JP2022000887A - 電磁鋼板及び積層コア - Google Patents

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Ichiro Tanaka
和年 竹田
Kazutoshi Takeda
美菜子 福地
Minako Fukuchi
真介 高谷
Shinsuke Takaya
修一 山崎
Shuichi Yamazaki
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Abstract

【課題】各接着部の大きさとこれら接着部間の離間間隔、さらには電磁鋼板の板厚とを高次にバランスすることにより、十分な接着強度を持ちつつもより高い磁気特性が得られる電磁鋼板と、この電磁鋼板を複数枚積層して構成した積層コアとの提供を目的とする。【解決手段】母材鋼板2と、母材鋼板2の片面または両面に形成された接着能を有する絶縁被膜3と、を備え、絶縁被膜3が、平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmである複数の接着部3aを有し、各接着部3aの表面積の合計を母材鋼板2の表面積で除算した平均面積率ARが、4%以上80%以下である電磁鋼板。【選択図】図6

Description

本発明は、電磁鋼板及び積層コアに関する。
回転電機には、複数枚の電磁鋼板を積層した積層コアが用いられている。これら電磁鋼板は、かしめ、溶接、接着等の方法により、積層された状態で一体化されている。しかし、かしめや溶接により積層した場合、加工時に加わる機械的応力や熱応力、さらには層間短絡によって各電磁鋼板の磁気特性が劣化し、積層コアの性能が十分に発揮されない場合がある。接着による積層は、この問題を解消する上で極めて有効である。
例えば特許文献1では、無方向性電磁鋼板の接着面に、複数の点状の接着部を千鳥配列させた構成を開示している。すなわち、接着面に沿ってX軸とY軸を規定し、X軸方向にPx、Y軸方向にPyの間隔をそれぞれ持つA格子とB格子の各格子点上に接着部を配置する。A格子とB格子の間では、各格子の位置が、相互にPx/2、Py/2ずらされており、これにより千鳥配列を構成している。
この特許文献1には、無方向性電磁鋼板の両面に絶縁被膜を形成した構成が例示されている。そして、複数枚の無方向性電磁鋼板を、接着能を発揮する組成物からなる接着層を介して積層させている。前記組成物としては、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂などが例示されている。接着層は、千鳥配列された複数の点状の接着部で構成されている。
一方、特許文献1の構成とは異なり、絶縁被膜自体に接着能を付与して複数枚の電磁鋼板間を接着することも行われている。すなわち、積層コアの製造時には、接着能を有する絶縁被膜を片面または両面に有する電磁鋼板を複数枚積層させ、そして加圧及び加熱の少なくとも一方を加える。これにより、各電磁鋼板の絶縁被膜が溶け、積層方向に隣り合う各電磁鋼板同士が接着される。
特開2017−011863号公報
特許文献1に開示の構成、及び、絶縁被膜に接着能を付与した構成のどちらも、かしめや溶接により積層する場合に比べて磁気特性の面で優れている。しかし、近年では、さらなる高性能化のために、より高い磁気特性が求められている。このような要望を実現するために、点状の接着部それぞれの大きさを小さくして接着部間の離間間隔(互いに隣り合う接着部の縁部間の最短距離)を広くとることが考えられるが、それでは十分な接着強度が得られないおそれがある。そこで、各接着部の大きさをある程度大きくするか、各接着部間の離間距離を狭めるか、あるいはこれらの両方を行うかが考えられるが、より高い磁気特性を得るという目的を達成する上で、どの程度まで許容されるかについての最適解が得られていなかった。
特に電磁鋼板の板厚が薄い場合、接着部の硬化に伴い鋼板に付加される応力の影響が大きくなるため、最適解の解明を妨げていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、各接着部の大きさとこれら接着部間の離間間隔、さらには電磁鋼板の板厚とを高次にバランスさせることにより、十分な接着強度を持ちつつもより高い磁気特性が得られる電磁鋼板と、この電磁鋼板を複数枚積層して構成した積層コアとの提供を目的とする。
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用している。
(1)本発明の一態様に係る電磁鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の片面または両面に形成された接着能を有する絶縁被膜と、を備え、前記絶縁被膜が、平均円相当直径d(mm)が1.0mm〜5.0mmである複数の接着部を有し、前記各接着部の表面積の合計を前記母材鋼板の表面積で除算した平均面積率ARが、4%以上80%以下である。
上記(1)に記載の電磁鋼板によれば、平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmである条件と、平均面積率ARが4%以上80%以下である条件とを兼ね備えることで、各接着部の大きさとこれら接着部間の平均離間間隔とがバランスする。これにより、十分な接着強度を持ちながらより高い磁気特性が得られる。
なお、ここで言う「接着能を有する」とは、加熱および加圧の少なくとも一方を与えられることにより、絶縁被膜が溶けて接着特性を発揮することを意味する。
(2)上記(1)に記載の電磁鋼板は、前記各接着部の隣同士の平均離間間隔g(mm)を前記平均円相当直径d(mm)で除算した平均離間間隔比g/dが、1.0〜3.0であってもよい。
上記(2)に記載の電磁鋼板によれば、平均離間間隔比g/dを1.0〜3.0とすることにより、平均面積率ARを5%以上20%以下に最適化できる。その結果、各接着部の大きさと平均離間間隔とのバランスが最適化される。これにより、十分な接着強度と高い磁気特性をより確実に得ることができる。
(3)上記(1)または上記(2)に記載の電磁鋼板は、前記電磁鋼板の板厚t0(mm)、前記平均円相当直径d(mm)、前記平均面積率AR(%)で求められる式1の値αが、430以下であってもよい。
α=AR/d/t0・・・(式1)
上記(3)に記載の電磁鋼板によれば、式1で求められるαの値を430以下とすることにより、各接着部の大きさと平均離間間隔、さらに電磁鋼板の板厚とのバランスが最適化される。これにより、さらに十分な接着強度と高い磁気特性をより確実に得ることができる。
