JP2021514816A - 脂質系コーティング組成物及び脂質系コーティングを有する物体 - Google Patents
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Abstract
Description
a)脂質ベシクルであって、
i.85〜95mol%の、ホスファチジルコリン基を有するリン脂質(A);
ii.5〜12mol%のペグ化リン脂質(B);
iii.任意選択で、0〜3mol%の、脂質(A)及び(B)以外の親油性化合物(C)
からなる脂質ベシクル;
b)0〜5重量%の水溶性添加剤(D);及び
c)少なくとも95重量%の水
を含み、
脂質ベシクルは、50〜140nmの数平均サイズ(動的光散乱によって測定)を有し、
脂質ベシクル濃度は、0.025mg/ml〜2mg/mlの範囲であり、
脂質(A)、(B)及び(C)のmol%は、脂質系コーティング組成物中の脂質(A)+(B)+(C)の総モル量に対して計算され、水溶性添加剤Dの重量%は、組成物全体の重量に対して計算され、医療機器は、コンタクトレンズ、カテーテル及び医療用インプラントから選択される、使用に関する。
I.85〜95mol%の、ホスファチジルコリン基を有するリン脂質(A);
II.5〜12mol%のペグ化リン脂質(B);
III.任意選択で、0〜3mol%の、脂質(A)及び(B)以外の親油性化合物(C)
からなるコーティングを生じさせることができ、ここで、脂質(A)、(B)及び(C)のmol%は、コーティング中の脂質(A)+(B)+(C)の量に対して計算される。
a)脂質ベシクルであって、
i.85〜95mol%の、ホスファチジルコリン基を有するリン脂質(A);
ii.5〜12mol%のペグ化リン脂質(B);
iii.任意選択で、0〜3mol%の、脂質(A)及び(B)以外の親油性化合物(C)
からなる脂質ベシクル;
b)0〜5重量%の水溶性添加剤(D);及び
c)少なくとも95重量%の水
を含み、
脂質ベシクルは、50〜140nmの数平均サイズ(動的光散乱によって測定)を有し、
脂質ベシクル濃度は、0.025mg/ml〜2mg/mlの範囲であり、
脂質(A)、(B)及び親油性化合物(C)のmol%は、脂質系コーティング組成物中の(A)+(B)+(C)の量に対して計算され、水溶性添加剤(D)及び水の量は、脂質系コーティング組成物の総重量に対して計算される、使用に関する。
I.85〜95mol%の、ホスファチジルコリン基を有するリン脂質(A);
II.5〜12mol%のペグ化リン脂質(B);
III.0〜3mol%の、脂質(A)及び(B)以外の親油性化合物(C)
からなるコーティングを生じさせることができる脂質系コーティング組成物であって、脂質(A)、(B)及び親油性化合物(C)のmol%は、脂質コーティング中の(A)+(B)+(C)の量に対して計算される、脂質系コーティング組成物にも関する。
0mol%のペグ化脂質(B)を使用する脂質コーティング組成物中の脂質ベシクルの形成を評価するために実験1を実施した。この目的のために、エタノール(無水エタノール≧99.8%、VWR)中の総脂質含量の99.8mol%の脂質(A)DOPC(Avanti polar lipids)、総脂質含量の0mol%のペグ化脂質(B)DSPE−PEG2000(Avanti polar lipids)及び総脂質含量の0.2mol%の親油性化合物(C)TR−DHPE(Thermo Fisher)を50mg/mlの濃度で調製した。上述の濃厚溶液をアルゴン下、マイクロ遠心分離容器(VWR)中において−20℃で最長6週間保存した。全脂質を粉末化ストックとして注文し、アルゴン雰囲気下に保ち、−20℃で最長1年間保存した。濃厚溶液を、水溶性添加剤(D)を含む1mLの水に分注した。水溶性添加剤(D)は、0.01M HEPES(Sigma−Aldrich)、150mM NaCl(Sigma−Aldrich)及び2mM CaCl2 pH(Sigma−Aldrich)であった。濃厚溶液を、1秒以内に200の希釈係数でエアーディスプレイスメントP10マイクロピペット(Eppendorf)を使用して分注し、その後、卓上ボルテックス(labdancer、VWR)を使用して撹拌し、定常状態までボルテックスにかけた。生じた脂質コーティング組成物は、95重量%超の水を含み、(A)+(B)+(C)の0.25mg/mlの濃度を有し、動的光散乱(DLS、Nanotrac wave、Microtrac)を利用して特性化した。脂質ベシクルの平均の数重み付け直径(Mn)は、94.80±31.00nmであり、溶液は、目視観察により透明であるように見えた。結果を図3に示す。
