JP2022008193A - リンチ症候群大腸がん検査方法、及びそれに用いるリンチ症候群大腸がん検査用キット - Google Patents

リンチ症候群大腸がん検査方法、及びそれに用いるリンチ症候群大腸がん検査用キット Download PDF

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Abstract

【課題】 リンチ症候群大腸がんを特異的かつ高精度に検査できる方法を提供すること。【解決手段】 被験者由来の検体において、(1)染色体1のITGB3BP遺伝子に含まれる配列番号1に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異等の15の特定の変異からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、リンチ症候群大腸がん検査方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リンチ症候群大腸がん検査方法、より詳しくは、被験者におけるリンチ症候群大腸がんの発症の有無を検査する方法、被験者がリンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクを予測する方法、前記リスクが高い被験者をスクリーニングする方法、及びこれらの方法に用いるリンチ症候群大腸がん検査用キットに関する。
大腸がんには、遺伝的な要因が強く関与して発症している遺伝性大腸がんがあり、これらの中でも、最も頻度が高いものとしてリンチ症候群大腸がんが知られている。「リンチ症候群」は、ミスマッチ修復遺伝子(MMR遺伝子)のうち、原因遺伝子(MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、又はPMS2遺伝子)の生殖細胞系列の病的変異によって起こる遺伝性疾患である。
リンチ症候群では、大腸がんの生涯発症リスクが60~70%と高いことが知られており、また、大腸がん以外のがん、例えば、子宮内膜がん、卵巣がん、胃がん、小腸がん、肝胆道がん、上部尿路がん、脳腫瘍、皮膚がんの発症リスクも高まると考えられている。リンチ症候群は、常染色体優性遺伝形式をとるため、上記の原因遺伝子に病的変異を有している人の子供には、性別に関わらず50%の確率で同じ病的変異が受け継がれる。
リンチ症候群の大腸がん(リンチ症候群大腸がん)では、大腸がんが同時・異時に多発する場合がある;粘液がん、低分化腺がんの頻度が高い;大腸以外に、子宮内膜がん、卵巣がん、泌尿器系がん、胃がん等の合併があるといった特徴があるといわれている。しかしながら、リンチ症候群大腸がんには識別可能な組織学的特徴が少なく、「遺伝性大腸癌診療ガイドライン(大腸がん研究会、2016年)」では、その診断は、第1次スクリーニング、第2次スクリーニング、及び確定診断のための遺伝学的検査の3つのステップにより行うことが推奨されている。第1次スクリーニングでは、本人や血縁者におけるがんの罹患履歴等に基づくアムステルダム基準II(ICG-HNPCC(the International Collaborative Group on Hereditary Non-polyposis Colorectal Cancer),1998年)、又は改訂ベセスダ基準(NCI(National Cancer Institute),2004年)を満たすかを確認する。これらのうちのいずれかの基準を満たした場合、次いで、第2次スクリーニングでは、MSI(マイクロサテライト不安定性)検査又は免疫組織学的検査を行う。第2次スクリーニングで異常が認められた場合には、確定診断のための検査として、MMR遺伝子の生殖細胞系列での遺伝子検査を実施し、その遺伝子検査で病的変異が検出されると、リンチ症候群と確定診断できる。
このうち、マイクロサテライト不安定性については、これを検出・同定する方法が多く検討されており(例えば、特表2004-530406号公報(特許文献1)、特表2020-505925号公報(特許文献2)、特表2019-528076号公報(特許文献3)等)、また、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を示す大腸がんの治療標的となりうる変異遺伝子の探索も検討されている(例えば、Sato et al.,Clin Cancer Res,2019,25:378-389(非特許文献1))。しかしながら、リンチ症候群大腸がんの特異的なマーカーとなりうる遺伝子変異領域等については、未だ検討が不十分である。
特表2004-530406号公報 特表2020-505925号公報 特表2019-528076号公報
Sato et al.,Clin Cancer Res,2019,25:378-389
また、上記の原因遺伝子に病的変異があると必ず大腸がんを発症するわけではないが、親や兄弟姉妹、その他の血縁者にリンチ症候群がいる場合には発症リスクが高まることから、より早期に、リンチ症候群大腸がんの発症リスクを把握できることが求められている。
さらに、リンチ症候群大腸がんであるか、他の大腸がん(例えば、家族性大腸腺腫症(FAP))であるかにより、切除範囲や治療方針が変わる場合があるため、大腸がんを発症している患者においては、より高い精度で、リンチ症候群大腸がんであるか否かの判別ができることが望まれている。また、リンチ症候群大腸がんの術後では、残存大腸に異時性の大腸がんが発生する確率が高いことから、生涯にわたり定期的な検診・医学的管理が推奨されるが、その際にはより簡便な血液検査で早期にリンチ症候群大腸がんの発症を確認できることも求められている。
さらに、MSI検査の結果が陽性(MSI-H:高頻度不安定性)であっても、その半数以上はDNAメチル化異常によるものであってリンチ症候群大腸がんとは限らないため、マイクロサテライト不安定性を指標とする検査とは別の、高精度な検査方法が求められている。また、MSI検査の結果がMSI-Hであっても、MMR遺伝子の生殖細胞系列での遺伝子検査で病的変異が検出されず、かつ、DNAメチル化異常でもない場合や、遺伝学的検査による確定診断がなされていない場合には、リンチ症候群大腸がんの疑いがあるといえるが、これらの大腸がん患者もスクリーニング可能な検査方法も求められている。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、リンチ症候群大腸がんを特異的かつ高精度に検査できる方法、及びそれに用いるキットを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、本発明者らは、先ず、マイクロサテライト座位(BAT25及びBAT26)に対するMSI検査で陽性を示した、すなわち、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を示す大腸がんを発症している患者から切除されたがん部及び非がん部を検体とし、各検体から抽出したDNAの全エクソンシークエンスデータ(WESデータ)を得た。次いで、各WESデータについて、非同義変異に加えて、同義変異、イントロン変異、UTR変異も含めた、がん部と非がん部とのペアにおける体細胞変異サイト(遺伝子変異領域)を検出した。さらに、これらの各遺伝子変異領域と、MMR遺伝子の生殖細胞系列での遺伝子検査によって真にリンチ症候群大腸がん(リンチ症候群様大腸がんを含む)であると診断されている症例と、の関係を統計的に解析することにより、リンチ症候群大腸がん患者に特異的な遺伝子変異領域を同定した。その結果、本発明者らは、これらの特異的な遺伝子変異領域をマーカーとして、その存在の有無を確認することでリンチ症候群大腸がんを特異的かつ高精度に検査できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1] 被験者由来の検体において、下記の(1)~(15):
