半導体デバイスの製造工程においては、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成されたウェハに対し、当該ウェハの裏面を研削して、ウェハを薄化することが行われている。そして、この薄化されたウェハをそのまま搬送したり、後続の処理を行ったりすると、ウェハに反りや割れが生じるおそれがある。そこで、ウェハを補強するために、例えば支持基板にウェハを貼り付けることが行われている。
図1(a)は、第1の基板としての被処理ウェハWと第2の基板としての支持ウェハSとを貼り合わせて形成された重合基板としての重合ウェハTの構成の概略を示す側面図である。以下、被処理ウェハWにおいて、支持ウェハSと接合される面を表面Waといい、表面Waとの反対側の面を裏面Wbという。同様に、支持ウェハSにおいて、被処理ウェハWと接合される面を表面Saといい、表面Saと反対側の面を裏面Sbという。
被処理ウェハWは、例えばシリコン基板などの半導体ウェハであって、表面Waに複数の電子回路等のデバイスを含むデバイス層(図示せず)が形成されている。また、デバイス層にはさらに酸化膜(図示せず)、例えばSiO2膜(TEOS膜)が形成されている。
支持ウェハSは、被処理ウェハWを支持するウェハである。支持ウェハSの表面Saには、酸化膜(図示せず)、例えばSiO2膜(TEOS膜)が形成されている。また、支持ウェハSは、被処理ウェハWの表面のデバイス層を保護する保護材として機能する。なお、支持ウェハSの表面Saに複数のデバイスが形成されている場合には、被処理ウェハWと同様に表面Saにデバイス層(図示せず)が形成される。
通常、被処理ウェハWの周縁部は面取り加工がされているが、上述したように被処理ウェハWの裏面Wbに研削処理を行うと、被処理ウェハWの周縁部が鋭く尖った形状(いわゆるナイフエッジ形状)になる。そうすると、被処理ウェハWの周縁部でチッピングが発生し、被処理ウェハWが損傷を被るおそれがある。そこで、研削処理前に予め被処理ウェハWの周縁部を除去する、いわゆるエッジトリムが行われている。なお、エッジトリムにより除去される周縁部は、例えば被処理ウェハWの外端部から径方向に1mm~5mmの範囲である。
上述した特許文献1に記載の端面研削装置は、このエッジトリムを行う装置である。しかしながら、この端面研削装置では、エッジトリムを研削により行うため、当該研削処理時に大量の粉塵(以下、「パーティクル」という。)が発生する。そして、かかるパーティクルが装置の内部において飛散した場合、ウェハを汚染するおそれがある。
そこで本開示者らは、図1(b)に示すように、エッジトリムによる除去対象としての周縁部Weと中央部Wcとの境界にレーザ光を集光することにより周縁改質層M1を形成し、かかる周縁改質層M1に沿って周縁部Weの剥離を行った(レーザトリミング加工)。また、周縁改質層M1の径方向外側において、被処理ウェハWの径方向に延伸する分割改質層M2を形成し、かかる分割改質層M2に沿って周縁部Weの小片化することにより、より適切に周縁部Weを剥離できることを見出した。
このような、レーザトリミング加工によれば、特許文献1のような研削を行うことなく周縁部Weの除去を行うことができるため、エッジトリムにおいて発生するパーティクル量を減少させることができる。なお、かかるエッジトリムにより発生したパーティクルおよび除去された周縁部Weは、例えば回収部に回収される。
しかしながら、かかるレーザトリミング加工において、例えば分割改質層M2を適切に形成することができなかった場合や、周縁改質層M1を境とする結合強度が弱かった場合、図2(a)に示すように周縁部Weが意図しない除去のされ方となる場合がある。
具体的には、エッジトリムにおいては図2(b)に示すように、分割改質層M2を基点として小片化された周縁部Weが1本ずつ除去されることが好ましいが、周縁改質層M1を境とする結合強度が分割改質層M2を境とする結合強度よりも弱い場合には、図2(a)に示すように適切に周縁部Weの小片化をできない場合がある。そして、このように適切に周縁部Weが小片化されない状態でエッジトリムが進行した場合、除去された周縁部Weを適切に前記回収部に回収することができなくなったり、被処理ウェハWに損傷を与えてしまったりするおそれがある。すなわち、周縁部Weの除去方法には改善の余地がある。
本開示にかかる技術は、レーザトリミング加工において適切に周縁部Weを小片化し、除去する。以下、本実施形態にかかる処理装置を用いて行われる周縁除去方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお以下の説明においては、被処理体としての重合ウェハTに周縁除去を施す場合を例に説明を行う。
先ず、本実施形態にかかる処理装置としてのウェハ処理システムの構成について説明する。図3はウェハ処理システム1の構成の概略を模式的に示す平面図である。
図3に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ステーション2と処理ステーション3を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション2では、例えば外部との間で複数の重合ウェハTを収容可能なカセットCtが搬入出される。処理ステーション3は、重合ウェハTに対して所定の処理を施す各種処理装置を備えている。
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば3つのカセットCtをY軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCtの個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
