JP6905739B2 - 冷却装置及び冷却方法 - Google Patents

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本発明は、冷却装置及び冷却方法に関する。
従来より、生鮮海産物等の貨物を凍結させた状態で輸送するためには、保冷庫内の温度を維持させるための冷凍機を備えたリーファーコンテナや、冷凍された蓄冷剤を保冷庫内に複数配置させた冷凍コンテナ等が用いられている。
ただし、リーファーコンテナは、保冷庫に冷凍機や換気手段等の設備を配置させるスペースを確保する必要があるため、貨物を載置させるスペースに制限が加わってしまう。また、当然ながら冷凍機等を駆動させるために大量の電力が必要となる。
このため、凍結させた生鮮海産物等を輸送するためには、貨物を載置するスペースの確保、あるいは電力コストといった見地から、冷凍させた蓄冷剤を庫内に配置させた冷凍コンテナが用いられることが多い。
ただし、冷凍コンテナに用いられる蓄冷剤は、時間と共に融解して冷却能が低下するため、貨物の輸送後に再度凍結させる処理を行う必要がある。このため、融解に伴い冷却能が低下した大量の蓄冷剤を再凍結させる処理が継続的に行われている。
蓄冷剤を再凍結させる処理は、蓄冷剤のサイズにも寄るが、1拠点あたり1日に5,000乃至10,000個程度の蓄冷剤が再凍結処理される場合もある。蓄冷剤を再凍結させる具体的な手法としては、エアーブラスト(空気冷凍)方式が一般的に用いられている(特許文献1及び2参照)。エアーブラスト(空気冷凍)方式とは、冷凍庫内に冷気を吹き込むことにより、冷凍庫内の温度を下げて冷凍を行う最も一般的な冷凍手法であり、例えば家庭にある冷蔵庫の冷凍室にもエアーブラスト(空気冷凍)方式が採用されている。
特開2017−077925号公報 特開2015−036605号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている技術を含む従来のエアーブラスト(空気冷凍)方式による冷凍技術では、蓄冷剤を冷凍するために−40℃程度の冷気で8時間程度蓄冷剤を冷却させる必要がある。このため、冷気を作り出すために多大な電力等のエネルギーや時間が必要となる。
つまり、蓄冷剤を利用して貨物を保冷しながらの輸送する場合、リーファーコンテナのように冷凍コンテナにおいて多大な電力等のエネルギーを必要とすることはないが、蓄冷剤自体を冷却するために多大な電力等のエネルギーが必要となる。また、蓄冷材を冷凍させるために8時間程度待つ必要があるため、冷凍させる蓄冷材の数量を増やそうとしても、時間的な制約が大きいという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、対象物を低コストかつ短時間で効率良く冷却するための手法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様の冷却装置は、
対象物と氷スラリーとを接触させることにより前記対象物を冷却する冷却装置において、
前記対象物と前記氷スラリーとを所定の相対速度で接触させて前記対象物を冷却する対象物冷却手段と、
フレークアイスとブラインとを混合し、前記氷スラリーとして前記対象物冷却手段に供給する氷スラリー供給手段と、
前記氷スラリーが前記対象物と接触した後に、前記氷スラリーに含まれる前記ブラインを抽出して氷スラリー供給手段に供給するブライン抽出手段と、
前記対象物冷却手段において対象物と接触した後の前記氷スラリーから、前記ブライン抽出手段で抽出した一部のブラインを前記氷スラリー供給手段に戻す経路と、
前記一部のブラインを抽出した残りの前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送還する経路と、
を備える。
前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送給すると共に、前記対象物冷却手段から排出された前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送還することにより前記氷スラリーを循環させる循環路を有する氷スラリー循環手段であって、前記循環路に亘って連続的に前記氷スラリーを搬送する搬送手段を有する氷スラリー循環手段をさらに備え、
前記対象物冷却手段は、
前記氷スラリー循環手段により前記対象物冷却手段に送給された前記氷スラリーを所定の相対速度で前記対象物に接触させることができる。
また、前記対象物冷却手段は、
さらに、前記対象物を振動又は搖動させる対象物搖動手段を備えることができる。
また、前記対象物は、蓄冷剤とすることができる。
また、前記氷スラリー供給手段は、さらに、
前記氷スラリーを構成する前記フレークアイスを製造するフレークアイス製造手段と、
前記フレークアイス製造手段により製造された前記フレークアイスと前記ブラインとを所定の比率で混合させて前記氷スラリーを製造する氷スラリー製造手段と、
を備え、
前記フレークアイス製造手段は、
製氷面と、前記製氷面を冷却する製氷面冷却手段とを有し、冷却された前記製氷面に前記ブラインを付着させて凍結させた前記ブラインの氷を剥ぎ取ることにより前記フレークアイスを製造することができる。
また、ブライン抽出手段は、
前記氷スラリーに含まれる前記ブラインを抽出し、当該ブラインを、前記フレークアイス製造手段と前記氷スラリー製造手段とのうち少なくとも一方に対し、前記フレークアイス 又は前記氷スラリーの製造に用いられる原料として提供することができる。
本発明の一態様の冷却装置を用いた対象物の冷却方法は、上述の本発明の一態様の冷却装置を用いて対象物を冷却する方法である。
本発明によれば、対象物を低コストかつ短時間で効率良く冷却するための手法を提供することができる。
既存のフレークアイス製造装置の概要を示す部分断面斜視図を含むイメージ図である。 図1のフレークアイス製造装置を含むフレークアイス製造システムの全体の概要を示すイメージ図である。 本発明の冷却装置によって冷却される対象物の例として蓄冷剤を示す図である。 貯留された氷スラリーに蓄冷剤を漬けた様子を示す図である。 3種類の蓄冷剤を氷スラリーに漬けて凍結させた実験における、当該3種類の蓄冷剤及び氷スラリーの温度変化を示すグラフである。 本発明の一実施形態である冷却装置の外観構成の例を含むイメージ図である。 図5の構成を有する冷却装置が行う処理の流れを説明するフローチャートである。 各種条件下におけるフレークアイス(ハイブリッドアイス)の嵩密度(空隙率)の実験結果を示す図である。
<氷>
本発明の冷却装置で使用される氷は、溶質を含有する水溶液(ブラインともいう)を、溶質の濃度が略均一となるように凝固させた氷であって、少なくとも以下の(a)及び(b)の条件を満たす氷(以下「ハイブリッドアイス」と呼ぶ)のことをいう。
(a)融解完了時の温度が0℃未満である
(b)融解過程で氷が融解した水溶液(ブライン)の溶質濃度の変化率が30%以内である
ここで、「ブライン」とは、凝固点の低い水溶液を意味する。具体的には、例えば塩化ナトリウム水溶液(塩水)や塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、エチレングリコール等はブラインの一例である。
ハイブリッドアイスは、融解する際に大量の潜熱を周囲から奪うことができるが、融解が完全に完了せずにハイブリッドアイスが残存している間は温度が上昇することがない。従って、長時間に亘って冷却の対象となる物質(以下「対象物」と呼ぶ)を冷却し続けることができる。
ハイブリッドアイスは、後述するフレークアイス製造装置200によりフレークアイスが製造される工程で生成される。
ハイブリッドアイスは、フレークアイスとして製造された状態で細かな空隙部(即ち空気の部分)を多く含むため、この空隙部がハイブリッドアイス内で縦横無尽に連結した状態であり、雪状に調製したり、シャーベット状に調製したりすることができる。
ハイブリッドアイスにおける空隙部の空気(気体)は、ハイブリッドアイスとブラインとが混ざり合うと、ブライン(液体)と容易に置き換わることができるという特徴を持つ。
特に、雪状またはシャーベット状に調製されたハイブリッドアイスは、全体として柔軟性を備えているため、対象物を傷つけることがなく、むしろ対象物を保護する緩衝材としてのスポンジのような役割を果たす。