(4)本発明の一態様に係る積層コアは、上記(1)〜上記(3)の何れか1項に記載の電磁鋼板を2枚以上積層してなる。
上記(4)に記載の積層コアによれば、十分な接着強度を持ちつつもより高い磁気特性が得られる電磁鋼板によって構成されているので、低鉄損化が可能になる。
(5)上記(4)に記載の積層コアが以下の構成を備えてもよい:前記各電磁鋼板のそれぞれが、コアバック部とティース部とを備え;前記ティース部の平均幅寸法W(mm)を前記平均円相当直径d(mm)で除算したW/dが、1.0以上30.0以下である。
上記(5)に記載の積層コアによれば、接着強度と磁気特性のバランスが特に求められるティース部において、互いに積層する電磁鋼板間の接着状態を好適なものとすることができる。
本発明の上記各態様によれば、各接着部の大きさとこれら接着部間の離間間隔、さらには電磁鋼板の板厚とが高次にバランスすることにより、十分な接着強度を持ちつつもより高い磁気特性が得られる電磁鋼板と、この電磁鋼板を複数枚積層して構成した積層コアとを提供することが可能になる。
本発明の一実施形態に係る積層コアを備えた回転電機の断面図である。 同積層コアの側面図である。 同積層コアを構成する電磁鋼板の平面図である。 同電磁鋼板の素材である帯状鋼板の平面図である。 同素材を示す断面図であって、図4のA−A矢視図である。 同電磁鋼板における各接着部の配置を説明する図であって、図4のB部拡大図である。 (a),(b)共に、接着部の配置に関する変形例を示す図であって、図6に相当する部分拡大図である。 (a)は、図6のC−C断面図であり、(b)はその変形例である。 同素材より電磁鋼板を得て積層コアを製造する製造装置の一例を示す側面図である。 表1の実施例を示す図であって、平均離間間隔比g/dと平均面積率ARとの関係を示すグラフである。
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る積層コアと、この積層コアを備えた回転電機と、この積層コアを形成する素材(電磁鋼板)と、について説明する。なお、本実施形態では、回転電機として電動機、具体的には交流電動機、より具体的には同期電動機、より一層具体的には永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明する。この種の電動機は、例えば、電気自動車などに好適に採用される。
(回転電機10)
図1に示すように、回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、ケース50と、回転軸60と、を備える。ステータ20およびロータ30は、ケース50内に収容される。ステータ20は、ケース50内に固定される。
本実施形態では、回転電機10として、ロータ30がステータ20の径方向内側に位置するインナーロータ型を採用している。しかしながら、回転電機10として、ロータ30がステータ20の外側に位置するアウターロータ型を採用してもよい。また、本実施形態では、回転電機10が、12極18スロットの三相交流モータである。しかしながら、極数、スロット数、相数などは、適宜変更することができる。
回転電機10は、例えば、各相に実効値10A、周波数100Hzの励磁電流を印加することにより、回転数1000rpmで回転することができる。
ステータ20は、ステータ用積層コア(以下、ステータコア)21と、図示しない巻線と、を備える。
ステータコア21を構成する複数枚の電磁鋼板40は、それぞれ、環状のコアバック部22と、複数のティース部23と、を備える。以下では、ステータコア21(又はコアバック部22)の中心軸線O方向を軸方向と言い、ステータコア21(又はコアバック部22)の径方向(中心軸線Oに直交する方向)を径方向と言い、ステータコア21(又はコアバック部22)の周方向(中心軸線O回りに周回する方向)を周方向と言う。
コアバック部22は、ステータ20を軸方向から見た平面視において円環状に形成されている。
複数のティース部23は、コアバック部22の内周から径方向内側に向けて(径方向に沿ってコアバック部22の中心軸線Oに向けて)突出する。複数のティース部23は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角20度おきに18個のティース部23が設けられている。複数のティース部23は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。よって、複数のティース部23は、互いに同じ厚み寸法を有している。
前記巻線は、各ティース部23に巻回されている。前記巻線は、集中巻きされていてもよく、分布巻きされていてもよい。
ロータ30は、ステータ20(ステータコア21)に対して径方向の内側に配置されている。ロータ30は、ロータコア31と、複数の永久磁石32と、を備える。
ロータコア31は、ステータ20と同軸に配置される環状(円環状)に形成されている。ロータコア31内には、前記回転軸60が配置されている。回転軸60は、ロータコア31に固定されている。
複数の永久磁石32は、ロータコア31に固定されている。本実施形態では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成している。複数組の永久磁石32は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角30度おきに12組(全体では24個)の永久磁石32が設けられている。
本実施形態では、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型モータが採用されている。ロータコア31には、ロータコア31を軸方向に貫通する複数の貫通孔33が形成されている。複数の貫通孔33は、複数の永久磁石32の配置に対応して設けられている。各永久磁石32は、対応する貫通孔33内に配置された状態でロータコア31に固定されている。各永久磁石32のロータコア31への固定は、例えば永久磁石32の外面と貫通孔33の内面とを接着剤により接着すること等により、実現できる。なお、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型に代えて表面磁石型モータを採用してもよい。
