JP2022020162A - 塩化ニッケル水溶液の精製方法 - Google Patents

塩化ニッケル水溶液の精製方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022020162000001
【課題】鉄を除去できるとともに、ニッケルロスを低減できる塩化ニッケル水溶液の精製方法を提供する。
【解決手段】鉄を含む塩化ニッケル水溶液に酸化剤および中和剤を添加して、酸化中和反応により脱鉄澱物を生成する。最前段反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHを1.6~2.05に調整するとともに、酸化剤の添加量を最前段反応槽に供給される鉄量に基づき定められた全酸化剤添加量の70~90%とする。後続反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHを1.8~2.3の範囲であり、かつ、最前段反応槽におけるpHよりも0.1以上高い値に調整する。
【選択図】図3

Description

本発明は、塩化ニッケル水溶液の精製方法に関する。さらに詳しくは、塩化ニッケル水溶液に含まれる鉄を酸化中和法により除去する方法に関する。
ニッケルは、合金材料、めっき材料、二次電池材料など、日常生活や産業を支える重要な素材として広く用いられている。
鉱物資源や二次資源からニッケルを分離、濃縮するニッケル製錬法として、乾式製錬法と湿式製錬法とが知られている。乾式製錬法はニッケル鉱石やニッケル精鉱を溶鉱炉や電気炉などの乾式炉で溶解処理する方法である。湿式製錬法はニッケル鉱石やニッケル精鉱に含まれるニッケルを水溶液中に浸出し、不純物を除去してニッケルを回収する方法である。
ニッケルの湿式製錬法として、酸浸出法、アルカリ浸出法、塩素浸出法など、種々の方法が知られている。これらのうち塩素浸出法のプロセスとして、ニッケルマットおよびニッケル・コバルト混合硫化物を塩素ガスの酸化作用を利用して浸出し、得られた塩化ニッケル水溶液を用いて電解採取することにより電気ニッケルを得るプロセスが実用化されている(例えば、特許文献1)。
上記の湿式製錬プロセスには、塩化ニッケル水溶液から不純物である鉄を除去する脱鉄工程が含まれる。脱鉄工程では、塩化ニッケル水溶液に含まれる鉄を酸化中和法により除去する。
脱鉄工程では鉄の水酸化物沈澱が生成されると同時に、微量ながらニッケルも沈澱する。脱鉄工程で生じた脱鉄澱物は、その主成分が鉄であるから、乾式炉で処理してスラグやクリンカーといった安定した形態で払い出される。そのため、脱鉄澱物にニッケルが含まれていると、その分だけニッケルロスとなる。
特開2012-026027号公報
本発明は上記事情に鑑み、鉄を除去できるとともに、ニッケルロスを低減できる塩化ニッケル水溶液の精製方法を提供することを目的とする。
第1発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、鉄を含む塩化ニッケル水溶液に酸化剤および中和剤を添加して、酸化中和反応により脱鉄澱物を生成するにあたり、最前段反応槽と、該最前段反応槽の下流に接続された一または複数の後続反応槽とを用いて酸化中和反応を行ない、前記最前段反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHを1.6~2.05に調整するとともに、前記酸化剤の添加量を前記最前段反応槽に供給される鉄量に基づき定められた全酸化剤添加量の70~90%とし、前記後続反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHを1.8~2.3の範囲であり、かつ、前記最前段反応槽におけるpHよりも0.1以上高い値に調整することを特徴とする。
第2発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、第1発明において、前記最前段反応槽では、塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)を400~550mVとし、前記後続反応槽では、塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)を400~1,100mVとすることを特徴とする。
第3発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、第1または第2発明において、前記酸化剤は塩素ガスであることを特徴とする。
第4発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、第1、第2または第3発明において、前記中和剤は炭酸ニッケルスラリーであることを特徴とする。
本発明によれば、最前段反応槽における酸化剤の添加割合を高くすることで、pHが比較的低い条件下で塩化ニッケル水溶液に含まれる鉄の多くを沈澱させることができる。そのため、pHが局所的に高くなることに起因する不溶性ニッケルの生成を抑制でき、ニッケルロスを低減できる。
