JP2021520499A - 分析物の検出および分析のための方法および組成物 - Google Patents

分析物の検出および分析のための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

流体溶液において分析物−リガンドの相互作用および分析物濃度を評価するためのナノポアに基づいた方法、組成物、およびシステムが提供される。組成物は、ナノポアと会合して、ナノポアアセンブリを形成する分析物検出複合体を含み、前記分析物検出複合体が分析物リガンドを含む。第1の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時、分析物リガンドが溶液中の分析物へ提示される。第1の電圧と極性が反対である第2の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時、分析物が分析物と結合する。分析物−リガンド結合ペアの総数を対照結合カウント数と比較することにより、分析物の濃度が決定され得る。他の例において、第2の電圧をさらに増加させることが、分析物−リガンドペアの解離を生じ得、そのことから、解離電圧、および、それに従って、解離定数が決定され得る。【選択図】図1

Description

本開示は、一般的に、標的分析物を検出するための方法、組成物、およびシステム、より具体的には、バイオチップを用いて、分析物の濃度を決定するため、および分析物−リガンドの相互作用を評価するための方法、組成物、およびシステムに関する。
流体溶液において分析物−リガンドの相互作用および分析物濃度を評価するためのナノポアに基づいた方法、組成物、およびシステムが提供される。組成物は、ナノポアと会合して、ナノポアアセンブリを形成する分析物検出複合体を含み、前記分析物検出複合体が分析物リガンドを含む。第1の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時、分析物リガンドが溶液中の分析物へ提示される。第1の電圧と極性が反対である第2の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時、分析物が分析物と結合する。分析物−リガンド結合ペアの総数を対照結合カウント数と比較することにより、分析物の濃度が決定され得る。他の例において、第2の電圧をさらに増加させることが、分析物−リガンドペアの解離を生じ得、そのことから、解離電圧、および、それに従って、解離定数が決定され得る。
小分子、タンパク質、抗原、免疫グロブリン、および核酸などの生物活性成分は、多数の生物学的過程および機能に関与している。したがって、そのような成分のレベルにおけるいかなる撹乱も疾患をもたらし、または疾患過程を加速し得る。このため、患者診断および処置に用いられる生物活性成分を迅速に検出および同定するための信頼のおける方法を開発するのに多くの努力が費やされてきた。例えば、血液または尿試料においてタンパク質または小分子を検出することは、患者の代謝状態を評価するために用いることができる。同様に、血液または尿試料における抗原の検出は、患者が曝されている病原体を同定するために用いることができ、それに従って、適切な処置を容易にする。溶液中の分析物の濃度を決定できることは、さらに有益である。例えば、血液または尿成分の濃度を決定することは、その成分が参照値と比較されることを可能にすることができ、それに従って、患者の健康状態のさらなる評価を容易にする。
それにも関わらず、多数の検出および同定方法が利用可能であるが、多くは、高額な費用がかかり、かつだいぶ時間がかかり得る。例えば、多くの診断検査は、完了するのに数日かかり、かつかなりの実験資源を必要とし得る。そして、場合によっては、心筋梗塞に関連したマーカーの分析においてなどの診断遅延は、患者ケアにマイナスの影響を与え得る。さらに、生物活性成分を同定することを目的とする多くの診断検査の複雑さは、誤差に結びつき、したがって、精度を低下させる。そして、多くの検出および同定方法は、一度に1個または2、3個の生物活性成分を分析するのみであり得、かつそれらは、検査試料の所定の成分の濃度を決定することができない。
検査試料において生物活性成分を同定することに加えて、小分子−タンパク質の結合ペアまたはタンパク質−タンパク質の結合ペアなどの新規の結合ペアについて生物学的試料をスクリーニングすることも望ましい。例えば、特定のタンパク質が小分子を結合することを決定することは、その小分子の新しい治療的薬物または診断試薬としての開発へと導き得る。同様に、新しいタンパク質−タンパク質の相互作用の同定は、新しい薬物または診断試薬の開発へと導き得る。しかし、多くの伝統的方法は異なる生物活性成分間の相互作用を調べるのに利用可能であるが、そのような方法は、一度に1個、または2、3個の候補結合ペアを調べるように設計されている場合が多い。そのような方法はまた、費用がかかり、かつ時間がかかり得る。
したがって、必要とされることは、生物活性成分を、特に効率的かつ費用効果の高い様式で、迅速に検出および同定することができるさらなる方法、組成物、およびシステムである。複数の生物活性成分を同時にアッセイすることができ、それに従って、費用を低減する、方法、組成物、およびシステムもまた必要とされる。さらに、流体溶液において生物活性成分の濃度を決定するための方法、組成物、およびシステムが必要とされる。生物活性成分間の結合相互作用を評価するための迅速かつ費用効果の高い方法もまた必要とされ、それにより、新しい薬物および治療的アプローチの開発をさらに促進する。
ある特定の態様例において、分析物リガンド、貫通要素、シグナル要素、およびアンカリングタグを含む分析物検出複合体が提供される。分析物リガンドは、分析物検出複合体の近位端に位置し、一方、シグナル要素は、貫通要素内に会合している。分析物検出複合体はまた、貫通要素の遠位端にアンカリングタグを含み得る。ある特定の態様例において、分析物検出複合体はまた、第2のシグナル伝達要素を含む。
ある特定の態様例において、分析物検出複合体を含むナノポアアセンブリが提供される。例えば、ナノポアアセンブリは、七量体アルファ溶血素ナノポアアセンブリであり得る。分析物検出複合体は、例えば、ナノポアの中を貫通して、ナノポアアセンブリを形成する。
ある特定の態様例において、分析物と分析物リガンドの間の結合強度を評価するための方法が提供される。方法は、第1の電圧の存在下で、本明細書に記載されているようなナノポアアセンブリを含むチップを供給するステップを含む。例えば、ナノポアアセンブリは、膜内に配置される。検知電極が、前記膜に隣接してまたはその近くに位置づけられる。方法はまた、分析物を含む流体溶液とチップを接触させるステップであって、前記分析物が、分析物検出複合体の分析物リガンドに対する結合親和性を有する、ステップを含む。その後、漸進的に増加した第2の電圧が膜に渡って印加され、前記第2の電圧が、第1の電圧と極性が反対となる。漸進的に増加した第2の電圧を膜に渡って印加することに応答して、結合シグナルが、検知電極を活用して決定され、その結合シグナルが、分析物が分析物リガンドと結合しているという指示を提供する。そして、第2の電圧がさらに増加しながら、解離シグナルが、検知電極を活用して、決定され、その解離シグナルは、分析物と分析物リガンドの間の結合強度の指示を提供する。
ある特定の態様例において、方法はさらに、検知電極を用いて、貫通シグナルを検出するステップを含み、前記貫通シグナルが、貫通要素がナノポアアセンブリのポア内に位置しているという指示を提供する。ある特定の態様例において、貫通シグナルは、結合シグナルと比較される。例えば、その比較は、分析物が分析物リガンドと結合しているという指示を提供し得る。
ある特定の態様例において、方法はさらに、解離シグナルから、分析物の分析物リガンドからの解離と関連づけられる解離電圧を決定するステップを含む。決定された解離電圧を参照解離電圧と比較することにより、分析物と分析物リガンドの結合ペアについての解離定数が決定され得る。
ある特定の態様例において、流体溶液中の分析物の濃度を決定する方法が提供される。方法は、例えば、第1の電圧の存在下で、本明細書に記載されているような複数のナノポアアセンブリを含むチップを供給するステップを含む。ナノポアアセンブリは、例えば、膜内に配置され、ナノポアアセンブリの少なくとも第1のサブセットは第1の分析物リガンドを含む。方法はまた、複数の検知電極を膜に隣接してまたはそれの近くに位置づけるステップ、および前記チップを流体溶液と接触させるステップを含む。流体溶液は第1の分析物を含み、前記第1の分析物が第1の分析物リガンドに対する結合親和性を有する。検知電極およびコンピュータプロセッサを活用して、その後、結合カウント数が決定される。結合カウント数は、例えば、第1の分析物リガンドと第1の分析物の間の結合相互作用の数の指示を提供する。その後、決定された結合カウント数を参照カウント数と比較することにより、流体溶液中の分析物の濃度が決定され得る。
ある特定の態様例において、結合カウント数を決定することは、検知電極を用いて、ナノポアアセンブリの第1のサブセットのナノポアアセンブリごとに、貫通シグナルを決定することを含む。貫通シグナルは、例えば、貫通要素が、ナノポアアセンブリのナノポア内に位置しているという指示を提供する。その後、漸進的に増加した第2の電圧が膜に渡って印加され、前記第2の電圧が、第1の電圧と反対である極性を有する。漸進的に増加した第2の電圧を膜に渡って印加することに応答して、検知電極を用いて、ナノポアアセンブリの第1のサブセットのナノポアアセンブリごとに、結合シグナルを決定する。その後、方法は、ナノポアアセンブリの第1のサブセットのナノポアアセンブリごとに、決定された貫通シグナルを決定された結合シグナルと比較するステップを含む。その比較は、例えば、第1の分析物が第1の分析物リガンドと結合しているという指示を提供する。各決定された貫通シグナルの決定された結合シグナルとの比較から、第1の分析物が第1の分析物リガンドと結合しているという指示の総数が決定され得、前記指示の総数が、結合カウント数に対応する。ある特定の態様例において、その結合カウント数が、参照結合カウント数と比較される。
実施形態例のこれらを始めとする態様、目的、特徴、および利点は、例示された実施形態例の以下の詳細な説明を考慮すれば、当業者に明らかになるだろう。
本明細書に記載された実施形態は、以下の詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲、ならびにそれらの前後の説明を参照することにより、より容易に理解され得る。本システム、デバイス、組成物、および/または方法が開示および記載される前に、本明細書に記載された実施形態が、他に定めのない限り、開示された特定のシステム、デバイス、組成物、および/または方法に限定されず、そのようなものとして、当然ながら、変わり得ることは理解されるべきである。本明細書に用いられる専門用語が、特定の態様を記載することを目的とするだけであって、限定することを意図するものではないこともまた、理解されるべきである。
さらに、以下の説明は、様々な実施形態のそれらの最善の現在知られた態様での実施可能な教示として提供される。当業者は、この開示の有益な結果をなお獲得しながら、記載された態様に多くの変化がなされ得ることは認識しているだろう。様々な実施形態の特徴の一部を、他の特徴を利用することなく、選択することにより、本発明の望ましい恩恵の一部が獲得され得ることもまた明らかであろう。したがって、当業者は、本明細書に記載された様々な実施形態への多くの改変および適応が可能であり、かつ、ある特定の状況においてはさらに望ましくあり得、本開示の一部であることを認識しているだろう。このように、以下の説明は、本明細書に記載された実施形態の原理の実例として提供され、それらを限定するものではない。
概要
本明細書に記載されているように、流体溶液中の分析物の濃度を決定するためのナノポアに基づいた方法、組成物、およびシステムが提供される。流体溶液において分析物−リガンドの結合相互作用を評価するためのナノポアに基づいた方法、組成物、およびシステムもまた提供される。組成物は、例えば、ナノポアと会合して、ナノポアアセンブリを形成する分析物検出複合体を含み、前記分析物検出複合体が分析物リガンドを含む。第1の電圧が、ナノポアアセンブリを含む膜に渡って印加された時、分析物リガンドは、ナノポアのシス側に提示され、それは、流体溶液中の分析物を結合することができる。最初の電圧と極性が反対である第2の電圧が膜に渡って印加された時、分析物と分析物リガンドとの間の結合を示すシグナルが決定され得る。複数のナノポアアセンブリに渡る分析物−リガンド結合ペアの総数を決定し、かつその値を既知の参照値と比較することにより、その溶液中の分析物の濃度が決定され得る。他の例において、第2の電圧をさらに増加させることが、結果として、分析物−リガンドペアの解離を生じ得、そのことから解離電圧、および、したがって、解離定数が決定され得る。
より具体的には、分析物検出複合体の分析物リガンドは、分析物をターゲティングする任意のリガンドであり得る。例えば、分析物リガンドは、特定の抗原をターゲティングする抗体またはその機能性断片であり得、したがって、抗原を同定するためのイムノアッセイ型方法が提供される。ある特定の例において、分析物は血液抗原または他の生物学的流体抗原である。他の例において、分析物は、分析物検出複合体の分析物リガンドが親和性を有する、ポリペプチド、アミノ酸、ポリヌクレオチド、糖質、または小分子有機化合物もしくは無機化合物である。
分析物リガンドに加えて、分析物検出複合体は、分析物リガンドと連結されている貫通要素を含む。貫通要素は、例えば、ナノポアのポアの中を貫通し得る一本鎖もしくは二本鎖の核酸配列または他の分子ポリマーであり得る。分析物リガンドは、貫通要素の近位端に連結され、一方、貫通要素の遠位端は、アンカリングタグと会合している。アンカリングタグは、例えば、貫通要素の遠位端が、ナノポアアセンブリを通過して、ナノポアアセンブリのシス側へ移動するのを防ぐために用いられ得る。貫通要素に会合しているのは、ポアの中で電気シグナルを変化させるために用いることができる1つまたは複数のシグナル要素である。分析物検出複合体のシグナル要素は、オリゴヌクレオチド、ペプチド、またはポリマーなどのナノポアアセンブリのポア内に位置することができる任意の実体であり得る。ある特定の例において、1つまたは複数のシグナル要素は、ナノポアアセンブリのポア内の貫通要素の位置を決定するために用いることができる。
