JP2021193889A - 容器詰ビタミン含有飲料、容器詰ビタミン含有飲料の製造方法および容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法 - Google Patents

容器詰ビタミン含有飲料、容器詰ビタミン含有飲料の製造方法および容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビタミンA、B、C及びEにそれぞれ由来する臭味を抑制した容器詰ビタミン含有飲料およびその製造方法、並びに容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法の提供。【解決手段】ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料であって、ビタミンBの含有量が10.0〜50.0mg/100gであり、ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)が7.0〜75.0であり、ビタミン類の総含有量が250〜2000mg/100gであり、柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁と、を含有する容器詰ビタミン含有飲料および当該容器詰ビタミン含有飲料の製造方法、並びに容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法。【選択図】なし

Description

本発明は、容器詰ビタミン含有飲料およびその製造方法に関するものである。また、本発明は、当該容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法にも関する。
近年、飲料に関する嗜好の多様化や健康志向の高まりから、単に嗜好を満たすのみならず、健康の維持に対し一定の効果が期待される機能を持った、種々の容器詰飲料が多数上市されている。その中でも、ビタミン類を含有した容器詰ビタミン含有飲料が年代や性別を問わず広く飲用者に受け入れられている。食生活の偏りによりビタミン類が不足しがちな現代人にとって、手軽にビタミン類を摂取できる容器詰ビタミン含有飲料は非常に有用だからである。
ところで、ビタミン類を含有した容器詰ビタミン含有飲料では、含有するビタミン類に由来する臭味が際立つという問題が一般的に知られている。例えば、特許文献1は、ビタミンCを多く含む飲料において、ビタミンCに由来する酸味が強くなりすぎることを改善する技術が公開している。
特開2016−042833号公報
しかしながら、複数のビタミン類を多く含む容器詰ビタミン含有飲料では、それぞれのビタミン類由来の臭味をコントロールすることが難しいという問題があった。また、果汁を含む容器詰飲料においては、果汁由来のビタミン類の存在や、果汁の香味の影響があるため、ビタミン類の臭味のコントロールすることはさらに難しく、問題となっていた。
そこで、本発明は、ビタミンA、B、C及びEにそれぞれ由来する臭味を抑制した容器詰ビタミン含有飲料およびその製造方法、並びに容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題を解決すべく研究を行った結果、ビタミンA、B、C及びEを含むビタミン類を所定の割合で含有し、かつ柑橘類果汁と、高糖酸比果汁と、を含有する容器詰ビタミン含有飲料が、ビタミンA、B、C及びEのそれぞれに由来する臭味が抑制されたものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、本発明は以下のとおりである。
〔1〕 ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料であって、
前記ビタミンBの含有量が10.0〜50.0mg/100gであり、
前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)が7.0〜75.0であり、
ビタミン類の総含有量が250〜2000mg/100gであり、
柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁と、を含有する容器詰ビタミン含有飲料。
〔2〕 前記ビタミン類は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEを含む、〔1〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔3〕 前記柑橘類果汁が、オレンジ、シークヮーサー、ミカン、グレープフルーツ、ポンカン、イヨカン及び日向夏からなる群より選択される1種以上からなる果汁である、〔1〕又は〔2〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔4〕 前記高糖酸比果汁が、ブドウ、マスカット、白ブドウ、ブルーベリー、リンゴ、モモ、マンゴー、バナナ、イチゴ、西洋ナシ、日本ナシ及びメロンからなる群より選択される1種以上からなる果汁である、〔1〕〜〔3〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔5〕 前記ビタミンA及びEの含有量の和が1.0〜15.0mg/100gであって、
前記ビタミンA及びEの含有量の和(c)と、前記柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)が0.05×10−3〜2.00×10−3である、〔1〕〜〔4〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔6〕 前記ビタミンCの含有量が100〜1400mg/100gであって、
前記ビタミンCの含有量(e)と、前記高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(e/f)が4.0×10−3〜55.0×10−3である、〔1〕〜〔5〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔7〕 前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ポリフェノール類の含有量(g)と、の比率(a/g)が40.0〜170.0である、〔1〕〜〔6〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔8〕 前記柑橘類果汁由来のポリフェノール含有量(h)と前記高糖酸比果汁由来のポリフェノール含有量(i)の比率(h/i)が0.1〜3.0である、〔1〕〜〔7〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔9〕 前記ビタミンCを600〜1200mg/100g含有する、〔1〕〜〔8〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔10〕 清涼飲料、果汁飲料、野菜果汁飲料及び炭酸飲料から成る群より選ばれる飲料である、〔1〕〜〔9〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔11〕 前記柑橘類果汁と前記高糖酸比果汁との合計含有量が10.0質量%以上である、〔1〕〜〔10〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔12〕 飲料の糖酸比が10.0〜50.0である、〔1〕〜〔11〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔13〕 飲料の糖度(Brix)が3.0〜15.0である、〔1〕〜〔12〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔14〕 飲料のpHが2.5〜5.0である、〔1〕〜〔13〕に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