また、ハイブリッドアイスは、多くの空隙部(空気部分)を有する状態であっても、あるいはハイブリッドアイスの融解によって当該空隙部にブラインが充填された状態であっても、ハイブリッドアイス全体として十分な流動性(柔軟性)を保持することができる。このため、ハイブリッドアイスは、対象物をより効率良く冷却することができる。
ここで、ハイブリッドアイス全体の体積に対する空隙部(空気部分)の体積の割合を「空隙率」と定義した場合、空隙率は、より低い方が(即ち嵩密度が高い方が)蓄冷効果が高くなる。このような性質を利用して、冷却の対象物の性質や用途に応じてハイブリッドアイスの空隙率を適宜変化させてもよい。これにより、対象物の性質や用途に応じて最適となるハイブリッドアイスを生成することができる。
具体的には例えば、生鮮食料品の冷蔵や冷凍を目的としてハイブリッドアイスを使用する場合には、空隙率が高い(即ち嵩密度が低い)ハイブリッドアイスを生成すればよい。
また、冷熱エネルギーの運搬を目的としてハイブリッドアイスを使用する場合には、空隙率が低い(即ち嵩密度が高い)ハイブリッドアイスを生成すればよい。
また、ハイブリッドアイスは、フレーク(薄片)状に加工することにより、比表面積が大きくさせることもできる。なお、このようなフレーク(薄片)状に加工されたハイブリッドアイスを、以下「フレークアイス」と呼ぶ。なお、フレークアイスは、後述するフレークアイス製造装置200によって製造される。
また、このフレークアイスと、凍結される前の状態のブラインとを混合させたものを、以下「氷スラリー」と呼ぶ。氷スラリーは、流動性を有するため、硬いフレークアイスの状態よりも対象物に対し万遍なく接触することができる。
なお、氷スラリーに、フレークアイス(個体)を加えることにより、氷スラリーに含まれるフレークアイス(個体)とブライン(液体)との構成比率を容易に調整することもできる。
また、食塩を溶質とするブライン(塩水)の熱伝導率は約0.58W/m Kであるが、食塩を溶質とするブラインが凍結したフレークアイスの熱伝導率は約2.2W/m Kである。即ち、熱伝導率は、ブライン(液体)よりもフレークアイス(固体)の方が高いため、フレークアイス(固体)の方が対象物を早く冷却することができることになる。
しかしながら、フレークアイス(固体)のままでは対象物と接触する面積が小さくなってしまう。そこで、フレークアイスとブラインとを混合させて氷スラリーの状態とすることにより流動性を持たせる。これにより、対象物に対し万遍なくフレークアイス(固体)を接触させることができるようになり、対象物を素早く冷却することが可能となる。
ここで、ハイブリッドアイスの嵩密度について、具体的な数値を示すと、ハイブリッドアイスとして定義可能な嵩密度は、0.48g/cm〜0.78g/cmとなる。
また、生鮮食料品の冷蔵を目的としてハイブリッドアイスを使用する場合には、0.48g/cm〜0.54g/cmの嵩密度とするのが好適である。
また、生鮮食料品の冷凍を目的としてハイブリッドアイスを使用する場合には、0.69g/cm〜0.78g/cmの嵩密度とするのが好適である。
また、冷熱エネルギーの運搬を目的としてハイブリッドアイスを使用する場合には、飽和食塩水を用いた氷をさらに機械的に圧縮して0.75g/cm〜0.95g/cmの嵩密度としてもよい。
従来から、溶媒に溶質を溶解させると、その水溶液の凝固点は、溶質を溶解させる前の溶媒の凝固点よりも低くなることが知られている(凝固点降下現象)。つまり、食塩等の溶質を溶解させた水溶液を凍結させた氷は、真水(即ち、食塩等の溶質が溶解していない水)を凍結させた氷よりも低い温度(即ち0℃未満)で凍結した氷となる。
ここで、固体としての氷が、液体としての水に変化(融解)するときに必要となる熱を「潜熱」という。この潜熱は温度変化を伴わないため、ハイブリッドアイスは、融解時に真水の凝固点(0℃)未満の温度で安定した状態を維持し続けることができる。このため、冷熱エネルギーを蓄えた状態を持続させることができる。
つまり、本来であれば、食塩等の溶質を溶解させた水溶液を凍結させた氷の冷却能は、真水を凍結させた氷よりも高くなるはずである。しかしながら、食塩等の溶質を溶解させた水溶液を凍結させた氷を製造しようとしても、実際には、水溶液(例えば塩水)がそのまま凍結することは殆どなく、まず溶質(食塩等)を含まない真水の部分が先に凍結してしまう。このため、食塩等の溶質を溶解させた水溶液を凍結させた結果、生成される物質は、溶質(食塩等)を含まない真水が凍結した氷と、溶質(例えば食塩等の結晶)との混合物となってしまう。また、たとえ凝固点が低下した氷(塩水等が凍結した氷)が生成されたとしても、その量はほんの僅かであり実用性がない。
このように、ハイブリッドアイスは、真水の凝固点(0℃)未満の凝固点を有する[氷]であるが、その製造は容易ではなかった。
そこで、本発明者らは、所定の手法により(詳細は後述する)、凝固点の低い水溶液(ブライン)を凍結させた冷却能の高い氷(ハイブリッドアイス)を製造することに成功し、既に複数の特許出願を行っている(例えば、特願2016−103637)。
以下、ハイブリッドアイスの条件である上記(a)及び(b)ついて説明する。
<融解完了時の温度>
上記(a)は、ハイブリッドアイスの条件のうち、融解完了時の温度が0℃未満であるという条件である。ハイブリッドアイスは、溶質(食塩等)を含む水溶液(塩水等)であるため、ハイブリッドアイスの凝固点は、溶質が溶解していない真水の凝固点よりも低い。このため、融解完了時の温度が0℃未満であるという特徴を有する。なお、「融解完了時の温度」とは、ハイブリッドアイスを融点以上の環境下(例えば、室温、大気圧下)に置くことによりハイブリッドアイスの融解を開始させ、全てのハイブリッドアイスが融解しきって水溶液(ブライン)になった時点におけるその水溶液の温度をいう。
また、ハイブリッドアイスの融解完了時の温度は、0℃未満であれば特に限定されず、溶質の種類、濃度を調整することにより適宜変更することができる。ただし、ハイブリッドアイスの融解完了時の温度は、より冷却能が高いという点で低い方が好ましく、具体的には、−1℃以下(−2℃以下、−3℃以下、−4℃以下、−5℃以下、−6℃以下、−7℃以下、−8℃以下、−9℃以下、−10℃以下、−11℃以下、−12℃以下、−13℃以下、−14℃以下、−15℃以下、−16℃以下、−17℃以下、−18℃以下、−19℃以下、−20℃以下等)であることが好ましい。
他方、ハイブリッドアイスの凝固点を、対象物の凍結点に近づけた方が好ましい場合もある。例えば、生鮮動植物の損傷を防ぐため等の理由がある場合には、融解完了時の温度が高すぎない方が好ましく、例えば、−21℃以上(−20℃以上、−19℃以上、−18℃以上、−17℃以上、−16℃以上、−15℃以上、−14℃以上、−13℃以上、−12℃以上、−11℃以上、−10℃以上、−9℃以上、−8℃以上、−7℃以上、−6℃以上、−5℃以上、−4℃以上、−3℃以上、−2℃以上、−1℃以上、−0.5℃以上等)であることが好ましい。
<溶質濃度の変化率>
上記(b)は、ハイブリッドアイスの条件のうち、融解過程で氷が融解した水溶液の溶質濃度の変化率が30%以内であるという条件である。ハイブリッドアイスは、融解過程で氷が融解した水溶液の溶質濃度の変化率(以下、本明細書において「溶質濃度の変化率」と略称する場合がある)が30%以内であるという特徴を有する。従来からある技術を用いた場合であっても、凝固点が僅かに低下した氷が生成される場合もあるが、その殆どは、溶質を含まない水の氷と溶質の結晶との混合物に過ぎないため、冷却能が十分ではない。このように、溶質を含まない水を凍結させた氷と、溶質の結晶との混合物である場合には、氷を融解条件下に置くと、融解に伴い溶質が溶出する速度が不安定となる。具体的には、融解開始に近いタイミングであればある程、溶質が多く溶出する。そして、融解の進行に伴い、溶質が溶出する量は少なくなっていく。即ち、融解完了に近いタイミングであればある程、溶質の溶出量が少なくなる。
これに対し、ハイブリッドアイスは、溶質を含む水溶液を凍結させた氷であるため、融解過程における溶質の溶出速度の変化が少ないという特徴を有する。具体的には、ハイブリッドアイスが融解する過程でハイブリッドアイスが融解した水溶液の溶質濃度の変化率は30%である。ここで、「融解過程でハイブリッドアイスが融解した水溶液の溶質濃度の変化率」とは、融解過程の任意のタイミングで融解した水溶液における溶質濃度に対する、融解完了時における水溶液の濃度の割合を意味する。なお、「溶質濃度」とは、水溶液に溶解している溶質の質量の割合を意味する。
