本発明は、基板に対し半田を印刷して部品を実装する基板製造方法、半田印刷を行う際に使用するスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法及びスクリーンマスク検査装置に関するものである。
一般に、基板上に電子部品を実装する製造ラインにおいては、まず半田印刷機において、基板のランド上にスクリーン印刷によりクリーム半田が印刷される。次に、該クリーム半田の粘性に基づいて基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記基板がリフロー炉へ導かれることで半田付けが行われる。
半田印刷機には、予め印刷対象となる基板のランド配置に対応して多数の開口部が形成されたスクリーンマスクが備えられている。半田印刷に際しては、このスクリーンマスクを基板表面に当接させた状態で、その上にクリーム半田を供給してスキージを摺動させることにより、開口部内にクリーム半田を押し込む。その後、スクリーンマスクを基板から離間させることにより、開口部内に充填されたクリーム半田が版抜けし、ランド上に印刷(転写)される。
ところが、半田印刷工程が何度も行われている間に、スクリーンマスクの開口部にクリーム半田が付着して目詰まりを起こし、印刷不良が発生するおそれがあった。このため、従来では、半田印刷工程が所定回数行われる毎に、スクリーンマスクのクリーニングが行われている。
一方、半田印刷機において、スクリーンマスクの開口部をカメラで撮像し、該開口部の開口面積(開口部に付着したクリーム半田の量)を検査し、スクリーンマスクの交換や清掃の要否を報知する技術なども知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来では、半田印刷工程とクリーニング工程とを交互に何度も繰り返しているうちに、それに比例するように、スクリーンマスクの開口部からのクリーム半田の版抜けが悪くなり、ランド上に転写されるクリーム半田の量が減少する傾向が見られた。
ランド上に転写されるクリーム半田の量が減少すると、実装部品の半田付けが適正に行われず、不良品の発生率が高まるおそれがある。また、このように半田抜けが悪くなった状態で半田印刷工程を続けていると、当初想定した印刷回数よりも短い期間でスクリーンマスクの開口部が目詰まりを起こし、印刷不良も発生しやすくなる。
そのため、このように半田抜けが悪くなったスクリーンマスクを本願発明者が詳しく調べてみたところ、スクリーンマスクをクリーニングした直後においても、スクリーンマスクの開口部の内壁部に、作業者の目では確認できないような微小な残留異物(クリーム半田やフラックス等の残留物)が付着したまま残り、半田印刷時の半田抜けの悪さに影響していることが分かった。
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニング後のスクリーンマスクを検査することにより、不良品の発生を抑制することのできる基板製造方法、スクリーンマスク検査方法及びスクリーンマスク検査装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
手段1.基板に対し半田を印刷して部品を実装する基板製造方法であって、
所定の半田印刷手段において、前記基板に対し半田を印刷する半田印刷工程と、
所定のクリーニング手段において、前記半田印刷工程において使用するスクリーンマスクのクリーニングを行うクリーニング工程と、
前記クリーニング工程を行った後段階かつ前記半田印刷工程を行う前段階において、前記スクリーンマスクの開口部を所定の撮像手段により撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により取得した画像データを基に、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定するクリーニング良否判定工程と、
前記クリーニング良否判定工程において、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着していないと判定された場合に、前記スクリーンマスクを前記半田印刷手段へ設定する印刷準備工程と、
前記クリーニング良否判定工程において、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着していると判定された場合に、前記スクリーンマスクを再び前記クリーニング手段へ移送する再送工程とを備えたことを特徴とする基板製造方法。
上記手段1によれば、半田印刷に使用したスクリーンマスクのクリーニング後に、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行う構成となっている。そして、このスクリーンマスク検査において、スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着していると判定された場合には、スクリーンマスクを再びクリーニングする構成となっている。
これにより、スクリーンマスクのクリーニングを実行したにもかかわらず、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に微小な残留異物(半田やフラックス等の残留物)が付着したまま残り、該スクリーンマスクが半田印刷にて再使用されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
結果として、スクリーンマスクの開口部の目詰まりの発生(印刷不良)や、実装部品の不適正な半田付け(半田不足)など、半田抜けが悪くなった状態で半田印刷を続けた場合に生じ得る種々の不具合の発生を未然に抑制することができる。
尚、一般的な基板製造方法においては、例えば基板に対し半田を印刷する半田印刷工程、前記基板に印刷された半田を検査する半田印刷検査工程、前記基板に印刷された半田に対して所定の部品を実装する部品実装工程、前記基板に印刷された半田を加熱溶融させて前記部品を固定化するリフロー工程などが行われる。
手段2.基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射する照射工程と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により取得された画像データを基に、前記開口部に係る元画像データを取得する元画像データ取得工程と、
入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部(エンコーダ)と該特徴量から画像データを再構成する復号化部(デコーダ)とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段(生成モデル)へ前記元画像データを入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得する再構成画像データ取得工程と、
前記元画像データと再構成画像データとを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定する判定工程とを備えていることを特徴とするスクリーンマスク検査方法。
尚、以下の手段においても同様であるが、上記「ニューラルネットワーク」には、例えば複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワークなどが含まれる。また、上記「学習」には、例えば深層学習(ディープラーニング)などが含まれる。上記「識別手段(生成モデル)」には、例えばオートエンコーダ(自己符号化器)や、畳み込みオートエンコーダ(畳み込み自己符号化器)などが含まれる。
上記手段2によれば、半田印刷に使用したスクリーンマスクのクリーニング後に、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行うことができる。結果として、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
特に本手段では、ニューラルネットワークを学習して構築した自己符号化器等の識別手段(生成モデル)を用いて、スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定しているため、従来のように、単純に画像データ上における開口部又は異物の面積や形状、寸法などを比較する構成では検出することが困難であった微小な異物を検出することが可能となる。例えば、従来の検出技術では、開口部の内壁部に薄く広がるように付着した異物は、スクリーンマスクの法線方向に視た面積、すなわち画像データ上における面積が非常に小さく検出することが困難であった。
さらに、本手段では、撮像して得た元画像データと、その元画像データを基に再構成して得た再構成画像データとを比較しているため、比較する両画像データにおいて、検査対象物であるスクリーンマスク側の撮像条件(例えばスクリーンマスクの配置位置や配置角度、たわみ等)や、検査装置側の撮像条件(例えば照明状態やカメラの画角等)の違いに基づく影響がなく、より微細な異物をより正確に検出することが可能となる。
尚、上記特許文献1等のように、スクリーンマスク上の所定位置にある所定の開口部に係る検査を行う際に、良否判定基準として、該開口部の構成情報(位置データや寸法データなど)を必要とする構成においては、例えばガーバデータなど基板設計情報を予め記憶しておき、検査対象となる開口部の構成情報を適宜取得し、該構成情報と比較しつつ検査対象となる開口部の良否判定を行うこととなるため、検査効率が低下するおそれがある。また、スクリーンマスクの検査位置への位置決めを正確に行う必要がある。
これに対し、本手段によれば、自己符号化器等の識別手段を利用して、各開口部の検査を行う構成となっているため、多数の開口部それぞれの個別の構成情報を予め記憶する必要もなく、検査に際しそれを参照する必要もないため、検査効率の向上を図ることができる。
また、半田印刷工程の終了後に、スクリーンマスクの開口部の目詰まり検査を行う構成とした場合には、印刷開始前に目詰まりのない状態のスクリーンマスクの開口部を撮像して基準データとして記憶しておくことも考えられる。ところが、この際、かかるスクリーンマスクが、未使用のものでなく、クリーニングによって目詰まりのない状態にされたものである場合には、クリーニングで洗い流されずに残った残留異物も基準データに含まれてしまうため、半田印刷工程の終了後の目詰まり検査においても残留異物を検出することができなくなるおそれがある。
かかる点において、本手段のように、半田印刷を開始する前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査する構成がより奏功することとなる。
手段3.前記比較工程においては、
前記元画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像と、前記再構成画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像とを比較することを特徴とする手段2に記載のスクリーンマスク検査方法。
上記手段3のように、両画像データにおける開口部の内壁部に係る画像を比較する構成(例えば開口部の内壁部平坦部の直線度合いや、内壁部コーナー部の湾曲度合い等を比較する構成)とすることで、例えば開口部又は異物の面積や形状、寸法などを単純に比較する構成に比べて、より微細な異物をより正確に検出することが可能となる。
手段4.基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査装置であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に係る検査を実行可能な画像処理手段とを備え、
前記画像処理手段は、
入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部(エンコーダ)と該特徴量から画像データを再構成する復号化部(デコーダ)とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段(生成モデル)と、
前記クリーニングしたスクリーンマスクの開口部を前記撮像手段により撮像した前記開口部に係る元画像データを取得可能な元画像データ取得手段と、
前記元画像データを前記識別手段へ入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得可能な再構成画像データ取得手段と、
前記元画像データと再構成画像データとを比較可能な比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定可能な判定手段とを備えていることを特徴とするスクリーンマスク検査装置。
上記手段4によれば、半田印刷に使用したスクリーンマスクのクリーニング後に、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行うことができる。結果として、上記手段1,2と同様の作用効果が奏される。
尚、本手段においては特に言及していないが、半田印刷時において基板と当接するスクリーンマスクの当接面側に照射手段を配置し、かつ、基板と当接しないスクリーンマスクの非当接面側に撮像手段を配置して、照射手段から照射された光のうちスクリーンマスクの開口部を透過した光を撮像手段により撮像する構成とすることが好ましい。
