JP2022000886A - 電磁鋼板及び積層コア - Google Patents

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一郎 田中
Ichiro Tanaka
和年 竹田
Kazutoshi Takeda
美菜子 福地
Minako Fukuchi
真介 高谷
Shinsuke Takaya
修一 山崎
Shuichi Yamazaki
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Abstract

【課題】積層コアを形成するための十分な接着強度と高い耐発粉性及び耐スリット性とを両立できる電磁鋼板と、この電磁鋼板を複数枚積層して構成した積層コアとの提供を目的とする。【解決手段】この電磁鋼板は、母材鋼板2と、母材鋼板2の第1面2aに形成されて接着能を有する第1絶縁被膜3Aと、母材鋼板2の第1面2aの裏面である第2面2bに形成されて接着能を有する第2絶縁被膜3Bと、を備え、第1絶縁被膜3Aが、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相からなり、第2絶縁被膜3Bが、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相及び硬化剤を含有する。【選択図】図5

Description

本発明は、電磁鋼板及び積層コアに関する。
回転電機には、複数枚の電磁鋼板を積層した積層コアが用いられている。これら電磁鋼板は、かしめ、溶接、接着等の方法により、積層された状態に一体化されている。しかし、かしめや溶接により積層した場合、加工時に加わる機械的応力や熱応力、さらには層間短絡によって各電磁鋼板の磁気特性が劣化し、積層コアの性能が十分に発揮されない場合がある。接着による積層は、この問題を解消する上で極めて有効である。
例えば、下記特許文献1に開示の無方向性電磁鋼板製品は、複数の無方向性電磁鋼板、及び前記複数の無方向性電磁鋼板の間に位置する接着コーティング層を含み、前記接着コーティング層が、有機・無機複合体を含む第1成分及び複合金属リン酸塩を含む第2成分を含み、前記接着コーティング層の総量100重量%に対して、前記第1成分が70乃至99重量%含まれ、前記第2成分が1乃至30重量%含まれ、前記有機・無機複合体が、有機樹脂内の一部の官能基に、無機ナノ粒子が化学的に置換されたものであり、前記有機樹脂が、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びエチレン系樹脂の中から選択される1種又は2種以上であり、前記無機ナノ粒子が、SiO、Al、TiO、MgO、ZnO、及びZrOの中から選択される1種又は2種以上である構成を採用している。
この構成によれば、接着コーティング層の厚さを薄く形成しても、優れた接着性及び絶縁性を発現しながらも、溶接性、耐熱性、SRA前後の密着性、及び占積率(Stacking Factor)などの特性を向上できる、と説明されている。
また、特許文献2に開示の電磁鋼板は、その片面または両面に耐熱接着性絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板であって、前記耐熱接着性絶縁被膜が、70質量%以上のポリエーテルウレタン樹脂、および、前記ポリエーテルウレタン樹脂100質量部に対して30質量部以下のシラン化合物を含有する構成を採用している。
この構成によれば、自動車用モーターのように高温接着性が要求される用途に供される積層型電磁鋼板を製造するのに好適である、と説明されている。
特表2019−508573号公報 特開2017−186542号公報
電磁鋼板には、接着能と、耐スリット性及び擦傷防止能力との両方を兼ね備えることが求められる。しかし、上記特許文献1,2では、積層後の接着性について検討されているものの、耐スリット性及び擦傷防止能力については何ら検討されていない。
ここで、接着能とは、加熱および加圧の少なくとも一方が与えられることにより、絶縁被膜が溶けて接着特性を発揮することを意味する。この接着能は、絶縁被膜が柔らかいほど高くなる。
一方、耐スリット性とは、スリットを行うために電磁鋼板を押さえるパッドによって電磁鋼板の表裏面が擦られた際の、絶縁被膜の傷付きにくさや剥離のしにくさを意味する。さらに、擦傷防止能力とは、母材鋼板を複数の金型間で移送する際に母材鋼板の裏面が擦られるが、この時の擦傷の付きにくさを意味する。これら耐スリット性及び擦傷防止能力は、絶縁被膜が硬いほど高くなる。
このように、接着能と耐スリット性及び擦傷防止能力との間では、これらを実現する絶縁被膜の硬度において互いに相反する関係にある。つまり、絶縁被膜の硬度を高くすると接着能が犠牲になり、逆に絶縁被膜の硬度を低くすると耐スリット性及び擦傷防止能力が損なわれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い接着能と高い耐スリット性及び擦傷防止能力とを両立できる電磁鋼板と、この電磁鋼板を複数枚積層して構成した積層コアとの提供を目的とする。
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用している。
(1)本発明の一態様に係る電磁鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の第1面に形成されて接着能を有する第1絶縁被膜と、前記母材鋼板の前記第1面の裏面である第2面に形成されて接着能を有する第2絶縁被膜と、を備え、前記第1絶縁被膜が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相からなり、前記第2絶縁被膜が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相及び硬化剤を含有する。
上記(1)に記載の電磁鋼板によれば、その第2面側が硬化剤を含むことにより相対的に硬い第2絶縁被膜で覆われているので、高い耐スリット性及び擦傷防止能力を発揮する。一方、第1面側は硬化剤を含まず相対的に柔らかい第1絶縁被膜で覆われているので、相対的に高い接着強度を確保している。したがって、積層コアを形成するための接着能と、高い耐スリット性及び擦傷防止能力とを両立できる。
なお、ここで言う「接着能を有する」とは、加熱および加圧の少なくとも一方が与えられることにより溶けて、接着特性を発揮することを意味する。
(2)上記(1)に記載の電磁鋼板において、前記第2絶縁被膜における前記有機樹脂相に対する前記硬化剤の当量比が0.8〜1.5であってもよい。
上記(2)に記載の電磁鋼板によれば、高い耐スリット性及び擦傷防止能力がより確実に得られる。
