JP2022020274A - 屋根の補修構造、屋根の補修方法及びシート止着部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】損傷部位を中心とした所要の範囲をシート部材でカバーすることができるとともに、ロープを用いることなく、上記シート部材を所要の強度で固定することができ、さらに、シート部材を被着した後に、損傷部位や程度を容易に確認することができる。【解決手段】少なくとも損傷部位3の周囲の屋根材表面に所定間隔で設けられる止着部材4と、上記損傷部位を覆うように被着されるとともに、少なくとも縁部が上記止着部材に止着されるシート部材5とを備え、上記止着部材は、上記屋根材表面に止着されるベース部材6と、上記ベース部材に連結されるとともに、上記シート部材を保持できる保持部材7とを備えて構成される。【選択図】 図1
Description
本願発明は、屋根の補修構造等に関する。詳しくは、台風等で一部に損傷を受けた屋根を応急的に補修するための、屋根の補修構造、屋根の補修方法及びシート止着部材に関する。
台風や地震によって、屋根の一部に損傷が生じる場合がある。上記損傷を放置すると、雨漏りの原因になるばかりでなく、浸入した雨水によって家屋全体に損傷が広がる恐れがある。このため、できるだけ速やかに雨漏りを止めるための補修を行う必要がある。ところが、台風等の場合、同じ地域で被害を受けた家屋が多くなり、人手や資材不足により修理を行うまでにかなりの期間がかかる場合が多い。
従来、応急的な措置として、損傷を受けた屋根にブルーシート等の防水シートを被せ、ロープ等で固定する手法が採られている。
上記ブルーシートを用いて応急的な補修を行う場合、損傷部位のみにブルーシートを被着するのは困難である。このため、屋根の広い範囲にブルーシートを被着するとともに、ロープによって、上記ブルーシートを固定しなければならない。上記ブルーシートの取付作業は熟練を要するばかりでなく、足場が設けられない場合が多いため、非常に危険な作業である。
また、上記ロープを、屋根に直接連結することができない。このため、上記ロープは、外壁や軒先等に連結することになるが、ロープの張力のみによってブルーシートを保持するため、ロープの張力が緩むとブルーシートが外れやすい。また、ブルーシートと屋根表面との間から風が吹き込み易く、ブルーシートの内側が膨らんで、上記ロープから上記ブルーシートが外れてしまうことも多い。さらに、上記ロープから外壁や軒先に大きな力が作用することが多く、これら部位に損傷を与える恐れもある。
さらに、上記ブルーシートは不透明であり、損傷部位を含む広い範囲に被着されるため、ブルーシートを被着した後に、損傷部位を特定したり、損傷の程度を確認することができない。また、損傷部位を確認できないため、上記ブルーシート上でロープの掛け回し作業等を行うと、誤って損傷部位を踏みつけてしまい、損傷部位を傷めたり、作業者に危害が及ぶことも多い。
本願発明は、上記課題を解消するために案出されたものであって、損傷部位を中心とした所要の範囲をシートでカバーすることができるとともに、ロープを用いることなく、上記シートを所要の強度で固定することができ、さらに、シートを被着した後に、損傷部位や程度を容易に確認することができる、屋根の補修構造等に関する。
本願発明は、一部に損傷を受けた屋根の補修構造であって、少なくとも損傷部位の周囲の屋根材表面に所定間隔で設けられる止着部材と、上記損傷部位を覆うように被着されるとともに、少なくとも縁部が上記止着部材に止着されるシート部材とを備え、上記止着部材は、上記屋根材表面に止着されるベース部材と、上記ベース部材に連結されるとともに、上記シート部材を保持できる保持部材とを備えて構成される。
本願発明は、従来のブルーシートを用いた補修構造とは異なり、シート部材を、止着部材を用いて屋根材表面に対して直接止着する。上記止着部材は、上記屋根材表面に止着されるベース部材と、上記ベース部材に連結されるとともに、上記シート部材を保持できる保持部材とを備えて構成される。
