量は、秤取したガラスクロスサンプルを水酸化ナトリウムで加圧分解したのち、希硝酸で溶解してろ別する。そして、不溶解分は炭酸ナトリウムで融解して、ろ液と合わせて定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。
Fe含量、Al含量、Ca含量、Ma含量、P含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、過塩素酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素により加熱分解した後、希王水で加熱溶解してろ別する。ろ液は定容とする。そして、不溶解分は硫酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素で加熱分解して定溶し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得ることができる。なお、ICP発光分光分析装置としては、日立ハイテクサイエンス社製のPS3520VDD IIを用いることができる。
また、F含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、管状電気炉で燃焼したのち、発生ガスを吸収液に吸収させる。この溶液について、イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン(F-)を測定し、試料中の含有量を求めることができる。なお、燃焼装置は三菱ケミカルアナリテック製の自動試料燃焼装置(AQF-2100S)、測定装置はThermo Fisher Scientific 製のイオンクロマトグラフ ICS-1500、を用いることができる。
ガラスクロスの弾性係数は、好ましくは50~70GPaであり、より好ましくは50~63GPaであり、さらに好ましくは53~63GPaである。ガラスクロスの弾性係数が低いほど破断が生じやすくなる。したがって弾性係数が50GPa以上であることにより、開繊工程や表面処理工程等のガラスクロスの製造工程において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、プリプレグの製造などの後工程においても、ガラスクロスへの樹脂の含浸量を制御する目的でガラスクロスをスリットに通過させる際に、破断が生じにくくなる傾向にある。ガラスクロスの弾性率が70GPa以下であることにより、ガラスクロスの風合いが柔らかくなり、ガラスクロスがスクイズロールやニップロール等の狭い間隔を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、ガラスクロスの弾性係数が70GPa以下であることにより、相対的に誘電率がより低下する傾向にある。弾性係数は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、弾性係数は、ガラス糸の組成により調整することができる。
本実施形態のガラスクロスの誘電率は、1GHzの周波数において、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.7以下であり、さらに好ましくは4.5以下であり、特に好ましくは4.0以下である。誘電率が低いガラスクロスほど、Fe含量による影響が大きく、本発明が特に有用となる。なお、本実施形態において、誘電率という時は特に断りがない限り、1GHzの周波数におけるものをいう。
(構成)
ガラス糸は複数本のガラスフィラメントを束ね、必要に応じて撚って得られるものであり、ガラスクロスは上記ガラス糸を経糸及び緯糸として製織して得られるものである。ガラス糸はマルチフィラメント、ガラスフィラメントはモノフィラメントにそれぞれ分類される。
経糸及び緯糸を構成するガラスフィラメントの平均直径は、各々独立して、好ましくは2.5~9μmであり、より好ましくは3.0~7.5μmであり、さらに好ましくは3.5~5.4μmである。ガラスフィラメントの平均直径が上記範囲内であることにより、得られる基板を、メカニカルドリルや炭酸ガスレーザ、UV-YAGレーザにより加工する際、加工性がより向上する傾向にある。そのため薄くて高密度実装のプリント配線板を実現することができる。特に、平均直径が5.4μm以下になると、単位体積当りの表面積が増えることにより熱処理による強度低下が生じやすいため、本実施形態の強度低下の抑制効果がより重要となる。また、平均直径が2.5μm以上であることにより、表面積が小さくなり、ガラス成分の揮発が抑制されるほか、開繊工程や表面処理工程等のガラスクロスの製造工程において、ガラスクロスが濡れた状態でスクイズロールやニップロール等を通過する際に、破断が生じ難くなる傾向にある。また、プリプレグの製造などの後工程においても、ガラスクロスへの樹脂の含浸量を制御する目的でガラスクロスをスリットに通過させる際に、破断が生じにくくなる傾向にある。
ガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の打ち込み密度は、好ましくは30~120本/25mmであり、より好ましくは40~110本/25mmであり、さらに好ましくは50~100本/25mmである。