5mol%のペグ化脂質(B)を使用する脂質コーティング組成物中の脂質ベシクルの形成を評価するために実験2を実施した。この目的のために、エタノール(無水エタノール≧99.8%、VWR)中で総脂質含量の94.8mol%の脂質(A)DOPC(Avanti polar lipids)、総脂質含量の5mol%のペグ化脂質(B)DSPE−PEG2000(Avanti polar lipids)及び総脂質含量の0.2mol%の親油性化合物(C)TR−DHPE(Thermo Fisher)を50mg/mlの濃度で調製した。上述の濃厚溶液をアルゴン下、マイクロ遠心分離容器(VWR)中において−20℃で最長6週間保存した。全脂質を粉末化ストックとして注文し、アルゴン雰囲気下に保ち、−20℃で最長1年間保存した。濃厚溶液を、水溶性添加剤(D)を含む1mLの水に分注した。水溶性添加剤(D)は、0.01M HEPES(Sigma−Aldrich)、150mM NaCl(Sigma−Aldrich)及び2mM CaCl2 pH(Sigma−Aldrich)であった。濃厚溶液を、1秒以内に200の希釈係数でエアーディスプレイスメントP10マイクロピペット(Eppendorf)を使用して分注し、その後、卓上ボルテックス(labdancer、VWR)を使用して撹拌し、定常状態までボルテックスにかけた。生じた脂質コーティング組成物は、95重量%超の水を含み、(A)+(B)+(C)の0.25mg/mlの濃度を有し、動的光散乱(DLS、Nanotrac wave、Microtrac)を利用して特性化した。脂質ベシクルの平均の数重み付け直径(Mn)は、74.80±27.37nmであり、溶液は、目視観察により透明であるように見えた。結果を図3に示す。
10mol%のペグ化脂質(B)を使用する脂質コーティング組成物中の脂質ベシクルの形成を評価するために実験3を実施した。この目的のために、エタノール(無水エタノール≧99.8%、VWR)中で総脂質含量の89.8mol%の脂質(A)DOPC(Avanti polar lipids)、総脂質含量の10mol%のペグ化脂質(B)DSPE−PEG2000(Avanti polar lipids)及び総脂質含量の0.2mol%の親油性化合物(C)TR−DHPE(Thermo Fisher)を50mg/mlの濃度で調製した。上述の濃厚溶液をアルゴン下、マイクロ遠心分離容器(VWR)中において−20℃で最長6週間保存した。全脂質を粉末化ストックとして注文し、アルゴン雰囲気下に保ち、−20℃で最長1年間保存した。濃厚溶液を、水溶性添加剤(D)を含む1mLの水に分注した。水溶性添加剤(D)は、0.01M HEPES(Sigma−Aldrich)、150mM NaCl(Sigma−Aldrich)及び2mM CaCl2 pH(Sigma−Aldrich)であった。濃厚溶液を、1秒以内に200の希釈係数でエアーディスプレイスメントP10マイクロピペット(Eppendorf)を使用して分注し、その後、卓上ボルテックス(labdancer、VWR)を使用して撹拌し、定常状態までボルテックスにかけた。生じた脂質コーティング組成物は、95重量%超の水を含み、(A)+(B)+(C)の0.25mg/mlの濃度を有し、動的光散乱(DLS、Nanotrac wave、Microtrac)を利用して特性化した。脂質ベシクルの平均の数重み付け直径(Mn)は、51.90±18.23nmであり、溶液は、目視観察により透明であるように見えた。結果を図3に示す。
20mol%のペグ化脂質(B)を使用する脂質コーティング組成物中の脂質ベシクルの形成を評価するために実験4を実施した。この目的のために、エタノール(無水エタノール≧99.8%、VWR)中で総脂質含量の79.8mol%の脂質(A)DOPC(Avanti polar lipids)、総脂質含量の20mol%のペグ化脂質(B)DSPE−PEG2000(Avanti polar lipids)及び総脂質含量の0.2mol%の親油性化合物(C)TR−DHPE(Thermo Fisher)を50mg/mlの濃度で調製した。上述の濃厚溶液をアルゴン下、マイクロ遠心分離容器(VWR)中において−20℃で最長6週間保存した。全脂質を粉末化ストックとして注文し、アルゴン雰囲気下に保ち、−20℃で最長1年間保存した。濃厚溶液を、水溶性添加剤(D)を含む1mLの水に分注した。水溶性添加剤(D)は、0.01M HEPES(Sigma−Aldrich)、150mM NaCl(Sigma−Aldrich)及び2mM CaCl2 pH(Sigma−Aldrich)であった。濃厚溶液を、1秒以内に200の希釈係数でエアーディスプレイスメントP10マイクロピペット(Eppendorf)を使用して分注し、その後、卓上ボルテックス(labdancer、VWR)を使用して撹拌し、定常状態までボルテックスにかけた。生じた脂質コーティング組成物は、95重量%超の水を含み、(A)+(B)+(C)の0.25mg/mlの濃度を有し、動的光散乱(DLS、Nanotrac wave、Microtrac)を利用して特性化した。脂質ベシクルの平均の数重み付け直径(Mn)は、17.11±4.62nmであり、溶液は、目視観察により透明であるように見えた。結果を図3に示す。
異なる脂質コーティング組成物を使用する対照表面上での脂質コーティング形成及びそれらの空気中での安定性を評価するために実験5を実施した。この目的のために、96ウェルガラスボトムプレート(SensoPlates、Greiner Bio−one)を使用した。96ウェルガラスボトムプレートを300μLの2v/v% Hellmanex III(Sigma−Aldrich)のmilliQ中の溶液の1時間室温でのインキュベーションにより事前に洗浄し、その後、デミ水ですすいで、洗剤を除去した。200μLの脂質コーティング組成物 − 実験1〜4に記載の通り調製 − を少なくとも5分間インキュベートしたままにして脂質コーティングを形成し、その後、100μLのmilliQの添加及び100μLの溶液の除去による段階希釈により、milliQにより洗浄した。