ステータコア21およびロータコア31は、いずれも積層コアである。例えばステータコア21は、図2に示すように、複数の電磁鋼板40が積層方向に積層されることで形成されている。なお、積層方向は、前記軸方向である。
ステータコア21およびロータコア31それぞれの積厚(中心軸線Oに沿った全長)は、例えば50.0mmとされる。ステータコア21の外径は、例えば250.0mmとされる。ステータコア21の内径は、例えば165.0mmとされる。ロータコア31の外径は、例えば163.0mmとされる。ロータコア31の内径は、例えば30.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ステータコア21の積厚、外径や内径、およびロータコア31の積厚、外径や内径は、これらの値のみに限られない。ここで、ステータコア21の内径は、ステータコア21におけるティース部23の先端部を基準とする。すなわち、ステータコア21の内径は、全てのティース部23の先端部に内接する仮想円の直径である。
図3は、ステータコア21を構成する複数の電磁鋼板40のうちの1枚を示す。この電磁鋼板40は、母材鋼板2と、母材鋼板2の片面または両面に形成された接着能及び絶縁性能を有する絶縁被膜3とを備える。絶縁被膜3は、母材鋼板2の表面を隙間無く覆う下地絶縁被膜3bと、この下地絶縁被膜3b上に点状配置された複数の接着部3aとからなる。接着部3a及び下地絶縁被膜3bの詳細については後述する。本実施形態では、母材鋼板2の上面のみに絶縁被膜3が形成された場合を説明する。絶縁被膜3は、コアバック部22の上面と各ティース部23の上面のみに形成されており、コアバック部22及び各ティース部23の各下面には形成されていない。なお、絶縁被膜3は、コアバック部22の側面と各ティース部23の側面を覆ってもよい。ここで言う側面とは、電磁鋼板40を素材から打ち抜いて形成する場合には、打ち抜き後に形成される切断面であり、コアバック部22の外形をなす外周側の側面と、ティース部23の外形及びコアバック部22の内形をなす側面とが含まれる。本実施形態では、絶縁被膜3がコアバック部22の上面及び各ティース部23の上面のみに形成されている場合を例示しているが、この構成のみに限らない。コアバック部22及び各ティース部23の各上面及び各下面の両方に、絶縁被膜3が形成されていてもよい。
各電磁鋼板40は、例えば、図4から図6に示す素材1を打ち抜き加工すること等により形成される。素材1は、電磁鋼板40の母材となる鋼板(電磁鋼板)である。素材1としては、例えば、帯状の鋼板や切り板等が挙げられる。
ステータコア21の説明の途中ではあるが、以下では、この素材1について説明する。なお、本明細書において、電磁鋼板40の母材となる帯状の鋼板を、素材1という場合がある。素材1を打ち抜き加工して積層コアに用いられる形状にした鋼板を、電磁鋼板40という場合がある。
(素材1)
素材1は、帯状の鋼板である場合、例えば、コイル1A(図9参照)に巻き取られた状態で取り扱われる。本実施形態では、素材1として、無方向性電磁鋼板を採用している。無方向性電磁鋼板としては、JIS C 2552:2014の無方向性電磁鋼帯を採用できる。しかしながら、素材1として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用してもよい。この場合の方向性電磁鋼板としては、JIS C 2553:2019の方向性電磁鋼帯を採用できる。また、素材1としては、JIS C 2558:2015の無方向性薄電磁鋼帯や方向性薄電磁鋼帯も採用できる。
素材1の平均板厚t0の上下限値は、例えば以下のように設定される。
素材1が薄くなるに連れて素材1の製造コストは増す。そのため、製造コストを考慮すると、素材1の平均板厚t0の下限値は、0.10mm、好ましくは0.15mm、より好ましくは0.18mmとなる。
一方で素材1が厚すぎると、製造コストは良好になるが、素材1が電磁鋼板40として用いられた場合に、渦電流損が増加してコア鉄損が劣化する。そのため、コア鉄損と製造コストを考慮すると、素材1の平均板厚t0の上限値は、0.65mm、好ましくは0.35mm、より好ましくは0.30mmとなる。
素材1の平均板厚t0の上記範囲を満たすものとして、0.20mmを例示できる。
なお、素材1の平均板厚t0は、後述する母材鋼板2の厚さだけでなく、絶縁被膜3の厚さ(下地絶縁被膜3bの平均厚みと各接着部3aの平均厚みとの和)も含まれる。また、素材1の平均板厚t0の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、素材1がコイル1A(図9参照)の形状に巻き取られた帯状鋼板である場合、素材1の少なくとも一部を平板形状に巻き出す。平板形状に巻き出された素材1において、素材1の長手方向の所定の位置(例えば、素材1の長手方向の端縁から、素材1の全長の10%分の長さ、離れた位置)を選定する。この選定した位置において、素材1を、その幅方向に沿って5つの領域に区分する。これらの5つの領域の境界となる4か所において、素材1の板厚を測定する。4か所の板厚の平均値を、素材1の平均板厚t0とすることができる。
この素材1の平均板厚t0についての上下限値は、電磁鋼板40としての平均板厚t0の上下限値としても採用できる。なお、電磁鋼板40の平均板厚t0の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、積層コアの積厚を、周方向に同等の間隔をあけて4か所において(すなわち、中心軸線Oを中心とした90度おきに)測定する。測定した4か所の積厚それぞれを、積層されている電磁鋼板40の枚数で割って、1枚当たりの板厚を算出する。4か所の板厚の平均値を、電磁鋼板40の平均板厚t0とすることができる。この電磁鋼板40の状態で測定した平均板厚t0は、素材1の状態で測定した平均板厚t0に等しい。
図5および図6に示すように、素材1は、母材鋼板2と絶縁被膜3とを備える。すなわち、本実施形態の素材1は、帯状の母材鋼板2の片面である上面に、母材鋼板2よりも薄い絶縁被膜3が積層されている。なお、必要に応じ、母材鋼板2の上面に加えて下面にも絶縁被膜3が積層されていてもよい。あるいは、母材鋼板2の上下面両方に下地絶縁被膜3bを形成し、そして母材鋼板2の上面のみに各接着部3aを形成してもよい。
母材鋼板2の化学組成は、以下に質量%単位で示すように、質量%で2.5%〜4.5%のSiを含有する。化学組成をこの範囲とすることにより、素材1(電磁鋼板40)の降伏強度を、例えば、380MPa以上540MPa以下に設定することができる。
