本明細書で説明される実施形態は、異なる種類の物体を判別するためのデバイス、システム及び方法に関する。物体は、フローストリームなどの液体カラム内の物体の方に向けられた励起光に応答して出力光を放射する。いくつかの実施態様では、細胞の種類は、物体から放射された出力光の強度に基づいて区別される。本明細書で論じられる特定の実施形態は、X染色体精子細胞とY染色体精子細胞とを区別することを対象とする。本開示の方式は、より一般的には、ある物体の種類から放射された出力光が、別の物体の種類から放射された光と比較したときに少なくとも1つの特性において判別可能な差を有する限り、異なる種類の任意の物体を区別することに適用可能であることが認識されよう。提供されたいくつかの例では、液体カラムは、光の屈折が発生し得る曲線状の境界または界面を有するフローストリームである。例えば、液体カラムの曲線状の境界は、一般的に、円形の断面であってもよい。液体カラムは、堅固な壁によって境界付けすることができるか、または空気中に噴射されてもよい。物体は、中心コアを少なくとも部分的に取り囲むシース液によって成形された中心コアを含み得る液体カラムに沿って移動し得る。物体から放射された光は、液体カラムと空気との間の界面などの、物体と他の材料との間の少なくとも1つの光学屈折境界に突き当たる。
液体−空気界面における屈折に少なくとも部分的に起因して、カラム内の物体から放射された光の、液体カラムの外部の光収集効率は、従来技術のシステムの場合は物体の位置に依存する。位置によって変化する光収集効率は、物体から放射された光を正確に定量化する必要があり、そのような精度が物体のランダムな(直接観察できない)位置変動によって制限される用途においては好ましくない。本明細書で開示される方式は、ジェット・イン・エアー・フローサイトメーターなどの、そのような変動によって制限され得るシステムの精度を高める。以下でより詳細に論じられるように、液体カラム内の物体から収集された光強度の位置変化性は、光学システムの1つ以上の面(例えば、開口絞り、視野絞り)にて光線を選択的にマスキングして位置に対する強度の依存性を低減することによって対処することができる。
本明細書で概説される方式は、フローサイトメトリーに対して特に適用可能である。しかしながら、この方式は、界面によって放射光線経路の変化が検出器に対する物体の位置に依存して生じる、界面の反対側から光を放射する物体から界面の一方の側で光が収集される任意のシステムに適用することができる。本明細書の方式は、液体カラム内の位置変化を補償するように、物体から放射された出力光の光収集効率を調整する。
図1Aにおいて模式的に示された「ジェット・イン・エアー」フローサイトメーターシステム100は、本開示の概念を論じるために使用可能である、1つの種類のフローサイトメーターである。「ジェット・イン・エアー」フローサイトメーターシステム100は、液体を高圧でチャンバ110に送り込んで、液体カラムを含むフローストリーム150を高速で、例えば、約20m/sでチャンバ110の出口ノズル160から噴出させる。出口ノズル160から放出された液体カラム150は、ほぼ円形の断面とすることができ、いくつかの実施態様では約10μm〜約100μmの直径を有し得る。フローストリーム150は、シースストリーム152内のコアストリーム151から構成される。ここで図1Aの矢印は、コアストリーム及びシースストリーム151、152のフローの方向を示す。
チャンバ110内で、サンプル出力ノズル111は、複数の種類であり得る物体171、172を含むコアストリーム151を排出する。コアストリーム151は、シース液ノズル(図示せず)からチャンバ110内に排出されるシース液のストリーム152によって境界付けられ、成形される。シースストリーム152は、コアストリーム151を少なくとも部分的に取り囲み、シースストリーム152とコアストリーム151とは実質的に混合しない。チャンバ110の傾斜した、または角度付きの壁115により、フローストリーム150がチャンバ110の出口ノズル160から排出される前後でシースストリーム152が狭くなる、及び/またはフローストリーム150内のコアストリーム151の断面サイズが維持される。シースストリーム152の動きは、液体カラム150がチャンバ110から排出されるときにコアストリーム151内の物体171、172がフローストリーム150の中心に向かって移動するように制約される。フローストリーム150は、物体171、172を、例えば、一列でフローストリーム150の測定領域175に送り出す。