(3)本発明の一態様に係る積層コアは、上記(1)または上記(2)に記載の電磁鋼板を2枚以上積層してなる。
上記(3)に記載の積層コアによれば、高い接着強度と、高い耐スリット性及び擦傷防止能力とを両立させた電磁鋼板を用いて製造されているので、剛性が高く歩留まりがよい。
本発明の上記各態様によれば、積層コアを形成するための接着強度と、高い耐スリット性及び擦傷防止能力とを両立できる電磁鋼板と、この電磁鋼板を複数枚積層して構成した積層コアとを提供できる。
本発明の一実施形態に係る積層コアを備えた回転電機の断面図である。 同積層コアの側面図である。 同積層コアを構成する電磁鋼板の平面図である。 同電磁鋼板の素材である帯状鋼板の平面図である。 同素材を示す図であって、図4のB部のA−A断面図である。 同素材より電磁鋼板を得て積層コアを製造する製造装置の一例を示す側面図である。
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る積層コアと、この積層コアを備えた回転電機と、この積層コアを形成する素材(電磁鋼板)と、について説明する。なお、本実施形態では、回転電機として電動機、具体的には交流電動機、より具体的には同期電動機、より一層具体的には永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明する。この種の電動機は、例えば、電気自動車などに好適に採用される。
(回転電機10)
図1に示すように、回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、ケース50と、回転軸60と、を備える。ステータ20およびロータ30は、ケース50内に収容される。ステータ20は、ケース50内に固定される。
本実施形態では、回転電機10として、ロータ30がステータ20の径方向内側に位置するインナーロータ型を採用している。しかしながら、回転電機10として、ロータ30がステータ20の外側に位置するアウターロータ型を採用してもよい。また、本実施形態では、回転電機10が、12極18スロットの三相交流モータである。しかしながら、極数、スロット数、相数などは、適宜変更することができる。
回転電機10は、例えば、各相に実効値10A、周波数100Hzの励磁電流を印加することにより、回転数1000rpmで回転することができる。
ステータ20は、ステータ用積層コア(以下、ステータコア)21と、図示しない巻線と、を備える。
ステータコア21を構成する複数枚の電磁鋼板40は、それぞれ、環状のコアバック部22と、複数のティース部23と、を備える。以下では、ステータコア21(又はコアバック部22)の中心軸線O方向を軸方向と言い、ステータコア21(又はコアバック部22)の径方向(中心軸線Oに直交する方向)を径方向と言い、ステータコア21(又はコアバック部22)の周方向(中心軸線O回りに周回する方向)を周方向と言う。
コアバック部22は、ステータ20を軸方向から見た平面視において円環状に形成されている。
複数のティース部23は、コアバック部22の内周から径方向内側に向けて(径方向に沿ってコアバック部22の中心軸線Oに向けて)突出する。複数のティース部23は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角20度おきに18個のティース部23が設けられている。複数のティース部23は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。よって、複数のティース部23は、互いに同じ厚み寸法を有している。
前記巻線は、各ティース部23に巻回されている。前記巻線は、集中巻きされていてもよく、分布巻きされていてもよい。
ロータ30は、ステータ20(ステータコア21)に対して径方向の内側に配置されている。ロータ30は、ロータコア31と、複数の永久磁石32と、を備える。
ロータコア31は、ステータ20と同軸に配置される環状(円環状)に形成されている。ロータコア31内には、前記回転軸60が配置されている。回転軸60は、ロータコア31に固定されている。
複数の永久磁石32は、ロータコア31に固定されている。本実施形態では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成している。複数組の永久磁石32は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角30度おきに12組(全体では24個)の永久磁石32が設けられている。
本実施形態では、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型モータが採用されている。ロータコア31には、ロータコア31を軸方向に貫通する複数の貫通孔33が形成されている。複数の貫通孔33は、複数の永久磁石32の配置に対応して設けられている。各永久磁石32は、対応する貫通孔33内に配置された状態でロータコア31に固定されている。各永久磁石32のロータコア31への固定は、例えば永久磁石32の外面と貫通孔33の内面とを接着剤により接着すること等により、実現できる。なお、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型に代えて表面磁石型モータを採用してもよい。
ステータコア21およびロータコア31は、いずれも積層コアである。例えばステータコア21は、図2に示すように、複数の電磁鋼板40が積層方向に積層されることで形成されている。なお、積層方向は、前記軸方向である。
なお、ステータコア21およびロータコア31それぞれの積厚(中心軸線Oに沿った全長)は、例えば50.0mmとされる。ステータコア21の外径は、例えば250.0mmとされる。ステータコア21の内径は、例えば165.0mmとされる。ロータコア31の外径は、例えば163.0mmとされる。ロータコア31の内径は、例えば30.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ステータコア21の積厚、外径や内径、およびロータコア31の積厚、外径や内径は、これらの値のみに限られない。ここで、ステータコア21の内径は、ステータコア21におけるティース部23の先端部を基準とする。すなわち、ステータコア21の内径は、全てのティース部23の先端部に内接する仮想円の直径である。
図3は、ステータコア21を構成する複数の電磁鋼板40のうちの1枚を示す。この電磁鋼板40は、母材鋼板2と、母材鋼板2の表面である第1面2aに形成されて接着能を有する第1絶縁被膜3Aと、母材鋼板2の裏面である第2面2bに形成されて接着能を有する第2絶縁被膜3Bと、を備える。なお、第1絶縁被膜3A、母材鋼板2、第2絶縁被膜3Bの配置関係は、後述の素材1と同じであり、具体的には後述する図5と同じ配置構成になる。
