JP2022000538A - 電磁鋼板、積層コア及び回転電機、ならびに電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

電磁鋼板、積層コア及び回転電機、ならびに電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、電磁鋼板同士の接着強度を両立できる電磁鋼板、積層コア及び回転電機、ならびに電磁鋼板の製造方法の提供を課題とする。【解決手段】積層コアに用いる電磁鋼板が、接着能を備える絶縁被膜3により母材鋼板2の表面が被覆された電磁鋼板であり、絶縁被膜3は、パルスNMRを用いて25℃でSolid Echo法により測定されるスピン−スピン緩和時間T2(25)が50μs以下であり、かつ180℃でのパルスNMRで測定されるスピン−スピン緩和時間T2(180)が50μs以上100μs以下である。【選択図】図5

Description

本発明は、電磁鋼板、積層コア及び回転電機、ならびに電磁鋼板の製造方法に関する。
回転電機に使用されるコア(鉄心)として、複数の電磁鋼板が互いに接合されて積層された積層コアが知られている。電磁鋼板同士の接合方法としては、かしめや溶接が知られている。しかし、かしめや溶接では、加工時の機械的応力や熱応力、さらには層間短絡によって電磁鋼板の磁気特性が劣化し、積層コアの性能が低下することがある。
かしめ、溶接以外の接合方法としては、接着が知られている。例えば、表面に接着性の絶縁被膜を有する電磁鋼板を積層して互いに接着させることが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、従来の接着性の絶縁被膜は、所定の形状に打ち抜く際に生じる絶縁被膜の端部剥離屑(以下、「カス」と記す。)が多く発生するため、掃除が必要であり、生産性に影響がある。また、電磁鋼板を積層して加熱圧着する際には、絶縁被膜が側面からはみ出しやすく、電磁鋼板が僅かに傾いて積層コアの積層精度が低下することがある。これらに加え、絶縁被膜に対しては、十分な接着強度を確保することが求められている。
特開2000−173816号公報
表面に接着性の絶縁被膜を有する電磁鋼板において、カス発生の抑制、積層精度の確保、十分な接着強度が求められているが、これらを両立することは困難と考えられていた。この理由は、カスの発生を抑制するには絶縁被膜は硬い方が好ましいと考えられる一方で、十分な接着強度を得るには絶縁被膜は軟らかい方が好ましいと考えられるためである。また、積層精度に関しては、絶縁被膜が軟らか過ぎると、積層コアの側面からの絶縁被膜が大きくなる一方で、硬すぎると加熱圧着の際の鋼板同士のなじみが悪く、積層精度が低下するばかりか、鋼板同士の接触が阻害され接着強度に悪影響を及ぼすことにもなる。
本発明は、打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度を両立できる電磁鋼板、積層コア及び回転電機、ならびに電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]母材鋼板のいずれか一方又は両方の表面の少なくとも一部が、接着能を備える絶縁被膜により被覆された電磁鋼板であって、前記絶縁被膜に対し、パルスNMRを用いて25℃でSolid Echo法により測定されるスピン−スピン緩和時間T(25)が50.0μs以下であり、かつ180℃でのパルスNMRで測定されるスピン−スピン緩和時間T(180)が50.0μs以上100.0μs以下である、電磁鋼板。
[2]前記スピン−スピン緩和時間T(180)と前記スピン−スピン緩和時間T(25)の差、T(180)−T(25)が40.0μs以上であることを特徴とする[1]に記載の電磁鋼板。
[3][1]または[2]に記載の電磁鋼板が複数積層され、互いに接着されている、積層コア。
[4][3]に記載の積層コアを備える回転電機。
[5][1]または[2]に記載の電磁鋼板の製造方法であって、母材鋼板のいずれか一方又は両方の表面の少なくとも一部に、電磁鋼板用コーティング組成物を塗布し、乾燥させる工程と、前記電磁鋼板用コーティング組成物を焼き付けて、その後、室温まで冷却することで絶縁被膜を形成する焼き付け工程と、を有し、前記焼き付け工程において、前記絶縁被膜のガラス転位温度をTg[℃]とし、焼き付ける際の到達温度Thが、Tg+15℃超、200℃未満であり、前記到達温度Thから室温までの冷却過程における、Th℃から(Tg+15)℃までの温度域における平均冷却速度をCR1[℃/s]としたとき、平均冷却速度CR1が20℃/s以上30℃/s以下であることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
[6]前記焼き付け工程において、前記到達温度から室温までの冷却過程における、(Tg+15)℃からTg℃までの温度域における平均冷却速度をCR2[℃/s]とし、Tg℃から(Tg−15)℃までの平均冷却速度をCR3[℃/s]としたとき、以下の(式1)と(式2)を満足することを特徴とする[5]に記載の電磁鋼板の製造方法。
|CR1−CR2|≦5℃/s ・・・・式1
CR1−CR3≧10℃/s ・・・・式2
本発明によれば、打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度を両立できる電磁鋼板、積層コア及び回転電機、ならびに電磁鋼板の製造方法を提供できる。