〔15〕 ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料の製造方法であって、
前記ビタミンBの含有量を10.0〜50.0mg/100gに調整し、
前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)を7.0〜75.0に調整し、
ビタミン類の総含有量を250〜2000mg/100gに調整し、
柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁とを配合すること、
を含む容器詰ビタミン含有飲料の製造方法。
〔16〕 ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法であって、
前記ビタミンBの含有量を10.0〜50.0mg/100gに調整し、
前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)を7.0〜75.0に調整し、
ビタミン類の総含有量を250〜2000mg/100gに調整し、
柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁とを配合すること、
を含む容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法。
本発明の容器詰ビタミン含有飲料は、ビタミンA、B、C及びEのそれぞれに由来する臭味が抑制されたものとなる。また、本発明の製造方法によれば、ビタミンA、B、C及びEのそれぞれに由来する臭味が抑制された容器詰ビタミン含有飲料を製造することができる。また、本発明のマスキング方法は、容器詰ビタミン含有飲料のビタミンA、B、C及びEのそれぞれに由来する臭味を抑制することができる。
〔容器詰ビタミン含有飲料〕
本発明の一実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料は、ビタミンA、B、C及びEを含むビタミン類を含有し、さらに柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁と、を含有するものである。
ここで本明細書において、容器詰ビタミン含有飲料とは、ビタミンA、B、C及びEを含むビタミン類を含有した飲料が容器に充填された製品のことを言う。本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料は、清涼飲料、果汁飲料、野菜果汁飲料及び炭酸飲料から成る群より選ばれる飲料であることが好ましく、非アルコール性飲料であることが好ましい。
(ビタミン類)
ビタミンとは、動物の正常な発育と栄養を保つ上に微量でよいが欠くことのできない特殊な有機物質の総称である。本実施形態におけるビタミン類には、水溶性及び油溶性の別、並びに天然及び合成の別を問わず、あらゆるビタミンが包含されるが、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEなどが含まれる。ビタミン類は後述する果汁由来であってもよく、添加剤として添加してもよい。
<ビタミンA、B、C及びE>
本実施形態における容器詰ビタミン含有飲料は、ビタミンA、B、C及びEを含む。ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチニルエステルなどの脂溶性レチノイド類の総称である。ビタミンBは、水溶性ビタミンの一種であり、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類を含む。ビタミンCとは、L−アスコルビン酸のほか、ナトリウム、カリウムやカルシウムとの塩、脂肪酸とのエステル体、糖等とのエーテル体といったL−アスコルビン酸の誘導体などが含まれる。ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種であり、ビタミンEは4種(α、β、γ、δ)のトコフェロールと4種のトコトリエノールの合計8種の総称である。ビタミンA、B、C及びEのそれぞれが呈する臭味としては、ビタミンAの苦み、ビタミンBの収斂味、ビタミンCの酸味、ビタミンEの油臭が挙げられる。
<その他のビタミン>
本実施形態における容器詰ビタミン含有飲料は、ビタミンDなどのビタミンA、B、C及びE以外のビタミンを含んでもよい。例えば、ビタミンDは脂溶性ビタミンに分類されるビタミンであり、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)が含まれる。
<ビタミンBの含有量>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンBの含有量は10.0mg/100g以上であることが好ましく、15.0mg/100g以上であることがより好ましく、20.0mg/100g以上であることが特に好ましい。上記範囲となるようにビタミンBを含有することで、飲用者にとって十分な量のビタミンBを含んだ容器詰ビタミン含有飲料とすることができる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンBの含有量は50.0mg/100g以下であることが好ましく、30.0mg/100g以下であることがより好ましく、25.0mg/100g以下であることが特に好ましい。上記範囲となるようにビタミンBを含有することで、ビタミンB特有の収斂味を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
なお、ここでビタミンBの含有量とは、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類の合計含有量である。
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ナイアシン及びビタミンB1の含有量の合計は3.0mg/100g〜20.0mg/100gであることが好ましく、5.0mg/100g〜15.0mg/100gであることがより好ましく、7.0mg/100g〜13.0mg/100gであることが特に好ましい。ナイアシン及びビタミンB1の含有量の合計を上記範囲とすることで、収斂味をより抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