なお、上述の「接着能を有する」とは、加圧及び加熱の少なくとも一方を与えられることにより、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bが溶けて接着特性を発揮することを意味する。
第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度(average pencil hardness)は、第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度よりも高い。第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度は、HB以上3H以下である。第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度は、第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度よりも高ければよいが、4H以上9H以下が好ましい。平均鉛筆硬度は、JIS K5400 5−4に記載のひっかき硬度(鉛筆法)により求めることができる。
第1絶縁被膜3Aは、コアバック部22の上面と各ティース部23の上面に形成されている。第2絶縁被膜3Bは、コアバック部22の下面と各ティース部23の下面に形成されている。コアバック部22の側面の少なくとも一部が、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの少なくとも一方により覆われてもよい。同様に、各ティース部23の側面の少なくとも一部が、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの少なくとも一方により覆われてもよい。ここで言う側面とは、電磁鋼板40を後述の素材1から打ち抜いて形成する場合には、打ち抜き後に形成される切断面であり、コアバック部22の外形をなす外周側の側面と、ティース部23の外形及びコアバック部22の内形をなす側面とが含まれる。
各電磁鋼板40は、図4及び図5に示す素材1を打ち抜き加工すること等により形成される。素材1は、電磁鋼板40の母材となる鋼板(電磁鋼板)である。素材1としては、帯状の鋼板や切り板等を用いることができる。
ステータコア21の説明の途中ではあるが、以下では、この素材1について説明する。なお、本明細書において、電磁鋼板40の母材となる帯状の鋼板を、素材1という場合がある。素材1を打ち抜き加工して積層コアに用いられる形状にした鋼板を、電磁鋼板40という場合がある。
(素材1)
素材1は、帯状の鋼板である場合、例えば、コイル1A(図6参照)に巻き取られた状態で取り扱われる。本実施形態では、素材1として、無方向性電磁鋼板を採用している。無方向性電磁鋼板としては、JIS C 2552:2014の無方向性電磁鋼帯を採用できる。しかしながら、素材1として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用してもよい。この場合の方向性電磁鋼板としては、JIS C 2553:2019の方向性電磁鋼帯を採用できる。また、素材1としては、JIS C 2558:2015の無方向性薄電磁鋼帯や方向性薄電磁鋼帯も採用できる。
素材1の平均板厚t0の上下限値は、例えば以下のように設定される。
素材1が薄くなるに連れて素材1の製造コストは増す。そのため、製造コストを考慮すると、素材1の平均板厚t0の下限値は、0.10mm、好ましくは0.15mm、より好ましくは0.18mmとなる。
一方で素材1が厚すぎると、製造コストは良好になるが、素材1が電磁鋼板40として用いられた場合に、渦電流損が増加してコア鉄損が劣化する。そのため、コア鉄損と製造コストを考慮すると、素材1の平均板厚t0の上限値は、0.65mm、好ましくは0.35mm、より好ましくは0.30mmとなる。
素材1の平均板厚t0の上記範囲を満たすものとして、0.20mmを例示できる。
なお、素材1の平均板厚t0は、後述する母材鋼板2の厚さだけでなく、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの厚さも含まれる。また、素材1の平均板厚t0の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、素材1がコイル1A(図6参照)の形状に巻き取られた帯状鋼板である場合、素材1の少なくとも一部を平板形状に巻き出す。平板形状に巻き出された素材1において、素材1の長手方向の所定の位置(例えば、素材1の長手方向の端縁から、素材1の全長の10%分の長さ、離れた位置)を選定する。この選定した位置において、素材1を、その幅方向に沿って5つの領域に区分する。これらの5つの領域の境界となる4か所において、素材1の板厚を測定する。4か所の板厚の平均値を、素材1の平均板厚t0とすることができる。
この素材1の平均板厚t0についての上下限値は、電磁鋼板40としての平均板厚t0の上下限値としても採用できる。なお、電磁鋼板40の平均板厚t0の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、積層コアの積厚を、周方向に同等の間隔をあけて4か所において(すなわち、中心軸線Oを中心とした90度おきに)測定する。測定した4か所の積厚それぞれを、積層されている電磁鋼板40の枚数で割って、1枚当たりの板厚を算出する。4か所の板厚の平均値を、電磁鋼板40の平均板厚t0とすることができる。この電磁鋼板40の状態で測定した平均板厚t0は、素材1の状態で測定した平均板厚t0に等しい。
図4および図5に示すように、素材1は、母材鋼板2と、母材鋼板2の表面である第1面2aに形成されて接着能を有する第1絶縁被膜3Aと、母材鋼板2の裏面である第2面2bに形成されて接着能を有する第2絶縁被膜3Bと、を備える。第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度は、第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度よりも高い。第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度は、HB以上3Hである。第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度は、第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度よりも高ければよいが、4H以上9H以下が好ましい。第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度も、第2絶縁被膜3Bと同様に、JIS K5400 5−4に記載のひっかき硬度(鉛筆法)により求めることができる。