ハイブリッドアイスにおける溶質濃度の変化率は30%以内であれば特に限定されないが、その変化率は少なければ少ない程、純度が高いハイブリッドアイス、即ち、冷却能が高いハイブリッドアイスであることを意味する。
この観点から、溶質濃度の変化率は、25%以内(24%以内、23%以内、22%以内、21%以内、20%以内、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、15%以内、14%以内、13%以内、12%以内、11%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内等)であることが好ましい。他方、溶質濃度の変化率は、0.1%以上(0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上等)であってもよい。
<溶質>
ハイブリッドアイスに含まれる溶質の種類は、水を溶媒としたときの溶質であれば特に限定されず、所望の凝固点や使用する氷の用途等に応じて適宜選択することができる。溶質としては、固体状の溶質、あるいは液状の溶質等が挙げられるが、固体状の溶質として代表的なものには、塩類(無機塩、有機塩等)が挙げられる。特に、塩類のうち食塩(NaCl)は、凝固点の温度を過度に低下させることがないため、生鮮動植物又はその一部の冷却に適している。また、食塩は海水に含まれているため、調達が容易であるという点でも適している。また、液状の溶質としては、エチレングリコール等が挙げられる。なお、溶質は1種単独で含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
ハイブリッドアイスに含まれる溶質の濃度は特に限定されず、溶質の種類、所望の凝固点、ハイブリッドアイスの用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、溶質として食塩を用いた場合には、水溶液の凝固点を下げて、高い冷却能を得ることができる点で、食塩の濃度は0.5%(w/v)以上(1%(w/v)以上、2%(w/v)以上、3%(w/v)以上、4%(w/v)以上、5%(w/v)以上、6%(w/v)以上、7%(w/v)以上、8%(w/v)以上、9%(w/v)以上、10%(w/v)以上、11%(w/v)以上、12%(w/v)以上、13%(w/v)以上、14%(w/v)以上、15%(w/v)以上、16%(w/v)以上、17%(w/v)以上、18%(w/v)以上、19%(w/v)以上、20%(w/v)以上等)であることが好ましい。
他方、ハイブリッドアイスを生鮮動植物又はその一部の冷却に用いる場合等においては、凝固点の温度を過度に低下させすぎない方が好ましく、この観点で、23%(w/v)以下(20%(w/v)以下、19%(w/v)以下、18%(w/v)以下、17%(w/v)以下、16%(w/v)以下、15%(w/v)以下、14%(w/v)以下、13%(w/v)以下、12%(w/v)以下、11%(w/v)以下、10%(w/v)以下、9%(w/v)以下、8%(w/v)以下、7%(w/v)以下、6%(w/v)以下、5%(w/v)以下、4%(w/v)以下、3%(w/v)以下、2%(w/v)以下、1%(w/v)以下等)であることが好ましい。
ハイブリッドアイスは、冷却能に優れているため、対象物を冷却し凍結させるための冷媒としての使用に適している。対象物を冷却する低温の冷媒としては、ハイブリッドアイス以外に、エタノール等の不凍液として使用される有機溶媒が挙げられる。しかしながら、これらの不凍液よりもハイブリッドアイスの方が熱伝導率が高く比熱が高い。このため、ハイブリッドアイスは、不凍液のような他の0℃未満の冷媒よりも冷却能が優れている点で有用である。
なお、ハイブリッドアイスは、上記の溶質(食塩等)以外の成分を含んでもよく、含まなくてもよい。
<対象物を冷却する冷媒>
上述したように、ハイブリッドアイスは冷却能に優れているため、対象物を冷却し凍結させるための冷媒として好適である。特に、ハイブリッドアイスをフレーク状に加工したフレークアイスと、ブラインとを所定の比率で混合させてシャーベット状にした混合物(氷スラリー)は、対象物と接触する面積が大きくなるため、対象物を効率良く冷却し凍結させることができる。
なお、対象物を冷却し凍結させるための「冷媒」と、図4に示すフレークアイス製造装置200の内筒32の内周面を冷却するために冷媒クリアランス34に供給される「冷媒」との混同を防ぐために、対象物を冷却し凍結させるための冷媒を、以下「氷スラリー」と呼び、冷媒クリアランス34に供給される冷媒を「内筒冷却冷媒」と呼ぶ。
氷スラリーに含まれるフレークアイスとブラインとは、いずれも同じ溶質を含んでいるが、このとき、フレークアイスの溶質濃度と、ブラインの溶質濃度とが近い値である方が好ましい。その理由は、以下のとおりである。
即ち、フレークアイスの溶質濃度がブラインの溶質濃度よりも高い場合、フレークアイスの温度がブラインの飽和凍結点よりも低くなるため、溶質濃度が低いブラインを混合させた直後にブラインが凍結する。
これに対して、フレークアイスの溶質濃度がブラインの溶質濃度より低い場合、フレークアイスの飽和凍結点よりもブラインの飽和凍結点の方が低くなる。このため、フレークアイスとブラインとを混合させた氷スラリーの温度は低下する。つまり、フレークアイスとブラインとの混合物の状態(氷スラリーの状態)を変動させないようにするためには、上述のとおり、混合するフレークアイスとブラインの溶質濃度を同程度とすることが好ましい。
また、氷スラリーの状態である場合、ブラインは、フレークアイスが融解したものであってもよく、別途調製したものであってもよいが、フレークアイスが融解してなるものであることが好ましい。
具体的には、フレークアイスを含有する氷スラリーを、フレークアイスとブラインとの混合物により構成させる場合、フレークアイスにおける溶質濃度と、ブラインにおける溶質濃度との比が、75:25〜20:80であることがより好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましく、60:40〜40:60であることがより一層好ましく、55:45〜45:55であることがさらに一層好ましく、52:48〜48:52であることが特に好ましく、50:50であることが最も好ましい。特に、溶質として食塩を用いる場合、フレークアイスにおける溶質濃度と、ブラインにおける溶質濃度との比が上記範囲内にあることが好ましい。
なお、フレークアイスの原料となるブラインは、特に限定されないが、溶質として食塩を使用する場合、海水、海水に塩を追加した水、又は海水の希釈水であることが好ましい。海水、海水に塩を追加した水、又は海水の希釈水は、調達が容易であるため、調達コストを削減することができるからである。
フレークアイスを含有する氷スラリーは、さらに、フレークアイスより高い熱伝導率を有する固体を含有してもよく、含有しなくてもよいが、含有することが好ましい。
通常、短時間で対象物を冷却しようとする場合、熱伝導率の高い固体を冷媒として利用することができるが、この場合、その固体自身も短時間で冷熱エネルギーを失い温度が上がりやすくなるため、長時間の冷却には不適である。
即ち、長時間の冷却には、熱伝導率の高い固体を冷媒として利用しない方がよいということになるが、短時間で対象物を冷却しようとする場合に不適である。
しかしながら、フレークアイスは、冷却能が高いため、熱伝導率の高い固体による短時間の冷却能を得つつ、さらに長時間の冷却も可能としている点で有用である。
なお、フレークアイスよりも高い熱伝導率を有する固体としては、例えば、金属(アルミニウム、銀、銅、金、ジュラルミン、アンチモン、カドミウム、亜鉛、すず、ビスマス、タングステン、チタン、鉄、鉛、ニッケル、白金、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ニオブ、クロム、コバルト、イリジウム、パラジウム)、合金(鋼(炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、クロムニッケル鋼、ケイ素鋼、タングステン鋼、マンガン鋼等)、ニッケルクロム合金、アルミ青銅、砲金、黄銅、マンガニン、洋銀、コンスタンタン、はんだ、アルメル、クロメル、モネルメタル、白金イリジウム等)、ケイ素、炭素、セラミックス(アルミナセラミックス、フォルステライトセラミックス、ステアタイトセラミックス等)、大理石、レンガ(マグネシアレンガ、コルハルトレンガ等)等が挙げられる。