搬入出ステーション2には、カセット載置台10のX軸負方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送装置20が設けられている。ウェハ搬送装置20は、Y軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されている。また、ウェハ搬送装置20は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム22、22を有している。各搬送アーム22は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置20は、カセット載置台10のカセットCt、及び後述するトランジション装置30に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
搬入出ステーション2には、ウェハ搬送装置20のX軸負方向側において、当該ウェハ搬送装置20に隣接して、重合ウェハTを受け渡すためのトランジション装置30が設けられている。
処理ステーション3には、例えば3つの処理ブロックG1~G3が設けられている。第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2、及び第3の処理ブロックG3は、X軸正方向側(搬入出ステーション2側)から負方向側にこの順で並べて配置されている。
第1の処理ブロックG1には、エッチング装置40、洗浄装置41、及びウェハ搬送装置50が設けられている。エッチング装置40と洗浄装置41は、積層して配置されている。なお、エッチング装置40と洗浄装置41の数や配置はこれに限定されない。例えば、エッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれX軸方向に延伸し、平面視において並列に並べて載置されていてもよい。さらに、これらエッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれ、積層されていてもよい。
エッチング装置40は、後述する加工装置90で研削された被処理ウェハWの裏面Wbをエッチング処理する。例えば、裏面Wbに対して薬液(エッチング液)を供給し、当該裏面Wbをウェットエッチングする。薬液には、例えばHF、HNO3、H3PO4、TMAH、Choline、KOHなどが用いられる。
洗浄装置41は、後述する加工装置90で研削された被処理ウェハWの裏面Wbを洗浄する。例えば裏面Wbにブラシを当接させて、当該裏面Wbをスクラブ洗浄する。なお、裏面Wbの洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置41は、被処理ウェハWの裏面Wbと共に、支持ウェハSの裏面Sbを洗浄する構成を有していてもよい。
ウェハ搬送装置50は、例えばエッチング装置40と洗浄装置41に対してY軸負方向側に配置されている。ウェハ搬送装置50は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム51、51を有している。各搬送アーム51は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム51の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置50は、トランジション装置30、エッチング装置40、洗浄装置41、及び後述する改質装置60に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
第2の処理ブロックG2には、改質部としての改質装置60、周縁除去部としての周縁除去装置70、及びウェハ搬送装置80が設けられている。改質装置60と周縁除去装置70は、積層して配置されている。なお、改質装置60と周縁除去装置70の数や配置はこれに限定されない。
改質装置60は、被処理ウェハWの内部にレーザ光を照射し、周縁改質層M1、分割改質層M2、及び後述の内部面改質層M3を形成する。改質装置60は、図4に示すように被処理ウェハWが上側であって支持ウェハSが下側に配置された状態で、重合ウェハTを保持するチャック61を有している。チャック61は、移動機構62によってX軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されている。移動機構62は、一般的な精密XYステージで構成されている。また、チャック61は、回転機構63よって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
チャック61の上方には、被処理ウェハWの内部にレーザ光を照射するレーザヘッド64が設けられている。レーザヘッド64は、レーザ光発振器(図示せず)から発振された高周波のパルス状のレーザ光であって、被処理ウェハWに対して透過性を有する波長のレーザ光、例えば赤外光を、被処理ウェハWの内部の所定位置に集光して照射する。これによって、被処理ウェハWの内部においてレーザ光Lが集光した部分が改質する。レーザヘッド64は、移動機構65によってX軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されていてもよい。移動機構65は、一般的な精密XYステージで構成されている。またレーザヘッド64は、昇降機構66によってZ軸方向に移動可能に構成されていてもよい。
周縁除去装置70は、改質装置60で形成された分割改質層M2を基点に被処理ウェハWの周縁部Weを小片化すると共に、周縁改質層M1を基点に周縁部Weを除去する。周縁除去装置70の具体的な構成は後述する。
ウェハ搬送装置80は、例えば改質装置60と周縁除去装置70に対してY軸正方向側に配置されている。ウェハ搬送装置80は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム81、81を有している。各搬送アーム81は、多関節のアーム部材82に支持され、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。そして、ウェハ搬送装置80は、洗浄装置41、改質装置60、周縁除去装置70、及び後述する加工装置90に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