母材鋼板2の化学組成は、以下に質量%単位で示すように、質量%で2.5%〜4.5%のSiを含有する。化学組成をこの範囲とすることにより、素材1(電磁鋼板40)の降伏強度を、例えば、380MPa以上540MPa以下に設定することができる。
Si:2.5%〜4.5%
Al:0.001%〜3.0%
Mn:0.05%〜5.0%
残部:Feおよび不純物
素材1が電磁鋼板40として用いられるときに、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、共に、積層方向に隣り合う電磁鋼板40間での絶縁性能を発揮する。また、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、共に、接着能(自己融着機能)を有していて、積層方向に隣り合う電磁鋼板40間を接着する。より具体的には、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、共に、加圧および加熱の少なくとも一方を受けること等により融着する。
一方、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、その機能が互いに異なっている。
すなわち、第2絶縁被膜3Bは、耐スリット性及び擦り傷防止能力を確保するために、その平均鉛筆硬度が高く設定されている。なお、「耐スリット性」は、スリットを行うために電磁鋼板40を押さえるパッド(不図示)によって電磁鋼板40の表裏面が擦られた際の、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの傷付きにくさや剥離のしにくさを意味する。また、「擦傷防止能力」は、素材1を金型間で移送する際に素材1の裏面(下面)をなす第2絶縁被膜3Bが擦られるが、この時の擦傷の付きにくさを意味する。これら耐スリット性及び擦傷防止能力は、第2絶縁被膜3Bが硬いほど高くなる。第2絶縁被膜3Bの損傷度合いの評価は、素材1を工場ラインの鋼板支持ロールに押し付けて擦りあわせ、そのときに第2絶縁被膜3Bが受ける損傷度合いを目視で判定することで行える。
第2絶縁被膜3Bの耐スリット性及び擦り傷防止能力は、電磁鋼板40を積層する前の時点から既に必要な特性である。一方、第1絶縁被膜3Aに求められる柔らかさは、電磁鋼板40を積層した後の加圧加熱による接着時に求められる特性である。
平均鉛筆硬度を高くした場合、電磁鋼板40を積層して積層コアを製造した際に、接着強度不足が生じる。そこで、この接着強度不足を補うために、第1絶縁被膜3Aでは、その平均鉛筆硬度を低めて柔らかくしている。具体的に言うと、第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度は、HB以上3H以下である。一方、第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度は、第1絶縁被膜3Aの平均鉛筆硬度よりも高ければよいが、4H以上9H以下が好ましい。第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3B間では、何れの平均鉛筆硬度の組み合わせにおいても、第1絶縁被膜3Aよりも第2絶縁被膜3Bの方が、相対的に平均鉛筆硬度が高く、硬くなっている。逆に言うと、第1絶縁被膜3Aの方が第2絶縁被膜3Bよりも相対的に平均鉛筆硬度が低く、柔らかくなっている。この平均鉛筆硬度の差は、硬化剤の配合有無によって設定されている。すなわち、第1絶縁被膜3Aは、有機樹脂相のみからなり硬化剤を含有していないため、平均鉛筆硬度が低く柔らかくなっている。一方、第2絶縁被膜3Bは、有機樹脂相に加えて硬化剤を含むため、平均鉛筆硬度が高く硬くなっている。
第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、それぞれ、単層構成であってもよく、あるいは複層構成であってもよい。より具体的には、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、それぞれ、絶縁性能と接着能とを兼ね備えた単層構成であってもよい。あるいは、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bのそれぞれが、絶縁性能に優れる下地絶縁被膜と、接着性能に優れた上地絶縁被膜とを含む複層構成であってもよい。この場合、下地絶縁被膜は母材鋼板2の表面を隙間無く覆うように形成され、そして下地絶縁被膜の表面に上地絶縁被膜が重なって形成される。この複層構成の場合、電磁鋼板40の最表面(最上面)に形成される上地絶縁被膜は、第1絶縁被膜3Aとして必要な平均鉛筆硬度を有することになる。同様に、電磁鋼板40の最裏面(最下面)に形成される上地絶縁被膜は、第2絶縁被膜3Bとして必要な平均鉛筆硬度を有する。すなわち、電磁鋼板40の最表面(最上面)に形成される上地絶縁被膜の平均鉛筆硬度がHB以上3H以下となる。また、電磁鋼板40の最裏面(最下面)に形成される上地絶縁被膜の平均鉛筆硬度が、電磁鋼板40の最表面(最上面)に形成される上地絶縁被膜の平均鉛筆硬度よりも高くなる。
絶縁性能や接着能が確保される範囲において、下地絶縁被膜は、母材鋼板2の両面を隙間なく覆っていなくてもよい。言い換えると、下地絶縁被膜の一部が、母材鋼板2の表面に間欠的に設けられていてもよい。ただし、絶縁性能を確保するには、母材鋼板2の両面は、その全面が露出しないように下地絶縁被膜によって覆われていることが好ましい。
下地絶縁被膜を形成するコーティング組成物としては、特に限定されず、例えば、クロム酸含有処理剤、リン酸塩含有処理等の一般的な処理剤を使用できる。
第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、電磁鋼板用コーティング組成物を母材鋼板2上に塗布して形成したものである。第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bは、積層コア製造時の加熱圧着前においては、未硬化状態又は半硬化状態(Bステージ)であり、加熱圧着時の加熱によって硬化反応が進行して接着能が発現する。
第1絶縁被膜3Aは、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相からなる。一方、第2絶縁被膜3Bは、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相及び硬化剤を含有する。