(1)染色体1のITGB3BP遺伝子に含まれる配列番号1に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(2)染色体16のCLEC16A遺伝子に含まれる配列番号2に記載の塩基配列における16~23番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(3)染色体11のBCL9L遺伝子に含まれる配列番号3に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(4)染色体9のCTSL遺伝子に含まれる配列番号4に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(5)染色体5のARHGEF28遺伝子に含まれる配列番号5に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(6)染色体13のRBM26遺伝子に含まれる配列番号6に記載の塩基配列における16~22番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(7)染色体8のPTDSS1遺伝子に含まれる配列番号7に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(8)染色体20のRAD21L1遺伝子に含まれる配列番号8に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(9)染色体10のSMNDC1遺伝子に含まれる配列番号9に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(10)染色体17のIKZF3遺伝子に含まれる配列番号10に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(11)染色体19のEPOR遺伝子に含まれる配列番号11に記載の塩基配列における16~26番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(12)染色体22のSMC1B遺伝子に含まれる配列番号12に記載の塩基配列における26~31番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(13)染色体8のNRG1遺伝子に含まれる配列番号13に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(14)染色体13のGPC5遺伝子に含まれる配列番号14に記載の塩基配列における16~19番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、及び
(15)染色体4のINPP4B遺伝子に含まれる配列番号15に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、リンチ症候群大腸がん検査方法。
[2]さらに、下記の(16)~(18):
(16)染色体12のKRAS遺伝子に含まれる配列番号16に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、
(17)染色体3のPIK3CA遺伝子に含まれる配列番号17に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、及び
(18)染色体12のKRAS遺伝子に含まれる配列番号18に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、[1]に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法。
[3]被験者由来の検体において、前記(16)~(18)からなる群から選択される2以上の変異を検出する工程を含む、リンチ症候群大腸がん検査方法。
[4]さらに、前記(1)~(15)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、[3]に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法。
[5]さらに、下記の(19)~(32):
(19)染色体4のBEND4遺伝子に含まれる配列番号19に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(20)染色体21のSCAF4遺伝子に含まれる配列番号20に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(21)染色体12のGLI1遺伝子に含まれる配列番号21に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(22)染色体1のCDC14A遺伝子に含まれる配列番号22に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(23)染色体12のMYO1A遺伝子に含まれる配列番号23に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(24)染色体17のAPOH遺伝子に含まれる配列番号24に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(25)染色体1のMIGA1遺伝子に含まれる配列番号25に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(26)染色体6のHMGN3遺伝子に含まれる配列番号26に記載の塩基配列における21~23番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(27)染色体8のSPATC1遺伝子に含まれる配列番号27に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(28)染色体2のVRK2遺伝子に含まれる配列番号28に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(29)染色体6のRP11-524K22.1遺伝子に含まれる配列番号29に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(30)染色体6のB3GAT2遺伝子に含まれる配列番号30に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(31)染色体3のZXDC遺伝子に含まれる配列番号31に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、及び
(32)染色体3のLARS2遺伝子に含まれる配列番号32に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異がないことを検出する工程を含む、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法。
[6][1]、[2]、[5]のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法に用いるためのキットであり、前記(1)~(15)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、リンチ症候群大腸がん検査用キット。
[7]さらに、前記(16)~(18)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、[6]に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
[8][3]、[4]、[5]のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法に用いるためのキットであり、前記(16)~(18)からなる群から選択される少なくとも2以上の変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、リンチ症候群大腸がん検査用キット。
[9]さらに、前記(1)~(15)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、[8]に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
[10]さらに、前記(19)~(32)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、[6]~[9]のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
[11]前記試薬が、前記変異の箇所を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを含む試薬である、[6]~[10]のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
本発明によれば、リンチ症候群大腸がんを特異的かつ高精度に検査できる方法、及びそれに用いるキットを提供することが可能となる。そのため、本発明によれば、被験者におけるリンチ症候群大腸がんの発症の有無を検査できる方法、被験者がリンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクを予測できる方法、前記リスクが高い被験者をスクリーニングできる方法、及びこれらの方法に用いるキットを提供することが可能となる。
遺伝子変異領域6領域(Model 1)又は遺伝子変異領域5領域(Model 2)についてロジスティック回帰分析を行って得られたROC曲線を示す図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<リンチ症候群大腸がん検査方法>
本発明は、リンチ症候群大腸がんの検査をする方法であり、
被験者由来の検体において、下記の(1)~(15):