ガラスクロスの厚さは、好ましくは8~100μmであり、より好ましくは10~50μmであり、さらに好ましくは12~35μmであり、特に好ましくは12~20μmである。ガラスクロスの厚さが上記範囲内であることにより、薄くて比較的に強度の高いガラスクロスが得られる傾向にある。特に、厚さが8μm以上であることにより、ガラスクロスの表面近くを占めるガラスフィラメントの割合が減少するため、ガラス成分の揮発量が低減する傾向にある。また、厚さが100μm以下であることにより、ガラスクロスの表面近くを占めるガラスフィラメントの割合が増加するため、ガラス成分の揮発量の増大による強度低下が生じやすく、本発明の強度低下の抑制効果がより重要となる。なお、重量減少係数はガラスクロスを構成するフィラメントの径に依存するため、厚さには依存し難い。当該傾向は少なくとも上記厚さ範囲においては保たれる。
ガラスクロスの布重量(目付け)は、好ましくは8~250g/m2であり、より好ましくは8~100g/m2であり、さらに好ましくは8~50g/m2であり、特に好ましくは8~35g/m2である。
ガラスクロスの織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り、等の織り構造が挙げられる。このなかでも、平織り構造がより好ましい。
(表面処理)
ガラスクロスは表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。表面処理剤としては、特に制限されないが、例えば、シランカップリング剤が挙げられ、必要に応じて水、有機溶剤、酸、染料、顔料、界面活性剤等を合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、式(1)で示される化合物が挙げられる。
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
(式(1)中、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも1つ以上有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。)
Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも3つ以上を有する有機官能基であることが好ましく、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも4つ以上を有する有機官能基であることがより好ましい。
上記のアルコキシ基としては、いずれの形態も使用できるが、ガラスクロスへの安定処理化の観点から、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましい。
シランカップリング剤としては、具体的には、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリ同エトキシシラン及びその塩酸塩、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の公知の単体、又はこれらの混合物が挙げられる。
シランカップリング剤の分子量は、好ましくは100~600であり、より好ましくは150~500であり、さらに好ましくは200~450である。この中でも、分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いることが好ましい。分子量が異なる2種類以上のシランカップリング剤を用いてガラス糸の表面を処理することにより、ガラスクロスの表面における表面処理剤密度が高くなり、マトリックス樹脂との反応性がさらに向上する傾向にある。
〔ガラスクロスの製造方法〕
本実施形態のガラスクロスの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ガラス糸を製織してガラスクロスを得る製織工程と、ガラスクロスのガラス糸を開繊する開繊工程とを有する方法が挙げられる。また、必要に応じて、ガラスクロスのガラス糸に付着したサイズ剤を除く脱糊工程、シランカップリング剤による表面処理工程を有していてもよい。
製織方法は、所定の織構造となるように緯糸と経糸を折るものであれば特に制限されない。また、開繊方法としては、特に制限されないが、例えば、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水、マングル等で開繊加工する方法が挙げられる。さらに、脱糊方法としては、特に制限されないが、例えば、サイズ剤を加熱除去する方法が挙げられる。また、表面処理方法としては、シランカップリング剤を含む表面処理剤をガラスクロスと接触させ、乾燥等する方法が挙げられる。なお、ガラスクロスへの表面処理剤の接触は、表面処理剤中にガラスクロスを浸漬させる方法や、ロールコーター、ダイコーター、又はグラビアコーター等を用いてガラスクロスに表面処理剤を塗布する方法等が挙げられる。表面処理剤の乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、熱風乾燥や、電磁波を用いる乾燥方法が挙げられる。
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、上記ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂組成物とを有する。上記ガラスクロスを有するプリプレグは、強度低下を引き起こしにくく、最終製品の歩留まりの高いものとなる。また、誘電特性に優れ、耐吸湿性に優れるために使用環境の影響、特に高湿度環境で誘電率の変動が小さい、プリント配線板を提供することができるという効果も奏することができる。
