JP2021518127A - 高熱安定性を持つ修飾ヌクレオシドホスフェート - Google Patents

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Abstract

本発明は、末端ホスフェート、例えばγ−ホスフェートでフッ素化されたヌクレオシドポリホスフェートを含む、PCR及びRT−PCR(逆転写酵素PCR)による核酸増幅に使用される安定なヌクレオチド試薬を提供する。本発明はまた、増幅反応における試料中の標的核酸配列の存在又は不在を検出するための、フッ素化されたヌクレオシドポリホスフェートを用いる方法も提供する。

Description

本発明は、安定なヌクレオチド試薬、それらの合成方法と、それらの使用方法と、それらを含むキットと、を提供する。ヌクレオチド試薬は、多くの組換えDNA及びRNA技術、特にポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)による核酸増幅において有用である。
核酸増幅試薬は、典型的には、温度感受性の成分から構成され、したがって、周囲温度より充分に低い温度で貯蔵して輸送しなければならないことが多い。これは特に、デオキシリボヌクレオシドトリホスフェート又はそのリボヌクレオシドトリホスフェート類似体の場合にある。これらの試薬は、末端からの連続したホスフェート基の喪失を介して分解されやすく、核酸ポリメラーゼの基質ではないヌクレオシドジホスフェート及びモノホスフェートの両方を形成する。更に、ジホスフェートの蓄積は酵素活性を阻害し得る。末端ホスフェートをエステル化することによって、ヌクレオシドポリホスフェートの安定性を向上させることができる。例えば、末端ホスフェートにメチルエステルを含有するdNTP類似体は、正常なdNTPを完全に分解するのに充分な熱ストレス条件下において完全に安定であった。しかしながら、末端ホスフェートのエステル化は、ある特定のポリメラーゼ酵素に有効な基質として働くこれらのヌクレオチドの能力に負の影響を及ぼし得る。熱的に安定であり、かつポリメラーゼ酵素の効率的な基質であるdNTP類似体を有する必要性が存在する。
本発明は、修飾されたヌクレオシドポリホスフェートを含む、PCR及びRT−PCR(逆転写酵素PCR)による核酸増幅に使用される安定なヌクレオチド試薬を提供する。本発明はまた、増幅反応における試料中の標的核酸配列の存在又は不在を検出するための、修飾されたヌクレオシドポリホスフェートを用いる方法も提供する。
したがって、一態様では、本発明は、試料中の標的核酸配列の存在又は不在を検出する方法であって、該標的核酸配列が該試料中に存在する場合、該試料を増幅試薬と接触させて該試料を増幅試薬と接触させて増幅産物を生成することを含む、増幅工程を実施することと、該増幅産物を検出することと、を包含し、ここで、該増幅試薬は、次の構造を有する修飾されたヌクレオシドポリホスフェートを含み、
Figure 2021518127
式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である。一実施形態では、n=1である。別の実施形態では、n=2である。更に別の実施形態では、n=3〜4である。いくつかの実施形態では、増幅工程は、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態では、増幅工程は少なくとも約20回繰り返されるが、少なくとも40回、少なくとも60回、又は少なくとも100回繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、増幅産物は、増幅が起こった後に1回検出される。いくつかの実施形態では、増幅産物は、増幅工程の間及び/又は増幅工程の後に検出される。いくつかの実施形態では、増幅産物は、3回、5回、10回、20回、30回、40回、若しくは50回の増幅工程の間及び/若しくは後、又は各増幅工程の間及び/若しくは後の所定の時点で検出される。いくつかの実施形態では、増幅試薬は、熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素を含む。いくつかの実施形態では、増幅試薬は、核酸ポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素活性を持つ。
別の態様では、本発明は、増幅試薬を用いて標的核酸配列を増幅する方法を包含し、ここで、該増幅試薬は、次の構造を有する修飾されたヌクレオシドポリホスフェートを含み、
Figure 2021518127
式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である。一実施形態では、n=1である。別の実施形態では、n=2である。更に別の実施形態では、n=3〜4である。いくつかの実施形態では、増幅工程は、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態では、増幅工程は少なくとも約20回繰り返されるが、少なくとも40回、少なくとも60回、又は少なくとも100回繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、増幅産物は、増幅が起こった後に1回検出される。いくつかの実施形態では、増幅産物は、増幅工程の間及び/又は増幅工程の後に検出される。いくつかの実施形態では、増幅産物は、3回、5回、10回、20回、30回、40回、若しくは50回の増幅工程の間及び/若しくは後、又は各増幅工程の間及び/若しくは後の所定の時点で検出される。いくつかの実施形態では、増幅試薬は、熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素を含む。いくつかの実施形態では、増幅試薬は、核酸ポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素活性を持つ。
別の態様では、本発明は、次の構造を有する修飾されたヌクレオシドポリホスフェートを含む組成物を包含し、
Figure 2021518127
式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である。一実施形態では、n=1である。別の実施形態では、n=2である。更に別の実施形態では、n=3〜4である。
別の態様では、本発明は、核酸ポリメラーゼと、緩衝液と、下記の構造を有する修飾ヌクレオシドポリホスフェートとを含む、反応混合物又はキットのいずれかを包含し、
Figure 2021518127
式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である。一実施形態では、n=1である。別の実施形態では、n=2である。更に別の実施形態では、n=3〜4である。いくつかの実施形態では、キットの反応混合物は、熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素活性を持つ。いくつかの実施形態では、キット構成物は、別々のバイアル又は容器中の別々の構成要素としてキットに含まれる。いくつかの実施形態では、キット構成物の1つ以上は、同一のバイアル又は容器中でキットに含まれる。
本発明の実施形態及び利点を、発明を実施するための形態及び図において更に詳細に記載する。
図1は、合成されたフッ素化デオキシリボヌクレオシドポリホスフェート類似体の化学構造を示す。 図2は、2’−デオキシリボヌクレオシド5’−O−(γ−フルオロ−トリホスフェート)(dNTP−γF)ナトリウム塩の化学合成の概略図である。 図3は、2’−デオキシリボヌクレオシド5’−O−(δ−フルオロ−テトラホスフェート)(dN4P−δF)ナトリウム塩の化学合成の概略図である。 図4は、65℃における天然dUTP及びdUTP−γFの熱安定性を示す。 図5は、Z05ポリメラーゼ及びrThピロホスファターゼ酵素を用いた、DNA標的からの定量的PCR増幅反応の増殖曲線を示す。 図6は、Z05ポリメラーゼ及びTIPピロホスファターゼ酵素を用いた、DNA標的からの定量的PCR増幅反応の増殖曲線を示す。 図7は、C21ポリメラーゼ及びrThピロホスファターゼ酵素を用いた、armored HIV−1 RNA標的からの逆転写酵素定量的PCR増幅反応の増殖曲線を示す。 図8は、C21ポリメラーゼ及びTIPピロホスファターゼ酵素を用いた、armored HIV−1 RNA標的からの逆転写酵素定量的PCR増幅反応の増殖曲線を示す。
本発明は、フッ素化されたデオキシリボヌクレオシドポリホスフェートを含む、PCR及びRT−PCR(逆転写酵素PCR)による核酸増幅に使用される安定なヌクレオチド試薬を提供する。本発明はまた、増幅反応における試料中の標的核酸配列の存在又は不在を検出するため、及び試料中の標的核酸配列を増幅するためのフッ素化されたデオキシリボヌクレオシドポリホスフェートを用いる方法も提供する。フッ素化デオキシリボヌクレオシドポリホスフェートの安定性増加により、PCRに基づく診断試験で使用されるマスタミックス試薬などの複雑な水性混合物中における長期保存が可能となる。
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様である本質的に任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験で使用され得るが、例示的な方法及び材料のみを記載する。本発明の目的のために、次の用語を以下のように定義する。
用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
用語「周囲温度」とは、周辺の温度を指し、温度制御された屋内の建物の温度を指す場合には「室温」と同義である。通常、周囲温度とは15℃〜25℃の温度範囲を指すが、わずかに低い又は高い温度も、依然として周囲温度の範囲内であると考えることができる。
