JP2022012545A - 固体製剤及び固体製剤への印刷方法 - Google Patents

固体製剤及び固体製剤への印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】素錠又は口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、インクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式で印刷し、当該表面の補強をすることで機械的強度を向上させた固体製剤及び固体製剤への印刷方法を提供する。【解決手段】本発明の固体製剤は、素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、高分子成分を含む可食性のインクジェット用水性インクの表面固化層が設けられ、及び/又は、素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に、インクジェット用水性インクの浸透固化層が設けられてなり、高分子成分が、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物の部分中和物であり、高分子化合物の部分中和物が、2.5~35mol%の範囲の中和度を有する。【選択図】 なし

Description

本発明は、固体製剤及び固体製剤への印刷方法に関し、より詳細には、素錠又は口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、インクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式により表面固化層及び/又は浸透固化層が印刷され、補強された固体製剤及び固体製剤への印刷方法に関する。
市場に流通する錠剤の中には、その表面にコーティングが施されているもの(以下、「コーティング錠剤」という。)と、施されていないもの(以下、「非コーティング錠剤」という。)がある。コーティング錠剤としては、FC(フィルムコート)錠や糖衣錠が挙げられ、非コーティング錠剤としては素錠や口腔内崩壊錠(OD錠)が挙げられる(特許文献1)。非コーティング錠剤は、一般に、水に対する溶解性、溶出性及び崩壊性を有するため、表面の機械的強度が弱く、粉立ちや割れ・欠け等を発生し易い。そのため、当該非コーティング錠剤の製造過程、特に検査工程や包装工程等でのハンドリング性が容易でないという問題がある。口腔内崩壊錠は、非コーティング錠剤の中でも表面の機械的強度が極めて弱く、前述の問題が顕著に表れる。
特開2011-236279号
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、素錠又は口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、インクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式で印刷し、当該表面の補強をすることで機械的強度を向上させた固体製剤及び固体製剤への印刷方法を提供することにある。
本発明に係る固体製剤は、前記の課題を解決するために、素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、高分子成分を含む可食性のインクジェット用水性インクの表面固化層が設けられ、及び/又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に、前記インクジェット用水性インクの浸透固化層が設けられてなり、前記高分子成分が、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物の部分中和物であり、前記高分子化合物の部分中和物が、2.5mol%~35mol%の範囲の中和度を有する。
前記構成の固体製剤に於いては、素錠若しくは口腔内崩壊錠(以下、「素錠等」という場合がある。)の表面の少なくとも一部に、インクジェット用水性インク(以下、「水性インク」という場合がある。)の表面固化層がコーティングされ、及び/又は、素錠等の表面の少なくとも一部における最表層部分に、当該水性インクの浸透固化層が設けられている。これにより、前記構成の固体製剤は、表面固化層及び浸透固化層が設けられていない固体製剤と比較して、機械的強度を向上させることができる。その結果、素錠等の表面の少なくとも一部で、粉立ちや割れ・欠け等の発生を低減ないし防止することができる。
また、表面固化層及び浸透固化層は高分子成分を含む可食性の水性インクにより形成されるものであるため、医薬品又は食品等の固体製剤の表面に直接形成可能である。さらに、表面固化層及び浸透固化層はインクジェット方式での非接触の印刷により形成可能なため、例えば、素錠等の表面の平滑性が低い場合でも、当該表面の表面状態に良好に追従させたコーティング層及び/又は浸透層とすることができる。
さらに、水性インクとしては、メタクリル酸コポリマーS等の高分子化合物の部分中和物を高分子成分として含んでおり、当該部分中和物は、例えば、水性インク中に分散した状態で存在する場合でも、その分散粒子径D50及びD99が大きくなり過ぎるのを防止する。これにより、インクジェット方式で印刷を行う際、水性インクがインクジェットヘッドのノズル近傍で目詰まりするのを防止し、良好な吐出安定性を可能にする。また、メタクリル酸コポリマーS等の高分子化合物は素錠等に対し優れた定着性を示す。従って、前記構成に於いては、定着性に優れた表面固化層及び/又は浸透固化層を備える固体製剤を提供することができる。
また前記構成に於いては、高分子化合物の部分中和物として、中和度が2.5mol%以上、35mol%以下のものを用いる。この様な部分中和物を用いると、インクジェットヘッドにおける水性インクのノズル詰まりを抑制し、吐出安定性を良好に維持できるので、インクジェット方式で印刷された表面固化層や浸透固化層の形成が可能になる。
前記の構成に於いては、前記高分子化合物の部分中和物が前記インクジェット用水性インク中に分散、又は溶解した状態で存在してもよい。
また、前記の構成に於いては、前記高分子成分の固形分濃度が、前記インクジェット用水性インクの全質量に対し、1質量%~30質量%の範囲内であることが好ましい。
表面固化層及び浸透固化層は少なくとも高分子成分を含み構成されるので、水性インク中の高分子成分の固形分濃度を1質量%以上にすることにより、機械的強度を良好に維持することができる。その一方、高分子成分の固形分濃度を30質量%以下にすることにより、表面固化層の厚さ及び浸透固化層の深さが過度に大きくなり過ぎて、固体製剤の溶解性、溶出性及び崩壊性が過度に損なわれるのを防止し、良好に維持することができる。
前記の構成に於いては、前記インクジェット用水性インクに含まれる溶媒が水系溶媒であることが好ましい。溶媒として水系溶媒を用いることにより、例えば、浸透固化層を形成する際に、素錠及び口腔内崩壊錠の最表層部分への水性インクの浸透を容易にすることができる。また水系溶媒を用いることにより、インクジェットヘッドのノズル近傍での水性インクの過度な乾燥を防ぎ、インクジェット方式での印刷の際、水性インクの飛翔安定性を確保することができる。