電磁鋼板用コーティング組成物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する組成物が挙げられる。すなわち、接着能を備える絶縁被膜としては、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する膜が、一例として挙げられる。
エポキシ樹脂(エポキシ系樹脂)としては、一般的なエポキシ樹脂が使用でき、具体的には、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば特に制限なく使用できる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
電磁鋼板用コーティング組成物は、アクリル樹脂を含有してもよい。
アクリル樹脂としては、特に限定されない。アクリル樹脂に用いるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを例示できる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。アクリル樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂は、アクリルモノマー以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン等が挙げられる。他のモノマーとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂にアクリル樹脂をグラフトさせたアクリル変性エポキシ樹脂として用いてもよい。電磁鋼板用コーティング組成物においては、アクリル樹脂を形成するモノマーとして含まれていてもよい。
第2絶縁被膜3Bに含まれるエポキシ樹脂硬化剤としては、潜在性を持つ加熱硬化タイプのものが使用可能であり、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素−アミン錯体、有機酸ヒドラジッド等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、フェノールレゾール樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール系硬化剤が好ましく、フェノールレゾール樹脂がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第2絶縁被膜3Bを形成する電磁鋼板用コーティング組成物中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜35質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
ウレタンプレポリマーは、ジイソシアネートとポリオールとの反応物からなり、分子鎖の末端にイソシアネート基又は水酸基のいずれか一方のみを有するウレタン樹脂である。すなわち、ウレタンプレポリマーにおいては、すべての末端基がイソシアネート基であるか、水酸基であるかのいずれかであり、末端が水酸基である方が好ましい。
ジイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、作業性の点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。ジイソシアネートとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系等が市販されているが、本発明ではポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを用いる。すなわち、電磁鋼板用コーティング組成物は、ウレタンプレポリマーとして、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートとの反応物(プレポリマー)か、ポリエステルポリオールとジイソシアネートとの反応物(プレポリマー)のどちらか一方、又はそれらの両方を含有する。
ポリエーテルポリオールは、多価アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを重合したものが挙げられ、比較的高分子量の直鎖のものが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。なかでも、耐加水分解性の点から、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、カルボン酸又はその誘導体(酸無水物、酸ハロゲン化物等)と、ジオールとを縮重合させて得られるものが挙げられる。
カルボン酸及びその誘導体としては、特に限定されず、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ポリカプロラクトン等が挙げられる。なかでも、耐熱性の点から、ポリカプロラクトンが好ましい。ジカルボン酸及びその誘導体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ジオールとしては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なかでも、分子量を制御し易い点から、1,4−ブタンジオールが好ましい。ジオールとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルポリオールとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタンプレポリマーに用いるポリオールは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールに加えて、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールを構成するジオールとして例示したもの等の他のポリオールを含んでもよい。本発明の効果が得られやすい点では、ウレタンプレポリマーに用いるポリオールは、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールのいずれか、又はそれらのいずれかと1,4−ブタンジオールとの組み合わせが好ましい。
電磁鋼板用コーティング組成物中のウレタンプレポリマーの含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下である。ウレタンプレポリマーの含有量が前記範囲内であれば、磁気特性に優れた積層コアが得られる。