(1)染色体1のITGB3BP遺伝子に含まれる配列番号1に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(2)染色体16のCLEC16A遺伝子に含まれる配列番号2に記載の塩基配列における16~23番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(3)染色体11のBCL9L遺伝子に含まれる配列番号3に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(4)染色体9のCTSL遺伝子に含まれる配列番号4に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(5)染色体5のARHGEF28遺伝子に含まれる配列番号5に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(6)染色体13のRBM26遺伝子に含まれる配列番号6に記載の塩基配列における16~22番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(7)染色体8のPTDSS1遺伝子に含まれる配列番号7に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(8)染色体20のRAD21L1遺伝子に含まれる配列番号8に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(9)染色体10のSMNDC1遺伝子に含まれる配列番号9に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(10)染色体17のIKZF3遺伝子に含まれる配列番号10に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(11)染色体19のEPOR遺伝子に含まれる配列番号11に記載の塩基配列における16~26番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(12)染色体22のSMC1B遺伝子に含まれる配列番号12に記載の塩基配列における26~31番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(13)染色体8のNRG1遺伝子に含まれる配列番号13に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(14)染色体13のGPC5遺伝子に含まれる配列番号14に記載の塩基配列における16~19番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、及び
(15)染色体4のINPP4B遺伝子に含まれる配列番号15に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、リンチ症候群大腸がん検査方法(以下、場合により、単に「検査方法」という)を提供する。
(リンチ症候群大腸がん)
「リンチ症候群」は、上記のとおり、ミスマッチ修復遺伝子(MMR遺伝子)のうち、MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、又はPMS2遺伝子の生殖細胞系列の病的変異によって起こる遺伝性疾患である。「リンチ症候群大腸がん」は、リンチ症候群で発症した遺伝性大腸がんである。本発明に係るリンチ症候群大腸がんの診断は、好ましくは、「遺伝性大腸癌診療ガイドライン(大腸がん研究会、2016年)」に基づいて、上記の第1次スクリーニング、第2次スクリーニング、及び確定診断のための遺伝学的検査の3つのステップにより行われる。本発明において、真にリンチ症候群大腸がん(リンチ症候群様大腸がんを含まない)であることは、大腸がんを発症しており、かつ、ミスマッチ修復遺伝子(MMR遺伝子)のうち、リンチ症候群の原因遺伝子であるMLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、及びPMS2遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に対する生殖細胞系列遺伝子検査により、病的変異が検出されることで診断されることが好ましい。前記生殖細胞系列遺伝子検査は、従来公知の方法で適宜実施することができる。
また、本明細書において、単に特段の言及なしに「リンチ症候群大腸がん」という場合には、「リンチ症候群様大腸がん」を含む。本発明に係る「リンチ症候群様大腸がん」は、上記診断により確定診断はされないもののリンチ症候群大腸がんが疑われる大腸がんであり、具体的には、上記の第2次スクリーニングにおいてMSI検査の結果がMSI-Hであっても、MMR遺伝子の生殖細胞系列での遺伝子検査で病的変異が検出されず、かつ、DNAメチル化異常でもない大腸がんが挙げられる。
本発明の検査方法によれば、このようなリンチ症候群様大腸がんも含めた検査をすることができ、また、前記リンチ症候群様大腸がんを含むリンチ症候群大腸がんと、MSI検査の結果がMSI-HであるがDNAメチル化異常である大腸がんと、を判別することも可能である。
(被験者)
本発明において、「被験者」とは、本発明の検査方法を行う対象のヒトであれば特に制限されない。例えば、リンチ症候群大腸がんの発症リスクの予測やスクリーニング等を目的とした、健常者や症状のない者であってもよい。また例えば、発症の有無の確認や再発リスクの予測等を目的とした、既に大腸がん若しくはリンチ症候群大腸がんを発症している患者、又は過去に発症したことが既知の患者、或いは、リンチ症候群が関連する他のがん等に罹患していることが既知の患者であってもよい。
(検体)
本発明において、前記被験者由来の「検体」としては、前記被験者から採取されたものであって、大腸細胞由来のDNAが存在しうる限り特に制限はないが、一般的には、被験者(ヒト)から採取された、大腸細胞(非がん細胞)、大腸がん細胞(腫瘍)、血液、尿等が挙げられる。これらの中でも、大腸がん細胞由来のDNAが存在しうるものであることが好ましく、さらに、大腸がん細胞のDNAは循環DNA(ctDNA)として血液中に含まれるため、簡便性の観点から血液がより好ましい。これらの検体としては、必要に応じて希釈液で適宜希釈又は懸濁されたものであってもDNA抽出のための前処理を施されたものであってもよい。
(遺伝子変異領域(リンチ症候群大腸がんマーカー))
本発明の検査方法においては、前記被験者由来の検体において、前記(1)~(15)からなる群から選択される少なくとも1つの変異をマーカーとして、この存在を検出する。本発明の検査方法においては、より精度が向上する観点から、下記の(16)~(18):
(16)染色体12のKRAS遺伝子に含まれる配列番号16に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、
(17)染色体3のPIK3CA遺伝子に含まれる配列番号17に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、及び
(18)染色体12のKRAS遺伝子に含まれる配列番号18に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異もマーカーとして、この存在をさらに検出することが好ましい。また、本発明の検査方法の別の態様としては、前記(16)~(18)からなる群から選択される変異のうちの2以上の変異を検出することが好ましい。
下記の表1に、前記(1)~(18)の変異の具体例を示す。表1において、「No.」に記載の数字は、それぞれ、前記(1)~(18)に対応する番号を示し;「chr」に記載の数字は、各変異を検出する染色体番号を示し;「Genome location」に記載の数字は、出願時のヒトゲノムバージョン(ゲノムアセンブリバージョンhg38)における各変異の1塩基目の位置を示し;「Genome region」は、各変異を検出する遺伝子を示し;「Reference sequences」に記載の塩基配列(左から右へ5’から3’への方向、以下同じ)は、各変異を検出する領域の変異前の塩基配列(以下、場合により「遺伝子変異領域」という)を示し;「Mutation sequences」には、前記遺伝子変異領域において太字及び下線で示した塩基(以下、場合により「遺伝子変異部位」という)におきうる変異の一例(括弧[ ]内)を示す(以下、表2において同様)。また、No.1~18のReference sequences(遺伝子変異領域)の塩基配列を、それぞれ、配列番号:1~18に示す。
Figure 2022008193000001
表1では、例えば、No.1で、(1)の変異において、染色体1のITGB3BP遺伝子に含まれる配列番号1に記載の塩基配列(遺伝子変異領域)における16~18番目の塩基(遺伝子変異部位)「TAA」の変異の例として、1塩基欠失(TA)又は2塩基欠失(T)を挙げている。本発明に係る(1)~(18)の塩基の変異としては、それぞれ、表1の「Mutation sequences」に挙げたものが好ましいが、これに制限されるものではなく、前記変異には、それぞれ独立に、前記遺伝子変異部位における1又は複数又は全部の塩基の置換、挿入、欠失、及びこれらの組み合わせが含まれる。