本発明に係る固体製剤への印刷方法は、前記の課題を解決するために、素錠又は口腔内崩壊錠からなる固体製剤への印刷方法であって、高分子成分を含む可食性のインクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式で印刷することにより、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に当該インクジェット用水性インクの付着層を形成し、及び/又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に当該インクジェット用水性インクの浸透層を形成する工程と、前記付着層及び/又は浸透層を乾燥させることにより、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に表面固化層を形成し、又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に、前記インクジェット用水性インクの浸透固化層を形成し、又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に前記浸透固化層を形成すると共に、当該浸透固化層上に前記インクジェット用水性インクの表面固化層を形成する工程とを含み、前記高分子成分が、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物の部分中和物であり、前記高分子化合物の部分中和物が、2.5mol%~35mol%の範囲の中和度を有する。
前記構成では、先ず、水性インクを用いたインクジェット方式により、素錠等の表面の少なくとも一部に付着着を形成し、及び/又は、素錠等の最表層部分の少なくとも一部に浸透層を形成する。より具体的には、例えば、水性インクの塗布量を少なくした場合は、素錠等への水性インクの浸透が抑制されるため、素錠等の表面に水性インクの付着層を形成することができる。その一方、水性インクの塗布量を多くした場合は、素錠等に水性インクが浸透するため、素錠等の最表層部分に水性インクの浸透層を形成することができる。さらに水性インクの塗布量を多くした場合は、浸透層上に付着層も形成することができる。
また、水性インクとしては、高分子成分、すなわちメタクリル酸コポリマーS等の高分子化合物の部分中和物が含まれるものを用いる。そして、この部分中和物は、例えば、水性インク中に分散した状態で存在する場合でも、その分散粒子径D50及びD99が大きくなり過ぎるのを防止する。そのため、インクジェット方式で印刷を行う場合にも、水性インクがインクジェットヘッドのノズル近傍で目詰まりするのを防止し、良好な吐出安定性を可能にする。
また、前記構成では、水性インクからなる付着層及び/又は浸透層の乾燥も行う。乾燥を行うことで、素錠等が水性インクにより溶解し、崩壊するのを防止することができる。付着層を乾燥させることで、高分子成分を少なくとも含む表面固化層を形成することができる。また、浸透層を乾燥させることで、高分子成分を少なくとも含む浸透固化層を形成することができる。これにより、本発明では、表面固化層及び浸透固化層が設けられていない固体製剤と比較して、表面及び最表層部分の機械的強度を向上させることができる。その結果、粉立ちや割れ・欠け等の発生を低減ないし防止した固体製剤の提供が可能になる。また、水性インクに含まれるメタクリル酸コポリマーS等の高分子化合物の部分中和物は、素錠等に対し優れた定着性を示す。そのため、定着性に優れた表面固化層及び浸透固化層を固体製剤の表面に形成することができる。
また、表面固化層及び浸透固化層は、可食性の水性インクにより形成されるものであるため、本願発明を医薬品や食品等の固体製剤に適用する場合にも、直接素錠等の表面に形成可能である。さらに、表面固化層及び浸透固化層はインクジェット方式での非接触の印刷により形成可能なため、例えば、素錠等の表面の平滑性が低い場合でも、当該表面の表面状態に良好に追従させたコーティング層として形成することができる。
また前記構成に於いては、高分子化合物の部分中和物として、中和度が2.5mol%以上、35mol%以下のものを用いる。この様な部分中和物を用いることにより、インクジェット方式での印刷の際、インクジェットヘッドにおける水性インクのノズル詰まりを抑制し、良好な吐出安定性を維持することができる。
前記の構成に於いては、前記表面固化層、又は表出している前記浸透固化層上に、前記インクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式で印刷することにより他の付着層を形成する工程と、前記他の付着層を乾燥させることにより、前記表面固化層又は浸透固化層上に、他の表面固化層を形成する工程とを含んでもよい。
前記の構成によれば、素錠等の表面の少なくとも一部に形成された表面固化層や浸透固化層に対し、さらに他の表面固化層を積層することができる。これにより、素錠等の表面又は最表層部分の機械的強度を一層向上させ、粉立ちや割れ・欠け等の発生をさらに低減ないし防止した固体製剤の提供が可能になる。
前記の構成に於いては、前記インクジェット方式で印刷する際の前記インクジェット用水性インクの塗布量が、0.1mg/cm~10mg/cmの範囲内であることが好ましい。
水性インクの塗布量を0.1mg/cm以上にすることにより、一定程度以上の厚さの表面固化層、及び一定程度以上の深さの浸透固化層を形成することができ、固体製剤の機械的強度を良好に維持することができる。その一方、水性インクの塗布量を10mg/cm以下にすることにより、水性インクが素錠等に付着した際に、過度に素錠等を溶解させ、崩壊させるのを抑制することができる。
前記の構成に於いては、前記高分子成分の固形分濃度が、前記インクジェット用水性インクの全質量に対し、1質量%~30質量%の範囲内であることが好ましい。
表面固化層及び浸透固化層は少なくとも高分子成分を含み構成されるので、水性インク中の高分子成分の固形分濃度を1質量%以上にすることにより、機械的強度を良好に維持することができる。その一方、高分子成分の固形分濃度を30質量%以下にすることにより、表面固化層の厚さ及び浸透固化層の深さが過度に大きくなり過ぎて、固体製剤の溶解性、溶出性及び崩壊性が過度に損なわれるのを防止し、良好に維持することができる。
前記の構成に於いては、前記高分子化合物の部分中和物が前記インクジェット用水性インク中に分散、又は溶解した状態で存在してもよい。
前記の構成に於いては、前記インクジェット用水性インクに含まれる溶媒が水系溶媒であることが好ましい。溶媒として水系溶媒を用いることにより、例えば、浸透固化層を形成する際に、素錠及び口腔内崩壊錠の最表層部分への水性インクの浸透を容易にすることができる。また水系溶媒を用いることにより、インクジェットヘッドのノズル近傍での水性インクの過度な乾燥を防ぎ、インクジェット方式での印刷の際、水性インクの飛翔安定性を確保することができる。
本発明によれば、素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、可食性の高分子成分を含むインクジェット用水性インクの表面固化層がコーティングされ、並びに/又は、素錠等の最表層部分の少なくとも一部に、当該インクジェット用水性インクの浸透固化層が設けられているので、当該表面の少なくとも一部の機械的強度の向上が図れる。その結果、溶解性、溶出性及び崩壊性が過度に損なわれることなく、素錠等の表面の少なくとも一部での粉立ちや割れ・欠けの発生を低減又は防止することができる。また、表面固化層及び浸透固化層は可食性を有するインクジェット用水性インクにより形成されるため、医薬品又は食品等の固体製剤の表面に直接形成可能である。さらに、表面固化層及び浸透固化層はインクジェット方式による非接触での印刷で形成されるので、素錠及び口腔内崩壊錠の表面の平滑性が低い場合でも、その表面状態に追従した均一な厚さ又は深さで形成することができる。