湿式製錬プロセスの全体工程図である。 脱鉄工程の詳細工程図である。 図(A)はNi-HO系の電位pH図である。図(B)はFe-Ni-HO系の電位pH図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係る塩化ニッケル水溶液の精製方法は、ニッケルの湿式製錬プロセスの脱鉄工程に好適に適用される。なお、本実施形態の精製方法は、少なくとも鉄を含む塩化ニッケル水溶液に酸化剤および中和剤を添加して、酸化中和反応により脱鉄澱物を生成する工程であれば、いかなるプロセスの工程にも適用し得る。以下、ニッケルの湿式製錬プロセスの脱鉄工程を例に説明する。
(湿式製錬プロセス)
まず、図1に基づき、ニッケルの湿式製錬プロセスを説明する。
湿式製錬プロセスでは、原料であるニッケル硫化物として、ニッケルマットとニッケル・コバルト混合硫化物(MS:ミックスドサルファイド)との2種類が用いられる。
ニッケルマットは乾式製錬により得られる。具体的には、ニッケルマットは硫鉄ニッケル鉱を熔錬することで得られる。
ニッケル・コバルト混合硫化物は湿式製錬により得られる。具体的には、低品位ラテライト鉱などのニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)し、浸出液から鉄などの不純物を除去した後、硫化水素ガスを浸出液に吹き込んで硫化反応によりニッケル・コバルト混合硫化物を得る。
まず、ニッケル・コバルト混合硫化物の一部と後述のセメンテーション残渣とからなるスラリーを塩素浸出工程に供給する。塩素浸出工程では、浸出槽に吹き込まれる塩素ガスの酸化力によって、スラリー中の固形物に含まれる金属が実質的に全て液中に浸出される。塩素浸出工程から排出されたスラリーは浸出液と浸出残渣とに固液分離される。
ニッケルマットは、粉砕工程において粉砕した後、レパルプしてマットスラリーとし、セメンテーション工程に供給する。また、セメンテーション工程には、ニッケル・コバルト混合硫化物の残部も供給される。セメンテーション工程には塩素浸出工程で得られた浸出液が供給されている。浸出液には回収目的金属であるニッケルやコバルトのほか、不純物として銅、鉄、鉛、マンガンなどが含まれている。
浸出液には2価の銅クロロ錯イオンが含まれている。ニッケルマットの主成分は二硫化三ニッケル(Ni)と金属ニッケル(Ni)である。ニッケル・コバルト混合硫化物の主成分は硫化ニッケル(NiS)である。セメンテーション工程では、浸出液とニッケルマット、およびニッケル・コバルト混合硫化物とを接触させて、銅とニッケルとの置換反応を行なう。これにより、ニッケルマット、およびニッケル・コバルト混合硫化物中のニッケルが液に置換浸出され、浸出液中の銅イオンが硫化銅(CuS)または金属銅(Cu)の形態で析出する。固液分離により得られたセメンテーション残渣は塩素浸出工程に供給される。
セメンテーション工程から得られたセメンテーション終液からは、脱鉄工程において不純物である鉄が除去される。脱鉄工程の詳細は後に説明する。
脱鉄工程から得られた液を抽出始液として溶媒抽出工程に供給する。溶媒抽出工程では、抽出始液に含まれるコバルトを溶媒抽出により分離し、塩化ニッケル水溶液と塩化コバルト水溶液とを得る。
塩化ニッケル水溶液は浄液工程を経てさらに不純物除去されて高純度塩化ニッケル水溶液となる。高純度塩化ニッケル水溶液は電解給液としてニッケル電解工程に供給される。ニッケル電解工程では電解採取により電気ニッケルが製造される。
塩化コバルト水溶液は浄液工程を経てさらに不純物除去されて高純度塩化コバルト水溶液となる。高純度塩化コバルト水溶液は電解給液としてコバルト電解工程に供給される。コバルト電解工程では電解採取により電気コバルトが製造される。
(脱鉄工程)
つぎに、図2に基づき、脱鉄工程を説明する。
脱鉄工程は酸化中和工程と、固液分離工程とで構成される。
酸化中和工程に供給される塩化ニッケル水溶液(反応始液)は、前述のセメンテーション終液であり、回収目的金属であるニッケル、コバルトのほか、不純物として鉄が含まれている。反応始液の組成は、例えば、ニッケル濃度が150~190g/L、コバルト濃度が5~10g/L、鉄濃度が1~5g/Lである。
酸化中和工程では、塩化ニッケル水溶液に酸化剤を作用させて酸化還元電位を調整しつつ、中和剤を添加してpHを調整する。ここで、酸化剤として、例えば塩素ガスが用いられる。また、中和剤として、例えば炭酸ニッケルスラリーが用いられる。酸化中和反応により塩化ニッケル水溶液に含まれる鉄を水酸化鉄の沈澱物として析出させ、澱物スラリーを得る。以下、澱物スラリーに含まれる固形分を脱鉄澱物と称する。
酸化中和工程から得られた澱物スラリーには、約10g/Lの固相分が含まれている。澱物スラリーは固液分離工程で脱鉄後液と、脱鉄澱物とに固液分離される。固液分離装置は特に限定されないが、例えばフィルタープレスである。
脱鉄後液は抽出始液として溶媒抽出工程に供給される(図1参照)。脱鉄澱物は、乾式製錬炉やロータリーキルンなどの乾式処理設備で処理され、スラグやクリンカーとして排出される。