物体がフローストリーム150の測定領域175を通過するとき、励起光源180からの光は、物体171、172に励起光を提供する。励起光源180は、広波長帯域または狭波長帯域の光を提供することができる。例えば、励起光源180はレーザーであってもよい。いくつかの構成では、励起光は、光学要素181によって調整されてもよい。例えば、励起光は、レンズ181によって測定領域175に集束されてもよい。測定領域175内の物体は、励起光源180に応答して、光、例えば、散乱光または蛍光灯を放射する。
第1の種類の物体171は、第2の種類の物体172から放射された光と比較して、少なくとも1つの特性において異なる光を放射する。例えば、いくつかのシナリオでは、第1の種類の物体171は、第2の種類の物体172から放射された光よりも高い強度を有する光を放射する。
光学収集配置190は、液体−空気界面においてフローストリーム150の光学屈折境界を横切る測定領域175内の物体から放射された出力光161を収集するように配置される。光学配置190は、以下でより詳細に論じられるように、出力光161を調整して、測定領域175内の物体172aから放射された光の位置依存性を補償する調整済みの出力光162を提供するように構成される。検出器185は、調整済みの出力光162を受光し、それに応答して、電気信号を生成する。いくつかのシナリオでは、電気信号の振幅が物体の種類ごとに異なってもよい。電気信号は、異なる種類の物体171、172を区別するために判別回路187によって使用される。例えば、判別回路187は、電気信号の振幅を閾値と比較して、第1の種類の物体171と第2の種類の物体172とを判別するように構成されてもよい。
図1Bは、測定領域175内のフローストリーム150のxy面断面を示す。測定領域175のxy断面において、コアストリーム151の形は楕円形であり、コアストリーム151の液体は、緩衝液中に懸濁された少なくとも1つの物体172aを含む。シースストリーム152は、コアストリーム151を実質的に取り囲む。本開示におけるこの議論に使用された特定の例では、物体171、172は精子細胞であり、システム100は、X染色体精子とY染色体精子とを判別するように実装される。
励起源180によって生成された集束レーザービームは、測定領域175内の精子細胞172aを照射する。細胞171、172は蛍光染料によって染色されており、励起光により、測定領域内の細胞172aは蛍光出力光を放射する。楕円形コア151の目的は、図1Bに示すように、精子細胞の平坦な側面が左右を向くように精子細胞172aを配向させることである。この配向では、精子細胞172aの平坦な側面は、それぞれ、レーザー180及び光学収集配置190に面している。
コアストリーム151が楕円形であるとき、精子細胞172aは、コアストリーム151内でx軸に沿った任意の数の位置をとることができる。図1Bは、楕円形コア151内の精子細胞172aの3つの可能な位置を示す。図1Bに示す配向では、コアストリーム151内の精子細胞172aの第1の可能な位置は、楕円形コア151のほぼ中心(光学収集配置190の光学軸199上)にあり、第2の可能な位置は、コアストリーム151の上部(光学軸199の上)にあり、第3の可能な位置は、コアストリーム151の下部(光学軸199の下)にある。精子細胞172aから放射された出力光線の位置に依存した屈折は、コアストリーム151内の異なる位置における液体−空気界面153において発生する。
精子細胞172aが第1の位置に位置し、フローストリーム150が図1Bに示したように円形断面を有するとき、精子細胞172aから放射された面内光線は、ほぼ通常、液体−空気界面153に入射する。コアの中心から離れた精子細胞172aの箇所から放射された光線、または図の面から外れて放射された光線は、通常、界面153に正確に入射しない。これらの光線は、この単純化された議論では考慮されないが、当業者は、それらを含むように議論を一般化することが可能である方法を理解することができる。したがって、光の屈折は、液体−空気界面153において発生しない。