本発明の第1実施形態に係る積層コアを備えた回転電機の断面図である。 同積層コアの側面図である。 図2のA−A断面図である。 同積層コアを形成する素材の平面図である。 図4のB−B断面図である。 図5のC部の拡大図である。 同積層コアを製造するために用いられる製造装置の側面図である。
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る積層コアと、この積層コアを備えた回転電機と、この積層コアを形成する素材について説明する。なお、本実施形態では、回転電機として電動機、具体的には交流電動機、より具体的には同期電動機、より一層具体的には永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明する。この種の電動機は、例えば、電気自動車などに好適に採用される。
(回転電機10)
図1に示すように、回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、ケース50と、回転軸60と、を備える。ステータ20及びロータ30は、ケース50内に収容される。ステータ20は、ケース50内に固定される。
本実施形態では、回転電機10として、ロータ30がステータ20の径方向内側に位置するインナーロータ型を採用している。しかしながら、回転電機10として、ロータ30がステータ20の外側に位置するアウターロータ型を採用してもよい。また、本実施形態では、回転電機10が、12極18スロットの三相交流モータである。しかしながら、極数、スロット数、相数などは、適宜変更することができる。
回転電機10は、例えば、各相に実効値10A、周波数100Hzの励磁電流を印加することにより、回転数1000rpmで回転することができる。
ステータ20は、ステータ用接着積層コア(以下、ステータコア)21と、図示しない巻線と、を備える。
ステータコア21は、環状のコアバック部22と、複数のティース部23と、を備える。以下では、ステータコア21(又はコアバック部22)の中心軸線O方向を軸方向と言い、ステータコア21(又はコアバック部22)の径方向(中心軸線Oに直交する方向)を径方向と言い、ステータコア21(又はコアバック部22)の周方向(中心軸線O回りに周回する方向)を周方向と言う。
コアバック部22は、ステータ20を軸方向から見た平面視において円環状に形成されている。
複数のティース部23は、コアバック部22の内周から径方向内側に向けて(径方向に沿ってコアバック部22の中心軸線Oに向けて)突出する。複数のティース部23は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角20度おきに18個のティース部23が設けられている。複数のティース部23は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。よって、複数のティース部23は、互いに同じ厚み寸法を有している。
前記巻線は、ティース部23に巻回されている。前記巻線は、集中巻きされていてもよく、分布巻きされていてもよい。
ロータ30は、ステータ20(ステータコア21)に対して径方向の内側に配置されている。ロータ30は、ロータコア31と、複数の永久磁石32と、を備える。
ロータコア31は、ステータ20と同軸に配置される環状(円環状)に形成されている。ロータコア31内には、前記回転軸60が配置されている。回転軸60は、ロータコア31に固定されている。
複数の永久磁石32は、ロータコア31に固定されている。本実施形態では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成している。複数組の永久磁石32は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角30度おきに12組(全体では24個)の永久磁石32が設けられている。
本実施形態では、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型モータが採用されている。ロータコア31には、ロータコア31を軸方向に貫通する複数の貫通孔33が形成されている。複数の貫通孔33は、複数の永久磁石32の配置に対応して設けられている。各永久磁石32は、対応する貫通孔33内に配置された状態でロータコア31に固定されている。各永久磁石32のロータコア31への固定は、例えば永久磁石32の外面と貫通孔33の内面とを接着剤により接着すること等により、実現できる。なお、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型に代えて表面磁石型モータを採用してもよい。
ステータコア21及びロータコア31は、いずれも積層コアである。例えばステータコア21は、図2に示すように、複数の電磁鋼板40が積層方向に積層されることで形成されている。
なお、ステータコア21及びロータコア31それぞれの積厚(中心軸線Oに沿った全長)は、例えば50.0mmとされる。ステータコア21の外径は、例えば250.0mmとされる。ステータコア21の内径は、例えば165.0mmとされる。ロータコア31の外径は、例えば163.0mmとされる。ロータコア31の内径は、例えば30.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ステータコア21の積厚、外径や内径、及びロータコア31の積厚、外径や内径は、これらの値のみに限られない。ここで、ステータコア21の内径は、ステータコア21におけるティース部23の先端部を基準とする。すなわち、ステータコア21の内径は、全てのティース部23の先端部に内接する仮想円の直径である。
