JP2021189192A - 反射防止構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射防止性能や防眩性に優れていながら、型を使用した生産効率が高く、型からの転写不良も生じにくい反射防止構造体を提供する。【解決手段】略円形の外縁部2aを有する複数の底部2と、複数の底部2を互いに画する大突起3を有し、底部2の外縁部2aを含む最小円の直径の平均が500nm以上20μm以下であり、底部2に、平均ピッチ10nm以上500nm以下で群立する底部微小突起4からなる微細構造が形成されており、大突起3は、底部2の外縁部2aに沿って上面の高さが不規則に変化する多峰性構造とされており、大突起3の最大高さは、底部2における底部微小突起4の最大高さより大きい反射防止構造体。【選択図】図5

Description

本発明は、反射防止構造体に関する。
従来、CDやDVD等の光学ディスクの表面、レンズ等の表面における光の反射を防止する目的で、また、ディスプレイ等の表面のぎらつきを防止する目的で、表面が回折パターンや微細な凹凸からなる反射防止構造体を形成する技術が知られている(特許文献1、2)。
特許第5162585号公報 特開2018−120047号公報
特許文献1の反射防止構造体は、反射防止性能(防反射性)が必ずしも充分ではない。
一方、特許文献2の反射防止構造体は、優れた反射防止性能を得ようとすると、平均高さが13μmという高い壁部が必要となる。そのため、型を使用して反射防止構造体を製造しようとすると、型の凹凸構造を反射防止構造体の材料に転写する際の離型性が悪い。したがって、反射防止構造体の生産効率が低く、型からの転写不良が生じやすいという問題があった。また、転写不良は、転写回数が増えるにつれ、さらなる離型性の悪化を招くことになり、生産効率と防反射性悪化の要因となる。
本発明は、反射防止性能や防眩性に優れていながら、型を使用した生産効率が高く、型からの転写不良も生じにくい反射防止構造体を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]略円形の外縁部を有する複数の底部と、前記複数の底部を互いに画する大突起を有し、
前記底部の外縁部を含む最小円の直径の平均が500nm以上20μm以下であり、
前記底部に、平均ピッチ10nm以上500nm以下で群立する微小突起からなる微細構造が形成されており、
前記大突起は、前記外縁部に沿って上面の高さが不規則に変化する多峰性構造とされており、
前記大突起の最大高さHは、前記底部における微小突起の最大高さMより大きいことを特徴とする反射防止構造体。
[2]前記大突起の最大高さHが、3〜12μmである、[1]に記載の反射防止構造体。
[3]前記底部における微小突起の最大高さMは0.1μm以上2μm以下である、[1]又は[2]に記載の反射防止構造体。
[4]前記大突起の最大高さHの前記底部における微小突起の最大高さMに対する比[H/M]が3〜120である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
[5]前記大突起は、上面の少なくとも一部に、平均ピッチ10nm以上500nm以下で群立する微小突起からなる微細構造が形成されている、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
[6]前記大突起の上面における微小突起の最大高さNは0.1μm以上2μm以下である、[5]に記載の反射防止構造体。
[7]前記底部の前記外縁部を含む最小円の直径は、0.1μm刻みで2つ以上のピークを有する分布とされている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
[8]前記2つ以上のピークは、前記直径の差が0.3μm以上であって互いに隣接する一対のピークを含む、[7]に記載の反射防止構造体。
[9]黒色の材料で構成されている、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
[10]前記大突起が形成されている面と反対側の面に、黒色材料の層を有する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
本発明の反射防止構造体は、反射防止性能や防眩性に優れていながら、型を使用した生産効率が高く、型からの転写不良も生じにくい。
本発明の一例である反射防止構造体1について、高さ方向に沿って見下ろしたSEM像である。 本発明の一例である反射防止構造体1を斜視したSEM像である。 図2の一部を拡大したSEM像である。 反射防止構造体1の部分構造を説明する模式斜視図である。 反射防止構造体1を大突起3の高さ方向に沿って切断した模式断面図である。 反射防止構造体1に入射した光線が吸収される様子を示した模式断面図である。 反射防止構造体1が有する各底部の外縁部を含む最小円の直径分布を示した分布図の一例である。 反射防止構造体1を作製するための型の作製方法の一例を説明する模式断面図である。 反射防止構造体1を作製するための型の作製方法の別の一例を説明する模式断面図である。 反射防止構造体1を作製するための型の一例について、高さ方向に沿って見下ろしたSEM像である。 反射防止構造体1を作製するための型の一例を斜視したSEM像である。 型を用いて反射防止構造体1を作製する方法を示す模式断面図である。 本発明の他の一例である反射防止構造体を示す断面図である。
[反射防止構造体]
本発明の一実施形態に係る反射防止構造体は、略円形の外縁部を有する複数の底部と、この複数の底部を互いに画する大突起を有する。
底部の外縁部を含む最小円の直径の平均は500nm以上20μm以下である。
また、底部には、平均ピッチ10nm以上500nm以下で群立する微小突起からなる微細構造が形成されている。
大突起は、底部の外縁部に沿って上面の高さが不規則に変化する多峰性構造とされている。
大突起の最大高さHは、底部における微小突起の最大高さLより高い。
以下、図面を参照して本発明にかかる反射防止構造体の一例を詳述する。
図1に本発明の一実施形態の反射防止構造体1を上方から高さ方向に沿って見た電子顕微鏡写真を、図2に斜め上方から見た電子顕微鏡写真を示す。
なお、本明細書において、高さ方向とは反射防止構造体1の主面に対する垂線方向を意味する。また、上とは反射防止構造体1の主面から離れる方向を意味し、下とは反射防止構造体1の主面に近づく方向を意味する。
図1、2に示すように、反射防止構造体1は、複数の略円形の底部2と隣接する複数の底部2を互いに画する大突起3を有する。
大突起3の上面の一部には群立する上面微小突起5からなる微細構造が形成されている。上面微小突起5からなる微細構造は、上面微小突起5が高密度に群立する剣山構造となっている。
群立する上面微小突起5からなる微細構造は、主として、大突起3の面積が大きい上面部分、例えば、やや離間した底部2同士を画する部分、3つ以上の底部2を互いに画する部分等に形成されていることが好ましい。
