発明の詳細な説明
〔技術分野〕
本発明は、ポリマー材料の分野に関し、特に、架橋構造を有する微小球アイオノマー、その製造方法、及びその用途に関する。本発明はまた、架橋アイオノマー微小球の連続製造に関し、特に、本発明による架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球、及び架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造のためのシステム、及び方法に関する。
〔背景技術〕
イオン性ポリマー(略してアイオノマーとも呼ばれる)は、ポリマー鎖上に少数のイオン性基を有するポリマー材料の一種であり、イオン性基のモル含有量は、一般に15%を超えない。アイオノマーは、無機イオンと有機分子との完全な組み合わせの単一体である。イオン性基の導入により、イオン−イオン相互作用;イオン−イオン対相互作用;イオン−双極子相互作用;及び水素結合の相互作用のような通常のポリマーには見出されない、アイオノマー中の分子間の特別な相互作用が存在する。これらの特別な相互作用により、アイオノマーは多くの独特の特性を有し、高分子改質及び機能性材料のような態様において重要な用途を有する。さらに、ポリマー微小球の製造及び用途に関する最近の研究は、機能性ポリマー材料の分野において、注目されている。ナノスケール〜ミクロンスケールのポリマー微小球は、大きな比表面積、強い吸着、強い凝集、及び強い表面反応能力等の特別な特性を有し、多くのハイテク分野で広く使用することができる。
Yan Zhe、Qiang Xihuaiらは、1,4−ジオキサンを溶媒とし、p−トルエンスルホン酸を触媒とする、スチレン/無水マレイン酸コポリマーの高級脂肪アルコールモノエステルのナトリウム塩の調製について、論文「スチレン/無水マレイン酸コポリマーの脂肪アルコールモノエステルのナトリウム塩の調製及び表面活性(Preparation and Surface Activity of Sodium Salt of Fatty Alcohol Monoester of Styrene / Maleic Anhydride Copolymer)」("China Surfactant Detergent & Cosmetics"、2012, 42(2): 97-100)に記載している。
Lai Xiaolin、Sun Chengdongらは、メチルエチルケトンを溶媒とし、トリエチルアミンを触媒とする、スチレン/無水マレイン酸コポリマーのエチルエステルの調製について、論文「SMA−エタノールの合成、及びpH感応特性(Synthesis and pH-sensitive property of SMA-ethanol)」("Applied Chemical Industry"、2008, 37(5): 498-501)に記載している。反応混合物を石油エーテル中で沈殿させ、吸引濾過し、続いて乾燥させ、テトラヒドロフラン中に再溶解させ、石油エーテル中で再び沈殿させ、濾過し、乾燥させて、生成物を得た。
しかしながら、工業生産においては、ポリマー微小球及びアイオノマー微小球の両方は、超微粒子の洗浄及び精製、並びに固液分離に直面しなければならない。現在、一般的に用いられている方法は、三脚遠心分離機(three-feet centrifuge)、又は空気暴露操作を伴う板枠式厚濾機を用いる方法であり、プロセスの連続性と安全性を改善する必要がある。
CN102924641Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のための核剤及びその製造方法を開示している。核剤は、加水分解、塩類化、及び精製を介して、ランダムコポリマー又はスチレンと無水マレイン酸との交互コポリマーから製造されたスチレン/マレイン酸アイオノマーである。製造方法は、無水マレイン酸モノマー、スチレンモノマー、開始剤、及び溶媒を窒素雰囲気中で均一に混合し、60〜80℃で1〜1.5時間反応させ、続いて反応生成物を溶媒中で沈殿させ、精製し、真空下で乾燥させて、コポリマーを得、次いでコポリマーを1,4−ジオキサンに溶解し、塩基のアルコール溶液を滴下し、生成したアイオノマーを沈殿剤から沈殿させ、続いて真空濾過及び精製して、スチレン/マレイン酸アイオノマーを得ることを含む。アイオノマーは、PETの結晶化温度を上昇させ、結晶化速度を加速させることができる。
CN103145903Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のための核剤及びその製造方法を開示している。核剤は、加水分解、塩類化、及び精製によって、ポリスチレン−b−ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸)ジブロックコポリマーから製造されたポリスチレン−b−ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸)ジブロックアイオノマーである。核剤は、PET溶融物中でミクロ相分離を形成することができ、それによってPET結晶化のための結晶核を供給する。
しかしながら、PETの核形成に対する効果に関して、前記方法によって製造されたポリマーを改善する余地は、依然として存在する。
〔発明の概要〕
本発明の第1の目的は、架橋構造を有する微小球アイオノマー、その製造方法、及びその用途を提供することである。微小球アイオノマーは従来技術の欠点を克服し、PETの核形成に良好な効果を有する。
本発明の別の目的は、超微細粒子の困難な洗浄及び精製、並びに困難な固液分離に関する工業化生産における問題を十分に克服することができる、本発明による架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球及び架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造のためのシステム及び方法を提供することである。
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、架橋構造を有する微小球アイオノマーであって、前記アイオノマーは、式(1)で表される構造単位Aと、式(2)で表される構造単位Bと、架橋剤によって与えられる架橋構造とを含み、
式中、M1及びM2はそれぞれ独立して、Hと、金属カチオンと、直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基とからなる群から選択され、RはH又はメチルであり、
前記アイオノマー中の前記構造単位Aの少なくとも一部は、組み込まれた前記金属カチオンを含む。
本発明の第2の態様は、本発明によるアイオノマーを製造するための方法であって:
(1)無水マレイン酸と、式(2)で表される構造単位Bを与えるモノマーMBと、架橋剤と、を有機溶媒中で開始剤の存在下で接触させて、反応させる工程と;
(2)工程(1)で得られた生成物中の無水マレイン酸単位を開環させる、開環工程と;
を含む方法を提供する。
本発明のアイオノマー(又はアイオノマー微小球)は、架橋及び微小球構造を有し、PETの核形成に良好な効果を有する。さらに、その製造方法は単純であり、アイオノマー微小球は、反応の終了後に沈殿剤を使用することなく、単純な分離操作によって得ることができる。従って、このような製造方法はまた、環境に優しい。一実施形態では、アイオノマーはワンポットプロセスによって製造することができ、重合後の懸濁液は分離及び乾燥される必要はなく、塩基と直接反応し、それによって、プロセスをさらに単純化し、エネルギー消費を低減する。
第2の態様の1つの実施形態において、本発明は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法であって:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合させ、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を得る工程と;
(2)前記ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得る工程と;
(3)前記分離固体含有相を洗浄ユニットに供給し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離を行い、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程と;
(4)前記コポリマースラグ相を塩基のアルコール溶液と反応させ、得られた生成物を連続的に第3の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得る工程と;
(5)前記遠心分離スラグ相を乾燥ユニットに送り、乾燥させ、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得る工程と;
(6)前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液を溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ工程(1)及び(3)に戻す工程と;を含む方法を提供する。
同様に、本発明は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのそのような方法を実施するためのシステムであって:
連続的に連通する共重合ユニット、洗浄ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、乾燥ユニット、及び溶媒回収ユニットを備え:
前記共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され;
前記洗浄ユニットは、前記分離固体含有相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離にかけて、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され;
前記アイオノマー形成反応ユニットは、前記コポリマースラグ相を反応させ、製造されたアイオノマー反応液を第3の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得るために使用され;
前記乾燥ユニットは、前記遠心分離スラグ相を乾燥させて、前記架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得るために使用され;
前記溶媒回収ユニットは、前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ前記共重合ユニット及び前記洗浄ユニットに戻すために使用され;
このシステムは、前記架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される;システムを提供する。
第2の態様の別の実施形態では、本発明は、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法であって、:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合させて、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を得る工程と;
(2)前記ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得る工程と;
(3)前記分離固体含有相をアルカリ液と反応させ、得られた生成物を連続的に第2の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得る工程と;
(4)前記遠心分離スラグ相を洗浄ユニットに導入し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び第3の分離を行い、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程と;
(5)前記アイオノマースラグ相を乾燥ユニットに送り、乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得る工程と;
(6)前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液を溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒及び回収アルコールをそれぞれ工程(1)及び(4)に戻す工程と;を含む方法を提供する。
同様に、本発明はまた、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのそのような方法を実施するためのシステムであって:
連続的に連通する共重合ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、洗浄ユニット、乾燥ユニット、及び溶媒回収ユニットを備え:
前記共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され;
前記アイオノマー形成反応ユニットは、前記分離固体含有相を反応させ、製造された生成物を第2の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得るために使用され;
前記洗浄ユニットは、前記遠心分離スラグ相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第3の分離にかけて、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され;
前記乾燥ユニットは、前記アイオノマースラグ相を乾燥させ、前記架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得るために使用され;
前記溶媒回収ユニットは、前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ前記共重合ユニット、前記洗浄ユニットにそれぞれ戻すために使用され;
このシステムは、前記架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される;システムを提供する。
前記技術的解決策により、本発明は、架橋及び微小球構造を有するマレイン酸エステル及びマレイン酸アイオノマーの連続製造を達成することができるシステム及び方法を提供する。本方法のプロセスは、溶媒からの超微細コポリマー又はアイオノマー微小球の連続固液遠心分離を達成することができ、使用される反応溶媒及び洗浄アルコール溶媒を再循環させることができる。本発明により提供される方法は、従来技術におけるシステムの種々のユニット間で採用され手動で操作される分離プロセスを排除することができ、溶媒の空気暴露操作を効果的に防止することができ、アイオノマー微小球の製造における連続反応、洗浄、及び分離プロセスを達成することができ、分離効果を効果的に安定化させることができ、遠心分離機の頻繁な始動及び停止操作を回避することができる。得られる微小球の平均粒径は、600〜2000nmであり得る。
本発明の第3の態様は、ポリエチレンテレフタレートを改質するための核剤としての本発明によるアイオノマーの使用を提供する。
本発明の第4の態様は、核剤として本発明によるアイオノマーを含むポリエチレンテレフタレート組成物を提供する。
本発明の第5の態様は、本発明によるアイオノマーが核剤としてポリエチレンテレフタレートに導入される、ポリエチレンテレフタレートを改質する方法を提供する。
〔図面の説明〕
図1は、実施例1で合成したアイオノマーの赤外スペクトルである;
図2は、実施例1で合成したアイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である;
図3は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである;
図4は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である;
図5は、比較例E1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである;
図6は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の赤外スペクトルである;
図7は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である;
図8は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである;
図9は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである;
図10は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである;
図11は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の赤外スペクトルである;
図12は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である;
図13は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである;
図14は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである;
図15は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである。
〔発明の詳細な説明〕
(微小球アイオノマー)
本発明により提供される架橋構造を有する微小球アイオノマーは、式(1)で表される構造単位A、式(2)で表される構造単位B、及び架橋剤により与えられる架橋構造を含み、
式中、M1及びM2はそれぞれ独立して、Hと、金属カチオンと、直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基と、からなる群から選択され、RはH又はメチルである。
一実施形態では、M1及びM2はそれぞれ独立して、H及び金属カチオンからなる群から選択される。このような微小球アイオノマーは、マレイン酸アイオノマー微小球とも呼ばれる。
別の実施形態では、M1及びM2はそれぞれ独立して、金属カチオンと、直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基と、からなる群から選択され、あるいはHから選択されてもよい。このような微小球アイオノマーはエステル基を含み、マレイン酸エステルアイオノマー微小球とも呼ばれる。
本明細書に記載する直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基とは、例えば、C1、C2、C4、C6、C8、C10、C12、C15、C20、又はそれらの間の任意の値の飽和アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、シクロヘキシル、n−ノニル、イソノニル、デシル、2−プロピルヘプチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、テトラデシル、セチル、ステアリル、他、である。
アイオノマー中の構造単位Aの少なくとも一部は、組み込まれた金属カチオンを含む。
金属カチオンは、種々の一般的な金属カチオン、例えば、Li+、Na+、K+、並びに一価当量(monovalent equivalent)のCa2+、Mg2+、Ba2+、及びZn2+であり得る。
本明細書で使用される「アイオノマー」という用語は、当技術分野で周知であり、「イオン性ポリマー」とも呼ばれ、ポリマー鎖上に少数のイオン性基を有するポリマー材料を指す。
本発明の好ましい実施形態では、構造単位Aと構造単位Bとの間のモル比は、100:(100〜120)であり、より好ましくは100:(100〜105)である。
本発明の別の好ましい実施形態では、構造単位Aと架橋構造との間のモル比は、100:(1〜40)であり、より好ましくは100:(10〜30)である。
本発明において、好ましい実施形態によれば、アイオノマー中の金属カチオンのモル含有量は、アイオノマー中の構造単位Aの総モル量の10〜120%(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、110%、115%、120%、又は前記数値の間の任意の値)を含む。アイオノマーの架橋度は好ましくは65%以上(例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は前記数値の間の任意の値)である。アイオノマーは微小球形状であり、150〜2000nm(例えば、150nm、250nm、350nm、450nm、550nm、650nm、750nm、850nm、950nm、1050nm、1150nm、1250nm、1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、1850nm、2000nm、又は前記数値の間の任意の値)の平均粒径を有する。
本発明において、金属カチオンのモル含有量は、蛍光X線スペクトル解析によって得られる。
架橋度はゲル含有量の尺度であり、溶媒としてテトラヒドロフランを使用する溶媒抽出法によって測定される。
平均粒径は、数平均粒径で特性付けられ、走査型電子顕微鏡で測定される。
本発明において、架橋剤は、ラジカル重合が可能な種々の一般的な二官能性又は多官能性ビニルモノマーであってもよい。好ましくは、架橋剤は、ジビニルベンゼン及び/又は少なくとも2つのアクリレート基を含むアクリレート架橋剤であり、アクリレート基の構造式は:−O−C(O)−C(R’)=CH2であり、R’はH又はC1−C4アルキル(メチル等)である。
より好ましくは、架橋剤は、ジビニルベンゼン、プロピレングリコールビス(メタ)アクリレート(1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート等)、エチレングリコールビス(メタ)アクリレート(エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)テトラメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びエトキシル化多官能性アクリレート、からなる群から選択される少なくとも1つである。
(アイオノマーの製造方法)
本発明によるアイオノマーは、以下の方法によって製造される:
(1)無水マレイン酸と、式(2)で表される構造単位Bを提供するモノマーMBと、架橋剤とを有機溶媒中で開始剤の存在下で接触させて反応させる工程;
(2)工程(1)で得られた生成物中の無水マレイン酸単位を開環させる、開環工程。
当業者は、無水マレイン酸は式(1)で表される構造単位Aを与える物質であることを理解することができる。モノマーMBは、式(2)で表される構造単位Bを与える物質であり、α−メチルスチレン又はスチレンであってもよい。
工程(1)の反応は、CN101338008Aに記載されているものと類似の方法によって行うことができる。
本発明の工程(1)において、使用されるそれぞれの原料の量に特に要件は無い。好ましくは、モノマーMBの量は、無水マレイン酸100モルに対して、50〜150モル、より好ましくは75〜100モルである。
好ましくは、架橋剤の量は、無水マレイン酸100モルに対して、1〜40モル、より好ましくは10〜20モル、さらにより好ましくは15〜20モルである。
好ましくは、有機溶媒の量は、無水マレイン酸100モルに対して、50〜150L、より好ましくは75〜100Lである。
好ましくは、開始剤の量は、無水マレイン酸100モルに対して、0.05〜10モル、より好ましくは1〜1.5モルである。
本発明の工程(1)において、有機溶媒は、溶液重合反応のための種々の一般的な溶媒であり得る。例えば、有機溶媒は、有機酸のアルキルエステル、すなわち単独で使用される有機酸のアルキルエステル、又は有機酸のアルキルエステルとアルカンとの混合物、又は有機酸のアルキルエステルと芳香族炭化水素との混合物を含む。とりわけ、有機酸のアルキルエステルは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸 sec−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸イソアミル、イソ吉草酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、酢酸フェニルメチル、及び酢酸フェニルエチルからなる群から選択される少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。アルカンは、n−ヘキサン及び/又はn−ヘプタンを含むが、これらに限定されない。芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、及びキシレンからなる群から選択される少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
本発明の工程(1)において、開始剤は、無水マレイン酸とα−メチルスチレン(又はスチレン)との重合反応を開始させるために当技術分野で一般に使用される試薬であってもよく、熱分解型開始剤であってもよい。好ましくは、開始剤は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル、及びアゾビスイソヘプトニトリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
本発明の工程(1)で用いることができる架橋剤の具体的な種類は、上述の通りである。
本発明の工程(1)において、反応条件に特に要件は無いが、好ましくは、反応条件は、アイオノマーの架橋度が65%以上であるような条件である。より好ましくは、工程(1)において、反応条件は、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気;50〜90℃、さらに好ましくは60〜70℃の温度;及び3〜15時間、さらに好ましくは5〜12時間の時間を含む。
工程(2)については、マレイン酸アイオノマー微小球の工程(2)及びマレイン酸エステルアイオノマー微小球の工程(2)を異なる条件下で行う。
マレイン酸アイオノマー微小球については、工程(2)は、工程(1)で得られた生成物を水の存在下で塩類化のための塩基と反応させることによって行うことができる。
この技術的解決策の工程(2)において、塩基の使用は、アイオノマー中の無水マレイン酸によって与えられる構造単位の総モル量に基づいて、アイオノマー中の金属カチオンのモル含有量のパーセントを、特定の範囲内、好ましくは前記範囲内にする。塩基の量は、慣習的に選択され得、好ましくは、塩基の量は、無水マレイン酸100モルに対して、10〜200モル(例えば、10モル、50モル、100モル、150モル、190モル、200モル、又は前記数値の間の任意の値)である。塩基は、好ましくは水溶液の形態で使用され、塩基の水溶液の濃度は、好ましくは1〜30重量%である。
塩基は、塩類化される工程(1)で得られたポリマー中のカルボキシル水素の一部が金属で置換されていれば、当該技術分野で従来使用されている塩基性物質、すなわち(上述したような)金属カチオンを与えることができる塩基性物質であってもよい。好ましくは、塩基は、金属水酸化物及び/又は金属酢酸塩から選択される。金属は、元素周期表のIA族、IIA族、及び/又はIIB族からの金属(特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、及び/又はマグネシウム)等の一価金属又は二価金属の同等物であってもよい。より好ましくは、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つである。
この技術的解決策の工程(2)において、塩類化は従来の条件下で行うことができる。例えば、塩類化条件は、20〜100℃、好ましくは30〜100℃の温度、及び0.5〜8時間、好ましくは0.5〜6時間の時間を含む。
この技術的解決策の工程(2)において、工程(1)で得られた生成物(懸濁液の形態で)は、塩基と反応させる前に後処理(分離、洗浄、及び乾燥)することもできる。洗浄は、従来の洗浄溶媒、例えば、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、及びメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つを使用して行ってもよい。このようにして、アイオノマー含有分散系が塩類化後に得られ、分散系のさらなる分離処理によって、アイオノマー生成物を得ることができる。例えば、分離処理は、遠心分離、水洗、有機溶媒洗浄(前記洗浄溶媒、すなわち、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、及びメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つ、を用いることができる)、遠心分離、及び乾燥(真空乾燥等)で行われる。
本発明者らは、有機溶媒を除去する工程を行わずに、工程(1)で得られた懸濁液を塩類化用塩基と直接反応させることによっても、本発明のアイオノマーを効果的に製造できることを見出した。従って、本発明の一実施形態によれば、工程(2)において、工程(1)で得られた生成物を塩基と直接反応させることができ(ワンポット法)、その結果、塩類化後にアイオノマー含有混合系が得られる。混合系は、さらに分離処理にかけることができ、アイオノマー生成物が得られる。例えば、混合系を静置して層分離し、上層の有機相をリサイクルし、下層である重い相を遠心分離、水洗−遠心分離、及び乾燥(例えば、真空乾燥)してアイオノマーを得る。この好ましい方法は、ワンポットプロセスを採用する。生成物の後処理は、1回の液−液分離、固−液分離、洗浄、及び乾燥のみを必要とし、これは、1バッチに必要とされる時間を効果的に短縮し、プロセスを単純化し、ユニット装置を減少させ、そしてエネルギー消費を効果的に減少させる。このプロセスは、反応媒体として1つの有機溶媒のみを必要とし、溶媒は、層に分離し乾燥操作することのみによってリサイクルすることができる。さらに、特別な水分離装置を必要とせず、反応器中で層への分離を達成することができ、溶媒は蒸留による精製を必要とせずにリサイクルすることができる。また、省エネルギーであり、消費量を低減でき、有機溶剤の使用による環境汚染を効果的に低減することができる。
マレイン酸エステルアイオノマー微小球については、工程(2)は、工程(1)で得られた生成物を塩基及び飽和一価アルコールと混合し反応させることによって行うことができる。
この技術的解決策の工程(2)において、塩基の使用は、アイオノマー中の無水マレイン酸によって与えられる構造単位の総モル量に基づいて、アイオノマー中の金属カチオンのモル含有量のパーセントを、特定の範囲内、好ましくは既に上述した範囲内にする。塩基の量は、慣習的に選択され得る。好ましくは、塩基の量は、無水マレイン酸100モルに対して、5〜100モル(例えば、5モル、10モル、20モル、50モル、80モル、100モル、又は前記数値の間の任意の値)である。
この技術的解決策の工程(2)では、塩基は、当技術分野で従来使用されている塩基性物質(金属カチオンを与えることができる塩基性物質(前記))であってもよい。好ましくは、塩基は、金属水酸化物、金属酢酸塩、及び金属アルコキシド(特に、C1−C10アルコキシド)からなる群から選択される少なくとも1つである。金属は、元素周期表のIA族、IIA族、及び/又はIIB族からの金属(特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛及び/又はマグネシウム)等の一価金属又は当量の二価金属であってもよい。より好ましくは、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸亜鉛、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ペントキシド、ナトリウムイソオクトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、亜鉛メトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、カリウムエトキシド、バリウムエトキシド、カルシウムエトキシド、リチウムエトキシド、及びカリウムtert−ブトキシドからなる群から選択される少なくとも1つである。
この技術的解決策の工程(2)において、飽和一価アルコールの使用は、アイオノマーにエステル基を導入する。飽和一価アルコールの量は特に要件は無いが、無水マレイン酸100モルに対して、飽和一価アルコールの量は100〜20000モルであることが好ましい。