また、フレークアイスよりも高い熱伝導率を有する固体は、熱伝導率が2.3W/m K以上(3W/m K以上、5W/m K以上、8W/m K以上等)の固体であることが好ましく、熱伝導率が10W/m K以上(20W/m K以上、30W/m K以上、40W/m K以上等)の固体であることがより好ましく、熱伝導率が50W/m K以上(60W/m K以上、75W/m K以上、90W/m K以上等)の固体であることがさらに好ましく、熱伝導率が100W/m K以上(125W/m K以上、150W/m K以上、175W/m K以上等)の固体であることがより一層好ましく、熱伝導率が200W/m K以上(250W/m K以上、300W/m K以上、350W/m K以上等)の固体であることがなお好ましく、熱伝導率が200W/m K以上の固体であることがなお好ましく、熱伝導率が400W/m K以上(410W/m K以上等)の固体であることが特に好ましい。
フレークアイスを含有する氷スラリーが、フレークアイスよりも高い熱伝導率を有する固体を含有する場合、上述したとおり、多くの固体を含んだとしても長時間の冷却に適している。例えば、フレークアイスよりも高い熱伝導率を有する固体の質量/氷スラリーに含まれるフレークアイスの質量(又は氷スラリーに含まれるフレークアイスとブラインとの合計質量)は、1/100000以上(1/50000以上、1/10000以上、1/5000以上、1/1000以上、1/500以上、1/100以上、1/50以上、1/10以上、1/5以上、1/4以上、1/3以上、1/2以上等)であってもよい。なお、上記固体は、どのような形状であってもよいが、粒子状である方が好ましい。氷スラリーに接する面積が大きくなり、また加工し易い等のメリットがあるからである。
また、上記固体は、フレークアイスの内部に含まれた形態で存在してもよく、また、フレークアイスの外部に存在してもよいが、フレークアイスの外部に存在した方が対象物に直接接し易くなるため、冷却能が高くなる。このことから、上記個体は、氷の外部に存在した方が好ましい。また、フレークアイスを含有する氷スラリーが上記固体を含有する場合、後述のフレークアイス製造装置によりフレークアイスを製造した後に上記固体を混合させてもよく、あるいは、あらかじめ原料となるブラインに上記個体を混合させてフレークアイスを製造してもよい。
[フレークアイス製造装置]
容器に溜められた状態の水溶液を外部から冷却しても、ハイブリッドアイスと同等の性質を有する氷を製造することはできない。これは、冷却速度が十分でないことに起因すると考えられる。
しかしながら、本発明者が発明し既に特許出願済み(例えば特願2016−103637)のフレークアイス製造装置によれば、溶質を含有するブラインを噴射することで霧状にし、これをブラインの凝固点以下の温度に予め冷却された壁面に接触させることによって凍結させ、そのまま壁面に付着させることができる。これにより、上記(a)及び(b)の条件を満たす冷却能の高い氷(ハイブリッドアイス)を生成することができる。
なお、本発明者が発明し既に特許出願済みのフレークアイス製造装置については、図1のフレークアイス製造装置200、及び図3のフレークアイス製造システム300を参照して後述する。
(製氷工程)
付着したブラインを凍結させるために予め冷却される壁面は特に限定されない。ブラインの凝固点以下の温度を保持できるような壁面であればよい。例えば、後述する図1におけるドラム21のような円筒型の構造物の内周面(例えば後述する図1の内筒32の内周面)等が挙げられる。
壁面の温度は、ブラインの凝固点以下の温度で保持されていれば特に限定されないが、上記(a)及び(b)の条件を満たす氷(ハイブリッドアイス)の純度を高くできるという点で、ブラインの凝固点よりも1℃以上低い温度(2℃以上低い温度、3℃以上低い温度、4℃以上低い温度、5℃以上低い温度、6℃以上低い温度、7℃以上低い温度、8℃以上低い温度、9℃以上低い温度、10℃以上低い温度、11℃以上低い温度、12℃以上低い温度、13℃以上低い温度、14℃以上低い温度、15℃以上低い温度、16℃以上低い温度、17℃以上低い温度、18℃以上低い温度、19℃以上低い温度、20℃以上低い温度、21℃以上低い温度、22℃以上低い温度、23℃以上低い温度、24℃以上低い温度、25℃以上低い温度等)に保持されることが好ましい。
壁面に対しブラインを噴射する手法は特に限定されないが、例えば、後述する図1における噴射部23のような噴射手段によって噴射することができる。
この場合において、噴射する際の圧力は、例えば、0.001MPa以上(0.002MPa以上、0.005MPa以上、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上、0.2MPa以上等)であってもよく、1MPa以下(0.8MPa以下、0.7MPa以下、0.6MPa以下、0.5MPa以下、0.3MPa以下、0.1MPa以下、0.05MPa以下、0.01MPa以下等)であってもよい。また、噴射する際の圧力を可変制御できるようにしてもよい。
(回収工程)
上述した製氷工程の後に、壁面に生成されたハイブリッドアイスは適宜回収される。ハイブリッドアイスの回収方法は特に限定されず、例えば壁面に生成されたハイブリッドアイスを図1に示すブレード25によって剥ぎ取り、剥ぎ取られることでフレーク状になって落下したハイブリッドアイス(即ち、フレークアイス)を回収してもよい。また、壁面に付着したハイブリッドアイスにエアーを吹きかけることによりハイブリッドアイスを剥ぎ取ってもよい。これにより壁面に傷を与えることなく効率良くハイブリッドアイスをフレークアイスとして回収することができる。
また、ブラインを凝固させてハイブリッドアイスが生成される際には、製氷熱が発生する。ハイブリッドアイスは、この製氷熱を帯びることにより、実際に融解が完了する温度に影響を受ける可能性がある。なお、ハイブリッドアイスの融解が完了する温度は、ハイブリッドアイスに含まれる溶質の種類や濃度とは関係なく製氷熱の影響を受けると考えられる。このため、ハイブリッドアイスに残存する製氷熱の熱量を調整することにより、実際にハイブリッドアイスの融解が完了する時点における温度を調整することができる。なお、ハイブリッドアイスに残存する製氷熱の調整は、回収工程において、ハイブリッドアイスを壁面に保持させる時間を調整することにより行うことができる。
図1は、既存のフレークアイス製造装置200の概要を示す部分断面斜視図を含むイメージ図である。
図1に示すように、フレークアイス製造装置200は、ドラム21と、回転軸22と、噴射部23と、剥取部24と、ブレード25と、フレークアイス排出口26と、上部軸受部材27と、噴射制御部28と、防熱保護カバー29と、ギヤードモータ30と、ロータリージョイント31と、冷媒クリアランス34と、ブッシュ38と、冷媒供給部39と、回転制御部37とを備える。
ドラム21は、内筒32と、この内筒32を囲繞する外筒33と、内筒32と外筒33との間に形成される冷媒クリアランス34とで構成される。また、ドラム21の外周面は、円筒状の防熱保護カバー29によって覆われている。
冷媒クリアランス34には、冷媒供給部39から冷媒配管45を介して内筒冷却冷媒が供給される。これにより内筒32の内周面が冷却される。
回転軸22は、ドラム21の中心軸上に配置され、上部軸受部材27の上方に設置されたギヤードモータ30を動力源として、当該中心軸を軸として材軸回りに回転する。なお、ギヤードモータ30の回転速度は、後述の回転制御部37によって制御される。
噴射部23は、内筒32の壁面に向けてブラインを噴射する噴射孔23aを先端部に有する複数のパイプで構成され、回転軸22と共に回転する。噴射孔23aから噴射されたブラインは、冷媒によって冷却された内筒32の壁面に付着し、溶質と溶媒とに分離する時間も与えられずに急速に凍結する。
噴射部23を構成する複数のパイプは、回転軸22からドラム21の半径方向に放射状に延出している。