チップの膜の中へアセンブルされた場合、本明細書に記載されているような分析物検出複合体を含むナノポアアセンブリは、分析物と分析物リガンドの間の結合相互作用を評価するために用いることができる。ナノポアは、例えば、アルファ溶血素(α−HL)ナノポア、OmpGナノポア、または他のタンパク質ナノポアなどの任意のタンパク質ナノポアであり得る。いかなる特定の理論にも縛られるつもりはないが、第1の電圧が、ナノポアアセンブリを含む膜に渡って印加された時、分析物検出複合体の近位端がポアの中を貫通し、それにより、貫通要素、およびそれの1つまたは複数のシグナル要素をポア内に位置づける。さらに、分析物検出複合体がポアの中を貫通すると共に、分析物検出複合体の分析物リガンドが、ナノポアアセンブリのシス側へ提示され得、それは、分析物と相互作用(および結合)することができる。ある特定の例において、ナノポアアセンブリと結びつけられた電極は、ポアにおける貫通要素の存在に対応する貫通シグナルを決定するために用いることができる。例えば、第1の電圧が膜に渡って印加されている最中であることに応答して、貫通要素と会合した第1のシグナル要素が、ポア内の貫通要素の位置決めが検知電極によって決定され得るように、ポア内に位置し得る。
いったん、貫通要素がナノポアアセンブリのポア内に位置づけられ、分析物リガンドが分析物を結合する機会を得たならば、第1の電圧と反対の極性を有する第2の電圧が、膜に渡って増加性に印加され得る。第2の電圧は、例えば、分析物検出複合体をナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張るように作用する。いかなる特定の理論にも縛られるつもりはないが、分析物の非存在下では、けん引力は、分析物検出複合体を、ポアの中を通り抜けてポアのトランス側へ引っ張る。しかし、分析物の存在下では、ナノポアアセンブリのシス側における分析物リガンドの分析物との結合が、分析物検出複合体がポアの中を通り抜けてナノポアアセンブリのトランス側へ移動するのを阻止する。ある特定の例において、第2の電圧から生じたけん引力は、ポア内の第2のシグナル要素を位置づけ、その結果、結合シグナルが、ナノポアアセンブリと結びつけられた電極から決定され得る。結合シグナルは、例えば、分析物が分析物リガンドと結合しているという指示を提供することができる。
結合の強度などの分析物と分析物リガンドとの間の結合相互作用を評価するために、第2の電圧は、結びつけられた電極を介して解離シグナルがナノポアアセンブリから得られるまで、さらに増加させることができる。解離シグナルは、例えば、増加した電圧が分析物を分析物リガンドから分離するように強制し、それに従って、分析物検出複合体が、ポアの中を通り抜けて膜のトランス側へと引っ張られるのを可能にする時点に対応する。その解離シグナルに基づいて、分析物と分析物リガンドとの間の解離が起こる電圧に対応する解離電圧が決定され得る。ある特定の例において、解離電圧は、既知の分析物−リガンドペアの1つまたは複数の参照電圧と比較することができ、それに従って、分析物と分析物リガンドについての解離定数の決定が可能になる。
ある特定の例において、分析物と分析物リガンドとの間の結合は、分析物が分析物リガンドから分離されないほど強くあり得る。それどころか、分析物は、第2の電圧がさらに増加された時でさえも分析物リガンドと結合したままである。そのような例において、複数の異なる分析物が、それらの異なる分析物リガンドとの結合性について評価される場合、最も強い結合性を有する分析物が容易に同定することができる。他の例において、複数の分析物が、それらの、1つまたは複数の分析物リガンドとの相対的結合強度を決定するように分析される。例えば、結合強度は、同じチップ上で異なる分析物−リガンドの相互作用について弱い、強い、または非常に強いとして決定することができる。
ある特定の例において、本明細書に記載された方法、組成物、およびシステムはまた、流体溶液中の試験分析物の濃度を決定するために用いることができる。例えば、複数のナノポアアセンブリは、本明細書に記載されているように、第1の電圧の存在下でチップ上に形成され得、それにより、各ナノポアアセンブリのシス側で複数の分析物リガンドを試験分析物へ提示する。その後、流体試料が、膜のシス側へアプライされ得る。試験分析物が流体試料に存在する場合、試験分析物は分析物リガンドを結合することができる。その後、第1の電圧と極性が反対の第2の電圧が、本明細書に記載されているように、膜に渡って増加性に印加され得、各分析物検出複合体を膜のトランス側へ引っ張る。しかし、本明細書に記載されているように、分析物の分析物リガンドとの結合が、分析物検出複合体がポアの中を通り抜けてポアのトランス側へ移動するのを阻止し得る。さらに、シグナル伝達要素のナノポアアセンブリのポアへの移動が、結合シグナルの決定を可能にし得る。
結合シグナル(singles)の数をカウントすることにより、分析物−リガンド相互作用の総数に対応する結合カウント数、および、それに従って、結合した試験分析物の数が決定され得る。その後、結合カウント数は、参照カウント数と比較されて、溶液中の試験分析物の濃度を決定することができる。例えば、既知量の第2の分析物が、対照として流体試料に含まれ得、第2の分析物と第2の分析物リガンドとの間の結合の数が、参照カウント数として、本明細書に記載されているように決定することができる。その後、結合カウント数は、参照カウント数と比較されて、試験分析物の濃度を決定することができる。
ある特定の実施形態例において、本明細書に記載された方法は、評価の信頼度を増加させるためにチップ上で反復することができる。例えば、複数のナノポアアセンブリが、異なる分析物−リガンドペアの間の結合強度を評価するために用いられる場合には、第2の電圧は、分析物−リガンドペア(the ligand-pairs)が解離するまで、増加され得る。その後、第1の電圧が、分析物検出複合体をポア内に再局在化させ、かつ分析物−リガンド結合を可能にするように、再印加され得る。結合後、(最初の電圧と極性が反対の)第2の電圧が、分析物−リガンドペアが解離するまで再印加され得、それにより、本明細書に記載されているように、結合強度の追加の測定が提供される。同様に、濃度決定について、いったん、結合カウント数が、本明細書に記載されているように、分析物−リガンドペアについて決定されたならば、分析物−リガンド結合ペアの解離を強制するために第2の電圧が印加され得る。濃度決定のステップは、分析物の濃度を再決定するために反復され得る。ある特定の実施形態例において、方法は、結合強度および/または濃度評価の信頼度レベルをさらに増加させるために複数回、反復される。
用語の要約
本発明は、今、以下の定義および例を用いて、参照としてのみ、詳細に記載される。本明細書で他に規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、この発明が属する当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと類似したまたは等価の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料が記載されている。この発明が、記載された特定の方法論、プロトコール、および試薬に限定されないことは理解されるべきであり、これらは変わり得るからである。
本明細書に提供された見出しは、本明細書を全体として参照することにより得ることができる本発明の様々な態様または実施形態の制限ではない。したがって、すぐ下に定義された用語は、本明細書を全体として参照することにより、より完全に定義される。
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに別なふうに指図しない限り、複数の指示対象を含む。
範囲または値は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書で表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、その範囲の1つの特定の値からおよび/またはその範囲の他方の特定の値までを含む。範囲のそれぞれの端点は、他方の端点と関連する場合と、他方の端点とは無関係である場合の両方において、有意であることは、さらに理解されるだろう。同様に、値が、先行詞「約」を用いて、近似値として表現されている場合、その特定の値が別の側面を形成することは理解されるだろう。ある特定の実施形態例において、用語「約」は、所定の測定についての当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内などと理解されている。ある特定の実施形態例において、測定に依存して、「約」は、表示された値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、または0.01%以内として理解され得る。文脈から別なふうに明らかでない限り、本明細書に提供された全ての数値は、約という用語によって修飾され得る。さらに、「例」、「例示的な」、または「例示された」などの本明細書に用いられた用語は、優先を示すことを意図されず、むしろ、その後で論じられた側面が、単に、提示された側面の1つの例に過ぎないことを説明することを意図される。
本明細書で用いられる場合、用語「抗体」は、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である4つのポリペプチド鎖で構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の必須のエピトープ結合フィーチャーを保持する、それらの任意の機能的断片、変異体、バリアント、もしくは誘導体を幅広く指す。そのような変異体、バリアント、または誘導体の抗体実体は、当技術分野において知られている。抗体の機能性断片は、例えば、全体としての抗体から分離された時、その抗体が方向づけられている抗原を結合し、または部分的に結合する能力を保持する、抗体の任意の部分を含む。「ナノボディ」は、例えば、単一ドメインの抗体断片である。
本明細書で用いられる場合、用語「アミノ酸」は、アミノ基およびカルボン酸基を含有する有機化合物である。ペプチドまたはポリペプチドは、2個以上のアミノ酸を含有する。本明細書における目的のために、アミノ酸には、20個の天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、およびアミノ酸類似体(すなわち、α−炭素が側鎖を有するアミノ酸)が挙げられる。
本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」は、アミノ酸の任意のポリマー鎖を指す。用語「ペプチド」および「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」と交換可能に用いられ、同様に、アミノ酸のポリマー鎖を指す。用語「ポリペプチド」は、天然または人工のタンパク質、タンパク質断片、およびタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは、単量体またはポリマーであり得、いくつかの修飾を含み得る。一般的に、ペプチドまたはポリペプチドは、2アミノ酸長以上であり、一般的に、40アミノ酸長以下である。
本明細書で用いられる場合、「アルファ溶血素」、「α溶血素」、「α−HL」、「a−HL」、および「溶血素」は、交換可能に用いられ、七量体水充満膜貫通チャネル(すなわち、ナノポア)へと自己アセンブルする単量体タンパク質を指す。文脈に依存して、その用語はまた、7つの単量体タンパク質によって形成された膜貫通チャネルも指し得る。ある特定の実施形態例において、アルファ溶血素は、「改変型アルファ溶血素」であり、それは、アルファ溶血素が別の(すなわち、親の)アルファ溶血素から生じ、親のアルファ溶血素と比較して1つまたは複数のアミノ酸変化(例えば、アミノ酸置換、欠失、または挿入)を含有することを意味する。いくつかの実施形態例において、本発明の改変型アルファ溶血素は、天然に存在するまたは野生型のアルファ溶血素から生じまたは改変されている。いくつかの実施形態例において、改変型アルファ溶血素は、非限定的に、キメラアルファ溶血素、融合アルファ溶血素、または別の改変型アルファ溶血素を含む、組換えのまたは操作されたアルファ溶血素から生じまたは改変されている。典型的には、改変型アルファ溶血素は、親のアルファ溶血素と比較して、少なくとも1つの変化した表現型を有する。ある特定の実施形態例において、アルファ溶血素は、「バリアント溶血素遺伝子」から生じ、または「バリアント溶血素」であり、それは、それぞれ、Staphylococcus aureus由来のアルファ溶血素遺伝子の核酸配列が、そのコード配列を除去、付加、および/または操作することにより変化していること、または発現したタンパク質のアミノ酸配列が、本明細書に記載された本発明と合致して、改変されていることを意味する。
本明細書で用いられる場合、用語「分析物」または「標的分析物」は、検出され、同定され、または特徴づけられるべき、目的の任意の化合物、分子、または他の物質を幅広く指す。例えば、用語「分析物」または「標的分析物」は、検出および/または測定されることになっている特定の物質または成分である、目的の任意の生理的分子または作用物質を含む。ある特定の実施形態例において、分析物は、目的の生理的分析物である。追加としてまたは代替として、分析物は、例えば、生理的作用を有する化学物質、または薬物もしくは薬理学的作用物質であり得る。追加としてまたは代替として、分析物または標的分析物は、環境的作用物質または他の化学的作用物質もしくは実体であり得る。用語「作用物質」は、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的材料から作製された抽出物を示すように本明細書で用いられる。例えば、作用物質は細胞毒性物質であり得る。