上記止着部材を構成する材料は特に限定されることはない。所要の機械的強度を備えるとともに、用いられる接着剤や釘等に対する所要の機械的強度を有する材料によって形成される。なお、屋根は紫外線に晒されるため、樹脂材料を用いる場合は、劣化しにくい材料で形成するのが好ましい。たとえば、ポリカーボネート樹脂等の樹脂のみならず、金属製の止着部材を採用することもできる。
上記ベース部材は、接着剤や釘等を用いて屋根材表面等に止着される。接着剤を用いる場合、その種類は特に限定されることはないが、上記ベース部材と上記屋根材等に応じて、所要の接着力を確保できる接着剤を用いるのが好ましい。たとえば、シリコン系接着剤、エポキシ系接着剤等を用いることができる。また、ねじや釘を用いて上記ベース部材を屋根材表面等に設けることもできる。たとえば、損傷部位近傍においては、瓦等の屋根表面材の強度や、表面材の屋根下地に対する連結強度が低下している場合がある。このような場合、上記ベース部材を釘やねじを用いて屋根材を構成する垂木や野地板等の屋根下地に止着することもできる。従来のブルーシートを用いた補修方法では、ブルーシートを屋根に被着した後にロープを掛け回す必要があり、作業中に風が吹くと、シートが捲れ上がったり、ずり落ちることが多かった。本願発明では、上記ベース部材を上記シート部材の被着前に屋根材等に取り付け、シート部材の縁部を上記保持部材を用いて順次止着していくことができる。このため、折り畳んだ状態から上記止着作業を順次行うこともできる。このため、風がある場合にもシート部材が風によって捲れ上がりにくい。また、上記ベース部材の取付作業と上記シート部材の被着作業とを別途行うことができるため、作業の効率が高まるばかりでなく、作業の安全性も格段に高まる。
上記ベース部材は、少なくとも損傷部位の周囲の屋根材表面に所定間隔で設けられる。上記シート部材は、少なくとも縁部が上記止着部材に止着される。上記ベース部材を設ける間隔は、シート部材や屋根材の強度、補修後に作用する風圧等を勘案して設定することができる。例えば、厚み0.05mmのビニル樹脂製シートの場合、上記ベース部材(止着部材)を、少なくとも50cm以下の間隔で設けることができる。大きな風圧が作用する部位には、30cm以下の間隔で設けるのが好ましい。
本願発明に係るシート部材を構成する材料は特に限定されることはない。上記止着部材に止着できるとともに、風等によって破損しない強度を備えていれば、種々の材料から形成されたシートを採用できる。例えば、塩化ビニル製のシートや、防水性のある不織布製シート、布製シート、及びこれらシートと樹脂の複合シート等を採用することもできる。
上記シート部材は、少なくとも損傷部位の周囲の屋根材表面に所定間隔で設けられた止着部材に止着される。上記シート部材は、損傷部位の形態に応じた不定型の形状に形成することもできるし、損傷部位を覆うことができる矩形状のものを採用することもできる。そして、少なくともこれら形態のシート部材の縁部が、上記止着部材を介して上記屋根材表面に止着される。
損傷部位の領域より大きな面積を有するシート部材を採用する場合、すなわち、シート部材の縁部が、上記損傷部位から離れている場合は、上記シート部材の縁部のみならず、シート部材の内側にも止着部材を設けるのが好ましい。たとえば、矩形状のシートを用いる場合、上記止着部材を、上記シート部材の縁部に沿う部位と、上記損傷部位の縁部に沿う部位に所定間隔で設けることができる。この構成によって、シート部材の取付強度を格段に高めることができる。また、シート部材の縁部から、シート部材の内側に風が入り込んだ場合にも、上記シート部材の内側が膨らんだり、捲れ上がるのを阻止することが可能となる。
従来のブルーシートには、着色が施されているため、ブルーシートを装着した後に、損傷部位を外部から観察することができない。したがって、損傷の程度や補修の手法等を判断するのが困難である。損傷を確認するには、一旦ブルーシートを外して損傷の程度を確認等した後、補修を行うまでの期間に再度ブルーシートを設ける場合が多かった。上記シート部材として透明シートを採用することにより、損傷部位を外部から容易に観察し、損傷の程度や補修の手法を容易に検討することができる。上記シート部材の透明度は、特に限定されることはなく、少なくとも損傷部位を確認できる程度の透明性があればよい。たとえば、樹脂シートと不織布シートを積層したものであっても、被着した屋根の損傷部位を確認できる程度のものであればよい。