飽和一価アルコールは、工程(1)で得られたポリマーとエステル化反応を行うことができるものであれば、従来用いられている飽和一価アルコールであってもよい。それは、直鎖アルカノール、分枝アルカノール、又は環状アルカノールであってもよい。好ましくは、飽和一価アルコールは、C1−C20(C1、C2、C4、C6、C8、C10、C12、C15、C20等、又はそこの間にある任意の数値)飽和一価アルコールである。より好ましくは、飽和一価アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール、2−プロピルヘプタノール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール、テトラデカノール、セチルアルコール、及びステアリルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである。
この技術的解決策の工程(2)では、反応は、従来の条件で行うことができる。例えば、反応条件は、20〜150℃、好ましくは30〜100℃の温度;0.5〜8時間、好ましくは0.5〜6時間の時間を含む。
本発明において、アイオノマーは、他の試薬(又は溶媒)を導入する必要なしに、単純な固液分離工程を介して、工程(2)で得られた生成物から得ることができる。固液分離により得られた液相は、工程(1)において再利用することができる。固液分離の様式は、濾過、遠心分離、及び他の固液分離方法であり得る。得られた固相をさらに乾燥させて、アイオノマー生成物を得ることができる。
(架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を連続製造するためのシステム及び方法)
本発明の別の態様は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムを提供する。図8に示すように、当該システムは、
連続的に連通する共重合ユニット、洗浄ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、乾燥ユニット、及び溶媒回収ユニットを備え、
共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され、
洗浄ユニットは、分離固体含有相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離にかけて、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され、
アイオノマー形成反応ユニットは、コポリマースラグ相を反応させ、製造されたアイオノマー反応液を第3の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得るために使用され、
乾燥ユニットは、遠心分離スラグ相を乾燥させて、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得るために使用され、
溶媒回収ユニットは、分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ共重合ユニット及び洗浄ユニットに戻すために使用され、
このシステムは、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される。
本発明のこの態様によれば、好ましくは、共重合ユニットは、反応溶媒貯蔵タンクV−13、反応液混合容器R−11、共重合反応器R−12、第1ディスク遠心分離機S−21、第1オンライン濁度計A−21、及び分離液貯蔵タンクV−25を備え、反応溶媒貯蔵タンクV−13は、反応溶媒を貯蔵するために使用され、反応液混合容器R−11は反応溶媒と反応の原料とを反応液に混合するために使用され、共重合反応器R−12は、反応液の共重合反応を連続的に行うために使用され、得られたポリマー母液は、連続的な第1の分離のために第1ディスク遠心分離機S−21に連続的に流入し、得られた分離液は第1オンライン濁度計A−21を通過し、共重合反応器R−12又は分離液貯蔵タンクV−25に導入される。
本発明のこの態様において、共重合反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は並列の2つの撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第1オンライン濁度計A−21を使用して、第1ディスク遠心分離機S−21による分離によって得られた分離液−Iの濁度を監視し、分離液−Iの流れ方向を制御する。好ましくは、第1オンライン濁度計A−21と共重合反応器R−12との間、及び第1オンライン濁度計A−21と分離液貯蔵タンクV−25との間にそれぞれバルブが設けられ、分離液−Iの濁度が基準に達しているときには分離液−Iを分離液貯蔵タンクV−25に導入し、分離液−Iの濁度が基準に達していないときには分離液−Iを共重合反応器R−12に導入する。基準に達しているとは、分離液−Iの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%(0.1gのポリマー微小球を100gの溶媒に分散させることによって形成される濁った液体の対応する濁度値)未満である、ということを意味する。
本発明の文脈において、濁度とは、均一に混合された混合物中の懸濁粒子による光の吸収、散乱、又は屈折による、混合物の巨視的に見える混濁度を指し、その値は濁度計を用いて測定される。濁度値は、粒子の特性及び濃度に関連する。従って、同種の粒子については、濁度値を粒子濃度の指標として用いることができ、ここでは粒子濃度(溶媒100g中の粒子の質量g、重量%)により特性付けされる。
本発明により提供されるシステムでは、共重合反応器R−12から排出される高濃度反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。共重合反応器R−12と洗浄容器R−22との間に配置された第1ディスク遠心分離機S−21と第1オンライン濁度計A−21とを組み合わせて使用することにより、反応液の連続的な第1の分離を達成し、反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
これに関連して、高濃度は以下に関連する:既存のディスク遠心分離機は、一般に5重量%未満の固形分を有する低濃度の濁った液体の分離のために使用される。
本発明のこの態様によれば、洗浄ユニットは、アルコール貯蔵タンクV−27、上澄液貯蔵タンクV−26、及び少なくとも1組の洗浄装置を備え、洗浄装置の各組は洗浄容器R−22、第2ディスク遠心分離機S−22、及び第2オンライン濁度計A−22を備え、アルコール貯蔵タンクV−27は、アルコール溶媒を貯蔵するために使用され、洗浄容器R−22は、分離固体含有相をアルコール溶媒で連続アルコール洗浄し、分散スラリーを得るために使用され、分散スラリーは、連続的な第2の分離のために第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に導入され、得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22を通過し、次いで洗浄容器R−22又は上澄液貯蔵タンクV−26に導入される。
本発明のこの態様によれば、第2オンライン濁度計A−22と洗浄容器R−22との間、及び第2オンライン濁度計A−22と上澄液貯蔵タンクV−26との間にそれぞれバルブが設けられ、洗浄上澄液の濁度が基準に達しているときには洗浄上澄液を上澄液貯蔵タンクV−26に導入し、洗浄上澄液の濁度が基準に達していないときには洗浄上澄液を洗浄容器R−22に導入する。
本発明のこの態様において、洗浄ユニットは、複数組の洗浄装置を備え得、例えば、前の組の第2ディスク遠心分離機S−22による分離によって得られた遠心分離スラグ相は、アルコール溶媒でアルコール洗浄するために次の組の洗浄装置に連続的に供給され、次いで、同じ連続的な第2の分離が上述のように行われ、アルコール洗浄効果を満たす最終的なコポリマースラグ相は、本発明によって提供されるシステムの乾燥ユニットに入る。
本発明のこの態様では、洗浄容器R−22から排出される高濃度分散スラリーは、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。洗浄容器R−22とアイオノマー反応器R−32との間に配置された第2ディスク遠心分離機S−22と第2オンライン濁度計A−22とを組み合わせて使用することにより、分散スラリーを連続的に第2の分離にかけ、分散スラリーの暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、アイオノマー形成反応ユニットは、アルカリ液タンクV−31、アイオノマー反応器R−32、第3ディスク遠心分離機S−31、及び第3オンライン濁度計A−31を備え、アルカリ液タンクV−31は、塩基のアルコール溶液を貯蔵して、それを反応に提供するために使用され、アイオノマー反応器R−32は、コポリマースラグ相と塩基のアルコール溶液との反応を行うために使用され、得られたアイオノマー反応液は、連続的な第3の分離のために第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に流入し、得られた分離液−IIは、第3オンライン濁度計A−31を通過し、次いでアイオノマー反応器R−32又は上澄液貯蔵タンクV−26に導入される。
本発明のこの態様において、アイオノマー反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第3オンライン濁度計A−31とアイオノマー反応器R−32との間、及び第3オンライン濁度計A−31と上澄液貯蔵タンクV−26との間にそれぞれバルブが設けられ、分離液−IIの濁度が基準に達しているときには分離液−IIを上澄液貯蔵タンクV−26に導入し、分離液−IIの濁度が基準に達していないときには分離液−IIをアイオノマー反応器R−32に導入する。基準に達しているとは、分離液−IIの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%未満である、ということを意味する。
本発明のこの態様では、アイオノマー反応器R−32から排出される高濃度アイオノマー反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。アイオノマー反応器R−32と乾燥機G−41との間に配置された第3ディスク遠心分離機S−31と第3オンライン濁度計A−31とを組み合わせて使用することにより、アイオノマー反応液の連続的な第3の分離を達成し、アイオノマー反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、乾燥ユニットは、乾燥機G−41、凝縮器E−41、及び乾燥凝縮液タンクV−41を備え、乾燥機G−41は、遠心分離スラグ相を乾燥させて、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得るために使用され、凝縮器E−41は、乾燥凝縮液タンクV−41と連通しており、乾燥機G−41から排出された気体溶媒を液体に凝縮するために使用され、液体は乾燥凝縮液タンクV−41に導入され、乾燥凝縮液タンクV−41は、アルコール貯蔵タンクV−27と連通している。
本発明のこの態様では、乾燥機G−41は、例えば、マイクロ波乾燥機、マイクロ波真空乾燥器、及び傾斜真空乾燥器(rake vacuum dryer)であってもよい。
乾燥を促進するために、乾燥凝縮液タンクV−41を真空装置に接続することもできる。
本発明のこの態様によれば、図9に示すように、溶媒回収ユニットは、アルコール溶媒回収装置及び反応溶媒回収装置を備え、アルコール溶媒回収装置は、上澄液貯蔵タンクV−26、アルコール貯蔵タンクV−27、及び反応溶媒回収装置と連通しており、洗浄上澄液中のアルコール溶媒を上澄液貯蔵タンクV−26から回収し、それをアルコール貯蔵タンクV−27に戻すために使用され、洗浄上澄液の残りの残留液は、反応溶媒回収装置に導入され、反応溶媒回収装置は、分離液貯蔵タンクV−25及び反応溶媒貯蔵タンクV−13と連通しており、分離液貯蔵タンクV−25から分離液を回収し、且つ残留液中の反応溶媒を回収し、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻すために使用される。分離液貯蔵タンクV−25中の分離液は、共重合ユニットからの分離液−I及びアイオノマー形成反応ユニットからの分離液−IIを含むことができる。
本発明のこの態様によれば、アルコール溶媒回収装置は、アルコール精留塔T−51、アルコール熱交換器E−51、アルコール凝縮液タンクV−51、及び残留液リボイラーE−52を備え、アルコール精留塔T−51は、上澄液貯蔵タンクV−26から上澄液を蒸留するために使用され、アルコール精留塔T−51の頂部から排出されたアルコール蒸気は、アルコール熱交換器E−51及びアルコール凝縮液タンクV−51を連続的に通過することによって、回収アルコールを得、回収アルコールの一部は、アルコール精留塔T−51に戻され、回収アルコールの他の部分は、洗浄ユニットで再使用するためにアルコール貯蔵タンクV−27に戻され、残留液は、アルコール精留塔T−51の底部から排出され、残留液の一部は残留液リボイラーE−52を通過した後、アルコール精留塔T−51に戻され、残留液の他の部分は、反応溶媒回収装置に導入される。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、常圧、又は上澄液中のアルコールを精製するためにわずかに陽圧の塔であってもよい。アルコール凝縮液タンクV−51とアルコール精留塔T−51との間に計量ポンプを配置することもできる。
本発明のこの態様によれば、反応溶媒回収装置は、供給タンクV−55、反応溶媒精留塔T−52、溶媒熱交換器E−53、溶媒凝縮液タンクV−53、及び廃液リボイラーE−54を備え、供給タンクV−55は、アルコール精留塔T−51の底部及び分離液貯蔵タンクV−25と連通しており、残留液及び供給物として分離液貯蔵タンクV−25からの分離液を混合するために使用され、反応溶媒精留塔T−52は、供給物を分留するために使用され、反応溶媒精留塔T−52の頂部から排出される溶媒蒸気は、溶媒熱交換器E−53及び溶媒凝縮液タンクV−53を順次通ることによって、回収溶媒を得、回収溶媒の一部は、反応溶媒精留塔T−52に戻され、回収溶媒の他の部分は、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻され、共重合ユニットで再利用され、廃液は、反応溶媒精留塔T−52の底部から排出され、廃液の一部は、廃液リボイラーE−54を通過した後、反応溶媒精留塔T−52に戻され、廃液の他の部分は排出される。
本発明のこの態様において、反応溶媒精留塔T−52は、供給タンクV−55からの供給物中の反応溶媒を精製するために使用される。溶媒凝縮液タンクV−53と反応溶媒精留塔T−52との間に計量ポンプを配置することもできる。
本発明のこの態様では、反応溶媒回収装置は、さらに連通する真空システムを設けてもよく、これにより、反応溶媒精留塔T−52の効率を改善し、エネルギー消費を低減することができる。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、塔の頂部出口とアルコール熱交換器E−51との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。反応溶媒精留塔T−52は、塔の頂部出口と溶媒熱交換器E−53との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。
本発明のこの態様では、タンク、塔、反応器、凝縮器、熱交換器、リボイラー、容器、遠心分離機等の上述の様々な装置に、必要に応じてそれぞれ物質入口及び/又は出口を設けることができる。物質入口は導入される物質を受け取るために使用され、物質出口は物質を排出するために使用される。実際の必要性に応じて、1つ以上の物質入口及び出口を配置することができる。
本発明のこの態様では、反応液混合容器R−11、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、内部に撹拌機構をさらに設けてもよい。撹拌機構は、物質移動がより十分であるように、必要なときにタンク又は反応器内の物質を撹拌するために使用される。また、反応液混合容器R−11、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、さらにジャケットを設けることができ、水を循環させることにより温度調整を行う。
本発明のこの態様では、システムは、さらに以下を含むことができる:
反応液混合容器R−11と共重合反応器R−12との間、共重合反応器R−12と第1ディスク遠心分離機S−21との間、アルカリ液タンクV−31とアイオノマー反応器R−32との間、アイオノマー反応器R−32と第3ディスク遠心分離機S−31との間、アルコール貯蔵タンクV−27と洗浄容器R−22との間、並びに洗浄容器R−22と第2ディスク遠心分離機S−22との間に配置された、計量ポンプ。
本発明のこの態様において、前記システムに備えられる第1ディスク遠心分離機、第2ディスク遠心分離機、及び第3ディスク遠心分離機は、好ましくは9000より大きい、好ましくは9000〜60000の分離係数を採用する。9000、10000、20000、30000、40000、50000、又は60000、及び前記数値のうちの任意の2つによって構成される範囲内の値を選択することができる。この規定された範囲内のディスク遠心分離機は、本発明によって提供されるシステムによって達成される高濃度条件下での微小球含有物質の遠心分離の条件をより良好に満たすことができ、本発明のシステムの連続操作を達成し、空気暴露操作の危険性を低減することができる。
本発明の文脈において、分離係数とは、遠心分離機中の懸濁液又はエマルジョンの重力に対する遠心力場中の遠心力の比、すなわち、重力加速度に対する遠心加速度の比を指す。分離係数はFrで表され、式中、Rは回転ドラム内で分離される物質の位置の半径(メートル)であり、ωは回転ドラムの回転角速度(rad/s)であり、gは重力加速度(9.81m/s2)であり、nは回転ドラムの回転速度(r/min)であり、mは回転ドラム内の物質の質量(kg)である。分離係数は、遠心分離機の性能を測定するための主要な指標である。Frが大きいほど、遠心分離のための駆動力が大きく、遠心分離機の分離性能が良好である。
従って本発明は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法を提供し、これは、本発明の前記システムにおいて行われ、そして図10に示されるように、以下を含む:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、システムの共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合反応させ、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むユニット母液を得る工程;
(2)ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得る工程;
(3)分離固体含有相をシステムの洗浄ユニットに導入し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離を行い、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程;
(4)コポリマースラグ相を塩基のアルコール溶液と反応させ、得られた生成物を連続的に第3の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得る工程;
(5)遠心分離スラグ相をシステムの乾燥ユニットに送り、乾燥させ、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得る工程;
(6)分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液をシステムの溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ工程(1)及び(3)に戻す工程。
工程(1)において採用することができる具体的な条件は、本発明のアイオノマー微小球を製造するための方法について上述した通りである。
工程(3)は、分離固体含有相を洗浄するために使用され、工程(1)における共重合反応の残留物を除去することができる。好ましくは、アルコール洗浄は、無水マレイン酸100モルに対して、合計で100〜250Lのアルコール溶媒、より好ましくは150〜200Lを使用する。好ましくは、アルコール溶媒は、メタノール又はエタノールから選択される。
工程(4)で使用される塩基の種類及び量は、マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造する方法について上述した通りである。
塩基のアルコール溶液に使用されるアルコールは、飽和一価アルコール、好ましくはメタノール又はエタノールであってもよい。好ましくは、塩基のアルコール溶液中のアルコールの量は、無水マレイン酸100モルに対して、100〜20000モルである。
好ましくは、工程(4)において、関係するコポリマースラグ相は、塩基のアルコール溶液と反応してアイオノマーを得、ここで、反応温度は20〜80℃、好ましくは30〜70℃であり、反応時間は0.5〜8時間、好ましくは0.5〜3時間である。
本発明のこの態様によれば、工程(2)、(3)、及び(4)は全て、得られた微小球含有物質からの微小球の分離を含む。例えば、工程(2)において、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液は、第1の分離にかけられ;工程(3)において、アルコール洗浄後のコポリマー微小球を含む分離固体含有相は、連続的な第2の分離にかけられ;工程(4)において、アイオノマー微小球を含む生成物は、第3の分離にかけられる。これらの微小球含有物質は、高濃度条件下で固液分離にかけられ、高純度の超微細微小球を得る。好ましくは、工程(2)における第1の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(3)における第2の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(4)における第3の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000である。分離係数の前記範囲内で、本発明の工程(2)〜(4)において、高濃度の微小球含有量という条件下で前記種々の分離を工業的に連続的に行うことができる。
本発明のこの態様の工程(5)において、スラグ相に同伴された反応溶媒及び/又はアルコール溶媒をさらに除去するために、乾燥温度は50〜150℃であり得、乾燥圧力は10〜1013mbar、好ましくは10〜200mbarであり得る。
本発明のこの態様において、工程(6)は、溶媒及びアルコールを回収するために使用され、本発明によって提供されるシステムの溶媒回収ユニットにおいて行われる。分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液中の反応溶媒及びアルコールを回収するには、溶媒回収ユニットの各部装置の運転及び制御条件は、十分でなければならない。
本発明のこの態様において、本発明の目的は、前記で規定される条件下でより良好に達成され得、架橋及び微小球構造を有するマレイン酸エステルアイオノマーの連続製造は達成され、溶媒の空気暴露操作は回避され、そして遠心分離機の頻繁な開始及び停止操作は回避される。
(架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造のためのシステム及び方法)
本発明の別の態様は、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムを提供する。図13に示すように、システムは、
連続的に連通する共重合ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、洗浄ユニット、乾燥装置、及び溶媒回収ユニットを備え、
共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され、
アイオノマー形成反応ユニットは、分離固体含有相を反応させ、製造された生成物を第2の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得るために使用され、
洗浄ユニットは、遠心分離スラグ相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第3の分離にかけて、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され、
乾燥ユニットは、アイオノマースラグ相を乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得るために使用され、
溶媒回収ユニットは、分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ共重合ユニット、洗浄ユニットに戻すために使用され、
このシステムは、架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される。
本発明のこの態様によれば、好ましくは、共重合ユニットは、反応溶媒貯蔵タンクV−13、反応液混合容器R−11、共重合反応器R−12、第1ディスク遠心分離機S−21、第1オンライン濁度計A−21、及び分離液貯蔵タンクV−25を備え、反応溶媒貯蔵タンクV−13は、反応溶媒を貯蔵するために使用され、反応液混合容器R−11は、反応溶媒と反応の原料とを反応液に混合するために使用され、共重合反応器R−12は、反応液の共重合反応を連続的に行うために使用され、得られたポリマー母液は、連続的な第1の分離のために第1ディスク遠心分離機S−21に連続的に流入し、得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過し、共重合反応器R−12又は分離液貯蔵タンクV−25に導入される。本発明のこの態様において、共重合反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は並列の2つの撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第1オンライン濁度計A−21を使用して、第1ディスク遠心分離機S−21による分離によって得られた分離液−Iの濁度を監視し、分離液−Iの流れ方向を制御する。好ましくは、第1オンライン濁度計A−21と共重合反応器R−12との間、及び第1オンライン濁度計A−21と分離液貯蔵タンクV−25との間にそれぞれバルブが設けられ、分離液−Iの濁度が基準に達しているときには分離液−Iを分離液貯蔵タンクV−25に導入し、分離液−Iの濁度が基準に達していないときには分離液−Iを共重合反応器R−12に導入する。基準に達しているとは、分離液−Iの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%未満である、ということを意味する。
本発明のこの態様では、回収溶媒中の少量の水を除去するために、反応溶媒貯蔵タンクV−13の下部に水分離器を設けることができる。
本発明のこの態様では、共重合反応器R−12から排出される高濃度反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。共重合反応器R−12とアイオノマー反応器R−32との間に配置された第1ディスク遠心分離機S−21と第1オンライン濁度計A−21とを組み合わせて使用することにより、反応液の連続的な第1の分離を達成し、反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、アイオノマー形成反応ユニットは、アルカリ溶解容器R−21、アルカリ液タンクV−31、アイオノマー反応器R−32、第2ディスク遠心分離機S−22、第2オンライン濁度計A−22、及び第3オンライン濁度計A−31を備え、アルカリ溶解容器R−21は、塩基を水に溶解してアルカリ液にするために使用され、アルカリ液タンクV−31は、アルカリ液を貯蔵し、それを反応に供給するために使用され、アイオノマー反応器R−32は、分離固体含有相とアルカリ液との反応のために使用され、得られたアイオノマー反応液は、連続的な第2の分離のために第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に流入し、得られた水相は、第2オンライン濁度計A−22を通過し、分離液−IIは、第3オンライン濁度計A−31を通過した後、アイオノマー反応器R−32、分離液貯蔵タンクV−25、又はアルカリ溶解容器R−21に導入される。
本発明のこの態様において、アイオノマー反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第2オンライン濁度計A−22とアイオノマー反応器R−32との間、第2オンライン濁度計A−22とアルカリ溶解容器R−21との間、第3オンライン濁度計A−31とアイオノマー反応器R−32との間、及び第3オンライン濁度計A−31と分離液貯蔵タンクV−25との間に、それぞれバルブが配置され、分離液−IIの濁度が基準に達しているときには分離液貯蔵タンクV−25に分離液−IIを導入し、水相の濁度が基準に達しているときにはアルカリ溶解容器R−21に水相を導入し、それらが基準に達していないときはアイオノマー反応器R−32に水相及び分離液−IIを導入する。基準に達しているとは、分離液−IIの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%未満である、ということを意味する。
本発明のこの態様では、アイオノマー反応器R−32から排出される高濃度アイオノマー反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。アイオノマー反応器R−32と洗浄容器R−22との間に配置された第2ディスク遠心分離機S−22、第2のオンライン濁度計A−22、及び第3のオンライン濁度計A−31を組み合わせて使用することにより、アイオノマー反応液の連続的な第2の分離を達成し、アイオノマー反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、洗浄ユニットは、アルコール貯蔵タンクV−27、上澄液貯蔵タンクV−26、及び少なくとも1組の洗浄装置を備え、洗浄装置の各組は、洗浄容器R−22、第3ディスク遠心分離機S−31、及び第4のオンライン濁度計A−41を備え、アルコール貯蔵タンクV−27は、アルコール溶媒を貯蔵するために使用され、洗浄容器R−22は、連続的に遠心分離スラグ相をアルコール溶媒でアルコール洗浄し、分散スラリーを得るために使用され、分散スラリーは、連続的な第3の分離のために第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に導入され、得られた洗浄上澄液は第4オンライン濁度計A−41を通過し、次いで洗浄容器R−22又は上澄液貯蔵タンクV−26に導入される。
本発明のこの態様によれば、第4オンライン濁度計A−41と洗浄容器R−22との間、第4オンライン濁度計A−41と上澄液貯蔵タンクV−26との間に、それぞれバルブが設けられ、洗浄上澄液の濁度が基準に達しているときには洗浄上澄液を上澄液貯蔵タンクV−26に導入し、洗浄上澄液の濁度が基準に達していないときには洗浄上澄液を洗浄容器R−22に導入する。
本発明のこの態様において、洗浄ユニットは、複数組の洗浄装置を備え得、例えば、前の組の第3ディスク遠心分離機S−31による分離によって得られた遠心分離スラグ相は、アルコール溶媒でアルコール洗浄するために次の組の洗浄装置に連続的に供給され、次いで、同じ連続的な第3の分離が上述のように行われ、アルコール洗浄効果を満たす最終的なスラグ相は、本発明によって提供されるシステムの乾燥ユニットに入る。
本発明のこの態様では、洗浄容器R−22から排出される高濃度分散スラリーは、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。洗浄容器R−22と乾燥機G−41との間に配置された第3ディスク遠心分離機S−31、及び第4のオンライン濁度計A−41を組み合わせて使用することにより、分散スラリーの連続的な第3の分離を達成し、分散スラリーの暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、乾燥ユニットは、乾燥機G−41、凝縮器E−41、及び乾燥凝縮液タンクV−41を備え、乾燥機G−41は、アイオノマースラグ相を乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得るために使用され、凝縮器E−41は、乾燥凝縮液タンクV−41と連通しており、乾燥機G−41から排出された気体溶媒を液体に凝縮するために使用され、乾燥凝縮液タンクV−41に導入され、乾燥凝縮液タンクV−41は、アルコール貯蔵タンクV−27と連通している。