ウレタンプレポリマーの含有量の下限値は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部、より好ましくは20質量部である。ウレタンプレポリマーの含有量の上限値は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは39質量部、より好ましくは38質量部である。
電磁鋼板用コーティング組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及びウレタンプレポリマー以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、硬化促進剤(硬化触媒)、乳化剤、消泡剤、鉱物等が挙げられる。
本実施形態の第2絶縁被膜3Bは硬化剤を含有しているため、硬化剤を含有しない第1絶縁被膜3Aに比べて相対的に平均鉛筆硬度が高い。その上で、第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度をより細かく調整する手段として、下記の構成AまたはBを採用できる。
[構成A]
この構成Aでは、第2絶縁被膜3Bに含まれる主剤及び硬化剤の組み合わせを換えるか、または、第2絶縁被膜3Bに含まれる硬化剤の配合比を変えることで、第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度を調整する。
[構成B]
この構成Bでは、第2絶縁被膜3Bに含まれる主剤と硬化剤の組み合わせが固定でかつ、第2絶縁被膜3Bに含まれる主剤に対する硬化剤の当量比が一定である。この条件の下、第2絶縁被膜3Bの焼き付け温度及び焼き付け時間の組み合わせを変える。
すなわち、同一焼き付け温度であっても、焼き付け時間を長くすると平均鉛筆硬度が高く(硬く)なる。同様に、同一焼き付け時間であっても、焼き付け温度を高くすると平均鉛筆硬度が高く(硬く)なる。この構成Bでは、第2絶縁被膜3Bに含まれる主剤と硬化剤の組み合わせ、硬化剤の当量比が一定の条件の下、第2絶縁被膜3Bの焼き付け温度及び焼き付け時間の組み合わせを変えることで、第2絶縁被膜3Bの平均鉛筆硬度を調整する。
上記構成A及びBのどちらによっても、母材鋼板2の第2面2b側を、相対的に硬い第2絶縁被膜3Bで覆うことができるので、高い耐スリット性及び擦り傷防止能力を発揮する。一方、第1面2a側は相対的に柔らかい第1絶縁被膜3Aで覆われているので、必要十分な接着強度を確保している。したがって、積層コアを形成するための接着能と、高い耐スリット性及び擦り傷防止能力とを両立可能としている。
第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bそれぞれの平均厚みt1の上下限値は、例えば以下のように設定される。なお、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3B間で、平均厚みt1を同じとしてもよい。あるいは、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3B間の平均鉛筆硬度差が保てるのであれば、平均厚みt1を互いに異ならせてもよい。
素材1が電磁鋼板40として用いられる場合において、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1(電磁鋼板40(素材1)片面あたりの厚さ)は、互いに積層される電磁鋼板40間での絶縁性能及び接着能を確保できるように調整する。
第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bが単層構成である場合、これらの平均厚みt1(電磁鋼板40(素材1)片面あたりの厚さ)は、例えば、1.5μm以上8.0μm以下とすることができる。
一方、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bが複層構成である場合、下地絶縁被膜の平均厚みを、例えば、0.3μm以上1.2μm以下とすることができる。下地絶縁被膜3bの平均厚みは、0.7μm以上0.9μm以下とすることが好ましい。上地絶縁被膜の平均厚みは、例えば、1.5μm以上8.0μm以下とすることができる。
なお、素材1における第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1の測定方法は、素材1の平均板厚t0と同様の考え方で、例えば10点の厚みを求め、それらの厚みの平均として求めることができる。
この素材1における第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1についての上下限値は、電磁鋼板40における第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1の上下限値としても採用可能である。なお、電磁鋼板40における第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1の測定方法は、例えば、以下の測定方法による。例えば、積層コアを形成する複数の電磁鋼板40のうち、積層方向の最も外側に位置する電磁鋼板40(表面が積層方向に露出している電磁鋼板40)を選定する。選定した電磁鋼板40の表面において、径方向の所定の位置(例えば、電磁鋼板40における内周縁と外周縁との丁度中間(中央)の位置)を選定する。選定した位置において、例えば10点の厚みを求める。これを、電磁鋼板40の周方向に同等の間隔をあけて4か所それぞれにおいて(すなわち、中心軸線Oを中心とした90度おきに)測定する。測定した4か所の厚みの平均値を、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1とすることができる。
なお、このように第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの平均厚みt1を、積層方向の最も外側に位置する電磁鋼板40において測定した理由は、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの厚みが、電磁鋼板40の積層方向に沿った積層位置で殆ど変わらないように、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bが作り込まれているからである。