図3は、図2の大突起3において、群立する上面微小突起5からなる微細構造が形成されている付近の拡大写真である。また、図4は、1つの底部2とその底部2を他の底部2から画する大突起3を模式的に示した図で、図5は、反射防止構造体1を高さ方向に沿って切断した模式断面図である。なお、図5と後述の図6は、外縁部2aを含む最小円の直径が、ほぼ同等である底部2が配列している状態を記載している。
図1、図3に示すように、底部2の外縁部2aは略円形とされている。底部2の輪郭である外縁部2aが略円形であるとは、高さ方向に沿って見下ろした場合に外縁部2aの形状を円形又は楕円形に近似しうる(その形状に近しい円形又は楕円形を想定しうる)ことをいう。
また、図3〜図5に示すように、各底部2には、群立する底部微小突起4からなる微細構造が形成されている。底部微小突起4からなる微細構造は、底部微小突起4が高密度に群立する剣山構造となっている。
大突起3は底部2の外縁部2aと他の底部2の外縁部2aとの間に立ち上がるように形成されている。大突起3の各外縁部2a側は、外縁部2aに沿って垂直に立ち上がっていてもよく、上に行くに従って外縁部2aより拡径又は縮径するようになっていてもよい。製造が容易となること、及び防反射を高めやすいことから、図5に示す様に、上に行くに従って外縁部2aより拡径するようになっていることが好ましい。
図3、図4に示すように、大突起3は底部2の外縁部2aに沿って、上面の高さが不規則に変化する多峰性構造とされている。
外縁部2aを囲む大突起3は、外縁部2aに沿って高さを変化させながら連続していてもよいし、一部分が完全に欠けて非連続になっていてもよい。外縁部2aを囲む大突起3の一部が完全に欠けて非連続になっている場合、隣接する2つの底部2はその部分において連通する。
底部2の外縁部2aを含む最小円の直径R1(以下「底部直径R1」という。)の平均(以下「底部平均直径R」という。)は500nm以上20μm以下である。
底部平均直径Rは、1μm以上10μm以下であることが好ましく、1.5μm以上6.0μm以下であることがより好ましい。
底部平均直径Rが500nm以上20μm以下であると、入射光の正反射を充分に防止し、反射防止構造体1が奏する防反射性をより高められる。
底部平均直径Rは次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿って見下ろすようにして電子顕微鏡で観察し、底部2が100〜200個含まれる正方形の領域を任意に設定し、その正方形の2本の対角線を横切った各底部2について底部直径R1を各々測定し、それらの底部直径R1の算術平均として求める。
底部2に群立する底部微小突起4のピッチP1の平均(以下「底部微小突起平均ピッチP」という。)は10nm以上500nm以下である。
底部微小突起平均ピッチPは、50nm以上300nm以下が好ましく、80nm以上200nm以下がより好ましい。
底部微小突起平均ピッチPが10nm以上500nm以下であると、底部2まで到達した入射光を底部微小突起4からなる微細構造内へ取り込みやすく入射光の反射を防止できる。
底部微小突起平均ピッチPは次のように求める。
反射防止構造体1の任意の位置で、ミクロトーム又はCP加工(イオンミリング)等によって切り出して、10mm×10mmの表面観察用サンプルを作製する。作製した表面観察用サンプルを電子顕微鏡で観察し、10個の底部2の各々において任意の10個の底部微小突起4とそれに隣接する底部微小突起4のピッチP1(隣接する底部微小突起4の頂部(頂点)同士の距離)を各々測定し、それらのピッチP1の算術平均として求める。
大突起3の上面に群立する上面微小突起5のピッチQ1の平均(以下「上面微小突起平均ピッチQ」という。)は10nm以上500nm以下であることが好ましい。
上面微小突起平均ピッチQは、50nm以上300nm以下がより好ましく、80nm以上200nm以下がさらに好ましい。
上面微小突起平均ピッチQが10nm以上500nm以下であると、大突起の上面に入射した光を上面微小突起5からなる微細構造内へ取り込みやすく入射光の反射を防止できる。
上面微小突起平均ピッチQは次のように求める。
反射防止構造体1の任意の位置で、ミクロトーム又はCP加工(イオンミリング)等によって切り出して、10mm×10mmの表面観察用サンプルを作製する。作製した表面観察用サンプルにおける上面微小突起5からなる微細構造が形成された10個の大突起3の上面を電子顕微鏡で観察する。
観察した10個の大突起3の各々において任意の10個の上面微小突起5とそれに隣接する上面微小突起5のピッチQ1(隣接する上面微小突起5の頂部(頂点)同士の距離)を各々測定し、それらのQ1の算術平均として求める。
なお、1つの表面観察用サンプルで、上面微小突起5からなる微細構造が形成された10個の大突起3を抽出できない場合は、異なる位置で切り出した複数の表面観察用サンプルを作製して、上面微小突起5からなる微細構造が形成された大突起3を10個抽出する。
大突起の最大高さH(以下「大突起最大高さH」という。)は、底部微小突起4の最大高さM(以下「底部微小突起平均高さM」という。)より大きい。
大突起最大高さHの底部微小突起最大高さMに対する比[H/M]は、3〜120であることが好ましく、4〜30であることがより好ましく、5〜12であることがさらに好ましい。
比[H/M]が、3〜120であると、大突起による垂直、または角度を持った入射光に対する防反射効果と、底部微小突起によって反射を最小化する効果の相乗効果により、良好な防反射性が得られる。
大突起最大高さHは、3〜12μmであることが好ましく、4〜10μmであることがより好ましく、5〜8μmであることがさらに好ましい。
大突起最大高さHが3μm以上であると、入射光の正反射を充分に防止し、反射防止構造体1が奏する防反射性をより高められる。大突起最大高さHが12μm以下であると、反射防止構造体1の機械的強度を保ちやすい。また、後述の型を使用した製造方法で製造する際、離型性に優れ生産効率が高い。また、型からの転写不良が生じにくい。
大突起最大高さHは次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿う任意の異なる断面で、ミクロトーム又はCP加工(イオンミリング)等によって切り出して断面サンプルを作製する。各々の断面サンプルについて、3〜10個の底部2が含まれる範囲を電子顕微鏡で10〜20点観察し、各観察範囲内で最も高い大突起3の高さH1を各々測定し、それらのH1の算術平均として求める。
断面サンプルにおけるH1は次のようにして求められる。すなわち、前記断面サンプルの観察範囲内における最も高い大突起3の頂部(頂点)と、その大突起3の最も低い位置の水平線間の距離をH1として求める。
底部微小突起最大高さMは、0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、0.2〜1.5μmであることがより好ましく、0.3〜1.0μmであることがさらに好ましい。
底部微小突起最大高さMが0.1μm以上であると、空気層から基材に向かって、屈折率が連続的に緩やかに変化することによって防反射性が生じやすい。また、底部微小突起最大高さMが2μm以下であると、反射防止構造体1の機械的強度を保ちやすい。
