近年、半導体デバイスの製造工程においては、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された半導体基板(以下、「ウェハ」という。)同士が接合された重合ウェハにおいて、当該重合ウェハを形成する第1のウェハを薄化することが行われている。
上述した特許文献1に記載のウェハ処理システムは、薄化処理により第1のウェハ(被処理ウェハ)にナイフエッジ形状が形成されるのを抑制する方法の一例として、薄化処理前の第1のウェハの周縁部を除去、いわゆるエッジトリムを行うためのシステムである。具体的には、第1のウェハと第2のウェハ(支持ウェハ)が接合された重合ウェハにおいて、第1のウェハの内部に周縁部の除去の基点となる改質層を形成し、その後、当該改質層を基点として第1のウェハから周縁部を剥離する。
ここで、特許文献1に記載の方法のように重合ウェハを第1のウェハを上方に配置した状態でエッジトリムを行った場合、剥離された破材や破片、粉塵が落下せずに、重合ウェハの上面に乗ってしまうおそれがある。そして、このように重合ウェハの上面に破材等が乗った場合、当該重合ウェハの搬送中や、次工程の処理中に落下、飛散して不具合を起こす原因となり得る。したがって、従来のエッジトリム方法には改善の余地がある。
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第1の基板の少なくとも周縁部を第2の基板から適切に剥離する。以下、本実施形態にかかる基板処理システムとしてのウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本実施形態にかかる後述のウェハ処理システム1では、図1に示すように第1の基板としての第1のウェハW1と第2の基板としての第2のウェハW2とが接合された重合基板としての重合ウェハTに対して処理を行う。そしてウェハ処理システム1では、第1のウェハW1の周縁部Weを除去する。以下、第1のウェハW1において、第2のウェハW2と接合される側の面を表面W1aといい、表面W1aと反対側の面を裏面W1bという。同様に、第2のウェハW2において、第1のウェハW1と接合される側の面を表面W2aといい、表面W2aと反対側の面を裏面W2bという。また、第1のウェハW1において、エッジトリムによる除去対象の周縁部Weよりも径方向内側の領域を中央部Wcという。
第1のウェハW1は例えばシリコン基板等の半導体ウェハであって、表面W1aに複数のデバイスを含むデバイス層D1が形成されている。また、デバイス層D1にはさらに、第2のウェハW2との接合用の膜である表面膜F1が形成され、当該表面膜F1を介して第2のウェハW2と接合されている。表面膜F1としては、例えば酸化膜(SiO2膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤等が挙げられる。なお、第1のウェハW1の周縁部Weは面取り加工がされており、周縁部Weの断面はその先端に向かって厚みが小さくなっている。また、周縁部Weは後述のエッジトリムにおいて除去される部分であり、例えば第1のウェハW1の外端部から径方向に0.5mm〜3mmの範囲である。なお、第1のウェハW1とデバイス層D1との界面には、周縁部Weの除去に際して重合ウェハTの内部に照射されるレーザ光を吸収できるレーザ吸収層(図示せず)がさらに形成されていてもよい。また、デバイス層D1に形成された表面膜F1をレーザ吸収層として用いてもよい。
第2のウェハW2も例えば第1のウェハW1と同様の構成を有しており、表面W2aにはデバイス層D2及び表面膜F2が形成され、周縁部は面取り加工がされている。なお、第2のウェハW2はデバイス層D2が形成されたデバイスウェハである必要はなく、例えば第1のウェハW1を支持する支持ウェハであってもよい。かかる場合、第2のウェハW2は第1のウェハW1のデバイス層D1を保護する保護材として機能する。
図2に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ブロックG1、搬送ブロックG2、及び処理ブロックG3を一体に接続した構成を有している。搬入出ブロックG1、搬送ブロックG2及び処理ブロックG3は、X軸負方向側からこの順に並べて配置されている。
搬入出ブロックG1は、例えば外部との間で複数の重合ウェハTを収容可能なカセットCが搬入出される。搬入出ブロックG1には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば3つのカセットCをY軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCの個数は本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
搬送ブロックG2には、カセット載置台10のX軸正方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送装置20が設けられている。ウェハ搬送装置20は、Y軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されている。またウェハ搬送装置20は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム22、22を有している。各搬送アーム22は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そしてウェハ搬送装置20は、カセット載置台10のカセットC及び後述するトランジション装置30に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