本発明のこの態様では、乾燥機G−41は、例えば、マイクロ波乾燥機、マイクロ波真空乾燥器、及び傾斜真空乾燥器であってもよい。
乾燥を促進するために、乾燥凝縮液タンクV−41を真空装置と連通させることもできる。
本発明のこの態様によれば、溶媒回収ユニットは、図14に示すように、アルコール溶媒回収装置及び反応溶媒回収装置を備え、アルコール溶媒回収装置は、上澄液貯蔵タンクV−26、アルコール貯蔵タンクV−27、及び反応溶媒回収装置と連通しており、洗浄上澄液中のアルコール溶媒を上澄液貯蔵タンクV−26から回収し、それをアルコール貯蔵タンクV−27に戻すために使用され、洗浄上澄液の残留液は、反応溶剤回収装置に導入され、反応溶媒回収装置は、分離液貯蔵タンクV−25及び反応溶媒貯蔵タンクV−13と連通しており、分離液体貯蔵タンクV−25から分離液を回収し、且つ残留液中の反応溶媒を回収し、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻すために使用される。分離液貯蔵タンクV−25中の分離液は、共重合ユニットからの分離液−Iと、アイオノマー形成反応ユニットからの分離液−IIとを含むことができる。
本発明のこの態様によれば、アルコール溶媒回収装置は、アルコール精留塔T−51、アルコール熱交換器E−51、アルコール凝縮液タンクV−51、及び残留液リボイラーE−52を備え、アルコール精留塔T−51は、上澄液貯蔵タンクV−26から上澄液を蒸留するために使用され、アルコール精留塔T−51の頂部から排出されたアルコール蒸気は、アルコール熱交換器E−51及びアルコール凝縮液タンクV−51を連続的に通過することによって、回収アルコールを得、回収アルコールの一部は、アルコール精留塔T−51に戻され、回収アルコールの他の部分は、洗浄ユニットで再使用するためにアルコール貯蔵タンクV−27に戻され、残留液は、アルコール精留塔T−51の底部から排出され、残留液の一部は、残留液リボイラーE−52を通過した後、アルコール精留塔T−51に戻され、残留液の他の部分は、反応溶媒回収装置に導入される。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、常圧、又は上澄液中のアルコールを精製するためにわずかに陽圧の塔であってもよい。アルコール凝縮液タンクV−51とアルコール精留塔T−51との間に計量ポンプを設けることもできる。
本発明のこの態様によれば、反応溶媒回収装置は、供給タンクV−55、反応溶媒精留塔T−52、溶媒熱交換器E−53、溶媒凝縮液タンクV−53、及び廃液リボイラーE−54を含み、供給タンクV−55は、アルコール精留塔T−51の底部及び分離液体貯蔵タンクV−25と連通しており、供給物として残留液及び分離液貯蔵タンクV−25からの分離液を混合するために使用され、反応溶媒精留塔T−52は、供給物を分留するために使用され、反応溶媒精留塔T−52の頂部から排出される溶媒蒸気は、溶媒熱交換器E−53及び溶媒凝縮液タンクV−53を順次通ることによって、回収溶媒を得、回収溶媒の一部は、反応溶媒精留塔T−52に戻され、回収溶媒の他の部分は、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻され、共重合ユニットで再使用され、廃液は、反応溶媒精留塔T−52の底部から排出され、廃液の一部は、廃液リボイラーE−54を通過した後、反応溶媒精留塔T−52に戻され、廃液の他の部分は排出される。
本発明のこの態様において、反応溶媒精留塔T−52は、供給タンクV−55からの供給物中の反応溶媒を精製するために使用される。溶媒凝縮液タンクV−53と反応溶媒精留塔T−52との間に計量ポンプを設けることもできる。
本発明のこの態様では、反応溶媒回収装置は、さらに連通する真空システムを設けてもよい。これにより、反応溶媒精留塔T−52の効率を改善し、エネルギー消費を低減することができる。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、塔の頂部出口とアルコール熱交換器E−51との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。反応溶媒精留塔T−52は、塔の頂部出口と溶媒熱交換器E−53との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。
本発明のこの態様では、タンク、塔、反応器、凝縮器、熱交換器、リボイラー、容器、遠心分離機等の前記様々な装置に、必要に応じてそれぞれ物質入口及び/又は出口を設けることができる。物質入口は導入される物質を受け取るために使用され、物質出口は物質を排出するために使用される。実際の必要性に応じて、1つ以上の物質入口及び出口を配置することができる。
本発明のこの態様では、反応液混合容器R−11、アルカリ溶解容器R−21、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、内部に撹拌機構をさらに設けてもよい。撹拌機構は、物質移動がより十分であるように、必要なときにタンク又は反応器内の物質を撹拌するために使用される。また、反応液混合容器R−11、アルカリ溶解容器R−21、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、さらにジャケットを設けることができ、水を循環させることにより温度調整を行う。
本発明のこの態様では、システムは、さらに以下を含むことができる:
反応液混合容器R−11と共重合反応器R−12との間、共重合反応器R−12と第1ディスク遠心分離機S−21との間、アルカリ液タンクV−31とアイオノマー反応器R−32との間、アイオノマー反応器R−32と第2ディスク遠心分離機S−22との間、アルコール貯蔵タンクV−27と洗浄容器R−22との間、及び洗浄容器R−22と第3ディスク遠心分離機S−31との間に配置された、計量ポンプ。
本発明のこの態様において、前記システムに備えられる第1ディスク遠心分離機、第2ディスク遠心分離機、及び第3ディスク遠心分離機は、好ましくは9000より大きい、好ましくは9000〜60000の分離係数を採用する。この規定された範囲内のディスク遠心分離機は、高濃度条件下で本発明によって提供されるシステムによって微小球含有物質の遠心分離をより良好に達成し、本発明のシステムの連続操作を達成し、空気暴露操作の危険性を低減することができる。
従って本発明は、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法を提供し、これは、前記システムにおいて行われ、そして図15に示されるように、以下を含む:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、システムの共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合反応させ、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を得る工程;
(2)ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液を得る工程;
(3)分離固体含有相をアルカリ液と反応させ、得られた生成物を連続的に第2の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得る工程;
(4)遠心分離スラグ相をシステムの洗浄ユニットに導入し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び第3の分離を行い、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程;
(5)アイオノマースラグ相をシステムの乾燥ユニットに供給し、乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得る工程;及び、
(6)分離液−I、分離液−II、洗浄上澄液をシステムの溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ工程(1)及び(4)に戻す工程。
本発明のこの態様によれば、工程(1)において採用することができる具体的な条件は、本発明のアイオノマー微小球を製造するための方法について上述した通りである。
本発明のこの態様によれば、工程(3)で使用する塩基の種類及び量は、マレイン酸アイオノマー微小球の一般的な製造方法(M1及びM2は、それぞれ独立してH及び金属カチオンから選択される場合)について上述した通りである。
本発明のこの態様によれば、アルカリ液の濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、工程(3)は、アイオノマーを得るための、分離固体含有相とアルカリ液体との反応を含む。好ましくは、反応温度は20〜80℃、好ましくは30〜70℃であり、反応時間は0.5〜8時間、好ましくは0.5〜3時間である。
本発明のこの態様によれば、工程(4)は、遠心分離スラグ相を洗浄するために使用され、工程(3)における共重合反応及び反応の残留物を除去する。好ましくは、アルコール洗浄は、無水マレイン酸100モルに対して、合計で100〜250Lのアルコール溶媒、より好ましくは150〜200Lを使用する。好ましくは、アルコール溶媒は、メタノール又はエタノールから選択される。
本発明のこの態様によれば、工程(2)、(3)、及び(4)は全て、得られた微小球含有物質からの微小球の分離に関する。例えば、工程(2)において、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液は、第1の分離にかけられ;工程(3)において、アイオノマー微小球を含む生成物は、第2の分離にかけられ;工程(4)において、アルコール洗浄後のコポリマー微小球を含む遠心分離スラグ相は、連続的な第3の分離にかけられる。これらの微小球含有物質は、高濃度条件下で固液分離にかけられ、高純度の超微細微小球を得る。好ましくは、工程(2)における第1の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(3)における第2の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(4)における第3の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000である。分離係数の前記範囲内で、本発明における工程(2)〜(4)において、高濃度の微小球含有量という条件下で前記種々の分離を工業的に連続的に行うことができる。
本発明のこの態様における工程(5)において、スラグ相に同伴された反応溶媒及び/又はアルコール溶媒をさらに除去するために、乾燥温度は50〜150℃であり、乾燥圧力は10〜1013mbar、好ましくは10〜200mbarであり得る。
本発明のこの態様において、工程(6)は、溶媒及びアルコールを回収するために使用され、本発明によって提供されるシステムの溶剤回収ユニットにおいて行われる。分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液中の反応溶媒及びアルコールを回収するには、溶媒回収ユニットの各部装置の運転及び制御条件は、十分でなければならない。
本発明により提供されるこの方法において、本発明の目的は、前記で規定される条件下でより良好に達成され得、架橋及び微小球構造を有するマレイン酸アイオノマーの連続製造は達成され得、溶媒の空気暴露操作は回避され、そして遠心分離機の頻繁な開始及び停止操作は回避される。
(用途)
本発明によって製造されるアイオノマーは、架橋構造を有し、微小球形状である。本発明によるアイオノマーは、PETの改質における核剤として使用することができる。実際の使用において、本発明のアイオノマーは、PETと溶融混合することができ、これは、従来の混合装置で行うことができる。アイオノマーの量は、PET100gに対して、0.5〜5gであり得る。溶融混合の温度は、250〜300℃であってもよい。溶融混合の時間は、5〜8分間であってもよい。次いで、溶融混合された生成物を押出ペレット化に供して、改質PET生成物を得る。
従って、本発明はまた、本発明によるアイオノマーを核剤として含むポリエチレンテレフタレート組成物を提供する。さらに、本発明は、本発明によるアイオノマーが核剤としてポリエチレンテレフタレートに導入される、ポリエチレンテレフタレートを改質する方法も提供する。
以下、実施例を用いて本発明を例示するが、これは実施例に開示された範囲に本発明を限定することを意図するものではない。
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例において:
真空乾燥条件:100℃、真空度−0.095MPa、時間8h;
赤外スペクトル分析:PerkinElmer社の機器、Spectrum Twoによって測定;
平均粒径:走査型電子顕微鏡写真で300〜500個の微小球を選択し、その直径を測定し、数学的平均法を用いて微小球の平均粒径を計算することによって決定;
走査型電子顕微鏡分析:FEI社の機器、XL−30ESEM−FEGによって測定;
架橋度を測定する方法:ポリマー微小球2〜3gを秤量(w1)し、中速定性濾紙で包み、ソックスレー抽出器に入れ、テトラヒドロフランで24時間抽出し、乾燥し、得られたポリマー残留物を秤量(w2)し、w2/w1で計算して架橋度を取得:
濁度:濁度計、粒子濃度(溶媒100g中の粒子の質量g、重量%)によって特性付けられた濁度値を用いて測定した。
実施例1:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをn−ヘキサンで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。同時に、遠心分離後の上清をLC−MC(液体クロマトグラフィー−質量分析)により分析し、その中に残存するモノマーの量を決定した。投入されたモノマーの量(又は架橋剤の量)から残留したモノマーの量(又は架橋剤の量)を差し引いて得られたモノマーの量(又は架橋剤の量)は、実際に反応に関与した量であり、これにより構造単位A、構造単位B、及び架橋構造間のモル比を得、具体的には以下の表1に示すように得た(以下同様;ワンポット法で製造する場合、最初の遠心分離後に上清を少量取り、モノマーの量を決定した)。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び4.4gの水酸化ナトリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.55モルであった)を200mLのメタノールに加え、64.7℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルナトリウム塩アイオノマー微小球(C1と称す)を得た。
実施例2:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び2.2gの水酸化ナトリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.28モルであった)を200mLのエタノールに添加し、78℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エチルナトリウム塩アイオノマー微小球(C2と称す)を得た。
実施例3:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び6.2gの水酸化カリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.55モルであった)を300mLのイソプロパノールに加え、80℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にイソプロパノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にイソプロパノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸イソプロピルカリウム塩アイオノマー微小球(C3と称す)を得た。
実施例4:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び6.6gの水酸化ナトリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.83モルであった)を300mLの2−プロピルヘプタノールに加え、90℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥し、架橋α−メチルスチレン/C10アルコールマレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(C4と称す)を得た。
実施例5:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、スチレン104g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で10時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させて架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得た。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び13.5gのナトリウムエトキシド(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.98モルであった)を200mLのエタノールに加え、78℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エチルカリウム塩アイオノマー微小球(C5と称す)を得た。
実施例6:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
ジビニルベンゼンの量が10gであることを除いて、実施例1の方法に従ってアイオノマー微小球を製造し、アイオノマー微小球C6を得た。
実施例D1:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをn−ヘキサンで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)15.2gの水酸化ナトリウムを350mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化ナトリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.9モルであった)に加え、100℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D1と称す)を得た。
実施例D2:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)20.5gの酢酸ナトリウムを300mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた酢酸ナトリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.2モルであった)に加え、100℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D2と称す)を得た。
実施例D3:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)36.7gの酢酸亜鉛を400mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた酢酸亜鉛水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1モルであった)に加え、100℃で8時間反応させた。反応後、系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸亜鉛塩アイオノマー微小球(D3と称す)を得た。
実施例D4:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)15.6gの水酸化リチウム一水和物を450mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化リチウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.85モルであった)に加え、100℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸リチウム塩アイオノマー微小球(D4と称す)を得た。
実施例D5:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)15.0gの水酸化カリウムを400mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化カリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.3モルであった)に加え、30℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸カリウム塩アイオノマー微小球(D5と称す)を得た。
実施例D6:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、スチレン104g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃の水浴中で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋スチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)13.5gの水酸化ナトリウムを350mLの水に溶解し、50gの架橋スチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化ナトリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.6モルであった)に加え、100℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋スチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D6と称す)を得た。
実施例D7:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸1000g、α−メチルスチレン1180g、ジビニルベンゼン260g、及びアゾビスイソブチロニトリル20gを酢酸イソアミル10Lに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。
(2)工程(1)の反応後の系に水酸化ナトリウム水溶液3500g(14重量%)を加え、80℃で3時間反応させた。反応後、その系を静置して層に分離させた。重い相を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に水4Lを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に水4Lを加え撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D7と称す)を得た。
(3)工程(1)の反応後の系を遠心分離機で5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これを溶媒で洗浄して精製し、真空下で乾燥した。次いで、3500gの水酸化ナトリウム水溶液(10重量%、塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.25モルであった)を加え、80℃で3時間反応させた。反応後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D7−1と称す)を得た。
実施例D8:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸1000g、α−メチルスチレン1180g、エチレングリコールジメタクリレート600g、及びアゾビスイソブチロニトリル25gを酢酸イソアミル15Lに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。
(2)反応後、水酸化リチウム水溶液1000g(10重量%)を加え、90℃で0.5時間反応させた。反応後、その反応の系を静置して層に分離させた。重い相を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に4Lの水を加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に4Lの水を加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸リチウム塩アイオノマー微小球(D8と称す)を得た。
実施例D9:マレイン酸アイオノマー微小球
ジビニルベンゼンの量が10gであることを除いて、実施例D1の方法に従ってアイオノマー微小球を製造し、アイオノマー微小球D9を得た。
比較例E1
(1)無水マレイン酸98g及びα−メチルスチレン118gを秤量し、窒素入口、撹拌機、温度計、凝縮器、及び還流凝縮管を備えた三つ口フラスコに入れ、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2gを加え、反応溶媒としてトルエンを適正量加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、ポリマーを吸引濾過し、濾過ケーキをトルエンで3回洗浄し、真空乾燥してα−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマーを得た。
(2)α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー20.2gを1,4−ジオキサン200mLに溶解し、飽和水酸化ナトリウム水溶液4gを加えて、室温で3時間反応させた。反応後、アイオノマー固体を濾過により得た。得られた固体を真空乾燥し、α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー(E1と称す)を得た。
試験例1
(1)実施例1、実施例D1、及び比較例E1で得られたポリマーを赤外スペクトルにより分析した。結果をそれぞれ図1、図3、及び図5に示す。赤外スペクトル分析の結果から、アイオノマーの合成に成功したことが分かる。実施例2〜6の赤外スペクトル分析の結果は実施例1と同様であり、実施例D2〜D9の赤外スペクトル分析の結果は実施例D1と同様である。それら全てが、アイオノマーを首尾よく得ていた。
(2)前記実施例及び比較例で製造したアイオノマー微小球をX線蛍光スペクトル分析にかけて、アイオノマー中の金属カチオンの含有量、すなわちアイオノマー中の構造単位Aの総モル量に基づくパーセンテージを決定した。
(3)前記実施例及び比較例で製造したアイオノマーを走査型電子顕微鏡で検出した。実施例1及び実施例D1で得られたアイオノマーの走査型電子顕微鏡画像をそれぞれ図2及び図4に示す。本発明のアイオノマーは微小球形状を有するが、比較例E1で得られたアイオノマーは微小球構造を有していないことが分かる。試験したアイオノマー微小球の平均粒径、架橋度等を下記表1に示す。
(4)前記実施例及び比較例で製造したアイオノマー微小球を、PET(Sinopec Yizheng Chemical Fibre Companyより購入、型番:BG80)とそれぞれ均一に混合し、アイオノマー微小球の添加量をPETの重量に対して1重量%とし、280℃で8分間溶融混合した後、押出ペレット化し、改質ポリエチレンテレフタレートを得た。
改質PETと、対照として未改質ペットとを、示差走査熱量測定(DSC)試験にかけた。試験条件は、第1の温度上昇(50℃から開始し、温度を1分間一定に維持し、次いで温度を10℃/分の速度で280℃に上昇させ、温度を3分間一定に維持し、次いで温度を10℃/分の速度で50℃に低下させ、温度を1分間一定に維持した);第2の温度上昇(50℃から開始し、温度を10℃/分の速度で280℃に上昇させた)。表2に結果を示す。
表2の結果から、本発明の方法によって製造されたアイオノマーは比較例よりもPETの核形成に対して有意に良好な効果を有し、PETの結晶化温度を有意に上昇させ、結晶化速度を加速させることができ、さらに、微小球構造を有さない非架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーよりもPETの核形成に対して良好な効果を有することが分かる。さらに、エステル基を導入すると、架橋アイオノマー微小球のペットとの相溶性が増大し、エステル基を含まないアイオノマー微小球と比較してPETの核形成に対して、より良好な効果が達成された。
また、実施例1と実施例6との比較、及び実施例D1と実施例D8〜D9との比較から、架橋剤の量を好ましい範囲に制御することにより、より良好な核形成効果が得られることが分かる。
試験例2
この試験例では、0.7dl/gの固有粘度及びBG80の型番を有するPETをSinopec Yizheng Chemical Fibre Companyから購入した。難燃剤は、Jinan Taixing Fine Chemicals Co Ltdから購入した窒素−リンハロゲンフリー難燃剤(HT202A)であった。潤滑剤はBritain Croda Companyから購入したPET100であった。ガラス繊維(又はGF)はZhejiang Jushi Group Co Ltd.から購入し、型番はER13−2000−988Aであった。加工助剤は酸化防止剤を含み、company Ciba Specialty Chemicalsから購入し、型番はIrganox 1010及びIrgafos 168であった。
試験の具体的な工程は以下の通りであった:
100重量部のPET、1.5重量部のアイオノマー微小球、0.2重量部の加工助剤(Irganox 1010及びIrgafos 168、重量比率1:1)、8重量部の難燃剤、及び0.04重量部の潤滑剤を秤量し、高速撹拌機に入れて均一に撹拌し、WP ZSK25二軸押出機を使用して各領域の温度:230−245−255−260−260−260℃;で押し出し、二軸押出機の供給口でガラス繊維を添加し、押し出し後、冷却、ペレット化、及び乾燥(100℃、8時間)し、ペレットを性能試験のために、Haitian MA1200/370射出成形機(成形温度60℃)を使用して、230−240−255−260−260℃の温度で標準試料片に射出成形した。
射出成形機(Ningbo Haitian MA1200/370)を用いて射出成形し、サイズが170mm(長さ)×25mm(幅)×4mm(厚さ)で、平行部が10mm(幅)×4mm(厚さ)の標準スプラインを得た。標準スプラインの引張強さ及び破断伸びは、GB/T1040‐1992によるプラスチックの引張特性の試験方法によって測定した。
射出成形機(Ningbo Haitian MA1200/370)を用いて射出成形し、サイズが80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)の標準スプラインを得た。標準スプラインの曲げ強さ及び曲げ弾性率は、GB/T9341−2008によるプラスチックの曲げ特性についての試験方法によって測定した。
射出成形機(Ningbo Haitian MA1200/370)を用いて射出成形し、サイズが80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)、ノッチ2mmの標準スプラインを得た。標準スプラインのシャルピーノッチ付衝撃強さは、GB/T1043−93によるプラスチックのアイゾット衝撃強さの試験方法によって測定した。
変形:2つの射出成形サンプル正方形片(60mm×60mm×2mm)を採取し、一方を120℃のオーブンに2時間置き、他方を室温に置いた。サンプル片の変形を観察した。
その結果、本発明のアイオノマーを使用することにより、得られたプラスチック製品は、118〜145MPaの範囲の引張強さ、約2%の破断伸び、140〜180MPaの範囲の曲げ強さ、5.6〜9.5GPaの範囲の曲げ弾性率、及び4.5〜10kJ/m2の範囲のシャルピーノッチ付衝撃強さを有することができ、120℃のオーブンに2時間入れても明らかな変形は観察されなかった。
マレイン酸アイオノマー微小球及びマレイン酸エステルアイオノマー微小球の連続製造プロセス
実施例F1