剥取部24は、内筒32の内周面に生成されたハイブリッドアイスを剥取るブレード25を先端部に備える複数のアームによって構成される。なお、剥取部24は、ドラム21の半径方向に延出し、回転軸22と共に回転する。
剥取部24を構成する複数のアームは、回転軸22に関して対称となるように装着されている。なお、図1に示すフレークアイス製造装置200の剥取部24は、2本のアームによって構成されているが、アームの本数は特に限定されない。
また、アームの先端に装着されているブレード25は、内筒32の全長(全高)に略等しい長さを有する部材からなり、内筒32の内周面に対向する端部には複数の鋸歯25aが形成されている。
内筒32の内周面に生成されたハイブリッドアイスは、ブレード25によって剥取られることによりフレークアイスとなる。フレークアイスは、フレークアイス排出口26から落下する。フレークアイス排出口26から落下したフレークアイスは、フレークアイス製造装置200の直下に配置されたフレークアイス貯留タンク44(図2参照)内に貯えられる。
また、噴射部23から噴射されるブラインの量を調節することにより、製造されるフレークアイスの量を調節してもよい。即ち、噴射部23から噴射されるブラインの量を増やすことにより、製造されるフレークアイスの量を増やすことができる。また反対に、噴射部23から噴射されるブラインの量を減らすことにより、製造されるフレークアイスの量を減らすことができる。
上部軸受部材27は、鍋を逆さにした形状からなり、ドラム21の上面を封止している。上部軸受部材27の中心部には、回転軸22を支持するブッシュ38が嵌装されている。なお、回転軸22は、上部軸受部材27にのみ支持され、回転軸22の下端部は軸支されていない。
即ち、ドラム21の下方には、ブレード25によって剥ぎ取られたフレークアイスが落下する際に障害となる物がないため、ドラム21の下面はフレークアイスを排出するフレークアイス排出口26となる。
噴射制御部28は、噴射部23によるブラインの噴射時に、噴射部23から噴射されるブラインの量を調節する。なお、噴射部23から噴射させるブラインの量を調節する具体的な手法は特に限定されない。例えば、噴射部23を構成する複数のパイプの夫々について、ブラインを噴射させるパイプの数とブラインを噴射させないパイプの数とを調節することにより、噴射されるブラインの量を調節してもよい。また例えば、ブラインを噴射させる複数のパイプに送り込むブラインの量を増減させることにより、噴射されるブラインの量を調節してもよい。
また、噴射制御部28は、噴射部23によるブラインの噴射時に、噴射圧力の可変制御を実行する。ブラインの噴射圧力を可変制御できるようにすることにより、内筒32の内周面に付着するブラインの体積をコントロールすることができる。即ち、ブラインを強い圧力で霧状に噴射させた場合に比べ、ブラインを弱い圧力で液状に噴射させた場合の方が、内筒32の内周面に付着するブラインの粒子が大きくなる。このため、ブラインを弱い圧力で液状に噴射させることにより生成されるハイブリッドアイスは、内筒32の内周面の温度よりも高いドラム21内部の空気の温度の影響を受け難くなる。
これにより、ブラインを弱い圧力で液状に噴射させることにより生成されるハイブリッドアイスは、ブラインを強い圧力で霧状に噴射させることにより生成される場合よりも溶け難いものとなる。なお、噴射制御部28がブラインの噴射圧力を可変制御する具体的な手法は特に限定されない。例えば、ブラインを噴射させる複数のパイプの噴射口(図示なし)の口径を調節することにより噴射圧力を可変制御してもよい。
防熱保護カバー29は、円筒形状からなり、ドラム21の側面を封止している。
冷媒供給部39は、冷媒クリアランス34に対して、内筒32の内周面を冷却する内筒冷却冷媒を、冷媒配管45を介して供給する。
冷媒クリアランス34に供給される冷媒は、冷媒クリアランス34と冷媒供給部39との間を冷媒配管45を介して循環する。これにより、冷媒クリアランス34に供給された内筒冷却冷媒を冷却能が高い状態で維持させることができる。
[フレークアイス製造システム]
図2は、図1のフレークアイス製造装置200を含むフレークアイス製造システム300の全体の概要を示すイメージ図である。
フレークアイス製造システム300は、ブライン貯留タンク40と、ポンプ41と、ブライン配管42と、ブラインタンク43と、フレークアイス貯留タンク44と、冷媒配管45と、凍結点調節部46と、フレークアイス製造装置200とを含むように構成されている。
ブライン貯留タンク40は、ハイブリッドアイスの原料となるブラインを貯える。ブライン貯留タンク40に貯えられたブラインは、ポンプ41を作動させることにより、ブライン配管42を介して噴射部23に供給される。噴射部23に供給されたブラインは、ハイブリッドアイスを生成するための原料となる。
ブラインタンク43は、ブライン貯留タンク40内に貯留されたブラインが少なくなると、ブライン貯留タンク40に対しブラインを供給する。
なお、内筒32の内周面で凍結することなく流下したブラインは、ブライン貯留タンク40に貯えられ、ポンプ41が作動されることによって再びブライン配管42を介して噴射部23に供給される。
フレークアイス貯留タンク44は、フレークアイス製造装置200の直下に配置され、フレークアイス製造装置200のフレークアイス排出口26から落下したフレークアイスを貯える。
凍結点調節部46は、ブラインタンク43からブライン貯留タンク40に供給されるブラインの凍結点を調節する。例えばブラインが塩水である場合には、塩水の凍結点は濃度によって異なる。このため、凍結点調節部46は、ブライン貯留タンク40に貯えられている塩水の濃度を調節する。
次に、上記構成を有するフレークアイス製造装置200を含むフレークアイス製造システム300の動作について、ブラインが塩水であることを前提として説明する。
まず、冷媒供給部39は、冷媒クリアランス34に冷媒を供給し、内筒32の内周面の温度を塩水の凍結点より−10℃程度低くなるように設定する。これにより、内筒32の内周面に付着した塩水を凍結させることができる。
内筒32の内周面が冷却されると、ポンプ41は、ブライン貯留タンク40からブライン配管42を介して、噴射部23にブラインである塩水を供給する。
噴射部23に塩水が供給されると、噴射部23は、内筒32の内周面に向けて塩水を噴射する。噴射部23から噴射された塩水は、内筒32の内周面に接触すると、溶質である塩と溶媒である水とに分離する時間を与えられる間もなく瞬時に凍結しハイブリッドアイスとなる。このようにしてハイブリッドアイスが生成される。
内筒32の内周面に生成されたハイブリッドアイスは、内筒32内を下降する剥取部24によって剥ぎ取られる。剥取部24によって剥ぎ取られたハイブリッドアイスは、フレークアイスとしてフレークアイス排出口26から落下する。フレークアイス排出口26から落下したフレークアイスは、フレークアイス製造装置200の直下に配置されたフレークアイス貯留タンク44内に貯えられる。
また上述したように、凍結してハイブリッドアイスになることなく内筒32の内周面を流下した塩水は、ブライン貯留タンク40に貯えられ、ポンプ41を作動させることによりブライン配管42を介して噴射部23に再び供給される。なお、ブライン貯留タンク40内の塩水が少なくなると、ブラインタンク43からブライン貯留タンク40に塩水が供給される。
以上、図1及び2に示す、既存のフレークアイス製造装置200、及びこれを含むフレークアイス製造システム300によれば、溶質濃度を略均一とするフレークアイスを容易に製造することが可能となる。
[冷却装置]
本発明の一実施形態である冷却装置1は、図1のフレークアイス製造装置200、及び図2のフレークアイス製造システム300により製造されたフレークアイスを含む氷スラリーを、対象物に接触させることにより、効率良く当該対象物を冷却する装置である。
以下、本発明の一実施形態である冷却装置1を図面に基づいて説明する。
図3は、冷却装置1によって冷却される対象物の例として蓄冷剤101を示す図である。
図3に示すように、蓄冷剤101は、本体部111の内部にリキッド状の冷媒112を格納し密封させた一般的な蓄冷剤である。一般的には、本体部111を含む蓄冷剤101全体を冷却して冷媒112を凍結させることにより、生鮮海産物等の保冷等に用いられる。
なお、本明細書において、「蓄冷剤を凍結させる」ことと、「蓄冷剤に密封された冷媒を凍結させる」ということとは同義である。
