以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的であり、例えば各構成要素の厚さ、幅等の寸法は実際の構成要素の寸法と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付け、説明を省略する場合がある。
図1および図2は、実施形態の電気化学反応装置の構造例を示す断面模式図である。電気化学反応装置は、アノード部10と、カソード部20と、多孔質セパレータ30と、電源40と、を具備する。
アノード部10は、第1の物質(被酸化物質)を酸化して酸素を生成することができる。例えば、アノード部10は、水(H2O)を酸化して酸素や水素イオンを生成する、または水酸化物イオン(OH-)を酸化して水や酸素を生成することができる。アノード部10は、アノード11と、流路板12と、集電体13と、流路14と、を備える。
アノード11は、例えばメッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔構造を有する基材に酸化触媒を担持させることにより形成される。基材は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)等の金属やこれら金属を少なくとも1つ含む合金(例えばSUS)等の金属材料で構成してもよい。アノード11は、例えば支持体等により支持される。支持体は、例えば開口を有し、当該開口にアノード11が配置される。
酸化触媒としては、第1の物質を酸化するための活性化エネルギーを減少させる材料が挙げられる。言い換えると、第1の物質の酸化反応により酸素と水素イオンを生成する際の過電圧を低下させる材料が挙げられる。例えば、イリジウム、鉄、白金、コバルト、またはマンガン等が挙げられる。また、酸化触媒としては、二元系金属酸化物、三元系金属酸化物、または四元系金属酸化物などを用いることができる。二元系金属酸化物としては、例えば酸化マンガン(Mn-O)、酸化イリジウム(Ir-O)、酸化ニッケル(Ni-O)、酸化コバルト(Co-O)、酸化鉄(Fe-O)、酸化スズ(Sn-O)、酸化インジウム(In-O)、または酸化ルテニウム(Ru-O)等が挙げられる。三元系金属酸化物としては、例えばNi-Co-O、La-Co-O、Ni-La-O、Sr-Fe-O等が挙げられる。四元系金属酸化物としては、例えばPb-Ru-Ir-O、La-Sr-Co-O等が挙げられる。なお、これに限定されず、酸化触媒としてRu錯体またはFe錯体等の金属錯体を用いることもできる。また、複数の材料を混合してもよい。
流路板12は、アノード11に面する溝を有する。流路板12は、流路板としての機能を有する。流路板12としては、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、TiやSUS等の金属材料、カーボン等が挙げられる。
集電体13は、流路板12を介してアノード11に電気的に接続される。集電体13は、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料を含むことが好ましい。そのような材料としては、TiやSUS等の金属材料、カーボン等が挙げられる。
流路14は、アノード11と流路板12の溝との間の空間を含む。流路14は、第1の物質を含む液体として第1の電解液を流すための電解液流路としての機能を有する。
カソード部20は、第2の物質(被還元物質)を還元して還元生成物を生成することができる。例えば、カソード部20は、二酸化炭素(CO2)を還元して炭素化合物や水素を生成してもよい。これに限定されず、カソード部20は、窒素を還元してアンモニアを生成してもよい。また、第2の物質として硫化水素を用いてもよい。
カソード部20は、流路板21と、流路22と、カソード23と、流路243を備える流路板24と、集電体25と、を備える。なお、図2に示すように、流路板21は設けなくてもよい。このとき、カソード23は、多孔質セパレータ30に接していてもよい。
流路板21は、流路22としての機能を有する開口を有する。流路22は、水を含有する液体として第2の電解液および二酸化炭素等の第2の物質を流すために設けられている。第2の電解液は第2の物質を含有していてもよい。流路板21は、化学反応性が低く、かつ導電性を有しない材料を含むことが好ましい。そのような材料としては、アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂等の絶縁樹脂材料が挙げられる。なお、流路22に流れる電解液に含まれる水の量や電解液成分を変えることにより、酸化還元反応性を変化させ、還元される物質の選択性や生成する化学物質の割合を変えることができる。
アノード11およびカソード23の少なくとも一つは、多孔質構造を有していてもよい。多孔質構造を有する電極層に適用可能な材料としては、上記材料に加え、例えばケッチェンブラックやバルカンXC-72等のカーボンブラック、活性炭、金属微粉末等が挙げられる。多孔質構造を有することにより、酸化還元反応に寄与する活性面の面積を大きくすることができるため、変換効率を高めることができる。
還元触媒としては、第2の物質を還元するための活性化エネルギーを減少させる材料が挙げられる。言い換えると、第2の物質の還元反応により還元生成物を生成する際の過電圧を低下させる材料が挙げられる。例えば、金属材料または炭素材料を用いることができる。金属材料としては、例えば水素の場合、白金、ニッケル等の金属、または当該金属を含む合金を用いることができる。二酸化炭素の還元反応では金、アルミニウム、銅、銀、白金、パラジウム、もしくはニッケル等の金属、または当該金属を含む合金を用いることができる。炭素材料としては、例えばグラフェン、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube:CNT)、フラーレン、またはケッチェンブラック等を用いることができる。なお、これに限定されず、還元触媒として例えばRu錯体またはRe錯体等の金属錯体、イミダゾール骨格やピリジン骨格を有する有機分子を用いてもよい。また、複数の材料を混合してもよい。
還元反応により生成される還元生成物の例は、還元触媒の種類等によって異なる。還元生成物は、例えば一酸化炭素(CO)、蟻酸(HCOOH)、メタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、エタノール(C2H5OH)、ホルムアルデヒド(HCHO)、エチレングリコール等の炭素化合物、または水素である。
多孔質構造は、5nm以上100nm以下の細孔分布を有することが好ましい。上記細孔分布を有することにより触媒活性を高めることができる。さらに、多孔質構造は、複数の細孔分布ピークを有することが好ましい。これにより、表面積の増大、イオンや反応物質の拡散性の向上、高い導電性の全てを同時に実現することができる。例えば、5μm以上10μm以下の細孔分布を有する上記材料の導電層に100nm以下の上記還元触媒に適用可能な金属または合金の微粒子(微粒子状の還元触媒)を含む還元触媒層を積層してカソード23を構成してもよい。このとき、微粒子も多孔質構造を有していてもよいが、導電性や反応サイトと物質拡散の関係から必ずしも多孔質構造を有していなくてもよい。また、上記微粒子を他の材料に坦持させてもよい。
カソード23は、例えばガス拡散層としての機能を有する多孔質導電層23aと、多孔質導電層23aに積層され且つ還元触媒を含有する還元触媒層23bと、を有する。カソード23は、例えば支持体等により支持される。支持体は、例えば開口を有し、当該開口にカソード23が配置される。