用語「アプタマ」とは、米国特許第5,693,502号に記載されているように、DNAポリメラーゼを認識して結合し、ポリメラーゼ活性を効率的に阻害する一本鎖DNAを指す。RT−PCRにおけるアプタマ及びdUTP/UNGの使用はまた、例えば、Smith,E.S.ら、(「Amplification of RNA:High−temperature Reverse Transcription and DNA Amplification with a Magnesium−activated Thermostable DNA Polymerase」、「PCR Primer:A Laboratory Manual」、第2版、Dieffenbach,C.W.及びDveksler,G.S.編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバ、第211〜219頁(2003年))が論じている。
「組換え」とは、本明細書で使用される場合、組換え法によって意図的に修飾されているアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を指す。本明細書中の用語「組換え核酸」とは、本来、一般にはインビトロで、制限エンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって、自然界では通常見られない形態で形成された核酸を意味する。したがって、直鎖状(linear form)である単離された突然変異体DNA、又は通常は連結されていないDNA分子を連結することによりインビトロで形成された発現ベクターは、どちらも本発明の目的のための組換え体であると考えられる。一度組換え核酸が作製されて宿主細胞に再導入されると、これは非組換え的に、すなわち、インビトロ操作よりも宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製するであろうことが理解される。しかしながら、そのような核酸は、一度組換え的に生成され続いて非組換え的に複製されたが、本発明の目的のためには依然として組換え体であると考えられる。「組換えタンパク質」は、組換え技術、すなわち、上で示すような組換え核酸の発現を用いて作製されるタンパク質である。
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「操作可能に連結」される。例えば、プロモータ又はエンハンサは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合はコード配列に操作可能に連結され、又はリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合はコード配列に操作可能に連結する。
用語「宿主細胞」とは、細胞培養で増殖する場合、単一細胞の原核生物及び真核生物(例えば、細菌、酵母、放線菌)の両方、並びに高次の植物又は動物由来の単一細胞を指す。
用語「ベクター」とは、外来DNAの断片をその中に挿入され得る、典型的には二本鎖のDNAの断片を指す。ベクターは、又は例えば、プラスミド起源であってもよい。ベクターは、宿主細胞におけるベクターの自律的複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含有する。外来DNAは異種DNAと定義され、これは、宿主細胞中に天然には存在しないDNAであって、例えば、ベクター分子を複製し、選択マーカ若しくはスクリーニング可能マーカをコードし、又は導入遺伝子をコードする。ベクターは、外来又は異種DNAを好適な宿主細胞に輸送するために使用される。宿主細胞内に入ると、ベクターは宿主染色体DNAとは独立して、又は宿主染色体DNAと同時に複製することができ、ベクター及びその挿入されたDNAのコピーをいくつか生成することができる。加えて、ベクターはまた、挿入されたDNAからmRNA分子への転写を可能にするか、又はそうでなければ挿入されたDNAからRNAコピーへの多数の複製を引き起こす、必要な要素を含有することもできる。いくつかの発現ベクターは、挿入されたDNAに隣接する配列要素を更に含有し、これは、発現したmRNAの半減期を増加させ、及び/又はmRNAからタンパク質分子への翻訳を可能にする。このようにして、挿入されたDNAによりコードされたmRNA及びポリペプチドの多くの分子を、迅速に合成することができる。
「増幅試薬」は、核酸の増幅を可能にする化学的又は生化学的な成分である。このような試薬として、限定されるものではないが、核酸ポリメラーゼ、緩衝液、ヌクレオシドトリホスフェートなどのモノヌクレオチド、例えばオリゴヌクレオチドプライマーなどのオリゴヌクレオチド、塩及びそれらの各溶液、検出プローブ、並びに色素などが挙げられる。
当技術分野で公知であるように、「ヌクレオシド」は、塩基−糖の組合せである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環塩基である。このような複素環塩基の最も一般的な2つのクラスは、プリン及びピリミジンである。
「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したホスフェート基を更に含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むこれらのヌクレオシドについて、ホスフェート基は、糖の2’−ヒドロキシル部分、3’−ヒドロキシル部分、又は5’−ヒドロキシル部分のいずれかに連結することができる。ヌクレオチドは「オリゴヌクレオチド」のモノマー単位であり、より一般的には「オリゴマー化合物」として、又は「ポリヌクレオチド」、より一般的には「ポリマー化合物」として示すことができる。上記の別の一般的な表現は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)である。
「オリゴマー化合物」は「モノマー単位」からなる化合物であり、これは、ヌクレオチド単独又は非天然化合物(下記参照)、より具体的には修飾ヌクレオチド(若しくはヌクレオチド類似体)又は非ヌクレオチド化合物の、単独又はそれらの組合せであり得る。
「オリゴヌクレオチド」及び「修飾オリゴヌクレオチド」(又は「オリゴヌクレオチド類似体」)は、オリゴマー化合物のサブグループである。用語「オリゴヌクレオチド」とは、それらのモノマー単位としての複数のヌクレオチドから形成される成分を指す。ホスフェート基は、一般に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成するといわれる。RNAとDNAとの正常な結合又は骨格は、3’〜5’のホスホジエステル結合である。本発明に有用なオリゴヌクレオチド及び修飾オリゴヌクレオチド(下記参照)は、主に当技術分野に記載され、当分野の専門家に公知であるように合成することができる。特定の配列のオリゴマー化合物を調製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、適切な配列のクローニング及び制限、並びに直接的な化学合成が挙げられる。化学合成法としては、例えば、Narang S.A.ら、「Methods in Enzymology」、第68巻(1979年)、第90〜98頁に記載のホスホトリエステル法、Brown E.L.ら、「Methods in Enzymology」、第68巻(1979年)、第109〜151頁に開示のホスホジエステル法、Beaucageら、「Tetrahedron Letters」、第22巻(1981年)、第1859頁に開示のホスホロアミダイド法、Gareggら、「Chem.Scr.」、第25巻(1985年)、第280〜282頁に開示のH−ホスホネート法、及び米国特許第4,458,066号に開示の固体支持法(solid support method)を挙げることができる。
上に記載の方法では、オリゴヌクレオチドは化学的に修飾されてもよく、すなわち、プライマー及び/又はプローブは修飾されたヌクレオチド又は非ヌクレオチド化合物を含む。したがって、プローブ又はプライマーは修飾オリゴヌクレオチドである。
「修飾ヌクレオチド」(又は「ヌクレオチド類似体」)は、いくつかの修飾で天然ヌクレオチドと異なるが、依然として、塩基、ペントフラノシル糖、ホスフェート部分、塩基様部分、ペントフラノシル糖様部分、及びホスフェート様部分、又はそれらの組合せからなる。例えば、ヌクレオチドの塩基部分に標識を結合させて、修飾ヌクレオチドを得ることができる。ヌクレオチド中の天然塩基はまた、例えば7−デアザプリンによって置換することで、同様に修飾ヌクレオチドを得ることもできる。
用語「メチル化したdNTP」又は「メチル化dNTP」とは、トリホスフェート部分に1つ以上の付加されたメチル基を有する任意のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート又はdNTPを指す。例としては、メチル化dATP、メチル化dCTP、メチル化dGTP、メチル化dTTP、及びメチル化dUTPが挙げられる。1つ以上のメチル基は、dNTPに見られるα−ホスフェート基、β−ホスフェート基、又はγ−ホスフェート基のうちのいずれか1つ以上をエステル化することができる。特定の例では、メチル化dNTPとは、各dNTPの末端γ−ホスフェート基がメチル基で修飾されるようなものであって、これは、従来の未修飾dNTPと比較して、PCRなどの増幅反応で使用するためのより安定なdNTP成分を生じる。
用語「フッ素化デオキシリボヌクレオシドポリホスフェート」とは、ホスフェート基の1つでフッ素化された任意のデオキシリボヌクレオシドポリホスフェートを指す。例として、dATP−γF、dCTP−γF、dGTP−γF、dTTP−γF、及びdUTP−γFが挙げられる。例として、dA4P−δF、dC4P−δF、dG4P−δF、dT4P−δF、及びdU4P−δFが更に挙げられる。フッ素原子は、デオキシリボヌクレオシドポリホスフェートに見られるα−ホスフェート基、β−ホスフェート基、γ−ホスフェート基、δ−ホスフェート基、ε−ホスフェート基、ζ−ホスフェート基のいずれか1つで酸素を1つ置換し得る。特定の例では、フッ素化ポリホスフェートとは、各デオキシリボヌクレオシドポリホスフェートの末端ホスフェート基がフッ素化されるようなものであって、これは、従来の未修飾dNTPと比較して、PCRなどの増幅反応で使用するためのより安定なポリホスフェート成分を生じる。