さらに、水性インクとしては、メタクリル酸コポリマーS等の高分子化合物の部分中和物を高分子成分として含むものを用いるので、当該部分中和物は、例えば、水性インク中に分散した状態で存在する場合でも、その分散粒子径D50及びD99が大きくなり過ぎるのを防止する。これにより、インクジェット方式で印刷する際、水性インクがインクジェットヘッドのノズル近傍で目詰まりするのを防止するので、良好な吐出安定性で固体製剤への表面固化層及び浸透固化層の印刷が可能になる。
(インクジェット用水性インク)
先ず、本実施の形態に係るインクジェット用水性インク(以下、「水性インク」という。)について、以下に説明する。
本実施の形態に係る水性インクは、少なくともインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)を含んでおり、水性インクを用いた印刷により、固体製剤の表面での表面固化層及び浸透固化層(詳細については、後述する。)の形成を可能にする。尚、本実施の形態に於いて、水性インクは、水性インク組成物を含む場合の他、水性インク組成物自体である場合も含む。
ここで、本明細書に於いて「水性インク」及び「水性インク組成物」の「水性」とは、主溶媒が水系溶媒であることを意味する。
また、水性インクは、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した材料を用いることにより、可食性を有するものにすることができ、かつ、インクジェット方式での印刷に好適に用いることができる。ここで、本明細書に於いて「可食性」とは、医薬品若しくは医薬品添加物として経口投与が認められている物質、及び/又は食品若しくは食品添加物として認められているものを意味する。また、本明細書に於いて「インクジェット方式」とは、水性インクを微細なインクジェットヘッドより液滴として吐出し、その液滴を固体製剤の表面に定着させて表面固化層を形成したり、又は、前記液滴を固体製剤の最表層部分に浸透させて浸透固化層を形成させる印刷方式を意味する。尚、固体製剤の詳細については、後述する。
[水性インク組成物]
水性インク組成物は、可食性を有する高分子成分と、主溶媒としての水系溶媒とを少なくとも含む。高分子成分は溶媒中に分散した状態で存在してもよく、又は溶媒に溶解した状態で存在してもよい。
水性インク組成物は、可視光領域(400nm~760nm)に於いて光透過性を有していてもよい。また、水性インク組成物が有する光透過性は無色である場合の他、有色であってもよい。また、本明細書に於いて「光透過性」とは、入射した可視光の少なくとも一部を透過する性質を意味する。より具体的には、例えば、厚さ2μmの表面固化層に対し、波長域が400nm~800nmの可視光の透過率が、表面固化層が存在しない場合(透過率が100%の場合)に対し、50%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の場合である。
本実施の形態の高分子成分は、高分子化合物の部分中和物である。高分子成分として高分子化合物の部分中和物を用いることにより、当該部分中和物が水性インク組成物中で分散して存在する場合にも、分散粒子径D50及びD99が大きくなり過ぎるのを防止する。これにより、後述のインクジェット方式で印刷を行う際には、水性インクがインクジェットヘッドのノズル近傍で目詰まりするのを防止し、良好な吐出安定性を可能にする。
尚、本明細書に於いて「部分中和」(又は不完全中和)とは、高分子化合物を水溶液中で中和した結果、高分子化合物の中和度が0mol%を超えて、100mol%未満であることを意味する。また、本明細書に於いて「部分中和物」とは、部分中和した高分子化合物を意味する。尚、中和度が0mol%の場合は、未中和となる。
前記高分子化合物は、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの高分子化合物としては、以下に挙げる市販品を用いることが可能である。
・メタクリル酸コポリマーS:
EUDRAGIT(登録商標) S100(商品名、メタクリル酸メチル70質量%とメタクリル酸30質量%、エボニックデグサジャパン(株)製)
・メタクリル酸コポリマーL:
EUDRAGIT(登録商標) L100(商品名、メタクリル酸メチル50質量%とメタクリル酸50質量%、エボニックデグサジャパン(株)製)
・メタクリル酸コポリマーLD:
EUDRAGIT(登録商標) L30D-55(商品名、アクリル酸エチル50質量%とメタクリル酸50質量%、エボニックデグサジャパン(株)製)、Kollicoat(登録商標) MAE 30D(商品名、BASFジャパン(株)製)、Kollicoat(登録商標) MAE 30DP(商品名、BASFジャパン(株)製)、DSP五協フード&ケミカル(株)製のメタクリル酸コポリマーLD、ポリキッド(登録商標)PA-30(商品名、三洋化成工業(株)製)、ポリキッド(登録商標)PA-30S(商品名、三洋化成工業(株)製)
・アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体:
EUDRAGIT(登録商標) FS30D(商品名、エボニックデグサジャパン(株)製)
高分子成分の固形分濃度は、水性インク組成物の全質量に対し、1質量%~30質量%の範囲内であることが好ましく、2質量%~15質量%の範囲内であることがより好ましく、3質量%~10質量%の範囲内であることが特に好ましい。高分子成分の固形分濃度を1質量%以上にすることにより、機械的強度を良好に維持することができる。その一方、高分子成分の固形分濃度を30質量%以下にすることにより、表面固化層の厚さ及び浸透固化層の深さが過度に大きくなり過ぎて、固体製剤の溶解性、溶出性及び崩壊性が過度に損なわれるのを防止し、良好に維持することができる。また、水性インクの粘度が過度に大きくなり過ぎて、吐出性能が低下するのを防止することができる。
高分子成分(すなわち、高分子化合物の部分中和物)が分散した状態で存在する場合、当該高分子化合物の部分中和物の体積基準積算粒度分布に於ける積算粒度で50%の粒子径(D50)は、100nm~1000nm以下の範囲内が好ましく、200nm~700nmの範囲内がより好ましい。また、高分子化合物の部分中和物の体積基準積算粒度分布に於ける積算粒度で99%の粒子径(D99)は、250nm~6500nmの範囲内が好ましく、300nm~1300nmの範囲内がより好ましい。D50を100nm以上にすることにより、分散安定性及び吐出安定性の悪化を防止することができる。その一方、D50を1000nm以下にすることにより、高分子化合物の部分中和物の分離や沈降を防止し、分散安定性の維持が図れる。尚、水性インク組成物中に複数種の高分子成分が含まれる場合は、各々の高分子成分のD50及びD99が前記数値範囲に含まれていればよい。また、D50及びD99は、マイクロトラックUPA-EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した値である。
本実施の形態の水性インク組成物中には、高分子化合物を部分中和するための中和剤を含むのが好ましい。これにより、高分子化合物を水性インク組成物中で良好に分散させることが可能になる。高分子化合物を完全中和すると、水性インク組成物が増粘する結果、高分子化合物の含有量を増やすことが困難になる場合がある。また、水性インク組成物の吐出安定性が低下する場合もある。尚、高分子化合物を水性インク組成物中で分散させる分散剤を別途添加してもよい。
中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、アンモニア及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの化合物を中和剤として用いることにより、高分子化合物の中和度の制御を容易にする。さらに、中和度の制御により、水性インク組成物中で分散状態にある高分子化合物の部分中和物のD50及びD99が過度に大きくなるのを防止し、また水性インク組成物の粘度についても過度な上昇を抑制する。その結果、水性インク組成物の吐出安定性を一層向上させることができる。
