以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍適性米の製造方法を表すフローチャートである。
図2は、稲穂から白米が製造される工程の概略を表す模式図である。
図3は、稲穂から脱穀された籾の断面を表す断面図である。
本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法は、冷凍適性を有する生の状態の米(生米)を製造する方法である。「冷凍適性米」とは、生米自体が環境温度・湿度の変動に対応可能な性質を有するとともに米飯の冷凍に適した能力あるいは機能を有する生米である。冷凍適性米を炊いた御飯(米飯)が冷凍されたもの(冷凍米飯)は、加熱解凍不要であり、自然解凍であっても米飯の変質や澱粉質のβ化が生ずることを抑え、炊きたての米飯の品質を保つことができる。また、冷凍適性米が使用された冷凍米飯を必要に応じて加熱解凍することも可能であり、また、冷凍米飯が自然解凍された米飯を必要に応じて温めることも可能である。この場合には、炊きたての米飯の品質をより高い精度で再現することができる。
図1〜図3に表したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法では、まず、ステップS1において、稲穂51から籾52を外す(脱穀工程)。続いて、ステップS2において、脱穀工程において脱穀した籾52を篩にかけ、脱穀した籾52と、脱穀した籾52に混在する籾殻および稲穂と、を分離する(ふるい工程)。続いて、ステップS3において、脱穀した籾52を保管のために乾燥させる(乾燥工程)。乾燥工程では、自然乾燥により籾52を乾燥させてもよく、温風あるいは熱風を用いた機械乾燥(温風乾燥あるいは熱風乾燥とも言う。)により籾52を乾燥させてもよい。そして、籾52の水分率は、例えば約14%以上、16%以下程度に調整される。なお、籾52の水分率が約20%以上の場合には、胴割米などと呼ばれる亀裂や胴割れが表層に生じた生米になることがある。
続いて、ステップS4において、籾52から籾殻55を取り除き、籾52を玄米53にする(籾摺り工程)。続いて、ステップS5において、籾摺り工程(ステップS4)で籾52を玄米53にした後に籾52から籾殻55や石などの異物を取り除く(ふうせん工程)。続いて、ステップS6において、玄米53を篩にかけ、標準以下の大きさの玄米およびくず米を取り除く(選別工程)。すなわち、ステップS6では、標準以上の大きさの玄米53を選び出す。続いて、ステップS7において、選別工程(ステップS6)で選び出された玄米53を貯蔵する(貯蔵工程)。
続いて、ステップS8において、果皮561、種皮562および糊粉層563を含む糠層56と、胚芽57と、を玄米53から削り取り、白米(精白米あるいは精米とも言う。)54にする(精米工程(精白工程とも言う。))。白米54は、胚乳の部分であり、糠層56を取り除いていくにつれて玄米53から三分づき米、五分づき米、七分づき米、胚芽米、白米54になっていく。続いて、ステップS9において、精米後の白米54をさらに選別する(精選工程)。ステップS1〜ステップS9の製造工程は、一般的な米の製造工程と同様である。
ここで、前述したように、米は、籾52から白米(すなわち生米)54になるまでの間に、乾燥工程における温風あるいは熱風による熱と、精米工程における研磨熱あるいは摩擦熱と、を受ける。一粒の米だけを考慮すると、一粒の米の体積は比較的小さいため、一粒の米は精米工程において受けた研磨熱あるいは摩擦熱を比較的容易に放出することができる。しかし、例えば米粒が積まれた数トンの米の集合体では、一粒の米が精米工程において受けた研磨熱あるいは摩擦熱を放出することは困難である。これにより、白米54の表層部分の水分が気化したり、白米54の内部の水分量分布が変動したりすることがある。具体的には、例えば、白米54の表層部分の水分率が相対的に低く、白米54の胚乳中心部分の水分率が相対的に高い状態になる。そのため、例えば、白米54の表層部分において水分不足が生じ、白米54の表層部分が静電気を帯びて細かい糠層56を引き寄せることがある。また、米は、精米工程において衝撃を受ける。これにより、米が傷付くことがある。
さらに、米は、外界の湿度に敏感に反応し、水分を吸収したり放出したりする。玄米53における水分の出入りは、胚と胚乳との境界付近にある「胚盤」と呼ばれる部分で最も早く行われる。胚盤付近の胚乳の膨脹や収縮は、胚乳の他の部分より早く進む。このような膨脹や収縮が急激に生ずると、亀裂が玄米53の内部に生ずることがある。玄米53は、空気中の酸素を吸収し、炭酸ガス、水分および熱を放出する。これは、「米の呼吸」などと呼ばれ、品質劣化の生理的要因になる。
白米54は、水分と養分とを含み、例えば、約15%程度の水分と、約70%程度の澱粉質と、その他約15%程度の祖たんぱく質、祖脂肪、灰分などと、により構成されている。つまり、白米54の約85%程度は、水分および澱粉質により構成されている。そのため、白米54および白米54を炊いた米飯の品質を決定する重要な要因は、米の洗浄・浸漬時の米粒内への水の浸透と、その結果に基づいて完成される米飯の品質状況と、にあると、本発明者は考えた。
すなわち、白米54に含まれる澱粉質は、約20%程度のアミロースと、約80%程度のアミロペクチンと、を含む。アミロースは、数十個から数千個程度のブドウ糖が鎖状に連なった構造を有する。アミロペクチンは、分子がアミロースから枝状に分かれてできた分枝状分子であり、数百から数万個程度のブドウ糖を含む。白米54では、アミロースとアミロペクチンとが互いに硬く結合している。元々β状態の生米(すなわち白米54)の澱粉質に水を加えて加熱すると、分子の運動が次第に活発化して、アミロースおよびアミロペクチンの順で結合が崩れる。そうすると、水の分子が生米に自由に入ることができ、加水分解が容易に行われる。言い換えれば、白米54に水を加えて加熱すると、アミロペクチンの結晶質部分が融解するとともに水和および膨潤する現象を生ずる。そして、生米は、人間にとって消化されやすい状態になる。このような状態の変化は、澱粉質の糊化(α化)あるいは糊化(α化)現象などと呼ばれる。