図2Aの図は、図1Bに示した楕円形コア151内の第1の位置に精子細胞172aがあるときに、精子細胞172aから放射され、界面153を横切る出力光298の光屈折がないことを示す。それに対応して、図2Aのフローストリーム150を出る光線298の面内密度は、光線角度に関して均一である。光線の角度密度が均一であることは、光線角度の関数として放射輝度が均一であることに対応する。
対照的に、精子細胞172aが、光学軸199から外れ、楕円形コア151の上部または下部のより近くにある、例えば、図1Bに示した楕円形コア151の第2及び第3の位置にあるとき、精子細胞172aから放射された出力光線の少なくとも一部は、斜めの角度で液体−空気界面153に突き当たる。これらの出力光線は、上記で論じられた通常の入射シナリオとは対照的に、液体−空気界面153において屈折する。最も斜めの光線は、最も激しく屈折する。光線の屈折により、液体−空気界面153を横切ってフローストリーム150を出る蛍光の放射輝度分布が不均一になり、x軸に沿った細胞172aの位置によって変化する。すなわち、この屈折により、フローストリーム150の外側で精子細胞172aから放射された出力光の放射輝度分布が変わる。
例えば、細胞172aが、光学軸199から外れて位置し、例えば、図1Bに示した第2または第3の位置にあるとき、光線の密度及びしたがって界面153の空気側の放射輝度は、光学軸199に関して正または負の光線角度で、それぞれ、光学軸199に平行な角度または負もしくは正の光線角度における界面153の空気側の放射輝度とそれぞれ比較するとより高い。正及び負は、図3の光線角度γの符号を指す。図2Bは、細胞172aが楕円形コア151の第2の位置にあるときに細胞172aから放射され、液体−空気界面153を通ってフローストリーム150を出る光線299を示す図である。このシナリオでは、正の光線角度における光線の密度、すなわち放射輝度は、光学軸199に平行な、または負の光線角度における光線の密度よりも大きい。所定の開口数(NA)を有する光学システムの場合、同一種類の細胞からシステムによって収集される光の量(例えば、収集効率)は、細胞が第1の位置にあるか、それとも第2の位置にあるかに応じて変化し得る。システム収集効率の位置依存性により、細胞種類の決定において誤りが起きる。
図3を参照すると、光線角度γ及び精子位置
の関数としての光線密度の解析式が、スネルの法則を使用して決定される。ここでγは、光学軸に関する、物体から放射された光線の液体−空気界面における屈折後の角度である。この解析では、フローストリームの2次元断面内の、またはこの2次元断面に接する光線のみが考慮される。
我々は、角度γに関して光線の密度を解きたい。これを使用して、各精子位置
について光学収集システムの入射瞳における光線の密度を決定することができる。これは、次のように記述することができる。
我々の目的では、精子細胞が全ての方向において均一に光を放射すると仮定することができる。したがって、角度θに関する放射光線の密度は次のとおりである。
すなわち、
まで均一に分布する。幾何学的解析により、
ここで、角度
及び距離
は図3に示されている。フローストリームは、屈折率
を有するため、スネルの法則によって角度間の別の関係が得られる。
界面外部の光線の密度
は、以下の式によって界面内部の光線の密度
と関係しており、
は、両偏光にわたる、界面を通る透過率の平均を表す。
透過率は、以下の式により、s偏光とp偏光のフレネル反射係数
と関係している。
上記及び以下の追加の関係と共に式(7)を使用すると、
ここで、光学収集配置のNAは、最大光線角度
の正弦によって与えられるため、NAに関してこの角度を解くことができる。
最後に、精子位置
の関数としての相対的な収集光強度は、式(15)を
まで積分し、その積分値によって
で正規化することによって与えられる。
式(15)の光線密度分布の式を使用すると、異なる精子位置についての光線密度(放射輝度)の角度依存性を図4Aのようにプロットすることができる。図4Aにおいて、線のそれぞれは、所与の精子位置
についての角度γの関数としての光線の密度を表す。ここで、角度γはラジアンである。このプロットは、光線密度(放射輝度)が角度の関数として均一な場所である、
の周りで対称な範囲にある一連の位置に対応する(図4Aのグラフ404に対応)。
が正のとき(例えば、図1Bの第2の位置、グラフ402に対応)、相対放射輝度は、正の光線角度γで高く、負の光線角度γで低く、