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を共重合反応器R−12(2つの並列な撹拌タンク反応器)に供給し、窒素雰囲気下、75℃で5時間、共重合反応させた。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、計量ポンプ(流量100kg/h)を通して第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数9000)にかけた。分離によって得られた分離液−Iは、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相は洗浄容器R−22に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中のメタノールを、143kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、分離固体含有相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量173kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−22に送り、第2の分離(分離係数9000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたコポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ液タンクV−31には、濃度2.5重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を貯留した。コポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32(撹拌タンク型反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量83kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム80モル、メタノール3900モルを用いた)。反応は50℃で行い、滞留時間は1時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量122kg/h)によって、底部から第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に供給して、第3の分離(分離係数9000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得た。分離液−IIは、精製後の再利用のために、上澄液貯蔵タンクV−26に運搬された。
遠心分離スラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(46kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。17.5kg/hの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルナトリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、図6に示すように、マレイン酸ナトリウム塩及びマレイン酸エステルの特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。図7に示すように、微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1521nmであると測定された。架橋度は81%と測定された。
撹拌タンク反応器R−12BとR−12Aとを並列に接続し、物質を交互に排出した。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
実施例F2
この実施例は、エタノールをアルコール貯蔵タンクV−27に貯蔵し、18.3kg/hの収量で架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エチルナトリウム塩アイオノマー微小球を得たことを除いて、実施例F1の方法に従って行った。
実施例F3
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル10.14モル、ジビニルベンゼン150モル、α−メチルスチレン750モル、酢酸イソアミル900L。
反応液を管状反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、管状反応器R−12の出口温度を90℃に制御し、滞留時間を3時間とした。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数12000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相は洗浄容器R−22に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、133kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、分離固体含有相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量162kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−22に送り、第2の分離(分離係数12000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたコポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ液タンクV−31には、濃度2.5重量%の水酸化カリウムのメタノール溶液を貯留した。コポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32(管状反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量130kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化カリウム100モル、メタノール6800モルを用いた)。反応器温度を70℃に制御し、滞留時間は1.5時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量166kg/h)によって、第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に供給して、第3の分離(分離係数12000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得た。分離液−IIは、精製後の再利用のために、上澄液貯蔵タンクV−26に運搬された。
遠心分離スラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(43kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は100℃であり、圧力は10mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。17.3kg/hの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルカリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、マレイン酸カリウム塩及びマレイン酸エステルの特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1600nmであると測定された。架橋度は78%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は以下の通りであった。
実施例F4
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル15モル、ジビニルベンゼン180モル、α−メチルスチレン850モル、酢酸イソアミル850L。
反応液をバッフル反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、バッフル反応器R−12の出口温度を85℃に制御し、滞留時間を3時間とした。
反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数14000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相は洗浄容器R−22に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、170kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、分離固体含有相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量207kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−22に送り、第2の分離(分離係数14000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたコポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ液タンクV−31には、濃度2.5重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を貯留した。コポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32(バッフル反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量22kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム20モル、メタノール900モルを用いた)。反応器温度を50℃に制御し、滞留時間は0.75時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量66kg/h)によって、底部から第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に供給して、第3の分離(分離係数14000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得た。分離液−IIは、精製後の再利用のために、上澄液貯蔵タンクV−26に運搬された。
遠心分離スラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(48kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は150℃であり、圧力は100mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。19.5kg/hの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルナトリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、無水マレイン酸の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は2000nmであると測定された。架橋度は80%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
比較例F1
ポリマー反応タンクに以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を75℃に加熱し(昇温時間1時間)、75℃で5時間、共重合反応させた。反応により得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間1時間)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、分離固体含有相を得た。
分離固体含有相をアイオノマー反応器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。2.5重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液1000kgをアルカリ液タンクから加え、50℃で1時間、反応させた。
反応により得られたマレイン酸アイオノマー微小球の反応液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間は0.5時間であった)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、遠心分離スラグ相を得た。
遠心分離スラグ相を洗浄容器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。洗浄のためのメタノールを計量ポンプによってアルコール貯蔵タンクから洗浄容器に送り、1時間撹拌した。得られた洗浄液を計量ポンプで三脚遠心分離機に加えて分離したところ、分離時間は2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。スラグ相が得られた。
スラグ相を傾斜真空乾燥器G−41に手動で加え(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃(昇温時間1時間)であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。214kgの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エステルナトリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
バッチ操作は、7.8kg/hの生産効率を有した(各作業セクションにおいて、三脚遠心分離機を用いて1バッチの固液分離を行った)。
前記実施例及び比較例の結果から、本発明による実施例F1〜F4の使用は架橋及び微小球構造を有するマレイン酸エステルアイオノマーの連続製造を達成することができ、従来技術における製造システムの種々のユニット間の手動操作を含む分離プロセスを克服し、より高い生産効率及び安定な生産プロセスという顕著な効果を有することが分かる。さらに、製造プロセスは、手動の現場操作を必要とせず、有機溶媒の空気暴露操作を伴わず、人員及び環境に対する害が少ない。
実施例G1
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を共重合反応器R−12(2つの並列な撹拌タンク反応器)に供給し、窒素雰囲気下、75℃で5時間、共重合反応させた。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、計量ポンプ(流量100kg/h)を通して第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数9000)にかけた。分離によって得られた分離液−Iは、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相はアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ溶解容器R−21には、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を配合し、後の使用のためにアルカリ液タンクV−31に加えた。分離固体含有相をアイオノマー反応器R−32(撹拌タンク反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量20kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム80モルを用いた)。反応は50℃で行い、滞留時間は1時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量50kg/h)によって、底部から第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に供給して、第2の分離(分離係数9000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得、分離液−IIは、精製後の再利用のために、分離液貯蔵タンクV−25に送り、水相は再利用のためにアルカリ溶解容器R−21に送り、遠心分離スラグ相は物質レベル差に基づいて洗浄容器R−22に送った。第2の分離の効果は、濁度を制御するための第2オンライン濁度計A−22及び第3オンライン濁度計A−31によって判断することができた。水相及び分離液−IIの濁度が0.1重量%を超えるときはアイオノマー反応器R−32に戻し、水相の濁度が0.1重量%未満のときはアルカリ溶解容器R−21に送り、分離液−IIの濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中のメタノールを、143kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、遠心分離スラグ相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量173kg/h)によって第3ディスク遠心分離機S−31に送り、第3の分離(分離係数9000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第4オンライン濁度計A−41で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたアイオノマースラグ相を乾燥機G−41に送った。
アイオノマースラグ相を物質レベル差に基づいて、傾斜真空乾燥器G−41に送り(43kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。16.3kg/hの収量で、架橋マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、図11に示すように、マレイン酸ナトリウム塩の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするアイオノマーの構造の存在を証明した。図12に示すように、微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1521nmであると測定された。架橋度は81%と測定された。
撹拌タンク反応器R−12BとR−12Aとを並列に接続し、物質を交互に排出した。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
実施例G2
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル10.14モル、ジビニルベンゼン150モル、α−メチルスチレン750モル、酢酸イソアミル900L。
反応液を管状反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、管状反応器R−12の出口温度を90℃に制御し、滞留時間を3時間とした。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数12000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相はアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ溶解容器R−21には、20重量%水酸化カリウム水溶液を配合し、後の使用のためにアルカリ液タンクV−31に加えた。分離固体含有相をアイオノマー反応器R−32(管状反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量16kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化カリウム100モルを用いた)。反応器温度は50℃に制御し、滞留時間は1時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量46kg/h)によって、出口から第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に供給して、第2の分離(分離係数12000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得、分離液−IIは、精製後の再利用のために、分離液貯蔵タンクV−25に送り、水相は再利用のためにアルカリ溶解容器R−21に送り、遠心分離スラグ相は物質レベル差に基づいて洗浄容器R−22に送った。第2の分離の効果は、濁度を制御するための第2オンライン濁度計A−22及び第3オンライン濁度計A−31によって判断することができた。水相及び分離液−IIの濁度が0.1重量%を超えるときはアイオノマー反応器R−32に戻し、水相の濁度が0.1重量%未満のときはアルカリ溶解容器R−21に送り、分離液−IIの濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、133kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、遠心分離スラグ相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量167kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−31に送り、第3の分離(分離係数12000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第4オンライン濁度計A−41で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたアイオノマースラグ相を乾燥機G−41に送った。
アイオノマースラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(44kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は50℃であり、圧力は10mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。16.5kg/hの収量で、架橋マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、マレイン酸カリウム塩の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするアイオノマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1600nmであると測定された。架橋度は78%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
実施例G3
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル15モル、ジビニルベンゼン180モル、α−メチルスチレン850モル、酢酸イソアミル850L。
反応液をバッフル反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、バッフル反応器R−12の出口温度を85℃に制御し、滞留時間を3時間とした。
反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数14000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相はアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ溶解容器R−21には、50重量%水酸化ナトリウム水溶液を配合し、後の使用のためにアルカリ液タンクV−31に加えた。分離固体含有相をアイオノマー反応器R−32(バッフル反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量1.1kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム20モルを用いた)。反応器温度は30℃に制御し、滞留時間は0.5時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量33kg/h)によって、底部から第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に供給して、第2の分離(分離係数14000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得、分離液−IIは、精製後の再利用のために、分離液貯蔵タンクV−25に送り、水相は再利用のためにアルカリ溶解容器R−21に送り、遠心分離スラグ相は物質レベル差に基づいて洗浄容器R−22に送った。第2の分離の効果は、濁度を制御するための第2オンライン濁度計A−22及び第3オンライン濁度計A−31によって判断することができた。水相及び分離液−IIの濁度が0.1重量%を超えるときはアイオノマー反応器R−32に戻し、水相の濁度が0.1重量%未満のときはアルカリ溶解容器R−21に送り、分離液−IIの濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、180kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、遠心分離スラグ相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量213kg/h)によって第3ディスク遠心分離機S−31に送り、第3の分離(分離係数14000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第4オンライン濁度計A−41で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。
アイオノマースラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(47kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は90℃であり、圧力は100mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。17.8kg/hの収量で、架橋マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、マレイン酸ナトリウム塩の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は2000nmであると測定された。架橋度は80%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
比較例G1
ポリマー反応タンクに以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を75℃に加熱し(昇温時間1時間)、75℃で5時間、共重合反応させた。反応により得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間1時間)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、分離固体含有相を得た。
分離固体含有相をアイオノマー反応器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。10重量%の水酸化ナトリウム水溶液250kgをアルカリ液タンクから加え、50℃で1時間、反応させた。反応により得られたマレイン酸アイオノマー微小球の反応液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間は0.5時間であった)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、遠心分離スラグ相を得た。
遠心分離スラグ相を洗浄容器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。洗浄のためのメタノールを計量ポンプによってアルコール貯蔵タンクから洗浄容器に送り、1時間撹拌した。得られた洗浄液を計量ポンプで三脚遠心分離機に加えて分離したところ、分離時間は2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。スラグ相が得られた。
スラグ相を傾斜真空乾燥器G−41に手動で加え(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃(昇温時間1時間)であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。203kgの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
バッチ操作は、7.7kg/hの生産効率を有した(各作業セクションにおいて、三脚遠心分離機を用いて1バッチの固液分離を行った)。
前記実施例及び比較例の結果から、本発明による実施例G1〜G3の使用は架橋及び微小球構造を有するマレイン酸アイオノマーの連続製造を達成することができ、従来技術における製造システムの種々のユニット間の手動操作を含む分離プロセスを克服し、より高い生産効率及び安定な生産プロセスという顕著な効果を有することが分かる。さらに、製造プロセスは、手動の現場操作を必要とせず、有機溶媒の空気暴露操作を伴わず、人員及び環境に対する害が少ない。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的概念の範囲内で、任意の他の適切な方法での種々の技術的特徴の組み合わせを含む、種々の単純な改変が、本発明の技術的解決策になされ得る。これらの単純な改変及び組み合わせもまた、本発明の開示とみなされるべきであり、それらは全て本発明の保護範囲に属する。
本明細書で開示される範囲の終点及びその中の任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲については1つ以上の新しい数値範囲を得るために、様々な範囲の終点値と様々な範囲の個々の点値との間、様々な範囲の終点値と個々の点値との間で組み合わせを行うことができ、これらの数値範囲は本明細書で具体的に開示されていると考えられる。
〔符号一覧〕
図1は、実施例1で合成したアイオノマーの赤外スペクトルである。
図2は、実施例1で合成したアイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である。
図3は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである。
図4は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である。
図5は、比較例E1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである。
図6は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の赤外スペクトルである。
図7は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である。
図8は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである。
図9は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである。
図10は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである。
図11は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の赤外スペクトルである。
図12は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である。
図13は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである。
図14は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである。
図15は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである。
発明の詳細な説明
〔技術分野〕
本発明は、ポリマー材料の分野に関し、特に、架橋構造を有する微小球アイオノマー、その製造方法、及びその用途に関する。本発明はまた、架橋アイオノマー微小球の連続製造に関し、特に、本発明による架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球、及び架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造のためのシステム、及び方法に関する。