ステータコア21及びロータコア31を形成する各電磁鋼板40は、例えば、図4から図6に示すような素材1を打ち抜き加工すること等により形成される。素材1は、電磁鋼板40の母材となる鋼板(電磁鋼板)である。素材1としては、例えば、帯状の鋼板や切り板などが挙げられる。
積層コアの説明の途中ではあるが、以下では、この素材1について説明する。なお本明細書において、電磁鋼板40の母材となる帯状の鋼板を素材1という場合がある。素材1を打ち抜き加工して積層コアに用いられる形状にした鋼板を電磁鋼板40という場合がある。
(素材1)
素材1は、例えば、図7に示すコイル1Aに巻き取られた状態で取り扱われる。本実施形態では、素材1として、無方向性電磁鋼板を採用している。無方向性電磁鋼板としては、JIS C 2552:2014の無方向性電磁鋼帯を採用できる。しかしながら、素材1として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用してもよい。この場合の方向性電磁鋼板としては、JIS C 2553:2019の方向性電磁鋼帯を採用できる。また、JIS C 2558:2015の無方向性薄電磁鋼帯や方向性薄電磁鋼帯を採用できる。
素材1の平均板厚t0の上下限値は、素材1が電磁鋼板40として用いられる場合も考慮して、例えば以下のように設定される。
素材1が薄くなるに連れて素材1の製造コストは増す。そのため、製造コストを考慮すると、素材1の平均板厚t0の下限値は、0.10mm、好ましくは0.15mm、より好ましくは0.18mmとなる。
一方で素材1が厚すぎると、製造コストは良好になるが、素材1が電磁鋼板40として用いられた場合に、渦電流損が増加してコア鉄損が劣化する。そのため、コア鉄損と製造コストを考慮すると、素材1の平均板厚t0の上限値は、0.65mm、好ましくは0.35mm、より好ましくは0.30mmとなる。
素材1の平均板厚t0の上記範囲を満たすものとして、0.20mmを例示できる。
なお、素材1の平均板厚t0は、後述する母材鋼板2の厚さだけでなく、絶縁被膜3の厚さも含まれる。また、素材1の平均板厚t0の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、素材1がコイル1Aの形状に巻き取られている場合、素材1の少なくとも一部を平板形状にほどく。平板形状にほどかれた素材1において、素材1の長手方向の所定の位置(例えば、素材1の長手方向の端縁から、素材1の全長の10%分の長さ、離れた位置)を選定する。この選定した位置において、素材1を、その幅方向に沿って5つの領域に区分する。これらの5つの領域の境界となる4か所において、素材1の板厚を測定する。4か所の板厚の平均値を、素材1の平均板厚t0とすることができる。
この素材1の平均板厚t0についての上下限値は、電磁鋼板40としての平均板厚t0の上下限値としても当然に採用可能である。なお、電磁鋼板40の平均板厚t0の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、積層コアの積厚を、周方向に同等の間隔をあけて4か所において(すなわち、中心軸線Oを中心とした90度おきに)測定する。測定した4か所の積厚それぞれを、積層されている電磁鋼板40の枚数で割って、1枚当たりの板厚を算出する。4か所の板厚の平均値を、電磁鋼板40の平均板厚t0とすることができる。
図5及び図6に示すように、素材1は、母材鋼板2と、絶縁被膜3と、を備えている。素材1は、帯状の母材鋼板2の両面が絶縁被膜3によって被覆されてなる。本実施形態では、素材1の大部分が母材鋼板2によって形成され、母材鋼板2の表面に、母材鋼板2よりも薄い絶縁被膜3が積層されている。
母材鋼板2の化学組成は、以下に質量%単位で示すように、質量%で2.5%〜4.5%のSiを含有する。なお、化学組成をこの範囲とすることにより、素材1(電磁鋼板40)の降伏強度を、例えば、380MPa以上540MPa以下に設定することができる。
Si:2.5%〜4.5%
Al:0.001%〜3.0%
Mn:0.05%〜5.0%
残部:Fe及び不純物
素材1が電磁鋼板40として用いられるときに、絶縁被膜3は、積層方向に隣り合う電磁鋼板40間での絶縁性能を発揮する。また本実施形態では、絶縁被膜3は、接着能を備えていて、積層方向に隣り合う電磁鋼板40を接着する。絶縁被膜3は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。より具体的には、例えば、絶縁被膜3は、絶縁性能と接着能とを兼ね備えた単層構成であってもよく、絶縁性能に優れる下地絶縁被膜と、接着能に優れる上地絶縁被膜とを含む複層構成であってもよい。
本実施形態では、絶縁被膜3は、母材鋼板2の両面を全面にわたって隙間なく覆っている。しかしながら、前述の絶縁性能や接着能が確保される範囲において、絶縁被膜3の一部の層は、母材鋼板2の両面を隙間なく覆っていなくてもよい。言い換えると、絶縁被膜3の一部の層が、母材鋼板2の表面に間欠的に設けられていてもよい。ただし、絶縁性能を確保するには、母材鋼板2の両面は全面が露出しないように絶縁被膜3によって覆われている必要がある。具体的には、絶縁被膜3が絶縁性能に優れる下地絶縁被膜を有さず、絶縁性能と接着能を兼ね備えた単層構成である場合は、絶縁被膜3は母材鋼板2の全面にわたって隙間なく形成されている必要がある。これに対し、絶縁被膜3が、絶縁性能に優れる下地絶縁被膜と、接着能に優れる上地絶縁被膜とを含む複層構成である場合、下地絶縁被膜と上地絶縁被膜の両方を母材鋼板2の全面にわたって隙間なく形成する他に、下地絶縁被膜を母材鋼板の全面にわたって隙間なく形成し、上地絶縁被膜を間欠的に設けても、絶縁性能と接着能の両立が可能である。