本発明においては、上記(1)~(15)の変異のうちの少なくとも1つの変異の存在を検出対象とするが、より陽性的中率(被験者を陽性と陰性との2群に分ける場合に、当該基準によって陽性群にあると予測又は判断された被験者が真に陽性である又は真に陽性となる割合)等の検査精度が向上することから、2以上の複数の変異を組み合わせて検出対象とすることが好ましく、上記(1)~(18)の変異のうちの3以上の変異を検出対象とすることがより好ましく、上記(1)~(18)の変異のうちの5以上、又は6以上の変異を検出対象とすることがさらに好ましい。このような組み合わせとしては、例えば、上記(1)、(2)、(5)、(16)、及び(17)の組み合わせが好ましく、上記(1)、(2)、(5)、(6)、(16)、及び(17)の組み合わせがより好ましい。また、本発明においては、前記(1)~(8)及び(16)~(18)からなる群から選択される変異のうちの、2以上、3以上、5以上、又は6以上の変異の存在を検出対象とすることもより好ましい。
さらに、本発明の検査方法においては、前記被験者由来の検体において、下記の(19)~(32):
(19)染色体4のBEND4遺伝子に含まれる配列番号19に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(20)染色体21のSCAF4遺伝子に含まれる配列番号20に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(21)染色体12のGLI1遺伝子に含まれる配列番号21に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(22)染色体1のCDC14A遺伝子に含まれる配列番号22に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(23)染色体12のMYO1A遺伝子に含まれる配列番号23に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(24)染色体17のAPOH遺伝子に含まれる配列番号24に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(25)染色体1のMIGA1遺伝子に含まれる配列番号25に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(26)染色体6のHMGN3遺伝子に含まれる配列番号26に記載の塩基配列における21~23番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(27)染色体8のSPATC1遺伝子に含まれる配列番号27に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(28)染色体2のVRK2遺伝子に含まれる配列番号28に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(29)染色体6のRP11-524K22.1遺伝子に含まれる配列番号29に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(30)染色体6のB3GAT2遺伝子に含まれる配列番号30に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
(31)染色体3のZXDC遺伝子に含まれる配列番号31に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、及び
(32)染色体3のLARS2遺伝子に含まれる配列番号32に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
からなる群から選択される少なくとも1つの変異をネガティブマーカーとして、これが存在しないことをさらに検出することが好ましい。これらの変異は、MSI-Hを示す大腸がんのうち、リンチ症候群大腸がん(リンチ症候群様大腸がんを含む)以外のがんに特異的な変異であるため、かかる変異の不存在を合わせて検出することにより、さらに検査精度を高めることが可能となる。下記の表2に、前記(19)~(32)の変異の具体例を示す。また、No.19~32のReference sequences(遺伝子変異領域)の塩基配列を、それぞれ、配列番号:19~32に示す。
Figure 2022008193000002
表2では、例えば、No.19で、(19)の変異において、染色体4のBEND4遺伝子に含まれる配列番号19に記載の塩基配列(遺伝子変異領域)における16~18番目の塩基(遺伝子変異部位)「CGG」の変異の例として、1塩基欠失(CG)、2塩基欠失(C)又は1塩基挿入(CGGG)を挙げている。本発明に係る(19)~(32)の塩基の変異としては、それぞれ、表2の「Mutation sequences」に挙げたものが好ましいが、これに制限されるものではなく、前記変異には、それぞれ独立に、前記遺伝子変異部位における1又は複数又は全部の塩基の置換、挿入、欠失、及びこれらの組み合わせが含まれる。
本発明においては、上記(19)~(32)の変異のうちの少なくとも1つの変異の不存在を検出対象とすることが好ましいが、より検査精度が向上することから、上記(19)~(22)の変異のうちの少なくとも1つの変異の不存在を検出対象とすることがより好ましく、また、複数の変異の不存在を組み合わせて検出対象とすることが好ましく、上記(19)~(32)(好ましくは(19)~(22))の変異のうちの2以上、3以上、5以上、又は6以上の変異の不存在を検出対象とすることがより好ましい。
(変異の検出方法)
各変異の存在又は不存在の検出においては、先ず、前記検体からDNA試料を調製する。前記検体からゲノムDNAを抽出する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、例えば、PCI法、GuSCN/Silica法、SDSフェノール法、CTAB法、アルカリ処理法が挙げられる。また、市販のキットを適宜利用することもできる。
前記DNA試料における各変異の存在又は不存在の検出方法は、当該変異を検出しうる方法である限り特に制限はなく、上記の各変異の位置に基づいて、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができる。
例えば、各変異の存在又は不存在の検出は、少なくとも上記の変異を検出する部位(遺伝子変異部位)、好ましくは上記の変異を検出する領域(遺伝子変異領域)を含むDNAを単離し、単離したDNAの塩基配列を決定することにより実施することができる。当該DNAの単離は、例えば、少なくとも前記遺伝子変異部位を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ゲノムDNAを鋳型としたPCR等によって行うことができる。単離したDNAの塩基配列の決定は、サンガー法及びマキサムギルバート法など、当業者に公知の方法で行うことができる。また、前記DNA試料より、次世代シーケンサー等を用いて直接に前記遺伝子変異部位の塩基配列を決定してもよい。
前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法としては、例えば、PCR-SSP(PCR-配列特異的プライマー)法が挙げられる。当該方法においては、プライマーを構成する一対のオリゴヌクレオチドのうちの片方のオリゴヌクレオチドの3’末端が前記遺伝子変異領域の特定の塩基、例えば、遺伝子変異部位に相補的な塩基種になるように設計する。このように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより増幅されるのは、前記遺伝子変異部位(変異前の塩基配列)を有するゲノムDNAを鋳型にした場合に限られ、前記遺伝子変異部位が異なる塩基種であるゲノムDNA、すなわち当該部位に変異があるゲノムDNAを鋳型にした場合には増幅されない。他方、当該部位に変異がないゲノムDNAを鋳型にした場合には増幅される。このような増幅の有無を指標として、前記各遺伝子変異部位の変異の存在又は不存在を検出することができる。
また、前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法として、前記遺伝子変異部位に制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を設定できる場合には、それらRFLPマーカーを指標として、例えば、PCR-RFLP法(又は、CAPS[Cleaved Amplified Polymorphic Sequence]法)などにより検出することもできる。