<ビタミンCの含有量>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンCの含有量は100mg/100g以上であることが好ましく、200mg/100g以上であることがより好ましく、600mg/100g以上であることがさらに好ましく、800mg/100g以上であることが特に好ましい。上記範囲することで、ビタミンCによるビタミンB特有の収斂味に対するマスキング効果を得やすくすることができ、当該収斂味が抑制された容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。また、上記範囲となるようにビタミンCを含有することで、飲用者にとって十分な量のビタミンCを含んだ容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンCの含有量は1400mg/100g以下であることが好ましく、1200mg/100g以下であることがより好ましく、1000mg/100g以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンC特有の酸味を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
なお、ビタミンCの含有量は、L−アスコルビン酸(還元型)とL−デヒドロアスコルビン酸(酸化型)の含有量の合計値として算出するものとする。
<ビタミンA及びEの含有量の和>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンA及びEの含有量の和は1.0mg/100g以上であることが好ましく、2.0mg/100g以上であることがより好ましく、3.0mg/100g以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA及びEによるビタミンB特有の収斂味に対するマスキング効果を得やすくなり、当該収斂味が抑制された容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。また、上記範囲とすることで、飲用者にとって十分な量のビタミンA及びEを含んだ容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンA及びEの含有量は15.0mg/100g以下であることが好ましく、10.0mg/100g以下であることがより好ましく、6.0mg/100g以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA特有の苦み及びビタミンE特有の油臭を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
なお、ビタミンAの含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載のとおり、レチノール活性当量を用いて算出した。また、ビタミンEの含有量は、α-、β-、γ-及びδ-トコフェロールの合計含有量である。
<ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料において、ビタミンA,C及びEの含有量の和は100.0mg/100g以上であることが好ましく、220.0mg/100g以上であることがより好ましく、700.0mg/100g以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA,C,及びEによるビタミンB特有の収斂味に対するマスキング効果が得やすくなり、当該収斂味が抑制された容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。また、ビタミンA,C,及びEの含有量の和を上記範囲とすることで、飲用者にとって十分な量のビタミンA,CおよびEを含んだ容器詰ビタミン含有飲料が得やすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料においてビタミンA,C及びEの含有量の和は1800.0mg/100g以下であることが好ましく、1450.0mg/100g以下であることがより好ましく、1000.0mg/100g以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA特有の苦み、ビタミンCの酸味及びビタミンE特有の油臭を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
<ビタミンA,C,及びEの含有量の和と、ビタミンBの含有量と、の比率>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)は、7.0以上であることが好ましく、20.0以上であることがさらに好ましく、40.0以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA,C,及びEによるビタミンB特有の収斂味に対するマスキング効果を得やすくなるため、当該収斂味を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)は、75.0以下であることが好ましく、70.0以下であることがさらに好ましく、65.0以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA特有の苦み、ビタミンC特有の酸味、及びビタミンE特有の油臭を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得られやすくなる。
なお、ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ビタミンBの含有量(b)との比率は、ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)をビタミンBの含有量(b)で除して得られる。
<ビタミン類の総含有量>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミン類の総含有量は、250mg/100g以上であることが好ましく、600mg/100g以上であることがさらに好ましく、1000mg/100g以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、飲用者にとって十分な量のビタミン類を含んだ容器詰ビタミン含有飲料が得られやすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミン類の総含有量は、2000mg/100g以下であることが好ましく、1500mg/100g以下であることがさらに好ましく、1400mg/100g以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミン類特有の臭味を抑えた容器詰ビタミン含有飲料を得られやすくなる。
なお、ビタミン類の総含有量とは、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に収載されるビタミン類のうち、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、およびビタミンEの含有量の合計である。ここで、ビタミンDの含有量とはビタミンD2とビタミンD3の合計量である。
(柑橘類果汁および糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁)
本実施形態の容器詰ビタミン含有飲料は、柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁(以下、高糖酸比果汁)と、を含有する。柑橘類果汁を含むことで、ビタミンA特有の苦み及びビタミンE特有の油臭に対するマスキング効果を得ることができ、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁を含むことでビタミンC特有の酸味に対するマスキング効果を得ることができる。