但し、基板と当接するスクリーンマスクの当接面側、又は基板と当接しないスクリーンマスクの非当接面側にまとめて前記照射手段及び前記撮像手段を配置して、照射手段から照射された光のうち、前記開口部を含む前記スクリーンマスクから反射した光を撮像手段により撮像する構成を排除するものではなく、かかる構成で実施してもよい。
勿論、前記スクリーンマスクの当接面側(又は非当接面側)が上向き又は下向きのどちら向きに配置された状態で検査が行われることとしてもよい。
手段5.前記比較手段は、
前記元画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像と、前記再構成画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像とを比較することを特徴とする手段4に記載のスクリーンマスク検査装置。
上記手段5によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏される。
プリント基板の一部を拡大した部分拡大平面図である。
プリント基板の製造ラインの構成を示すブロック図である。
半田印刷機による印刷動作を説明するための模式図である。
メタルマスク検査装置を模式的に示す概略構成図である。
メタルマスク検査装置の機能構成を示すブロック図である。
ニューラルネットワークの構造を説明するための模式図である。
ニューラルネットワークの学習処理の流れを示すフローチャートである。
クリーニング工程に係る各種処理の流れを示すフローチャートである。
検査処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は異物の付着していない開口部に係る元画像データを示す図であり、(b)は異物の付着した開口部に係る元画像データを示す図であり、(c)は異物の付着した開口部に係る元画像データを再構成した再構成画像データを示す図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。まず半田を印刷して部品を実装する基板の構成について説明する。図1は、基板としてのプリント基板の一部を拡大した部分拡大平面図である。
図1に示すように、プリント基板1は、ガラスエポキシ樹脂等からなる平板状のベース基板2の表面に、銅箔からなる配線パターン(図示略)や複数のランド3が形成されたものである。また、ベース基板2の表面には、ランド3を除く部分にレジスト膜4がコーティングされている。そして、図1,3に示すように、ランド3上には、粘性を有するクリーム半田5が印刷される。尚、図1,3では、便宜上、クリーム半田5を示す部分に散点模様が付されている。
次にプリント基板1を製造する製造ライン(製造工程)について図2を参照して説明する。図2は、プリント基板1の製造ライン10の構成を示すブロック図である。本実施形態における製造ライン10では、その正面側から見て、左から右へプリント基板1が搬送されるように設定されている。
図2に示すように、製造ライン10には、その上流側(図2左側)から順に、半田印刷機12、半田印刷検査装置13、部品実装機14及びリフロー装置15が設置されている。
半田印刷機12は、プリント基板1のランド3上にクリーム半田5を印刷する半田印刷工程を行うためのものであり、本実施形態における半田印刷手段を構成する。
図3に示すように、半田印刷機12は、プリント基板1上の各ランド3に対応して複数の開口部21が形成された平板状のメタルマスク20と、該メタルマスク20の上面に沿って摺動するスキージ22とを備えている。
尚、本実施形態におけるメタルマスク20(図4参照)は、前記複数の開口部21が形成された矩形薄板状の金属製のマスク本体部20aと、該マスク本体部20aの周縁部四辺を保持する矩形枠状の金属製のフレーム部20bとから構成されている。薄板状のマスク本体部20aを引張状態で剛性の高いフレーム部20bに保持させることにより、マスク本体部20aの撓み等を抑制することができる。
上記構成の下、半田印刷工程においては、まずプリント基板1の表面側にメタルマスク20を位置合わせして当接させる。次にメタルマスク20の上面にクリーム半田5を供給する。続いて、スキージ22をメタルマスク20の上面に沿って摺動させ、開口部21内にクリーム半田5を押し込む。
その後、メタルマスク20をプリント基板1から離間させることにより、開口部21内に充填されたクリーム半田5が版抜けし、ランド3上に印刷(転写)され、半田印刷が完了する。
半田印刷検査装置13は、上記のように印刷されたクリーム半田5の状態(例えば印刷位置、高さ、量等)を検査する半田印刷検査工程を行うためのものである。
部品実装機14は、クリーム半田5が印刷されたランド3上に電子部品25(図1参照)を搭載する部品実装工程を行うためのものである。電子部品25は、複数の電極やリードを備えており、該各電極やリードがそれぞれ所定のクリーム半田5に対し仮止めされる。
リフロー装置15は、クリーム半田5を加熱溶融させて、ランド3と、電子部品25の電極やリードとを半田接合(半田付け)するリフロー工程を行うためのものである。
この他、図示は省略するが、製造ライン10には、半田印刷機12と半田印刷検査装置13との間など、上記各装置間において、プリント基板1を移送するためのコンベア等が設けられている。また、半田印刷検査装置13と部品実装機14との間には分岐装置が設けられている。そして、半田印刷検査装置13にて良品判定されたプリント基板1は、その下流側の部品実装機14へ案内される一方、不良品判定されたプリント基板1は分岐装置により不良品貯留部へと排出されることとなる。
さらに、半田印刷機12の近傍には、クリーニング手段としてのクリーニング装置29、及び、スクリーンマスク検査装置としてのメタルマスク検査装置30が併設されている。
クリーニング装置29は、半田印刷機12において汚れ等が付着したスクリーンマスクとしてのメタルマスク20をクリーニングするクリーニング工程を行うためのものである。
メタルマスク検査装置30は、クリーニング装置29においてクリーニングを終えたメタルマスク20について、適切にクリーニングが行われたか否かを検査するためのものである。
ここで、メタルマスク検査装置30の構成について図4,5を参照して詳しく説明する。図4は、メタルマスク検査装置30を模式的に示す概略構成図である。図5は、メタルマスク検査装置30の機能構成を示すブロック図である。
メタルマスク検査装置30は、メタルマスク20の搬送や位置決め等を行う搬送機構31と、メタルマスク20の検査を行うための検査ユニット32と、搬送機構31や検査ユニット32の駆動制御をはじめ、メタルマスク検査装置30内における各種制御や画像処理、演算処理を実行する制御装置33とを備えている。制御装置33が本実施形態に係る画像処理手段を構成する。
搬送機構31は、メタルマスク20の搬入出方向に沿って配置された一対の搬送レール31aと、各搬送レール31aに対し回転可能に配設された無端のコンベアベルト31bと、該コンベアベルト31bを駆動するモータ等の駆動手段(図示略)と、メタルマスク20を所定位置に位置決めするためのチャック機構(図示略)と備え、制御装置33(後述する搬送機構制御部79)により駆動制御される。
上記構成の下、メタルマスク検査装置30へ搬入されたメタルマスク20は、搬入出方向と直交する幅方向の両側縁部のフレーム部20bがそれぞれ搬送レール31aに挿し込まれると共に、コンベアベルト31b上に載置される。続いて、コンベアベルト31bが動作を開始し、メタルマスク20が所定の検査位置まで搬送される。メタルマスク20が検査位置に達すると、コンベアベルト31bが停止すると共に、チャック機構が作動する。このチャック機構の動作により、コンベアベルト31bが押し上げられ、コンベアベルト31bと搬送レール31aの上辺部によってメタルマスク20の両側縁部のフレーム部20bが挟持された状態となる。これにより、メタルマスク20が検査位置に位置決め固定される。検査が終了すると、チャック機構による固定が解除されると共に、コンベアベルト31bが動作を開始する。これにより、メタルマスク20は、メタルマスク検査装置30から搬出される。勿論、搬送機構31の構成は、上記形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
検査ユニット32は、搬送レール31a(メタルマスク20の搬送路)の下方に配設された照射手段としての照明装置32Aと、搬送レール31aの上方に配設された撮像手段としてのカメラ32Bと、X軸方向(図4左右方向)へカメラ32Bの移動を可能とするX軸移動機構32D(図5参照)と、Y軸方向(図4前後方向)へカメラ32Bの移動を可能とするY軸移動機構32E(図5参照)とを備え、制御装置33(後述する移動機構制御部76)により駆動制御される。
尚、メタルマスク20の「検査範囲」は、カメラ32Bの撮像視野(撮像範囲)の大きさを1単位としてメタルマスク20に予め設定された複数のエリアのうちの1つのエリアである。
制御装置33(移動機構制御部76)は、X軸移動機構32D及びY軸移動機構32Eを駆動制御することにより、カメラ32Bを、検査位置に位置決め固定されたメタルマスク20の任意の検査範囲へ移動することができる。そして、メタルマスク20に設定された複数の検査範囲にカメラ32Bを順次移動させつつ、該検査範囲に係る検査を実行していくことで、メタルマスク20全域の検査を実行する構成となっている。
照明装置32Aは、所定の光を発する照明パネル32Aaと、該照明パネル32Aaから出射された光を拡散させ均一化する拡散板(プリズムフィルム等を含む)32Abを備え、制御装置33(後述する照明制御部72)により駆動制御される。
照明パネル32Aaは、複数のLED(発光ダイオード)が基板上にマトリクス状に実装されたLED基板により構成され、そのLED実装面がZ軸方向上向き(図4の上下方向上向き)となるように配置されている。そして、照明パネル32Aaから出射された光は、拡散板32Abを通して拡散され、メタルマスク20の下面全域に対し略均一に照射される。
尚、本実施形態では、半田印刷時にプリント基板1と当接するメタルマスク20の当接面側が、メタルマスク検査装置30においては下方に向くように、メタルマスク検査装置30に対しメタルマスク20がセットされる。
カメラ32Bは、メタルマスク20を介して照明装置32Aとは反対側に配置されている。本実施形態では、メタルマスク20の上方に配置され、メタルマスク20の所定の検査範囲を真上から撮像する。
カメラ32Bは、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子と、該撮像素子に対しメタルマスク20の開口部21の像を結像させる光学系(レンズユニットや絞りなど)とを有している。勿論、撮像素子は、これらに限定されるものではなく、他の撮像素子を採用してもよい。
カメラ32Bは、制御装置33(後述するカメラ制御部73)により駆動制御される。より詳しくは、制御装置33は、照明装置32Aによる照射処理と同期をとりながら、カメラ32Bによる撮像処理を実行する。これにより、照明装置32Aから照射された光のうち、メタルマスク20の開口部21を透過した光が、カメラ32Bによって撮像され、画像データが生成されることとなる。
このようにカメラ32Bによって撮像され生成された画像データは、該カメラ32Bの内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置33(後述の画像取得部74)に転送され記憶される。そして、制御装置33(後述する画像処理部75等)は、該画像データを基に、後述する各種画像処理や演算処理等を実施する。
制御装置33は、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムや固定値データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、各種演算処理の実行に際して各種データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)及びこれらの周辺回路等を含んだコンピュータからなる。
そして、制御装置33は、CPUが各種プログラムに従って動作することで、後述するメイン制御部71、照明制御部72、カメラ制御部73、画像取得部74、画像処理部75、移動機構制御部76、学習部77、検査部78、搬送機構制御部79などの各種機能部として機能する。
但し、上記各種機能部は、上記CPU、ROM、RAMなどの各種ハードウェアが協働することで実現されるものであり、ハード的又はソフト的に実現される機能を明確に区別する必要はなく、これらの機能の一部又は全てがICなどのハードウェア回路により実現されてもよい。
さらに、制御装置33には、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される入力部55、液晶ディスプレイなどの表示画面を有する表示部56と、各種データやプログラム、演算結果等を記憶可能な記憶部57、外部と各種データを送受信可能な通信部58などが設けられている。