第3の処理ブロックG3には、加工装置90が設けられている。なお、加工装置90の数や配置は本実施形態に限定されず、複数の加工装置90が任意に配置されていてもよい。
加工装置90は、改質装置60で形成された内部面改質層M3を基点に被処理ウェハW薄化を行うとともに、薄化後の被処理ウェハWの裏面Wbを研削する。そしてかかる研削処理により、内部面改質層M3を除去し、さらに周縁改質層M1を除去する。
加工装置90は、回転テーブル91を有している。回転テーブル91は、回転機構(図示せず)によって、鉛直な回転中心線92を中心に回転自在に構成されている。回転テーブル91上には、重合ウェハTを吸着保持するチャック93が複数、例えば2つ設けられている。チャック93は、回転テーブル91と同一円周上に均等に配置されている。2つのチャック93は、回転テーブル91が回転することにより、受渡位置A0及び加工位置A1に移動可能になっている。また、2つのチャック93はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
受渡位置A0では、重合ウェハTの受け渡しが行われる。加工位置A1では、研削ユニット94による被処理ウェハWの裏面Wbの研削が行われる。研削ユニット94は、環状形状で回転自在な研削砥石(図示せず)を備えた研削部95を有している。また、研削部95は、支柱96に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。そして、チャック93に保持された被処理ウェハWの裏面Wbを研削砥石に当接させた状態で、チャック93と研削砥石をそれぞれ回転させ、裏面Wbを研削する。
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置100が設けられている。制御装置100は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置100にインストールされたものであってもよい。
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われる処理方法としてのウェハ処理について説明する。図5は、ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。図6は、ウェハ処理の主な工程の説明図である。なお本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の前処理装置(図示せず)において被処理ウェハWの前処理が行われ、また接合装置(図示せず)において被処理ウェハWと支持ウェハSが接合されることで、予め重合ウェハTが形成されている。
ここで前記前処理装置においては、前記レーザトリミング加工により正常に被処理ウェハWの周縁部Weの除去を行うため、当該周縁部Weにおける支持ウェハSとの接合強度を低下させるための前処理が行われている。当該前処理は、周縁部Weにおける支持ウェハSとの接合面を、例えば粗面化、疎水化または除去することにより行われる。そして、かかる前処理が行われた周縁部Weにおいては、被処理ウェハWと支持ウェハSとが接合されない。これにより前記接合装置において形成された重合ウェハTにおいては、接合領域と未接合領域が形成されている。
ウェハ処理システム1においては先ず、図6(a)に示す重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ステーション2のカセット載置台10に載置される。前述のように重合ウェハTには、接合領域Acと未接合領域Aeが形成されている。
次に、ウェハ搬送装置20によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出され、トランジション装置30に搬送される。続けて、ウェハ搬送装置50によりトランジション装置30の重合ウェハTが取り出され、改質装置60に搬送される。
改質装置60では先ず、図6(b)および図1(b)に示すように被処理ウェハWの内部に周縁改質層M1と分割改質層M2が順次形成される(図5のステップP1、P2)。周縁改質層M1は、エッジトリムにおいて周縁部Weを除去の際の基点となるものである。分割改質層M2は、除去される周縁部Weを小片化するための基点となるものである。なお、このように改質層が形成されることにより、被処理ウェハWの内部には周縁改質層M1及び分割改質層M2からクラックC1、C11、C2、C22が進展する。ここで、クラックC1およびクラックC2は図6(b)に示すように被処理ウェハWの厚み方向に進展する。また図7に示すように、クラックC11は水平方向における被処理ウェハWの周方向、クラックC22は水平方向における被処理ウェハWの放射方向に進展する。
ここで、改質装置60においては、周縁改質層M1から進展するクラックC1の進展速度が、分割改質層M2から進展するクラックC2の進展速度よりも小さくなるように、周縁改質層M1と分割改質層M2がそれぞれ形成される。より具体的には、後述のエッジトリムにおいて、分割改質層M2から進展するクラックC2が、周縁改質層M1から進展するクラックC1よりも先に、被処理ウェハWの厚み方向における全長に進展するように周縁改質層M1と分割改質層M2がそれぞれ形成される。また後述のエッジトリムにおいて、クラックC11が一の分割改質層M2と隣接する他の分割改質層M2との間の領域(以下、「分割領域R」と言う。)の全長に進展するよりも先に、クラックC22が周縁部Weの径方向の幅全長に進展するように、周縁改質層M1と分割改質層M2がそれぞれ形成される。
図8は、前記クラックの進展速度を調節するための周縁改質層M1と分割改質層M2の形成構造の一例を示す、被処理ウェハWの端部の断面を拡大して示す要部拡大図である。図8に示すように、周縁改質層M1は被処理ウェハWの厚み方向の異なる高さに対して、例えば3つ、分割改質層M2は被処理ウェハWの厚み方向の異なる高さに対して、例えば4つ形成される。そして、このように周縁改質層M1および分割改質層M2の形成数を変えることにより、分割改質層M2を基点とするクラックC2は裏面Wbと表面Waに到達させる一方で、周縁改質層M1を基点とするクラックC1は表面Waには到達させるが、裏面Wbには到達させない。なおクラックC1は、後述の周縁除去装置70におけるエッジトリムが行われる際に衝撃が加わることにより、裏面Wbまで進展する。