〔背景技術〕
イオン性ポリマー(略してアイオノマーとも呼ばれる)は、ポリマー鎖上に少数のイオン性基を有するポリマー材料の一種であり、イオン性基のモル含有量は、一般に15%を超えない。アイオノマーは、無機イオンと有機分子との完全な組み合わせの単一体である。イオン性基の導入により、イオン−イオン相互作用;イオン−イオン対相互作用;イオン−双極子相互作用;及び水素結合の相互作用のような通常のポリマーには見出されない、アイオノマー中の分子間の特別な相互作用が存在する。これらの特別な相互作用により、アイオノマーは多くの独特の特性を有し、高分子改質及び機能性材料のような態様において重要な用途を有する。さらに、ポリマー微小球の製造及び用途に関する最近の研究は、機能性ポリマー材料の分野において、注目されている。ナノスケール〜ミクロンスケールのポリマー微小球は、大きな比表面積、強い吸着、強い凝集、及び強い表面反応能力等の特別な特性を有し、多くのハイテク分野で広く使用することができる。
Yan Zhe、Qiang Xihuaiらは、1,4−ジオキサンを溶媒とし、p−トルエンスルホン酸を触媒とする、スチレン/無水マレイン酸コポリマーの高級脂肪アルコールモノエステルのナトリウム塩の調製について、論文「スチレン/無水マレイン酸コポリマーの脂肪アルコールモノエステルのナトリウム塩の調製及び表面活性(Preparation and Surface Activity of Sodium Salt of Fatty Alcohol Monoester of Styrene / Maleic Anhydride Copolymer)」("China Surfactant Detergent & Cosmetics"、2012, 42(2): 97-100)に記載している。
Lai Xiaolin、Sun Chengdongらは、メチルエチルケトンを溶媒とし、トリエチルアミンを触媒とする、スチレン/無水マレイン酸コポリマーのエチルエステルの調製について、論文「SMA−エタノールの合成、及びpH感応特性(Synthesis and pH-sensitive property of SMA-ethanol)」("Applied Chemical Industry"、2008, 37(5): 498-501)に記載している。反応混合物を石油エーテル中で沈殿させ、吸引濾過し、続いて乾燥させ、テトラヒドロフラン中に再溶解させ、石油エーテル中で再び沈殿させ、濾過し、乾燥させて、生成物を得た。
しかしながら、工業生産においては、ポリマー微小球及びアイオノマー微小球の両方は、超微粒子の洗浄及び精製、並びに固液分離に直面しなければならない。現在、一般的に用いられている方法は、三脚遠心分離機(three-feet centrifuge)、又は空気暴露操作を伴う板枠式厚濾機を用いる方法であり、プロセスの連続性と安全性を改善する必要がある。
CN102924641Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のための核剤及びその製造方法を開示している。核剤は、加水分解、塩類化、及び精製を介して、ランダムコポリマー又はスチレンと無水マレイン酸との交互コポリマーから製造されたスチレン/マレイン酸アイオノマーである。製造方法は、無水マレイン酸モノマー、スチレンモノマー、開始剤、及び溶媒を窒素雰囲気中で均一に混合し、60〜80℃で1〜1.5時間反応させ、続いて反応生成物を溶媒中で沈殿させ、精製し、真空下で乾燥させて、コポリマーを得、次いでコポリマーを1,4−ジオキサンに溶解し、塩基のアルコール溶液を滴下し、生成したアイオノマーを沈殿剤から沈殿させ、続いて真空濾過及び精製して、スチレン/マレイン酸アイオノマーを得ることを含む。アイオノマーは、PETの結晶化温度を上昇させ、結晶化速度を加速させることができる。
CN103145903Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のための核剤及びその製造方法を開示している。核剤は、加水分解、塩類化、及び精製によって、ポリスチレン−b−ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸)ジブロックコポリマーから製造されたポリスチレン−b−ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸)ジブロックアイオノマーである。核剤は、PET溶融物中でミクロ相分離を形成することができ、それによってPET結晶化のための結晶核を供給する。
しかしながら、PETの核形成に対する効果に関して、前記方法によって製造されたポリマーを改善する余地は、依然として存在する。
〔発明の概要〕
本発明の第1の目的は、架橋構造を有する微小球アイオノマー、その製造方法、及びその用途を提供することである。微小球アイオノマーは従来技術の欠点を克服し、PETの核形成に良好な効果を有する。
本発明の別の目的は、超微細粒子の困難な洗浄及び精製、並びに困難な固液分離に関する工業化生産における問題を十分に克服することができる、本発明による架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球及び架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造のためのシステム及び方法を提供することである。
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、架橋構造を有する微小球アイオノマーであって、前記アイオノマーは、式(1)で表される構造単位Aと、式(2)で表される構造単位Bと、架橋剤によって与えられる架橋構造単位とを含み、
式中、M1及びM2はそれぞれ独立して、Hと、金属カチオンと、直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基とからなる群から選択され、RはH又はメチルであり、
前記アイオノマー中の前記構造単位Aの少なくとも一部は、組み込まれた前記金属カチオンを含む。
本発明の第2の態様は、本発明によるアイオノマーを製造するための方法であって:
(1)無水マレイン酸と、式(2)で表される構造単位Bを与えるモノマーMBと、架橋剤と、を有機溶媒中で開始剤の存在下で接触させて、反応させる工程と;
(2)工程(1)で得られた生成物中の無水マレイン酸単位を開環させる、開環工程と;
を含む方法を提供する。
本発明のアイオノマー(又はアイオノマー微小球)は、架橋及び微小球構造を有し、PETの核形成に良好な効果を有する。さらに、その製造方法は単純であり、アイオノマー微小球は、反応の終了後に沈殿剤を使用することなく、単純な分離操作によって得ることができる。従って、このような製造方法はまた、環境に優しい。一実施形態では、アイオノマーはワンポットプロセスによって製造することができ、重合後の懸濁液は分離及び乾燥される必要はなく、塩基と直接反応し、それによって、プロセスをさらに単純化し、エネルギー消費を低減する。
第2の態様の1つの実施形態において、本発明は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法であって:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合させ、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を得る工程と;
(2)前記ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得る工程と;
(3)前記分離固体含有相を洗浄ユニットに供給し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離を行い、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程と;
(4)前記コポリマースラグ相を塩基のアルコール溶液と反応させ、得られた生成物を連続的に第3の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得る工程と;
(5)前記遠心分離スラグ相を乾燥ユニットに送り、乾燥させ、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得る工程と;
(6)前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液を溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ工程(1)及び(3)に戻す工程と;を含む方法を提供する。
同様に、本発明は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのそのような方法を実施するためのシステムであって:
連続的に連通する共重合ユニット、洗浄ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、乾燥ユニット、及び溶媒回収ユニットを備え:
前記共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され;
前記洗浄ユニットは、前記分離固体含有相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離にかけて、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され;
前記アイオノマー形成反応ユニットは、前記コポリマースラグ相を反応させ、製造されたアイオノマー反応液を第3の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得るために使用され;
前記乾燥ユニットは、前記遠心分離スラグ相を乾燥させて、前記架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得るために使用され;
前記溶媒回収ユニットは、前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ前記共重合ユニット及び前記洗浄ユニットに戻すために使用され;
このシステムは、前記架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される;システムを提供する。
第2の態様の別の実施形態では、本発明は、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法であって、:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合させて、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を得る工程と;
(2)前記ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得る工程と;
(3)前記分離固体含有相をアルカリ液と反応させ、得られた生成物を連続的に第2の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得る工程と;
(4)前記遠心分離スラグ相を洗浄ユニットに導入し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び第3の分離を行い、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程と;
(5)前記アイオノマースラグ相を乾燥ユニットに送り、乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得る工程と;
(6)前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液を溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒及び回収アルコールをそれぞれ工程(1)及び(4)に戻す工程と;を含む方法を提供する。
同様に、本発明はまた、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのそのような方法を実施するためのシステムであって:
連続的に連通する共重合ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、洗浄ユニット、乾燥ユニット、及び溶媒回収ユニットを備え:
前記共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され;
前記アイオノマー形成反応ユニットは、前記分離固体含有相を反応させ、製造された生成物を第2の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得るために使用され;
前記洗浄ユニットは、前記遠心分離スラグ相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第3の分離にかけて、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され;
前記乾燥ユニットは、前記アイオノマースラグ相を乾燥させ、前記架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得るために使用され;
前記溶媒回収ユニットは、前記分離液−I、前記分離液−II、及び前記洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ前記共重合ユニット、前記洗浄ユニットにそれぞれ戻すために使用され;
このシステムは、前記架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される;システムを提供する。
前記技術的解決策により、本発明は、架橋及び微小球構造を有するマレイン酸エステル及びマレイン酸アイオノマーの連続製造を達成することができるシステム及び方法を提供する。本方法のプロセスは、溶媒からの超微細コポリマー又はアイオノマー微小球の連続固液遠心分離を達成することができ、使用される反応溶媒及び洗浄アルコール溶媒を再循環させることができる。本発明により提供される方法は、従来技術におけるシステムの種々のユニット間で採用され手動で操作される分離プロセスを排除することができ、溶媒の空気暴露操作を効果的に防止することができ、アイオノマー微小球の製造における連続反応、洗浄、及び分離プロセスを達成することができ、分離効果を効果的に安定化させることができ、遠心分離機の頻繁な始動及び停止操作を回避することができる。得られる微小球の平均粒径は、600〜2000nmであり得る。
本発明の第3の態様は、ポリエチレンテレフタレートを改質するための核剤としての本発明によるアイオノマーの使用を提供する。
本発明の第4の態様は、核剤として本発明によるアイオノマーを含むポリエチレンテレフタレート組成物を提供する。
本発明の第5の態様は、本発明によるアイオノマーが核剤としてポリエチレンテレフタレートに導入される、ポリエチレンテレフタレートを改質する方法を提供する。
〔図面の説明〕
図1は、実施例1で合成したアイオノマーの赤外スペクトルである;
図2は、実施例1で合成したアイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である;
図3は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである;
図4は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である;
図5は、比較例E1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである;
図6は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の赤外スペクトルである;
図7は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である;
図8は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである;
図9は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである;
図10は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである;
図11は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の赤外スペクトルである;
図12は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である;
図13は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである;
図14は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである;
図15は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである。
〔発明の詳細な説明〕
(微小球アイオノマー)
本発明により提供される架橋構造を有する微小球アイオノマーは、式(1)で表される構造単位A、式(2)で表される構造単位B、及び架橋剤により与えられる架橋構造単位を含み、
式中、M1及びM2はそれぞれ独立して、Hと、金属カチオンと、直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基と、からなる群から選択され、RはH又はメチルである。
一実施形態では、M1及びM2はそれぞれ独立して、H及び金属カチオンからなる群から選択される。このような微小球アイオノマーは、マレイン酸アイオノマー微小球とも呼ばれる。
別の実施形態では、M1及びM2はそれぞれ独立して、金属カチオンと、直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基と、からなる群から選択され、あるいはHから選択されてもよい。このような微小球アイオノマーはエステル基を含み、マレイン酸エステルアイオノマー微小球とも呼ばれる。
本明細書に記載する直鎖、分枝、又は環状のC1−C20飽和アルキル基とは、例えば、C1、C2、C4、C6、C8、C10、C12、C15、C20、又はそれらの間の任意の値の飽和アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、シクロヘキシル、n−ノニル、イソノニル、デシル、2−プロピルヘプチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、テトラデシル、セチル、ステアリル、他、である。
アイオノマー中の構造単位Aの少なくとも一部は、組み込まれた金属カチオンを含む。
金属カチオンは、種々の一般的な金属カチオン、例えば、Li+、Na+、K+、並びに一価当量(monovalent equivalent)のCa2+、Mg2+、Ba2+、及びZn2+であり得る。
本明細書で使用される「アイオノマー」という用語は、当技術分野で周知であり、「イオン性ポリマー」とも呼ばれ、ポリマー鎖上に少数のイオン性基を有するポリマー材料を指す。
本発明の好ましい実施形態では、構造単位Aと構造単位Bとの間のモル比は、100:(100〜120)であり、より好ましくは100:(100〜105)である。
本発明の別の好ましい実施形態では、構造単位Aと架橋構造単位との間のモル比は、100:(1〜40)であり、より好ましくは100:(10〜30)である。
本発明において、好ましい実施形態によれば、アイオノマー中の金属カチオンのモル含有量は、アイオノマー中の構造単位Aの総モル量の10〜120%(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、110%、115%、120%、又は前記数値の間の任意の値)を含む。アイオノマーの架橋度は好ましくは65%以上(例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は前記数値の間の任意の値)である。アイオノマーは微小球形状であり、150〜2000nm(例えば、150nm、250nm、350nm、450nm、550nm、650nm、750nm、850nm、950nm、1050nm、1150nm、1250nm、1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、1850nm、2000nm、又は前記数値の間の任意の値)の平均粒径を有する。
本発明において、金属カチオンのモル含有量は、蛍光X線スペクトル解析によって得られる。
架橋度はゲル含有量の尺度であり、溶媒としてテトラヒドロフランを使用する溶媒抽出法によって測定される。
平均粒径は、数平均粒径で特性付けられ、走査型電子顕微鏡で測定される。
本発明において、架橋剤は、ラジカル重合が可能な種々の一般的な二官能性又は多官能性ビニルモノマーであってもよい。好ましくは、架橋剤は、ジビニルベンゼン及び/又は少なくとも2つのアクリレート基を含むアクリレート架橋剤であり、アクリレート基の構造式は:−O−C(O)−C(R’)=CH2であり、R’はH又はC1−C4アルキル(メチル等)である。
より好ましくは、架橋剤は、ジビニルベンゼン、プロピレングリコールビス(メタ)アクリレート(1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート等)、エチレングリコールビス(メタ)アクリレート(エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)テトラメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びエトキシル化多官能性アクリレート、からなる群から選択される少なくとも1つである。
(アイオノマーの製造方法)
本発明によるアイオノマーは、以下の方法によって製造される:
(1)無水マレイン酸と、式(2)で表される構造単位Bを提供するモノマーMBと、架橋剤とを有機溶媒中で開始剤の存在下で接触させて反応させる工程;
(2)工程(1)で得られた生成物中の無水マレイン酸単位を開環させる、開環工程。
当業者は、無水マレイン酸は式(1)で表される構造単位Aを与える物質であることを理解することができる。モノマーMBは、式(2)で表される構造単位Bを与える物質であり、α−メチルスチレン又はスチレンであってもよい。
工程(1)の反応は、CN101338008Aに記載されているものと類似の方法によって行うことができる。
本発明の工程(1)において、使用されるそれぞれの原料の量に特に要件は無い。好ましくは、モノマーMBの量は、無水マレイン酸100モルに対して、50〜150モル、より好ましくは75〜100モルである。
好ましくは、架橋剤の量は、無水マレイン酸100モルに対して、1〜40モル、より好ましくは10〜20モル、さらにより好ましくは15〜20モルである。
好ましくは、有機溶媒の量は、無水マレイン酸100モルに対して、50〜150L、より好ましくは75〜100Lである。
好ましくは、開始剤の量は、無水マレイン酸100モルに対して、0.05〜10モル、より好ましくは1〜1.5モルである。
本発明の工程(1)において、有機溶媒は、溶液重合反応のための種々の一般的な溶媒であり得る。例えば、有機溶媒は、有機酸のアルキルエステル、すなわち単独で使用される有機酸のアルキルエステル、又は有機酸のアルキルエステルとアルカンとの混合物、又は有機酸のアルキルエステルと芳香族炭化水素との混合物を含む。とりわけ、有機酸のアルキルエステルは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸 sec−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸イソアミル、イソ吉草酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、酢酸フェニルメチル、及び酢酸フェニルエチルからなる群から選択される少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。アルカンは、n−ヘキサン及び/又はn−ヘプタンを含むが、これらに限定されない。芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、及びキシレンからなる群から選択される少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
本発明の工程(1)において、開始剤は、無水マレイン酸とα−メチルスチレン(又はスチレン)との重合反応を開始させるために当技術分野で一般に使用される試薬であってもよく、熱分解型開始剤であってもよい。好ましくは、開始剤は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル、及びアゾビスイソヘプトニトリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
本発明の工程(1)で用いることができる架橋剤の具体的な種類は、上述の通りである。
本発明の工程(1)において、反応条件に特に要件は無いが、好ましくは、反応条件は、アイオノマーの架橋度が65%以上であるような条件である。より好ましくは、工程(1)において、反応条件は、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気;50〜90℃、さらに好ましくは60〜70℃の温度;及び3〜15時間、さらに好ましくは5〜12時間の時間を含む。
工程(2)については、マレイン酸アイオノマー微小球の工程(2)及びマレイン酸エステルアイオノマー微小球の工程(2)を異なる条件下で行う。
マレイン酸アイオノマー微小球については、工程(2)は、工程(1)で得られた生成物を水の存在下で塩類化のための塩基と反応させることによって行うことができる。
この技術的解決策の工程(2)において、塩基の使用は、アイオノマー中の無水マレイン酸によって与えられる構造単位の総モル量に基づいて、アイオノマー中の金属カチオンのモル含有量のパーセントを、特定の範囲内、好ましくは前記範囲内にする。塩基の量は、慣習的に選択され得、好ましくは、塩基の量は、無水マレイン酸100モルに対して、10〜200モル(例えば、10モル、50モル、100モル、150モル、190モル、200モル、又は前記数値の間の任意の値)である。塩基は、好ましくは水溶液の形態で使用され、塩基の水溶液の濃度は、好ましくは1〜30重量%である。
塩基は、塩類化される工程(1)で得られたポリマー中のカルボキシル水素の一部が金属で置換されていれば、当該技術分野で従来使用されている塩基性物質、すなわち(上述したような)金属カチオンを与えることができる塩基性物質であってもよい。好ましくは、塩基は、金属水酸化物及び/又は金属酢酸塩から選択される。金属は、元素周期表のIA族、IIA族、及び/又はIIB族からの金属(特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、及び/又はマグネシウム)等の一価金属又は二価金属の同等物であってもよい。より好ましくは、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、及び酢酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つである。
この技術的解決策の工程(2)において、塩類化は従来の条件下で行うことができる。例えば、塩類化条件は、20〜100℃、好ましくは30〜100℃の温度、及び0.5〜8時間、好ましくは0.5〜6時間の時間を含む。
この技術的解決策の工程(2)において、工程(1)で得られた生成物(懸濁液の形態で)は、塩基と反応させる前に後処理(分離、洗浄、及び乾燥)することもできる。洗浄は、従来の洗浄溶媒、例えば、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、及びメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つを使用して行ってもよい。このようにして、アイオノマー含有分散系が塩類化後に得られ、分散系のさらなる分離処理によって、アイオノマー生成物を得ることができる。例えば、分離処理は、遠心分離、水洗、有機溶媒洗浄(前記洗浄溶媒、すなわち、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、及びメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つ、を用いることができる)、遠心分離、及び乾燥(真空乾燥等)で行われる。
本発明者らは、有機溶媒を除去する工程を行わずに、工程(1)で得られた懸濁液を塩類化用塩基と直接反応させることによっても、本発明のアイオノマーを効果的に製造できることを見出した。従って、本発明の一実施形態によれば、工程(2)において、工程(1)で得られた生成物を塩基と直接反応させることができ(ワンポット法)、その結果、塩類化後にアイオノマー含有混合系が得られる。混合系は、さらに分離処理にかけることができ、アイオノマー生成物が得られる。例えば、混合系を静置して層分離し、上層の有機相をリサイクルし、下層である重い相を遠心分離、水洗−遠心分離、及び乾燥(例えば、真空乾燥)してアイオノマーを得る。この好ましい方法は、ワンポットプロセスを採用する。生成物の後処理は、1回の液−液分離、固−液分離、洗浄、及び乾燥のみを必要とし、これは、1バッチに必要とされる時間を効果的に短縮し、プロセスを単純化し、ユニット装置を減少させ、そしてエネルギー消費を効果的に減少させる。このプロセスは、反応媒体として1つの有機溶媒のみを必要とし、溶媒は、層に分離し乾燥操作することのみによってリサイクルすることができる。さらに、特別な水分離装置を必要とせず、反応器中で層への分離を達成することができ、溶媒は蒸留による精製を必要とせずにリサイクルすることができる。また、省エネルギーであり、消費量を低減でき、有機溶剤の使用による環境汚染を効果的に低減することができる。
マレイン酸エステルアイオノマー微小球については、工程(2)は、工程(1)で得られた生成物を塩基及び飽和一価アルコールと混合し反応させることによって行うことができる。
この技術的解決策の工程(2)において、塩基の使用は、アイオノマー中の無水マレイン酸によって与えられる構造単位の総モル量に基づいて、アイオノマー中の金属カチオンのモル含有量のパーセントを、特定の範囲内、好ましくは既に上述した範囲内にする。塩基の量は、慣習的に選択され得る。好ましくは、塩基の量は、無水マレイン酸100モルに対して、5〜100モル(例えば、5モル、10モル、20モル、50モル、80モル、100モル、又は前記数値の間の任意の値)である。
この技術的解決策の工程(2)では、塩基は、当技術分野で従来使用されている塩基性物質(金属カチオンを与えることができる塩基性物質(前記))であってもよい。好ましくは、塩基は、金属水酸化物、金属酢酸塩、及び金属アルコキシド(特に、C1−C10アルコキシド)からなる群から選択される少なくとも1つである。金属は、元素周期表のIA族、IIA族、及び/又はIIB族からの金属(特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛及び/又はマグネシウム)等の一価金属又は当量の二価金属であってもよい。より好ましくは、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸亜鉛、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ペントキシド、ナトリウムイソオクトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、亜鉛メトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、カリウムエトキシド、バリウムエトキシド、カルシウムエトキシド、リチウムエトキシド、及びカリウムtert−ブトキシドからなる群から選択される少なくとも1つである。
この技術的解決策の工程(2)において、飽和一価アルコールの使用は、アイオノマーにエステル基を導入する。飽和一価アルコールの量は特に要件は無いが、無水マレイン酸100モルに対して、飽和一価アルコールの量は100〜20000モルであることが好ましい。
飽和一価アルコールは、工程(1)で得られたポリマーとエステル化反応を行うことができるものであれば、従来用いられている飽和一価アルコールであってもよい。それは、直鎖アルカノール、分枝アルカノール、又は環状アルカノールであってもよい。好ましくは、飽和一価アルコールは、C1−C20(C1、C2、C4、C6、C8、C10、C12、C15、C20等、又はそこの間にある任意の数値)飽和一価アルコールである。より好ましくは、飽和一価アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール、2−プロピルヘプタノール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール、テトラデカノール、セチルアルコール、及びステアリルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである。