下地絶縁被膜を形成するコーティング組成物としては、特に限定されず、例えば、クロム酸含有処理剤、リン酸塩含有処理等の一般的な処理剤を使用できる。
接着能を備える絶縁被膜は、後述の電磁鋼板用コーティング組成物が母材鋼板上に塗布されてなる。接着能を備える絶縁被膜は、例えば、絶縁性能と接着能を兼ね備えた単層構成の絶縁被膜や、下地絶縁被膜上に設けられる上地絶縁被膜である。接着能を備える絶縁被膜は、積層コア製造時の加熱圧着前においては、未硬化状態又は半硬化状態(Bステージ)であり、加熱圧着時の加熱によって硬化反応が進行して接着能が発現する。
接着能を備える絶縁被膜は、パルスNMRを用いて25℃でSolid Echo法により測定されるスピン−スピン緩和時間T(25)が50.0μs以下であり、かつ180℃でのパルスNMRで測定されるスピン−スピン緩和時間T(180)が50μs以上100.0μs以下である。ただし、本発明では、パルスNMR測定において観測される横緩和、すなわち静磁場に直交する平面内での緩和をスピン−スピン緩和とみなす。
パルスNMRの測定条件としては、例えば、実施例に示す条件が挙げられる。
(25)が50.0μs以下に制御されていることで、打ち抜き加工時の絶縁被膜3は分子運動性が非常に低く硬いため、カス発生量が低減される。また、T(180)が前記範囲内に制御されていることで、電磁鋼板40同士を加熱圧着する際には絶縁被膜3の分子運動性が適度に高まり、加熱圧着時の積層コア側面からの絶縁被膜のはみ出しを回避しつつ積層される電磁鋼板同士の接触状況が好ましいものとなり積層精度が向上する。さらに、硬化の反応性が向上するため、高い接着強度が得られる。
(25)は、打ち抜き加工時のカス発生量を低減できる点から、40.0μs以下が好ましく、30.0μs以下がより好ましい。
(180)は、電磁鋼板40同士の接着強度を確保するとともに積層精度が向上する点から、60.0μs以上100.0μs以下が好ましく、70.0μs以上100.0μs以下がより好ましい。
(25)及びT(180)は、例えば、硬化剤の種類及び含有量、架橋の度合いを調節することによって調節できる。
また、スピン−スピン緩和時間T(180)とスピン−スピン緩和時間T(25)の差、{T(180)−T(25)}が40.0μs以上であることが好ましい。これにより、電磁鋼板40を打抜き加工する際には絶縁被膜3の分子運動性が極力抑えられると同時に、電磁鋼板40同士を積層接着する際には絶縁被膜3の分子運動性を適度に高められる。その結果として、打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度の高いレベルでの両立が可能となる。
{T(180)−T(25)}が、50.0μs以上に制御されていることで、打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度のさらに高いレベルでの両立が可能となる。
{T(180)−T(25)}は、65.0μs以上がさらに好ましい。本発明の効果をより効率的に得るためのT(180)の最大値が100μs、T(25)の最小値が0μsであることから、{T(180)−T(25)}の上限は自ずから100.0μsと定まる。
電磁鋼板用コーティング組成物の構成成分としては、前述の条件を満たすものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する組成物が挙げられる。すなわち、接着能を備える絶縁被膜としては、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する膜が、一例として挙げられる。
エポキシ樹脂としては、一般的なエポキシ樹脂が使用でき、具体的には、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば特に制限なく使用できる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
電磁鋼板用コーティング組成物は、アクリル樹脂を含有してもよい。
アクリル樹脂としては、特に限定されない。アクリル樹脂に用いるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを例示できる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。アクリル樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂は、アクリルモノマー以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン等が挙げられる。他のモノマーとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂にアクリル樹脂をグラフトさせたアクリル変性エポキシ樹脂として用いてもよい。電磁鋼板用コーティング組成物においては、アクリル樹脂を形成するモノマーとして含まれていてもよい。