さらに、例示した中和剤は、水酸化カルシウム等と比較して析出し難い物性を有するため、インクジェットヘッドでの水性インク組成物のノズル詰まりを防止し、良好な吐出安定性を維持することができる。また、例示した中和剤のうち、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム及びクエン酸三ナトリウムは、例えば、アンモニアと比較して揮発し難い物性を有している。そのため、水性インク組成物の粘度上昇をさらに防止することができる。さらに、中和剤として水酸化ナトリウムを用いる場合には、炭酸ナトリウム等のナトリウム塩と異なり、炭酸ガスを発生させないため、一層好適である。
また、本実施の形態の水性インク組成物に於いては、その他の添加剤が配合されていてもよい。その他の添加剤としては、表面張力調整剤、湿潤剤、分散剤、有機アミン、界面活性剤、pH調整剤、キレート化剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤等が挙げられる。本実施の形態の水性インク組成物は、食品製剤や医薬製剤等の固体製剤への印刷に用いるので、これらの他の添加剤は、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものであることが好ましい。
表面張力調整剤としては特に限定されず、具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸デカグリセリル、ラウリン酸ヘキサグリセリンエステル、オレイン酸ヘキサグリセリンエステル、縮合リノレン酸テトラグリセリンエステル、脂肪酸エステルヤシパーム、HLBが15以下のラウリン酸デカグリセリル、HLBが13未満のオレイン酸デカグリセリル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。尚、例示した表面張力調整剤は何れも薬事法等の基準に適合するものであるので、固体製剤への印刷にも適用可能である。
カプリル酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステル CE19D(商品名、三菱化学フーズ(株)製、HLB値15)、SYグリスターMCA750(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値16)等が挙げられる。
尚、前記HLBの値は、グリフィン法によるHLB値であり、下記式によって得られる値を意味する。
HLB値=20×(親水基の式量の和/分子量)
HLB値は0~20の範囲内の値となり、HLB値が大きいほど親水性が強くなり、HLB値が小さいほど疎水性が強くなる。
ラウリン酸デカグリセリルとしては、HLBが15以下のものを用いることができる。HLBが15を超えるラウリン酸デカグリセリルであると、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりに起因してかすれ等が発生するなど、吐出安定性が低下する。HLBの下限は、溶媒に対する溶解度の観点からは、10以上であることが好ましい。また、HLBが15以下のラウリン酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) DECAGLYN 1-L(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値14.5)、SYグリスターML-750(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値14.8)等が挙げられる。
オレイン酸デカグリセリルとしては、HLBが13未満のものを用いることができる。HLBが13以上であると、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりに起因してかすれ等が発生するなど、吐出安定性が低下する。尚、HLBの下限は、溶媒に対する溶解度の観点からは、10以上であることが好ましい。また、HLBが13未満のオレイン酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) DECAGLYN 1-OV(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値12)、SYグリスターMO-7S(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値12.9)等が挙げられる。
ラウリン酸ヘキサグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) HEXAGLYN 1-L(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値14.5)、SYグリスターML-500(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値13.5)等が挙げられる。
オレイン酸ヘキサグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、SYグリスターMO-5S(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値11.6)等が挙げられる。
縮合リノレン酸テトラグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、SYグリスターCR-310(商品名、阪本薬品工業(株)製)等が挙げられる。
脂肪酸エステルヤシパームとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、チラバゾールW-01(商品名、太陽化学(株)製)等が挙げられる。
表面張力調整剤の含有量は、水性インク組成物の全質量に対し、0.1質量%~10質量%の範囲内が好ましく、0.5質量%~5質量%の範囲内がより好ましい。表面張力調整剤の含有量が0.1質量%以上であると、インクジェット方式で印刷を行った場合に、インクジェットヘッドにおけるノズルでのメニスカス形成不良等による吐出不良を防止し、当該ノズルの目詰まりが発生するのを防止することができる。その結果、吐出安定性の向上が図れる。その一方、表面張力調整剤の含有量が10質量%以下であると、表面張力調整剤の不溶分や乳化不良による吐出への悪影響を防止することができる。
湿潤剤としては、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。尚、これらの湿潤剤は薬事法等の基準に適合するものであるので、固体製剤への印刷に適用可能である。
湿潤剤の添加量は、水性インク組成物の全質量に対し、1質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましい。湿潤剤の含有量を1質量%以上にすることにより、インクジェット方式で印刷する際に、インクジェットヘッドのノズル近傍での目詰まりを防止し、吐出性能の一層の向上が図れる。その一方、湿潤剤の含有量を50質量%以下にすることにより、水性インク組成物の粘度を適性に制御することができる。
尚、有機アミン、界面活性剤、pH調整剤、キレート化剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤等の添加剤に於いて、それぞれの水性インク組成物に於ける含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