多孔質導電層23aは、表面23a1と、流路板24に面する表面23a2と、表面23a1から表面23a2まで連通する空孔部と、を有する。流路板24と還元触媒層23bとの間(気相側)に多孔質導電層23aを設けることにより、気液分離を行いやすくすることができる。空孔部の平均孔径は10μm以下であることが好ましい。また、多孔質導電層23aが撥水性を有することにより、気液分離の成立や、反応によって生じた水やアノード11から移動する水の排出が促進され、ガスの拡散性が向上し好ましい。多孔質導電層23aの厚さは100μm以上500μm以下、さらには100μm以上300μm以下であることが好ましい。100μm未満の場合、セル面での均一性が損なわれ、厚い場合ではセル厚みが増すことや、部材のコスト増加、また、500μmを超える場合、ガスの拡散性の増加により反応効率が低下する。多孔質導電層23aは、例えばカーボンペーパやカーボンクロス等により形成される。
還元触媒層23bは、流路22に面する表面23b1と、多孔質導電層23aの表面23a1に面する表面23b2と、を有する。還元触媒層23bは、例えば多孔質導電層23aよりも小さい孔径を有する多孔質導電層(メソポーラスレイヤ)と、メソポーラスレイヤの表面に担持された還元触媒と、を有する。多孔質導電層23a、メソポーラスレイヤ、および還元触媒の間で撥水性や多孔体度を変えることによりガスの拡散性と液体成分の排出を促進させることができる。また、還元触媒層23bの面積よりも多孔質導電層23aの面積を大きくしてもよい。これにより、流路板24との構造と共に多孔質導電層23aと組み合わせてセルに均一にガス供給を行い、液体成分の排出を促進させることが可能となる。
多孔質導電層としてナフィオンおよびケッチェンブラック等の導電性粒子の混合物を用い、還元触媒として金触媒を用いてもよい。また、還元触媒の表面に5μm以下の凹凸を形成することにより、反応効率を高めることができる。さらに、高周波を加えることにより還元触媒の表面を酸化させ、その後電気化学的に還元することにより、ナノパーティクル構造を有するカソード23を形成することができる。金以外としては、銅、パラジウム、銀、亜鉛、スズ、ビスマス、鉛等の金属が好ましい。また、多孔質導電層はさらにそれぞれの層が孔径の異なる積層構造を有していてもよい。孔径が異なる積層構造によって例えば電極層近傍の反応生成物濃度の違いやpHの違いなどによる反応の違いを孔径によって調整して効率を向上することが可能となる。
比較的低い光の照射エネルギーを用いて低電流密度の電極反応を行う場合、触媒材料の選択肢が広い。よって、例えばユビキタス金属等を用いて反応を行うことが容易であり、反応の選択性を得ることも比較的容易である。配線等により光電変換体からなる電源40とアノード11およびカソード23の少なくとも一つとを電気的に接続する場合、電解液槽を小型化して省スペース化、コスト低下等の理由により一般的に電極面積は小さくなり、高電流密度で反応を行う場合がある。この場合、触媒として貴金属を用いることが好ましい。
このような実施形態の電気化学反応装置は、アノード11とカソード23とを一体化し、部品数が低減され、簡略化されたシステムである。よって、例えば製造、設置、およびメンテナンス性が向上する。
図3は流路板24の一部の構造例を示す上面模式図である。図3はX軸とX軸に直交するY軸とを含む流路板24のX-Y平面を示している。図4は流路板24の一部の構造例を示す側面模式図である。図4はY軸とY軸およびX軸に直交するZ軸とを含む流路板24のY-Z平面を示している。図3および図4では、流路板24と表面23b2または表面23a2との重畳部のみを模式的に図示している。
流路板24は、表面241と、表面242と、流路243と、を備える。表面241は、多孔質導電層23aに接する。表面242は、表面241に対向し、集電体25に接する。図3および図4に示す流路板24は、直方体形状を有するがこれに限定されない。
流路243は、多孔質導電層23aの表面23a2に面する。流路243は、流入口243aおよび流出口243bに連通する。流入口243aは、第2の物質を含む気体が流路板24の外部(カソード部20の外部)から流路243に流入するために設けられる。流出口243bは、気体が流路243から流路板24の外部(カソード部20の外部)に流出するためおよび還元反応による生成物を流路板24の外部に流出するために設けられる。
図3に示す流路243は、表面241に沿ってサーペンタイン状に延在する。これに限定されず、流路243は、表面241に沿って櫛歯状や渦巻状に延在してもよい。流路243は、例えば流路板24に設けられた溝および開口により形成される空間を含む。
流路243は、複数の領域243cと、複数の領域243dと、を有する。複数の領域243cの一つは、表面241のX軸方向に沿って延在する。複数の領域243dの一つは、複数の領域243cの一つから表面241に沿って折り返すように延在する。複数の領域243dの他の一つは、領域243dから表面241のX軸方向に沿って延在する。
表面241と表面23a2または表面23b2との重畳部のX軸方向の長さはL1として定義される。表面241と表面23a2または表面23b2との重畳部のY軸方向の長さはL2として定義される。表面23a2または表面23b2と流路243との重畳部のX軸方向の長さはL3として定義される。表面23a2または表面23b2と流路243との重畳部のY軸方向の長さはL4として定義される。領域243cの長さはL5として定義される。領域243cの平均幅はL6として定義される。領域243dの長さはL7として定義される。領域243dの平均幅はL8として定義される。複数の領域243cの一つと複数の領域243cの他の一つとの間の平均幅はL9として定義される。表面241と表面23a2または表面23b2との重畳部のX軸方向の端部と流路243との最短距離はL10として定義される。表面23a2または表面23b2との重畳部のY軸方向の端部と流路243との最短距離はL11として定義される。流路243のZ軸方向の深さは、L12として定義される。
流入口243a付近と流出口243b付近との間で反応により変化するガス量に伴い、流速が変化する場合がある。これに対し、例えば流路243の幅を徐々に狭くする、または流路243の並列接続での分岐数を変化させることによりカソード23の全体の還元反応の均一性を高めることができる。流路243の全長に対する流路243の幅の積算値を上記全長で割った値を平均値として用い、複数の領域243cの一つと複数の領域243cの他の一つとの間の領域(ランドともいう)の全長に対し上記領域の幅の積算値を上記全長で割った値を平均値として用いる場合、上記領域の幅は流路243の幅より小さい方が好ましい。これにより多孔質導電層23aに気体を効率良く供給することができる。しかしながら、極端に小さい場合、流路243よりも上記領域を介してガス等が供給されやすくなる。
流路243の構造には様々な形があるが、流路243と多孔質導電層23aとの重畳部では気体が供給される。気体の流量や、流路幅を変えることにより流速を変えて圧力等を調整することにより、気体の分圧は高くなる。さらに、生成した水や酸化側から移動した水の排出も気体が流通していることから促進される。一方領域243c間では生成した水や酸化側から移動した水の移動度が流路243に対向する領域よりも悪く、多孔質導電層23a中や還元触媒層23bの水分量はより高い。これら観点から複数の領域243c間の面積が大きい場合は、水素発生が多く、気体の還元性能は低下する。また、複数の領域243c間の幅が広いと複数の領域243c間の中央部から流路243への水の排出と流路243から複数の領域243c間への気体の供給量が減少する。このため、水素発生が増加してセル性能が低下する。また、還元触媒層23bや多孔質導電層23aの流路243の外周を囲む領域の外のエリアでは隣り合う流路がないため、複数の領域243c間の周囲幅が大きいと水素発生割合の増加は顕著に影響を与える。
複数の領域243cの一つと複数の領域243cの他の一つとの間の領域が狭ければよいかというとその限りではなく、多孔質導電層23aの圧力損失と流路243の圧力損失との差でガスが流路243を通過せずに、上記領域を通過しやすくなる場合がある。その場合は反応の面均一性が損なわれ、電気化学反応装置の反応効率が低下する。さらには上記領域の面積が小さいと多孔質導電層23aと流路板24との接触面積が減少するため接触抵抗が増加して電気化学反応装置の反応効率が低下する。