が負のとき(例えば、図1Bの第3の位置、グラフ403に対応)は逆になる。
収集光学系(図1A及び1Bの光学収集配置190)の開口数が大きく、例えば、1に近い場合、楕円形コア内の物体から放射された光の位置に関する収集光強度の変化は比較的小さい。これは、物体から放射され、右に向けられる実質的に全ての光は、正確な光線方向に関係なく、収集光学系によって収集されることになり、放射光の総量は物体の位置に対して不変である(均一な励起として)ためである。対照的に、小さい開口数では、物体位置が変わると放射輝度分布が影響を受けるため、物体位置に関する収集強度の変化が比較的大きくなり、小さい開口数は、このように変わっている放射輝度分布の一部のみが収集されることを意味する。実際のシステムは、例えば、0.5未満または0.3未満といった、1よりも大幅に小さいNAを有し得る。図4Bに提供されたグラフの系列は、物体位置
の関数としての、異なるNAを有する収集光学系を通って物体から収集された光の相対強度を示す。図4Aは、図4Bの異なる開口数によって取得された角度γの範囲を示す。
図4Bのグラフの系列において、グラフ412は、0.2の開口数(NA)を有する収集光学系(例えば、図1A及び1Bに示した光学収集配置190)のx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ414は、0.4のNAを有する収集光学系のx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ416は、0.6のNAを有する収集光学系のx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ418は、0.8のNAを有する収集光学系のx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ419は、0.9のNAを有する収集光学系のx軸に沿った位置に関する相対強度を示す。図4A及び4Bから、より小さいNAを有する収集光学系では、より大きいNAを有する収集光学系と比較したとき、物体位置に関する収集光強度により大きい変化が生じる。加えて、NAがより大きい収集光学系は、より小さいNAを有する収集光学系よりも広い範囲の屈折角度を有する光線を収集するため、より高い全体収集効率を有する。
本明細書に開示される様々な実施形態は、フローストリーム内の物体位置に関する収集光強度の変化を低減する収集デバイス(例えば、図1A及び1Bに示した配置190)を対象とする。本明細書で論じられるいくつかの実施形態は、光学軸に垂直な軸に沿ってフローストリームの中心から離れたフローストリームの半径の60%未満である物体の位置の偏差に対して約3%未満もしくは約2%未満の、または約1%未満もの測定強度の変化を有する調整済みの出力光を提供することができる。多くの用途は、様々な原因に起因し得る強度測定誤差に影響されやすい。フローストリーム内の物体の位置を正確に制御することによって強度の変動を低減することは困難であるため、その代わりに、光学収集配置を入念に設計することによって物体位置に関する収集光強度の変化を低減することが有用である。X/Y精子ソーティングなどの用途の場合、測定後の蛍光強度の集団間の差に基づいて2つ以上の細胞集団が分離されることが多い。ランダムな位置変動により、収集光強度の変動の大きさが2つの集団の蛍光強度の名目上の差よりも大きくなる場合、高収率と高純度とを両立しつつそれらを区別することはできない。X精子細胞とY精子細胞の蛍光強度の差は、典型的には、わずか数パーセントである(例えば、ウシ精子の場合には約4%)。現在の精子ソーターシステムは、理論的にはコアストリームのフロー速度を増加させることによって高スループットを実現することができるが、この影響でコアストリームの幅が増加する。その結果、フローストリームのコア内の精子の位置の不確実性が大きくなる。この位置の不確実性と収集蛍光強度の結果として生じる変動とにより、現在の精子ソーターシステムの最大スループットは、X精子とY精子の小さい蛍光強度の差が目立つ程度にまで制限される。