被処理ウェハWに周縁改質層M1と分割改質層M2が形成されると、続いて、図6(c)に示すように内部面改質層M3が形成される(図5のステップP3)。内部面改質層M3は、被処理ウェハWを薄化するための基点となるものである。そして内部面改質層M3からは、面方向にクラックC3が進展する。
被処理ウェハWに内部面改質層M3が形成されると、次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置80によって改質装置60から搬出され、周縁除去装置70に搬入される。
周縁除去装置70では、図6(d)に示すように周縁改質層M1を基点に被処理ウェハWの周縁部Weが除去される(図5のステップP4)。またこの際、周縁部Weは分割改質層M2を基点に小片化される。なお、周縁除去装置70におけるエッジトリムの詳細な方法については後述する。
なお、上述したように被処理ウェハWの周縁部Weにおいては、分割改質層M2を基点とするクラックC2は被処理ウェハWの裏面Wbと表面Waに既に到達している。この一方、周縁改質層M1を基点とするクラックC1は裏面Wbに到達していない。すなわち、周縁改質層M1を境とする中央部Wcと周縁部Weとの間の結合強度(以下、単に「周縁改質層M1の結合強度」と言う。)は、分割改質層M2を境とする周縁部We同士の結合強度(以下、単に「分割改質層M2の結合強度」と言う。)よりも強くなっている。これにより本実施の形態にかかるエッジトリムにおいては、分割改質層M2を基点とする周縁部Weの小片化が、周縁改質層M1を基点とする周縁部Weの剥離に先だって生じる。
周縁除去装置70において周縁部Weが除去されると、重合ウェハTはウェハ搬送装置80により加工装置90に搬送される。
加工装置90では、先ず、搬送アーム81から受渡位置A0のチャック93に重合ウェハTを受け渡す。この際、図6(e)に示すように、内部面改質層M3を基点に被処理ウェハWの裏面Wb側(以下、裏面被処理ウェハWb1という)を分離する(図5のステップP5)。
ステップP5では、搬送アーム81で被処理ウェハWを吸着保持しつつ、チャック93で支持ウェハSを吸着保持する。そして、かかる状態で搬送アーム81を上昇させて、被処理ウェハWから裏面被処理ウェハWb1を分離する。この際、例えば圧力センサ(図示せず)により裏面被処理ウェハWb1を吸引する圧力を測定することで、裏面被処理ウェハWb1の有無を検知して被処理ウェハWから裏面被処理ウェハWb1が分離されたか否かを確認することができる。なお、分離された裏面被処理ウェハWb1は、ウェハ処理システム1の外部に設けられた回収部(図示せず)に回収される。
なお、搬送アーム81を上昇させて、被処理ウェハWから裏面被処理ウェハWb1を分離する際には、搬送アーム81を鉛直軸回りに回転させてもよい。これにより、内部面改質層M3を境界に裏面被処理ウェハWb1が縁切りされ、裏面被処理ウェハWb1の分離を適切に行うことができる。
続いて、回転テーブル91を回転させることによりチャック93を加工位置A1に移動させる。そして、研削ユニット94によって、図6(f)に示すようにチャック93に保持された被処理ウェハWの裏面Wbを研削し、当該裏面Wbに残る内部面改質層M3と周縁改質層M1を除去する(図5のステップP6)。ステップP6では、裏面Wbに研削砥石を当接させた状態で、被処理ウェハWと研削砥石をそれぞれ回転させ、裏面Wbを研削する。なおその後、洗浄液ノズル(図示せず)を用いて、被処理ウェハWの裏面Wbが洗浄液によって洗浄されてもよい。
次に重合ウェハTは、ウェハ搬送装置80により洗浄装置41に搬送される。洗浄装置41では被処理ウェハWの研削面である裏面Wbがスクラブ洗浄される(図5のステップP7)。なお、洗浄装置41では、被処理ウェハWの裏面Wbと共に、支持ウェハSの裏面Sbが洗浄されてもよい。
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置50によりエッチング装置40に搬送される。エッチング装置40では被処理ウェハWの裏面Wbが薬液によりウェットエッチングされる(図5のステップP8)。上述した加工装置90で研削された裏面Wbには、研削痕が形成される場合がある。本ステップP8では、被処理ウェハWの裏面Wbをウェットエッチングすることによって研削痕を除去でき、裏面Wbを平滑化することができる。
その後、すべての処理が施された重合ウェハTは、ウェハ搬送装置50によりトランジション装置30に搬送され、さらにウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCtに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
上記実施の形態においては、クラックC1を基点とする周縁部Weの中央部Wcからの剥離速さ(周縁改質層M1の剥離速さ)は、クラックC2を基点とする周縁部We間の剥離速さ(分割改質層M2の剥離速さ)よりも遅くなっている。換言すれば、周縁改質層M1の結合強度は分割改質層M2の結合強度よりも強くなっている。そして本実施形態に係る処理方法によれば、このように周縁改質層M1の剥離速さを分割改質層M2の剥離速さよりも遅くすることができれば、改質層の形成方法は上記実施の形態には限られない。
例えば、上記実施の形態においてはクラックC1を裏面Wbに到達させないようにしたが、クラックC1を裏面Wbに到達させる代わりに被処理ウェハWの内部においてクラックC1が繋がらないようにしてもよい。また例えば、クラックC1を裏面Wbに到達させ、改質層の形成数やレーザ光の照射条件等を変えることによりクラックの進展速度を調整してもよい。