表面23b2の面積よりも表面23a2の面積を大きくすることにより、多孔質導電層23aに均一にガスや水分の量を調整しやすくすることができるため、反応効率を向上させることができる。しかしながら、表面23b2の面積よりも表面23a2の面積が極端に大きい場合は、セル面積が大きくなり、コストや製造性、放熱等の影響で効率が低下する。
表面23a2または表面23b2と表面241との重畳部の各地点に対し、表面23a2または表面23b2と流路243との重畳部までの距離が遠ければ遠いほど還元反応により炭素化合物よりも水素が支配的に発生する。また、表面23a2または表面23b2と表面241との重畳部のうちの表面23a2または表面23b2と流路243との重畳部から遠い部分が多いと気体の還元性能は低下する。そこで、表面23a2または表面23b2と表面241との重畳部の各地点から表面23a2または表面23b2と流路243との重畳部までの最短距離の標準偏差を小さくすることにより、気体の還元性能を向上させることができる。
流路243のZ軸方向の深さは、多孔質導電層23aへの気体の供給や、液体の排出の観点、セル面で均一の反応を行うといった観点から浅い方が好ましい。しかしながら、流路が細いことにより流路圧損が増加することにより、ガス供給のエネルギーロスや、流路ではなく、ガス拡散層を通過することによるセル面での均一反応の妨げとなるため、極端に狭いのは好ましくない。
一般的に領域243cの平均幅(L6)が0.5~1.5mm程度でありZ軸方向の深さが0.5~1.5mm程度である流路243であって、複数の領域243cの一つと複数の領域243cの他の一つとの間の平均幅(L9)に対する、流路243の領域243cの平均幅(L6)の比は、0.4~0.6程度である。
第1の電解液および第2の電解液としては、例えばLiHCO3、NaHCO3、KHCO3、CsHCO3、リン酸、ホウ酸等を含む水溶液を用いてもよい。また、第1および第2の電解液としては、例えば任意の電解質を含む水溶液を用いることができる。電解質を含む水溶液としては、例えばリン酸イオン(PO4
2-)、ホウ酸イオン(BO3
3-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、リチウムイオン(Li+)、セシウムイオン(Cs+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
-)等を含む水溶液が挙げられる。なお、第1の電解液と第2の電解液は、互いに異なる物質を含んでいてもよい。
上述した電解液としては、例えばイミダゾリウムイオンやピリジニウムイオン等の陽イオンと、BF4
-やPF6
-等の陰イオンとの塩からなり、幅広い温度範囲で液体状態であるイオン液体もしくはその水溶液を用いることができる。さらに、他の電解液としては、エタノールアミン、イミダゾール、ピリジン等のアミン溶液もしくはその水溶液が挙げられる。アミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミン等が挙げられる。これらの電解液が、イオン伝導性が高く、第2の物質を吸収する性質を有し、還元エネルギーを低下させる特性を有していてもよい。
一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン等が挙げられる。アミンの炭化水素は、アルコールやハロゲン等が置換していてもよい。アミンの炭化水素が置換されたものとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、クロロメチルアミン等が挙げられる。また、不飽和結合が存在していてもよい。これら炭化水素は、二級アミン、三級アミンも同様である。
二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等が挙げられる。置換された炭化水素は、異なってもよい。これは三級アミンでも同様である。例えば、炭化水素が異なるものとしては、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン等が挙げられる。
三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエキサノールアミン、メチルジエチルアミン、メチルジプロピルアミン等が挙げられる。
イオン液体の陽イオンとしては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾールイオン、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリウムイオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
イミダゾリウムイオンの2位が置換されていてもよい。イミダゾリウムイオンの2位が置換された陽イオンとしては、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-ペンチルイミダゾリウムイオン、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
ピリジニウムイオンとしては、メチルピリジニウム、エチルピリジニウム、プロピルピリジニウム、ブチルピリジニウム、ペンチルピリジニウム、ヘキシルピリジニウム等が挙げられる。イミダゾリウムイオンおよびピリジニウムイオンは共に、アルキル基が置換されてもよく、不飽和結合が存在してもよい。
アニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、BF4
-、PF6
-、CF3COO-、CF3SO3
-、NO3
-、SCN-、(CF3SO2)3C-、ビス(トリフルオロメトキシスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメトキシスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド等が挙げられる。イオン液体のカチオンとアニオンとを炭化水素で接続した双生イオンでもよい。なお、リン酸カリウム溶液等の緩衝溶液を流路に供給してもよい。
流路板24は、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料を含む金属板であることが好ましい。そのような材料としては、TiやSUS等の金属板が挙げられる。
集電体25は、流路板24の表面242に接する。集電体25は、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料を含むことが好ましい。そのような材料としては、TiやSUS等の金属材料、カーボン等が挙げられる。
多孔質セパレータ30は、アノード11とカソード23との間に設けられる。多孔質セパレータ30は、アノード部10に面する面30aと、カソード部20に面する面30bと、を有する。多孔質セパレータ30は、細孔を有する。
従来の電気化学反応装置の例としては、アノードとカソードとの間にイオン交換膜を有する例が挙げられる。イオン交換膜によりアノードとカソードとの間で一部のイオンの移動を可能にしつつアノードとカソードとを分離することができる。しかしながら、イオン交換膜は、高価であるため電気化学反応装置の製造コストを増加させる。また、イオン交換膜は、電解液中の不純物金属イオン等によってイオン伝導性が低下する。さらに、イオン交換膜は、電解液成分等により寿命が低下する。イオン交換膜のイオン伝導性の低下や寿命の低下は電気化学反応装置の反応効率の低下の原因となる。これに加え、イオン交換膜の種類は、触媒や電解液との相性を考慮しつつ電解液のpHや存在するイオンに応じて選択されなければならない。よって、酸化触媒、還元触媒、電解質それぞれに適したイオン交換膜が開発されることが理想であるが、現状では、イオン交換膜の選択自由度は低い。