エポキシ樹脂硬化剤としては、潜在性を持つ加熱硬化タイプのものが使用可能であり、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素−アミン錯体、有機酸ヒドラジッド等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、フェノールレゾール樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール系硬化剤が好ましく、フェノールレゾール樹脂がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
電磁鋼板用コーティング組成物中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜35質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
電磁鋼板用コーティング組成物は、硬化促進剤(硬化触媒)、乳化剤、消泡剤等の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
次に、本実施形態の電磁鋼板40の製造方法について説明する。
電磁鋼板40は、母材鋼板2のいずれか一方又は両方の表面の少なくとも一部に、電磁鋼板用コーティング組成物を塗布し、乾燥させる工程と、電磁鋼板用コーティング組成物を焼き付けて、その後、室温まで冷却することで絶縁被膜3を形成する焼き付け工程と、を有する。
以下、焼き付け工程について、詳述する。
絶縁被膜3は、例えば電磁鋼板用コーティング組成物を母材鋼板2の表面に塗布して乾燥し、焼き付けることで形成できる。
焼き付ける際の到達温度の下限値は、120℃以上が好ましく、より好ましくは130℃以上である。焼き付ける際の到達温度は200℃未満が好ましく、より好ましい上限値は190℃以下である。ここでいう「到達温度」とは、焼き付け工程における電磁鋼板の最高到達温度を指す。測定は、一般的な手法を適用すれば良く、放射温度計や、サーモラベル(登録商標)(鋼板に張り付けておくシール状の温度計)を用い、鋼板の表面温度として測定される。
なお、後述する焼き付け工程の冷却過程の冷却速度の制御により本発明効果を享受する場合、温度履歴を絶縁被膜3(電磁鋼板用コーティング組成物)のガラス転位温度Tg[℃]との関連で制御するため、該到達温度はTgとの関連での制約が生じる。この場合、該到達温度の下限値は、Tg+15[℃]超とする。これにより到達温度で保持される時点での絶縁被膜の分子鎖が十分に分離した状態となり、その後の冷却過程での分子鎖の配列の制御が有効に作用するようになる。好ましくはTg+20[℃]以上、さらに好ましくはTg+30[℃]以上、さらに好ましくはTg+45[℃]以上である。ただし、該冷却速度の制御により本発明効果を享受する場合において、到達温度が高すぎると、良好な積層精度および接着強度が得られないおそれがある。そのため、到達温度は、200℃未満、さらには190℃以下に留めることが好ましい。
焼き付け時間の下限値は、好ましくは20秒、より好ましくは30秒である。焼き付け時間の上限値は、好ましくは70秒、より好ましくは60秒である。
本実施形態の電磁鋼板40の製造において、焼き付け工程における室温までの冷却過程は、本実施形態で規定するT(25)及びT(180)の制御に有効に活用できる。本実施形態の電磁鋼板40の製造方法のひとつの実施形態として、これを以下に説明する。
本実施形態では、絶縁被膜3(コーティング組成物)のガラス転位温度をTg[℃]とし、到達温度Thから室温までの冷却過程における、Th℃から(Tg+15)℃までの温度域における平均冷却速度をCR1[℃/s]としたとき、冷却速度CR1を20℃/s以上30℃/s以下とする。この温度域を、比較的高い速度で冷却することで、絶縁被膜3を構成するコーティング組成物の分子鎖が好ましく制御され、その後において実施される、電磁鋼板40の打抜き加工におけるカス発生が抑制される。また、電磁鋼板40を積層して加熱圧着する場合においても、絶縁被膜3が過度に軟化しにくくなり、電磁鋼板40を高い精度で積層できると同時に、適度に軟化するため高い接着強度を得ることが可能となる。
この温度域の平均冷却速度CR1が30℃/sを超えると、コーティング物質の分子鎖を揃えることが困難になり、打ち抜き加工時のカス発生量を抑制することが困難になるとともに、加熱圧着時に絶縁被膜3が過度に軟化し、適正な積層精度を維持できなくなる。一方で、この温度域の平均冷却速度CR1が20℃/s未満では、この温度域の冷却中にコーティング物質の分子鎖が過度に揃ってしまい、加熱圧着時に積層方向に隣接して接触する電磁鋼板40の接触状態が良好でなくなり、適正な積層精度を維持できなくなるとともに、接着強度を十分に高めることが困難となる。
また、焼き付け工程における到達温度Thから室温までの冷却過程における、(Tg+15)℃からTg℃までの平均冷却速度をCR2[℃/s]とし、Tg℃から(Tg−15)℃までの平均冷却速度をCR3[℃/s]としたとき、以下の(式1)と(式2)を満足することが好ましい。
|CR1−CR2|≦5℃/s ・・・・式1
CR1−CR3≧10℃/s ・・・・式2
これらの2式を満足することにより、打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度をさらに高いレベルで両立できる。
これらのガラス転位温度Tgの前後の温度域における平均冷却速度CR2およびCR3との関連により、本発明の効果が顕著に発現できるメカニズムは明確ではないものの、次のように考えられる。より高温域で平均冷却速度CR1を適用した後、(Tg+15)℃未満の低温域での冷却過程においても、絶縁被膜3の分子鎖の配列は冷却に伴う温度履歴に応じて変化していく。CR1を適用した温度域で適度に配列された絶縁被膜3の分子鎖の配列が、その後の冷却過程が適切に制御されることで、さらに好ましい配列へと確実に固定されるものと考えられる。