底部微小突起最大高さMは次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿う任意の異なる断面で、ミクロトーム又はCP加工(イオンミリング)等によって切り出して断面サンプルを作製する。断面サンプルについて、1〜5個の底部2が含まれる範囲を電子顕微鏡で10〜20点観察し、各観察範囲内で最も高い底部微小突起4の高さM1を各々測定し、それらのM1の算術平均として求める。
各々の断面サンプルにおけるM1は次のようにして求められる。すなわち、前記断面サンプルの観察範囲内における最も高い底部微小突起4の頂部(頂点)と、その底部微小突起4の最も低い位置の水平線間の距離をM1として求める。
上面微小突起5の最大高さN(以下「上面微小突起最大高さN」という。)は、0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、0.2〜1.5μmであることがより好ましく、0.3〜1.0μmであることがさらに好ましい。
上面微小突起最大高さNが0.1μm以上であると、空気層から基材に向かって、屈折率が連続的に緩やかに変化することによって防反射性が生じやすい。また、上面微小突起最大高さNが2μm以下であると、反射防止構造体1の機械的強度を保ちやすい。
上面微小突起最大高さNは次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿う任意の異なる断面で、ミクロトーム又はCP加工(イオンミリング)等によって断面を切り出して断面サンプルを作製する。作製した断面サンプルにおける上面微小突起5からなる微細構造が形成された10個の大突起3の上面を電子顕微鏡で観察する。
観察した10個の大突起3の各々において、最も高い上面微小突起5の高さN1を各々測定し、それらのN1の算術平均として求める。
なお、1つの断面サンプルで、上面微小突起5からなる微細構造が形成された10個の大突起3を抽出できない場合は、異なる断面で切り出した複数の断面サンプルを作製して、上面微小突起5からなる微細構造が形成された大突起3を10個抽出し、各々のN1を測定する。
各々の大突起3におけるN1は次のようにして求められる。すなわち、上面微小突起5を有する大突起3における最も高い上面微小突起5の頂部(頂点)と、その上面微小突起5の最も低い位置の水平線間の距離をN1として求める。
なお、最も高い頂部(頂点)を選定するにあたり、左側又は右側に隣接する上面微小突起5が存在しない上面微小突起5は対象としない。
上記の各測定方法の内、断面サンプルを使用する測定方法において、反射防止構造体1の断面を切り出す際に凹凸構造が潰れてしまう場合には、次の代替方法を適用してもよい。
すなわち、まず、反射防止構造体1の大突起3等が形成されている側の面に、樹脂組成物を塗布して硬化させることにより、底部微小突起4や上面微小突起5を含む凹凸構造が転写されたサンプル、または凹凸構造を樹脂組成物で保護したサンプルを作製する。次いで、そのサンプルの高さ方向に沿う断面を切り出す。
そして、反射防止構造体1の対象とする部分、または転写された部分のピッチや高さを測定する。
例えば、底部微小突起平均高さMを求める場合は、凹凸構造が転写されたサンプルにおいて、底部2に対応する任意の10個の凸部を観察する。そして、各凸部における任意の10個の底部微小突起4が転写された凹部(又はその隣の凸部)とそれに隣接する凹部(又はその隣の凸部)の高さを各々測定し、それらの高さの算術平均として求める。
他の数値(大突起最大高さH、上面微小突起最大高さN)も、同様に凹凸構造が転写されたサンプルを利用して求めることができる。
図6を参照して、本実施形態の反射防止構造体1において、反射が防止される仕組みを説明する。
図6に示すように、反射防止構造体1に入射して直接底部2に到達した光線L1は、群立する底部微小突起4の、空気層から基材に向かって、屈折率が連続的に緩やかに変化することによる防反射性(モスアイ効果)によって、反射が抑制され反射防止構造体1内に取り込まれる。
また、光線L2、光線L3のように、大突起3の側面に到達した光は、大突起3の側面で反射して底部2に至り、群立する底部微小突起4のモスアイ効果によって反射が抑制され反射防止構造体1内に取り込まれる。
光線L4のように、大突起3の上面に到達した光は反射されてしまうが、光線L5のように、上面微小突起5が群立している大突起3の上面に到達した光は、群立する上面微小突起5のモスアイ効果によって反射が抑制され反射防止構造体1内に取り込まれる。
なお、多峰性構造である大突起3は、後述の型を利用した製造方法により、隣接する底部2同士の隙間の領域を小さくして、大突起3の上面の幅を極限まで狭くできる。
そのため、光線L4のように、大突起3の上面に光線があたって反射される確率を、極めて小さくすることが可能である。
また、本実施形態のように、大突起3の上面に群立する上面微小突起5からなる微細構造が形成されていれば、大突起3の上面にあたった光線も反射防止構造体1に取り込むことができる。大突起3の上面、特に面積が広い部分に、群立する上面微小突起5からなる微細構造が形成されていれば、その効果は大きい。
後述の型を使用した製造方法によれば、大突起3の上面、特に面積が広い部分に、容易に上面微小突起5からなる微細構造を形成できる。
各底部2の底部直径R1は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。反射防止構造体1の二次元平面において底部2を最密充填し、大突起3の上面の面積を可能な限り小さくする為には、各底部2の底部直径R1は互いに同じであることが好ましい。
ただし、この最密充填によって底部2の配置が規則的になると、この反射防止構造体1に入射した光が光学干渉を起こす場合がある。この光学干渉を防ぐ観点から、図1〜3に示した例の様に、各底部2の底部直径R1が、互いに異なる底部2を有することが好ましい。
底部2の底部直径R1は、0.1μm刻みで2つ以上のピークを有する分布とされていることがより好ましく、3つ以上のピークを有する分布とされていることがより好ましい。
底部2の底部直径R1の分布は次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿って見下ろすようにして電子顕微鏡で観察し、底部2が100〜200個含まれる正方形の領域を任意に設定し、前記領域に含まれる各底部2について、底部直径R1を各々測定する。
そして、図7に示す様に、直径を横軸に取り、0.1μm刻みでその底部直径R1を有する底部2の個数を縦軸に取った分布図を作成する。
図7には、底部直径R1が、0.1μm刻みで、(a)2つのピークを有する分布とされている分布図、及び(b)3つのピークを有する分布とされている分布図を示した。なお、図7(a)は後述の実施例1の反射防止構造体の底部直径R1の分布図であり、図7(b)は後述の実施例2の反射防止構造体の底部直径R1の分布図である。