精子ソーター用途では、精子細胞は、Hoechst33342(Ho33342)の細胞透過性色素によって染色され得る。この色素は、細胞核に入り、生細胞の精子頭部内の二本鎖DNAの副溝中のA−T塩基対に選択的に結合する。典型的には、UVレーザーを使用して、染色された精子細胞を励起する。光学的に(350nmで、またはその付近で)励起されると、Ho33342によって染色されたY染色体を持つ(男性)精子とX染色体を持つ(女性)精子とを、各細胞からの全蛍光の小さい差を測定することによって分離することができる。全蛍光の差は、染色体含有量に比例する精子細胞内の染色の量に比例する。この差は哺乳類の種によって異なるが、家畜では4%のオーダーである。
強度−位置補償のための1つの方式は、図4A及び図4Bにおいて明らかである。図4Aの括弧は、所与のNAを有する蛍光収集光学系に対応する統合された領域を強調している。図4AのNAについての物体位置に関する収集強度の変化のグラフが図4Bに提供されている。図4Bでは、所与のNAについて、収集光の強度を各精子位置の関数としてプロットすることができるように、蛍光収集領域にわたる積分が実行される。図4Bから、収集光学系のNAを増加させることが、収集光学系を介して集められた蛍光強度に対する物体位置の影響を減少させるのに役立つことは明らかである。
本明細書で説明される実施形態は、上記のように物体位置に関する収集光強度の変化を低減する収集光学系(例えば、図1A及び1Bの光学収集配置190)に関する。いくつかの実施形態によれば、収集光学系は、「角度空間」内の光線をマスキングすることによって動作する、すなわち、収集光学系は、所望の強度対位置プロファイルを実現するために、様々な角度γからの光線を選択的に収集し、減衰させ、及び/または遮断する。実際には、「角度空間」マスキング機能は、光学システムの瞳(例えば、入射瞳、射出瞳、または開口絞り)において適用することができる。ここで、瞳面との光線交差の位置は角度γに対応する。いくつかの実施形態では、収集光学配置は、より低い角度の光線と比べてより高い角度の(光学軸から離れる方向を指す)光線を優先的に収集することにより、所望の、例えば、より平坦な強度対位置プロファイルを実現する。
図5A及び5Bは、所与のNAにおいて低角度の屈折光線を除外することによって強度対位置曲線を平坦化する方法を示す。低角度の光線を除外すると強度対位置プロファイルにおいて最も大きい変化を生じさせる光線が除外される一方、大きい正の角度における放射輝度の角度変化によって大きい負の角度における対応する変化がキャンセルされる傾向がある。図5Aは、x軸に沿った物体の異なる位置についての相対放射輝度対光線角度γのプロットを示す。ここで、角度γはラジアンである。図5Aにおいて、各グラフは、図3に示すように、フローストリームのコア内の物体位置xに対応する。図5Aの括弧は、0.3rad未満の角度の大きさを有する光線が除外されるとき(図5Aの下の括弧)、及び0.4rad未満の角度の大きさを有する光線が除外されるとき(図5Aの上の括弧)の、各位置xについての収集光学系によって除外される光線の部分を示す。
図5Bは、除外される角度がないとき(グラフ500)、−0.3radと+0.3radの間の角度を有する光線が除外されるとき(グラフ503)、及び−0.4radと+0.4radの間の角度を有する光線が除外されるとき(グラフ504)の相対収集光強度対x軸に沿った物体の位置を示す。グラフ5Bは、より低い角度の光線が除外されるとき、相対強度対位置のグラフが、位置に関してより小さい強度変化を呈することを示す。
位置変化の存在下で液体カラム内を移動している物体を識別するための方式が、図6のフロー図に示されている。このプロセスは、調整済みの出力光の強度が未調整の出力光の強度よりも均一になるようにフローストリームの断面を通過する物体から放射された出力光を調整すること620を含む。いくつかの実施形態では、調整済みの出力光は、物体の位置に関係なく実質的に均一である。調整済みの出力光が検出され630、検出された調整済みの出力光に応答して電気信号が生成される640。プロセッサまたは他の回路は、異なる種類の物体を判別する650ためにその電気信号を使用してもよい。例えば、回路は、電気信号の振幅(検出された光の強度に対応する)を閾値と比較して、第1の種類の物体と第2の種類の物体とを判別してもよい。任意選択で、いくつかの実施態様では、励起光は、励起源によって生成され610、フローストリームの断面に向けられてもよい。その場合、物体は、励起光に応答して出力光を放射する。