従来の電気化学反応装置の他の例としては、イオン交換膜を設けずに電解液中のアノードとカソードとの間隔をイオン交換膜を設ける場合よりも広くする例や、アノードとカソードとの間に多孔質の隔壁をさらに設ける例が挙げられる。しかしながら、アノードとカソードとの間隔が広く、溶液抵抗が大きいため、反応効率が低い。また、アノード側の電解質とカソード側の電解質の両方が液体である必要があり、実施形態の電気化学反応装置のように、アノード側で液体を用いて酸化反応を行い且つカソード側で気体を用いて還元反応を行うことができない。
実施形態の電気化学反応装置では、イオン交換膜の代わりにアノードとカソードとの間に多孔質セパレータを設けることにより、電気化学反応装置の製造コストの増加の抑制、イオン伝導性の低下の抑制、電解液成分等による寿命の低下の抑制による電気化学反応装置の反応効率の低下の抑制、および膜材料の選択自由度の向上の少なくとも一つを実現する。
多孔質セパレータ30は、適度な絶縁性を有する。多孔質セパレータ30が高い導電性を有する場合、アノード11とカソード23との間への電圧の印加により発生する電流のうち多孔質セパレータ30の直流抵抗分の電流が損失してしまう。よって、電気化学反応に用いられるエネルギーが損失する。多孔質セパレータ30のシート抵抗は、100mΩ/cm2以上であることが好ましい。
多孔質セパレータ30を設ける場合、アノード11とカソード23との間の間隔は、イオン交換膜を設ける場合と同程度またはそれよりも狭い。実施形態の電気化学反応装置は、アノード部10において液体を用いるとともに、カソード部20において気体を用いて電気化学反応を行う。実施形態の電気化学反応装置は、アノード部10の液体成分とカソード部20の気体成分を対流させずに、分離でき、生成物と各成分をできる限り分離しなければならない。このため、実施形態の電気化学反応装置は、気液分離の実現を必要とする。気液分離ができない場合、例えば還元生成物がアノード部10に移動し、再酸化されることにより、反応の効率を低下させる。また、アノード部10の液体成分がカソード部20に移動すると、カソード23における気体の拡散性の低下や、反応選択性の低下、流路243への液体成分の混入等の問題が生じる。さらに、生成物や原料物質の成分が両極で混合して分離できないため、後工程での分離が必要となる。
多孔質セパレータ30は、親水性を有する。これにより、細孔に液体成分を浸透させることができ、気液分離を行いやすくすることができる。よって、多孔質セパレータ30は、電解液成分、例えば水を介して、特定のイオンを通過させることができる。また、還元触媒、酸化触媒に適した電解質をそれぞれ用いることができる。
例えば、電解液が水溶液であれば、多孔質セパレータ30の細孔に水が侵入し、水素イオンが移動することができる。これによってイオン交換膜と同様の機能を有することができ、イオンの移動効率を高めることができる。ただし、薄膜の場合、アノード11とカソード23との間でガスが移動すると、還元生成物の再酸化による循環反応が起きやすい。このため、多孔質セパレータ30を介してアノード11とカソード23との間のガスの移動は少ないことが好ましい。
多孔質セパレータ30は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と多孔質構成材とを混合し、混合物を延伸して成形することにより作製される。一軸や二軸等の延伸条件や、多孔質構成材によって、細孔径や細孔形状を制御する。PTFEは撥水性を有するため、表面修飾を行い、親水処理を行ってもよい。親水性処理されたPTFEを親水性PTFEともいう。なお、PTFEの例に説明したが、これに限定されない。PTFEは耐薬品性、化学安定性に優れ、耐熱性等の性能から優れている。
これに限定されず、多孔質セパレータ30としては、例えば、炭化水素の基本骨格を有する膜、フッ化ビニリデン、アクリル多孔体、セラミック、ジルコニア、セルロース、紙、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔体が挙げられる。また、多孔質セパレータ30としては、住友電気工業株式会社製のポアフロン(登録商標)、ADVANTEC社のメンブレンフィルタ、親水処理されたテトラフルオロエチレンを有するフッ素樹脂膜等が挙げられる。
多孔質セパレータ30としては、上記多孔体を被覆するイオン交換樹脂を有する膜を用いてもよい。イオン交換樹脂により多孔体を被覆することにより、多孔質セパレータ30の親水性、疎水性、細孔径、細孔におけるイオンの透過抵抗、導電性等を調節することができ、多孔質セパレータ30の性能を向上させることができる。また、細孔径を小さくしつつ、イオン透過性を向上させることもできる。
ナフィオンは、パーフルオロカーボン材料であり、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2-(フルオロスルフォニルエトキシ)プロピルビニル エーテル]の共重合体である。ナフィオンにおいて、イオン交換基の量を、スルフォン酸基1モルあたりのグラム数で表した値を等価質量(Equivalent Weight:EW)という。また、イオン交換容量(Ion-Exchange Capacity:IEC)は、IEC=100/EWを満たす値である。一般的にEWが小さいまたはIECが大きい材料は高コストであり、寿命や強度等の問題を有する。
IECが小さく、従来のイオン交換膜としてあまり用いられていない材料により多孔質セパレータ30を構成することにより、コストを低下させ、強度を高め、耐久性を高めて寿命を長くすることができる。また、触媒と電解液成分との相性に応じて、触媒を高性能条件で用いることが可能となる。
ナフィオンの場合、テトラフルオロエチレンの平均分子鎖の分子数(CF2CF2の数)mは、EW=100m+446を満たす数である。通常のナフィオンの場合、mは10000~100000である。従来のイオン交換膜として電気化学反応装置に用いることが困難な、カチオン交換性を有するスルフォン酸やアニオン交換性を有するアミン、イミダゾール等の分子に対して、テトラフルオロエチレンのようなイオン交換性を有しない分子の長さが1000000を超える分子や、膜の重さに対しEWが1億を超える材料により多孔質セパレータ30を構成することにより、低コストで性能を向上させることができる。また、イオンがほとんど通過しない材料を用いた多孔質セパレータの表面に微量のスルフォン酸基を修飾することにより形成される多孔質セパレータや、イオンが通過しにくい修飾基(水酸基など)を有する親水性多孔質セパレータを多孔質セパレータ30として用いることにより、イオン交換が細孔中の電解質成分によって主に行われるため、高性能化と低コスト化とを実現することができる。
電源40は、アノード11およびカソード23に電気的に接続される。電源40から供給される電気エネルギーを用いてカソード23による還元反応およびアノード11による酸化反応が行われる。電源40とアノード11との間、および電源40とカソード23との間は例えば配線で接続されていてもよい。電源40は、光電変換素子、系統電源、蓄電池等の電源装置または風力、水力、地熱、潮汐力等の再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部を含む。例えば、光電変換素子は、照射された太陽光等の光のエネルギーにより電荷分離を行う機能を有する。光電変換素子の例は、pin接合型太陽電池、pn接合型太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、多接合型太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む。
次に、実施形態の電気化学反応装置の動作例について説明する。ここでは、一例として流路243を介して二酸化炭素を含むガスが供給され、一酸化炭素を生成する場合について説明する。アノード部10では、下記式(1)のように水の酸化反応が起こり、電子を失い、酸素と水素イオンが生成される。生成された水素イオンの少なくとも一つは、多孔質セパレータ30を介してカソード部20に移動する。