Si:2.5%〜4.5%
Al:0.001%〜3.0%
Mn:0.05%〜5.0%
残部:Feおよび不純物
素材1が電磁鋼板40として用いられるときに、絶縁被膜3は、積層方向に隣り合う電磁鋼板40間での絶縁性能を発揮する。また、絶縁被膜3は接着能(自己融着機能)を有していて、積層方向に隣り合う電磁鋼板40間を接着する。より具体的には、絶縁被膜3は、加圧および加熱の少なくとも一方を受けること等により融着する。
図6に示すように、絶縁被膜3は、母材鋼板2の表面を隙間無く覆う下地絶縁被膜3bと、この下地絶縁被膜3b上に複数配置された点状の接着部3aからなる。
各接着部3aは、平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmである。また、各接着部3aは、母材鋼板2の表面において隣り合うもの同士の平均離間間隔をg(mm)とした場合、この平均離間間隔g(mm)を平均円相当直径d(mm)で除算した平均離間間隔比g/dが、1.0〜3.0である。
各接着部3aの形状は、素材1の表面を対面視したときに、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。各接着部3aの配置は、素材1の表面を対面視してその表面に沿った一方向をX方向とし、前記表面に沿ってかつX方向に直交する方向をY方向とした場合、X方向では平均離間間隔g1に等間隔配置され、Y方向では平均離間間隔g2に等間隔配置されてもよい。なお、平均離間間隔g1は、X方向に隣り合う各接着部3aそれぞれの外縁間に形成される最短離間長さの平均値である。同様に、平均離間間隔g2は、Y方向に隣り合う各接着部3aそれぞれの外縁間に形成される最短離間長さの平均値である。平均離間間隔g1と平均離間間隔g2が異なる場合には、これらの平均値をもって平均離間間隔gとなる。
平均離間間隔g1と平均離間間隔g2は、互いに等しいことが好ましい。その場合は、平均離間間隔g1と平均離間間隔g2は、共に等しく平均離間間隔gとして扱われる。
各接着部3aの配置は、上記のような格子状の配置のみに限定されず、図7(a)に示す千鳥配置等、その他の配置を採用してもよい。また、図7(b)に示すように2種類あるいは3種類以上の大きさ(円相当直径)を持つ接着部3aを混在配置させてもよい。
絶縁被膜3は、複層構成であってもよく、あるいは単層構成であってもよい。
本実施形態である複層構成の場合には、図8(a)に示すように、絶縁被膜3が、絶縁性能に優れる下地絶縁被膜3bと、接着性能に優れた上地絶縁被膜をなす各接着部3aとで構成されている。下地絶縁被膜3bは、母材鋼板2の地肌表面を隙間無く覆うように形成され、そして下地絶縁被膜3bの表面に各接着部3aが重なって形成されている。下地絶縁被膜3bによって絶縁性能が確保されるので、各接着部3aは絶縁性能を持たなくてもよい。ただし、この構成のみに限らず、下地絶縁被膜3bと各接着部3aとの両方に絶縁性能を持たせてもよい。この場合も、下地絶縁被膜3bは接着性能を持たずに各接着部3aのみに接着性能を持たせるように構成してもよい。
下地絶縁被膜3bを形成するコーティング組成物としては、特に限定されず、例えば、クロム酸含有処理剤、リン酸塩含有処理等の一般的な処理剤を使用できる。
接着能を備える絶縁被膜である各接着部3aは、電磁鋼板用コーティング組成物を下地絶縁被膜3b上に塗布して形成したものである。各接着部3aは、積層コア製造時の加熱圧着前においては、未硬化状態又は半硬化状態(Bステージ)であり、加熱圧着時の加熱によって硬化反応が進行して接着能が発現する。
一方、図8(b)に示す変形例のように、絶縁被膜3として単層構成を採用することもできる。すなわち、必要とされる絶縁性能が確保される範囲において、各接着部3aが母材鋼板2の地肌表面上に、直接、この地肌表面に沿って間欠的に形成されていてもよい。この場合、各接着部3aは、接着性能と絶縁性能との両方を備える構成とする。そして、各接着部3aが持つ絶縁性能により、各電磁鋼板40を積層した際に、互いに隣り合う電磁鋼板40間の絶縁が保たれる。その上で、各接着部3aが持つ接着能により、各電磁鋼板40間が接着される。
絶縁被膜3が複層構成である場合及び単層構成である場合の何れにおいても、各接着部3aの表面積の合計を素材(母材鋼板)1の表面積で除算した平均面積率ARは、4%以上80%以下である。例えば図6において、二点鎖線で示される四角形の領域を素材1の表面積A0(mm)とし、さらにこの四角形の領域内に含まれる9個の接着部3aの合計面積をA1(mm)とした場合、平均面積率ARは、AR(%)=(A1/A0)×100により算出される。なお、各接着部3aのうち、素材1の縁部にあって部分的に切断されているものが含まれる場合、これも、各接着部3aの表面積の合計に含めるものとする。
以上説明の構成を有する素材1によれば、平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmである条件と、平均面積率ARが4%以上80%以下である条件とを兼ね備えることで、各接着部3aの大きさとこれら接着部3a間の平均離間間隔gとが高次にバランスする。これにより、十分な接着強度と高い磁気特性が両立する。
ここで、各接着部3aの隣同士の平均離間間隔g(mm)を平均円相当直径d(mm)で除算した平均離間間隔比g/dが1.0〜3.0であることがより好ましい。このように平均離間間隔比g/dを1.0〜3.0とすることにより、平均面積率ARを5%以上20%以下へと最適化できる。その結果、各接着部3aの大きさと平均離間間隔gとのバランスが最適化されるので、十分な接着強度と高い磁気特性をより確実に得ることができる。
また、各電磁鋼板40の板厚t0(mm)、平均円相当直径d(mm)、平均面積率AR(%)で求められる下記の式1の値αが、430以下であることが好ましい。式1で求められるαの値を430以下とすることにより、各接着部3aの大きさと平均離間間隔g(mm)、さらに各電磁鋼板40の板厚t0(mm)とのバランスが最適化される。これにより、さらに十分な接着強度と高い磁気特性をより確実に得ることができる。
α=AR/d/t0・・・(式1)
αの値は、好ましくは360以下とする。αの下限値は特に限定されないが、平均円相当直径d(mm)、平均面積率AR(%)と各接着部3aの配置を実用的な範囲で考慮すると、αの下限値は、好ましくは17、さらに好ましくは30程度となる。