上記シート部材を、屋根の斜面の途中に設けると、上記シート部材の上縁部から、シート部材の内側へ雨水が浸入する恐れがある。上記不都合を回避するため、上記シート部材を、屋根の棟又は/及び隅棟を含むように被着するのが好ましい。屋根の棟及び隅棟は、雨水が分岐する部位であり、これら部分を含むようにシート部材を設置することにより、上記シート部材の上方の縁部から、損傷部位に雨水が浸入するのを防止できる。
また、軒先等の屋根の縁部近傍に損傷を受けた場合、上記止着部材を屋根材に設けることができない場合がある。このような場合、上記止着部材を、軒先、軒天又は外壁から選択された1以上の部位に設け、これら部位にシート部材の一部の縁部を止着するように構成できる。また、これら部位にシート部材を被着する場合、本願に係る止着部材以外の部材を採用することもできる。
上記保持部材に上記シート部材を保持させる機構は特に限定されることはない。上記保持部材単独で上記シート部材を保持できるように構成することもできる。たとえば、上記保持部材に、シートの一部を挟み込むことができるクリップ等の止着構造を設けることができる。また、上記ベース部材と共働して上記シート部材を保持できるように構成することもできる。たとえば、上記ベース部材と上記保持部材に上記シート部材を挟圧できる挟圧面を設け、この挟圧面に上記シート部材の滑り等を阻止する凹凸を設けることができる。
上記ベース部材と上記保持部材とを連結する手法は特に限定されることはない。たとえば、シート部材を挟んだ状態で互いに嵌合する嵌合構造や、ねじを用いて連結するように構成できる。ねじによって連結するように構成する場合、上記ベース部材は、上記屋根材表面に貼着される基部と、上記基部から立ち上がるとともに、上記ねじを螺合できるねじ穴を設けた連結部と、上記連結部の上部に設けられて、上記保持部材との間で上記シート部材を挟圧保持できる保持部とを備えて構成できる。上記保持部材は、上記ねじを通挿できるねじ通挿穴を備えて構成できる。そして、上記保持部材に通挿されるとともに、上記ねじ穴にねじ込まれるねじによって、上記保持部材と上記ベース部材とが、上記シートを挟圧しつつ連結されるように構成できる。
上記ねじを、上記保持部材に対して相対回転可能に係着するのが好ましい。すなわち、上記保持部材に、あらかじめ上記ねじを付属させておく。補修作業は、屋根の斜面で行われるとともに、応急処置の場合は足場等が設けられない場合が多い。このため、上記ねじの締付作業等を両手で行うのは危険である。上記ねじを保持部材に対して相対回転可能に係着しておくことにより、着磁されたドライバのビットに、上記ねじを介して止着部材を吸着させて、片手で作業を行うことが可能となり、作業をより安全に行うことができる。
上記ねじの種類は特に限定されることはない。上記ベース部材にあらかじめ雌ねじを設けて、雄ねじを螺合させるように構成できる。また、上記ねじ穴として雌ねじが設けられていない所定の直径の穴を設けておき、上記ねじとしてタッピングねじ等を強制的にねじ込むこともできる。上記タッピングねじは、インパクトドライバ等を用いて締めつけることが多いが、ドライバのトルクが大きいと、上記ねじ穴や上記連結部に損傷を与える恐れがある。上記問題を回避するため、上記連結部の中央に設けたねじ穴に、上記ねじ穴の軸を含む平面に沿って設けられるとともに、上記連結部の外周に到る複数のスリットを設けるのが好ましい。上記構成を採用すると、ねじ穴の拡径が許容されるため、上記ねじ穴に損傷が発生しにくくなり、また、ベース部材の破損を防止できる。
風が強い場合、上記屋根材表面と上記シート部材の隙間から、雨風が損傷部位に吹き込みやすい。また、上記隙間に強風が作用すると、上記シート部材の内側が風圧によって膨らみ、シート部材が破損する恐れがある。上記不都合を回避するため、所定間隔で設けられた上記止着部材間に掛け渡し状に設けられるとともに、上記止着部材間における上記シート部材を上記屋根材表面に沿わせて保持する掛け渡し保持部材を設けることができる。