このように、脱鉄澱物は系外に排出されるため、脱鉄澱物にニッケルが含まれていると、その分だけニッケルロスとなる。そのため、脱鉄澱物に含まれるニッケルの量を極力抑えることが求められる。
脱鉄澱物中の鉄の化合物形態は厳密には明らかではないが、酸化水酸化鉄(III)(FeO(OH))であると仮定すると、水酸化鉄の沈澱物の生成反応は化学式(1)で表される。ここで、酸化剤を塩素ガス(Cl)、中和剤を塩基性炭酸ニッケル(Ni(CO)(OH)・4HO)としている。
2FeCl+Cl+Ni(CO)(OH)・4HO→2FeO(OH)+3NiCl+CO+5HO ・・・(1)
上記の主反応に付随して、塩化ニッケル水溶液中のNi2+も酸化中和され、ニッケル水酸化物またはニッケル・鉄複合酸化物として不溶性ニッケルが生成すると考えられる。生成した不溶性ニッケルは脱鉄澱物として系外に排出されるため、ニッケルロスの原因となる。
図3(A)にNi-HO系の電位pH図を示す。図3(B)にFe-Ni-HO系の電位pH図を示す。塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位をNi2+の安定領域にすれば、不溶性ニッケルの生成を抑制できる。すなわち、不溶性ニッケルの生成を抑制するには、塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位を低くすることが好ましい。しかし、塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位が低いと、水酸化鉄の生成も抑制されてしまう。
そこで、酸化中和処理を複数段に分け、塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位を徐々に高くすることが好ましい。例えば、前段では、塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位を低くし、不溶性ニッケルの生成を抑制しつつ、水酸化鉄を生成する。後段では、塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位を高くし、前段で除去しきれなかった鉄を除去する。
本実施形態では、複数の反応槽を用いて酸化中和反応を行なう。複数の反応槽のうち、最も上流に配置され、反応始液が供給される反応槽を最前段反応槽と称する。最前段反応槽の下流に接続された反応槽を後続反応槽と称する。後続反応槽は一つでもよいし複数でもよい。複数の反応槽のうち、最も下流に配置され、澱物スラリーが排出される反応槽を最後段反応槽と称する。すなわち、後続反応槽が一つの場合は、その後続反応槽は最後段反応槽でもある。また、後続反応槽が複数の場合は、それらのうち最も下流に配置された反応槽が最後段反応槽である。もっとも単純な構成は、一つの最前段反応槽と、一つの後続反応槽(最後段反応槽)とが直列に接続された2槽構成である。最前段反応槽と、2つの後続反応槽とが直列に接続された3槽構成でもよい。
最前段反応槽では塩化ニッケル水溶液のpHを1.6~2.05に調整する。最前段反応槽における塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準、以下同じ。)は400~550mVが好ましい。また、後続反応槽では塩化ニッケル水溶液のpHを1.8~2.3の範囲であり、かつ、最前段反応槽におけるpHよりも0.1以上高い値に調整する。後続反応槽における塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位は400~1,100mVが好ましい。
塩化ニッケル水溶液のpHおよび酸化還元電位は、上流から下流に向かって、徐々に高くなるよう設定することが好ましい。例えば、後続反応槽が1槽の場合には、後続反応槽(最後段反応槽)における塩化ニッケル水溶液のpHを2.0~2.3、酸化還元電位を1,000~1,100mVとすればよい。後続反応槽が2槽の場合には、上流側の後続反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを1.8~2.0、酸化還元電位を400~600mVとし、下流側の後続反応槽(最後段反応槽)における塩化ニッケル水溶液のpHを2.0~2.3、酸化還元電位を1,000~1,100mVとすればよい。最後段反応槽では、塩化ニッケル水溶液に含まれる鉄などの不純物濃度を低減させ、後工程に鉄などの不純物が持ち出されないようにするため、高pH、高酸化還元電位の条件で運転することが好ましい。
不溶性ニッケルの一形態として、水酸化ニッケル(Ni(OH))がある。その生成反応は化学式(2)で表されるとおりであり、pH上昇により進行すると考えられる。
Ni3++3HO→Ni(OH)+3H ・・・(2)