蓄冷剤101は、上述したように、冷凍機を備えない冷凍コンテナ等において多く利用されているが、凍結させるためにエアーブラスト(空気冷凍)方式が用いられている。このため、蓄冷剤101を凍結させるために多大なエネルギーや時間的が費やされている。
そこで、本発明者は、上述のハイブリッドアイスを含む氷スラリーを蓄冷剤101に接触させることにより、効率良く蓄冷剤101を冷却し凍結させることができる冷却方法を発明した。
図4は、貯留された氷スラリーSに蓄冷剤101を漬けた様子を示す図である。
図4(A)に示すように、貯留された氷スラリーSに蓄冷剤101を漬けると、蓄冷剤101は急激に冷却されるため、蓄冷剤101の内部の冷媒112が急速冷凍される。
図5は、氷スラリーSに3種類の蓄冷剤(蓄冷剤501乃至503)漬けて凍結させた実験における、蓄冷剤(蓄冷剤501乃至503)及び氷スラリーSの温度変化を示すグラフである。なお、蓄冷剤501乃至503は、いずれも−5℃で凍結するタイプの蓄冷材であり、夫々異なる製造メーカーによって製造された蓄冷材である。
対象となる蓄冷剤501乃至503は、いずれも凝固点が−5℃の蓄冷剤であるため、冷却されることによって温度が低下し−5℃に達すると凍結する。
図5に示すように、常温の状態(約16乃至18℃程度)にある蓄冷剤501乃至503の夫々を氷スラリーSに漬けて冷却すると、急激に温度が低下し始め、冷却開始から18.5分後に蓄冷剤503の温度が−5℃に達して凍結した。次に、冷却開始から22分後に蓄冷剤502の温度が−5℃に達して凍結した。そして、冷却開始から31.5分後に蓄冷剤501の温度が−5℃に達して凍結した。
また、蓄冷剤501乃至503の温度は、凍結後も低下し続け、冷却開始から約40分を経過した時点で、さらに急激に低下し始め、冷却開始から約45分を経過した時点で氷スラリーSの温度−21.3℃付近の温度(約−18乃至−20℃程度)に達した。
なお、図5に示すように、冷却装置1の氷スラリーSの温度は、常時−21.3℃程度で維持されていた。
このように、従来のエアーブラスト(空気冷凍)で約8時間程度要していた蓄冷剤の冷凍処理を、氷スラリーSを用いることにより数十分で行うことができる。つまり、従来のエアーブラスト(空気冷凍)方式による冷凍技術では実現できなかった、低コストで効率良く短時間で蓄冷剤を冷凍することができるようになる。
しかしながら、貯留された氷スラリーSに蓄冷剤101を漬けた場合、常温状態にある蓄冷剤101と氷スラリーとの間の温度差によって、蓄冷剤101の表面部分に接触している氷スラリーの一部が融解してブラインに変化する。例えば、氷スラリーSの溶質として食塩が採用されている場合には、約−21.3℃の氷スラリーに常温の蓄冷剤101が漬かることになるため、この温度差によって蓄冷剤101の表面部に接している氷スラリーの一部が融解して塩水のブラインに変化する。
ここで、食塩を溶質とするフレークアイスを含む氷スラリーの熱伝導率は約2.2W/m Kであるのに対し、同じく食塩を溶質とするブライン(塩水)の熱伝導率は約0.58W/m Kである。即ち、氷スラリーは、融解してブラインに変化することにより、急激に熱伝導率が低下する性質を有している。
つまり、氷スラリーSと常温の蓄冷剤101との温度差によって蓄冷剤101の表面部にブラインの膜が形成され、これが氷スラリーSによる蓄冷剤101の冷却を妨げてしまうこととなる。
図4に戻り、図4(B)は、図4(A)におけるA−A断面を示す図である。図4(B)の右端の破線内には、蓄冷剤101の底部を拡大した図が表示されている。破線内の拡大図に示すように、蓄冷剤101の表面部にはブラインの膜Wが形成される。このブラインの膜Wが、氷スラリーSによる蓄冷剤101の冷却を妨げてしまうこととなる。
このように、貯留された氷スラリーSに常温の蓄冷剤101を漬けた場合、温度差により蓄冷剤101の表面部に形成されるブラインの膜によって効率的な冷却が妨げられてしまうという問題がある。
そこで、本発明者は、この問題を解消し、効率良く対象物を冷却し凍結させることができる冷却装置1を発明した。
図6は、本発明の一実施形態である冷却装置1の外観構成の例を含むイメージ図である。
図6(A)は、本発明の一実施形態である冷却装置1の平面図を含むイメージ図である。
図6(B)は、本発明の一実施形態である冷却装置1の正面図を含むイメージ図である。
図6に示すように、冷却装置1は、蓄冷剤冷却部11と、氷スラリー供給部12と、氷スラリー循環部13と、ブライン抽出部14と、氷スラリー製造部15とを備える。
蓄冷剤冷却部11は、蓄冷剤101と氷スラリーSとを所定の相対速度で接触させることにより蓄冷剤101を冷却する。
具体的には、蓄冷剤冷却部11は、蓄冷剤101を固定させる蓄冷剤固定部51に固定させた蓄冷剤101と、所定の相対速度で蓄冷材冷却部11の内部を流れる氷スラリーSとを接触させることにより蓄冷剤101を冷却する。
即ち、蓄冷剤冷却部11の中の氷スラリーSは、図4の氷スラリーSのように貯留されておらず、後述する氷スラリー循環部13によって所定の相対速度で絶えず流動させられている。このため、蓄冷剤101の表面部にブラインの膜が形成される暇を与えることなく、流動する氷スラリーSが絶えず蓄冷剤101に接触している状態を維持させることができる。
また、蓄冷剤101の表面部にブラインの膜を形成させないという観点から、氷スラリーSを流動させるだけではなく、蓄冷剤101自体を氷スラリーSの中で動かしてもよい。例えば、固定させた蓄冷剤101を振動又は搖動させる機能を蓄冷剤固定部51に設けてもよい。これにより、蓄冷剤101の表面部にブラインの膜を形成させないようにすることができる。
このように、冷却装置1によれば、従来のエアーブラスト(空気冷凍)方式で約8時間程度要していた蓄冷剤101の冷凍処理を、数十分程度で行うことができる。つまり、従来のエアーブラスト(空気冷凍)方式による冷凍技術では実現できなかった、低コストで効率良く短時間で蓄冷剤を冷凍することを実現することができる。
氷スラリー供給部12は、蓄冷剤冷却部11に対し、氷スラリーSを供給する。
具体的には、氷スラリー供給部12は、後述する氷スラリー製造部15により製造された氷スラリーSを、後述する氷スラリー循環部13を介して蓄冷剤冷却部11に供給する。
また、氷スラリー供給部12は、氷スラリーSの供給を行う際、実際に蓄冷剤冷却部11の内部及び後述する氷スラリー循環部13の内部を流動する氷スラリーSの量を適量となるように調節する。
これにより、蓄冷剤冷却部11において、氷スラリーSの供給過多によって蓄冷剤冷却部11から氷スラリーSが溢れ出てしまう事態や、氷スラリーSの供給不足によって蓄冷剤冷却部11において蓄冷剤101に氷スラリーSが接触しないといった事態が生じる事を防止することができる。
氷スラリー循環部13は、蓄冷剤冷却部11に氷スラリーSを送給する。
具体的には、氷スラリー循環部13は、スクリューコンベア52を回転させることにより、氷スラリー供給部12から供給された氷スラリーSを蓄冷剤冷却部11に送給し、また、送給した氷スラリーSを蓄冷剤冷却部11から排出させる。これにより、蓄冷剤冷却部11に送給された氷スラリーSは、蓄冷剤冷却部11において蓄冷剤101に接触し又は接触することなく通過して蓄冷剤冷却部11から排出される。そして、氷スラリー循環部13は、スクリューコンベア52を回転させることにより、蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSを蓄冷剤冷却部11に送還する。
このように、氷スラリー循環部13は、スクリューコンベア52を回転させることにより、冷却装置1内に氷スラリーSを循環させる。
ここで、図6(A)の破線で囲まれた部分は、氷スラリー循環部13の内部の様子を示している。なお、破線で囲まれた部分は、図6(A)において氷スラリー循環部13の一部に過ぎないが、氷スラリー循環部13の他の部分についても、破線で囲まれた部分と同様に、内部にスクリューコンベア52が配置されているものとする。
ブライン抽出部14は、氷スラリー循環部13により蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSに含まれるブラインを抽出し、このブラインを氷スラリー製造部15に提供する。