搬送ブロックG2には、ウェハ搬送装置20のX軸正方向側において、当該ウェハ搬送装置20に隣接して、重合ウェハTを受け渡すためのトランジション装置30が設けられている。
また搬送ブロックG2には、例えばトランジション装置30と積層して、処理ブロックG3において処理される重合ウェハTを反転させるための傾斜部としての反転装置31が設けられている。反転装置31は、後述の周縁除去装置50に搬入される重合ウェハTの傾き調整(反転)を行う。すなわち本実施形態における重合ウェハTの「傾斜」には、重合ウェハTの反転(180°の傾斜)が含まれるものとする。
処理ブロックG3は、ウェハ搬送装置40、周縁除去装置50、洗浄装置60、裏面検査装置70、内部改質装置80、及び界面改質装置90を有している。
ウェハ搬送装置40は、X軸方向に延伸する搬送路41上を移動自在に構成されている。またウェハ搬送装置40は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム42、42を有している。各搬送アーム42は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム42の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そしてウェハ搬送装置40は、トランジション装置30、反転装置31、周縁除去装置50、洗浄装置60、裏面検査装置70、内部改質装置80及び界面改質装置90に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
周縁除去装置50は、第1のウェハW1の周縁部Weの除去、すなわちエッジトリムを行う。なお、周縁除去装置50の詳細な構成は後述する。洗浄装置60は、重合ウェハTを洗浄する。裏面検査装置70は例えば洗浄装置60と積層して設けられ、エッジトリム後の重合ウェハTの裏面を検査する。内部改質装置80は、第1のウェハW1の内部にレーザ光(内部用レーザ光、例えばYAGレーザ)を照射し、周縁部Weの剥離の基点となる周縁改質層M1、及び周縁部Weの小片化の基点となる分割改質層M2を形成する。界面改質装置90は、周縁部Weの剥離の基点となる第1のウェハW1と第2のウェハW2の界面にレーザ光(界面用レーザ光、例えばCO2レーザ)を照射し、後述の未接合領域Aeを形成する。
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置100が設けられている。制御装置100は例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。またプログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置等の駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置100にインストールされたものであってもよい。
本実施形態にかかるウェハ処理システム1は以上のように構成されている。次に、上述した基板処理装置としての周縁除去装置50について説明する。
図3に示すように周縁除去装置50は、重合ウェハTを上面で保持する保持部材としてのチャック51を有している。チャック51は、第1のウェハW1が下側、第2のウェハW2が上側に配置された状態で、第1のウェハW1の裏面W1bを保持する。またチャック51は回転機構52によって鉛直軸周りに回転可能に構成され、チャック51上に保持された重合ウェハTに対する後述の挿入部材53の相対的な周方向位置を調節可能に構成されている。
チャック51の側方には、第1のウェハW1と第2のウェハW2の界面に挿入されることで第1のウェハW1の周縁部Weを除去する、除去部材としての挿入部材53が設けられている。挿入部材53は、図3に示すように側面視において先端がとがった形状(例えばくさびローラやブレード等)を有し、図示しない回転機構により鉛直軸周りに回転自在に構成されている。また挿入部材53は、水平移動機構54によりチャック51に保持された重合ウェハTに対して進退方向に移動可能に構成されるとともに、図4(a)に示すように、昇降機構55によりチャック51に保持された重合ウェハTとの相対的な高さ位置が調節可能に構成されている。
そして周縁除去装置50においては、水平移動機構54により挿入部材53を水平方向に移動させ、第1のウェハW1の表面W1aと第2のウェハW2の表面W2aとの間を目標位置として挿入部材53を挿入する。そしてこれにより、周縁部Weが第2のウェハW2から押し下げられた状態となり、その後、挿入部材53が界面に挿入された状態でチャック51を回転させることにより、周縁部Weが第1のウェハW1(重合ウェハT)から剥離して除去される(以下、周縁部Weが第2のウェハW2から剥離する実際の高さ位置を、「剥離界面」という場合がある)。
またチャック51の下方には、当該チャック51を取り囲むように受け部材としてのカップ体56が設けられている。カップ体56には、周縁部Weの回収機構(図示せず)が接続され、挿入部材53の挿入により第1のウェハW1から除去された周縁部Weを受け止め、当該回収機構へと排出する。
