JP2022016123A - タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を改善できるゴム組成物及びこれを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
従来からタイヤには、種々の性能が求められているが、安全性の観点から、グリップ性能が重要視されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008-101127号公報
本発明者が鋭意検討した結果、従来、高いグリップ性能を得るため、例えば、ガラス転移温度(Tg)の高いスチレンブタジエンゴム(SBR)を使用することが知られている。しかし、SBRを使用すると温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなる(低温条件下でのグリップ性能と高温条件下でのグリップ性能の差が大きくなる)という問題があることが判明した。
このように従来の技術では、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を改善するという点では改善の余地があった。
本発明は、前記課題を解決し、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を改善できるゴム組成物及びこれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
前記水添ジシクロペンタジエン系樹脂の水添率が50モル%以上であることが好ましい。
スチレンブタジエンゴムと、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含有することが好ましい。
スチレン系樹脂を含有することが好ましい。
ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを30質量部以上含有することが好ましい。
前記タイヤ用ゴム組成物はトレッド用ゴム組成物であることが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤに関する。
本発明は、液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物であるので、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を改善できる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含有する。これにより、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を改善できる。
なお、本明細書では、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能をまとめてグリップ性能とも記載する。
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
本発明者の検討の結果、従来、SBRと共にフェノール樹脂が併用されていたが、SBRと共にフェノール樹脂を併用すると、高温域のグリップ性能(高温条件下でのグリップ性能)は向上するものの、ポリマーのスチレン部分とフェノール樹脂が相溶・相互作用することで、低温域でゴムが硬くなり、また低温域のtanδも下がるため低温域のグリップ性能(低温条件下でのグリップ性能)は下がる傾向にあることが判明した。
一方、本発明では、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物において、液状スチレンブタジエン共重合体及び水添DCPD系樹脂を併用することにより、高温域のグリップ性能(高温tanδ、高温条件下でのグリップ性能)を向上できる。また、ゴム成分と水添DCPD系樹脂が混ざり合わない(非相溶)ため、低温域のゴムの柔らかさを損なわず、良好な低温条件下でのグリップ性能も得られる。
なお、水添DCPD系樹脂ではなく、非水添のDCPD系樹脂を用いた場合は、耐摩耗性能が損なわれ、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を充分に改善できない傾向がある。
また、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物において、液状スチレンブタジエン共重合体及び水添DCPD系樹脂を併用することにより、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を相乗的に改善できる。
ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジエン系ゴムが好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRがより好ましく、SBRとイソプレン系ゴム及び/又はBRとを用いることが更に好ましい。
ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
SBRのスチレン量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、最も好ましくは30質量%以上、より最も好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは65質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内にすることで、特に、スチレン量を大きく(所定量以上と)することにより、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
SBRのビニル量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であり、100質量%であってもよい。上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。また、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)も使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRのシス量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
イソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
また、シス量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)、ビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン量は、H-NMR測定によって測定できる。
上記ゴム組成物は、液状スチレンブタジエン共重合体を含有する。液状スチレンブタジエン共重合体は、常温(25℃)で液体状態のスチレンとブタジエンとの共重合体である。液状スチレンブタジエン共重合体は、常温で液体状態であるため、通常、可塑剤として機能する。
液状スチレンブタジエン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、10万以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、液状スチレンブタジエン共重合体等の液状ジエン系重合体のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状スチレンブタジエン共重合体のスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
液状スチレンブタジエン共重合体のビニル量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
液状スチレンブタジエン共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、液状スチレンブタジエン共重合体以外の可塑剤を含有してもよい。
例えば、液状スチレンブタジエン共重合体以外の液状ジエン系重合体が挙げられ、具体的には、液状ブタジエン重合体、液状イソプレン重合体、液状スチレンイソプレン共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。液状スチレンブタジエン共重合体以外の液状ジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は、前述の液状スチレンブタジエン共重合体と同様の範囲が好ましい。
液状ジエン系重合体としては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
可塑剤としては、オイル、液状樹脂なども挙げられる。既述の可塑剤(液状スチレンブタジエン共重合体等の液状ジエン系重合体、オイル、液状樹脂などの常温(25℃)で液体状態で可塑化作用を持つ材料)は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記可塑剤は、環境の面から、多環式芳香族含有量(PCA)が3質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。該多環式芳香族含有量(PCA)は、英国石油学会346/92法に従って測定される。
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
上記液状樹脂(常温(25℃)で液体状態での樹脂)としては、特に制限されないが、例えば、液状の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、またはこれらの水素添加物などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
可塑剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
上記ゴム組成物は、水添ジシクロペンタジエン系樹脂を含有する。
本明細書において、水添ジシクロペンタジエン系樹脂とは、水素添加されたジシクロペンタジエン系樹脂を意味する。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書において、ジシクロペンタジエン系樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、ジシクロペンタジエンを含む樹脂であり、樹脂100質量%中のジシクロペンタジエン由来単位の含有量が、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