以上のような素材1を複数回打ち抜き加工することで複数枚の電磁鋼板40が製造され、これら電磁鋼板40を積層することによって積層コア(ステータコア21やロータコア31)が製造される。この積層コアによれば、必要十分な接着強度と、高い耐発粉性及び耐スリット性とを両立できる電磁鋼板40を用いて製造されているので、剛性が高く歩留まりがよい。
(積層コアの積層方法)
以下、積層コアの説明に戻る。ステータコア21を形成する複数の電磁鋼板40は、図2に示すように、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bを介して積層されている。
積層方向に隣り合う電磁鋼板40は、主に第1絶縁被膜3Aの接着能によって全面にわたって接着されている。言い換えると、電磁鋼板40において積層方向を向く面(以下、第1面という)は、全面にわたって接着領域となっている。ただし、積層方向に隣り合う電磁鋼板40が、全面にわたって接着されていなくてもよい。言い換えると、電磁鋼板40の第1面において、接着領域と非接着領域とが混在していてもよい。
本実施形態では、ロータコア31を形成する方の複数の電磁鋼板が、図1に示すかしめ42(ダボ)によって互いに固定されている。しかしながら、ロータコア31を形成する複数の電磁鋼板も、ステータコア21と同様に絶縁被膜3により固定した積層構造を有してもよい。
また、ステータコア21やロータコア31などの積層コアは、いわゆる回し積みにより形成されていてもよい。
(積層コアの製造方法)
次に、以上のように構成されたステータコア21を製造する積層コアの製造方法(以下、単に製造方法とも言う)について説明する。
図6に、本製造方法で好ましく用いられる積層コアの製造装置100(以下、単に製造装置100という)の側面図を示す。
製造装置100では、コイル1A(フープ)から素材1を矢印F方向に向かって送り出しつつ、各ステージに配置された金型により複数回の打ち抜きを行って電磁鋼板40の形状に徐々に形成していく。
そして、打ち抜いた電磁鋼板40を、既に積層済みである複数の電磁鋼板40の上に積層した後、昇温させながら加圧する。各電磁鋼板40を積層していく際、それぞれの第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの上下の向きは同じである。すなわち、各電磁鋼板40の上面に第1絶縁被膜3Aが配置され、下面に第2絶縁被膜3Bが配置される。あるいは、各電磁鋼板40の上面に第2絶縁被膜3Bが配置され、下面に第1絶縁被膜3Aが配置される。
そして、相対的に下方に位置する電磁鋼板40の上面にある第1絶縁被膜3A又は第2絶縁被膜3Bと、この電磁鋼板40の上に重なる他の電磁鋼板40の下面にある第2絶縁被膜3B又は第1絶縁被膜3Aとが互いに重なり合い、接着(あるいは融着)する。この時、第2絶縁被膜3Bは硬いために接着力が相対的に弱いものの、第1絶縁被膜3Aは柔らかいので高い接着力を発揮できる。したがって、各電磁鋼板40間の接着力が必要十分に保たれるので、積層コアの剛性を高めることができる。一方、第2絶縁被膜3Bは硬いので、打ち抜きや搬送に伴う発粉やスリットが生じにくい。そのため、発粉を除去するなどの手間を省けるので、生産性を高めることができる。
以上により、積層方向に隣り合う電磁鋼板40同士を、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bにより接着(融着)する。
図6に示すように、製造装置100は、複数段の打ち抜きステーションを有する。この打ち抜きステーションは、二段であってもよく、三段以上であってもよい。
打ち抜きステーションが三段である場合を例示して説明すると、製造装置100は、コイル1Aに最も近い位置に一段目の打ち抜きステーション110と、この打ち抜きステーション110よりも素材1の搬送方向に沿った下流側に隣接配置された二段目の打ち抜きステーション120と、この打ち抜きステーション120よりも素材1の搬送方向に沿った下流側に隣接配置された三段目の打ち抜きステーション130と、を備えている。
打ち抜きステーション110は、素材1の下方に配置された雌金型111と、素材1の上方に配置された雄金型112とを備える。
打ち抜きステーション120は、素材1の下方に配置された雌金型121と、素材1の上方に配置された雄金型122とを備える。
打ち抜きステーション130は、素材1の下方に配置された雌金型131と、素材1の上方に配置された雄金型132とを備える。
なお、打ち抜きステーションは、三段以上設けてもよい。
製造装置100は、さらに、二段目の打ち抜きステーション120よりも下流位置に積層ステーション140を備える。この積層ステーション140は、加熱装置141と、外周打ち抜き雌金型142と、断熱部材143と、外周打ち抜き雄金型144と、スプリング145と、を備えている。
加熱装置141、外周打ち抜き雌金型142、断熱部材143は、素材1の下方に配置されている。一方、外周打ち抜き雄金型144及びスプリング145は、素材1の上方に配置されている。なお、符号21は、ステータコアを示している。
なお、本例では電磁鋼板40の積層に加えて加圧及び加熱も行って接着まで行っているが、本発明は本例の装置及び方法のみに限定されない。例えば、製造装置100では電磁鋼板40の積層までを行い、各電磁鋼板40間の接着を別装置による後工程で行うようにしてもよい。この場合、加熱装置141及び断熱部材143は製造装置100では不要となり、別装置の方に装備されることになる。この場合、製造装置100から別装置に未接着状体のステータコア21を移動させる前に、各電磁鋼板40間の位置ずれを防ぐために、図示されない治具で各電磁鋼板40間を固定することが好ましい。
以上説明の構成を有する製造装置100において、まずコイル1Aより素材1を図6の矢印F方向に順次送り出す。そして、この素材1に対し、まず打ち抜きステーション110による打ち抜き加工を行う。続いて、この素材1に対し、打ち抜きステーション120による打ち抜き加工を行う。さらに、この素材1に対し、打ち抜きステーション130による打ち抜き加工を行う。これら打ち抜き加工を順次行うことにより、素材1に、図3に示したコアバック部22と複数のティース部23を有する電磁鋼板40の形状を得る。ただし、この時点では完全には打ち抜かれていないので、矢印F方向に沿って次工程へと進む。
最後に、素材1は積層ステーション140へと送り出され、外周打ち抜き雄金型144により打ち抜かれて精度良く、積層される。この積層の際、電磁鋼板40はスプリング145により一定の加圧力を受ける。以上説明のような、打ち抜き工程、積層工程、を順次繰り返すことで、所定枚数の電磁鋼板40を積み重ねることができる。さらに、このようにして電磁鋼板40を積み重ねて形成された積層コアは、加熱装置141によって例えば温度200℃まで加熱される。この加熱により第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bが硬化して、各電磁鋼板40間が接着される。