チャック51の上方には、チャック51に保持された重合ウェハT、及び挿入部材53の高さ位置を検知する高さ検知機構57が設けられている。高さ検知機構57としては、例えば非接触式のレーザ変位計を用いることができる。そして高さ検知機構57は、重合ウェハTの上方側(第2のウェハW2の裏面W2b側)から重合ウェハTに対してレーザ光を照射することで、チャック51に保持された重合ウェハTの高さ位置を検知する。検知された重合ウェハTの高さ位置は、制御装置100に出力される。そして周縁除去装置50においては、検知された重合ウェハTの高さ位置と、予め取得された挿入部材53の高さ位置に基づいて、重合ウェハTに対する挿入部材53の相対的な高さ位置を調節する。換言すれば、検知された重合ウェハTの高さ位置を基準として昇降機構55により挿入部材53の高さ位置を調節し、当該挿入部材53の高さ位置を、目標位置である第1のウェハW1と第2のウェハW2の間に調節する。なお、挿入部材53の高さ位置は、例えば挿入部材53を水平移動機構54により高さ検知機構57の下方に移動させることで検知することができる。また例えば、高さ検知機構57を図示しない移動機構により移動させ、挿入部材53の上方に移動させることにより検知してもよい。
本実施形態の一例にかかる周縁除去装置50は以上のように構成されるが、周縁除去装置50の構成はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては回転機構52によりチャック51を回転させることで、チャック51と挿入部材53の相対的な周方向位置を調節したが、回転機構52に代えて、又は加えて、挿入部材53を重合ウェハTの周方向に沿って移動可能に構成してもよい。
例えば、周縁除去装置50には挿入部材53の刃先の状態、具体的には、挿入部材53の欠損の有無、欠損の位置等を検査するための部材検査機構(図示せず)が更に設けられていてもよい。部材検査機構としては、例えばCCDカメラやCMOSカメラ等を用いることができる。
例えば、上記実施形態においては図4(a)に示したように昇降機構55により挿入部材53を昇降させることで、目標位置に対する挿入部材53の相対的な高さ位置を調節したが挿入部材53の高さ位置の調整方法はこれに限定されない。例えば、図4(b)に示すように昇降機構によりチャック51を昇降可能に構成してもよいし、例えば、図4(c)に示すように水平移動機構54を昇降可能に構成し、当該水平移動機構54と一体に挿入部材53を昇降可能に構成してもよい。
例えば、上記実施形態においては高さ検知機構57により第2のウェハW2の裏面W2b側からレーザ光を照射することで重合ウェハTの高さ位置を検知したが、第1のウェハW1の裏面W1b側からレーザ光を照射してもよい。すなわち重合ウェハTの下面を基準として昇降機構55により挿入部材53の高さ位置を調節してもよい。
例えば、上記実施形態においては高さ検知機構57として非接触式のレーザ変位計を用いたが、高さ検知機構57として撮像部(例えばCCDカメラやCMOSカメラ等)を用いてもよい。すなわち、チャック51に保持された重合ウェハTを撮像し、撮像された画像に基づいて挿入部材53の高さ位置を調整してもよい。
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1、及び周縁除去装置50を用いて行われるウェハ処理について説明する。なお本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部に設けられた接合装置(図示せず)において第1のウェハW1と第2のウェハW2が接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
先ず、複数の重合ウェハTを収納したカセットCが、搬入出ブロックG1のカセット載置台10に載置された後、ウェハ搬送装置20によりカセットC内の重合ウェハTが取り出される。カセットCから取り出された重合ウェハTは、トランジション装置30を介してウェハ搬送装置40に受け渡された後、界面改質装置90に搬送される。界面改質装置90では、図5(a)に示すように、重合ウェハT(第1のウェハW1)を回転させながら第1のウェハW1とデバイス層D1の界面(より具体的には当該界面に形成された上述のレーザ吸収層)にレーザ光(例えば8.9μm〜11μmの波長を有するCO2レーザ)を照射し、未接合領域Aeを形成する(図6のステップS1)。
未接合領域Aeにおいては第1のウェハW1とデバイス層D1の界面が改質、又は剥離され、第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合強度が低下、又は無くされる。これにより第1のウェハW1とデバイス層D1の界面には、環状の未接合領域Aeと、当該未接合領域Aeの径方向内側において、第1のウェハW1と第2のウェハW2が接合された接合領域Acが形成される。後述するエッジトリムにおいては、除去対象である第1のウェハW1の周縁部Weが除去されるが、このように未接合領域Aeが存在することで、周縁部Weを適切に除去することができる。
未接合領域Aeが形成された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により内部改質装置80へと搬送される。内部改質装置80では、図5(b)及び図7に示すように、第1のウェハW1の内部に周縁改質層M1及び分割改質層M2を形成する(図6のステップS2)。周縁改質層M1は、後述のエッジトリムにおいて周縁部Weを除去する際の基点となるものである。分割改質層M2は、除去される周縁部Weの小片化の基点となるものである。なお以降の説明に用いる図面においては、図示が複雑になることを回避するため、分割改質層M2の図示を省略する場合がある。