少なくとも16の段階希釈を実施して、脂質コーティング組成物の残りを除去した。ガラス壁を、蛍光顕微鏡法を利用して特性化した。この目的のために、光源としてのXenon X−cite 120PC及び画像取込みのためのOlympus DR70デジタルカメラを備えたOlympus倒立型IX71落射蛍光リサーチ顕微鏡を使用して、蛍光顕微鏡写真を得た。TR−DHPEを、510≦λex≦550nm及びλem>590nmを利用して画像化した。画像化後、試料を空気に曝して、商業的利用に必須である空気中での安定性を実証した。結果を図4に示す。形成のための良好な脂質コーティングは、実験1〜3で観察された。実験4は、おそらくベシクル融合によるコーティング形成を可能にしない脂質ベシクルサイズ分布のため、良好なコーティング形成を示さなかった。実験2及び3由来の脂質系コーティング組成物のみが改善された安定性を示した。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用して、被覆されたRGPコンタクトレンズの改善された潤滑性を示すために実験6を実施した。この目的のために、2種の脂質コーティング組成物を実験2(5mol%(B))及び実験3(10mol%(B))に記載の通り使用した。結果を図5に示す。メニコンEXコンタクトレンズを使用して、斜面法を利用して改善された潤滑性を示した。メニコンEXレンズをエタノールにより洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照レンズを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートした。さらに、処理したてのメニコンEXレンズを、5mol%(B)及び10mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)で洗浄した。社内で構築した斜面システム(図5)を使用して、潤滑性改善を示した。ここで、ガラス面を0.1M NaOH溶液中で1時間洗浄し、デミ水ですすいだ。洗浄されたガラスプレートを、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)を含む緩衝液槽内に配置した。ガラスプレートの一端を針金によりステッピングモーターにつないで、ガラスプレートを引き起こし、角度を11.5度に設定した。対照メニコンEXレンズが全く動かないことが観察されたため、この角度を選択した。レンズを、凹面がガラスプレートに向くように配置した。レンズが所定位置に保たれている間、ピンセットを使用して、0.5グラムのスチールフェルールをレンズに加えた。開放すると、動きの速さを、ImageJソフトウェアを使用して実験の動画解析により推測した。結果は、より速い速度によって示される潤滑性の増加が、脂質コーティング組成物中、したがって、レンズ上の脂質コーティング中のより高いmol%の(B)と相関していることを示す。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用する、被覆されたソフトコンタクトレンズの改善された潤滑性を示すために実験7を実施した。この目的のために、実験6の潤滑性が最も高い組成物、すなわち実験3に記載の脂質コーティング組成物(10mol%(B))を使用した。結果を図6に示す。Midafilcon Aコンタクトレンズを使用して、斜面法を利用して改善された潤滑性を示した。Midafilcon AレンズをmilliQ中で洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照レンズを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートした。さらに、処理したてのMidafilcon Aレンズを、10mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)により洗浄した。社内で構築した斜面システム(図5)を使用して、潤滑性改善を示した。ここで、ガラス面を0.1M NaOH溶液中で1時間洗浄し、デミ水ですすいだ。洗浄されたガラスプレートを、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)を含む緩衝液槽内に配置した。ガラスプレートの一端を針金によりステッピングモーターにつないで、ガラスプレートを引き起こし、角度を5.9度に設定した。対照Midafilcon Aレンズが全く動かないことが観察されたため、この角度を選択した。レンズを、凹面がガラスプレートに向くように配置した。レンズが所定位置に保たれている間、ピンセットを使用して、0.5グラムのスチールフェルールをレンズに加えた。開放すると、動きの速さを、ImageJソフトウェアを使用して実験の動画解析により推測した。結果は、最高の速度が10mol%(B)を有する脂質コーティング組成物で観察される、実験6と比べて類似の傾向を示す。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用する、別の種類の被覆された硬質コンタクトレンズの潤滑性の改善を示すために実験8を実施した。この目的のために、実験2の組成物、すなわち5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物を使用した。