底部直径R1が、0.1μm刻みで2つ以上のピークを有する分布とされている場合、2つ以上のピークは、前記直径の差が0.3μm以上であって互いに隣接する一対のピークを含むことが好ましい。互いに隣接する一対のピークの前記直径の差が、総て0.3μm以上であることがより好ましい。
互いに隣接する一対のピークの前記直径の差は、0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。
互いに隣接する一対のピークの前記直径の差は、0.3μm以上であれば、底部2の配置が規則的になり過ぎず、適度なランダムネスを有する配置になるため、光学干渉をより容易に防止することができる。
互いに隣接する一対のピークの前記直径の差は、2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。
互いに隣接する一対のピークの前記直径の差が、2.0μm以下であれば、反射防止構造体1の二次元平面において、底部2を高密度で配置しやすいため、防反射性をより高めることができる。
反射防止構造体1の全面積に占める底部2の合計面積の割合は、40〜85%が好ましく、50〜85%がより好ましく、55〜85%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、防反射性がより高められる。これらの効果をより高める観点から、上記範囲の上限値は高いほど好ましいが、100%にすることは不可能であり、85%程度が実質的な限界といえる。
反射防止構造体1の全面積に占める底部2の合計面積の割合は、次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿って見下ろすようにして電子顕微鏡で観察し、底部2が100〜200個含まれる正方形の領域を任意に設定する。
この正方形の領域における底部2の合計面積は、個々の底部2の面積を目視又は画像処理することにより求める。大突起3の一部が欠損することにより、隣接する底部2同士が連通している場合、その欠損した部位にも大突起3が連続して存在していると仮定して前記面積を求める。
底部2の全面積(100%)に対して、群立する底部微小突起4からなる微細構造が形成されている領域の合計面積の占有率は、60〜100%が好ましく、65〜100%がより好ましく、70〜100%がさらに好ましい。
微細構造が形成されている領域の面積の占有率が70%以上であることにより、底部2に到達した光線をより確実に反射防止構造体1に取り込むことができる。
底部2の全面積(100%)に対して、群立する底部微小突起4からなる微細構造が形成されている領域の合計面積の占有率は、次のように求める。
反射防止構造体1を高さ方向に沿って見下ろすようにして電子顕微鏡で観察し、底部2が100〜200個含まれる正方形の領域を任意に設定する。
この正方形の領域における底部2の合計面積は、個々の底部2の面積を目視又は画像処理することにより求めた値を合計したものである。大突起3の一部が欠損することにより、隣接する底部2同士が連通している場合、その欠損した部位にも大突起3が連続して存在していると仮定して前記面積を求める。また、この正方形の領域における群立する底部微小突起4からなる微細構造が形成されている領域の合計面積は、個々の底部2における群立する底部微小突起4からなる微細構造が形成されている領域の面積を目視又は画像処理することにより求めた値を合計したものである。
反射防止構造体1全体の形状に特に限定はなく、例えばフィルム状、シート状、プレート状、ブロック状、レンズ状、球状等とすることができる。反射防止構造体1は、その使用用途によって適宜の具体的形状とすることができる。
反射防止構造体1は、防眩性を高める観点で、一部又は全部が濃色の材料で形成されていることが好ましく、全部が濃色の材料で形成されていることがより好ましい。濃色の中でも、黒色が特に好ましい。
反射防止構造体1の一部又は全部を濃色、特に黒色とすることにより、反射防止構造体1に入射した光線をより吸収しやすくなり、防眩性が高まる。
[反射防止構造体の製造方法]
本発明にかかる反射防止構造体は、例えば、以下のようにして製造する型を使用することにより大量に生産することができる。
図8に型10の製造方法の一例を、図9に他の一例を示す。
なお、図8と図9のいずれの方法においても、型10の材料となる基板21の表面は平坦面でも粗面でもよい。粗面は、ブラスト処理等の公知方法、または既存のフォトマスクを利用したドライエッチングによって作製される凹凸構造でも良い。工程を簡略化するため、基板21の表面は、予め、ブラスト処理等の公知方法によって粗面加工しておくことが好ましい。基板21表面の粗面化は、算術平均粗さRaが0.01〜0.5μmとなる程度が好ましく、0.05〜0.45μmとなる程度がより好ましい。
基板21の表面を、予め粗面加工しておくことにより、底部微小突起4に対応する多数の凸部微小孔14が形成されやすくなる。
基板21は、単一基材でも複合基材でもよい。単一基材としては、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、ガラス、石英等が挙げられる。複合基材としては、例えば、母材上にSiやSiCを製膜した基材が挙げられる。母材の材質としては特に制限されず、ガラス(石英、アルカリガラス、無アルカリガラス、サファイア)、セラミックス、金属(鉄、ステンレス、ニッケル等)を用いることができる。なかでも、エッチング対象物として加工性がよく、また広く使用されているという理由からシリコンが好ましい。
基板21の表面は、平面に限られず曲面を有していてもよい。
(第1の型の製造方法例)
図8の方法では、まず、図8(a)に示すように、基板21の表面に多数の粒子22を散布し、粒子22同士が互いに接触するように密に敷き詰める。ただし、粒子22が他の粒子22の上に積み上がることは避けて、1層の粒子22からなる層が基板21表面に形成されるようにする。各粒子22の形状は真球であってもよいし、真球以外の形状、例えば回転楕円体等であってもよい。各粒子22の直径は、反射防止構造体1の底部2の底部平均直径Rよりやや大きいものとする。
粒子22の材料としては、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Ni、Si、Wなどの金属、SiO、Al、TiO、MgO、CaOなどの金属酸化物が挙げられる。また、SiN、TiNなどの窒化物、SiC、WCなどの炭化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子、その他の半導体材料、無機高分子なども挙げられる。また、これらの材料の少なくとも2種類を併用することもできる。上述した材料のなかでも、基板21に対するエッチング選択比の自由度が高い観点から、無機酸化物であることが好ましい。また、無機酸化物のなかでもSiO(シリカ)がより好ましい。