用語「熱安定性無機ピロホスファターゼ」及び「熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素」とは、本文中で同義的に使用され、無機ピロホスフェートの加水分解を触媒してオルトホスフェートを生成する酵素を指し
(P27 -4+H2O→2HPO4 -2)、PCR条件(例えば、90℃以上)で使用される温度において活性を保持することができる。熱安定性無機ピロホスファターゼの一例は、New England BioLabs(マサチューセッツ州イプスウィッチ)から市販されている好熱性生物Thermococcus litoralisに由来する。
オリゴマー化合物の別の特定のサブグループに属する「修飾オリゴヌクレオチド」(又は「オリゴヌクレオチド類似体」)は、モノマー単位として、1つ以上のヌクレオチド及び1つ以上の修飾ヌクレオチドを持つ。したがって、用語「修飾オリゴヌクレオチド」(又は「オリゴヌクレオチド類似体」)とは、オリゴヌクレオチドと実質的に類似する様式で機能する構造を指し、本発明の文脈において交換可能に使用することができる。合成の観点から、修飾オリゴヌクレオチド(又はオリゴヌクレオチド類似体)は、例えば、ホスフェート骨格、リボース単位、又はヌクレオチド塩基の適切な修飾によるオリゴヌクレオチドの化学修飾によって作製することができる(Uhlmann及びPeyman、「Chemical Reviews」、第90巻(1990年)、第543頁;Verma S.及びEckstein F.、「Annu.Rev.Biochem.」、第67巻(1998年)、第99〜134頁)。代表的な修飾として、ホスホジエステルのヌクレオシド間結合の代わりに、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、若しくはホスホラミデートのヌクレオシド間結合;天然のプリン及びピリミジン塩基、5又は6位に置換基を有するピリミジン塩基の代わりに、デアザプリン若しくはアザプリン、及びピリミジン;7−デアザプリンとして、2、6、若しくは8位、若しくは7位に改変した置換基を有するプリン塩基;アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、若しくはアリール部分を担持する塩基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、等の低級アルキル基、若しくはフェニル、ベンジル、ナフチルのようなアリール基;例えばそれらの2’位に置換基を有する糖;又は、炭素環式若しくは非環式糖類似体が挙げられる。その他の修飾は当業者に公知である。そのような修飾オリゴヌクレオチド(又はオリゴヌクレオチド類似体)は、天然オリゴヌクレオチドと機能的に交換可能であるが構造的に異なるとして、最もよく記載される。より詳細には、例示的な修飾として、Verma S.及びEckstein F.、「Annu.Rev.Biochem.」、第67巻(1998年)、第99〜134頁、又は国際公開第02/12263号が開示される。その上、ヌクレオシド単位が、ヌクレオシド間のホスフェート又は糖ホスフェート結合の代わりとなる基を介して連結される修飾を行うことができる。そのような結合として、Verma S.及びEckstein F.、「Annu.Rev.Biochem.」、第67巻(1998年)、第99〜134頁に開示されるものが挙げられる。ホスフェート結合以外の構造がヌクレオシド単位を結合するために利用される場合、そのような構造は、「オリゴヌクレオシド」としても記載されている。
「核酸」及び「標的核酸」は、当業者に公知のヌクレオチドのポリマー化合物である。「標的核酸」は、分析されるべき試料中の核酸、すなわち、試料中のその存在、不在、及び/又は量が決定されるべき核酸を示すために本明細書において使用される。
用語「プライマー」は、本明細書では当業者に公知であるように使用され、オリゴマー化合物、主にオリゴヌクレオチドを指すが、また、鋳型依存性DNAポリメラーゼによるDNA合成を開始することができる修飾オリゴヌクレオチドも指す。すなわち、例えばプライマーの3’末端が遊離3’−OH基を提供し、そこに、3’−〜5’−ホスホジエステル結合を確立する鋳型依存性DNAポリメラーゼによって更なるヌクレオチドを結合することができ、これによって、デオキシリボヌクレオシドトリホスフェートが使用され、それによってピロホスフェートが放出される。
「プローブ」はまた、天然又は修飾オリゴヌクレオチドを示す。当技術分野で公知なように、プローブは、分析物又は増幅物を検出する目的に役立つ。上記の方法の場合、プローブを使用して、標的核酸の増幅物を検出することができる。この目的のために、プローブは通常、標識を担持する。
「レポータ基」と呼ばれることが多い「標識」は、一般に、核酸、特にオリゴヌクレオチド又は修飾オリゴヌクレオチド、及びそれに結合した任意の核酸を、試料の残りの部分(標識が結合した核酸は、標識された核酸結合化合物、標識されたプローブ、又は単にプローブとも称することができる)と区別可能にする基である。例示的な標識は蛍光標識であり、これは例えば、フルオレセイン色素、ローダミン色素、シアニン色素、及びクマリン色素などの蛍光色素である。例示的な蛍光色素は、FAM、HEX、JA270、CAL635、Coumarin343、Quasar705、Cyan500、CY5.5、LC−Red640、LC−Red705である。
いくつかの実施形態では、標識は、「リンカー」又は「リンカーアーム」を介してプリン若しくはピリミジン塩基又は類似体に結合され得る。リンカーアームの長さは、ヌクレオチド塩基から蛍光部分までのオングストローム(Å)の距離である。一般に、リンカーアームは約10Å〜約25Åである。リンカーアームは、国際公開第84/03285号に記載されている種類のものであってもよい。国際公開第84/03285号はまた、リンカーアームを特定のヌクレオチド塩基に結合させる方法、及び蛍光部分をリンカーアームに結合させる方法も開示している。例示的には、LC−Red640−NHS−エステルなどのアクセプタ蛍光部分を、C6ホスホアミダイト(ABI(カリフォルニア州フォスタシティ)又はGlen Research(バージニア州スターリング)から入手可能)と組み合わせて、LC−Red640−ホスホロアミダイトを生成することができる。フルオレセインなどのドナー蛍光部分をオリゴヌクレオチドに結合させるためによく使用されるリンカーとしては、チオ尿素リンカー(FITC由来、例えばGlen Research又はChemGene(マサチューセッツ州アッシュランド)製のフルオレセイン−CPG)、アミド−リンカー(BioGenex(カリフォルニア州サンラモン)製のフルオレセイン−CPGなどの、フルオレセイン−NHS−エステル由来)、又はオリゴヌクレオチド合成後にフルオレセイン−NHS−エステルの結合を必要とする3’−アミノ−CPGが挙げられる。更に、他の非ヌクレオシドリンカーは、例えば、脂肪族、芳香族、アリール、環状、キラル、アキラル、ペプチド、炭水化物、脂質、脂肪酸、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−ポリエチレングリコール(HEG)、若しくはポリ−ポリエチレングリコール(PEG)、又は複素環部分であってもよい。他の従来の非ヌクレオシドリンカーは、ホモ二官能性及びヘテロ二官能性の架橋試薬を使用している。ホモ二官能性試薬は2つの同一の官能基を担持するのに対し、ヘテロ二官能性試薬は、生物製剤を生体接着剤に連結するために2つの異種官能基を含有する。ヘテロ二官能性架橋剤の大部分は、第一級アミン反応性基及びチオール反応性基を含有する。共有結合架橋剤は、ジスルフィド(S−−S)、グリコール(−−CH(OH)−−CH(OH)−−)、アゾ(−−N=N−−)、スルホン(−−S(=O2−−)、エステル(−−C(=O)−−O−−)、又はアミド(−−C(=O)−−N−−)架橋を形成することができる試薬から選択される。
任意のプライマー及び/又はプローブが化学的に修飾されてもよく、すなわち、プライマー及び/又はプローブは修飾されたヌクレオチド又は非ヌクレオチド化合物を含む。したがって、プローブ又はプライマーは修飾オリゴヌクレオチドである。
核酸増幅の方法は、その他の参考文献、米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号、及び同第4,965,188号に開示されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRは、典型的には、選択された核酸鋳型(例えば、DNA又はRNA)に結合する2つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。核酸分析に有用なプライマーは、標的核酸の核酸配列内で核酸合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを含む。プライマーは、従来の方法によって制限消化物から精製することができるか、又は合成的に生成することができる。プライマーは増幅における最大効率のために一本鎖であり得るが、プライマーは二本鎖であってもよい。二本鎖プライマーは、最初に変性される、すなわち、鎖を分離するために処理される。二本鎖核酸を変性させる1つの方法は、加熱によるものである。「熱安定性ポリメラーゼ」は、熱安定性であるポリメラーゼ酵素であって、すなわち、鋳型に相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒する酵素であり、二本鎖鋳型核酸の変性をもたらすのに必要な時間にわたり高温に曝された場合、不可逆的には変性しない。一般に、合成は各プライマーの3’末端で開始され、鋳型鎖に沿って5’から3’方向へ進行する。熱安定性ポリメラーゼは、例えば、Thermus flavus、T.ruber、T.thermophilus、T.aquaticus、T.lacteus、T.rubens、Bacillus stearothermophilus、及びMethanothermus fervidusから単離される。それにもかかわらず、酵素が補充されるならば、熱安定性でないポリメラーゼをPCRアッセイに使用することもできる。
