JP2022011687A - 熱可塑性樹脂および光学部材 - Google Patents

熱可塑性樹脂および光学部材 Download PDF

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達也 大山
Tatsuya Oyama
高恒 柳田
Takatsune Yanagida
安彦 友成
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Abstract

【課題】高いアッベ数を有し、耐熱性と低複屈折とを両立する、物性のバランスに優れた熱可塑性樹脂及びそれを含む光学部材を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位を含み、さらに脂環式ジオールに由来する繰り返し単位、及び芳香族ジオールに由来する繰返し単位を含む、熱可塑性樹脂。JPEG2022011687000038.jpg4384【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂及びそれを含む光学部材に関する。
カメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話あるいはカメラ付ドアホンなどには、撮像モジュールが用いられている。近年、この撮像モジュールに用いられる光学系では、特に小型化が求められている。光学系を小型化していくと光学系の色収差が大きな問題となる。そこで、光学レンズの屈折率を高く、かつアッベ数を小さくして高分散にした光学レンズ材料と、屈折率を低くかつアッベ数を大きくして低分散にした光学レンズ用材料を組み合わせることで、色収差の補正を行うことができることが知られている。
高分散用途の光学レンズとして用いられる高屈折率かつ低アッベ数の樹脂としては、フルオレン骨格やビナフタレン骨格を有する樹脂が知られている。例えば、特許文献1及び2には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを用いた屈折率1.64の高屈折率樹脂が記載されている。また、特許文献3には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンを有する熱可塑性樹脂が記載されている。
一方で、低分散用途の高アッベ数を有する熱可塑性樹脂として特許文献4には、芳香族―脂肪族ポリカーボネート樹脂が記載されており、高いアッベ数を有し、さらに耐熱性と高い成型流動性を併せ持ち非常に有用であるものの、実用的な耐熱性の範囲では複屈折が大きく光学部材としては課題があることがわかった。そこで、本発明は、高いアッベ数を有し、耐熱性と低複屈折とを両立する、物性のバランスに優れた熱可塑性樹脂及びそれを含む光学部材を提供することを目的とする。
国際公開第2007/142149号公報 特開平7-198901号公報 特開2015-86265号公報 国際公開第2012/096410号公報
本発明が解決しようとする課題は、高いアッベ数を有し、かつ耐熱性と低複屈折とをバランスさせることができる熱可塑性樹脂を提供することにある。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定の構成単位を含む熱可塑性樹脂が前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
≪態様1≫
下記式(1)または(2)で表される繰り返し単位を含み、さらに脂環式ジオールに由来する繰り返し単位、及び芳香族ジオールに由来する繰返し単位を含む、熱可塑性樹脂:
Figure 2022011687000001
Figure 2022011687000002
(式(1)または(2)中、R~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、炭素原子数2~6の複素環基を示し、LおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは下記式(3)または(4)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
Figure 2022011687000003
Figure 2022011687000004
(式中、Xは2価の連結基を示す。)
≪態様2≫
上記式(1)または(2)の繰返し単位が、10mol%以上40mol%以下である、態様1に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様3≫
上記式(1)または(2)において、R~Rの少なくとも一つがフェニル基である、態様1または2に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様4≫
上記式(1)または(2)において、R~Rが水素原子である、態様1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様5≫
上記式(1)で表される繰り返し単位を含む、態様1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様6≫
上記式(1)または(2)において、Wが上記式(3)である、態様1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様7≫
脂環式ジオールに由来する繰り返し単位が、炭素数原子数3~20の脂環式ジオールから導入されている、態様1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様8≫
脂環式ジオールに由来する繰り返し単位が、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールのいずれか一つから導入されている、態様1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様9≫
芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が下記式(5)で表される、態様1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
Figure 2022011687000005
(式(5)中、R11は、炭素原子数1~3のアルキル基から選択され、lは1~8の範囲であり、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基を示し、pおよびqはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。)
≪態様10≫
芳香族ジオールに由来する繰返し単位が、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから導入されている、態様1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様11≫
屈折率が1.500~1.590である態様1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様12≫