本実施形態のプリプレグは、常法に従って製造することができる。例えば、本実施形態のガラスクロスに、エポキシ樹脂のようなマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥炉にて有機溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂をBステージ状態(半硬化状態)にまで硬化させることにより製造することができる。
マトリックス樹脂組成物としては、上述のエポキシ樹脂の他に、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂、官能基化ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、全芳香族ポリエステルの液晶ポリマー(LCP)、ポリブタジエン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;及び、それらの混合樹脂等が挙げられる。誘電特性、耐熱性、耐溶剤性、及びプレス成形性を向上させる観点から、マトリックス樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂で変性した樹脂を用いてもよい。
また、マトリックス樹脂組成物は、樹脂中にシリカ及び水酸化アルミニウム等の無機充填剤;臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤;その他シランカップリング剤;熱安定剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;顔料;着色剤;滑沢剤等を含んでいてもよい。
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、上記ガラスクロスを備える。本実施形態のプリント配線板は、強度低下を引き起こしにくく、最終製品の歩留まりの高いものとなる。また、誘電特性に優れ、耐吸湿性に優れるために使用環境の影響、特に高湿度環境で誘電率の変動が小さいという効果も奏することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔ガラスクロスの物性〕
ガラスクロスの物性、具体的には、ガラスクロスの厚さ、経糸及び緯糸を構成するフィラメントの径、フィラメント数、経糸及び緯糸の打ち込み密度(織密度)は、JIS R3420に準拠して測定した。
〔重量減少係数〕
重量減少係数は、以下の手順で測定した。
まず、中間ロールから引き出したガラスクロスを105℃±5℃の乾燥機の中に入れて60分間乾燥し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷した。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量った(ガラスクロスの重量a)。ついで、ガラスクロスを380℃で2時間加熱し、その後、ガラスクロスをデシケータに移し、室温まで放冷した。放冷後、ガラスクロスの重量を0.1mg以下の単位で量った(加熱処理後のガラスクロス重量b)。そして、加熱処理により減少した重量を求め、下記式(2)より、重量減少割合(%)を算出した。
重量減少割合(%)= (a-b)/a×100 ・・・(2)
次いで、JIS R3420のB法に準拠してモノフィラメントの直径を測定し、その1/2の値をモノフィラメントの半径とした。なお、JIS R3420のB法には、無作為に25個のフィラメント断面の直径を測定するとあるが、ガラス糸(マルチフィラメント)を構成する全モノフィラメントの直径を測定し、その平均値としてフィラメント直径を求めた。
重量減少割合(%)と、ガラスフィラメントの平均半径(μm)をもちいて、下記式(1)より、重量減少係数を算出した。
重量減少係数=重量減少割合(%)×ガラスフィラメントの平均半径(μm) ・・・(1)
〔弾性係数〕
弾性係数は、ガラスバルクを試験片に用い、パルスエコーオーバーラップ法により測定した。
〔強度低下確認試験〕
実施例および比較例で得られたガラスクロスを用い、以下の条件でプリプレグの作製を行い、強度が十分であるか評価した。ガラスクロスを連続で引き出して搬送しながら、ワニスにガラスクロスを浸漬し、スリットを通過させてワニスの塗布量を調整した。次いで、120℃の乾燥炉に通して乾燥させ、プリプレグを得た。また、ワニスには、メタクリル化ポリフェニレンエーテル65質量部、トリアリルイソシアヌレート35質量部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー10質量部、臭素系難燃剤25質量部、球形シリカ65質量部、有機過酸化物1質量部、トルエン210質量部を含むものを用いた。
各実施例及び比較例で得られたガラスクロスについて、それぞれ2000mの製品ロール10本ずつに対して、上記の方法によりプリプレグの作製を実施した。この作製結果に基づいて、以下の評価基準で強度低下の確認を行った。
A:ガラスクロスが破断することなく、10本のガラスクロスのロールを用いてプリプレグの作製をすることできた場合。生産性・取扱い性に優れるガラスクロスであると判断した。
B:プリプレグの作製過程において、1本のガラスクロスのロールで破断が生じたが、残りの9本のロールは破断することなくプリプレグの作製をすることできた場合。実用的な強度を有するガラスクロスであると判断した。
C:プリプレグの作製過程において、2~3本のガラスクロスのロールで破断が生じたが、残りのロールは破断することなくプリプレグの作製をすることできた場合。強度改善の必要があるガラスクロスであると判断した。