上記止着部材間のシート部材を屋根材表面に押し付けることができれば、上記掛け渡し保持部材の構成は特に限定されることはない。たとえば、金属あるいは樹脂で形成された棒状部材を、上記シート部材を止着するのと同時に、上記止着部材間に掛け渡し状に設けることができる。
上記掛け渡し保持部材を設ける形態も特に限定されることはない。たとえば、上記掛け渡し保持部材を、上記シート部材の縁部に沿って設けた止着部材間に設けることができる。これにより、縁部が開口するのを防止し、風が吹き込むのを防止できる。また、上記掛け渡し保持部材を、上記損傷部位の周囲に設けた止着部材間に設けることができる。さらに、上記掛け渡し保持部材を、損傷部位を横断するように設けることができる。これらの部位に掛け渡し保持部材を設けることにより、シート部材の保持強度が高まり、風がシート部材の内側に吹き込んだ場合にも、シート部材の内側が膨らむのを防止し、シート部材や屋根材の損傷を未然に防止できる。さらに、上記掛け渡し保持部材を設けた部位に、シール材を充填して、シート部材と屋根材表面との間の隙間を完全に封止することもできる。
上記ベース部材の屋根材への取付面に、凹凸を設けるのが好ましい。これにより、接着剤を用いる場合の接着強度、及び釘等を用いた場合の取付強度を高めることができる。
本願発明に係る補修方法においては、少なくとも上記損傷部位を囲む屋根材表面に上記ベース部材を所定間隔で貼着するベース部材止着工程と、上記シート部材を上記損傷部位を覆うように被着するシート部材被着工程と、上記シート部材を、上記ベース部材に連結される保持部材によって屋根表面に止着するシート部材止着工程が行われる。
上記ベース部材止着工程として、上記損傷部位の縁部に沿って上記ベース部材を止着する第1のベース部材止着工程と、上記シート部材の縁部に沿う位置に上記ベース部材を止着する第2のベース部材止着工程を含ませることができる。また、上記シート部材止着工程として、上記損傷部位の縁部に沿って設けられた上記ベース部材に、上記保持部材を連結することにより上記シート部材の内側部を屋根材に止着する第1のシート部材止着工程と、上記シート部材の縁部に沿う位置に設けた上記ベース部材に、上記保持部材を連結することにより上記シート部材の縁部を屋根材に止着する第2のシート部材止着工程を含ませることができる。
本願発明に係る屋根の補修構造は、従来のブルーシートを用いた補修構造に比べて、損傷部位近傍の狭い範囲で補修を行うことが可能となり、安全性が高まるとともに、費用を削減できる。また、ロープをブルーシートに掛け回す必要がなく、熟練を要するこもない。さらに、補修作業中や補修後に、風の影響を受けることも少ない。しかも、透明な樹脂シートを用いることにより、シート部材を設置した後でも、損傷部位や損傷程度を容易に確認できるため、補修作業を迅速に行うことができるとともに、作業の安全性も高まる。
以下、本願発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本願発明は、スレート瓦で葺かれた屋根に本願発明に係る補修構造を適用したものである。
スレート瓦を用いた屋根1は、屋根骨組を構成する垂木の上に野地板を設け、その上に防水シートを張り付けた後、板状のスレート瓦を配置して構成される。スレート瓦は略矩形板状に形成されており、上方の瓦の下縁部が下方の瓦の上縁部を覆うように配置されて雨水が、上記野地板部分に浸入しないように組み付けられている。
台風等によって強風が作用すると、上記スレート瓦の一部が剥がれて飛ばされることが多い。また、異物が上記スレート瓦に衝突すると、瓦に割れが生じて欠損したり、野地板に損傷を与える場合もある。上記損傷を放置すると、屋根裏や室内への雨漏りを生じさせ、また、浸入した雨水がこれら屋根材や内装材を傷める。このため、瓦に損傷を受けた場合、早急に雨漏りを防ぐための補修を行う必要がある。
図1及び図2に、本願発明の一実施形態に係る補修構造の外観を示す。本実施形態に係る補修構造は、屋根の損傷部位3に、止着部材4を用いて、防水性のあるシート部材5を設けて構成される。