各接着部3aを形成するための電磁鋼板用コーティング組成物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する組成物が挙げられる。すなわち、接着能を備える絶縁被膜としては、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する膜が、一例として挙げられる。
エポキシ樹脂としては、一般的なエポキシ樹脂が使用でき、具体的には、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば特に制限なく使用できる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
電磁鋼板用コーティング組成物は、アクリル樹脂を含有してもよい。
アクリル樹脂としては、特に限定されない。アクリル樹脂に用いるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを例示できる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。アクリル樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂は、アクリルモノマー以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン等が挙げられる。他のモノマーとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂にアクリル樹脂をグラフトさせたアクリル変性エポキシ樹脂として用いてもよい。電磁鋼板用コーティング組成物においては、アクリル樹脂を形成するモノマーとして含まれていてもよい。
エポキシ樹脂硬化剤としては、潜在性を持つ加熱硬化タイプのものが使用可能であり、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素−アミン錯体、有機酸ヒドラジッド等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、フェノールレゾール樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール系硬化剤が好ましく、フェノールレゾール樹脂がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
電磁鋼板用コーティング組成物中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜35質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
電磁鋼板用コーティング組成物は、硬化促進剤(硬化触媒)、乳化剤、消泡剤等の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
絶縁被膜3の平均厚みt1の上下限値は、例えば以下のように設定される。
素材1が電磁鋼板40として用いられる場合において、絶縁被膜3の平均厚みt1(電磁鋼板40(素材1)片面あたりの厚さ)は、互いに積層される電磁鋼板40間での絶縁性能及び接着能を確保できるように調整する。
図8(a)に示した複層構成の絶縁被膜3では、下地絶縁被膜3bの平均厚みを、例えば、0.3μm以上1.2μm以下とすることができる。下地絶縁被膜3bの平均厚みは、0.7μm以上0.9μm以下とすることが好ましい。上地絶縁被膜をなす各接着部3aの平均厚みは、例えば、1.5μm以上8.0μm以下とすることができる。
一方、図8(b)に示した単層構成の絶縁被膜3の場合、絶縁被膜3の平均厚みt1(電磁鋼板40(素材1)片面あたりの厚さ)は、例えば、1.5μm以上8.0μm以下とすることができる。
なお、素材1における絶縁被膜3の平均厚みt1の測定方法は、素材1の平均板厚t0と同様の考え方で、絶縁被膜3において例えば10点の厚みを求め、それらの平均として求めることができる。
この素材1における絶縁被膜3の平均厚みt1についての上下限値は、電磁鋼板40における絶縁被膜3の平均厚みt1の上下限値としても採用可能である。なお、電磁鋼板40における絶縁被膜3の平均厚みt1の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、積層コアを形成する複数枚の電磁鋼板40のうち、積層方向の最も外側に位置する電磁鋼板40(表面が積層方向に露出している電磁鋼板40)を選定する。選定した電磁鋼板40の表面において、径方向の所定の位置(例えば、電磁鋼板40における内周縁と外周縁との丁度中間(中央)の位置)を選定する。選定した位置において、例えば10点において絶縁被膜3の厚みを求める。これを、電磁鋼板40の周方向に同等の間隔をあけて4か所それぞれにおいて(すなわち、中心軸線Oを中心とした90度おきに)測定する。測定した4か所の厚みの平均値を、絶縁被膜3の平均厚みt1とすることができる。
なお、このように絶縁被膜3の平均厚みt1を、積層方向の最も外側に位置する電磁鋼板40において測定した理由は、絶縁被膜3の厚みが、電磁鋼板40の積層方向に沿った積層位置で殆ど変わらないように、絶縁被膜3が作り込まれているからである。
以上のような素材1を複数回打ち抜き加工することで複数枚の電磁鋼板40が製造され、これら電磁鋼板40を積層することによって積層コア(ステータコア21やロータコア31)が製造される。この積層コアによれば、十分な接着強度を持ちつつもより高い磁気特性が得られる電磁鋼板40により構成されているので、低鉄損化が可能になる。
ここで、各電磁鋼板40のそれぞれにおいて、各ティース部23の平均幅寸法W(図3参照)を平均円相当直径dで除算したW/d(無次元値)を、1.0以上30.0以下とすることが好ましい。この場合、接着強度と磁気特性のバランスが特に求められる各ティース部23において、互いに積層する電磁鋼板40間の接着状態を好適なものとすることができる。
(積層コアの積層方法)
以下、積層コアの説明に戻る。ステータコア21を形成する複数の電磁鋼板40は、図2に示すように、絶縁被膜3を介して積層されている。
積層方向に隣り合う電磁鋼板40間は、絶縁被膜3の各接着部3aによって局所的に接着されている。すなわち、電磁鋼板40において積層方向を向く面(以下、第1面と言う。また、第1面の裏面を第2面と言う)には、例えば図6に示すように、各接着部3aによって形成される接着領域と、これら接着部3a間に形成される非接着領域とが混在している。