アッベ数が35.0~42.0である、態様1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性
樹脂。
≪態様13≫
ガラス転移温度が135℃以上である態様1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様14≫
配向複屈折が、6.5×10-3以下である、態様1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
≪態様15≫
態様1~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学部材。
≪態様16≫
光学レンズである態様15に記載の光学部材。
本発明の熱可塑性樹脂は、高いアッベ数を有し、耐熱性と低複屈折とをバランスさせることができるため、光学レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特に携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、又は監視カメラのいずれかに用いるための光学レンズに極めて有用であり、そのため、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明をさらに詳しく説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂は、下記式(1)または(2)で表される繰り返し単位を含み、さらに脂環式ジオールに由来する繰り返し単位、及び芳香族ジオールに由来する繰返し単位位を含有する。
Figure 2022011687000006
Figure 2022011687000007
(式(1)または(2)中、R~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、炭素原子数2~6の複素環基を示し、LおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは下記式(3)または(4)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
Figure 2022011687000008
Figure 2022011687000009
(式中、Xは2価の連結基を示す。)
(式(1)または(2)で表される繰り返し単位)
前記式(1)または(2)において、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、炭素原子数2~6の複素環基であり、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、R~Rの少なくとも一つはフェニル基であることがより好ましく、R~Rの少なくとも一つはフェニル基であることがより好ましく、複屈折を小さくすることができることからR、Rのうち少なくとも一つがフェニル基であることがさらに好ましく、Rがフェニル基であることが特に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが好ましい。
炭素原子数1~6の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基などが挙げられ、アルキル基、フェニル基がより好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル基等が挙げられる。
炭素原子数2~6の複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基等が挙げられ、チエニル基、ピロリル基が好ましい。
前記式(1)または(2)において、R、R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、炭素原子数2~6の複素環基であり、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましく、水素原子、フェニル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが好ましい。
炭素原子数1~6の炭化水素基としては、上記R~Rで表される炭素原子数1~6の炭化水素基と同様なものを挙げることができ、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
炭素原子数2~6の複素環基としては、上記R~Rで表される炭素原子数2~6の複素環基と同様なものを挙げることができ、チエニル基、ピロリル基が好ましく、チエニル基がより好ましい。
前記式(1)または(2)において、L、Lはそれぞれ独立に2価の連結基を示し、炭素数1~12のアルキレン基であると好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であるとより好ましく、エチレン基であるとさらに好ましい。L、Lの連結基の長さを調整することによって、樹脂のガラス転移温度(Tg)を調整することができる。
前記式(1)において、mおよびnはそれぞれ独立に0または1であり、0であることが好ましい。
前記式(1)において、jおよびkは1以上の整数であり、1~4の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
前記式(1)または(2)において、Wは前記式(3)または(4)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。Wが前記式(3)である場合、前記式(1)または(2)はカーボネート単位となり、Wが前記式(4)である場合、前記式(1)または(2)はエステル単位となる。
前記式(4)において、Xは2価の連結基を示し、炭素原子数1~30の芳香族基を含んでいてもよい置換基であることが好ましい。
前記式(1)または(2)はジヒドロキシ化合物と炭酸エステルなどのカーボネート前駆物質、またはジヒドロキシ化合物とジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とから得ることができる。
前記式(1)または(2)において、高アッベ数と低複屈折を実現するためには、高分子側鎖方向の分極率の大きさの観点から、(1)の構造のほうが好ましく、さらに1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3、3-ジフェニルインダン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-(2-チエニル)インダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-メチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3、3-ジフェニルインダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3-(2-チエニル)インダンがより好ましく、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3、3-ジフェニルインダンであるとさらに好ましく、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダンから誘導される繰り返し単位であると特に好ましい。