図7は、いくつかの実施形態による、光学装置710を含む光学システム700の光線追跡シミュレーションの上面図である。装置710は、液体カラムの断面の面内で収集光学系のNAを効果的に拡大して、図5A及び図5Bの議論で述べたように、位置対強度プロファイルに変化を導入する傾向があるより低い角度の光線と比べて位置対強度の点でよりバランスのとれたより高い角度の光線を優先的に収集する。光学収集配置710は、調整済みの出力光の強度が物体から放射された出力光よりも均一になるように、フローストリームの断面において物体から放射された光を調整する。調整済みの出力光は、断面内の物体の位置に関係なく実質的に均一とすることができる。この特定の実施形態では、調整済みの出力光の強度は、収集配置の光学軸に垂直な軸に沿った物体の位置に関係なく実質的に均一である。他の実施形態では、調整済みの出力光の強度は、収集配置の光学軸などの別の軸に沿った物体の位置とは無関係に実質的に均一になり得る。
光収集配置710は、光学軸799に関してより低い角度で物体から放射された光線に比べて、光学配置の光学軸799に関してより高い角度で物体から放射された光線を優先的に収集する。いくつかの実施態様では、光学収集配置710は分割対物レンズである。分割対物レンズ710の第1の部分711は、物体(図7に示されていない物体)から放射されたより高い角度の光の第1の部分751を収集する。分割対物レンズ710の第2の部分712は、物体から放射されたより高い角度の光の第2の部分752を収集する。図7に示すように、いくつかの実施形態では、より低い角度の光線の収集をさらに阻止するマスクが、より低い角度の光線が遮断される任意の場所に、例えば、光がコリメートされる開口絞りまたは瞳面の付近に配されてもよい。例えば、マスク786は、図7に示すように、2つのレンズ711、712の間に配されてもよい。
図7に示すように、システム700は、収集された光の部分をシステム700の光学軸799に沿って、かつ検出器785の方に向け直すために、ミラー721、722、723、724を使用した折り返し光学システムとして実装されてもよい。ミラー721、722は、光の第1の部分751を光学軸の方に、かつこの光学軸に沿って向け直し、ミラー723、724は、光の第2の部分752を光学軸799の方に、かつこの光学軸に沿って向け直す。図7に示すように、システム700は、任意選択で、励起光を実質的に減衰させるように構成された光学バンドパスまたはロングパスフィルタなどのフィルタ730を含んでもよい。システム700は、光の第1及び第2の部分751、752を検出器785の方に集束させるように構成されたレンズ740を含むことができる。
図8は、物体位置に関する強度の変化を低減するように構成された分割対物レンズの写真である。分割対物設計により、蛍光収集光学系を、フローストリームを生成するノズルによって引き起こされる空間的障害のため、他の可能な場合よりもフローストリームのより近くに置くことができることに注意されるべきである。分割対物と同一の有効NAを有する単一のレンズは大きすぎるため、フローストリームを生成するノズルの直下にその焦点を置くことができない。フローストリーム内の物体の光学的検出は、ストリームが最も安定した場所である、フローストリームがノズルを出た直後において最も適切なように実行されるため、ノズルに干渉しない高NA光学系を有することが重要である。
図9Aは、図7のモデルに基づく分割対物レンズのシミュレーションされた性能対、空間マスク1010を使用しない図10に示す比較配置のシミュレーションされた性能を示す。グラフ901は、上記で論じられた分割対物レンズを含むシステムの場合の物体位置に関する強度を提供する。グラフ902は、比較配置の強度対位置であり、比較のために図9Aに提供されている。収集光強度に対する位置変化の影響が減少していることに加えて、分割対物配置の全体収集効率がより高いことに注意されたい。
この比較をより明確に示すために、図9Bでは、各グラフ901a、902aが100%に対して正規化されている。グラフ901aは、分割対物レンズ配置の場合の中心位置に対する収集効率を提供する。グラフ902aは、単一の対物レンズのみを有する比較システムの場合の中心位置に対する収集効率を示す。分割対物レンズでは、20μmの物体位置における中心収集効率からの偏差は1%未満となり、他方、比較配置では、同一の物体位置における中心収集効率からの偏差は10%超となる。