以上、本実施形態の電磁鋼板40の製造方法について説明してきたが、上記の各条件は、本実施形態の電磁鋼板40を得るための一例であって、本実施形態の電磁鋼板40は、当該各条件によって限定されるものでない。
絶縁被膜3の平均厚みt1の上下限値は、素材1が電磁鋼板40として用いられる場合も考慮して、例えば以下のように設定される。
素材1が電磁鋼板40として用いられる場合において、絶縁被膜3の平均厚みt1(電磁鋼板40(素材1)片面あたりの厚さ)は、互いに積層される電磁鋼板40間での絶縁性能及び接着能を確保できるように調整する。
単層構成の絶縁被膜3の場合、絶縁被膜3の平均厚みt1(電磁鋼板40(素材1)片面あたりの厚さ)は、例えば、1.5μm以上8.0μm以下とすることができる。
複層構成の絶縁被膜3の場合、下地絶縁被膜の平均厚みは、例えば、0.3μm以上1.2μm以下とすることができ、0.7μm以上0.9μm以下が好ましい。上地絶縁被膜の平均厚みは、例えば、1.5μm以上8.0μm以下とすることができる。
なお、素材1における絶縁被膜3の平均厚みt1の測定方法は、素材1の平均板厚t0と同様の考え方で、複数箇所の絶縁被膜3の厚みを求め、それらの厚みの平均として求めることができる。
この素材1における絶縁被膜3の平均厚みt1についての上下限値は、電磁鋼板40における絶縁被膜3の平均厚みt1の上下限値としても当然に採用可能である。なお、電磁鋼板40における絶縁被膜3の平均厚みt1の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、積層コアを形成する複数の電磁鋼板のうち、積層方向の最も外側に位置する電磁鋼板40(表面が積層方向に露出している電磁鋼板40)を選定する。選定した電磁鋼板40の表面において、径方向の所定の位置(例えば、電磁鋼板40における内周縁と外周縁との丁度中間(中央)の位置)を選定する。選定した位置において、電磁鋼板40の絶縁被膜3の厚みを、周方向に同等の間隔をあけて4か所において(すなわち、中心軸線Oを中心とした90度おきに)測定する。測定した4か所の厚みの平均値を、絶縁被膜3の平均厚みt1とすることができる。
なお、このように絶縁被膜3の平均厚みt1を、積層方向の最も外側に位置する電磁鋼板40において測定した理由は、絶縁被膜3の厚みが、電磁鋼板40の積層方向に沿った積層位置で殆ど変わらないように、絶縁被膜3が作り込まれているからである。
以上のような素材1を打ち抜き加工することで電磁鋼板40が製造され、電磁鋼板40によって接着コア(ステータコア21やロータコア31)が製造される。
(積層コアの積層方法)
以下、積層コアの説明に戻る。ステータコア21を形成する複数の電磁鋼板40は、図3に示すように、絶縁被膜3を介して積層されている。
積層方向に隣り合う電磁鋼板40は、絶縁被膜3によって全面にわたって接着されている。言い換えると、電磁鋼板40において積層方向を向く面(以下、第1面という)は、全面にわたって接着領域41aとなっている。ただし、積層方向に隣り合う電磁鋼板40が、全面にわたって接着されていなくてもよい。言い換えると、電磁鋼板40の第1面において、接着領域41aと非接着領域(不図示)とが混在していてもよい。
本実施形態では、ロータコア31を形成する方の複数の電磁鋼板は、図1に示すかしめ42(ダボ)によって互いに固定されている。しかしながら、ロータコア31を形成する複数の電磁鋼板も、ステータコア21と同様に絶縁被膜3により固定した積層構造を有してもよい。
また、ステータコア21やロータコア31などの積層コアは、いわゆる回し積みにより形成されていてもよい。
(積層コアの製造方法)
前記ステータコア21は、例えば、図7に示す製造装置100を用いて製造される。以下では、製造方法の説明にあたり、まず先に、積層コアの製造装置100(以下、単に製造装置100という)について説明する。
製造装置100では、コイル1A(フープ)から素材1を矢印F方向に向かって送り出しつつ、各ステージに配置された金型により複数回の打ち抜きを行って電磁鋼板40の形状に徐々に形成していく。そして、打ち抜いた電磁鋼板40を積層して昇温させながら加圧する。その結果、積層方向に隣り合う電磁鋼板40を絶縁被膜3によって接着させ(すなわち、絶縁被膜3のうちの接着領域41aに位置する部分に接着能を発揮させ)、接着が完了する。
図7に示すように、製造装置100は、複数段の打ち抜きステーション110を備えている。打ち抜きステーション110は、二段であってもよく、三段以上であってもよい。各段の打ち抜きステーション110は、素材1の下方に配置された雌金型111と、素材1の上方に配置された雄金型112とを備える。
製造装置100は、さらに、最も下流の打ち抜きステーション110よりも下流位置に積層ステーション140を備える。この積層ステーション140は、加熱装置141と、外周打ち抜き雌金型142と、断熱部材143と、外周打ち抜き雄金型144と、スプリング145と、を備えている。
加熱装置141、外周打ち抜き雌金型142、断熱部材143は、素材1の下方に配置されている。一方、外周打ち抜き雄金型144及びスプリング145は、素材1の上方に配置されている。なお、符号21は、ステータコアを示している。