本発明が、高アッベ数と耐熱性と低複屈折とをバランスさせることができる理由として以下のことが考えられる。
特許文献1、2では、高分子側鎖にフルオレンを導入し分極率を大きくすることによって、複屈折を低くしている。Lorentz-Lorenz式として知られている分子構造と屈折率の関係式から、分子の分極率を大きくすることによって物質の屈折率が高くなることが知られており、それと同時にアッベ数も低くなる。そのため、高アッベ数と低複屈折を両立させることはできない。
本発明は、従来技術では達成できていない、高アッベ数と低複屈折を両立した樹脂を得ることができるものである。高分子側鎖のフルオレンの構造をインダンと置換基に分かれた構造にすることにより、ある程度の共役構造を保つことで低複屈折は実現しつつ、分極率を小さくすることで高アッベ数を達成し、高アッベ数と低複屈折を両立することができると考えられる。
また、インダンも剛直な構造を持っているため、インダンと置換基に分かれた構造においてもフルオレン構造と同様に高い耐熱性が達成できる。
上記式(1)または(2)で表わされる繰返し単位を、5mоl%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、30mol%以上、35mol%以上、40mol%以上、45mol%以上で含んでいてもよく、50mol%以下、45mol%以下、40mol%以下、35mol%以下または30mol%以下で含んでいてもよい。本発明の樹脂は、上記式(1)または(2)で表される繰返し単位を、好ましくは10mol%以上40mol%以下、より好ましくは10mol%以上40mol%以下、さらに好ましくは15mol%以上40mol%以下、もっとも好ましくは20mol%以上40mol%以下で含むことができる。前記式(1)または(2)で表される繰り返し単位が前記範囲であると高アッベ数、耐熱性と低複屈折のバランスに優れるため好ましい。
本発明の樹脂は、前記式(1)と(2)で表される繰返し単位を両方含んでも良い。その場合、前記式(1)と(2)で表される繰返し単位の合計が、5mоl%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、30mol%以上、35mol%以上、40mol%以上、45mol%以上で含んでいてもよく、50mol%以下、45mol%以下、40mol%以下、35mol%以下または30mol%以下で含んでいてもよい。本発明の樹脂は、上記式(1)または(2)で表される繰返し単位を、好ましくは10mol%以上40mol%以下、より好ましくは10mol
%以上40mol%以下、さらに好ましくは15mol%以上40mol%以下、もっとも好ましくは20mol%以上40mol%以下で含むことができる。
(脂環式ジオールに由来する繰り返し単位)
脂環式ジオールに由来する繰り返し単位をもたらすジオール化合物において、3,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(いわゆるSPG)、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどのスピロ環構造を有するジオール類、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールなどのシクロヘキサンジオール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(いわゆるCHDM)などのシクロヘキサンジメタノール類、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(いわゆるTCDDM)、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、デカリンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどが挙げられる。中でも低い複屈折と高いアッベ数を有するという観点から、炭素数原子数3~20の脂環式ジオールが好ましく、SPG、CHDM、TCDDMがより好ましく、SPGがさらに好ましい。
脂環式ジオールに由来する繰り返し単位を、25mol%以上、30mol%以上、35mol%以上、40mol%以上、45mol%以上、50mol%以上、55mol%以上、60mol%以上、65mol%以上、70mol%以上で含んでいてもよく、80mol%以下、75mol%以下、70mol%以下、65mol%以下、60mol%以下、55mol%以下または50mol%以下で含んでいてもよい。本発明の樹脂は、脂環式ジオールの繰り返し単位を、好ましくは30mol%以上70mol%以下、より好ましくは40mol%以上70mol%以下、さらに好ましくは45mol%以上70mol%以下、もっとも好ましくは50mol%以上65mol%以下で含むことができる。脂環式ジオールに由来する繰り返し単位が前記範囲であると高アッベ数、低複屈折、耐熱性のバランスに優れるため好ましい。
(芳香族ジオールに由来する繰り返し単位)
芳香族ジオールに由来する繰り返し単位をもたらすジオール化合物として、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1?ビス(4?ヒドロキシ?3?メチルフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールOCZ)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルシクロヘキサン(ビスフェノール3MZ)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
特に、芳香族ジオールに由来する繰り返し単位として、式(5)で表される繰り返し単位が挙げられる。
Figure 2022011687000010
(式(5)中、R11は、それぞれ炭素原子数1~3のアルキル基から選択され、lは1~8の範囲であり、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基を示し、pおよびqはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。)
前記式(5)において、R11は、炭素原子数1~3のアルキル基から選択され、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
前記式(5)において、lは、1~8の範囲であり、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、3がさらに好ましい。