2H2O → 4H++O2+4e- ・・・(1)
カソード部20では、下記式(2)のように二酸化炭素の還元反応が起こり、電子を受け取りつつ水素イオンが二酸化炭素と反応し、一酸化炭素と水が生成される。また、下記式(3)のように水素イオンが電子を受け取ることにより、水素が生成される。このとき、水素は一酸化炭素と同時に生成されてもよい。
CO2+2H++2e- → CO+H2O ・・・(2)
2H++2e- → H2 ・・・(3)
酸化反応の標準酸化還元電位と還元反応の標準酸化還元電位との電位差以上の開放電圧を有する必要がある。例えば、式(1)における酸化反応の標準酸化還元電位は1.23[V]である。式(2)における還元反応の標準酸化還元電位は0.03[V]である。式(3)における還元反応の標準酸化還元電位は0[V]である。このとき、式(1)と式(2)との反応では開放電圧を1.26[V]以上にする必要がある。
アノードとカソードとの間の多孔質セパレータ30は二酸化炭素ガスや炭酸イオン、炭酸水素イオン等が多孔質セパレータ30を劣化させてしてしまう場合がある。この際の二酸化炭素ガス量と水蒸気量を調整することにより寿命を延ばすことが可能となる。しかしながら水素イオンが豊富にある条件では、水素の生成が起こるため、多すぎても投入エネルギーが二酸化炭素の還元に使われず、二酸化炭素の還元効率が低下してしまう。よって、二酸化炭素の還元に必要な水素イオン量と水素生成を抑えるバランスを保つ必要がある。
水素イオンや二酸化炭素の還元反応は、水素イオンを消費する反応である。このため、水素イオンの量が少ない場合、還元反応の効率が悪くなる。よって、第1の電解液と第2の電解液との間で水素イオンの濃度を異ならせ、濃度差により水素イオンを移動させやすくしておくことが好ましい。陰イオン(例えば水酸化物イオン等)の濃度をアノード側の電解液とカソード側の電解液との間で異ならせてもよい。また、水素イオンの濃度差を高めるために、二酸化炭素を含まない不活性気体(窒素、アルゴン等)を例えば電解液に直接吹き込み、電解液に含まされる二酸化炭素を放出させて電解液中の水素イオン濃度を低くする方法が考えられる。
式(2)の反応効率は、電解液中に溶存された二酸化炭素の濃度によって変化する。二酸化炭素濃度が高くなるほど反応効率は高くなり、低くなるほど低下する。式(2)の反応効率は、二酸化炭素濃度と水蒸気量によっても変化する。これら反応は、還元触媒層23bと流路243間に多孔質導電層23aを設け、多孔質導電層23aを介して二酸化炭素を供給することにより、電解液中の二酸化炭素濃度を高めることができる。流路243には二酸化炭素をガスで導入し、還元触媒に二酸化炭素を供給するが、アノード11から水が移動してくることや、反応によって生じる水によって、還元触媒層23bでの二酸化炭素と水の濃度は変化する。
二酸化炭素を還元する際に生成される液体成分をカソード部20の外部に効率良く排出しないと、多孔質導電層23aや還元触媒層23bに液体成分が詰まり、反応効率が低下する場合がある。例えばカソード23に良く用いられるパンチングメタルや、エキスパンドメタルのような電極材料を用いてガスと集電の両方の性能を得るタイプの構成であると、反応効率の低下が生じる。そこで実施形態の電気化学反応装置では、細い管状となった流路を有する流路板を用い、生じた液体成分を流路によって押し出し、排出する構成を有する。流路は並列に配置される複数の流路やサーペンタイン状の流路やその組み合わせで構成される。また、セル面で均一の反応を行うために、流路の反応面に対する分布は均一であることが好ましい。
二酸化炭素を還元するための還元触媒は接する電解質や電解質膜、水蒸気圧によって選択性が異なり、二酸化炭素を還元して一酸化炭素やギ酸、エチレン、メタンなどを生成するが、条件によってはプロトンを還元し水素を多く生成するため、二酸化炭素の還元効率が低下してしまう。これは二酸化炭素の還元に用いるプロトン源が、水素イオンや炭酸水素イオンであることが原因となり、電解液中の例えば炭酸水素イオン濃度や、pHによって変化する。この変化は主に金を用いた触媒では一酸化炭素と水素の選択性に大きく関与し、銅などの多電子還元を行う触媒ではその一酸化炭素やギ酸、エチレン、メタン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトンなどの選択性はそれぞれ異なる。これらの制御を行う上で電解液の選択は重要となる。しかしながら還元触媒に二酸化炭素ガスを供給する方式で、セル抵抗を低減させるために触媒層が電解質膜(もしくは酸化側の電解液)に接している場合では、酸化触媒との相性やセル抵抗、電解質膜の構成などのセルを構成する部材との兼ね合いで決まるため、任意の電解液を選択することは困難である。
しかしながら、還元触媒に二酸化炭素ガスを供給する方式で、セル抵抗を低減させるために触媒層が電解質膜(もしくはアノード側の電解液)に接している場合では、酸化触媒との相性やセル抵抗、電解質膜の構成などのセルを構成する部材との兼ね合いで決まるため、任意の電解液を選択することは困難である。そこで、多孔質セパレータ30の構造を変えることによっても触媒層での二酸化炭素と水の濃度を調整することができる。
二酸化炭素の還元のみに特化するだけでなく、例えば一酸化炭素と水素を1:2で生成し、その後の化学反応でメタノールを製造する等、任意の割合で二酸化炭素の還元物と水素を製造することもできる。水素は比較的水の電解や、化石燃料由来の安価で入手しやすい原料があるため、水素の比率や大きい必要はない。また、二酸化炭素を原料とすることにより温暖化削減効果もあるため、一酸化炭素のみを還元できると環境性は増すが効率よく反応させるにはまた困難が伴う。これら観点からその電解の反応効率や、実現性、その比率は一酸化炭素の水素に対する比率は少なくとも1以上、好ましくは1.2以上、1.5以上であると経済性や環境性、実現性の観点から好ましい。
次に、多孔質セパレータ30の圧力損失について説明する。多孔質セパレータ30の圧力勾配∇P(kPa/m)は下記の式で表される。
∇P=-μ/KA×Q
(式中、Aは多孔質セパレータ30の断面積(m2)を表し、Qは多孔質セパレータ30を通過する液体(電解液)の体積流量(m3/s)を表し、μは多孔質セパレータ30を通過する液体(電解液)の粘性係数(μPa・s)を表し、Kは多孔質セパレータ30の透過係数を表す)
また、上記Kは下記の式で表される。
K=dm
2×ε3/180×(1-ε)2(式中、dmは多孔質セパレータ30の平均細孔径(m)を表し、εは多孔質セパレータ30の空隙率を表す)
多孔質セパレータ30の空隙率は高い方が好ましい。しかしながら、空隙率が高すぎると気液分離が困難となる。多孔質セパレータ30の空隙率は0.5(50%)以上、さらに気液分離と構造安定性のためには0.6(60%)以上であることが好ましく、気液分離と構造安定性があれば0.95(95%)以下であることが好ましい。空隙率は、構造安定性の観点から0.8~0.9(80~90%)程度であることがより好ましい。
多孔質セパレータ30は、イオンを透過し、イオンの透過抵抗が低い。多孔質セパレータ30の透過係数Kは、1.7×10-20m2以上1.7×10-16m2以下であることが好ましい。
例えば、7cm角(490mm2)の触媒面積、200mA/cm2の電流密度で二酸化炭素を還元して一酸化炭素を生成する場合、体積流量0.05cc/minで水が多孔質セパレータ30を通過する必要がある。そこで、必要な体積流量の2倍の体積流量0.1cc/minで水が多孔質セパレータ30を通過すると仮定する。流路243の面積(L3×L4)を触媒面積の50%と仮定し、多孔質セパレータ30のうち、水が通過する部分の面積を25cm2と仮定する。面積流量(多孔質セパレータ30の断面積あたりの液体流量)を0.004cc/min/cm2と仮定する。電解液の粘性係数を0.005μPa・sと仮定する。これは、例えばKOHの希薄溶液程度である。