ここで周縁改質層M1の形成位置は、ステップS1で形成された未接合領域Aeの内端よりも若干径方向内側に決定される。周縁改質層M1は、接合領域Acと未接合領域Aeの境界(以下、単に「境界」という。)と重なる位置に形成されることが理想であるが、例えば加工誤差等により径方向にずれて形成される場合がある。そして、これにより周縁改質層M1が境界から径方向外側に離れた位置、すなわち未接合領域Aeに形成されると、エッジトリム後に第2のウェハW2に対して第1のウェハW1が浮いた状態になる場合がある。この点、周縁改質層M1を境界よりも径方向内側に形成するように制御することにより、周縁改質層M1の形成位置がずれたとしても、境界と重なる位置、又は境界よりも径方向外側であっても当該境界と近接した位置に周縁改質層M1を形成することができ、境界から径方向外側に離れた位置に周縁改質層M1が形成されるのを抑制できる。
なお周縁改質層M1からは、図5(b)に示したように、第1のウェハW1の内部において厚み方向にクラックC1が伸展する。同様に、分割改質層M2からはクラックC2(図示せず)が第1のウェハW1の内部において厚み方向に伸展する。
第1のウェハW1の内部に周縁改質層M1及び分割改質層M2が形成された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により反転装置31に搬送される。反転装置31では、図5(c)に示すように重合ウェハTの上下面が反転される(図6のステップS3)。すなわち、周縁部Weの除去対象である第1のウェハW1が下方、第2のウェハW2が上方に配置されるように、重合ウェハTの傾き調整(反転)が行われる。
上下面が反転された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により周縁除去装置50へと搬送される。周縁除去装置50では、図5(d)に示すように第1のウェハW1の周縁部Weの除去、すなわちエッジトリムが行われる(図6のステップS4)。この時、周縁部Weは周縁改質層M1及びクラックC1を基点として第1のウェハW1の中央部Wcから剥離されるとともに、未接合領域Aeを基点としてデバイス層D1(第2のウェハW2)から剥離される。またこの時、除去される周縁部Weは分割改質層M2及びクラックC2を基点として小片化される。
周縁除去装置50において行われるエッジトリムについて具体的に説明する。
第1のウェハW1の周縁部Weのエッジトリムにあたっては、周縁除去装置50への重合ウェハTの搬入に先立って、周縁除去装置50の内部における挿入部材53の高さ位置が取得される(図8のステップS4−0)。具体的には、水平移動機構54により挿入部材53を高さ検知機構57の下方に移動させ、挿入部材53にレーザ光を照射することで、当該挿入部材53の高さ位置が検知される。なお、かかる挿入部材53の高さ位置は、周縁除去装置50での重合ウェハTの処理毎に高さ検知機構57により検知して取得してもよいし、予め制御装置100に記憶された挿入部材53の高さ位置を参照することにより取得してもよい。
周縁除去装置50に搬入された重合ウェハTは、図9(a)に示すように、第1のウェハW1が下方、第2のウェハW2が上方に配置された状態で、第1のウェハW1の裏面W1bがチャック51に保持される。換言すれば、重合ウェハTは、チャック51の下方に設けられたカップ体56に対して周縁部Weの除去対象である第1のウェハW1が向けられた状態で、当該チャック51に保持される。
チャック51に保持された重合ウェハTは、先ず、水平方向の向きが調整(ノッチアライメント)される(図8のステップS4−1)。ノッチアライメントにあたっては、チャック51に保持された重合ウェハTを回転機構52により回転させながら、第1のウェハW1の周縁部Weに形成されたノッチ部(図示せず)の位置を検出し、当該ノッチ部の位置を調節する。
続いて、重合ウェハTの界面に挿入される挿入部材53の高さ位置が調整(高さアライメント)される(図8のステップS4−2)。高さアライメントにあたっては、図10(a)に示すように高さ検知機構57を用いてチャック51に保持された重合ウェハTの上面(第2のウェハW2の裏面W2b)の高さ位置を検知する。そして、検知された重合ウェハT上面の高さ位置、及びステップS4−0で取得された挿入部材53の高さ位置に基づいて昇降機構55により挿入部材53の高さ位置を調節する。この時、当該挿入部材53の高さ位置は、挿入部材53を挿入する目標位置である第1のウェハW1と第2のウェハW2の間の予め定められた位置に決定される。
ここで、重合ウェハTやデバイス層に面内厚みのバラつきが生じている場合や、重合ウェハTに反りが生じている場合、周縁部Weの除去に際して挿入部材53を挿入する目標位置が、重合ウェハTの周方向で安定していないおそれがある。そして、このよう目標位置が安定しない場合、後述のように挿入部材53を挿入しながら重合ウェハTを回転させた際に、挿入部材53の挿入高さ位置に対して目標位置にずれが生じ、適切に周縁部Weを剥離できないおそれがある。
そこで本実施形態にかかる高さアライメントにおいては、回転機構52によりチャック51に保持された重合ウェハTを回転させながらレーザ光を照射することで、重合ウェハTの全周における高さ位置を検知する。そして後述のように周縁部Weの除去のため重合ウェハTを回転させる際には、このように検知された重合ウェハTの高さ位置、及び重合ウェハTに対する挿入部材53の相対的な周方向位置に基づいて、挿入部材53の高さ位置を調節する。