次に、図8(b)に示すように、粒子22を敷き詰めた基板21を、エッチングチャンバー内で生成したエッチングガスプラズマG(イオン、ラジカル、ガス等)で加工すると、粒子22がエッチングを防ぐマスクとして機能し、粒子22同士の間隙を抜けたエッチングガスプラズマGにより、基板21がエッチングされる。この際、粒子22ができるだけエッチングされにくい条件でエッチングする。これにより、基板21の粒子22同士の間隙に対応する部分に、比較的幅の狭い溝13が形成される。
粒子22ができるだけエッチングされにくい条件とするためには、エッチングガスプラズマGのガス種類と、ガス流量、ガス比率、圧力、バイアス電力等とを適切に選択すればよい。
例えば、基板21がシリコンで粒子22がSiOである場合、エッチングガスプラズマGで使用するガス種としては、Ar、SF、F、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、Cl、CCl、SiCl、BCl、BCl、BC、Br、Br、HBr、CBrF、HCl、CH、NH、O、H、N、CO、COを使用できる。中でも一般的に広く使用されているガスであることから、Ar、SF、CF、C、C、C、CHF、Cl、BCl、CH、NH、O、H、N、からなる群から選択される1種類以上のガスが好ましい。
なお、ここで、粒子22が比較的エッチングされやすい条件でエッチングした場合は、溝13は、全体的に幅が広くなると共に深さは均一となりやすい。
これに対して、粒子22ができるだけエッチングされにくい条件でエッチングすると、隣接する粒子22が接している部分では溝13の深さはごく浅くなり、隣接する粒子22同士の間にある程度距離がある部分、例えば3つ以上の粒子22に囲まれた部分等では、溝13は深くなる。そのため、本製造方法例による溝13は、粒子22の輪郭に沿って深さが不規則に変化する多峰性構造となる。
例えば粒子22が総て同じ大きさであって六方最密充填されている場合、1つの粒子22の周囲には6つの他の粒子22が接触している部分がある。そして、その間には、当該粒子22と他の2つの粒子22に囲まれた部分、すなわち、隣接する粒子22同士の間にある程度距離がある部分が存在する。そのため、この場合の溝13は、当該1つの粒子22の輪郭に沿って、6つの深い部分とその間の6つの浅い部分が存在する多峰性構造となる。
続いて、図8(c)に示すように、エッチングされた基板21表面から粒子22を除去する。その後、基板21の表面を粗面化して上部粗面24を形成すると共に、溝13の底を粗面化して溝内粗面25を形成する粗面化処理を行う。
基板21がシリコン基板である場合、粗面化処理に先だって、シリコンの表面から、酸化皮膜を除去するエッチング処理を行う。その後露出したシリコン表面を荒らすエッチングによって粗面化処理を行う。
シリコンの酸化皮膜を除去するエッチング条件とするためには、エッチングガスの種類、ガス流量、ガス比率、圧力、バイアス電力等を適切に選択すればよい。
エッチングガスとしては、Ar、SF、CF、C、C、C、CHF、Cl、CH、NH、O、H、Nを使用できる。中でもAr、NH、O、H、N、からなる群から選択される1種類以上のガス、または、これらのガスに、さらにSF、CF、C、C、C、CHFからなる群から選択される1種類以上のガスを加えた混合ガスが好ましい。
露出したシリコン表面を荒らすエッチング条件とするためには、エッチングガスの種類、ガス流量、圧力、バイアス電圧等を適切に選択すればよい。
エッチングガスとしては、SF、Cl、HClを使用できる。Si系基板へのエッチング性が高く、また一般的に広く使用されている点で、Clが好ましい。また希釈ガスとして、Ar、O、H及びNからなる群から選ばれる少なくとも1種を添加しても良い。希釈ガスは、エッチングガスの均一化(Si系基板の加工分布を良くする)や、Si系基板のエッチングレートの調整のために用いられる。
なお、粒子22を除去した際に、既に上部粗面24や溝内粗面25が形成されている場合には、粗面化処理を省略してもよい。粗面化処理を行わなくとも、粒子22に由来する残渣が残留していたり、エッチング時に粒子22の下方に回り込んだエッチングガスが基板21表面を不均一にエッチングしたりすることにより、表面等が粗面化されている場合がある。
最後に、図8(d)に示すように、上部粗面24や溝内粗面25が形成された荒れた基板21を、エッチングチャンバー内で生成したエッチングガスプラズマGで加工する。
荒れによって基板21の上部粗面24や溝内粗面25の部分におけるエッチングレートに差異が生じているため、エッチングを進めるにつれて反射防止構造体1の表面に、底部微小突起4に対応する多数の凸部微小孔14が形成される。また、溝13の底に、上面微小突起5に対応する多数の溝部微小孔15が形成される。
これによって、目的の型10が得られる。
粗面化された部分に微小孔を形成するエッチング条件とするためには、エッチングガスの種類、ガス流量、ガス比率、圧力、バイアス電力等を適切に選択すればよい。
エッチングガスとしては、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、SF、Cl、HCl、SiCl、BCl、BCl、CCl、BCからなる群から選ばれる少なくとも1種のガスまたは2種以上を混合した混合ガスを使用できる。また、希釈ガスとして、Ar、H及びNからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに添加しても良い。中でも微小孔の口径や深さをコントロールしやすいSFまたはClを含む混合ガスが好ましい。
各段階のエッチングにおいて、エッチングガスの流量は、ドライエッチングチャンバー容量、加工するSi系基板のサイズによって異なるため、適宜調整する必要がある。
エッチングガスの流量(sccm)と希釈ガスの流量(sccm)との比(エッチングガス/希釈ガス)は、例えば100/0〜10/90である。
Si系基板のサイズが大きい場合、Si系基板の面内におけるエッチングガスの分布が悪化する傾向がある。その場合は、Si系基板全体のエッチングレートの変動幅を縮小するために、希釈ガスの比率を高くすることが好ましい。
(第2の型の製造方法例)
図9の方法では、まず、図9(a)に示すように、公知のフォトリソグラフィ又はナノインプリントによってパターニングしたレジスト膜23を多数配置する。各レジスト膜23を上方から見ると略円形、すなわち、高さ方向に沿って見下ろした場合に円形又は楕円形又はこれらに近似しうる(その形状に近しい円形又は楕円形を想定しうる)形状である。
レジスト膜23は円柱(楕円柱)形状なため、互いに接触するように密に敷き詰めるとz方向での線接触となり、エッチングが進行していても隙間ができにくい。そのため、互いに接触しない範囲で密に敷き詰める。
レジスト膜23と隣接するレジスト膜23との間隔(最も近接した部分における間隔)は、反射防止構造体1の底部2の底部平均直径Rの1〜40%とすることが好ましく、3〜30%とすることがより好ましく、5〜20%とすることがさらに好ましい。
各レジスト膜23の直径は、反射防止構造体1の各底部2の底部直径R1よりやや大きいものとする。