米飯は、澱粉質の糊化現象により水を保有する。言い換えれば、米飯は、糊化現象により水を抱き抱える状態になっている。つまり、澱粉質の糊化現象は、保水能力あるいは保水機能を有し、米飯の保水現象を生じさせる。例えば、総重量1000gの白米54の場合には、前述したように水分率は約15%程度であるため、約150g程度の水分が白米54に含まれている。生米の状態の最大吸水予想量は約65%程度であるため、洗浄・浸漬後の白米54は、約500g(=1000g×65%−150g)程度の水を吸収する。そして、洗浄・浸漬後の白米54の総重量は、約1500g(=1000g+500g)程度になる。この状態の白米54を炊飯すると、洗浄・浸漬前の白米54の総重量(1000g)に対して約2.2倍以上、2.3倍以下程度の総重量の米飯が完成する。ここで、白米54の約85%程度が養分であるため、総重量1000gの白米54の養分は、約850g程度である。そのため、総重量約2300g(=1000g×2.3)の米飯のうちの約1450g(=2300g−850g)程度の水分を澱粉質が保有している。つまり、総重量1000gの白米54を炊いた米飯は、約850g程度の養分(具体的には澱粉質)と、約850g程度の澱粉質に保有された約1450g程度の水分と、を含む。
米飯の冷凍を行うと、澱粉質の糊化現象により澱粉質に保有された水分は、氷結晶の生成物になる。例えば、氷結晶は、最大氷結晶生成帯で米飯の内部に成長する。これにより、澱粉質の老化(β化)が進行する。言い換えれば、氷結晶が生成されると、水分の体積が膨張し、一粒毎の米飯において炊きたてのときとは異なる水分の移動が生ずる。この現象は、低温障害などと呼ばれる。低温障害が生ずると、冷凍米飯を自然解凍したときに、澱粉質がβ化したままで、炊きたての米飯の品質を保つことが困難になり、米飯を美味しく食べることができない。そこで、本発明者は、米飯を冷凍するときに、氷結晶が例えば最大氷結晶生成帯で米飯の内部に成長することを抑え、澱粉質の老化(β化)が進行することを抑えることが重要であると考えた。そして、本発明者は、白米54に含まれる澱粉質と水分との親和性、融和性あるいは調和性を一粒の白米54において高めて、白米54を炊いたときに澱粉質が糊化(α化)する精度(糊化度)を向上させることが重要であると考えた。そのため、本発明者は、澱粉質の糊化度を向上させるために、一粒の白米54における水分量分布を均等にすることが重要であると考えた。
そこで、本実施形態では、ステップS10において、精米工程(ステップS8)の終了後の所定時間以内に、精米工程において生成された白米54を冷却し、白米54の一次的保管を行う(冷却工程)。より好ましくは、精米工程の終了後の168時間以内に、密閉空間内において温度を摂氏−0.3℃以上、摂氏+0.3℃以下に保った状態で白米54を冷却する。また、より好ましくは、密閉空間内において水蒸気粒子を循環させ相対湿度を65%以上に保った状態で白米54を冷却する。より好ましくは、冷却工程の最大の冷却時間は、24時間である。白米54の冷却工程の詳細について、後述する。
本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法によれば、精米工程の終了後の所定時間以内に白米54を冷却することにより、例えば籾52の乾燥工程において米が受けた熱や精米工程において米が受けた研磨熱あるいは摩擦熱など、籾52が白米54になるまでの間に米が受けた熱を精米工程終了後の所定時間以内に除去することができる。これにより、一粒の生米(すなわち白米54)における温度分布が均等になる。言い換えれば、一粒毎の生米の全体の温度が、表層部分から胚乳中心部分に至るまで均等な温度に整えられる。そのため、精米工程において発生した研磨熱あるいは摩擦熱などにより、生米の表層部分の水分が気化したり、生米の内部の水分量分布が変動したりした場合であっても、一粒の生米における水分量分布が均等になる。言い換えれば、一粒毎の生米の全体の水分量が、表層部分から胚乳中心部分に至るまで均等な水分量に整えられる。これにより、亀裂、胴割れ、微細空洞および劣化などの様々な微細変動が生米に生ずることを抑えることができる。
また、一粒の生米における水分量分布が均等になるため、生米に含まれる養分(例えば澱粉質)と水分との親和性、融和性あるいは調和性を一粒の生米において高めることができる。そのため、生米を炊いたときすなわち生米を加水加熱したときに澱粉質が糊化(α化)する精度(糊化度)を向上させることができるとともに、米飯の表層部分から胚乳中心部分に至るまで糊化度を整えて均等にすることができる。そのため、澱粉質の糊化による米飯の保水能力を向上させることができるとともに、米飯の表層部分から胚乳中心部分に至るまで米飯の保水能力を整えて均等にすることができる。これにより、米飯を冷凍するときに、氷結晶が例えば最大氷結晶生成帯で米飯の内部に成長することを抑え、澱粉質の老化(β化)が進行することを抑えることができる。つまり、米飯を冷凍するときに低温障害が生ずることを抑えることができる。そして、冷凍された米飯(冷凍米飯)を解凍するときに、解凍方法が自然解凍であっても加熱解凍であっても、米飯の変質や澱粉質のβ化が生ずることを抑え、炊きたての米飯の品質を保つことができる。以上より、保管環境および物流環境などのあらゆる環境の温度変動に対応可能であり、米飯の冷凍に適した能力あるいは機能を有する生米すなわち冷凍適性米を製造することができる。
また、例えば籾52の乾燥工程において米が受けた熱や精米工程において米が受けた研磨熱あるいは摩擦熱による米に対する負荷および米の品質に対する影響は、時間の経過とともに増大する。そのため、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法において、精米工程の終了後の168時間以内に白米54を冷却する場合には、精米工程終了後の早期段階において、籾52が白米54になるまでの間に米が受けた熱を除去することができる。そのため、米に対する負荷および米の品質に対する影響が増大することを抑え、一粒の生米(すなわち白米54)における温度分布および水分量分布をより一層均等にすることができる。これにより、保管環境および物流環境などのあらゆる環境の温度変動により一層対応可能であり、米飯の冷凍により一層適した能力あるいは機能を有する生米すなわち冷凍適性米を製造することができる。