他の方式を使用して位置対強度プロファイルの変化を減少させることも可能であり、それらの全ては、本開示の新規な態様とみなされる。例えば、分割対物レンズによって例示されるように、(例えば、光学システムの瞳に近い)角度空間において光線を選択する収集配置ではなく、(例えば、光学システムの像面に近い)像または位置空間において光線を選択することが可能である。位置空間において光線を選択する光学収集配置の一例は、光学システムの像面付近の空間マスクである。このようなマスクをより簡単に位置合わせし、位置合わせに対してより安定させるためには、光学システムの倍率を上げて、より大きいマスク形状サイズを使用できるようにすることが役立つ。
図10は、フローストリーム断面の中心付近の物体から放射された光線を減衰させる一方、フローストリーム断面の上部及び下部にある物体から放射された光線を減衰させない光学収集配置1010、例えば空間マスクを含む光学システム1000の光線追跡シミュレーションの上面図である。本明細書で使用される「減衰させる」という用語は、光線を部分的に遮断するか、または完全に遮断することを包含する。例えば、減衰させた光線は、その元の強度と比較したとき、25%もしくは50%もしくは75%の、または100%もの強度の低減を有し得る。ここで、25%、50%及び75%の減衰は、部分的に遮断された光線に対応し、100%の減衰は、完全に遮断された光線に対応する。図10に示したシステム1000は、物体(図10には示されていない物体)から放射された光をコリメートする単一の対物レンズ1070を含む。システム1000は、任意選択で、検出器1085に到達しないように励起光を遮断するように構成されたバンドパスフィルタまたはロングパスフィルタなどのフィルタ1030を含む。レンズ1040を使用して、収集光を検出器1085の高感度領域1086の方に集束させることができる。空間マスク1010は、フローストリーム断面1050の中心から放射された光線を検出器1085に到達しないように減衰させるか、または遮断する一方、フローストリーム断面1050の上部及び下部領域1051、1052から放射された光線を減衰させることも遮断することもせずに検出器1085に到達させるようにする。図10では、フローストリーム断面1050の上部領域1051は、図10の光学軸1099の上にあるフローストリーム断面の部分を指す。フローストリーム断面1050の下部領域1052は、図10の光学軸1099の下にある。マスク1010は、放射光に対して不透明であってもよく、または半透明であってもよい。いくつかの実施形態では、マスク1010の光学的光学的透明度は、例えば、フローストリーム断面の中心の像がフローストリーム断面の上部及び/または下部の像よりも減衰するように、位置によって変化し得る。
物体位置による収集強度の変化を軽減する単純な空間マスクは、光学検出器1085の前かつフローストリームの像の付近にある細いワイヤ(例えば、約100ミクロン〜300ミクロンの範囲の直径、例えば、約200ミクロンの直径を有する)であり、ワイヤ軸は、フローストリームに対して平行に配向され、光学軸1099に関して名目上中心に置かれる。ワイヤの効果は、フローストリームの像(本実施形態では拡大された像)が現れる場所である像面1087にワイヤを出し入れすることによって変化させることができる。
物体位置による収集強度の変化を低減する空間マスクを図11に示す。空間マスクは、長尺形状部1110を含む。この形状部は、円形の断面積を有する細いワイヤ、長方形の断面積を有するバー、または光学検出器の有効領域1185を少なくとも部分的に横切って、かつフローストリームの像付近に配された他のマスク形状部として実装され得る。長尺マスク形状部1110は、押出金属ワイヤ、エッチング済みの金属形状部、ヒトもしくは動物の毛、スライドガラス上に配されたトレース、または透明媒体上に印刷されたインク線を含む、多くの手法で実装することができる。
一般に、マスク形状部の長さLは、その幅Wよりも非常に大きい。マスク形状部1110は、マスク形状部1110の長さがフローストリームに対して平行に伸び、マスク形状部1110がシステムの光学軸に関して名目上中心に置かれるように配向され得る(図10を参照)。いくつかの実施形態では、マスク形状部1110は、約100ミクロン〜約300ミクロン、例えば、約200ミクロンの幅を有し得る。