ここで果汁とは、果実を搾汁、破砕、磨砕などして得ることができるものであり、果実の搾汁液(ストレート果汁)、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁をさらに希釈した還元果汁、搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化した透明果汁、エキス、ピューレ等が挙げられる。
柑橘類果汁は、オレンジ、シークヮーサー、ミカン、グレープフルーツ、ポンカン、イヨカン、日向夏、柚子、カボス、スダチ、レモン、ライム等の柑橘類の果実から得られる果汁が挙げられる。
高糖酸比果汁は、ブドウ、マスカット、白ブドウ、ブルーベリー、リンゴ、モモ、マンゴー、バナナ、イチゴ、西洋ナシ、日本ナシ、メロン等の果実から得られる果汁であり、その中でも糖酸比が糖酸比25.0以上のものである。
なお、糖酸比は、糖度(Brix)値を、酸度で除して得られる。Brixは、常法に従って屈折糖度計にて測定することができる。また、酸度の測定方法は、当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができ、例えば、市販の自動滴定装置を用い、電位差滴定法に基づいて算出することができる。
柑橘類果汁および高糖酸比果汁は、それぞれ2種以上の果汁を配合することができる。2種類以上の果汁を場合、最終製品の甘味と酸味のバランスを調整しやすくなる。
本実施形態の容器詰ビタミン含有飲料は、柑橘類果汁および高糖酸比果汁の合計含有量が、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがさらに好ましく、8.0質量%以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、柑橘類果汁および高糖酸比果汁の香味が十分な容器詰ビタミン含有飲料が得られやすくなる。柑橘類果汁および高糖酸比果汁の合計含有量の上限は特に制限されないが、香味の調整の観点から80質量%以下であることが好ましい。
また、本実施形態の容器詰ビタミン含有飲料が非炭酸飲料である場合は、柑橘類果汁および高糖酸比果汁の合計含有量が、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、柑橘類果汁および高糖酸比果汁の香味がより十分な非炭酸性の容器詰ビタミン含有飲料が得られやすくなる。
また、本実施形態の容器詰ビタミン含有飲料が炭酸飲料である場合は、柑橘類果汁および高糖酸比果汁の合計含有量が、40質量%以下とすることができ、30質量%以下とすることができる。上記範囲とすることで、炭酸飲料を容易に製造しやすくなる。
なお、本実施形態において、果汁として濃縮果汁、濃縮エキス又は抽出物を使用した場合は、ストレート換算した値を含有量とする。
<ビタミンA及びEの含有量の和と、柑橘類果汁の含有量と、の比率>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンA及びEの含有量の和(c)と、柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)は、0.05×10−3以上であることが好ましく、0.10×10−3以上であることがより好ましく、0.30×10−3以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、柑橘類果汁に由来する苦みや渋みが飲料の香味バランスに与える影響を効率的に抑えることができる。また、上記範囲とすることで、前出のビタミンA及びEの含有量の和の値と相まって、ビタミンB特有の収斂味を効率よく抑えることができる。また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料が炭酸飲料である場合におけるビタミンA及びEの含有量の和(c)と、柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)は、0.33×10−3以上とすることができ、0.36×10−3以上とすることができる。上記範囲とすることで、炭酸飲料を容易に製造しやすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンA及びEの含有量の和(c)と、柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)は、10×10−3以下であることが好ましく、6.0×10−3以下であることがより好ましく、3.75×10−3以下であることが特に好ましい。本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料が非炭酸飲料である場合におけるビタミンA及びEの含有量の和(c)と、柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)は、2.0×10−3以下であることが好ましく、1.0×10−3以下であることがより好ましく、0.5×10−3以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、柑橘類果汁の味わいを十分に持ったビタミン含有飲料を得られやすくなる。また、前出のビタミンA及びEの含有量の和の好ましい値の範囲と上記範囲との相乗効果により、柑橘類果汁によるビタミンA特有の苦み及びビタミンE特有の油臭のマスキング効果がより効果的に得られ、ビタミンA特有の苦み及びビタミンE特有の油臭が抑制された容器詰ビタミン含有飲料をより得やすくなる。
なお、ビタミンA及びEの含有量の和(c)と、柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)との比率は、ビタミンA及びEの含有量の和(c)を柑橘類果汁の含有量(d)で除して得られる。
<ビタミンCと高糖酸比果汁の含有量との比率>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンCの含有量(e)と、高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(e/f)は4.0×10−3以上であることが好ましく、8.0×10−3以上であることがより好ましく、20.0×10−3以上であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、前出のビタミンCの含有量と相まって、ビタミンB特有の収斂味を効率よく抑えることができる。また、上記範囲とすることで、高糖酸比果汁特有のカラメル臭が飲料の香味バランスに与える影響を効率よく抑えることができる。本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料が炭酸飲料である場合におけるビタミンCの含有量(e)と、高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(e/f)は35×10−3以上とすることができ、45×10−3以上とすることができる。上記範囲とすることで、炭酸飲料を容易に製造しやすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンCの含有量(e)と、高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(e/f)は950.0×10−3以下であることが好ましく、560.0×10−3以下であることがより好ましく、350.0×10−3以下であることが特に好ましい。また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料が非炭酸飲料である場合におけるビタミンCの含有量(e)と、高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(e/f)は55.0×10−3以下であることが好ましく、45.0×10−3以下であることがより好ましく、35.0×10−3以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、高糖酸比果汁の味わいを持ったビタミン含有飲料を得られやすくなる。また、前出のビタミンCの含有量の好ましい範囲と上記範囲との相乗効果で、高糖酸比果汁によるビタミンC特有の酸味のマスキング効果がより効果的に得られ、当該酸味を抑えた容器詰ビタミン含有飲料をより得やすくなる。