分散剤は、高分子化合物の部分中和物を水性インク組成物中で好適に分散させるために添加することができる。中和剤が高分子化合物を分散させる分散剤としての機能を併せ持つ場合は、分散剤の含有を省略することができる。
分散剤としては特に限定されず、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
尚、分散剤、有機アミン、界面活性剤、pH調整剤、キレート化剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤、還元防止剤等の添加剤に関し、それぞれの水性インク組成物における含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の水性インク組成物に於いては、水系溶媒を含有する。水系溶媒としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水系溶媒の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
高分子化合物の部分中和物の中和度は、2.5mol%~35mol%の範囲内が好ましく、5mol%~15mol%の範囲内がより好ましい。中和度を2.5mol%以上にすることにより、高分子化合物の部分中和物が分散した状態で存在する場合には、その粗大粒子化を防止すると共に、インクジェットヘッドにおける水性インク組成物のノズル詰まりを抑制し、良好な吐出安定性を維持することができる。その一方、中和度を35mol%以下にすることにより、高分子化合物の部分中和物が分散した状態で存在する場合には、そのD50を700nm以下に抑制することができる。また、D99を1300nm以下に抑制することができる。さらに、水性インク組成物の粘度も10mPa・s以下に抑制して、粘度の過度な上昇を防止することができる。その結果、水性インク組成物の吐出安定性の向上が図れる。
高分子化合物の部分中和物の中和度の値は、中和剤の添加量を調整することで、目的の値に制御可能である。そして、中和剤の添加量は高分子化合物の酸価の値に基づき、以下の方法により算出することができる。
すなわち、例えば、高分子化合物としてメタクリル酸コポリマーS(EUDRAGIT(登録商標) S100)を用いる場合、当該メタクリル酸コポリマーSの含有量をXgとし、その中和度がYmol%となる様に調整したいときは、中和剤の添加量は以下の式により算出可能である。
(中和剤の添加量(g))=((メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体等の含有量X(g))/1000)×(メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体等の酸価)/56.11×(中和剤の分子量)/(中和剤の価数)×(Y(mol%)/100)
水性インク組成物の粘度は、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性を考慮すると、ノズル吐出時に於いて、3mPa・s~12mPa・sが好ましく、3mPa・s~10mPa・sがより好ましく、3mPa・s~8mPa・sがより好ましい。水性インク組成物の粘度を前記数値範囲内にすることにより、インクジェットヘッドのノズルでの目詰まりの発生を抑制して良好な吐出安定性の維持を図ることができ、飛翔性の低下を抑制することができる。尚、水性インク組成物の粘度は、例えば、振動式粘度計(商品名:VISCOMATE MODEL VM-10A、(株)セコニック製)を用いて、測定温度25℃の条件下で測定することにより得られる。
水性インク組成物の粘度は、高分子化合物の部分中和物の中和度を変更することによっても制御可能である。すなわち、部分中和物の中和度を小さくすることにより、粘度を低下させることができる。例えば、部分中和物の中和度を35mol%以下にすることにより、水性インク組成物の粘度を10mPa・s以下に抑制することができる。また、水性インク組成物の粘度は、プロピレングリコール等の湿潤剤の含有量を変更することによっても制御可能である。すなわち、湿潤剤の含有量を少なくすることにより、水性インク組成物の粘度を低下させることができる。
[インクジェット用水性インク組成物の製造方法]
本実施の形態に係る水性インク組成物の製造方法は、高分子化合物を溶媒に添加する工程と、高分子化合物添加後の溶媒に中和剤を添加する工程とを少なくとも含む。
高分子化合物の溶媒への添加は、当該高分子化合物の凝集を防止しながら行うのが好ましい。具体的には、高分子化合物を少量ずつ時間をかけて溶媒に加えるのが好ましい。この場合、高分子化合物の添加時間(すなわち、添加に要する時間)は特に限定されず、高分子化合物の種類や添加量等に応じて適宜設定され得る。
また、高分子化合物の溶媒への添加は、撹拌しながら、又は添加後に撹拌して行われる。撹拌を行うことで、高分子化合物の凝集を抑制することができる。添加後の撹拌時間は特に限定されず、高分子化合物の添加量や水系溶媒に対する溶解度等に応じて適宜設定され得る。
高分子化合物の溶媒への添加量は、作製される水性インク組成物中に於いて、高分子化合物の部分中和物の含有量が、前述の1質量%~30質量%の範囲内となる様に設定されるのが好ましい。
中和剤の溶媒への添加は、溶媒中に存在する高分子化合物の部分中和を目的とするものである。高分子化合物を部分中和させることで、例えば、分散剤なしに、当該高分子化合物の部分中和物を良好な分散状態で存在させることができる。
また、中和剤の溶媒への添加は、高分子化合物の凝集を防止しながら行うのが好ましい。具体的には、中和剤を少量ずつ時間をかけて溶媒に加えるのが好ましい。この場合、中和剤の添加時間(すなわち、添加に要する時間)は特に限定されず、中和剤の添加量や、溶媒中に添加されている高分子化合物の含有量等に応じて適宜設定され得る。
さらに、中和剤の溶媒への添加は、撹拌しながら、又は添加後に撹拌して行われる。撹拌を行うことで、高分子化合物の凝集を抑制することができる。添加後の撹拌時間は特に限定されず、中和剤の添加量や、溶媒中に添加されている高分子化合物の含有量等に応じて適宜設定され得る。
必要に応じて、湿潤剤や表面張力調整剤等の他の添加剤を含有させる場合には、例えば、湿潤剤がプロピレングリコールである場合、当該プロピレングリコールの添加又は撹拌後に、他の添加剤を溶媒に添加すればよい。そして、他の添加剤を添加する場合にも、撹拌しながら、又は添加後に撹拌するのが好ましい。これにより、本実施の形態に係る水性インク組成物を得ることができる。
プロピレングリコール等の湿潤剤の溶媒への添加後にも、撹拌が行われる。撹拌を行うことで、高分子化合物の凝集を抑制することができる。添加後の撹拌時間は特に限定されず、湿潤剤の添加量や、溶媒中に添加されている高分子化合物の含有量等に応じて適宜設定され得る。
湿潤剤の溶媒への添加量は、作製される水性インク組成物中に於いて、プロピレングリコールの含有量が、前述の1質量%~50質量%の範囲内となる様に設定されるのが好ましい。
尚、中和剤とは別に他の添加剤として分散剤を添加する場合には、高分子化合物の溶媒への添加後、中和剤の添加前に分散剤を添加することができる。そして、分散剤の添加は、撹拌しながら、又は添加後に撹拌して行うのが好ましい。