この技術的解決策の工程(2)では、反応は、従来の条件で行うことができる。例えば、反応条件は、20〜150℃、好ましくは30〜100℃の温度;0.5〜8時間、好ましくは0.5〜6時間の時間を含む。
本発明において、アイオノマーは、他の試薬(又は溶媒)を導入する必要なしに、単純な固液分離工程を介して、工程(2)で得られた生成物から得ることができる。固液分離により得られた液相は、工程(1)において再利用することができる。固液分離の様式は、濾過、遠心分離、及び他の固液分離方法であり得る。得られた固相をさらに乾燥させて、アイオノマー生成物を得ることができる。
(架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を連続製造するためのシステム及び方法)
本発明の別の態様は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムを提供する。図8に示すように、当該システムは、
連続的に連通する共重合ユニット、洗浄ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、乾燥ユニット、及び溶媒回収ユニットを備え、
共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され、
洗浄ユニットは、分離固体含有相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離にかけて、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され、
アイオノマー形成反応ユニットは、コポリマースラグ相を反応させ、製造されたアイオノマー反応液を第3の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得るために使用され、
乾燥ユニットは、遠心分離スラグ相を乾燥させて、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得るために使用され、
溶媒回収ユニットは、分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ共重合ユニット及び洗浄ユニットに戻すために使用され、
このシステムは、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される。
本発明のこの態様によれば、好ましくは、共重合ユニットは、反応溶媒貯蔵タンクV−13、反応液混合容器R−11、共重合反応器R−12、第1ディスク遠心分離機S−21、第1オンライン濁度計A−21、及び分離液貯蔵タンクV−25を備え、反応溶媒貯蔵タンクV−13は、反応溶媒を貯蔵するために使用され、反応液混合容器R−11は反応溶媒と反応の原料とを反応液に混合するために使用され、共重合反応器R−12は、反応液の共重合反応を連続的に行うために使用され、得られたポリマー母液は、連続的な第1の分離のために第1ディスク遠心分離機S−21に連続的に流入し、得られた分離液は第1オンライン濁度計A−21を通過し、共重合反応器R−12又は分離液貯蔵タンクV−25に導入される。
本発明のこの態様において、共重合反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は並列の2つの撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第1オンライン濁度計A−21を使用して、第1ディスク遠心分離機S−21による分離によって得られた分離液−Iの濁度を監視し、分離液−Iの流れ方向を制御する。好ましくは、第1オンライン濁度計A−21と共重合反応器R−12との間、及び第1オンライン濁度計A−21と分離液貯蔵タンクV−25との間にそれぞれバルブが設けられ、分離液−Iの濁度が基準に達しているときには分離液−Iを分離液貯蔵タンクV−25に導入し、分離液−Iの濁度が基準に達していないときには分離液−Iを共重合反応器R−12に導入する。基準に達しているとは、分離液−Iの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%(0.1gのポリマー微小球を100gの溶媒に分散させることによって形成される濁った液体の対応する濁度値)未満である、ということを意味する。
本発明の文脈において、濁度とは、均一に混合された混合物中の懸濁粒子による光の吸収、散乱、又は屈折による、混合物の巨視的に見える混濁度を指し、その値は濁度計を用いて測定される。濁度値は、粒子の特性及び濃度に関連する。従って、同種の粒子については、濁度値を粒子濃度の指標として用いることができ、ここでは粒子濃度(溶媒100g中の粒子の質量g、重量%)により特性付けされる。
本発明により提供されるシステムでは、共重合反応器R−12から排出される高濃度反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。共重合反応器R−12と洗浄容器R−22との間に配置された第1ディスク遠心分離機S−21と第1オンライン濁度計A−21とを組み合わせて使用することにより、反応液の連続的な第1の分離を達成し、反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
これに関連して、高濃度は以下に関連する:既存のディスク遠心分離機は、一般に5重量%未満の固形分を有する低濃度の濁った液体の分離のために使用される。
本発明のこの態様によれば、洗浄ユニットは、アルコール貯蔵タンクV−27、上澄液貯蔵タンクV−26、及び少なくとも1組の洗浄装置を備え、洗浄装置の各組は洗浄容器R−22、第2ディスク遠心分離機S−22、及び第2オンライン濁度計A−22を備え、アルコール貯蔵タンクV−27は、アルコール溶媒を貯蔵するために使用され、洗浄容器R−22は、分離固体含有相をアルコール溶媒で連続アルコール洗浄し、分散スラリーを得るために使用され、分散スラリーは、連続的な第2の分離のために第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に導入され、得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22を通過し、次いで洗浄容器R−22又は上澄液貯蔵タンクV−26に導入される。
本発明のこの態様によれば、第2オンライン濁度計A−22と洗浄容器R−22との間、及び第2オンライン濁度計A−22と上澄液貯蔵タンクV−26との間にそれぞれバルブが設けられ、洗浄上澄液の濁度が基準に達しているときには洗浄上澄液を上澄液貯蔵タンクV−26に導入し、洗浄上澄液の濁度が基準に達していないときには洗浄上澄液を洗浄容器R−22に導入する。
本発明のこの態様において、洗浄ユニットは、複数組の洗浄装置を備え得、例えば、前の組の第2ディスク遠心分離機S−22による分離によって得られた遠心分離スラグ相は、アルコール溶媒でアルコール洗浄するために次の組の洗浄装置に連続的に供給され、次いで、同じ連続的な第2の分離が上述のように行われ、アルコール洗浄効果を満たす最終的なコポリマースラグ相は、本発明によって提供されるシステムの乾燥ユニットに入る。
本発明のこの態様では、洗浄容器R−22から排出される高濃度分散スラリーは、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。洗浄容器R−22とアイオノマー反応器R−32との間に配置された第2ディスク遠心分離機S−22と第2オンライン濁度計A−22とを組み合わせて使用することにより、分散スラリーを連続的に第2の分離にかけ、分散スラリーの暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、アイオノマー形成反応ユニットは、アルカリ液タンクV−31、アイオノマー反応器R−32、第3ディスク遠心分離機S−31、及び第3オンライン濁度計A−31を備え、アルカリ液タンクV−31は、塩基のアルコール溶液を貯蔵して、それを反応に提供するために使用され、アイオノマー反応器R−32は、コポリマースラグ相と塩基のアルコール溶液との反応を行うために使用され、得られたアイオノマー反応液は、連続的な第3の分離のために第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に流入し、得られた分離液−IIは、第3オンライン濁度計A−31を通過し、次いでアイオノマー反応器R−32又は上澄液貯蔵タンクV−26に導入される。
本発明のこの態様において、アイオノマー反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第3オンライン濁度計A−31とアイオノマー反応器R−32との間、及び第3オンライン濁度計A−31と上澄液貯蔵タンクV−26との間にそれぞれバルブが設けられ、分離液−IIの濁度が基準に達しているときには分離液−IIを上澄液貯蔵タンクV−26に導入し、分離液−IIの濁度が基準に達していないときには分離液−IIをアイオノマー反応器R−32に導入する。基準に達しているとは、分離液−IIの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%未満である、ということを意味する。
本発明のこの態様では、アイオノマー反応器R−32から排出される高濃度アイオノマー反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。アイオノマー反応器R−32と乾燥機G−41との間に配置された第3ディスク遠心分離機S−31と第3オンライン濁度計A−31とを組み合わせて使用することにより、アイオノマー反応液の連続的な第3の分離を達成し、アイオノマー反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、乾燥ユニットは、乾燥機G−41、凝縮器E−41、及び乾燥凝縮液タンクV−41を備え、乾燥機G−41は、遠心分離スラグ相を乾燥させて、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得るために使用され、凝縮器E−41は、乾燥凝縮液タンクV−41と連通しており、乾燥機G−41から排出された気体溶媒を液体に凝縮するために使用され、液体は乾燥凝縮液タンクV−41に導入され、乾燥凝縮液タンクV−41は、アルコール貯蔵タンクV−27と連通している。
本発明のこの態様では、乾燥機G−41は、例えば、マイクロ波乾燥機、マイクロ波真空乾燥器、及び傾斜真空乾燥器(rake vacuum dryer)であってもよい。
乾燥を促進するために、乾燥凝縮液タンクV−41を真空装置に接続することもできる。
本発明のこの態様によれば、図9に示すように、溶媒回収ユニットは、アルコール溶媒回収装置及び反応溶媒回収装置を備え、アルコール溶媒回収装置は、上澄液貯蔵タンクV−26、アルコール貯蔵タンクV−27、及び反応溶媒回収装置と連通しており、洗浄上澄液中のアルコール溶媒を上澄液貯蔵タンクV−26から回収し、それをアルコール貯蔵タンクV−27に戻すために使用され、洗浄上澄液の残りの残留液は、反応溶媒回収装置に導入され、反応溶媒回収装置は、分離液貯蔵タンクV−25及び反応溶媒貯蔵タンクV−13と連通しており、分離液貯蔵タンクV−25から分離液を回収し、且つ残留液中の反応溶媒を回収し、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻すために使用される。分離液貯蔵タンクV−25中の分離液は、共重合ユニットからの分離液−I及びアイオノマー形成反応ユニットからの分離液−IIを含むことができる。
本発明のこの態様によれば、アルコール溶媒回収装置は、アルコール精留塔T−51、アルコール熱交換器E−51、アルコール凝縮液タンクV−51、及び残留液リボイラーE−52を備え、アルコール精留塔T−51は、上澄液貯蔵タンクV−26から上澄液を蒸留するために使用され、アルコール精留塔T−51の頂部から排出されたアルコール蒸気は、アルコール熱交換器E−51及びアルコール凝縮液タンクV−51を連続的に通過することによって、回収アルコールを得、回収アルコールの一部は、アルコール精留塔T−51に戻され、回収アルコールの他の部分は、洗浄ユニットで再使用するためにアルコール貯蔵タンクV−27に戻され、残留液は、アルコール精留塔T−51の底部から排出され、残留液の一部は残留液リボイラーE−52を通過した後、アルコール精留塔T−51に戻され、残留液の他の部分は、反応溶媒回収装置に導入される。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、常圧、又は上澄液中のアルコールを精製するためにわずかに陽圧の塔であってもよい。アルコール凝縮液タンクV−51とアルコール精留塔T−51との間に計量ポンプを配置することもできる。
本発明のこの態様によれば、反応溶媒回収装置は、供給タンクV−55、反応溶媒精留塔T−52、溶媒熱交換器E−53、溶媒凝縮液タンクV−53、及び廃液リボイラーE−54を備え、供給タンクV−55は、アルコール精留塔T−51の底部及び分離液貯蔵タンクV−25と連通しており、残留液及び供給物として分離液貯蔵タンクV−25からの分離液を混合するために使用され、反応溶媒精留塔T−52は、供給物を分留するために使用され、反応溶媒精留塔T−52の頂部から排出される溶媒蒸気は、溶媒熱交換器E−53及び溶媒凝縮液タンクV−53を順次通ることによって、回収溶媒を得、回収溶媒の一部は、反応溶媒精留塔T−52に戻され、回収溶媒の他の部分は、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻され、共重合ユニットで再利用され、廃液は、反応溶媒精留塔T−52の底部から排出され、廃液の一部は、廃液リボイラーE−54を通過した後、反応溶媒精留塔T−52に戻され、廃液の他の部分は排出される。
本発明のこの態様において、反応溶媒精留塔T−52は、供給タンクV−55からの供給物中の反応溶媒を精製するために使用される。溶媒凝縮液タンクV−53と反応溶媒精留塔T−52との間に計量ポンプを配置することもできる。
本発明のこの態様では、反応溶媒回収装置は、さらに連通する真空システムを設けてもよく、これにより、反応溶媒精留塔T−52の効率を改善し、エネルギー消費を低減することができる。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、塔の頂部出口とアルコール熱交換器E−51との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。反応溶媒精留塔T−52は、塔の頂部出口と溶媒熱交換器E−53との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。
本発明のこの態様では、タンク、塔、反応器、凝縮器、熱交換器、リボイラー、容器、遠心分離機等の上述の様々な装置に、必要に応じてそれぞれ物質入口及び/又は出口を設けることができる。物質入口は導入される物質を受け取るために使用され、物質出口は物質を排出するために使用される。実際の必要性に応じて、1つ以上の物質入口及び出口を配置することができる。
本発明のこの態様では、反応液混合容器R−11、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、内部に撹拌機構をさらに設けてもよい。撹拌機構は、物質移動がより十分であるように、必要なときにタンク又は反応器内の物質を撹拌するために使用される。また、反応液混合容器R−11、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、さらにジャケットを設けることができ、水を循環させることにより温度調整を行う。
本発明のこの態様では、システムは、さらに以下を含むことができる:
反応液混合容器R−11と共重合反応器R−12との間、共重合反応器R−12と第1ディスク遠心分離機S−21との間、アルカリ液タンクV−31とアイオノマー反応器R−32との間、アイオノマー反応器R−32と第3ディスク遠心分離機S−31との間、アルコール貯蔵タンクV−27と洗浄容器R−22との間、並びに洗浄容器R−22と第2ディスク遠心分離機S−22との間に配置された、計量ポンプ。
本発明のこの態様において、前記システムに備えられる第1ディスク遠心分離機、第2ディスク遠心分離機、及び第3ディスク遠心分離機は、好ましくは9000より大きい、好ましくは9000〜60000の分離係数を採用する。9000、10000、20000、30000、40000、50000、又は60000、及び前記数値のうちの任意の2つによって構成される範囲内の値を選択することができる。この規定された範囲内のディスク遠心分離機は、本発明によって提供されるシステムによって達成される高濃度条件下での微小球含有物質の遠心分離の条件をより良好に満たすことができ、本発明のシステムの連続操作を達成し、空気暴露操作の危険性を低減することができる。
本発明の文脈において、分離係数とは、遠心分離機中の懸濁液又はエマルジョンの重力に対する遠心力場中の遠心力の比、すなわち、重力加速度に対する遠心加速度の比を指す。分離係数はFrで表され、式中、Rは回転ドラム内で分離される物質の位置の半径(メートル)であり、ωは回転ドラムの回転角速度(rad/s)であり、gは重力加速度(9.81m/s2)であり、nは回転ドラムの回転速度(r/min)であり、mは回転ドラム内の物質の質量(kg)である。分離係数は、遠心分離機の性能を測定するための主要な指標である。Frが大きいほど、遠心分離のための駆動力が大きく、遠心分離機の分離性能が良好である。
従って本発明は、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法を提供し、これは、本発明の前記システムにおいて行われ、そして図10に示されるように、以下を含む:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、システムの共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合反応させ、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むユニット母液を得る工程;
(2)ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得る工程;
(3)分離固体含有相をシステムの洗浄ユニットに導入し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第2の分離を行い、コポリマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程;
(4)コポリマースラグ相を塩基のアルコール溶液と反応させ、得られた生成物を連続的に第3の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得る工程;
(5)遠心分離スラグ相をシステムの乾燥ユニットに送り、乾燥させ、架橋マレイン酸エステルアイオノマー微小球を得る工程;
(6)分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液をシステムの溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ工程(1)及び(3)に戻す工程。
工程(1)において採用することができる具体的な条件は、本発明のアイオノマー微小球を製造するための方法について上述した通りである。
工程(3)は、分離固体含有相を洗浄するために使用され、工程(1)における共重合反応の残留物を除去することができる。好ましくは、アルコール洗浄は、無水マレイン酸100モルに対して、合計で100〜250Lのアルコール溶媒、より好ましくは150〜200Lを使用する。好ましくは、アルコール溶媒は、メタノール又はエタノールから選択される。
工程(4)で使用される塩基の種類及び量は、マレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造する方法について上述した通りである。
塩基のアルコール溶液に使用されるアルコールは、飽和一価アルコール、好ましくはメタノール又はエタノールであってもよい。好ましくは、塩基のアルコール溶液中のアルコールの量は、無水マレイン酸100モルに対して、100〜20000モルである。
好ましくは、工程(4)において、関係するコポリマースラグ相は、塩基のアルコール溶液と反応してアイオノマーを得、ここで、反応温度は20〜80℃、好ましくは30〜70℃であり、反応時間は0.5〜8時間、好ましくは0.5〜3時間である。
本発明のこの態様によれば、工程(2)、(3)、及び(4)は全て、得られた微小球含有物質からの微小球の分離を含む。例えば、工程(2)において、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液は、第1の分離にかけられ;工程(3)において、アルコール洗浄後のコポリマー微小球を含む分離固体含有相は、連続的な第2の分離にかけられ;工程(4)において、アイオノマー微小球を含む生成物は、第3の分離にかけられる。これらの微小球含有物質は、高濃度条件下で固液分離にかけられ、高純度の超微細微小球を得る。好ましくは、工程(2)における第1の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(3)における第2の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(4)における第3の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000である。分離係数の前記範囲内で、本発明の工程(2)〜(4)において、高濃度の微小球含有量という条件下で前記種々の分離を工業的に連続的に行うことができる。
本発明のこの態様の工程(5)において、スラグ相に同伴された反応溶媒及び/又はアルコール溶媒をさらに除去するために、乾燥温度は50〜150℃であり得、乾燥圧力は10〜1013mbar、好ましくは10〜200mbarであり得る。
本発明のこの態様において、工程(6)は、溶媒及びアルコールを回収するために使用され、本発明によって提供されるシステムの溶媒回収ユニットにおいて行われる。分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液中の反応溶媒及びアルコールを回収するには、溶媒回収ユニットの各部装置の運転及び制御条件は、十分でなければならない。
本発明のこの態様において、本発明の目的は、前記で規定される条件下でより良好に達成され得、架橋及び微小球構造を有するマレイン酸エステルアイオノマーの連続製造は達成され、溶媒の空気暴露操作は回避され、そして遠心分離機の頻繁な開始及び停止操作は回避される。
(架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造のためのシステム及び方法)
本発明の別の態様は、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムを提供する。図13に示すように、システムは、
連続的に連通する共重合ユニット、アイオノマー形成反応ユニット、洗浄ユニット、乾燥装置、及び溶媒回収ユニットを備え、
共重合ユニットは、コモノマーを共重合反応させ、得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を連続的に第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液−Iを得るために使用され、
アイオノマー形成反応ユニットは、分離固体含有相を反応させ、製造された生成物を第2の分離に連続的にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得るために使用され、
洗浄ユニットは、遠心分離スラグ相を少なくとも1回のアルコール洗浄及び連続的な第3の分離にかけて、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得るために使用され、
乾燥ユニットは、アイオノマースラグ相を乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得るために使用され、
溶媒回収ユニットは、分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液から不純物を除去し、分離して得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ共重合ユニット、洗浄ユニットに戻すために使用され、
このシステムは、架橋マレイン酸アイオノマー微小球の連続製造を達成するために使用される。
本発明のこの態様によれば、好ましくは、共重合ユニットは、反応溶媒貯蔵タンクV−13、反応液混合容器R−11、共重合反応器R−12、第1ディスク遠心分離機S−21、第1オンライン濁度計A−21、及び分離液貯蔵タンクV−25を備え、反応溶媒貯蔵タンクV−13は、反応溶媒を貯蔵するために使用され、反応液混合容器R−11は、反応溶媒と反応の原料とを反応液に混合するために使用され、共重合反応器R−12は、反応液の共重合反応を連続的に行うために使用され、得られたポリマー母液は、連続的な第1の分離のために第1ディスク遠心分離機S−21に連続的に流入し、得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過し、共重合反応器R−12又は分離液貯蔵タンクV−25に導入される。本発明のこの態様において、共重合反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は並列の2つの撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第1オンライン濁度計A−21を使用して、第1ディスク遠心分離機S−21による分離によって得られた分離液−Iの濁度を監視し、分離液−Iの流れ方向を制御する。好ましくは、第1オンライン濁度計A−21と共重合反応器R−12との間、及び第1オンライン濁度計A−21と分離液貯蔵タンクV−25との間にそれぞれバルブが設けられ、分離液−Iの濁度が基準に達しているときには分離液−Iを分離液貯蔵タンクV−25に導入し、分離液−Iの濁度が基準に達していないときには分離液−Iを共重合反応器R−12に導入する。基準に達しているとは、分離液−Iの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%未満である、ということを意味する。
本発明のこの態様では、回収溶媒中の少量の水を除去するために、反応溶媒貯蔵タンクV−13の下部に水分離器を設けることができる。
本発明のこの態様では、共重合反応器R−12から排出される高濃度反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。共重合反応器R−12とアイオノマー反応器R−32との間に配置された第1ディスク遠心分離機S−21と第1オンライン濁度計A−21とを組み合わせて使用することにより、反応液の連続的な第1の分離を達成し、反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、アイオノマー形成反応ユニットは、アルカリ溶解容器R−21、アルカリ液タンクV−31、アイオノマー反応器R−32、第2ディスク遠心分離機S−22、第2オンライン濁度計A−22、及び第3オンライン濁度計A−31を備え、アルカリ溶解容器R−21は、塩基を水に溶解してアルカリ液にするために使用され、アルカリ液タンクV−31は、アルカリ液を貯蔵し、それを反応に供給するために使用され、アイオノマー反応器R−32は、分離固体含有相とアルカリ液との反応のために使用され、得られたアイオノマー反応液は、連続的な第2の分離のために第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に流入し、得られた水相は、第2オンライン濁度計A−22を通過し、分離液−IIは、第3オンライン濁度計A−31を通過した後、アイオノマー反応器R−32、分離液貯蔵タンクV−25、又はアルカリ溶解容器R−21に導入される。
本発明のこの態様において、アイオノマー反応器は、管状反応器、バッフル反応器、又は撹拌タンク反応器から選択され得る。
本発明のこの態様によれば、第2オンライン濁度計A−22とアイオノマー反応器R−32との間、第2オンライン濁度計A−22とアルカリ溶解容器R−21との間、第3オンライン濁度計A−31とアイオノマー反応器R−32との間、及び第3オンライン濁度計A−31と分離液貯蔵タンクV−25との間に、それぞれバルブが配置され、分離液−IIの濁度が基準に達しているときには分離液貯蔵タンクV−25に分離液−IIを導入し、水相の濁度が基準に達しているときにはアルカリ溶解容器R−21に水相を導入し、それらが基準に達していないときはアイオノマー反応器R−32に水相及び分離液−IIを導入する。基準に達しているとは、分離液−IIの濁度が予め事前設定された値、例えば0.1重量%未満である、ということを意味する。
本発明のこの態様では、アイオノマー反応器R−32から排出される高濃度アイオノマー反応液は、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。アイオノマー反応器R−32と洗浄容器R−22との間に配置された第2ディスク遠心分離機S−22、第2のオンライン濁度計A−22、及び第3のオンライン濁度計A−31を組み合わせて使用することにより、アイオノマー反応液の連続的な第2の分離を達成し、アイオノマー反応液の暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、洗浄ユニットは、アルコール貯蔵タンクV−27、上澄液貯蔵タンクV−26、及び少なくとも1組の洗浄装置を備え、洗浄装置の各組は、洗浄容器R−22、第3ディスク遠心分離機S−31、及び第4のオンライン濁度計A−41を備え、アルコール貯蔵タンクV−27は、アルコール溶媒を貯蔵するために使用され、洗浄容器R−22は、連続的に遠心分離スラグ相をアルコール溶媒でアルコール洗浄し、分散スラリーを得るために使用され、分散スラリーは、連続的な第3の分離のために第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に導入され、得られた洗浄上澄液は第4オンライン濁度計A−41を通過し、次いで洗浄容器R−22又は上澄液貯蔵タンクV−26に導入される。
本発明のこの態様によれば、第4オンライン濁度計A−41と洗浄容器R−22との間、第4オンライン濁度計A−41と上澄液貯蔵タンクV−26との間に、それぞれバルブが設けられ、洗浄上澄液の濁度が基準に達しているときには洗浄上澄液を上澄液貯蔵タンクV−26に導入し、洗浄上澄液の濁度が基準に達していないときには洗浄上澄液を洗浄容器R−22に導入する。
本発明のこの態様において、洗浄ユニットは、複数組の洗浄装置を備え得、例えば、前の組の第3ディスク遠心分離機S−31による分離によって得られた遠心分離スラグ相は、アルコール溶媒でアルコール洗浄するために次の組の洗浄装置に連続的に供給され、次いで、同じ連続的な第3の分離が上述のように行われ、アルコール洗浄効果を満たす最終的なスラグ相は、本発明によって提供されるシステムの乾燥ユニットに入る。
本発明のこの態様では、洗浄容器R−22から排出される高濃度分散スラリーは、従来技術において手動で操作される分離プロセスを回避することができる。洗浄容器R−22と乾燥機G−41との間に配置された第3ディスク遠心分離機S−31、及び第4のオンライン濁度計A−41を組み合わせて使用することにより、分散スラリーの連続的な第3の分離を達成し、分散スラリーの暴露を低減し、空気暴露操作を回避することができる。
本発明のこの態様によれば、乾燥ユニットは、乾燥機G−41、凝縮器E−41、及び乾燥凝縮液タンクV−41を備え、乾燥機G−41は、アイオノマースラグ相を乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得るために使用され、凝縮器E−41は、乾燥凝縮液タンクV−41と連通しており、乾燥機G−41から排出された気体溶媒を液体に凝縮するために使用され、乾燥凝縮液タンクV−41に導入され、乾燥凝縮液タンクV−41は、アルコール貯蔵タンクV−27と連通している。
本発明のこの態様では、乾燥機G−41は、例えば、マイクロ波乾燥機、マイクロ波真空乾燥器、及び傾斜真空乾燥器であってもよい。
乾燥を促進するために、乾燥凝縮液タンクV−41を真空装置と連通させることもできる。