なお、ビタミンCの含有量(e)と、高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(c/d)との比率は、ビタミンCの含有量(e)を高糖酸比果汁の含有量(f)で除して得られる。
(ポリフェノール)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料はポリフェノールを含んでもよい。本実施形態においてポリフェノールとは、植物に由来する物質(フィトケミカル:phytochemical)の1種であり、1分子中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の総称である。ポリフェノールには、大別して分子量が1,000以下の単量体ポリフェノールと、単量体ポリフェノールが2つ以上結合した重合ポリフェノールが存在する。重合ポリフェノールは一般にタンニンとも称される。代表的な単量体ポリフェノールとしては、フラボノイド類(フラボノイド類には、フラボン、フラバノール、アントシアニジン、イソフラボノイド、ネオフラボノイド等を基本骨格とする化合物が含まれる)、クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸などがある。一方、重合ポリフェノールは単量体ポリフェノールが2個以上結合した化合物であり、ポリフェノール同士が炭素−炭素結合により重合した縮合型タンニンと、糖等由来の水酸基とのエステル結合により重合した加水分解型タンニンとに大別され、それぞれ代表的なポリフェノールとして縮合型タンニンとしてはプロアントシアニジン類、加水分解型タンニンとしてはガロタンニン、エラグタンニンが挙げられる。各ポリフェノールは単体以外にも、当該ポリフェノールの生理活性機能を失わない範囲であれば、例えば、重合体、配糖体等の所定の化合物状態であっても良い。ポリフェノールは重合度や結合位置で様々な種類のものが存在するが、極めて強い抗酸化作用を示す。
<ビタミンA,C,及びEの含有量の和と、ポリフェノール類の含有量の比率>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料におけるビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ポリフェノール類の含有量(g)と、の比率(a/g)は、40.0〜4000であることが好ましく、45.0〜3500であることがより好ましく、50.0〜3000であることが特に好ましい。本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料が非炭酸飲料である場合におけるビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ポリフェノール類の含有量(g)と、の比率(a/g)は、40.0〜170であることが好ましく、45.0〜120.0であることがより好ましく、50.0〜100.0であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、ビタミンA特有の苦み、ビタミンC特有の酸味、及びビタミンE特有の油臭を効率的に抑えることができる。また、上記範囲等することで、ポリフェノールによる呈味や濃度感を十分に持ち、かつ雑味が少ないビタミン含有飲料を得やすくなる。
なお、ポリフェノールは当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、タンニン酸を標準物質としてフォーリン・デニス法を用いて求める方法が挙げられる。
なお、ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ポリフェノール類の含有量(g)と、の比率(a/g)は、ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)をポリフェノール類の含有量(g)で除して得られる。
<柑橘類果汁由来のポリフェノール含有量と高糖酸比果汁由来のポリフェノール含有量の比率>
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料における柑橘類果汁由来のポリフェノール含有量(h)と高糖酸比果汁由来のポリフェノール含有量(i)の比率(h/i)は、0.10〜3.00であることが好ましく、0.15〜1.50であることがより好ましく、0.20〜1.00であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、柑橘類果汁と高糖酸比果汁との香味のバランスがよいビタミン含有飲料を得やすくなる。
なお、柑橘類果汁由来のポリフェノール含有量(h)と高糖酸比果汁由来のポリフェノール含有量(i)の比率(h/i)は、柑橘類果汁由来のポリフェノール含有量(h)を高糖酸比果汁由来のポリフェノール含有量(i)で除して得られる。
(その他の果汁および野菜汁)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料は、柑橘類果汁および高糖酸比果汁以外のその他の果汁および野菜汁を含有してもよい。
その他の果汁としては、本発明の効果が発揮される限りにおいて特に限定されることはないが、パインアップル、キウイ、ウメ、グアバ、アセロラ、カムカム等が挙げられる。ここで果汁とは、前述のように、果実を搾汁、破砕、磨砕などして得ることができるものであり、果実の搾汁液(ストレート果汁)、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁をさらに希釈した還元果汁、搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化した透明果汁、エキス、ピューレ等が挙げられ、市販品を使用しても良い。
また、ここで野菜汁とは、野菜を搾汁、破砕、磨砕などして得ることができるものであり、野菜の搾汁液、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、濃縮したものをさらに希釈した還元果汁、搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化したもの、エキス、ピューレ等が挙げられる。野菜汁に用いられる野菜の種類は本発明の効果が発揮される限りにおいて特に限定されることはないが、ニンジン、トマト、レタス、有色甘藷、ピーマン、インゲン豆、ケール、白菜等が挙げられる。