なお、上記実施の形態においては加工装置90における研削処理により内部面改質層M3と周縁改質層M1を除去したが(図5のステップP6、P7)、内部面改質層M3及び周縁改質層M1の除去は、ウェットエッチングにより行われてもよい。具体的には、図5のステップP6、P7を省略し、図5のステップP8に示したウェットエッチング処理により、内部面改質層M3及び周縁改質層M1を除去してもよい。
なお以上の一連のウェハ処理においては、周縁改質層M1、分割改質層M2、内部面改質層M3がこの順にそれぞれ形成された(図5のステップP1~P3)が、それぞれの改質層の形成順序はこれに限られず、任意の順序で形成することができる。
また、以上のウェハ処理においては図5のステップP3において内部面改質層M3を形成した後、ステップP5において内部面改質層M3を基点に裏面被処理ウェハWb1を分離して被処理ウェハWを薄化したが、被処理ウェハWの薄化方法はこれに限られない。例えば、図5のステップP3において内部面改質層M3を形成することなく、加工装置90における研削処理(図5のステップP6)により、被処理ウェハWを薄化してもよい。
また、以上のウェハ処理のように内部面改質層M3を基点に裏面被処理ウェハWb1を分離して被処理ウェハWを薄化する場合、薄化後の被処理ウェハWの裏面Wbに凹凸が形成され、あれてしまう場合がある。このように裏面Wbがあれた状態で研削処理(図5のステップP6)を行った場合、適切に研削ユニット94を裏面Wbに当接させて研削できない場合がある。そこで、加工装置90における研削処置を適切に行うため、当該研削処理は裏面Wbに洗浄及びウェットエッチングを施したのちに行われてもよい。これにより、研削処理に先だって裏面Wbが整えられるため、研削処理を適切に行うことができる。なお、かかる研削処理の後には、再度洗浄及びウェットエッチングが施されてもよい。
また、以上のウェハ処理においては図5のステップP6における研削処理により内部面改質層M3と周縁改質層M1を除去したが、研削処理に代え、例えばウェットエッチングにより内部面改質層M3と周縁改質層M1を除去してもよい。かかる場合、当該ウェットエッチングの後に、被処理ウェハWに研削処理を施してもよい。
次に、上述した周縁除去装置70について説明する。図9、図10および図11はそれぞれ周縁除去装置70の構成の概略を示す平面図、正面図および側面図である。
周縁除去装置70は重合ウェハTを上面で保持する基板保持部としてのチャック71を有している。チャック71は、被処理ウェハWが上側であって支持ウェハSが下側に配置された状態で、支持ウェハSの裏面Sbを保持する。またチャック71は、回転機構72によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
またチャック71は、例えばエアシリンダなどの移動機構73により水平方向に移動自在に構成されている。かかる移動機構73により、チャック71に保持された重合ウェハTが受渡位置と加工位置との間で移動自在に構成されている。より具体的には、重合ウェハTの受渡位置とは、チャック71とウェハ搬送装置80との間で重合ウェハTの受け渡しが行われる位置であって、重合ウェハTの外端部が後述のカバー体131から退避した位置(図10のX軸負方向側)である。また、重合ウェハTの加工位置とは、周縁部Weの除去が行われる位置であって、重合ウェハTの外端部が後述のカバー体131に進入する位置(図10のX軸正方向側)である。
チャック71のX軸方向正方向側であって、前記重合ウェハTの加工位置には、被処理ウェハWの周縁部Weを除去するための除去部110が設けられている。除去部110は、周縁部Weに衝撃を付与することでクラックC1を被処理ウェハWの厚み方向において完全に繋がるように進展させ、周縁改質層M1を基点に周縁部Weを中央部Wcから剥離して除去する。なお、除去部110により除去された周縁部Weは、当該除去部110の下方に設けられた回収部120に回収される。なお除去部110と回収部120の間には排出部130が設けられている。排出部130には除去された周縁部We及び当該周縁部Weの剥離の際に発生したパーティクルの回収路が形成されている。
除去部110は、挿入部材としてのくさびローラー111、上部ノズル112および下部ノズル113を有している。
くさびローラー111は図10および図11に示すように、先端が尖ったくさび形状を有し、鉛直軸回りに回転自在に構成されている。くさびローラー111は、前記加工位置に位置する重合ウェハTの被処理ウェハWと支持ウェハSの界面(以下、単に「界面」という場合がある。)に挿入される。そして、挿入されたくさびローラー111により支持ウェハSから剥離する方向に周縁部Weが押し上げられ、これにより周縁改質層M1を基点に周縁部Weが除去される。またこれと同時に、周縁部Weに形成された分割改質層M2を基点に周縁部Weが小片化される。
またくさびローラー111は、図12に示すように、例えばバネ部材からなる緩衝機構111aにより前記加工位置に配置された重合ウェハTの界面に挿入される際に、重合ウェハTの移動方向に対して進退自在に構成されている。より具体的には、くさびローラー111は、移動機構73により加工位置に移動した重合ウェハTの界面に挿入される際に重合ウェハTの移動方向に対して後退することにより、挿入時の衝撃を吸収することができるように構成されている。なお、緩衝機構111aは、例えば後述のカバー体131の天井面に設けられる。
なお、本実施形態においては挿入部材としてくさびローラー111を用いたが、挿入部材の構成はこれに限定されない。例えば挿入部材は、側面視において径方向外側に向けて幅が小さくなる形状を備えたものであればよく、先端が先鋭化したナイフ状の挿入部材を用いてもよい。
上部ノズル112は、加工位置に配置された重合ウェハTの外端部の上方に設けられている。上部ノズル112は、重合ウェハTの界面とくさびローラー111が当接する点(以下、「加工点」という。)に向けて流体を供給する。供給される流体としては、例えばエアや純水等が用いられる。