各工程に於ける撹拌には、例えば、ディスパー、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー、ペイントシェーカ、ホモミクサー、ダイノミル等の分散機や撹拌装置を用いることができる。また、得られた水性インク組成物に対し、必要に応じて目詰まりの原因となる粗大粒子及び異物を除去するために濾過を行ってもよい。濾過方法としては特に限定されず、例えば、遠心濾過、フィルター濾過等を採用することができる。
本実施の形態の水性インクは、前述の通り、水性インク組成物を少なくとも含む。特に、薬事法等で定められている医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した高分子化合物の部分中和物等を用いた水性インク組成物を用いた場合には、水性インクは可食性を有しているので、医薬品又はサプリメント等の錠剤やカプセル剤からなる固体製剤の表面に直接印刷することが可能である。また、素錠及びOD錠など表面の平滑性が悪い錠剤に対しても、インクジェット方式による非接触印刷を可能にする。
(固体製剤)
本実施の形態の固体製剤は、素錠若しくは口腔内崩壊錠(以下、「素錠等」という。)の表面の少なくとも一部に表面固化層が設けられ、並びに/又は、素錠等の表面の少なくとも一部の最表層部分に浸透固化層が設けられた構成を有する。
本明細書に於いて、「固体製剤」とは食品製剤及び医薬製剤を含む意味であり、固体製剤の形態としては、素錠、口腔内崩壊錠(OD錠)からなる錠剤が挙げられる。本明細書に於いて「素錠」とは、原料を打錠したものであり、コーティングされていない錠剤そのものであって、崩壊時間が30秒を超えるものを意味する。本明細書に於いて「口腔内崩壊錠」とは、崩壊時間が30秒以内の錠剤を意味する。尚、前記崩壊時間の値は、例えば、口腔内崩壊錠測定装置(商品名:トリコープテスタ、岡田精工(株)製)を用いた測定により得られる。また、食品製剤の例としては、錠菓やサプリメント等の健康食品が挙げられる。
素錠等の厚さは特に限定されず、任意である。
表面固化層は、少なくとも水性インク組成物を含む水性インクの乾燥皮膜からなり、少なくとも高分子成分が含まれる。表面固化層は、素錠等の表面の少なくとも一部に於いて、素錠等に浸透することなく乾燥固化したものである。表面固化層は、素錠等の表面の全面を被覆する様に設けられるのが好ましい。表面固化層は表面の少なくとも一部を被覆するため、素錠等に対し機械的強度を向上させ、粉立ちや割れ・欠け等の発生を低減又は抑制することができる。
浸透固化層は、少なくとも水性インク組成物を含む水性インクが、素錠等の最表層部分に浸透した後に、当該最表層部分で乾燥固化して形成されるものである。これにより、素錠等に対する機械的強度の向上も図ることができ、粉立ちや割れ・欠け等の発生を低減又は抑制することができる。浸透固化層は、素錠等の最表層部分の全面に設けられるのが好ましい。
尚、素錠等の機械的強度の向上の観点からは、表面固化層及び浸透固化層の両方が素錠等に設けられているのが好ましい。但し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、表面固化層及び浸透固化層の何れか一方が設けられていてもよい。
表面固化層の厚さ、又は浸透固化層の深さ(以下、「表面固化層の厚さ等」という。)は、水性インクの組成や要求される機械的強度の付与性能等を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。通常、表面固化層の厚さ等は0.01μm~10μmの範囲内であり、好ましくは0.05μm~5μm、より好ましくは0.1μm~1μmである。表面固化層の厚さ等を0.01μm以上にすることにより、機械的強度を良好に維持することができる。その一方、表面固化層の厚さ等を10μm以下にすることにより、表面固化層の厚さ及び浸透固化層の深さが過度に大きくなり過ぎて、溶解性が低下するのを防止することができる。尚、表面固化層及び浸透固化層の両方が設けられる場合、前記数値範囲は、表面固化層の厚さと浸透固化層の深さの合計を意味する。
(固体製剤への印刷方法)
本実施の形態の固体製剤への印刷方法は、水性インクを用いてインクジェット方式により、素錠等の表面の少なくとも一部に付着層及び/又は浸透層(以下、「付着層等」という場合がある。)を形成する工程と、付着層等を乾燥させて表面固化層及び/又は浸透固化層を形成する工程とを少なくとも含む。
付着層等の形成工程に於けるインクジェット方式の印刷は、より具体的には、微細なノズルより、水性インクを液滴として吐出し、その液滴を素錠等の表面の少なくとも一部に付着させることにより行う。また、インクジェット方式での印刷に於いては、水性インクの吐出口が、素錠等の走査方向に対し直角となる方向に配列され、素錠等が吐出口の下方を一回通過するのみで付着層等の形成が完了する、いわゆるワンパス(シングルパス)印刷や、吐出口が素錠等に対して走査方向(真っ直ぐな走査方向)に主走査すると共に、主走査の完了毎に、幅方向に間欠的に副走査することにより、素錠等の全体に付着層等を形成する、いわゆるシャトル印刷等を採用することができる。また、水性インクの吐出方法としては特に限定されず、例えば、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知の方法を採用することができる。また、水性インクの吐出条件についても特に限定されず、適宜設定することができる。
水性インクの塗布量(吐出量、液滴量又は付着量)は、好ましくは0.1mg/cm~10mg/cm、より好ましくは0.2mg/cm~5mg/cm、さらに好ましくは0.5mg/cm~2.5mg/cmである。水性インクの塗布量を0.1mg/cm以上にすることにより、一定程度以上の厚さの表面固化層、及び一定程度以上の深さの浸透固化層を形成することができ、機械的強度を良好に維持することができる。その一方、水性インクの塗布量を10mg/cm以下にすることにより、水性インクが素錠等に付着した際に、過度に素錠等を溶解させ、崩壊させるのを抑制することができる。また、付着層及び浸透層の乾燥時間の抑制も可能となる。
また、水性インクの塗布量を調節することで、付着層及び浸透層(すなわち、表面固化層及び浸透固化層)の何れを形成するか制御が可能である。例えば、水性インクの塗布量を少なくすることで、素錠等の最表層部分への水性インクの浸透を抑制し付着層の形成を可能にする。その一方、例えば、水性インクの塗布量を多くすることで、素錠等の最表層部分に水性インクを浸透させ浸透層の形成を可能にする。また、水性インクの塗布量をさらに多くすることで、最表層部分に浸透層を形成すると共に、当該浸透層上に付着層を形成することができる。
付着層等の乾燥工程は、素錠等の表面に付着した水性インクが当該素錠等を溶解させ崩壊させるのを防止するために行う。付着層を乾燥させることで表面固化層を形成することができ、浸透層を乾燥させることで浸透固化層を形成することができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥等が挙げられる。但し、自然乾燥の場合であると、乾燥時間は熱風乾燥の場合と比較して長くなるため、水性インクが素錠等の溶解し崩壊させる可能性があり好ましくない。乾燥時間や乾燥温度等の乾燥条件は、水性インクが素錠等を溶解し崩壊させない範囲内であれば特に限定されず、水性インクの塗布量等に応じて設定することができる。
また、本実施の形態の固体製剤への印刷方法では、表面固化層や、表出している浸透固化層(すなわち、表面固化層が積層されておらず表面に露出している浸透固化層)上に、さらに他の表面固化層を形成してもよい。この場合、先ず、表面固化層又は表出している浸透固化層上に、インクジェット方式の印刷により、水性インクからなる他の付着層を形成する。水性インクの塗布量等の印刷条件は、前述の付着層等の形成工程の場合と同様であり特に限定されない。続いて、他の付着層の乾燥工程を行う。これにより、表面固化層又は浸透固化層上に他の表面固化層を積層することができる。他の付着層の乾燥条件は、前述の付着層等の乾燥工程の場合と同様であり特に限定されない。