ある特定の実施形態例において、「分析物」または「標的分析物」の例には、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、糖質、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物(治療目的のために投与される薬物、および違法な目的のために投与される薬物を含む)、脂質、ウイルス粒子、および上記の物質のいずれかの代謝産物または上記の物質のいずれかに対する抗体が挙げられる。例えば、そのような分析物には、フェリチン;クレアチニンキナーゼMIB(CK−MIB);ジゴキシン;フェニトイン;フェノバルビトール(phenobarbitol);カルバマゼピン;バンコマイシン;ゲンタマイシン;テオフィリン;バルプロ酸;キニジン;黄体(leutinizing)ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロゲステロン;IgE抗体;ビタミン B2;ミクログロブリン(vitamin B2 micro-globulin);糖化ヘモグロビン(Gly.Hb);コルチゾール;ジギトキシン;N−アセチルプロカインアミド(NAPA);プロカインアミド;風疹に対する抗体、例えば、風疹IgGおよび風疹IgM;トキソプラズマ症に対する抗体、例えば、トキソプラズマ症IgG(Toxo−IgG)およびトキソプラズマ症IgM(Toxo−IgM);テストステロン;サリチレート(salicylates);アセトアミノフェン;B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);B型肝炎コア抗原に対する抗体、例えば、抗B型肝炎コア抗原IgGおよびIgM(Anti−HBC);ヒト免疫不全ウイルス1および2(HTLV);B型肝炎e抗原(HBeAg);B型肝炎e抗原に対する抗体(Anti−Hbe);甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン(T4);総トリヨードチロニン(Total T3);遊離トリヨードチロニン(Free T3);癌胎児抗原(CEA);およびアルファ胎児タンパク質(AF);ならびに乱用薬物および規制物質(それらには、アンフェタミン;メタンフェタミン;バルビツレート(barbituates)、例えば、アモバルビタール、セコバルビタール(seobarbital)、ペントバルビタール、フェノバルビタール、およびバルビタール;ベンゾジアゼピン、例えば、リブリウムおよびバリウム;カンナビノイド、例えば、ハシッシュおよびマリファナ;コカイン;フェンタニル(fetanyl);LSD;メタカロン(methapualone);オピエート(opiaets)、例えば、ヘロイン、モルフィン、コデイン(codine)、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、メサドン、オキシコドン、オキシモルホン、およびアヘン;フェンサイクリジン;およびプロポキシフェン(propoxyhene)が挙げられるが、それらに限定されることを意図するものではない)が挙げられ得る。分析物という用語はまた、任意の抗原性物質、ハプテン、抗体、高分子、およびそれらの組合せを含む。
他の分析物または標的分析物の例には、フォレート(Folate)、フォレートRBC、鉄、可溶性トランスフェリン受容体、トランスフェリン、ビタミンB12、乳酸デヒドロゲナーゼ、骨カルシウム、N−MIDオステオカルシン、P1NP、リン、PTH、PTH(1〜84)、b−CrossLaps、ビタミンD、心臓アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、コレステロール、CK、CK−MB、CK−MB(mass)、CK−MB(mass) STAT、CRP hs、シスタチンC、D−ダイマー、心臓ジギトキシン、ジゴキシン、GDF−154、HDLコレステロールダイレクト、ホモシステイン、ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、LDLコレステロールダイレクト、リポタンパク質(a)、ミオグロビン、ミオグロビンSTAT、NT−proBNP、NT−proBNP STAT、トロポニンI、トロポニンI STAT、トロポニンT hs、トロポニンT hs STAT、凝固AT III、D−ダイマー、乱用薬物検査アンフェタミン(エクスタシー)、ベンゾジアゼピン、ベンゾジアゼピン(血清)、カンナビノイド、コカイン、エタノール、メサドン、メサドン代謝産物(EDDP)、メタカロン、オピエート、オキシコドン、フェンサイクリジン、プロポキシフェン、アミラーゼ、ACTH、抗Tg、抗TPO、抗TSH−R、カルシトニン、コルチゾール、C−ペプチド、FT3、FT4、hGH、ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、IGF−14、インスリン、リパーゼ、PTH STAT、T3、T4、サイログロブリン(Thyreoglobulin)(TG II)、サイログロブリン(Thyreoglobulin)検証的、TSH、T摂取率、妊孕能抗ミューラー管ホルモン、DHEA−S、エストラジオール、FSH、hCG、hCGプラス ベータ、LH、プロゲステロン、プロラクチン、SHBG、テストステロン、肝臓学AFP、アルカリホスファターゼ(IFCC法)、アルカリホスファターゼ(光学法)、Pypと共にALT/GPT、PypなしでALT/GPT、アンモニア、抗HCV、Pypと共にAST/GOT、PypなしでAST/GOT、直接ビリルビン、総ビリルビン、アセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、HBeAg、HBsAg、乳酸デヒドロゲナーゼ、感染症抗HAV、抗HAV IgM、抗HBc、抗HBc IgM、抗HBe、HBeAg、抗HBsAg、HBsAg、HBsAg 検証的、HBsAg 定量的、抗HCV、シャーガス(Chagas)、CMV IgG、CMV IgGアビディティー、CMV IgM、HIV combi PT、HIV−Ag、HIV−Ag 検証的、HSV−1 IgG、HSV−2 IgG、HTLV−I/II、風疹IgG、風疹IgM、梅毒、Toxo IgG、Toxo IgGアビディティー、Toxo IgM、TPLA(梅毒)、抗CCP、ASLO、C3c、C4、セルロプラスミン、CRP(ラテックス)、ハプトグロビン、IgA、IgE、IgG、IgM、免疫グロブリンA CSF、免疫グロブリンM CSF、インターロイキン6、カッパ軽鎖、遊離カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖、遊離ラムダ軽鎖、プレアルブミン、プロカルシトニン、リウマトイド因子、a1−酸性糖タンパク質、a1−アンチトリプシン、ビカルボネート(Bicarbonate)(CO2)、カルシウム、塩化物、フルクトサミン、グルコース、HbA1c(溶血血液)、HbA1c(全血)、インスリン、ラクテート(Lactate)、LDLコレステロールダイレクト、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、総タンパク質、トリグリセリド、グリセロール消去法によるトリグリセリド、総ビタミンD、酸性ホスファターゼ、AFP、CA 125、CA 15−3、CA 19−9、CA 72−4、カルシトニン、Cyfra 21−1、hCGプラス ベータ、HE4、遊離カッパ軽鎖、遊離ラムダ軽鎖、NSE、proGRP、遊離PSA、総PSA、SCC、S−100、サイログロブリン(Thyreoglobulin)(TG II)、サイログロブリン(Thyreoglobulin) 検証的、b2−ミクログロブリン、アルブミン(BCG)、アルブミン(BCP)、アルブミン 免疫学的、クレアチニン(酵素的)、クレアチニン(Jaffe法)、シスタチンC、カリウム、PTH、PTH(1−84)、総タンパク質、総タンパク質、尿/CSF、尿素/BUN、尿酸、a1−ミクログロブリン、b2−ミクログロブリン、アセトアミノフェン(パラセタモール)、アミカシン、カルバマゼピン、シクロスポリン、ジギトキシン、ジゴキシン、エベロリムス、ゲンタマイシン、リドカイン、リチウム、ISEミコフェノール酸、NAPA、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、プロカインアミド、キニジン、サリチレート、シロリムス、タクロリムス、テオフィリン、トブラマイシン、バルプロ酸、バンコマイシン、抗ミューラー管ホルモン、AFP、b−Crosslaps、DHEA−S、エストラジオール、FSH、遊離βhCG、hCG、hCGプラス ベータ、hCG STAT、HE4、LH、N−MIDオステオカルシン、PAPP−A、PlGF、sFIt−1、P1NP、プロゲステロン、プロラクチン、SHBG、テストステロン、CMV IgG、CMV IgGアビディティー、CMV IgM、風疹IgG、風疹IgM、Toxo IgG、Toxo IgGアビディティー、および/またはToxo IgMが挙げられる。
本明細書で用いられる場合、用語「相補的な」または「相補性」は、通例の塩基対形成ルールによって関係づけられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して用いられる。例えば、配列「A−G−T」は、配列「T−C−A」と相補的である。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対形成ルールに従ってマッチしている、「部分的」であり得る。または、核酸間で「完全な」または「全面的な」相補性があり得る。核酸鎖間での相補性の程度は、核酸鎖間でのハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な効果を生じる。
本明細書で用いられる場合、用語「相同性」は、相補性の程度を指す。相同性は、部分的相同性または完全な相同性(すなわち、同一性)を含む。例えば、部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列が標的核酸とハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害する配列であり、その実用的用語「実質的に相同的な」を用いて言及される。完全に相補的な配列の標的配列へのハイブリダイゼーションのその阻害は、低いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイゼーションアッセイ(サザンまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を用いて調べられ得る。実質的に相同的な配列またはプローブは、低いストリンジェンシーの条件下で完全に相同的な配列またはプローブの標的への結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)に対して競合し、かつ阻害するだろう。しかしながら、低いストリンジェンシーの条件が存在したならば、非特異的結合が許されるようなものである;低いストリンジェンシー条件は、2つの配列のお互いとの結合が特異的な(すなわち、選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の欠如は、部分的な程度の相補性さえも欠く(例えば、約30%未満の同一性)第2の標的の使用により試験され得る;非特異的結合が存在しない場合、プローブは、第2の非相補性標的とハイブリダイズしないだろう。
本明細書で用いられる場合、用語「リガンド」または「分析物リガンド」は、別の実体(例えば、受容体)と結合して、より大きい複合体を形成する、任意の化合物、分子、分子群、または他の物質を幅広く指す。例えば、分析物リガンドは、その用語が当技術分野において理解され、かつ本明細書で幅広く定義されているように、分析物に対する結合親和性を有する実体である。分析物リガンドの例には、受容体と結合するペプチド、糖質、核酸、抗体、または任意の分子が挙げられるが、それらに限定されない。ある特定の例において、リガンドは、分析物と複合体を形成して、生物学的目的を果たす。当業者が理解しているように、リガンドとそれの結合パートナー(例えば、分析物)の間の関係は、電荷、疎水性、および/または分子構造の関数である。結合は、イオン結合、水素結合、およびファンデルワールス力などの様々な分子間力を介して起こり得る。ある特定の例において、リガンドまたは分析物リガンドは、抗原と結合親和性を有する抗体またはその機能性断片である。
本明細書で用いられる場合、用語「DNA」は、少なくとも1個のデオキシリボヌクレオチド残基を含む分子を指す。「デオキシリボヌクレオチド」は、β−D−デオキシリボフラノース部分の2’位にヒドロキシル基を含まず、代わりに水素を含む、ヌクレオチドである。その用語は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖領域と一本鎖領域の両方を有するDNA、単離されたDNA、例えば、部分的に精製されたDNA、本質的に純粋なDNA、合成DNA、組換え的に産生されたDNA、加えて、天然に存在するDNAとは、1個または複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または修飾によって異なる変化したDNAまたは類似体DNAを包含する。
本明細書で用いられる場合、用語「連結する(join)」、「連結された(joined)」、「連結する(link)」、「連結された(linked)」、または「繋ぎ止められた」は、タンパク質をDNA分子と、またはタンパク質をタンパク質と接続するなどの、2つ以上の実体を機能的に接続するための当技術分野において知られた任意の方法を指す。例えば、1つのタンパク質が、別のタンパク質と、例えば、組換え融合タンパク質において、介在配列またはドメインの有無に関わらず、共有結合を介して、連結され得る。共有結合による連結の例は、例えば、SpyCatcher/SpyTag相互作用、システイン−マレイミドのコンジュゲーション、またはアジド−アルキンのクリックケミストリー、および当技術分野において知られた他の手段を通して、形成され得る。さらに、1個のDNA分子は、別のDNA分子と、相補性DNA配列のハイブリダイゼーションを介して連結され得る。
本明細書で用いられる場合、用語「ナノポア」は、一般的には、膜に形成された、または別なふうに提供されたポア、チャネル、または通路を指す。膜は、脂質二分子層などの有機膜、またはポリマー材料で形成された膜などの合成膜であり得る。膜は、ポリマー材料であり得る。ナノポアは、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)または電界効果トランジスタ(FET)回路などの検知回路、または検知回路と結合した電極に隣接して、またはその近くに配置され得る。いくつかの実施形態例において、ナノポアは、0.1ナノメートル(nm)〜約1000nmのオーダーでの固有幅または直径を有する。いくつかのナノポアはタンパク質である。例えば、アルファ溶血素単量体は、オリゴマー形成して、タンパク質を形成する。膜は、トランス側(すなわち、検知電極に対面する側)およびシス側(すなわち、対電極に対面する側)を含む。
用語「核酸分子」または「核酸」は、RNA、DNA、およびcDNA分子を含む。遺伝暗号の縮重の結果として、アルファ溶血素および/またはそのバリアントなどの所定のタンパク質をコードする多数のヌクレオチド配列が生じ得ることは理解されているだろう。本開示は、バリアントのアルファ溶血素をコードするあらゆる可能なバリアントヌクレオチド配列を企図し、そのバリアントヌクレオチド配列の全ては、遺伝暗号の縮重を仮定すれば、可能である。
用語「ヌクレオチド」は、当技術分野において認識されているように、天然の塩基(標準)および当技術分野においてよく知られた修飾型塩基を含むように本明細書で用いられる。そのような塩基は、一般的に、ヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは、一般的に、塩基、糖、およびリン酸基を含む。
本明細書で用いられる場合、例えば、合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドに関してなどの「合成」は、組換え方法により、および/または化学合成方法により産生される核酸分子またはポリペプチド分子を指す。