ここで、制御装置33を構成する上記各種機能部について詳しく説明する。メイン制御部71は、メタルマスク検査装置30全体の制御を司る機能部であり、照明制御部72やカメラ制御部73など他の機能部と各種信号を送受信可能に構成されている。
照明制御部72は、照明装置32Aを駆動制御する機能部であり、本実施形態における照射制御手段を構成する。
カメラ制御部73は、カメラ32Bを駆動制御する機能部であり、メイン制御部71からの指令信号に基づき撮像タイミングなどを制御する。
画像取得部74は、カメラ32Bにより撮像され取得された画像データを取り込むための機能部である。
画像処理部75は、画像取得部74により取り込まれた画像データに所定の画像処理を行う機能部である。例えば、後述する学習処理においては、ディープニューラルネットワーク90(以下、単に「ニューラルネットワーク90」という。図6参照。)の学習に用いる学習データとなる学習用画像データを生成する。また、後述する検査処理を行う際に用いる検査用画像データを生成する。尚、学習処理に用いられる学習用画像データの撮影条件と、検査処理に用いられる検査用画像データの撮影条件とが、できる限り一致することが好ましい。
移動機構制御部76は、X軸移動機構32D及びY軸移動機構32Eを駆動制御する機能部であり、メイン制御部71からの指令信号に基づき、カメラ32Bの位置を制御する。
学習部77は、学習データ等を用いてニューラルネットワーク90の学習を行い、識別手段としてのAI(Artificial Intelligence)モデル100を構築する機能部である。
尚、本実施形態におけるAIモデル100は、後述するように異物の付着していない未使用のメタルマスク20の開口部21に係る画像データのみを学習データ(学習用画像データ)として、ニューラルネットワーク90を深層学習(ディープラーニング)させて構築した生成モデルであり、いわゆるオートエンコーダ(自己符号化器)の構造を有する。
ここで、ニューラルネットワーク90の構造について図6を参照して説明する。図6は、ニューラルネットワーク90の構造を概念的に示した模式図である。図6に示すように、ニューラルネットワーク90は、入力される画像データGAから特徴量(潜在変数)TAを抽出する符号化部としてのエンコーダ部91と、該特徴量TAから画像データGBを再構成する復号化部としてのデコーダ部92と有してなる畳み込みオートエンコーダ(CAE:Convolutional Auto-Encoder)の構造を有している。
畳み込みオートエンコーダの構造は公知のものであるため、詳しい説明は省略するが、エンコーダ部91は複数の畳み込み層(Convolution Layer) 93を有し、各畳み込み層93では、入力データに対し複数のフィルタ(カーネル)94を用いた畳み込み演算が行われた結果が次層の入力データとして出力される。同様に、デコーダ部92は複数の逆畳み込み層(Deconvolution Layer)95を有し、各逆畳み込み層95では、入力データに対し複数のフィルタ(カーネル)96を用いた逆畳み込み演算が行われた結果が次層の入力データとして出力される。そして、後述する学習処理では、各フィルタ94,96の重み(パラメータ)が更新されることとなる。
検査部78は、クリーニング後のメタルマスク20の開口部21に異物が付着しているか否かについて検査を行う機能部である。
搬送機構制御部79は、搬送機構31を駆動制御する機能部であり、メイン制御部71からの指令信号に基づき、メタルマスク20の位置を制御する。
記憶部57は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成され、例えばAIモデル100(ニューラルネットワーク90及びその学習により獲得した学習情報)を記憶する所定の記憶領域を有している。かかる記憶領域が本実施形態におけるモデル格納手段を構成する。
通信部58は、例えば有線LAN(Local Area Network)や無線LAN等の通信規格に準じた無線通信インターフェースなどを備え、外部と各種データを送受信可能に構成されている。例えば検査部78により行われた検査の結果などが通信部58を介して、クリーニング装置29などに対し送信される。かかる検査結果情報に基づき、クリーニング装置29が、メタルマスク20の不良判定された開口部21を重点的にクリーニングする構成としてもよい。
次に、メタルマスク検査装置30によって行われるニューラルネットワーク90の学習処理について図7のフローチャートを参照して説明する。
まず作業者は、未使用のメタルマスク20を用意する。ここで未使用のメタルマスク20に代えて、クリーニング済みで残留異物が付着していないことを確認したメタルマスク20を使用してもよい。
また、ここで用意するメタルマスク20としては、検査対象となるメタルマスク20と同形状の開口部21を有しているものであることが好ましい。但し、メタルマスク20の厚さや材質、開口部21の大きさや配置レイアウト等の同一性は必要なく、多様な種類の学習データを基に学習した方が汎用性の面においては好ましい。
そして、作業者は、メタルマスク検査装置30の所定の検査位置に未使用のメタルマスク20を配置した上で、メイン制御部71に所定の学習プログラムを実行させる。
所定の学習プログラムの実行に基づき、学習処理が開始されると、メイン制御部71は、はじめにステップS101において、ニューラルネットワーク90の学習を行うための前処理を行う。
具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、まず照明制御部72が照明装置32A(照明パネル32Aa)を点灯させる。続いて、メイン制御部71からの指令に基づき、カメラ制御部73がカメラ32Bを駆動させ、メタルマスク20の所定の検査範囲を撮像する。これにより、メタルマスク20の所定の検査範囲に係る画像データが取得される。ここで、カメラ32Bにより取得された画像データは、画像取得部74により取り込まれた後、画像処理部75において所定の画像処理(例えばシェーディング補正や傾き補正など)が施された上で、記憶部57に記憶される。
尚、上記一連の処理は、学習データとして必要な数の開口部21に係る画像データが取得されるまで、メタルマスク20上の検査範囲を移動しながら繰り返し行われる。
ステップS101において学習に必要な数の開口部21に係る画像データが取得されると、続くステップS102において、メイン制御部71からの指令に基づき、学習部77が、未学習のニューラルネットワーク90を準備する。例えば予め記憶部57等に格納されているニューラルネットワーク90を読み出す。又は、記憶部57等に格納されているネットワーク構成情報(例えばニューラルネットワークの層数や各層のノード数など)に基づいて、ニューラルネットワーク90を構築する。
ステップS103では、学習データとしての学習用画像データを取得する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、画像処理部75が、ステップS101において記憶部57に記憶された画像データを基に、該画像データに含まれる多数の開口部21の中から1つの開口部21を抽出し、該開口部21に係る画像データを1つの学習用画像データとして取得する。そして、この学習用画像データを学習部77へ出力する。つまり、異物の付着していない未使用のメタルマスク20の開口部21に係る画像データのみが学習データ(学習用画像データ)として用いられる。
ステップS104では、再構成画像データを取得する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、学習部77が、ステップS103において取得された学習用画像データを入力データとして、ニューラルネットワーク90の入力層に与え、これによりニューラルネットワーク90の出力層から出力される再構成画像データを取得する。
続くステップS105では、学習部77が、ステップS103において取得した学習用画像データと、ステップS104においてニューラルネットワーク90により出力された再構成画像データとを比較し、その誤差が十分に小さいか否か(所定の閾値以下であるか否か)を判定する。
ここで、その誤差が十分に小さい場合には、ニューラルネットワーク90及びその学習情報(後述する更新後のパラメータ等)をAIモデル100として記憶部57に格納し、本学習処理を終了する。
一方、その誤差が十分に小さくない場合には、ステップS106においてネットワーク更新処理(ニューラルネットワーク90の学習)を行った後、再びステップS103へ戻り、上記一連の処理を繰り返す。
具体的に、ステップS105のネットワーク更新処理では、例えば誤差逆伝播法(Backpropagation)などの公知の学習アルゴリズムを用いて、学習用画像データと再構成画像データの差分を表す損失関数が極力小さくなるように、ニューラルネットワーク90における上記各フィルタ94,96の重み(パラメータ)をより適切なものに更新する。尚、損失関数としては、例えばBCE(Binary Cross-entropy)などを利用することができる。
これらの処理を何度も繰り返すことにより、ニューラルネットワーク90では、学習用画像データと再構成画像データの誤差が極力小さくなり、より正確な再構成画像データが出力されるようになる。
次にメタルマスク20のクリーニング工程に関連する各種処理の流れについて説明する。本実施形態では、上述したプリント基板1の製造工程(製造ライン10)において、半田印刷機12にて半田印刷が所定回数行われる毎に、半田印刷を一旦停止させ、該半田印刷に使用したメタルマスク20をクリーニング装置29でクリーニングするよう構成されている。以下、半田印刷停止から、クリーニング後のメタルマスク20が半田印刷機12に戻されるまでの一連の流れを図8のフローチャートを参照して詳しく説明する。
半田印刷機12は、半田印刷を行ったプリント基板1の枚数が所定枚数を超えると、半田印刷動作を一旦停止し、メタルマスク20をクリーニングさせるべく、図示しないランプを点灯させる等して、その旨を作業者に報知する(ステップS201)。これを受けた作業者は、使用済のメタルマスク20を半田印刷機12から取外し、クリーニング装置29へ搬送する。
続いて、作業者は、この使用済のメタルマスク20をクリーニング装置29へ搬入させ、クリーニング処理を実行する(ステップS202)。クリーニング処理が終了すると、作業者は、クリーニング済のメタルマスク20をクリーニング装置29から搬出させ、メタルマスク検査装置30へ搬送する。かかるクリーニング処理を実行する工程により本実施形態におけるクリーニング工程が構成される。
そして、作業者は、クリーニング済のメタルマスク20をメタルマスク検査装置30へ搬入させ、メタルマスク検査処理を実行する(ステップS203)。メタルマスク検査処理の詳細については後述する。かかるメタルマスク検査処理の実行手順が本実施形態におけるスクリーンマスク検査方法を構成する。
メタルマスク検査装置30は、メタルマスク検査処理(ステップS203)によって、クリーニング不良であると判定(不合格判定)された場合には、クリーニング済のメタルマスク20を再びクリーニングさせるべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。
これを受けた作業者は、クリーニング不良のメタルマスク20をメタルマスク検査装置30から搬出させ、再びクリーニング装置29へ搬送する(ステップS204:YES)。かかる工程が本実施形態における再送工程に相当する。そして、作業者は、このクリーニング不良のメタルマスク20をクリーニング装置29へ搬入させ、再度、クリーニングを実行する(ステップS202)。
一方、メタルマスク検査装置30は、メタルマスク検査処理(ステップS203)によって、クリーニングが適切に行われたと判定(合格判定)された場合には、クリーニング済のメタルマスク20を半田印刷機12へ戻すべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。
これを受けた作業者は、クリーニング済のメタルマスク20をメタルマスク検査装置30から搬出させ、半田印刷機12へ搬送する(ステップS204:NO)。そして、作業者は、このクリーニング済のメタルマスク20を半田印刷機12に取付け、半田印刷工程を再開する準備を行う(ステップS205)。かかる工程が本実施形態における印刷準備工程に相当する。
ここで、メタルマスク検査装置30によって行われるメタルマスク検査処理について図9のフローチャートを参照して説明する。但し、図9に示す検査処理は、メタルマスク20の所定の検査範囲毎に実行される処理である。
メタルマスク検査装置30へメタルマスク20が搬入され、所定の検査位置に位置決めされると、所定の検査プログラムの実行に基づき、検査処理が開始される。
検査処理が開始されると、まずステップS301において、照明処理を実行する。具体的には、メイン制御部71が、図示しないセンサからの信号に基づき、メタルマスク20が上記検査位置に位置決めされたと判断すると、照明制御部72に対し所定の信号を出力する。これに基づき、照明制御部72は、照明装置32Aを点灯させる。これにより、メタルマスク20の下面全域に対し光が照射される。