ところで、最もpHおよび酸化還元電位が高い最後段反応槽においてでさえ、図3(A)および図3(B)によれば、Ni2+の安定領域である。しかし、通常、計測・制御用のpH計および酸化還元電位計は、反応槽内の混合・撹拌された領域の1ヶ所を計測しているに過ぎない。反応槽に中和剤および酸化剤を添加すると、反応槽内の塩化ニッケル水溶液のうち特に中和剤および酸化剤の添加口の近傍において中和剤および酸化剤の濃度が局所的に高くなる。このような高濃度領域では塩化ニッケル水溶液のpHおよび/または酸化還元電位が高くなる。その結果、局所的に水酸化ニッケル(Ni(OH))の安定領域となることがあり、これらが生成され、脱鉄澱物に含まれる。すなわち、例えば、最後段反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを2.0~2.3、酸化還元電位を1,000~1,100mVにしたとしても、図3(A)および図3(B)において、最後段反応槽内の状態は一点では示されず、バラツキと確率分布を有する(例えば大きな楕円形の)領域で示されると考えられ、その領域の一部はNi(OH)の安定領域に達していると推測される。
したがって、pHおよび酸化還元電位が低い最前段反応槽の方が、後続反応槽よりも不溶性ニッケルが生じる可能性が低いといえる。そこで、不溶性ニッケルが生じにくい最前段反応槽で酸化中和反応を促進し、大部分の鉄を除去すれば、不溶性ニッケルの発生をより抑制できる。
つまり、塩化ニッケル水溶液のpHが比較的低く設定されている最前段反応槽における酸化剤の添加割合を高くする。これにより、pHが比較的低い条件下で塩化ニッケル水溶液に含まれる鉄の多くを沈澱させることができる。塩化ニッケル水溶液のpHを維持するには、酸化剤の添加量の増加にともない、中和剤の添加量も多くなる。中和剤の添加量が多くなると、中和剤の添加口の近傍において中和剤の濃度が局所的に高くなり、塩化ニッケル水溶液のpHが局所的に高くなる可能性がある。しかし、最前段反応槽では塩化ニッケル水溶液のpHがもともと低いので、水酸化ニッケルが生成するほどのpH上昇を抑制できる。すなわち、pHが局所的に高くなることに起因する不溶性ニッケルの生成を抑制でき、ニッケルロスを低減できる。
具体的には、最前段反応槽では、酸化剤の添加量を全酸化剤添加量の70~90%とする。ここで、全酸化剤添加量は最前段反応槽に供給される鉄量に基づき定められる。最前段反応槽に供給される単位時間当たりの鉄量は、最前段反応槽への反応始液の供給量と、反応始液の鉄濃度とを掛けることで求められる。酸化剤として塩素ガス、中和剤として炭酸ニッケル用いた場合の水酸化鉄の生成反応が前記化学式(1)で表されるとおりであると仮定すると、2molの鉄を沈澱させるには1molの塩素ガスが必要である。この比率に基づいて、単位時間当たりの鉄量を全て反応させるのに要する酸化剤の単位時間当たりの量(全酸化剤添加量)が定められる。
このように、最前段反応槽への酸化剤の添加量は、鉄量から求められた全酸化剤添加量に基づき調整される。最前段反応槽には反応始液が供給されるため鉄濃度が高い。添加した酸化剤は反応により消費されるため、酸化剤の添加量を多くしたとしても、酸化還元電位はすぐには上昇しない。そのため、最前段反応槽における酸化還元電位を大きく上昇させることなく、酸化剤の添加量を増やすことができる。
なお、最前段反応槽への酸化剤の添加量を多くすると、それにともない中和剤の添加量も多くなる。酸化剤を添加すると酸化中和反応が促進され、中和剤も消費される。中和剤が不足すると、塩化ニッケル水溶液のpHの上昇が抑制される。塩化ニッケル水溶液のpHを基準値(1.6~2.05)に維持するには、中和剤の添加量を増やす必要があるからである。
後続反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHが比較的高く設定されているため、塩化ニッケル水溶液に残留する鉄を除去するのに必要最小限の酸化剤を添加することが好ましい。後続反応槽では、全酸化剤添加量の残部(10~30%)に相当する量の酸化剤を添加してもよいし、塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位が基準値(例えば、1,000~1,100mV)となるように酸化剤の添加量を調整してもよい。塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位を基準として酸化剤の添加量を調整する場合には、結果として、最前段反応槽および後続反応槽への酸化剤の総添加量と、全酸化剤添加量とが一致しないことがある。
つぎに、実施例を説明する。
(2槽構成)
容量50mの反応槽2基を直列に接続した設備を用いて、塩化ニッケル水溶液の酸化中和処理を行なった。2つの反応槽のうち、上流側を最前段反応槽と称し、下流側を後続反応槽と称する。最前段反応槽に供給される塩化ニッケル水溶液(反応始液)の組成は、ニッケル濃度が150~180g/L、コバルト濃度が5~10g/L、鉄濃度が1~3g/Lである。反応始液の供給量を1,000~1,500L/分とした。酸化剤として塩素ガス、中和剤として炭酸ニッケルスラリーを用いた。