多孔質セパレータ30の圧力損失は、多孔質セパレータ30の圧力勾配∇Pと多孔質セパレータ30の厚さ(m)との積により算出される。図5は、上記条件のときの多孔質セパレータ30の平均細孔径と圧力損失との関係を示す図である。多孔質セパレータ30の厚さを一般的な30μmと仮定し、空隙率を0.5と仮定したときの多孔質セパレータ30の平均細孔径と圧力損失との関係は、図5の菱形印により表される。例えば平均細孔径0.1μmのときの圧力損失は14.4kPaである。よって、圧力損失が14.4kPa程度であることを考慮して面30aおよび面30bに加わる圧力を調整すれば電気化学反応は進行する。圧力を加えすぎると透過する液体成分が多くなり、好ましくない。面30aおよび面30bの圧力差を保って電気化学反応装置を動作させること好ましい。
多孔質セパレータ30が撥水性を有するとK(透過係数)の値は小さくなる。多孔質セパレータ30が撥水性を有すると仮定し、多孔質セパレータ30の厚さを30μmと仮定し、空隙率を0.5と仮定したときの多孔質セパレータ30の平均細孔径と圧力損失との関係は、図5の正方形印により表される。このことから多孔質セパレータ30が撥水性を有することにより圧力損失が増加することがわかる。仮に、多孔質セパレータ30が撥水性を付与して気液分離性能を向上させることも考えられる。しかしながら、極端に撥水性を有すると、イオンの透過性が悪化するため、多孔質セパレータ30を薄くする必要がある。
ここで、ガスを流す場合の流路の圧力損失を概算する。流路の一例として図3と同じ構造を有する4つの流路を並ぶように設け、L6が0.8mm、L9が0.8mm、L12が1mm、触媒面積が7cm角(4900mm2)、流路14の面積(L3×L4)が触媒面積の50%と仮定する。4つの流路のそれぞれは、9回折り返すように蛇行する。上記流路に、例えば200ccmの二酸化炭素ガスを流すと2~3kPaの圧力損失が生じる。
また、液体を流す場合の流路の圧力損失を概算する。上記と同様の流路に、例えば水を30ccm流すと1kPa程度の圧力損失が生じる。両者の圧力差は、多く見積もっても2~3kPaであり、液体成分が極端にカソード23へ移動することも、カソード23のガス成分がアノード11へと移動することもなく動作可能である。特にアノード部10側の圧力を調整し、多孔質セパレータ30を透過する液体量を調整した場合、2~3kPaの変動は問題ない。ただし、両極に電圧を印加すると、流路を流れる液体に気泡が生じ気液二相流等の影響により瞬間的に圧力が増加する。これに対し、徐々に電圧を印加することにより習慣的な圧力の増加を抑制することができる。また、多孔質セパレータ30の平均細孔径を小さくすることにより圧力の増加の影響を小さくすることができる。両極間の圧力調整や、圧力差の調整を行うと、そのためのエネルギーロスや、補器や制御棟の構成が複雑になり、コスト増加にもつながるため、多孔質セパレータ30の平均細孔径を調整することにより圧力増加を影響を小さくすることが好ましい。
次に、多孔質セパレータ30の平均細孔径の最大値について説明する。200mA/cm2の電流密度で必要な体積流量の2倍の面積流量を0.004cc/min/cm2と仮定する。多孔質セパレータ30の最大厚さを500μmと仮定する。500μmよりも厚い場合はイオン透過性が悪化し、好ましくない。空隙率は0.5と仮定する。粘性係数は水の0.001μPa・sと仮定する。水系の電解液を用いる場合は、これよりも低い値は想定されない。アノード部10とカソード部20との間の圧力差を1kPaと仮定する。1kPa未満の圧力差は、ガス拡散の観点から好ましくない。また、低圧力損失流路であるため、流路の深さや幅が広く、反応効率の低下の原因となる。さらに反応によって流路に生じた液滴が流路を閉塞し、反応面での均一な反応を妨げるため、好ましくない。この場合の多孔質セパレータ30の最大平均細孔径は0.5μmであることが好ましい。上記条件よりも液体が通過する場合、多孔質セパレータ30として適していない。すなわち、多孔質セパレータ30は、厚さ500μmで平均細孔径0.5μm以下であることが好ましい。
次に、多孔質セパレータ30の平均細孔径の最小値について説明する。1A/cm2の電流密度で必要な体積流量の2倍の面積流量(断面積あたりの液体流量)を0.02cc/min/cm2と仮定する。2A/cm2以上の電気化学反応ではアノード11でガス状の酸素が大量に発生し、カソード23でも生成ガスが大量に発生する。このような条件での電気化学反応を行うとすると、多孔質セパレータ30を介してガスが大量に移動し、アノード11とカソード23との間のガスの移動現象(クロスオーバー)が生じ、反応したガス成分が対極で再反応して、効率が低下する現象が生じるため、好ましくない。多孔質セパレータ30の最小厚さを1μmと仮定する。1μm未満では、膜抵抗が小さいが、製造コスト、製造性、組み立て性、強度等の観点から好ましくない。空隙率は0.5と仮定する。粘性係数は高濃度の水酸化カリウムの0.01μPa・sと仮定する。これよりも大きい場合、液体ポンプの消費エネルギーや強力なポンプの使用が必要となり、コストが増加し、好ましくない。アノード部10とカソード部20との間の圧力差を2000kPaと仮定する。2000kPaの反応では、後段の化学プロセスに直接活用可能であり、反応の効率向上に寄与して好ましい。圧力が2000kPaを超える場合、部材やセルの耐圧性、コストの観点から好ましくない。この場合の多孔質セパレータ30の最小平均細孔径は0.005μmであることが好ましい。上記条件よりも液体が通過する場合、多孔質セパレータ30として適していない。すなわち、多孔質セパレータ30は、厚さ1μmで平均細孔径0.005μm以上であることが好ましい。
すなわち、多孔質セパレータ30の厚さは、1μm以上500μm以下であり、且つ多孔質セパレータ30の平均細孔径は、0.005μm以上0.5μm以下であることが好ましい。厚さは、5μm以上、さらには10μm以上であることがより好ましい。細孔径が小さいと気液分離の成立に有利である。平均細孔径が小さいほど気液分離の性能は良くなり、アノード部10側(液相側)とカソード部20側(気相側)との圧力差が大きくてもある程度であれば、成立する。多孔質セパレータ30の平均細孔径を小さくすることにより、多孔質セパレータ30を薄くでき、空隙率を高くでき、イオンの透過性も高めることができるため、好ましい。平均細孔径は、0.01μm以上であることがより好ましい。多孔質セパレータ30は、イオン透過性と膜の電気的抵抗とを確保するために薄い方が好ましい。しかしながら、反応によって必要な液体が供給されなければならず、薄すぎると反応を妨げる。また、多孔質セパレータ30の厚さと平均細孔径との積は、0.1μm2以上50μm2以下であることが好ましい。
多孔質セパレータ30の平均細孔径は、光学顕微鏡や電子顕微鏡などの観察画像により、処理ソフト等を用いて算出される。また、多孔質セパレータ30の平均細孔径は、水銀圧入法によって算出されてもよい。
圧力差は1~2000kPa程度であることから、圧力勾配の式を式:∇P=-μ×Q×180(1-ε3)/dm
2×ε3×Aに変換して、この値が、1~2000kPaの範囲であることが好ましい。イオン透過性を考えるとεは0.5~0.9の範囲にあると考えられ、このとき式:1<-μ×Q×180(1-ε3)/dm
2×ε3×A<2000を満たすことが好ましい。
2000kPaの圧力を耐えることは非常に困難であるため、少なくとも200kPa以下であることがより好ましい。特に加圧する電気化学反応装置のセルでない場合、圧力差は定常時で1~10kPa程度であることから、1<-μ×Q×180(1-ε3)/dm
2×ε3×A(0.5<ε<0.9)<10を満たすことが好ましい。反応によって生じる気泡や、液滴の影響があり、圧力の揺らぎ等を考慮すると2kPa以上であることが好ましい。