挿入部材53の高さアライメントが行われると、次に、図10(b)に示すように水平移動機構54を用いて挿入部材53を目標位置に挿入する(図8のステップS4−3)。具体的には、ステップS4−3で決定された挿入高さ位置、すなわち第1のウェハW1と第2のウェハW2との間の予め定められた位置に、挿入部材53を挿入する。第1のウェハW1と第2のウェハW2との間に挿入部材53が挿入されると、図10(b)に示したように、第1のウェハW1の周縁部Weが第2のウェハW2から剥離する方向に応力Nが作用し、その後、図10(c)に示すように周縁改質層M1及びクラックC1を基点に周縁部Weが剥離する。この時、挿入部材53は例えばくさび形状を有しているため、挿入部材53の先端部が第1のウェハW1と第2のウェハW2との間に挿入されれば、当該挿入部材53により周縁部Weに対して適切に応力Nを作用させることができる。またこの時、第1のウェハW1とデバイス層D1の界面には未接合領域Aeが形成され、これにより第1のウェハW1と第2のウェハW2の接合強度が低下、もしくは無くされている。このため、挿入部材53の挿入により応力Nが作用すると、周縁部Weは、この接合強度が低下された未接合領域Aeが基点となって第2のウェハW2から剥離される。
このように、図10(b)に示したように第1のウェハW1と第2のウェハW2との間に挿入部材53を挿入して周縁部Weに対して応力Nを作用させることができれば、未接合領域Aeを基点として周縁部Weを第2のウェハW2から剥離することができる。換言すれば、周縁部Weの除去にあたっては、挿入部材53の重合ウェハTに対する挿入高さが、必ずしも剥離界面となる未接合領域Aeの形成高さと一致していなくとも、周縁部Weを適切に第2のウェハW2から除去することができる。そして、このように挿入部材53の挿入高さと周縁部Weの剥離界面の高さ位置が異なる場合、挿入部材53が重合ウェハTに衝突することが抑制され、安全に周縁部Weの除去を行うことができる。また、挿入部材53の重合ウェハTに対する挿入高さは、第1のウェハW1と第2のウェハW2との接合面である表面膜F1と表面膜F2の界面が、より好ましい。第1のウェハW1と第2のウェハW2との接合面である表面膜F1と表面膜F2の界面には図10(b)で示すように、非接合面である空間が僅かに形成される場合、その空間に挿入部材53が挿入されやすいためである。そのため、効率的に剥離界面に対して応力Nを作用させることが出来る。
なお、重合ウェハTの周方向に対する挿入部材53の挿入位置は、図7に示した一の分割改質層M2と隣接する他の分割改質層M2の間の領域(以下、「分割領域R」という場合がある。)、すなわち、分割改質層M2の形成位置を避けて決定されることが好ましい。またこの時、挿入部材53の挿入位置は、図9(b)に示すように、重合ウェハTの回転に伴う分割領域Rの上流側(前述の一の分割改質層M2の近傍)であることがより好ましい。このように分割領域Rの上流側に挿入部材53を挿入することにより、一の分割改質層M2は周縁部Weの剥離による引張力を受けて破断する。
挿入部材53を重合ウェハTに挿入すると、次に、回転機構52によりチャック51に保持された重合ウェハTを回転させ、これにより周縁部Weの剥離を周方向(重合ウェハTの回転方向)に伸展させる(図8のステップS4−4)。この時、挿入部材53は重合ウェハTの回転に追従して鉛直軸周りに供回りする。その後、図9(c)に示すように挿入部材53が分割領域Rの他端側(前述の他の分割改質層M2の近傍)に達すると、他の分割改質層M2は周縁部Weの剥離による引張力を受けて破断し、これにより周縁部Weが小片化される。そして、このように分割領域Rの全長において周縁部Weが剥離し、小片化されると、図9(d)及び図10(d)に示すように、当該分割領域Rにおける周縁部Weが第1のウェハW1(重合ウェハT)から除去される(図8のステップS4−5)。なお、除去された周縁部Weは自重によりカップ体56に受け止められ、その後、図示しない回収機構へと回収される。
ここで、上述したようにチャック51に対して第1のウェハW1が上方に配置された状態で周縁部Weの剥離が行われた場合、剥離された周縁部Weが重合ウェハTの上面(第1のウェハW1の裏面W1b)に乗ってしまうおそれがある。またこの場合、第1のウェハW1から剥離された周縁部Weが、カップ体56(回収機構)への落下の過程で第2のウェハW2の側方を通過することになるため、当該周縁部Weの通過に際して第2のウェハW2に対してパーティクルが付着するおそれがある。
この点本実施形態によれば、第1のウェハW1から周縁部Weを剥離するに際して、周縁部Weの除去対象である第1のウェハW1を下方に配置した状態、より具体的には、第1のウェハW1をカップ体56に向けた状態となるように、重合ウェハTをチャック51により保持する。これにより、剥離した周縁部Weが重合ウェハTの上面(本実施形態によれば第2のウェハW2の裏面W2b)に乗ってしまうことが適切に抑制されるとともに、周縁部Weが落下の過程で第2のウェハW2の側方を通過しないため、第2のウェハW2に対するパーティクルの付着が適切に抑制される。
一の分割領域Rにおける周縁部Weが除去されると、続けて、隣接する次の分割領域Rにおける周縁部Weの除去が行われる。この時、一の分割領域Rにおける周縁部Weの除去後にそのまま重合ウェハTの回転を継続した場合、挿入部材53が次の分割領域Rにおける周縁部Weの一端部に衝突することで重合ウェハTの回転方向とは逆向きの反力が加わり、周縁部Weを適切に除去できないおそれがある。
そこで、次の分割領域Rにおける周縁部Weの除去に際しては、当該周縁部Weの剥離を開始する前に水平移動機構54により挿入部材53を退避させ、分割改質層M2を避けた分割領域Rの上流側において、挿入部材53の挿入を再度行うことが好ましい。これにより、周縁部Weの小片化及び除去をより適切に行うことができる。