表面固化層又は浸透固化層上に、さらに他の表面固化層を積層することで、素錠等の表面又は最表層部分の機械的強度を一層向上させ、粉立ちや割れ・欠け等の発生をさらに低減ないし防止した固体製剤の提供が可能になる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、以下の実施例に記載される材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定するものではない。また、水性インクの各材料は、何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
(実施例1)
先ず、高分子化合物としてのメタクリル酸コポリマーS(商品名:EUDRAGIT S100、エボニックデグサジャパン(株)製)を、スターラーで撹拌しながら純水にゆっくりと加えた。約5分間の撹拌後、メタクリル酸コポリマーSの凝集物が発生していないことを確認した。
次に、中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を、メタクリル酸コポリマーSが添加された純水中に少量ずつ加えた。水酸化ナトリウム水溶液の添加後、約60分間の撹拌を行った。
続いて、水酸化ナトリウム水溶液添加後の純水中に、プロピレングリコール(PG)を加えた。プロピレングリコールの添加後、16時間の撹拌を行った。
さらに、プロピレングリコール添加後の純水中に、表面張力調整剤としての10%カプリル酸デカグリセリル水溶液(商品名:SYグリスターMCA750、阪本薬品工業(株)製、HLB値16)を加えた。10%カプリル酸デカグリセリル水溶液の添加後、60分間の撹拌を行った。これにより、メタクリル酸コポリマーSの部分中和物が分散したインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)からなるインクジェット用水性インク(以下、「水性インク」という。)を作製した。
尚、メタクリル酸コポリマーS、水酸化ナトリウム水溶液、プロピレングリコール、及び10%カプリル酸デカグリセリル水溶液の水への添加は、配合量が表1に示す通りとなる様に行った。
次に、水性インクを用いて、インクジェット方式により、口腔内崩壊錠(OD錠)の表面の全面に印刷を行い、付着層及び浸透層を形成した。印刷は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド、中速印字治具)を用いて、水性インクの液滴量7plでシングルパス(ワンパス)方式にて行った。また、印刷は気温25℃、相対湿度50%の環境下で行い、水性インクの塗布量(吐出量)は、0.39mg/cmとした。
続いて、付着層及び浸透層の熱風乾燥を行った。具体的には、ドライヤー(型番:ND-HFD、日本電興(株)製、消費電力900W)を用い、ドライヤーの温風ノズル出口からOD錠までの距離100mmとして、以下の条件下で行った。また、乾燥時間は10秒間とした。これにより、本実施例に係るサンプルを作製した。
温風ノズル出口での熱風の温度 :70℃、
温風ノズル出口から100mmの距離に於ける熱風温度:最大46℃
温風ノズル出口の風速 :20m/s
温風ノズル出口から100mmの距離に於ける風速 :9m/s
続いて、粘着テープ剥離試験を行った。すなわち、粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)No.405、ニチバン(株))を表面固化層及び浸透固化層が形成された印刷面に貼り付け、その後粘着テープを剥がしたときの印刷面の剥がれやテープへの移り状態を確認することにより、テープ剥離性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例2)
本実施例に於いては、水性インク組成物に関し、高分子化合物としてメタクリル酸コポリマーL(商品名:EUDRAGIT L100、エボニックデグサジャパン(株)製)、中和剤として炭酸ナトリウム水溶液を用いた。また、水性インク組成物中の各成分の含有量は表1に示す通りに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、メタクリル酸コポリマーLの部分中和物が分散した水性インク組成物からなる水性インクを作製した。
さらに、実施例1と同様にして、本実施例の水性インクを用いて、インクジェット方式により、OD錠の表面の全面に印刷を行い、付着層及び浸透層を形成した。さらに、付着層及び浸透層に対し、実施例1と同様にして熱風乾燥を行い、本実施例に係るサンプルを作製した。
続いて、本実施例に係るサンプルについても、実施例1と同様にして、粘着テープ剥離試験を行った。結果を表3に示す。
(実施例3)
本実施例に於いては、水性インク組成物に関し、高分子化合物としてメタクリル酸コポリマーLD(商品名:EUDRAGIT L100-55、エボニックデグサジャパン(株)製)、中和剤として炭酸ナトリウム水溶液を用いた。また、水性インク組成物中の各成分の含有量は表1に示す通りに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、メタクリル酸コポリマーLDの部分中和物が分散した水性インク組成物からなる水性インクを作製した。
さらに、実施例1と同様にして、本実施例の水性インクを用いて、インクジェット方式により、OD錠の表面の全面に印刷を行い、付着層及び浸透層を形成した。さらに、付着層及び浸透層に対し、実施例1と同様にして熱風乾燥を行い、本実施例に係るサンプルを作製した。
続いて、本実施例に係るサンプルについても、実施例1と同様にして、粘着テープ剥離試験を行った。結果を表3に示す。
(比較例1)
本比較例に於いては、水性インクを用いたインクジェット方式による表面固化層及び浸透固化層の印刷を行わなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ剥離試験を行った。結果を表3に示す。
(比較例2)
先ず、高分子化合物としてのポリビニルピロリドン(商品名:コリドン 30、BASFジャパン(株)製)を、スターラーで撹拌しながら純水にゆっくりと加えた。
次に、エタノール及び表面張力調整剤としての10%カプリル酸デカグリセリル水溶液(商品名:SYグリスターMCA750、阪本薬品工業(株)製、HLB値16)を加えた。10%カプリル酸デカグリセリル水溶液の添加後、60分間の撹拌を行った。これにより、ポリビニルピロリドンが溶解した水性インク組成物からなる水性インクを作製した。
尚、ポリビニルピロリドン、エタノール、及び10%カプリル酸デカグリセリル水溶液の水への添加は、配合量が表1に示す通りとなる様に行った。
次に、実施例1と同様にして、本比較例の水性インクを用いて、インクジェット方式により、OD錠の表面の全面に印刷を行いコーティング層を形成した。さらに、コーティング層に対し、実施例1と同様にして熱風乾燥を行い、本比較例に係るサンプルを作製した。
続いて、本比較例に係るサンプルについても、実施例1と同様にして、粘着テープ剥離試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 2022012545000001
(比較例3)
本比較例に於いては、水性インク組成物の各成分に関し、表2に示す通りに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、メタクリル酸コポリマーLの部分中和物が溶解した水性インク組成物からなる水性インクを作製した。