図1に示すように、屋根材(屋根瓦)2の一部が欠損して損傷部位3が生じており、上記損傷部位3を覆うように、シート部材5が設けられている。上記止着部材4は、上記損傷部位3の周囲の縁部と、上記シート部材5の縁部に沿って設けられている。
図2~図7に示すように、上記止着部材4は、上記屋根瓦2等の屋根材の表面に止着されるベース部材6と、このベース部材6に連結されて、上記シート部材5を保持する保持部材7と、上記ベース部材6と保持部材7とを連結するねじ8とを備えて構成されている。
上記ベース部材6は、屋根材2の表面に止着される矩形板状の基部6aと、上記基部6aから立ち上がるとともに、上記ねじ8を螺合できるねじ穴6cを設けた円柱状の連結部6bと、上記連結部6bの上部に設けられて、上記保持部材7との間で上記シート部材5を挟圧保持できる保持部6dとを備える。本実施形態に係る上記保持部6dは、上記保持部材7に対向する面に凹凸6fを設けて構成されており、上記保持部材7の下面との間で上記シート部材5を挟持できるように構成されている。
上記連結部6bは、中央部に上記ねじ8が螺合されるねじ穴6cを設けた円柱状に形成されている。本実施形態では、上記ねじ8としてタッピングねじを用いるため、上記ねじ穴6cには、雌ねじは設けられておらず、インパクトドライバ等を用いて上記ねじ8が上記ねじ穴6cに強制的に螺合させられる。このため、上記ねじ8を締め込むことにより上記連結部6bが大きく変形させられると、割れ等が生じる恐れがある。
上記不都合を回避するため、上記連結部6bに、上記ねじ穴6cの軸を含む平面に沿って設けられるとともに、上記連結部6bの外周に到るスリット6dを4箇所に設けている。上記スリット6dを設けることにより、上記ねじ8を強制的にねじ込んだ際に、上記連結部6bの半径方向外方への変形を許容し、上記連結部6bに割れ等が生じるのを防止している。
本実施形態では、上記止着部材4を、接着剤を用いて瓦等の屋根材表面に止着する。図9に示すように、上記基部6aの裏面6gには、接着剤を用いて瓦等に接着する場合の接着力を高めるため、格子状の凹凸模様が形成されている。
損傷部位近傍の屋根材は、割れやき裂が発生していることが多く、また、瓦等の野地板等に対する取付強度も低下している。このため、接着剤を用いて瓦等にベース部材6を止着しても充分な強度を確保できない場合がある。また、瓦等の表面材が欠損して、野地板が露出している場合も多い。上記基部6aの角部近傍には、ねじや釘を用いて屋根材に固定するための固定穴6eが設けられている。このような場合、上記固定穴6eに通挿されるねじや釘を用いて、止着部材4を、野地板や垂木等に連結することができる。
上記保持部材7は、矩形板状の板部7aの中央部にねじ通挿穴7bを設けて構成されている。本実施形態に係る上記ねじ8は、タッピングねじが採用されているとともに、首下部が上記保持部材7のねじ通挿穴7bに相対回転可能に係着できるように構成されている。これにより、上記ねじ8と保持部材7とを一体的に取り扱うことが可能となる。上記保持部材7の上記保持部6dに対向する面に、種々の凹凸を設けることにより、上記保持部材7と上記ベース部材6によって、上記シート部材5を、確実に挟圧して保持することができる。たとえば、上記保持部6dと同様の凹凸を設けることにより、上記シート部材5を確実に挟圧保持できる。
図10~図14に、上述した各部材を用いて、屋根の損傷を補修する手順を説明する。図10に示すように、本実施形態では、瓦(屋根材)2の一部が欠損した損傷部位3を補修する。
まず、図1及び図11に示すように、上記損傷部位3の縁に沿う部位と、矩形状のシート部材5の縁部に対応する部位に、上記ベース部材6を所定間隔で貼着するベース部材止着工程を行う。上記ベース部材止着工程は、ベース部材6を接着剤を用いて屋根材表面に接着することにより行われる。なお、屋根斜面の途中に上記損傷部位3がある場合、屋根の棟25を含む領域に、上記シート部材5を被着できるように、上記ベース部材6を設置するのが好ましい。これにより、損傷部位3の上方からの雨水が、上記損傷部位3に浸入するのを防止できる。また、上記ベース部材6を止着する前に、上記接着箇所の表面の汚れ等を、やすり等で除去するのが好ましい。