以上説明の構成を有する製造装置100において、まずコイル1Aより素材1を図7の矢印F方向に順次送り出す。そして、この素材1に対し、複数段の打ち抜きステーション110による打ち抜き加工を順次行う。これら打ち抜き加工により、素材1に、図3に示したコアバック部22と複数のティース部23を有する電磁鋼板40の形状を得る。ただし、この時点では完全には打ち抜かれていないので、矢印F方向に沿って次工程へと進む。
そして最後に、素材1は積層ステーション140へと送り出され、外周打ち抜き雄金型144により打ち抜かれて精度良く、積層される。この積層の際、電磁鋼板40はスプリング145により一定の加圧力を受ける。以上説明のような、打ち抜き工程、積層工程、を順次繰り返すことで、所定枚数の電磁鋼板40を積み重ねることができる。さらに、このようにして電磁鋼板40を積み重ねて形成された積層コアは、加熱装置141によって例えば温度200℃まで加熱される。この加熱により、隣り合う電磁鋼板40の絶縁被膜3同士が接着される。
なお、加熱装置141は、外周打ち抜き雌金型142に配置されていなくてもよい。すなわち、外周打ち抜き雌金型142で積層された電磁鋼板40を接着させる前に、外周打ち抜き雌金型142外に取り出してもよい。この場合、外周打ち抜き雌金型142に断熱部材143がなくてもよい。さらにこの場合、積み重ねられた接着前の電磁鋼板40を、図示されない治具で積層方向の両側から挟んで保持した上で、搬送したり加熱したりしてもよい。
以上の各工程により、ステータコア21が完成する。
以上説明したように、本実施形態では、電磁鋼板の接着能を備える絶縁被膜のT(25)及びT(180)をそれぞれ特定の範囲に制御する。これにより、電磁鋼板の打ち抜き加工時に生じるカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度を両立させることができる。
さらに、T(180)とT(25)の差を特定の範囲に制御する。これにより、カス発生の抑制、積層精度、接着強度のさらに高いレベルでの両立が可能となる。
そして、絶縁被膜の焼き付け工程における室温までの冷却過程における、特定の温度域での平均冷却速度CR1を制御することで、上記のT(25)及びT(180)を適切な範囲に制御することが可能となる。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
ステータコアの形状は、前記実施形態で示した形態に限定されるものではない。具体的には、ステータコアの外径及び内径の寸法、積厚、スロット数、ティース部の周方向と径方向の寸法比率、ティース部とコアバック部との径方向の寸法比率、などは所望の回転電機の特性に応じて任意に設計可能である。
前記実施形態におけるロータでは、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成しているが、本発明はこれに限られない。例えば、1つの永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよく、3つ以上の永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよい。
前記実施形態では、回転電機として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、回転電機の構造は、以下に例示するようにこれに限られず、さらには以下に例示しない種々の公知の構造も採用可能である。
前記実施形態では、回転電機として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機がリラクタンス型電動機や電磁石界磁型電動機(巻線界磁型電動機)であってもよい。
前記実施形態では、交流電動機として、同期電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機が誘導電動機であってもよい。
前記実施形態では、電動機として、交流電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機が直流電動機であってもよい。
前記実施形態では、回転電機として、電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機が発電機であってもよい。
前記実施形態では、本発明に係る積層コアをステータコアに適用した場合を例示したが、ロータコアに適用することも可能である。
積層コアを、回転電機に代えて変圧器に採用することも可能である。この場合、電磁鋼板として、無方向電磁鋼板を採用することに代えて、方向性電磁鋼板を採用することが好ましい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[パルスNMR測定]
各例で製造した電磁鋼帯における絶縁被膜を彫刻刀で削り取って粉末状試料とした。日本電子株式会社(JEOL)製のJNM−MU25(25MHz)を用い、以下の条件で前記粉末状試料のパルスNMR測定を実施し、得られた緩和曲線からT(25)及びT(180)を求めた。
(測定条件)
測定手法:Solid Echo法
パルス幅:90°pulse、2.5μs
繰り返し時間:4sec
積算回数:16回
測定温度:25℃又は180℃
[打ち抜き加工性]
各例で製造した電磁鋼帯を用い、図3に例示した形状で外径250.0mm、内径165.0mmの電磁鋼板を10枚打ち抜き、生じたカスの総量を測定した。本実施例においては、カス発生量(g)が、10.0g以下であった場合を、合格として判断した。
[接着強度]