レジスト膜23の材料としては、例えば、有機無機ハイブリッド材料からなるフォトレジストが挙げられる。公知の感光性機能性高分子材料等、好適なパターニングが可能であるとともにエッチング工程におけるマスクとして適した材料が用いられる。フォトリソグラフィで用いられるレジスト材料を含む液状体は、例えば、ポリマー、感光剤、添加剤、及び、溶剤を主成分とする混合物である。その他、レジスト膜23は、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチング法とによって形成される無機化合物からなるハードマスクであってもよく、例えば、高密度プラズマCVD法、あるいは、LP−CVD法などで形成されるシリコン窒化膜やシリコン酸化膜によって形成されていてもよい。
上記のなかでも、レジスト膜23の材料は、容易にエッチングマスクのパターニングが可能という理由からフォトレジストが好ましい。
次に、図9(b)に示すように、レジスト膜23を敷き詰めた基板21を、エッチングチャンバー内で生成したエッチングガスプラズマGで加工すると、レジスト膜23がエッチングを防ぐマスクとして機能し、レジスト膜23同士の間隙を吹き抜けたエッチングガスプラズマGにより、基板21がエッチングされる。この際、レジスト膜23ができるだけエッチングされにくい条件でエッチングする。これにより、基板21のレジスト膜23同士の間隙に対応する部分に、比較的幅の狭い溝13が形成される。
レジスト膜23ができるだけエッチングされにくい条件とするためには、エッチングガスプラズマGのガス種類、ガス流量、ガス比率、圧力、バイアス電力等を適切に選択すればよい。
例えば、基板21がシリコンでレジスト膜23がフォトレジストである場合、エッチングガスとしては、Ar、SF、F、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、Cl、CCl、SiCl、BCl、BCl、BC、Br、Br、HBr、CBrF、HCl、CH、NH、O、H、N、CO、COを使用できる。中でも一般的に広く使用されているガスであることから、Ar、SF、CF、C、C、C、CHF、Cl、BCl、CH、NH、O、H、N、からなる群から選択される1種類以上のガスが好ましい。
なお、ここで、レジスト膜23が比較的エッチングされやすい条件でエッチングした場合は、溝13は、全体的に幅が広くなると共に深さは均一となる。
これに対して、レジスト膜23ができるだけエッチングされにくい条件でエッチングすると、隣接するレジスト膜23が近接している部分では溝13の深さはごく浅くなり、隣接するレジスト膜23同士の間にある程度距離がある部分、例えば3つ以上のレジスト膜23に囲まれた部分等では、溝13は深くなる。そのため、本製造方法例による溝13は、第1の型の製造方法例と同様に、レジスト膜23の輪郭に沿って深さが不規則に変化する多峰性構造となる。
続いて、図9(c)に示すように、エッチングされた基板21表面からレジスト膜23を除去する。その後、基板21の表面を粗面化して上部粗面24を形成すると共に、溝13の底を粗面化して溝内粗面25を形成する粗面化処理を行う。
基板21がシリコン基板である場合、粗面化処理に先だって、シリコンの表面から、酸化皮膜を除去するエッチング処理を行う。その後露出したシリコン表面を荒らすエッチングによって粗面化処理を行う。この場合の各エッチング条件は第1の型の製造方法例において説明したのと同様である。
なお、第1の型の製造方法例と同様に、レジスト膜23を除去した際に、既に上部粗面24や溝内粗面25が形成されている場合には、粗面化処理を省略してもよい。
最後に、図9(d)に示すように、上部粗面24や溝内粗面25が形成された荒れた基板21を、エッチングチャンバー内で生成したエッチングガスプラズマGで加工する。
荒れによって基板21の上部粗面24や溝内粗面25の部分におけるエッチングレートに差異が生じているため、エッチングを進めるにつれて反射防止構造体1の表面に、底部微小突起4に対応する多数の凸部微小孔14が形成される。また、溝13の底に、上面微小突起5に対応する多数の溝部微小孔15が形成される。
これによって、目的の型10が得られる。
粗面化された部分に微小孔を形成するエッチング条件は第1の型の製造方法例において説明したのと同様である。
第1の型の製造方法例で説明した方法で作製した型10の一例を図10及び図11に示す。図10は、作製した型10の一例を上方から高さ方向に沿って見た電子顕微鏡写真あり、図2は、斜め上方から見た電子顕微鏡写真である。
図10、図11において、凸部12が群立し、凸部12の上面に多数の凸部微小孔14からなる微細構造が形成されている様子が観察される。凸部12の外側の黒く見える部分が溝13である。
(型を用いた反射防止構造体の製造方法)
反射防止構造体1は、上記の方法等で作製した型10の凹凸構造を、反射防止構造体1の材料に対して、ナノインプリント法、プレス成形法、射出成形法等の公知の技術によって転写することによって得られる。
図12に示すように、型10の凸部12の上面に対応する部分が反射防止構造体1の底部2となり、底部2には、型10の凸部微小孔14に対応する底部微小突起4が多数形成される。
また、反射防止構造体1の溝13に対応する部分が反射防止構造体1の大突起3となり、大突起3の上面には、型10の溝部微小孔15に対応する上面微小突起5が多数形成される。
反射防止構造体1の材料は、合成樹脂であることが好ましい。合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の公知の合成樹脂が挙げられる。好適な材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、アクリル樹脂等の合成樹脂などを用いることができる。合成樹脂は透明でもよく、または黒色を呈していてもよい。
反射防止構造体1は、大突起3の高さを抑制しても高い反射防止効果が得られる。そのため、型10の溝13の深さを抑制することができるので、型10の凹凸構造を反射防止構造体1の材料に転写した際の離型性を高められる。
したがって、反射防止構造体1の生産効率を高められると共に、転写不良を防止できる。
[他の実施形態]
図13は、本発明の他の実施形態を示す断面図である。
図13の反射防止構造体100は、反射防止構造体1と反射防止構造体1に積層された濃色材料層30とで構成されている。
濃色材料層30は反射防止構造体1の大突起3が形成されている面と反対側の面、すなわち、凹凸構造が形成されている面と反対側の面に設けられている。濃色材料層30は、反射防止構造体1の大突起3が形成されている面と反対側の面の一部に設けられていてもよいが、全部に設けられていることが好ましい。
濃色材料層30の態様に特に限定はない。例えば、反射防止構造体1に塗布された塗料の層、ないしは、反射防止構造体1に印刷されたインク層とすることができる。また、反射防止構造体1に接着層を介して又は直接積層されたシートでもよい。また、光学装置の黒色筐体内部に反射防止構造体1を貼着した場合は、当該筐体が濃色材料層30となる。
濃色材料層30の色は濃色であればよいが、黒色であることが特に好ましい。