実施形態の電気化学反応装置は、多孔質セパレータ30の平均細孔径、平均細孔径と厚さの積、厚さ、空隙率、および透過係数Kの少なくとも2つのパラメータを制御することにより、圧力損失を制御して気液分離を成立させる。例えば、多孔質セパレータ30の厚さが10μm以上500μm以下である場合、多孔質セパレータ30の平均細孔径が0.008μmよりも大きく0.45μmよりも小さく、多孔質セパレータ30の空隙率は、0.5よりも高いことが好ましい。これにより、気液分離を成立させつつ反応効率を高めることができる。
流路板24の構造は、図1ないし図4に示す構造例に限定されない。図6は流路板24の他の構造例を示す上面模式図である。図7は図6における線分X1-Y1の断面模式図である。図8は図6における線分X2-Y2の断面模式図である。図6ないし図8において図1ないし図4に示す構造と共通する部分は図1ないし図4の説明を適宜援用することができる。
図6ないし図8に示す流路板は、流路層24aと、流路層24aに積層された流路層24bと、を備える。流路層24aおよび流路層24bとしては耐食性が高いチタン等を用いることができるが、プレス加工性や価格等の関係で、アルミニウムやSUS等のプレス板に金メッキ等の加工や、対腐食性の高い燃料電池用の導電性SUS等を用いてもよい。
流路層24aは、流入口243aと、流出口243bと、開口245aと、開口245bと、を備える。流入口243a、流出口243bのそれぞれは、流路層24aの側面に露出するように設けられている。
開口245aは、流路層24aを貫通して流入口243aに連通する。開口245bは、流路層24aを貫通して流出口243bに連通する。なお、開口245aないし開口245bのそれぞれは、溝により構成されてもよい。
流路層24bは、流路層24aと離間する領域24b1と、領域24b1に対して流路層24aに向かって突出するように折り曲げられた領域24b2と、を有する。領域24b1は流路層24bを貫通する開口を有していてもよい。
領域24b2は、開口246aと、開口246bと、を有する。開口246aは、開口245aを介して流入口243aに連通する。開口246bは、開口245bを介して流出口243bに連通する。
図6ないし図8に示す流路板において、流路層24aおよび流路層24bの側面は、シール材26により封止される。このとき、流路243は、領域24b2とカソード23の多孔質導電層23aとの間の空間を含む。
図9は、電気化学反応装置の他の構造例を示す断面模式図である。図9に示す電気化学反応装置は、複数のアノード11と、流路板12と、多孔質導電層23aと還元触媒層23bとを有する複数のカソード23と、流路層24aと流路層24bとを有する流路板24と、複数の流路層24cと、複数の多孔質セパレータ30と、シール材26と、を具備する。図9では、アノード11と、カソード23と、多孔質セパレータ30と、流路層24cと、を備えるユニットが複数積層されている。なお、図1ないし図8を参照して説明した電気化学反応装置と共通する部分については適宜説明を援用することができる。
複数のアノード11の一つは、複数のカソード23の一つと流路板24との間に設けられる。複数のカソード23の一つは、上記複数のアノード11の一つと流路板24cの一つとの間に設けられる。複数の多孔質セパレータ30の一つは、上記複数のアノード11の一つと上記複数のカソード23の一つとの間を分離する。複数の流路層24cの一つは、複数のカソード23の他の一つと上記複数のアノード11の一つとの間に設けられる。また、図示しないが複数のアノード11および複数のカソード23は、電源40に電気的に接続されている。
流路板12は、例えば図1に示す電気化学反応装置と同様に集電体13を介して電源40に電気的に接続されてもよい。多孔質導電層23aは、流路層24cに面する。還元触媒層23bは、多孔質セパレータ30に面する。
流路層24aは、多孔質導電層23aに面する。流路層24aは例えば図1に示す電気化学反応装置と同様に集電体25を介して電源40に電気的に接続されてもよい。流路層24bは、流路層24aに積層される。流路層24bの領域24b1は流路層24bを貫通する開口を有する。流路層24cは、例えば流路層24aと同じ構造を有する流路層を用いることができる。また、流路層24aの開口246a、246bを設けずに領域24b2が流路層24cの端部まで延在する構造を有していてもよい。このとき流路層24cの端部から流路243に直接二酸化炭素または電解液を供給してもよい。流路層24cをバイポーラプレートともいう。また、シール材26は、上記ユニットの積層体を封止する。
図9に示す電気化学反応装置では、アノード11側の電解液とカソード23側の電解液を共通化し、さらに電解液を流す流路を共通化することができる。例えば同じ流路層24cをアノード11側の流路およびカソード23側の流路として用いることができ、前述の流路のように開口を形成することによりカソード23側の流路としても用いることができる。このような構成にすると、アノード11とカソード23との接触抵抗が削減され、効率が向上するため好ましい。また、部品点数の削減によるコストダウンや小型軽量化にもなって良い。
(実施例1)
本実施例の電気化学反応装置のセルを以下のとおり作製した。エッチングにより形成されたメッシュ構造を有するチタンからなる金網の表面に酸化イリジウムを含有する酸化触媒を形成することによりアノードを形成した。また、第1の多孔質導電層とカーボンペーパからなる第2の多孔質導電層との積層体に23質量%の金坦持カーボンをスプレーして、金の坦持量が0.2mg/cm2である触媒層付きカーボンペーパを形成することによりカソードを作製した。アノードとカソードとを住友電気工業株式会社製の多孔質セパレータ(親水処理されたPTFE膜(親水性PTEF膜ともいう)、平均細孔径0.1μm、厚み60μm、空隙率0.7)で挟んで構造体(触媒面積400mm2)を作製した。なお、電子顕微鏡の観察画像から平均細孔径を測定した。
カソード側の流路板をチタンにより形成した。流路は、5回折り返すように蛇行する。流路の折り返し部では、流路が並列接続で2つに分岐する。折り返し部の分岐数は、一部合流個所を含む分岐数として規定した。L3は19mmであり、L9は0.4mmであり、L6は1.5mmであり、L8は2.0mmであり、L10は0.5mmであり、L11は0.7mmであった。アノードとカソードの流路の重なり部が6cm2であった。
アノード側の流路板をチタンにより形成した。流路は、4回折り返すように蛇行する。流路の折り返し部では、流路が並列接続で2つに分岐する。その他カソード側の流路板の構造と同様である。
アノード側の流路に電解液として1.0Mの水酸化カリウム水溶液を0.6sccmの流量で供給した。カソード側の流路には二酸化炭素ガスを30sccmの流量で供給した。アノードとカソードとの間に2.3Vの電圧を印加し、カソード側から発生する気体を捕集し、二酸化炭素の変換効率を測定した。発生する気体をサンプリングし、ガスクロマトグラフィにより同定・定量を行った。その際のカソード側に流れる電流および電流密度、および生成される水素と一酸化炭素のそれぞれの部分電流を電流計で測定した。
その結果、トータルの電流値は初期188mA/cm2、一時間後で175mA/cm2であった。ガスクロマトグラフィーとセル出口流量からファラデー効率を計算すると、一酸化炭素が初期、97.8%、一時間後が95.2%、一方水素が初期1.4%、一時間後が1.7%となった。一酸化炭素生成の部分電流密度を計算すると、初期183mA/cm2、一時間後が167mA/cm2であった。
多孔質セパレータの圧力損失を計算した。4cm角で200mA/cm2反応するのに必要な水の量の2倍で0.036cc/minの水を多孔質セパレータを介して移動させると仮定する。粘性係数0.001μPa・s、厚さ60μm、平均細孔径0.1μmの場合、圧力損失は、17kPaであり、十分気液分離を成立させることができる値であった。このときのKは3.5×10-18であった。
(比較例1)
実施例1のアノードとカソードとをイオン交換膜(Nafion115、6cm角)で挟んだこと以外は実施例1と同様の構造の電気化学反応装置のセルを作製し、同様の測定を行った。