また、冷却工程(ステップS10)が密閉空間内において温度を摂氏−0.3℃以上、摂氏+0.3℃以下に保った状態で行われる場合には、一粒毎の生米(すなわち白米54)の全体の温度を表層部分から胚乳中心部分に至るまで均等な摂氏0℃程度に整え、一粒毎の生米の全体の水分量を表層部分から胚乳中心部分に至るまでより一層均等な水分量に整えることができる。これにより、生米に含まれる養分(例えば澱粉質)と水分との親和性、融和性あるいは調和性を一粒の生米においてより一層高めることができる。これにより、保管環境および物流環境などのあらゆる環境の温度変動により一層対応可能であり、米飯の冷凍により一層適した能力あるいは機能を有する生米すなわち冷凍適性米を製造することができる。
また、冷却工程が密閉空間内において水蒸気粒子を循環させ相対湿度を65%以上に保った状態で行われる場合には、一粒毎の生米(すなわち白米54)の全体の水分量を表層部分から胚乳中心部分に至るまでより一層均等な水分量に整えることができる。これにより、生米に含まれる養分(例えば澱粉質)と水分との親和性、融和性あるいは調和性を一粒の生米においてより一層高めることができる。これにより、保管環境および物流環境などのあらゆる環境の温度変動により一層対応可能であり、米飯の冷凍により一層適した能力あるいは機能を有する生米すなわち冷凍適性米を製造することができる。
また、冷却工程の最大の冷却時間が24時間である場合には、冷却工程において白米54を必要以上に冷却することを抑えつつ、一粒の生米(すなわち白米54)における温度分布および水分量分布を均等にすることができる。
また、前述したように、本実施形態の冷凍適性米が使用された冷凍米飯を自然解凍する場合であっても、米飯の変質や澱粉質のβ化が生ずることを抑え、炊きたての米飯の品質を保つことができる。つまり、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法によれば、冷凍適性米が使用された冷凍米飯を加熱解凍しなくとも、冷凍米飯を自然解凍することにより炊きたての米飯の品質を保つことができる。そのため、電子レンジ等の電気機器を使用しなくとも、冷凍米飯を常温で自然解凍することにより炊きたての米飯の品質を保つことができる。これにより、省電力化および省エネルギー化を図ることができる。また、自然解凍された米飯を必要に応じて電子レンジ等の電気機器で温めることも可能である。この場合には、冷凍米飯を電子レンジ等の電気機器で温める場合と比較して、加温時間あるいは加熱時間の短縮化を図ることができるとともに、省電力化および省エネルギー化を図ることができる。また、解凍装置を必要とせず冷凍米飯を自然解凍することにより米飯の準備をすることができるため、必要な時に必要な量の米飯を確保することができる。さらに、冷凍適性米が使用された冷凍米飯を弁当などに入れた場合には、冷凍米飯を蓄冷材として利用することができるとともに、自然解凍された米飯を美味しく食べることができる。このように、本実施形態の冷凍適性米が使用された冷凍米飯は、米飯としての価値を向上させることができるとともに、米飯の準備等における利便性を向上させることができる。例えば食品を提供する外食産業や食品業界などにおいては、本実施形態の冷凍適性米が使用された冷凍米飯は、米飯としての価値をより一層向上させることができるとともに、米飯の準備等における利便性をより一層向上させることができる。
次に、本実施形態の冷却工程の詳細を、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態の密閉空間における一次的保管環境を説明するフローチャートである。
図5は、本実施形態の密閉空間における湿気の循環サイクルを説明する模式図である。
図6は、本実施形態の密閉空間を例示する斜視図である。
なお、図6では、説明の便宜上、密閉空間61の内部に配置された熱交換器等の内部装置62と米袋50とを実線で表している。
図1〜図3に関して前述したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法では、精米工程の終了後の所定時間以内に、精米工程において生成された白米54を冷却し、白米54の一次的保管を行う(冷却工程)。そこで、図4〜図6を参照しつつ、精米工程の終了後の白米54(すなわち生米)を冷却し一次的保管を行う環境について説明する。
図4および図6に表したように、まず、ステップS21において、精米工程の終了後の白米54(すなわち生米)を冷却し一次的保管を行う環境としての密閉空間61を作る。密閉空間61は、例えば冷却機あるいは冷却貯蔵庫などであり、温度管理対象物(本実施形態では白米54)を収納して温度管理を行うための温度管理装置あるいは冷却保管装置である。図6に表したように、密閉空間61は、熱交換器等の内部装置62を備え、密閉空間内の温度および湿度を白米54の一次的保管に適切な温度および湿度に制御する。但し、本実施形態の密閉空間61は、冷却機あるいは冷却貯蔵庫などに限定されるわけではなく、擁壁を持つ倉庫であってもよく、あるいは収納を目的とする密閉可能な部屋であってもよい。密閉空間61の一例の詳細については、後述する。