反射防止構造体1の凹凸構造が形成されている面と反対側の面の一部又は全部に濃色材料層30、特に黒色材料層である濃色材料層30を設けることにより、反射防止構造体1に取り込まれて濃色材料層30まで到達した光線を吸収できる。そのため、一度反射防止構造体1に取り込まれた光が反射防止構造体1と外部との界面で反射して再び外部に放出されることを抑制でき、防眩性が高まる。
[評価方法等]
(離型性の評価)
下記各実施例、比較例の反射防止構造体を製造する際に、型の凹凸構造が転写されたCOPフィルムを型から剥離する際の離型性を、以下の基準により評価した。
◎:圧力開放と同時に、COPフィルムが型から自然と剥がれた。
○:圧力開放時はCOPフィルムと型が一体化しているが、COPフィルムを型から少し剥がすと抵抗なく剥がれた。
△:圧力開放時はCOPフィルムと型が一体化しており、COPフィルムを型から剥がす際に抵抗があった。
×:圧力開放時はフィルムと型が一体化しており、COPフィルムを型から剥がす際に大きな抵抗があるため剥がれづらい。
(防反射性の評価)
実施例、比較例で作製した反射防止構造体の防反射性を確認するため、日本分光製分光光度計V−770を使用し、視感度補正反射率(Y値)を評価した。Y値の数値が低いほど、反射率が低く、防反射性に優れることを意味する。
[実施例1]
図8に示した第1の型の製造方法例により型を作製し、その型の凹凸構造熱可塑性樹脂に熱ナノインプリント法で転写するという手順で反射防止構造体を作製した。以下何に具体的な手順を説明する。
呼び径3.0μm、4.0μmの2種類の球形コロイダルシリカの20質量%水分散体を各々用意し、重量比1:1で混合した水分散体を用意した。
この水分散体を孔径10μmφのメンブランフィルターでろ過した。メンブランフィルターを通過した水分散体に、濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物水溶液を加え、約40℃で3時間反応させて反応液を得た。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.02質量倍となるように水分散体と加水分解水溶液とを混合した。
得られた反応液に、この反応液の体積の4倍の体積のメチルエチルケトンを加えて十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出し、濃度0.91質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を得た。
得られた疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01mL/秒で滴下した。水槽の下層水にはあらかじめ、基板として、表面が平坦なSi基板(6inch)を略鉛直方向に浸漬しておいた。
その後、超音波(出力300W、周波数950kHz)を下層水中から水面に向けて10分間照射して粒子が二次元的に最密充填するのを促しつつ、分散液の溶剤であるメチルエチルケトンを揮発させ、単粒子膜を形成させた。
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が25mNm−1になるまで圧縮し、基板を5mm/分の速度で引き上げ、基板の片面上に移し取った。
続いて、単粒子膜が形成された基板上にバインダーとして1質量%モノメチルトリメトキシシランの加水分解液を浸透させ、その後、加水分解液の余剰分をスピンコーター(3000rpm)で1分間処理して除去した。その後、これを100℃で10分間加熱してバインダーを反応させ、単粒子膜付きの基板を得た。
前記単粒子膜付き基板に対して、BCl、Clの混合ガスによりドライエッチングを行い溝を形成した。エッチング条件は、アンテナ電力1500W、バイアス電力500W、ガス流量100sccm、エッチング時間1200秒とした。その後、エッチングされた粒子をワイピング及び水洗によって除去した。
次いで、粒子除去後の基板に対して、CF、Oの混合ガスにより、アンテナ電力1500W、バイアス電力300W、ガス流量200sccm、エッチング時間300秒でエッチングを行い、酸化皮膜を除去した。
その後、Clガスにより、アンテナ電力1500W、バイアス電力800W、ガス流量100sccm、エッチング時間240秒でエッチングを行う粗面化処理を行った。
さらに、BCl、Clの混合ガスにより、アンテナ電力1500W、バイアス電力800W、ガス流量100sccm、エッチング時間400秒でエッチングを行い、粗面化された部分に多数の微小孔を形成し、実施例1の型を得た。図10、図11は、実施例1の型の写真である。
厚さ0.188mmのCOPフィルムに対して、圧力6.0MPa、処理温度170℃で実施例1の型を使用して熱ナノインプリントを行い、室温まで冷却させた後に圧力を開放して、型の凹凸構造が転写されたCOPフィルムを型から剥離し、実施例1の反射防止構造体として得た。図1〜3は、実施例1の反射防止構造体の写真である。
実施例1の反射防止構造体各部のサイズ等を前述の方法によって求めたところ、下記の通りであった。
底部平均直径R:2.9μm
底部直径R1の0.1μm刻みの分布:2.6μm、3.6μm、にピーク
底部微小突起平均ピッチP:98nm
上面微小突起平均ピッチQ:98nm
大突起の最大高さH:6.3μm
底部微小突起最大高さM:750nm
上面微小突起最大高さN:750nm
比[H/M]:8.4
反射防止構造体の全面積に占める底部の合計面積の割合:61.2%
底部の全面積に対して、群立する底部微小突起からなる微細構造が形成されている領域の合計面積の占有率:70.4%
[実施例2]
呼び径2.0μm、3.0μm、4.0μmの3種類の球形コロイダルシリカの20質量%水分散体を各々用意し、重量比1:1:1で混合した水分散体を用意した以外、実施例1と同様な手法を用いて、実施例2の型を作製した。その後、実施例1と同様な手法を用いて実施例2の反射防止構造体を得た。
実施例2の反射防止構造体各部のサイズ等を前述の方法によって求めたところ、下記の通りであった。
底部平均直径R:2.3μm
底部直径R1の0.1μm刻みの分布:1.8μm、2.6μm、3.6μmにピーク
底部微小突起平均ピッチP:98nm 上面微小突起平均ピッチQ:98nm
大突起の最大高さH:5.6μm
底部微小突起最大高さM:750nm
上面微小突起最大高さN:750nm
比[H/M]:7.5
反射防止構造体の全面積に占める底部の合計面積の割合:72.3%
底部の全面積に対して、群立する底部微小突起からなる微細構造が形成されている領域の合計面積の占有率:69.7%
[実施例3]
BCl、Clの混合ガスによるドライエッチング時間を1650秒に変更した以外、実施例1と同様な手法を用いて、実施例3の型を作製した。その後、実施例1と同様な手法を用いて実施例3の反射防止構造体を得た。
実施例3の反射防止構造体各部のサイズ等を前述の方法によって求めたところ、下記の通りであった。なお、実施例3の反射防止構造体の大突起上面には、上面微小突起が形成されていなかった。
底部平均直径R:2.9μm