鋳型核酸が二本鎖である場合、PCRで鋳型として使用することができるようにする前に、2本の鎖を分離することが必要である。鎖分離は、物理的、化学的、又は酵素的手段を含む任意の好適な変性方法によって達成することができる。核酸鎖を分離する1つの方法は、核酸が優位に変性する(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を超える変性)まで加熱することを含む。鋳型核酸を変性させるのに必要な加熱条件は、例えば、緩衝塩濃度、並びに変性される核酸の長さ及びヌクレオチド組成に依存するが、典型的には、温度及び核酸長のような反応の特徴に応じて、約90℃〜約105℃の範囲である。変性は、典型的には約5秒から9分間行われる。例えばZ05 DNAポリメラーゼのような各ポリメラーゼをそのような高温に長く晒さず、したがって機能酵素を損失する危険を冒さないために、短い変性工程を使用することが好ましい場合がある。
二本鎖の鋳型核酸が熱により変性された場合、反応混合物は、標的核酸上のその標的配列に対する各プライマーのアニーリングを促進する温度まで冷却される。
アニーリングの温度は、約35℃〜約70℃、又は約45℃〜約65℃、又は約50℃〜約60℃、又は約55℃〜約58℃であり得る。アニーリング時間は、約10秒〜約1分(例えば、約20秒〜約50秒、約30秒〜約40秒)であり得る。この文脈では、それぞれのアッセイの包括性を高めるために、異なるアニーリング温度を使用することが有利となり得る。要するにこれは、比較的低いアニーリング温度において、プライマーが単一のミスマッチを有する標的にも結合し得ることを意味し、したがって特定の配列のバリアントもまた増幅され得る。これは、例えば、ある特定の生物が、同様に検出されるべき既知又は未知の遺伝的バリアントを有する場合に望ましくなり得る。一方で、温度が高くなるにつれて、正確には一致しない標的配列にプライマーが結合する確率が連続的に減少するため、比較的高いアニーリング温度はより高い特異性を呈するという利点を持つ。両方の現象から利益を得るために、本発明のいくつかの実施形態では、上述の方法は、異なる温度で、例えば最初に低い温度で、次に高い温度でアニーリングすることを含む。例えば、最初のインキュベーションが55℃で約5サイクル行われる場合、正確には一致しない標的配列を(事前に)増幅してもよい。これに続いて、例えば、58℃で約45サイクル行って、実験の大部分を通してより高い特異性を得ることができる。こうすることで、潜在的に重要な遺伝的バリアントは見逃されず、一方で特異性は比較的高く維持される。
次いで、ポリメラーゼの活性が促進又は最適化される温度、すなわち、アニーリングされたプライマーから伸長が起こって、分析される核酸に相補的な産物を生成するのに充分な温度に、反応混合物を調節する。温度は、核酸鋳型にアニーリングされた各プライマーから伸長産物を合成するのに充分であるべきだが、その相補的な鋳型から伸長産物を変性させるほど高くすべきではない(例えば、伸長のための温度は、概して、約40℃〜約80℃(例えば、約50℃〜約70℃、約65℃)の範囲である)。伸長時間は、約10秒〜約5分、又は約15秒〜約2分、又は約20秒〜約1分、又は約25秒〜約35秒とすることができる。新規に合成された鎖は、反応の後続工程で使用できる二本鎖分子を形成する。鎖分離、アニーリング、及び伸長の工程は、標的核酸に対応する所望の量の増幅産物を生成するために、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。反応の制限因子は、反応中に存在するプライマー、熱安定性酵素、及びヌクレオシドトリホスフェートの量である。サイクル工程(すなわち、変性、アニーリング、及び伸長)は、少なくとも1回繰り返してもよい。検出での使用について、サイクル工程の数は、例えば試料の性質に応じる。試料が核酸の複雑な混合物である場合、検出に充分な標的配列を増幅するために、より多くのサイクル工程が必要となる。概して、サイクル工程は少なくとも約20回繰り返されるが、40回、60回、又は100回繰り返してもよい。
PCRは、アニーリング及び伸長の工程が、同じ工程(1ステップPCR)で行われるものであってもよいし、又は上述のように、別々のステップ(2ステップPCR)で行われるものであってもよい。アニーリング及び伸長を、例えばZ05 DNAポリメラーゼのように好適な酵素を用いて一緒に、つまり同じ物理的及び化学的条件下で行うことには、各サイクルの追加工程の時間を節約し、また、アニーリングと伸長との間の追加の温度調整の必要をなくすという利点がある。このように、1ステップPCRは、それぞれのアッセイ全体の複雑さを減らす。
一般的に、増幅全体に対する時間短縮は、結果に至るまでの時間が短縮され、可能性のあるより早い診断につながるのため、好ましいことがある。
使用されるその他の核酸増幅方法として、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction:LCR;Wu D.Y.及びWallace R.B.、「Genomics」、第4巻(1989年)、第560〜69頁;及びBarany F.、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第88巻(1991年)、第189〜193頁);ポリメラーゼ/リガーゼ連鎖反応(Barany F.、「PCR Methods and Applic.」、第1巻(1991年)、第5〜16頁);Gap−LCR(国際公開第90/01069号);修復連鎖反応(欧州特許出願公開第0439182A2号)、3SR(Kwoh D.Y.ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第86巻(1989年)、第1173〜1177頁;Guatelli J.C.ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第87巻(1990年)、第1874〜1878頁;国際公開第92/08808号)、並びにNASBA(米国特許第5,130,238号)が挙げられる。更に、鎖置換増幅(strand displacement amplification:SDA)、転写増幅(transcription mediated amplification:TMA)、及びQb増幅(概説は、例えば、Whelen A.C.及びPersing D.H.、「Annu.Rev.Microbiol.」、第50巻(1996年)、第349〜373頁;Abramson R.D.及びMyers T.W.、「Curr Opin Biotechnol」、第4巻(1993年)、第41〜47頁を参照のこと)がある。
用語「Cp値」又は「交点(crossing point)」値は、入力された標的核酸の定量を可能にする値を指す。Cp値は、二次導関数最大値法(second−derivative maximum method)に従って決定することができる(Van Luu−Theら、「Improved real−time RT−PCR method for high−throughput measurements using second derivative calculation and double correction」、BioTechniques、第38巻、第2号、2005年2月、第287〜293頁)。二次導関数法では、Cpは、二次導関数曲線の第1のピークに相当する。このピークは対数線形フェーズ(log−linear phase)の始まりに相当する。二次導関数法は、リアルタイム蛍光強度曲線の二次導関数値を算出し、1つの値だけが得られる。元のCp法は、例えば多項式関数による、強度値の局所的に定義された微分可能な近似に基づく。次いで、三次導関数が計算される。Cp値は、三次導関数の最小根である。Cpは、対数線形領域中の補助線に対する平行線の交点により決定されるフィットポイント法(fit point method)を用いて決定することもできる(Van Luu−Theら、「BioTechniques」、第38巻、第2号、2005年2月、第287〜293頁)。Cp値は、Rocheにより提供されたLight Cycler機器により、二次導関数最大値法に従って計算することによって提供される。
用語「PCR効率」とは、サイクルからサイクルへの増幅効率の指標を指す。PCR効率は、式:%PCR効率=10(-傾き)−1)×100を用いて各条件について算出し、式中、傾きはy軸にプロットされたコピー数の対数とx軸にプロットされたCpとを用いる線形回帰により算出した。PCR効率は、完全に一致した又は不一致のプライマー鋳型を用いて測定することができる。
用語「FRET」又は「蛍光共鳴エネルギー移動」又は「Foerster共鳴エネルギー移動」とは、少なくとも2つのクロモフォア、ドナークロモフォアとアクセプタクロモフォア(クエンチャと呼ばれる)との間のエネルギー移動を指す。典型的に、ドナーは好適な波長の光放射によって励起されると、アクセプタにエネルギーを移動させる。典型的に、アクセプタは転移されたエネルギーを異なる波長の光放射の形態で再放射する。アクセプタは、「ダーク」クエンチャである場合、移動されたエネルギーを光以外の形態で散逸させる。特定のフルオロフォアがドナー又はアクセプタとして作用するか否かは、FRET対の他の要素の性質に依存する。一般的に使用されるドナー−アクセプタ対は、FAM−TAMRA対を包含する。一般的に使用されるクエンチャは、DABCYL及びTAMRAである。一般的に使用されるダーククエンチャは、BlackHole Quenchers(商標)(BHQ)、(Biosearch Technologies,Inc.、カリフォルニア州ノヴァト)、Iowa Black(商標)(Integrated DNA Tech.,Inc.、アイオワ州コーラルビル)、及びBlackBerry(商標)Quencher 650(BBQ−650)(Berry&Assoc.、ミシガン州デクスタ)を包含する。