前記接着領域とは、電磁鋼板40の第1面において、絶縁被膜3が、隣り合う他の電磁鋼板40の第2面に接着されている領域を意味する。一方、非接着領域とは、電磁鋼板40の第1面において、絶縁被膜3が、隣り合う他の電磁鋼板40の第2面に接着されていない領域を意味する。すなわち、非接着領域では、積層方向に互いに隣り合う電磁鋼板40間が接着されていない。非接着領域は、各接着部3aが存在せず、下地絶縁被膜3bが露出している。非接着領域は、下地絶縁被膜3bが持つ絶縁性能により、積層方向に隣り合う他の電磁鋼板40の第2面に対して絶縁されている。
なお、電磁鋼板40の第1面及び第2面の両方に絶縁被膜3が形成されている場合は、前記接着領域とは、電磁鋼板40の第1面において、絶縁被膜3が、隣り合う他の電磁鋼板40の絶縁被膜3と一体に界面なく接着されている領域を意味する。一方、非接着領域とは、電磁鋼板40の第1面において、絶縁被膜3が、隣り合う他の電磁鋼板40の絶縁被膜3に接着されていない領域を意味する。
電磁鋼板40の第1面における前記接着領域と前記非接着領域との確認方法は、例えば以下の方法による。すなわち、絶縁被膜3を介して接着されている電磁鋼板40同士を引き剥がす。引き剥がされた電磁鋼板40の第1面を観察し、前記接着領域の剥離に伴って生じる絶縁被膜3の接着痕が残っている領域を前記接着領域と判定し、接着痕が残っていない領域を前記非接着領域と判定することができる(粘着性によって固着されている領域には接着痕が残らない)。この判定に際しては、コンピュータや人工知能を利用した画像処理を用いてもよい。
本実施形態では、ロータコア31を形成する方の複数の電磁鋼板が、図1に示すかしめ42(ダボ)によって互いに固定されている。しかしながら、ロータコア31を形成する複数の電磁鋼板も、ステータコア21と同様に絶縁被膜3により固定した積層構造を有してもよい。
また、ステータコア21やロータコア31などの積層コアは、いわゆる回し積みにより形成されていてもよい。
(積層コアの製造方法)
次に、以上のように構成されたステータコア21を製造する積層コアの製造方法(以下、単に製造方法とも言う)について説明する。
図9に、本製造方法で好ましく用いられる積層コアの製造装置100(以下、単に製造装置100という)の側面図を示す。
製造装置100では、コイル1A(フープ)から素材1を矢印F方向に向かって送り出しつつ、各ステージに配置された金型により複数回の打ち抜きを行って電磁鋼板40の形状に徐々に形成していく。
そして、打ち抜いた電磁鋼板40を、既に積層済みである複数枚の電磁鋼板40の上に積層した後、昇温させながら加圧する。その結果、積層方向に隣り合う電磁鋼板40同士を、各接着部3aにより接着(あるいは融着)する。
図9に示すように、製造装置100は、複数段の打ち抜きステーションを有する。この打ち抜きステーションは、二段であってもよく、三段以上であってもよい。
打ち抜きステーションが三段である場合を例示して説明すると、製造装置100は、コイル1Aに最も近い位置に一段目の打ち抜きステーション110と、この打ち抜きステーション110よりも素材1の搬送方向に沿った下流側に隣接配置された二段目の打ち抜きステーション120と、この打ち抜きステーション120よりも素材1の搬送方向に沿った下流側に隣接配置された三段目の打ち抜きステーション130と、を備えている。
打ち抜きステーション110は、素材1の下方に配置された雌金型111と、素材1の上方に配置された雄金型112とを備える。
打ち抜きステーション120は、素材1の下方に配置された雌金型121と、素材1の上方に配置された雄金型122とを備える。
打ち抜きステーション130は、素材1の下方に配置された雌金型131と、素材1の上方に配置された雄金型132とを備える。
製造装置100は、さらに、二段目の打ち抜きステーション120よりも下流位置に積層ステーション140を備える。この積層ステーション140は、一例として、加熱装置141と、外周打ち抜き雌金型142と、断熱部材143と、外周打ち抜き雄金型144と、スプリング145と、を備えている。
加熱装置141、外周打ち抜き雌金型142、断熱部材143は、素材1の下方に配置されている。一方、外周打ち抜き雄金型144及びスプリング145は、素材1の上方に配置されている。なお、符号21は、ステータコアを示している。
なお、本実施形態では電磁鋼板40の積層に加えて加圧及び加熱も行って接着しているが、本発明は本実施形態の装置及び方法のみに限定されない。例えば、製造装置100では電磁鋼板40の積層までを行い、各電磁鋼板40間の接着を別装置による後工程で行うようにしてもよい。この場合、加熱装置141及び断熱部材143は製造装置100では不要となり、別装置の方に装備されることになる。この場合、製造装置100から別装置に未接着状体のステータコア21を移動させる前に、各電磁鋼板40間の位置ずれを防ぐために、図示されない治具で各電磁鋼板40間を固定することが好ましい。
以上説明の構成を有する製造装置100において、まずコイル1Aより素材1を図9の矢印F方向に順次送り出す。そして、この素材1に対し、まず打ち抜きステーション110による打ち抜き加工を行う。続いて、この素材1に対し、打ち抜きステーション120による打ち抜き加工を行う。さらに、この素材1に対し、打ち抜きステーション130による打ち抜き加工を行う。これら打ち抜き加工を順次行うことにより、素材1に、図3に示したコアバック部22と複数のティース部23を有する電磁鋼板40の形状を得る。ただし、この時点では完全には打ち抜かれていないので、矢印F方向に沿って次工程へと進む。
最後に、素材1は積層ステーション140へと送り出され、外周打ち抜き雄金型144により打ち抜かれて精度良く、積層される。この積層の際、電磁鋼板40はスプリング145により一定の加圧力を受ける。以上説明のような、打ち抜き工程、積層工程、を順次繰り返すことで、所定枚数の電磁鋼板40を積み重ねることができる。さらに、このようにして電磁鋼板40を積み重ねて形成された積層コアは、加熱装置141によって例えば温度200℃まで加熱される。この加熱により、絶縁被膜3の各接着部3aが硬化して、各電磁鋼板40間が接着される。このとき、絶縁被膜3を各電磁鋼板40の片面だけに形成した場合には、積層方向に隣接する電磁鋼板40のうちの一方に形成された絶縁被膜3が、他方の電磁鋼板40の表面に接着される。一方、絶縁被膜3を各電磁鋼板40の両面に形成した場合には、積層方に隣接する電磁鋼板40のうちの一方に形成された絶縁被膜3が、他方の電磁鋼板40に形成された絶縁被膜3に接着される。