本明細書で用いられる場合、組換えDNA方法を用いることによる組換え方法による産生は、クローン化DNAによってコードされるタンパク質を発現するための分子生物学の周知の方法の使用を指す。例えば、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)について標準技術が用いられ得る。酵素反応および精製技術は、製造会社の仕様書に従って、または当技術分野において一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように、実施され得る。前述の技術および手順は一般的に、当技術分野においてよく知られた通常の方法に従って、ならびに本明細書を通して引用され、および論じられている様々な一般的でより具体的な参考文献に記載されているように、実施され得る。例えば、任意の目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられている、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))を参照されたい。
本明細書で用いられる場合、「ベクター」(またはプラスミド)は、異種性核酸をそれの発現かまたは複製かのいずれかのために細胞へ導入するために用いられる別個のDNAエレメントを指す。ベクターは、典型的には、エピソームのままであるが、遺伝子またはその部分のゲノムの染色体への組込みをもたらすように設計することができる。細菌人工染色体、酵母人工染色体、および哺乳類人工染色体などの人工染色体であるベクターもまた企図される。そのような媒体の選択および使用は当業者によく知られている。
本明細書で用いられる場合、「発現」は、一般的に、核酸がmRNAへ転写され、そしてペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質へ翻訳される過程を指す。核酸がゲノムDNAに由来する場合には、発現は、適切な真核生物の宿主細胞または生物体が選択されるならば、mRNAのスプライシングなどのプロセシングを含み得る。
本明細書で用いられる場合、「発現ベクター」は、そのようなDNA断片の発現をもたらす能力があるプロモーター領域などの制御配列と作動可能に連結されているDNAを発現する能力があるベクターを含む。そのような追加のセグメントには、プロモーターおよびターミネーター配列を挙げることができ、任意で、1つまたは複数の複製起点、1つまたは複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを挙げることができる。発現ベクターは、一般的に、プラスミドもしくはウイルスDNAに由来し、または両方のエレメントを含有できる。したがって、発現ベクターは、適切な宿主細胞への導入により、クローン化DNAの発現を生じる、プラスミド、ファージ、組換えウイルス、または他のベクターなどの組換えDNAまたはRNA構築物を指す。適切な発現ベクターは、当業者によく知られており、それには、真核細胞および/もしくは原核細胞において複製可能であるもの、ならびにエピソームのままであるもの、または宿主細胞ゲノムへ統合されるものが挙げられる。本明細書で用いられる場合、ベクターにはまた、「ウイルスベクター(virus vectors)」または「ウイルスのベクター(viral vectors)」が挙げられる。ウイルスベクターは、外因性遺伝子を細胞へ(媒体またはシャトルとして)移入するように外因性遺伝子と作動可能に連結されている、操作されたウイルスである。
用語「宿主細胞」とは、ベクターを含有し、かつその発現構築物の複製、ならびに/または転写、もしくは転写および翻訳(発現)を支援する細胞を意味する。宿主細胞は、大腸菌(E. coli)もしくはBacillus subtilusなどの原核細胞、または酵母、植物、昆虫、両生類、もしくは哺乳類細胞などの真核細胞であり得る。一般的に、宿主細胞は原核生物、例えば、大腸菌である。
用語「細胞発現」または「細胞遺伝子発現」は、一般的に、細胞において、生物活性ポリペプチドがDNA配列から産生され、かつ生物活性を示す細胞過程を指す。そのようなものとして、遺伝子発現は、転写および翻訳の過程を含むが、遺伝子または遺伝子産物の生物活性に影響を及ぼし得る転写後および翻訳後の過程もまた含み得る。これらの過程は、例えば、RNA合成、プロセシング、および輸送、加えて、ポリペプチド合成、輸送、ポリペプチドの翻訳後修飾を含む。追加として、細胞内でのタンパク質−タンパク質の相互作用に影響する過程もまた、本明細書に定義されているような遺伝子発現に影響し得る。
本明細書で用いられる場合、用語「任意の」または「任意で」は、その後に記載された事象または状況が起こり、または起こらないこと、ならびにその記載が、前記事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、分析物検出複合体をナノポアアセンブリ単量体と連結する任意のステップは、その分析物検出複合体が連結され得、または連結され得ないことを意味する。
本明細書で用いられる場合、用語「リン脂質」は、少なくとも1個のリン基を含む疎水性分子を指す。例えば、リン脂質は、リン含有基、および任意でOH、COOH、オキソ、アミン、または置換型もしくは非置換型アリル基で置換される、飽和または不飽和アルキル基を含み得る。
本明細書で用いられる場合、用語「膜」は、脂質分子の連続二重層のシートまたは層を指し、その中に膜タンパク質が埋め込まれる。膜脂質分子は、典型的には、両親媒性であり、最も自然発生的には、水中に置かれた場合、二分子層を形成する。「リン脂質膜」は、脂質の疎水性頭部が一方向を向き、同時に親水性尾部が反対方向を向くように整列したリン脂質で構成された任意の構造を指す。リン脂質膜の例には、細胞膜の脂質二分子層が挙げられる。
本明細書で用いられる場合、「同一性」または「配列同一性」は、配列の関連において、2つの核酸配列または2つのアミノ酸配列の間での類似性を指し、その配列間での類似性という言葉で表現されるが、そうでなければ、配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、パーセンテージ同一性(または類似性または相同性)として測定される場合が多い;パーセンテージが高ければ高いほど、その2つの配列はより類似している。例えば、80%相同性は、規定のアルゴリズムにより決定された80%配列同一性と全く同じことを意味し、したがって、所定の配列の相同体は、その所定の配列の長さに関して80%より高い配列同一性を有する。配列同一性のレベルの例として、例えば、所定の配列、例えば、本明細書に記載されているような発明ポリペプチドのいずれか1つについてのコード配列との80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列同一性が挙げられる。
比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野においてよく知られている。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが以下に記載されている:Smith & Waterman Adv.Appl.Math. 2:482、1981;Needleman & Wunsch J.Mol.Biol. 48:443、1970;Pearson & Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444、1988;Higgins & Sharp Gene 73:237〜244、1988;Higgins & Sharp CABIOS 5:151〜153、1989;Corpetら Nuc.Acids Res. 16、10881〜90、1988;Huangら Computer Appls. In the Biosciences 8、155〜65、1992;およびPearsonら Meth.Mol.Bio. 24、307〜31、1994。Altschulら(J.Mol.Biol. 215:403〜410、1990)は、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示している。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら J.Mol.Biol. 215:403〜410、1990)は、the National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)を含むいくつかの発信元から利用可能であり、インターネット上で、例えば、BLASTN、BLASTX、およびTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTNなどのBLASTプログラム一式を含む配列解析プログラムと接続して用いられる。
配列検索は、典型的には、所定の核酸配列をGenBank DNA配列および他の公共データベースにおける核酸配列に対して評価する時、BLASTNプログラムを用いて行われる。全てのリーディングフレームで翻訳されている核酸配列をGenBankタンパク質配列および他の公共データベースにおけるアミノ酸配列に対して検索するためには、BLASTXプログラムが好ましい。BLASTNとBLASTXのどちらも、11.0のオープンギャップペナルティおよび1.0の伸長ギャップペナルティのデフォルトパラメータを用いて実行され、BLOSUM−62マトリックスを利用する(例えば、Altschul,S.F.ら、Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402、1997参照)。
ある特定の実施形態例において、2つ以上の配列間の「%同一性」を決定するための、選択された配列の好ましいアラインメントは、例えば、10.0のオープンギャップペナルティ、0.1の伸長ギャップペナルティ、およびBLOSUM 30類似性マトリックスを含むデフォルトパラメータで運用される、MacVector バージョン13.0.7におけるCLUSTAL−Wプログラムを用いて、実施される。
本明細書で用いられる場合、用語「バリアント」は、親タンパク質と比較した時、変化した特性、例えば、変化したイオン伝導度を示す修飾型タンパク質を指す。
本明細書で用いられる場合、用語「試料」または「試験試料」は、それの最も広い意味で用いられる。本明細書で用いられる場合、「生物学的試料」には、対象由来など、生きているものまたは以前は生きていたもの由来の任意の量の物質が挙げられるが、それに限定されない。生物学的試料は、インビボまたはインビトロで得られた生物学的組織または流体を源とする試料を含み得る。そのような試料は、非限定的に、生物学的対象から単離された、体液、器官、組織、画分、および細胞に由来し得る。生物学的試料にはまた、例えば、生物学的流体(例えば、血液または尿)からの抽出物など、生物学的試料からの抽出物も挙げることができる。
本明細書で用いられる場合、「生物学的流体」または「生物学的流体試料」は、任意の生理的流体(例えば、血液、血漿、痰、洗浄液、接眼レンズ液、脳脊髄液、尿、精液、汗、涙、乳、唾液、滑液、腹水、羊水)、加えて、1つもしくは複数の公知のプロトコールを通して流体形へ少なくとも一部、変換されている固体組織、または流体が抽出されている固体組織を指す。例えば、生検からなどの、液状組織抽出物は、生物学的流体試料であり得る。ある特定の例において、生物学的流体試料は、対象から収集された尿試料である。ある特定の例において、生物学的流体試料は、対象から収集された血液試料である。本明細書で用いられる場合、用語「血液」、「血漿」、および「血清」は、それの画分または処理された部分を含む。同様に、試料が生検、スワブ、スメアなどから採取される場合、「試料」は、その生検、スワブ、スメアなどに由来する、処理された画分または部分を包含する。
さらに、「流体溶液」、「流体試料」、または「流体」は、生物学的流体を包含するが、環境的試料に存在し得る任意の分析物などの非生理的成分もまた含み得、かつ包含し得る。例えば、試料は、河川、湖、池、または他の貯水池からであり得る。ある特定の実施形態例において、流体試料は改変され得る。例えば、流体試料にバッファーまたは保存剤が添加され得、または流体試料が希釈され得る。他の実施形態例において、流体試料は、その溶液中の1つまたは複数の溶質の濃度を増加させるために、当技術分野において知られた一般的な手段によって改変され得る。それでも、その流体溶液はなお、本明細書に記載されているような流体溶液である。例えば、流体試料が試験されることになっている場合、その流体試料は「試験試料」と呼ばれ得る。
本明細書で用いられる場合、「対象」は、脊椎動物を含む動物を指す。脊椎動物は、哺乳類、例えば、ヒトであり得る。ある特定の例において、対象はヒト患者であり得る。対象は、「患者」、例えば、疾患または状態を患っており、または患っているのではないかと疑われる患者であり得、処置もしくは診断を必要とし得、または疾患もしくは状態の進行についてモニターすることを必要とし得る。患者はまた、効力についてモニターする必要がある処置治療に関与し得る。哺乳類は、例えば、ヒト、チンパンジー、家畜および農業用動物、加えて、動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む、哺乳類として分類される任意の動物を指す。
本明細書で用いられる場合、用語「野生型」は、天然に存在する源から単離された時のその遺伝子または遺伝子産物の特性を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。
以下の実施例および図は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は、添付された特許請求の範囲に示されている。本発明の精神から逸脱することなく、示された手順に改変がなされ得ることは理解されている。
ある特定の実施形態例により、分析物検出複合体を示すイラストである。 図2Aは、ある特定の実施形態例により、それぞれが異なる分析物に方向づけられた分析物検出複合体を含む、3つのナノポアアセンブリを示すイラストである。図2Bは、ある特定の実施形態例により、図2Aの3つのナノポアアセンブリを示すが、示された分析物リガンドのそれぞれがそれらのそれぞれの分析物を結合している、イラストである。図2Cは、ある特定の実施形態例により、各分析物検出複合体がナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張られている最中である立体配置でナノポアアセンブリが示されていることを除いて、図2A〜2Bにおいてと同じ3つのナノポアアセンブリを示すイラストである。 ある特定の実施形態例により、分析物−リガンドペアの結合および解離に関連した電気シグナル変化と共に、分析物リガンドと分析物の間の弱い結合相互作用の評価を示すイラストである。 ある特定の実施形態例により、分析物リガンドと分析物の間の強い結合相互作用の評価を示すイラストである。 ある特定の実施形態例により、分析物リガンドと分析物の間の非常に強い相互作用の評価を示すイラストである。 ある特定の実施形態例により、標的分析物が試験溶液に存在しない場合の試験試料の評価を示すイラストである。 ある特定の実施形態例により、弱い、強い、および非常に強い分析物−リガンド相互作用についての個々の分析物捕獲および解離の信頼度レベル分布例を示すイラストである。 ある特定の実施形態例により、チップ上での特定の分析物−リガンド相互作用の同定を示すイラストである。