各例で製造した電磁鋼帯から、幅30mm×長さ60mmの長方形の電磁鋼板を2枚切り出し、互いの幅30mm×長さ10mmの先端部分同士を重ね合わせ、鋼板温度180℃、圧力10MPa、加圧時間1時間で接着してサンプルを作製した。得られたサンプルにおいて、雰囲気温度25℃、引張速度3mm/分として剪断引張強度を測定し、接着面積で除した数値を接着強度(MPa)とした。本実施例においては、接着強度が4.5MPa以上である場合を合格と判断した。特に、接着強度が5.0MPa以上である場合を「優良」と評価し、4.5MPa以上、5.0MPa未満である場合を「良」と評価した。
[積層精度]
各例で製造した電磁鋼帯を用い、図3に例示した形状で外径250.0mm、内径165.0mmの電磁鋼板を10枚打ち抜き、鋼板温度200℃、圧力10MPa、加圧時間1時間で圧着してサンプル(積層コア)を作製した。
前記サンプルに対し、幅方向に10箇所の積層板厚を測定し、その平均偏差により積層精度を評価した。積層板厚の平均偏差が1枚の電磁鋼板の板厚に対して1/2未満である場合を「優良」、1/2以上1未満である場合を「可」、1以上である場合を「不良」とした。
[実施例1]
以下に示す3種の電磁鋼板用コーティング組成物を調製した。
(A)ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部と、エポキシ樹脂硬化剤としてフェノールレゾール樹脂の25質量部とを混合
(B)ビスフェノールF型エポキシ樹脂100質量部と、エポキシ樹脂硬化剤としてジアミノジフェニルメタン樹脂の25質量部とを混合
(C)アクリル酸変性エポキシ樹脂100質量部と、エポキシ樹脂硬化剤としてフェノールレゾール樹脂の25質量部とを混合
母材鋼板として、質量%で、Si:3.0%、Mn:0.2%、Al:0.5%、残部がFe及び不純物からなり、厚さ0.25mm、幅300mmの帯状の無方向性電磁鋼板を用いた。母材鋼板の両面に各例の電磁鋼板用コーティング組成物を4.5g/mとなるように塗布し、各条件で焼き付けて平均厚みt1が3.0μmの絶縁被膜を形成して電磁鋼帯を得た。
上記電磁鋼板用コーティング組成物で形成された絶縁被膜のT(25)及びT(180)の測定結果、及び評価結果を表1に示す。
Figure 2022000538
表1に示すように、焼き付け工程において、適切な冷却を実施し、電磁鋼板が有する絶縁被膜のT(25)及びT(180)が適切な範囲である発明例では、打ち抜き加工時のカスの発生量が少なく、加熱圧着時の積層精度が良好で、また電磁鋼板同士の接着強度が高かった。一方、T(25)及びT(180)が範囲外の比較例では、カス発生量が多いか、積層精度が不良であるか、または電磁鋼板同士の接着強度が不十分であった。さらに(式1)及び(式2)を満足する条件では、T(25)及びT(180)がより好ましい範囲に制御され、カス発生の抑制と高い積層精度と高い接着強度がより高いレベルで両立された。
本発明によれば、電磁鋼板の打ち抜き加工時のカス発生量の低減と、加熱圧着時の積層精度の向上と、さらに電磁鋼板同士の接着強度を両立させることができる。よって、産業上の利用可能性は大である。
1…素材、2…母材鋼板、3…絶縁被膜、10…回転電機、20…ステータ、21…ステータコア、40…電磁鋼板。

Claims (6)

  1. 母材鋼板のいずれか一方又は両方の表面の少なくとも一部が、接着能を備える絶縁被膜により被覆された電磁鋼板であって、
    前記絶縁被膜に対し、パルスNMRを用いて25℃でSolid Echo法により測定されるスピン−スピン緩和時間T(25)が50.0μs以下であり、かつ180℃でのパルスNMRで測定されるスピン−スピン緩和時間T(180)が50.0μs以上100.0μs以下である、電磁鋼板。
  2. 前記スピン−スピン緩和時間T(180)と前記スピン−スピン緩和時間T(25)の差、T(180)−T(25)が40.0μs以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の電磁鋼板が複数積層され、互いに接着されている、積層コア。
  4. 請求項3に記載の積層コアを備える回転電機。
  5. 請求項1または2に記載の電磁鋼板の製造方法であって、
    母材鋼板のいずれか一方又は両方の表面の少なくとも一部に、電磁鋼板用コーティング組成物を塗布し、乾燥させる工程と、
    前記電磁鋼板用コーティング組成物を焼き付けて、その後、室温まで冷却することで絶縁被膜を形成する焼き付け工程と、を有し、
    前記焼き付け工程において、
    前記絶縁被膜のガラス転位温度をTg[℃]とし、
    焼き付ける際の到達温度Thが、Tg+15℃超、200℃未満であり、
    前記到達温度Thから室温までの冷却過程における、Th℃から(Tg+15)℃までの温度域における平均冷却速度をCR1[℃/s]としたとき、平均冷却速度CR1が20℃/s以上30℃/s以下であることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
  6. 前記焼き付け工程において、前記到達温度から室温までの冷却過程における、(Tg+15)℃からTg℃までの温度域における平均冷却速度をCR2[℃/s]とし、Tg℃から(Tg−15)℃までの平均冷却速度をCR3[℃/s]としたとき、以下の(式1)と(式2)を満足することを特徴とする請求項5に記載の電磁鋼板の製造方法。
    |CR1−CR2|≦5℃/s ・・・・式1
    CR1−CR3≧10℃/s ・・・・式2
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