前記式(5)において、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基であり、水素原子、メチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、チエニル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
前記式(5)において、pおよびqは1以上の整数であり、1~4の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
また、前記式(5)で表される繰返し単位をもたらすジオール化合物は、高い耐熱性と高アッベ数を有するという観点から、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1?ビス(4?ヒドロキシ?3?メチルフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールOCZ)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルシクロヘキサン(ビスフェノール3MZ)であることが好ましく、ビスフェノールTMCがより好ましい。
芳香族ジオールに由来する繰り返し単位を、5mol%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、30mol%以上、35mol%以上で含んでいてもよく、50mol%以下、45mol%以下、40mol%以下、35mol%以下、30mol%以下、25mol%以下または20mol%以下で含んでいてもよい。本発明の樹脂は、芳香族ジオールの繰り返し単位を、好ましくは10mol%以上50mol%以下、より好ましくは10mol%以上45mol%以下、さらに好ましくは10mol%以上40mol%以下、もっとも好ましくは15mol%以上40mol%以下で含むことができる。芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が前記範囲であると高アッベ数、耐熱性のバランスに優れるため好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記の本発明の有利な効果が得られる範囲で、上記式(1)、上記式(2)及び上記で挙げた脂環式ジオール、芳香族ジオールに由来する繰返し単位以外の繰返し単位を含んでいてもよい。そのような繰返し単位をもたらすジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペン
タンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、イソソルビド、イソマンニド、イソイジドに由来する繰り返し単位等が挙げられる。このような繰返し単位は、全繰り返し単位中30mol%未満、20mol%以下、10mol%以下、又は5mol%以下が好ましい。
<熱可塑性樹脂の原料>
(式(1)または(2)のジオール成分)
式(1)または(2)のジオール成分の原料となるジオール成分は、主として下記式(a)または下記式(b)で表されるジオール成分であり、単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
Figure 2022011687000011
Figure 2022011687000012
前記式(a)および(b)において、R~R10、L、L、j、k、m、nおよびWは、前記式(1)または(2)における各式と同じである。
以下、前記式(a)または(b)で表されるジオール成分の代表的具体例を示すが、前記式(1)または(2)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
Figure 2022011687000013
Figure 2022011687000014
Figure 2022011687000015
Figure 2022011687000016
なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-(2-チエニル)インダン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3、3-ジフェニルインダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-メチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3-フェニルインダン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3-(2-チエニル)インダン、1,1-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3、3-ジフェニルインダンが好ましく、下記式(1-1)~(1-4)に示す、下記式(1-1):1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、下記式(1-2):1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、下記式(1-3):1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、下記式(1-4):1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、下記式(1-5):1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3、3-ジフェニルインダン、下記式(1-6):1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3-フェニルインダンがより好ましく、特に、下記式(1-1)がさらに好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせてもよい。
Figure 2022011687000017
Figure 2022011687000018
Figure 2022011687000019
Figure 2022011687000020
Figure 2022011687000021
Figure 2022011687000022
(脂環式ジオール成分)
本発明の熱可塑性樹脂は、脂環式ジオールに由来する繰り返し単位を有しており、原料となるジオール成分としては、上記で記載の脂環式ジオールに由来する繰り返し単位をもたらすジオール化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
(芳香族ジオール成分)
本発明の熱可塑性樹脂は、芳香族ジオールに由来する繰り返し単位を有しており、原料となるジオール成分としては、上記で記載の芳香族ジオールに由来する繰り返し単位をもたらすジオール成分化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジオール成分の原料としては、下記式(c)で表されるジオール成分が好ましく挙げられる。
Figure 2022011687000023