結果を図7に示す。UV1コンタクトレンズを使用して、斜面法を利用して改善された潤滑性を示した。UV1レンズをmilliQ中で洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照レンズを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートした。さらに、処理したてのUV1レンズを、5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)により洗浄した。社内で構築した斜面システム(図5)を使用して潤滑性改善を示した。ここで、ガラス面を0.1M NaOH溶液中で1時間洗浄し、デミ水ですすいだ。洗浄されたガラスプレートを、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)を含む緩衝液槽内に配置した。ガラスプレートの一端を針金によりステッピングモーターにつないで、ガラスプレートを引き起こした。ここで、ステッピングモーターを使用してガラスプレートを一端で適時引き起こし、それにより角度を徐々に増加させる動的な潤滑性分析を実施した。レンズを、0度で凹面がガラスプレートに向くように配置した。0.5グラムのスチールフェルールをレンズと同時にレンズに加えた。その後、ステッピングモーターを200hzの速度で利用して、ガラスプレートを一端でゆっくりと引き起こした。実験を記録し、ImageJソフトウェアを使用して動画解析を実施した。結果は、5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物により被覆されたレンズが運動性を示すのに対して、被覆していない対照レンズが運動性を示さない、実験6及び7と比べて類似の傾向を示す。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用する、別の種類の被覆されたソフトコンタクトレンズの潤滑性の改善を示すために実験9を実施した。この目的のために、実験2の組成物、すなわち5及び10mol%(B)を有する脂質コーティング組成物を使用した。結果を図8に示す。メニコンソフトSiHyコンタクトレンズを使用して、斜面法を利用して改善された潤滑性を示した。メニコンソフトSiHyレンズをmilliQ中で洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照レンズを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートし、2つを含める。さらに、処理したてのメニコンソフトSiHyレンズを、5及び10mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)により洗浄した。社内で構築した斜面システム(図5)を使用して潤滑性改善を示した。ここで、ガラス面を0.1M NaOH溶液中で1時間洗浄し、デミ水ですすいだ。洗浄されたガラスプレートを、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)を含む緩衝液槽内に配置した。ガラスプレートの一端を針金によりステッピングモーターにつないで、ガラスプレートを引き起こした。ここで、ステッピングモーターを使用してガラスプレートを一端で適時引き起こし、それにより角度を徐々に増加させる動的な潤滑性分析を実施した。レンズを、0度で凹面がガラスプレートに向くように配置した。0.5グラムのスチールフェルールをレンズと同時にレンズに加えた。その後、ステッピングモーターを200hzの速度で利用して、ガラスプレートを一端でゆっくりと引き起こした。実験を記録し、ImageJソフトウェアを使用して動画解析を実施した。結果は、脂質コーティング組成物により被覆されたレンズが改善された潤滑性を有する、実験6〜8と比べて類似の傾向を示す。硬質コンタクトレンズでの実験6の結果と同様に、メニコンソフトSiHyレンズに対して最も潤滑性が高い組成物は、10mol%(B)であり、それに続いて5mol%(B)であった。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用する、被覆された硬質コンタクトレンズのストレステスト状態における細菌に対する防汚特性を示すために実験10を実施した。この目的のために、実験2の組成物、すなわち5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物を使用した。結果を図9に示す。メニコンZコンタクトレンズを使用して、被覆されたコンタクトレンズの防汚特性を示した。細菌株及びORN208を一晩LB培地中において、テトラサイクリンを選択的抗生物質として使用して成長させた。次いで、これらを5000gで10分間回転させ、上清を廃棄した。細菌を遠心分離及び再懸濁により10×10-3M HEPES、137×10-3M NaCl、pH 7緩衝液によって2回洗浄した。最後に、細菌をこの緩衝液中で再構成し、600nmでのその光学濃度を測定し、1.0、細菌溶液に設定した。メニコンZコンタクトレンズをmilliQ中で洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照レンズを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートした。さらに、処理したてのメニコンZコンタクトレンズを、5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)により洗浄した。対照及び被覆されたメニコンZコンタクトレンズを細菌溶液中で2時間インキュベートして、コンタクトレンズの細菌付着を促進した。その後、レンズを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中で洗浄し、Hoechst(0.1μg/ml)DNA染色を使用して染色した。蛍光顕微鏡法(Olympus IX−71)を利用して試料を画像化し、付着した細菌細胞を、ImageJソフトウェアを使用して数えた。データを図9に表し、被覆されたメニコンZコンタクトレンズは、細菌付着の95%超の減少を示した。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用する、被覆されたカテーテルの改善された潤滑性を示すために実験11を実施した。この目的のために、実験2の組成物、すなわち5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物を使用した。結果を図10に示す。CVCカテーテルを使用して、被覆後の潤滑性の改善を示した。CVCカテーテルをmilliQ中で洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照CVCカテーテルを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートした。さらに、処理したてのCVCカテーテルを、5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)により洗浄した。カテーテルをシリコンセプタムのピンホールに通して、荷重計を使用して引いた。100サイクル後、負荷力を記録した。要求される負荷力の20%減少が、被覆されたCVCカテーテル試料に観察され、改善された潤滑性を示した。
コンタクトレンズ上に脂質コーティングをもたらす脂質コーティング組成物を使用する、被覆されたカテーテルの改善された血液適合性を示すために実験12を実施した。この目的のために、実験2の組成物、すなわち5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物を使用した。結果を図11に示す。CVCカテーテルを使用して、被覆後の血液適合性の改善を示した。CVCカテーテルをmilliQ中で洗浄し、乾燥させ、酸素プラズマにより60秒間40ワットで処理した(Plasma Prep II、SPI supplies)。対照CVCカテーテルを0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)中でインキュベートした。さらに、処理したてのCVCカテーテルを、5mol%(B)を有する脂質コーティング組成物中で30分間インキュベートし、その後、0.01M PBS緩衝液(Sigma−Aldrich)により洗浄した。カテーテルを血流回路中でTATアッセイに付し、トロンビン−アンチトロンビン−複合体(TAT)の量を定量化した。TAT複合体形成の45%減少が、被覆されたCVCカテーテル試料に観察され、改善された血液適合性を示した。
異なる脂質コーティング組成物を使用する対照表面上での脂質コーティング形成及びそれらの空気中での安定性を評価するために実験13を実施した。この目的のために、4種の脂質コーティング組成物、すなわち総脂質含量の0.1、0.2、1.0及び2.5mol%の脂質(B)DSPE−PEG2000(Avanti polar lipids)(B);並びにそれぞれ総脂質含量の99.7、99.6、98.8及び97.3mol%の脂質(A)DOPC(Avanti polar lipids);並びに総脂質含量の0.2mol%の親油性化合物(C)TR−DHPE(Thermo Fisher)をエタノール(無水エタノール≧99.8%、VWR)中において50mg/mlの濃度の濃度で調製した。上述の濃厚溶液をアルゴン下、マイクロ遠心分離容器(VWR)中において−20℃で最長6週間保存した。全脂質を粉末化ストックとして注文し、アルゴン雰囲気下に保ち、−20℃で最長1年間保存した。濃厚溶液を、水溶性添加剤(D)を含む1mLの水に分注した。水溶性添加剤(D)は、0.01M HEPES(Sigma−Aldrich)、150mM NaCl(Sigma−Aldrich)及び2mM CaCl2 pH(Sigma−Aldrich)であった。濃厚溶液を、1秒以内に200の希釈係数でエアーディスプレイスメントP10マイクロピペット(Eppendorf)を使用して分注し、その後、卓上ボルテックス(labdancer、VWR)を使用して撹拌し、定常状態までボルテックスにかけた。生じた脂質コーティング組成物は、95重量%超の水を含み、(A)+(B)+(C)の0.25mg/mlの濃度を有し、動的光散乱(DLS、Nanotrac wave、Microtrac)を利用して特性化した。脂質ベシクルの平均の数重み付け直径(Mn)を図12に示し、脂質ベシクル形成が達成され、溶液は、目視観察により透明であるように見えた。