続くステップS302では、撮像処理を実行する。かかる撮像処理を行う工程が本実施形態における撮像工程に相当する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、カメラ制御部73がカメラ32Bを駆動させる。これにより、メタルマスク20上の所定の検査範囲が撮像され、複数の開口部21を含んだエリア画像データが取得される。そして、このエリア画像データは、画像取得部74に取り込まれる。
ステップS303では、画像処理を実行する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、画像処理部75が、ステップS302にて画像取得部74に取り込まれたエリア画像データを基に、各開口部21に係る検査用画像データを生成する。
検査用画像データを生成する際には、まずエリア画像データに含まれる複数の開口部21すべてを特定し抽出する。続いて、これらを、それぞれ検査対象となる1つの開口部21に係る元画像データとして番号付けして登録する。かかる処理を実行する機能により本実施形態における元画像データ取得手段が構成される。
本処理では、例えば図10(a)に示すような異物の付着していない開口部21に係る元画像データや、図10(b)に示すような異物W1,W2の付着した開口部21に係る元画像データなどが取得されることとなる。
ステップS304では、再構成処理を実行する。本処理を実行する機能により本実施形態における再構成画像データ取得手段が構成される。
具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、検査部78が、ステップS303にて取得した所定番号(例えば001番)の開口部21に係る元画像データを、AIモデル100の入力層に入力する。そして、AIモデル100によって再構成されて出力層から出力される画像データを前記所定番号(例えば001番)の開口部21に係る再構成画像データとして取得すると共に、該再構成画像データを同一番号の元画像データと関連付けて記憶する。このようにして、本処理では、ステップS303において番号付けされ登録された全ての開口部21について再構成画像データが取得されることとなる。
ここで、AIモデル100は、図10(a)に示すような異物の付着していない開口部21に係る元画像データを入力した場合は勿論のこと、図10(b)に示すような異物W1,W2の付着した開口部21に係る元画像データを入力した場合であっても、上記のように学習したことにより、再構成画像データとして、図10(c)に示すような異物の付着していない開口部21に係る画像データを出力することとなる。
ステップS305では、良否判定処理を行う。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、検査部78が、まず同一番号の元画像データと再構成画像データとを比較して、両画像データの差分を抽出する。かかる処理を実行する機能により本実施形態における比較手段が構成される。
続いて、検査部78は、両画像データの差分に相当する画素の数を計数し、それが所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。ここで、両画像データの差分が所定の閾値よりも大きい場合には、「異物あり」と判定する。
一方、両画像データの差分に相当する画素数が所定の閾値よりも小さい場合には、「異物なし」と判定する。これらの判定を行う機能により本実施形態における判定手段が構成される。
ここで、検査部78は、エリア画像データ(メタルマスク20の所定の検査範囲)に含まれる全ての開口部21について「異物なし」と判定した場合には、該エリア画像データに係る検査範囲を「良」判定すると共に、この結果を記憶部57に記憶し、本処理を終了する。
一方、エリア画像データ(メタルマスク20の所定の検査範囲)に含まれる複数の開口部21のうち、「異物あり」と判定された開口部21が1つでも存在する場合には、該エリア画像データに係る検査範囲を「不良」判定し、この結果を記憶部57に記憶し、本処理を終了する。
そして、メタルマスク検査装置30は、メタルマスク20上の全ての検査範囲について上記検査処理が行われた結果、全検査範囲について「良」判定された場合には、クリーニングが適切に行われたと判定(合格判定)し、上述したように、クリーニング済のメタルマスク20を半田印刷機12へ戻すべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。
一方、メタルマスク検査装置30は、メタルマスク20上の全ての検査範囲のうち、「不良」判定された検査範囲が1つでも存在する場合には、クリーニング不良と判定(不合格判定)し、上述したように、クリーニング済のメタルマスク20を再びクリーニングさせるべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。従って、上記一連の処理を行う工程により本実施形態におけるクリーニング良否判定工程が構成される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、メタルマスク検査装置30を備え、半田印刷に使用したメタルマスク20のクリーニング後に、該メタルマスク20の開口部21の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行う構成となっている。そして、このメタルマスク検査において、メタルマスク20の開口部21の内壁部に異物が付着していると判定された場合には、メタルマスク20を再びクリーニングする構成となっている。
これにより、メタルマスク20のクリーニングを実行したにもかかわらず、該メタルマスク20の開口部21の内壁部に微小な残留異物(クリーム半田5やフラックス等の残留物)が付着したまま残り、該メタルマスク20が半田印刷にて再使用されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
結果として、メタルマスク20の開口部21の目詰まりの発生(印刷不良)や、電子部品25の不適正な半田付け(半田不足)など、半田抜けが悪くなった状態で半田印刷を続けた場合に生じ得る種々の不具合の発生を未然に抑制することができる。
特に本実施形態では、ニューラルネットワーク90を学習して構築したAIモデル100を用いて、メタルマスク20の開口部21に異物が付着しているか否かを判定しているため、従来のように、単純に画像データ上における開口部21又は異物の面積や形状、寸法などを比較する構成では検出することが困難であった微小な異物を検出することが可能となる。
さらに、本実施形態では、開口部21を撮像して得た元画像データと、その元画像データを基に再構成して得た再構成画像データとを比較しているため、比較する両画像データにおいて、検査対象物であるメタルマスク20側の撮像条件(例えばメタルマスク20の配置位置や配置角度、たわみ等)や、メタルマスク検査装置30側の撮像条件(例えば照明状態やカメラ32Bの画角等)の違いに基づく影響がなく、より微細な異物をより正確に検出することが可能となる。
尚、メタルマスク20上の所定位置にある所定の開口部21に係る検査を行う際に、良否判定基準として、該開口部21の構成情報(位置データや寸法データなど)を必要とする従来の構成においては、例えばガーバデータなど基板設計情報を予め記憶しておき、検査対象となる開口部21の構成情報を適宜取得し、該構成情報と比較しつつ検査対象となる開口部21の良否判定を行うこととなるため、検査効率が低下するおそれがある。また、メタルマスク20の検査位置への位置決めを正確に行う必要がある。
これに対し、本実施形態によれば、開口部21について学習したAIモデル100を利用して、各開口部21の検査を行う構成となっているため、多数の開口部21それぞれの個別の構成情報を予め記憶する必要もなく、検査に際しそれを参照する必要もないため、検査効率の向上を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)スクリーンマスクの構成は、上記実施形態に係るメタルマスク20に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(a−1)例えば上記実施形態に係るメタルマスク20は、マスク本体部20aとフレーム部20bとから構成されているが、これに限らず、フレーム部20bを省略した構成としてもよい。
(a−2)上記実施形態に係るマスク本体部20aは、金属材料(メタル)により形成されている。これに限らず、マスク本体部20aとして、例えばナイロン製、ポリエステル製、ステンレス製などの糸を織って形成された「紗(メッシュ)」上に感光性乳剤等を塗布して被覆部を形成し開口部21に相当する部分のみ「紗」が露出したタイプのものや、「紗(メッシュ)」上に、開口部21が形成されたメタル版を貼り付けた複合タイプのものを採用してもよい。
(b)製造ライン10など、プリント基板1の製造に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(b−1)上記実施形態では、半田印刷機12の近傍に、クリーニング装置29及びメタルマスク検査装置30を併設した構成となっている。これに限らず、クリーニング装置及び/又はメタルマスク検査装置の機能を、半田印刷機12又は半田印刷検査装置13と一体に備えた構成としてもよい。
(b−2)上記実施形態では、クリーニング工程を行う際に、半田印刷機12とクリーニング装置29の間、クリーニング装置29とメタルマスク検査装置30の間、及び、メタルマスク検査装置30と半田印刷機12の間におけるメタルマスク20の搬送作業を作業者が行う構成となっている。これに限らず、これらの各装置間に、メタルマスク20を搬送するためのコンベア等の搬送手段を配設し、搬送作業を自動化してもよい。つまり、製造ライン10と、クリーニング装置29及びメタルマスク検査装置30と組み合わせた製造システムを構築してもよい。
(c)メタルマスク検査装置30に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(c−1)上記実施形態では、半田印刷時にプリント基板1と当接するメタルマスク20の基板当接面側が下方に向くように、メタルマスク検査装置30に対しメタルマスク20がセットされるよう構成されている。これに限らず、メタルマスク20の基板当接面側が上方に向くように、メタルマスク検査装置30に対しメタルマスク20がセットされる構成としてもよい。
(c−2)上記実施形態では、半田印刷時にプリント基板1と当接するメタルマスク20の基板当接面側に照明装置32Aを配置し、半田印刷時にプリント基板1と当接しないメタルマスク20の基板非当接面側にカメラ32Bを配置した構成となっている。これに限らず、メタルマスク20の基板当接面側にカメラ32Bを配置し、メタルマスク20の基板非当接面側に照明装置32Aを配置した構成としてもよい。
(c−3)上記実施形態では、メタルマスク20の下方に照明装置32Aを配置し、メタルマスク20の上方にカメラ32Bを配置して、開口部21に係る検査を透過光検査により行う構成となっている。これに限らず、メタルマスク20の上方又は下方に、照明装置32A及びカメラ32Bをまとめて配置し、開口部21に係る検査を反射光検査により行う構成としてもよい。
(d)識別手段としてのAIモデル100(ニューラルネットワーク90)の構成及びその学習方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
(d―1)上記実施形態では、特に言及していないが、ニューラルネットワーク90の学習処理や、メタルマスク検査処理における再構成処理などを行う際に、必要に応じて各種データに対し正規化等の処理を行う構成としてもよい。
(d−2)ニューラルネットワーク90の構造は、図6に示したものに限定されず、例えば畳み込み層93の後にプーリング層を設けた構成としてもよい。勿論、ニューラルネットワーク90の層数や、各層のノード数、各ノードの接続構造などが異なる構成としてもよい。
(d−3)上記実施形態では、AIモデル100(ニューラルネットワーク90)が、畳み込みオートエンコーダ(CAE)の構造を有した生成モデルとなっているが、これに限らず、例えば変分自己符号化器(VAE:Variational Autoencoder) など、異なるタイプのオートエンコーダの構造を有した生成モデルとしてもよい。
(d―4)上記実施形態では、誤差逆伝播法によりニューラルネットワーク90を学習する構成となっているが、これに限らず、その他の種々の学習アルゴリズムを用いて学習する構成としてもよい。
(d―5)ニューラルネットワーク90は、いわゆるAIチップ等のAI処理専用回路によって構成されることとしてもよい。その場合、パラメータ等の学習情報のみが記憶部57に記憶され、これをAI処理専用回路が読み出して、ニューラルネットワーク90に設定することによって、AIモデル100が構成されるようにしてもよい。
(d―6)上記実施形態では、学習部77を備え、制御装置33内においてニューラルネットワーク90の学習を行う構成となっているが、これに限らず、少なくともAIモデル100(学習済みのニューラルネットワーク90)を記憶部57に記憶していればよく、学習部77を省略した構成としてもよい。従って、ニューラルネットワーク90の学習を制御装置33の外部で行い、これを記憶部57に記憶する構成としてもよい。