以上の各工程により、ステータコア21が完成する。
図6に示す製造装置100を用い、板厚が0.25mmの無方向性電磁鋼板にて各種製造条件を変えながら上記ステータコア21(以下、ステータコア)を製造し、ステータコアの接着力および被膜損傷度を評価した。より具体的には、第1絶縁被膜3A(表面)及び第2絶縁被膜3B(裏面)のそれぞれについて、主剤及び硬化剤の組み合わせあるいは当量比を変えることで、平均鉛筆硬度を調整した。その結果を表1及び表2にまとめる。なお、ステータコアの加熱条件は全て共通とし、加熱温度が200℃で加熱時間が30分とした。
表1に示すように、No.1,2では、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3B間において、同じ焼き付け条件で硬化剤の配合有無を変更した。
また、No.3〜12および14、15は、主剤及び硬化剤の配合のみならず、焼き付け条件も変更した。No.13は、主剤及び硬化剤の配合に加え、焼き付け条件パターンも同じとした。発明例であるNo.1〜12において、第2絶縁被膜3Bにおける有機樹脂相(主剤)に対する当量比は、全て、0.8〜1.5の範囲を満たしている。
Figure 2022000886
これら組み合わせを持つ第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bが形成されたステータコアを製造し、それらの接着力及び被膜損傷度を測定した。
接着力は、積層面の中央部に楔を押込むことで積層面間が開いて鉄心が分離する際の最大荷重を測定した。ここで、楔はその先端角度が7度のものを用いた。そして、この楔をステータコアの積層方向において中央の高さ位置に押し込んだ。
表1において、接着力は、その値が大きいほど、ステータコアの剛性が高く好ましい。表1において、接着力の判断基準は、980N未満である場合を「不可」、980N以上1450N以下である場合を「可」、1450N超である場合を「良好」、とした。
被膜損傷度は、素材1を工場ラインの鋼板支持ロールに押し付けて擦りあわせ、そのときに第2絶縁被膜3Bが受ける損傷度合いを目視で確認した。そして、損傷度の度合いに応じて、「不可」「可」、「良好」、「優良」と判断した。ここで、被膜損傷度は、耐スリット性及び擦傷防止能力を判断する評価基準として用いられる。
接着力及び裏面の被膜損傷度の結果を、下表2に示す。
Figure 2022000886
発明例であるNo.1〜12では、接着力及び被膜損傷度の双方において、良好との評価が得られた。
一方、比較例であるNo.13では、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの双方において硬化剤を含有させなかったので、被膜損傷度が高く不可となった。
また、比較例であるNo.14では、第1絶縁被膜3A及び第2絶縁被膜3Bの双方において硬化剤を含有させた。その結果、第1絶縁被膜3Aが硬くなり、必要とする接着力を確保できず不可となった。
比較例であるNo.15では、第1絶縁被膜3Aに硬化剤を含有させ、第2絶縁被膜3Bには硬化剤を含有させなかった。その結果、第2絶縁被膜3Bが柔らかいために被膜損傷度が高くなり不可となった。
以上、本発明の一実施形態及び実施例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態及び実施例のみに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、ステータコア21の形状は、上記実施形態で示した形態のみに限定されるものではない。具体的には、ステータコア21の外径および内径の寸法、積厚、スロット数、ティース部23の周方向と径方向の寸法比率、ティース部23とコアバック部22との径方向の寸法比率等は、所望の回転電機の特性に応じて任意に設計可能である。
上記実施形態におけるロータ30では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成しているが、本発明はこの形態のみに限られない。例えば、1つの永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよく、3つ以上の永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよい。
上記実施形態では、回転電機10として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれのみに限られない。例えば、回転電機10がリラクタンス型電動機や電磁石界磁型電動機(巻線界磁型電動機)であってもよい。
上記実施形態では、交流電動機として、同期電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が誘導電動機であってもよい。
上記実施形態では、回転電機10として、交流電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が直流電動機であってもよい。
上記実施形態では、回転電機10として、電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が発電機であってもよい。
1 素材(電磁鋼板)
2 母材鋼板
3A 第1絶縁被膜
3B 第2絶縁被膜
21 ステータコア(積層コア)
40 電磁鋼板

Claims (3)

  1. 母材鋼板と、
    前記母材鋼板の第1面に形成されて接着能を有する第1絶縁被膜と、
    前記母材鋼板の前記第1面の裏面である第2面に形成されて接着能を有する第2絶縁被膜と、
    を備え、
    前記第1絶縁被膜が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相からなり、
    前記第2絶縁被膜が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタンプレポリマーのうちの少なくとも一つを含む有機樹脂相及び硬化剤を含有する
    ことを特徴とする電磁鋼板。
  2. 前記第2絶縁被膜における前記有機樹脂相に対する前記硬化剤の当量比が0.8〜1.5である
    ことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の電磁鋼板を2枚以上積層してなることを特徴とする積層コア。
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