上記に記載の方法は、ドナー蛍光部位とアクセプタ蛍光部位との間の蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)に基づいてもよい。代表的なドナー蛍光部位はフルオレセインであり、代表的な対応するアクセプタ蛍光部位は、LC−Red640、LC−Red705、Cy5、及びCy5.5を含む。典型的には、検出は、ドナー蛍光部位によって吸収された波長で試料を励起することと、対応するアクセプタ蛍光部位によって放出された波長を可視化及び/又は測定することと、を含む。本発明に係る方法では、検出の後に、FRETの定量化を行うことができる。例えば、検出は、各サイクル工程の後に行われる。例えば、検出は、リアルタイムで行われる。市販のリアルタイムPCR装置(例えば、LightCycler(商標)又はTaqMan(登録商標))を用いることで、PCR増幅と増幅産物の検出とを、サイクル時間を大幅に短縮した単一のクローズドキュベットで組み合わせることができる。増幅と同時に検出が行われるため、リアルタイムPCR法は増幅産物を操作する必要がなく、増幅産物間の相互汚染のリスクを軽減することができる。リアルタイムPCRは、ターンアラウンド時間を大幅に短縮し、臨床検査室での従来のPCR技術に代わる魅力的な技術である。
次の特許出願が、LightCycler(登録商標)技術で使用されるリアルタイムPCRについて記載する:国際公開第97/46707号、国際公開第97/46714号、及び国際公開第97/46712号。LightCycler(登録商標)装置は、高品質光学を利用したマイクロボリューム蛍光光度計と組み合わせた、急速サーマルサイクラである。これは薄いガラス製のキュベットを反応容器として使用する急速熱サイクル技術である。反応チャンバの加熱及び冷却は、加熱された空気と周囲の空気とを交互に供給することで制御する。空気の質量が少なく、キュベットの表面積と体積との比率が高いため、サーマルチャンバ内では非常に迅速な温度交換が可能である。
TaqMan(登録商標)技術は、2つの蛍光部位で標識された一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを利用する。第1の蛍光部位が好適な波長の光で励起されると、吸収されたエネルギーはFRETの原理に従って第2の蛍光部位に移動される。第2の蛍光部位は、一般的には、クエンチャ分子である。この形式で使用される典型的な蛍光色素としては、例えばとりわけ、FAM、HEX、CY5、JA270、シアン、CY5.5がある。PCR反応のアニーリング工程の間、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的核酸(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の伸長段階において、Taq又は変異型Z05ポリメラーゼのような当業者に公知の別の好適なポリメラーゼの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。その結果、励起された蛍光部位とクエンチャ部位とが、互いに空間的に分離した状態となる。結果として、クエンチャの不在下において第1の蛍光部位を励起すると、第1の蛍光部位からの蛍光発光を検出することができる。
上述したどちらの検出形態においても、放出されるシグナルの強度は、元の標的核酸分子の数と相関し得る。
最近、多重化PCRアッセイを行うための「タグ付けされた」TaqMan(登録商標)プローブを使用する方法が、米国特許出願公開第2018/0073056号及び米国特許公開第2018/0073064号に記載されている。
FRETの代替として、蛍光DNA結合色素(例えば、SYBRGREEN I(登録商標)又はSYBRGOLD(登録商標)(Molecular Probes))のような二本鎖DNA結合色素を用いて、増幅産物を検出することができる。二本鎖核酸との相互作用の際、このような蛍光DNA結合色素は、適当な波長の光で励起した後、蛍光シグナルを発する。また、核酸インターカレート色素などの二本鎖DNA結合色素を用いることもできる。二本鎖DNA結合色素を使用する場合、増幅産物の存在を確認するために、通常は融解曲線分析を行う。
また、本発明のリアルタイムPCR法を用いて増幅産物の存在を検出するために、FRETと組み合わせた分子ビーコンを使用することもできる。分子ビーコン技術は、第1の蛍光部位及び第2の蛍光部位で標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用する。第2の蛍光部位は一般的にはクエンチャであり、蛍光標識は典型的にはプローブの各端部に配置される。分子ビーコン技術は、二次構造形成を可能にする配列(例えば、ヘアピン)を有するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。プローブ内で二次構造が形成された結果、プローブが溶液中にある場合、両方の蛍光部位が空間的に近接する。増幅産物へのハイブリダイゼーション後、プローブの二次構造が破壊され、適切な波長の光で励起した後に第1の蛍光部位の発光を検出することができるように、蛍光部位が互いに分離される。
したがって、本発明に係る方法はFRETを用いる上記の方法であって、ここで、該プローブは二次構造形成を許容する核酸配列を含み、ここで、該二次構造形成は、該第1の蛍光部位と第2の蛍光部位とを空間的に近接させる。
効率的なFRETは、蛍光部位が直接局所的に近接しており、ドナー蛍光部位の発光スペクトルがアクセプタ蛍光部位の吸収スペクトルと重なっている場合にのみ起こり得る。
したがって、一実施形態では、該ドナー及びアクセプタ蛍光部位は、該プローブ上で互いに5ヌクレオチド以下の範囲内にある。更なる実施形態では、該アクセプタ蛍光部位は、クエンチャである。
上述の通り、TaqMan(登録商標)形式では、PCR反応のアニーリング工程の間、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的核酸(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の伸長段階において、Taq又は変異型Z05ポリメラーゼのような当業者に公知の別の好適なポリメラーゼの5’〜3’−エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。このように、一実施形態では、上記の方法において、増幅は、5’〜3’−エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を使用する。
上述の方法の結果として得られるアンプリコンの長さを慎重に選択することが、更に有利である。一般に、比較的短いアンプリコンは、増幅反応の効率を高める。したがって、本発明の一態様は、増幅された断片が、最大450塩基、最大300塩基、最大200塩基、又は最大150塩基を含む、上述の方法である。
「配列」とは、核酸の一次構造、すなわち、それぞれの核酸が構成する単一核酸塩基の特定の配列である。用語「配列」は、RNA又はDNAのような特定の種類の核酸を示すものではなく、両方に適用されるだけでなく、例えばPNAなどの他のタイプの核酸にも適用されることが理解されなければならない。核酸塩基が互いに対応する場合、特にウラシル(RNA中に存在)及びチミン(DNA中に存在)の場合では、これらの塩基は、当業者によく知られているように、RNA配列とDNA配列との間で等価であると考えることができる。
臨床的に関連する核酸は、多くの場合、例えばB型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus:HBV)及びサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV)などの例えばDNAウイルス、又は例えばクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis:CT)及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae:NG)などの細菌に由来し得るDNAである。このような場合には、標的核酸の性質を反映させるために、DNAからなる内部制御核酸の使用することが有利となり得る。用語「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」とは、同義に使用することができ、全てのかかる表記が子孫を含む。このため、語「形質転換体」又は「形質転換細胞」とは、移行の数にかかわらず初代形質転換細胞及びその細胞由来の培養物を含む。全ての子孫が意図的な、又は想定外の変異に起因してDNA含量において厳密に同一でない場合がある。元々の形質転換細胞についてスクリーニングされる機能と同じ機能を有する変異体子孫が、形質転換体の定義に含まれる。細胞は原核生物又は真核生物であり得る。
用語「制御配列」とは、特定の宿主生物における操作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に好適な制御配列には、プロモータ、任意選択にはオペレータ配列、リボソーム結合部位、陽性逆調節要素(positive retroregulatory element)(米国特許第4,666,848号参照)、及び場合によっては他の配列が挙げられる。真核細胞は、プロモータ、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサを利用することが知られている。
用語「操作可能に連結された」とは、コード化配列によってコード化されたタンパク質の発現を駆動するために制御配列が機能するような、コード配列の配置を指す。このように、制御配列に「操作可能に連結された」コード配列とは、制御配列の指示の下でコード配列を発現させることができる構成を指す。
用語「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」とは、特定のヌクレオチド配列で又は特定のヌクレオチド配列の近傍で、二本鎖DNAを切断する酵素、典型的には細菌由来の酵素を指す。