実施形態例
実施形態例は、今、部分的に添付の図を参照して、詳細に記載される。図が参照される場合、同様の数字は、図の中の同様の(しかし、必ずしも同一とは限らない)要素を示す。
分析物検出複合体
図1は、ある特定の実施形態例により、分析物検出複合体1のイラストである。図1に関して、分析物検出複合体1は、例えば、分析物リガンド2、貫通要素3、ならびに貫通要素3の内にまたはそれと会合して配置されている1つまたは複数のシグナル要素4aおよび4bを含む。ある特定の実施形態例において、分析物検出複合体1はまた、分析物検出複合体の遠位端に位置するアンカリングタグ5を含む。
分析物検出複合体1の分析物リガンド2は、本明細書に記載されているような任意の分析物に対する結合親和性を有する任意のリガンドであり得る。図1に示されているように、例えば、分析物リガンド2は抗体であり得、分析物が、その抗体に対する結合親和性を有する抗原である。当業者がこの開示を鑑みて理解するように、任意の抗体またはその機能性断片が分析物リガンドとして用いることができる。他の実施形態例において、分析物検出複合体1の分析物リガンド2は、環境的分析物を検出するために用いることができる。ある特定の実施形態例において、分析物検出複合体1の分析物リガンド2は、複雑な生物学的流体試料、例えば、組織および/または体液においてタンパク質分析物を同定するために用いることができる。
ある特定の実施形態例において、分析物リガンド2が方向づけられる分析物は、生物学的または環境的試料の他の成分と比較して、低濃度で存在し得る。ある特定の実施形態例において、分析物リガンド2はまた、高分子分析物の亜集団をその分析物の立体構造または機能性に基づいてターゲティングするために用いることができる。分析物リガンド2の例には、本明細書に定義されたもの、加えて、標的分析物と結合することが知られている、アプタマー、抗体もしくはその機能性断片、受容体、および/またはペプチドが挙げられる。アプタマーに関して、アプタマーは、DNA、RNA、および/または核酸類似体を含む核酸アプタマーであり得る。ある特定の実施形態例において、アプタマーは、ペプチドアプタマー、例えば、足場へ両端において付着した可変性ペプチドループを含むペプチドアプタマーであり得る。アプタマーは、例えば、特定の標的タンパク質分析物と結合するように、選択することができる。
当業者が理解しているように、分析物および分析物リガンド2は、結合ペアの2つのメンバー、すなわち、2つの異なる分子の1つが第2の分子と、化学的および/または物理的相互作用を通して特異的に結合する2つの異なる分子を表す。周知の抗原−抗体の結合ペアメンバーに加えて、他の結合ペアには、例えば、ビオチンとアビジン、糖質とレクチン、相補性ヌクレオチド配列、相補性ペプチド配列、エフェクターと受容体分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列とその配列またはそのタンパク質全体に特異的な抗体、ポリマー酸と塩基、色素とタンパク質結合剤、ペプチドと特異的なタンパク質結合剤(例えば、リボヌクレアーゼ、S−ペプチドとリボヌクレアーゼSタンパク質)、糖とボロン酸、および結合アッセイにおいて会合を可能にする親和性を有する類似した分子が挙げられる。
さらに、分析物−リガンドの結合ペアは、最初の結合メンバーの類似体であるメンバーを含むことができ、例えば、分析物−組換え技術または分子操作により作製された類似体または結合メンバーである。分析物リガンドが免疫反応物である場合には、それは、例えば、抗体、抗原、ハプテン、またはその複合体であり得、抗体が用いられる場合には、それは、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、組換えタンパク質または抗体、キメラ抗体、それらの混合物または断片、加えて、抗体と他の結合メンバーの混合物であり得る。そのような抗体、ペプチド、およびヌクレオチドの調製、ならびにそれらの、結合アッセイにおける結合メンバーとしての使用についての適合性の詳細は、当技術分野においてよく知られている。
図1に示されているように、抗体などの分析物リガンド2は、貫通要素3と連結されている。ナノポアと会合した場合、貫通要素3は、ナノポアのポアの中を貫通することができる。貫通要素3は、ナノポアアセンブリのポアの中を貫通することができる任意の構造であり得る。ある特定の実施形態例において、貫通要素3は、一本鎖もしくは二本鎖核酸配列または他の分子ポリマーであり得る。例えば、貫通要素3は、アミノ酸配列であり得、炭素スペーサーを含み得る。ある特定の実施形態例において、貫通要素3は、1つの極性の総電荷を有し、本明細書に記載されているようにナノポアアセンブリに渡る電圧を変化させることは、貫通要素を1つの方向または別の方向に移動させることができる。
分析物検出複合体1の貫通要素3と会合するのは、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのシグナル要素などの1つまたは複数のシグナル要素である。図1に示されているように、例えば、貫通要素3は、シグナル要素4aおよび4bのペアと会合し得る。ナノポアのポアに位置する場合、例えば、1つまたは複数のシグナル要素4aおよび4bは、ナノポアアセンブリ内の貫通要素3の位置を決定するために用いることができる。シグナル要素は、例えば、光学的、電気化学的、磁気的、または静電気的(例えば、誘導性、容量性)シグナルを提供するために用いられ、そのシグナルが検出可能であり、かつ本明細書に記載されているようなナノポアアセンブリのポア内の貫通要素3の位置の指示を提供する。ある特定の実施形態例において、シグナル要素4aは、シグナル要素4bと同じであり得る。他の実施形態例において、シグナル要素4aは、シグナル要素4bと異なり得る。ある特定の実施形態例において、貫通要素3の総電荷が所定の電荷である場合、シグナル要素は、ナノポアアセンブリのポアにおける貫通要素の位置を決定するために用いることができる特定の電荷の制約部位(constriction site)を表し得る。
ある特定の実施形態例において、シグナル要素は、貫通要素3と会合するオリゴヌクレオチド、ペプチド、またはポリマー配列であり得る。ある特定の実施形態例において、貫通要素3がヌクレオチド配列であり、かつシグナル要素が貫通要素3のヌクレオチド配列内の特定の配列である場合など、シグナル要素は、貫通要素3の部分として組み込まれ得る。例えば、シグナル要素は、貫通要素の小部分(subsection)であり得る。追加としてまたは代替として、シグナル要素は貫通要素3と付着することができる。
シグナル要素4aおよび4bなどの1つまたは複数のシグナル要素は、使用中、様々な異なるシグナルおよび/またはシグナル変化が本明細書に記載されているように検出され得るように、貫通要素3上の様々な位置と関連づけることができる。例えば、シグナル要素4aおよび4bが異なる場合、ナノポアアセンブリと関連づけられる電気シグナルは、本明細書に記載されているように、いずれのシグナル要素(4aかまたは4b)がポア内に位置しているのかに依存して、異なり得る。ある特定の実施形態例において、1つまたは複数のシグナル要素は、貫通要素の近位端に位置し得、一方、他の実施形態例においては、1つまたは複数のシグナル要素4は、分析物検出複合体1上のより遠位に位置し得る。他の実施形態例において、1つのシグナル要素4aが貫通要素3の近位端と会合し得、一方、別のシグナル要素4bは、貫通要素3のより遠位の部分と会合し得る。
ある特定の実施形態例において、シグナル要素4aおよび4bなどの1つまたは複数のシグナル要素は、一続きの反復核酸残基などの一本鎖核酸配列であり得る。例えば、シグナル要素は、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、または100個のヌクレオチドなどの約10〜100ヌクレオチド長の反復一本鎖オリゴヌクレオチド配列であり得る。ある特定の実施形態例において、シグナル要素は、40merのオリゴヌクレオチド配列などの30〜50merのオリゴヌクレオチド配列であり得る。
他の実施形態例において、1つまたは複数のシグナル要素は、一続きの反復核酸塩基対などの二本鎖核酸配列であり得る。例えば、シグナル要素は、約10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、または100個の塩基対などの約10〜100ヌクレオチド長の反復二本鎖オリゴヌクレオチド配列であり得る。ある特定の実施形態例において、シグナル要素は、40mer塩基対配列などの30〜50merオリゴヌクレオチド配列であり得る。ある特定の実施形態例において、1つまたは複数のシグナル要素は、一続きのT残基および一続きのN3−シアノエチル−T残基を含み得る。ある特定の実施形態例において、貫通要素のシグナル要素には、Sp2ユニット、Sp3ユニット、dSpユニット、メチルホスホン酸−Tユニットなどが挙げられ得る。
図1に示されているように、分析物検出複合体1はまた、分析物検出複合体1の遠位端にアンカリングタグ5を含む。例えば、分析物検出複合体1がナノポアの中を貫通している場合、アンカリングタグ5は、分析物検出複合体1が、ナノポアアセンブリを通って遊走し、または本明細書に記載されているように、ナノポアアセンブリのシス側まで引っ張られるのを防ぐために用いることができる。したがって、アンカリングタグ5は、分析物検出複合体1の遠位端をナノポアアセンブリのトランス側へアンカリングするために用いられ得る任意のタンパク質、核酸、または化学的実体であり得る。例えば、アンカリングタグ5は、ビオチン−ストレプトアビジン、二本鎖DNAまたはRNA、DNAまたはRNA三元構造、SpyTag−Catcher、抗体−抗原であり得る。
ナノポアアセンブリ
ある特定の実施形態例において、本明細書に記載された分析物検出複合体1は、ナノポアと会合して、ナノポアアセンブリを形成し、かつ分析物と相互作用するようにナノポアと共に用いられる。分析物検出複合体1の分析物との相互作用を検出するために、分析物検出複合体1を含むナノポアアセンブリは膜内に埋め込まれ、検知電極が、その膜に隣接して、またはその近くに位置づけられる。例えば、分析物検出複合体1を含むナノポアアセンブリは、集積回路などの検知回路の検知電極に隣接して配置された膜中に形成され、または別なふうに埋め込まれ得る。集積回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る。ある特定の実施形態例において、集積回路は、電界効果トランジスタまたは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)である。検知回路は、ナノポアを含むチップもしくは他のデバイスに、またはオフチップ構成としてなどチップもしくはデバイスから離れて、置かれ得る。半導体は、任意の半導体であり得、それには、非限定的に、IV族(例えば、シリコン)およびIII−V族半導体(例えば、ガリウムヒ素)が挙げられる。本明細書に記載された組成物および方法に従って用いることができる装置およびデバイス設定について、例えば、WO2013/123450(その全内容は参照により本明細書に明確に組み入れられている)を参照されたい。
当業者が理解しているように、ポアに基づいたセンサー(例えば、バイオチップ)は、単一分子の電子的問い合わせ分析(electro-interrogation analysis)のために用いることができる。ポアに基づいたセンサーは、検知電極に隣接してまたはそれの近くに配置される膜中に形成される、本明細書に記載されているようなナノポアアセンブリを含み得る。センサーは、例えば、対電極を含み得る。膜は、トランス側(すなわち、検知電極に対面する側)およびシス側(すなわち、対電極に対面する側)を含む。したがって、膜中に配置されるナノポアアセンブリもまた、トランス側(すなわち、検知電極に対面する側)およびシス側(すなわち、対電極に対面する側)を含む。本明細書に記載されているように、例えば、分析物リガンド2は、ナノポアアセンブリのシス側に位置し、一方、アンカリングタグ5はナノポアアセンブリのトランス側に位置する。
ナノポアアセンブリのナノポアは、典型的には、膜などの基質中に埋め込まれた多量体タンパク質である。タンパク質ナノポアの例には、例えば、アルファ同種溶血素、電位依存性ミトコンドリアポリン(VDAC)、OmpF、OmpC、OmpG、MspA、およびLamB(マルトポリン)が挙げられる(Rhee,M.ら、Trends in Biotechnology、25(4)(2007):174〜181参照)。他のナノポアの例には、ファイ29 DNAパッケージングナノモーター、ClyA、FhuA、アエロリジン、およびSp1が挙げられる。ある特定の実施形態例において、ナノポアタンパク質は、修飾型天然タンパク質または合成タンパク質などの修飾型タンパク質であり得る。例えば、アルファ溶血素の場合、ナノポアアセンブリのナノポアは、7つのアルファ溶血素単量体のオリゴマー(すなわち、七量体ナノポアアセンブリ)であり得る。アルファ溶血素七量体ナノポアアセンブリの単量体サブユニットは、同じポリペプチドの同一コピーであり得、またはそれらは、その割合が合計で7サブユニットになる限り、異なるポリペプチドであり得る。ナノポアは、当技術分野において知られた任意の方法によりアセンブルされ得る。例えば、アルファ溶血素ナノポアアセンブリは、全体として本明細書に組み入れられているWO2014/074727に記載された方法によりアセンブルされ得る。
図2Aに関して、ある特定の実施形態例により、3つのナノポアアセンブリを示すイラストが提供され、そのナノポアアセンブリのそれぞれが、分析物検出複合体1を含む。示されているように、分析物リガンド2を含む分析物検出複合体1の近位端は、ナノポアアセンブリのシス側に位置する。そのようなものとして、分析物検出複合体1の分析物リガンド2は、ナノポアアセンブリのシス側で分析物へ提示され得、それにより、本明細書に記載されているように、分析物リガンド2の分析物との結合を促進する。図2に示された例において、各分析物リガンド2は、異なる分析物リガンドへ方向づけられる。さらに、アンカリングタグ5は、ナノポアアセンブリのトランス側に位置する(図2A)。例えば、貫通要素3は、ナノポアのポアを通って伸び、それにより、シグナル要素の1つまたは複数(例えば、4aまたは4b)をナノポアアセンブリのポア内に位置づける。示されているように、第1のシグナル伝達要素4aは、ナノポアアセンブリのポア内に位置し、一方、第2のシグナル伝達要素4bはポアのシス側に位置する。各ナノポアアセンブリは、例えば、バイオチップの個々のウェル内に配置され得る。