続いて、ステップS22において、密閉空間61内を適切な温度および湿度に保つために、密閉空間61に対する外気侵入を防ぐ。続いて、ステップS23において、密閉空間61内で適切な相対湿度を発生させる。「適切な相対湿度」とは、白米54に発生した静電気を除去可能な能力を有する相対湿度であることが望ましく、例えば約65%程度以上の相対湿度であり、より好ましくは約90%程度以上の相対湿度である。本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法では、密閉空間61内で適切な相対湿度を発生させる湿度粒子(気化湿度粒子とも言う。)として、例えば水蒸気粒子を作り出す。水蒸気粒子の直径は、約0.0004μm程度であり、普通の雨の滴の直径約2.000μm程度および霧雨の滴の直径約100μm程度よりも十分に小さい。但し、密閉空間61内で適切な相対湿度を発生させる湿度粒子は、水蒸気粒子に限定されるわけではない。
続いて、ステップS24において、密閉空間61内の湿気(本実施形態では水蒸気粒子)を常に循環させ、結露水の発生を防止する。続いて、ステップS25において、密閉空間61内において、湿気質量(本実施形態では水蒸気粒子の質量)の制御を密閉空間61内の温度制御により行う。
ここで、図5を参照しつつ、本実施形態の密閉空間61における一次的保管環境の作成をさらに説明する。図5に表したように、密閉空間61における一次的保管環境を作成するためには、湿気の循環サイクルを整えることが望ましい。すなわち、まず、ステップS31において、密閉空間61に対する外気侵入を防ぎ密閉空間61内を適切な温度および湿度に保つために、密閉空間61の障壁の維持管理を行う。続いて、ステップS32において、一定の冷気を含む水蒸気粒子を発生させる。具体的には、密閉空間61内において水蒸気粒子を発生させ、連鎖的あるいは継続的に密閉空間61内に放出させて、密閉空間61内において水蒸気粒子を循環させる。
続いて、ステップS33において、密閉空間61内の風速および温度を調整する。例えば、ステップS33では、密閉空間61内の温度を摂氏−0.3℃以上、摂氏+0.3℃以下に維持する。続いて、ステップS34において、昇温した一部の水蒸気粒子を回収する。言い換えれば、ステップS34では、過剰な水蒸気粒子を回収する。続いて、ステップS35において、密閉空間61内を温度毎の適切な相対湿度、すなわち例えば約65%程度以上の相対湿度、より好ましくは約90%程度以上の相対湿度に維持する。本実施形態では、水蒸気粒子の気化現象を利用することにより、密閉空間61内を温度毎の適切な相対湿度に維持する。この詳細については、後述する。
このように、精米工程の終了後の白米54を冷却し一次的保管を行う環境の作成手段として、主に、密閉空間61内において水蒸気粒子を発生させ、連鎖的あるいは継続的に密閉空間61内に放出させて、密閉空間61内において水蒸気粒子を循環させる工程と、過剰な水蒸気粒子を回収する工程と、密閉空間61内を温度毎の適切な相対湿度に維持する工程と、を行う。
そして、図6に表したように、精米工程の終了後の所定時間以内に白米54を一次的保管環境としての密閉空間61内に投入し、白米54の冷却を行う。白米54の一次的保管の状態は、無包装の状態であってもよく、米袋に包装された状態であってもよい。図6に表した例では、白米54は、米袋50に包装された状態で密閉空間61に一次的保管されている。米袋50の材料は、ナイロン等の樹脂であってもよく、紙であってもよい。例えば、米袋50の容量は、米袋50の材料がナイロン等の樹脂である場合には約1kg以上、15kg以下程度であり、米袋50の材料が紙である場合には約1kg以上、30kg以下程度である。但し、米袋50の容量は、これだけに限定されるわけではない。
また、白米54が米袋50に包装された状態は、真空状態であってもよく、真空状態でなくともよい。白米54が米袋50に包装された状態で密閉空間61に一次的保管された場合には、白米54を収容した米袋50の厚み(すなわち高さ)が15cm以下であることが好ましい。また、互いに隣り合う米袋50同士の間に隙間を確保し、より良い通気性を確保することが好ましい。白米54の密閉空間61における一次的保管の時間すなわち白米54の冷却工程の時間は、24時間以内であることが好ましい。
次に、本発明者が実施した検討の結果の例を、図面を参照して説明する。
図7は、白米の表層を拡大して表した写真である。
なお、図7(a)は、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米の表層を表す拡大写真である。図7(b)は、比較例に係る米の製造方法により製造された白米の表層を表す拡大写真である。
本発明者は、コシヒカリを用いて、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54(すなわち生米)と、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法とは異なる通常の米の製造方法(すなわち比較例に係る米の製造方法)により製造された白米54(すなわち生米)と、の表層の写真撮影を行った。そして、本発明者は、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54と、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54と、を比較検討した。
図7(a)に表したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54では、亀裂や胴割れなどは白米54の表層には見られなかった。また、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54(図7(b)参照)と比較すると、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54の表層に見られた細かな傷や糊粉の付着は、非常に少なかった。さらに、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54の表層には透明感が見られた。このような白米54の表層の透明感は、一粒の白米54における水分量分布が均等になり、光の透過性が向上したためであると考えられる。