(e)メタルマスク検査処理における開口部21の検査方法は上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
例えば上記実施形態では、元画像データと再構成画像データとを比較して、両画像データの差分を抽出し、その差分に相当する画素の数を計数し、それが所定の閾値よりも大きいか否かを判定することにより、開口部21に異物が付着しているか否かを判定する構成となっている。
これに限らず、例えば両画像データにおける開口部21の内壁部に係る画像を比較する(例えば開口部21の内壁部平坦部の直線度合いや、内壁部コーナー部の湾曲度合い等を比較する)ことで、異物を検出可能な構成としてもよい。
1…プリント基板、3…ランド、5…クリーム半田、10…製造ライン、12…半田印刷機、20…メタルマスク、21…開口部、29…クリーニング装置、30…メタルマスク検査装置、32A…照明装置、32B…カメラ、33…制御装置、77…学習部、78…検査部、90…ニューラルネットワーク、100…AIモデル、W…異物。
本発明は、基板に対し半田印刷を行う際に使用するスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法及びスクリーンマスク検査装置に関するものである。
一般に、基板上に電子部品を実装する製造ラインにおいては、まず半田印刷機において、基板のランド上にスクリーン印刷によりクリーム半田が印刷される。次に、該クリーム半田の粘性に基づいて基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記基板がリフロー炉へ導かれることで半田付けが行われる。
半田印刷機には、予め印刷対象となる基板のランド配置に対応して多数の開口部が形成されたスクリーンマスクが備えられている。半田印刷に際しては、このスクリーンマスクを基板表面に当接させた状態で、その上にクリーム半田を供給してスキージを摺動させることにより、開口部内にクリーム半田を押し込む。その後、スクリーンマスクを基板から離間させることにより、開口部内に充填されたクリーム半田が版抜けし、ランド上に印刷(転写)される。
ところが、半田印刷工程が何度も行われている間に、スクリーンマスクの開口部にクリーム半田が付着して目詰まりを起こし、印刷不良が発生するおそれがあった。このため、従来では、半田印刷工程が所定回数行われる毎に、スクリーンマスクのクリーニングが行われている。
一方、半田印刷機において、スクリーンマスクの開口部をカメラで撮像し、該開口部の開口面積(開口部に付着したクリーム半田の量)を検査し、スクリーンマスクの交換や清掃の要否を報知する技術なども知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来では、半田印刷工程とクリーニング工程とを交互に何度も繰り返しているうちに、それに比例するように、スクリーンマスクの開口部からのクリーム半田の版抜けが悪くなり、ランド上に転写されるクリーム半田の量が減少する傾向が見られた。
ランド上に転写されるクリーム半田の量が減少すると、実装部品の半田付けが適正に行われず、不良品の発生率が高まるおそれがある。また、このように半田抜けが悪くなった状態で半田印刷工程を続けていると、当初想定した印刷回数よりも短い期間でスクリーンマスクの開口部が目詰まりを起こし、印刷不良も発生しやすくなる。
そのため、このように半田抜けが悪くなったスクリーンマスクを本願発明者が詳しく調べてみたところ、スクリーンマスクをクリーニングした直後においても、スクリーンマスクの開口部の内壁部に、作業者の目では確認できないような微小な残留異物(クリーム半田やフラックス等の残留物)が付着したまま残り、半田印刷時の半田抜けの悪さに影響していることが分かった。
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニング後のスクリーンマスクを検査することにより、不良品の発生を抑制することのできるスクリーンマスク検査方法及びスクリーンマスク検査装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
手段1.基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査方法であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射する照射工程と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により取得された画像データを基に、前記開口部に係る元画像データを取得する元画像データ取得工程と、
入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部(エンコーダ)と該特徴量から画像データを再構成する復号化部(デコーダ)とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段(生成モデル)へ前記元画像データを入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得する再構成画像データ取得工程と、
前記元画像データと再構成画像データとを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定する判定工程とを備えていることを特徴とするスクリーンマスク検査方法。
尚、以下の手段においても同様であるが、上記「ニューラルネットワーク」には、例えば複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワークなどが含まれる。また、上記「学習」には、例えば深層学習(ディープラーニング)などが含まれる。上記「識別手段(生成モデル)」には、例えばオートエンコーダ(自己符号化器)や、畳み込みオートエンコーダ(畳み込み自己符号化器)などが含まれる。
上記手段1によれば、半田印刷に使用したスクリーンマスクのクリーニング後に、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行うことができる。結果として、スクリーンマスクのクリーニングを実行したにもかかわらず、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に微小な残留異物(半田やフラックス等の残留物)が付着したまま残り、該スクリーンマスクが半田印刷にて再使用されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
結果として、スクリーンマスクの開口部の目詰まりの発生(印刷不良)や、実装部品の不適正な半田付け(半田不足)など、半田抜けが悪くなった状態で半田印刷を続けた場合に生じ得る種々の不具合の発生を未然に抑制することができる。
特に本手段では、ニューラルネットワークを学習して構築した自己符号化器等の識別手段(生成モデル)を用いて、スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定しているため、従来のように、単純に画像データ上における開口部又は異物の面積や形状、寸法などを比較する構成では検出することが困難であった微小な異物を検出することが可能となる。例えば、従来の検出技術では、開口部の内壁部に薄く広がるように付着した異物は、スクリーンマスクの法線方向に視た面積、すなわち画像データ上における面積が非常に小さく検出することが困難であった。
さらに、本手段では、撮像して得た元画像データと、その元画像データを基に再構成して得た再構成画像データとを比較しているため、比較する両画像データにおいて、検査対象物であるスクリーンマスク側の撮像条件(例えばスクリーンマスクの配置位置や配置角度、たわみ等)や、検査装置側の撮像条件(例えば照明状態やカメラの画角等)の違いに基づく影響がなく、より微細な異物をより正確に検出することが可能となる。
尚、上記特許文献1等のように、スクリーンマスク上の所定位置にある所定の開口部に係る検査を行う際に、良否判定基準として、該開口部の構成情報(位置データや寸法データなど)を必要とする構成においては、例えばガーバデータなど基板設計情報を予め記憶しておき、検査対象となる開口部の構成情報を適宜取得し、該構成情報と比較しつつ検査対象となる開口部の良否判定を行うこととなるため、検査効率が低下するおそれがある。また、スクリーンマスクの検査位置への位置決めを正確に行う必要がある。
これに対し、本手段によれば、自己符号化器等の識別手段を利用して、各開口部の検査を行う構成となっているため、多数の開口部それぞれの個別の構成情報を予め記憶する必要もなく、検査に際しそれを参照する必要もないため、検査効率の向上を図ることができる。
また、半田印刷工程の終了後に、スクリーンマスクの開口部の目詰まり検査を行う構成とした場合には、印刷開始前に目詰まりのない状態のスクリーンマスクの開口部を撮像して基準データとして記憶しておくことも考えられる。ところが、この際、かかるスクリーンマスクが、未使用のものでなく、クリーニングによって目詰まりのない状態にされたものである場合には、クリーニングで洗い流されずに残った残留異物も基準データに含まれてしまうため、半田印刷工程の終了後の目詰まり検査においても残留異物を検出することができなくなるおそれがある。
かかる点において、本手段のように、半田印刷を開始する前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査する構成がより奏功することとなる。
手段2.前記比較工程においては、
前記元画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像と、前記再構成画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像とを比較することを特徴とする手段1に記載のスクリーンマスク検査方法。
上記手段2のように、両画像データにおける開口部の内壁部に係る画像を比較する構成(例えば開口部の内壁部平坦部の直線度合いや、内壁部コーナー部の湾曲度合い等を比較する構成)とすることで、例えば開口部又は異物の面積や形状、寸法などを単純に比較する構成に比べて、より微細な異物をより正確に検出することが可能となる。
手段3.基板に対し半田印刷を行う前に、クリーニングしたスクリーンマスクを検査するためのスクリーンマスク検査装置であって、
前記スクリーンマスクの開口部に対し所定の光を照射可能な照射手段と、
前記光が照射された前記スクリーンマスクの開口部を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された画像データを基に、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に係る検査を実行可能な画像処理手段とを備え、
前記画像処理手段は、
入力される画像データから特徴量を抽出する符号化部(エンコーダ)と該特徴量から画像データを再構成する復号化部(デコーダ)とを有するニューラルネットワークに対し、異物の付着していない前記開口部の画像データのみを学習データとして学習させて生成した識別手段(生成モデル)と、
前記クリーニングしたスクリーンマスクの開口部を前記撮像手段により撮像した前記開口部に係る元画像データを取得可能な元画像データ取得手段と、
前記元画像データを前記識別手段へ入力して再構成された前記開口部に係る再構成画像データを取得可能な再構成画像データ取得手段と、
前記元画像データと再構成画像データとを比較可能な比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、前記スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かを判定可能な判定手段とを備えていることを特徴とするスクリーンマスク検査装置。
上記手段3によれば、半田印刷に使用したスクリーンマスクのクリーニング後に、該スクリーンマスクの開口部の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行うことができる。結果として、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
尚、本手段においては特に言及していないが、半田印刷時において基板と当接するスクリーンマスクの当接面側に照射手段を配置し、かつ、基板と当接しないスクリーンマスクの非当接面側に撮像手段を配置して、照射手段から照射された光のうちスクリーンマスクの開口部を透過した光を撮像手段により撮像する構成とすることが好ましい。
但し、基板と当接するスクリーンマスクの当接面側、又は基板と当接しないスクリーンマスクの非当接面側にまとめて前記照射手段及び前記撮像手段を配置して、照射手段から照射された光のうち、前記開口部を含む前記スクリーンマスクから反射した光を撮像手段により撮像する構成を排除するものではなく、かかる構成で実施してもよい。
勿論、前記スクリーンマスクの当接面側(又は非当接面側)が上向き又は下向きのどちら向きに配置された状態で検査が行われることとしてもよい。
手段4.前記比較手段は、