次に、図12に示すように、上記損傷部位3を覆うように、屋根にシート部材5を被着する。本実施形態では、シート部材5を、上記ベース部材6を設けた全域に広げた状態で作業を行う必要はない。たとえば、矩形状のシート部材5を採用する場合、一方の方向に折り畳んだシート部材の一方の縁部を、上記ベース部材6に合わせて位置決めした後、図13に示すように、上記保持部材7を上記ベース部材6に順次連結して、まずシート部材5の一方の縁部を固定し、その後、シート部材5を折り畳み方向と逆方向に順次広げながら、上記保持部材7を、上記ベース部材6に連結することができる。このため、風等がある場合に、作業中に上記シート部材5が捲れ上がるのを防止できる。また、シート部材5が風に煽れることがないため、作業の安全性も高まる。また、図13に示すように、上記保持部材7には、ねじ8が相対回転可能に係着されているため、インパクトドライバ15のビットに上記ねじ8を介して上記保持部材7を吸着させた状態で、締付作業を行うことができる。このため、作業性が高まるばかりでなく、作業の安全性も向上する。
図15及び図16に、本願発明の第2の実施形態を示す。この実施形態は、屋根の軒先近傍に損傷が生じた場合の補修構造を示す。
軒先16等の屋根18の下縁部近傍に損傷部位11が生じた場合、上記損傷部位11下方の瓦の固定強度が低下し、また欠損していることも多い。このため、上記止着部材4を屋根材の表面に設けることができない場合がある。シート部材5の周囲を固定しないと、雨風が吹き込み、また、シート部材5の一部の止着部位に大きな力が作用して、破損する恐れもある。
上記のような場合、シート部材5を軒先から延出させるとともに、軒裏16や、外壁17に固定することができる。
また、シート部材5を棟を含む領域に被着できない場合もある。このような場合、上記シート部材5の上縁部に沿って、シール材をシート部材と屋根材との間に充填して、雨水の浸入を阻止するように構成するのが好ましい。
図17及び図18に、本願発明の第3の実施形態を示す。風の強い地域等で本願発明の補修構造を設ける場合や損傷部位が大きい場合、風が屋根材表面とシート部材5の間から入り込み、シート部材が膨れ上がる場合がある。一部の隙間から風が入り込む場合であっても、風圧は、上記シート部材の面積に比例して作用するため、上記シート部材5の止着部位に大きな力が作用する恐れがある。このため、上記シート部材5と屋根表面との間の隙間をできるだけ小さくするのが好ましい。
本実施形態では、所定間隔で設けられた止着部材4間に掛け渡し状に設けられるとともに、上記止着部材間における上記シート部材5を上記屋根材表面に沿わせて保持する掛け渡し保持部材20を設けている。
図18に示すように、上記掛け渡し保持部材20は、平行に対向する側壁部20a,20aと、この側壁部20a,20aを繋ぐ天壁部20bとを備える断面コ字状に形成されている。また、長手方向両端部には、上記天壁部20bから上記側壁部20a,20aを切除して形成される長板状の連結部20dが延出形成されている。上記連結部20dを、シート部材5を被着された上記ベース部材6の連結部に上方から積層し、上記保持部材7との間で、シート部材とともに挟圧するようにして設けられる。本実施形態では、一の止着部材4の両側に上記掛け渡し保持部材20が設けられているとともに、上記掛け渡し保持部材20の連結部20d,20dには、長穴22がそれぞれ設けられており、これら長穴が一致するようにして上記左右掛け渡し保持部材20の連結部20d,20dの端部を重ね合わせるようにしてシート部材5に重ねるように設置し、上記連結部20d,20dの上方から、上記保持部材7を積層して挟圧し、上記シート部材5と上記掛け渡し保持部材20,20を連結する。
上記掛け渡し保持部材20,20は、樹脂板あるいは金属薄板で形成されており、上記コ字形態を備えるため、変形しにくい。このため、シート部材の縁部に沿って設けることにより、シート部材5と屋根表面との間の隙間が拡がるのを防止することができ、シート部材の脹らみや、捲れ上がりを防止することができる。