前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法としては、例えば、PCR-SSCP(PCR-一本鎖高次構造多型)法が挙げられる。前記遺伝子変異部位を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより増幅された2本鎖DNAを、熱やアルカリ等で処理することにより変性させ、1本鎖DNAにした後、変性剤を含まないポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけると、ゲル中で1本鎖DNAは分子内相互作用により折り畳まれ、高次構造を形成する。折り畳まれ構造の相互作用は、塩基種の相違により変化するため、分離した当該1本鎖DNAを銀染色やラジオアイソトープにより検出し、当該1本鎖DNAのゲル上での移動度を指標として、前記遺伝子変異部位の変異の存在又は不存在を検出することができる。
前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法としては、例えば、インターカレーターを利用する方法が挙げられる。この方法においては、先ず、DNA二重鎖間に挿入されると蛍光を発するインターカレーターを含む反応系において、前記DNA試料を鋳型として、前記遺伝子変異部位を含む領域を増幅する。そして、反応系の温度を変化させ、インターカレーターが発する蛍光の強度の変動を検出し、検出した温度の変化に伴う蛍光の強度の変動を指標として、前記遺伝子変異部位の変異の存在又は不存在を検出することができる。このような方法としては、高分解融解曲線解析(HRM)法が挙げられる。
前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法としては、例えば、前記遺伝子変異部位を含む領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを利用する方法が挙げられる。この方法の一つの態様においては、先ず、前記遺伝子変異部位に特異的にハイブリダイズし、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを調製する。次いで、このオリゴヌクレオチドプローブを前記DNA試料にハイブリダイズさせ、さらにオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズしたDNA試料を鋳型として、前記遺伝子変異部位を含むDNAを増幅する。そして、増幅に伴うオリゴヌクレオチドプローブの分解により、クエンチャーによる抑制が解除されたレポーター蛍光色素が発する蛍光を検出する。このような方法としては、ダブルダイプローブ法、いわゆるTaqMan(登録商標)プローブ法が挙げられる。レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを利用する他の態様としては、前記遺伝子変異部位を含む領域に特異的にハイブリダイズするキメラオリゴヌクレオチド(RNAとDNAのキメラ)とRNase Hなどの酵素との組み合わせを利用するサイクリングプローブ法を利用することもできる。
前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法としては、例えば、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法が挙げられる。この方法では、2本鎖DNAの目的部位の両側に3つずつ、計6つの領域を設定し、これら領域を含む4種類(各側2種類ずつ)のプライマーを用いて、鎖置換型酵素の存在下で反応させることにより、前記目的部位の両側にループ構造の増幅起点を生成させることができるため、以降、同一鎖上に互いに相補的な配列の繰り返し構造が生成されて、前記目的部位が増幅される。前記目的部位を前記遺伝子変異部位とした場合には、増幅産物の塩基配列の決定を行うことにより各変異の存在又は不存在の検出を行うことができる。また、前記6つの領域のうちの1つを前記遺伝子変異部位とした場合、変異がある場合には前記目的部位が増幅されないため、かかる増幅の有無を指標として、前記遺伝子変異部位の変異の存在又は不存在を検出することができる。
前記各変異の存在又は不存在の別の検出方法は、上記実施態様に限定されるものではない。例えば、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)、インベーダー法、パイロシークエンシング法、シングルヌクレオチドプライマー伸長(SNuPE)法、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション法、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法、DNAマイクロアレイ法、DNAアレイ法などの、その他の公知の技術も、本発明において利用しうる。
なお、上記の各変異の存在又は不存在の検出方法においては、前記遺伝子変異領域及び遺伝子変異部位(変異前の塩基配列)の有無を指標とする方法を例に挙げて説明したが、目的とする変異の塩基配列がわかっている場合には、これを指標として、例えば、表1~2に記載のMutation sequencesに挙げた配列の有無を指標として、各変異の存在又は不存在の検出を行ってもよい。
(検査方法)
本発明において、「リンチ症候群大腸がん検査方法」には、被験者におけるリンチ症候群大腸がんの発症の有無を検査する方法(発症検査方法)、被験者がリンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクを予測する方法(リスク予測方法)、前記リスクが高い被験者をスクリーニングする方法(スクリーニング方法)を含む。前記発症検査方法には、本発明では具体的に、大腸がんを発症している被験者において、発症している大腸がんが、リンチ症候群大腸がんであるか否かを判定する、又はリンチ症候群大腸がんである可能性が高いと予測する方法が含まれ、症状の有無に関わらず、被験者において、リンチ症候群大腸がんを発症しているか否かを判定する、又はリンチ症候群大腸がんである可能性が高いと予測する方法も含む。前記リスク予測方法において、「リンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスク」とは、既に過去に発症した及び/又は現在発症しているリンチ症候群大腸がんが再発する可能性、又はリンチ症候群大腸がんをこれから発症する可能性を示す。「リンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクの予測」には、前記可能性の有無の判定のみならず、可能性がある場合におけるその程度の評価(高い/中程度/低い等の評価)を含む。また、前記スクリーニング方法には、本発明では具体的に、被験者を、リンチ症候群大腸がんを再発又は発症する可能性が高いと判断して、前記可能性が無い又は低い群から選別する方法が含まれる。前記スクリーニング方法においては、その目的に応じて、例えば、中程度の可能性が期待できるレベルで被験者を選別してもよい。
本発明の検査方法においては、上記(1)~(15)のうちの少なくとも1つの変異が存在することが検出、並びに、必要に応じて、上記(16)~(18)のうちの少なくとも1つの変異が存在することがさらに検出、及び/又は上記(19)~(32)のうちの少なくとも1つの変異が不存在であることが検出された被験者を、その目的に応じて、例えば、前記発症検査方法では、リンチ症候群大腸がんであると判定、又はその可能性が高いと予測し;前記リスク予測方法では、リンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクが高いと予測し;前記スクリーニング方法では、前記リスクが高いと判定して選別する。なお、前記判定又は予測の基準(例えば、検出される変異の数等)は、検査の目的、検査方法等によって適宜設定することができる。
そのため、本発明の検査方法によれば、他の大腸がんと区別して、リンチ症候群大腸がんに特異的な治療方針の決定等のための情報を提供することが可能となる。また、リンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクが高い被験者を特定し、定期的な検診や管理を行うことにより、リンチ症候群大腸がんの早期発見や早期治療介入等が可能となる。なお、本発明の検査方法は、医師等による診断を補助する方法、又は医師等による診断のための情報を提供する方法と表現することもできる。
本発明の検査方法は、単独で行っても、他の検査と組み合わせて行ってもよい。他の検査としては、MSI検査や免疫組織学的検査が挙げられる。また、本発明の検査方法は、リンチ症候群を疑う所見を考慮せずに、全ての大腸がんに対して行ってもよい(ユニバーサル・スクリーニング)。
<検出キット>
本発明は、上記本発明のリンチ症候群大腸がん検査方法に用いるためのキットであり、前記(1)~(15)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、リンチ症候群大腸がん検査用キット(以下、場合により、単に「検査キット」という)を提供する。