図12に示すように、長尺マスク形状部1210は、開口1222を有するプレート1220と併せて使用することができる。その場合、長尺マスク形状部1210は、図12に示すように少なくとも部分的に開口1222を横切って配される。プレート1220は、わずかに異なる強度を有する2つの種類の物体間の最適な強度差を実現するためのシステム光学系の位置合わせにとって特に有用となることができる。
いくつかの実施形態では、プレートは、被検査物体から放射された光を検出器の有効領域1230に到達しないように部分的に遮断する(光の25%超〜75%未満を遮断する)か、実質的に遮断する(光の75%超を遮断する)か、または完全に遮断する(光の100%を遮断する)材料によって作られてもよい。プレート1220の開口1222は、物体から放射された光の実質的に全てを検出器の有効領域1230に伝達する。プレート1220及び開口1222によってシステム光学系の位置合わせが容易になり、作業者は、第1の種類の物体から放射されたより低い光強度と第2の種類の物体から放射されたわずかにより高い光強度との間で最適なコントラストが実現されるようにマスク形状部1210を位置合わせすることが可能になる。
図13は、プレートの光学的透明度がその長さ及び幅にわたって変化する別の実施形態を示す。この例では、プレート1320は、開口1322に近いほどより光学的に透明であり、開口から遠いほど透過しにくい。ただし、反対のシナリオも可能であり、その場合、プレートは、開口付近ではより透過しにくく、開口から離れるほど透過しやすくなる。
図14は、ステップ状の光学的透明度の勾配を有するプレート1420の別のバージョンを示す。プレート1420は、領域1421a、1421b、1421c、1421dにおいて異なるステップで開口1422に近づくほど光学的により透過しやすくなる。図13のプレート1320を図14のプレート1420と比較すると、プレート1320の光学的透明度は、より低い光学的透明度を有するプレート1320の外端部からプレート1320の中心の開口1322に近づくほどより高い光学的透明度に移行する段階的移行をなす。
いくつかの実施形態では、開口プレートと開口を横切って延びる長尺マスク形状部とは、図15に示すように単一の構造として形成される。図15は、開口1522を二等分する長尺形状部1510を含むプレート1520を示す。いくつかの実施形態では、単一の開口プレート1520は、図13及び図14を参照して先に論じられ、示されたように光学的透明度の勾配を有することができる。図15などの単一の開口プレートは、例えば、金属プレートをフォトエッチングすることによって形成することができる。
長尺マスク形状部1510の長手方向端部1510a、1510bは、それらを図15に示したように平行である必要はない。いくつかの実施形態では、位置合わせプロセスは、図16及び図17に示すように非平行の長手方向端部1610a、1610b、1710a、1710bを有する長尺マスク形状部1610、1710を有することによって強化されてもよい。いくつかの実施形態では、長尺マスク形状部1810の長手方向端部1810a、1810bは、図18に示すように湾曲させることができる。
図19は、いくつかの実施形態による、開口1922を有するプレート1920を含む光学配置を示す写真である。細いワイヤを含む長尺マスク形状部1910が、光電子倍増管検出器への入口の前にある開口1922を横切って位置付けられる。ワイヤは、先に論じられたように、フローストリーム断面の中心の物体から放射された光を優先的に減衰させることにより、フローストリーム内の物体から放射された出力光を調整する。光の優先的な減衰は、未調整の出力光と比較したとき、より均一な光強度対物体位置プロファイルを提供する。
図20は、1つの単一の構造として形成されたプレート2020と開口2022を横切って延びる長尺マスク形状部2010とを含む、いくつかの実施形態による、光学配置を示す写真である。例えば、プレート及び長尺マスク形状部2010は、(分割された)開口2022をフォトエッチングすることによって形成されてもよい。
各種の実施形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、限定的ではない。開示された実施形態は、網羅的であることも意図せず、可能な実施態様を開示された実施形態に限定することも意図しない。上の教示に照らして多くの修正及び変形が可能である。