以上の各工程により、積層コアが完成する。
[実施例1]
図9に示す製造装置100を用い、板厚が0.25mmの無方向性電磁鋼板にて各種製造条件を変えながら上記ステータコア21(以下、ステータコア)を製造し、ステータコアの鉄損および剥離強度を評価した。なお、ステータコアの加熱条件は全て共通とし、加熱温度が200℃で加熱時間が30分とした。
評価の結果を表1にまとめる。表1において、ステータコアの鉄損とは、ステータコア中で発生するエネルギー損失であり、特許第2740553号公報に記載の方法により、回転磁界でのエネルギー損失にて評価した。すなわち、コアバック部の周方向の異なる4か所へサーチコイルを施し、4か所の平均値で1.5Tの磁束密度が得られるよう磁化した際のエネルギー損失を求めた。そして、このエネルギー損失をステータコアの重量で除算して単位W/kgに換算し、これをもってステータコアの鉄損とした。上記エネルギー損失は、ステータコアを300rpmで回転させ、ステータコア中央部に配置した励磁ヨークに励磁電流を流したときと切ったときとの誘起トルクの差から算出した。すなわち、誘起トルクと回転数の積がステータコア中で発生するエネルギーと等しいとの関係を利用して、当該エネルギー損失を求めた。
表1において、ステータコアの鉄損は、その値が小さいほど、磁気特性が高く好ましい。表1において、ステータコアの鉄損の判断基準は、鉄損の値が2.40W/kg未満である場合に「優良」、2.40W/kg以上2.60W/kg未満である場合に「良好」、2.60W/kg以上3.3W/kg未満である場合に「可」、3.30W/kg以上である場合に「不可」、とした。
一方、ステータコアの剥離強度は、積層面の中央部に楔を押込むことで積層面間が開いて鉄心が分離する際の最大荷重を測定した。ここで、楔はその先端角度が7度のものを用いた。そして、この楔をステータコアの積層方向において中央の高さ位置に押し込んだ。
表1において、ステータコアの剥離強度は、その値が大きいほど、ステータコアの剛性が高く好ましい。表1において、ステータコアの剛性の判断基準は、最大荷重が1450N以上である場合に「優良」、980N以上1450N未満である場合に「良好」、780N以上980N未満である場合に「可」、780N未満である場合に「不可」、とした。
Figure 2022000887
表1に示すように、No.1では、平均円相当直径dが小さすぎる上に平均面積率ARが高すぎるため、ステーアタコアの鉄損が「不可」になった。
No.2では、ステーアタコアの鉄損が「良好」になったものの平均円相当直径dが小さすぎる上に平均面積率ARも低すぎるため、ステータコアの剥離強度が「不可」になった。
No.3では、ステータコアの剥離強度が「優良」になったものの平均面積率ARが高すぎるため、ステーアタコアの鉄損が「不可」になった。
No.4では、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも高次に適正であるため、ステータコアの剥離強度及び鉄損の双方において「優良」になった。
No.5では、ステーアタコアの鉄損が「良好」になったものの平均面積率ARが低すぎるため、ステータコアの剥離強度が「不可」になった。
No.6では、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも高次に適正であるため、ステータコアの剥離強度が「優良」、ステータコアの鉄損が「良好」になった。
No.7では、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも高次に適正であるため、ステータコアの剥離強度が「良好」、ステータコアの鉄損が「優良」になった。
No.8では、ステータコアの剥離強度が「優良」になったものの平均面積率ARが高すぎるため、ステーアタコアの鉄損が「不可」になった。
No.9では、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも高次に適正であるため、ステータコアの剥離強度及び鉄損の双方において「優良」になった。
No.10も、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも高次に適正であるため、ステータコアの剥離強度及び鉄損の双方において「優良」になった。
No.11も、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも適正であるため、ステータコアの剥離強度が「優良」で鉄損が「良好」になった。
No.12も、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも適正であるため、ステータコアの剥離強度が「良好」で鉄損が「優良」になった。
No.13では、ステータコアの剥離強度が「優良」になったものの平均円相当直径dが大きすぎる上に平均面積率ARが高すぎるため、ステーアタコアの鉄損が「不可」になった。
No.14では、平均円相当直径d及び平均面積率ARの双方とも高次に適正であるため、ステータコアの剥離強度及び鉄損の双方において「優良」になった。
No.15では、平均円相当直径dが大きすぎる上に平均面積率ARが低すぎるため、ステータコアの剥離強度が「不可」になった。
No.1〜15の結果を、平均離間間隔比g/d(無次元値)と平均面積率AR(%)との関係としてグラフ化したものを図10に示す。同図に示すように、平均離間間隔比g/dを1.0〜3.0とすることにより、平均面積率ARを5%以上20%以下に最適化できる。その結果、各接着部の大きさと平均離間間隔とのバランスが最適化される。これを満たすNo.4,9,10,14は、ステータコアの剥離強度及び鉄損の双方において「優良」であり最適化されていることが確認された。
以上より、基本的な傾向としては、平均円相当直径dが適正の場合、平均面積率ARが大きくなると、剥離強度が向上する一方で鉄損は下がることが分かった。
また、平均円相当直径dが小さい場合、平均面積率ARを高くしても剥離強度があまり上がらないことも分かった。これは、各接着部それぞれが持つ接着面積が小さいので、平均面積率ARを高くしても剥離が進展しやすいためと考えられる。
逆に、平均円相当直径dが大きい場合、平均面積率ARを低くしても鉄損があまり上がらないことも分かった。これは、母材鋼板に各接着部が加える応力が不均一になるためと考えられる。