類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリが本明細書で定義される。これらのファミリとして、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン)、β−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸が挙げられる。
用語「試薬液」とは、PCR目的で必要とされるか又は使用される、少なくとも1つの試薬を含有する任意の溶液である。最も典型的な成分は、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、イオン、マグネシウム、塩類、pH緩衝剤、ヌクレオシドトリホスフェート(nucleoside triphosphate:NTP)又はデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート(deoxyribonucleoside triphosphate:dNTP)、1つ以上の核酸プローブ、蛍光色素(プローブに結合してもよい)、核酸結合剤、核酸鋳型である。また、試薬は、ポリメラーゼ反応又はそのモニタリングに影響を与える他のポリメラーゼ反応添加剤であってもよい。
用語「マスタミックス」とは、PCRが起こるために必要な成分又は因子の全て又は大部分の混合物を指し、場合によっては、試料及びアンプリコンに特異的な鋳型及びプライマーを除く全ての混合物を指す。市販のマスタミックスは、通常、濃縮された溶液である。マスタミックスは、複数の試料に共通する全ての試薬を含有し得るが、1つの試料のみを対象に構成されていてもよい。マスタミックスを用いることで、ピペット操作の誤り、及びピペット操作された体積の違いによる試料間の差異を減らすことができる。
用語「熱安定性ポリメラーゼ」とは、熱に対して安定であり、耐熱性であり、かつ二本鎖核酸を変性するのに必要な時間にわたり高温に曝された後に、続いてプライマー伸長反応を行うのに充分な活性を保持する酵素を指す。核酸変性に必要な加熱条件は当技術分野で公知であり、米国特許第4,965,188号及び同第4,889,818号に例示されている。本明細書で使用される場合、熱安定性ポリメラーゼは、PCRのような温度サイクル反応で使用するのに適している。熱安定性核酸ポリメラーゼの例としては、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermus sp.Z05ポリメラーゼ、Thermus flavusポリメラーゼ、Thermotoga maritimaポリメラーゼ、例えばTMA−25ポリメラーゼ、TMA−30ポリメラーゼ、及びTth DNAポリメラーゼなどが挙げられる。
「逆転写酵素活性を有するポリメラーゼ」とは、RNA鋳型を基にDNAを合成することができる核酸ポリメラーゼのことである。また、RNAが一本鎖cDNAに逆転写されると、一本鎖又は二本鎖DNAを複製することができる。本発明の一実施形態では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは熱安定性である。
DNAポリメラーゼによるRNA分子の増幅では、最初の伸長反応はRNA鋳型を用いた逆転写であり、DNA鎖が生成される。DNA鋳型を用いた第2の伸長反応は、二本鎖DNA分子を生成する。このように、DNAポリメラーゼによるRNA鋳型からの相補的DNA鎖の合成は、増幅のための出発物質を提供する。
熱安定性DNAポリメラーゼは、結合した一酵素逆転写/増幅反応(one−enzyme reverse transcription/amplification reaction)に使用することができる。この文脈では、用語「均質型(homogeneous)」とは、RNA標的の逆転写及び増幅のための2段階の単一付加反応を指す。均質型とは、逆転写(reverse transcription:RT)工程に続いて、増幅工程の前に反応容器を開けるか、又は反応成分を調整する必要がないことを意味する。非均質型RT−PCR反応では、逆転写に続いて、増幅の前に、増幅試薬などの反応成分の1つ以上を、例えば、調整、添加、又は希釈し、反応容器を開けるか、又は少なくともその内容物を操作しなくてはならない。均質型の実施形態及び非均質型の実施形態の両方が、本発明の範囲によって構成される。
逆転写はRT−PCRの重要な工程である。例えば、RNA鋳型が、プライマー結合及び/又はそれぞれの逆転写酵素によるcDNA鎖の伸長を妨げ得る二次構造の形成に向かう傾向を示すことは、当技術分野で知られている。したがって、RT反応のための比較的高い温度が、転写効率の点で有利である。一方で、高いインキュベーション温度はまた、より高い特異性、すなわち、予想される配列又は配列(複数)とのミスマッチを示す配列に対してRTプライマーがアニーリングしないことを示す。特に、複数の異なる標的RNAの場合では、単一のミスマッチを伴う配列を転写し、続いて増幅して検出することもまた、例えば、流体試料中に生物の未知又は稀な亜系又は亜種が存在する可能性がある場合には、望ましいことがある。
上述した両方の利点、すなわち二次構造の減少及びミスマッチ伴う鋳型の逆転写による利点を得るために、RTインキュベーションは、2つ以上の異なる温度で実施することができる。
したがって、本発明の一態様は、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼの該インキュベーションが、30℃〜75℃、又は45℃〜70℃まで、又は55℃〜65℃の異なる温度で行われる、上述の方法である。
逆転写の更なる重要な態様として、長いRT工程は、流体試料中に存在し得るDNA鋳型を損傷する場合がある。流体試料がRNA及びDNAの両方の種を含有する場合、したがってRT工程の持続時間を可能な限り短く保つことが好ましいが、同時に、その後の増幅及び任意の増幅物の検出のために充分な量のcDNAの合成を確実にすることが好ましい。
したがって、本発明の一態様は、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼをインキュベートする期間が、最大30分、20分、15分、12.5分、10分、5分、又は1分である、上述の方法である。
本発明の更なる態様は、逆転写酵素活性を有し、かつ変異からなるポリメラーゼが、以下からなる群から選択される、上述の方法である。
(a)CS5 DNAポリメラーゼ
(b)CS6 DNAポリメラーゼ
(c)Thermotoga maritimaDNAポリメラーゼ
(d)Thermus aquaticusDNAポリメラーゼ
(e)Thermus thermophilusDNAポリメラーゼ
(f)Thermus flavusDNAポリメラーゼ
(g)Thermus filiformisDNAポリメラーゼ
(h)Thermus sp.sps17DNAポリメラーゼ
(i)Thermus sp.Z05 DNAポリメラーゼ
(j)Thermotoga neapolitanaDNAポリメラーゼ
(k)Termosipho africanusDNAポリメラーゼ
(l)Thermus caldophilusDNAポリメラーゼ
特に、ポリメラーゼドメインに変異を担持する酵素がこれらの要件に適しており、その逆転写効率をより速い伸長率の点で向上させる。
したがって、上記の方法では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは、それぞれの野生型ポリメラーゼと比較して改善された核酸伸長率及び/又は改善された逆転写酵素活性を付与する変異を含む、ポリメラーゼである。
一実施形態では、上記の方法において、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは、それぞれの野生型ポリメラーゼと比較して改善された逆転写酵素活性を付与する変異を含む、ポリメラーゼである。
それらを特に有用にする点変異を担持するポリメラーゼは、国際公開第2008/046612号に開示されている。特に、使用するポリメラーゼは、ポリメラーゼドメインに少なくとも以下:
T−G−R−L−S−S−Xb7−Xb8−P−N−L−Q−Nのモチーフを有する変異型DNAポリメラーゼであってもよく;ここで、Xb7は、S又はTから選択されるアミノ酸であり、Xb8は、G、T、R、K、又はLから選択されるアミノ酸であり、ポリメラーゼは、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を含み、野生型DNAポリメラーゼと比較して核酸伸長率及び/又は逆転写効率が改善されており、該野生型DNAポリメラーゼにおいて、Xb8は、D、E、又はNから選択されるアミノ酸である。
一例として、Thermus species Z05(例えば、米国特許第5,455,170号に記載)に由来する熱安定性DNAポリメラーゼの変異体が挙げられ、該変異体は、それぞれの野生型酵素Z05と比較して、ポリメラーゼドメインに変異を含む。本発明に係る方法に対する実施形態は、580位のアミノ酸が、G、T、R、K、及びLからなる群から選択される、変異体Z05 DNAポリメラーゼである。
熱安定性ポリメラーゼを用いた逆転写について、Mn2+又はMg2+などの二価カチオンは、例えば、塩化マンガン(MnCl2)、又は酢酸マンガン(Mn(OAc)2)、又は硫酸マンガン(MnSO4)、又は塩化マグネシウム(MgCl2)、酢酸マグネシウム(Mg(OAc)2)、又は硫酸マグネシウム(MgSO4)などの塩として、典型的に含まれる。MnCl2が50mMのトリシン緩衝液を含有する反応に含まれる場合、例えば、MnCl2は概して0.5〜7.0mMの濃度で存在し、200μMの各dGTP、dATP、dUTP、及びdCTP、を利用する場合、概して2.5〜3.5mMが存在する。