前記組成物の空気中での安定性を試験するために、96ウェルガラスボトムプレート(SensoPlates、Greiner Bio−one)を使用し、被覆した。96ウェルガラスボトムプレートを300μLの2v/v% Hellmanex III(Sigma−Aldrich)のmilliQ中の溶液の1時間室温でのインキュベーションにより事前に洗浄し、その後、デミ水ですすいで、洗剤を除去した。200μLの脂質コーティング組成物を少なくとも5分間インキュベートしたままにして脂質コーティングを形成し、その後、100μLのmilliQの添加及び100μLの溶液の除去による段階希釈により、milliQにより洗浄した。少なくとも16の段階希釈を実施して、脂質コーティング組成物の残りを除去した。ガラス壁を、蛍光顕微鏡法を利用して特性化した。この目的のために、光源としてのXenon X−cite 120PC及び画像取込みのためのOlympus DR70デジタルカメラを備えたOlympus倒立型IX71落射蛍光リサーチ顕微鏡を使用して、蛍光顕微鏡写真を得た。TR−DHPEを、510≦λex≦550nm及びλem>590nmを利用して画像化した。画像化後、試料を空気に曝して、商業的利用に必須である空気中での安定性を実証した。結果を表1に示す。形成のための良好な脂質コーティングが全組成物で観察された(乾燥/脱水前)。上述の脂質系コーティング組成物のいずれも改善された安定性を示さず、乾燥/脱水後にコーティングの分解を示した。
Claims (15)
- 医療機器を被覆するための脂質系コーティング組成物の使用であって、前記コーティング組成物は、
a.脂質ベシクルであって、
i.85〜95mol%の、ホスファチジルコリン基を有するリン脂質(A);
ii.5〜12mol%のペグ化リン脂質(B);
iii.任意選択で、0〜3mol%の、脂質(A)及び(B)以外の親油性化合物(C)
からなる脂質ベシクル;
b.0〜5重量%の水溶性添加剤(D);及び
c.少なくとも95重量%の水
を含み、
脂質ベシクルは、50〜140nmの数平均サイズ(動的光散乱によって測定)を有し、
脂質ベシクル濃度は、0.025mg/ml〜2mg/mlの範囲であり、
脂質(A)、(B)及び(C)のmol%は、前記脂質系コーティング組成物中の脂質(A)+(B)+(C)の総モル量に対して計算され、水溶性添加剤(D)の重量%は、前記組成物全体の重量に対して計算され、前記医療機器は、コンタクトレンズ、カテーテル及び医療用インプラントから選択される、使用。 - 前記医療機器は、コンタクトレンズである、請求項1に記載の使用。
- リン脂質(A)は、1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DDPC)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DEPC)、1,2−ビス(10,12−トリコサジイノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン及び1−パルミトイル−2−(10,12−トリコサジイノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどのジインPC脂質から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
- リン脂質(A)は、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
- 前記リン脂質(A)は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
- ペグ化リン脂質Bは、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−350](DSPE−PEG350)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550](DSPE−PEG550)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750](DSPE−PEG750)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000](DSPE−PEG1000)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG2000)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000](DSPE−PEG3000)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](DSPE−PEG5000)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−350](DSPE−PEG350)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550](DSPE−PEG550)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750](DSPE−PEG750)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