以上より、平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmでかつ平均面積率ARが4%以上80%以下とすることで、ステータコアの剛性と鉄損を高次にバランスさせられることが確認された。
さらに、平均離間間隔比g/dを、1.0〜3.0とすることで、ステータコアの剛性と鉄損を最適化できることも確認された。
[実施例2]
図9に示す製造装置100を用い、板厚が異なる無方向性電磁鋼板にて各種製造条件を変えながら上記ステータコア21(以下、ステータコア)を製造し、ステータコアの鉄損および剥離強度を評価した。なお、ステータコアの加熱条件は全て共通とし、加熱温度が180℃で加熱時間が20分とした。接着部の配列は図6に示す正方形の格子状に統一した。
評価の結果を表2にまとめる。評価方法等は上記実施例1に準じた手法を採用した。
Figure 2022000887
本実施例で評価指標となる鉄損は、電磁鋼板の板厚の影響を強く受ける。板厚以外の要因が同じであれば、板厚が薄いほど鉄損は低くなる。このため、表2の結果については素材の平均板厚毎に説明する。
まず剥離強度については、表2の全サンプルとも、接着部の平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmである条件と、平均面積率ARが4%以上80%以下である条件と、を満足しており、十分な強度を有している。以下では鉄損を中心として発明効果を説明する。
素材の平均板厚が0.10mmである、No.21とNo.22を比較する。これらにおいて、式1がα≦430を満足しないNo.21に比較して、上述した式1がα≦430を満足するNo.22の鉄損が低くなっている。
素材の平均板厚が0.15mmである、No.23からNo.25を比較する。これらにおいて、式1がα≦430を満足しないNo.23に比較して、上述した式1がα≦430を満足するNo.24、No.25の鉄損が低くなっている。
素材の平均板厚が0.20mmである、No.26からNo.29を比較する。これらにおいて、式1がα≦430を満足しないNo.26とNo.27に比較して、上述した式1がα≦430を満足するNo.28とNo.29は鉄損が低くなっている。
以上より、平均円相当直径dが1.0mm〜5.0mmでかつ平均面積率ARが4%以上80%以下とした場合には、さらに上述した式1がα≦430を満足することで、ステータコアの剛性と鉄損とを高次にバランスさせられることが確認された。
以上、本発明の一実施形態及び実施例について詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態及び実施例の構成のみに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、ステータコア21の形状は、上記実施形態で示した形態のみに限定されるものではない。具体的には、ステータコア21の外径および内径の寸法、積厚、スロット数、ティース部23の周方向と径方向の寸法比率、ティース部23とコアバック部22との径方向の寸法比率等は、所望の回転電機の特性に応じて任意に設計可能である。
上記実施形態におけるロータ30では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成しているが、本発明はこの形態のみに限られない。例えば、1つの永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよく、3つ以上の永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよい。
上記実施形態では、回転電機10として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれのみに限られない。例えば、回転電機10がリラクタンス型電動機や電磁石界磁型電動機(巻線界磁型電動機)であってもよい。
上記実施形態では、交流電動機として、同期電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が誘導電動機であってもよい。
上記実施形態では、回転電機10として、交流電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が直流電動機であってもよい。
上記実施形態では、回転電機10として、電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が発電機であってもよい。
2 母材鋼板
3 絶縁被膜
3a 接着部
21 ステータコア(積層コア)
22 コアバック部
23 ティース部
31 ロータコア(積層コア)
40 電磁鋼板

Claims (5)

  1. 母材鋼板と、
    前記母材鋼板の片面または両面に形成された接着能を有する絶縁被膜と、
    を備え、
    前記絶縁被膜が、平均円相当直径d(mm)が1.0mm〜5.0mmである複数の接着部を有し、
    前記各接着部の表面積の合計を前記母材鋼板の表面積で除算した平均面積率ARが、4%以上80%以下である
    ことを特徴とする電磁鋼板。
  2. 前記各接着部の隣同士の平均離間間隔g(mm)を前記平均円相当直径d(mm)で除算した平均離間間隔比g/dが、1.0〜3.0である
    ことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
  3. 前記電磁鋼板の板厚t0(mm)、前記平均円相当直径d(mm)、前記平均面積率AR(%)で求められる式1の値αが、430以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁鋼板。
    α=AR/d/t0・・・(式1)
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の電磁鋼板を2枚以上積層してなることを特徴とする積層コア。
  5. 前記各電磁鋼板のそれぞれが、コアバック部とティース部とを備え、
    前記ティース部の平均幅寸法W(mm)を前記平均円相当直径d(mm)で除算したW/dが、1.0以上30.0以下である
    ことを特徴とする請求項4に記載の積層コア。
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