ジシクロペンタジエン系樹脂としては、例えば、石油のC5留分から抽出されたシクロペンタジエンを二量体化したジシクロペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂が挙げられる。
上記水素添加は、公知の方法により行うことができ、例えば、金属触媒による接触水素添加、ヒドラジンを用いる方法などをいずれも好適に使用することができる(特開昭59-161415号公報など)。例えば、金属触媒による接触水素添加は、有機溶媒中、金属触媒の存在下、水素を加圧添加することにより実施することができ、該有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等をいずれも好適に使用することができる。これら有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、金属触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどをいずれも好適に使用することができる、これら金属触媒は1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加圧する際の圧力としては、例えば、1~300kg重/cmであることが好ましい。
水添ジシクロペンタジエン系樹脂において、二重結合の水素添加率(水添率)は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは35モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、特に好ましくは65モル%以上、最も好ましくは80モル%以上、より最も好ましくは90モル%以上、更に最も好ましくは100モル%である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、水素添加率(水添率)は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの二重結合部のスペクトル減少率から計算することができる。本明細書において、水素添加率(水添率)とは、二重結合の水素添加率を意味する。
水添ジシクロペンタジエン系樹脂の軟化点は、60~200℃が好ましい。上限は160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、下限は80℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
水添ジシクロペンタジエン系樹脂としては、例えば、ENEOS社、丸善石油化学株式会社等の製品を使用できる。
水添ジシクロペンタジエン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上、最も好ましくは25質量部以上である。水添ジシクロペンタジエン系樹脂の含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、水添ジシクロペンタジエン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
水添ジシクロペンタジエン系樹脂以外の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、固体状のスチレン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、非水添ジシクロペンタジエン系樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スチレン系樹脂が好ましい。例えば、SBRを含むゴム組成物において、水添ジシクロペンタジエン系樹脂に加えてスチレン系樹脂を配合することにより、効果がより好適に得られる傾向がある。これは、低温グリップ領域ではSBRとスチレン系樹脂が相溶することでグリップ性能が向上し、高温グリップ領域ではジシクロペンタジエン系樹脂によりグリップ性能が向上するが、スチレン系樹脂とジシクロペンタジエン系樹脂の相溶性が低いため、それぞれの温度域で各樹脂が単独で作用しているためと推測される。
水添ジシクロペンタジエン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
なかでも、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
スチレン系樹脂の軟化点は、60~200℃が好ましい。上限は160℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましく、120℃以下が特に好ましく、100℃以下が最も好ましく、下限は70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
スチレン系樹脂を含有する場合、スチレン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。スチレン系樹脂の含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、チウラム系加硫促進剤を含む。
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、下記式(I)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2022016123000001
(式中、yは1以上の整数である。R21~R24は、同一若しくは異なって、炭素数1~30のヒドロカルビル基を表す。R21及びR22、R23及びR24は、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
上記式(I)において、R21~R24は、同一若しくは異なって、炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~10)のヒドロカルビル基を表す。該ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリール基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
上記式(I)において、yは1以上の整数であり、好ましくは1~10、より好ましくは2~4である。
上記式(I)で示されるチウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、前記効果の点から、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
チウラム系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましく3.0質量部以上、特に好ましくは4.0質量部以上である。該チウラム系加硫促進剤の含有量は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは9.0質量部以下、更に好ましくは8.0質量部以下、特に好ましくは7.0質量部以下である。上記範囲内の量のチウラム系加硫促進剤を含む配合に液状スチレンブタジエン共重合体及び水添DCPD系樹脂を添加することで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、カーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは130m/g以上である。また、上記NSAは、好ましくは450m/g以下、より好ましくは400m/g以下、更に好ましくは200m/g以下、特に好ましくは170m/g以下、最も好ましくは155m/g以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上である。また、該DBPは、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは135ml/100g以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS-K6217-4:2001に準拠して測定できる。
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
カーボンブラックを含有する場合、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは30質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上、最も好ましくは100質量部以上である。該含有量は、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、更に好ましくは200質量部以下、特に好ましくは150質量部以下、最も好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、特に、カーボンブラックの含有量を多量(所定量以上)とすることにより、前記効果がより好適に得られる傾向がある。すなわち、液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含むゴム組成物において、比較的多量のカーボンブラックを配合することにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、シリカを含有してもよい。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
シリカのNSAは、好ましくは50m/g以上、より好ましくは150m/g以上である。また、該NSAは好ましくは300m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
シリカを含有する場合、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、好ましくは5質量部以上である。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
上記ゴム組成物は、シリカを配合する場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
カーボンブラック、シリカ以外に使用できる充填剤(補強性充填剤)としては、例えば、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、酸化チタンなどを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、架橋剤(加硫剤)として、硫黄を含有することが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、上記チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を含有することが好ましい。
チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、上記チウラム系加硫促進剤と共に、スルフェンアミド系加硫促進剤を用いることが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を含有する場合、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、最も好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは17質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは13質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは7質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0質量部である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、下記式(1)で表されるジチオリン酸亜鉛を(好ましくは酸化亜鉛の代わりに)含有することが好ましい。
Figure 2022016123000002
(式中、R~Rはそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表す。)
式(1)において、R~Rが表す炭素数1~18の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、4-メチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、オクタデシル基等が挙げられ、一方、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。なかでも、ゴム組成物中で分散し易く、かつ製造が容易であるという点から、R~Rは、炭素数2~8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であることが好ましく、n-ブチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-オクチル基であることがより好ましく、n-ブチル基であることが更に好ましい。
上記ジチオリン酸亜鉛は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ジチオリン酸亜鉛としては、例えば、ラインケミー社等の製品を使用することができる。
上記ジチオリン酸亜鉛を含有する場合、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量(有効成分の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤及びキノリン系老化防止剤の併用がより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機過酸化物);等を例示できる。これら各成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適に用いられる。
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
なお、上記タイヤのトレッドは、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
上記タイヤとしては、特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等が挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:JSR(株)製のHP755B(S-SBR、油展〔ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有〕、スチレン量:40質量%、ビニル量:39質量%))
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含有量:97質量%)
水添DCPD1:ENEOS社製のT-REZ OP501(水添DCPD系樹脂、水添率:100モル%、軟化点:140℃)
水添DCPD2:試作品(水添DCPD系樹脂、水添率:60モル%、軟化点:140℃)
水添DCPD3:試作品(水添DCPD系樹脂、水添率:30モル%、軟化点:140℃)
非水添DCPD:東京化成工業(株)製のDCPD樹脂(製品コードDO443、非水添DCPD系樹脂、水添率:0モル%)
アルキルフェノール系樹脂:BASF社製のコレシン(p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂(p-t-ブチルフェノールとアセチレンの縮合樹脂)、軟化点145℃)
スチレン系樹脂:アリゾナケミカル社製 Sylvatraxx4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
液状スチレンブタジエン共重合体1:スチレン量:40質量%、ビニル量:50質量%、Mn:4500
液状スチレンブタジエン共重合体2:スチレン量:60質量%、ビニル量:30質量%、Mn:4500
液状スチレンブタジエン共重合体3:Cray Valley製のricon100(スチレン量:20質量%、ビニル量:60質量%、Mn:4500
オイル:H&R社製のアロマ系プロセスオイル(TDAEオイル、Vivatec500)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9 SAF(NSA:142m/g、DBP:115ml/100g)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤1:大内新興化学(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
スルフェンアミド系加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
チウラム系加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT-N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
チウラム系加硫促進剤2:三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド(上記式(I)で示されるチウラム系加硫促進剤、R21~R24:ベンジル基、y:2))
グアニジン系加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
ジチオリン酸亜鉛:ラインケミー社製のTP-50(ジチオリン酸亜鉛及びポリマーの混合物、式(1)において、R~Rがn-ブチル基、有効成分50質量%)
硫黄:細井化学(株)製のHK-200-5(5%オイル硫黄)
〔実施例及び比較例〕
各表に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を165℃で、4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、80℃で、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で15分間プレス加硫することで試験用カートタイヤ(タイヤサイズ:11×7.10-5)を製造した。
得られた試験用カートタイヤを用いて以下の評価を行った。結果を各表に示す。なお、表1、2において、それぞれ基準比較例を比較例1-1、2-1とした。
(グリップ性能)
得られた試験用カートタイヤをカートに装着し、1周約5kmのサーキットコースを5周走行した際のテストドライバーによる官能評価によりグリップ性能を評価した。指数が大きいほどグリップ性能が良好であることを示す。なお、低温条件下でのグリップ性能は路面温度が15℃、高温条件下でのグリップ性能は路面温度が30℃の条件にて実施した。なお、高温条件下でのグリップ性能は、指数が60以上の場合に良好であると判断した。
Figure 2022016123000003
Figure 2022016123000004
表1、2より、液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含有する実施例は、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能(低温条件下でのグリップ性能、高温条件下でのグリップ性能の2つの指数の総和で表す)を改善できることが分かった。
比較例1-4~1-6、実施例1-4の対比により、チウラム系加硫促進剤を含有する配合において液状スチレンブタジエン共重合体及び水添ジシクロペンタジエン系樹脂を併用することにより、低温条件下でのグリップ性能及び高温条件下でのグリップ性能の総合性能を相乗的に改善できることが分かった。

Claims (7)

  1. 液状スチレンブタジエン共重合体と、水添ジシクロペンタジエン系樹脂と、チウラム系加硫促進剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記水添ジシクロペンタジエン系樹脂の水添率が50モル%以上である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. スチレンブタジエンゴムと、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含有する請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. スチレン系樹脂を含有する請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを30質量部以上含有する請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. トレッド用ゴム組成物である請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. 請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤ。
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