なお、上述のように目標位置である第1のウェハW1と第2のウェハW2の間の高さ位置が重合ウェハTの周方向で安定していない場合、当該重合ウェハTの回転に伴って挿入部材53の挿入高さ位置と目標位置にずれが生じ、適切に周縁部Weを除去できないおそれがある。この点、本実施形態においてはステップS4−2において検知された重合ウェハTの全周における高さ位置に基づいて、重合ウェハTの周位置に応じて挿入部材53の高さ位置を調節する。換言すれば、検知された重合ウェハTの全周における高さ位置に基づいて、重合ウェハTの全周における挿入部材53の挿入高さを算出し、算出された挿入高さに追従して昇降機構55により挿入部材53の高さを調整する。これにより、重合ウェハTの全周において周縁部Weを適切に剥離することができる。
第1のウェハW1の全周において周縁部Weの除去が行われた重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により反転装置31に搬送される。反転装置31では、重合ウェハTの上下面が反転される(図6のステップS5)。すなわち、周縁部Weが除去された第1のウェハW1が上方、第2のウェハW2が下方に配置されるように、重合ウェハTの傾き調整(反転)が行われる。
上下面が反転された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により洗浄装置60へと搬送される。洗浄装置60では、周縁部Weが除去された後の重合ウェハTが洗浄される(図6のステップS6)。
続いて重合ウェハTは、ウェハ搬送装置40により裏面検査装置70へと搬送される。裏面検査装置70では、周縁部Weが除去された後の重合ウェハTの第2のウェハW2の裏面W2bに対するパーティクルの付着が検査される(図6のステップS7)。なお、裏面検査装置70では、第2のウェハW2の裏面W2bと共に、第1のウェハW1の裏面W1bの検査がさらに行われてもよい。
その後、全てのウェハ処理が施された重合ウェハTは、トランジション装置30を介してウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
以上の実施形態によれば、第1のウェハW1の周縁部Weの除去に先行して、反転装置31により重合ウェハTの傾き調整(反転)が行われ、周縁除去装置50においては、第1のウェハW1がカップ体56に向けられた状態で重合ウェハTが保持される。すなわち周縁除去装置50においては、第1のウェハW1が剥離された周縁部We受けるカップ体56側に配置された状態でエッジトリムが行われる。これにより、以上の実施形態によれば剥離した周縁部Weが重合ウェハTの上面に乗ってしまうことが適切に抑制される。また、周縁部Weが落下の過程で第2のウェハW2の側方を通過しないため、第2のウェハW2に対するパーティクルの付着が適切に抑制される。
また以上の実施形態によれば、このように第1のウェハWをカップ体56に向けた状態でエッジトリムを行うことで、第1のウェハW1から剥離された周縁部Weは適切にカップ体56(回収機構)へと導かれる。これにより、従来、剥離した周縁部Weや、当該剥離により発生したパーティクルをカップ体56(回収機構)へと適切に導くための排気機構(図示せず)による排気流量を小さくすることができ、エッジトリムにかかるエネルギー効率を向上させることができる。
また、以上の実施形態のようにカップ体56をチャック51の下方に設け、かかる状態で第1のウェハW1を下方に配置してエッジトリムを行うことで、剥離された周縁部Weは自重によりカップ体56に対して落下する。すなわち、より適切に剥離した周縁部Weをカップ体56により受け止め、回収することができる。
なお、以上の実施形態においては、周縁除去装置50の外部に設けられた反転装置31を用いて重合ウェハTを反転させた後、当該反転後の重合ウェハTを周縁除去装置50に搬入したが、重合ウェハTは周縁除去装置50の内部で反転されてもよい。具体的には、図11に示すように、ウェハ搬送装置40により周縁除去装置50の内部に搬入された重合ウェハTをチャック51に受け渡すための傾斜部としてのパッド110を設け、当該パッド110により重合ウェハTの反転を行ってもよい。
また、以上の実施形態においては、周縁除去装置50のチャック51に保持される前の重合ウェハTを反転させたが、周縁除去装置50においてチャック51に保持された後の重合ウェハTを反転させてもよい。
具体的には図12に示すように、周縁除去装置50には、チャック51に保持された重合ウェハTを反転させるための傾斜部としての反転機構120を設けてもよい。かかる場合、周縁除去装置50においては、先ず図12(a)に示すように重合ウェハTは第1のウェハW1が上方、第2のウェハW2が下方に配置された状態でチャック51に吸着保持される。そしてこのようにチャック51により重合ウェハTを吸着保持した状態で、図12(b)に示すように反転機構120により重合ウェハTと、当該重合ウェハTを保持するチャック51を一体に反転させることで、第1のウェハW1をカップ体56側に配置することができる。
また、このようにチャック51に保持された重合ウェハTを反転させる場合、図13に示すようにチャック51に加え、除去部材としての挿入部材53、高さ検知機構57を更に一体に反転させてもよい。このように、重合ウェハTと一体にチャック51、挿入部材53及び高さ検知機構57を反転させることで、当該重合ウェハT反転に際して重合ウェハT、チャック51、挿入部材53及び高さ検知機構57の相対的な位置関係が変化しないため、第1のウェハW1の周縁部Weの除去をより適切に行うことができる。