D:プリプレグの作製過程において、4本以上のガラスクロスロールで破断が生じた。
〔誘電正接のばらつき評価〕
実施例および比較例で得られたガラスクロスを用いて作成したプリプレグの中から、任意に電気特性測定用の試験片を100個作製し、誘電正接の測定を行った。その測定結果に基づいて、下記評価基準により誘電正接のばらつきを評価した。
A:0.0028以上の誘電正接を示す試験片はなかった。
B:0.0028以上の誘電正接を示す試験片が1つあった。
C:0.0028以上の誘電正接を示す試験片が2~3あった。
D:0.0028以上の誘電正接を示す試験片が4つ以上あった。
プリプレグの作成は、強度低下方法と同様の方法で行った。電気特性測定用の試験片は、次の方法で作成した。プリプレグを積層板の厚さが約1mmとなるように所定枚数重ね、更にその重ね合わせたプリプレグの両面に銅箔(古川電気工業株式会社製、厚み18μm、GTS-MP箔)を重ね合わせた状態で、真空プレスを行うことにより、銅張積層板を得た。次に、上記銅張積層板から、エッチングにより銅箔を除去することにより積層板を得た。
得られた積層板から、ガラスクロスの経糸が長辺となるように、長さ約50mm、幅約1.5mmの試験片を切り出し、電気特性試験用の試験片とした。
誘電正接の測定は、次の方法で実施した。電気特性測定用の試験片を105℃±2℃のオーブンに入れ2時間乾燥させた後、23±2℃、相対湿度50±5%の恒温室に96時間静置後、10GHzの誘電率を測定した。測定装置には、ネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用い、測定自体は23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で行った。
〔ガラスクロスの組成〕
ガラスクロスの組成は、ICP発光分光分析法により測定した。具体的には、Si含量及びB含量は、秤取したガラスクロスサンプルを水酸化ナトリウムで加圧分解したのち、希硝酸で溶解してろ別した。不溶解分は炭酸ナトリウムで融解して、ろ液と合わせて定容し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得た。
また、Fe含量、Al含量、Ca含量、Ma含量、P含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、過塩素酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素により加熱分解した後、希王水で加熱溶解してろ別した。ろ液は定容とした。不溶解分は硫酸、硝酸、塩酸およびフッ化水素で加熱分解して定溶し、得られたサンプルをICP発光分光分析法により測定して得た。なお、ICP発光分光分析装置としては、日立ハイテクサイエンス社製のPS3520VDD IIを用いた。
さらに、F含量は、秤取したガラスクロスサンプルを、管状電気炉で燃焼したのち、発生ガスを吸収液に吸収させた。この溶液について、イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン(F-)を測定し、試料中の含有量を求めた。なお、燃焼装置は三菱ケミカルアナリテック製の自動試料燃焼装置(AQF-2100S)、測定装置はThermo Fisher Scientific 製のイオンクロマトグラフ ICS-1500、を用いた。
〔実施例1〕
エアージェットルームにより、フィラメント平均直径4.0μm、フィラメント数50本からなる低誘電ガラス糸を製織し、経糸及び緯糸の打ち込み密度がそれぞれ94本/25mm、厚さが14μmであるガラスクロスを得た。次いで、加熱により脱糊処理を行い幅1280mm、長さ2000mのガラスクロス中間ロールを得た。続いて、高圧水スプレーにより開繊工程、及び、シランカップリング剤を用いた表面処理を行い、ガラスクロスのロールを作製した。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔実施例2~5〕
ガラス糸の組成が異なる以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔実施例6〕
実施例2と同様の組成を有するガラス糸を用い、かつ、開繊工程における時間を短縮し、スプレー圧を弱くすることにより、開繊の程度を下げたこと以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1の通りであった。
〔比較例1~6〕
ガラス糸の組成が異なる以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表2の通りであった。
〔比較例7〕
実施例2と同様の組成を有するガラス糸を用い、かつ、開繊工程における時間を長くし、スプレー圧を強くすることにより、開繊の程度を上げたこと以外は、実施例2と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表2の通りであった。
〔実施例7〕
エアージェットルームにより、フィラメント平均直径5.0μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸を製織し、経糸及び緯糸の打ち込み密度がそれぞれ69本/25mm、厚さが30μmであるガラスクロスを作製したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1のとおりであった。