ここで、蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSに含まれるブラインがブライン抽出部14によって抽出される理由について説明する。
まず、氷スラリーSに含まれるフレークアイスとブラインとの混合比率は特に限定されない。用途に応じて最適となる混合比率を採用してよい。ただし、蓄冷剤101を冷却し凍結させる処理を繰り返すと、氷スラリーSのうちフレークアイスの部分(固体部分)が融解する。これにより、冷却装置1内を循環する氷スラリーSにおけるフレークアイスとブラインとの混合比率は、時間の経過と共にフレークアイスの部分(固体部分)の割合が減少し、ブラインの部分(液体部分)の割合が増加する。
このため、ブライン抽出部14は、蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSに含まれるブラインを抽出することにより、循環する氷スラリーSにおけるフレークアイスとブラインとの混合比率が最適となるように維持する。
また、ブライン抽出部14は、抽出したブラインを、氷スラリーSの製造に用いられる原料として、後述の氷スラリー製造部15に提供する。氷スラリー製造部15に提供されたブラインは、氷スラリー製造部15によって製造される氷スラリーSに含まれるブラインとして用いられるか、あるいは、氷スラリーSに含まれるフレークアイスをフレークアイス製造装置200が製造する際の原料として用いられる。
これにより、循環する氷スラリーに含まれるフレークアイスとブラインとの混合比率を一定に保つことができると共に、氷スラリーSが融解することにより得られるブラインを効率良く再利用することができる。
なお、蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSに含まれるブラインをブライン抽出部14が抽出する具体的手法は特に限定されない。例えば、比重による分離機によって、氷スラリーからブラインを分離させる手法を用いてもよい。
氷スラリー製造部15は、フレークアイス製造システム300により製造されたフレークアイスとブラインとを所定の比率で混合させて氷スラリーSを製造する。
上述したように、氷スラリーSを製造する際のフレークアイスとブラインとの混合比率は特に限定されない。氷スラリーSの用途に応じて最適となる混合比率を採用してよい。
また、氷スラリー製造部15は、氷スラリーSを製造する際、氷スラリーSの空隙率を可変設定することができる。
次に、図7を参照して、上記構成を有する冷却装置1が行う処理の流れについて説明する。
図7は、上記構成を有する冷却装置1が行う処理の流れを説明するフローチャートである。
図7に示すように、冷却装置1は、次のような一連の処理を行うことにより、蓄冷剤固定部51に固定させた蓄冷剤101を冷却し凍結させる。
工程K1において、氷スラリー製造部15は、フレークアイス製造装置200により製造されたフレークアイスと、当該フレークアイスの原料であるブラインとを所定の割合で混合させることにより氷スラリーSを製造する。
工程K2において、氷スラリー供給部12は、工程K1で製造された氷スラリーSを、氷スラリー循環部13を介して蓄冷剤冷却部11に供給する。
工程K3において、氷スラリー循環部13は、スクリューコンベア52を回転させることにより、氷スラリー供給部12から供給された氷スラリーSを蓄冷剤冷却部11に送給する。
工程K4において、蓄冷剤冷却部11は、蓄冷剤101を固定させる蓄冷剤固定部51に固定させた蓄冷剤101と、所定の相対速度で蓄冷材冷却部11の内部を流れる氷スラリーSとを接触させることにより蓄冷剤101を冷却し凍結させる。
工程K5において、氷スラリー循環部13は、スクリューコンベア52を回転させることにより、蓄冷剤冷却部11において蓄冷剤101に接触し又は接触することなく通過した氷スラリーSを、蓄冷剤冷却部11から排出させる。
工程K6において、ブライン抽出部14は、工程K5で蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSに含まれるブラインを抽出し、当該ブラインを、氷スラリーSの製造に用いられる原料として、氷スラリー製造部15に提供する。
工程K7において、氷スラリー循環部13は、スクリューコンベア52を回転させることにより、工程K5で蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSを蓄冷剤冷却部11に送還する。なお、蓄冷剤冷却部11から排出された氷スラリーSのうち一部のブラインは、工程K6においてブライン抽出部14により抽出される。これにより、処理は終了となる。
以上のような工程を経ることにより、冷却装置1は、従来のエアーブラスト(空気冷凍)で約8時間程度要していた蓄冷剤の冷凍処理を、数十分で行うことができる。つまり、従来のエアーブラスト(空気冷凍)方式による冷凍技術では実現できなかった、低コストで効率良く短時間で蓄冷剤を冷凍することを実現させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。また本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や上記実施の形態の組み合わせを施してもよい。
例えば、ブラインは、上述した実施形態では塩水(塩化ナトリウム水溶液)としたが、特に限定されない。具体的には、例えば塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、エチレングリコール等を採用することができる。これにより、溶質又は濃度の違いに応じて凝固点の異なる複数種類のブラインを用意することも可能となる。
また、上述の実施形態では、冷却装置1を用いて冷却し凍結させる対象物を蓄冷剤(蓄冷剤101,501乃至503)としたが、本発明の冷却装置を用いて冷却し凍結させる対象物は特に限定されない。凍結させることができるあらゆる物質を対象物としてもよい。
次に、図8を参照して、上記構成を有する冷却装置1で用いられるフレークアイス(ハイブリッドアイス)の嵩密度(空隙率)について説明する。
図8は、各種条件下におけるフレークアイス(ハイブリッドアイス)の嵩密度の実験結果を示す図である。また、図8には、次式(1)で求められる空隙率も夫々示す。
空隙率=1−(ハイブリッドアイス嵩密度/同濃度の氷の密度)=1−(ハイブリッドアイス嵩密度/(通常の氷の密度(0.92g/cm))×(1+塩分濃度(%)/100)) ・・・(1)
図8に示すように、塩分濃度が濃くなるに従いフレークアイス(ハイブリッドアイス)の氷温度は低下する。このとき、フレークアイス(ハイブリッドアイス)の嵩密度は次第に増加し、空隙率は次第に低下していく。
具体的には、塩分濃度が0.0%のときには氷温度が0.0℃、嵩密度が0.45g/cm(空隙率51.1%)となり、塩分濃度が1.0%のときには氷温度が−1.0℃、嵩密度が0.50g/cm(空隙率46.2%)となり、塩分濃度が2.0%のときには氷温度が−2.0℃、嵩密度が0.52g/cm(空隙率44.6%)となり、塩分濃度が5.0%のときには氷温度が−6.3℃、嵩密度が0.60g/cm(空隙率37.9%)となり、塩分濃度が10.0%のときには氷温度が−13.7℃、嵩密度が0.64g/cm(空隙率36.8%)となり、塩分濃度が15.0%のときには氷温度が−19.9℃、嵩密度が0.70g/cm(空隙率33.9%)となり、塩分濃度が20.0%のときには氷温度が−20.5℃、嵩密度が0.73g/cm(空隙率33.8%)となり、塩分濃度が23.5%のときには氷温度が−21.0℃、嵩密度が0.76g/cm(空隙率33.1%)となる。
なお、図8に示す数値は、塩濃度、氷温度、及び嵩密度(空隙率)の関係を示す一例であり、諸条件を変更することにより調整することが可能となっている。即ち、上述したフレークアイス製造システム300は、フレークアイス(ハイブリッドアイス)の用途に応じて最適となる塩濃度、氷温度、及び嵩密度(空隙率)を満たすフレークアイス(ハイブリッドアイス)を製造することができる。
以上まとめると、本発明が適用される冷却装置は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される冷却装置(例えば図6の冷却装置1)は、