一方で、図7(b)に表したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54(図7(a)参照)と比較すると、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54の表層には、多くの細かな傷や糊粉の付着が見られた。また、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54の表層には、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54の表層に見られたような透明感は見られず、半透明感が見られた。
図8は、白米を粉砕した状態を拡大して表した写真である。
なお、図8(a)は、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米の粉砕状態を表す拡大写真である。図8(b)は、比較例に係る米の製造方法により製造された白米の粉砕状態を表す拡大写真である。
本発明者は、白米54(すなわち生米)に圧力を加えて白米54を粉砕し、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54と、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54と、の粉砕状態の写真撮影を行った。そして、本発明者は、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54と、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54と、を比較検討した。
図8(a)に表したように、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54(図8(b)参照)と比較すると、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54は、大きく砕けた。また、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54には透明感が見られた。このような白米54の透明感は、一粒毎の白米54の全体の水分量が、表層部分から胚乳中心部分に至るまで均等な水分量に整えられたためであると考えられる。
一方で、図8(b)に表したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54(図8(a)参照)と比較すると、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54は、細かく砕けた。また、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54には、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54に見られたような透明感は見られず、半透明感が見られた。
図9は、白米を輪切りにしたときの断面を拡大して表した写真である。
なお、図9(a)は、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米の断面を表す拡大写真である。図9(b)は、比較例に係る米の製造方法により製造された白米の断面を表す拡大写真である。
図9(a)に表したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54の断面には、内部空洞は見られず、割れくず等の付着も見られなかった。また、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54(図9(b)参照)と比較すると、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54の断面には、粘りが見られるとともに、微細な表面が見られた。
一方で、図9(b)に表したように、本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法により製造された白米54(図9(a)参照)と比較すると、比較例に係る米の製造方法により製造された白米54の断面には、多くの内部空洞59が見られた。
次に、本実施形態の密閉空間61の一例を、図面を参照して説明する。
なお、以下説明する温度管理装置1は、本実施形態の密閉空間61の一例である。本実施形態の密閉空間61は、以下説明する温度管理装置1だけに限定されるわけではない。
図10は、本実施形態の密閉空間の一例としての温度管理装置を表す斜視図である。
図11は、本実施形態の温度管理装置の構成例を表すブロック図である。
<温度管理装置1の概要>
図10および図11に表したように、温度管理装置1は、冷却機あるいは冷却貯蔵庫などとも呼ばれ、温度管理対象物Wを収納して温度管理をするための例えば業務用の冷却保管装置である。本実施形態に係る冷凍適性米の製造方法では、温度管理対象物Wは、白米54である。なお、図6に関して前述したように、温度管理対象物Wとしての白米54は、米袋50に包装あるいは収容された状態で温度管理装置1に保管されてもよい。
温度管理装置1は、温度管理対象物Wを庫内の収納部である例えば収納スペース11に収容して、常に庫内の保管に適切な温度の目標温度である例えば摂氏0℃程度に継続的に保ち、温度管理対象物Wの表面から中心部分まで全ての温度を均一に摂氏0℃まで冷却できる。
しかも、温度管理装置1は、冷却の際に、収納スペース11に収納された温度管理対象物Wの水分が氷結して氷結物(氷結晶)を作らないようにして、温度管理対象物Wが例えば−1℃〜−5℃の範囲の氷結温度に達しないようにする。これにより、温度管理装置1は、温度管理対象物Wの鮮度等の品質を保つことができる機能を有する。
図10および図11に表したように、温度管理装置1は、ボックス型の冷却部2と、砕氷部である例えば砕氷機3と、貯水タンク4と、制御部100と、を有している。冷却部2は、本体部5と、外部ユニット6と、を有する。砕氷機3および貯水タンク4は、冷却部2の外側に配置されている。砕氷機3および貯水タンク4は、氷(好ましくは図11に示す砕氷200)を冷気温度変更部である例えば砕氷熱交換器8に供給するための氷供給部70を構成している。