本発明のこの態様によれば、溶媒回収ユニットは、図14に示すように、アルコール溶媒回収装置及び反応溶媒回収装置を備え、アルコール溶媒回収装置は、上澄液貯蔵タンクV−26、アルコール貯蔵タンクV−27、及び反応溶媒回収装置と連通しており、洗浄上澄液中のアルコール溶媒を上澄液貯蔵タンクV−26から回収し、それをアルコール貯蔵タンクV−27に戻すために使用され、洗浄上澄液の残留液は、反応溶剤回収装置に導入され、反応溶媒回収装置は、分離液貯蔵タンクV−25及び反応溶媒貯蔵タンクV−13と連通しており、分離液体貯蔵タンクV−25から分離液を回収し、且つ残留液中の反応溶媒を回収し、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻すために使用される。分離液貯蔵タンクV−25中の分離液は、共重合ユニットからの分離液−Iと、アイオノマー形成反応ユニットからの分離液−IIとを含むことができる。
本発明のこの態様によれば、アルコール溶媒回収装置は、アルコール精留塔T−51、アルコール熱交換器E−51、アルコール凝縮液タンクV−51、及び残留液リボイラーE−52を備え、アルコール精留塔T−51は、上澄液貯蔵タンクV−26から上澄液を蒸留するために使用され、アルコール精留塔T−51の頂部から排出されたアルコール蒸気は、アルコール熱交換器E−51及びアルコール凝縮液タンクV−51を連続的に通過することによって、回収アルコールを得、回収アルコールの一部は、アルコール精留塔T−51に戻され、回収アルコールの他の部分は、洗浄ユニットで再使用するためにアルコール貯蔵タンクV−27に戻され、残留液は、アルコール精留塔T−51の底部から排出され、残留液の一部は、残留液リボイラーE−52を通過した後、アルコール精留塔T−51に戻され、残留液の他の部分は、反応溶媒回収装置に導入される。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、常圧、又は上澄液中のアルコールを精製するためにわずかに陽圧の塔であってもよい。アルコール凝縮液タンクV−51とアルコール精留塔T−51との間に計量ポンプを設けることもできる。
本発明のこの態様によれば、反応溶媒回収装置は、供給タンクV−55、反応溶媒精留塔T−52、溶媒熱交換器E−53、溶媒凝縮液タンクV−53、及び廃液リボイラーE−54を含み、供給タンクV−55は、アルコール精留塔T−51の底部及び分離液体貯蔵タンクV−25と連通しており、供給物として残留液及び分離液貯蔵タンクV−25からの分離液を混合するために使用され、反応溶媒精留塔T−52は、供給物を分留するために使用され、反応溶媒精留塔T−52の頂部から排出される溶媒蒸気は、溶媒熱交換器E−53及び溶媒凝縮液タンクV−53を順次通ることによって、回収溶媒を得、回収溶媒の一部は、反応溶媒精留塔T−52に戻され、回収溶媒の他の部分は、反応溶媒貯蔵タンクV−13に戻され、共重合ユニットで再使用され、廃液は、反応溶媒精留塔T−52の底部から排出され、廃液の一部は、廃液リボイラーE−54を通過した後、反応溶媒精留塔T−52に戻され、廃液の他の部分は排出される。
本発明のこの態様において、反応溶媒精留塔T−52は、供給タンクV−55からの供給物中の反応溶媒を精製するために使用される。溶媒凝縮液タンクV−53と反応溶媒精留塔T−52との間に計量ポンプを設けることもできる。
本発明のこの態様では、反応溶媒回収装置は、さらに連通する真空システムを設けてもよい。これにより、反応溶媒精留塔T−52の効率を改善し、エネルギー消費を低減することができる。
本発明のこの態様では、アルコール精留塔T−51は、塔の頂部出口とアルコール熱交換器E−51との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。反応溶媒精留塔T−52は、塔の頂部出口と溶媒熱交換器E−53との間に排出ポンプと調節バルブとを設けて、排出及び還流比を制御してもよい。
本発明のこの態様では、タンク、塔、反応器、凝縮器、熱交換器、リボイラー、容器、遠心分離機等の前記様々な装置に、必要に応じてそれぞれ物質入口及び/又は出口を設けることができる。物質入口は導入される物質を受け取るために使用され、物質出口は物質を排出するために使用される。実際の必要性に応じて、1つ以上の物質入口及び出口を配置することができる。
本発明のこの態様では、反応液混合容器R−11、アルカリ溶解容器R−21、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、内部に撹拌機構をさらに設けてもよい。撹拌機構は、物質移動がより十分であるように、必要なときにタンク又は反応器内の物質を撹拌するために使用される。また、反応液混合容器R−11、アルカリ溶解容器R−21、アイオノマー反応器R−32、洗浄容器R−22、及び共重合反応器R−12は、さらにジャケットを設けることができ、水を循環させることにより温度調整を行う。
本発明のこの態様では、システムは、さらに以下を含むことができる:
反応液混合容器R−11と共重合反応器R−12との間、共重合反応器R−12と第1ディスク遠心分離機S−21との間、アルカリ液タンクV−31とアイオノマー反応器R−32との間、アイオノマー反応器R−32と第2ディスク遠心分離機S−22との間、アルコール貯蔵タンクV−27と洗浄容器R−22との間、及び洗浄容器R−22と第3ディスク遠心分離機S−31との間に配置された、計量ポンプ。
本発明のこの態様において、前記システムに備えられる第1ディスク遠心分離機、第2ディスク遠心分離機、及び第3ディスク遠心分離機は、好ましくは9000より大きい、好ましくは9000〜60000の分離係数を採用する。この規定された範囲内のディスク遠心分離機は、高濃度条件下で本発明によって提供されるシステムによって微小球含有物質の遠心分離をより良好に達成し、本発明のシステムの連続操作を達成し、空気暴露操作の危険性を低減することができる。
従って本発明は、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法を提供し、これは、前記システムにおいて行われ、そして図15に示されるように、以下を含む:
(1)無水マレイン酸と式(I)で表されるモノマーMBとを、システムの共重合ユニット中で、開始剤、架橋剤、及び反応溶媒の存在下で共重合反応させ、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を得る工程;
(2)ポリマー母液を連続的な第1の分離にかけて、分離固体含有相及び分離液を得る工程;
(3)分離固体含有相をアルカリ液と反応させ、得られた生成物を連続的に第2の分離にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得る工程;
(4)遠心分離スラグ相をシステムの洗浄ユニットに導入し、少なくとも1回のアルコール洗浄及び第3の分離を行い、アイオノマースラグ相及び洗浄上澄液を得る工程;
(5)アイオノマースラグ相をシステムの乾燥ユニットに供給し、乾燥させ、架橋マレイン酸アイオノマー微小球を得る工程;及び、
(6)分離液−I、分離液−II、洗浄上澄液をシステムの溶媒回収ユニットに導入し、回収によって得られた回収溶媒と回収アルコールとをそれぞれ工程(1)及び(4)に戻す工程。
本発明のこの態様によれば、工程(1)において採用することができる具体的な条件は、本発明のアイオノマー微小球を製造するための方法について上述した通りである。
本発明のこの態様によれば、工程(3)で使用する塩基の種類及び量は、マレイン酸アイオノマー微小球の一般的な製造方法(M1及びM2は、それぞれ独立してH及び金属カチオンから選択される場合)について上述した通りである。
本発明のこの態様によれば、アルカリ液の濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、工程(3)は、アイオノマーを得るための、分離固体含有相とアルカリ液体との反応を含む。好ましくは、反応温度は20〜80℃、好ましくは30〜70℃であり、反応時間は0.5〜8時間、好ましくは0.5〜3時間である。
本発明のこの態様によれば、工程(4)は、遠心分離スラグ相を洗浄するために使用され、工程(3)における共重合反応及び反応の残留物を除去する。好ましくは、アルコール洗浄は、無水マレイン酸100モルに対して、合計で100〜250Lのアルコール溶媒、より好ましくは150〜200Lを使用する。好ましくは、アルコール溶媒は、メタノール又はエタノールから選択される。
本発明のこの態様によれば、工程(2)、(3)、及び(4)は全て、得られた微小球含有物質からの微小球の分離に関する。例えば、工程(2)において、無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液は、第1の分離にかけられ;工程(3)において、アイオノマー微小球を含む生成物は、第2の分離にかけられ;工程(4)において、アルコール洗浄後のコポリマー微小球を含む遠心分離スラグ相は、連続的な第3の分離にかけられる。これらの微小球含有物質は、高濃度条件下で固液分離にかけられ、高純度の超微細微小球を得る。好ましくは、工程(2)における第1の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(3)における第2の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000であり、工程(4)における第3の分離の分離係数は、9000より大きく、好ましくは9000〜60000である。分離係数の前記範囲内で、本発明における工程(2)〜(4)において、高濃度の微小球含有量という条件下で前記種々の分離を工業的に連続的に行うことができる。
本発明のこの態様における工程(5)において、スラグ相に同伴された反応溶媒及び/又はアルコール溶媒をさらに除去するために、乾燥温度は50〜150℃であり、乾燥圧力は10〜1013mbar、好ましくは10〜200mbarであり得る。
本発明のこの態様において、工程(6)は、溶媒及びアルコールを回収するために使用され、本発明によって提供されるシステムの溶剤回収ユニットにおいて行われる。分離液−I、分離液−II、及び洗浄上澄液中の反応溶媒及びアルコールを回収するには、溶媒回収ユニットの各部装置の運転及び制御条件は、十分でなければならない。
本発明により提供されるこの方法において、本発明の目的は、前記で規定される条件下でより良好に達成され得、架橋及び微小球構造を有するマレイン酸アイオノマーの連続製造は達成され得、溶媒の空気暴露操作は回避され、そして遠心分離機の頻繁な開始及び停止操作は回避される。
(用途)
本発明によって製造されるアイオノマーは、架橋構造を有し、微小球形状である。本発明によるアイオノマーは、PETの改質における核剤として使用することができる。実際の使用において、本発明のアイオノマーは、PETと溶融混合することができ、これは、従来の混合装置で行うことができる。アイオノマーの量は、PET100gに対して、0.5〜5gであり得る。溶融混合の温度は、250〜300℃であってもよい。溶融混合の時間は、5〜8分間であってもよい。次いで、溶融混合された生成物を押出ペレット化に供して、改質PET生成物を得る。
従って、本発明はまた、本発明によるアイオノマーを核剤として含むポリエチレンテレフタレート組成物を提供する。さらに、本発明は、本発明によるアイオノマーが核剤としてポリエチレンテレフタレートに導入される、ポリエチレンテレフタレートを改質する方法も提供する。
以下、実施例を用いて本発明を例示するが、これは実施例に開示された範囲に本発明を限定することを意図するものではない。
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例において:
真空乾燥条件:100℃、真空度−0.095MPa、時間8h;
赤外スペクトル分析:PerkinElmer社の機器、Spectrum Twoによって測定;
平均粒径:走査型電子顕微鏡写真で300〜500個の微小球を選択し、その直径を測定し、数学的平均法を用いて微小球の平均粒径を計算することによって決定;
走査型電子顕微鏡分析:FEI社の機器、XL−30ESEM−FEGによって測定;
架橋度を測定する方法:ポリマー微小球2〜3gを秤量(w1)し、中速定性濾紙で包み、ソックスレー抽出器に入れ、テトラヒドロフランで24時間抽出し、乾燥し、得られたポリマー残留物を秤量(w2)し、w2/w1で計算して架橋度を取得:
濁度:濁度計、粒子濃度(溶媒100g中の粒子の質量g、重量%)によって特性付けられた濁度値を用いて測定した。
実施例1:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをn−ヘキサンで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。同時に、遠心分離後の上清をLC−MC(液体クロマトグラフィー−質量分析)により分析し、その中に残存するモノマーの量を決定した。投入されたモノマーの量(又は架橋剤の量)から残留したモノマーの量(又は架橋剤の量)を差し引いて得られたモノマーの量(又は架橋剤の量)は、実際に反応に関与した量であり、これにより構造単位A、構造単位B、及び架橋構造単位間のモル比を得、具体的には以下の表1に示すように得た(以下同様;ワンポット法で製造する場合、最初の遠心分離後に上清を少量取り、モノマーの量を決定した)。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び4.4gの水酸化ナトリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.55モルであった)を200mLのメタノールに加え、64.7℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルナトリウム塩アイオノマー微小球(C1と称す)を得た。
実施例2:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び2.2gの水酸化ナトリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.28モルであった)を200mLのエタノールに添加し、78℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エチルナトリウム塩アイオノマー微小球(C2と称す)を得た。
実施例3:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び6.2gの水酸化カリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.55モルであった)を300mLのイソプロパノールに加え、80℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にイソプロパノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にイソプロパノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸イソプロピルカリウム塩アイオノマー微小球(C3と称す)を得た。
実施例4:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び6.6gの水酸化ナトリウム(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.83モルであった)を300mLの2−プロピルヘプタノールに加え、90℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール300mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥し、架橋α−メチルスチレン/C10アルコールマレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(C4と称す)を得た。
実施例5:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、スチレン104g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で10時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させて架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得た。
(2)50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球、及び13.5gのナトリウムエトキシド(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり0.98モルであった)を200mLのエタノールに加え、78℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にエタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エチルナトリウム塩アイオノマー微小球(C5と称す)を得た。
実施例6:マレイン酸エステルアイオノマー微小球
ジビニルベンゼンの量が10gであることを除いて、実施例1の方法に従ってアイオノマー微小球を製造し、アイオノマー微小球C6を得た。
実施例D1:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをn−ヘキサンで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)15.2gの水酸化ナトリウムを350mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化ナトリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.9モルであった)に加え、100℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D1と称す)を得た。
実施例D2:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)20.5gの酢酸ナトリウムを300mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた酢酸ナトリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.2モルであった)に加え、100℃で4時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D2と称す)を得た。
実施例D3:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)36.7gの酢酸亜鉛を400mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた酢酸亜鉛水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1モルであった)に加え、100℃で8時間反応させた。反応後、系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸亜鉛塩アイオノマー微小球(D3と称す)を得た。
実施例D4:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)15.6gの水酸化リチウム一水和物を450mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化リチウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.85モルであった)に加え、100℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸リチウム塩アイオノマー微小球(D4と称す)を得た。
実施例D5:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸130g、α−メチルスチレン118g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)15.0gの水酸化カリウムを400mLの水に溶解し、50gの架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化カリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.3モルであった)に加え、30℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸カリウム塩アイオノマー微小球(D5と称す)を得た。
実施例D6:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸100g、スチレン104g、ジビニルベンゼン26g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.5gを酢酸イソアミル1000mLに溶解し、窒素雰囲気下、60℃の水浴中で12時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋スチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これをメタノールで洗浄して精製し、真空下で乾燥させた。
(2)13.5gの水酸化ナトリウムを350mLの水に溶解し、50gの架橋スチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を、得られた水酸化ナトリウム水溶液(塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.6モルであった)に加え、100℃で3時間反応させた。反応後、その反応の系を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋スチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D6と称す)を得た。
実施例D7:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸1000g、α−メチルスチレン1180g、ジビニルベンゼン260g、及びアゾビスイソブチロニトリル20gを酢酸イソアミル10Lに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。
(2)工程(1)の反応後の系に水酸化ナトリウム水溶液3500g(14重量%)を加え、80℃で3時間反応させた。反応後、その系を静置して層に分離させた。重い相を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に水4Lを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に水4Lを加え撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D7と称す)を得た。
(3)工程(1)の反応後の系を遠心分離機で5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、架橋α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー微小球を得、これを溶媒で洗浄して精製し、真空下で乾燥した。次いで、3500gの水酸化ナトリウム水溶液(10重量%、塩基の量は無水マレイン酸1モル当たり1.25モルであった)を加え、80℃で3時間反応させた。反応後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体に水400mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体にメタノール500mLを加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で30分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー微小球(D7−1と称す)を得た。
実施例D8:マレイン酸アイオノマー微小球
(1)無水マレイン酸1000g、α−メチルスチレン1180g、エチレングリコールジメタクリレート600g、及びアゾビスイソブチロニトリル25gを酢酸イソアミル15Lに溶解し、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。
(2)反応後、水酸化リチウム水溶液1000g(10重量%)を加え、90℃で0.5時間反応させた。反応後、その反応の系を静置して層に分離させた。重い相を、遠心分離機を用いて5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に4Lの水を加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体に4Lの水を加えて撹拌洗浄した後、遠心分離機で5000rad/minの条件で20分間遠心分離し、得られた固体を真空乾燥して架橋α−メチルスチレン/マレイン酸リチウム塩アイオノマー微小球(D8と称す)を得た。
実施例D9:マレイン酸アイオノマー微小球
ジビニルベンゼンの量が10gであることを除いて、実施例D1の方法に従ってアイオノマー微小球を製造し、アイオノマー微小球D9を得た。
比較例E1
(1)無水マレイン酸98g及びα−メチルスチレン118gを秤量し、窒素入口、撹拌機、温度計、凝縮器、及び還流凝縮管を備えた三つ口フラスコに入れ、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2gを加え、反応溶媒としてトルエンを適正量加え、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させた。反応後、ポリマーを吸引濾過し、濾過ケーキをトルエンで3回洗浄し、真空乾燥してα−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマーを得た。
(2)α−メチルスチレン/無水マレイン酸ポリマー20.2gを1,4−ジオキサン200mLに溶解し、飽和水酸化ナトリウム水溶液4gを加えて、室温で3時間反応させた。反応後、アイオノマー固体を濾過により得た。得られた固体を真空乾燥し、α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマー(E1と称す)を得た。
試験例1
(1)実施例1、実施例D1、及び比較例E1で得られたポリマーを赤外スペクトルにより分析した。結果をそれぞれ図1、図3、及び図5に示す。赤外スペクトル分析の結果から、アイオノマーの合成に成功したことが分かる。実施例2〜6の赤外スペクトル分析の結果は実施例1と同様であり、実施例D2〜D9の赤外スペクトル分析の結果は実施例D1と同様である。それら全てが、アイオノマーを首尾よく得ていた。
(2)前記実施例及び比較例で製造したアイオノマー微小球をX線蛍光スペクトル分析にかけて、アイオノマー中の金属カチオンの含有量、すなわちアイオノマー中の構造単位Aの総モル量に基づくパーセンテージを決定した。
(3)前記実施例及び比較例で製造したアイオノマーを走査型電子顕微鏡で検出した。実施例1及び実施例D1で得られたアイオノマーの走査型電子顕微鏡画像をそれぞれ図2及び図4に示す。本発明のアイオノマーは微小球形状を有するが、比較例E1で得られたアイオノマーは微小球構造を有していないことが分かる。試験したアイオノマー微小球の平均粒径、架橋度等を下記表1に示す。
(4)前記実施例及び比較例で製造したアイオノマー微小球を、PET(Sinopec Yizheng Chemical Fibre Companyより購入、型番:BG80)とそれぞれ均一に混合し、アイオノマー微小球の添加量をPETの重量に対して1重量%とし、280℃で8分間溶融混合した後、押出ペレット化し、改質ポリエチレンテレフタレートを得た。
改質PETと、対照として未改質ペットとを、示差走査熱量測定(DSC)試験にかけた。試験条件は、第1の温度上昇(50℃から開始し、温度を1分間一定に維持し、次いで温度を10℃/分の速度で280℃に上昇させ、温度を3分間一定に維持し、次いで温度を10℃/分の速度で50℃に低下させ、温度を1分間一定に維持した);第2の温度上昇(50℃から開始し、温度を10℃/分の速度で280℃に上昇させた)。表2に結果を示す。
表2の結果から、本発明の方法によって製造されたアイオノマーは比較例よりもPETの核形成に対して有意に良好な効果を有し、PETの結晶化温度を有意に上昇させ、結晶化速度を加速させることができ、さらに、微小球構造を有さない非架橋α−メチルスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーよりもPETの核形成に対して良好な効果を有することが分かる。さらに、エステル基を導入すると、架橋アイオノマー微小球のペットとの相溶性が増大し、エステル基を含まないアイオノマー微小球と比較してPETの核形成に対して、より良好な効果が達成された。
また、実施例1と実施例6との比較、及び実施例D1と実施例D8〜D9との比較から、架橋剤の量を好ましい範囲に制御することにより、より良好な核形成効果が得られることが分かる。
試験例2
この試験例では、0.7dl/gの固有粘度及びBG80の型番を有するPETをSinopec Yizheng Chemical Fibre Companyから購入した。難燃剤は、Jinan Taixing Fine Chemicals Co Ltdから購入した窒素−リンハロゲンフリー難燃剤(HT202A)であった。潤滑剤はBritain Croda Companyから購入したPET100であった。ガラス繊維(又はGF)はZhejiang Jushi Group Co Ltd.から購入し、型番はER13−2000−988Aであった。加工助剤は酸化防止剤を含み、company Ciba Specialty Chemicalsから購入し、型番はIrganox 1010及びIrgafos 168であった。
試験の具体的な工程は以下の通りであった:
100重量部のPET、1.5重量部のアイオノマー微小球、0.2重量部の加工助剤(Irganox 1010及びIrgafos 168、重量比率1:1)、8重量部の難燃剤、及び0.04重量部の潤滑剤を秤量し、高速撹拌機に入れて均一に撹拌し、WP
ZSK25二軸押出機を使用して各領域の温度:230−245−255−260−260−260℃;で押し出し、二軸押出機の供給口でガラス繊維を添加し、押し出し後、冷却、ペレット化、及び乾燥(100℃、8時間)し、ペレットを性能試験のために、Haitian MA1200/370射出成形機(成形温度60℃)を使用して、230−240−255−260−260℃の温度で標準試料片に射出成形した。
射出成形機(Ningbo Haitian MA1200/370)を用いて射出成形し、サイズが170mm(長さ)×25mm(幅)×4mm(厚さ)で、平行部が10mm(幅)×4mm(厚さ)の標準スプラインを得た。標準スプラインの引張強さ及び破断伸びは、GB/T1040‐1992によるプラスチックの引張特性の試験方法によって測定した。
射出成形機(Ningbo Haitian MA1200/370)を用いて射出成形し、サイズが80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)の標準スプラインを得た。標準スプラインの曲げ強さ及び曲げ弾性率は、GB/T9341−2008によるプラスチックの曲げ特性についての試験方法によって測定した。
射出成形機(Ningbo Haitian MA1200/370)を用いて射出成形し、サイズが80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)、ノッチ2mmの標準スプラインを得た。標準スプラインのシャルピーノッチ付衝撃強さは、GB/T1043−93によるプラスチックのアイゾット衝撃強さの試験方法によって測定した。
変形:2つの射出成形サンプル正方形片(60mm×60mm×2mm)を採取し、一方を120℃のオーブンに2時間置き、他方を室温に置いた。サンプル片の変形を観察した。
その結果、本発明のアイオノマーを使用することにより、得られたプラスチック製品は、118〜145MPaの範囲の引張強さ、約2%の破断伸び、140〜180MPaの範囲の曲げ強さ、5.6〜9.5GPaの範囲の曲げ弾性率、及び4.5〜10kJ/m2の範囲のシャルピーノッチ付衝撃強さを有することができ、120℃のオーブンに2時間入れても明らかな変形は観察されなかった。
マレイン酸アイオノマー微小球及びマレイン酸エステルアイオノマー微小球の連続製造プロセス
実施例F1