図2Bに関して、ある特定の実施形態例により、図2Aの3つのナノポアアセンブリを示すが、示された分析物リガンド2のそれぞれが、それらのそれぞれの分析物6を結合している、イラストが提供される。ナノポアアセンブリはまた、分析物検出複合体がナノポアアセンブリのシス側へ引っ張られている最中である立体配置で示されている。図2Aのように、各分析物リガンド2は、ナノポアアセンブリのシス側に位置し、したがって、分析物結合は、ナノポアアセンブリのシス側で起こる(図2B)。そして、図2Aと同様に、貫通要素3の第1のシグナル伝達要素4aはナノポアアセンブリのポア内に位置したままであり、一方、貫通要素3の第2のシグナル伝達要素4bは、ナノポアアセンブリのシス側に位置している(図2B)。
図2Cに関して、ある特定の実施形態例により、各分析物検出複合体がナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張られている最中である立体配置でナノポアアセンブリが示されていることを除いて、図2A〜2Bにおいてと同じ3つのナノポアアセンブリを示すイラストが提供される。示されているように、貫通要素3の第2のシグナル要素4bは、今、ナノポアアセンブリのポア内に位置し、一方、貫通要素3の第1のシグナル要素4aは、ナノポアアセンブリのトランス側へ移動している。図2Cに示された例において、分析物のそれらのそれぞれの分析物リガンドとの結合は、分析物検出複合体がナノポアアセンブリのトランス側へ移動することを阻止することができる。しかしながら、さらに下に記載されているように、分析物検出複合体をナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張る力が、分析物−リガンド相互作用の結合力に打ち勝つ場合には、分析物検出複合体1の分析物リガンド3は、分析物から解離し得る。その後、分析物検出複合体1は、ナノポアアセンブリのトランス側へ転位置し得る。
分析物−リガンドの相互作用を評価するための方法およびシステム
ある特定の実施形態例において、分析物リガンドと分析物の間の結合強度を評価することを含む、リガンドとそのリガンドの分析物の間の結合相互作用を評価するための方法およびシステムが提供される。例えば、本明細書に記載されているような分析物検出複合体1を含むナノポアアセンブリは、バイオチップへ組み入れることができる。その後、バイオチップを、分析されることになっている流体試料と接触させることができる。分析物が流体溶液中に存在する場合には、分析物検出複合体1の分析物リガンド2は、分析物を結合することができ、それにより、ナノポアアセンブリと関連づけられた識別可能な電気シグナルを生じる(すなわち、結合シグナル)。さらに、分析物リガンド2と分析物の間の結合強度は、ポアと関連づけられた電気シグナルに基づいて決定することができる。分析物が流体試料中に存在しない場合には、分析物リガンド2は、分析物を結合せず、その場合、結合事象の欠如は、ナノポアアセンブリと関連づけられた電気シグナルから決定することができる。いかなる特定の理論によっても縛られるつもりはないが、そのような方法およびシステムは図3〜8に図解されている。
図3に関して、ある特定の実施形態例により、分析物−リガンドペアの結合および解離に関連した電気シグナルの変化と共に、分析物リガンド2と分析物6の間の弱い結合相互作用の評価を示すイラストが提供される。図3の時点「A」に示されているように、ナノポアは、「オープンなポア」としてチップの膜内に配置され得る。すなわち、ある特定の実施形態例において、ポアは、最初は分析物検出複合体1を含み得ず、その場合、ベースライン電気シグナルが、ポアと結びつけられた電極を介してナノポアから取得され得る。第1の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時、例えば、ある特定の実施形態例において、ナノポアは、分析物検出複合体1を捕獲することができ、それにより、第1のシグナル要素4aをポア内に位置づけ(時点「B」参照)、本明細書に記載されているようなナノポアアセンブリを形成する。
ある特定の実施形態例において、電気シグナルは、時点「B」においてナノポアアセンブリから検出することができ、そのシグナルは、分析物検出複合体1のナノポアアセンブリのナノポア内での貫通を示している(図3)。例えば、シグナルは、ナノポアのポア中に位置している最中である第1のシグナル要素4aの存在に対応する貫通シグナルであり得る(図3)。図3に示されているように、例えば、第1の電圧の印加はまた、分析物検出複合体1をナノポアアセンブリのシス側へ引っ張る。しかしながら、アンカリングタグ5が、分析物検出複合体1が膜のシス側まで引っ張られるのを阻止することができる。例えば、ポアのサイズに対するアンカリングタグ5のサイズが、分析物検出複合体1がナノポアアセンブリのシス側へ転位置するのを阻止することができる。
いったん、分析物検出複合体1がナノポア内に位置したならば、例えば、そのチップ、および、したがって、チップ膜内に配置されたナノポアアセンブリを、流体試料と接触させる。すなわち、ナノポアアセンブリを、標的分析物6の存在についてなど、試験されまたは調べられることになっている試料と接触させる。例えば、流体溶液を分析物の存在について試験するために、分析物検出複合体1の分析物リガンド2が標的分析物に対する結合親和性を有している、本明細書に記載されているような分析物検出複合体1を含むように準備されているナノポアアセンブリの上に、流体溶液を流すことができる。
流体がナノポアアセンブリの上に流された時、(存在する場合)分析物6は、分析物検出複合体1の分析物リガンド2と接触する機会をもち、それに従って、分析物リガンド2を結合することができる。しかし、分析物が流体溶液に存在しない場合には、分析物検出複合体1の分析物リガンド2との分析物の結合は起こらない。図3の例に示されているように、分析物6の分析物リガンド2との結合は、時点「C」で起こる。しかしまだ、分析物6がナノポアアセンブリのポアを遮断しているのではないため、例えば、ナノポアアセンブリと関連づけられた電気シグナルは、およそ変化していないままであり得る。例えば、第1のシグナル要素4aは、ナノポアアセンブリのポア中に位置したままであり得る。
チップを流体試料と接触させ、それに従って、任意の分析物に分析物リガンド2を結合する機会を与えた後、第1の電圧と極性が反対である第2の電圧が、膜に渡って漸増性に印加される。すなわち、第1の電圧が、第1の電圧と極性が反対である第2の電圧へと次第に移行させられる。例えば、第1の電圧は、負電位を有し得、その後、それが、正電位を有する電圧へ移行させられる。図3に示されているように、例えば、オープンなポア中に分析物検出複合体1を位置づけること、および分析物リガンド2の分析物との結合が、負電位サイクル中に起こり得、その後、電圧は、第1の電圧と極性が反対である第2の(正)電圧へゆっくり変化させられる。
第1の電圧と極性が反対の電圧が膜に渡って漸増性に印加された時、例えば、分析物リガンド2およびそれの結合した分析物6は、ナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張られる(図3の時点「D」)。しかしながら、結合した分析物6は、分析物検出複合体1がナノポアアセンブリを通り抜けて、ナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張られるのを阻止し得る。さらに、第2のシグナル要素4b(例えば、正極側のシグナル要素)が、ナノポアアセンブリのポア内に位置し得る。
図3に示されているように、分析物6の分析物リガンド2との結合、および分析物検出複合体1のポア内の再位置づけが、結果として、貫通シグナルとは異なり、かつ識別可能である結合シグナルを生じ得る。例えば、結合シグナルは、分析物リガンド2と結合している最中である分析物6の存在に対応する、ナノポアアセンブリと関連した検出可能な電気シグナルである(図3の時点「D」)。したがって、結合シグナルの検出はまた、分析物が、試験された試料中に存在するという指示を提供し得る。ある特定の実施形態例において、貫通シグナルを結合シグナルと比較することは、分析物6が分析物リガンド2と結合している(および、したがって、分析物が試験試料中に存在すること)という指示を提供する。例えば、貫通シグナルから結合シグナルへの電気シグナルの変化は、分析物6が分析物リガンド2と結合していることを示す。
ある特定の実施形態例において、第2のシグナル要素4bのナノポアアセンブリのポア中での位置づけは、結果として、結合シグナルを生じる。例えば、第2のシグナル要素4bは、ナノポア内に置かれている最中である第2のシグナル要素4bと関連づけられる特定の電気シグナルを生じ得る。そのようなものとして、第2のシグナル要素4bと関連した電気シグナルの検出は、結合シグナルに対応する。追加としてまたは代替として、ある特定の実施形態例において、分析物リガンド2と結合している分析物6は、例えば貫通シグナルと比較した、検出可能なシグナル変化を生じ得、それにより、試料中の分析物の存在を示す。例として、かついかなる特定の理論によっても縛られるつもりはないが、ポア開口部におけるまたはその近くの分析物6の存在は、ナノポアアセンブリのポアを遮断し、または部分的に遮断し得、それにより、ナノポアアセンブリから生じる電気シグナルに影響する(および、その結果として、検出可能な結合シグナルを生じる)。
結合シグナルの決定後、ある特定の実施形態例において、第1の電圧と極性が反対の電圧がさらに増加され得、それにより、分析物検出複合体1をナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張る力をさらに増加させる。電圧が増加する間のある時点において、分析物検出複合体1をナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張る力は、分析物リガンド2を分析物6から離して引っ張るのに十分強くなり得る。図3における時点「E」として図解されているこの時点において、分析物リガンド2と分析物6は、解離することができ、そして、分析物検出複合体1は、ナノポアアセンブリのトランス側へ移動する。したがって、ポア内に位置したいかなるシグナル要素も、完全にポアから外へ移動することができ、ナノポアアセンブリは、オープンなナノポア状態へ移行する。さらに、電気シグナルが、ナノポアと結びつけられた電極によって取得され得、その電気シグナルは解離シグナルに対応する。換言すれば、解離シグナルは、分析物リガンド2が分析物6から解離する時点においてまたはその時点頃にナノポアアセンブリから得られる電気シグナルに対応する。図3に示されているように、本明細書に記載されているように、電圧が増加するにつれて、相対的に早く、分析物が分析物リガンド2から解離する時、分析物と分析物リガンド2の間の相互作用は弱い相互作用である。
いったん、分析物検出複合体1の分析物リガンド2が分析物6から解離し、かつ分析物検出複合体1がナノポアのトランス側へ移動したならば、ある特定の実施形態例において、電圧は、再び、逆転され得、ポアはリサイクルされ得る(図3の時点「F」)。すなわち、本明細書に記載された解離事象後、第2の電圧と極性が反対の電圧が、膜に渡って印加され得る。例えば、電圧は、本明細書に記載された第1の電圧と、大きさおよび極性が同じまたは類似し得る。したがって、その後、ポアは、図3の時点「A」および「B」について本明細書に記載されているように、分析物検出複合体1を捕獲することができる。その後、時点「C」から「F」への過程は繰り返され得る。ある特定の実施形態例において、分析物検出複合体1を含む所定のナノポアアセンブリは、所定の試料の分析中、複数回、再使用することができる。
図4に関して、ある特定の実施形態例により、分析物リガンド2と分析物6の間の強い結合相互作用の評価を示すイラストが提供される。図4の時点「A」に示されているように、ナノポアは、「オープンなポア」としてチップの膜内に配置され得る。例えば、図3に示された例のように、第1の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時、ある特定の実施形態例において、ナノポアは、分析物検出複合体1を捕獲することができ、それにより、第1のシグナル要素4aをポア内に位置づける(時点「B」参照)。その後、時点「B」において貫通シグナルが、ナノポアアセンブリから検出され得、その貫通シグナルが、ナノポアアセンブリのナノポア内の分析物検出複合体1の存在を示している(図4)。例えば、シグナルは、ナノポアアセンブリのポア中に位置づけられている最中である第1のシグナル要素4aの存在に対応し得る(図4)。さらに、図3のように、アンカリングタグ5は、分析物検出複合体1がナノポアアセンブリのシス側へ引っ張られるのを阻止し得る(図4)。
いったん、分析物検出複合体1がナノポア内に位置したならば、例えば、チップを、本明細書に記載されているような流体試料と接触させ、それにより、分析物リガンド2のそれの同族分析物6との結合を促進する。図4に示されているように、分析物の分析物リガンド2との結合は時点「C」において起こる。しかしまだ、分析物6がナノポアアセンブリのポアを遮断しているのではないため、例えば、ナノポアアセンブリと関連づけられた電気シグナルは、およそ変化していないままであり得る(図4)。例えば、第1のシグナル要素4aは、ナノポアアセンブリのポア中に位置したままであり得、一方、第2のシグナル要素4bはナノポアアセンブリのトランス側のままであり得る。
チップを流体試料と接触させ、それに従って、分析物に分析物リガンド2を結合する機会を与えた後、第1の電圧と極性が反対である第2の電圧が、ナノポアアセンブリに渡って漸増性に印加され得る。例えば、第2の電圧が、ナノポアアセンブリに渡って徐々に印加される。図2の弱い結合例と同様に、例えば、分析物検出複合体1をオープンなポア中に位置づけること、および分析物リガンド2の分析物への結合が、負電位サイクルで起こり得、その後、電圧が、第1の電圧と極性が反対である第2の(正)電圧へゆっくり変化させられる(図4)。
第1の電圧と極性が反対の電圧が膜に渡って漸増性に印加された時、本明細書に記載されているように、分析物リガンド2およびそれの結合した分析物は、ナノポアアセンブリのトランス側へ引っ張られる(図4の時点「D」)。さらに、第2のシグナル要素4b(例えば、正極側のシグナル要素)が、ナノポアのポア内に位置づけられ、そこに留まり得、それにより、結合シグナルを提供する。したがって、図3に図解された弱い結合例と同様に、結合シグナルの検出は、分析物が、試験された試料中に存在するという指示を提供する(図4の時点「D」参照)。ある特定の実施形態例において、結合した分析物の存在は、追加としてまたは代替として、本明細書に記載されているように、結合シグナルを提供する。