本発明に係る検査キットとしては、前記(16)~(18)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬をさらに備えていることが好ましく、また、前記(19)~(32)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬をさらに備えていることも好ましい。また、本発明の検査キットの別の態様としては、前記(16)~(18)からなる群から選択される少なくとも2以上の変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備えることが好ましい。
前記オリゴヌクレオチドとしては、前記変異の検出方法において述べた、前記(1)~(32)の変異(より具体的には前記遺伝子変異部位)をそれぞれ挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマー、及び前記遺伝子変異部位にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが挙げられる。これらの中でも、検査の簡便性及び精度の観点から、前記一対のオリゴヌクレオチドプライマーであることが好ましい。前記オリゴヌクレオチドが一対のオリゴヌクレオチドプライマーである場合、前記試薬としては、一方のプライマーを含む試薬と他方のプライマーを含む試薬との組み合わせとすることが好ましい。
前記一対のオリゴヌクレオチドプライマーにおいて、「挟み込むように設計された」とは、一対のオリゴヌクレオチドプライマーによる増幅産物が前記遺伝子変異部位を含むように、当該オリゴヌクレオチドプライマーが設計されていることを意味する。したがって、前記変異の存在又は不存在の検出方法によっては、当該一対のオリゴヌクレオチドプライマーのうち、いずれか一方のオリゴヌクレオチドプライマーは、前記遺伝子変異部位の塩基配列に相補的な塩基配列を含んでいてもよい。
前記オリゴヌクレオチドプローブとしては、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、前記遺伝子変異部位に特異的にハイブリダイズするものが好ましい。前記オリゴヌクレオチドプローブは、適宜、蛍光色素、アイソトープ、ビオチン等によって標識して用いてもよい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、オリゴヌクレオチドの5’端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、及びクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素又はビオチンなどによって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)等が挙げられる。
前記オリゴヌクレオチド(プライマー及びプローブ)は、前記遺伝子変異領域の塩基配列情報、並びに、その周辺の塩基配列情報に基づいて、上記した方法や増幅する領域に即した塩基配列となるように、さらには、前記目的の領域以外の増幅産物が極力生じないように、それぞれ設計すればよい。このようなオリゴヌクレオチドは、当業者であれば、従来公知の方法又はそれに準じた方法で設計することができる。前記遺伝子変異領域の周辺の塩基配列情報等は、公共のデータベース(Genbank等)から取得することができる。
前記オリゴヌクレオチド(プライマー及びプローブ)の鎖長は、少なくとも15塩基である。通常は、15~100塩基であり、好ましくは17~30塩基である。当該オリゴヌクレオチドは、例えば、市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製することができる。また、前記オリゴヌクレオチドプローブは、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製することもできる。また、前記オリゴヌクレオチドは、天然のヌクレオチド(DNAやRNA)のみから構成されていなくともよく、非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよい。非天然型のヌクレオチドとしては、例えば、PNA(polyamide nucleic acid)、LNA(登録商標、locked nucleic acid)、ENA(登録商標、2’-O,4’-C-Ethylene-bridged nucleic acids)が挙げられる。
本発明に係る試薬においては、前記オリゴヌクレオチド以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤等が必要に応じてさらに含まれていてもよい。
本発明のキットとしては、前記試薬として、1種を単独であっても2種以上を組み合わせて備えていてもよい。また、前記試薬のみからなるものであってもよいが、他に、上述した変異の存在又は不存在を検出するために必要な各種反応試薬、例えば、酵素緩衝液、dNTP、コントロール試薬(例えば、ポジティブ及びネガティブコントロール用標的オリゴヌクレオチド)、標識用及び/又は検出用試薬や、本発明のキットの説明書を、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせてさらに備えていてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(検体)
東京大学の倫理審査委員会で承認された研究計画(研究課題番号:G10063、G3546)及び帝京大学の倫理審査委員会で承認された研究計画(研究課題番号:#14-197)において、1998年~2016年迄の間に東京大学病院及び帝京大学病院で治療をした大腸がん患者を被験者とした。前記大腸がん患者から、それぞれ、外科的に切除された腫瘍切片の一部を検体とし、2種類のマイクロサテライト座位(BAT25及びBAT26)に対するMSI検査で陽性を示した145患者の検体を、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を示す大腸がん患者由来の検体とした。
各検体のうち、がん部のゲノムDNAは、前記145患者の腫瘍から抽出した。また、非がん部(正常部)のゲノムDNAは、同一サンプルから、がん部に近接する正常組織から抽出した。抽出したDNAを、下記の全エクソン解析(WES)及びミスマッチ修復遺伝子であるMLH1の遺伝子上流域(プロモーター領域)におけるDNAメチル化アッセイに用いた。
(全エクソン解析)
〔WESデータの入手〕
上記で145患者の検体から抽出したDNA全てについて、それぞれ、HiSeq2500(イルミナ社製)を用いて全エクソンシークエンス(Whole exome sequence:WES)を行ったデータを「WESデータ」とする。当該WESデータは、NBDCヒトデータ審査委員会によるデータ利用申請の承認を得た後、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)が運用しているJapanese Genotype-phenotype Archive(JGA)データベース(https://www.ddbj.nig.ac.jp/jga/index.html)に提供されており、同JGAデータベースから入手可能である(JGAD000122、NBDC Research ID:hum0094.v3)。また、MLH1プロモーター領域のDNAメチル化状態に関する情報、及びミスマッチ修復タンパク質群をコードしている遺伝子群(MMR遺伝子)の変異情報は、Sato et al.,Clin Cancer Res,2019,25:378-389(非特許文献1)のサプリメントデータから入手した。
〔WESデータの解析〕
上記のWESデータは、1症例(1患者)につき、がん部と非がん部とのペアからなる2種類のBAMファイルで構成されている。JGAデータベースから入手したWESデータ(145症例分)について、GATK(バージョン4.0.6.0)RevertSam(https://gatk.broadinstitute.org/hc/en-us)を用いて、ファイル形式をmapped BAMファイルからunmapped BAMファイルに変換し、samtools(バージョン1.9)(Li et al.,Bioinformatics,2009,25:2078-2079)を用いて、unmapped BAMファイルのインデックスファイルを作成した後、GATK Best practice(Auwera et al.,Curr Protoc Bioinformatics,2013,43:11.10.1-11.10.33)のpreprocessingパイプラインを用いて、ヒトリファレンスゲノム(ゲノムアセンブリバージョンhg38)に対するマッピング、重複リードの除去、リアライメント、及びベースクオリティのリカリブレーションを行うことにより、1症例あたり、がん部及び非がん部のremapped BAMファイルをそれぞれ作成した。さらに、がん部・非がん部ペアにおける体細胞変異サイト(遺伝子変異領域)を見つけるために、GATK Best practice のMutect2(バージョン4.0.6.0)パイプラインを用いて、全145症例に対し、各症例毎に変異検出を行ってVCFファイルを作成した。検出された遺伝子変異領域は、SnipShift(バージョン4.3t)(Cingolan et al.,Front Genet,2012,3:35)により、リード深度が20以上でフィルタリングした後、各領域に対してdbSNP(バージョン138)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp)及びCOSMIC(バージョン90)(https://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)データベースを利用して、SnipEff(バージョン4.3t)(Cingolan et al.,Fly,2012,6:80-92)でアノテーション情報を付加した。