前記元画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像と、前記再構成画像データにおける前記開口部の内壁部に係る画像とを比較することを特徴とする手段4に記載のスクリーンマスク検査装置。
上記手段4によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏される。
プリント基板の一部を拡大した部分拡大平面図である。
プリント基板の製造ラインの構成を示すブロック図である。
半田印刷機による印刷動作を説明するための模式図である。
メタルマスク検査装置を模式的に示す概略構成図である。
メタルマスク検査装置の機能構成を示すブロック図である。
ニューラルネットワークの構造を説明するための模式図である。
ニューラルネットワークの学習処理の流れを示すフローチャートである。
クリーニング工程に係る各種処理の流れを示すフローチャートである。
検査処理の流れを示すフローチャートである。
(a)は異物の付着していない開口部に係る元画像データを示す図であり、(b)は異物の付着した開口部に係る元画像データを示す図であり、(c)は異物の付着した開口部に係る元画像データを再構成した再構成画像データを示す図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。まず半田を印刷して部品を実装する基板の構成について説明する。図1は、基板としてのプリント基板の一部を拡大した部分拡大平面図である。
図1に示すように、プリント基板1は、ガラスエポキシ樹脂等からなる平板状のベース基板2の表面に、銅箔からなる配線パターン(図示略)や複数のランド3が形成されたものである。また、ベース基板2の表面には、ランド3を除く部分にレジスト膜4がコーティングされている。そして、図1,3に示すように、ランド3上には、粘性を有するクリーム半田5が印刷される。尚、図1,3では、便宜上、クリーム半田5を示す部分に散点模様が付されている。
次にプリント基板1を製造する製造ライン(製造工程)について図2を参照して説明する。図2は、プリント基板1の製造ライン10の構成を示すブロック図である。本実施形態における製造ライン10では、その正面側から見て、左から右へプリント基板1が搬送されるように設定されている。
図2に示すように、製造ライン10には、その上流側(図2左側)から順に、半田印刷機12、半田印刷検査装置13、部品実装機14及びリフロー装置15が設置されている。
半田印刷機12は、プリント基板1のランド3上にクリーム半田5を印刷する半田印刷工程を行うためのものであり、本実施形態における半田印刷手段を構成する。
図3に示すように、半田印刷機12は、プリント基板1上の各ランド3に対応して複数の開口部21が形成された平板状のメタルマスク20と、該メタルマスク20の上面に沿って摺動するスキージ22とを備えている。
尚、本実施形態におけるメタルマスク20(図4参照)は、前記複数の開口部21が形成された矩形薄板状の金属製のマスク本体部20aと、該マスク本体部20aの周縁部四辺を保持する矩形枠状の金属製のフレーム部20bとから構成されている。薄板状のマスク本体部20aを引張状態で剛性の高いフレーム部20bに保持させることにより、マスク本体部20aの撓み等を抑制することができる。
上記構成の下、半田印刷工程においては、まずプリント基板1の表面側にメタルマスク20を位置合わせして当接させる。次にメタルマスク20の上面にクリーム半田5を供給する。続いて、スキージ22をメタルマスク20の上面に沿って摺動させ、開口部21内にクリーム半田5を押し込む。
その後、メタルマスク20をプリント基板1から離間させることにより、開口部21内に充填されたクリーム半田5が版抜けし、ランド3上に印刷(転写)され、半田印刷が完了する。
半田印刷検査装置13は、上記のように印刷されたクリーム半田5の状態(例えば印刷位置、高さ、量等)を検査する半田印刷検査工程を行うためのものである。
部品実装機14は、クリーム半田5が印刷されたランド3上に電子部品25(図1参照)を搭載する部品実装工程を行うためのものである。電子部品25は、複数の電極やリードを備えており、該各電極やリードがそれぞれ所定のクリーム半田5に対し仮止めされる。
リフロー装置15は、クリーム半田5を加熱溶融させて、ランド3と、電子部品25の電極やリードとを半田接合(半田付け)するリフロー工程を行うためのものである。
この他、図示は省略するが、製造ライン10には、半田印刷機12と半田印刷検査装置13との間など、上記各装置間において、プリント基板1を移送するためのコンベア等が設けられている。また、半田印刷検査装置13と部品実装機14との間には分岐装置が設けられている。そして、半田印刷検査装置13にて良品判定されたプリント基板1は、その下流側の部品実装機14へ案内される一方、不良品判定されたプリント基板1は分岐装置により不良品貯留部へと排出されることとなる。
さらに、半田印刷機12の近傍には、クリーニング手段としてのクリーニング装置29、及び、スクリーンマスク検査装置としてのメタルマスク検査装置30が併設されている。
クリーニング装置29は、半田印刷機12において汚れ等が付着したスクリーンマスクとしてのメタルマスク20をクリーニングするクリーニング工程を行うためのものである。
メタルマスク検査装置30は、クリーニング装置29においてクリーニングを終えたメタルマスク20について、適切にクリーニングが行われたか否かを検査するためのものである。
ここで、メタルマスク検査装置30の構成について図4,5を参照して詳しく説明する。図4は、メタルマスク検査装置30を模式的に示す概略構成図である。図5は、メタルマスク検査装置30の機能構成を示すブロック図である。
メタルマスク検査装置30は、メタルマスク20の搬送や位置決め等を行う搬送機構31と、メタルマスク20の検査を行うための検査ユニット32と、搬送機構31や検査ユニット32の駆動制御をはじめ、メタルマスク検査装置30内における各種制御や画像処理、演算処理を実行する制御装置33とを備えている。制御装置33が本実施形態に係る画像処理手段を構成する。
搬送機構31は、メタルマスク20の搬入出方向に沿って配置された一対の搬送レール31aと、各搬送レール31aに対し回転可能に配設された無端のコンベアベルト31bと、該コンベアベルト31bを駆動するモータ等の駆動手段(図示略)と、メタルマスク20を所定位置に位置決めするためのチャック機構(図示略)と備え、制御装置33(後述する搬送機構制御部79)により駆動制御される。
上記構成の下、メタルマスク検査装置30へ搬入されたメタルマスク20は、搬入出方向と直交する幅方向の両側縁部のフレーム部20bがそれぞれ搬送レール31aに挿し込まれると共に、コンベアベルト31b上に載置される。続いて、コンベアベルト31bが動作を開始し、メタルマスク20が所定の検査位置まで搬送される。メタルマスク20が検査位置に達すると、コンベアベルト31bが停止すると共に、チャック機構が作動する。このチャック機構の動作により、コンベアベルト31bが押し上げられ、コンベアベルト31bと搬送レール31aの上辺部によってメタルマスク20の両側縁部のフレーム部20bが挟持された状態となる。これにより、メタルマスク20が検査位置に位置決め固定される。検査が終了すると、チャック機構による固定が解除されると共に、コンベアベルト31bが動作を開始する。これにより、メタルマスク20は、メタルマスク検査装置30から搬出される。勿論、搬送機構31の構成は、上記形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
検査ユニット32は、搬送レール31a(メタルマスク20の搬送路)の下方に配設された照射手段としての照明装置32Aと、搬送レール31aの上方に配設された撮像手段としてのカメラ32Bと、X軸方向(図4左右方向)へカメラ32Bの移動を可能とするX軸移動機構32D(図5参照)と、Y軸方向(図4前後方向)へカメラ32Bの移動を可能とするY軸移動機構32E(図5参照)とを備え、制御装置33(後述する移動機構制御部76)により駆動制御される。
尚、メタルマスク20の「検査範囲」は、カメラ32Bの撮像視野(撮像範囲)の大きさを1単位としてメタルマスク20に予め設定された複数のエリアのうちの1つのエリアである。
制御装置33(移動機構制御部76)は、X軸移動機構32D及びY軸移動機構32Eを駆動制御することにより、カメラ32Bを、検査位置に位置決め固定されたメタルマスク20の任意の検査範囲へ移動することができる。そして、メタルマスク20に設定された複数の検査範囲にカメラ32Bを順次移動させつつ、該検査範囲に係る検査を実行していくことで、メタルマスク20全域の検査を実行する構成となっている。
照明装置32Aは、所定の光を発する照明パネル32Aaと、該照明パネル32Aaから出射された光を拡散させ均一化する拡散板(プリズムフィルム等を含む)32Abを備え、制御装置33(後述する照明制御部72)により駆動制御される。
照明パネル32Aaは、複数のLED(発光ダイオード)が基板上にマトリクス状に実装されたLED基板により構成され、そのLED実装面がZ軸方向上向き(図4の上下方向上向き)となるように配置されている。そして、照明パネル32Aaから出射された光は、拡散板32Abを通して拡散され、メタルマスク20の下面全域に対し略均一に照射される。
尚、本実施形態では、半田印刷時にプリント基板1と当接するメタルマスク20の当接面側が、メタルマスク検査装置30においては下方に向くように、メタルマスク検査装置30に対しメタルマスク20がセットされる。
カメラ32Bは、メタルマスク20を介して照明装置32Aとは反対側に配置されている。本実施形態では、メタルマスク20の上方に配置され、メタルマスク20の所定の検査範囲を真上から撮像する。
カメラ32Bは、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子と、該撮像素子に対しメタルマスク20の開口部21の像を結像させる光学系(レンズユニットや絞りなど)とを有している。勿論、撮像素子は、これらに限定されるものではなく、他の撮像素子を採用してもよい。
カメラ32Bは、制御装置33(後述するカメラ制御部73)により駆動制御される。より詳しくは、制御装置33は、照明装置32Aによる照射処理と同期をとりながら、カメラ32Bによる撮像処理を実行する。これにより、照明装置32Aから照射された光のうち、メタルマスク20の開口部21を透過した光が、カメラ32Bによって撮像され、画像データが生成されることとなる。
このようにカメラ32Bによって撮像され生成された画像データは、該カメラ32Bの内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置33(後述の画像取得部74)に転送され記憶される。そして、制御装置33(後述する画像処理部75等)は、該画像データを基に、後述する各種画像処理や演算処理等を実施する。
制御装置33は、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、各種プログラムや固定値データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、各種演算処理の実行に際して各種データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)及びこれらの周辺回路等を含んだコンピュータからなる。
そして、制御装置33は、CPUが各種プログラムに従って動作することで、後述するメイン制御部71、照明制御部72、カメラ制御部73、画像取得部74、画像処理部75、移動機構制御部76、学習部77、検査部78、搬送機構制御部79などの各種機能部として機能する。
但し、上記各種機能部は、上記CPU、ROM、RAMなどの各種ハードウェアが協働することで実現されるものであり、ハード的又はソフト的に実現される機能を明確に区別する必要はなく、これらの機能の一部又は全てがICなどのハードウェア回路により実現されてもよい。
さらに、制御装置33には、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される入力部55、液晶ディスプレイなどの表示画面を有する表示部56と、各種データやプログラム、演算結果等を記憶可能な記憶部57、外部と各種データを送受信可能な通信部58などが設けられている。
ここで、制御装置33を構成する上記各種機能部について詳しく説明する。メイン制御部71は、メタルマスク検査装置30全体の制御を司る機能部であり、照明制御部72やカメラ制御部73など他の機能部と各種信号を送受信可能に構成されている。
照明制御部72は、照明装置32Aを駆動制御する機能部であり、本実施形態における照射制御手段を構成する。
カメラ制御部73は、カメラ32Bを駆動制御する機能部であり、メイン制御部71からの指令信号に基づき撮像タイミングなどを制御する。
画像取得部74は、カメラ32Bにより撮像され取得された画像データを取り込むための機能部である。
画像処理部75は、画像取得部74により取り込まれた画像データに所定の画像処理を行う機能部である。例えば、後述する学習処理においては、ディープニューラルネットワーク90(以下、単に「ニューラルネットワーク90」という。図6参照。)の学習に用いる学習データとなる学習用画像データを生成する。また、後述する検査処理を行う際に用いる検査用画像データを生成する。尚、学習処理に用いられる学習用画像データの撮影条件と、検査処理に用いられる検査用画像データの撮影条件とが、できる限り一致することが好ましい。