上部ノズル112は、くさびローラー111の加工点に向けて流体を供給することにより、周縁改質層M1を基点に周縁部Weが中央部Wcから破断する際、及び分割改質層M2を基点に周縁部Weが破断する際に発生するパーティクルの飛散を抑制する。
なお、上部ノズル112による流体の供給は、回収部120に対して適切にパーティクルを排出するため、加工点に向けてかつ後述の排出ダクト132に向けて行われることが望ましい。すなわち周縁除去装置70においては、上部ノズル112、くさびローラー111の加工点、後述の排出ダクト132が同一直線状に配置されるように上部ノズル112の位置が決定されることが望ましい。
下部ノズル113は、加工位置に配置された重合ウェハTの外端部の下方に設けられている。下部ノズル113は、前記加工点に向けて流体を供給する。供給される流体としては、例えばエアや純水等が用いられる。
下部ノズル113は、上部ノズル112と同様にくさびローラー111の加工点において発生したパーティクルの飛散を抑制すると共に、当該パーティクルが重合ウェハTの裏面側(支持ウェハSの裏面Sb側)に回り込むことを抑制する。
なお、上部ノズル112および下部ノズル113の数や配置はこれに限定されず、例えば重合ウェハTの周方向に沿って複数設置されてもよい。また、上部ノズル112及び下部ノズル113の設置数はそれぞれ同じでなくてもよい。また更に、下部ノズル113の設置は省略されてもよい。
回収部120は、図10に示すように、除去された周縁部Weを回収するための回収容器121と、破断により発生したパーティクルを回収するためのフィルタ122を有している。また回収部120には、フィルタ122を介して排出部130の内部の雰囲気を吸引可能な、例えば真空ポンプなどの吸引機構123が接続されている。
排出部130は図9、図10に示すように、除去された周縁部Weおよびパーティクルの回収路を形成するカバー体131と排出ダクト132を有している。
カバー体131の内部には、前記除去された周縁部Weおよびパーティクルを排出するための回収路131aが形成されている。回収路131aの一端は、チャック71に保持され加工位置に配置された重合ウェハTの外端部を覆い、回収路131aの他端は排出ダクト132に接続されている。またカバー体131は、回収路131aがくさびローラー111の加工点を覆うように配置される。換言すれば、除去部110はカバー体131の内部に設けられる。
またカバー体131は、図9に示すようにくさびローラー111が当該カバー体131の内部における、重合ウェハTの回転方向の上流側(図9におけるY軸方向正方向側)に位置するように設けられる。これにより、カバー体131の内部における重合ウェハTの回転方向の下流側(図9におけるY軸方向負方向側)には、除去された周縁部Weを適切に回収するための空間が形成されている。
また回収路131aには、除去部110により除去された周縁部Weを回収部120に排出するための傾斜部131bが形成されている。傾斜部131bは、少なくともカバー体131の内部におけるくさびローラー111の加工点の直下よりも、重合ウェハTの径方向における内側から形成されている。これにより、除去された周縁部Weは自重により加工点から傾斜部131bへと落下し、傾斜部131bに沿って滑落して排出ダクト132を介して回収部120へと回収される。
なお、傾斜部131bの表面は、例えば樹脂コーティングを行うことにより低摩擦化処理が行われていてもよい。これにより、周縁部Weをより適切に回収部120へ排出することができる。
排出ダクト132は、一端がカバー体131の回収路131aに接続され、他端が回収部120の回収容器121の内部に位置するように設けられる。排出ダクト132は、傾斜部131bを滑落してきた周縁部Weを回収部120へと排出する。また、カバー体131において受け止められたパーティクルを回収部120へと排出する。すなわち排出ダクト132は、カバー体131から周縁部Weおよびパーティクルを回収部120へと排出する。
なお、前述したように排出部130の内部は回収部120に設けられる吸引機構123によって吸引される。これにより排出部130においては、カバー体131から排出ダクト132に向けての気流が形成される。すなわち、前記破断により発生したパーティクルを回収部120へと誘引することができる。
なお排出部130は、図示しない移動機構により重合ウェハTの径方向に対して移動自在に構成されていてもよい。より具体的には、カバー体131を重合ウェハTの径方向に対して移動させることにより、くさびローラー111と重合ウェハTの外端部との離隔を相対的に調節可能に構成されていてもよい。
周縁除去装置70は以上のように構成されている。次に、かかる周縁除去装置70において行われるエッジトリム方法について、図面を参照して説明する。図13および図14はエッジトリムの主な工程を示す説明図であり、図13は正面図、図14は側面図である。なお、図13および図14においては図示の煩雑さを回避するため、内部面改質層M3の図示を省略し、また図13においては分割改質層M2を重合ウェハTの径方向に1層のみ図示している。
先ず、ウェハ搬送装置80により周縁除去装置70の内部に、図13(a)に示すように内部に改質層が形成された重合ウェハTが搬入され、受渡位置に位置するチャック71に保持される。
チャック71に重合ウェハTが保持されると、上部ノズル112および下部ノズル113からの流体の供給および吸引機構123による吸引が開始される。
そしてこれと同時に、図13(b)に示すように、移動機構73によりチャック71に保持された重合ウェハTが加工位置へと移動され、外端部がカバー体131の内部に進入する。そして、重合ウェハTの界面に除去部110のくさびローラー111が挿入される。かかる際、くさびローラー111には緩衝機構111aが設けられているため、適切に重合ウェハTの界面に挿入される際の衝撃を吸収し、また、適切に界面に対して押し込まれる。
なお、くさびローラー111が挿入される重合ウェハTの周方向位置は、図14(a)に示すように分割領域R内であることが、すなわち、分割改質層M2を避けた位置であることが好ましい。また、分割領域Rの一端側(重合ウェハTの回転に伴う分割領域Rの上流側)であることがより好ましい。