<冷却部2>
図10および図11に表した冷却部2の本体部5は、例えばボックス型を形成している。外部ユニット6は、本体部5に対して、後で説明する冷媒配管24,26を介して、外付けで接続されている。冷却部2の本体部5は、金属製の冷却貯蔵庫12と、内部ユニット7と、砕氷熱交換器8と、目標温度冷気である例えば第2冷気CL2の第2送風部である例えば砕氷熱交換用ファン9と、スクリューコンベア10と、収納スペース11と、を備える。
内部ユニット7と砕氷熱交換器8と砕氷熱交換用ファン9とスクリューコンベア10とは、冷却貯蔵庫12内に配置されている。収納スペース11は、冷却貯蔵庫12内に形成されており、温度管理対象物Wを収納して貯蔵(保管)する空間である。
図10および図11に表した冷却貯蔵庫12を説明する。
図10および図11に表した冷却貯蔵庫12は、例えばステンレスのような金属により箱型に作られており、図10に示す床面F上に設置されている。内部ユニット7と砕氷熱交換器8と砕氷熱交換用ファン9とスクリューコンベア10とは、冷却貯蔵庫12の内部空間の上部に配置されている。
収納スペース11は、冷却貯蔵庫12の内部空間の下部であって、内部ユニット7と砕氷熱交換器8と砕氷熱交換用ファン9とスクリューコンベア10との下部に設けられている。内部ユニット7と砕氷熱交換器8と砕氷熱交換用ファン9とスクリューコンベア10とは、冷却貯蔵庫12の上部に集めて配置されている。収納スペース11は、内部ユニット7と砕氷熱交換器8と砕氷熱交換用ファン9とスクリューコンベア10との下部に設けられているので、比較的広いスペースを確保できる。スクリューコンベア10は、砕氷機3から供給された氷である例えば砕氷200を砕氷熱交換器8に案内して供給するための氷案内部である。
図10に表したように、冷却貯蔵庫12の収納スペース11内には、少なくとも1枚の棚板15が着脱可能に配置されている。棚板15の上には、温度管理対象物Wを置いて貯蔵することができる。棚板15は、例えば編み板のような第2冷気CL2を通しやすいものであることがより好ましい。
図10に表したように、冷却貯蔵庫12の側面は、開口部13を有している。冷却貯蔵庫12は、開閉扉14を備えている。開閉扉14は、ヒンジ14Hにより取り付けられており、開口部13を開閉可能である。開口部13は、収納スペース11の位置に対応して設けられている。これにより、作業者は、開口部13を通じて、外部から収納スペース11内の棚板15の上に温度管理前の温度管理対象物Wを置いたり、温度管理後の温度管理対象物Wを、外部に取り出したりすることができる。また、作業者は、開口部13を閉じることにより、収納スペース11を密閉することができる。
次に、図10および図11に表した内部ユニット7について説明する。
内部ユニット7は、図11に示すように、冷気蒸発器20と、コンプレッサ(圧縮機)21と、基本冷気である例えば第1冷気CL1の第1送風部である例えば冷気放出用ファン22と、を有する。
冷気蒸発器20およびコンプレッサ21は、冷媒配管23により互いに接続されている。冷気蒸発器20の前面側には、冷気放出用ファン22が配置されている。冷気放出用ファン22は、冷気蒸発器20が放出する例えば−10℃の第1冷気CL1を砕氷熱交換器8に送り込む役割を有する。冷気放出用ファン22のモータ22Mの回転動作は、制御部100の指令により制御される。冷気蒸発器20は、第1冷気CL1を発生させる基本冷気生成部の一例である。
次に、図10および図11に表した外部ユニット6について説明する。
外部ユニット6は、図11に表したように、凝縮器16と、膨張弁17と、送風ファン18と、を有する。コンプレッサ21および凝縮器16は、冷媒配管24により互いに接続されている。凝縮器16および膨張弁17は、冷媒配管25により互いに接続されている。
膨張弁17および冷気蒸発器20は、冷媒配管26により互いに接続されている。送風ファン18は、凝縮器16に送風して凝縮器16を冷却する。送風ファン18のモータ18Mの回転動作は、制御部100の指令により制御される。コンプレッサ21は、制御部100の指令により駆動される。
図11に表したように、内部ユニット7の冷気蒸発器20およびコンプレッサ21、ならびに、外部ユニット6の凝縮器16および膨張弁17は、冷凍サイクル150を構成している。冷凍サイクル150では、冷媒の高温・高圧ガスがコンプレッサ(圧縮機)21から凝縮器16へ冷媒配管24を通じて供給され、凝縮器(コンデンサ)16では放熱が行われる。
冷媒の常温・高圧の液体が、凝縮器16から膨張弁17へ冷媒配管25を通じて供給される。そして、冷媒の低温・低圧の霧状ガスが膨張弁17から冷気蒸発器(エバポレータ)20へ冷媒配管26を通じて送られることで、冷気蒸発器20は、吸熱を行って第1冷気CL1を放出する。冷媒の低温・低圧の気体が、冷気蒸発器20からコンプレッサ21へ冷媒配管23を通じて送られる。このようにして、冷気蒸発器20は、例えば−10℃の第1冷気CL1を放出する。また、冷気放出用ファン22は、冷気蒸発器20が放出する第1冷気CL1を砕氷熱交換器8に送り込む。
次に、図10および図11に示す砕氷熱交換器8について説明する。
図12は、本実施形態の温度管理装置の一部を切り欠いて表した斜視図である。
図13は、スクリューコンベアおよび砕氷熱交換器の構造例を表した斜視図である。
図14は、スクリューコンベアおよび砕氷熱交換器の構造例を示す断面図である。
図10〜図12では、第1冷気CL1の流れ方向をX方向で表し、上下方向をZ方向で表し、図2の紙面垂直方向をY方向で表している。図10〜図12に表したように、砕氷熱交換器8は、冷気放出用ファン22と砕氷熱交換器8との間に配置されている。砕氷熱交換用ファン9は、砕氷熱交換器8の前側に配置されている。スクリューコンベア10は、砕氷熱交換器8の上部に配置されている。