000](DSPE−PEG1000)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG2000)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000](DSPE−PEG3000)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](DSPE−PEG5000)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−350](DSPE−PEG350)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550](DSPE−PEG550)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750](DSPE−PEG750)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000](DSPE−PEG1000)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG2000)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000](DSPE−PEG3000)及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](DSPE−PEG5000)からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
- ペグ化リン脂質Bは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DPPE−PEG2000)及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DOPE−PEG2000)からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
- 親油性化合物(C)は、ホスファチジン酸誘導体、ホスファチジルグリセロール誘導体、ホスファチジルエタノールアミン誘導体、ホスファチジルセリン誘導体、天然リン脂質誘導体、ステロール、コレステロール、デスモステロール、ラノステロール及びステロールの誘導体、ポリグリセリン−リン脂質、官能化リン脂質、末端活性化リン脂質)、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル−サルフェート(DOTAP)、タンパク質、ペプチド、両親媒物質、イオン性ポリマー、糖分子、酵素並びに医薬成分から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
- 前記水溶性添加剤(D)は、塩、緩衝剤、(ポリ)電解質及び錯化剤の群から選択され、好ましくは、水溶性添加剤(D)は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、HEPES、NaCl2及びCaCl2から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
- 基材上に脂質コーティングを調製するための、又は基材上の脂質コーティングの欠陥を修復するために使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
- 脂質系コーティングを含む医療機器であって、前記コーティングは、
a.85〜95mol%の、ホスファチジルコリン基を有するリン脂質(A);
b.5〜12mol%のペグ化リン脂質(B);
c.0〜3mol%の、脂質(A)及び(B)以外の親油性化合物(C)
からなる、医療機器。 - リン脂質(A)は、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)からなる群から選択される、請求項11に記載の医療機器。
- ペグ化リン脂質Bは、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DPPE−PEG2000)及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DOPE−PEG2000)からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の医療機器。
- 前記脂質コーティングは、(総脂質含量の)85〜95mol%の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)と、(総脂質含量の)5〜12mol%の、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DOPE−PEG2000)などのペグ化リン脂質と、0〜3mol%の親油性化合物(C)とを含む、請求項11に記載の医療機器。
- コンタクトレンズ又はカテーテル、好ましくはコンタクトレンズである、請求項11〜14のいずれか一項に記載の医療機器。
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