「修飾された」熱安定性ポリメラーゼとは、少なくとも1つのモノマーが参照配列と異なるポリメラーゼ、例えば、ポリメラーゼの天然型若しくは野生型の形態、又はポリメラーゼの別の修飾された形態を指す。例示的な修飾として、モノマーの挿入、欠失、及び置換が挙げられる。修飾ポリメラーゼはまた、2つ以上の親に由来する識別可能な成分配列(例えば、構造ドメイン又は機能ドメインなど)を有する、キメラポリメラーゼを含む。また、修飾ポリメラーゼの定義には、参照配列の化学修飾からなる定義も含まれる。修飾された熱安定性ポリメラーゼの例としては、G46E E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E E678G CS6 DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼ、ΔZ05ポリメラーゼ、ΔZ05−Goldポリメラーゼ、ΔZ05Rポリメラーゼ、E615G Taq DNAポリメラーゼ、E678G TMA−25ポリメラーゼ、及びE678G TMA−30ポリメラーゼなどが挙げられる。
用語「熱活性ポリメラーゼ」とは、特異的なプライミング及びプライマー伸長を確実に行うために必要な高温(例えば、55〜80℃)で活性化される酵素を指す。
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、交換可能に使用する。用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用する。アミノ酸配列は、特に明記されない限り、アミノ末端からカルボキシ末端まで記載する。一本鎖核酸配列は、特に明記されない限り、5’〜3’と記載する。特に明記されない限り、二本鎖核酸配列の上鎖(top strand)は5’〜3’と記載し、下鎖(bottom strand)は特に示さない限り3’〜5’と記載する。
核酸増幅試薬は、典型的には、温度感受性の成分から構成され、したがって、周囲より充分に低い温度で貯蔵して輸送しなければならないことが多い。これは特に、デオキシリボヌクレオシドトリホスフェート又はそのリボヌクレオシド類似体の場合にある。これらの試薬は、末端からの連続したホスフェート基の喪失を介して分解されやすいことで、結果として、どちらもポリメラーゼ基質として活性ではないヌクレオシドジホスフェート及びモノホスフェートの両方を形成する。
末端ホスフェートをエステル化することによって、ヌクレオシドポリホスフェートの安定性を向上させることができる。例えば、末端ホスフェートにメチルエステルを含有するdNTP類似体は、正常なdNTPを完全に分解するのに充分な熱ストレス条件下において完全に安定であった。しかしながら、末端ホスフェートのエステル化は、ある特定のポリメラーゼ酵素に有効な基質として働くヌクレオチドの能力に負の影響を及ぼし得る。
本発明は、この問題に対処するための単純かつ端麗な解決策を提示する。標準的なデキソヌクレオシドトリホスフェート(dexoynucleoside triphosphate)は、以下に示すように末端ホスフェートがフッ素部分を含有する類似体で置き換えられ、
Figure 2021518127
式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である。
以下の実施例は、現在実施することが好ましい本発明の実施形態を例示するために示される。実施例は例示的なものであって、本発明は、添付の特許請求の範囲に示される場合を除いて、限定されたものとはみなされないことが理解されよう。
実施例1:2’−デオキシリボヌクレオシド5’−O−(γ−フルオロトリホスフェート)及び2’−デオキシリボヌクレオシド5’−O−(δ−フルオロテトラホスフェート)の化学合成
2’−デオキシリボヌクレオシド5’−O−(γ−フルオロトリホスフェート)(dNTP−γF)及び2’−デオキシリボヌクレオシド5’−O−(δ−フルオロテトラホスフェート)(dN4P−δF)の化学構造を図1に示し、ナトリウム塩としてのそれらの合成の概略図を、それぞれ図2及び図3に示す。
略記:DEPC=ジエチルピロカーボネート、dATP=2’−デオキシアデノシン5’−トリホスフェート、dCTP=2’−デオキシシチジン5’−トリホスフェート、dGTP=2’−デオキシグアノシン5’−トリホスフェート、DMF=N,N’−ジメチルホルムアミド、DMSO=ジメチルスルホキシド、dUTP=2’−デオキシウリジン5’−トリホスフェート、MeCN=アセトニトリル、qPCR=リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、RT=室温、RT−qPCR=逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオリド、THF=テトラヒドロフラン、UPLC−MS=質量分析計に連結された超高性能液体クロマトグラフィ。
A.2’−デオキシアデノシン5’−O−(γ−フルオロトリホスフェート)、dATP−γFの合成
dATPのナトリウム塩(1.5mmol)をトリエチルアンモニウム塩に変換し、凍結乾燥した。化合物を乾燥MeCN中に溶解し、反応フラスコに移した。続いて、溶媒を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥させた。アルゴン下において、トリエチルアンモニウムトリホスフェートを、DMF(7.7mL)とトリブチルアミン(968μL)との無水混合物中に溶解し、続いて、1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(562μL)を滴下した。即座に反応混合物の黄色への着色が観察され、数分以内に濃いオレンジ色になった。反応液を更に室温で30分間撹拌し、続いて無水TBAF(4.48mL、THF中1.0M)を加えた。室温で一晩撹拌した後に、UPLC−MS分析は、出発物質の完全な消費を示した。反応物の逆クエンチを、乾燥アセトン(20mL、0.5M)中のヨウ化ナトリウムの撹拌溶液に反応液を滴下することにより実施した。沈殿物を遠心分離(4000rpmで4分間)で単離し、上清を廃棄した。ペレットは、再懸濁と遠心分離とを繰り返すことによって、乾燥アセトンで洗浄した。原産物を乾燥し、逆相液体クロマトグラフィで精製した。合わせた生成物画分を、固相抽出(C18)によって濃縮し、乾燥アセトン(0.5M)中においてヨウ化ナトリウムで沈殿させてナトリウム塩に変換した。最後に無色の生成物を、最終収率73%で得た(純度99%超)。
B.2’−デオキシシトシン5’−O−(γ−フルオロトリホスフェート)、dCTP−γFの合成
合成を、dCTP(1.11mmol)、トリブチルアミン(720μL)、DMF(5.8mL)、TBAF(3.33mL、THF中1.0M)、及び1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(418μL)を用いて、実施例1Aと同様に行った。1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼンを導入する前に、乾燥DMSO(1.0mL)を添加して、出発物質の透明な溶液を得た。精製物のナトリウム塩を、最終収率55%で単離した(純度99%超)。
C.2’−デオキシグアノシン5’−O−(γ−フルオロトリホスフェート)、dGTP−γFの合成
合成を、dGTP(1.09mmol)、トリブチルアミン(706μL)、DMF(5.6mL)、TBAF(3.3mL、THF中1.0M)、及び1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(410μL)を用いて、実施例1Aと同様に行った。1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼンを導入する前に、乾燥DMSO(3.0mL)を添加して、出発物質の透明な溶液を得た。精製物のナトリウム塩を、最終収率27%で単離した(純度99%超)。
D.2’−デオキシウリジン5’−O−(γ−フルオロトリホスフェート)、dUTP−γFの合成
合成を、dUTP(1.0mmol)、トリブチルアミン(649μL)、DMF(5.2mL)、TBAF(3.0mL、THF中1.0M)、及び1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(377μL)を用いて、実施例1Aと同様に行った。1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼンを導入する前に、乾燥DMSO(3.0mL)を反応混合物に添加して、出発物質の透明な溶液を得た。精製物のナトリウム塩を、最終収率42%で単離した(純度99%超)。
E.2’−デオキシアデノシン5’−O−(δ−フルオロテトラホスフェート)、dA4P−δFの合成
フルオロリン酸ナトリウム塩(3.909mmol)を、陽イオン交換によってトリエチルアンモニウム塩に変換した。溶媒を蒸発させると無色の化合物が得られ、これを高真空下で乾燥させた。アルゴン下において、フルオロホスフェートを、DMSO(8.2mL)とMeCN(5.0mL)との無水混合物中に溶解した。イミダゾール(1.33g)を加え、溶液を10分間撹拌し、続いてトリフェニルホスフィン(2.563g)及び2−アミノフェニルジスルフィド(1.456g)を加えた。反応混合物を、全成分が完全に溶解するまで40℃に加熱し、室温で一晩撹拌し続けた。反応の進行を、追加の生成物が形成されなくなるまでUPLC−MSによって追跡した。反応を、乾燥アセトン(30mL、0.5M)中の冷たいヨウ化ナトリウムの撹拌溶液に滴下することで停止した。形成された沈殿物を遠心分離(4000rpmで4分間)によって単離した。ペレットを乾燥アセトンで繰り返し洗浄した。合わせた上清を4℃で一晩冷却し、無色の生成物を更に沈殿させた。合わせたフルオロリン酸ナトリウムイミダゾリド塩の沈殿物を高真空下において乾燥させ、更に精製することなく使用した。