底部直径R1の0.1μm刻みの分布:2.6μm、3.6μmにピーク
底部微小突起平均ピッチP:98nm
大突起の最大高さH:7.5μm
底部微小突起最大高さM:750nm
上面微小突起最大高さN:750nm
比[H/M]:10
反射防止構造体の全面積に占める底部の合計面積の割合:61.6%
底部の全面積に対して、群立する底部微小突起からなる微細構造が形成されている領域の合計面積の占有率:68.7%
[比較例1]
特許文献2の実施例2の筒形状の開口部を有する反射防止構造体を比較例1の反射防止構造体とした。
すなわち、呼び径3.0μm、4.0μm、5.0μmの3種類の球形コロイダルシリカの20質量%水分散体を各々用意し、重量比1:1:1で混合した水分散体を用意した以外、実施例1と同様な手法を用いて単粒子膜付きの基板を得た。
前記単粒子膜付き基板に対して、CF、Cl、Oの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1500W、バイアス電力1000W、ガス流量100sccm、エッチング時間1000秒とした。その後、エッチングされた微粒子をワイピング及び水洗によって除去し、さらにClガスによりドライエッチングを行い比較例1の型を作製した。
その後、実施例1と同様な手法を用いて比較例1の筒形状の開口部を有する反射防止構造体を得た。
比較例1の反射防止構造体各部のサイズ等を特許文献2に記載の方法によって求めたところ、下記の通りであった。比較例1の反射防止構造体の壁部の上面には、微小突起が形成されていなかった。
なお、比較例1と後述の比較例2における壁部の平均高さは、特許文献2の段落[0019]に記載の方法で求めた値である。開口径分布は、特許文献2の段落[0028]に記載の方法で求めた吸光ユニット2の開口径p1の分布である。開口率は、特許文献2の段落[0032]に記載の方法で求めた値である。底部微小突起平均ピッチは、特許文献2の段落[0026]に記載の方法で求めた値である。底部微小突起平均高さは、特許文献2の段落[0023]に記載の方法で求めた値である。
壁部の平均高さ:7.0μm
開口径分布:2.6μm、3.5μm、4.3μmにピーク
開口率:55.2%
底部微小突起平均ピッチ:110nm
底部微小突起平均高さ:750nm
[比較例2]
特許文献2の実施例3の筒形状の開口部を有する反射防止構造体を比較例2の反射防止構造体とした。
すなわち、比較例1と同様な手法で単粒子膜付きの基板を得た。その後、CF、Clの混合ガスによりドライエッチングを行った。エッチング条件は、アンテナ電力1500W、バイアス電力800W、ガス流量100sccm、エッチング時間1500秒とした。その後、エッチングされた微粒子をワイピング及び水洗によって除去し、さらにClガスによりドライエッチングを行い比較例2の型を作製した。その後、実施例1と同様な手法を用いて比較例2の反射防止構造体を得た。
比較例2の反射防止構造体各部のサイズ等を特許文献2に記載の方法によって求めたところ、下記の通りであった。比較例2の反射防止構造体の壁部の上面には、微小突起が形成されていなかった。
壁部の平均高さ:13.0μm
開口径分布:2.6μm、3.5μm、4.3μmにピーク
開口率:56.1%
底部の剣山構造における微小突起の平均ピッチ:110nm
底部の剣山構造における微小突起の平均高さ:750nm
実施例1〜3の反射防止構造体の評価結果を表1に、比較例1、2の評価結果を表2に示す。
Figure 2021189192
Figure 2021189192
表1に示す様に、実施例の反射防止構造体は、いずれも離型性と防反射性に優れていた。
これに対して、表2に示す様に、比較例1、2の反射防止構造体は、いずれも離型性に問題があった。良好な防反射性が得られる程度に壁部を高くした比較例2の離型性は、特に劣っていた。また、壁部を低くして、ある程度の離型性が確保された比較例1は、防反射性に劣っていた。
本発明に係る反射防止構造体は、例えば、CDやDVD等の光学ディスクの表面、レンズ等の光学部品の表面、ディスプレイの表面に使用される保護フィルム等、望遠鏡、分光光度計等の光学装置の筐体の内面等に使用できる。
また、黒色を際立たせる加飾目的で黒色塗装面等に適用してもよい。
1 反射防止構造体
2 底部
2a 外縁部
3 大突起
4 底部微小突起
5 上面微小突起
10 型
12 凸部
13 溝
14 凸部微小孔
15 溝部微小孔
21 基板
22 粒子
23 レジスト膜
24 上部粗面
25 溝内粗面
30 濃色材料層
100 反射防止構造体
R 底部平均直径
H 大突起最大高さ
M 底部微小突起最大高さ
N 上面微小突起最大高さ
P 底部微小突起平均ピッチ
Q 上面微小突起平均ピッチ
G エッチングガス

Claims (10)

  1. 略円形の外縁部を有する複数の底部と、前記複数の底部を互いに画する大突起を有し、
    前記底部の外縁部を含む最小円の直径の平均が500nm以上20μm以下であり、
    前記底部に、平均ピッチ10nm以上500nm以下で群立する微小突起からなる微細構造が形成されており、
    前記大突起は、前記外縁部に沿って上面の高さが不規則に変化する多峰性構造とされており、
    前記大突起の最大高さHは、前記底部における微小突起の最大高さMより大きいことを特徴とする反射防止構造体。
  2. 前記大突起の最大高さHが、3〜12μmである、請求項1に記載の反射防止構造体。
  3. 前記底部における微小突起の最大高さMは0.1μm以上2μm以下である、請求項1又は2に記載の反射防止構造体。
  4. 前記大突起の最大高さHの前記底部における微小突起の最大高さMに対する比[H/M]が3〜120である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
  5. 前記大突起は、上面の少なくとも一部に、平均ピッチ10nm以上500nm以下で群立する微小突起からなる微細構造が形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
  6. 前記大突起の上面における微小突起の最大高さNは0.1μm以上2μm以下である、請求項5に記載の反射防止構造体。
  7. 前記底部の前記外縁部を含む最小円の直径は、0.1μm刻みで2つ以上のピークを有する分布とされている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
  8. 前記2つ以上のピークは、前記直径の差が0.3μm以上であって互いに隣接する一対のピークを含む、請求項7に記載の反射防止構造体。
  9. 黒色の材料で構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
  10. 前記大突起が形成されている面と反対側の面に、黒色材料の層を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の反射防止構造体。
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