なお、以上の実施形態においてはカップ体56をチャック51の下方に設け、第1のウェハW1が当該カップ体56側に向いて配置させるために重合ウェハTを反転させたが、カップ体56の配置はこれに限定されるものではない。すなわち、第1のウェハW1から剥離された周縁部Weを適切に受け止めて回収機構に排出することができれば、例えばチャック51の側方や上方等に、カップ体56を任意に配置することができる。かかる場合、チャック51に保持される重合ウェハTの傾きを調整する傾斜部を用いてカップ体56に対する重合ウェハTの傾きを調整し、周縁部Weの除去対象である第1のウェハW1をカップ体56側に向けて配置することで、周縁部Weの剥離、回収を適切に行うことができる。
なおこの際、例えばチャック51に保持された後の重合ウェハTを、当該チャック51と一体にカップ体56に対して傾斜させて傾き調整を行ってもよい。また例えば、チャック51に保持される前の重合ウェハTの傾きを調整し、予め第1のウェハW1をカップ体56に向けて保持できる角度に調整されたチャック51に対して、当該重合ウェハTの受渡しを行ってもよい。
なお、以上の実施形態においては高さアライメントにおいて重合ウェハTの全周において高さ位置の検知等を行った後、挿入部材53を挿入し、重合ウェハTの回転に際して挿入部材53の高さ位置を調節して周縁部Weの除去を行った。しかしながら、周縁部Weのエッジトリム(図6のステップS3)における重合ウェハTの高さ位置の検知、及び挿入部材53の挿入高さの計算(以下、併せて「高さ位置の検知等」という。)のタイミングはこれに限られるものではない。例えば、重合ウェハTの回転方向における挿入部材53の挿入位置よりも上流側において高さ検知機構57により重合ウェハTの高さ位置の検知等を行い、検知された高さ位置情報に基づいて、高さ検知機構57の下流側において挿入部材53の挿入、及び高さ位置の調節を行ってもよい。換言すれば、重合ウェハTの高さ位置の検知等と、挿入部材53の挿入及び高さ位置の調節を同時に行ってもよい。
また、以上の実施形態においては高さアライメントにおいて重合ウェハTの全周の高さ位置の検知等を行った後、検知された高さ位置情報に基づいて挿入部材53の高さ位置を調整して周縁部Weを除去したが、この高さアライメント及び周縁部Weの除去は分割領域毎に行われてもよい。すなわち、例えばステップS4のエッジトリムにおいては、一の分割領域における重合ウェハTの高さ位置の検知等と、一の分割領域における周縁部Weの除去と、が重合ウェハTの全周において繰り返し行われてもよい。またこの時、一の分割領域における周縁部Weの除去が行われている際に、次の分割領域における重合ウェハTの高さ位置の検知等を並行して行うようにしてもよい。
また更に、以上の実施形態においては重合ウェハTの高さ位置の検知等を行った後、例えば重合ウェハTの回転方向における高さ検知機構57の下流側において、又は例えば当該高さ位置の検知等の後のステップにおいて、重合ウェハTに挿入された挿入部材53の高さ位置を調整したが、高さ位置の検知等と高さ位置の調整は同時並行で行われてもよい。すなわち、高さ位置の検知等で取得された高さ位置情報に対してリアルタイムに挿入部材53の高さ位置を追従させてもよい。
なお、このように挿入部材53の高さ位置をリアルタイムに追従させて周縁部Weの除去を行う場合、重合ウェハTの高さ位置の調整方法はレーザ変位計により検知された高さ位置に基づく方法には限られず、ガイド部材を物理的接触させてもよい。
具体的には、図14に示すように第2の実施形態にかかる周縁除去装置150は、高さ検知機構57に代えてガイド部材151を有する。ガイド部材151は、重合ウェハTの上面、すなわち第2のウェハW2の裏面W2bに接触して走行する接触部材152(例えばローラ等)と、当該接触部材152と挿入部材53を一体に接続するアーム部材153と、を備えている。なお、接触部材152と挿入部材53の相対的な高さ位置関係は、予め取得された第2のウェハW2の裏面W2bから、挿入部材53を挿入する目標位置までの距離となるように設定されている。そして本実施形態において挿入部材53は、接触部材152の昇降に伴って、アーム部材153を介して一体に昇降する。また挿入部材53は、水平移動機構54により接触部材152及びアーム部材153とは独立して水平方向に移動自在に構成されている。
周縁除去装置150におけるエッジトリムにおいては、接触部材152をチャック51に保持された重合ウェハTの上面、すなわち第2のウェハW2の裏面W2bに接触させる。かかる状態でチャック51に保持された重合ウェハTを回転させると、接触部材152は、重合ウェハTの上面の高さ位置の変化に追従して昇降する。ここで、挿入部材53はアーム部材153により接触部材152と一体に接続されているため、接触部材152の高さ位置の変化、すなわち重合ウェハTの上面の高さ位置の変化に追従して昇降する。また上述のように、接触部材152と挿入部材53の相対的な高さ位置は、挿入部材53の高さ位置が目標位置と一致するように設定されているため、挿入部材53は目標位置の変化に追従して昇降する。
このため、接触部材152を重合ウェハTの上面に接触させた状態で挿入部材53を重合ウェハTに対して挿入することで、目標位置である第1のウェハW1と第2のウェハW2との間の高さ位置が安定していない場合であっても、挿入部材53の挿入高さ位置を適切に追従させることができる。