図4の時点「E」において示されているように、第2の電圧をさらに増加させることは、結果として、分析物リガンド2の分析物からの解離を生じ得、その解離は、識別可能な解離シグナルと関連づけられる。しかしながら、図3の時点「E」と比較して、図4に図解されたより強い結合は、分析物リガンド2を分析物から分離させるのにより強い力が必要とされるという結果を生じる。したがって、図4に図解されているように、分析物は、(図3に示された弱い結合と比較して)より長い時間、分析物リガンド2と結合した状態に留まる。そのようなものとして、図4(時点「E」における強い結合)に示されたナノポアアセンブリと関連づけられた解離シグナルは、図3(時点「E」における弱い結合)に示された解離シグナルとは異なる。分析物リガンド2の分析物からの解離後、分析物検出複合体1は、膜のトランス側へ移動することができ、ナノポアは、本明細書に記載されているように、リサイクルされ得る(時点「F」、図4)。
図5に関して、ある特定の実施形態例により、分析物リガンド2と分析物6の間の非常に強い相互作用の評価を示すイラストが提供される。図5に示されているように、ナノポアアセンブリは、図3および4に関して記載されているように、時点A〜Dまで進行する。例えば、時点「C」において、分析物6は、分析物リガンド2を結合し、印加された第1の電圧と極性が反対の第2の電圧の漸進的に増加した印加と共に、時点「D」において、分析物検出複合体1がナノポアのトランス側へ引っ張られる。時点「D」において、例えば、解離シグナルが取得され得る。
しかし、図2、3、および4に関して記載された分析物−リガンドの相互作用とは違って、分析物6と分析物リガンド2の間の結合は、第2の電圧を増加させることが、分析物と分析物リガンド2との間の結合力に打ち勝つことができないほど強い(図5、時点「E」において)。したがって、分析物と分析物リガンド2との間の解離がないため、解離シグナルは得られない(図5)。そのようなものとして、シグナル伝達要素4bは、正極側サイクルの間中、ポア中に留まり得(時点「D」において、シグナル要素4aはポアの外にある)、それにより、分析物が分析物リガンド2と非常に強く結合しているという指示を提供する(図5)。換言すれば、本明細書に記載されているような結合シグナルの決定、その後、本明細書に記載されているような解離シグナルの欠如が続くことは、第2の電圧の増加にも関わらず、分析物が分析物リガンド2と結合したままであるという指示を提供し得る。そのような実施形態例において、ナノポアはリサイクルされない。図5に示されているように、例えば、第2の電圧と極性が反対の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された後でさえも、分析物は、分析物リガンド2と結合したままである(図5、時点「F」において)。
図6に関して、ある特定の実施形態例により、標的分析物が試験溶液に存在しない場合の試験試料の評価を示すイラストが提供される。図6に示されているように、ナノポアアセンブリは、図3〜5に関して記載されているように、時点A〜Bまで進行する。例えば、分析物検出複合体1は、本明細書に記載されているように、第1の電圧の印加によって時点「B」においてナノポアアセンブリのポア内に位置づけられ得、貫通シグナルが検出される(図6)。示されているように、シグナル要素4aはポア内に位置し、一方、シグナル要素4bは、ポアの外側にある(図6、時点「B」において)。しかし、分析物が試験試料に存在しないため、時点「C」において、分析物と分析物リガンド2との間の結合は起こらない。そして、電圧の極性が本明細書に記載されているように変化した時、時点「D」(図6)において、すなわち、第2の電圧の印加における非常に早い時点で、分析物検出複合体1は、ナノポアアセンブリの外へ引っ張られる。例えば、分析物−リガンドの結合がないため、(図3〜5と比較して)分析物は、分析物検出複合体1が転位置してナノポアのトランス側へ戻るのを阻止しない。したがって、結合シグナルは決定されない。同様に、第1の電圧と極性が反対の電圧が時点「E」までさらに増加した時、ナノポアはオープンのままであり、解離電圧は決定されない(図6)。むしろ、「正電位」および「負電位」の両方におけるオープンなチャネルシグナルが検出され得る。
ある特定の実施形態例において、ナノポアをリサイクルすることを用いて、ナノポアの分析物−リガンドの結合評価の信頼度レベルを増加させることができる。すなわち、分析物が分析物リガンド2から解離する例において、同じナノポアが、分析物の分析物リガンド2との相互作用を評価し、その後、それを再評価するように、本明細書に記載されているように、複数回、再使用することができる。そのようなものとして、ナノポアをリサイクルすることは、ナノポアアセンブリごとに複数のデータ点を提供することができ、それに従って、分析物−リガンドの相互作用についての追加情報を提供する。
追加としてまたは代替として、ある特定の実施形態例において、分析物−リガンドの結合評価の信頼度をさらに増加させるために、同じ分析物へ方向づけられた複数のナノポアアセンブリを用いることができる。例えば、それぞれのそのようなナノポアアセンブリが、分析物−リガンドの結合相互作用を評価するために用いることができ、解離が起こる場合、その複数のナノポアはまた本明細書に記載されているようにリサイクルされ得、それにより、(複数のナノポアおよびナノポアリサイクリングによって)分析物−リガンドの結合評価の信頼度をさらに増加させる。したがって、本明細書に記載されているように、所定の分析物へ方向づけられるナノポアアセンブリの数を増加させることにより、および所定のナノポアアセンブリをリサイクルすることにより、分析物−リガンドの結合評価の信頼度は、実質的に増加し得る。
ある特定の実施形態例において、異なるナノポアアセンブリのサブセットが、単一のチップ上に形成され得、各個々のサブセットが同じ標的分析物へ方向づけられている。したがって、そのような実施形態において、単一チップは、チップ上の異なる分析物とそれらのそれぞれのリガンドとの間の結合相互作用を評価するために本明細書に記載されているように用いられ得る。さらに、ナノポアアセンブリの各サブセットについて、分析物−リガンドの評価の信頼度レベルは、例えば、本明細書に記載されているように、サブセット中のナノポアアセンブリの数を増加させること、および/または各ナノポアアセンブリのリサイクリングにより、本明細書に記載されているように増加され得る。
当業者が理解しているように、チップ上の異なるナノポア集団間を区別するために様々な方法が利用できる。例えば、より小さいまたはより大きいポアサイズをもつポアなどの異なるナノポアタイプが、用いられ、当技術分野において知られた技術に基づいて容易に区別され得る。そのような構成に関して、例えば、より大きい開口部を有するナノポアは、より小さい開口部を有するポアより大きい電流シグナルを提供し得、したがって、同じチップ上のポアの区別を可能にする。その後、異なるナノポアは、それらが検出するように構成されている分析物と相互に関連づけることができ、したがって、同じチップ上の異なる分析物の同定を可能にする。区別の他の方法には、全体としての分析物検出複合体1および/または貫通要素の遮断レベル、ポアの電流−電圧プロフィールを含む、分析物の非存在下でのポアと関連づけられる電気シグナルが挙げられる。ある特定の実施形態例において、異なるナノポアアセンブリは、対照分析物を用いて区別され得る。すなわち、既知の分析物は、その特定の分析物を結合するナノポアアセンブリの集団を同定するように示し得る。そのような方法を用いて、例えば、分析物AAに方向づけられたナノポアアセンブリは、分析物BBまたはCCに方向づけられたナノポアアセンブリから区別され得る。
図7に関して、ある特定の実施形態例により、弱い、強い、および非常に強い分析物−リガンドの相互作用についての個々の分析物捕獲および解離の信頼度レベル分布例を示すイラストが提供される。そのような実施形態例において、同じチップ上の異なる分析物−リガンドペア間での相対的結合強度が、評価および比較され得る。例えば、各サブセットが同じ分析物に方向づけられているが、異なるサブセットが異なる分析物へ方向づけられている、複数のナノポアアセンブリサブセットについて、所定の結合−解離のサイクルを通して印加される電圧レベルが、分析物結合の確率に対してプロットされ得る。例えば、ピークは、分析物−リガンド結合ペアの解離に対応する。図3に図解されているものなどの弱い相互作用について、より強い結合相互作用と比較して、解離のためにより低い電圧が必要とされる(図7)。図4に図解されているようなものなどの強い相互作用について、解離のためにより強い電圧が必要される(図7)。そして、図5に図解されているようなものなどの非常に強い相互作用について、より高い電圧にも関わらず、解離は起こらない(図7)。その後、例えば、その異なる電圧が比較され得、それにより、異なる分析物−リガンドペアの相対的結合強度の指示を提供する。
ある特定の実施形態例において、本明細書に記載された方法およびシステムは、検出された分析物を同定するために用いることができる。例えば、本明細書に記載されているように、結合シグナルによってなど、分析物が検出された場合、その分析物の特定のアイデンティティは、分析物リガンドの既知のアイデンティティに基づいて決定することができる。例えば、分析物リガンド2が、モノクローナル抗体またはその機能性断片などの特異的な抗体である場合には、本明細書に記載された方法およびシステムによる抗原の検出が、流体溶液中に見出された特定の抗原を同定するために用いることができる。分析物リガンド2が、タンパク質マーカーなどの特定の疾患マーカーに方向づけられている場合には、本明細書に記載された方法およびシステムは、その特定のマーカーが試料中に存在していると同定するために用いることができる。そのような実施形態は、例えば、対象由来の流体試料を特定の分析物の存在について分析する場合、有用である。
ある特定の実施形態例において、本明細書に記載された方法およびシステムは、同じチップ上で複数の既知の分析物を検出および同定するように、単一チップ上で用いることができる。そのような実施形態は、例えば、試験試料を、複数の既知の分析物の存在(または非存在)について分析するために、有用である。当業者が理解しているように、現在のチップテクノロジーは、単一チップ上での何十万個(またはそれ以上)ものナノポアの沈着を可能にする。したがって、本明細書に記載された方法および組成物を用いることにより、何千個という異なるナノポアアセンブリが、何千個という異なる分析物について流体試料を試験するために同じチップ上で用いられ得る。
例えば、ナノポアアセンブリの複数のサブセットが、本明細書に記載されているようにアセンブルされ得、各サブセットが、異なる既知の分析物を検出するように設定される。ナノポアアセンブリの各サブセットは、例えば、同じ分析物リガンド2を含み、それに従って、同じ既知の分析物に方向づけられ得、一方、異なるサブセットは、異なる分析物に方向づけられる。ナノポアアセンブリの異なるサブセット間を区別するために、ナノポアアセンブリの各サブセットは、例えば、サブセット特異的シグナル伝達要素を含み得る。例えば、1つのサブセットは、異なるシグナル要素4bを有するナノポアアセンブリの別のサブセットとは異なる、特定のシグナル要素4bを有し得る。ある特定の実施形態例において、異なるサブセットは、第3のシグナル要素などの追加のシグナル要素の包含に基づいて区別可能であり得る。他の実施形態例において、ナノポアアセンブリの1つのサブセットは、それと会合した3つのシグナル要素を有する分析物検出複合体を含み得、一方、他のサブセットは、それと会合した4つのシグナル要素を有し得る。当業者が理解しているように、ナノポアアセンブリの異なるサブセットは多くの様式で区別することができる。
いったん、ナノポアアセンブリの異なるサブセットがチップ上にアセンブルされたならば、チップを、対象由来の流体試料などの、本明細書に記載されているような試験試料と接触させることができる。既知の分析物のいずれかが試験試料中に存在する場合には、分析物の分析物リガンドとの結合は、本明細書に記載されているように、電圧の極性を切り換えて、結合シグナルを決定することにより、評価され得る。その後、分析物の分析物リガンド2との結合は、結合シグナルに基づいて決定され得る。換言すれば、結合シグナルは、分析物が試験試料中に存在するという指示を提供する。ある特定の実施形態例において、異なる分析物−リガンドペアの結合強度もまた、本明細書に記載されているように、第2の電圧を増加させ続けることにより、評価することができる。したがって、複数の分析物が同じチップ上で分析される場合、分析物−リガンドペアが同定されるだけでなく、最も強い結合をもつペアもまた同定され得る。
同様に、ある特定の実施形態例において、単一チップは、新しい分析物−リガンドペアの発見に用いることができる。そのような実施形態は、例えば、創薬および診断薬開発の分野においてなど、多くの有用な適用をもつ。例えば、ナノポアアセンブリの異なるサブセットがチップ上に形成され得、各サブセットが、未知のリガンドに対する異なる分析物リガンドを含む。さらに、ナノポアアセンブリは、本明細書に記載されているように、区別され得る。例えば、分析物リガンドXを含むナノポアアセンブリは、本明細書に記載されているように、分析物リガンドYまたは分析物リガンドZを含むナノポアアセンブリから区別され得る。その後、ナノポアアセンブリは、それらのリガンドに対するいくつかの異なる候補分析物を含有する試験試料と接触させられ得る。その後、候補分析物の特定のリガンドとの任意の結合が、本明細書に記載されているように、決定され得る。例えば、ある特定の分析物は、リガンドXのみと結合し得る(かつ、他のリガンドを結合し得ない)。さらに、リガンドXを結合する分析物のうち、最も強い分析物−リガンドの結合をもつものもまた、本明細書に記載されているように、第2の電圧を増加させることにより、同定され得る。
図8に関して、ある特定の実施形態例により、チップ上での特定の分析物−リガンドの相互作用の同定を示すイラストが提供される。示されているように、複数の異なるナノポアアセンブリが、負極電圧などの所定の第1の電圧下でチップ上に形成される(左パネル)。(オープンな状態での)ナノポアからの、またはナノポアアセンブリからのシグナルデータに基づいて、異なるナノポアアセンブリが区別され得る。示されているように、図8(左側)に示されているように、同じナノポアの異なるサブセットがチップ上に形成され得る。ナノポアアセンブリを試験試料と接触させた後、第1の電圧と極性が反対の第2の電圧が印加される(例えば、正電圧)(図8(右側))。第2の電圧が印加された時、任意の分析物−リガンド結合ペアが、本明細書に記載されているように、同定され得る。図8に示されているように、例えば、単一の(signal)分析物−リガンド相互作用が同定され得る。