〔実施例8〕
経糸及び緯糸の打ち込み密度をそれぞれ55本/25mmとした以外は、実施例7と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1のとおりであった。
〔比較例8〕
開繊工程における時間を長くし、スプレー圧を強くすることにより、開繊の程度を上げたこと以外は、実施例8と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表2のとおりであった。
〔実施例9〕
エアージェットルームにより、フィラメント平均直径7.0μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸を製織し、経糸及び緯糸の打ち込み密度がそれぞれ60本/25mm、厚さが92μmであるガラスクロスを作製したこと以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表1のとおりであった。
〔参考例1〕
Eガラス組成のガラス糸を用いる以外は、実施例1と同様にしてガラスクロスのロールを得た。得られたガラスクロスの組成は表2のとおりであった。
Figure 2022021669000001
Figure 2022021669000002
実施例1~3、6~9のガラスクロスは、10ロールとも、ガラスクロスが破断することなく、安定して製造することができた(評価A)。また、実施例4、5のガラスクロスは、1ロールだけガラスクロスの破断が生じたが、残りの9本ロールは安定して製造することができた(評価B)。また、参考例1のガラスクロスは、破断や誘電正接のばらつきこそ生じないものの電気特性に劣るものであり、破断や誘電正接のばらつきは低誘電ガラスクロスに特に生じやすい課題であることが分かる。
一方で、比較例1、2、5~8のガラスクロスは、2ロールないしは3ロールに破断が生じてしまった(評価C)。安定して低誘電ガラスを用いたプリント配線板を供給するには不十分であり、改善が必要である。さらに、比較例3~4のガラスクロスは、塗工開始から連続で4ロールに破断が生じてしまったので、塗工試験を中止せざるを得なかった(評価D)。
実施例1、2、4~9のガラスクロスを用いて評価したプリント配線板の誘電正接は、何れも0.0028未満であり、信頼性の非常に高いガラスクロスであった(評価A)。実施例3のガラスクロスは、誘電正接が0.0028以上を示すものが1点のみであり、比較的信頼性のあるガラスクロスであった(評価B)。一方で、比較例3、4のガラスクロスは、誘電正接が0.0028以上を示すものが4点以上あり、信頼性に劣るガラスクロスであった(評価D)。
なお、実施例及び比較例はいずれも誘電率が3.0程度であり低誘電ガラスクロスであったが、参考例1については、誘電率が5.1程度であり、低誘電ガラスクロスといえるものではなかった。
本発明は、プリプレグ等に用いる低誘電ガラスクロスとして、産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. 複数本のガラスフィラメントからなるガラス糸を経糸及び緯糸として構成されたガラスクロスであって、
    下記式(1)において、380℃、2時間の加熱処理におけるガラス成分由来の重量減少割合と、前記ガラスフィラメントの平均半径との積として求められる重量減少係数が、0.45超過0.90以下であり、
    重量減少係数=前記重量減少割合(%)×前記ガラスフィラメントの平均半径(μm)・・・(1)
    前記ガラスクロスのFe含量が、Fe23換算で、0.001質量%以上0.05質量%以下である、
    ガラスクロス。
  2. 前記ガラスクロスの、
    F含量が、0.001~0.1質量%である、
    請求項1に記載のガラスクロス。
  3. 前記ガラスクロスの、
    Si含量が、SiO2換算で、40~60質量%であり、
    B含量が、B23換算で、15~30質量%である、
    請求項1又は2に記載のガラスクロス。
  4. 前記ガラスクロスの弾性係数が、50~70GPaである、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスクロス。
  5. 前記ガラスクロスの弾性係数が、50~63GPaである、
    請求項4に記載のガラスクロス。
  6. 前記経糸及び前記緯糸を構成する前記ガラスフィラメントの平均直径が、各々独立して、3.5~5.4μmである、
    請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスクロス。
  7. 1GHzの周波数において5.0以下の誘電率を有する、
    請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスクロス。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスクロスと、
    該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂と、を有する、
    プリプレグ。
  9. 請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスクロスを備える、
    プリント配線板。
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