なお、以上の実施形態におけるエッジトリムでは、重合ウェハTの高さ位置に基づいて算出される目標位置に対して挿入部材53の高さ位置を追従させたが、重合ウェハTに挿入された挿入部材53の高さ位置は固定されてもよい。すなわち、例えば高さアライメントにおいて算出される目標位置が、全周において安定している場合、又は、安定していないとしてもそのバラつきが許容される閾値内に収まる場合、挿入部材53の高さ位置を固定した場合であっても適切に周縁部Weを除去することができる。なお、閾値に対する目標位置のバラつきは、例えば検知された全周における高さ位置情報の平均値、中央値、最大値や最小値等に基づいて算出することができる。そして、このようにエッジトリムにおいて挿入部材53の高さ位置を固定することで、エッジトリム時における制御が容易になる。
またこの時、重合ウェハTに対する挿入部材53の挿入高さ位置は、周縁部Weの分割領域毎に決定されてもよい。さらに、周縁部Weの分割領域毎に、挿入部材53の高さ位置を固定するか、挿入部材53を目標位置に対して追従させるか、を判断してもよい。
なお周縁除去装置には、少なくとも第1のウェハW1のエッジトリム時において、重合ウェハTに発生した反りを矯正するための押圧部材(図示せず)が更に設けられていてもよい。上記実施形態においては重合ウェハTの全周における高さ位置を検知することで、重合ウェハTの反りや面内厚みに起因する目標位置のバラつきを算出し、これに基づいて挿入部材53の高さ位置を調整した。しかしながら、このようにエッジトリム時に押圧部材により重合ウェハTの反りを解消することで、目標位置のバラつき、すなわち挿入部材53の高さ位置の調整量を小さくすることができる。すなわち、より適切に第1のウェハW1から周縁部Weを除去することができる。
なお、周縁除去装置においては周縁部Weの除去にかかるタクトを向上させるため、チャック51に保持された重合ウェハTを連続回転させながらプロセスを行うが、かかる場合、重合ウェハTに対して挿入される挿入部材53に対する衝撃が大きく、挿入部材53の損傷、又は寿命低下の原因となるおそれがある。挿入部材53に対する衝撃は、例えば当該挿入部材53の先端を鋭角にすることで小さくできるが、かかる場合、挿入部材53が小さい衝撃で欠損し、やはり寿命が低下するおそれがある。一方、挿入部材53の先端を鈍角にした場合、挿入部材53の欠損は抑制されるものの、周縁部Weを押し上げるために必要となる押し付け荷重が大きくなり、エッジトリム品質の低下のリスク、重合ウェハTの破損のリスクが大きくなるおそれがある。
そこで、重合ウェハTに対して適切に挿入部材53を挿入し、また、当該挿入部材53の欠損を抑制するため、目標位置である第1のウェハW1と第2のウェハW2の間の予め定められた位置には、挿入部材53の挿入に先立って剥離の起点となる切込み部を形成してもよい。
具体的には、図15に示すように第3の実施形態にかかる周縁除去装置250には、目標位置に対して剥離の起点となる切込み部Tcを形成するための起点形成部材251が設けられている。起点形成部材251の構成は任意であるが、例えば矩形板状の刃部251aを先端に有している。また起点形成部材251は水平移動機構54によって、チャック51に保持された重合ウェハTに対して進退方向に移動可能に構成されるとともに、昇降機構55により重合ウェハTとの相対的な高さ位置を調節可能に構成されている。なお、起点形成部材251は挿入部材53と一体に移動可能に構成されてもよいし、挿入部材53とは独立して移動可能に構成されてもよい。
周縁除去装置250におけるエッジトリムにおいては、目標位置に対する挿入部材53の挿入に先立って、当該目標位置に対して起点形成部材251の刃部251aを挿入して切込み部Tcを形成する。なお、重合ウェハTの周方向における切込み部Tcの形成数は任意に決定することができ、周方向において1箇所のみに形成されてもよいし、複数個所に形成してもよい。また例えば、重合ウェハTの全周に切込み部Tcを形成してもよい。ただし、目標位置に起点形成部材251が挿入された状態で重合ウェハTを回転させた場合、上述のように刃部251aに衝撃が加わり欠損が生じるおそれがある。このため、重合ウェハTの全周に切込み部Tcを形成する場合、起点形成部材251の挿入と退避を繰り返し行うことが好ましい。
そして本実施形態においては、このように目標位置に形成された切込みTcに対して挿入部材53を挿入する。この時、目標位置に形成された切込み部Tcを起点として周縁部Weの剥離が発生するため、周縁部Weの剥離を容易に行うことができる。また、このように切込み部Tcが形成されることにより、挿入部材53の挿入にかかる押圧荷重を小さくすることができ、エッジトリム品質の低下のリスク、及び重合ウェハTの破損のリスクを低減することができる。また更に、挿入部材53の欠損や寿命低下のリスクを低減することができる。
なお、切込み部Tcに対する挿入部材53の挿入を更に容易にするため、形成される切込み部Tcを重合ウェハTの厚み方向に拡げてもよい。具体的には、目標位置に対する刃部251aの挿入時に昇降機構55により起点形成部材251を上下方向に揺動させることにより、形成される切込み部Tcを拡大することができる。
なお、このように周縁除去装置250に起点形成部材251を設ける場合、高さ検知機構57は起点形成部材251の高さアライメントを更に行うことができるように構成されることが好ましい。換言すれば、例えば水平移動機構54及び昇降機構55により起点形成部材251を高さ検知機構57の下方に移動可能に構成されることが望ましい。また例えば、高さ検知機構57を起点形成部材251の上方に移動可能に構成してもよい。
また、このように周縁除去装置250に起点形成部材251を設ける場合、上述のプロセス確認検査と並行して、検査機構(図示せず)を用いて起点形成部材251の欠損の有無を、欠損の位置等を更に検査可能に構成されてもよい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。