界面にくさびローラー111が挿入されると、図13(c)に示すように挿入の衝撃によりクラックC1が被処理ウェハWの裏面Wbに到達し、また図14(a)に示すように当該挿入箇所において周縁改質層M1を基点に周縁部Weの剥離が開始される。またこの際、分割領域Rの一端側の分割改質層M2は、周縁部Weの剥離による引張力を受けて破断する。
そして、重合ウェハTの界面にくさびローラー111が挿入されると、回転機構72による重合ウェハTの回転、図示しない回転機構によるくさびローラー111の回転が開始される。
くさびローラー111および重合ウェハTの回転が開始すると、図14(b)に示すように、当該重合ウェハTの回転方向に沿って、分割領域Rの他端側に向けて周縁部Weの剥離が進行する。この際、被処理ウェハWの周縁部Weには前述のように未接合領域Aeが形成されているため、かかる周縁部Weの剥離が適切に行われる。
そして、重合ウェハTの回転によりくさびローラー111が分割領域Rの他端側の分割改質層M2近傍に達すると、当該他端側の分割改質層M2は、図14(b)に示すように周縁部Weの剥離による引張力を受けて破断し、周縁部Weが小片化される。そしてこれに続いて小片化された周縁部Weの周方向の全長において、すなわち分割領域Rの全長において周縁部Weが剥離される。
小片化された周縁部Weは図13(d)および図14(c)に示すように、カバー体131の内部、具体的には傾斜部131b上に落下する。落下した周縁部Weは、当該傾斜部131bに沿って滑落してカバー体131から排出され、排出ダクト132を介して回収部120に回収される。
なお本実施の形態にかかる周縁除去装置70によれば、くさびローラー111はカバー体131の内部における、重合ウェハTの回転方向の上流側に設けられ、重合ウェハTの回転方向の下流側には、空間が形成されている。これにより、除去された周縁部Weが重合ウェハTの回転にかかる慣性により重合ウェハTの回転方向の下流側に流れて落下した場合であっても、適切に回収をすることができる。
ここで、重合ウェハTを加工位置に配置した状態で重合ウェハTの回転を継続した場合、くさびローラー111は、次の分割領域Rの一端側から重合ウェハTの界面に挿入されることになる。かかる場合、図15に示すようにくさびローラー111が分割領域Rの一端に衝突することにより、重合ウェハTの回転方向とは逆向きの反力が加わり、周縁部Weが予期しない除去のされ方をしてしまうおそれがある。
そこで、次の分割領域Rにおける周縁部Weの剥離を開始する前に移動機構73によりチャック71を加工位置から退避させ、その後、分割改質層M2を避けた位置において、界面へのくさびローラー111の挿入を再度行うことが好ましい。これにより、周縁部Weの小片化および除去をより適切に行うことができる。
すなわち周縁部Weの除去においては、くさびローラー111の挿入、重合ウェハTの回転による分割領域Rの除去、くさびローラー111の退避、重合ウェハTの回転によるくさびローラー111の挿入位置の決定、がこの順に繰り返されることが好ましい。
なお、くさびローラー111の挿入位置は、図示しない検出装置(例えば撮像カメラやIRカメラ)により分割改質層M2の位置を検出し、かかる検出位置を基に決定することが出来る。また、分割改質層M2の形成位置が被処理ウェハWのノッチの位置を基準として決定される場合、検出装置によりノッチの位置を検出し、かかる検出位置を基に決定してもよい。
なお前記検出装置は任意の場所に配置することができ、周縁除去装置70の内部に設けられていても良いし、周縁除去装置70の外部に設けられていてもよい。
ただし、例えば改質層の結合強度や挿入部材の形状等により、適切に周縁部Weの除去を継続できるものであれば、このようにくさびローラー111の退避を行うことなく、重合ウェハTの回転を継続させてもよい。
そして、被処理ウェハWの全周に亘って周縁部Weが除去され、回収部120の回収容器121に回収されると回転機構72による重合ウェハTの回転が止められる。また、上部ノズル112および下部ノズル113からの流体の供給および吸引機構123による排出ダクト132内の吸引が止められる。そして図13(e)に示すように、移動機構73によりチャック71が受渡位置に移動し、ウェハ搬送装置80により重合ウェハTが周縁除去装置70から搬出されると、一連のエッジトリムが終了する。
本実施形態にかかる処理装置で処理される重合ウェハTにおいては、前述したように分割改質層M2におけるクラックC2の進展速度が、周縁改質層M1におけるクラックC1の進展速度よりも大きくなるように改質層が形成されている。すなわち、クラックC2の方がクラックC1よりも早く、被処理ウェハWの厚み方向の全長に進展するように改質層が形成される。
このように、周縁改質層M1における結合強度が分割改質層M2における結合強度よりも強くなるように改質層が形成されている。これにより、周縁除去装置70における周縁部Weの除去において分割改質層M2が周縁改質層M1よりも早く破断され、周縁部Weの除去に先だって周縁部Weの小片化を行うことができる。そしてこれにより、適切に周縁部Weを回収することができる。
また、このように周縁部Weの小片化を適切に行うことができるため、除去された周縁部Weを回収するための回収部120を小型化することができる。すなわち、これにより周縁除去装置70を小型化することができ、ウェハ処理システム1におけるフットプリントを削減することができる。
なお、以上の実施形態において周縁改質層M1および分割改質層M2は、被処理ウェハWの厚み方向に形成する改質層の数を変えることにより、周縁改質層M1の結合強度が分割改質層M2の結合強度よりも強くなるように、より具体的にはクラックC2の進展速度がクラックC1の進展速度よりも早くなるように改質装置60の動作を制御した。しかしながら、このようにクラックC2の進展速度がクラックC1の進展速度よりも早くすることができれば改質層の形成方法はこれに限定されない。