なお、本実施形態では、上記掛け渡し保持部材20は、上記シート部材5の縁部に沿って設けた隣接する止着部材4の間に設けたが、上記損傷部位の縁部に沿って設けた止着部材間に設けることもできる。また、損傷部位を横断するように設けることもできる。
さらに、上記掛け渡し保持部材20の形態も本実施形態に限定されることはなく、種々の断面形態のものを採用できる。
本願発明は上述の実施形態に限定されることはない。上記止着部材、上記掛け渡し保持部材、シート部材の材料及び形態は実施形態に限定されることはない。また、屋根の形態及び瓦の材料及び形態も限定されることはない。実施形態は、本願発明を平板状のスレート瓦で葺いた屋根に適用したが、屋根材の形態は限定されることはなく、また、種々の材料で形成された屋根材に適用できる。たとえば、粘土瓦、波形スレート瓦、焼き瓦、プレスセメント瓦、金属屋根、乾式コンクリート瓦等種々の材料で形成された屋根に適用できる。
ロープを用いることなく、屋根の補修を行うことができるとともに、補修後に、損傷部位や程度を容易に確認することができる、屋根の補修構造を提供できる。
1 屋根
3 損傷部位
2 屋根材
4 止着部材
5 シート部材
6 ベース部材
7 保持部材
3 損傷部位
2 屋根材
4 止着部材
5 シート部材
6 ベース部材
7 保持部材
Claims (18)
- 一部に損傷を受けた屋根の補修構造であって、
少なくとも損傷部位の周囲の屋根材表面に所定間隔で設けられる止着部材と、
上記損傷部位を覆うように被着されるとともに、少なくとも縁部が上記止着部材に止着されるシート部材とを備え、
上記止着部材は、上記屋根材表面に止着されるベース部材と、上記ベース部材に連結されるとともに、上記シート部材を保持できる保持部材とを備える、屋根の補修構造。 - 上記シート部材が透明である、請求項1に記載の屋根の補修構造。
- 上記止着部材は、上記シート部材の縁部に沿う部位と、上記損傷部位を囲む部位に、所定間隔で設けられる、請求項1又は請求項2に記載の屋根の補修構造。
- 上記シート部材は、屋根の棟又は/及び隅棟を含むように被着される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の屋根の補修構造。
- 上記止着部材が、軒先、軒天又は外壁から選択された1以上の部位に設けられるとともに、上記シート部材が、これら部位を覆うように被着される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の屋根の補修構造。
- 上記ベース部材と上記保持部材とは、ねじによって連結されており、
上記ベース部材は、
上記屋根材表面に止着される基部と、
上記基部から立ち上がるとともに、上記ねじを螺合できるねじ穴を設けた連結部と、
上記連結部の上部に設けられて、保持部材との間で上記シート部材を挟圧保持できる保持部とを備え、
上記保持部材は、
上記ねじを通挿できるねじ通挿穴と、上記保持部に対向する挟圧部とを備え、
上記ねじ通挿穴に通挿されるとともに上記ねじ穴にねじ込まれる上記ねじによって、上記保持部材と上記ベース部材とが、上記シートを挟圧しつつ連結される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の屋根の補修構造。 - 上記ねじは、上記保持部材のねじ通挿穴に相対回転可能に係着されている、請求項6に記載の屋根の補修構造。
- 上記ねじがタッピングねじであり、
上記連結部は、
中央部において上下方向に設けた上記ねじ穴と、
上記ねじ穴の軸を含む平面に沿って設けられるとともに、上記連結部の外周に到る複数のスリットとを備える、請求項6又は請求項7に記載の屋根の補修構造。 - 上記止着部材間に掛け渡し状に設けられるとともに、上記止着部材間における上記シート部材を上記屋根材表面に沿わせて保持する掛け渡し保持部材を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の屋根の補修構造。