前記式(c)において、R11~R13およびl、p、およびqは前記式(5)と同じである。
(その他の共重合成分)
本発明の熱可塑性樹脂は、本発明の特性を損なわない程度に他のジオール成分を共重合してもよい。他のジオール成分は、全繰り返し単位中30mol%未満、20mol%以下、10mol%以下、又は5mol%以下が好ましい。
(式(1)または式(2)のジカルボン酸成分)
その熱可塑性樹脂の前記式(1)または式(2)で表される単位に使用するジカルボン酸成分は主として、HOOC-X-COOHで表されるジカルボン酸、又はそのエステル形成性誘導体が好ましく用いられる。ここで、Xは、式(1)または式(2)で表される単位を与えるための2価の連結基を示す。
その熱可塑性樹脂に使用するジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフタレン、9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレン等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、2,2’-ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸成分、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が挙げられ、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフタレンが好ましい。これらは単独又は二種類以上組み合わせて用いても良い。また、エステル形成性誘導体としては酸クロライドや、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル等のエステル類を用いてもよい。
その熱可塑性樹脂は、例えばジオール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法やジオール成分にジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を反応させる方法等により製造される。以下にその具体例を示す。
<製造方法>
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合はそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物成分とカーボネート前駆物質を界面重合法または溶融重合法によって反応させて得られる。ポリカーボネート樹脂を製造するに当たっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、酸化防止剤等を使用してもよい。
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である場合はそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物成分とジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とをエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすればよい。
(ポリエステルカーボネート樹脂の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂がポリエステルカーボネート樹脂である場合は、ジヒドロキシ化合物成分およびジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ホスゲンやカーボネートエステルなどのカーボネート前駆物質とを反応させることにより製造することができる。重合方法は前記ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂と同様の方法を用いることができる。
<光学部材>
本発明の光学部材は、上記の熱可塑性樹脂を含む。そのような光学部材としては、上記の熱可塑性樹脂が有用となる光学用途であれば、特に限定されないが、光学レンズ、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等を挙げることができる。
また、本発明の光学部材には、上記の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されていてもよく、その樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
<光学レンズ>
本発明の光学部材として、特に光学レンズを挙げることができる。このような光学レンズとしては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、監視カメラ等のための光学レンズを挙げることができる。
本発明の光学レンズは、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、溶融押出成形、キャスティング等の任意の方法により成形、加工することができるが、射出成形が特に好適である。
射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形機のシリンダー温度は180~320℃が好ましく、220~300℃がより好ましく、240~280℃が特に好ましい。また、金型温度は70~130℃が好ましく、80~125℃がより好ましく、90~120℃が特に好ましい。射出圧力は5~170MPaが好ましく、50~160MPaがより好ましく、100~150MPaが特に好ましい。
<熱可塑性樹脂の物性>
本発明の熱可塑性樹脂の屈折率は、温度:20℃、波長:587.56nmで測定した場合に、1.500以上であり、1.510以上、1.520以上、1.530以上、又は1.540以上であってもよく、1.590以下であり、1.580以下、1.570以下、1.560以下または1.550以下であってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂のアッベ数は、35.0以上、35.5以上、36.0以上、36.5以上、37.0以上、37.5以上、又は38.0以上であってもよく、42.0以下、41.5以下、41.0以下、40.5以下、40.0以下、39.5以下又は39.0以下であってもよい。36以上だと好ましく、37以上だとより好ましく、38以上だとさらに好ましい。
ここで、アッベ数は、温度:20℃、波長:486.13nm、587.56nm、656.27nmの屈折率から、下記式を用いて算出する:
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長587.56nmにおける屈折率、
nF:波長486.13nmにおける屈折率、
nC:波長656.27nmにおける屈折率を意味する。
本発明の熱可塑性樹脂の比粘度は、0.12~0.40の範囲にあることが好ましく、0.14~0.35の範囲にあることがより好ましい。比粘度が0.16~0.30の範囲であると成形性と強度とのバランスに優れる。