最前段反応槽および後続反応槽の液温を60~65℃とした。最前段反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを1.85~2.05、酸化還元電位を400~550mVとした。後続反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを2.00~2.30、酸化還元電位を1,000~1,100mVとした。
反応始液の鉄濃度および供給量から最前段反応槽に供給される鉄量を求めた。また、化学式(1)で表される反応が生じると仮定して、最前段反応槽に供給される鉄量に基づき全酸化剤添加量を求めた。最前段反応槽への酸化剤の添加量を、全酸化剤添加量の10~30%、30~50%、50~70%、70~80%、80~90%の5パターンで変化させた。各パターンで得られた脱鉄澱物をサンプリングし、不溶性ニッケル品位を測定した。その結果を表1に示す。
ここで、脱鉄澱物中の不溶性ニッケル品位の測定はつぎの手順で行なった。まず、1gの脱鉄澱物を硝酸で溶解して溶解液中のニッケル濃度を分析した。この分析値は不溶性ニッケル品位と水溶性ニッケル品位とを合わせた全ニッケル品位に相当する。つぎに、1gの脱鉄澱物を150mLの沸騰水で10分間水洗することで水溶性ニッケルを溶出させ、溶出液中のニッケル濃度を分析して水溶性ニッケル品位を求めた。そして、全ニッケル品位から水溶性ニッケル品位を差し引くことで脱鉄澱物中の不溶性ニッケル品位を求めた。なお、ニッケル濃度の分析はICP発光分光分析法により行なった。
Figure 2022020162000002
表1より、最前段反応槽への酸化剤の添加量を全酸化剤添加量の70~90%とすれば、脱鉄澱物中の不溶性ニッケル品位を1%以下に低減できることが確認された。
(3槽構成)
容量50mの反応槽3基を直列に接続した設備を用いて、塩化ニッケル水溶液の酸化中和処理を行なった。3つの反応槽のうち、最も上流の反応槽を最前段反応槽と称し、中間の反応槽を中段反応槽と称し、最も下流の反応槽を最後段反応槽と称する。なお、中段反応槽および最後段反応槽が後続反応槽に相当する。反応始液の組成、供給量は2槽構成の場合と同様である。酸化剤として塩素ガス、中和剤として炭酸ニッケルスラリーを用いた。
最前段反応槽、中段反応槽および最後段反応槽の液温を60~65℃とした。最前段反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを1.6~1.9、酸化還元電位を400~550mVとした。中段反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを1.8~2.0、酸化還元電位を400~600mVとした。最後段反応槽における塩化ニッケル水溶液のpHを2.1~2.3、酸化還元電位を1,000~1,100mVとした。
最前段反応槽への酸化剤の添加量を、全酸化剤添加量の80~90%とした。脱鉄澱物をサンプリングし、不溶性ニッケル品位を測定した。その結果、脱鉄澱物の不溶性ニッケル品位は0.75%であった。
これより、3槽構成においても、最前段反応槽への酸化剤の添加割合を高くすることで、脱鉄澱物中の不溶性ニッケル品位を低減できることが確認された。

Claims (4)

  1. 鉄を含む塩化ニッケル水溶液に酸化剤および中和剤を添加して、酸化中和反応により脱鉄澱物を生成するにあたり、
    最前段反応槽と、該最前段反応槽の下流に接続された一または複数の後続反応槽とを用いて酸化中和反応を行ない、
    前記最前段反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHを1.6~2.05に調整するとともに、前記酸化剤の添加量を前記最前段反応槽に供給される鉄量に基づき定められた全酸化剤添加量の70~90%とし、
    前記後続反応槽では、塩化ニッケル水溶液のpHを1.8~2.3の範囲であり、かつ、前記最前段反応槽におけるpHよりも0.1以上高い値に調整する
    ことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  2. 前記最前段反応槽では、塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)を400~550mVとし、
    前記後続反応槽では、塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)を400~1,100mVとする
    ことを特徴とする請求項1記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  3. 前記酸化剤は塩素ガスである
    ことを特徴とする請求項1または2記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  4. 前記中和剤は炭酸ニッケルスラリーである
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
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