- 上記掛け渡し保持部材が、上記シート部材の縁部に沿って設けた止着部材間に設けられている、請求項9に記載の屋根の補修構造。
- 上記掛け渡し保持部材が、上記損傷部位の縁部に沿って設けた止着部材間に設けられている、請求項9又は請求項10に記載の屋根の補修構造。
- 上記掛け渡し保持部材が、損傷部位を横断するように設けられる、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の屋根の補修構造。
- 上記ベース部材の止着面に、凹凸が設けられている、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の屋根の補修構造。
- 損傷部位の周囲の屋根材表面に所定間隔で設けられる止着部材と、
上記損傷部位を覆うように被着されるとともに、少なくとも縁部が上記止着部材に止着されるシート部材とを用いて行われる屋根の補修方法であって、
上記止着部材は、上記屋根材表面に設けられるベース部材と、上記ベース部材に連結されるとともに、上記シート部材を保持できる保持部材とを備えて構成されており、
少なくとも上記損傷部位を囲む屋根材表面に上記ベース部材を所定間隔で貼着するベース部材止着工程と、
上記シート部材を上記損傷部位を覆うように被着するシート部材被着工程と、
上記シート部材を、上記ベース部材に連結される保持部材によって屋根表面に止着するシート部材止着工程とを含む、屋根の補修方法。 - 上記ベース部材止着工程は、
上記損傷部位の縁部に沿って上記ベース部材を止着する第1のベース部材止着工程と、上記シート部材の縁部に沿う位置に上記ベース部材を止着する第2のベース部材止着工程を含むとともに、
上記シート部材止着工程は、
上記損傷部位の縁部に沿って設けられた上記ベース部材に、上記保持部材を連結することにより上記シート部材の内側部を屋根材に止着する第1のシート部材止着工程と、
上記シート部材の縁部に沿う位置に設けた上記ベース部材に、上記保持部材を連結することにより上記シート部材の縁部を屋根材に止着する第2のシート部材止着工程を含む、請求項14に記載の屋根の補修方法。 - 上記保持部材には、上記ねじが相対回転可能且つ脱落不可能に保持されているとともに、
着磁されたドライバ先端に上記ねじを介して上記保持部材を保持しつつ、上記シート部材止着工程が行われる、請求項14又は請求項15に記載の屋根の補修方法。 - 一部に損傷を受けた屋根に補修用シートを設けるためのシート止着部材であって
上記止着部材は、屋根材表面に止着されるベース部材と、上記ベース部材に連結されるとともに、上記シート部材を保持できる保持部材とを備え、
上記ベース部材は、
上記屋根材表面に止着される基部と、
上記基部から立ち上がるとともに、ねじ穴を設けた連結部と、
上記連結部の上部に設けられて、上記保持部材が連結される連結保持部とを備え、
上記保持部材は、
上記ねじを通挿できるねじ通挿穴と、上記シート部材を保持できるシート保持部とを備えて構成されており、
上記ねじが、上記ねじ通挿穴に相対回転可能且つ脱落不可能に係着されている、シート止着部材。 - 屋根材表面に所定間隔で設けられる止着部材と、上記止着部材を介して屋根表面に止着されるシート部材とを用いて行われる屋根の応急補修工法であって、
上記止着部材は、屋根材表面に止着されるベース部材とこのベース部材に連結されてシート部材を保持する保持部材とを備え、
上記ベース部材を少なくとも損傷部位の周囲の屋根材に止着し、
上記損傷部位を覆うようにシート部材を被着するとともに、
上記ベース部材に連結される上記保持部材を用いて上記シート部材を屋根材表面に止着する、屋根の応急修理工法。
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JP2020123675A JP2022020274A (ja) | 2020-07-20 | 2020-07-20 | 屋根の補修構造、屋根の補修方法及びシート止着部材 |
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