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を共重合反応器R−12(2つの並列な撹拌タンク反応器)に供給し、窒素雰囲気下、75℃で5時間、共重合反応させた。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、計量ポンプ(流量100kg/h)を通して第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数9000)にかけた。分離によって得られた分離液−Iは、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相は洗浄容器R−22に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中のメタノールを、143kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、分離固体含有相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量173kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−22に送り、第2の分離(分離係数9000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたコポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ液タンクV−31には、濃度2.5重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を貯留した。コポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32(撹拌タンク型反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量83kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム80モル、メタノール3900モルを用いた)。反応は50℃で行い、滞留時間は1時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量122kg/h)によって、底部から第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に供給して、第3の分離(分離係数9000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得た。分離液−IIは、精製後の再利用のために、上澄液貯蔵タンクV−26に運搬された。
遠心分離スラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(46kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。17.5kg/hの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルナトリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、図6に示すように、マレイン酸ナトリウム塩及びマレイン酸エステルの特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。図7に示すように、微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1521nmであると測定された。架橋度は81%と測定された。
撹拌タンク反応器R−12BとR−12Aとを並列に接続し、物質を交互に排出した。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
実施例F2
この実施例は、エタノールをアルコール貯蔵タンクV−27に貯蔵し、18.3kg/hの収量で架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エチルナトリウム塩アイオノマー微小球を得たことを除いて、実施例F1の方法に従って行った。
実施例F3
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル10.14モル、ジビニルベンゼン150モル、α−メチルスチレン750モル、酢酸イソアミル900L。
反応液を管状反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、管状反応器R−12の出口温度を90℃に制御し、滞留時間を3時間とした。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数12000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相は洗浄容器R−22に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、133kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、分離固体含有相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量162kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−22に送り、第2の分離(分離係数12000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたコポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ液タンクV−31には、濃度2.5重量%の水酸化カリウムのメタノール溶液を貯留した。コポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32(管状反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量130kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化カリウム100モル、メタノール6800モルを用いた)。反応器温度を70℃に制御し、滞留時間は1.5時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量166kg/h)によって、第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に供給して、第3の分離(分離係数12000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得た。分離液−IIは、精製後の再利用のために、上澄液貯蔵タンクV−26に運搬された。
遠心分離スラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(43kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は100℃であり、圧力は10mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。17.3kg/hの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルカリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、マレイン酸カリウム塩及びマレイン酸エステルの特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1600nmであると測定された。架橋度は78%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は以下の通りであった。
実施例F4
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル15モル、ジビニルベンゼン180モル、α−メチルスチレン850モル、酢酸イソアミル850L。
反応液をバッフル反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、バッフル反応器R−12の出口温度を85℃に制御し、滞留時間を3時間とした。
反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数14000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相は洗浄容器R−22に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、170kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、分離固体含有相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量207kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−22に送り、第2の分離(分離係数14000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第2オンライン濁度計A−22で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたコポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ液タンクV−31には、濃度2.5重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を貯留した。コポリマースラグ相をアイオノマー反応器R−32(バッフル反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量22kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム20モル、メタノール900モルを用いた)。反応器温度を50℃に制御し、滞留時間は0.75時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量66kg/h)によって、底部から第3ディスク遠心分離機S−31に連続的に供給して、第3の分離(分離係数14000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相及び分離液−IIを得た。分離液−IIは、精製後の再利用のために、上澄液貯蔵タンクV−26に運搬された。
遠心分離スラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(48kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は150℃であり、圧力は100mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。19.5kg/hの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸メチルナトリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、無水マレイン酸の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は2000nmであると測定された。架橋度は80%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
比較例F1
ポリマー反応タンクに以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を75℃に加熱し(昇温時間1時間)、75℃で5時間、共重合反応させた。反応により得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間1時間)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、分離固体含有相を得た。
分離固体含有相をアイオノマー反応器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。2.5重量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液1000kgをアルカリ液タンクから加え、50℃で1時間、反応させた。
反応により得られたマレイン酸アイオノマー微小球の反応液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間は0.5時間であった)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、遠心分離スラグ相を得た。
遠心分離スラグ相を洗浄容器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。洗浄のためのメタノールを計量ポンプによってアルコール貯蔵タンクから洗浄容器に送り、1時間撹拌した。得られた洗浄液を計量ポンプで三脚遠心分離機に加えて分離したところ、分離時間は2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。スラグ相が得られた。
スラグ相を傾斜真空乾燥器G−41に手動で加え(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃(昇温時間1時間)であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。214kgの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸エステルナトリウム塩アイオノマー微小球が得られた。
バッチ操作は、7.8kg/hの生産効率を有した(各作業セクションにおいて、三脚遠心分離機を用いて1バッチの固液分離を行った)。
前記実施例及び比較例の結果から、本発明による実施例F1〜F4の使用は架橋及び微小球構造を有するマレイン酸エステルアイオノマーの連続製造を達成することができ、従来技術における製造システムの種々のユニット間の手動操作を含む分離プロセスを克服し、より高い生産効率及び安定な生産プロセスという顕著な効果を有することが分かる。さらに、製造プロセスは、手動の現場操作を必要とせず、有機溶媒の空気暴露操作を伴わず、人員及び環境に対する害が少ない。
実施例G1
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を共重合反応器R−12(2つの並列な撹拌タンク反応器)に供給し、窒素雰囲気下、75℃で5時間、共重合反応させた。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、計量ポンプ(流量100kg/h)を通して第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数9000)にかけた。分離によって得られた分離液−Iは、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相はアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ溶解容器R−21には、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を配合し、後の使用のためにアルカリ液タンクV−31に加えた。分離固体含有相をアイオノマー反応器R−32(撹拌タンク反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量20kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム80モルを用いた)。反応は50℃で行い、滞留時間は1時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量50kg/h)によって、底部から第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に供給して、第2の分離(分離係数9000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得、分離液−IIは、精製後の再利用のために、分離液貯蔵タンクV−25に送り、水相は再利用のためにアルカリ溶解容器R−21に送り、遠心分離スラグ相は物質レベル差に基づいて洗浄容器R−22に送った。第2の分離の効果は、濁度を制御するための第2オンライン濁度計A−22及び第3オンライン濁度計A−31によって判断することができた。水相及び分離液−IIの濁度が0.1重量%を超えるときはアイオノマー反応器R−32に戻し、水相の濁度が0.1重量%未満のときはアルカリ溶解容器R−21に送り、分離液−IIの濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中のメタノールを、143kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、遠心分離スラグ相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量173kg/h)によって第3ディスク遠心分離機S−31に送り、第3の分離(分離係数9000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第4オンライン濁度計A−41で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたアイオノマースラグ相を乾燥機G−41に送った。
アイオノマースラグ相を物質レベル差に基づいて、傾斜真空乾燥器G−41に送り(43kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。16.3kg/hの収量で、架橋マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、図11に示すように、マレイン酸ナトリウム塩の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするアイオノマーの構造の存在を証明した。図12に示すように、微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1521nmであると測定された。架橋度は81%と測定された。
撹拌タンク反応器R−12BとR−12Aとを並列に接続し、物質を交互に排出した。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
実施例G2
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル10.14モル、ジビニルベンゼン150モル、α−メチルスチレン750モル、酢酸イソアミル900L。
反応液を管状反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、管状反応器R−12の出口温度を90℃に制御し、滞留時間を3時間とした。反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数12000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相はアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ溶解容器R−21には、20重量%水酸化カリウム水溶液を配合し、後の使用のためにアルカリ液タンクV−31に加えた。分離固体含有相をアイオノマー反応器R−32(管状反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量16kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化カリウム100モルを用いた)。反応器温度は50℃に制御し、滞留時間は1時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量46kg/h)によって、出口から第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に供給して、第2の分離(分離係数12000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得、分離液−IIは、精製後の再利用のために、分離液貯蔵タンクV−25に送り、水相は再利用のためにアルカリ溶解容器R−21に送り、遠心分離スラグ相は物質レベル差に基づいて洗浄容器R−22に送った。第2の分離の効果は、濁度を制御するための第2オンライン濁度計A−22及び第3オンライン濁度計A−31によって判断することができた。水相及び分離液−IIの濁度が0.1重量%を超えるときはアイオノマー反応器R−32に戻し、水相の濁度が0.1重量%未満のときはアルカリ溶解容器R−21に送り、分離液−IIの濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、133kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、遠心分離スラグ相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量167kg/h)によって第2ディスク遠心分離機S−31に送り、第3の分離(分離係数12000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第4オンライン濁度計A−41で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。得られたアイオノマースラグ相を乾燥機G−41に送った。
アイオノマースラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(44kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は50℃であり、圧力は10mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器E−41の凝縮温度は0℃であった。16.5kg/hの収量で、架橋マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、マレイン酸カリウム塩の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするアイオノマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は1600nmであると測定された。架橋度は78%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
実施例G3
酢酸イソアミルを反応溶媒貯蔵タンクV−13に貯蔵した。反応液混合容器R−11に以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル15モル、ジビニルベンゼン180モル、α−メチルスチレン850モル、酢酸イソアミル850L。
反応液をバッフル反応器R−12に供給速度100kg/hにおいて窒素雰囲気下で供給し、バッフル反応器R−12の出口温度を85℃に制御し、滞留時間を3時間とした。
反応によって得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、反応器R−12の出口(流量100kg/h)から第1ディスク遠心分離機S−21に加え、連続的な第1の分離(分離係数14000)にかけた。分離によって得られた分離液は、第1オンライン濁度計A−21を通過した。濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送り、0.1重量%を超えるときは共重合反応器R−12に戻した。遠心分離により得られた分離固体含有相はアイオノマー反応器R−32に送った。
アルカリ溶解容器R−21には、50重量%水酸化ナトリウム水溶液を配合し、後の使用のためにアルカリ液タンクV−31に加えた。分離固体含有相をアイオノマー反応器R−32(バッフル反応器)に入れながら、アルカリ液タンクV−31内のアルカリ液を、計量ポンプにより、流量1.1kg/hでアイオノマー反応器R−32に送った(無水マレイン酸100モルに対して、水酸化ナトリウム20モルを用いた)。反応器温度は30℃に制御し、滞留時間は0.5時間であった。
アイオノマー反応器R−32での反応によって得られた生成物を、計量ポンプ(流量33kg/h)によって、底部から第2ディスク遠心分離機S−22に連続的に供給して、第2の分離(分離係数14000)にかけて、アイオノマー微小球を含む遠心分離スラグ相、水相、及び分離液−IIを得、分離液−IIは、精製後の再利用のために、分離液貯蔵タンクV−25に送り、水相は再利用のためにアルカリ溶解容器R−21に送り、遠心分離スラグ相は物質レベル差に基づいて洗浄容器R−22に送った。第2の分離の効果は、濁度を制御するための第2オンライン濁度計A−22及び第3オンライン濁度計A−31によって判断することができた。水相及び分離液−IIの濁度が0.1重量%を超えるときはアイオノマー反応器R−32に戻し、水相の濁度が0.1重量%未満のときはアルカリ溶解容器R−21に送り、分離液−IIの濁度が0.1重量%未満のときは分離液貯蔵タンクV−25に送った。
アルコール貯蔵タンクV−27中の洗浄のためのメタノールを、180kg/hの流量で計量ポンプによって洗浄容器R−22に送り、滞留時間は1時間で、遠心分離スラグ相をアルコール洗浄した。アルコールで洗浄した生成物を、計量ポンプ(流量213kg/h)によって第3ディスク遠心分離機S−31に送り、第3の分離(分離係数14000)にかけた。得られた洗浄上澄液は、第4オンライン濁度計A−41で測定した濁度が0.1重量%未満のときは上澄液貯蔵タンクV−26に送り、濁度が0.1重量%を超えるときは洗浄容器R−22に戻した。
アイオノマースラグ相を物質レベル差に基づいて傾斜真空乾燥器G−41に送り(47kg/h)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は90℃であり、圧力は100mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。17.8kg/hの収量で、架橋マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
微小球の赤外スペクトル分析は、マレイン酸ナトリウム塩の特徴的なピーク及び芳香環の特徴的なピークを示し、目的とするポリマーの構造の存在を証明した。微小球の走査型電子顕微鏡分析は、得られた微小球は微小球構造を有することを示し、平均粒径は2000nmであると測定された。架橋度は80%と測定された。
分離液貯蔵タンクV−25中の分離液及び上澄液貯蔵タンクV−26中の上澄液をそれぞれ反応溶媒回収装置内の反応溶媒精留塔T−52及びアルコール溶媒回収装置内のアルコール精留塔T−51に導入し、反応溶媒及びメタノールをそれぞれ回収して再利用した。メタノール回収及び反応溶媒回収の条件は、以下の通りであった。
比較例G1
ポリマー反応タンクに以下の反応液を配合した:無水マレイン酸1014モル、アゾビスイソブチロニトリル12.2モル、ジビニルベンゼン200モル、α−メチルスチレン1000モル、酢酸イソアミル1000L。
反応液を75℃に加熱し(昇温時間1時間)、75℃で5時間、共重合反応させた。反応により得られた無水マレイン酸系コポリマー微小球を含むポリマー母液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間1時間)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、分離固体含有相を得た。
分離固体含有相をアイオノマー反応器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。10重量%の水酸化ナトリウム水溶液250kgをアルカリ液タンクから加え、50℃で1時間、反応させた。反応により得られたマレイン酸アイオノマー微小球の反応液を、三脚遠心分離機を用いて固液分離にかけた。安全性を確保するために、反応液を30℃まで冷却する必要があった(降温時間は0.5時間であった)。分離時間は、2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。分離により、遠心分離スラグ相を得た。
遠心分離スラグ相を洗浄容器に手動で加えた(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)。洗浄のためのメタノールを計量ポンプによってアルコール貯蔵タンクから洗浄容器に送り、1時間撹拌した。得られた洗浄液を計量ポンプで三脚遠心分離機に加えて分離したところ、分離時間は2時間/バッチであった(バッチ数はフィルター物質がブロックされたか否かに依存した)。分離後、遠心分離機を1時間停止した。スラグ相が得られた。
スラグ相を傾斜真空乾燥器G−41に手動で加え(1時間の物質移動及び雰囲気置換時間)、そこでスラグ相を乾燥させた。乾燥温度は140℃(昇温時間1時間)であり、圧力は80mbarであり、滞留時間は4時間であった。凝縮器の凝縮温度は0℃であった。203kgの収量で、架橋α−メチルスチレン/マレイン酸アイオノマー微小球が得られた。
バッチ操作は、7.7kg/hの生産効率を有した(各作業セクションにおいて、三脚遠心分離機を用いて1バッチの固液分離を行った)。
前記実施例及び比較例の結果から、本発明による実施例G1〜G3の使用は架橋及び微小球構造を有するマレイン酸アイオノマーの連続製造を達成することができ、従来技術における製造システムの種々のユニット間の手動操作を含む分離プロセスを克服し、より高い生産効率及び安定な生産プロセスという顕著な効果を有することが分かる。さらに、製造プロセスは、手動の現場操作を必要とせず、有機溶媒の空気暴露操作を伴わず、人員及び環境に対する害が少ない。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的概念の範囲内で、任意の他の適切な方法での種々の技術的特徴の組み合わせを含む、種々の単純な改変が、本発明の技術的解決策になされ得る。これらの単純な改変及び組み合わせもまた、本発明の開示とみなされるべきであり、それらは全て本発明の保護範囲に属する。
本明細書で開示される範囲の終点及びその中の任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲については1つ以上の新しい数値範囲を得るために、様々な範囲の終点値と様々な範囲の個々の点値との間、様々な範囲の終点値と個々の点値との間で組み合わせを行うことができ、これらの数値範囲は本明細書で具体的に開示されていると考えられる。
〔符号一覧〕
図1は、実施例1で合成したアイオノマーの赤外スペクトルである。
図2は、実施例1で合成したアイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である。
図3は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである。
図4は、実施例D1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの走査型電子顕微鏡写真である。
図5は、比較例E1で合成したスチレン/マレイン酸ナトリウム塩アイオノマーの赤外スペクトルである。
図6は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の赤外スペクトルである。
図7は、実施例F1で得られたマレイン酸エステルアイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である。
図8は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである。
図9は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである。
図10は、本発明によって提供されるマレイン酸エステルアイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである。
図11は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の赤外スペクトルである。
図12は、実施例G1で得られたマレイン酸アイオノマー微小球の走査型電子顕微鏡写真である。
図13は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図Iである。
図14は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するためのシステムの概略図IIである。
図15は、本発明によって提供されるマレイン酸アイオノマー微小球を製造するための方法の概略フローチャートである。