(甘味付与剤)
甘味付与剤としては、糖類または甘味料を使用することができ、糖類としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等のほか、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、ソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよいし、シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。これらの糖類または甘味料は、目的に応じて単独で、又は複数を組み合わせて使用することが出来る。
(その他の成分)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料には、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、各種エステル類、着色料(色素)、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、乳化剤、保存料、調味料、酸味料、香料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等があげられる。これらを単独、又は併用して配合してもよい。
(容器)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料は、容器に充填された形で提供されること、すなわち容器詰飲料であることが好ましい。この場合において、使用される容器は特に限定されず、PETボトル、プラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常用いられる飲料用容器であればよいが、内容物が光に暴露されない点からプラスチックフィルムと複合された紙容器が好ましい。なお、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料が容器に充填された容器詰飲料として提供される場合、通常は希釈せずにそのまま飲用できるものであるが、これに限定されるものではない。
(水)
本実施形態に適した水としては、例えば、天然水、市水、井水、イオン交換水、脱気水等が挙げられるが、これらのうちイオン交換水または脱気水を用いるのが好ましく、特に脱気水を用いるのが好ましい。脱気水を用いることで、容器詰ビタミン含有飲料の加温による品質の劣化や液色の褐変等の色調変化をより効果的に抑制することができる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部または全てを脱気水とすることができる。
(pH)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料のpHの下限は2.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、3.3以上であることが特に好ましい。また、pHの上限は5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがさらに好ましく、4.0以下であることが特に好ましい。pHを上記範囲とすることで、柑橘類果汁と高糖酸比果汁が持つ自然な酸味を得やすくなる。
(糖度(Brix))
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料の糖度(Brix)は3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。糖度を上記範囲とすることで、柑橘類果汁と高糖酸比果汁が持つ自然な甘さを得やすくなる。
また、本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料の糖度(Brix)は15.0以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。糖度を上記範囲とすることで、甘すぎず、すっきりとした飲み心地の容器詰ビタミン含有飲料を得やすくなる。
なお、容器詰ビタミン含有飲料のBrixは、常法に従って屈折糖度計にて測定することができる。
(酸度)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料の酸度の下限は0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがさらに好ましく、0.3以上であることが特に好ましい。また、酸度の上限は1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがさらに好ましく、0.6以下であることが特に好ましい。酸度を上記範囲とすることで、適した鮮度感および酸味を得やすくなる。
なお、酸度の測定方法は、当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、市販の自動滴定装置を用い、電位差滴定法に基づいて算出することができる。
(糖酸比)
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料の糖酸比の下限は10以上であることが好ましく、16以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。また、糖酸比の上限は50以下であることが好ましく、40以下であることがさらに好ましく、30以下であることが特に好ましい。糖酸比を上記範囲とすることで、甘味と酸味のバランスが良くなる。
なお、糖酸比は、上記の糖度(Brix)を、上記の酸度で除して得られる。
〔容器詰ビタミン含有飲料の製造方法〕
本実施形態に係る容器詰ビタミン含有飲料は、ビタミンA、B、C及びEをはじめとするビタミン類、柑橘類果汁および糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁を所定量含有させる以外、従来公知の方法により製造することができる。
例えば、所定の硬度を有する天然水や、イオン交換水等を原料水として用い、ビタミンA、B、C及びEをはじめとするビタミン類と、柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁と、さらに必要に応じて、果糖ブドウ糖液糖などの他の成分とを添加して攪拌し、必要に応じてpHの調整を行い、飲料原液を調製する。
飲料原液を調製した後に、均質化して、容器に充填する。容器へ充填する工程は、当業界で公知の手法により行うことができる。例えば、プレート式ヒーターやチューブ式ヒーター等の加熱殺菌装置を用い、80〜150℃の温度下に10〜120秒間保持する等して加熱殺菌を行い、その後、常法に従って容器に充填する。
このようにして容器詰ビタミン含有飲料を得ることができる。
以上説明した実施形態は、本実施形態の理解を容易にするために記載されたものであって、本実施形態を限定するために記載されたものではない。従って、上記実施形態に開示された各要素は、本実施形態の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、試験例、製造例等を示すことにより本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態は下記の試験例、製造例等に何ら限定されるものではない。
〔試験1:ビタミンA、B、C及びEの臭味のマスキング試験1〕