対象物(例えば図6の蓄冷剤101)と氷スラリー(例えば図6の氷スラリーS)とを接触させることにより前記対象物を冷却する冷却装置(例えば図6の冷却装置1)において、
前記対象物と前記氷スラリーとを所定の相対速度で接触させて前記対象物を冷却する対象物冷却手段(例えば図6の蓄冷剤冷却部11)と、
前記対象物冷却手段に対し、前記氷スラリーを供給する氷スラリー供給手段(例えば図6の氷スラリー供給部12)と、
を備える。
これにより、低コストで効率良く短時間で対象物を冷凍することができる。
また、前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送給すると共に、前記対象物冷却手段から排出された前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送還することにより前記氷スラリーを循環させる氷スラリー循環手段(例えば図6の氷スラリー循環部13)をさらに備え、
前記対象物冷却手段は、
前記氷スラリー循環手段により前記対象物冷却手段に送給された前記氷スラリーを所定の相対速度で前記対象物に接触させることができる。
これにより、さらに低コストで効率良く対象物を冷凍することができる。
また、前記対象物冷却手段は、
さらに、前記対象物を振動又は搖動させる対象物搖動手段(例えば図6の蓄冷剤固定部51が備える搖動機能)を備えることができる。
これにより、さらに効率良く対象物を冷凍することができる。
また、前記対象物が、蓄冷剤とすることができる。
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の冷却装置。
これにより、従来のエアーブラスト(空気冷凍)方式による冷凍技術では実現できなかった、低コストで効率良く短時間で蓄冷剤を冷凍することができる。
また、前記氷スラリー供給手段は、さらに、
前記氷スラリーを構成するフレークアイスを製造するフレークアイス製造手段(例えば図1のフレークアイス製造装置200)と、
前記フレークアイス製造手段により製造された前記フレークアイスとブライン(例えば塩水)とを所定の比率で混合させて前記氷スラリーを製造する氷スラリー製造手段(例えば図6の氷スラリー製造部15)と、
を備え、
前記フレークアイス製造手段は、
製氷面(例えば図1の内筒32の内周面)と、前記製氷面を冷却する製氷面冷却手段(例えば図1の冷媒クリアランス34に供給される内筒冷却冷媒)とを有し、冷却された前記製氷面に前記ブラインを付着させて凍結させた前記ブラインの氷を剥ぎ取ることにより前記フレークアイスを製造することができる。
これにより、氷スラリーの原料となるフレークアイスを製造する工程を含む一連の処理によって、さらに効率良く対象物を冷凍することができる。
また、前記氷スラリーに含まれる前記ブラインを抽出し、当該ブラインを、前記フレークアイス製造手段と前記氷スラリー製造手段とのうち少なくとも一方に対し、前記フレークアイス又は前記氷スラリーの製造に用いられる原料として提供するブライン抽出手段(例えば図6のブライン抽出部14)をさらに備えることができる。
これにより、循環する氷スラリーの混合比率を一定に保つことができると共に、氷スラリーが融解することにより得られるブラインを効率良く再利用することができる。
1:蓄冷剤冷却装置、11:蓄冷剤冷却部、12:氷スラリー供給部、13:氷スラリー循環部、14:ブライン抽出部、15:氷スラリー製造部、21:ドラム、22:回転軸、23:噴射部、23a:噴射孔、24:剥取部、25:ブレード、26:フレークアイス排出口、27:上部軸受部材、28:噴射制御部、29:防熱保護カバー、30:ギヤードモータ、31:ロータリージョイント、32:内筒、33:外筒、34:冷媒クリアランス、38:ブッシュ、39:冷媒供給部、40:ブライン貯留タンク、41:ポンプ、42:ブライン配管、43:ブラインタンク、44:フレークアイス貯留タンク、45:冷媒配管、46:凍結点調節部、51:蓄冷剤固定部、52:スクリューコンベア、101,501,502,503:蓄冷剤、111:本体部、112:冷媒、200:フレークアイス製造装置、300:フレークアイス製造システム、S:氷スラリー、W:ブラインの膜

Claims (8)

  1. 対象物と氷スラリーとを接触させることにより前記対象物を冷却する冷却装置において、
    前記対象物と前記氷スラリーとを所定の相対速度で接触させて前記対象物を冷却する対象物冷却手段と、
    フレークアイスとブラインとを混合し、前記氷スラリーとして前記対象物冷却手段に供給する氷スラリー供給手段と、
    前記氷スラリーが前記対象物と接触した後に、前記氷スラリーに含まれる前記ブラインを抽出して氷スラリー供給手段に供給するブライン抽出手段と、
    前記対象物冷却手段において対象物と接触した後の前記氷スラリーから、前記ブライン抽出手段で抽出した一部のブラインを前記氷スラリー供給手段に戻す経路と、
    前記一部のブラインを抽出した残りの前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送還する経路と、
    を備える冷却装置。
  2. 前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送給すると共に、前記対象物冷却手段から排出された前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送還することにより前記氷スラリーを循環させる循環路を有する氷スラリー循環手段であって、前記循環路に亘って連続的に前記氷スラリーを搬送する搬送手段を有する氷スラリー循環手段をさらに備え、
    前記対象物冷却手段は、
    前記氷スラリー循環手段により前記対象物冷却手段に送給された前記氷スラリーを所定の相対速度で前記対象物に接触させる、
    請求項1に記載の冷却装置。
  3. 前記対象物冷却手段は、
    さらに、前記対象物を振動又は搖動させる対象物搖動手段を備える、
    請求項1又は2に記載の冷却装置。
  4. 前記対象物が、蓄冷剤である、
    請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の冷却装置。
  5. 前記氷スラリー供給手段は、さらに、
    前記氷スラリーを構成する前記フレークアイスを製造するフレークアイス製造手段と、
    前記フレークアイス製造手段により製造された前記フレークアイスと前記ブラインとを所定の比率で混合させて前記氷スラリーを製造する氷スラリー製造手段と、
    を備え、
    前記フレークアイス製造手段は、
    製氷面と、前記製氷面を冷却する製氷面冷却手段とを有し、冷却された前記製氷面に前記ブラインを付着させて凍結させた前記ブラインの氷を剥ぎ取ることにより前記フレークアイスを製造する、
    請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の冷却装置。
  6. ブライン抽出手段は、
    前記氷スラリーに含まれる前記ブラインを抽出し、当該ブラインを、前記フレークアイス製造手段と前記氷スラリー製造手段とのうち少なくとも一方に対し、前記フレークアイス又は前記氷スラリーの製造に用いられる原料として提供する、
    請求項5に記載の冷却装置。
  7. 対象物冷却手段において対象物と氷スラリーとを接触させることにより前記対象物を冷却する冷却方法において、
    前記対象物と前記氷スラリーとを所定の相対速度で接触させて前記対象物を冷却する対象物冷却工程と、
    フレークアイスとブラインとを混合し、前記氷スラリーとして前記対象物冷却手段に供給する氷スラリー供給工程と、
    前記氷スラリーを前記対象物と接触させた後に、前記氷スラリーに含まれる前記ブラインを抽出して氷スラリー供給手段に供給するブライン抽出工程と、
    前記対象物冷却手段において対象物と接触した後の前記氷スラリーから、前記ブライン抽出手段で抽出した一部のブラインを前記氷スラリー供給手段に戻す工程と、
    前記一部のブラインを抽出した残りの前記氷スラリーを前記対象物冷却手段に送還する工程と、
    を含む冷却方法。
  8. 前記対象物が、蓄冷剤である、
    請求項7に記載の冷却方法。
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