例えば、本実施の形態にかかる改質装置60においては、上述したように分割改質層M2を形成する際のレーザ光の照射条件を、周縁改質層M1を形成する際のレーザ光の照射条件から変更してもよい。具体的には、例えば周縁改質層M1、分割改質層M2のそれぞれを形成する際の、レーザ光のパルスエネルギー、パルス幅、パルスピッチ、収差補正または矯正具合を変更して、改質層形状やクラックの伸びを調整してもよい。
なお、くさびローラー111が分割改質層M2を跨いで重合ウェハTの界面に挿入された場合、図16(a)に示すように、当該分割改質層M2を跨いで両側の分割領域Rにおいて、周縁部Weの剥離が開始された状態となってしまう。かかる状態で図16(b)に示すように周縁部Weの剥離を継続した場合、除去されない分割領域Rの他端が剥離された状態で周縁部Weの除去が進行する。そして、これにより周縁改質層M1の結合強度が重合ウェハTの周方向において不均一な状態となるため、前述の予期しない周縁部Weの除去が生じやすくなってしまうおそれがある。
この点、本実施の形態にかかる周縁除去装置70においては、くさびローラー111は周縁部Weにおける分割改質層M2を避けた位置に挿入される。これにより、剥離を行う分割領域Rにおける周縁部Weのみがくさびローラー111により持ち上げられるため、適切に周縁部Weを小片化し、また除去することができる。
なお以上の実施形態において周縁部Weは、くさびローラー111を重合ウェハTの界面に挿入することと、重合ウェハTを回転させることを繰り返すことにより剥離を行ったが、周縁部Weの除去方法はこれに限定されない。
例えば、周縁部Weの剥離がくさびローラー111を界面に挿入することのみによって生じるのであれば、重合ウェハTの回転が省略されてもよい。かかる場合、くさびローラー111は分割領域Rの中心に挿入されることが好ましい。
また例えば、くさびローラー111を界面に挿入した後、重合ウェハTを移動機構73により周方向に沿って往復(図9におけるY軸方向の正負方向)移動させてもよい。また、回転機構72により双方向に回転させてもよい。
なお、以上の実施形態においては周縁改質層M1を形成した後(図5のステップP1)、これに続けて分割改質層M2を形成(図5のステップP2)が、改質層の形成順序はこれに限られず、分割改質層M2を周縁改質層M1に先行して形成してもよい。
なお、上述のように改質装置60においては、周縁改質層M1の結合強度が分割改質層M2の結合強度よりも強くなるように改質層を形成した。ここで、分割改質層M2の結合強度は被処理ウェハWの面内における結晶方位より変化する。そして、このように分割改質層M2の結合強度がそれぞれ相違する場合、全ての分割改質層M2の結合強度が周縁改質層M1の結合強度よりも小さくなるように制御することが困難になる。かかる点を鑑みて分割改質層M2は、被処理ウェハWの面内における結晶方位を考慮して、全ての分割改質層M2の結合強度が均等になるように形成されることが好ましい。
かかる場合分割改質層M2は、例えば重合ウェハTの周方向において全周に亘って均等な間隔で形成される。すなわち、例えば分割改質層M2が8つ形成される場合、一の分割改質層M2と隣接する他の分割改質層M2は、周方向において45°の間隔で形成される。
また、被処理ウェハWの端部には位置合わせ用のノッチが形成されている。そこで分割改質層M2は、重合ウェハTの周方向において、当該ノッチが一の分割改質層M2と隣接する他の分割改質層M2の中心となるように形成されることが好ましい。すなわち、例えば分割改質層M2が8つ形成される場合、前記ノッチの形成位置を基準として22.5°回転させた位置から分割改質層M2を均等に形成していくことが好ましい。
このように接合強度が均等になるように分割改質層M2を形成することにより、全ての分割改質層M2の結合強度が周縁改質層M1の結合強度よりも小さくすることが容易になる。またこれにより、適切に周縁部Weを小片化することができる。
なお、図15に示したようにくさびローラー111が分割領域Rの一端に衝突した場合、かかる衝突の衝撃によりくさびローラー111は消耗する。ここで本実施形態に係る処理方法によれば、図14(a)に示すように分割領域Rの端部を避けて、くさびローラー111が重合ウェハTの界面へ挿入される。これにより、くさびローラー111が分割領域Rの端部に衝突することが抑制され、くさびローラー111の消耗を抑制することができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
例えば、上記の実施形態においては被処理ウェハWと支持ウェハSとが貼りあわされた重合ウェハTに対して各種処理を施す場合について説明したが、上述の各種処理は貼り合わせ前の被処理ウェハWに対して行われてもよい。すなわち、被処理ウェハWに図5のステップP1~P8により改質層の形成、エッジトリム、薄化処理がそれぞれ行われた後に、支持ウェハSと接合して重合ウェハTを形成してもよい。
また、上記の実施の形態においては被処理ウェハWのエッジトリムを行う場合について説明したが、例えば被処理ウェハWのくり抜きを行う場合、すなわち、被処理ウェハWの外周部を除去することにより小径のウェハを得る場合に、本開示に係るエッジトリム方法が適用されてもよい。
また、上記の実施の形態においては処理前後の被処理ウェハWの形状がそれぞれ円板形状である場合を例に説明を行ったが、被処理ウェハWの形状もこれに限られるものではない。例えば、処理前に円板形状である被処理ウェハWを、処理後に角型(四角形状)となるようにエッジトリムを行ってもよい。また例えば、処理前に角型(四角形状)である被処理ウェハWを、処理後に円板形状となるようにエッジトリムを行ってもよい。
また上記の実施の形態においては、被処理体としての重合ウェハTがシリコン基板である場合を例に説明を行ったが、被処理体の種類はこれに限定されるものではない。例えば被処理体としては、シリコン基板に代えて、ガラス基板、単結晶基板、多結晶基板または非晶質基板などが選択されてもよい。また例えば被処理体としては、基板に代えて、インゴット、基台または薄板などが選択されてもよい。