(リンチ症候群大腸がんマーカー(遺伝子変異領域)の同定)
〔解析した症例の分類〕
上記の全145症例を、MMR遺伝子の原因遺伝子に対する生殖細胞系列遺伝子検査により、次の(1)~(3):
(1)MMR遺伝子の原因遺伝子に病的変異が認められた23症例:リンチ症候群大腸がんサンプル(LS)、
(2)MMR遺伝子の生殖細胞系列の病的変異が認められず、かつ、MLH1遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化も認められなかった26症例:リンチ症候群様大腸がんサンプル(LL)、
(3)MMR遺伝子の生殖細胞系列の病的変異が認められなかったが、MLH1遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化が認められた96症例:MLH1メチル化大腸がんサンプル(MM)、
の3種類に分類した。本実施例では、LS及びLLの49症例をリンチ症候群大腸がん患者のマーカー遺伝子探索用陽性サンプル群(LS/LL群)として用い、残りのMMである96症例を陰性サンプル(MM群)として用いた。
〔遺伝子変異領域の同定〕
上記の全エクソン解析で得られた遺伝子変異領域について、リンチ症候群大腸がん患者に特異的な変異が検出される遺伝子変異領域を同定するために、検出した各遺伝子変異領域に対して、LS/LL群とMM群とが互いに独立であるかどうかを検定するフィッシャーの正確確率検定(Fisher test)を実施した。検定の結果、統計的有意性(p-value<0.01)を示した遺伝子変異領域として、LS/LL群で高頻度に変異が観察される18領域(上記の表1及び下記の各表中のNo.1~18)と、MM群で高頻度に変異が観察される14領域(上記の表2及び下記の各表中のNo.19~32)と、の全部で32領域の遺伝子変異領域を同定することができた。さらに、p-value<0.005を示した遺伝子変異領域として、LS/LL群で高頻度に変異が観察される11領域(上記の表1及び下記の各表中のNo.1~8、16~18)と、MM群で高頻度に変異が観察される4領域(上記の表2と下記の各表中のNo.19~22)と、の全部で15領域の遺伝子変異領域を同定することができた。
LS/LL群で高頻度に変異が観察された18領域は、No.1~18として上記表1に示した遺伝子変異領域であり、MM群で高頻度に変異か観察される14領域は、No.19~32として上記表2に示した遺伝子変異領域である。下記の表3~表4に、LS/LL群で高頻度に変異が観察された18領域(表3)及びMM群で高頻度に変異が観察された14領域(表4)について、それぞれ、LS/LL群(49症例)において当該遺伝子変異が確認された症例の数(LS/LL)、MM群(96症例)において当該遺伝子変異が確認された症例の数(MM)、及びFisher testの結果をそれぞれ示す。さらに、表3~4には、それぞれ、次式:
突然変異率=1/nΣ(がん部サンプルにおいて遺伝子変異が確認されたリード数)/(がん部サンプルにおいて遺伝子変異領域にマッピングされたリード数)
[式中、nは、遺伝子変異が認められたサンプル数を示す。]
によって算出した突然変異率(Mutation rate)も合わせて示す。
Figure 2022008193000003
Figure 2022008193000004
(リンチ症候群大腸がんマーカーを用いた検査精度の評価1)
リンチ症候群大腸がんマーカーとして、LS/LL群で特に高頻度に変異が観察された遺伝子変異領域11領域(p-value<0.005)の組み合わせを利用して検査をした場合の検査精度を確認した。上記でLS/LL群に分類された患者(臨床的に真にリンチ症候群大腸がんである(陽性)と診断された患者)について、前記11領域の少なくとも1つに変異が確認され、検査結果が陽性となる患者の数(陽性:46)、及び、前記11領域のいずれにも変異が確認されず、検査結果が陰性となる患者の数(陰性:3)、並びに、上記でMM群に分類された患者(臨床的に真にリンチ症候群大腸がんではない(陰性)と診断された患者)のうち、前記11領域のうちのいずれにも変異が確認されず、検査結果が陰性となる患者の数(陰性:77)、及び、前記11領域の少なくとも1つに変異が確認され、検査結果が陽性となる患者の数(陽性:19)、の関係(分割表)を下記の表5に示す。
Figure 2022008193000005
上記より、前記遺伝子変異領域11領域における変異の有無を基準として検査をした場合の感度、特異度、偽陰性率、偽陽性率、陽性的中率、及び陰性的中率は、それぞれ以下のとおりであり、いずれも十分に高い精度であることが確認された。
・感度(sensitivity):46/49=0.94
・特異度(specificity):77/96=0.80
・偽陰性率(false negative rate):1-0.94=0.06
・偽陽性率(false positive rate):1-0.80=0.20
・陽性的中率(positive predictive value):46/65=0.71
・陰性的中率(negative predictive value):3/80=0.04。
(リンチ症候群大腸がんマーカーを用いた検査精度の評価2)
リンチ症候群大腸がんマーカーとして、LS/LL群で特に高頻度に変異が観察された遺伝子変異領域11領域(p-value<0.005)の組み合わせを利用した場合について、説明変数を各遺伝子変異領域における変異の有無、目的変数をリンチ症候群大腸がんの有無(臨床的に真に陽性/陰性)、として、ロジスティック回帰分析を行った。先ず、単変量ロジスティック回帰分析を行い、各説明変数を有意水準5%に基づいてさらに8つ(下記表6中、No.1、2、4、5、6、8、16、17)に絞り込んだ。次いで、多変量ロジスティック回帰分析で、変数増減法により多変量ロジスティック回帰モデルを構築した。各ロジスティック回帰モデルの評価には、Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線と、その曲線下面積であるArea Under the ROC curve(AUC)とを用いた。また、各ロジスティック回帰モデルの適合度は、赤池情報量基準(AIC)を計算して評価した。上記の統計解析には、R言語バージョン3.6.3(https://www.r-project.org)を用いた。単変量ロジスティック回帰分析の結果(各遺伝子変異領域(因子)における、オッズ比(Univariate model OR)、95%信頼区間(95%Cl)、P値(P-value))及び多変量ロジスティック回帰分析の結果(各遺伝子変異領域(因子)における、オッズ比(Multivariate model OR)、95%信頼区間(95%Cl)、P値(P-value))を、それぞれ下記の表6に示す。
Figure 2022008193000006
また、リンチ症候群大腸がんマーカーとして、下記の表7に示す遺伝子変異領域6領域(Model 1)又は遺伝子変異領域5領域(Model 2)について、上記と同様にしてロジスティック回帰分析を行った。各組み合わせにおける多変量ロジスティック回帰分析の結果(各遺伝子変異領域(因子)における、オッズ比(Multivariate model OR)、95%信頼区間(95%Cl)、P値(P-value))を下記の表7に示す。
Figure 2022008193000007
さらに、上記で作成された各組み合わせにおけるROCカーブを図1に示す。図1より、Model 1のAUCは0.85、AICは129.81であり、また、Model 2のAUCは0.82、AICは133.89であった。上記の結果より、いずれの検査精度も十分に高いことが確認された。特に、遺伝子変異領域No.1、2、5、6、16、17を組み合わせたModel 1では、これらの領域の組み合わせにおける変異の有無によって、より高い精度でリンチ症候群大腸がんを検査できることが確認された。
なお、本実施例で使用したデータ(上述したJGAデータベースから入手したデータ)は、代表者を間野博行(国立がん研究センター研究所)とするグループによって取得され、科学技術振興機構(JST)の「バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)」ウェブサイト(http://humandbs.biosciencedbc.jp/)を通じて提供されたものである。また、このデータは、論文:Fusion Kinases Identified by Genomic Analyses of Sporadic Microsatellite Instability-High Colorectal Cancers, doi:10.1158/1078-0432.CCR-18-1574に基づくものである。