移動機構制御部76は、X軸移動機構32D及びY軸移動機構32Eを駆動制御する機能部であり、メイン制御部71からの指令信号に基づき、カメラ32Bの位置を制御する。
学習部77は、学習データ等を用いてニューラルネットワーク90の学習を行い、識別手段としてのAI(Artificial Intelligence)モデル100を構築する機能部である。
尚、本実施形態におけるAIモデル100は、後述するように異物の付着していない未使用のメタルマスク20の開口部21に係る画像データのみを学習データ(学習用画像データ)として、ニューラルネットワーク90を深層学習(ディープラーニング)させて構築した生成モデルであり、いわゆるオートエンコーダ(自己符号化器)の構造を有する。
ここで、ニューラルネットワーク90の構造について図6を参照して説明する。図6は、ニューラルネットワーク90の構造を概念的に示した模式図である。図6に示すように、ニューラルネットワーク90は、入力される画像データGAから特徴量(潜在変数)TAを抽出する符号化部としてのエンコーダ部91と、該特徴量TAから画像データGBを再構成する復号化部としてのデコーダ部92と有してなる畳み込みオートエンコーダ(CAE:Convolutional Auto-Encoder)の構造を有している。
畳み込みオートエンコーダの構造は公知のものであるため、詳しい説明は省略するが、エンコーダ部91は複数の畳み込み層(Convolution Layer) 93を有し、各畳み込み層93では、入力データに対し複数のフィルタ(カーネル)94を用いた畳み込み演算が行われた結果が次層の入力データとして出力される。同様に、デコーダ部92は複数の逆畳み込み層(Deconvolution Layer)95を有し、各逆畳み込み層95では、入力データに対し複数のフィルタ(カーネル)96を用いた逆畳み込み演算が行われた結果が次層の入力データとして出力される。そして、後述する学習処理では、各フィルタ94,96の重み(パラメータ)が更新されることとなる。
検査部78は、クリーニング後のメタルマスク20の開口部21に異物が付着しているか否かについて検査を行う機能部である。
搬送機構制御部79は、搬送機構31を駆動制御する機能部であり、メイン制御部71からの指令信号に基づき、メタルマスク20の位置を制御する。
記憶部57は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成され、例えばAIモデル100(ニューラルネットワーク90及びその学習により獲得した学習情報)を記憶する所定の記憶領域を有している。かかる記憶領域が本実施形態におけるモデル格納手段を構成する。
通信部58は、例えば有線LAN(Local Area Network)や無線LAN等の通信規格に準じた無線通信インターフェースなどを備え、外部と各種データを送受信可能に構成されている。例えば検査部78により行われた検査の結果などが通信部58を介して、クリーニング装置29などに対し送信される。かかる検査結果情報に基づき、クリーニング装置29が、メタルマスク20の不良判定された開口部21を重点的にクリーニングする構成としてもよい。
次に、メタルマスク検査装置30によって行われるニューラルネットワーク90の学習処理について図7のフローチャートを参照して説明する。
まず作業者は、未使用のメタルマスク20を用意する。ここで未使用のメタルマスク20に代えて、クリーニング済みで残留異物が付着していないことを確認したメタルマスク20を使用してもよい。
また、ここで用意するメタルマスク20としては、検査対象となるメタルマスク20と同形状の開口部21を有しているものであることが好ましい。但し、メタルマスク20の厚さや材質、開口部21の大きさや配置レイアウト等の同一性は必要なく、多様な種類の学習データを基に学習した方が汎用性の面においては好ましい。
そして、作業者は、メタルマスク検査装置30の所定の検査位置に未使用のメタルマスク20を配置した上で、メイン制御部71に所定の学習プログラムを実行させる。
所定の学習プログラムの実行に基づき、学習処理が開始されると、メイン制御部71は、はじめにステップS101において、ニューラルネットワーク90の学習を行うための前処理を行う。
具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、まず照明制御部72が照明装置32A(照明パネル32Aa)を点灯させる。続いて、メイン制御部71からの指令に基づき、カメラ制御部73がカメラ32Bを駆動させ、メタルマスク20の所定の検査範囲を撮像する。これにより、メタルマスク20の所定の検査範囲に係る画像データが取得される。ここで、カメラ32Bにより取得された画像データは、画像取得部74により取り込まれた後、画像処理部75において所定の画像処理(例えばシェーディング補正や傾き補正など)が施された上で、記憶部57に記憶される。
尚、上記一連の処理は、学習データとして必要な数の開口部21に係る画像データが取得されるまで、メタルマスク20上の検査範囲を移動しながら繰り返し行われる。
ステップS101において学習に必要な数の開口部21に係る画像データが取得されると、続くステップS102において、メイン制御部71からの指令に基づき、学習部77が、未学習のニューラルネットワーク90を準備する。例えば予め記憶部57等に格納されているニューラルネットワーク90を読み出す。又は、記憶部57等に格納されているネットワーク構成情報(例えばニューラルネットワークの層数や各層のノード数など)に基づいて、ニューラルネットワーク90を構築する。
ステップS103では、学習データとしての学習用画像データを取得する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、画像処理部75が、ステップS101において記憶部57に記憶された画像データを基に、該画像データに含まれる多数の開口部21の中から1つの開口部21を抽出し、該開口部21に係る画像データを1つの学習用画像データとして取得する。そして、この学習用画像データを学習部77へ出力する。つまり、異物の付着していない未使用のメタルマスク20の開口部21に係る画像データのみが学習データ(学習用画像データ)として用いられる。
ステップS104では、再構成画像データを取得する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、学習部77が、ステップS103において取得された学習用画像データを入力データとして、ニューラルネットワーク90の入力層に与え、これによりニューラルネットワーク90の出力層から出力される再構成画像データを取得する。
続くステップS105では、学習部77が、ステップS103において取得した学習用画像データと、ステップS104においてニューラルネットワーク90により出力された再構成画像データとを比較し、その誤差が十分に小さいか否か(所定の閾値以下であるか否か)を判定する。
ここで、その誤差が十分に小さい場合には、ニューラルネットワーク90及びその学習情報(後述する更新後のパラメータ等)をAIモデル100として記憶部57に格納し、本学習処理を終了する。
一方、その誤差が十分に小さくない場合には、ステップS106においてネットワーク更新処理(ニューラルネットワーク90の学習)を行った後、再びステップS103へ戻り、上記一連の処理を繰り返す。
具体的に、ステップS105のネットワーク更新処理では、例えば誤差逆伝播法(Backpropagation)などの公知の学習アルゴリズムを用いて、学習用画像データと再構成画像データの差分を表す損失関数が極力小さくなるように、ニューラルネットワーク90における上記各フィルタ94,96の重み(パラメータ)をより適切なものに更新する。尚、損失関数としては、例えばBCE(Binary Cross-entropy)などを利用することができる。
これらの処理を何度も繰り返すことにより、ニューラルネットワーク90では、学習用画像データと再構成画像データの誤差が極力小さくなり、より正確な再構成画像データが出力されるようになる。
次にメタルマスク20のクリーニング工程に関連する各種処理の流れについて説明する。本実施形態では、上述したプリント基板1の製造工程(製造ライン10)において、半田印刷機12にて半田印刷が所定回数行われる毎に、半田印刷を一旦停止させ、該半田印刷に使用したメタルマスク20をクリーニング装置29でクリーニングするよう構成されている。以下、半田印刷停止から、クリーニング後のメタルマスク20が半田印刷機12に戻されるまでの一連の流れを図8のフローチャートを参照して詳しく説明する。
半田印刷機12は、半田印刷を行ったプリント基板1の枚数が所定枚数を超えると、半田印刷動作を一旦停止し、メタルマスク20をクリーニングさせるべく、図示しないランプを点灯させる等して、その旨を作業者に報知する(ステップS201)。これを受けた作業者は、使用済のメタルマスク20を半田印刷機12から取外し、クリーニング装置29へ搬送する。
続いて、作業者は、この使用済のメタルマスク20をクリーニング装置29へ搬入させ、クリーニング処理を実行する(ステップS202)。クリーニング処理が終了すると、作業者は、クリーニング済のメタルマスク20をクリーニング装置29から搬出させ、メタルマスク検査装置30へ搬送する。かかるクリーニング処理を実行する工程により本実施形態におけるクリーニング工程が構成される。
そして、作業者は、クリーニング済のメタルマスク20をメタルマスク検査装置30へ搬入させ、メタルマスク検査処理を実行する(ステップS203)。メタルマスク検査処理の詳細については後述する。かかるメタルマスク検査処理の実行手順が本実施形態におけるスクリーンマスク検査方法を構成する。
メタルマスク検査装置30は、メタルマスク検査処理(ステップS203)によって、クリーニング不良であると判定(不合格判定)された場合には、クリーニング済のメタルマスク20を再びクリーニングさせるべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。
これを受けた作業者は、クリーニング不良のメタルマスク20をメタルマスク検査装置30から搬出させ、再びクリーニング装置29へ搬送する(ステップS204:YES)。かかる工程が本実施形態における再送工程に相当する。そして、作業者は、このクリーニング不良のメタルマスク20をクリーニング装置29へ搬入させ、再度、クリーニングを実行する(ステップS202)。
一方、メタルマスク検査装置30は、メタルマスク検査処理(ステップS203)によって、クリーニングが適切に行われたと判定(合格判定)された場合には、クリーニング済のメタルマスク20を半田印刷機12へ戻すべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。
これを受けた作業者は、クリーニング済のメタルマスク20をメタルマスク検査装置30から搬出させ、半田印刷機12へ搬送する(ステップS204:NO)。そして、作業者は、このクリーニング済のメタルマスク20を半田印刷機12に取付け、半田印刷工程を再開する準備を行う(ステップS205)。かかる工程が本実施形態における印刷準備工程に相当する。
ここで、メタルマスク検査装置30によって行われるメタルマスク検査処理について図9のフローチャートを参照して説明する。但し、図9に示す検査処理は、メタルマスク20の所定の検査範囲毎に実行される処理である。
メタルマスク検査装置30へメタルマスク20が搬入され、所定の検査位置に位置決めされると、所定の検査プログラムの実行に基づき、検査処理が開始される。
検査処理が開始されると、まずステップS301において、照明処理を実行する。具体的には、メイン制御部71が、図示しないセンサからの信号に基づき、メタルマスク20が上記検査位置に位置決めされたと判断すると、照明制御部72に対し所定の信号を出力する。これに基づき、照明制御部72は、照明装置32Aを点灯させる。これにより、メタルマスク20の下面全域に対し光が照射される。
続くステップS302では、撮像処理を実行する。かかる撮像処理を行う工程が本実施形態における撮像工程に相当する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、カメラ制御部73がカメラ32Bを駆動させる。これにより、メタルマスク20上の所定の検査範囲が撮像され、複数の開口部21を含んだエリア画像データが取得される。そして、このエリア画像データは、画像取得部74に取り込まれる。
ステップS303では、画像処理を実行する。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、画像処理部75が、ステップS302にて画像取得部74に取り込まれたエリア画像データを基に、各開口部21に係る検査用画像データを生成する。
検査用画像データを生成する際には、まずエリア画像データに含まれる複数の開口部21すべてを特定し抽出する。続いて、これらを、それぞれ検査対象となる1つの開口部21に係る元画像データとして番号付けして登録する。かかる処理を実行する機能により本実施形態における元画像データ取得手段が構成される。