比粘度の測定方法は、熱可塑性樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度(ηSP)を、オストワルド粘度計にて測定し、以下の式から算出する。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは、塩化メチレンの落下秒数、tは、試料溶液の落下秒数]
本発明の熱可塑性樹脂の配向複屈折(Δn)の絶対値は、6.5×10-3以下であることが好ましく、6.0×10-3以下がより好ましく、5.5×10-3以下がさらに好ましく、5.0×10-3以下がもっとも好ましい。配向複屈折(Δn)は、そのポリカーボネート樹脂から得られる厚さ50~100μmのフィルムをガラス転移温度(Tg)+10℃で2倍延伸した後に、波長589nmにおいて測定する。
本発明の熱可塑性樹脂は、1mm厚の全光線透過率が、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂は、23℃、24時間浸漬後の吸水率が0.20%以下であると好ましく、0.18%以下であるとより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂のTgは、135℃以上、140℃以上、145℃以上、または150℃以上であってもよく、165℃以下、160℃以下、155℃以下、150℃以下、145℃以下、140℃以下であってもよい。135℃以上だと好ましく、138℃以上だとより好ましく、140℃以上だとさらに好ましい。
<共重合比>
得られた熱可塑性樹脂を日本電子(株)製JNM-ECZ400Sを用いて H NMR測定することによって、各熱可塑性樹脂の組成比を算出した。溶媒はCDCl を用いた。
<光学特性>
(屈折率)
各熱可塑性樹脂の3mm厚試験片を作製し研磨した後、島津製作所製のカルニュー精密屈折計KPR-2000を使用して、20℃における屈折率nd(587.56nm)を測定した。
(アッベ数)
また、屈折率と同様にして、アッベ数を算出した。
アッベ数の測定波長は、486.13nm、587.56nm、656.27nmの屈折率から下記の式を用いて算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長587.56nmでの屈折率、
nF:波長486.13nmでの屈折率、
nC:波長656.27nmでの屈折率を意味する。
(配向複屈折の絶対値)
熱可塑性樹脂を塩化メチレンに溶解した後、ガラスシャーレ上にキャストし、十分乾燥することで厚さ100μmのキャストフィルムを作製した。該フィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM-220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折の絶対値(|Δn|)を求めた。
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
<ガラス転移温度(Tg)>
得られた熱可塑性樹脂をティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製Discovery DSC25Auto型により、昇温速度20℃/minで測定した。試料は5~10mgで測定した。
≪製造例≫
<実施例1>
7.57g(0.02mol)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン(以下、「化合物1」とする:Rがフェニル基であり、R~R10が水素原子である上記式(1)の繰返し単位を導入するためのモノマー)、18.26g(0.06mol)の3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(以下「SPG」とする)、6.21g(0.02mol)のビスフェノールTMC(以下「BisTMC」とする)、22.06g(0.10mol)のジフェニルカーボネート、及び触媒として濃度60mmol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液0.167mL(炭酸水素ナトリウム 10.0μmol)を、窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。その後、10分間かけて減圧度を20kPaに調整した。60℃/hrの速度で280℃まで昇温を行い、フェノールの流出量が70%になった後で1時間かけて反応器内圧を133Pa以下とした。合計3.5時間撹拌して反応を行い、反応終了後フラスコから樹脂を取り出した。得られたポリカーボネート樹脂の組成比を、NMRによって測定した。
なお、化合物1は、Rがフェニル基であり、R~R10が水素原子である上記式(1)の繰返し単位を導入するために用いられており、SPGは、脂環式ジオールの繰返し単位を導入するために用いられており、BisTMCは、芳香族ジオールの繰り返し単位を導入するために用いられている。化合物1、SPG、BisTMCは、以下の化学構造を有する:
Figure 2022011687000024
Figure 2022011687000025
Figure 2022011687000026
<実施例2>
化合物1、SPG、BisTMCからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
<実施例3>
BisTMCの代わりに4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(以下、「BisZ」とする)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
なお、BisZは、以下の化学構造を有する:
Figure 2022011687000027
<実施例4>
BisTMCの代わりに4,4’-(3-メチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(以下、「Bis3MZ」とする)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
なお、Bis3MZは、以下の化学構造を有する:
Figure 2022011687000028
<実施例5>
化合物1の代わりに化合物2を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
なお、化合物2は、以下の化学構造を有する。
Figure 2022011687000029
<実施例6>
SPGの代わりにシクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
なお、CHDMは、以下の化学構造を有する。
Figure 2022011687000030
<実施例7>
SPGの代わりにトリシクロデカンジメタノール(以下、「TCDDM」)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
なお、TCDDMは、以下の化学構造を有する。
Figure 2022011687000031
<比較例1>