先に、砕氷200を搬送するための砕氷搬送装置としてのスクリューコンベア10について説明する。図12および図13に表したように、スクリューコンベア10は、砕氷機3から供給される砕氷200をY方向に沿って連続的に直線搬送させる機能を有する。
スクリューコンベア10は、ガイド体30と、ガイド体30内に配置されているスクリュー31と、駆動モータ32と、を有する。ガイド体30は、例えば筒状を有しており、Y方向に沿って冷却貯蔵庫12の内側に固定されている。図12に表したように、ガイド体30の両端部は、フランジ部30R、30Lにより閉じている。ガイド体30およびスクリュー31は、金属例えばステンレス等により作られている。
図13および図14に表したように、スクリュー31は、らせん状の連続している羽根31Hと、羽根31Hを保持している軸部31Bと、を有している。軸部31Bの両端部は、ガイド体30のフランジ部30R、30Lの内部側の軸受部により回転可能に支持されている。スクリュー31の軸部31Bは、駆動モータ32の出力軸に対して減速機33を用いて連結されている。スクリュー31は、制御部100の指令により駆動モータ32を駆動することで、ガイド体30の内部で回転して、ガイド体30内に投入されている砕氷200を砕氷の搬送方向であるY方向に連続的に直線搬送することができる。
図13および図14に表したように、スクリュー31のガイド体30は、砕氷200用の投入口部35と、砕氷200を落下させるための複数の排出口部36と、を備える。1つの投入口部35が、ガイド体30のフランジ部30L側の位置であって、しかも上側に向けて設けられている。投入口部35は、砕氷機3から供給される砕氷200をガイド体30内の上流側の内部に投入するための開口部である。
これに対して、複数の排出口部36が、ガイド体30のフランジ部30L側から図12のフランジ部30R側の間において、同じ間隔をおいて下向きに向けて突出して設けられている。排出口部36は、ガイド体30内をY方向に沿って連続的に搬送されてくる砕氷200を砕氷熱交換器8側へ落下させる。
次に、砕氷熱交換器8を説明する。
図12および図13に表した砕氷熱交換器8は、スクリューコンベア10の下部において、Z方向に向けて立てて配置されている。砕氷熱交換器8は、スクリューコンベア10のガイド体30の各排出口部36を通じて落下してくる砕氷200を通す構造を有している。
図13に表したように、砕氷熱交換器8は、複数の熱交換体40と、受け部材41と、を有している。各熱交換体40は、所定の間隔をおいて、Y方向に平行に直列に並べて配列されている。すなわち、図11および図12に表したように、複数の熱交換体40は、冷気蒸発器20と冷気放出用ファン22と平行になるように並べて配置されている。
図13および図14に表したように、各熱交換体40は、好ましくは熱交換効率の良好で錆びにくい金属、例えばステンレス、銅等により作られている。例えば、各熱交換体40は、金属板を折り曲げることで形成されている。各熱交換体40の内部には、砕氷通過空間SPが、Z方向に沿って形成されている。各熱交換体40は、上端開口部40Bと、下端開口部40Cと、を有している。
各熱交換体40の水平方向の断面における砕氷通過空間SPは、第1冷気CL1を送る方向であるX方向に沿って徐々に厚みが増すように形成されている。すなわち、各熱交換体40の砕氷通過空間SPは、第1冷気CL1の上流側において先細りになっていて、第1冷気CL1の上流側から下流側に向かうに従って広がっている。
各熱交換体40の第1冷気CL1の下流側の先端部は、例えば半円形状になっている。これにより、第1冷気CL1は、X方向に沿って各熱交換体40の周囲をできる限り空気抵抗を大きくしないようにしてスムーズに通過することができる。
各熱交換体40は、例えば金属板が折り曲げられたパンチングメッシュにより形成されている。これにより、各熱交換体40には、複数の貫通孔40Hが全面に渡って形成されている。冷気蒸発器20が放出する第1冷気CL1は、冷気放出用ファン22の回転により砕氷熱交換器8に送り込まれる。砕氷熱交換器8に送り込まれた第1冷気CL1は、複数の貫通孔40Hを通って、各熱交換体40の砕氷通過空間SP内を通る。
図11に表した砕氷熱交換器8は、冷気蒸発器20から放出される−10℃の第1冷気CL1を摂氏0℃付近の第2冷気CL2に熱交換させる熱交換フィルタである。砕氷熱交換器8は、第1冷気CL1が放出される前方において砕氷200を通過させる。なお、砕氷200が熱交換体40の砕氷通過空間SP内を通過する形態は、砕氷200が砕氷通過空間SP内を留まることなく連続的に通過する形態に限定されるわけではなく、砕氷200が砕氷通過空間SP内で一時的に貯留し、融解することで徐々に砕氷通過空間SP内を通過する形態も含む。
このため、摂氏0℃よりも低い−10℃の第1冷気CL1は、各熱交換体40の砕氷通過空間SP内を通る砕氷200に強制的に当接する。そして、熱交換が行われて、摂氏0℃程度により近い温度の第2冷気CL2が生成される。砕氷熱交換器8は、−10℃の第1冷気CL1を砕氷200の砕氷温度で熱変換させる砕氷壁(砕氷フィルタ)を構成している。
また、熱交換体40を通過した−10℃の第1冷気CL1が砕氷200と当接することで、氷が溶解し、水分が気化する。これにより、相対湿度100%あるいは100%により近い、摂氏0℃程度の水蒸気粒子等が生成される。このとき、氷を大きい塊でなく小さな塊である砕氷200とすることで、大きな塊の氷を用いる場合と比較して、氷の表面積を増やすことができる。そのため、氷の融解と、融解した水分の気化と、を効率的に行うことができる。また、第2冷気CL2をより効率的に摂氏0℃及びその近傍(摂氏0℃程度)の温度にすることができる。
図13および図14に示すように、ガイド体30の排出口部36は、砕氷熱交換器8の各熱交換体40の上端開口部40B内に挿入されている。各熱交換体40の下端開口部40C側は、受け部材41内に位置されている。受け部材41は、全ての熱交換体40内を通過してくる砕氷200を受ける。