本発明によれば、リンチ症候群大腸がんを特異的かつ高精度に検査できる方法を提供することが可能となる。そのため、本発明によれば、被験者におけるリンチ症候群大腸がんの発症の有無を検査できる方法、被験者がリンチ症候群大腸がんを再発又は発症するリスクを予測できる方法、前記リスクが高い被験者をスクリーニングできる方法、及びこれらの方法に用いるキットを提供することが可能となる。したがって本発明は、リンチ症候群大腸がん発症の早期発見や治療等において有用である。

Claims (7)

  1. 被験者由来の検体において、下記の(1)~(15):
    (1)染色体1のITGB3BP遺伝子に含まれる配列番号1に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (2)染色体16のCLEC16A遺伝子に含まれる配列番号2に記載の塩基配列における16~23番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (3)染色体11のBCL9L遺伝子に含まれる配列番号3に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (4)染色体9のCTSL遺伝子に含まれる配列番号4に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (5)染色体5のARHGEF28遺伝子に含まれる配列番号5に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (6)染色体13のRBM26遺伝子に含まれる配列番号6に記載の塩基配列における16~22番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (7)染色体8のPTDSS1遺伝子に含まれる配列番号7に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (8)染色体20のRAD21L1遺伝子に含まれる配列番号8に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (9)染色体10のSMNDC1遺伝子に含まれる配列番号9に記載の塩基配列における16~18番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (10)染色体17のIKZF3遺伝子に含まれる配列番号10に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (11)染色体19のEPOR遺伝子に含まれる配列番号11に記載の塩基配列における16~26番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (12)染色体22のSMC1B遺伝子に含まれる配列番号12に記載の塩基配列における26~31番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (13)染色体8のNRG1遺伝子に含まれる配列番号13に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (14)染色体13のGPC5遺伝子に含まれる配列番号14に記載の塩基配列における16~19番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、及び
    (15)染色体4のINPP4B遺伝子に含まれる配列番号15に記載の塩基配列における16~17番目の塩基のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、リンチ症候群大腸がん検査方法。
  2. さらに、下記の(16)~(18):
    (16)染色体12のKRAS遺伝子に含まれる配列番号16に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、
    (17)染色体3のPIK3CA遺伝子に含まれる配列番号17に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、及び
    (18)染色体12のKRAS遺伝子に含まれる配列番号18に記載の塩基配列における16番目の塩基の変異、
    からなる群から選択される少なくとも1つの変異を検出する工程を含む、請求項1に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法。
  3. さらに、下記の(19)~(32):
    (19)染色体4のBEND4遺伝子に含まれる配列番号19に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (20)染色体21のSCAF4遺伝子に含まれる配列番号20に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (21)染色体12のGLI1遺伝子に含まれる配列番号21に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (22)染色体1のCDC14A遺伝子に含まれる配列番号22に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (23)染色体12のMYO1A遺伝子に含まれる配列番号23に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (24)染色体17のAPOH遺伝子に含まれる配列番号24に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (25)染色体1のMIGA1遺伝子に含まれる配列番号25に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (26)染色体6のHMGN3遺伝子に含まれる配列番号26に記載の塩基配列における21~23番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (27)染色体8のSPATC1遺伝子に含まれる配列番号27に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (28)染色体2のVRK2遺伝子に含まれる配列番号28に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (29)染色体6のRP11-524K22.1遺伝子に含まれる配列番号29に記載の塩基配列における16~17番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (30)染色体6のB3GAT2遺伝子に含まれる配列番号30に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    (31)染色体3のZXDC遺伝子に含まれる配列番号31に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、及び
    (32)染色体3のLARS2遺伝子に含まれる配列番号32に記載の塩基配列における16~18番目のうちの少なくとも1つの塩基の変異、
    からなる群から選択される少なくとも1つの変異がないことを検出する工程を含む、請求項1又は2に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法。
  4. 請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査方法に用いるためのキットであり、前記(1)~(15)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、リンチ症候群大腸がん検査用キット。
  5. さらに、前記(16)~(18)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、請求項4に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
  6. さらに、前記(19)~(32)からなる群から選択される少なくとも1つの変異の有無を検出可能なオリゴヌクレオチドを含む試薬を備える、請求項4又は5に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
  7. 前記試薬が、前記変異の箇所を挟み込むように設計された一対のオリゴヌクレオチドプライマーを含む試薬である、請求項4~6のうちのいずれか一項に記載のリンチ症候群大腸がん検査用キット。
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