dATPのナトリウム塩(0.25mmol)をトリエチルアンモニウム塩に変換し、凍結乾燥した。残渣を乾燥MeCN中に溶解し、反応フラスコに移し、回転蒸発装置で溶媒を留去し、高真空下において乾燥させた。アルゴン下において、トリホスフェートを無水DMF(1.68mL)中に溶解した。第2のフラスコ中で、フルオロリン酸イミダゾリド塩(1.125mmol)を無水DMF(1.68mL)に溶解した。続いて、1.0mLのイミダゾリド溶液をdATP溶液に滴下した。ZnCl2(273mg)を加え、混合物を室温で2.0時間撹拌した。その後、残りのイミダゾリド溶液を反応混合物に移し、反応の進行を、追加の生成物が生成されなくなるまでUPLC−MSによって追跡した。反応を、4.0mLのEDTA水溶液(0.5M、pH8.0)を加えて停止した。激しい撹拌を15分間続け、その後、反応混合物を、乾燥アセトン(0.5M)中のヨウ化ナトリウムの攪拌溶液に滴下した。無色の沈殿物を遠心分離(4000rpmで4分間)で単離し、上清を廃棄した。原産物を乾燥し、逆相液体クロマトグラフィで精製した。合わせた生成物画分を、固相抽出(C18)によって濃縮し、乾燥アセトン(0.5M)中においてヨウ化ナトリウムで沈殿させてナトリウム塩に変換した。最後に無色の生成物を、反応収率63%で得た(純度98%超)。
F.2’−デオキシシトシン5’−O−(δ−フルオロテトラホスフェート)、dC4P−δFの合成
合成は、出発物質としてdCTP(0.25mmol)を用いて実施例1Eと同様に実施した。精製物のナトリウム塩を、反応収率21%で単離した(純度98%超)。
G.2’−デオキシグアノシン5’−O−(δ−フルオロテトラホスフェート)、dG4P−δFの合成
合成は、ZnCl2の添加前に1−メチル−2−ピロリドン(1.5mL)を反応混合物へ加えたことを除いて、出発物質としてdGTP(0.25mmol)を用いて、実施例1Eと同様に実施した。精製物のナトリウム塩を、反応収率25%で単離した(純度98%超)。
H.2’−デオキシウリジン5’−O−(δ−フルオロテトラホスフェート)、dU4P−δFの合成
合成は、出発物質としてdUTP(0.25mmol)を用いて実施例1Eと同様に実施した。精製物のナトリウム塩を、反応収率68%で単離した(純度99%超)。
実施例2:dNTP−γFによる安定性試験
300μMのフルオロポリホスフェート、40%のDMSO、及び1.0Mの酢酸カリウムを含有する水性混合物を調製した。参照として、フルオロポリホスフェートの代わりに300μMのdNTPを用いた別の混合物を調製した。両溶液(300μL)を、サーモシェーカ中で65℃にてインキュベートした。いくつかの時点で、各溶液の試料(20μL)を採取し、UPLC−MSで分析した。260nmでの吸収トレースのピーク面積を判定し、出発物質と分解生成物との相対的な割合を算出した。
結果:使用した条件下では、通常のdNTPは、UPLC−MSによって確認されるように、モノホスフェート及びジホスフェートに迅速に分解した。対照的に、フルオロポリホスフェートは安定であり、分解生成物は65℃で140時間にわたって観察されなかった(図4)。
実施例3:DNA標的による増幅反応
定量的PCR(quantitative PCR:qPCR)の全成分を、DEPC処理水で調製した。qPCRマスタ混合物(20μL)、緩衝混合物(20μL)、及びdNTP混合物(10μL)と称される3つの成分を組み合わせて、総量50μLのqPCR混合物を調製した。qPCRマスタ混合物は、トリシン緩衝液(pH8.2)、酢酸カリウム、グリセロール、DMSO、洗浄剤、標的DNA(400cp/反応)、ポリメラーゼアプタマ、Cy5.5標識プローブDNA、順方向及び逆方向プライマーDNA、SYBR(商標)緑色素、並びにポリメラーゼ酵素を含有した。緩衝混合物は、酢酸マンガン(8.3mM)単独、又は酢酸マグネシウム(2.49mM)とのブレンドのいずれかを含有した。dNTP混合物は、dATP、dCTP、dGTP(各2.0mM)、dUTP(4.0mM)を含有した。天然dNTPの代わりにフルオロポリホスフェートを含有する別の溶液を、等濃度で調製した。qPCR混合物を、New England BioLabs製のThermostable Inorganic Pyrosphatase(TIP)又はRoche Molecular Systems,Inc.製のThermostable Pyrophosphatase(rTh)のいずれかである、熱安定性無機ピロホスファターゼの不在及び存在下において調製した。各qPCR混合物は、96ウェルプレートのウェルで三重に調製した。プレートを密封し、qPCR増幅サイクルに供し、続いてLightCycler(商標)480システムでのDNA融解に供した。qPCR増殖曲線の分析は、Cy5.5チャネルで収集した蛍光データから行った。
結果:dN4P−δFによる標的DNAのqPCRアッセイは、通常のdNTPと比較して同等又はより速いCt(ΔCt=−1.5)を示し、ポリメラーゼ酵素が、同等又はそれ以上の効率で基質として、フッ素化ポリホスフェート類似体を受容することを実証した(図5及び図6)。その上、フルオロポリホスフェート切断生成物は、熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素の効率的な基質である。このことは、dN4P−δF基質によるqPCRアッセイが、未修飾及びベンジル化プライマーと互換性があることを実証している。
実施例4:armored RNA標的による増幅反応
qPCR実験は、以下の変更を加えて実施例3と同様に実施した。標的DNAを同等の配列のRNAで置換した。通常のサーモサイクリングの前に、逆転写(RT)工程を追加した。
結果:dN4P−δFによるarmored標的RNAのqPCR−RTは、通常のdNTPと比較して同等又はより速いCt(ΔCt=−1.2)を示し、ポリメラーゼ酵素が、同等又はそれ以上の効率で逆転写反応における基質として、フッ素化ポリホスフェート類似体を受容することを実証した(図7及び図8)。その上、フルオロポリホスフェート切断生成物は、熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素の効率的な基質である。このことは、dN4P−δF基質による逆転写qPCRアッセイが、未修飾及びベンジル化プライマーと互換性があることを実証している。

Claims (22)

  1. 試料中の標的核酸配列の存在又は不在を検出する方法であって、
    (a)前記標的核酸配列が前記試料中に存在する場合、前記試料を増幅試薬と接触させて増幅産物を生成することを含む、増幅工程を実施することと、
    (b)前記増幅産物を検出することと、を含み、
    ここで、前記増幅試薬は、次の構造を有する修飾されたヌクレオシドポリホスフェートを含み、
    Figure 2021518127
    式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である、方法。
  2. n=1である、請求項1に記載の方法。
  3. n=2である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記増幅試薬が、熱安定性無機ピロホスファターゼを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記増幅試薬が、核酸ポリメラーゼを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素活性を持つ、請求項5に記載の方法。
  7. 増幅試薬を用いて標的核酸配列を増幅する方法であって、前記増幅試薬が、次の構造を有するヌクレオシドポリホスフェートを含み、
    Figure 2021518127
    式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である、方法。
  8. n=1である、請求項7に記載の方法。
  9. n=2である、請求項7に記載の方法。
  10. 前記増幅試薬が、熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素を更に含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記増幅試薬が、核酸ポリメラーゼを更に含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素活性を持つ、請求項11に記載の方法。
  13. 核酸ポリメラーゼと、緩衝液と、下記の構造を有するヌクレオシドポリホスフェートとを含む、標的核酸配列を増幅するための反応混合物であって、
    Figure 2021518127
    式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である、反応混合物。
  14. n=1である、請求項13に記載の反応混合物。
  15. n=2である、請求項13に記載の反応混合物。
  16. 熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素を更に含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の反応混合物。
  17. 前記核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素活性を持つ、請求項13〜16のいずれか一項に記載の反応混合物。
  18. 核酸ポリメラーゼと、緩衝液と、下記の構造を有するヌクレオシドポリホスフェートとを含む、標的核酸配列を増幅するためのキットであって、
    Figure 2021518127
    式中、R=プリン若しくはピリミジン塩基又は類似体であり、n=1〜4である、キット。
  19. n=1である、請求項18に記載のキット。
  20. n=2である、請求項18に記載のキット。
  21. 熱安定性無機ピロホスファターゼ酵素を更に含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載のキット。
  22. 前記核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素活性を持つ、請求項18〜21のいずれか一項に記載のキット。
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