なお他の実施形態例において、本明細書に記載された方法およびシステムは、分析物−リガンドペアの間の解離定数を決定するために用いることができる。例えば、分析物−リガンドペアについての解離電圧は、解離シグナルに基づいて得ることができる。解離電圧は、例えば、解離シグナルの検出と一致する、分析物−リガンドの解離が起こる時点における電圧に対応する。
ある特定の実施形態例において、解離定数を決定するために、分析物−リガンドペアの解離電圧は、あらかじめ決められた参照解離電圧と比較され得、その比較が、その後、分析物−リガンドペアについての解離定数の同定を可能にする。参照解離電圧は、例えば、既知の参照分析物−リガンドペアが本明細書に記載された方法に供された時、その既知の参照分析物−リガンドペアが解離する時点における電圧に対応する。解離定数が参照分析物−リガンドペアについて知られているならば、その解離定数が、試験されることになっている分析物−リガンドペアに割り当てることができる。例えば、調べられることになっている分析物−リガンドペアについての解離電圧が、参照解離電圧とマッチングされ得、そのマッチングしている解離電圧が、調べることになっている分析物−リガンドペアに割り当てられ得る、関連づけられた解離定数を有する。
ある特定の実施形態例において、参照解離電圧は、対照分析物−リガンドペアの解離電圧とそれらの既知の解離定数の曲線から取得され得る。例えば、異なる対照分析物に方向づけられた分析物リガンドを有するナノポアアセンブリが、本明細書に記載されているように、チップ上に形成され得る。ある特定の実施形態例において、試験されるべき分析物に方向づけられた分析物リガンドを有するナノポアアセンブリもまた、同じチップ上に形成され得る。その後、チップを、対照分析物と接触させ、ある特定の実施形態例において、調べられるべき分析物もまた、チップにアプライされ得る(すなわち、試験分析物)。例えば、試験分析物が対照分析物と共に同じチップ上で試験されることになっている実施形態において、対照分析物および試験分析物を、一緒に混合することができ、その後に、チップをその混合物と接触させる。
チップを混合物と接触させた後、対照分析物についての解離電圧が、本明細書に記載されているように、決定され得、その解離電圧を、対照分析物−リガンドペアについての既知の解離定数に対してプロットすることにより、曲線が作成され得る。その後、試験分析物−リガンドペアの解離電圧を曲線上の電圧(すなわち、参照解離電圧)とマッチングすることにより、試験分析物−リガンドペアについての解離定数が決定され得る。ある特定の実施形態例において、結合と解離の多数のサイクルが、本明細書に記載されているように、実施され得、それにより、試験分析物−リガンドペアと任意の対照分析物−リガンドペアの両方についての解離電圧決定の信頼度レベルを増加させる。
分析物結合を検出すること、および分析物−リガンドの結合強度を決定することに加えて、本明細書に記載された方法およびシステムは、チップにアプライされる流体溶液中の1つまたは複数の分析物の濃度を決定するために用いることができる。すなわち、分析物−リガンドの結合相互作用は、本明細書に記載されているように、評価および同定され得、それにより、溶液中の分析物の濃度の決定を可能にする。例えば、それぞれが特定の分析物に方向づけられた分析物検出複合体と会合している、複数のナノポアアセンブリが、本明細書に記載されているように、チップ上に形成され得る。同様に、対照分析物に方向づけられたナノポアアセンブリがそのチップ上に形成され得る。その後、ナノポアアセンブリを含むチップを、本明細書に記載されているように、あらかじめ決められた濃度の対照分析物と共に、1つまたは複数の試験分析物と接触させることができ、それに従って、分析物がそれらの同族分析物リガンド2と結合するのを可能にする。その後、本明細書に記載されているように、第1の電圧と極性が反対の第2の電圧が、ナノポアアセンブリに渡って、結合シグナルが得られるまで、印加される。
チップ上の試験分析物−リガンドのペア形成と関連づけられる結合シグナルの数をカウントすることにより、分析物−リガンドペアについての結合カウント数が決定され得る。したがって、結合カウント数は、第2の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時に起こる分析物−リガンド結合の総数に対応する。ある特定の実施形態例において、結合カウント数の信頼度レベルは、本明細書に記載されているように、試験分析物−リガンドペアを結合状態と非結合状態の間でサイクリングする(すなわち、ナノポアをリサイクルする)ことにより、増加され得る。例えば、結合カウント数は、本明細書に記載されているように、会合と解離の複数のサイクルに渡る分析物−リガンド結合の数の平均値または中央値に対応し得る。
試験分析物−リガンドペアについての結合カウント数を決定することに加えて、参照カウント数が、対照分析物−リガンド結合ペアについて同時に決定され得る。例えば、参照カウント数は、第2の電圧がナノポアアセンブリに渡って印加された時に起こる対照分析物−リガンド結合の総数に対応する。そして、試験分析物−リガンドペアのように、参照カウント数の信頼度レベルは、本明細書に記載されているように、対照分析物−リガンドペアを結合状態と非結合状態の間でサイクリングすることにより、増加され得る。例えば、参照カウント数は、本明細書に記載されているように、会合と解離の複数のサイクルに渡る対照分析物−リガンド結合の数の平均値または中央値に対応し得る。
溶液中の試験分析物の濃度を決定するために、例えば、決定された結合カウント数が、決定された参照カウント数と比較され得る。例として、対照分析物が、チップに加えられる時、10μMの濃度で存在することがわかっており、かつ対照分析物に方向づけられたナノポアアセンブリがサイクルあたり平均1000個の捕獲物を結合する場合には、参照カウント数は、10μM試料について1000ということになる。例えば、同じサイクルセットの間、試験分析物についての平均結合カウント数もまた1000であったならば、試験分析物の濃度は10μMであると推測することができる。しかし、試験分析物についての平均結合カウント数が2000、すなわち、対照分析物の2倍であったならば、試験分析物の濃度は10μMであろう。あるいは、試験分析物についての平均結合カウント数が500、すなわち、対照分析物の半分であったならば、試験分析物の濃度は5μMであろう。
開示された発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を鑑みれば、例示された実施形態例が本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことは認識されているはずである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。それゆえに、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神内に入る全てを本発明者らの発明として主張する。

Claims (25)

  1. 分析物リガンド、貫通要素、シグナル要素、およびアンカリングタグを含む、分析物検出複合体。
  2. 分析物リガンドが分析物検出複合体の近位端に位置し、シグナル要素が貫通要素に会合している、請求項1に記載の分析物検出複合体。
  3. 分析物リガンドが抗体またはその機能性断片である、請求項1または2に記載の分析物検出複合体。
  4. 貫通要素の遠位端にアンカリングタグをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分析物検出複合体。
  5. アンカリングタグがビオチンタグを含む、請求項4に記載の分析物検出複合体。
  6. シグナル要素が、オリゴヌクレオチド配列、ペプチド配列、またはポリマーを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析物検出複合体。
  7. シグナル要素が約40個のヌクレオチド対のオリゴヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載の分析物検出複合体。
  8. オリゴヌクレオチド配列が、一続きのT残基または一続きのN3−シアノエチル−T残基を含む、請求項7に記載の分析物検出複合体。
  9. 第2のシグナル要素をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分析物検出複合体。
  10. 第2のシグナル要素が、オリゴヌクレオチド配列、ペプチド配列、またはポリマーを含む、請求項9に記載の分析物検出複合体。
  11. シグナル要素が約40個のヌクレオチド対のオリゴヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の分析物検出複合体。
  12. オリゴヌクレオチド配列が、一続きのT残基または一続きのN3−シアノエチル−T残基を含む、請求項11に記載の分析物検出複合体。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の分析物検出複合体を含む、ナノポアアセンブリ。
  14. 七量体アルファ溶血素ナノポアアセンブリである、請求項13に記載のナノポアアセンブリ。
  15. 分析物と分析物リガンドの間の結合強度を評価するための方法であって、:
    第1の電圧の存在下で、請求項13または14に記載のナノポアアセンブリを含むチップを供給するステップであって、前記ナノポアアセンブリが膜内に配置され、かつ検知電極が前記膜に隣接してまたはそれの近くに位置づけられる、ステップ;
    分析物を含む流体溶液と前記チップを接触させるステップであって、前記分析物が、分析物検出複合体の分析物リガンドに対する結合親和性を含む、ステップ;
    前記膜に渡って漸進的に増加した第2の電圧を印加するステップであって、前記第2の電圧が前記第1の電圧と極性が反対である、ステップ;
    前記膜に渡って漸進的に増加した第2の電圧を印加することに応答して、検知電極を活用して、結合シグナルを決定するステップであって、前記結合シグナルが、前記分析物が前記分析物リガンドと結合しているという指示を提供する、ステップ;および
    前記第2の電圧をさらに増加させながら、検知電極を活用して、解離シグナルを決定するステップであって、前記解離シグナルが、前記分析物と分析物リガンドの間の結合強度の指示を提供する、ステップ
    を含む方法。
  16. 膜に渡っての第1の電圧が、分析物リガンドを膜のシス側に位置づける、請求項15に記載の方法。
  17. 検知電極を活用して、貫通シグナルを決定するステップであって、前記貫通シグナルが、貫通要素がナノポアアセンブリのポア内に位置しているという指示を提供する、ステップをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
  18. 貫通シグナルを結合シグナルと比較するステップであって、前記比較が、分析物が分析物リガンドと結合しているという指示を提供する、ステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
  19. 解離シグナルから、分析物の分析物リガンドからの解離と関連づけられる解離電圧を決定するステップをさらに含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 決定された解離電圧を参照解離電圧と比較するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  21. 決定された解離電圧の参照解離電圧との比較から、分析物と分析物リガンドの結合ペアについての解離定数を決定するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  22. 流体溶液中の分析物の濃度を決定する方法であって、
    第1の電圧の存在下で、請求項13または14に記載の複数のナノポアアセンブリを含むチップを供給するステップであって、前記ナノポアアセンブリが膜内に配置され、かつ前記ナノポアアセンブリの少なくとも第1のサブセットが第1の分析物リガンドを含む、ステップ;
    複数の検知電極を前記膜に隣接してまたはそれの近くに位置づけるステップ;
    第1の分析物を含む流体溶液と前記チップを接触させるステップであって、前記第1の分析物が前記第1の分析物リガンドに対する結合親和性を含む、ステップ;
    前記複数の検知電極およびコンピュータプロセッサを活用して、結合カウント数を決定するステップであって、前記結合カウント数が、前記第1の分析物リガンドと前記第1の分析物の間の結合相互作用の数の指示を提供する、ステップ;
    前記決定された結合カウント数を参照カウント数と比較するステップ;
    結合カウント数の参照カウント数との比較に基づいて、流体溶液中の前記分析物の濃度を決定するステップ
    を含む方法。
  23. 結合カウント数を決定するステップが、
    複数の検知電極を活用して、かつナノポアアセンブリの第1のサブセットのナノポアアセンブリごとに、貫通シグナルを決定するステップであって、前記貫通シグナルが、貫通要素がナノポアアセンブリのナノポア内に位置しているという指示を提供する、ステップ;
    膜に渡って漸進的に増加した第2の電圧を印加するステップであって、前記第2の電圧が第1の電圧と極性が反対である、ステップ;
    膜に渡って漸進的に増加した第2の電圧を印加することに応答して、複数の検知電極を活用して、かつナノポアアセンブリの第1のサブセットのナノポアアセンブリごとに、結合シグナルを決定するステップ;
    ナノポアアセンブリの第1のサブセットのナノポアアセンブリごとに、決定された貫通シグナルを決定された結合シグナルと比較するステップであって、前記比較が、第1の分析物が第1の分析物リガンドと結合しているという指示を提供する、ステップ;および
    各決定された貫通シグナルの決定された結合シグナルとの比較から、第1の分析物が第1の分析物リガンドと結合しているという指示の総数を決定するステップであって、前記指示の総数が結合カウント数に対応する、ステップ
    を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 複数のナノポアアセンブリが、ナノポアアセンブリの第2のサブセットをさらに含み、前記第2のサブセットのナノポアアセンブリのそれぞれが第2の分析物リガンドを含み、前記第2の分析物リガンドが対照分析物に対する結合親和性を含む、請求項23に記載の方法。
  25. 参照カウント数を決定するステップであって、前記参照カウント数を決定するステップが、流体溶液をあらかじめ決められた量の対照分析物と接触させるステップを含み、それにより、流体溶液中の対照分析物のあらかじめ決められた濃度を提供する、ステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
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