その結果、トータルの電流値は初期65mA/cm2、一時間後で63mA/cm2であった。ガスクロマトグラフィーとセル出口流量からファラデー効率を計算すると、一酸化炭素が初期、89%、一時間後が91%、一方水素が初期7%、一時間後が5%であった。一酸化炭素生成の部分電流密度で計算すると、初期58mA/cm2、一時間後が57mA/cm2であった。このことから、比較例1は、実施例1よりも反応効率が低いことが確認された。
(比較例2)
実施例1のアノードとカソードとを住友電気工業株式会社製の多孔質セパレータ(親水処理されたPTFE膜、平均細孔径0.45μm、厚さ30μm、空隙率0.7)で挟んだこと以外は実施例1と同様の構造の電気化学反応装置のセルを作製し、同様の測定を行った。
その結果、気液分離が十分に行えず、カソード側に電解液が移動した。電流値が安定せず、安定した電気化学反応を行うことができなかった。これは、多孔質セパレータを通過した液体や発生した気泡によって触媒が有効に用いられていないことを示す。トータル電流値は50mA/cm2から100mA/cm2であった。ファラデー効率が悪化し、水素が60%以上生成した。これは、多孔質セパレータを通過した水が、カソードの触媒層に影響を及ぼし、水リッチな環境にあることによって、水素生成が増加したと考えられる。以上のように、多孔質セパレータが薄く平均細孔径0.45μmでは安定した電気化学反応は困難であることが確認された。
多孔質セパレータの圧力損失を計算した。触媒面積400mm2で100mA/cm2反応するのに必要な水の量の2倍で0.018cc/minの水を多孔質セパレータを介して移動させると仮定する。粘性係数0.001μPa・s、厚さ30μm、平均細孔径0.45μmの場合、圧力損失は、0.2kPaであった。よって、1kPa以下であるため気液分離の成立は困難であった。このときのKは7.1×10-17であった。
(比較例3)
実施例1のアノードとカソードとを住友電気工業株式会社製の多孔質セパレータ親水処理されたPTFE膜、平均細孔径0.2μm、厚さ35μm、空隙率0.5)で挟んだこと以外は実施例1と同様の構造の電気化学反応装置のセルを作製し、同様の測定を行った。
その結果、気液分離が十分に行えず、カソード側に電解液が移動した。電流値が安定せず、安定した電気化学反応を行うことができなかった。安定した電気化学反応を行うことができなかった。これは、多孔質セパレータを通過した液体や発生した気泡によって触媒が有効に用いられていないことを示す。トータル電流値は50mA/cm2から105mA/cm2であった。ファラデー効率が悪化し、水素が20%以上生成した。これは、多孔質セパレータを通過した水が、カソードの触媒層に影響を及ぼし、水リッチな環境にあることによって、水素生成が増加したと考える。以上のように、多孔質セパレータが薄く、孔径0.2μmでは安定した電気化学反応は困難であることが確認された。
多孔質セパレータの圧力損失を計算した。触媒面積400mm2で105mA/cm2反応するのに必要な水の量の2倍で0.018cc/minの水を多孔質セパレータを介して移動させると仮定する。粘性係数0.001μPa・s、厚さ30μm、平均細孔径0.2μmの場合、圧力損失は、2.0kPaであった。1kPa以上であるが、本流路の圧力損失は1kPaを超えることがあるため、気液分離の成立は困難となる。このときのKは2.8×10-17であった。また、本反応において50mA/cm2での反応条件の場合、反応のために必要な水の量の2倍で0.009cc/minの水を多孔質セパレータを介して移動させると仮定し、同様の計算を行うと、圧力損失は、0.6kPaと計算され、圧力のばらつきによって、さらに気液分離の成立は困難である。このときのKは2.8×10-17であった。
(比較例4)
実施例1のアノードとカソードとを住友電気工業株式会社製の多孔質セパレータ(親水処理されたPTFE膜、平均細孔径0.1μm、厚さ100μm、空隙率0.5)で挟んで構造体(触媒面積400mm2)を準備した以外は実施例1と同様の構造の電気化学反応装置のセルを作製し、同様の測定を行った。
その結果気液分離は成立した。電流値は50mA/cm2であったが安定せず、安定した電気化学反応を行うことができなかった。このことは、反応に必要な量の水が得られなかったためであると考えられる。さらには、多孔質セパレータの抵抗が大きく、同じ電圧では十分な電流値が得られなかったことと考える。以上のように、平均細孔径0.1μm、厚さ100μmでは安定した電気化学反応は困難であることが確認された。
この流路の圧力損失は10kPaであると仮定すると、0.0066cc/minの水を多孔質セパレータを介して移動させることができる。これは触媒面積400mm2で74mA/cm2反応するのに必要な水の量と計算され、気液分離は成立するが、本反応において反応するのに必要な水の量が不足している。このときのKは7×10-18であった。また、多孔質セパレータの圧力損失を計算すると2.6kPaであった。
(比較例5)
実施例1のアノードとカソードとを住友電気工業株式会社製の多孔質セパレータ(親水処理されたPTFE膜、平均細孔径0.008μm、厚さ30μm、空隙率0.8)で挟んで構造体(触媒面積400mm2)を準備した以外は実施例1と同様の構造の電気化学反応装置のセルを作製し、同様の測定を行った。
その結果、気液分離は成立した。一方電流値が小さく0.3mA/cm2も得られなかった、安定して電気化学反応を行うことができなかった。反応に必要な量の水が得られなかったことによる。さらには、多孔質セパレータの抵抗が大きく、同じ電圧では十分な電流値が得られなかったことと考える。以上のように、平均細孔径0.008μm、厚さ30μmでは安定した電気化学反応は困難であることが確認された。
圧力損失を100mA/cm2の反応に必要な水の量の2倍で計算すると、1318kPaであり、仮に10kPaの流路で反応を成立させようとすると、触媒面積400mm2で0.8mA/cm2反応するのに必要な水の量と計算され、気液分離は成立するが、本反応において反応するのに必要な水の量が大幅に不足している。このときのKは4.4×10-20であった。
(比較例6)
実施例1のアノードとカソードとを住友電気工業株式会社製の多孔質セパレータ((親水処理されたPTFE膜、平均細孔径0.6μm、厚さ100μm、空隙率0.6)で挟んで構造体(触媒面積400mm2)を準備した以外は実施例1と同様の構造の電気化学反応装置のセルを作製し、同様の測定を行った。
その結果、気液分離が十分に行えず、カソード側に電解液が移動した。電流値が安定せず、安定した電気化学反応を行うことができなかった。これは、多孔質セパレータを通過した液体や発生した気泡によって触媒が有効に用いられていないことを示す。トータル電流値は50mA/cm2から100mA/cm2であった。ファラデー効率が悪化し、水素が80%以上生成した。これは、多孔質セパレータを通過した水が、カソードの触媒層に影響を及ぼし、水リッチな環境にあることによって、水素生成が増加したと考える。多孔質セパレータが薄く、平均細孔径0.6μmでは安定した電気化学反応は困難であることが確認された。
多孔質セパレータの圧力損失を計算した。触媒面積400mm2で100mA/cm2反応するのに必要な水の量の2倍で0.018cc/minの水を多孔質セパレータを介して移動させると仮定する。粘性係数0.001μPa・s、厚さ100μm、平均細孔径0.6μmの場合、圧力損失は、0.3kPaであった。よって、1kPa以下であるため気液分離の成立は困難となる。このときのKは1.9×10-16であった。
実施例1、比較例1~6のセパレータの各パラメータと圧力損失との関係を表1に示す。表1からもわかるとおり、セパレータの平均細孔径、厚さ、平均細孔径と厚さの積、空隙率、および透過係数Kの少なくとも2つのパラメータを制御することにより、圧力損失を制御して気液分離を成立させつつ、反応効率を高めることができる。
上記実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。