後述する市販の各原料を使用し、ビタミンA、B、CおよびEが有する臭味(ビタミンBの収斂味、ビタミンAの苦み、ビタミンCの酸味およびビタミンEの油臭)をマスキングするための試験1を実施した。
ビタミンBとしてビタミンB1 2号、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12(いずれも金剛薬品社製)、ニコチン酸アミドS(ロンザジャパン社製)、パントテン酸カルシウム(協和ファーマケミカル社製)、食添加用ビオチン1%(タイショーテクノス社製)および葉酸5%(オルガノフードテック社製)、ビタミンAとして理研ドライA−S200PT(理研ビタミン社製)、ビタミンCとしてビタミンCおよびL−アスコルビン酸ナトリウム(いずれも扶桑化学工業社製)、ビタミンDとしてドライD3−S50T(理研ビタミン社製)並びにビタミンEとしてビタミンE―α―50(A)(理研ビタミン社製)を表1の配合に基づいて添加し、イオン交換水でメスアップし、参考例1〜8を得た。
(官能評価)
上記で得られた参考例1〜8について、飲料の開発を担当する訓練された4人のパネラーによる官能評価試験を行った。ビタミンBの収斂味、ビタミンAの苦み、ビタミンCの酸味およびビタミンEの油臭の4つの項目について、下記の4段階の評価を行った。
=マスキング試験=
ビタミンBの陰性対照:参考例8と同量のビタミンBを添加しイオン交換水でメスアップした。
ビタミンAの陰性対照:参考例8と同量のビタミンAを添加し、イオン交換水でメスアップした。
ビタミンCの陰性対照:参考例8と同量のビタミンCを添加し、イオン交換水でメスアップした。
ビタミンEの陰性対照:参考例8と同量のビタミンEを添加し、イオン交換水でメスアップした。
A:臭味はマスキングされ、ほとんど感じない
B:マスキングされていて、コントロールとは明確な差がある
C:わずかにマスキングされているが、あまり効果がない
D:マスキングされておらず臭味を感じる(コントロールと同様)
Figure 2021193889
(評価結果)
ビタミンA、B、CおよびEが含まれた参考例4および8ではビタミンBの収斂味がマスキングされ、ほとんど感じない程度にまで改善された。また、ビタミンA、CまたはEのいずれか1つを欠く参考例5〜7では、参考例4および8ほどではないもの、ビタミンBの収斂味がマスキングされたという結果を得た。一方で、ビタミンB以外にビタミンA、CまたはEのいずれか1つを含む参考例1〜3においてはビタミンBの収斂味のマスキングはわずかであった。なお、ビタミンDについては、ビタミンDを含む参考例8と含まない参考例4との結果が同等であったことから、ビタミンBの収斂味に与える影響がないと考えられる。
〔試験2:ビタミンA、B、C及びEの臭味のマスキング試験2〕
後述する市販の各原料を使用し、ビタミンA、B、CおよびEが有する臭味(ビタミンBの収斂味、ビタミンAの苦み、ビタミンCの酸味およびビタミンEの油臭)をマスキングするための試験2を実施した。なお、ビタミンA、B、C、およびEについては上述の試験1で用いた原材料を用いた。
柑橘類果汁としてオレンジ混濁濃縮果汁Bx65(デローロ社製、糖酸比15.4)、うんしゅうみかん混濁濃縮果汁Bx60(済州特別自治道開発公社社製、糖酸比13.4)及びレモン透明濃縮果汁500GPL(ドレファス社製、糖酸比1.4)を、高糖酸比果汁として、ホワイトグレープ透明濃縮果汁Bx68(フゴス社製、糖酸比74.3)、ピーチ混濁濃縮果汁Bx32(日本果実加工社製、糖酸比27.3)、及びりんご混濁濃縮果汁Bx55(オーストリアジュース社製、糖酸比36.9)、並びにその他の果汁としてパインアップル混濁濃縮果汁Bx61(ドール社製、糖酸比23.4)、及びキウイ透明濃縮果汁Bx60(長野サンヨーフーズ社製、糖酸比14.0)を用い、これらを果糖ぶどう糖液糖(日本食品化工社製)と香料(ジボダンジャパン社製)と上述のビタミンA、B、C、およびEの原材料とともに、を表2、表3及び表4の配合に基づいて添加し、イオン交換水でメスアップした。
これらを95℃達温加熱殺菌後、直ちに200mLのPETボトルにホットパック充填し、試験区1〜44を得た。
得られた試験区1〜44について、試験1に記載の方法に基づき、ビタミンBの収斂味、ビタミンAの苦み、ビタミンCの酸味およびビタミンEの油臭のマスキングの程度を評価した。評価結果を表2、表3及び表4に示す。なお、果汁とは果実を洗浄後加熱処理し、種を除去した後遠心分離を行い得られた果汁を適宜濾過や濃縮等の処理を行ったものであり、濃縮果汁または濃縮エキスの配合量については、ストレート換算した値を記載する。
また、表2、表3及び表4に示すとおりの配合割合にて調整した試験区1〜44おけるpH、糖度(Bx)、酸度、糖酸比を下記方法により分析し、評価した結果と合わせて表2、表3及び表4に示す。また、試験区25〜44においては、ポリフェノール(表中、PP)の含有量を下記の方法で算出した。
本試験において分析する成分の分析方法は以下のとおりである。
<pH>
堀場製作所F−52型・卓上pHメーターにて品温20℃にて測定した。
<糖度>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α−Bev)を用いて、糖度を測定した。
<酸度>
自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM−1750)を用い、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を使用した電位差滴定法に基づいて、クエン酸換算で算出した。
<ポリフェノール含有量>
タンニン酸を標準物質としてフォーリン・デニス法を用いて求められる量をポリフェノール含有量とした。
(果汁の官能評価)
なお、表3及び表4に記載の試験区25〜44については、「柑橘類果汁のトップの香り」、「柑橘類果汁由来の苦渋味」、「高糖酸比果汁のトップの香り」及び「高糖酸比果汁由来のカラメル臭」の4項目についても追加的に官能評価を行った。これらの評価項目は下記の基準に従って評価し、パネラー4人の最も多かった評価を表3及び表4に示す。これら4つの項目については試験区25〜44を製造後、5℃に冷却して飲用し、評価を行った。
=柑橘類果汁のトップの香り=
比較対照:高糖酸比果汁、ビタミン類を含めない以外は試験区34と同様の配合で作製したものを5℃に冷却して飲用した。
3:比較対照と比べ、同等の果汁感があり非常に良好。
2:比較対照と比べ、果汁感はやや劣るが十分に感じられる。良好。
1:比較対照と比べ、果汁感が感じられない。
=柑橘類果汁由来の苦渋味=
比較対照:高糖酸比果汁、ビタミン類を含めない以外は試験区34と同様の配合で作製したものを5℃に冷却して飲用した。
3:比較対照と比べ、同等の柑橘類果汁由来の苦渋味があるが、香味バランスには影響しない。
2:比較対照と比べ、柑橘類果汁由来の苦渋味が感じられる。
1:比較対照と比べ、柑橘類果汁由来の苦渋味が強く感じられる。
=高糖酸比果汁のトップの香り=
比較対照:柑橘類果汁、ビタミン類を含めない以外は試験区34と同様の配合で作製したものを5℃に冷却して飲用した。
3:比較対照と比べ、同等の果汁感があり非常に良好。
2:比較対照と比べ、果汁感はやや劣るが十分に感じられる。良好。
1:比較対照と比べ、果汁感が感じられない。
=高糖酸比果汁由来のカラメル臭=
比較対照:柑橘類果汁、ビタミン類を含めない以外は試験区34と同様の配合で作製したものを5℃に冷却して飲用した。