これにより、図14に表したように、スクリューコンベア10のガイド体30内をY方向に沿って連続して搬送されてくる砕氷200は、ガイド体30の排出口部36から対応する位置の熱交換体40の上端開口部40Bから投入されて、砕氷通過空間SP内を通過する。そして、砕氷200は、熱交換体40の下端開口部40Cから、受け部材41内に排出される。なお、排出された砕氷200は、例えば貯水タンク4内あるいは砕氷機3の内側に戻すことで、循環して再利用することができる構成となっている。
次に、図11および図12に示す砕氷熱交換用ファン9を説明する。
図11および図12に表した砕氷熱交換用ファン9は、制御部100の指令により、駆動モータ9Mにより回転される。砕氷熱交換用ファン9が回転することにより、砕氷200の融解温度、または融解された水分の気化速度を、風圧と共に変動させ促進等させることができる。すなわち、砕氷熱交換器8が冷気放出用ファン22と砕氷熱交換用ファン9との間において冷気放出用ファン22と砕氷熱交換用ファン9とに隣接して配置されているため、冷気放出用ファン22および砕氷熱交換用ファン9の少なくともいずれかは、例えば、冷気放出用ファン22から砕氷熱交換器8に送られる第1冷気CL1の風圧を変動させたり乱気流を発生させたりすることができる。そのため、砕氷熱交換器8において第1冷気CL1に当接する氷の融解および気化の発生を促進させることができる。
これにより、砕氷熱交換用ファン9は、庫内である収納スペース11に充満する湿度密度と、収納スペース11内の温度管理対象物Wと、の熱交換を行うために必要な収納スペース11内の乱流風速の調整を可能とする。
上述したように、砕氷熱交換用ファン9は、砕氷フィルタである砕氷熱交換器8の融解機能と、融解水分の気化と、収納スペース11内における乱流の気流と、を発生する。砕氷熱交換用ファン9は、氷が融解して水分が気化した砕氷200の水蒸気粒子等を収納スペース11内に導入し循環させることで、収納スペース11内の相対湿度100%あるいは100%により近い環境に整え、冷熱の蓄積に似た冷気の質量を高める役割を有する。
次に、図10および図11に表した砕氷機3および貯水タンク4について説明する。
図10および図11に表したように、砕氷機3は、貯水タンク4に対して配管4Bにより接続されている。砕氷機3は、自ら氷を作る製氷機の機能を有している。砕氷機3は、砕氷供給管3Bにより、スクリュー31のガイド体30の投入口部35に接続されている。
これにより、制御部100がモータ4Mを駆動して、貯水タンク4内に収容されている水が砕氷機3内に自動注水して供給されると、砕氷機3では、氷の塊が作られる。氷の塊が砕氷機3内にある例えばクラッシャ等の破砕装置により破砕することで、比較的小さな氷の塊である砕氷200が得られる。
このように、大きな塊の氷を砕氷して小さな塊の氷である砕氷200にすることで、上述のように、大きな塊の氷を用いる場合と比較して、氷の表面積を大幅に増やすことができる。このため、砕氷熱交換器8は、より効率的に第2冷気CL2を生成することができる。
図11に表したように、得られた砕氷200は、砕氷機3の砕氷供給管3Bにより、スクリュー31のガイド体30の投入口部35に投入される。砕氷200が投入口部35に投入されると、図14に表したように、スクリューコンベア10のスクリュー31は、制御部100の指令により駆動モータ32を駆動することで、ガイド体30の内部で回転して、ガイド体30内に投入されている砕氷200を砕氷200の搬送方向であるY方向に連続的に搬送する。
そして、ガイド体30内をY方向に沿って搬送されてくる砕氷200は、ガイド体30の排出口部36から対応する位置の熱交換体40の上端開口部40Bから投入される。このため、砕氷200は、熱交換体40の砕氷通過空間SP内を通過して、熱交換体40の下端開口部40Cから受け部材41内に排出される。
なお、図11に表したように、本体部5の中には、任意の位置に、好ましくは複数の温度センサSN1、SN2、SN3を配置することができる。例えば温度センサSN1は、冷気放出用ファン22の付近で第1冷気CL1の温度情報を制御部100に報告する。
温度センサSN2は、砕氷熱交換用ファン9の付近で第2冷気CL2の温度情報を制御部100に報告する。温度センサSN3は、収納スペース11内に配置されて収納スペース11内の温度情報を制御部100に報告する。これにより、制御部100は、温度センサSN1、SN2、SN3からの温度情報により、各部の温度状態をリアルタイムで監視することができる。
本実施形態の温度管理装置1では、例えば冷気放出用ファン22のモータ22Mが発生する熱量、砕氷熱交換用ファン9の駆動モータ9Mが発生する熱量、スクリューコンベア10の駆動モータ32が発生する熱量、その他に照明の熱量や、外気侵入熱等の冷却を阻害する熱量は、砕氷200の融解および気化現象を促進するための熱源として利用することができる。すなわち、温度管理対象物Wを冷却するときに阻害となり得る熱量は、砕氷200の融解および気化現象を促進するための熱源として砕氷200により奪われる仕組みをとなっている。このため、前述した駆動モータ32の熱量等は、収納スペース11内の雰囲気温度を摂氏0℃及びその近傍の温度から更に上昇させる要因とはならない構成となっている。
砕氷200の融解後の水分の気化等により生成される水蒸気粒子等は、非常に細かな湿度粒子となり、収納スペース11の金属壁等や収納されている温度管理対象物Wに対して、水滴のような結露水を付着させることがなく、温度管理対象物Wを高品質で保存することができる。
また、通常の冷蔵庫や冷却機の場合には、庫内の動力ファンの周辺または装置内部に静電気が起きて、埃や塵の付着物が見られることがある。これに対して、本実施形態の温度管理装置1では、冷気放出用ファン22と砕氷熱交換用ファン9との回転による静電気の痕跡が無い。これは、収納スペース11内における相対湿度が100%または100%に極近いことによるものである。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。