化合物1を使用しなかったこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
<比較例2>
化合物1の代わりにビスフェノールA(BPA)を使用したこと、SPGの代わりにシクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
<比較例3>
化合物1の代わりに9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、「BPEF」とする)を使用したこと、SPGの代わりにシクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
<比較例4>
化合物1の代わりに9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、「BPEF」とする)を使用したこと、及び各モノマーからなる繰り返し単位の比率が表1に記載の量になるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。
得られた熱可塑性樹脂について下記の方法で評価を行った。
≪結果≫
各実施例及び比較例の構成並びにその評価結果を、以下の表1にまとめた。
Figure 2022011687000032
実施例1~7は、従来技術(特許文献1)に対応する比較例1と、屈折率及びアッベ数において同等でありながら、複屈折の上昇も許容範囲となり、耐熱性も向上した。比較例1、2は複屈折と耐熱性が不足している。比較例3はアッベ数、複屈折、耐熱性すべてで不足している。比較例4では複屈折は許容範囲内であるもののアッベ数と耐熱性が不足している。以上のように、比較例2~4と比較すると、上記式(1)の繰り返し単位を導入することで、高アッベ数、低複屈折、高耐熱性を両立させることができ、光学レンズとして優れる結果が得られていることが分かる。
式(1)の繰り返し単位のようなインダンと単結合で導入されたフェニル基は、ある程度の共役構造を保ちながら分極率を低下させることで高アッベ数と低複屈折を両立することに効果的である。
本発明の熱可塑性樹脂は、光学材料に用いられ、光学レンズ、プリズム、光ディスク、
透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特に光学レンズに極めて有用である。

Claims (16)

  1. 下記式(1)または(2)で表される繰り返し単位を含み、さらに脂環式ジオールに由来する繰り返し単位、及び芳香族ジオールに由来する繰返し単位を含む、熱可塑性樹脂:
    Figure 2022011687000033
    Figure 2022011687000034
    (式(1)または(2)中、R~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6の炭化水素基、炭素原子数2~6の複素環基を示し、LおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは下記式(3)または(4)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
    Figure 2022011687000035
    Figure 2022011687000036
    (式中、Xは2価の連結基を示す。)
  2. 上記式(1)または(2)の繰返し単位が、10mol%以上40mol%以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
  3. 上記式(1)または(2)において、R~Rの少なくとも一つがフェニル基である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
  4. 上記式(1)または(2)において、R、Rのうち少なくとも一つがフェニル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  5. 上記式(1)で表される繰り返し単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  6. 上記式(1)または(2)において、Wが上記式(3)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  7. 脂環式ジオールに由来する繰り返し単位が、炭素数原子数3~20の脂環式ジオールから導入されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  8. 脂環式ジオールに由来する繰り返し単位が、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールのいずれか一つから導入されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  9. 芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が下記式(5)で表される、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
    Figure 2022011687000037
    (式(5)中、R11は、炭素原子数1~3のアルキル基から選択され、lは1~8の範囲であり、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基を示し、pおよびqはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。)
  10. 芳香族ジオールに由来する繰返し単位が、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから導入されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  11. 屈折率が1.500~1.590である請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  12. アッベ数が35.0~42.0である、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  13. ガラス転移温度が135℃以上である請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  14. 配向複屈折が、6.5×10-3以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学部材。
  16. 光学レンズである請求項15に記載の光学部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024024602A1 (ja) * 2022-07-25 2024-02-01 三菱瓦斯化学株式会社 環式ジオール化合物から得られる樹脂、及びそれを含む光学レンズ

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