さらに、実施例2と同様にして、本比較例の水性インクを用いて、OD錠に対しインクジェット方式による印刷を行った。しかし、インクジェットヘッドのノズル近傍で目詰まりが生じ、水性インクの液滴は吐出されず、印刷できなかった。
(比較例4)
本比較例に於いては、水性インク組成物の各成分に関し、表2に示す通りに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、メタクリル酸コポリマーLDの部分中和物が溶解した水性インク組成物からなる水性インクを作製した。
さらに、実施例3と同様にして、本比較例の水性インクを用いて、OD錠に対しインクジェット方式による印刷を行った。しかし、インクジェットヘッドのノズル近傍で目詰まりが生じ、水性インクの液滴は吐出されず、印刷できなかった。
Figure 2022012545000002
(D50及びD99の測定)
実施例1~3の水性インクに於ける高分子化合物の部分中和物のD50及びD99は、マイクロトラックUPA-EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した。結果を表1に示す。
表1から分かる通り、実施例1~3の水性インクに於いては、何れもD50及びD99の値が過度に大きくなるのを抑制されており、インクジェット方式での印刷に適していることが確認された。
(水性インクの粘度の測定)
実施例1~3及び比較例2~4の水性インクの粘度は、振動式粘度計(商品名:VISCOMATE MODEL VM-10A、(株)セコニック製)を用いて、測定温度25℃の条件下で測定した。結果を表1及び表2に示す。表1から分かる通り、実施例1~3の水性インクは、何れも粘度を5mPa・s以下に低減することができた。その一方、比較例3及び4の水性インクでは、表2から分かる通り、それぞれの粘度が19.5mPa・s、59.4mPa・sであり、インクジェット方式で印刷を行ってもノズルから水性インクの液滴を吐出させることはできなかった。
(高分子化合物の部分中和物の中和度の測定)
実施例1~3及び比較例2の水性インクにおける高分子化合物の部分中和物の中和度の値は、中和剤の添加量を調整することで、目的の値となる様に調整した。ここで、中和剤の添加量は、以下の式により算出した。結果を表1に示す。
(中和剤の添加量(g))=((部分中和物の含有量X(g))/1000)×(部分中和物の酸価)/56.11×(中和剤の分子量)/(中和剤の価数)×(Y(mol%)/100)
(結果)
表3に示す通り、水性インクの表面固化層及び浸透固化層を表面に形成した実施例1~3の各OD錠では、表面固化層及び浸透固化層が形成されていない比較例1のOD錠と比較して、剥離後の粘着テープの粘着面に於けるOD錠由来の錠剤粉の付着の程度は少なかった。特に、実施例1のOD錠では、剥離後の粘着テープへの錠剤紛の付着が大幅に改善された。
一方、比較例2のOD錠は、ポリビニルピロリドンを溶解させた水性インクでコーティングしたものであるが、剥離後の粘着テープの粘着面に於けるOD錠由来の錠剤粉の付着の程度は、コーティングされていない比較例1のOD錠と同等であった。これにより、単に高分子化合物を含有する水性インクを用いてOD錠の表面をコーティングしてもその機械的強度を向上させることは困難であることが分かる。
Figure 2022012545000003

Claims (10)

  1. 素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に、高分子成分を含む可食性のインクジェット用水性インクの表面固化層が設けられ、
    及び/又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に、前記インクジェット用水性インクの浸透固化層が設けられてなり、
    前記高分子成分が、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物の部分中和物であり、
    前記高分子化合物の部分中和物が、2.5mol%~35mol%の範囲の中和度を有する固体製剤。
  2. 前記高分子化合物の部分中和物が前記インクジェット用水性インク中に分散、又は溶解した状態で存在する請求項1に記載の固体製剤。
  3. 前記高分子成分の固形分濃度が、前記インクジェット用水性インクの全質量に対し、1質量%~30質量%の範囲内である請求項1又は2に記載の固体製剤。
  4. 前記インクジェット用水性インクに含まれる溶媒が水系溶媒である請求項1~3の何れか1項に記載の固体製剤。
  5. 素錠又は口腔内崩壊錠からなる固体製剤への印刷方法であって、
    高分子成分を含む可食性のインクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式で印刷することにより、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に当該インクジェット用水性インクの付着層を形成し、及び/又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に当該インクジェット用水性インクの浸透層を形成する工程と、
    前記付着層及び/又は浸透層を乾燥させることにより、
    前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の表面の少なくとも一部に表面固化層を形成し、
    又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に、前記インクジェット用水性インクの浸透固化層を形成し、
    又は、前記素錠若しくは口腔内崩壊錠の最表層部分の少なくとも一部に前記浸透固化層を形成すると共に、当該浸透固化層上に前記インクジェット用水性インクの表面固化層を形成する工程とを含み、
    前記高分子成分が、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、及びアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物の部分中和物であり、
    前記高分子化合物の部分中和物が、2.5mol%~35mol%の範囲の中和度を有する固体製剤への印刷方法。
  6. 前記表面固化層、又は表出している前記浸透固化層上に、前記インクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式で印刷することにより他の付着層を形成する工程と、
    前記他の付着層を乾燥させることにより、前記表面固化層又は浸透固化層上に、他の表面固化層を形成する工程とを含む請求項5に記載の固体製剤の印刷方法。
  7. 前記インクジェット方式で印刷する際の前記インクジェット用水性インクの塗布量が、0.1mg/cm~10mg/cmの範囲内である請求項5又は6に記載の固体製剤への印刷方法。
  8. 前記高分子化合物の部分中和物が前記インクジェット用水性インク中に分散、又は溶解した状態で存在する請求項5~7の何れか1項に記載の固体製剤への印刷方法。
  9. 前記高分子成分の固形分濃度が、前記インクジェット用水性インクの全質量に対し、1質量%~30質量%の範囲内である請求項5~8の何れか1項に記載の固体製剤への印刷方法。
  10. 前記インクジェット用水性インクに含まれる溶媒が水系溶媒である請求項5~9の何れか1項に記載の固体製剤への印刷方法。
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