本処理では、例えば図10(a)に示すような異物の付着していない開口部21に係る元画像データや、図10(b)に示すような異物W1,W2の付着した開口部21に係る元画像データなどが取得されることとなる。
ステップS304では、再構成処理を実行する。本処理を実行する機能により本実施形態における再構成画像データ取得手段が構成される。
具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、検査部78が、ステップS303にて取得した所定番号(例えば001番)の開口部21に係る元画像データを、AIモデル100の入力層に入力する。そして、AIモデル100によって再構成されて出力層から出力される画像データを前記所定番号(例えば001番)の開口部21に係る再構成画像データとして取得すると共に、該再構成画像データを同一番号の元画像データと関連付けて記憶する。このようにして、本処理では、ステップS303において番号付けされ登録された全ての開口部21について再構成画像データが取得されることとなる。
ここで、AIモデル100は、図10(a)に示すような異物の付着していない開口部21に係る元画像データを入力した場合は勿論のこと、図10(b)に示すような異物W1,W2の付着した開口部21に係る元画像データを入力した場合であっても、上記のように学習したことにより、再構成画像データとして、図10(c)に示すような異物の付着していない開口部21に係る画像データを出力することとなる。
ステップS305では、良否判定処理を行う。具体的には、メイン制御部71からの指令に基づき、検査部78が、まず同一番号の元画像データと再構成画像データとを比較して、両画像データの差分を抽出する。かかる処理を実行する機能により本実施形態における比較手段が構成される。
続いて、検査部78は、両画像データの差分に相当する画素の数を計数し、それが所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。ここで、両画像データの差分が所定の閾値よりも大きい場合には、「異物あり」と判定する。
一方、両画像データの差分に相当する画素数が所定の閾値よりも小さい場合には、「異物なし」と判定する。これらの判定を行う機能により本実施形態における判定手段が構成される。
ここで、検査部78は、エリア画像データ(メタルマスク20の所定の検査範囲)に含まれる全ての開口部21について「異物なし」と判定した場合には、該エリア画像データに係る検査範囲を「良」判定すると共に、この結果を記憶部57に記憶し、本処理を終了する。
一方、エリア画像データ(メタルマスク20の所定の検査範囲)に含まれる複数の開口部21のうち、「異物あり」と判定された開口部21が1つでも存在する場合には、該エリア画像データに係る検査範囲を「不良」判定し、この結果を記憶部57に記憶し、本処理を終了する。
そして、メタルマスク検査装置30は、メタルマスク20上の全ての検査範囲について上記検査処理が行われた結果、全検査範囲について「良」判定された場合には、クリーニングが適切に行われたと判定(合格判定)し、上述したように、クリーニング済のメタルマスク20を半田印刷機12へ戻すべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。
一方、メタルマスク検査装置30は、メタルマスク20上の全ての検査範囲のうち、「不良」判定された検査範囲が1つでも存在する場合には、クリーニング不良と判定(不合格判定)し、上述したように、クリーニング済のメタルマスク20を再びクリーニングさせるべく、表示部56や通信部58などを介して、その旨を作業者に報知する。従って、上記一連の処理を行う工程により本実施形態におけるクリーニング良否判定工程が構成される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、メタルマスク検査装置30を備え、半田印刷に使用したメタルマスク20のクリーニング後に、該メタルマスク20の開口部21の内壁部に異物が付着しているか否かについて検査を行う構成となっている。そして、このメタルマスク検査において、メタルマスク20の開口部21の内壁部に異物が付着していると判定された場合には、メタルマスク20を再びクリーニングする構成となっている。
これにより、メタルマスク20のクリーニングを実行したにもかかわらず、該メタルマスク20の開口部21の内壁部に微小な残留異物(クリーム半田5やフラックス等の残留物)が付着したまま残り、該メタルマスク20が半田印刷にて再使用されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
結果として、メタルマスク20の開口部21の目詰まりの発生(印刷不良)や、電子部品25の不適正な半田付け(半田不足)など、半田抜けが悪くなった状態で半田印刷を続けた場合に生じ得る種々の不具合の発生を未然に抑制することができる。
特に本実施形態では、ニューラルネットワーク90を学習して構築したAIモデル100を用いて、メタルマスク20の開口部21に異物が付着しているか否かを判定しているため、従来のように、単純に画像データ上における開口部21又は異物の面積や形状、寸法などを比較する構成では検出することが困難であった微小な異物を検出することが可能となる。
さらに、本実施形態では、開口部21を撮像して得た元画像データと、その元画像データを基に再構成して得た再構成画像データとを比較しているため、比較する両画像データにおいて、検査対象物であるメタルマスク20側の撮像条件(例えばメタルマスク20の配置位置や配置角度、たわみ等)や、メタルマスク検査装置30側の撮像条件(例えば照明状態やカメラ32Bの画角等)の違いに基づく影響がなく、より微細な異物をより正確に検出することが可能となる。
尚、メタルマスク20上の所定位置にある所定の開口部21に係る検査を行う際に、良否判定基準として、該開口部21の構成情報(位置データや寸法データなど)を必要とする従来の構成においては、例えばガーバデータなど基板設計情報を予め記憶しておき、検査対象となる開口部21の構成情報を適宜取得し、該構成情報と比較しつつ検査対象となる開口部21の良否判定を行うこととなるため、検査効率が低下するおそれがある。また、メタルマスク20の検査位置への位置決めを正確に行う必要がある。
これに対し、本実施形態によれば、開口部21について学習したAIモデル100を利用して、各開口部21の検査を行う構成となっているため、多数の開口部21それぞれの個別の構成情報を予め記憶する必要もなく、検査に際しそれを参照する必要もないため、検査効率の向上を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)スクリーンマスクの構成は、上記実施形態に係るメタルマスク20に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(a−1)例えば上記実施形態に係るメタルマスク20は、マスク本体部20aとフレーム部20bとから構成されているが、これに限らず、フレーム部20bを省略した構成としてもよい。
(a−2)上記実施形態に係るマスク本体部20aは、金属材料(メタル)により形成されている。これに限らず、マスク本体部20aとして、例えばナイロン製、ポリエステル製、ステンレス製などの糸を織って形成された「紗(メッシュ)」上に感光性乳剤等を塗布して被覆部を形成し開口部21に相当する部分のみ「紗」が露出したタイプのものや、「紗(メッシュ)」上に、開口部21が形成されたメタル版を貼り付けた複合タイプのものを採用してもよい。
(b)製造ライン10など、プリント基板1の製造に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(b−1)上記実施形態では、半田印刷機12の近傍に、クリーニング装置29及びメタルマスク検査装置30を併設した構成となっている。これに限らず、クリーニング装置及び/又はメタルマスク検査装置の機能を、半田印刷機12又は半田印刷検査装置13と一体に備えた構成としてもよい。
(b−2)上記実施形態では、クリーニング工程を行う際に、半田印刷機12とクリーニング装置29の間、クリーニング装置29とメタルマスク検査装置30の間、及び、メタルマスク検査装置30と半田印刷機12の間におけるメタルマスク20の搬送作業を作業者が行う構成となっている。これに限らず、これらの各装置間に、メタルマスク20を搬送するためのコンベア等の搬送手段を配設し、搬送作業を自動化してもよい。つまり、製造ライン10と、クリーニング装置29及びメタルマスク検査装置30と組み合わせた製造システムを構築してもよい。
(c)メタルマスク検査装置30に係る構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(c−1)上記実施形態では、半田印刷時にプリント基板1と当接するメタルマスク20の基板当接面側が下方に向くように、メタルマスク検査装置30に対しメタルマスク20がセットされるよう構成されている。これに限らず、メタルマスク20の基板当接面側が上方に向くように、メタルマスク検査装置30に対しメタルマスク20がセットされる構成としてもよい。
(c−2)上記実施形態では、半田印刷時にプリント基板1と当接するメタルマスク20の基板当接面側に照明装置32Aを配置し、半田印刷時にプリント基板1と当接しないメタルマスク20の基板非当接面側にカメラ32Bを配置した構成となっている。これに限らず、メタルマスク20の基板当接面側にカメラ32Bを配置し、メタルマスク20の基板非当接面側に照明装置32Aを配置した構成としてもよい。
(c−3)上記実施形態では、メタルマスク20の下方に照明装置32Aを配置し、メタルマスク20の上方にカメラ32Bを配置して、開口部21に係る検査を透過光検査により行う構成となっている。これに限らず、メタルマスク20の上方又は下方に、照明装置32A及びカメラ32Bをまとめて配置し、開口部21に係る検査を反射光検査により行う構成としてもよい。
(d)識別手段としてのAIモデル100(ニューラルネットワーク90)の構成及びその学習方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
(d―1)上記実施形態では、特に言及していないが、ニューラルネットワーク90の学習処理や、メタルマスク検査処理における再構成処理などを行う際に、必要に応じて各種データに対し正規化等の処理を行う構成としてもよい。
(d−2)ニューラルネットワーク90の構造は、図6に示したものに限定されず、例えば畳み込み層93の後にプーリング層を設けた構成としてもよい。勿論、ニューラルネットワーク90の層数や、各層のノード数、各ノードの接続構造などが異なる構成としてもよい。
(d−3)上記実施形態では、AIモデル100(ニューラルネットワーク90)が、畳み込みオートエンコーダ(CAE)の構造を有した生成モデルとなっているが、これに限らず、例えば変分自己符号化器(VAE:Variational Autoencoder) など、異なるタイプのオートエンコーダの構造を有した生成モデルとしてもよい。
(d―4)上記実施形態では、誤差逆伝播法によりニューラルネットワーク90を学習する構成となっているが、これに限らず、その他の種々の学習アルゴリズムを用いて学習する構成としてもよい。
(d―5)ニューラルネットワーク90は、いわゆるAIチップ等のAI処理専用回路によって構成されることとしてもよい。その場合、パラメータ等の学習情報のみが記憶部57に記憶され、これをAI処理専用回路が読み出して、ニューラルネットワーク90に設定することによって、AIモデル100が構成されるようにしてもよい。
(d―6)上記実施形態では、学習部77を備え、制御装置33内においてニューラルネットワーク90の学習を行う構成となっているが、これに限らず、少なくともAIモデル100(学習済みのニューラルネットワーク90)を記憶部57に記憶していればよく、学習部77を省略した構成としてもよい。従って、ニューラルネットワーク90の学習を制御装置33の外部で行い、これを記憶部57に記憶する構成としてもよい。
(e)メタルマスク検査処理における開口部21の検査方法は上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
例えば上記実施形態では、元画像データと再構成画像データとを比較して、両画像データの差分を抽出し、その差分に相当する画素の数を計数し、それが所定の閾値よりも大きいか否かを判定することにより、開口部21に異物が付着しているか否かを判定する構成となっている。
これに限らず、例えば両画像データにおける開口部21の内壁部に係る画像を比較する(例えば開口部21の内壁部平坦部の直線度合いや、内壁部コーナー部の湾曲度合い等を比較する)ことで、異物を検出可能な構成としてもよい。
1…プリント基板、3…ランド、5…クリーム半田、10…製造ライン、12…半田印刷機、20…メタルマスク、21…開口部、29…クリーニング装置、30…メタルマスク検査装置、32A…照明装置、32B…カメラ、33…制御装置、77…学習部、78…検査部、90…ニューラルネットワーク、100…AIモデル、W…異物。