3:比較対照と比べ、同等の高糖酸比果汁由来のカラメル臭があるが、香味のバランスには影響しない。
2:比較対照と比べ高糖酸比果汁由来のカラメル臭が感じられる。
1:比較対照と比べ、高糖酸比果汁由来のカラメル臭が強く感じられる。
また、これらの柑橘類果汁と高糖酸比果汁に関する官能評価試験の結果をもとに、各評価項目の合計点を算出し、次の三段階の基準で評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
=柑橘類果汁と高糖酸比果汁に関する官能評価の合計点=
◎:11以上
○:8以上10以下
△:7以下であるか、各評価項目のうち少なくとも1つ以上1がある
Figure 2021193889
Figure 2021193889
Figure 2021193889
(結果・考察)
表2、表3および表4において、本願の発明の要件を満たす試験区4〜7、10、12、13、15〜17、20、21、23〜44は、ビタミンA、B、CおよびEが有する臭味(ビタミンBの収斂味、ビタミンAの苦み、ビタミンCの酸味およびビタミンEの油臭)がマスキングされており、良好な結果を示していることがわかる。また試験区6を炭酸水で2倍に希釈したサンプルも同様に官能を実施したが同様に良好な結果を示した。
表3および表4においては、果汁に関する官能評価において、柑橘類果汁および高糖酸比果汁を所定の割合で含む試験区26、27、30、31、38、39において良好な結果を、試験区34および35において特に良好な結果を示していることがわかる。
本発明によれば、ビタミンA、B、C及びEにそれぞれ由来する臭味を抑制した容器詰ビタミン含有飲料およびその製造方法を提供することができる。また、容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法も併せて提供することができる。

Claims (16)

  1. ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料であって、
    前記ビタミンBの含有量が10.0〜50.0mg/100gであり、
    前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)が7.0〜75.0であり、
    ビタミン類の総含有量が250〜2000mg/100gであり、
    柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁と、を含有する容器詰ビタミン含有飲料。
  2. 前記ビタミン類は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEを含む、請求項1に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  3. 前記柑橘類果汁が、オレンジ、シークヮーサー、ミカン、グレープフルーツ、ポンカン、イヨカン及び日向夏からなる群より選択される1種以上からなる果汁である、請求項1又は2に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  4. 前記高糖酸比果汁が、ブドウ、マスカット、白ブドウ、ブルーベリー、リンゴ、モモ、マンゴー、バナナ、イチゴ、西洋ナシ、日本ナシ及びメロンからなる群より選択される1種以上からなる果汁である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  5. 前記ビタミンA及びEの含有量の和が1.0〜15.0mg/100gであって、
    前記ビタミンA及びEの含有量の和(c)と、前記柑橘類果汁の含有量(d)と、の比率(c/d)が0.05×10−3〜2.00×10−3である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  6. 前記ビタミンCの含有量が100〜1400mg/100gであって、
    前記ビタミンCの含有量(e)と、前記高糖酸比果汁の含有量(f)と、の比率(e/f)が4.0×10−3〜55.0×10−3である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  7. 前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、ポリフェノール類の含有量(g)と、の比率(a/g)が40.0〜170.0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  8. 前記柑橘類果汁由来のポリフェノール含有量(h)と前記高糖酸比果汁由来のポリフェノール含有量(i)の比率(h/i)が0.1〜3.0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  9. 前記ビタミンCを600〜1200mg/100g含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  10. 清涼飲料、果汁飲料、野菜果汁飲料及び炭酸飲料から成る群より選ばれる飲料である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  11. 前記柑橘類果汁と前記高糖酸比果汁との合計含有量が10.0質量%以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  12. 飲料の糖酸比が10.0〜50.0である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  13. 飲料の糖度(Brix)が3.0〜15.0である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  14. 飲料のpHが2.5〜5.0である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の容器詰ビタミン含有飲料。
  15. ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料の製造方法であって、
    前記ビタミンBの含有量を10.0〜50.0mg/100gに調整し、
    前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)を7.0〜75.0に調整し、
    ビタミン類の総含有量を250〜2000mg/100gに調整し、
    柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁とを配合すること、
    を含む容器詰ビタミン含有飲料の製造方法。
  16. ビタミンA、B、C及びEを含有する容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法であって、
    前記ビタミンBの含有量を10.0〜50.0mg/100gに調整し、
    前記ビタミンA,C,及びEの含有量の和(a)と、前記ビタミンBの含有量(b)と、の比率(a/b)を7.0〜75.0に調整し、
    ビタミン類の総含有量を250〜2000mg/100gに調整し、
    柑橘類果汁と、糖酸比25.0以上である高糖酸比果汁とを配合すること、
    を含む容器詰ビタミン含有飲料の臭味のマスキング方法。
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